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特許7022840カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物、これを含むディップ成形用のラテックス組成物およびこれにより成形された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物、これを含むディップ成形用のラテックス組成物およびこれにより成形された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/06 20060101AFI20220210BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20220210BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220210BHJP
   C08L 13/02 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08F236/06
C08K3/011
C08K3/22
C08L13/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020544740
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2019014719
(87)【国際公開番号】W WO2020130330
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165190
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ、スン-ウク
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508534(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0133638(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0041342(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物であって、
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位、スルホン酸塩またはスルホン酸エステルを含むエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位、およびエチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を含み、
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位40重量%~80重量%、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位10重量%~50重量%、エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%およびエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%を含む
カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物。
【請求項2】
前記カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体は、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和スルホン酸単量体は、ナトリウムビニルスルホネート、ナトリウム(メタ)アリルスルホネート、2‐メチル‐2‐プロペン‐1‐スルホン酸ナトリウム塩、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩、3‐スルホプロピル(メタ)アクリレート、ナトリウムα‐メチルスチレンスルホネート、ナトリウムエチルスチレンスルホネートおよびナトリウム1‐アリルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネートからなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物。
【請求項4】
前記カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含有量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、0.1重量%~10重量%であり、前記エチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位の含有量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、0.1重量%~10重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物。
【請求項5】
前記カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含有量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、2重量%~6重量%であり、前記エチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位の含有量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、2重量%~5重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位およびカルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位は、1:1~5の重量比で含まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体組成物と、架橋剤組成物とを含む、ディップ成形用のラテックス組成物。
【請求項8】
前記架橋剤組成物は、酸化亜鉛、加硫剤および加硫促進剤を含む、請求項7に記載のディップ成形用のラテックス組成物。
【請求項9】
請求項7または8に記載のディップ成形用のラテックス組成物由来層を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月19日付けの韓国特許出願第10‐2018‐0165190号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物に関し、より詳細には、カルボン酸変性ニトリル系ラテックス組成物、これを含むディップ成形用のラテックス組成物およびこれにより成形された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、産業用、医療用および食品用の手袋と、風船、コンドームなど、伸縮性を要する製品の原料として天然ゴムが主に使用されてきた。しかし、最近、天然ゴムが一部のユーザに深刻なタンパク質アレルギーを起こす副作用が生じることから、天然ゴムの代わりにニトリル系ゴムを使用している傾向にある。ニトリル系ゴムは、高い耐油性を有しており、特に、有機溶剤を扱うユーザが使用する作業用の手袋や、医療用および食品用の手袋において多く使用されている。また、ニトリル系ゴムから製造された製品は、天然ゴムから製造された製品に比べ、注射針などによって穴が空きにくい特性を有しており、鋭いメスや注射針などを扱う医療関係者の使用に適するという利点がある。
