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特許7023308半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラムおよび基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラムおよび基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20220214BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220214BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220214BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 B
C23C16/455
C23C16/34
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020048622
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150471
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】八幡 橘
(72)【発明者】
【氏名】菊池 俊之
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-082517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
H01L 21/31
C23C 16/455
C23C 16/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内の基板に対してガスを供給する工程と、前記処理室内を減圧する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う成膜工程と、
前記成膜工程の実施期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる工程と、
を有し、
前記処理室内を減圧するタイミングで、前記基板の表面側の温度を前記基板の裏面側の温度よりも高くする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記処理室内へガスを供給するタイミングで、前記基板の裏面側の温度を前記基板の表面側の温度よりも高くする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記処理室内に、原料ガスを供給するタイミングで、前記基板の裏面側の温度を前記基板の表面側の温度よりも高くする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
処理室内の基板に対してガスを供給する工程と、前記処理室内を減圧する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う成膜工程と、
前記成膜工程の実施期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる工程と、
を有し、
前記処理室内に不活性ガスを供給するタイミングで、前記基板の裏面側の温度を前記基板の表面側の温度よりも高くする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記処理室内に不活性ガスを供給するタイミングで、前記基板の表面側の温度を前記基板の裏面側の温度よりも高くする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記処理室内へガスを供給するタイミングで、前記基板の表面側の温度を前記基板の裏面側の温度よりも高くする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記処理室内の基板に対してガスを供給する工程で、前記ガスの供給と供給停止とを繰り返す請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ガスの供給と供給停止に合わせて、前記基板の表面側の温度と前記基板の裏面側の温度との間に差を生じさせる請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ガスは、不活性ガスである請求項またはに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ガスは、不活性ガスであり、不活性ガスの供給と供給停止に合わせて、前記基板の表面側の温度と前記基板の裏面側の温度との間に差を生じさせた後、排気タイミングにおいて、前記基板の表面側の温度と前記基板の裏面側の温度との間に差を生じさせる請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ガスは、原料ガス、反応ガス、不活性ガスの少なくとも1つ以上である請求項またはに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板として、表面に凹部が形成されている基板を用いる請求項1~11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内へガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内の前記基板の表面側を加熱する第1加熱部と、
前記処理室内の前記基板の裏面側を加熱する第2加熱部と、
前記処理室内の前記基板に対して前記ガスを供給する処理と、前記処理室内を減圧する処理と、を含むサイクルを所定回数行う成膜手順を行わせるように、前記ガス供給系および前記排気系をそれぞれ制御するとともに、前記成膜手順の実施期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせるように、前記第1加熱部および前記第2加熱部をそれぞれ制御可能に構成された制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項14】
基板処理装置の処理室内の基板に対してガスを供給する手順と、前記処理室内を減圧する手順と、を含むサイクルを所定回数行わせる成膜手順と、
前記成膜手順の実行期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる手順と、
前記処理室内を減圧するタイミングで、前記基板の表面側の温度を前記基板の裏面側の温度よりも高くする手順と、
をコンピュータを用いて前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項15】
基板処理装置の処理室内の基板に対してガスを供給する手順と、前記処理室内を減圧する手順と、を含むサイクルを所定回数行わせる成膜手順と、
前記成膜手順の実行期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる手順と、
前記処理室内に不活性ガスを供給するタイミングで、前記基板の裏面側の温度を前記基板の表面側の温度よりも高くする手順と、
をコンピュータを用いて前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項16】
処理室内の基板に対してガスを供給する工程と、前記処理室内を減圧する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う成膜工程と、
前記成膜工程の実施期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる工程と、
を有し、
