(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220214BHJP
【FI】
G01B11/00 G
(21)【出願番号】P 2020162494
(22)【出願日】2020-09-28
(62)【分割の表示】P 2017528095の分割
【原出願日】2015-11-24
【審査請求日】2020-09-28
(32)【優先日】2014-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルチアーノ タル
(72)【発明者】
【氏名】ブリンゴルツ バラク
(72)【発明者】
【氏名】グレヴィッチ エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】アダム イド
(72)【発明者】
【氏名】リンデンフェルド ザエフ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ゼン
(72)【発明者】
【氏名】フェレル ヨエル
(72)【発明者】
【氏名】カンデル ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】カルメル ナダフ
(72)【発明者】
【氏名】マナッセン アムノン
(72)【発明者】
【氏名】アミル ヌリエル
(72)【発明者】
【氏名】カミンスキー オデド
(72)【発明者】
【氏名】ヤジフ タル
(72)【発明者】
【氏名】ザハラン オフェル
(72)【発明者】
【氏名】クーパー モシェ
(72)【発明者】
【氏名】スリマルスキー ロエー
(72)【発明者】
【氏名】レヴィアント トム
(72)【発明者】
【氏名】セラ ノガ
(72)【発明者】
【氏名】エフラティ ボリス
(72)【発明者】
【氏名】サルトーン リラク
(72)【発明者】
【氏名】ハンデルマン アミル
(72)【発明者】
【氏名】アシュワル エルサフォン
(72)【発明者】
【氏名】バチャール オハド
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-535819(JP,A)
【文献】国際公開第2014/062972(WO,A1)
【文献】特表2014-512101(JP,A)
【文献】国際公開第2014/082938(WO,A1)
【文献】特表2014-502420(JP,A)
【文献】特開2013-051412(JP,A)
【文献】特開2008-258606(JP,A)
【文献】特開2008-109104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測ツールのひとみ平面において少なくとも+/-1次の回折を含む回折信号を測定することあって、前記信号が、少なくとも2つのセルを含むターゲットから導出され、前記セルがそれぞれ、正反対の設計オフセットを有する少なくとも2つの周期的構造を有する、回折信号を測定することと、
前記少なくとも2つのセルの測定された前記回折信号から、前記ターゲットのオーバレイを、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をセルごとに使用して算出することと、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することであって、ひとみピクセルのグループ間の算出された前記オーバレイの変動から、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することであって、前記グループのサイズが、前記計測ツールの光学系内の予想される干渉源に関係した指定された長さスケールに従って選択される、少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することと、
を含み、
前記オーバレイが
【数1】
として算出され、
【数2】
が、前記ひとみピクセルを表し、f0が、前記設計オフセットを示し、D1およびD2が、前記正反対の設計オフセットに対応して、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の前記差を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
計測ツールのひとみ平面において少なくとも+/-1次の回折を含む回折信号を測定することあって、前記信号が、少なくとも2つのセルを含むターゲットから導出され、前記セルがそれぞれ、正反対の設計オフセットを有する少なくとも2つの周期的構造を有する、回折信号を測定することと、
前記少なくとも2つのセルの測定された前記回折信号から、前記ターゲットのオーバレイを、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をセルごとに使用して算出することと、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することであって、ひとみピクセルのグループ間の算出された前記オーバレイの変動から、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することであって、前記グループのサイズが、前記計測ツールの光学系内の予想される干渉源に関係した指定された長さスケールに従って選択される、少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することと、
を含み、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することが、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の前記差から導出された、前記正反対の設計オフセットに対するひとみ関数間の推定された当てはめから、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記少なくとも1つの忠実度メトリックが、
【数3】
および
【数4】
の線形あてはめから導出されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記ひとみピクセルに重み付けして前記少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記少なくとも1つの忠実度メトリックが、前記推定されたはめあいの重み付けされたカイ2乗尺度を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
計測ツールのひとみ平面において少なくとも+/-1次の回折を含む回折信号を測定することあって、前記信号が、少なくとも2つのセルを含むターゲットから導出され、前記セルがそれぞれ、正反対の設計オフセットを有する少なくとも2つの周期的構造を有する、回折信号を測定することと、
前記少なくとも2つのセルの測定された前記回折信号から、前記ターゲットのオーバレイを、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をセルごとに使用して算出することと、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することであって、ひとみピクセルのグループ間の算出された前記オーバレイの変動から、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することであって、前記グループのサイズが、前記計測ツールの光学系内の予想される干渉源に関係した指定された長さスケールに従って選択される、少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することと、
を含み、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することが、公称オーバレイ値を、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の前記差を前記ひとみを横切って積分することによって導出されたオーバレイ値と比較することによって、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することを含み、
導出された前記オーバレイ値が、前記ひとみを横切って
【数5】
を積分することによって算出され、
【数6】
が、前記ひとみピクセルを表し、D1およびD2が、前記正反対の設計オフセットに対応して、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の前記差を示すことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記積分が、
【数7】
の平均に関して実行されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記積分が、
【数8】
の2次以上の積率に関して実行されることを特徴とする方法。
【請求項9】
計測ツールのひとみ平面において少なくとも+/-1次の回折を含む回折信号を測定することあって、前記信号が、少なくとも2つのセルを含むターゲットから導出され、前記セルがそれぞれ、正反対の設計オフセットを有する少なくとも2つの周期的構造を有する、回折信号を測定することと、
前記少なくとも2つのセルの測定された前記回折信号から、前記ターゲットのオーバレイを、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をセルごとに使用して算出することと、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することであって、ひとみピクセルのグループ間の算出された前記オーバレイの変動から、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することであって、前記グループのサイズが、前記計測ツールの光学系内の予想される干渉源に関係した指定された長さスケールに従って選択される、少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することと、
を含み、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することが、公称オーバレイ値を、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の前記差を前記ひとみを横切って積分することによって導出されたオーバレイ値と比較することによって、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することを含み、
前記ひとみピクセルに重み付けして前記少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
計測ツールのひとみ平面において少なくとも+/-1次の回折を含む回折信号を測定することあって、前記信号が、少なくとも2つのセルを含むターゲットから導出され、前記セルがそれぞれ、正反対の設計オフセットを有する少なくとも2つの周期的構造を有する、回折信号を測定することと、
前記少なくとも2つのセルの測定された前記回折信号から、前記ターゲットのオーバレイを、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をセルごとに使用して算出することと、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することであって、ひとみピクセルのグループ間の算出された前記オーバレイの変動から、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することであって、前記グループのサイズが、前記計測ツールの光学系内の予想される干渉源に関係した指定された長さスケールに従って選択される、少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することと、
を含み、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することが、
(i)スキャトロメトリアルゴリズムを使用して公称オーバレイ値を導出すること、
(ii)互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の前記差から導出された、前記正反対の設計オフセットに対するひとみ関数間の当てはめを推定すること、および
(iii)公称オーバレイ値を、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の前記差を前記ひとみを横切って積分することによって導出されたオーバレイ値と比較すること
のうちの対応する少なくとも2つによって導出された、対応するパラメータに関連した少なくとも2つのオーバレイ値を使用して、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することを含み、
前記少なくとも1つの忠実度メトリックが、異なるパラメータ値下での導出された前記少なくとも2つのオーバレイ値間の差の変動性に対応するひとみ雑音を定量化するように定義される、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記パラメータが、前記ひとみ平面ピクセルの異なる重み付けを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記ひとみ雑音の前記定量化が、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおけるオーバレイ差に関して実行されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項
9に記載の方法であって、前記重み付けが、ひとみ空間に対して共役な空間内で定義されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1
3に記載の方法であって、前記共役な空間がひとみフーリエ共役空間であることを特徴とする方法。
【請求項15】
計測ツールのひとみ平面において少なくとも+/-1次の回折を含む回折信号を測定することあって、前記信号が、少なくとも2つのセルを含むターゲットから導出され、前記セルがそれぞれ、正反対の設計オフセットを有する少なくとも2つの周期的構造を有する、回折信号を測定することと、
前記少なくとも2つのセルの測定された前記回折信号から、前記ターゲットのオーバレイを、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をセルごとに使用して算出することと、
少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することであって、ひとみピクセルのグループ間の算出された前記オーバレイの変動から、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することであって、前記グループのサイズが、前記計測ツールの光学系内の予想される干渉源に関係した指定された長さスケールに従って選択される、少なくとも1つの忠実度メトリックを決定することと、
を含み、
前記グループの前記サイズが、λ/(L/2)のスケールで選択され、ここでλが照明波長、Lが、予想される前記干渉源のサイズであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1
~15のいずれか1つに記載の方法であって、前記少なくとも1つの忠実度メトリックに従って測定レシピを選択することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1
~15のいずれか1つに記載の方法であって、前記ひとみ平面の中心に関して前記オーバレイの非対称性メトリックを算出することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1
~15のいずれか1つに記載の方法であって、前記周期的構造に対して垂直な方向の非対称性メトリックを算出することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項
18に記載の方法であって、前記非対称性メトリックが、測定された前記回折信号と前記オーバレイのうちの少なくとも一方に関して算出されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項
18に記載の方法であって、前記非対称性メトリックが、前記垂直な方向に反射されたひとみ像の統計解析を適用することによって算出されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測(metrology)の分野に関し、より詳細には、オーバレイ(overlay)光学計測の不正確さ(inaccuracy)の低減または排除に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年11月25日に出願された米国特許仮出願第62/083,891号および2015年1月6日に出願された米国特許仮出願第62/100,384号の恩典を主張するものである。これらの仮出願は、その全体を本願に引用して援用する。
【0003】
