(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】フレキシブル層スタックを製造するための方法及び装置、並びにフレキシブル層スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1395 20100101AFI20220214BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20220214BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220214BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220214BHJP
B32B 37/00 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/64 A
H01M4/66 A
H01M4/134
B32B37/00
(21)【出願番号】P 2018516841
(86)(22)【出願日】2015-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2015072864
(87)【国際公開番号】W WO2017054889
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2018-05-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】デピッシュ, トーマス
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-043983(JP,A)
【文献】特表2003-515893(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02318127(GB,A)
【文献】特表2013-502700(JP,A)
【文献】特表2013-529395(JP,A)
【文献】特開2006-108113(JP,A)
【文献】特表2016-511527(JP,A)
【文献】特開2002-093463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 4/64- 4/84
B32B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル層スタック(100)を製造するための方法であって、
フレキシブル基板(101)を提供することと、
前記フレキシブル基板(101)の上に、リチウムを含み、5μm以上及び15μm以下の厚みを有する第1の層(110)を堆積することと、
前記第1の層(110)の上に、導電性材料である第2の材料を含み、10μm以下の厚みを有する第2の層(120)を堆積することと、
前記第2の層(120)の上に、リチウムを含み、5μm以上及び15μm以下の厚みを有する第3の層(130)を堆積することと、
前記フレキシブル基板(101)を取り除くことと
を含み、前記フレキシブル層スタック(100)がリチウム電池の負電極である、方法。
【請求項2】
リチウム電池の負電極(100)を製造するための方法(300)であって、
ローラ装置(250)を使用してフレキシブル基板(101)を真空チャンバ(205)へガイドすることと、
前記フレキシブル基板(101)の上に、リチウムを含み、5μm以上及び15μm以下の厚みを有する第1の層(110)を堆積することと、
前記第1の層(110)の上に、銅を含み、10μm以下の厚みを有する第2の層(120)を堆積することと、
前記第2の層(120)の上に、リチウムを含み、5μm以上及び15μm以下の厚みを有する第3の層(130)を堆積することと、
前記フレキシブル基板(101)を取り除くことと
を含む方法(300)。
【請求項3】
ローラ装置(250)を使用して、前記フレキシブル基板(101)を真空チャンバ(205)にガイドすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フレキシブル基板(101)は、前記第1の層(110)に対する保護層として機能するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フレキシブル基板(101)を取り除くことは、前記第1の層(110)から前記フレキシブル基板(101)を剥離することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フレキシブル基板(101)を取り除くことは、前記フレキシブル基板(101)をエッチングすることを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フレキシブル基板(101)の上にリリース層(105)を提供することを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
リチウム電池の負電極(100)のためのフレキシブル層スタック(100)を製造するための装置(200)であって、
フレキシブル基板(101)をガイドするためのローラ装置(250)と、
前記フレキシブル基板(101)の上に、リチウムを含み、5μm以上及び15μm以下の厚みを有する第1の層(110)を堆積するように構成された第1の堆積源装置(210)と、
前記第1の層(110)の上に、導電性材料である第2の材料を含み、10μm以下の厚みを有する第2の層(120)を堆積するように構成された第2の堆積源装置(220)と、
前記第2の層(120)の上に、リチウムを含み、5μm以上及び15μm以下の厚みを有する第3の層(130)を堆積するように構成された第3の堆積源装置(230)と
を備える装置(200)。
【請求項9】
前記第1の層(110)から前記フレキシブル基板(101)を取り除くための除去装置(260)
を更に備える請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示の実施例は、フレキシブル層スタックを製造するための方法及び装置に関し、また、フレキシブル層スタックにも関する。本開示の実施例は具体的に、リチウム電池の負電極を製造するための方法及び装置、並びにリチウム電池の負電極に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 基板に材料を堆積させるための幾つかの方法は既知である。例えば、基板は、物理的気相堆積(PVD)プロセス、化学気相堆積(CVD)プロセス、プラズマ化学気相堆積(PECVD)プロセスなどによってコーティングされてよい。典型的にはプロセスは、コーティングすべき基板が配置される処理装置や処理チャンバ内で実施される。装置内には、堆積材料が供給される。複数の材料のみならず、更にその酸化物、窒化物、又は炭化物が、基板上の堆積に使用されうる。更に、非真空コーティング法も使用されうる。例えば、スロットダイコーティングなどのロールツーロールコーティングプロセスがリチウム(Li)電池の製造に使用されうる。