前記処理室内を減圧するタイミングで、前記基板の表面側の温度を前記基板の裏面側の温度よりも高くする基板処理方法。
【請求項17】
処理室内の基板に対してガスを供給する工程と、前記処理室内を減圧する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う成膜工程と、
前記成膜工程の実施期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる工程と、
を有し、
前記処理室内に不活性ガスを供給するタイミングで、前記基板の裏面側の温度を前記基板の表面側の温度よりも高くする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラムおよび基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。この場合に、基板の表面に設けられた凹部内を埋め込むように膜を形成する処理が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-123516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の凹部内を埋め込むように膜を形成することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
処理室内の基板に対してガスを供給する工程と、前記処理室内を真空排気する工程と、を含むサイクルを所定回数行う成膜工程と、
前記成膜工程の実施期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の凹部内を埋め込むように膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態で好適に用いられる基板処理装置の構成例を模式的に示す側断面図である。
図2】本開示の第1実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図3】本開示の第1実施形態で好適に用いられる成膜シーケンスの一例を示す図である。
図4】(a)は、基板の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くしたときのガスの流れを示した図であり、(b)は、基板の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くしたときのガスの流れを示した図である。
図5】本開示の第2実施形態で好適に用いられる成膜シーケンスの一例を示す図である。
図6】本開示の他の実施形態で好適に用いられる成膜シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
以下に、本開示の第1実施形態について説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
本実施形態に係る基板処理装置100について説明する。基板処理装置100は、基板としてのウエハ200上に薄膜を形成する装置であり、図1に示されているように、枚葉式基板処理装置として構成されている。
【0010】
(処理容器)
図1に示すように、基板処理装置100は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202の側壁や底壁は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。処理容器202内には、ウエハ200を処理する処理室201が形成されている。
【0011】
処理容器202の側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入出口206が設けられており、基板搬入出口206を介してウエハ200が図示しない搬送室との間を移動するようになっている。処理容器202の底部には、リフトピン207が複数設けられている。
【0012】
処理室201内には、ウエハ200を支持する基板支持部210が設けられている。基板支持部210は、ウエハ200を載置する基板載置面211と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212と、を主に備える。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する複数の貫通孔214が、リフトピン207のそれぞれに対応する位置に設けられる。
【0013】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、処理容器202の底部を貫通しており、さらには処理容器202の外部において図示しない昇降機構に接続されている。昇降機構作動させてシャフト217および基板載置台212を昇降させることにより、基板載置面211上に載置されるウエハ200を昇降させることが可能となっている。
【0014】
基板載置台212は、ウエハ200の搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口206と同じ高さ(ウエハ搬送位置)まで下降する。また、ウエハ200の処理時には、図1で示されるように、ウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。
【0015】
具体的には、基板載置台212をウエハ搬送位置まで下降させたときには、リフトピン207の上端部が基板載置面211の上面から突出して、リフトピン207がウエハ200を下方から支持する。また、基板載置台212をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は基板載置面211の上面から埋没して、基板載置面211がウエハ200を下方から支持する。
【0016】
(加熱部)
基板載置台212には、第1加熱部としてのヒータ213が内包されている。ヒータ213の動作は、コントローラ310により制御される。
【0017】
処理容器202の天井であって、ウエハ200の表面側には、ランプハウス460が設けられる。ランプハウス460には、第2加熱部としてのランプ411が複数設けられている。ランプ411の動作は、コントローラ310により制御される。
【0018】
ヒータ213やランプ411を用いることにより、ウエハ200の表面側の温度およびウエハ200の裏面側の温度をある程度独立して制御することができる。例えば、ヒータ213をオン、ランプ411をオフにしたり、ヒータ213の出力をランプ411の出力よりも大きくすると、少なくとも所定の時間において、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くすることができる。一方、ランプ411をオン、ヒータ213をオフにしたり、ランプ411の出力をヒータ213の出力よりも大きくすると、少なくとも所定の時間において、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くすることができる。
【0019】
(ガス導入孔)
処理室201の上部に設けられ後述するシャワーヘッド290の側壁には、ガス導入孔241,242,243が設けられる。ガス導入孔241,242,243に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0020】
(シャワーヘッド)
ガス導入孔241,242,243と処理室201との間には、処理室201に連通するガス分散機構としてのシャワーヘッド290が設けられる。ガス導入孔241,242,243から導入されるガスはシャワーヘッド290のバッファ室252に供給される。バッファ室252は、処理容器202と分散板254に囲まれるように形成される。
【0021】
