(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】放射線検出装置及び放射線検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220214BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A61B6/00 300W
A61B6/00 300S
G01T7/00 A
(21)【出願番号】P 2018184313
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2020-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】立石 雅輝
(72)【発明者】
【氏名】野口 慎介
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169592(JP,A)
【文献】特開2012-042646(JP,A)
【文献】特開2006-339467(JP,A)
【文献】特開2018-080916(JP,A)
【文献】特開2002-014170(JP,A)
【文献】特開2018-000242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G01T 1/00-1/16,1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面部材と、
前記正面部材が組付けられた背面部材と、
前記正面部材と前記背面部材との間に配置され、前記正面部材側から入射した放射線を検出する放射線検出パネルと、
前記正面部材及び前記背面部材の双方の外周面を被覆するシート材と、
前記正面部材又は前記背面部材との間で前記シート材を挟み込むパッキンと、
前記パッキンを押圧した状態で保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記正面部材又は前記背面部材の何れか一方に設けられた溝とされ、
一方の前記シート材の端部は前記溝へ挿入され、
他方の前記シート材の端部は前記正面部材と前記背面部材との間で挟み込まれている、放射線検出装置。
【請求項2】
一方の前記シート材の端部は前記溝における溝壁に沿って配置されている、
請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
正面部材と、
前記正面部材が組付けられた背面部材と、
前記正面部材と前記背面部材との間に配置され、前記正面部材側から入射した放射線を検出する放射線検出パネルと、
前記正面部材及び前記背面部材の双方の外周面を被覆するシート材と、
前記正面部材又は前記背面部材との間で前記シート材を挟み込むパッキンと、
前記パッキンを押圧した状態で保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記正面部材又は前記背面部材の双方に設けられた溝とされ、
一方の前記シート材の端部は一方の前記溝へ挿入され、
他方の前記シート材は、前記パッキンによって他方の前記溝における溝底へ押し付けられ、端部が前記正面部材と前記背面部材との間で挟み込まれている、放射線検出装置。
【請求項4】
正面部材と、
前記正面部材が組付けられた背面部材と、
前記正面部材と前記背面部材との間に配置され、前記正面部材側から入射した放射線を検出する放射線検出パネルと、
前記正面部材及び前記背面部材の双方の外周面を被覆するシート材と、
前記正面部材又は前記背面部材との間で前記シート材を挟み込むパッキンと、
前記パッキンを押圧した状態で保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記正面部材から前記背面部材へ向って突出した内壁と、前記背面部材から前記正面部材へ向って突出した外壁と、で挟まれた空間とされ、
一方の前記シート材は前記内壁に沿って配置され、
他方の前記シート材は前記外壁に沿って配置されている、放射線検出装置。
【請求項5】
正面部材と、
前記正面部材が組付けられた背面部材と、
前記正面部材と前記背面部材との間に配置され、前記正面部材側から入射した放射線を検出する放射線検出パネルと、
前記正面部材及び前記背面部材のうち何れか一方の外周面を被覆するシート材と、
前記正面部材又は前記背面部材との間で前記シート材を挟み込むパッキンと、
前記パッキンを押圧した状態で保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記正面部材又及び前記背面部材のうち何れか一方に設けられた溝とされ、