【0003】
[0003] コーティングされた材料は、幾つかの用途および幾つかの技術分野で使用されうる。例えば、コーティングされた材料は、リチウム電池の製造など、マイクロエレクトロニクスの分野で使用されうる。一般的に、更なる用途には、薄膜バッテリー、エレクトロクロミックウインドウ、絶縁パネル、有機発光ダイオード(OLED)パネル、TFT付き基板、カラーフィルタなどがある。
【0004】
[0004] リチウム電池の場合には、高いエネルギー密度又はエネルギー貯蔵密度を有することが望ましく、これは、所定のシステムに貯蔵されるエネルギー量、すなわち、単位体積あたりの空間領域に貯蔵されるエネルギー量(Wh/l)、又は重量あたりの貯蔵エネルギー量(Wh/kg)とみなすことができる。例えば、エネルギー密度は、2つの隣接するセル間を共通アノードによって相互接続した幾つかのセルをリチウム電池に結合することによって、高めることができる。
【0005】
[0005] 以上を考慮すると、フレキシブル層スタックを製造するための方法、フレキシブル層スタックを製造するための装置、及び少なくとも当該技術分野の問題点の幾つかを克服するフレキシブル層スタックは有利である。本開示は、高いエネルギー密度を可能にする、及び/又は特に薄いフレキシブル層を提供することを目的としている。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 上記に照らして、独立請求項による、処理チャンバ及び基板を冷却するための方法が提供される。本願の更なる態様、利点、及び特徴は、従属請求項、明細書、及び添付の図面から明らかである。
【0007】
[0007] 本開示の別の態様によれば、フレキシブル層スタックを製造するための方法が提供される。本方法には、フレキシブル基板を提供すること、フレキシブル基板の上に第1の材料を含む第1の層を堆積すること、第1の層の上に第2の材料を含む第2の層を堆積すること、及びフレキシブル基板を取り除くことが含まれる。
【0008】
[0008] 本開示の更なる態様によれば、リチウム(Li)電池の負電極を製造するための方法が提供される。本方法には、ローラ装置を使用してフレキシブル基板を真空チャンバへガイドすること、フレキシブル基板の上にリチウムを含む第1の層を堆積すること、第1の層の上に銅を含む第2の層を堆積すること、第2の層の上にリチウムを含む第3の層を堆積すること、及び、フレキシブル基板を取り除くこと、が含まれる。
【0009】
[0009] 本開示の別の態様によれば、フレキシブル層スタックを製造するための装置が提供される。本装置は、フレキシブル基板をガイドするためのローラ装置と、フレキシブル基板の上に第1の材料を含む第1の層を堆積するように構成された第1の堆積源装置と、第1の層の上に第2の材料を含む第2の層を堆積するように構成された第2の堆積源装置と、第2の層の上に第1の材料を含む第3の層を堆積するように構成された第3の堆積源装置とを含む。
【0010】
[0010] 本開示の別の態様によれば、リチウム電池用の負電極が提供される。負電極はフレキシブルで、リチウムを含み、5μm以上及び/又は15μm以下の厚みを有する第1の層と、銅を含み、10μm以下の、好ましくは8μm以下の、典型的には7μm以下の、具体的には5μm以下の厚みを有する第2の層と、リチウムを含み、5μm以上及び/又は15μm以下の厚みを有する第3の層とを含む。
【0011】
[0011] 実施例はまた、開示された方法を実行する装置も対象としており、記載された方法ブロックを実行する装置部品を含む。これらの方法ブロックは、ハードウェア構成要素、適切なソフトウェアによってプログラミングされたコンピュータによって、これらの2つの任意の組合せによって、又はそれ以外の任意の方法で、実行されうる。更に、本願による実施例は、記載される装置を操作する方法も対象とする。それは、装置の機能を実行するための方法ブロックを含む。
【0012】
[0012] 本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、実施例を参照することによって、上で簡単に概説した本開示のより具体的な説明を得ることができる。添付の図面は、本開示の実施例に関し、以下において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックの概略図を示す。
【
図2A】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックが異なる処理状態にある概略図を示す。
【
図2B】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックが異なる処理状態にある概略図を示す。
【
図2C】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックが異なる処理状態にある概略図を示す。
【
図3A】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックが異なる処理状態にある概略図を示す。
【
図3B】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックが異なる処理状態にある概略図を示す。
【
図3C】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックが異なる処理状態にある概略図を示す。
【
図3D】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックが異なる処理状態にある概略図を示す。
【
図4A】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックからのフレキシブル層基板の除去の概略図を示す。
【
図4B】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックからのフレキシブル層基板の除去の概略図を示す。
【
図5】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックの概略図を示す。
【
図6】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックを製造するための装置の概略図を示す。
【
図7】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックを製造するための装置の概略図を示す。
【