シャワーヘッド290は、バッファ室252と処理室201との間に、ガスを分散させるための分散板254を備えている。分散板254には、複数の貫通孔が設けられている。分散板254は、基板載置面211と対向するように配置されている。分散板254は、ランプ411が照射する熱を遮断しない材質であり、例えば石英で構成される。分散板254を介してガスを供給することで、ウエハ200上に均一に供給可能とする。
【0022】
(原料ガス供給系)
ガス導入孔241には、原料ガス供給系260が接続される。原料ガス供給系260はガス供給管261を有し、ガス供給管261はガス導入孔241に連通するよう、処理容器202の側面に接続される。ガス供給管261は、上流から原料ガスのガス源262、原料ガスの流量を調整するマスフローコントローラ(MFC)263、バルブ264が設けられる。原料ガスとして、例えば、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガスを用いることができる。
【0023】
(反応ガス供給系)
ガス導入孔242には、反応ガス供給系270が接続される。反応ガス供給系270はガス供給管271を有し、ガス供給管271はガス導入孔242に連通するよう、処理容器202の側壁に接続される。ガス供給管271は、上流から反応ガスのガス源272、反応ガスの流量を調整するマスフローコントローラ(MFC)273、バルブ274が設けられる。反応ガスとして、例えば、アンモニア(NH)ガスを用いることができる。
【0024】
(不活性ガス供給系)
ガス導入孔243には、不活性ガス供給系280が接続される。不活性ガス供給系280はガス供給管281を有し、ガス供給管281はガス導入孔243に接続される。ガス供給管281は、上流から不活性ガスのガス源282、不活性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ(MFC)283、バルブ284が設けられる。不活性ガスとして、例えば、窒素(N)ガスを用いることができる。
【0025】
各ガス供給系のMFC263,273,283やバルブ264,274,284は後述するコントローラ310に電気的に接続されており、コントローラ310の指示によって制御される。
【0026】
本実施形態においては、原料ガス供給系260、反応ガス供給系270、不活性ガス供給系280のいずれかの組み合わせ、もしくは全てをガス供給系と呼ぶ。
【0027】
(排気系)
処理容器202の内壁側面には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口245が設けられている。処理容器202の外壁側面には、排気口245と連通するよう排気管246が接続されている。排気管246には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)バルブ247、真空ポンプ248が順に直列に接続されている。主に、排気口245、排気管246、APCバルブ247をまとめて排気系と呼ぶ。なお、排気系に真空ポンプ248を含めてもよい。
【0028】
(コントローラ)
基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ310を有している。
【0029】
コントローラ310の概略を図2に示す。制御部(制御手段)であるコントローラ310は、CPU(Central Processing Unit)310a、RAM(Random Access Memory)310b、記憶装置310c、I/Oポート310d、送受信部310eを備えたコンピュータとして構成されている。RAM310b、記憶装置310c、I/Oポート310dは、内部バス310fを介して、CPU310aとデータ交換可能なように構成されている。
【0030】
コントローラ310には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置311や、外部記憶装置312が接続可能に構成されている。
【0031】
記憶装置310cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置310c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ310に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM310bは、CPU310aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0032】
I/Oポート310dは、ゲートバルブ205、ヒータ213、ランプ411、APCバルブ247、真空ポンプ248、MFC263,273,283、バルブ264,274,284等、基板処理装置100の各構成に接続されている。
【0033】
CPU310aは、記憶装置310cからの制御プログラムを読み出して実行するとともに、入出力装置311からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置310cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU310aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、ゲートバルブ205の開閉動作、ヒータ213のオン/オフ動作や温度調整動作、ランプ411のオン/オフ動作や温度調整動作、APCバルブ247の圧力調整動作、真空ポンプ248の動作等を制御可能に構成されている。
【0034】
なお、コントローラ310は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていても良い。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)312を用意し、係る外部記憶装置312を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ310を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置312を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置312を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶装置310cや外部記憶装置312は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置310c単体のみを含む場合、外部記憶装置312単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0035】
(2)基板処理工程の概要
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の基板処理装置100を用いて、ウエハ200に対する所定処理を行う基板処理工程について、その概要を説明する。ここでは、基板処理工程として、ウエハ200上に薄膜を形成する場合を例に挙げる。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ310により制御される。なお、ウエハ200の表面には、トレンチやホール等の凹部が形成されている(図4(a),(b)参照)。
【0036】
(基板搬入・載置工程:S102)
基板搬入・載置工程(S102)では、基板載置台212をウエハ200の搬送位置まで下降させることにより、基板載置台212の貫通孔214にリフトピン207を貫通させる。その結果、リフトピン207が、基板載置台212の表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。続いて、ゲートバルブ205を開き、図示しないウエハ移載機を用いて、処理室201内にウエハ200を搬入し、リフトピン207上にウエハ200を移載する。これにより、ウエハ200は、基板載置台212の表面から突出したリフトピン207上に水平姿勢で支持される。
