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特許7023162予測装置、予測方法、及び予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法、及び予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220214BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A61B6/03 360Z
A61B6/03 360P
A61B6/03 360D
A61B5/055 380
A61B5/055 390
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018071718
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019180545
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 嘉郎
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/048507(WO,A1)
【文献】特表2013-544595(JP,A)
【文献】特開2013-165765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の被写体を撮影した撮影対象の形態を表す形態画像である医用の撮影画像、及び撮影対象の機能を表す機能画像である医用の撮影画像の組合せについて、前記形態画像である医用の撮影画像と、前記形態画像である医用の撮影画像中の解剖学的構造を抽出した抽出結果とを入力とし、前記機能画像である医用の撮影画像を出力とさせる機械学習を行わせて予測モデルを生成させる学習部と、
前記予測モデルに形態画像である医用の撮影画像を入力させ、入力させた医用の撮影画像と異なる機能画像である医用の撮影画像を出力させる制御を行う制御部と、
を備えた予測装置。
【請求項2】
前記形態画像は、血管の領域及び髄液が流れる領域の少なくとも一方の形態を表し、
前記機能画像は、梗塞及び壊死の少なくとも一方の状態を表す、
請求項に記載の予測装置。
【請求項3】
前記予測モデルに入力される医用の撮影画像、及び前記予測モデルから出力される医用の撮影画像の一方は、CT(Computed Tomography)によって撮影された画像であり、他方はMRI(Magnetic Resonance Imaging)によって撮影された画像、PET(Positron Emission computed Tomography)によって撮影された画像、及び拡散強調画像のいずれかである、
請求項1または請求項2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記被写体は、心臓または脳である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の予測装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記予測モデルから出力される医用の撮影画像を表示部に表示させる、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の予測装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記予測モデルから出力される医用の撮影画像から前記被写体に異常が生じている異常領域を抽出し、前記異常領域を抽出した前記医用の撮影画像に対応する前記予測モデルに入力させた医用の撮影画像と、前記異常領域を表す情報とを表示部に表示させる、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の予測装置。
【請求項7】
前記学習部は、前記機械学習において、前記形態画像である医用の撮影画像と前記機能画像である医用の撮影画像とにおける前記被写体の位置を揃えておく、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の予測装置。
【請求項8】
コンピュータに、
同一の被写体を撮影した撮影対象の形態を表す形態画像である医用の撮影画像、及び撮影対象の機能を表す機能画像である医用の撮影画像の組合せについて、前記形態画像である医用の撮影画像と、前記形態画像である医用の撮影画像中の解剖学的構造を抽出した抽出結果とを入力とし、前記機能画像である医用の撮影画像を出力とさせる機械学習を行わせて予測モデルを生成させ、
前記予測モデルに形態画像である医用の撮影画像を入力させ、入力させた医用の撮影画像と異なる機能画像である医用の撮影画像を出力させる制御を行う、
処理を実行させるための予測方法。
【請求項9】
コンピュータに、
同一の被写体を撮影した撮影対象の形態を表す形態画像である医用の撮影画像、及び撮影対象の機能を表す機能画像である医用の撮影画像の組合せについて、前記形態画像である医用の撮影画像と、前記形態画像である医用の撮影画像中の解剖学的構造を抽出した抽出結果とを入力とし、前記機能画像である医用の撮影画像を出力とさせる機械学習を行わせて予測モデルを生成させ、