図8】本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタックを製造するための方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0013] 本開示の様々な実施例について、これより詳細に参照する。これらの一又は複数の実施例は、図面で示されている。図面に関する以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指している。概して、個々の実施例に関する相違のみが説明される。実施例は、本開示の説明のために提供されているが、本開示を限定することが意図されているわけではない。更に、1つの実施例の一部として図示または記載された特徴を、他の実施例で使用すること、又は他の実施例とともに使用して、別の実施例を得ることもできる。本記載がこのような修正例及び変形例を含むことが意図されている。
【0015】
[0014] 更に、以下の説明では、例えばローラ装置の一部としてローラ又はローラデバイスは、堆積装置(堆積装置又は堆積チャンバなど)の中に基板が存在する間、基板(又は基板の一部)が接触し得る表面を提供するデバイスと理解されうる。ローラデバイスの少なくとも一部は、基板と接触する円形のような形状を含みうる。幾つかの実施例では、ローラデバイスは、実質的に円筒形状を有しうる。実質的な円筒形状は、真っすぐな長手方向軸の周りに形成されてもよく、又は湾曲した長手方向軸の周りに形成されてもよい。幾つかの実施例によれば、本書に記載のローラデバイスは、フレキシブル基板と接触するように適合されうる。本書で言及されるローラデバイスは、基板がコーティングされる(又は基板の一部がコーティングされる)間に、又は基板が堆積装置に存在する間に、基板をガイドするように適合されたガイドローラであってもよく、規定された張力をコーティングされる基板に提供するように適合されたスプレッダローラであってもよく、規定された伝達経路に従って基板を偏向するための偏向ローラであってもよい。
【0016】
[0015] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、フレキシブル基板は、本書で記載されているように、膜とも称されるが、PET、HC-PET、PE、PI、PU、TaCのような材料、一又は複数の金属、紙、それらの組み合わせ、及びハードコートPET(例えば、HC-PET、HC-TAC)など既にコーティングされている基板を含みうる。
【0017】
[0016] 他の実施例と組み合わせることができる本書に記載に実施例によれば、フレキシブル層スタックを製造するための方法、具体的には、リチウム(Li)電池の負電極を製造するための方法が提供される。ここで、フレキシブル基板が提供される。第1の材料を含む第1の層はフレキシブル基板の上に堆積する。第2の材料を含む第2の層は第1の層の上に堆積する。次に、フレキシブル基板は取り除かれる。フレキシブル基板は一時的なキャリアとみなされうる。本書に記載の実施例によれば、所定の厚みの一又は複数の層は、フレキシブル基板上に堆積した層からフレキシブル基板が取り除かれるまで、フレキシブル基板上に堆積しうる。具体的には、個々の層の厚みは正確に制御可能である。更に、製造中には、フレキシブル層はその上に堆積した層を環境から保護することができるため、フレキシブル層スタックの取扱いは改善されうる。
【0018】
[0017]
図1に、本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタック100を示す。
図1に示したフレキシブル層スタック100は、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130を含む。フレキシブル層スタック100は3つの層を有するように
図1には示されているが、当業者であれば、フレキシブル層スタック100は、
図1に示した第1の層110、第2の層120、及び/又は第3の層130の上、下、及び/又は間に提供されうる多数の層或いは少数の層を含みうることが理解されよう。
【0019】
[0018] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、第1の層110は第1の材料を含むことができ、及び/又は第2の層120は第2の材料を含むことができる。更に、第3の層130は第3の材料を含むことができるか、第3の層130は第1の層110の第1の材料を含むことができる。例えば、第1の材料は、リチウムなどのアルカリ金属であってよい。第2の材料は、導電性材料、典型的には銅(Cu)又はニッケル(Ni)などの金属であってよい。更には、第2の層120は、一又は複数の副層を含みうる。本書に記載の幾つかの実施例によれば、第1の材料はリチウムで、第2の材料は銅である。例えば、第2の層120は電流コレクタ層になりうる。
【0020】
[0019] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、第1の層110は約25μm以下の、典型的には20μm以下の、具体的には15μm以下の、及び/又は典型的には3μm以上の、具体的には5μm以上の厚みを有しうる。第1の層110は意図した機能を適用するため十分に厚く、かつフレキシブルであるように十分薄くなりうる。具体的には、第1の層110は可能な限り薄くてもよく、その結果、第1の層110は意図した機能を提供しうる。
【0021】
[0020] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、第2の層120は10μm以下の、典型的には8μm以下の、有利には7μm以下の、具体的には6μm以下の、特に5μm以下の厚みを有しうる。幾つかの実施例によれば、第2の層120の厚みは4μm以下、又は3μm以下、又は2μm以下になりうる。
【0022】
[0021]
図1に示したフレキシブル層スタック100は、二次電池用の負電極、例えば、リチウム電池用の負電極すなわちアノードなどになりうる。本書に記載の幾つかの実施例によれば、リチウム電池用のフレキシブル負電極は、リチウムを含み、5μm以上及び/又は15μm以下の厚みを有する第1の層110と、銅を含み、10μm以下の、典型的には8μm以下の、有利には7μm以下の、具体的には6μm以下の、特に5μm以下の厚みを有する第2の層120と、リチウムを含み、5μm以上及び/又は15μm以下の厚みを有する第3の層とを含む。リチウム電池の場合には、第2の層120は電流コレクタ層になりうる。
【0023】
[0022] 例えば、リチウム電池用の負電極は、銅箔の両面にリチウム層を堆積することによって製造される。重量あたりのエネルギー貯蔵密度(Wh/kg)又は体積あたりのエネルギー貯蔵密度(Wh/l)を高めるように電池を軽量化するには、リチウム電池の素子に使用される材料の量を最小化することが望ましい。典型的には、10μmを超える厚みを有する銅箔が使用される。しかしながら、層スタックがコーティングドラムに対して十分に押圧されていない場合には、銅箔上へのリチウム層の堆積中に、製造中の銅箔及び/又は層スタックは過熱することがある。但し、製造中の層スタックがコーティングドラムに押圧される際の張力は、銅膜を伸展するためのもので、特に薄い銅膜に対しては、張力の大きさは制限されている。
【0024】