【0037】
処理室201内にウエハ200を搬入した後は、ウエハ移載機を処理容器202の外へ退避させ、ゲートバルブ205を閉じて処理容器202を密閉する。その後、基板載置台212を上昇させることにより、基板載置台212の基板載置面211上にウエハ200を載置する。
【0038】
なお、ウエハ200を処理容器202内に搬入する際には、排気系により処理容器202内を排気しつつ、不活性ガス供給系280から処理室201内に不活性ガスとしてのNガスを供給することが好ましい。これにより、処理容器202へのパーティクルの侵入や、ウエハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。また、真空ポンプ248は、少なくとも基板搬入・載置工程(S102)から後述する基板搬出工程(S106)までの間は、常に作動させた状態とする。
【0039】
後述する成膜工程が開始されるまでに、少なくともランプ411とヒータ213のいずれか一方により、ウエハ200が所望の温度になるまで加熱する。また、APCバルブ247の弁開度を調整することにより、処理容器202内の圧力を所定の圧力に制御する。
【0040】
(成膜工程:S104)
その後、成膜工程(S104)を行う。図3に示す成膜シーケンスでは、後述するステップ1,2を行う。
【0041】
[ステップ1]
このステップでは、原料ガス供給、パージガス供給、真空排気を順に行う。以下、順に説明する。なお、原料ガス供給、パージガス供給、真空排気それぞれを通して、排気系により排気が行われる。なお、本開示における真空排気とは、ウエハ200への原料ガス供給(反応ガス供給)・パージガス供給を止めた状態での排気を意味する。即ち、ウエハ200上の空間(処理室201内)を原料ガス供給(反応ガス供給)やパージガス供給時の圧力と比較して、減圧することを意味する。
【0042】
まず、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスを供給する(原料ガス供給)。
【0043】
具体的には、バルブ264を開き、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスを供給する。このとき、HCDSガスの流量が所定の流量となるように、MFC263を調整する。
【0044】
ウエハ200に対してHCDSガスを供給すると、HCDSガスが分解し、HCDSガスに含まれるSiがウエハ200の表面に吸着して、ウエハ200の表面にSi含有層が形成される。
【0045】
但し、ウエハ200の表面に形成された凹部の底部側へは、凹部の開口部側と比べてHCDSガスが到達しにくい傾向がある。これにより、ウエハ200の凹部の内部、特に、凹部の底部周辺では、Si含有層が形成されにくくなっている。
【0046】
このような課題を解決するため、本実施形態では、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスを供給するタイミングで、ウエハ200の表面側と裏面側との間に温度差を生じさせる。具体的には、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くする。温度差が存在する空間では、ガスは低温側から高温側に流れる特性があるので、ウエハ200の表面側と裏面側との間に上述したような温度差を生じさせることにより、ウエハ200の凹部の開口部側から凹部の底部側へのHCDSガスの供給を促すことができる(図4(a)参照)。その結果、ウエハ200の凹部の底部周辺でのSi含有層の形成を促進させることができる。なお、ウエハ200の裏面側に設けられたヒータ213をオンにし、表面側に設けられたランプ411をオフにすることにより、また、ランプ411の出力をヒータ213の出力よりも小さくすることにより、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも少なくとも一時的に高くすることができる。
【0047】
Si含有層が形成された後、バルブ264を閉じてHCDSガスの供給を停止する。
【0048】
次に、処理室201内へパージガスとして不活性ガス(Nガス)を供給する(パージ)。
【0049】
具体的には、バルブ284を開き、処理室201内へNガスを供給する。このとき、APCバルブ247の弁開度を最大にして処理室201内を排気する。
【0050】
処理室201内へNガスを供給すると、処理室201内がパージされ、処理室201内やウエハ200の表面に形成された凹部内に残留していたHCDSガスや反応副生成物が処理室201内から除去され、201内の雰囲気がNガスに置換される。
【0051】
但し、ウエハ200の表面に形成された凹部の底部側へは、凹部の開口部側と比べてNガスが到達しにくい傾向がある。また、凹部の底部側の圧力が下がり難い傾向にある。これにより、ウエハ200の凹部の内部、特に、凹部の底部周辺に残留するHCDSガスや反応副生成物が排出されにくくなっている。
【0052】
このような課題を解決するため、本実施形態では、処理室201内のウエハ200に対してNガスを供給するタイミングで、ウエハ200の表面側と裏面側との間に温度差を生じさせる。具体的には、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くする。上述したように、温度差が存在する空間では、ガスは低温側から高温側に流れる特性がある。従って、ウエハ200の表面側と裏面側との間に上述したような温度差を生じさせることにより、ウエハ200の凹部の底部側から凹部の開口部側へのガスの流れを促すことができる(図4(b)参照)。その結果、ウエハ200の凹部の底部周辺に残留するHCDSガスや反応副生成物の、凹部の開口部側への移動を促進させることができる。このような温度差を設けることで、Nガスを供給している間において、凹部の開口部側に移動したHCDSガスや反応副生成物は、ウエハ200の表面を流れるNガスの流れによりウエハ200表面上に引き出されて排出される。なお、ウエハ200の裏面側に設けられたヒータ213をオフにし、表面側に設けられたランプ411をオンにすることにより、また、ランプ411の出力をヒータ213の出力よりも大きくすることにより、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも少なくとも一時的に高くすることができる。
【0053】
なお、図6に示すように、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くしても良い。このような温度差の関係にすることにより、ウエハ200の凹部の開口部側から凹部の底部側へのガスの流れを促すことができる(図4(a)参照)。その結果、ウエハ200の凹部内に、Nガスが流れ込む。これにより、ウエハ200の凹部の表面に吸着したHCDS分子や、反応副生成物の分子をNガスにより凹部表面から脱離させることが可能となる。この脱離したHCDS分子や、反応副生成物の分子は、凹部の内部で表面に吸着していない状態となっているので、次の真空排気で容易に排気することが可能となる。ウエハ200の裏面側に設けられたヒータ213をオンにし、表面側に設けられたランプ411をオフにすることにより、また、ランプ411の出力をヒータ213の出力よりも小さくすることにより、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも少なくとも一時的に高くすることができる。
【0054】
パージが完了したら、バルブ284を閉じてNガスの供給を停止する。
【0055】
続いて、APCバルブ247の弁開度を最大にした状態を維持して、処理室201内を真空排気(減圧排気)する。
【0056】