前記予測モデルに形態画像である医用の撮影画像を入力させ、入力させた医用の撮影画像と異なる機能画像である医用の撮影画像を出力させる制御を行う、
処理を実行させるための予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予測装置、予測方法、及び予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医師による診断等において、同一の被写体の同一の部位を撮影した種類が異なる複数の撮影画像、特に医用の撮影画像を参照することが行われている。例えば、CTComputed Tomography)による撮影画像と、MRI(Magnetic Resonance Imaging)による撮影画像とを用いて診断を行う場合がある。このような診断を支援するための技術として、例えば、特許文献1には、第1の医用の撮影画像と類似し、かつ画像フォーマットが異なる第2の医用の撮影画像を検索することで診断の支援を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-200590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、医師等が診断等を行う場合に、一種類の撮影画像しかない場合がある。例えば、CTによる撮影画像しか有していない状態で診断を行う場合がある。このような場合、特許文献1に記載の技術は適用することができない。
【0005】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、医師等が診断を行う場合に一種類の撮影画像しかない場合でも、診断の支援を行うことができる予測装置、予測方法、及び予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様の予測装置は、同一の被写体を撮影した撮影対象の形態を表す形態画像である医用の撮影画像、及び撮影対象の機能を表す機能画像である医用の撮影画像の組合せについて、形態画像である医用の撮影画像と、形態画像である医用の撮影画像中の解剖学的構造を抽出した抽出結果とを入力とし、機能画像である医用の撮影画像を出力とさせる機械学習を行わせて予測モデルを生成させる学習部と、予測モデルに形態画像である医用の撮影画像を入力させ、入力させた医用の撮影画像と異なる機能画像である医用の撮影画像を出力させる制御を行う制御部と、を備える。
【0009】
本開示の第の態様の予測装置は、第3の態様の予測装置において、形態画像は、血管の領域及び髄液が流れる領域の少なくとも一方の形態を表し、機能画像は、梗塞及び壊死の少なくとも一方の状態を表す。
【0010】
本開示の第の態様の予測装置は、第1の態様または第2の態様の予測装置において、予測モデルに入力される医用の撮影画像、及び予測モデルから出力される医用の撮影画像の一方は、CT(Computed Tomography)によって撮影された画像であり、他方はMRI(Magnetic Resonance Imaging)によって撮影された画像、PET(Positron Emission computed Tomography)によって撮影された画像、及び拡散強調画像のいずれかである。
【0011】
本開示の第の態様の予測装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか1態様の予測装置において、被写体は、心臓または脳である。
【0012】
本開示の第の態様の予測装置は、第1の態様から第の態様のいずれか1態様の予測装置において、制御部は、予測モデルから出力される医用の撮影画像を表示部に表示させる。
【0013】
本開示の第の態様の予測装置は、第1の態様から第の態様のいずれか1態様の予測装置において、制御部は、予測モデルから出力される医用の撮影画像から被写体に異常が生じている異常領域を抽出し、異常領域を抽出した医用の撮影画像に対応する予測モデルに入力させた医用の撮影画像と、異常領域を表す情報とを表示部に表示させる。
【0015】
本開示の第の態様の予測装置は、第1の態様から第の態様のいずれか1態様の予測装置において、学習部は、機械学習において、形態画像である医用の撮影画像と機能画像である医用の撮影画像とにおける被写体の位置を揃えておく。
【0016】
一方、上記目的を達成するために、本開示の第の態様の予測方法は、コンピュータに、同一の被写体を撮影した撮影対象の形態を表す形態画像である医用の撮影画像、及び撮影対象の機能を表す機能画像である医用の撮影画像の組合せについて、形態画像である医用の撮影画像と、形態画像である医用の撮影画像中の解剖学的構造を抽出した抽出結果とを入力とし、機能画像である医用の撮影画像を出力とさせる機械学習を行わせて予測モデルを生成させ、予測モデルに形態画像である医用の撮影画像を入力させ、入力させた医用の撮影画像と異なる機能画像である医用の撮影画像を出力させる制御を行う、処理を実行させるための予測方法である。