【0004】
また、最近、天然ゴムの不安定な需給によって多くの手袋メーカーが、天然ゴム手袋の生産ラインをニトリル系ゴム手袋の生産ラインに転換しており、安全性に関する認識が高まるにつれて、ニトリル系ゴムから製造された使い捨て手袋の使用が増加し続けている。
【0005】
かかる傾向に合わせて、手袋メーカーは、手袋の生産性を高めるために、薄いながらも、破れにくい手袋を製造することを目標としており、このために、高い引張強度を有する手袋を作ることができるディップ成形用のラテックスが求められている。手袋を製造する際、引張強度に影響を及ぼす最大の因子の一つとして、ディップ成形用のラテックスの製造時に用いられる単量体の一つであるメタクリル酸と、ディップ成形用のラテックス組成物に投入される酸化亜鉛の亜鉛イオンとの間で生じるイオン結合が挙げられる。前記イオン結合がどれ位多く形成されるかによって手袋の引張強度が決定される。
【0006】
一方、手袋の引張強度、耐久性などの物性を向上させるためには、手袋の製造の際、フィルム形成過程の速度を高める必要があるが、これを高める場合、手袋の製造時の作業性が低下するという問題がある。特に、作業性として表現される物性の一つであるシネレシス(syneresis)は、ラテックス内の粒子の凝集が生じて水が抜ける現象であるが、手袋の製造の際、フィルム形成速度を高める場合、かかるシネレシスの速度が速くなる。シネレシスの速度が速すぎると、ディップ成形のためのラテックス組成物のラテックス安定性が低下して凝集物が発生し、これは、すなわち、手袋の不良の原因となる。また、作業性が良くない場合、手袋にラテックスが流れる跡が残るか(Flow mark)、凝集物が付いて、手袋の外観が悪くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景となる技術で言及した問題を解決するために、ディップ成形によって製造されたディップ成形品の引張強度を向上させ、300%モジュラスを減少させて着用感を改善し、且つ作業性を同時に改善することである。
【0008】
すなわち、本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために導き出されたものであり、ディップ成形用のラテックス組成物を用いて、手袋などのディップ成形品の製造の際、作業性を向上させるとともに、300%モジュラスが低くて手袋の着用性に優れ、引張強度が高くて薄い厚さを有する手袋であっても破れにくいディップ成形品を製造するためのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物、これを含むディップ成形用のラテックス組成物およびこれにより成形されたディップ成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物であって、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位、およびスルホン酸塩またはスルホン酸エステルを含むエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体組成物と、架橋剤組成物とを含むディップ成形用のラテックス組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記ディップ成形用のラテックス組成物由来層を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物は、酸化亜鉛との結合力を向上させ、前記ディップ成形用のラテックス組成物を用いて、手袋などのディップ成形品を製造する場合、製造されたディップ成形品の引張強度を向上させ、300%モジュラスを減少させて着用感を改善し、且つ、作業性を改善するという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明および請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0014】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する
本発明において、「由来の繰り返し単位」という用語は、ある物質から起因した成分、構造またはその物質自体を指すものであってもよく、具体的な例として、「由来の繰り返し単位」という用語は、重合体の重合の際、投入される単量体が重合反応に参加して重合体内でなす繰り返し単位を意味し得る。
【0015】
本発明において、「ラテックス」という用語は、重合によって重合された重合体または共重合体が、水に分散された形態で存在するものを意味し得、具体的な例として、乳化重合によって重合されたゴム状の重合体またはゴム状の共重合体の微粒子がコロイド状態で水に分散された形態で存在するものを意味し得る。
【0016】
本発明において、「由来層」という用語は、重合体または共重合体から形成された層を指すものであってもよく、具体的な例として、ディップ成形品の製造の際、重合体または共重合体がディップ成形型上で付着、固定、および/または重合されて、重合体または共重合体から形成された層を意味し得る。
【0017】
本発明において、「架橋剤由来の架橋部」という用語は、化合物から起因した成分、構造またはその物質自体を指すものであってもよく、架橋剤組成物が作用および反応して形成された重合体内、または重合体間の架橋(cross linking)の役割を果たす架橋部(cross linking part)を意味し得る。
【0018】
本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含んでいてもよい。
【0019】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位、およびスルホン酸塩またはスルホン酸エステルを含むエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によると、前記カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および前記エチレン性不飽和酸スルホン酸単量体由来の繰り返し単位は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を形成する単量体または各単量体から由来した繰り返し単位とともに、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を形成してもよく、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体内にカルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和酸スルホン酸単量体由来の繰り返し単位をすべて含むことで、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から製造された成形品の引張強度などの引張特性を向上させ、300%モジュラスを減少させて着用感を改善し、且つ作業性が改善するという効果がある。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位を形成するカルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体は、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、カルボキシエチル(メタ)アクリレートであってもよい。