[0023] 更に、リチウムは湿気と直ちに反応するため、一般的に環境中では安定的でないとみなされうる。コーティングシステムが換気されるときには、リチウム層は一般的に密閉及び/又は保護される。システムは一般的に乾燥窒素又はアルゴンで換気され、ロール交換は湿気のない乾燥室で行われうる。一般的に、リチウムの取扱い又は処理には、乾燥室又はグローブボックスが使用される。
【0025】
[0024] 更には、銅箔は両面をリチウムでコーディングすることができる。銅箔の一方の面にリチウムを堆積するため、銅箔がローラ装置に巻きつけられるときには、銅箔のもう一方の面に堆積したリチウムのコーティングは保護される。例えば、ローラ装置によって損傷されるのを防止するため、ローラ又はローラ装置のドラムにリチウム層が接触する前に、堆積又はコーティングされたリチウム層の上に、保護層又はインターリーフが配置されうる。
【0026】
[0025] リチウム電池のキログラム重量あたりの高いエネルギー密度を有するリチウム電池を得るには、リチウム電池の素子に使用される材料の量を最小限に抑え、その一方で素子の機能を最大化することが望ましい。負電極との関連で、機能最大化の観点から負電極との接触表面積を最大化し、重量最小化の観点から厚みを最小化することが望ましい。しかしながら、上述のように、典型的なアプローチでは、一般的に10μmを超える厚みを有する銅箔が使用される。更に薄い銅箔であれば、意図した機能がもたらされうる。しかしながら、現時点では、商業規模で約8μmよりも薄い銅箔は製造できない。
【0027】
[0026]
図2Aから
図2Cは、本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタック100を、対応する製造方法の異なる処理時点で示した概略図である。
【0028】
[0027]
図2Aはフレキシブル基板101を示す。第1の材料を含む第1の層110は、フレキシブル基板101の上に堆積している。具体的には、フレキシブル基板101上に第1の層110などの層又は薄層を堆積するために、スパッタプロセス、蒸発プロセス、例えば熱蒸発プロセス、又はCVDプロセス、例えばプラズマCVDプロセスが利用できる。更に、ロールツーロール堆積システムは、例えば、ディスプレイ産業及び光電池(PV)産業でも使用できる。例えば、ローラコーティング、スロットダイコーティング又は印刷も使用できる。
【0029】
[0028]
図2Bからわかるように、第2の材料を含む第2の層120は、第1の層110の上に堆積することができる。第2の層120は、第1の層110よりも薄い厚みを有しうる。追加的に又は代替的に、第2の層は第1の層110の厚み以上の厚みを有することができる。
【0030】
[0029] その後、フレキシブル基板101は、第2の層120が上に堆積した第1の層110から取り除くことができる。得られたフレキシブル層スタック100を
図2Cに示す。すなわち、フレキシブル基板101はフレキシブル層スタック100から取り除くことができる。具体的には、フレキシブル層スタック100は、フレキシブル基板101を含まないとみなすことができるフ。フレキシブル基板101は一時的なキャリアとみなすことができる。「一時的なキャリア」は、フレキシブル層スタック100などの層スタックを製造するための支持体を提供する基板又はキャリアとみなすことができ、層スタックの処理後又は処理中に層スタックから取り除くことが可能である。更に、本願との関連では、フレキシブル層スタック100はまた、フレキシブル基板101を含むようにみなすこともできる。
【0031】
[0030]
図3Aから
図3Dは、本書に記載の更なる実施例によるフレキシブル層スタック100を、対応する製造方法の異なる処理時点で示した概略図である。
【0032】
[0031]
図3Aはフレキシブル基板101を示す。第1の材料を含む第1の層110は、フレキシブル基板101の上に堆積している。具体的には、フレキシブル基板101上に第1の層110などの層又は薄層を堆積するために、スパッタプロセス、蒸発プロセス、例えば熱蒸発プロセス、又はCVDプロセス、例えばプラズマCVDプロセスが利用できる。更に、ロールツーロール堆積システムは、例えば、ディスプレイ産業及び光電池(PV)産業でも使用できる。例えば、ローラコーティング、スロットダイコーティング又は印刷も使用できる。
【0033】
[0032]
図3Bからわかるように、第2の材料を含む第2の層120は、第1の層110の上に堆積することができる。第2の層120は、第1の層110よりも薄い厚みを有しうる。追加的に又は代替的に、第2の層120は第1の層110の厚み以上の厚みを有することができる。
【0034】
[0033]
図3Cによれば、第3の層130は第2の層120の上に堆積することができる。第3の層130は、第1の材料及び第2の材料とは異なる第3の材料を含みうる。代替的に、第3の層130は第1の材料を含みうる。
【0035】
[0034] 具体的には、第3の層130は、同一の材料又は材料組成によって、第1の層110と同様又は同一の構造、及び同様又は同一の厚みを有するように、構成されうる。すなわち、第2の層120は、2つの実質的に同一の層、例えば、同一の材料及び/又は構造を含む2つの層の間に差し挟まれているとみなすこともできる。
【0036】
[0035] フレキシブル基板101は、第2の層120及び第3の層130が上に堆積している第1の層110から取り除くことができる。得られたフレキシブル層スタック100を
図3Dに示す。
【0037】
[0036] 例えば、
図3Dに示したフレキシブル層スタック100は、
図1に示したフレキシブル層スタック100になりうる。すなわち、上述の製造方法によって、フレキシブル層スタック100を得ることができる。
【0038】
[0037] 例えば、
図1及び
図3Dに示したフレキシブル層スタック100は、リチウム電池用のアノードなど、二次電池用の負電極になりうる。この場合、第1の材料はリチウムであってよく、第2の材料は銅であってよい。第1の層110及び第3の層130は、5μm以上及び/又は15μm以下の厚みを有するように形成可能であり、且つ/又は、第2の層120は、10μm以下の、典型的には8μm以下の、有利には7μm以下の、具体的には6μm以下の、特に5μm以下の厚みを有するように形成可能である。
【0039】
[0038] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、フレキシブル基板101は、特にフレキシブル層スタック100の製造中に、第1の層に対する保護層として機能するように構成されうる。すわなち、フレキシブル基板101は、その上に堆積した層、例えば、第1の層110を環境ストレスから保護することができる。例えば、リチウムは反応性が高く可燃性であり、リチウムは水分と接触すると腐食する。第1の層110に接して又はその上に提供されたフレキシブル基板101は、第1の層110が環境に触れるのを、及び/又は環境と反応するのを保護することができる。更に、フレキシブル基板101は、フレキシブル層スタック100が実際に使用されるまで、例えば、フレキシブル層スタック100の保管中に、フレキシブル層スタック100に接して又はその上に留まることができる。更に、前面が接触していない堆積源を含むコーティングツールが使用される事例では、フレキシブル基板101は保護層及び/又はインターリーフとし機能するため、インターリーフの取扱いは回避することができる。