処理室201内を真空排気すると、処理室201内やウエハ200の表面に形成された凹部内に残留していたHCDSガス、反応生成物、Nガス等が処理室201内から除去される。
【0057】
但し、ウエハ200の表面に形成された凹部の底部側は、凹部の開口部側と比べてHCDSガス、反応生成物、Nガス等が排出されにくく、真空状態(減圧状態)になりにくい傾向がある。
【0058】
このような課題を解決するため、本実施形態では、処理室201内を真空排気するタイミングで、ウエハ200の表面側と裏面側との間に温度差を生じさせる。具体的には、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くする。上述したように、温度差が存在する空間では、ガスは低温側から高温側に流れる特性がある。従って、ウエハ200の表面側と裏面側との間に上述したような温度差を生じさせることにより、ウエハ200における凹部の底部側に残留するHCDSガス、反応生成物、Nガス等の、凹部の開口部側への移動を促すことができる(図4(b)参照)。その結果、ウエハ200の凹部の底部周辺に残留するHCDSガス、反応生成物、Nガス等の排出を促進させることができる。なお、ウエハ200の表面側に設けられたランプ411をオンにし、裏面側に設けられたヒータ213をオフにすることにより、また、ヒータ213の出力をランプ411の出力よりも小さくすることにより、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも少なくとも一時的に高くすることができる。なお、ここでの温度制御(ランプ411やヒータ213の制御)は、上述のパージ時(Nガスの供給時)から継続した制御でも良いし、温度差をリセット(原料ガス供給時と同じ温度差に設定)してから、実行しても良い。温度制御を継続した場合、温度差が緩和している可能性がある。温度差をリセットすることにより、ここでの温度差を設けることが可能となり、ウエハ200の凹部の底部側から開口部側へのガスの移動を促進させることが可能となる。
【0059】
処理室201内が所定の圧力に到達したら、次のステップ2を実行する。
【0060】
[ステップ2]
このステップでは、反応ガス供給、パージガス供給、真空排気を順に行う。以下、順に説明する。
【0061】
まず、処理室201内のウエハ200に対してNHガスを供給する(反応ガス供給)。
【0062】
具体的には、バルブ274を開き、処理室201内のウエハ200に対してNHガスを供給する。このとき、NHガスの流量が所定の流量となるように、MFC273を調整する。また、APCバルブ247の弁開度を調整することにより、処理室201内の圧力を所定の圧力に制御する。
【0063】
ウエハ200に対してNHガスを供給すると、NHガスがウエハ200の表面のSi含有層と反応し窒化する。この反応により、ウエハ200の表面にシリコン窒化膜(SiN膜)が形成される。
【0064】
但し、ウエハ200の表面に形成された凹部の底部側へは、凹部の開口部側と比べてNHガスが到達しにくい傾向がある。これにより、ウエハ200の凹部の内部、特に、凹部の底部周辺では、SiN膜が形成されにくくなっている。
【0065】
このような課題を解決するため、本実施形態では、処理室201内のウエハ200に対してNHガスを供給するタイミングで、ウエハ200の表面側と裏面側との間に温度差を生じさせる。具体的には、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くする。温度差が存在する空間では、ガスは低温側から高温側に流れる特性があるので、ウエハ200の表面側と裏面側との間に上述したような温度差を生じさせることにより、ウエハ200の凹部の開口部側から凹部の底部側へのNHガスの供給を促すことができる(図4(a)参照)。その結果、ウエハ200の凹部の底部周辺でのSiN膜の形成を促進させることができる。なお、ウエハ200の裏面側に設けられたヒータ213をオンにし、表面側に設けられたランプ411をオフにすることにより、また、ランプ411の出力をヒータ213の出力よりも小さくすることにより、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも少なくとも一時的に高くすることができる。
【0066】
SiN膜が形成された後、バルブ274を閉じてNHガスの供給を停止する。
【0067】
次に、処理室201内へパージガスとしてNガスを供給する(パージ)。
【0068】
具体的には、バルブ284を開き、処理室201内へNガスを供給する。このとき、APCバルブ247の弁開度を最大にして処理室201内を排気する。
【0069】
処理室201内へNガスを供給すると、処理室201内がパージされ、処理室201内やウエハ200の表面に形成された凹部内に残留していたNHガスや反応副生成物が処理室201内から除去され、201内の雰囲気がNガスに置換される。
【0070】
但し、ウエハ200の表面に形成された凹部の底部側へは、凹部の開口部側と比べてNガスが到達しにくい傾向がある。また、凹部の底部側の圧力が下がり難い傾向にある。これにより、ウエハ200の凹部の内部、特に、凹部の底部周辺に残留するNHガスや反応副生成物が排出されにくくなっている。
【0071】
このような課題を解決するため、本実施形態では、処理室201内のウエハ200に対してNガスを供給するタイミングで、ウエハ200の表面側と裏面側との間に温度差を生じさせる。具体的には、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くする。上述したように、温度差が存在する空間では、ガスは低温側から高温側に流れる特性がある。従って、ウエハ200の表面側と裏面側との間に上述したような温度差を生じさせることにより、ウエハ200の凹部の底部側から凹部の開口部側へのガスの流れを促すことができる(図4(b)参照)。その結果、ウエハ200の凹部の底部周辺に残留するNHガスや反応副生成物が、凹部の開口部側への移動を促進させることができる。このような温度差を設けることで、Nガスを供給している間において、凹部の開口部側に移動したNHガスや反応副生成物は、ウエハ200の表面を流れるNガスによりウエハ200の表面上に引き出されて排出される。なお、ウエハ200の裏面側に設けられたヒータ213をオフにし、表面側に設けられたランプ411をオンにすることにより、また、ランプ411の出力をヒータ213の出力よりも大きくすることにより、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも少なくとも一時的に高くすることができる。
【0072】
なお、図6に示すように、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くしても良い。このような温度差の関係にすることにより、ウエハ200の凹部の開口部側から凹部の底部側へのガスの流れを促すことができる(図4(a)参照)。その結果、ウエハ200の凹部内に、Nガスが流れ込む。これにより、ウエハ200の凹部の表面に吸着したNH分子や、反応副生成物の分子をNガスにより凹部表面から脱離させることが可能となる。この脱離したNH分子や、反応副生成物の分子は、凹部の内部で表面に吸着していない状態となっているので、次の真空排気で容易に排気することが可能となる。ウエハ200の裏面側に設けられたヒータ213をオンにし、表面側に設けられたランプ411をオフにすることにより、また、ランプ411の出力をヒータ213の出力よりも小さくすることにより、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも少なくとも一時的に高くすることができる。
【0073】
パージが完了したら、バルブ284を閉じてNガスの供給を停止する。
【0074】
続いて、APCバルブ247の弁開度を最大にした状態を維持して、処理室201内を真空排気(減圧排気)する。
【0075】