【0022】
前記カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含有量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、0.1重量%~10重量%、1重量%~8重量%、または2重量%~6重量%であってもよく、この範囲内で、作業性が改善するという効果がある。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記スルホン酸塩またはスルホン酸エステルを含むエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位を形成する前記エチレン性不飽和スルホン酸単量体は、ナトリウムビニルスルホネート、ナトリウム(メタ)アリルスルホネート、2‐メチル‐2‐プロペン‐1‐スルホン酸ナトリウム塩、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩、3‐スルホプロピル(メタ)アクリレート、ナトリウムα‐メチルスチレンスルホネート、ナトリウムエチルスチレンスルホネートおよびナトリウム1‐アリルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、ナトリウム1‐アリルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネートであってもよい。
【0024】
前記エチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位の含有量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、0.1重量%~10重量%、1重量%~7重量%、または2重量%~5重量%であってもよく、この範囲内で、作業性が改善するという効果がある。
【0025】
本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体は、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位を含むことで、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の粒子の表面にカルボン酸が存在するようにする役割を果たし、且つ重合安定性を付与して、酸化亜鉛との結合を高めることができる。また、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から製造された成形品の引張強度などの引張特性を向上させ、300%モジュラスを減少させて着用感を改善し、且つ作業性が改善するという効果がある。
【0026】
一方、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位またはエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位を形成するための各単量体を単独で使用する場合、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体に含まれる単量体との反応が容易でなく、前記カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体またはエチレン性不飽和スルホン酸単量体が、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の粒子に結合することができず、重合安定性が低下し得る。
【0027】
本発明の一実施形態によると、本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体に含まれるエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位およびカルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位は、1:1~5、1:1~4.5、または1:1~3の重量比で含まれ得、この範囲内で、前記エチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位およびカルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位を形成するための単量体が、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の粒子に結合してカルボン酸の分布を調節し、重合安定性を向上させるという効果がある。また、前記エチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位およびカルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位を形成するための単量体は、親水性単量体であり、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の粒子が水に膨潤する性質を増加させ、作業性が改善するという効果がある。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位とともに、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を含むことができる。すなわち、本発明の一実施形態による前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位を含むことができる。具体的な例として、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位40重量%~80重量%、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位10重量%~50重量%、エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%およびエチレン性不飽和スルホン酸単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%を含むことができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を形成する共役ジエン系単量体は、1,3‐ブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2‐エチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、1,3‐ブタジエンまたはイソプレンであってもよく、より具体的な例として、1,3‐ブタジエンであってもよい。
【0030】