前記シート材は、前記シート材が被覆された前記正面部材又は前記背面部材と前記パッキンとの間に挟み込まれている、放射線検出装置。
【請求項6】
正面部材と、
前記正面部材が組付けられた背面部材と、
前記正面部材と前記背面部材との間に配置され、前記正面部材側から入射した放射線を検出する放射線検出パネルと、
前記正面部材及び前記背面部材の双方の外周面を被覆するシート材と、
前記正面部材又は前記背面部材との間で前記シート材を挟み込むパッキンと、
前記パッキンを押圧した状態で保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記正面部材又は前記背面部材のうち何れか一方に設けられた溝とされ、
前記シート材は前記正面部材又は前記背面部材の他方と前記パッキンとの間に挟み込まれている、放射線検出装置。
【請求項7】
前記シート材が前記正面部材を被覆する場合における前記正面部材
の側面と
、前記背面部材との対向面と
、の成す角度、及び、
前記シート材が前記背面部材を被覆する場合における前記背面部材における側面と
、前記正面部材との対向面と
、の成す角度が45°以上とされている、請求項1~6の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記正面部材及び前記背面部材は角部が曲線状に形成された四角形状とされ、
前記正面部材における前記背面部材との対向面及び前記背面部材における前記正面部材との対向面は、それぞれ枠状に形成され、前記角部の幅が他の部分の幅より広く形成されている、請求項1~7の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
前記正面部材と前記背面部材との間には、前記放射線検出パネルを支持する支持板が配置され、
前記支持板はMgLi合金製とされている、請求項1~8の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項10】
正面部材及び背面部材の外周面をそれぞれシート材で被覆する工程と、
前記正面部材における前記背面部材との対向面に設けられた溝へ一方の前記シート材の端部を挿入し、前記溝内へパッキンを配置する工程と、
前記背面部材における前記正面部材との対向面に沿って他方の前記シート材を配置する工程と、
前記正面部材と前記背面部材とを組付けて前記パッキンを押圧し、かつ、前記パッキンと前記対向面との間で他方の前記シート材を挟み込む工程と、
を備えた放射線検出装置の製造方法。
【請求項11】
前記正面部材の外周面を一方の前記シート材で被覆する前に、一方の前記シート材を加熱して軟化させ、
前記正面部材の外周面を一方の前記シート材で被覆する際に、軟化した一方の前記シート材へ前記正面部材を押し付け、
前記背面部材の外周面を他方の前記シート材で被覆する前に、他方の前記シート材を加熱して軟化させ、
前記背面部材の外周面を他方の前記シート材で被覆する際に、軟化した他方の前記シート材へ前記背面部材を押し付ける、請求項10に記載の放射線検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線検出装置及び放射線検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、透過板と枠体と裏面筐体部とを用いて形成した筐体の内部に放射線検出器を収容した放射線検出カセッテの構造が示されている。この放射線検出カセッテにおいては、裏面筐体部を保護膜で被覆して耐食性及び耐傷性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の保護膜は、裏面筐体部から枠体の外側表面に亘って設けられており、端部が放射線検出カセッテの外部に露出している。保護膜に端部からの剥がれが生じた場合、耐食性及び耐傷性の向上効果が低減される。
【0005】
そこで本開示は、外周面を被覆するシート材の剥がれを抑制できる放射線検出装置及び放射線検出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本開示に係る放射線検出装置は、正面部材と、正面部材が組付けられた背面部材と、正面部材と背面部材との間に配置され、正面部材側から入射した放射線を検出する放射線検出パネルと、正面部材及び背面部材の少なくとも一方の外周面を被覆するシート材と、正面部材又は背面部材との間でシート材を挟み込むパッキンと、正面部材及び背面部材の少なくとも一方に設けられ、パッキンを押圧した状態で保持する保持部と、を備えている。