光学計測技術では通常、非対称性信号のプロセス変動に起因する部分が、オーバレイに起因する信号非対称性よりもずっと小さくなるように、計測信号の非対称性の原因となるプロセス変動が、あるしきい値よりもはるかに小さいものである必要がある。しかしながら、実際には、そのようなプロセス変動は(特にチップ開発の研究開発段階において)非常に大きいことがあり、それらのプロセス変動が、オーバレイのかなり大きな誤差を誘発することがあり、そのような誤差が計測によって報告されることがある。光学計測技術は、数ナノメートルという大きな正確さバジェット(accuracy budget)を有する。このことは、撮像(imaging)ベースの光学オーバレイ計測、スキャトロメトリ(scatterometry)ベースの光学オーバレイ計測(検出器がひとみ(pupil)またはフィールド(field)に置かれている場合)およびそれらの導出を含む、全てのタイプの光学オーバレイ計測に当てはまる。しかしながら、プロセス変動による誤差は、ナノメートルレジームに達することがあり、それによって、オーバレイ計測バジェットのかなりの部分を消費することがある。
【0004】
光学オーバレイ計測は、2つのリソグラフィステップ間のオーバレイに起因し計測信号によって伝達される非対称性の計測である。この非対称性は電磁信号中に存在する。これは、電磁信号が、オーバレイ情報を伝達する相対的位相に対する電場の干渉を反映するためである。オーバレイスキャトロメトリ(ひとみスキャトロメトリまたはフィールドスキャトロメトリ)では、オーバレイマークが一般にグレーティングオーバグレーティング(grating-over-grating)構造体であり、オーバレイ情報は、下グレーティングと上グレーティングの相対的位相として伝達される。
【0005】
サイドバイサイド(side-by-side)型のオーバレイスキャトロメトリ(例えばその全体を本願に引用して援用する国際公開第2014062972号を参照されたい)では、オーバレイマーク(すなわち計測ターゲット)が、グレーティング構造体の隣にグレーティングを備えることがあり、この場合も、オーバレイ情報が、下グレーティングと上グレーティングの相対的位相として伝達されることがある。
【0006】
オーバレイ撮像では、オーバレイマーク(すなわち計測ターゲット)が、別々の層のための別々のマークからなり、オーバレイ情報が、検出器上のそれぞれの個々のマークの位置に伝達され、その位置は、ひいては個々のマークの異なる回折次数間の干渉の結果である。
【0007】
測定不正確さを低減させる現在の方法論は、オーバレイに起因する信号非対称性および他のプロセス変動に起因する非対称性を最小化する、正確さおよびTMU(total measurement uncertainty(全測定不正確さ))に対するレシピおよびターゲット設計の大規模な最適化を実行することを含む。例えば、レシピとターゲットの最良の組合せは、多種多様な選択肢の中から、しらみ潰し探索に近い形態の探索で選択することができる。他の例では、最適化メトリック(metric)が、計測信号または外部較正計測から導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上で説明した測定不正確さを低減させる現在の方法論は以下の短所を有する。すなわち、(i)イントレイン(in train)で計測の不正確さを高い信頼性で推定することが非常に難しく、伝統的なレシピ最適化を使用して実行時にこれを達成することはほぼ不可能である。例えば、デキャップ後にCDSEMを使用して、測定を較正することができるが、このステップを実行できるのはまれであり、ことによるとSEM不正確さバジェットもナノメートルレベルにある。(ii)後に定義されるように対称であるプロセス変動(例えばオーバレイマークのある層の厚さの変化)の存在が、レシピ最適化を遅れたものにすることがある。これは、実行(または研究開発)中、レシピAが最良であると示されイントレインの間に、プロセス変動によって、レシピAの性能が不十分になるためである。このような問題は、ウェーハを横切って起こる(例えば、レシピAは、ウェーハの中心では最適だが、縁では性能が極めて不十分である)こともある。(iii)特にオーバレイフィールドスキャトロメトリの文脈で基本的な問題がある。この計測技法の本質は、ハードウェアパラメータによってひとみ信号を平均することである(これは、この技法がフィールド平面で測定を実行するためである)。このことは、ひとみピクセルごとのオーバレイをアルゴリズムによって平均するひとみオーバレイスキャトロメトリとは対照的である。ひとみ信号のこの直接ハードウェアパラメータ平均は、オーバレイ感度の劇的な損失の多くの状況につながる。特に、異なる照明角度は異なるオーバレイ感度を有し、それらの感度はしばしば、振幅が変動するだけでなくその符号も変化するため、このひとみ信号のハードウェアパラメータ平均はしばしば、ひとみオーバレイ感度の平均をゼロにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下は、本発明の初期の理解を提供する簡略化された概要である。この概要は、必ずしも鍵となる要素を識別したり、または本発明の範囲を限定したりするものではなく、単に以下の説明の導入部の役目を果たす。
【0011】
本発明の1つの態様は、少なくとも1つの計測メトリックの少なくとも1つのレシピパラメータに対する少なくとも部分的に連続な依存性を、シミュレーションによってまたは予備的な測定で導出すること、導出された依存性を解析すること、この解析に従って計測レシピを決定すること、および決定されたレシピに従って少なくとも1つの計測測定を実施することを含む方法を提供する。
【0012】
本発明のこれらの態様および/もしくは利点、追加の態様および/もしくは利点ならびに/または他の態様および/もしくは利点は、以下の詳細な説明に記載されており、かつ/または、ことによると以下の詳細な説明から推論することができ、かつ/または本発明を実施することによって学習することができる。
【0013】
次に、本発明の実施形態をより理解するため、およびどのようにすれば本発明の実施形態を実施することができるのかを示すために、添付図面を、純粋に例として参照する。添付図面では、全体を通じて、同様の符号が対応する要素または部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】シミュレートされたピクセルごとのオーバレイ感度のコンタ線(contour line)の例を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図2A】共振を示す例示的なシミュレーション結果を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図2B】共振を示す例示的なシミュレーション結果を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図3A】信号および不正確さを示す追加の例示的なシミュレーション結果を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図3B】信号および不正確さを示す追加の例示的なシミュレーション結果を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図4】計測メトリックのパラメータに対する依存性を記述するランドスケープ(landscape)のシフティングを示す、対称プロセス変動下でのシミュレーション結果の例を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図5】例示的な正確さ増強アルゴリズムのシミュレーション結果を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図6A】計測パラメータに関して算出された計測メトリックの、先行技術に基づく高水準概略図である。
【
図6B】本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準概略図である。
【
図6C】ゼロ感度コンタおよびそれらのコンタの利用を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準概略図である。
【
図7A】異なる層の平行グレーティングなどの2つの周期的構造と中間層とを有する、リソグラフィ半導体プロセスで印刷されたターゲットセルを概略的に示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図7B】異なる層の平行グレーティングなどの2つの周期的構造と中間層とを有する、リソグラフィ半導体プロセスで印刷されたターゲットセルを概略的に示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図8】正反対のオフセットを有する2つのセルのひとみ信号および差分信号を概略的に示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図9】正反対の設計オフセットを有するセルに対するひとみ関数間の当てはめ曲線による忠実度(fidelity)メトリックの算出を概略的に示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図10】ひとみ平面の中心の周囲の非対称オーバレイ推定を示す、プロセス変動に起因する不正確さを有するスタック上で実行されたシミュレーションの結果を例示した、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
【
図11】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-1】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-2】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-3】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-4】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-5】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-6】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-7】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-8】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【
図11-9】方法を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明を記載する前に、以下で使用されるある種の用語の定義を記載しておくことは有用であろう。
【0016】
本出願の明細書で使用されるとき、用語「計測ターゲット」または「ターゲット」は、設計されウェーハ上に製作された構造体であって、計測目的に使用される構造体と定義される。具体的には、オーバレイターゲットは、ウェーハ上に製作された膜スタック内の2つ以上の層間のオーバレイの測定を可能にするように設計される。例示的なオーバレイターゲットは、ひとみ平面および/またはフィールド平面においてスキャトロメトリによって測定されるスキャトロメトリターゲット、ならびに撮像ターゲットである。例示的なスキャトロメトリターゲットは、異なる層に位置する周期的または非周期的な2つ以上の構造体(限定はされないがグレーティングと呼ばれる)を含み、互いの上下に位置するように設計および製作され(「グレーティングオーバグレーティング」と呼ばれる)、または垂直方向から見て互いに隣接するように設計および製作される(「サイドバイサイド」と呼ばれる)。一般的なスキャトロメトリターゲットは、SCOL(scatterometry overlay(スキャトロメトリオーバレイ))ターゲット、DBO(diffraction based overlay(回折ベースオーバレイ))ターゲットなどを指す。一般的な撮像ターゲットは、ボックスインボックス(BiB)ターゲット、AIM(advance imaging metrology(アドバンス撮像計測))ターゲット、AIMidターゲット、ブロッサム(blossom)ターゲットなどを指す。本発明は、これらのどの特定のタイプにも限定されず、任意のターゲット設計に関して実行することができることに留意されたい。ある種の計測ターゲットは、「設計オフセット」または「設計された不良位置合せ」とも呼ばれる「誘導オフセット(induced offset)」を示し、このオフセットは、本出願の明細書で使用されるとき、ターゲットの周期的構造間の意図的なシフトまたはオーバレイである。周期的構造のフィーチャ(feature)、周期的構造のフィーチャ間の要素(例えばグレーティングバー間のエリア)、背景(すなわち下層または上層)の要素などのターゲット要素を、(フィーチャに対して)セグメント化し、または、それらの要素に、(フィーチャ間の間隙に対する)ダミーフィルを実施することができる。すなわち、周期的構造のフィーチャよりもスケールが小さく、一般に周期的構造のフィーチャとは配向が異なる(例えば垂直の)周期的フィーチャまたは非周期的フィーチャを有するように設計および/または製作することができる。
【0017】
本出願の明細書で使用されるとき、用語「ランドスケープ」、「性能(performance)ランドスケープ」、「ランドスケープシグナチャ(signature)」または「LS」は、1つまたは複数の計測メトリック、例えば1つまたは複数のスキャトロメトリオーバレイ(SCOL)メトリックの1つまたは複数のパラメータに対する依存性と定義される。本出願の明細書で使用されるとき、用語「感度(sensitivity)ランドスケープ」、「正確さランドスケープ」および「正確さシグナチャ」は、それぞれ感度メトリックまたは正確さメトリックに関係するランドスケープの例である。説明の全体にわたって使用される例は、プロセスパラメータ、測定パラメータおよびターゲットパラメータの関数としてのオーバレイ変動およびPupil3S変動である。オーバレイ変動の使用は単なる非限定的な例であり、オーバレイ変動の代わりに任意の他の計測メトリックを使用することもできる。ランドスケープまたはシグナチャは、メトリックのパラメータに対する依存性を視覚化する方式と理解され、連続な依存性、(関数として表現できる)解析的依存性に限定されず、(例えばシミュレーションによって実験的にまたは解析的に)依存性を導出する特定の方式にも限定されない。パラメータは、特定の測定設定に応じて離散値または連続値を有すると理解されることに留意されたい。ある種の実施形態では、ランドスケープが、少なくとも1つの計測メトリックの少なくとも1つのレシピパラメータに対する少なくとも部分的に連続な依存性または高密度にサンプリングされた依存性を含む。
【0018】
次に、図面を詳細に参照するにあたって、示される詳細は例であり、本発明の好ましい実施形態を例を挙げて論じることだけがその目的であり、本発明の原理および概念的諸態様の最も有用で容易に理解される記述と考えられるものを提供するために提示されるものであることを強調しておく。この点に関して、本発明の構造上の詳細を、本発明の基本的理解に必要な程度を超えて詳細に示すことはしない。どのようにすれば本発明のいくつかの形態を実施することができるのかは、当業者がこの説明を図面ともに検討すれば明らかとなる。
【0019】
本発明の少なくとも1つの実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載された構造の詳細もしくは構成要素の配置または図面に示された構造の詳細もしくは構成要素の配置だけに限定されないことを理解しておくべきである。本発明は、他の実施形態に適用可能であり、またはさまざまな方式で実施もしくは実行することができる。さらに、本明細書で使用される言い回しおよび用語は、説明が目的であり、限定を意図したものと考えるべきではないことを理解されたい。
【0020】
上で説明した測定不正確さを低減させる現在の方法論は以下の短所を有する。すなわち、(i)イントレイン(in train)で計測の不正確さを高い信頼性で推定することが非常に難しく、伝統的なレシピ最適化を使用して実行時にこれを達成することはほぼ不可能である。例えば、デキャップ後にCDSEMを使用して、測定を較正することができるが、このステップを実行できるのはまれであり、ことによるとSEM不正確さバジェットもナノメートルレベルにある。(ii)後に定義されるように対称であるプロセス変動(例えばオーバレイマークのある層の厚さの変化)の存在が、レシピ最適化を遅れたものにすることがある。これは、実行(または研究開発)中、レシピAが最良であると示されイントレインの間に、プロセス変動によって、レシピAの性能が不十分になるためである。このような問題は、ウェーハを横切って起こる(例えば、レシピAは、ウェーハの中心では最適だが、縁では性能が極めて不十分である)こともある。(iii)特にオーバレイフィールドスキャトロメトリの文脈で基本的な問題がある。この計測技法の本質は、ハードウェアパラメータによってひとみ信号を平均することである(これは、この技法がフィールド平面で測定を実行するためである)。このことは、ひとみピクセルごとのオーバレイをアルゴリズムによって平均するひとみオーバレイスキャトロメトリとは対照的である。ひとみ信号のこの直接ハードウェアパラメータ平均は、オーバレイ感度の劇的な損失の多くの状況につながる。特に、異なる照明角度は異なるオーバレイ感度を有し、それらの感度はしばしば、振幅が変動するだけでなくその符号も変化するため、このひとみ信号のハードウェアパラメータ平均はしばしば、ひとみオーバレイ感度の平均をゼロにする。とはいえ、ピクセルごとの感度の絶対値はしばしば非常に良好であり、そのため、アルゴリズムによって処理されたとき(それがひとみオーバレイスキャトロメトリによるとき)には、この問題が消失する。