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本開示の第の態様の予測プログラムは、コンピュータに、同一の被写体を撮影した撮影対象の形態を表す形態画像である医用の撮影画像、及び撮影対象の機能を表す機能画像である医用の撮影画像の組合せについて、形態画像である医用の撮影画像と、形態画像である医用の撮影画像中の解剖学的構造を抽出した抽出結果とを入力とし、機能画像である医用の撮影画像を出力とさせる機械学習を行わせて予測モデルを生成させ、予測モデルに形態画像である医用の撮影画像を入力させ、入力させた医用の撮影画像と異なる機能画像である医用の撮影画像を出力させる制御を行う、処理を実行させるための予測プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、医師等が診断を行う場合に一種類の撮影画像しかない場合でも、診断の支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の予測システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の予測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の予測装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1実施形態における予測モデルの生成を説明するための概念図である。
図5】第1実施形態の予測モデル生成処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態における予測第2画像の生成を説明するための概念図である。
図7】第1実施形態の予測画像生成処理の一例を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態の予測モデルにより生成された予測第2画像等の表示状態を説明するための説明図である。
図9】第2実施形態における予測モデルの生成を説明するための概念図である。
図10】第2実施形態の予測モデル生成処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
まず、図1を参照して、本実施形態の予測システム10の構成を説明する。図1に示すように、本実施形態の予測システム10は、n(nは1以上の整数)台の医用撮影装置12(医用撮影装置212~12、総称する場合は「医用撮影装置12」という)、PACS(Picture Archiving and Communication System)14、及び予測装置16を含む。医用撮影装置12及びPACS14は、各々ネットワークに通信が可能に接続されている。また、PACS14及び予測装置16は、各々ネットワークに通信が可能に接続されている。
【0022】
医用撮影装置12は、患者等の被写体となる人物の撮影対象となる、脳や心臓等の臓器類を撮影し、撮影した医用撮影画像を表す画像データを出力する。医用撮影装置12は、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission computed Tomography)等による医用撮影画像、及び拡散強調画像(DWI:Diffusion Weighted Image)等の種類が異なる医用撮影画像のうちの少なくとも一種類の医用撮影画像が得られる装置である。なお、本実施形態において医用撮影画像の「種類が異なる」とは、上述のように、CT、MRI、PETやDWIが異なることの他、撮影に用いた装置の種類が異なること、撮影方法が異なること、撮影における撮影者の手技の違い、及び動画か静止画かの違い等を含む。
【0023】
PACS14は、医用撮影装置12により撮影された医用撮影画像を表す画像データを記憶する。
【0024】
予測装置16は、PACS14に記憶された画像データを用いて詳細を後述する予測モデル44(図3参照)を生成する。また、予測装置16は、入力された医用撮影画像の画像データから予測した、入力された医用撮影画像と種類が異なる医用撮影画像の画像データを予測モデル44により生成する。予測装置16の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の情報処理装置が挙げられ、具体例としては、いわゆる、ビューワが挙げられる。
【0025】
次に、図2を参照して、本実施形態の予測装置16のハードウェア構成を説明する。図2に示すように、予測装置16は、CPU(Central Processing Unit)20、一時記憶領域としてのメモリ21、及び不揮発性の記憶部22を含む。また、予測装置16は、液晶ディスプレイ等の表示部23、キーボードとマウス等の入力部24、及びネットワークNに接続されるネットワークI/F(InterFace)25を含む。CPU20、メモリ21、記憶部22、表示部23、入力部24、及びネットワークI/F25は、バス26に接続される。
【0026】
記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及びフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部22には、予測プログラム30が記憶される。本実施形態の予測プログラム30は、予測モデル生成プログラム32及び予測画像生成プログラム34を含む。CPU20は、記憶部22から予測モデル生成プログラム32及び予測画像生成プログラム34を各々読み出してからメモリ21に展開し、展開した予測モデル生成プログラム32及び予測画像生成プログラム34を各々実行する。