【0007】
また、本開示に係る放射線検出装置は、シート材は、正面部材及び背面部材の双方の外周面を被覆し、保持部は、正面部材又は背面部材の何れか一方に設けられた溝とされ、一方のシート材の端部は溝へ挿入され、他方のシート材の端部は正面部材と背面部材との間で挟み込まれている。
【0008】
また、本開示に係る放射線検出装置は、一方のシート材の端部は溝における溝壁に沿って配置されている。
【0009】
また、本開示に係る放射線検出装置は、シート材は、正面部材及び背面部材の双方の外周面を被覆し、保持部は、正面部材及び背面部材の双方に設けられた溝とされ、一方のシート材の端部は一方の溝へ挿入され、他方のシート材は、パッキンによって他方の溝における溝底へ押し付けられ、端部が正面部材と背面部材との間で挟み込まれている。
【0010】
また、本開示に係る放射線検出装置は、シート材は、正面部材及び背面部材の双方の外周面を被覆し、保持部は、正面部材から背面部材へ向って突出した内壁と、背面部材から正面部材へ向って突出した外壁と、で挟まれた空間とされ、一方のシート材は内壁に沿って配置され、他方のシート材は外壁に沿って配置されている。
【0011】
また、本開示に係る放射線検出装置は、シート材は、正面部材及び背面部材のうち何れか一方の外周面を被覆し、保持部は、正面部材及び背面部材のうち何れか一方に設けられた溝とされ、シート材は、シート材が被覆された正面部材又は背面部材とパッキンとの間に挟み込まれている。
【0012】
また、本開示に係る放射線検出装置は、シート材が被覆された正面部材における側面と背面部材との対向面との成す角度、及び、シート材が被覆された背面部材における側面と正面部材との対向面との成す角度が45°以上とされている。
【0013】
また、本開示に係る放射線検出装置は、正面部材及び背面部材は角部が曲線状に形成された四角形状とされ、正面部材における背面部材との対向面及び背面部材における正面部材との対向面は、それぞれ枠状に形成され、角部の幅が他の部分の幅より広く形成されている。
【0014】
また、本開示に係る放射線検出装置は、正面部材と背面部材との間には、放射線検出パネルを支持する支持板が配置され、支持板はMgLi合金製とされている。
【0015】
また、本開示に係る放射線検出装置の製造方法は、正面部材及び背面部材の外周面をそれぞれシート材で被覆する工程と、正面部材における背面部材との対向面に設けられた溝へ一方のシート材の端部を挿入し、溝内へパッキンを配置する工程と、背面部材における正面部材との対向面に沿って他方のシート材を配置する工程と、正面部材と背面部材とを組付けてパッキンを押圧し、かつ、パッキンと対向面との間で他方のシート材を挟み込む工程と、を備えている。
【0016】
また、本開示に係る放射線検出装置の製造方法は、正面部材の外周面を一方のシート材で被覆する前に、一方のシート材を加熱して軟化させ、正面部材の外周面を一方のシート材で被覆する際に、軟化した一方のシート材へ正面部材を押し付け、背面部材の外周面を他方のシート材で被覆する前に、他方のシート材を加熱して軟化させ、背面部材の外周面を他方のシート材で被覆する際に、軟化した他方のシート材へ背面部材を押し付ける。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る放射線検出装置及び放射線検出装置の製造方法によれば、正面部材及び背面部材の少なくとも一方の外周面がシート材によって被覆されているため、シート材が被覆された部分の耐食性が向上し、また、外部との摩擦が生じても外傷がつき難い。
【0018】
さらに、シート材は、押圧された状態のパッキンと、正面部材又は背面部材との間で挟みこまれている。このため、シート材の剥がれが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る放射線検出装置を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る放射線検出装置の部分拡大断面図である。
【
図3】本実施形態に係る放射線検出装置における背面部材の部分拡大平面図である。
【
図4】本実施形態に係る放射線検出装置における背面部材、シート材及びパッキンの位置関係を示す部分拡大平面図である。
【
図5】本実施形態に係る放射線検出装置の製造方法において正面部材の外周面をシート材で被覆した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図6】本実施形態に係る放射線検出装置の製造方法において正面部材の溝へパッキンを挿入している状態を示す部分拡大断面図である。