【0021】
有利には、以下で開示されるある種の実施形態は、ひとみオーバレイスキャトロメトリにおけるこれらの困難を、ハードウェア調整およびアルゴリズムの使用により克服し、フィールドオーバレイスキャトロメトリにおけるこれらの困難を、ハードウェア調整により克服する。開示される方法論は、計測オーバレイ感度と正確さを含むオーバレイ性能とを向上させ、光学計測における優れた正確さを達成し、実行時とイントレインの両方で非常に小さな不正確さをもたらす。
【0022】
3つの一般的なタイプのオーバレイターゲット(グレーティングオーバグレーティングスキャトロメトリターゲット、サイドバイサイドスキャトロメトリターゲット、撮像ターゲット)に関して、本発明の発明者らは、信号の感度(すなわち信号非対称性がオーバレイの影響を受ける程度)が主に、それらの信号の干渉項のサイズの変化の影響を受けることに注目する。例えば、スキャトロメトリターゲットでは、干渉位相の項の一部が、下グレーティングから散乱した光と上グレーティングから散乱した光との間の光路差に依存する。これは、それらのグレーティングを分離する膜スタックの厚さにおいて線形であり、波長に反比例する。したがって、この干渉項は、入射角または反射率のような他のパラメータ、入射光および反射光の偏光特性、ならびにスタックおよびグレーティングのターゲット属性および電磁的特性にも依存する。撮像ターゲットでは、干渉位相が、ツールの焦点においても線形であり、入射角などの他のパラメータに依存する。
【0023】
開示される解決策は、「正確さランドスケープ」または「性能ランドスケープ」を指し、これらは、光の波長、偏光子角度およびアポダイゼーション機能のようなツールレシピに対する正確さシグナチャの依存性を記述し、この依存性は、スタックの正確さランドスケープを支配する基礎をなす物理的特性に由来する。本開示は、多くの特定のケースで正確さランドスケープを支配することが分かった構造全般を解析する。対照的に、現在の最適化手順は、正確さランドスケープに関係した系統的な規則によって導かれない。
【0024】
計測ツールの感度が、ツールパラメータに連続してどのように依存しているのかを観察することによって、特に、計測ツールの感度が、多くの計測特性のさまざまな微分(波長、焦点、偏光などに関する感度の1次、2次およびより高次の導関数など)に対してどのように依存しているのかを観察することによって、公称スタックに関係した性能ランドスケープの形態が明らかになる。オーバレイマークの対称性を破壊し不正確さを生じさせる全てのプロセス変動を含む多くのタイプのプロセス変動から概ね独立しているという意味で、このランドスケープは汎用であることを、本発明の発明者らは、シミュレーションおよび理論を使用して発見した。ツール性能も、後に定義される非対称プロセス変動に定義により強く依存する不正確さを含むが、本発明の発明者らは、ランドスケープのどのサブセクションでプロセス変動に対する正確さの感度が最も強いのか、およびどのサブセクションでそれが最も弱いのかを決定し、一般に、感度をどのように特徴づけることができるのかを決定するのは、正確さランドスケープであることを見出した。本発明の発明者らは、あるタイプのプロセス変動に対して敏感な同じ領域は概ね、他の全てのタイプのプロセス変動に対しても敏感であることを発見した。このことは、「公称」スタック(すなわち非対称プロセス変動のないスタック)のオーバレイに対する感度によって決定された。
【0025】
少なくとも1つの計測メトリックの少なくとも1つのレシピパラメータに対する少なくとも部分的に連続な依存性を、シミュレーションによってまたは予備的な測定で導出し、導出された依存性を解析し、この解析に従って計測レシピを決定し、決定されたレシピに従って少なくとも1つの計測測定を実施する方法が提供される。計測メトリックのパラメータに対する依存性中の極値を識別することができる。この依存性を、感度ランドスケープなどのランドスケープの形態で解析することができ、このランドスケープ中で、低感度の領域および/または低い不正確さもしくはゼロ不正確さの点もしくはコンタが、解析的、数値的または実験的に検出され、それらの領域および/またはそれらの点もしくはコンタは、測定パラメータ、ハードウェアおよびターゲットを、高い測定正確さを達成するように構成する目的に使用される。プロセス変動を、感度ランドスケープに対するその影響に関して解析することができ、それらの影響を使用して、プロセス変動をさらに特徴づけること、測定を最適化すること、ならびに、その計測を、不正確さの源に対してよりロバストにし、ウェーハ上の異なるターゲットおよび使用可能な測定条件に関してより柔軟にすることができる。さらに、ウェーハを横切って異なるターゲット設計またはレシピ設計を使用することにより不正確さおよびプロセスロバストネスを調節する技法も提供される。ウェーハを横切るプロセス変動に起因する不正確さを制御する方法、および適切なレシピ選択によりプロセスロバストネスを増大させる方法も提供される。
【0026】
図6Aおよび6Bは、計測パラメータに関して算出される計測メトリックの、先行技術に基づく高水準概略図(
図6A)および本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準概略図(
図6B)である。先行技術では、計測レシピが、1つまたは複数のパラメータ設定における1つまたは複数の計測メトリックの計算に従って選択される。計測レシピは、一組の計測パラメータP
1...P
Nに関係する(パラメータのタイプは後により詳細に例示される)。複数の離散点として
図6Aに概略的に示されている一組のメトリック値M
j(p
i,x
1...x
L)(1≦j≦k)に従ってレシピが選択されるように、一般的にウェーハ上の複数の部位(x
1...x
L)上で、1つまたは複数の計測メトリックM
1...M
kが、1つまたは複数のパラメータp
i(1≦i≦n≦N)の1つまたは複数の値に関して測定される。ある種の実施形態では、
図6Bに概略的に示されているように、前記パラメータのうちの1つまたは複数のパラメータに関して、少なくとも1つのメトリックが少なくとも部分的に連続に測定され得る。この部分的連続性は、1つまたは複数のパラメータのある範囲を指す。メトリックのパラメータに対するこの依存性は、不連続点を含むことができ、小さな範囲内の多数の離散的パラメータ値に関して定義することができる。パラメータの例は、離散的な波長、離散的な一組の照明および集光の偏光方向、離散的な一組のひとみ座標、離散的な一組のアポダイゼーションなど、ならびにこれらの組合せを含み得る。本発明の発明者らは、このような複数組の離散的な測定値をアルゴリズム的方法を使用して解析することによって、基礎をなす物理的連続性を明らかにすることができた。この物理的連続性は、計測正確さおよび性能のランドスケープと呼ばれる。離散的測定値のサンプリング密度は、シミュレーションおよび/またはデータによって決定することができ、基礎をなすそれぞれの物理的連続関数の滑らかさに依存することに留意されたい。この依存性の少なくとも部分的に連続な部分の極値(例えば極大値、極小値)を識別することができる。少なくとも1つのメトリック(M
1...M
k)の少なくとも1つのパラメータ(p
1...p
N、1≦n≦N)に対する少なくとも部分的に連続な依存性の解析に従って、完全な一組のパラメータ値(p
1...p
Nの値)および測定レシピを定義することができる。
【0027】
「正確さランドスケープ」は、非対称プロセス変動の存在下で生じる、それぞれのスタックの「正確さシグナチャ」であると理解することができ、それぞれのレシピパラメータの空間内におけるゼロになるオーバレイ信号または「オーバレイ感度」のコンタ線(またはより一般的には軌跡)の出現によって決定される。より具体的には、非限定的な例として、スキャトロメトリ(フィールド平面に検出器を有する暗視野スキャトロメトリとひとみスキャトロメトリの両方)の場合、これらのコンタは、その波長および偏光配向のような散乱放射の他のパラメータ(これらのパラメータは離散パラメータでもまたは連続パラメータでもよい)とともに連続的に変化する連結された一組の角度成分を含む。データ中のこれらのコンタの検出は、それらを支配する基礎をなす物理的特性ならびに非対称プロセス変動および対称プロセス変動の空間におけるそれらの普遍的振舞いを理解することであり、このことは、これらの角度群を利用しまたはこれらの角度群を検出された情報から除去し、それによってこの計測をより正確にするアルゴリズム的方法およびハードウェア方法の設計への扉を開く。同様に、撮像ベースのオーバレイ計測の場合には、波長および焦点の空間で対応するコンタを識別することができる。
【0028】
図1は、本発明のいくつかの実施形態、すなわちグレーティングオーバグレーティングシステムのいくつかの実施形態に基づく、シミュレートされたピクセルごとのオーバレイ感度のコンタ線の例を示す。一般化されたウッドの異常(Wood’s anomaly)とみなすことができる2重グレーティングおよび膜系内の干渉効果のためにひとみ内に「ゼロ感度コンタ」を含む波長における、フロントエンドスタックのピクセルごとの2次元感度関数A(x,y)が示されている。単位は、正規化された任意の単位であり(20に達する高値は、示されたひとみの左側にあり、-20に達する低値は、示されたひとみの右側にあり、ゼロコンタは中心からやや左にずれている)、xおよびy軸は、照明ひとみの正規化された軸であり、すなわち、x=k
x/(2π/λ)およびy=ky/(2π/λ)(k
xおよびk
yは波動ベクトルの成分、λは波長である)である。
【0029】
かなり一般的に、異なる測定条件および測定技法にわたって、ランドスケープ中には、(別のパラメータが張る空間を横切って、例えばひとみを横切って)非対称プロセス変動に起因する信号汚染とオーバレイ情報を反映した「理想的な」信号とが完全に分離され非相関化され(decorrelate)、その結果、不正確さがゼロであるランドスケープ中の特別な点となる、ある特別な点があることを本発明の発明者らは発見した。それらの点は、実験的にまたはシミュレーションの助けを借りて決定することができる。このことは、これらの点では、さまざまなプロセス変動に関連した不正確さ(例えば側壁の角度非対称性または底の傾斜)が、ランドスケープ中の精密に同じ点で、大まかにまた場合によっては非常に正確にゼロになるという意味で、普遍的に発生する。これらの観察は、ひとみオーバレイスキャトロメトリ、サイドバイサイドひとみスキャトロメトリならびに撮像オーバレイ計測に当てはまる。違いは、これらの異なるケースでは、主要なレシピパラメータがランドスケープの主要な軸を決定することである。例えば、ひとみオーバレイスキャトロメトリでは、パラメータが、主に波長、偏光および入射角であり、撮像オーバレイ計測では、パラメータが、主に焦点、波長、偏光および入射角であり、それらのパラメータはいずれかも、具体的な設定に応じて離散的または連続的であることに関係していることがある。
【0030】
本発明の発明者らは、ランドスケープ上の計測性能の1次およびより高次の導関数の振舞いを観察することによって、データおよびシミュレーションからこれらの点を識別した。例えば、オーバレイのひとみ変動性VarOVLを定義する非限定的な例としてのひとみオーバレイスキャトロメトリでは、ピクセルごとの情報に対して特定のひとみ重みを使用すると、ある波長λ
Rにおいて、不正確さが式1に従うことを示すことができる。
【数1】
ここで、式1に例示された現象が起こる点λ
Rは、後に説明する理由から共振点と呼ばれる。
【0031】
さらに、本発明の発明者らは、スキャッタロメータの入口もしくは出口における偏光角、ひとみを横切る偏光角の変動、および/あるいは、ハードウェアパラメータおよび/もしくはアルゴリズムパラメータの調節、ならびに/またはピクセルごと/固有モード(eigenmode)もしくは主成分ごと/レシピ情報ごとの重み付け(これはオーバレイもしくは信号レベルにおけるものとすることができる)を決定する任意の他の連続パラメータなどの他のパラメータでも、不正確さが、(式1と同様に表現することができる)共振を示すことを見出した。
【0032】
他のタイプの例は、感度のような計測の他のメトリック、またはその全体を本願に引用して援用する米国特許出願第62/009476号で述べられている信号を特徴づける他のメトリックによって、VarOVLを置き換えることを含む。本発明の発明者らはさらに、撮像オーバレイ計測の文脈において、ひとみ上のスキャッタロメータVarOVLを、撮像信号をそれに分解することができる調波を横切るオーバレイ結果の変動性を測定する量によって置き換え、式1の連続波長パラメータを撮像計測焦点によって置き換えることによって、式1が生じることを発見した。
【0033】
VarOVLの極小値と極大値の両方および上で論じたVarOVLの他の実現において、式1が妥当であることが見出されたことを、本発明の発明者らは強調しておく。さらに、本発明の発明者らは、スキャトロメトリ文脈において式1の極小値および極大値の基礎をなす物理的特性を、ターゲットセル内の2つのグレーティングを分離する膜スタック内での異なるタイプの(信号または感度の)干渉現象に関係づけた(すなわち、この中間膜スタックは、少なくとも部分的に光共振器として機能し、グレーティングは、光共振器の(回折)ミラーとして機能する)。本発明の発明者らは、これらの干渉現象を、膜スタック内でファブリペロー(Fabri-Perot)共振に似ていると見ることができることに注目する。詳細には、本発明の発明者らは、ファブリペロー共振に似たこれらの干渉が、ひとみ点を横切る信号の依存性を決定することを示すために、シミュレーションにおいてこの現象を観察し、理想的な信号の振舞いおよび非対称プロセス変動に起因する理想的な信号の汚染を説明するモデルを開発した。これによって、信号は、プロセス変動によって誘起された不正確さの原因となるひとみ上の汚染から非相関化され、その結果、ひとみ上でピクセルごとの情報が適当に重み付けされるとゼロ不正確さになる。例えば、ファブリペロー共振に似たこのような共振は、最下位グレーティングおよび最上位グレーティングのオーバレイについての情報を伝達する電場成分間の位相差が、特定の波長および入射角に対してπの整数倍(π×n)であることの反映である。この位相差は主に、最上位グレーティングと最下位グレーティングとを隔てる光路差によって制御される。これは、上述の共振を示し上で参照した、オーバレイ感度が(整数nに応じて)ゼロまたは極大である特別なコンタがひとみ信号上に出現する原因となる。あるひとみ平均算出を用いると、不正確さが、非対称プロセス変動に起因する信号汚染とピクセルごとの感度との間の式2で表現される相関に比例することを示すことができる。
【数2】
上式で、この積分は、集光ひとみ座標の全体にわたる。本発明の発明者らは、ファブリペロー共振に似た共振が起こると式2の積分がゼロになることを発見した。例えば、ひとみ上にゼロ感度のコンタが出現するときには、ゼロを横切るように
【数3】
を設計することができ、それに対して
【数4】
はゼロを横切らず、これによって、ひとみ上のピクセルごとの不正確さは相殺されてゼロになる。このことは、VarOVLの極大が存在する波長で起こる。同様の状況は、VarOVLが極小である点、および
【数5】
と
【数6】
が役割を入れ替える(すなわち
【数7】
はゼロを横切るが、
【数8】
はゼロを横切らない)点でも起こり、その場合も、この積分はゼロになる。これは、F(sensitivity(x))は比較的に平坦であり、一方、信号汚染は可変であり、したがって式2がゼロになり、良好な正確さを与えるためである(下の
図3Bの実証を参照されたい)。
【0034】
図6Cは、ゼロ感度コンタおよびそれらのコンタの利用を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準概略図である。
図6Cは、ひとみパラメータ(例えばひとみ座標)、照明パラメータ(例えば波長、帯域幅、偏光、アポダイゼーションなど)、アルゴリズムパラメータ(例えば算出方法および使用される統計)、ターゲット設計パラメータ(例えばターゲット構造、ターゲット構成、層パラメータなど)などのさまざまなパラメータに関するメトリックの値の(多数の軸によって示された)n次元空間を概略的に示す。これらのパラメータはいずれも、具体的な設定に応じて離散パラメータでもまたは連続パラメータでもよいことに留意されたい。
図1、2A、2Bおよび3Aにより詳細に例示されているように(下記参照)、ゼロ感度コンタは概略的に示されている。ゼロ感度コンタ上の不正確さは非常に大きく、発散することもあるが、ゼロ感度コンタ(概略的にボックスとして示される)の周囲の領域で加重平均することによって導出されたメトリック値は非常に小さく、ゼロになることもあることを本発明の発明者らは発見した。メトリックが加重平均された領域は、パラメータ(例えば1つもしくは複数のひとみ座標、および/または1つもしくは複数の照明パラメータ、および/または1つもしくは複数のターゲット設計パラメータなど)の任意のサブセットに関して定義することができることに留意されたい。本明細書に開示された実施形態によって例示されているように、この驚くべき結果を使用して、正確さを向上させ、測定手順を改良することができる。