【0027】
次に、図3を参照して、本実施形態の予測装置16の機能的な構成について説明する。図3に示すように、予測装置16は、取得部40、学習部42、及び制御部46を含む。また、本実施形態の予測装置16は、予測モデル44を含む。CPU20が予測プログラム30を実行することで、取得部40、学習部42、予測モデル44、及び制御部46として機能する。
【0028】
取得部40は、PACS14から、PACS14に記憶された画像データを、ネットワークを介して取得する。
【0029】
学習部42は、取得部40により取得された画像データを用いて、機械学習により予測モデル44を生成する。具体的な一例として、同一の被写体の同一の臓器(例えば、脳)を撮影したCTの医用撮影画像データから予測されるMRIの医用撮影画像データを出力する予測モデル44を生成する場合について説明する。なお、以下では説明の便宜上、予測モデル44に入力される医用撮影画像の画像データを「入力撮影画像」といい、予測モデル44から出力される医用撮影画像の画像データを「出力撮影画像」という。また、以下では、CTの医用画像を「CT画像」といい、MRIの医用撮影画像を「MRI画像」という
【0030】
一例として本実施形態では、学習部42による予測モデル44の生成処理には、GAN(Generative Adversarial Network)を用いた、AI(Artificial Intelligence)技術を適用する。まず、学習部42は、同一の被写体の同一の臓器(例えば、脳)を撮影した、CT画像の画像データと、MRI画像の画像データとを準備する。学習部42は、GNNのGenerator(学習器)の入力撮影画像をCT画像の画像データとし、Generatorが生成したMRIの画像データを出力撮影画像として、出力されるMRIの画像データと、準備しておいた真のMRI画像の画像データとの誤差が最小となるように、予測モデル44を学習させる。さらに学習部42は、Discriminator(識別器)に出力撮影画像の真偽を判断させる。学習では、Generatorが生成したMRIの画像データと、真のMRI画像の画像データとの誤差を最小化すると共に、Discriminatorによる真偽の判定率を最大化させる。
【0031】
制御部46は、取得部40により取得された画像データを入力撮影画像として、学習部42により生成された予測モデル44に入力させ、予測モデル44に、入力撮影画像から予測される、入力撮影画像と種類が異なる出力撮影画像を生成させる。また、制御部46は、予測モデル44が生成して出力した出力撮影画像を表示部23に表示させる。
【0032】
次に、本実施形態の予測装置16の作用を説明する。まず、図4及び図5を参照して予測装置16による予測モデル44の生成について説明する。図4は、予測装置16による予測モデル44の生成を説明するための概念図である。CPU20が予測モデル生成プログラム32を実行することによって、図5に示す予測モデル生成処理が実行される。また、図5に示す予測モデル生成処理は、例えば、予測システム10の管理者等による学習の実行の指示が入力部24により入力されたタイミングや、予め定められた定期的なタイミングで実行される。
【0033】
なお、以下では、予測モデル44が、第1画像50から予測される、第2画像52を生成して出力する形態について説明する。なお、第1画像50及び第2画像52は、上述したように同一の被写体の同一の臓器類における種類が異なる医用撮影画像である。
【0034】
図5のステップS100で取得部40は、PACS14から、予測モデル44の学習に用いる一組の第1画像50及び第2画像52を取得する。
【0035】
次のステップS102で学習部42は、上述したように取得部40が取得した第1画像50及び第2画像52を用い、第1画像50を入力撮影画像とし、第1画像50から予測される予測第2画像54を出力撮影画像とする機械学習の実行を指示して、予測モデル44を生成させた後、本予測モデル生成処理を終了する。
【0036】
例えば、心筋梗塞は、冠動脈にプラークが堆積して血流が悪くなった場合に、血流が無くなった領域の心筋が壊死して起きる。心臓のCT画像、特に造影CT画像は、プラークによって血流が阻害された狭窄部位の観察に好ましい。一方、MRI画像、特に遅延造影MRI画像は、壊死した心筋領域の観察に好ましい。また、例えば、脳卒中や脳梗塞は、血管内に血栓が生じることにより血流が無くなり、血栓以降の領域が梗塞領域となる。脳のCT画像は、血栓の観察に好ましい。一方、MRI画像は、梗塞領域の観察に好ましい。いずれの場合においても、CT画像は、血液(血管)や髄液の経路等の撮影対象の形態を表す形態画像であり、MRI画像は、梗塞や壊死の状態等の撮影対象の機能を表す機能画像であるため、両者を併用することにより、医師等による診断が行い易くなる。
【0037】