【
図7】本実施形態に係る放射線検出装置の製造方法において正面部材と背面部材とを組みつけている状態を示す部分拡大断面図である。
【
図8】本実施形態に係る放射線検出装置において正面部材を被覆するシート材の端部を溝底に沿って配置した変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図9】本実施形態に係る放射線検出装置において正面部材を被覆するシート材の端部を背面部材を被覆するシート材に沿って配置した変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図10】本実施形態に係る放射線検出装置において正面部材及び背面部材の双方に溝を形成した変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図11】本実施形態に係る放射線検出装置において正面部材に形成した内壁と背面部材に形成した外壁との間に保持部を形成した変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図12】本実施形態に係る放射線検出装置において背面部材のみをシート材で被覆し背面部材に溝を形成した変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図13】本実施形態に係る放射線検出装置において背面部材のみをシート材で被覆し正面部材に溝を形成した変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図14】本実施形態に係る放射線検出装置において正面部材及び背面部材をシート材で被覆し背面部材に溝を形成した変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図15】本実施形態に係る放射線検出装置において、背面部材の側面と、背面部材における正面部材との対向面との成す角度を45度未満とした変形例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(放射線検出装置)
図1には、本開示の実施形態に係る放射線検出装置10の概形が斜視図で示されている。放射線検出装置10は、平面視で略矩形状(四角形状)とされた電子カセッテであり、正面部材20及び背面部材30を含んで構成された筐体12の内部に、放射線検出パネル40が配置されて構成されている。
【0021】
筐体12の平面サイズは、例えば半切サイズ(383.5mm×459.5mm)のフイルムカセッテ又はIP(Imaging Plate)カセッテと同様の国際規格ISO4090:2001に準拠したサイズとされている。これにより、放射線検出装置10は、フイルムカセッテやIPカセッテ用の撮影台に取り付けて使用することもできる。
【0022】
背面部材30に組み付けられる正面部材20は、略矩形状の透過板22と透過板22が嵌め込まれた枠部材24とを含んで構成されている。透過板22は例えばX線透過率が高いカーボン材料で形成されている。この透過板22の面内方向に対して略直交方向から、放射線(本実施形態においてはX線P)が入射される。
【0023】
なお、枠部材24及び透過板22は、後述するシート材72によって外周面が被覆されているが、
図1においては構成を明確にするため、シート材72の図示を省略している。
【0024】
正面部材20における枠部材24及び背面部材30は、本実施形態においてはマグネシウム合金(Mg合金)を用いてダイカスト成形によって形成される。但し枠部材24及び背面部材30の材質並びに製法はこの限りではなく、各種金属や樹脂等を用いて成形することができる。
【0025】
図2には、筐体12が部分断面図で示されている。この図に示されるように、筐体12の内部には、放射線検出パネル40と、放射線検出パネル40が取り付けられた支持板50と、放射線検出パネル40を制御する制御基板60と、が正面部材20及び背面部材30に挟まれた状態で格納されている。
【0026】
支持板50は、マグネシウムリチウム合金(MgLi合金)を用いて形成されている。MgLi合金は、例えばステンレス等と比較して比重が小さい。
【0027】
これらの正面部材20、背面部材30、放射線検出パネル40、支持板50、制御基板60及びバッテリ(不図示)等を組付けることで、
図1に示される放射線検出装置10が形成される。
【0028】
(止水機構)
図2に示すように、放射線検出装置10は、筐体12の内部に配置された放射線検出パネル40、支持板50及び制御基板60を液体から保護するための止水機構を備えている。止水機構は、一例として溝26及びパッキン80を含んで形成されている。