【0035】
図2Aおよび2Bは、本発明のいくつかの実施形態に基づく、共振を示す例示的なシミュレーション結果を示す。
図2Aおよび2Bは、Pupil3Sを√(VarOVL)として示した図であり、これらの図は、VarOVLの極値(
図2Bでは破線によって明示的に示されている)で不正確さがゼロになることを示している。シミュレートされた具体的な非対称性は、異なるフロントエンドプロセスに対する「側壁角」非対称性タイプである。他の非対称性タイプでも同じ現象が観察される。
【0036】
図3Aおよび3Bは、本発明のいくつかの実施形態に基づく、信号および不正確さを示す追加の例示的なシミュレーション結果を示す。
図3Aは、ひとみスキャトロメトリにおけるフロントエンドアドバンストプロセスでの不正確さおよびPupil3Sを波長に対して示し(
図2A、2Bと同様に最大分散で不正確さがゼロになることを示している)、
図3Bは、理想的なピクセルごとの信号(A)および信号汚染(10・δA)を示し、信号(A)および信号汚染(10・δA)はともに、中央帯からのひとみ信号の断面(|y
pupil|<0.05)に対するものであり、y軸の単位は任意である。
図3Bでは、理想的な信号(A)が、共振に近いゼロを横切るが、δAと呼ばれる信号汚染の符号は変わらないことに留意されたい。
【0037】
以下では、プロセス変動の影響の対称性に関して不正確さランドスケープを解析する。オーバレイ計測技術はしばしば、信号の対称性の破壊を測定する。プロセス変動(PV)に起因する一部の不完全性は、オーバレイに起因する非対称性に加えて測定されるターゲットの非対称性を誘起することができる。このことは、そのプロセスが必要とするオーバレイ計測バジェット仕様を満たすときに決定的に重要となり得るオーバレイ測定の不正確さにつながる。それらの問題を解決する先行技術の方法論は、特定のレシピ(波長、偏光およびアポダイゼーション)を用いてイントレインで測定されるプロセスロバストなターゲット設計を構築するものだが、本発明のある種の実施形態は、不正確さがゼロになると予想される不正確さランドスケープ中の点または線を識別する解析手法および実験手法、および、一般には、不正確さの源を特徴づけるためにランドスケープを理解する解析手法および実験手法を提案する。
【0038】
例えば、グレーティングオーバグレーティング構造を備えるターゲットは、特定の属性およびそのランドスケープを定義する波長スペクトル中のシグナチャを有する光学デバイスと考えることができる。このランドスケープは、非対称プロセス変動(セル間変動もしくはセル内変動、またはグレーティング非対称性などのターゲット内の対称性を破壊するPV)、ならびに対称プロセス変動(同じターゲット内の対称性は破壊しないが、異なるターゲット間の層の異なる厚さ、n&k変動などの異なるターゲット間の変動につながるPV)に敏感である。ウェーハを横切る異なる対称プロセス変動が、ウェーハの中心に比べて重要なPV(対称PVと非対称PVの両方)が予想されるウェーハの縁では測定されたターゲット設計がもはやプロセスロバストでないような形のランドスケープのシフティングにつながることがある。これらの任意の因子から生じた不正確さならびにターゲット設計自体によって生じたデューティサイクル、ピッチなどに依存する不正確さを、波長スペクトル中に固有のシグナチャを有する信号によって特徴づけることができる。このシグナチャまたはランドスケープは、感度Gならびにその感度のひとみ積率および/もしくはその感度の単調関数によって、または(ひとみ平面における)Pupil3S(λ)メトリックによって、または他のメトリックによって明らかにすることができる。Pupil3S(λ)のランドスケープは、
図2Aに示されているように、不正確さがdPupil3S(λ)/dλとして振舞うピークの領域とピーク間の平坦領域の2つの領域に大まかに分割することができる。それらの異なる領域は、異なる正確さ振舞いを決定するひとみ内の明確に定義された属性を備える。
【0039】
ターゲットのシグナチャは、ピーク領域および平坦領域の数および連続、ピーク間の距離、ならびにピークの複雑さによって定義することができる。この複雑さは、他のメトリック間で、ひとみ像でそれが変換される方式によって定義される。本発明の発明者らは、Pupil3Sの異なる強度または不正確さの異なる強度が、異なるランドスケープ(またはターゲットシグナチャ)を定義せず、同じ非対称プロセス変動の異なる強度を定義することに注目する。この観察は「LS不変性(invariance)」と呼ばれる。
【0040】
さらに、本発明の発明者らは、同じターゲットに対してそのランドスケープに異なる影響を与えるであろう2つのカテゴリ、すなわち対称プロセス変動と非対称プロセス変動に、プロセス変動を分割することができることに注目する。
【0041】
対称プロセス変動は、同じターゲットの2つのセル間の対称性を破壊せず、かつ/またはオーバレイおよび誘導オフセットを超えるセル内非対称性を導入しない。一例として、ウェーハの部位のターゲット内で、異なる部位に位置する同じターゲットに比べて1つまたは複数の層の厚さが変化する。それらの2つの異なるターゲットからの散乱波間の光路差(OPD)は、上で定義された同じ属性を第1近似で維持するキープする、ランドスケープの(最大数十ナノメートルの)大域シフトにつながるであろう。
図4は、本発明のいくつかの実施形態に基づく、ランドスケープのシフティングを示す対称プロセス変動下でのシミュレーション結果の例を示す。
図4は、対称プロセス変動(PV、示されたケースでは層厚の変動)の大きさを0から3nm、6nmおよび9nmに変化させても、Pupil3Sおよび不正確さランドスケープは単にシフトするだけであることを示している。
図2A、2Bおよび3Aに示された、Pupil3Sと不正確さがゼロになる点との対応は、このランドスケープのシフティングでも維持されており、単にそれが異なる波長だけが異なっている。数ナノメートルのスケールのプロセス変動は、ランドスケープのシフティングを数十ナノメートルのスケールで引き起こすことにも留意されたい。任意の所与の波長に対する結果は、それぞれのレシピ結果を表す。プロセス変動は、不正確さが低い平坦な領域から不正確さが高いことがある共振領域へ、ランドスケープをシフトさせ、したがって、レシピに大きな不正確さを導入することがあり、先行技術の考察によれば、そのレシピは、低い不正確さを有するとみなされることにも留意されたい。
【0042】
非対称プロセス変動は、ターゲット内の対称性を破壊するプロセス変動である。それらの非対称プロセス変動を、セル間変動、グレーティング非対称性、アルゴリズム不正確さ、非周期性プロセス変動などの異なる主要なカテゴリに、非限定的に分割することができる。セル間変動は、ターゲットの2つのセル間の変動(例えば2つのセル間の厚さ変動、セル間の異なるCD(微小寸法)など)を表し、この変動も、その強度に比例してランドスケープをシフトさせることがあるが、シフトの程度は通常、対称PVに比べてかなり小さい。セル間変動に起因するランドスケープの不正確さおよびシフトもオーバレイに依存する。グレーティング非対称性は、ターゲットのグレーティングと同じ周期を有する非対称性(例えばグレーティングのSWA(side wall angle(側壁角))非対称性、非対称トポグラフィ(topographic)変動など)であり、これは、第1近似においてオーバレイに依存しない。アルゴリズム不正確さは、信号の振舞いに対するあるいくつかの仮定に起因し、そのランドスケープ振舞いは、非対称プロセス変動に関して同じである。非周期性プロセス変動は、ターゲットセルの周期性(例えば縁からの回折、セルの有限のサイズに起因する環境による光汚染、セルを横切るグレーティングプロファイル変化を誘起するセル内プロセス変動など)を破壊し、事実上、上述のプロセス変動の組合せとみなすことができる。
【0043】
これらの区別をさまざまに使用して、計測測定の正確さを向上させることができる。例えば、予想されるプロセス変動を(例えばLS不変性に関して)ウェーハを横切って(例えば測定データまたはシミュレーションを使用して)マップした後、プロセス変動によるシフトに関する適切な方向にランドスケープをシフトさせることによって(
図4参照)、ウェーハの上のターゲット設計を、プロセス変動に適合するように操作することができる。別の例では、ウェーハの異なる位置の異なるターゲットがイントレインで分類され、次いでLSフィーチャに関して比較される。ある種の実施形態は、ランドスケープの同じ位置に留まるために、すなわち対応する光学的(照明)変動によってプロセス変動を補償するために、異なる部位を横切って照明の波長(または他の適当な物理もしくはアルゴリズムパラメータ)を調整することを含む。ある種の実施形態では、所与のメトリックによって定義される計測正確さを最適化するために、ランドスケープのある種の領域が、例えば照明波長もしくは照明のスペクトル分布または他の物理またはアルゴリズムパラメータを調整することによって最大の正確さで測定されるように選択される。本発明の発明者らは、ランドスケープの理解の解析および使用は、プロセス変動の影響に対する計測の弾力性を向上させること、および測定レシピを最適化することを可能にするに注目する。
【0044】
ある種の実施形態は、導出されたランドスケープに従う不正確さを低減させるために、ピクセル重みを割り当て、それを最適化することを含む。少なくとも2つのオーバレイスキャトロメトリ測定、すなわち設計されたオフセットF1を有するスキャトロメトリセルの測定および設計されたオフセットF2を有するスキャトロメトリセルの別の測定を仮定する。線形レジームでは、理想的なスキャトロメトリ信号が、オフセット(例えばグレーティングオーバグレーティングセル内のグレーティング間のオフセット)だけに起因し、D(x,y,OF)~OFに従う、ひとみ非対称性Dを示し、セルの全オフセットOFは、2つのスキャトロメトリセルに関してそれぞれF1+OVLおよびF2+OVLに等しい。OVLはオーバレイを表す。
【0045】
全ての照明ピクセルが、ウェーハの電磁応答の独立した成分を表すことを使用して、ピクセルごとにオーバレイを測定することができる。ピクセルごとのオーバレイは、対応してOVL(x,y)によって示される。(x,y)はピクセル座標である。ターゲット不完全性および雑音がない場合、ピクセルはそれぞれ同じオーバレイ値を有し、異なるピクセルのオーバレイに対する感度は変化する。この感度は、2つのそれぞれのセル上の差分信号間のピクセルごとの差D1(x,y)およびD2(x,y)によって近似することができる。オーバレイの最終的な推定を得るため、多くの個々のピクセルから得られた値を、正確さを向上させるように最適化されたピクセルごとの重みを使用して平均する。以下では、ピクセルごとの重みの導出を説明する。この導出は、解析的に表現することができ、トレインによってまたはシミュレーションで実行することができる。
【0046】
例えば以下のタイプのランドスケープ領域を識別することによって、特定の感度ランドスケープを導出し、特徴づけることができる。(i)平坦領域。この領域は、平坦なひとみのピクセルごとのオーバレイ依存性、したがって(例えば
図2Aのピーク間に示されているような)照明波長などの対応するそれぞれの変数に関するオーバレイの小さな導関数を有する。さらに、平坦領域の大部分は正確である。(ii)単純なゼロ感度ひとみコンタと、波長を横切るひとみオーバレイ変動性の単純なピークとを含む単純な種類の共振領域は、(例えば
図2Bに示されているような)不正確さのゼロ交差を有する。本発明の発明者らは、
【数9】
として定義される同じパリティ(parity)を有する((ii)に定義された)2つの共振領域間には、((i)に定義された)「良好な」平坦領域、すなわち不正確さのゼロ交差を含む平坦領域が存在することに注目する。したがって、同じパリティの2つの共振領域(ii)間の平坦領域(i)に沿ってオーバレイ値を積分すると、(ii)正確なオーバレイに対する非常に良好な推定が得られる。すなわち、同じパリティの2つの共振領域間の間隔に沿った不正確さの波長積分はゼロに非常に近い。これらの領域の識別は、ピクセルごとの重みを導出および改良し、最も正確なランドスケープ領域を選択するために、多数の波長で多数の測定を実行することによって実行することができる。ある種の実施形態では、他の照明変数(例えば偏光およびアポダイゼーション)を使用して、不正確さランドスケープを特徴づける。この手法は、ある範囲の変数値にわたって感度の振舞いを解析して、報告された正確なオーバレイ値を有する点までひとみアルゴリズムを調節し、変数値範囲内の任意の点に対する正確さ尺度を提供するという意味で、大域的と特徴づけることができる。
【0047】
この積分は、波長のようなランドスケープ中の任意の連続軸に沿った、重み付けされたもしくは重み付けされていない異なる積分、および/または式2~4で論じた形態の信号の当てはめの実行を含むと一般化することができ、ひとみ座標(x,y)を、一般化された一組の座標に一般化することを含むことは、波長、偏光、ターゲット設計、アポダイゼーションなどのような他のパラメータを含む。
【0048】
ランドスケープの局所的属性を上述のように使用することに加えて、ある種の実施形態では、拡張された連続したランドスケープ領域の属性およびランドスケープの大域的特徴すらも見ることによって、より多くの情報が得られる。ランドスケープのどの領域がより高密度のサンプリングを必要としているのか、およびランドスケープのどの領域がより高密度のサンプリングを必要としていないのかを決定するために、まばらに分散したさまざまな点におけるランドスケープの(感度などの)既知の属性を使用することができる。本明細書では、ランドスケープの異なる領域に対して必要なサンプリング密度を決定するアルゴリズムが提供される。さまざまなメトリックのランドスケープの効率的な測定を可能にするため、共振および/またはピークの存在を使用して、どの領域をより高い密度でサンプリングしなければならないのか、およびどの領域に対しては低い密度でよいのかを決定することができる。ある種の実施形態は、できるだけ少数の点を測定することによってランドスケープをマップする適応アルゴリズムを含む。本明細書に開示された原理に従ってサンプリングが適切に実行される限りにおいて、ランドスケープは、部分的に連続でなければならないというわけではないことに留意されたい。
【0049】
ある種の属性を満たすランドスケープの連続領域のサイズは、これらの領域の対称プロセス変動に対するロバストネスを定量化する対応するそれぞれの尺度の役目を果たすことができる。このような属性の例は例えば、あるしきい値よりも低いかまたは高いある種の計測メトリック、そのランドスケープにまたがる連続パラメータに関する計測メトリックの導関数のサイズさらにはオーバレイの導関数のサイズなどを含む。対称プロセスロバストネス尺度は、ピーク領域と平坦領域の相対サイズを使用して定義することができる。
【0050】
連続ピーク(例えば共振)における(例えばオーバレイまたはオーバレイ変動値の)ランドスケープの傾きの相対的符号を使用して、連続ピーク間の対応するそれぞれの中間平坦領域が正確な平坦領域であるかどうかを判定することができる。例えば、本発明の発明者らは、ある種のメトリック(例えばピクセルごとのひとみ平均感度)の符号フリップの数はプロセス変動に対してロバストであり、ほぼ不変であり、したがって、ランドスケープについてのロバストな声明を発する手段の役目を果たすことができることを見出した。例えば、それぞれの単純な共振では、ピクセルごとのひとみ平均感度の符号が変化する。これは、共振が単純な共振ではなく2重共振であるのかどうか、または疎なランドスケープサンプリングアルゴリズムによって共振が見逃されていないかどうかを検出する役目を果たすことができる。本発明の発明者らは、この情報を使用して、共振から比較的に遠くに位置する測定点間の共振の存在を検出した。ピークは、計測メトリックの符号フリップの数に従って識別することができ、ことによると、計測メトリックの符号フリップの数に従って、例えば単純ピークとしてまたは複合ピークとして特徴づけることができる。
【0051】
良好な正確さに対する値を得るために、その不正確さがランドスケープの平坦領域または共振領域において振動性であると判定されたある種の計測メトリックを、それぞれの領域タイプにわたって積分することができる。この計測メトリック(例えばオーバレイ)を、指定された1つまたは複数のランドスケープ領域にわたって積分して、測定の正確さを増強することができる。
【0052】
ある種の実施形態では、ウェーハ上の部位を横切るランドスケープの異なる領域、ことによると遠く離れた異なる領域のある種の計測メトリック、または他のパラメータにわたるある種の計測メトリックの相関を使用して、メトリック間の独立性の程度、すなわち、対称プロセス変動下と非対称プロセス変動下の両方でそれらのメトリックが異なる振舞いを見せるかどうかを予測する。ある種の実施形態は、それによって推測される独立した領域を利用して、計測メトリックの妥当性またはそれらの領域上で測定されたオーバレイの妥当性を評価する。
【0053】