【0040】
[0039] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、特に、第3の層130を環境ストレスから保護するため、第3の層130の上に更なる保護層が提供及び/又は堆積されうる。更なる保護層は、フレキシブル基板101と同一の材料、又は第3の層130の保護に適した別の材料を含みうる。
【0041】
[0040] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、フレキシブル基板101及び/又は更なる保護層は、特に、環境との反応から第1の層110及び/又は第3の層130をそれぞれ保護するため、水分含有量が少なく、且つ/又は水蒸気透過率及び/又は酸素透過率が低いバリア膜又は金属膜になりうる。
【0042】
[0041] 二次電池用の負電極及びその製造について説明されているが、本開示はそれに限定されない。本開示は任意のフレキシブル層スタックに適用されうるが、上述の銅層のように、典型的には層の両面コーティングを利用する層スタックに特に適用されうる。すなわち、本開示は、一連の層をフレキシブル基板上に堆積し、層の堆積後その層からフレキシブル基板を取り除くことによって、フレキシブル層スタックを製造する方法を提供する。
【0043】
[0042] 例えば、開示した方法は、第1の層110として、また最終的には第3の層130として金属メッシュを有するフレキシブル層スタック100の製造に使用されうる。この場合、絶縁層は第2の層120として堆積してもよい。更に、インジウムスズ酸化物(ITO)層又はITOコーティングを、第1の層110として、また最終的には第3の層130として有するフレキシブル層スタック100、並びに、第2の層120として絶縁層が製造されうる。本開示は、2つの同様な又は実質的に同一の又は同一の層間に挟まれた中間層を有するフレキシブル層に対して、特に有利に実施されうる。
【0044】
[0043]
図4A及び
図4Bは、本書に記載の実施例による、フレキシブル層スタックからのフレキシブル基板101の除去の概略図を示している。
【0045】
[0044] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、フレキシブル基板101の上に、特にフレキシブル基板101に接してリリース層105が提供されうる。すなわち、リリース層105は、フレキシブル基板101と第1の層110との間に提供されうる。特に、第1の層110が堆積する前に、リリース層105はフレキシブル基板101の上に、典型的にはフレキシブル基板101に接して堆積しうる。本書に記載の実施例によれば、フレキシブル基板101の除去は容易になりうる。
【0046】
[0045] 例えば、
図4Aに示したように、リリース層105はエッチング停止層105であってもよい。本書に記載の幾つかの実施例によれば、フレキシブル基板101の除去はフレキシブル基板101のエッチングを含む。フレキシブル基板101は、第1の層110までエッチングされうる。フレキシブル基板101と第1の層110との間にエッチング停止層105が提供されている場合には、エッチングはエッチング停止層105に達するまで実行されうる。
【0047】
[0046] エッチング停止層105が提供されている場合には、第1の材料は、例えば、フレキシブル基板をエッチングするためのエッチング液に接触しないように保護されうる。上に概説したように、環境ストレスから第1の層110を保護することが望ましい。エッチング停止層105を提供することによって、第1の層110は、例えば、エッチング液に接触しないように保護されうる。更に、エッチング停止層105、又はフレキシブル基板101をエッチングした後のエッチング停止層150の残存部分は、環境ストレスから第1の層110を保護する保護層として機能しうる。
【0048】
[0047] フレキシブル基板101のエッチングは、湿式エッチングプロセス又はドライエッチングプロセスを含みうる。エッチング停止層105は、適用されるエッチングプロセスを考慮して、フレキシブル基板101の材料よりも遅いエッチング速度を有する材料を含みうる。
【0049】
[0048] 更に、
図4Bに示したように、リリース層105はピーリング層105になりうる。本書に記載の幾つかの実施例によれば、フレキシブル基板101の除去は、第1の層110のフレキシブル基板101を剥離することを含む。フレキシブル基板101は、第1の層110から剥離することができる。ピーリング層105がフレキシブル基板101と第1の層110との間に提供される場合には、フレキシブル基板101及びピーリング層105は第1の層110から剥離することができる。
【0050】
[0049] ピーリング層105は、第1の層110に対してよりも、フレキシブル基板101に対してより強い粘着又は粘着力を提供することができる。特に、ピーリング層105は、第1の層110に対するフレキシブル基板101の粘着又は粘着力よりも、第1の層110に対して弱い粘着又は粘着力を有することができる。ピーリング層は、第1の層110又は第1の層110の材料に関して弱い粘着層であり、また、フレキシブル基板101又はフレキシブル基板101の材料に関して強い粘着層とみなすことができる。
【0051】
[0050] ピーリング層105は単一層であってよく、或いは、例えば、互いに結合された複数の層を含みうる。例えば、ピーリング層105は、フレキシブル基板101に面した粘着性の副層、及び第1の層110に面した非粘着性の副層を含みうる。この文脈で、「非粘着性」又は「非粘着性副層」は、ある程度の粘着特性を有する層として理解することができるが、近接した又は隣接した層に粘着する能力は低く、それぞれの近接した又は隣接した層に対する「粘着性の」副層の粘着能力よりも低くなりうる。
【0052】
[0051] 更には、リリース層105はレーザーリリース層であってもよい。本書に記載の幾つかの実施例によれば、フレキシブル基板101の除去は、レーザーリリース層へのレーザー照射を含む。すなわち、レーザーリリース層は、レーザー光の照射によって粘着特性を失う、及び/又はレーザー光の照射によって破壊される粘着層になりうる。例えば、レーザーリリース層はフレキシブル基板101を介してレーザー照射されうる。この場合、フレキシブル基板101は、レーザーリリース層の照射に使用されるレーザー光に対して透明な材料を含みうる。
【0053】
[0052]
図5は、本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタック100の概略図を示す。