前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位の含有量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、40重量%~80重量%、45重量%~80重量%、または45重量%~70重量%であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から成形されたディップ成形品が、柔軟で、着用感に優れるとともに、耐油性および引張強度に優れるという効果がある。
【0031】
また、本発明の一実施形態によると、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位を形成するエチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α‐クロロニトリルおよびα‐シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルであってもよく、より具体的な例として、アクリロニトリルであってもよい。
【0032】
前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位の含有量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、10重量%~50重量%、15重量%~50重量%、または15重量%~45重量%であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から成形されたディップ成形品が、柔軟で、着用感に優れるとともに、耐油性および引張強度に優れるという効果がある。
【0033】
また、本発明の一実施形態によると、前記エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を形成するエチレン性不飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基といった酸性基を含むエチレン性不飽和単量体であってもよく、具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸および無水シトラコン酸などのポリカルボン酸無水物;スチレンスルホン酸といったエチレン性不飽和スルホン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸モノ‐2‐ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和ポリカルボン酸部分エステル(partial ester)単量体からなる群から選択される1種以上であってもよく、より具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群から選択される1種以上であってもよく、さらに具体的な例として、メタクリル酸であってもよい。
【0034】
前記エチレン性不飽和酸単量体は、重合の際、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩などの塩の形態で使用され得る。また、前記エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位の含有量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量に対して、0.1重量%~10重量%、0.5重量%~9重量%、または2重量%~8重量%であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から成形されたディップ成形品が、柔軟で、着用感に優れるとともに、引張強度に優れるという効果がある。
【0035】
また、本発明は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を製造するためのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造方法は、単量体混合物の全含有量に対して、共役ジエン系単量体40重量%~80重量%、エチレン性不飽和ニトリル系単量体10重量%~50重量%、エチレン性不飽和酸単量体0.1重量%~10重量%、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体0.1重量%~10重量%およびエチレン性不飽和スルホン酸単量体0.1重量%~10重量%を含む単量体混合物を重合するステップを含んで、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を製造してもよい。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記重合は、乳化重合によって実施され得る。前記重合は、前記単量体混合物の重合によって実施され得、前記単量体混合物に含まれる各単量体は、上記の単量体の種類および含有量で投入され得、一括投入、または連続投入することができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合は、乳化剤、重合開始剤および分子量調節剤などの存在下で実施され得る。
【0039】
前記重合が乳化剤を含んで実施される場合、前記乳化剤は、一例として、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、α‐オレフィンスルホン酸塩およびアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選択される1種以上の陰イオン界面活性剤であってもよい。また、前記乳化剤は、単量体混合物の全含有量100重量部に対して、0.3重量部~10重量部、0.8重量部~8重量部、または1.5重量部~6重量部で投入され得、この範囲内で、重合安定性に優れ、泡発生量が少なく、成形品の製造が容易であるという効果がある。
【0040】
また、前記重合が、重合開始剤を含んで実施される場合、前記重合開始剤は、一例として、ラジカル開始剤であってもよく、具体的な例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウムおよび過酸化水素などの無機過酸化物;t‐ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p‐メンタンヒドロパーオキシド、ジ‐t‐ブチルパーオキシド、t‐ブチルクミルパーオキシド、アセチルパーオキシド、イソブチルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、3,5,5‐トリメチルヘキサノールパーオキシドおよびt‐ブチルパーオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス‐2,4‐ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルおよびアゾビスイソ酪酸(ブタン酸)メチルなどの窒素化合物からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、無機過酸化物であってもよく、より具体的な例として、過硫酸塩であってもよい。また、前記重合開始剤は、単量体混合物の全含有量100重量部に対して、0.01重量部~2重量部、または0.02重量部~1.5重量部で投入され得、この範囲内で、重合速度を適正水準に維持できるという効果がある。