ある種の実施形態は、ランドスケープの完全な解析が必要ないという意味でより特異的な手法を含む。例えば、ひとみピクセルごとのオーバレイ値の変動性の極大値および極小値を見つけるため、ひとみピクセルの数、位置および重みを最適化することによって、ひとみピクセルごとのオーバレイ値を平均することができる。例えば、この最適化を可能にするため、最大を達成し、最小を得ることを回避するために、ひとみ内のゼロ感度コンタ線を検出し、これらのコンタ線に関するある方式でひとみ内の関心領域(ROI)を画定することができる。平均算出のためのピクセルを保持している領域は、ひとみ上の連結された成分を形成してもまたはしなくてもよいことに留意されたい。それらが連結されてない場合、それらの位置は、測定された差分信号間の差を観察することによってオンザフライで(on the fly)検出することができるピクセルごとの感度の値およびその符号によって決定することができる。ある種の実施形態では、最適化費用関数を、平均感度の単調に減少する関数として、および/またはひとみを横切るピクセルごとの感度の単調に増大する偶関数として定義することによって、ピクセル選択が最適化される。シミュレーションおよび理論は、ランドスケープの異なる部分で両方の方法論が成功することがあることを示す。これは、符号が反対である感度を有するピクセル間では、不正確さが相殺される傾向があるためである。最適な相殺はしばしば、ピクセルごとの変動性および/または費用関数の極値によって示される。平均するピクセルの選択は、実行中にまたはイントレインで、アルゴリズムまたはハードウェア(例えばそれらの全体を本願に引用して援用する米国特許第7,528,941号および8,681,413号ならびに米国特許出願第13/774025号および13/945352号で論じられている光透過変調器)によって実行することができることに留意されたい。後者の場合、この最適化を、フィールドオーバレイスキャトロメトリで実行することもできる。
【0054】
ある種の実施形態は、一方の(照明ひとみジオメトリおよび/または振幅透過の選択によって決定される)照明ひとみ透過関数と、他方の物理的なひとみを横切るOVL情報内容の分布との間のミスマッチを補償するために、(入射kベクトルの共通のx成分を有するピクセルのような)物理的に動機付けされたピクセルのグループの信号および/またはオーバレイ値をビン分割し、次いでそれらのビンを不均一に平均することによって、ひとみ重みを幾何学的に割り当てることを含む。非限定的な例として、グレーティングオーバグレーティングSCOLターゲットの多くのケースでは、OVL情報が、ひとみを横切って主としてグレーティング周期性の方向に変化する。ある種の実施形態は、これに適合するように適正に選択された幾何学的な重みを含む。
【0055】
ある種の実施形態は、ランドスケープ(信号およびピクセルごとのオーバレイ値)を2つ以上の測定点に関して内挿および/または外挿して、集められた未処理の信号に新たな信号が連結される方式を制御する連続パラメータに依存した連続人工信号を生成する正確さ向上アルゴリズムを含む。次いで、パラメータの連続空間を、選択される前の対応する費用関数のランドスケープとして探索することができる。この費用関数を、内挿/外挿パラメータに関して最適化することができる。次いで、この最適化点が人工信号を定義し、この人工信号から正確なオーバレイを計算する。最適化関数は、平均されたその感度、感度の2乗平均平方根(root mean squared:RMS)、オーバレイひとみ変動性、(ツールの雑音モデルによる)オーバレイの推定される精度およびその全体を本願に引用して援用する米国特許出願第62/009476で論じられている他のひとみフラグ、ならびに/またはそれらのそれぞれの逆メトリック(inverse metric)などの、人工信号に関係した任意のメトリックからなることができる。撮像オーバレイ計測の文脈でも、最適化されたこれらの関数を、調波を横切るオーバレイ変動性、および/または像コントラスト、および/または測定値の推定される精度によって置き換えることにより、同様の方法論を適用することができる。これらのアルゴリズムが報告する最終的なオーバレイは、ランドスケープ中の特別な点上またはその一般化のオーバレイに対応する近似された人工信号のオーバレイであり、これは、実際には測定されなかったが正確である。
【0056】
さらに、ある種の実施形態では、ランドスケープが、1つまたは複数のパラメータを使用することによって重み付けされもしくは調節された多数の測定値を結合したパラメータランドスケープ、または信号の異なる次元の異なる測定値からの寄与を有する多次元信号など、2つ以上の測定値から導出されたより複雑な信号を含み得る。これらの2つの例は非限定的な例である。この多数の測定値は、ターゲットに関するひとみ平面および/またはフィールド平面内の未処理の測定値または処理された測定値とすることができる。パラメータランドスケープの場合には、(i)共振ピークの数、位置および特性などの指定された特性を有するランドスケープを生じ、(ii)そのパラメータランドスケープを、指定されたメトリックに関して最適化し、かつ/または(iii)オーバレイ測定値の正確さを増強するように、パラメータを調整することができる。この調整は、現象論モデルを利用することができる。このランドスケープを、(ひとみ平面内またはフィールド平面内の)多数の未処理の信号および/または処理された信号を、ことによると指定されたパラメータに従って結合することによって計算された人工信号と見ることができる。生成されたこの人工信号を、パラメータを変化させることによって修正することができる。この人工信号をある種のメトリックに従って最適化し、その信号を使用して、正確なオーバレイ測定を実施することができる。(ひとみ平面内またはフィールド平面内の)未処理の信号および/または人工信号を現象論モデルに当てはめて、オーバレイ、および当てはめパラメータの役目を果たす他の計測メトリックを得ることができる。例えば、理想的な信号からのこの信号の偏差の現象論モデルを使用することによって、測定された信号をそのモデルに当てはめることができる。この当てはめでは、当てはめパラメータが、理想的な信号からの偏差を記述するオーバレイおよびパラメータを含むことができ、この当てはめから、正確なオーバレイおよび理想的な信号からのこの信号の偏差を得ることができる。
【0057】
ある種の実施形態は、単一の信号を異なる方式で処理する正確さ向上アルゴリズムを含む。それらのアルゴリズムは全て、1つまたは少数のパラメータの変化によって制御される。例えば、ピクセルごとの重みを連続的に変化させることができ、それを常に、ピクセルごとの感度の連続的に増加する関数としながら、この関数を定義するN個のパラメータが空間V⊂RNをまたぐようにし、この空間内の原点が、外挿する特別な点になるようにする(しかし、その中ではツールの問題により測定することができない)。例えば、その点は、像中の最も敏感なピクセルだけがOVLを決定する点に対応することができる。ここで説明した方法論は、Vの原点に外挿し、-例えば、ひとみ内の最大感度を有する点を中心とし、可変パラメータを有する半径Rに関係したひとみサンプリングを用いてオーバレイを測定したときに-オーバレイの結果を、その外挿された点におけるオーバレイであると報告するものであり、式OVL(R)=A+B×R+C×R2+・・・を算出し、それを結果に当てはめ、次いでR=0に外挿することができる。このことは、新たなオーバレイを「A」に等しいとすることを意味する。
【0058】
ある種の実施形態は、モデルへのデータの当てはめを実行する正確さ向上アルゴリズムを含む。それらのモデルは、基礎をなす物理モデルならびに/または測定された層および/もしくは属性が似た層のシミュレーション結果に基づくものである。少なくとも1つの計測メトリックの少なくとも1つの測定を、シミュレーションによってまたは予備的な測定で、少なくとも1つのレシピパラメータを使用して実行することができる。次いで、前記少なくとも1つの測定を、前記少なくとも1つの計測メトリック(非限定的な例ではオーバレイ)の前記少なくとも1つのレシピパラメータ(下記の例を参照されたい)に対する依存性を記述する現象的モデルに当てはめ、この当てはめから、少なくとも1つの対応するそれぞれの補正された計測メトリックを導出し、それを使用して、計測レシピを決定すること、および決定されたレシピに従って計測測定を実施することができる。前記少なくとも1つの測定は、ランドスケープなどの、前記少なくとも1つの計測メトリックの前記少なくとも1つのレシピパラメータに対する少なくとも部分的に連続な依存性を含むことがあるが、単一の測定値または離散的な測定値を含むこともある。上述のとおり、このモデルは、オーバレイおよび不正確さにつながる因子を記述する他のパラメータの関数として、非理想的な信号がどのように見えるのかを予測する。このモデルは、オーバレイならびに不正確さを支配するパラメータを当てはめることによって、この測定から導出することができる。
【0059】
ある種の実施形態では、この現象論モデルが、(指定されたひとみ平面測定値、例えばひとみ像または指定されたフィールド平面測定値などの)信号タイプの、少なくとも1つの計測メトリックおよび少なくとも1つの偏差因子に対する依存性を記述することができる。この少なくとも1つの偏差因子は例えば、レシピパラメータに関係している可能性がある不正確さに寄与するさまざまな因子である。信号タイプに関係した少なくとも1つの測定を実行した後、補正された少なくとも1つのそれぞれの計測メトリック(例えば補正されたオーバレイ)および対応する偏差因子を導出するために、この現象論モデルを使用して、少なくとも1つの測定を当てはめることができる。
【0060】
ある種の実施形態では、導出され補正された前記少なくとも1つの計測メトリックに従って計測レシピが決定され、決定されたレシピに従って少なくとも1つの(追加の)計測測定が実施される。
【0061】
この現象論モデルは、シミュレーションによってまたは予備的な測定で導出された、前記少なくとも1つの計測メトリックの前記少なくとも1つのレシピパラメータに対する少なくとも部分的に連続な依存性(例えば開示された任意のランドスケープ)から導出することができる。
【0062】
例えば、この差分信号の当てはめを実行して下式の形にすることができる。
D(x,y,OF)=A(x,y)×OF+H(x,y;P
1,P
2,P
3,...)×F(OF) 式3
上式で、F(OF)は、オフセットOFの関数、H(x,y;P
1,P
2,P
3,...)は、ピクセルごとの感度、ランドスケープに沿った(例えば、ことによるとランドスケープに沿ったシミュレーションおよび/または追加の信号測定に基づく偏光、角度、波長などの変数に沿った)ピクセルごとの感度の導関数、ならびにピクセルごとの感度のひとみ積率(例えばひとみ平均値、ひとみRMSなど)のような測定された属性を記述する関数の線形空間V内の、ひとみ座標(x,y)および当てはめられたパラメータP
iの関数である。空間Vに含まれる関数は、シミュレーションおよび/またはさらなる調査から決定することができる。例えば、本発明の発明者らは、空間Vが上記の例を含む場合、フロントエンドプロセスのある種の層の不正確さは、
図5に示されているように、大幅に改善されることを発見した。
図5は、本発明のいくつかの実施形態に基づく、例示的な正確さ増強アルゴリズムのシミュレーション結果を示す。
図5は、当てはめ改良アルゴリズムを使用した先進のプロセスおよび当てはめ改良アルゴリズムを使用しなかった先進のプロセスのフロントエンド層の不正確さを示す。
【0063】
図5に示された当てはめは、一般に信号のモデルとそれらの対応するデータとの間の距離の増加関数である費用関数を使用して実行される。使用ケースごとに、費用関数を定義する(数学的意味における)ノルム、非限定的な例としてはL
2(ユークリッドのノルム)、L
1および/またはL
∞(最大ノルム)を決定することができる。この費用関数は一般に、ピクセルを横切る平均とすることができ、均一な重みを用いてまたは上述のピクセルごとの重みを用いて算出することができる。特に、この重みは、空間Vの基礎を形成する、後で下記に定義される関数からなることができる。(OVLであり、セルOF
cell=((設計されたオフセット)
cell+OVL)のオフセットの中にエンコードされた)関心の当てはめパラメータとは無関係の平坦な方向を費用関数が有する状況を回避するため、特異値分解を使用することができ、または、このようなさまざまな当てはめを実行し、それぞれに対して、当てはめの安定性および予想される精度の推定値(計測ツールの雑音モデルが与えられた場合)の単調に増加する関数である当てはめ忠実度を算出することができる。当てはめの安定性は、当てはめパラメータの分散の単調に増加する関数によって、通常の最小2乗法に従って決定することができる。次いで、OVLの最終的な結果は、算出された当てはめの平均であり、この当てはめ忠実度に従って重み付けされる。これらの当てはめは、実際の信号の空間で、または実際の信号の有用な変換の空間で実行することができる。例えば、D
cell(x,y)を、線形OF
cell+H(x,y)×F(OF)中の線形項となるように当てはめ、かつ/または、
【数10】
を、独立セル+
【数11】
中の線形項となるように当てはめることができる。
【0064】
ある種の実施形態では、この解析に対して、1つまたは複数のパラメータが使用され、さらに、特に必ずというわけでもまたはそれだけというわけでもないが、ひとみ座標が使用される。例えば、照明パラメータおよび/またはターゲット設計パラメータが、式2~4のxおよび/またはyを置き換えることができる。これらの式中の
【数12】
および(x,y)を、それぞれのパラメータに関して連続的でありかつ/または離散的であることができ、波長、偏光、アポダイゼーション、他のパラメータ、ターゲット設計の測定レシピおよびパラメータなどのパラメータを含むことができる一組の自由度で、置き換えることができる。
【0065】
有利には、アルゴリズムおよびハードウェアの改良が達成され、ならびに、オーバレイ正確さ性能を向上させるより良好なターゲット設計が達成される。さらに、異なるターゲット設計および/または異なる計測レシピおよび/または開示されたアルゴリズムを使用することによって、ランドスケープに対するプロセス変動の影響に対してより弾力的に計測が実施される。
【0066】
ある種の実施形態は、ツールレシピの空間を横切って不正確さが変化する方式を使用し、光学オーバレイを有効な正確さルーラに変えることによって、スタックの正確さシグナチャからオーバレイのグラウンドトルース(ground truth)を導出する方法を提供する。ある種の実施形態は、同じレシピを有する異なるターゲット設計を使用すること、または、ウェーハを横切って同じターゲット設計を有する異なるレシピをイントレインで使用すること、または、ターゲットとレシピの組合せを使用すること、感度ランドスケープおよびそれぞれのオーバレイ振舞いについての知識を利用することを可能にする。
【0067】
ある種の実施形態は、ひとみ信号を使用して、より具体的には、ひとみ内(および非スキャトロメトリ技法の場合には一般的なパラメータ空間内)のゼロオーバレイ感度のコンタを使用して、オーバレイに対する全体の計測感度、オーバレイ結果の正確さおよびプロセスロバストネスを向上させるアルゴリズムを設計する方法を提供する。
【0068】
ある種の実施形態は、計測正確さまたはひとみ特性を、波長の連続関数または高密度にサンプリングされた関数としてシミュレートすることによって、オーバレイ計測正確さを、照明波長または照明スペクトル分布の関数として特徴づける方法を提供する。
【0069】
ある種の実施形態は、オーバレイ計測正確さまたはひとみ特性を、波長の連続関数または高密度にサンプリングされた関数としてシミュレートすることによって、計測レシピを選択する方法を提供する。
【0070】
ある種の実施形態は、計測正確さまたはひとみ特性を、波長の連続関数または高密度にサンプリングされた関数としてシミュレートすることによって、オーバレイ計測ターゲットを設計する方法を提供する。
【0071】
ある種の実施形態は、計測正確さまたはひとみ特性を、波長の連続関数または高密度にサンプリングされた関数としてシミュレートすることによって、レシピを選択または最適化する方法を提供する。
【0072】
ある種の実施形態は、ランドスケープの部分を記述する多重散乱モデル、特にランドスケープの正確さの低い領域を記述する多重散乱モデルを含む。このモデルは、これらのランドスケープフィーチャを識別する目的に使用することができ、対応するそれぞれのアルゴリズムおよび計測方法論で実現することができ、ならびに上で説明した低い不正確さを提供する測定パラメータを選択する目的に使用することができる。後に示すモデルは、シミュレーション結果によって検証されたものである。例えば、14nm論理ノードに対応するパラメータを用いる非限定的な例では、ひとみ中心にあるλR=477nmのコンタを使用して、低い不正確さを生じる照明波長を提案することができる。単純な解析モデルからの結果と完全なRCWA(rigorous copled-wave analysis(厳格な結合波解析))シミュレーションとの比較では、後者が、低不正確さ照明波長としてλ=500nmを提案し、これは、単一散乱モデルからの結果とよく一致する。
【0073】
本発明の発明者らは、照明光の帯域幅の影響を調べ、ひとみオーバレイスキャトロメトリについては、照明帯域幅を、ランドスケープを制御し、(例えばオーバレイ分散の)信号特性のランドスケープ導関数を変化させ、必要な場合には感度を平滑化するための追加のハードウェアパラメータとして使用することができることを発見した。