処理室201内を真空排気すると、処理室201内やウエハ200の表面上に残留していたNHガス、反応副生成物、Nガス等が処理室201内から除去される。
【0076】
但し、ウエハ200の表面に形成された凹部の底部側は、凹部の開口部側と比べてNHガス、反応副生成物、Nガス等が排出されにくく、真空状態になりにくい傾向がある。
【0077】
このような課題を解決するため、本実施形態では、処理室201内を真空排気するタイミングで、ウエハ200の表面側と裏面側との間に温度差を生じさせる。具体的には、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くする。上述したように、温度差が存在する空間では、ガスは低温側から高温側に流れる特性がある。従って、ウエハ200の面側と裏面側との間に上述したような温度差を生じさせることにより、ウエハ200における凹部の底部側に残留するNHガス、反応副生成物、Nガス等の、凹部の開口部側への移動を促すことができる(図4(b)参照)。その結果、ウエハ200の凹部の底部周辺に残留するNHガス、反応副生成物、Nガス等の排出を促進させることができる。なお、ウエハ200の表面側に設けられたランプ411をオンにし、裏面側に設けられたヒータ213をオフにすることにより、また、ヒータ213の出力をランプ411の出力よりも小さくすることにより、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも少なくとも一時的に高くすることができる。
【0078】
処理室201内が所定の圧力に到達したら、次のステップ1若しくは、基板搬入出工程S106を実行させる。
【0079】
[所定回数実施]
ステップ1,2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回以上、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所望膜厚、所望組成のSiN膜を形成することができる。
【0080】
(基板搬入出工程:S106)
成膜工程(S104)の終了後、基板処理装置100は、基板搬入出工程(S106)を行う。基板搬入出工程(S106)では、上述した基板搬入・加熱工程(S102)と逆の手順にて、処理済みのウエハ200を処理容器202の外へ搬出する。すなわち、基板載置台212を下降させ、基板載置台212の表面から突出させたリフトピン207上にウエハ200を支持させる。その後、ゲートバルブ205を開き、ウエハ移載機を用いてウエハ200を処理容器202の外へ搬出する。
【0081】
(4)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0082】
本実施形態においては、成膜工程の実施期間中における所定のタイミングで、ウエハ200の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせるので、ウエハ200の表面に形成された凹部内におけるSiN膜の埋め込み特性を向上させることができる。
【0083】
例えば、原料ガス(HCDSガス)を供給するタイミング、および反応ガス(NHガス)を供給するタイミングのそれぞれで、ウエハ200の裏面側の温度をウエハ200の表面側の温度よりも高くする。ウエハ200の表面側と裏面側との間にこのような温度差を生じさせることで、ウエハ200の凹部の開口部側と比べてガスが到達しにくい凹部の底部側へのHCDSガスの供給、およびNHガスの供給をそれぞれ促すことができる。その結果、ウエハ200の表面に形成された凹部内におけるSiN膜の埋め込み特性を向上させることができる。
【0084】
また、例えば、パージガス(Nガス)を供給するタイミングで、ウエハ200の表面側の温度をウエハ200の裏面側の温度よりも高くする。ウエハ200の表面側と裏面側との間にこのような温度差を生じさせることで、ウエハ200の凹部の底部側から開口部側へのガス流れ(分子の流れ)を形成することができる。即ち、ウエハ200凹部の底部側から開口部側にHCDSガス、NHガス、および反応副生成物の少なくとも1つ以上の移動させることが可能となる。この結果、パージガス供給の次に行われる真空排気において、HCDSガス、NHガス、および反応副生成物の少なくとも1つ以上を排出させることが可能となる。これにより、ウエハ200の表面に形成された凹部内におけるSiN膜の埋め込み特性を向上させることが可能となる。
【0085】
また、例えば、パージガス(Nガス)を供給するタイミングで、ウエハ200の裏面側の温度をウエハ200の表面側の温度よりも高くする。ウエハ200の表面側と裏面側との間にこのような温度差を生じさせることで、ウエハ200の凹部の開口部側と比べてNガスが到達しにくい凹部の底部側へのNガスの供給を促すことができる。その結果、ウエハ200の凹部の表面(特に底部周辺の表面)に吸着したHCDS分子、NH分子、および反応副生成物分子の少なくとも1つ以上を凹部の表面から脱離させることができる。この結果、パージガス供給の次に行われる真空排気においてHCDSガス、NHガス、および反応副生成物の少なくとも1つ以上を排出させることが可能となる。これにより、ウエハ200の表面に形成された凹部内におけるSiN膜の埋め込み特性を向上させることができる。
【0086】
また、例えば、真空排気を行うタイミングで、ウエハ200の表面側の温度をウエハ200の裏面側の温度よりも高くする。ウエハ200の表面側と裏面側との間にこのような温度差を生じさせることで、ウエハ200の凹部の底部周辺に残留するHCDSガス、NHガス、反応副生成物、Nガス等の少なくとも1つ以上、凹部の開口部側への移動を促すことができる。その結果、ウエハ200の凹部の底部周辺に残留するHCDSガス、NHガス、反応副生成物、Nガス等の少なくとも1つ以上の排出を促進させることができる。これにより、ウエハ200の凹部がきちんと減圧され、次のステップにおいて、HCDSガスまたはNHガスを凹部内に到達させることができる。これにより、ウエハ200の表面に形成された凹部内におけるSiN膜の埋め込み特性を向上させることができる。
【0087】
<第2実施形態>
以下、図5を用いて本開示の第2実施形態について説明する。
【0088】
上述の第1実施形態では、ステップ1,2における、原料ガス、反応ガス、およびパージガス(以下、まとめて「ガス」と称する場合がある。)のいずれのガスの供給中はいつでも、ヒータ213をオンにし、ランプ411をオフにする例について説明した。但し、ガスの供給時間によっては、ヒータ213により温められたウエハ200の裏面側の熱がウエハ200の表面側に伝わってウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差が緩和されることある。すなわち、第1実施形態では、ウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差が緩和された状態であっても、ウエハ200に対するガスの供給を継続する場合がある。このように、ウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差が緩和された状態でウエハ200に対するガスの供給を継続した場合には、ガスが低温側から高温側に流れるという特性を発揮することが困難となり、上述した効果が得られにくくなっている。
【0089】
また、上述の第1実施形態では、ステップ1,2における真空排気の実行中はいつでも、ランプ411をオンにし、ヒータ213をオフにする例について説明した。但し、真空排気の所要時間によっては、ランプ411により温められたウエハ200の表面側の熱がウエハ200の裏面側に伝わってウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差が緩和されることある。すなわち、第1実施形態では、ウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差が緩和された状態であっても、処理室201内の真空排気を継続する場合がある。このように、ウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差が緩和された状態で処理室201内の真空排気を継続した場合には、ガスが低温側から高温側に流れるという特性を発揮することが困難となり、上述した効果が得られにくくなっている。