【0041】
また、前記重合が分子量調節剤を含んで実施される場合、前記分子量調節剤は、一例として、α‐メチルスチレンダイマー;t‐ドデシルメルカプタン、n‐ドデシルメルカプタンおよびオクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレンおよび臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィドおよびジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、t‐ドデシルメルカプタンであってもよい。また、前記分子量調節剤は、単量体混合物の全含有量100重量部に対して、0.1重量部~2.0重量部、0.2重量部~1.5重量部、または0.3重量部~1.0重量部で投入され得、この範囲内で、重合安定性に優れ、重合後、成形品の製造の際、成形品の物性に優れるという効果がある。
【0042】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合は、活性化剤を含んで実施され得、前記活性化剤は、一例として、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。また、前記活性化剤は、単量体混合物の全含有量100重量部に対して、0.001重量部~5重量部で投入され得る。
【0043】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合は、媒質として、水、具体的な例として、脱イオン水で実施され得、重合容易性を確保するために、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、粒径調節剤、老化防止剤および酸素捕捉剤などの添加剤をさらに含んで実施され得る。本発明の一実施形態によると、前記乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤、添加剤などは、前記単量体混合物のように、重合反応器に一括投入、または分割投入されてもよく、各投入時に連続して投入されてもよい。
【0044】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合は、10℃~90℃、20℃~80℃、または25℃~75℃の重合温度で実施され得、この範囲内で、ラテックス安定性に優れるという効果がある。
【0045】
また、本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法は、重合反応を終了し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を取得するステップを含むことができる。前記重合反応の終了は、重合転化率90%以上、または95%以上の時点で実施され得る。また、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法は、前記重合反応の終了後、脱臭工程による未反応の単量体の除去ステップをさらに含んでもよい。
【0046】
また、本発明によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用のラテックス組成物が提供される。前記ディップ成形用のラテックス組成物は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体および架橋剤組成物を含むことができる。本発明の一実施形態によると、前記架橋剤組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体に対して、架橋反応により架橋剤由来の架橋部を形成するためのものであってもよい。
【0047】
本発明の一実施形態によると、前記架橋剤組成物は、加硫剤および加硫促進剤を含むことができ、より具体的な例として、加硫剤、加硫促進剤および酸化亜鉛を含むことができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記加硫剤は、前記ディップ成形用のラテックス組成物を加硫させるためのものであり、硫黄であってもよく、具体的な例として、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理された硫黄および不溶性硫黄などの硫黄であってもよい。前記加硫剤の含有量は、ディップ成形用のラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量100重量部(固形分基準)を基準として、0.1重量部~10重量部、または1重量部~5重量部であってもよく、この範囲内で、加硫による架橋能力に優れるという効果がある。
【0049】
また、本発明の一実施形態によると、前記加硫促進剤は、2‐メルカプトベンゾチアゾール(MBT、2‐mercaptobenzothiazole)、2,2‐ジチオビスベンゾチアゾール‐2‐スルフェンアミド(MBTS、2,2‐dithiobisbenzothiazole‐2‐sulfenamide)、N‐シクロヘキシルベンゾチアゾール‐2‐スルフェンアミド(CBS、N‐cyclohexylbenzothiasole‐2‐sulfenamide)、2‐モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS、2‐morpholinothiobenzothiazole)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM、tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD、tetramethylthiuram disulfide)、ジエチルジチオカルバメート亜鉛(ZDEC、zinc diethyldithiocarbamate)、ジ‐n‐ブチルジチオカルバメート亜鉛(ZDBC、zinc di‐n‐butyldithiocarbamate)、ジフェニルグアニジン(DPG、diphenylguanidine)およびジ‐o‐トリルグアニジン(di‐o‐tolylguanidine)からなる群から選択される1種以上であってもよい。前記加硫促進剤の含有量は、ディップ成形用のラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量100重量部(固形分基準)を基準として、0.1重量部~10重量部、または0.5重量部~5重量部であってもよく、この範囲内で、加硫による架橋能力に優れるという効果がある。
【0050】
また、本発明の一実施形態によると、前記酸化亜鉛は、前記ディップ成形用のラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体のカルボキシ基などとイオン結合を行って、カルボン酸変性ニトリル系共重合体内、またはカルボン酸変性ニトリル系共重合体間のイオン結合による架橋部を形成するための架橋剤であってもよい。前記酸化亜鉛の含有量は、ディップ成形用のラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含有量100重量部(固形分基準)を基準として、0.1重量部~5重量部、または0.5重量部~4重量部であってもよく、この範囲内で、架橋能力に優れ、ラテックス安定性に優れ、製造されたディップ成形品の引張強度および柔軟性に優れるという効果がある。