【0074】
撮像の文脈では、この振舞いが、信号汚染と理想的な信号との間の相関がある焦点スライスでゼロになる方式に関係し、これを記述する式は、(パラメータの適切なマッピングを有する)上記の式2と同じである。
【0075】
ある種の実施形態は、上述のメトリックを使用してハードウェアを共振点に調節し、共振点への近接を決定する(波長、偏光、1/4波長板配向、焦点などのような)ハードウェアパラメータを変化させることによって、これらの結果を利用することができる。
【0076】
ある種の実施形態は、共振への近接を決定するハードウェアパラメータの異なる値を測定すること、ならびに共振点に対するオーバレイ値および最適化メトリック(例えばVarOVLまたは感度)を外挿または内挿することを含む。
【0077】
ハードウェアパラメータ、測定ピクセルまたはひとみ信号の主成分の異なる値において、信号の線形結合から新たな信号を生成する。それらの線形結合は、アルゴリズムパラメータによって、および上述のメトリックの極値を見つける最良のアルゴリズムパラメータを見つけることによって支配される。本発明の発明者らは、アルゴリズムパラメータが、最適化されたメトリックが極値を有する値に等しいときには、アルゴリズム調節の前後に最適化された量の値を比較することによって元の信号から導出されたその値に比べて、不正確さが小さいかどうかを判定することができることを発見した。
【0078】
ある種の実施形態は、(VarOVLおよび感度のような)信号特性の微分を使用して、上で説明したようなランドスケープ中の異なる領域を、ランドスケープ上の勾配(式1の左辺)に従って区別し、開示された方法を適用するランドスケープ中の有用な領域を識別する。例えば、本発明の発明者らは、VarOVL自体の値、ハードウェアパラメータに関するOVL導関数、およびハードウェアパラメータに関するVarOVLの導関数が、ランドスケープを分割する良好な指標であることを発見した。開示された方法論は、レシピ最適化の実行時に適用することができ、さらに、例えば対称プロセス変動に起因するランドスケープシフトをオンザフライで補償するために適用することができる。ランドスケープ中の共振点は、効果的な調節をオンザフライで可能にするため、特に有用な指標である。本発明の発明者らはさらに、(最下位グレーティングとシリコン基板との間のバルク材料を欠く)単一の膜層からオーバレイマークが構築されているときには、上記の現象が特にロバストになることを発見した。したがって、例えば、ターゲットの最下位グレーティングの下方のおよび/またはターゲットの最下位グレーティング内の金属堆積物のダミフィケーション(dummifications)(小規模な構造体)およびセグメント化を使用することによって、最下位グレーティングの下方への電磁波侵入を最小化するように、計測ターゲットを設計することができる。
【0079】
本発明の発明者らは、ファブリペロー現象に似た現象の存在下で、式4、5に表現された以下の関係が成立することがあることを発見した。
【数13】
【数14】
上式で、c(λ)およびb(λ)はスカラー、D(x)、E(x)、F(x)およびG(x)はある既知の関数であり、例えばF(x)=x
3である。ある種の実施形態では、式4を使用し、実験に基づくVarOVLを式4に基づくVarOVLの推定値に当てはめることによって、信号汚染のピクセルごとの推定をデータから提供することができる。ゼロ不正確さ共振の多くは、非対称プロセス変動によってではなく公称スタックおよびターゲット設計振舞いによって決定されたそれらのランドスケープを有するため、ある種の実施形態は、不正確さのこのようなゼロ交差を含み、VarOVLの極値によって容易に識別可能なランドスケープを生み出すターゲット設計を、(例えば関連パラメータ軸に沿ったLSシフトを制御するようにターゲットパラメータを調節することによって)提供する。非限定的な例では、誘導オフセットにハーフピッチを追加することによって、LS中の共振を移動させることができる。
【0080】
ある種の実施形態は、プロセス変動をオーバレイから分離する以下の方法論を含む。ピクセルごとの差分信号D
1(pxl)およびD
2(pxl)が与えられた場合、以下のxおよびyを、
【数15】
および
【数16】
として定義することができる。(バー(bar)非対称性またはターゲットのパッド1からパッド2への膜厚の変化のような)異なる種類の信号汚染は、式6に表現されているように信号に入る。
【数17】
上式で、ΔP
mは、公称(理想)スタックからのプロセス変動のピクセルに依存しない大きさ、f
x,m、f
y,mは、そのプロセス変動がxおよびyにどのような影響を及ぼすのかについての対応するひとみ依存性であり、例えばシミュレーションによって推論することができる。次いで、式7の費用関数
χ
2≡〈((x-Σ
mΔP
m×f
x,m(pxl)-ε×(y-Σ
mΔP
m×f
y,m(pxl)))
2〉 式7
を部位ごとに最適化することによって、パラメータεおよびΔP
mを当てはめから抽出することができる。上式で、ε≡OVL/f
0である。
【0081】
有利には、ある種の実施形態は、オンザフライおよびイントレインでランドスケープ中のゼロ不正確さ点に調節することを可能にし、プロセス変動の存在下で失敗せず、レシピ最適化のためのシミュレーションまたはレシピ最適化のための大きな労力を必ずしも必要としないプロセスロバストな方法を提供する。開示された方法は、撮像、スキャトロメトリおよび/またはμDBO(μDBO-micro diffraction based overlay(マイクロ回折ベースのオーバレイ)。これは米国特許第8,411,287号に記載されている)に適用可能である。
【0082】
図11は、方法100を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく高水準流れ図である。方法100は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ、例えば計測モジュール内の少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって少なくとも部分的に実施することができる。ある種の実施形態は、コンピュータ可読プログラムを有するコンピュータ可読記憶媒体を備え、このコンピュータ可読プログラムが、コンピュータ可読記憶媒体に具現化されており、方法100の関連段階を実行するように構成されているコンピュータプログラム製品を含む。ある種の実施形態は、方法100の実施形態によって設計されたそれぞれのターゲットのターゲット設計ファイルを含む。
【0083】
方法100は、1つまたは複数の計測メトリックの1つまたは複数のレシピパラメータに対する少なくとも部分的に連続な依存性を導出および解析すること(段階105)、ならびに、解析された少なくとも部分的に連続な依存性に従って1つまたは複数の計測レシピを決定すること(段階128)を含むことができる。方法100は、少なくとも1つの計測測定(例えばオーバレイ測定)を実施するための少なくとも1つのパラメータ値を、少なくとも1つの計測メトリック(例えばオーバレイ変動尺度)のこの測定の対応するそれぞれの少なくとも1つのパラメータに対する依存性の識別された少なくとも1つの極値に従って選択すること(段階130)、および、選択されたパラメータ値を用いてこの計測測定を実施すること(段階350)を含むことができる。方法100は、この依存性(例えば離散点、ランドスケープおよび/または連続関数。ことによるとこれらはいずれも多次元である)を、シミュレーションによってまたは予備的な測定で(段階110)、例えば、1つまたは複数の計測メトリックの1つまたは複数の測定パラメータに対する依存性を導出または測定することによって導出することをさらに含むことができる。方法100は、この依存性またはランドスケープ中の極値を識別すること(段階120)、例えば、メトリックの関数依存性の導関数をパラメータに関してヌルにすることによって解析的に極値を識別すること(段階122:依存性は導関数であり、その導関数は2次導関数であり、これがヌル=0の点が極値をとる)、または、測定および/もしくはシミュレーション結果に従って実験的に極値を識別すること(段階124)をさらに含むことができる。ある種の実施形態では、方法100が、例えば測定の前に、識別をオンザフライで実行すること(段階126)を含む。ある種の実施形態では、方法100が、識別された極値に従って、測定パラメータなどのパラメータを、ことによるとオンザフライで調整すること(段階132)を含むことができる。
【0084】
ある種の実施形態では、方法100が、ランドスケープ中の領域、または一般的には導出もしくは測定された依存性中の領域を識別および分類することをさらに含むことができる。方法100は、平坦領域をピークから区別することによって感度ランドスケープを特徴づけること(段階170)、および/または、測定パラメータに関する感度変化の大きさを、対応するそれぞれのランドスケープに従って定量化すること(段階171)を含むことができる。
【0085】
方法100は、連続したピーク(例えば共振)におけるランドスケープの傾きの相対的符号を使用して、連続したピーク間の対応するそれぞれの中間平坦領域が正確な平坦領域であるかどうかを判定すること(段階172)をさらに含むことができる。方法100は、ランドスケープの異なる領域に対する必要なサンプリング密度を、ランドスケープ中のピーク位置に従って決定すること(段階173)を含むことができる。例えば、方法100は、ピーク領域ではランドスケープを高密度でサンプリングし、平坦領域ではランドスケープを低密度でサンプリングすること(段階174)を含むことができる。
【0086】
方法100は、ピーク領域と平坦領域との相対サイズを使用して対称プロセスロバストネスを測定すること(段階175)を含むことができる。
【0087】
方法100は、計測メトリックの符号フリップの数に従ってピークを識別すること(段階176)、および、任意選択で、計測メトリックの符号フリップの数に従って、識別されたピークを、単純ピークとしてまたは複合ピークとして特徴づけること(段階177)を含むことができる。
【0088】
方法100は、ランドスケープ領域にわたって計測メトリックを積分すること(段階178)、および、ことによると、指定されたランドスケープ領域にわたって多数の計測メトリックを相関させて、計測測定を検証すること(段階179)をさらに含むことができる。
【0089】
方法100は、ランドスケープ中のゼロ感度の点および/またはコンタを識別すること(段階160)、(特に層状の)ターゲット構造体間の中間膜スタック内での共振を識別すること(段階162)、ならびに、単一散乱モデルまたは多重散乱モデルを使用して、ランドスケープ中のゼロ感度の点および/またはコンタを識別すること(段階164)のうちのいずれをも含むことができる。方法100は、ランドスケープ中のゼロ感度の点またはコンタを識別し、例えば連続測定の直前に、パラメータをそれぞれオンザフライで調整すること(段階165)を含むことができる。
【0090】
方法100は、ひとみの部分からの信号または指定されたパラメータ(例えば測定レシピパラメータ)に関する信号を、ランドスケープ中のゼロ感度の識別された点および/またはコンタに従ってビン分割すること(段階166)をさらに含むことができる。方法100は、不正確さがゼロになる照明波長および/またはスペクトル分布を選択すること(段階168)をさらに含むことができる。
【0091】
ある種の実施形態では、オーバレイ計測測定が、グレーティングオーバグレーティングスキャトロメトリターゲットまたはサイドバイサイドスキャトロメトリターゲットのオーバレイ計測測定であり、前記少なくとも1つのパラメータが、グレーティング間の光路差に関係し、前記少なくとも1つのパラメータが、グレーティング間の中間層の厚さ、測定波長、入射角、反射角、入射光および反射光の偏光属性、ターゲット幾何学的パラメータ、ならびにグレーティングおよびグレーティング間の中間層の電磁気的特性のうちの少なくとも1つを含む。ある種の実施形態では、前記少なくとも1つのパラメータが、測定波長、入射光および/または反射光の偏光、ならびに入射角および/または反射角のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0092】
ある種の実施形態では、オーバレイ計測測定が撮像ターゲットのオーバレイ計測測定であり、前記少なくとも1つのパラメータが、ターゲット構造体間の光路差に関係し、前記少なくとも1つのレシピパラメータが、ターゲット構造体間の中間層の厚さ、測定波長、入射角、反射角、入射光および反射光の偏光属性、ターゲット幾何学的パラメータ、ターゲット構造体およびターゲット構造体間の中間層の電磁気的特性、ならびに測定ツール焦点のうちの少なくとも1つを含む。ある種の実施形態では、前記少なくとも1つのパラメータが、測定ツールの焦点、測定波長、入射光および/または反射光の偏光、ならびに入射角および/または反射角のうちの少なくとも1つを含む。
【0093】
ある種の実施形態では、方法100が、低い不正確さを達成するために、1つまたは複数の重み関数を適用して、メトリックをひとみピクセルを横切って平均すること(段階150)を含むことができる。例えば、方法100は、この重み関数をランドスケープ(例えば感度ランドスケープ)に関して決定すること(段階152)を含むことができる。方法100は、オーバレイまたは他のメトリックを、重み関数に従ってひとみを横切って算出すること(段階154)をさらに含むことができる。
【0094】
方法100は、導出された依存性に対する非対称プロセス変動の影響をシミュレートまたは測定することによって、非対称プロセス変動を対称プロセス変動から分離すること(段階140)をさらに含むことができる。ある種の実施形態は、対称プロセス変動に起因するランドスケープシフトを定量化すること(段階190)、および、予想されるランドスケープシフトに従って測定設定を選択すること(段階192)を含む。例えば、方法100は、予想されるランドスケープシフトに対して低い感度を示すように測定設定を選択すること(段階194)、ランドスケープの正反対のシフトを生じさせる対応するターゲット設計または測定設計によって、予想されるランドスケープシフトを相殺すること(段階196)、対応するそれぞれの部位における予想されるランドスケープシフトに従って、異なるターゲット部位に測定パラメータを当てはめること(段階198)、ならびに/または、予想されるランドスケープシフトに従って照明波長および/もしくはスペクトル分布(例えば帯域幅)を選択すること(段階200)を含むことができる。
【0095】
方法100は、1つまたは複数の測定を使用して、ランドスケープを、1つまたは複数のパラメータに関するパラメータランドスケープとして導出すること(段階180)、ならびに、ことによると、指定されたメトリックに関してパラメータランドスケープを最適化するように、および/またはオーバレイ測定の正確さを増強するように、パラメータを(例えば現象論モデルを使用して)調整すること(段階182)を含むことができる。
【0096】
ある種の実施形態では、方法100が、離散的な測定値またはデータから、連続な人工信号ランドスケープを内挿または外挿によって得ることこと(段階184)、基礎をなす物理モデルに離散的な測定値またはデータを当てはめることによって、連続な人工信号ランドスケープを構築すること(段階186)、および、人工信号ランドスケープに費用関数を適用すること(段階188)を含むことができる。
【0097】
方法100は、ランドスケープ(例えば感度ランドスケープ)に従って低い不正確さを達成するように、計測レシピおよび/もしくはハードウェア設定を最適化すること(段階210)、ならびに/または、ハードウェアパラメータを、ランドスケープ中のゼロ感度の点またはコンタに対して調節すること(段階212)をさらに含むことができる。
【0098】
ある種の実施形態では、方法100が、メトリックの推定データと測定データとを比較することによって、ピクセルごとの信号汚染を推定すること(段階220)を含むことができる。
【0099】
方法100は、低い不正確さを生じるように計測ターゲットを設計すること(段階230)、例えば、シミュレートされたランドスケープ(例えばシミュレートされた感度ランドスケープ)に従って計測ターゲットを設計すること(段階232)をさらに含むことができる。ある種の実施形態では、方法100が、中間膜スタックを、指定された測定パラメータにおいて共振を生ずるように構成すること(段階234)、および/または、例えばターゲットの下層もしくはターゲットの下層よりも低い位置にダミーフィルもしくはセグメント化を有するようにターゲットを設計すること(段階242)によって、ターゲットの下構造体よりも低い位置への電磁波侵入もしくはターゲットの下構造体への電磁波侵入を最小化すること(段階240)を含むことができる。
【0100】
方法100は、低い不正確さの点もしくはコンタまたはゼロ不正確さの点もしくはコンタの周囲でオーバレイおよび他の計測結果を測定すること(段階360)、感度ランドスケープの平坦領域で計測測定を実行すること(段階362)、ならびに/または、設計ターゲットの計測測定を実行すること(段階364)をさらに含むことができる。方法100の追加のステップについては後に説明する。
【0101】