【0090】
そこで、本実施形態では、ウエハ200の表面側と裏面側との間における温度差の緩和を抑制する一手法について説明する。なお、ステップ1,2と同様の手順を行うものについてはその説明を省略する場合がある。
【0091】
図5に示す本実施形態の成膜シーケンスでは、後述するステップ1,2を行う。
【0092】
[ステップ1]
このステップでは、ウエハ200に対して原料ガス(HCDSガス)を供給するに際して、ウエハ200の裏面側に設けられたヒータ213をオンにし、表面側に設けられたランプ411をオフにして、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くする。その後、ヒータ213により温められたウエハ200の裏面側の熱がウエハ200の表面側に伝わってウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差がなくなったら、ランプ411をオンにする。所定時間が経過したら、再度、ランプ411をオフにして、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くする。このように、ランプ411のオフ/オフを繰り返すことで、間欠的にウエハ200の表裏面に温度差をつけるようにする。
【0093】
ウエハ200の表裏面に温度差があるときだけHCDSガスを供給し、ウエハ200の表裏面に温度差がないときはHCDSガスの供給を停止する。なお、ウエハ200の表裏面の温度差の有無に関係なく、HCDSガスを継続して供給してもよい。
【0094】
なお、HCDSガスの供給の次に行われるパージガス(Nガス)の供給の際にも上述したHCDSガスの供給時と同様の手法が用いられる。すなわち、Nガスを供給するに際して、ランプ411のオフ/オフを繰り返すことで、間欠的にウエハ200の表裏面に温度差をつけるようにする。また、ウエハ200の表裏面に温度差があるときだけNガスを供給し、ウエハ200の表裏面に温度差がないときはNガスの供給を停止する。なお、ウエハ200の表裏面の温度差の有無に関係なく、Nガスを継続して供給してもよい。このように、パージを行うことにより、ウエハ200の凹部の底部周辺に残留するHCDSガス等の凹部内の表面からの脱離をさらに促進することが可能となる。凹部内の表面から脱離した未反応のHCDSガスや反応副生成物は、Nガスの供給を停止している間に、ウエハ200の凹部内から排出される。Nガスの供給と、排気(Nガスの供給停止)が繰り返されることとなり、凹部内の排出効率を向上させることが可能となる。なお、この時に、ランプ411はオフの状態にしても良い。
【0095】
続いて、処理室201内を真空排気するに際して、ランプ411をオンにし、ヒータ213をオフにして、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くする。その後、ランプ411により温められたウエハ200の表面側の熱がウエハ200の表面側に伝わってウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差が所定の閾値を下回る前に、ランプ411をオフにする。ウエハ200の表裏面の温度がある程度下がったら、再度、ランプ411をオンにして、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くする。このように、ランプ411のオフ/オフを繰り返すことで、間欠的にウエハ200の表裏面に温度差をつけるようにする。
【0096】
[ステップ2]
このステップでは、ウエハ200に対して反応ガス(NHガス)を供給するに際して、ウエハ200の裏面側に設けられたヒータ213をオンにし、表面側に設けられたランプ411をオフにして、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くする。その後、ヒータ213により温められたウエハ200の裏面側の熱がウエハ200の表面側に伝わってウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差がなくなったら、ランプ411をオンにする。所定時間が経過したら、再度、ランプ411をオフにして、ウエハ200の裏面側の温度を表面側の温度よりも高くする。このように、ランプ411のオフ/オフを繰り返すことで、間欠的にウエハ200の表裏面に温度差をつけるようにする。
【0097】
ウエハ200の表裏面に温度差があるときだけNHガスを供給し、ウエハ200の表裏面に温度差がないときはNHガスの供給を停止する。なお、ウエハ200の表裏面の温度差の有無に関係なく、NHガスを継続して供給してもよい。
【0098】
なお、NHガスの供給の次に行われるパージガス(Nガス)の供給の際にも、上述したNHガスの供給時と同様の手法が用いられる。すなわち、Nガスを供給するに際して、ランプ411のオフ/オフを繰り返すことで、間欠的にウエハ200の表裏面に温度差をつけるようにする。また、ウエハ200の表裏面に温度差があるときだけNガスを供給し、ウエハ200の表裏面に温度差がないときはNガスの供給を停止する。なお、ウエハ200の表裏面の温度差の有無に関係なく、Nガスを継続して供給してもよい。
【0099】
続いて、処理室201内を真空排気するに際して、ランプ411をオンにし、ヒータ213をオフにして、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くする。その後、ランプ411により温められたウエハ200の表面側の熱がウエハ200の表面側に伝わってウエハ200の表面側と裏面側との間の温度差が所定の閾値を下回る前に、ランプ411をオフにする。ウエハ200の表裏面の温度がある程度下がったら、再度、ランプ411をオンにして、ウエハ200の表面側の温度を裏面側の温度よりも高くする。このように、ランプ411のオフ/オフを繰り返すことで、間欠的にウエハ200の表裏面に温度差をつけるようにする。
【0100】
なお、本実施形態では、間欠的にウエハ200の表裏面に温度差をつける方法として、ランプ411のオン/オフを繰り返すことを例に挙げたが、ヒータ213のオン/オフを繰り返すことにより行ってもよい。また、ヒータ213の出力とランプ411の出力とを調整することにより行ってもよい。
【0101】
なお、本実施形態では、ステップ1とステップ2を通して、ランプ411をオン/オフを繰り返すシーケンスを示したが、本開示がこれに限定されることはない。例えば、図5のシーケンスにおいて、原料ガス供給、真空排気、反応ガス供給の少なくとも1つ以上において、ランプ411のオン/オフ動作をさせずに、図3に示す固定動作(オン/オフのいずれかを行わせる動作)を行わせても良い。言い換えると、図5のシーケンスにおいて、少なくともパージガスの供給時にランプ411のオン/オフ動作を行わせる。好ましくは、パージガス供給時と真空排気の際に、ランプ411のオン/オフ動作を行わせる。このような温度差による排出効果が大きい工程は、パージガス供給時や真空排気時となる。なお、原料ガス供給時や反応ガス供給時の少なくともいずれかにおいてもランプ411のオン/オフ動作を実行するように構成しても良い。原料ガス供給の際や、反応ガス供給の際にこのような動作を行わせることにより、上述のように、未反応のガスや、反応副生成物の排出効率を向上させるとともに、凹部内への原料ガス(反応ガス)の吸着が進むようにすることが可能となる。
【0102】