【0051】
また、本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用のラテックス組成物は、一例として、固形分含有量(濃度)が5重量%~40重量%、8重量%~35重量%、または10重量%~30重量%であってもよく、この範囲内で、ラテックス運送の効率に優れ、ラテックスの粘度の上昇を防止し、貯蔵安定性に優れるという効果がある。
【0052】
他の例として、前記ディップ成形用のラテックス組成物は、pHが9~12、9~11.5、または9.5~11であってもよく、この範囲内で、ディップ成形品を製造する際、加工性および生産性に優れるという効果がある。前記ディップ成形用のラテックス組成物のpHは、前記のpH調節剤の投入によって調節可能である。前記pH調節剤は、一例として、1重量%~5重量%の濃度の水酸化カリウム水溶液、または1重量%~5重量%の濃度のアンモニア水であってもよい。
【0053】
また、本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用のラテックス組成物は、必要に応じて、チタンジオキシドなどの顔料、シリカなどの充填剤、増粘剤、pH調節剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0054】
本発明によると、前記ディップ成形用のラテックス組成物由来層を含む成形品が提供される。前記成形品は、前記ディップ成形用のラテックス組成物をディップ成形して製造されたディップ成形品であってもよく、ディップ成形によりディップ成形用のラテックス組成物から形成されたディップ成形用のラテックス組成物由来層を含む成形品であってもよい。前記成形品を成形するための成形品の製造方法は、前記ディップ成形用のラテックス組成物を、直接浸漬法、アノード(anode)凝着浸漬法、ティーグ(Teague)凝着浸漬法などによって浸漬させるステップを含むことができ、具体的な例として、アノード凝着浸漬法によって実施され得、この場合、均一な厚さのディップ成形品を取得できるという利点がある。
【0055】
具体的な例として、前記成形品の製造方法は、ディップ成形型に凝固剤を付着するステップ(S100)と、前記凝固剤が付着されたディップ成形型をディップ成形用のラテックス組成物に浸漬して、ディップ成形用のラテックス組成物由来層、すなわち、ディップ成形層を形成するステップ(S200)と、前記ディップ成形層を加熱して、前記ディップ成形用のラテックス組成物を架橋するステップ(S300)とを含むことができる。
【0056】
本発明の一実施形態によると、前記(S100)ステップは、ディップ成形型に凝固剤を形成するために、ディップ成形型を凝固剤溶液に浸漬して、ディップ成形型の表面に凝固剤を付着するステップであり、前記凝固剤溶液は、凝固剤を、水、アルコールまたはこれらの混合物に溶解した溶液であり、凝固剤溶液内の凝固剤の含有量は、凝固剤溶液の全含有量に対して、5重量%~75重量%、10重量%~65重量%、または15重量%~55重量%であってもよい。前記凝固剤は、一例として、バリウムクロライド、カルシウムクロライド、マグネシウムクロライド、亜鉛クロライドおよびアルミニウムクロライドなどの金属ハライド;バリウムナイトレート、カルシウムナイトレートおよび亜鉛ナイトレートなどの硝酸塩;バリウムアセテート、カルシウムアセテートおよび亜鉛アセテートなどの酢酸塩;およびカルシウムサルフェート、マグネシウムサルフェートおよびアルミニウムサルフェートなどの硫酸塩からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、カルシウムクロライドまたはカルシウムナイトレートであってもよい。また、本発明の一実施形態によると、前記(S100)ステップは、ディップ成形型に凝固剤を付着するために、ディップ成形型を凝固剤溶液に1分以上浸漬し、取り出した後、70℃~150℃で乾燥するステップをさらに含んでもよい。
【0057】
本発明の一実施形態によると、前記(S200)ステップは、ディップ成形層を形成するために凝固剤を付着したディップ成形型を、本発明によるディップ成形用のラテックス組成物に浸漬し、取り出して、ディップ成形型にディップ成形層を形成するステップであってもよい。また、本発明の一実施形態によると、前記(S200)ステップは、ディップ成形型にディップ成形層を形成するために、前記浸漬の際、浸漬を1分以上実施することができる。
【0058】
本発明の一実施形態によると、前記(S300)ステップは、ディップ成形品を取得するために、ディップ成形型に形成されたディップ成形層を加熱して液体成分を蒸発させ、前記ディップ成形用のラテックス組成物を架橋させて硬化を行うステップであってもよい。この際、本発明によるディップ成形用のラテックス組成物を用いる場合、ディップ成形用のラテックス組成物内に含まれた架橋剤組成物の加硫および/またはイオン結合による架橋が実施され得る。また、本発明の一実施形態によると、前記加熱は、70℃~150℃で1分~10分間1次加熱した後、100℃~180℃で5分~30分間2次加熱して実施され得る。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記成形品は、手術用手袋、検査用手袋、産業用手袋および家庭用手袋などの手袋、コンドーム、カテータ、または健康管理用品であってもよい。
【0060】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0061】
実施例
[実施例1]
<カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造>
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガスの引込口と、単量体、乳化剤、開始剤を連続して投入できるように投入口が備えられた10Lの高圧反応器を窒素で置換し、アクリロニトリル30重量%、1,3‐ブタジエン62重量%、メタクリル酸4重量%、βカルボキシエチルアクリレート2重量%およびナトリウム1‐アリールオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネート2重量%の単量体混合物100重量部と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、t‐ドデシルメルカプタン0.6重量部およびイオン交換水140重量部を投入し、38℃まで昇温した。昇温が完了した後、重合開始剤である過硫酸カリウム0.3重量部を投入して重合を行い、重合転化率が95%に至ったときに、ナトリウムジメチルジチオカルバメート0.1重量部を投入して重合を停止した。次に、脱臭工程により未反応の単量体を除去し、アンモニア水、酸化防止剤および消泡剤を添加して、固形分濃度45重量%およびpH8.5のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を取得した。
【0062】
<ディップ成形用のラテックス組成物の製造>