このような場合に対応するためには、第1画像50をCT画像とし、第2画像52をMRI画像として予測モデル44を生成する。このようにCT画像である第1画像50と、MRI画像である第2画像52とを用いて学習させることにより、CT画像には写っていない病変部分を周辺の領域を含めて学習するため、本来CT画像には写っていない部分までもが写ったMRI画像と同等の予測第2画像54を生成することができるようになる。
【0038】
なお、本実施形態の予測装置16は、本予測モデル生成処理を複数回繰り返すことにより、第1画像50及び第2画像52の複数の組合せを用いて機械学習を行い、予測モデル44を生成する。予測モデル44の生成には、例えば、第1画像50及び第2画像52の組合せ毎に、被写体が異なっていたり、同一の被写体であっても撮影時期が異なったりするものを用いる。また、第1画像50及び第2画像52の複数の組合せには、撮影対象となる臓器類に病変が生じている組合せが多く含まれることが好ましく、病変が生じていない臓器類を撮影対象とした組合せは含まれていなくてもよい。
【0039】
予測装置16は、医師等が診断を行う場合に、上記のように図5に示した予測モデル生成処理により生成された予測モデル44により、予測第2画像54を生成することで診断の支援を行う。次に、図6及び図7を参照して、予測装置16による予測画像生成処理について説明する。
【0040】
図6は、診断の支援のために、予測装置16による予測モデル44を用いた予測第2画像54の生成を説明するための概念図である。CPU20が予測画像生成プログラム34を実行することによって、図7に示す予測画像生成処理が実行される。また、図7に示す予測画像生成処理は、例えば、医師等による診断の支援を要求する指示が入力部24により入力されたタイミングで実行される。なお、診断の支援を要求する場合、医師等は、入力部24により、第1画像50を特定するための指定を行う。具体的には、例えば、患者の識別番号や、医用撮影画像を識別するための識別番号等を入力部24により指定する。
【0041】
図5のステップS150で取得部40は、診断の支援を要求した医師等の指定に応じた第1画像50を、PACS14から取得する。
【0042】
次のステップS152で制御部46は、取得部40が取得した第1画像50を予測モデル44に入力させる。図6に示すように、予測モデル44は、入力された第1画像50から予測される予測第2画像54を生成して制御部46に出力する。
【0043】
次のステップS154で制御部46は、予測第2画像54から異常領域を抽出する。例えば、撮影対象の臓器が脳である場合等、上述したように、予測されたMRI画像である予測第2画像54から、梗塞領域を異常領域として抽出する。制御部46が予測第2画像54から異常領域を抽出する方法は特に限定されず、例えば、例えば、AI技術を適用することができる。具体的には、例えば、第2画像52または予測第2画像54を入力とし、抽出される異常領域を出力としたディープニューラルネットワークを作成する。次に、第2画像52または予測第2画像54と、第2画像52または予測第2画像54における異常領域とを含む教師データを用いて、作成したディープニューラルネットワークを学習させることによって得られた学習済みモデルを記憶部22に予め記憶しておく。制御部46は、予測モデル44により生成された予測第2画像54を学習済みモデルに入力し、学習済みモデルから出力された異常領域を取得することによって、予測第2画像54から異常領域を抽出する。なお、制御部46は、既存の画像解析技術を適用して予測第2画像54から異常領域を抽出してもよい。
【0044】
次のステップS156で制御部46は、第1画像50、予測第2画像54を表示部23に表示させる。また、上記ステップS154で抽出した異常領域を、第1画像50上に重ねた状態で表示部23に表示させた後、本予測画像生成処理を終了する。
【0045】
図8には、制御部46が、第1画像50、予測第2画像54、及び異常領域を表す情報55を表示部23に表示させた状態の一例を示す。図8に示した一例では、第1画像50が脳のCT画像であり、予測第2画像54は、第1画像50から予測されるMRIの画像である。また、異常領域を表す情報55は、梗塞領域を示す情報である。このように表示部23に表示されることにより、医師等は、予測第2画像54及び異常領域を表す情報55を参照して、患者の脳梗塞の発生の有無や、梗塞領域について、第1画像50から予測することができる。
【0046】
[第2実施形態]
本実施形態では、予測装置16における、予測モデル44を生成する予測モデル生成処理が第1実施形態の予測モデル生成処理(図4及び図5参照)と異なるため、本実施形態の予測装置16における、予測モデル生成処理について説明する。
【0047】
図9は、本実施形態の予測装置16による予測モデル44の生成を説明するための概念図である。第1実施形態と同様に、CPU20が予測モデル生成プログラム32を実行することによって、図10に示す予測モデル生成処理が実行される。
【0048】
なお、以下では、予測モデル44が、第1画像50から予測される、第2画像52を生成して出力する形態について説明する。なお、第1画像50及び第2画像52は、上述したように同一の被写体の同一の臓器類における種類が異なる医用撮影画像である。
【0049】