【0029】
溝26は、本開示における保持部の一例であり、正面部材20における枠部材24において、背面部材30との対向面に形成された環状溝である。溝26は、外側の溝壁26A、溝壁26Aと対向する内側の溝壁26B及び溝壁26Aと溝壁26Bとの間に形成された溝底26Cで形成されている。
【0030】
溝壁26Bは溝壁26Aより高く形成されている。これにより、枠部材24における背面部材30との対向面において、溝26の内側に形成された対向面24Cは、溝26の外側に形成された対向面24Bより、背面部材30に近接して配置される。これにより、溝26の外側において、対向面24Bと対向面30Bとの間に、後述するシート材72を挟み込む隙間を確保している。
【0031】
溝26には、パッキン80が挿入されている。パッキン80は、溝26の形状に沿う環状に成形された止水部材であり、シリコンを用いて形成されている。なお、パッキン80の素材としてはシリコンに限定されるものではなく、ニトリルゴム(NBR)、ウレタン等の樹脂材料を用いる事ができる。また、パッキン80は予め成形された物を用いるほか、溝26にディスペンサから射出し、紫外線によって硬化させる物等を用いてもよい。
【0032】
パッキン80は、溝26に挿入され、正面部材20と背面部材30とを組付けた状態において、溝壁26A及び溝壁26Bから圧縮力(押圧力)を受けている。また、パッキン80は、溝底26C及び背面部材30における正面部材20との対向面30Bから圧縮力(押圧力)を受けている。すなわちパッキン80は、溝26の内部において、正面部材20と背面部材30との対向方向に沿って圧縮され、かつ、溝壁26Aと溝壁26Bとの対向方向に沿って圧縮されている。これによりパッキン80の内部には、それぞれの方向に弾性復元する応力(反発力)が発生している。
【0033】
(シート材)
図2に示すように、正面部材20及び背面部材30の外周面は、それぞれシート材72、74によって被覆されている。シート材72、74は塩化ビニル製とされ、加熱することで軟化し、外力を加えて伸縮させることができる。シート材72、74は正面部材20及び背面部材30の耐食性及び耐傷性を向上させることができる。また、シート材72、74は、意匠性を向上させる目的や、文字や記号によって放射線検出装置10の操作性を向上させる目的で用いることもできる。
【0034】
シート材72は、透過板22及び枠部材24の外周面に接着され、枠部材24の側面24Aから背面部材30との対向面24Bへ折り込まれて、端部72Eが溝26内へ挿入されている。端部72Eは、溝壁26Aに沿って配置されている。これにより、端部72Eは、圧縮変形しているパッキン80の反発力によって、溝壁26Aへ押し付けられている。換言すると、シート材72の端部72Eは、溝壁26Aとパッキン80との間で挟みこまれている。
【0035】
枠部材24において、側面24Aと対向面24Bとの成す角度は略90度とされ、シート材72の折り曲げ角度が約90度とされている。
【0036】
シート材74は、背面部材30の外周面に接着され、背面部材30の側面30Aから、正面部材20における枠部材24との対向面30Bへ折り込まれて、端部74Eが、対向面24Cと対向面30Bとに挟みこまれている。また、シート材74は、端部74Eより外側部分において、対向面30Bとパッキン80とに挟み込まれている。これにより、シート材74は、圧縮変形しているパッキン80の反発力によって、対向面30Bへ押し付けられている。換言すると、シート材74は、対向面30Bとパッキン80との間で挟み込まれている。また、シート材74の端部74Eは、対向面30Bと対向面24Cとの間で挟み込まれている。
【0037】
背面部材30において、側面30Aと対向面30Bとの成す角度は略90度とされ、シート材74の折り曲げ角度が約90度とされている。また、側面30Aと側面24Aとは、略面一となるように配置されている。
【0038】
図3に示すように、背面部材30における対向面30Bは枠状に形成され、平面視で角部が曲線状に面取りされている。対向面30Bにおける外側の縁端32と内側の縁端34とは、角部以外の部分において互いに平行に形成され、角部における曲線状の面取り半径がそれぞれ等しく形成されている(半径Rの円弧)。これにより、角部における対向面30Bの幅H1は、角部以外の部分における幅H2より大きく形成されている。
【0039】
なお、角部における対向面30Bの幅H1を、角部以外の部分における幅H2より大きく形成する方法は上述した限りではなく、例えば縁端32に曲線状の面取りを形成する一方、縁端34に直線状の面取りを形成してもよい。