以下では、計測ツールのひとみ平面における少なくとも±1次の回折を含む、正反対の設計オフセットを有する少なくとも2つの周期的構造をそれぞれが有する少なくとも2つのセルを備えるターゲットから導出された測定された回折信号に関係した方法および忠実度メトリックを提供する。セルの測定された回折信号から、ターゲットのオーバレイを、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をセルごとに使用して算出する。忠実度メトリックは、ひとみを横切って差分信号を積分することによって、およびひとみを横切ってさまざまな非対称性を定量化することによって、ひとみ関数間の推定された当てはめから導出することができる。忠実度メトリックは、計測レシピを最適化するために準備段階で適用し、生産誤りが生じたことを示すために実行時間中に適用することができる。
【0102】
数学的方法および統計的手段を伴う、スキャトロメトリオーバレイ計測のための定量的な忠実度メリットが提示される。忠実度メトリックは、測定の不正確さに関連した不確かさを定量化し、レシピおよびターゲット構成の最適な選択、実行時のフラグ不正確さ問題および増強された正確さを可能にするために、ナノメートル単位を有することができる。
【0103】
本発明の発明者らは、導入された忠実度メトリックが、再現性推定値(「精度」)およびツール非対称性寄与(「ツール誘導シフト」)を定量化する先行技術のTMU(全測定不正確さ)メトリックよりも優れていることを見出した。
【0104】
提示されたメトリックは、スキャトロメトリオーバレイターゲットならびに測定手順およびレシピに適用可能である。例示的なターゲットは、1つのオーバレイ方向(例えばx方向、y方向)当たり2つ以上のセルを備える。
図7Aおよび7Bは、本発明のいくつかの実施形態に基づいて、異なる層の平行グレーティング91、92などの2つの周期的構造と中間層93とを有する、リソグラフィ半導体プロセスで印刷されたターゲットセル90を概略的に示す。
図7Aは上面図、
図7Bは側断面図である。
図7Aおよび7Bには、オーバレイ、オフセット、または結合されたオーバレイとオフセットがOVLとして示されている。セルは、多数の周期的構造を有することができること、および周期的構造は、(例えば多数のパターニングステップによって生成され、サイドバイサイドターゲットセルと呼ばれる)単一の物理層に位置することができることに留意されたい。セルは一般にペアで並べられ、ペアのそれぞれのセルは、±f
0で示される正反対の設計(誘導)オフセットを有し、それぞれのオフセットは、上周期的構造(普通はカレント層と呼ばれる)と下周期的構造(以前の層)との間にある。ペアの一方のセルは、+f
0ナノメートルオフセットを保持し、もう一方のセルは、-f
0ナノメートルのオフセットを保持する。下で提示される非限定的な例では、ターゲットが4つのセルを備え、任意のスキャトロメトリオーバレイターゲットに同様の手順を適用することができることが仮定されている。これらのメトリックは、計測ツールの光学系のひとみ平面におけるターゲット測定に関係することにさらに留意されたい。セルの回折信号が測定され、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて、反対の回折次数(例えば+1次および+1次)の信号強度間の以下の差がセルごとに測定される。これらの差は「差分信号」と呼ばれ、
図8に示されている。
図8は、それぞれのセルから集められたひとみ信号(
図8の左上および右上)、および後に定義されるそれぞれのセルからの差分信号(
図8の左下および右下)を概略的に示す。
【0105】
この差分信号は、1次レジームのピクセルpの信号強度から-1次レジームの180°回転させたピクセル-pの対応する強度を引いたものと定義される。ピクセルごとの信号微分は、D(p,offset)によって示され、式8に表現された線形形態によって近似することができる。
【数18】
【0106】
差分信号Dの添数1、2は、その信号が測定された±f0に等しい誘導オフセットを有するセルを示す。ひとみを横切ってA(p)が定義され、後により詳細に解析される。
【0107】
図8は、本発明のいくつかの実施形態に基づいて、正反対のオフセットを有する2つのセルのひとみ信号および差分信号を概略的に示す。ひとみ像95Aおよび95Bは、それぞれ+f
0および-f
0の設計オフセットを有するセル90のシミュレートされた測定である。それぞれのひとみ像は、中央の0次の回折信号、ならびに-1次および+1次と記された2つの1次回折信号を示す。単位は任意であり、矢印は、2つのどちらかのスケール極値への暗色エリアの対応を示す。NA
xおよびNA
yはひとみ平面相対座標を示す。差分信号252A、252Bは、式8に定義されたD
1およびD
2に対応し、このスケールの同様の表現を有する。
【0108】
式8の定義を使用すると、ピクセルごとのオーバレイ(OVL)は、式9によって与えられる。
【数19】
は、撮像要素(例えばCCD-charge coupled device(電荷結合デバイス))のひとみピクセルを示す。
【数20】
したがって、式9は、ピクセルごとのオーバレイひとみ像を定義する。
【0109】
ひとみ忠実度メトリックは、後に説明するようなスキャトロメトリオーバレイ(SCOL)パラダイムの基礎をなす仮定の妥当性を定量化するように設計されており、最良の測定条件および正確なオーバレイ値を生成する最適なターゲット設計を見つけることを目指し、オーバレイ信頼度の誘起された不正確さ(非TMU)レベルのために、実行時間(RUN)中または準備段階(TRAIN)中に推定値を提供することを目指すことができる。
【0110】
完全な正確さまたはゼロ不正確さの場合には、差分信号が式8によって示される。A(p)は、両方のセルに対する同一のピクセルごとのベクトルである。ある種の実施形態では、A
1をA
2に当てはめるピクセルごとの当てはめを式10を用いて導出することによって、忠実度メトリックが、それぞれのセルに関係するA
1(p)とA
2(p)を比較することができる。
【数21】
上式では、差分信号の未処理のひとみ像がD
1,2によって示されており、オーバレイの推定値がOVLによって示されている。オーバレイに対する1つの推定値は例えば、公称オーバレイアルゴリズムの結果であり得る。
【0111】
図9は、正反対の設計オフセットを有するセルに対するひとみ関数間の当てはめ曲線254Bによる忠実度メトリックの算出を概略的に示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく
図254である。ひとみ関数A
1およびA
2は軸上に表されており、個々の値は、ドット254Aとして表されており、それらのドットに曲線254Bが当てはめられている。ひとみ全体にわたってA
1=A
2である理想的なケースでは、曲線254Bが恒等式当てはめ(identity fitting)となる。忠実度メトリックは、例えば曲線254Bの傾き(1に近いほど良い)、R
2(1に近いほど良い)、切片(小さいほど良い)、ならびにひとみピクセルを横切るA
1とA
2との対応の任意の統計パラメータを測定することによって、恒等式からの偏差を定量化することができる。この当てはめは、最小2乗当てはめとすることができ、重み付けをしてもよいしまたはしなくてもよい。
【0112】
ある種の実施形態では、
図5に関して上で説明した当てはめからひとみ忠実度メトリックが導出され、忠実度メトリックは、測定値に対する曲線の当てはめの品質に関して算出され、例えば、この当てはめから得られたオーバレイは、公称オーバレイアルゴリズム結果と比較することができる代替オーバレイ値を提供する。大きな差は、2つのアルゴリズムのうちの少なくとも一方のアルゴリズムの存在する不正確さを反映する。さらに、追加のひとみ忠実度メトリックを与えるため、選択されたピクセルごとの重みに対する結果として生じるオーバレイの感度レベルを[nm]で定量化することができる。
【0113】
あるいはまたは相補的に、低品質のひとみ像を意味する測定値の雑音の指示として、当てはまりの良さ(goodness of fit)の尺度を使用することもできる。追加の忠実度メトリックは、関数Hおよびゼロからの関数Hまでの距離のパラメータを含むことができる。
【0114】
ある種の実施形態では、ひとみを横切って信号を平均し、すなわち
図5に関して上で説明した量の平均値を使用し、これらの平均値に対する当てはめを実行してオーバレイを得ることによって、忠実度メトリックが導出され得る。ある種の実施形態では、信号のより高い統計的積率がひとみを横切って解析され得る。信号のより高いひとみ積率を使用して、このような相殺を回避することができ、符号が失われた場合には1次積率から符号を抽出することができる。新たに得られたOVL値を公称OVL値と比較することができ、その差は、ひとみ忠実度メトリックの役目を果たすことができる。さらに、選択されたピクセルごとの重みに対する結果として生じるオーバレイの感度レベルを[nm]で定量化すると、追加のひとみ忠実度メトリックが得られる。
【0115】
ある種の実施形態では、後に例示されるように、ひとみ雑音が、オーバレイ算出の不確かさを推定するために異なるいくつかのオーバレイ計算方法を結合する忠実度メトリックとして使用され得る。
【0116】
ひとみ雑音メトリックは以下のように算出することができる。例えば公称SCOLアルゴリズム、修正された当てはめ(上記参照)、ひとみ積分法(上記参照)などの一組のオーバレイ算出方法を選択する。それぞれのオーバレイ算出方法に対する対応する一組の特性パラメータを定義する。具体的な1つの例は、異なる重み(例えば公称重みおよびそのq乗)またはしきい値を選択するものである。次いで、それぞれの方法およびそれぞれのパラメータ値を、0°のウェーハ回転から来たデータに関しては1回、180°のウェーハ回転に関して1回使用して、オーバレイを算出する。両方の配向を算出するステップは、望ましいステップではあるが、必須のステップではない。次いで、受け取られたそれぞれのオーバレイ値の統計誤差の推定値を算出する。例えば、
【数22】
を推定値として使用することができる。このステップを省くことができ、例えば180°の配向ではオーバレイは算出されない。最後に、重みを修正することによって得られたオーバレイ値を探索し、対応するメトリックを定義して、変動空間内におけるオーバレイ値の変動性を表現することができる。例えば、受け取られた最も高いオーバレイ値と最も低いオーバレイ値との差を、低い統計誤差を有する値だけを使用して算出することができる。ひとみ雑音メトリックは、それぞれの測定点に対するナノメートル単位の不確かさを生成している。
【0117】
適用においては、上に提示した統計値などの忠実度メトリックを、レシピ最適化段階で、ウェーハを横切って解析することができる。これらの統計値は、ファブオーナ(fab owner)が、最良の測定準備、および正確なオーバレイ値をもたらす層ごとの最良のターゲット設計を選択するのに役立つ。上に提示した統計値などの忠実度メトリックを、動作中のRUN中に検査することもでき、それらから、不安定なプロセス影響を示すフラグを導出することができる。
【0118】
ある種の実施形態では、忠実度メトリックが、k=0(ひとみ平面の中心)付近におけるピクセルごとのオーバレイの勾配を反映する。シミュレーションによれば、ある方向のオーバレイのかなりの勾配を有する、ピクセルごとのオーバレイによって示されるk=0付近の非対称構造は、かなりの不正確さを示した。
図10は、ひとみ平面の中心の周囲の非対称オーバレイ推定258Aを示す、プロセス変動に起因する不正確さを有するスタック上で実行されたシミュレーションの結果を例示した、本発明のいくつかの実施形態に基づく
図258である。シリコンの上のレジストのスタックをシミュレートした。グラフは、-0.1から0.1の間のNA(開口数)におけるひとみの中心のピクセルごとのOVLプロファイルを、プロセス変動のないスタック(下の細線)およびプロセス変動のあるスタック(上の太線)について示す。非対称スタックは、矢印258Aによって示されたk=0の付近で非対称性を示している。したがって、
図10は、ひとみの中心で得られたピクセルごとのオーバレイのプロファイルを示し、不正確さを誘起するスタック内のプロセス変動の場合には、ひとみの中心が、k=0の付近で、ピクセルごとのオーバレイの大きな非対称性を示すことを示している。
【0119】
ある種の実施形態では、上に提示した忠実度メトリックの算出のうちの任意の算出で、ピクセルに重みが割り当てられる。ある種の実施形態では、ピクセルごとの重みが、ひとみ空間に対して共役の空間で定義される。具体的には、特定のサイズのひとみ長さスケールを有する(ピクセルごとのオーバレイマップ内もしくはピクセルごとの差分信号マップ内またはその両方の)ひとみ内のフィーチャの重みを増強するように選択することができる。これを達成するため、ピクセルごとのオーバレイマップ(または信号自体)のフーリエ分解を実行し、ひとみフーリエ(共役)空間のあるレジームにある分布のフーリエ成分の重みを修正することができる。
【0120】
ピクセルごとの重みのこのような修正は、オーバレイの異なる算出を生成することができ、その算出を比較および使用して追加の忠実度メトリックを導出することができ、これらの算出間の差を、不正確さのためのフラグとして使用することができる。
【0121】
ある種の実施形態では、それぞれの分布の3シグマ(σ)の領域を示すために忠実度メトリックが導出される。それぞれのピクセルは、単一のターゲットセルから反射された異なる角度を表すため、理論上、ピクセルごとのひとみ像内のそれぞれのピクセルは、同じオーバレイ値を報告するはずである。実際には、異なるピクセルは、不正確さに起因する異なるオーバレイ値を報告する。ピクセル間または(単一のピクセルとは違い、精度基準を満たす)ピクセルのグループ間の変動の大きさを定量化し、忠実度メトリックとして使用することができる。測定はひとみ平面で実行するため、ひとみを横切る異なるピクセルまたはピクセルグループに対してオーバレイおよび他の測定は独立しており、したがって、プロセス変動因子を示す測定不正確さの正確な推定を生ずる機会を提供することに留意されたい。
【0122】
例えば、Pupil3sメトリックは式11のように定義される。
【数23】
上式で
【数24】
であり、この式で、p=ピクセル、OVL(p)=ピクセルごとのオーバレイ、w(p)=ピクセルごとの重みである。
【0123】
場合によっては、式11に提示されたPupil3sの重み付けされた推定値が、正確さとの小さな相関を有する。これは、Regions3sが、ピクセルごとの変動性ではなく、ピクセルの平均されたグループ間のみのピクセルごとのひとみを横切る変動のメトリックであるためである。このような場合の例は、ひとみが、ツール上(開口サイズ)またはウェーハ上(ターゲットサイズ)の既知の物理構造に由来する干渉の影響を受けるときである。別の例は、グレーティングに対して垂直な方向の非対称性の存在である。以下では、この特定の非対称性に起因するPupil3sを低減させることを可能にするメトリックを提示する。それらの構造は、ひとみを横切って平均するときに揺動(fluctuation)が相殺されるような態様のひとみ上の小さな長さスケールを保持する。この影響を解決するメトリックが、下で導出されるRegion3sメトリックであり、Region3sメトリックを忠実度メトリックとして使用することができる。ひとみを、
【数25】
を有する複数の領域に分割する。この式で、λは、測定が実行される波長であり、Lは、この現象を引き起こす物理的な長さスケールである。
【0124】
それぞれの領域のオーバレイは、ピクセルごとの重み付けを使用して算出し、式12に従って平均することができる。
【数26】
上式で、Rは領域であり、
【数27】
である。
【0125】
この算出に対しては、統計誤差の下記の条件
【数28】
を満たす領域だけが使用される。式13においてRegion3s忠実度メトリックの定義を与えるため、領域のひとみシグマの推定値が
【数29】
として算出される。
【数30】
【0126】
さまざまな長さスケールLに対して上記のアルゴリズムを繰り返すことによって、一連の忠実度メトリックを定義することができ、その一連の忠実度メトリックは、不正確さを生じさせる長さスケールを特定することを可能にする。例えば、不正確さを生じさせる物理過程が、ウェーハ上の長さスケールL1に対応する場合、ピクセルごとのオーバレイおよびピクセルごとの信号は、λ/L1のスケールのピクセルごとの揺動を有することが予想される。次いで、L<L1に対するRegions3Sを見ることによって、揺動が積分され、Regions3S忠実度は不正確さ情報を含まない。したがって、不正確さとのRegions3Sの相関は、L=L1に対してかなり増大し、したがって干渉源のサイズを示す。
【0127】
ある種の実施形態は、周期的構造に対して垂直な方向の非対称性メトリックを忠実度メトリックとして使用することを含む。以下では、提案された大多数の方法およびメトリックの限定なしに、周期的構造(例えばグレーティング)の周期性の方向をXによって示し、Xと直交する方向をYで示す。グレーティングの方向(X)の対称性の破壊をひとみ像を横切って検出することができ、この対称性の破壊を使用して、オーバレイ誤差を示すことができる。しかしながら、オーバレイに対して垂直な方向(Y)の対称性の破壊は、考慮する必要がある異なる誤差を示すことがある。この種類の対称性破壊は、可能なプロセス変動(例えばY方向の物理的な側壁角、最上位および最下位グレーティング内のセグメント化間のY方向のOVLのようなターゲット不完全性)、またはY方向の何らかの他の対称性破壊(例えばy軸に沿ったターゲットの縁/ターゲット環境からの光の回折/散乱の影響)を示す。以下の忠実度メトリックは、Yasymmetryメトリックと呼ばれ、半導体ウェーハ上で起こり得る3つの後者の誤差を示し定量化することを目指す。より一般的な観点から見るため、「A」方向のOVLを測定するSCOLターゲットに対しては、B方向に関して反射されたピクセルのひとみ像の対称性をチェックしているBasymmetryフラグを使用する。Bは、Aと直交する方向である。