図10に示した本実施形態の予測モデルせいせいしょりは、ステップS100とS102との間に、ステップS101A及びステップS101Bの処理を行う点で、第1実施形態の予測モデル生成処理(図4参照)と異なっており、また、ステップS102の処理に替わりステップS103の処理を実行する点で異なっているため、異なる処理について説明する。
【0050】
ステップS101Aで学習部42は、取得部40が取得した第1画像50及び第2画像52の位置、具体的には、解剖学的位置を揃えておく。
【0051】
次のステップS101Bで学習部42は、第1画像50から解剖学的構造を抽出し、セグメンテーションを行う。例えば、上述のように、撮影対象の部位が心臓や脳の場合、解剖学的構造として血管の領域を抽出し、抽出した領域をセグメンテーションする。なお、学習部42が、第1画像50から解剖学的構造を抽出する方法、及び、抽出結果をセグメンテーションする方法は特に限定されず、公知の技術を適用することができる。本実施形態のセグメンテーション結果51が、本開示の抽出結果の一例である。
【0052】
次のステップS103で学習部42は、図9に示したように、第1画像50、第2画像52、及び上記ステップS101Bにより得られたセグメンテーション結果51を用い、第1画像50を入力撮影画像とし、第1画像50から予測される予測第2画像54を出力撮影画像とする機械学習の実行を指示して、予測モデル44を生成させた後、本予測モデル生成処理を終了する。
【0053】
このように、本実施形態の学習部42は、第1画像50から解剖学的構造を抽出し、抽出結果に応じたセグメンテーション結果51を、予測モデル44の学習の手がかりとなる情報として与えて学習を行わせるため、学習の精度を向上させることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の予測装置16は、同一の被写体を撮影した種類が異なる撮影画像の組合せについて、一方の撮影画像を入力とし、他方の撮影画像を出力とさせる機械学習を行わせて予測モデル44を生成させる学習部42と、予測モデル44に入力撮影画像として第1画像50を入力させ、入力させた撮影画像と種類が異なる撮影画像である予測第2画像54を出力させる制御を行う制御部46と、を備える。
【0055】
例えば、MRI画像を撮影する装置等は、CT画像を撮影する装置に比べて高価な傾向がある。また、両方の装置を備えるためには、病院等の施設の規模が大きくなる。そのため、医師等が診断を行う場合に一種類の撮影画像しかない場合がある。このような場合でも、本実施形態の予測装置16によれば、医師等が診断を行う場合に一種類の撮影画像しかない場合でも、診断の支援を行うことができる。
【0056】
なお、上記各実施形態では、具体的な位置例として第1画像50がCT画像であり、第2画像52及び予測第2画像54がMRI画像である形態について説明したが、各々上記各実施形態に限定されない。第1画像50及び第2画像52は、CT画像、MRI画像の他、例えば、PETによって撮影されたPET画像や、拡散強調画像のいずれかであってもよいが、第1画像50は、撮影対処の形態を表す形態画像であることが好ましく、第2画像52は、撮影対象の機能を表す機能画像であることが好ましい。また、撮影対象の部位は、脳や心臓に限定されないこともいうまでもない。
【0057】
また、上記各実施形態では、予測モデル44の機械学習にGNNを適用する形態について説明したが学習方法は特に限定されず、ディープラーニングを用いる方法であればよい。例えば、CNN(Convolution Neural Network)を適用した機械学習を行う形態としてもよい。
【0058】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を実行することにより実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上記各種処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0059】
また、上記実施形態では、予測モデル生成プログラム32及び予測画像生成プログラム34が記憶部22に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。予測プログラム30は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、予測モデル生成プログラム32及び予測画像生成プログラム34は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 予測システム
12、12~12 医用撮影装置
14 PACS
16 予測装置
20 CPU
21 メモリ
22 記憶部
23 表示部
24 入力部
25 ネットワークI/F
26 バス
30 予測プログラム
32 予測モデル生成プログラム
34 予測画像生成プログラム
40 取得部
42 学習部
44 予測モデル
46 表示部
50 第1画像
51 セグメンテーション結果
52 第2画像
54 予測第2画像
55 異常領域を表す情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10