【0040】
図4には、対向面30Bにシート材74を折り込んでパッキン80を配置した状態が示されている。なお、正面部材20の図示は省略しているが、パッキン80の配置は、
図2における溝26の配置と略一致している。パッキン80及び溝26は、平面視で背面部材30の縁端32に沿って配置され、角部においては、縁端32を形成する円弧の同心円(中心点O1)に沿って配置されている。
【0041】
これにより、シート材74において、パッキン80によって押さえ込まれた部分より内側に配置された部分の幅は、角部において大きく(幅h1)、その他の部分において小さい(幅h2)。
【0042】
(放射線検出装置の製造方法)
放射線検出装置10を製造するためには、
図5に示すように、まず、正面部材20の外周面をシート材72で被覆する。正面部材20をシート材72で被覆するためには、一例として、シート材72を密閉容器の内部へ配置し、シート材72によって密閉容器の内部を2つの空間に区画する。
【0043】
そして、一方の空間からシート材72を加熱して、シート材72を軟化させる。軟化したシート材72に対して、他方の空間に配置した正面部材20の外周面を押し当てる。なお、この際、正面部材20が配置された空間を負圧にすることが望ましい。これによりシート材72が吸引されて正面部材20に密着する。シート材72には、正面部材20との接触面に予め接着剤を塗布しておくことが好ましい。または、接着剤を使わずにシート材72自体を熱溶着させてもよい。シート材74による背面部材30の被覆方法も同様であり説明は省略する。
【0044】
なお、シート材72、74による正面部材20、背面部材30の被覆方法は上述した限りではなく、これらのシート材は必ずしも密閉容器の内部へ配置する必要はない。
【0045】
また、本実施形態において正面部材20、背面部材30は何れも金属で形成されているため、成形後にシート材で被覆することが好ましいが、本開示の実施形態はこれに限らない。例えば正面部材20、背面部材30を樹脂材料で成形する場合、成形用の金型にシート材72、74を装着してもよい。これにより正面部材20、背面部材30の成形とシート材72、74による被覆とを同時に行なうことができる。
【0046】
次に、
図6に示すように、シート材72を、枠部材24における側面24Aと対向面24Bとのなす角に沿って折り込んで、シート材72の端部72Eが溝26内に挿入されるように、パッキン80を溝26へ挿入する。これにより、シート材72の端部72Eが溝壁26Aに押し付けられる。又は、溝26内へ保持される。
【0047】
そして、
図7に示すように、シート材74を背面部材30における側面30Aと対向面30Bとのなす角に沿って折り込んで、シート材74を対向面30Bに沿って配置する。シート材74は、背面部材30と正面部材20とを組付けることにより、背面部材30と正面部材20との間で挟み込まれる。また、パッキン80は、背面部材30と正面部材20とを組付けることにより押圧されて、圧縮変形する。
【0048】
なお、シート材74を対向面30Bに沿って配置する際、
図4に示した角部において皺が生じる場合がある。この場合は、生じた皺を重ねてもよいし、皺が生じないようにシート材74を適宜切除してもよい。あるいは、加熱してシート材74を伸縮させることにより皺の発生を抑制してもよい。
【0049】
本開示に係る放射線検出装置10によれば、
図2に示すように、正面部材20と背面部材30とで形成された筐体12の内部に放射線検出パネル40が配置されている。正面部材20と背面部材30との間にはパッキン80が押圧された状態で保持されているため、放射線検出パネル40は水や薬品等の液体から保護される。同様に、支持板50及び制御基板60も液体から保護される。このため、電気機器である放射線検出パネル40及び制御基板60の故障が抑制され、MgLi合金で形成された支持板50の腐食を抑制できる。
【0050】
なお、上述した通り、MgLi合金は、例えばステンレス等と比較して比重が小さい。このため、支持板50としてMgLi合金を用いることにより、ステンレスを用いる場合等と比較して軽量化できる。一方、MgLi合金は、例えばステンレス等と比較して腐食しやすい。本実施形態によれば止水機構によって支持板50の腐食が抑制されている。これにより、支持板50の軽量化と耐食性を両立している。
【0051】