【0128】
ある種の実施形態では、ひとみ像(差分信号またはピクセルごとのオーバレイ)を生成し、オーバレイの方向に対して直交する方向にひとみをフリップさせ、フリップさせた新たなひとみを横切って平均および3σを算出することによって、直交非対称性を示す忠実度メトリックを導出する。
【0129】
Yasymmetryメトリックは、差分信号ひとみまたはオーバレイひとみ像に適用することができるピクセルごとの算出によって導出することができる。Yasymmetryは、オーバレイひとみ像に対してはナノメートルを単位として生成されるが、差分信号ひとみ像に対しては百分率の形態を有する。後に、Yasymmetryは、プロセス変動がより重大な特定のセルを特定することができる。
【0130】
Yasymmetryメトリックは、リアルタイムで算出することができる。Yasymmetryメトリックは、異なる測定準備、ターゲット設計、ウェーハ上またはフィールド内の特別なゾーンを区別するための選別(culling)パラメータまたは品質尺度として使用することができる。Yasymmetryメトリックのウェーハを横切るその振舞いおよび統計値は、プロセス変動を明らかにすることができ、層ごと、ウェーハごとおよび/またはターゲット設計ごとに最適な測定条件を設定する際に役立ち得る。
【0131】
ひとみ平均算出に対していくつかのアルゴリズムを適用することができるが、Yasymmetryをピクセルごとに報告する選択肢もある。ひとみ平均算出用のアルゴリズムの1つを以下に示す。2つの差分信号D1(px,py)およびD2(px,py)(式8に示されているように、D1は、誘導オフセット+f
0を有するセルに属し、D2は、誘導オフセット-f
0を有するセルに属する)ならびにピクセルごとのオーバレイOVL(px,py)を出発点とする。(px,py)は、マスクまたはひとみ平面のピクセル座標を示し、pxは、OVLが測定される方向にとり、pyは直交方向にとる。セルi=1およびセルi=2に対する、OVLの非対称性(単位はナノメートル)および差分信号のピクセルごとの百分率相対非対称性は、ひとみ像を垂直方向のその反射と比較することによって、すなわち、式14に表現されているように(px、py)を(px、-py)と比較することによって算出することができる。
【数31】
これらは、py>0に対してのみ定義されたピクセルごとの量である。
Yasymmetryから除去されたピクセルごとのオーバレイは、以下のように算出することができる。
【数32】
ピクセルごとのオーバレイは対称にされる。式13に従って、Yasymmetryから減らされたPupil3Sを算出することができる。それは、Pupil3S上の不正確さのYasymmetry問題に起因する部分を相殺することを可能にする。
【0132】
【数33】
の加重ひとみ平均を定義することによってフラグを算出することができるが、ここでは、重みが、i=1,2で変化し、平均の和がpy>0に対してだけである。フラグは、式15に表現されているように定義される。
【数34】
【0133】
ひとみ平均アルゴリズムの別の例は次のとおりである。式16に表現された以下のメトリックを使用することによって、Yasymmetryのオーバレイに対する依存性(直交方向)をほぼヌルにすることができる。
【数35】
上式で、ΔD1=D1(kx,ky)-D1(kx,-ky)、ΔD2=D2(kx,ky)-D2(kx,-ky)である。
【0134】
上に提示した微分は、オーバレイの配向に対して垂直な方向のオフセットの関数として直線的に増加することに留意されたい。Yasymmetryメトリックを使用して、ウェーハを横切る異常値を識別することができることにも留意されたい。Yasymmetryメトリックは、その任意の実施形態で、平均±3sの統計境界の外側にある測定値を除いて、算出することができる。Yasymmetryメトリックはピクセルごとのメトリックであるため、Yasymmetryメトリックを、ピクセルレベルの異常値除去として使用することもできる。Yasymmetryメトリックをひとみ像に適用し、Yasymmetry尺度の平均および3sを算出し、有効な限界を平均±3sとして設定することができる。それらの2つの限界間の有効範囲の外側にある全てのピクセルは、ピクセルごとのオーバレイ算出または最終的なオーバレイ算出に使用するひとみから除くことができる。これらの2つのタイプのOVL算出(ピクセルを除く算出とピクセルを除かない算出)間の差は、直交方向の対称性破壊がOVL測定の品質に対して持つ影響の追加の大きさとして機能することがある。
【0135】
Yasymmetry算出の不確かさの量を推定するため、検証段階を追加することができ、この検証段階では、Yasymmetryメトリックを標準の方式で算出し、次いで左へ1ピクセルだけシフトさせ、さらに右へ1ピクセルだけシフトさせる。それらの3つの尺度間の変動は、Yasymmetryメトリック算出に必要な不確かさの量を生み出すことができる。
【0136】
両方の層の直交するピッチのような異なるタイプのYasymmetry破壊のシミュレーションによれば、所与の波長に関して、かなり不正確さを生じさせる直交ピッチサイズから、あまり不正確さを生じさせない直交ピッチサイズへのかなり鋭い交差振舞いが見られた。例えば、青レジームの波長に関しては、このような交差振舞いは約250nmのピッチ付近で生じることが観察された。セグメント化ピッチに対するこのような不正確さ依存性を使用して、計測ターゲット設計パラメータ空間検索における競合リストを限定することができる。
【0137】
ある種の実施形態では、Yasymmetryメトリックを使用して、ウェーハ上の破損したターゲットまたはターゲット内の破損したセル、不良な測定準備およびプロセス変動を識別することができる。Yasymmetryメトリックを使用して、統計的範囲の外にある測定点を異常値として識別し、対応するピクセルを除くこともできる。ある種の実施形態では、Yasymmetryメトリックを使用して、対称性破壊を定量化し、(セルレベルまでの)ターゲット不完全性、偏った測定準備または異なるプロセス変動を示す。Yasymmetryの単位は、オーバレイひとみ像に適用されたときにはナノメートル、未処理の信号ひとみ像に適用されたときには百分率とすることができる。ナノメートルを単位としたYasymmetryメトリックを使用して、オーバレイ不正確さに対するプロセス問題の影響を推定することができる。Yasymmetryメトリックは、オーバレイが測定されている間に、ツール上でリアルタイムで算出することができる。Yasymmetryメトリックは、測定準備、異なるターゲット設計、異なるフィールド、ウェーハまたはロットを区別する、ウェーハまたはフィールドを横切る選別パラメータまたは品質尺度として使用することができる。
【0138】
図11に戻ると、方法100は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ、例えば計測モジュール内の少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって少なくとも部分的に実施することができる。ある種の実施形態は、コンピュータ可読プログラムを有する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を備え、このコンピュータ可読プログラムが、コンピュータ可読記憶媒体に具現化されており、方法100の関連段階を実行するように構成されているコンピュータプログラム製品を含む。
【0139】
方法100は、計測ツールのひとみ平面において少なくとも+/-1次の回折を含む回折信号を測定することを含むことができ、この信号は、少なくとも2つのセルを含むターゲットから導出され、それらのセルはそれぞれ、正反対の設計オフセット±f0を有する少なくとも2つの周期的構造を有し(段階250)、方法100はさらに、前記少なくとも2つのセルの測定された回折信号から、ターゲットのオーバレイを、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をセルごとに使用して算出すること(段階260)を含むことができる。
【0140】
ある種の実施形態では、オーバレイが
【数36】
として算出され、
【数37】
が、ひとみピクセルを表し、f
0が、設計オフセットを示し、D
1およびD
2が、前記正反対の設計オフセットに対応して、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差を示す。
【0141】
方法100は、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差から導出された、前記正反対の設計オフセットに対するひとみ関数間の推定された当てはめから、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出すること(段階270)をさらに含むことができる。例えば、前記少なくとも1つの忠実度メトリックは、
【数38】
および
【数39】
の線形あてはめから導出することができる。
【0142】
方法100は、公称オーバレイ値を、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をひとみを横切って積分することによって導出されたオーバレイ値と比較することによって、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出すること(段階280)を含むことができる。ある種の実施形態では、導出されたオーバレイ値が、ひとみを横切って
【数40】
を積分することによって算出され、
【数41】
が、ひとみピクセルを表し、D
1およびD
2が、前記正反対の設計オフセットに対応して、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差を示す。積分280は、これらの差の1次の積率および/またはより高次の積率を積分すること(段階285)を含むことができる。例えば、この積分は、上で説明した
【数42】
の平均に関して実行することができ、および/または、この積分は、
【数43】
の2次以上の積率に関して実行することができる。
【0143】
方法100は、任意の実施形態において、ひとみピクセルに重み付けして前記少なくとも1つの忠実度メトリックを導出すること(段階310)をさらに含むことができる。例えば、(例えば異なるピクセルに対応する)多数の点に曲線を当てはめることを含む実施形態では、前記少なくとも1つの忠実度メトリックが、推定されたはめあいの重み付けされたカイ2乗尺度を含むことができる。ある種の実施形態では、この重みが、フーリエ共役平面などのひとみに対する共役空間内で定義される(段階315)。
【0144】
ある種の実施形態では、方法100が、(i)スキャトロメトリアルゴリズムを使用して(すなわち先行技術の方法を使用して)公称オーバレイ値を導出すること、(ii)互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差から(例えば段階270によって)導出された、前記正反対の設計オフセットに対するひとみ関数間の当てはめを推定すること、および、(iii)公称オーバレイ値を、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおいて測定された反対の次数の信号強度間の差をひとみを横切って積分することによって(例えば段階280によって)導出されたオーバレイ値と比較することのうちの対応する少なくとも2つによって導出された、対応するパラメータに関連した少なくとも2つのオーバレイ値を使用して、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することをさらに含むことができる。前記少なくとも1つの忠実度メトリックは、異なるパラメータ値下での導出された前記少なくとも2つのオーバレイ値間の差の変動性に対応するひとみ雑音を定量化するように定義され得る(段階300)。例えば、パラメータは、ひとみ平面ピクセルの異なる重み付けを含む。ある種の実施形態では、ひとみ雑音の定量化300が、互いに関して180°だけ回転させたひとみピクセルにおけるオーバレイ差に関して実行される(段階305)。
【0145】
方法100は、ひとみピクセルのグループ間の算出されたオーバレイの変動から、少なくとも1つの忠実度メトリックを導出することを含むことができ、それらのグループのサイズは、計測ツールの光学系内の予想される干渉源に関係した指定された長さスケールに従って選択される(段階320)。それらのグループのサイズは、λ/(L/2)のスケールで選択することができ、λは照明波長、Lは、予想される干渉源のサイズである(段階325)。
【0146】
ある種の実施形態では、方法100が、前記少なくとも1つの忠実度メトリックに従って測定レシピを選択および最適化すること(段階330)をさらに含むことができる。
【0147】
ある種の実施形態では、方法100が、ひとみ平面の中心に関してオーバレイの非対称性メトリックを算出すること(段階290)を含むことができる。
【0148】
方法100は、周期的構造に対して垂直な方向の非対称性メトリックを算出すること(段階340)をさらに含むことができる。この非対称性メトリックは例えば、測定された回折信号および/またはオーバレイに関して算出することができ、また、(px,-py)に比べて垂直な方向-(px,py)に反射されたひとみ像の統計解析を適用することによって算出することができる。
【0149】
有利には、ひとみ忠実度メトリックは、ひとみの妥当性を、その(差分信号としての)未処理の形態およびその最終的なピクセルごとのオーバレイの形態で推定するいくつかの方法を提供する。それらのメトリックの大きさの大部分は、それらのメトリックの解釈を単純にし不確かさの尺度を提供するナノメートル単位で示される。一部のひとみ忠実度メトリックは、スキャトロメトリオーバレイアルゴリズム仮定が成立するレベルを定量化している。それらのメトリックは、プロセス変動によってターゲットセルが、ウェーハ上の物理構造への理論割当てを可能にしない程度にまで破損する使用ケースに対する理論チェックを提供する。それらのメトリックは、単一の測定レベルおよびウェーハレベルで使用することができ、ファブオーナが、ウェーハ上の破損したゾーン、最良の測定準備、および正確なオーバレイ結果を達成するための層ごとのターゲット設計を見つけるのに役立つ。ひとみ忠実度メトリックは、リアルタイムで算出することができ、正確なオーバレイ値を報告することによって最適な測定準備およびファブの歩留りを最大にするターゲット設計を示す測定点ごとの品質尺度およびウェーハ統計尺度を提供する。
【0150】
以上の説明では、実施形態が、本発明の例または実施態様である。「一実施形態」、「実施形態」、「ある種の実施形態」または「いくつかの実施形態」のさまざまな出現の全てが、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。
【0151】
単一の実施形態の文脈で本発明のさまざまな特徴が記載されていることがあるが、それらの特徴は、別々にまたは適当な組合せでも提供することができる。反対に、本明細書では、分かりやすくするために、本発明が別々の実施形態の文脈で説明されていることがあるが、本発明は、単一の実施形態として実施することもできる。
【0152】
本発明のある種の実施形態は、上に開示されたさまざまな実施形態からの特徴を含むことができ、ある種の実施形態は、上に開示された他の実施形態からの要素を組み込むことができる。本発明の要素が特定の実施形態の文脈で開示されているからといって、それらの要素の使用がその特定の実施形態に限定されるわけではない。
【0153】
さらに、本発明はさまざまな方式で実行または実施することができること、および、本発明は、上の説明で概要を示した実施形態以外のある種の実施形態で実施することもできることを理解すべきである。
【0154】
本発明は、添付図または対応する説明に限定されない。例えば、図示された枠もしくは状態のそれぞれを流れが通過する必要はなく、または、図示され説明された順序と正確に同じ順序で流れが通過する必要もない。
【0155】
本明細書で使用される技術用語および科学用語の意味は、特に定義されていない限り、本発明が属する当業者によって共通に理解される意味である。
【0156】
限られたいくつかの実施形態に関して本発明を説明したが、それらの実施形態を、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。それらの実施形態は、好ましい実施形態のうちの一部の実施形態の例であると解釈すべきである。可能な他の変形、修正および用途も本発明の範囲に含まれる。したがって、本発明の範囲は、ここまでに記載されたものによって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびその法律上の等価物によって限定されるべきものである。