【0054】
[0053] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、第1の粘着層115は第1の層110と第2の層120との間に提供されうる。具体的には、第1の粘着層115は、典型的には第2の層120が堆積する前に、第1の層110に接して、又は第1の層110の上に堆積することができる。幾つかの実施例によれば、第1の粘着層115は向かい合う2つの面を有することができ、向かい合う2つの面の一方は第1の層110に接触し、向かい合う2つの面の他方は第2の層120に接触する。第1の層110と第2の層120との間の粘着は促進されうる。フレキシブル層スタック100の安定性は改善することができる。
【0055】
[0054] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、第3の層130が提供され、第2の粘着層125は第2の層120と第3の層130との間に提供されうる。具体的には、第2の粘着層125は、典型的には第3の層130が堆積する前に、第2の層120に接して、又は第2の層120の上に堆積することができる。幾つかの実施例によれば、第2の粘着層125は向かい合う2つの面を有することができ、向かい合う2つの面の一方は第2の層120に接触し、向かい合う2つの面の他方は第3の層130に接触する。第2の層120と第3の層130との間の粘着は促進されうる。フレキシブル層スタック100の安定性は改善することができる。
【0056】
[0055]
図6は、本書に記載の実施例による、基板層スタック100を製造するための装置200の概略図を示している。
【0057】
[0056] 装置200は、処理装置200とも称されるが、フレキシブル基板101をガイドするためのローラ装置250を含む。フレキシブル基板101を処理するため、一又は複数の処理ステーションが提供されうる。例えば、フレキシブル基板101の上に第1の材料を含む第1の層110を堆積するように構成された第1の堆積源装置200が提供されうる。更に、第1の層110の上に第2の材料を含む第2の層120を堆積するように構成された第2の堆積源装置220が提供されうる。更には、第2の層120の上に第3の材料又は第1の材料を含む第3の層130を堆積するように構成された第3の堆積源装置230が提供されうる。
【0058】
[0057] 例えば、第1の堆積源装置210は、第1の層110を形成するため、リチウムなどのアルカリ金属をフレキシブル基板101の上に堆積するように構成されうる。第2の堆積源装置220は、第2の層120を形成するため、導電性材料、典型的には銅などの金属を第1の層110の上に堆積するように構成されうる。第3の堆積源装置230は、第3の層130を形成するため、リチウムなどのアルカリ金属を第2の層の上に堆積するように構成されうる。
【0059】
[0058] 本書に記載の実施例によれば、第1の堆積源装置210、第2の堆積源装置220及び第3の堆積源装置230の各々は、一又は複数の堆積源を含みうる。具体的には、第1の堆積源装置210、第2の堆積源装置220及び第3の堆積源装置230など、堆積源装置あたりの堆積源の数は、各堆積源装置によって形成される意図した層の厚みに応じて調整することができる。例えば、リチウム電池用の負電極の場合には、間に挿入される銅層よりも厚いリチウム層を有することが望ましい。第1の堆積源装置210及び第3の堆積源装置230はリチウムを堆積するように構成することができ、銅を堆積するように構成された第2の堆積源装置220よりも多くの堆積源を含む。
図6に例示的に示したように、第1の堆積源装置210及び第3の堆積源装置230はそれぞれ2つの堆積源を含み、一方、第2の堆積源装置220は1つの堆積源を含む。
【0060】
[0059] ピーリング層105、第1の粘着層115及び/又は第2の粘着層125を堆積するため、更なる堆積源装置が提供されうる。具体的には、ピーリング層105を堆積するための堆積源装置は、第1の層110を堆積する第1の堆積源装置210の前に提供されうる。第1の粘着層115を堆積するための堆積源装置は、第1の層110を堆積するための第1の堆積源装置210と第2の層120を堆積するための第2の堆積源装置220との間に提供されうる。第2の粘着層125を堆積するための堆積源装置は、第2の層120を堆積するための第2の堆積源装置220と第3の層130を堆積するための第3の堆積源装置230との間に提供されうる。
【0061】
[0060] 装置200は、真空チャンバ205を含みうる。本書に記載の実施例によれば、フレキシブル基板101は、ローラ装置250を使用して、真空チャンバ205へガイドされる。ローラ装置250は、真空チャンバ205内に提供される処理ドラム256又はコーティングドラム256を含みうる。一又は複数の処理ステーションは、基板を処理するため真空チャンバ205内に提供され、一方、基板は処理ドラム256上にガイドされる。
図6は、5つの堆積ステーションの形態にある3つの処理ステーションが、第1の堆積源装置210、第2の堆積源装置220及び第3の堆積源装置230を形成することを例示的に示している。例示的に、各処理ステーション又は堆積源装置は、回転式スパッタリングターゲット、又は回転式スパッタリングターゲットのペア、又は任意の所望の数の回転式スパッタリングターゲットになりうる。本書に記載の実施例によれば、堆積源装置は、例えばリチウムに対して線形蒸発器を含みうる。
【0062】
[0061] 真空チャンバ205は真空チャンバであるとして説明されてきたが、ローラコーティング、スロットダイコーティング及び印刷などの非真空堆積技術の場合には、例えば、ドライルーム又はグローブボックスのチャンバ205が使用可能である。
【0063】
[0062]
図6に更に示したように、コーティングドラム256又は処理ドラム256は、装置200に設けられる回転軸を有する。処理ドラム256は、湾曲した外面に沿って基板をガイドするための湾曲外面を有する。フレキシブル基板101は、第1の真空処理領域及び、例えば、少なくとも1つの第2の真空処理領域を経由してガイドされる。本書では頻繁に堆積源装置を処理ステーションと称しているが、エッチングステーション、加熱ステーションなどの他の処理ステーションも、処理ドラム256の湾曲した外面に沿って設けることができる。したがって、本書で説明され、種々の堆積源用の区画を有する装置は、単一の堆積装置、例えば、R2Rコーターでの幾つかのスパッタリング、蒸発、CVD、PECVD及び/又はPVDプロセスのモジュールの組み合わせを可能にする。
【0064】
[0063] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、処理ステーションは異なる処理ツールをモジュール的に備えることができる。モジュールのコンセプトでは、あらゆる種類の堆積源が、本書に記載の実施例による処理装置又は堆積装置の中で使用可能で、例えば、フレキシブル層スタックを製造するための装置は、異なる堆積技術又は処理パラメータの込み入った組み合わせを適用して堆積させなければならない複合層スタックの堆積でのコスト低減に役立つ。