なお、ステンレスより軽量化できる材料として、一例としてMgLi合金以外のMg合金やAl(アルミニウム)合金等の金属系材料を用いることもできる。また別の一例として、カーボン素材を用いたり、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)等を用いることができる。
【0052】
さらに別の一例として、PEEK(Polyetheretherketone)樹脂、LCP(Liquid Crystal Polymer)樹脂、PC(Polycarbonate)樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、HDPE(High Density Polyethylene)樹脂、変成PPE(modified-Polyphenyleneether)樹脂等の樹脂材料を用いる事ができる。
【0053】
またさらに別の一例として、これらの樹脂材料にガラス繊維、セルロース繊維及びマグネシウ製ファイバを添加して強化した複合樹脂材(強化プラスチック)を用いる事ができる。
【0054】
また、放射線検出装置10では、正面部材20及び背面部材30の双方の外周面がそれぞれシート材72、74によって被覆されているため、耐食性が向上し、外部との摩擦が生じても外傷がつき難い。
【0055】
さらに、シート材72は、押圧された状態のパッキン80と正面部材20との間で挟みこまれている。具体的には、端部72Eが、パッキン80と溝壁26Aとの間で挟み込まれている。このため、端部72Eがずれ難く、シート材72の剥がれが抑制される。
【0056】
なお、正面部材20と背面部材30とを組付ける際、パッキン80は、背面部材30に押圧されて矢印C1で示した方向へ圧縮変形する。これによりシート材72の端部72Eは、溝底26Cへ向かう方向へ引張力を受けるため、シート材72の正面部材20に対する密着性を高めることができる。
【0057】
またさらに、シート材74は、押圧された状態のパッキン80と、背面部材30との間で挟みこまれている。具体的には、シート材74は、端部74Eの外側部分が、パッキン80と背面部材30における対向面30Bとの間で挟み込まれ、シート材74の端部74Eが、正面部材20における対向面24Cと対向面30Bとの間で挟み込まれている。このため、シート材74の剥がれが抑制される。
【0058】
このように、本開示に係る放射線検出装置10によれば、パッキン80と溝26による止水構造が、シート材72及びシート材74の剥がれ抑制構造を兼ねている。これにより、例えば止水構造を剥がれ抑制構造と別途設ける場合と比較して、放射線検出装置10の構成を単純化できる。
【0059】
また、放射線検出装置10では、枠部材24において、側面24Aと対向面24Bとの成す角度が略90度とされ、シート材72の折り曲げ角度が約90度とされている。同様に、背面部材30において、側面30Aと対向面30Bとの成す角度が略90度とされ、シート材74の折り曲げ角度が約90度とされている。
【0060】
これにより、シート材72及びシート材74が、折り曲げ箇所を基点として折り曲げ角度が拡がる方向へ戻り変形することを抑制している。また、側面24Aと対向面24Bとの成す角部、及び、側面30Aと対向面30Bとの成す角部から、シート材72、74が受ける局所的な圧力を低減し、折り曲げ箇所を基点とするシート材72、74の損傷を抑制している。
【0061】
なお、本実施形態においては、側面24Aと対向面24Bとの成す角度、側面30Aと対向面30Bとの成す角度が何れも略90度とされているが、本開示の実施形態はこれに限らず、戻り変形を抑制するためには、これらの角度を45度以上とすればよい。また、側面30Aと側面24Aとを略面一に構成するために、これらの角度は135度未満とすることが好ましい。
【0062】
また、
図15に示すように、例えばシート材74の可塑性が高くかつ強度が大きい場合は、例えば側面30Aと対向面30Bとの成す角度は45度未満としてもよい。側面24Aと対向面24Bの成す角度についても同様である。なお、これらの角度が45度未満となる場合は、当該角に対して、適宜面取りを形成することが好適である。
【0063】
なお、本実施形態において、シート材72の端部72Eは、溝壁26Aに沿って配置されているが、本開示の実施形態はこれに限らない。例えば
図8に示すように、端部72Eを溝底26Cに沿って配置してもよい。あるいは
図9に示すように、シート材72の端部72Eは、シート材74に沿って配置してもよい。
【0064】
シート材72の端部72Eを、溝底26C又はシート材74に沿って配置する実施形態は、正面部材20と背面部材30との対向方向に沿うパッキン80の圧縮率(無負荷状態の寸法に対して圧縮時に変形した寸法の割合)が、溝壁26Aと溝壁26Bとの対向方向に沿う圧縮率より大きい場合に好適である。