前記取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物100重量部(固形分基準)に、硫黄1重量部、ジ‐n‐ブチルジチオカルバメート亜鉛(ZDBC、zinc di‐n‐butyldithiocarbamate)0.7重量部、酸化亜鉛1.5重量部および酸化チタン1重量部と水酸化カリウム溶液および二次蒸留水を加え、固形分濃度16重量%およびpH10のディップ成形用のラテックス組成物を取得した。
【0063】
<ディップ成形品の製造>
13重量%のカルシウムナイトレート、86.5重量%の水、0.5重量%の湿潤剤(Huntsman Corporation、Australia製、製品名:Teric 320)を混合して凝固剤溶液を製造し、この溶液に手形状のセラミックモールドを1分間浸漬し、取り出した後、80℃で3分間乾燥し、凝固剤を手形状のモールドに塗布した。
【0064】
次いで、凝固剤が塗布された手形状のモールドを前記取得したディップ成形用のラテックス組成物に1分間浸漬し、取り出した後、80℃で1分間乾燥し、水に3分間浸漬した。また、モールドを80℃で3分間乾燥した後、125℃で20分間架橋した。次に、架橋したディップ成形層を手形状のモールドから取り出し、手袋形態のディップ成形品を取得した。
【0065】
[実施例2]
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル27重量%、1,3‐ブタジエン60重量%、メタクリル酸3重量%、βカルボキシエチルアクリレート5重量%およびナトリウム1‐アリールオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネート5重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同一の方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0066】
[実施例3]
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル28重量%、1,3‐ブタジエン62重量%、メタクリル酸2重量%、βカルボキシエチルアクリレート6重量%およびナトリウム1‐アリールオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネート2重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同一の方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0067】
[比較例1]
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、βカルボキシエチルアクリレートおよびナトリウム1‐アリールオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネートを使用せず、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル30重量%、1,3‐ブタジエン64重量%、およびメタクリル酸6重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同一の方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0068】
[比較例2]
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、ナトリウム1‐アリールオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネートを使用せず、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル30重量%、1,3‐ブタジエン62重量%、メタクリル酸4重量%およびβカルボキシエチルアクリレート4重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同一の方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0069】
[比較例3]
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、βカルボキシエチルアクリレートを使用せず、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル30重量%、1,3‐ブタジエン62重量%、メタクリル酸6重量%およびナトリウム1‐アリールオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルスルホネート2重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同一の方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0070】
[実験例]
前記実施例1~3および比較例1~3で製造されたそれぞれのディップ成形品の引張強度、伸び率および300%モジュラスの引張特性、シネレシスおよび外観物性を、各カルボン酸変性ニトリル系共重合体の単量体の組成とともに下記表1に示した。
【0071】
*引張特性(引張強度、伸び率および300%モジュラス):各実施例および比較例で取得したディップ成形品を用いて、ASTM D‐412に準じて、ダンベル状の試験片を作製した。この試験片をUTM(Universal Testing Machine)機器を用いて伸長速度500mm/分で引っ張り、破断時の引張強度および伸び率を測定し、伸び率が300%である時の応力(300%モジュラス)を測定した。引張強度および伸び率は、高いほど引張特性が優れることを示し、300%モジュラスは、低いほど着用感が優れることを示す。
【0072】
*シネレシス(分(min)):ディップ成形品の製造時に用いられた凝固剤溶液に手形状のセラミックモールドを1分間浸漬し、取り出した後、80℃で3分間乾燥し、凝固剤を手形状のモールドに塗布した。次に、凝固剤が塗布された手形状のモールドを各実施例および比較例のディップ成形用のラテックス組成物に1分間浸漬し、取り出した後、手形状のモールドから液滴(droplet)が落下するのにかかる時間を測定した。5分以内に液滴が落下しない場合、×と示した。
【0073】
*外観特性:製造したディップ成形品の外観にフローマーク(flow mark)や凝集物が存在するか確認し、異常がない場合、○と示し、異常がある場合、×と示した。この際、フローマークは、手形状のモールドでディップ成形用のラテックス組成物の流れ跡が5cm以上見える場合、異常があるものと判断した。
【0074】
【表1】
【0075】
前記表1に示されているように、本発明によって製造された実施例1~3の場合、引張特性、シネレシスおよび外観物性に優れることを確認することができた。
【0076】
一方、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体およびエチレン性不飽和スルホン酸単量体を含んでいない比較例1、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート単量体のみ含んでいる比較例2およびエチレン性不飽和スルホン酸単量体のみ含んでいる比較例3の場合、実施例と同等水準の引張特性を示すが、シネレシスおよび外観物性が低下することを確認することができた。