【0065】
[0064] 概して、本書で説明される幾つかの実施形態によれば、プラズマ堆積源は、薄膜をフレキシブル基板、例えば、ウェブ又は箔、ガラス基板又はシリコン基板などの上に堆積させるように適合することができる。典型的には、プラズマ堆積源は、例えば、フレキシブル層スタック100を形成するため、第1の層110及び/又は第2の層120及び/又は第3の層130など、フレキシブル基板101の上に薄膜を堆積するように適合することができ、また使用することができる。フレキシブル層スタックは、二次電池又はTFT、タッチスクリーンデバイス又はフレキシブルPVモジュールの負電極を提供するためのものであってよい。
【0066】
[0065] 本書に記載の実施例により、プラズマ堆積源は、移動するウェブに対向して配設された、2つ、3つ、又はそれ以上にも及ぶRF(高周波)電極を含む、多重領域電極デバイスを有する、PECVD(プラズマ化学気相堆積)源として、提供することができる。本書に記載の実施例により、多重領域プラズマ堆積源はまた、MF(中周波)堆積のためにも提供することができる。本書に記載の更なる実施例により、本書に記載の堆積装置に提供される一又は複数の堆積源は、マイクロ波源であってもよく、及び/又はスパッタターゲットなどのスパッタ源であってもよい。例えば、マイクロ波源に関しては、プラズマはマイクロ波放射によって励起され維持され、マイクロ波源はマイクロ波放射によって励起され、及び/又はプラズマを維持するように構成されている。
【0067】
[0066]
図6に示したように、フレキシブル基板101は繰り出しドラム256までガイドされ、フレキシブル基板101の処理後、巻き取りローラ257に巻かれる。装置200を通ってフレキシブル基板101をガイドするため、複数のローラ253が提供されうる。ローラ253は、フレキシブル基板101をガイドすること、フレキシブル基板101を引っ張ること、フレキシブル基板101を広げること、フレキシブル基板101に負荷を加えること、フレキシブル基板101から負荷を取り除くこと、及びフレキシブル基板101を加熱又は冷却すること、からなる機能群から選択される少なくとも1つの機能を提供することができる。
【0068】
[0067] 本書に記載の幾つかの実施例によれば、処理ドラム256は、所望の処理温度まで加熱又は冷却可能である。コントローラは、処理ドラム256内の加熱又は冷却デバイスに接続することができる。本書に記載の典型的な実施例によれば、処理ドラム256は堆積を目的として加熱することが可能で、例えば、エッチングプロセス中に冷却することもできる。更に、処理ドラム256は、例えば、リチウムなどのように融点の低い材料の堆積中に、冷却することができる。
【0069】
[0068] 本書に記載の実施例によれば、第1の層110及び/又はフレキシブル層スタック100からフレキシブル基板101を取り除くための除去装置260が設けられる。具体的には、除去装置は260、装置200の中で処理ドラム256の後、典型的には巻き戻しローラ257の前に設けられうる。除去装置260は、装置200の中で巻き戻しローラ257の前に設けられると説明されているが、フレキシブル層スタック100は、フレキシブル基板101を含んだまま、或いはその上にフレキシブル基板101が載ったまま、巻き戻しローラ257に巻き取り可能である。例えば、フレキシブル層スタック100は、上述の保護の理由により、フレキシブル基板101と共に保存することができる。この場合には、フレキシブル層スタックが意図した動作及び/又は機能で使用される前に、フレキシブル基板101を取り除くための別個の除去装置を設けることができる。本書に記載の幾つかの実施例によれば、フレキシブル層スタック100は、特に、フレキシブル基板101が取り除かれる前に保存されうる。例えば、リチウム電池の場合には、フレキシブル基板101は電池を組み立てる前に取り除くことが可能である。
【0070】
[0069]
図7は、本書に記載の実施例に従って、フレキシブル層スタック100を製造するための、及び/又はフレキシブル基板101を処理するための更なる装置200を示している。
【0071】
[0070]
図7に示した装置200は、
図6に示した装置に類似している。しかしながら、
図7に示した装置は2つ以上の処理ドラムを含む。そのため、装置のスループット増大に役立ちうる。
【0072】
[0071] 本書に記載の実施例によれば、第1の処理ドラム256aは第1の材料を堆積するように構成可能であり、第2の処理ドラム256bは第2の材料を堆積するように構成可能である。すなわち、第1の処理ドラム256aは第1の材料を堆積するように構成された第1の堆積源装置210を備えることが可能で、第2の処理ドラム256bは第2の材料を堆積するように構成された第2の堆積源装置220を備えることが可能である。例えば、第1の処理ドラム256aは、第1の層110を形成するため、フレキシブル基板101の上にリチウムなどのアルカリ金属を堆積し、更に、第3の層130を形成するため、形成予定の第2の層120の上にリチウムなどのアルカリ金属を堆積するように構成可能である。第2の処理ドラム256bは、第2の層120を形成するため、第1の層110の上に、導電性材料を、典型的には銅などの金属を堆積するように構成可能である。
【0073】
[0072] すなわち、フレキシブル基板101は、第1の処理ドラム256aにガイドされて、繰り出しローラ251から繰り出し可能で、また、第2の処理ドラムは、第1の層110の処理後、第2の層120の少なくとも一部で、ローラ253によって巻き取り可能である。次に、フレキシブル基板101は、巻き戻しローラ257から第2の処理ドラム256b及び第1の処理ドラム256aを通って、繰り出しローラ251へ戻るようにガイド可能で、第1の処理ドラムで最終的に第2の層120及び第3の層130の残りの部分がそれぞれ堆積可能である。したがって、フレキシブル基板101は、フレキシブル層スタック100を製造するため、装置を通って前方及び後方に巻き取り可能である。
【0074】
[0073]
図7に例示的に示したように、第1の除去装置260aは繰り出しローラ251の隣に配置可能で、及び/又は第2の除去装置260bは巻き戻しローラ257の隣に設けることができる。具体的には、除去装置は有利には、繰り出しローラ251及びフレキシブル層スタック100を処理した後にフレキシブル層スタック100が巻かれる巻き戻しローラ257、のうちの1つの隣に設けられうる。
【0075】
[0074] 更に、第1の処理ドラム256a及び第2の処理ドラム256bなどの処理ドラムは具体的に、フレキシブル層スタック100がそれぞれの処理ドラムを通過する間に、材料が堆積されるように構成可能である。例えば、第1の処理ドラム256aは、第1の処理ドラム256aにガイドされたフレキシブル基板101の上にリチウムが堆積する間、冷却することができる。
【0076】