また、図5では、原料ガス供給、パージガス供給、反応ガス供給のすべてにおいて、ガスの供給とガスの供給停止を繰り返す例を示したが、本開示がこれに限定されることは無い。少なくとも1つ以上のガスの供給時に供給と停止を繰り返すようにシーケンスを構成しても良い。例えば、原料ガスと反応ガスの供給は、図3に示すように一定時間供給し続け、パージガスの供給の際に、パージガスの供給と停止を繰り返すようにシーケンスを構成しても良い。
【0103】
<他の実施形態>
以上に、本開示の第1,2実施形態を具体的に説明したが、本開示が上述の実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0104】
上述の実施形態では、ステップ1において、原料ガスの供給、パージガスの供給、真空排気、を順に行う例について説明したが、本開示がこれに限定されることはない。例えば、パージガスの供給を行わずに、原料ガスの供給、真空排気、を順に行ってもよい。また、上述の実施形態では、ステップ2において、反応ガスの供給、パージガスの供給、真空排気、を順に行う例について説明したが、本開示がこれに限定されることはない。例えば、パージガスの供給を行わずに、反応ガスの供給、真空排気、を順に行ってもよい。
【0105】
また、上述の実施形態では、真空排気において、図4(b)の温度差を設けるように構成したが、真空排気の途中や、真空排気の後、次の原料ガス供給(反応ガス供給)までの間で、ランプ411をオフとし、ヒータ213をオンとし、温度状態を図4(a)の状態に戻す工程(温度復帰工程)を行わせることにより、原料ガス(反応ガス)の供給初期に、ウエハ200の凹部(溝)の底部に原料ガス(反応ガス)が入り込みやすくすることができ、溝・穴内(凹部)のへの埋め込み特性を向上させることが可能となる。
【0106】
なお上述の実施形態では、溝・穴(凹部)内への埋め込み特性について記したが、溝・穴(凹部)内の表面に膜を均一に成膜させるステップカバレッジ特性も向上させることが可能となる。
【0107】
<本開示の好ましい態様>
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
【0108】
[付記1]
本開示の一態様によれば、
処理室内の基板に対してガスを供給する工程と、前記処理室内を真空排気する工程と、を含むサイクルを所定回数行う成膜工程と、
前記成膜工程の実施期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0109】
[付記2]
好ましくは、
前記処理室内へガスを供給するタイミングで、前記基板の裏面側の温度を前記基板の表面側の温度よりも高くする付記1に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0110】
[付記3]
好ましくは、
前記処理室内に、原料ガスを供給するタイミングで、前記基板の裏面側の温度を前記基板の表面側の温度よりも高くする付記1または2に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0111】
[付記4]
好ましくは、
前記処理室内を真空排気するタイミングで、前記基板の表面側の温度を前記基板の裏面側の温度よりも高くする付記1~3のいずれか1態様に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0112】
[付記5]
好ましくは、
前記処理室内に不活性ガスを供給するタイミングで、前記基板の裏面側の温度を前記基板の表面側の温度よりも高くする付記1~4のいずれか1態様に記載の半導体装置の
製造方法が提供される。
【0113】
[付記6]
好ましくは、
前記処理室内に不活性ガスを供給するタイミングで、前記基板の表面側の温度を前記基板の裏面側の温度よりも高くする付記1~4のいずれか1態様に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0114】
[付記7]
好ましくは、
前記処理室内へガスを供給するタイミングで、前記基板の表面側の温度を前記基板の裏面側の温度よりも高くする付記1~4のいずれか1態様に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0115】
[付記8]
好ましくは、
前記処理室内へガスを供給するタイミングで、前記ガスの供給と供給停止とを繰り返す付記1~4のいずれか1態様に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0116】
[付記9]
好ましくは、
前記ガスの供給と供給停止に合わせて、前記基板の表面側の温度と前記基板の裏面側の温度との間に差を生じさせる付記8に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0117】
[付記10]
好ましくは、
前記ガスは、不活性ガスである付記8または9に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0118】
[付記11]
好ましくは、
前記ガスは、不活性ガスであり、不活性ガスの供給と供給停止に合わせて、前記基板の表面側の温度と前記基板の裏面側の温度との間に差を生じさせた後、排気タイミングにおいて、前記基板の表面側の温度と前記基板の裏面側の温度との間に差を生じさせる付記8に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0119】
[付記12]
好ましくは、
前記ガスは、原料ガス、反応ガス、不活性ガスの少なくとも1つ以上である付記8または9に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0120】
[付記13]
好ましくは、
前記基板として、表面に凹部が形成されている基板を用いる付記1~12のいずれか1態様に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0121】
[付記14]
本開示の他の一態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内へガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内を排気する真空排気系と、
前記処理室内の前記基板の表面側を加熱する第1加熱部と、
前記処理室内の前記基板の裏面側を加熱する第2加熱部と、
前記処理室内の前記基板に対してガスを供給する処理と、前記処理室内を真空排気する処理と、を含むサイクルを所定回数行う成膜手順を行わせるように、前記ガス供給系および前記真空排気系をそれぞれ制御するとともに、前記成膜手順の実施期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせるように、前記第1加熱部および前記第2加熱部をそれぞれ制御するよう構成された制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0122】
[付記15]
本開示のまたさらに他の一態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板に対してガスを供給する手順と、前記処理室内を真空排気する手順と、を含むサイクルを所定回数行わせる成膜手順と、
前記成膜手順の実行期間中における所定のタイミングで、前記基板の表面側と裏面側との間に所定の温度差を生じさせる手順と、
をコンピュータを用いて前記基板処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【符号の説明】
【0123】
201…処理室、411…ランプ、213…ヒータ、247…APCバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6