【0065】
また、本実施形態においては、背面部材30に溝を形成せず、対向面30Bを平坦面としたが、本開示の実施形態はこれに限らない。例えば
図10に示すように、対向面30Bに溝36を形成してもよい。溝36は、溝26と対向する位置に設けられ、溝壁36A、溝壁36Aと対向する溝壁36B及び溝壁36Aと溝壁36Bとの間に形成された溝底36Cによって形成される。シート材72は溝26へ挿入され、シート材74は、パッキン80によって溝底36Cへ押し付けられている。また、シート材74の端部74Eは、対向面30Bと対向面24Cとの間で挟み込まれている。
【0066】
これにより、正面部材20と背面部材30とを組付ける際、シート材74に対して矢印C2に向う力を作用させることができる。このためシート材74は、溝底36Cへ向かう方向へ引張力を受けるため、シート材74の背面部材30に対する密着性を高めることができる。
【0067】
また、本実施形態においては、正面部材20における枠部材24に溝26を形成したが、本開示の実施形態はこれに限らない。例えば
図11に示すように溝を形成しない構成としてもよい。具体的には、枠部材24における背面部材30との対向面24Bに、背面部材30へ向って突出した内壁28を設ける。この内壁28の頂部である対向面28Bと、背面部材30における対向面38Bとを接触させる。さらに、対向面38Bから、正面部材20へ向って突出した外壁38を設ける。外壁38は内壁28より外側に設ける。この外壁38の頂部を、側面30Aと連続する対向面30Bとする。
【0068】
内壁28と外壁38との間には空間Vが設けられており、この内壁28と外壁38とで挟まれた空間Vにパッキン80が配置される。シート材72の端部72Eは内壁28における壁面28Aに沿って配置され、シート材74の端部74Eは外壁38における壁面38Aに沿って配置される。このように、本開示における「保持部」とは、必ずしも溝を指すものではなく、内壁28と外壁38との間に形成された空間Vも含むものとする。保持部として溝を設ける実施形態がパッキン80の保持性を向上できる一方、溝を設けない実施形態は正面部材20又は背面部材30の清掃性を向上できる。
【0069】
また、本実施形態においては、正面部材20と背面部材30の双方を、それぞれシート材72、74で被覆したが、本開示の実施形態はこれに限らない。例えば
図12、
図13に示すように、背面部材30のみをシート材74で被覆する構成としてもよい。
【0070】
図12に示した実施形態においては、背面部材30に形成した溝39にパッキン80を挿入し、シート材74の端部74Eを、溝壁39Aに沿って配置している。なお、端部74Eは、溝底39Cに沿って配置してもよいし、正面部材20における対向面24Bに沿って配置してもよい。なお、背面部材30に溝39を形成する実施形態は、
図14に示すように正面部材20をシート材72で被覆する構成にも適用することができる。
【0071】
図13に示した実施形態においては、正面部材20に形成した溝29にパッキン80を挿入し、パッキン80と対向面30Bとでシート材74を挟んでいる。溝29においては、溝壁29Aと溝壁29Bとが同じ高さとされ、溝壁29Aと溝壁29Bとの間に溝底29Cが配置されている。
【0072】
図12、
図13には、背面部材30のみをシート材74で被覆する構成を示したが、このようにすることで、放射線検出装置10をベッドと患者との間に差し込む際にベッドとの接触によって摺れ易い背面部材30を少なくとも保護することができる。なお、図示は省略するが、本開示の実施形態においては、正面部材20のみをシート材72で被覆することもできる。このように、本開示は様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 放射線検出装置
12 筐体
20 正面部材
22 透過板
24 枠部材
24A 側面
24B 対向面
24C 対向面
26 溝(保持部)
26A 溝壁
26B 溝壁
26C 溝底
28 内壁
28A 壁面
28B 対向面
29 溝(保持部)
29A 溝壁
29B 溝壁
29C 溝底
30 背面部材
30A 側面
30B 対向面
32 縁端
34 縁端
36 溝(保持部)
36A 溝壁
36B 溝壁
36C 溝底
38 外壁
38A 壁面
38B 対向面
39 溝(保持部)
39A 溝壁
39C 溝底
40 放射線検出パネル
50 支持板
60 制御基板
72 シート材
72E 端部
74 シート材
74E 端部
80 パッキン
V 空間(保持部)