[0075] 本書に記載の実施例によれば、一又は複数の処理ドラムは別々の真空チャンバ内に配置されうる。
図7に示した実施例では、第1の処理ドラム256aは第1の真空チャンバ205a内に配置されており、また、第2の処理ドラム256bは第2の真空チャンバ205b内に配置されている。すなわち、第1真空チャンバ205a及び第2の真空チャンバ205bなど、各真空チャンバ内の処理環境は、各堆積プロセスが各真空チャンバ内で実行されるように適合可能である。リチウム堆積の場合、高度な汚染になると考えられるが、汚染されるのはリチウム堆積に実際に使用された真空チャンバだけである。
【0077】
[0076]
図7の実施例では、2つの処理ドラム256a、256b及び2つの真空チャンバ205a、205bが示されている。しかしながら、任意の数の処理ドラム及び/又は真空チャンバを設けることができる。例えば、3つの処理ドラム、すなわち、第1の処理ドラム、第2の処理ドラム及び第3の処理ドラムを設けることができる。第1の処理ドラムは第1の堆積源装置210を備えることができ、第2の処理ドラムは第2の堆積源装置220を備えることができ、第3の処理ドラムは第3の堆積源装置230を備えることができる。第1の堆積源装置210、第2の堆積源装置220、第3の堆積源装置230の各々は、例えば、各堆積源装置によって形成される層の意図した厚みに応じて、所定の数の堆積源を含むことができる。
【0078】
[0077] 更に、第1の処理ドラム、第2の処理ドラム、及び第3の処理ドラムの各々は、別個の真空チャンバに、すなわち、第1の真空チャンバ、第2の真空チャンバ、及び第3の真空チャンバの各々に配置することができる。更には、一又は複数の処理ドラムは共通の真空チャンバに配置されてもよく、一方、他の処理ドラムは異なる真空チャンバに配置される。例えば、第1の材料を堆積するように構成された堆積源装置、例えば、第1の堆積源装置210と第3の堆積源装置230を備える第1の処理ドラムと第3の処理ドラムは共に、共通の真空チャンバ内に設けることが可能で、一方、第2の堆積源装置220にように、第2の材料を堆積するように構成された一又は複数の堆積源装置を備える第2の処理ドラムは、別の真空チャンバに配置可能である。すなわち、同一の材料を堆積するための処理ドラムは、同一真空チャンバ内に配置可能なため有利である。更には、使用される堆積プロセスによっては、例えば、ドライルーム又はグローブボックスのチャンバは真空チャンバの代わりに使用することができる。例えば、リチウム堆積プロセスは、チャンバ内、例えば、ドライルーム内で実行可能であり、及び/又は銅堆積プロセスは真空チャンバ内で実行可能である。
【0079】
[0078] 幾つかの実施例によれば、一又は複数の処理ドラム256は、ローラ装置250の一部とみなすことができるが、所望の処理温度まで加熱又は冷却することが可能である。具体的には、フレキシブル基板101の温度は、フレキシブル基板101が一又は複数の処理ドラム256に接触する前に、ローラ装置250によって調整可能である。冷却された処理ドラムの場合には、規制のゆるい調整制御によって、温度が処理ドラムの温度をわずかに上回るように調整することが可能で、また規制の強い調整制御によって、温度が処理ドラムの温度をわずかに下回るように調整することが可能である。
【0080】
[0079]
図8は、本書に記載の実施例によるフレキシブル層スタック100の製造方法300のフロー図である。
【0081】
[0080] フレキシブル層スタック100の製造方法300は、ブロック310によれば、フレキシブル基板101を提供することを含む。ブロック320によれば、第1の材料を含む第1の層110はフレキシブル基板101の上に堆積する。ブロック330によれば、第2の材料を含む第2の層120は第1の層110の上に堆積する。ブロック340によれば、フレキシブル基板101は取り除かれる。具体的には、フレキシブル層スタック100は、フレキシブル基板101が取り除かれる前に、保存及び/又は移送されうる。
【0082】
[0081] 本書に記載の実施例によれば、第3の材料又は第1の材料を含む第3の層130は、第2の層120の上に堆積しうる。具体的には、方法300は、上記のブロック又は更なるブロックによれば、更なる層の堆積、及び/又は、フレキシブル基板101を引っ張ること、フレキシブル基板101を広げること、フレキシブル基板101に負荷を加えること、フレキシブル基板101から負荷を取り除くこと、及びフレキシブル基板101を加熱又は冷却することなどの他の処理操作を含みうる。
【0083】
[0082] 本書に記載の特定の実施例によれば、方法300はリチウム電池用の負電極を製造するために提供される。その際、フレキシブル基板101は、ローラ装置250を使用して真空チャンバ205内にガイドされうる。リチウムを含む第1の層110は、フレキシブル基板101の上に堆積することができる。具体的には、第1の層110はリチウム層であってもよい。銅を含む第2の層120は、第1の層110の上に堆積することができる。具体的には、第2の層120は銅層であってもよい。リチウムを含む第3の層130は、第2の層120の上に堆積することができる。具体的には、第3の層130はリチウム層であってもよい。フレキシブル基板101は取り除くことができる。
【0084】
[0083] 第1の層110及び第3の層130は、約25μm以下の、好ましくは20μm以下の、典型的には15μm以下の、及び/又は好ましくは3μm以上の、典型的には5μm以上の厚みに形成されうる。第2の層120は、10μm以下の、典型的には8μm以下の、有利には7μm以下の、具体的には6μm以下の、特に5μm以下の厚みに形成されうる。
【0085】
[0084] 本書に記載の実施例は、以下の利点をもたらしうる。リチウムはキャリアの上に一時的に堆積することができる。温度制御と製造中又は処理中の取扱いは、このようにして促進されうる。更に、銅層などの堆積層の厚みは調整可能である。したがって、市販の銅箔などに関しては、層の厚みの制限は発生しない。リチウム電池などの二次電池との関連では、薄い銅層が処理可能である。リチウム電池のエネルギー密度を高めること、すなわち、同一エネルギー蓄積能力に対する重量及び体積を減らすことが可能である。更に、例えばリチウムによる第1の面のコーティング、保護膜によるコーティング層の保護、例えばリチウムにより第2の面をコーティングするための層スタックの反転、などの作業は省くことができる。有利には、コーティングプロセス又は堆積プロセスは、それ自体が堆積したリチウムに対する保護又は保護層として機能しうるフレキシブル基板などのキャリア膜上で実行可能である。
【0086】
[0085] 以上の記述は、本開示の実施例を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施例及び更なる実施例が考案されてよく、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲によって決定される。