(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20220215BHJP
C08K 5/378 20060101ALI20220215BHJP
C08K 5/44 20060101ALI20220215BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220215BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20220215BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220215BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20220215BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/378
C08K5/44
C08K3/04
C08K3/06
C08K3/36
C08L9/06
B60C1/00
(21)【出願番号】P 2018157683
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2017176911
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和真
(72)【発明者】
【氏名】神本 奈津代
(72)【発明者】
【氏名】安達 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】信岡 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】原 武史
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-500471(JP,A)
【文献】ソ連国特許発明第01106816(SU,A)
【文献】特開2011-089031(JP,A)
【文献】特開2010-018716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、加硫促進剤、シリカ、および式(I):
【化1】
[式中、mおよびnは、それぞれ独立に、0~3を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に
、C
1-6
アルキル
基を表し、mが2または3である場合、複数のR
1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2または3である場合、複数のR
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で示される化合物を混練して得られるゴム組成物。
【請求項2】
mおよびnが、それぞれ独立に、0または2である請求項
1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分が、ジエン系ゴムを含む請求項1
または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分が、スチレン・ブタジエン共重合ゴムを含む請求項1
または2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
加硫促進剤が、スルフェンアミド系加硫促進剤を含む請求項1~
4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
さらにカーボンブラックを混練して得られる請求項1~
5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
さらに硫黄成分を混練して得られる請求項1~
6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項
7に記載のゴム組成物を加硫することによって得られる加硫ゴム組成物。
【請求項9】
請求項
8に記載の加硫ゴム組成物を含むタイヤ。
【請求項10】
シリカを含む加硫ゴム組成物の耐摩耗性を向上させるための、式(I):
【化2】
[式中、mおよびnは、それぞれ独立に、0~3を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に
、C
1-6
アルキル
基を表し、mが2または3である場合、複数のR
1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2または3である場合、複数のR
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で示される化合物の使用。
【請求項11】
mおよびnが、それぞれ独立に、0または2である請求項
10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
低燃費性はタイヤの重要な性能のひとつであり、これを向上させることが求められている。例えば、特許文献1には、4,4’-ジピリジルジスルフィドなどのジスルフィド化合物を使用することによって、ゴム組成物の低発熱性を向上させ、その結果、ゴム組成物の低燃費性を向上させることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、加硫ゴム組成物の硬さ安定化(詳しくは、加硫ゴム組成物の老化による硬さ増大の抑制)を達成するために、ピリミジン誘導体(特に、2,2-ビス(4,6-ジメチルピリミジル)ジスルフィド)を使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-18716号公報
【文献】特表2004-500471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐摩耗性は、上述した低燃費性と同様、タイヤの重要な性能である。しかし、低燃費性および耐摩耗性はトレードオフの関係にあり、一方を向上させると、他方が低下する。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、加硫ゴム組成物の低燃費性(特に、転がり抵抗特性)を大きく損なうことなく、その耐摩耗性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] ゴム成分、加硫促進剤、シリカ、および式(I):
【0007】
【0008】
[式中、mおよびnは、それぞれ独立に、0~3を表す。
R1およびR2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1-18アルキル基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC6-18アリール基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキル基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキルオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC6-18アリールオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキルオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいC6-18アリールオキシ基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC6-18アリール-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、またはニトロ基を表し、mが2または3である場合、複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2または3である場合、複数のR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で示される化合物を混練して得られるゴム組成物。
【0009】
[2] R1およびR2が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1-18アルキル基、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニルオキシ基、アミノ基、またはモノ(置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニル)アミノ基であり、mが2または3である場合、複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、およびnが2または3である場合、複数のR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい前記[1]に記載のゴム組成物。
[3] R1およびR2が、それぞれ独立に、C1-6アルキル基であり、mが2または3である場合、複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、およびnが2または3である場合、複数のR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい前記[1]に記載のゴム組成物。
[4] mおよびnが、それぞれ独立に、0または2である前記[1]~[3]のいずれか一つに記載のゴム組成物。
【0010】
[5] ゴム成分が、ジエン系ゴムを含む前記[1]~[4]のいずれか一つに記載のゴム組成物。
[6] ゴム成分が、スチレン・ブタジエン共重合ゴムを含む前記[1]~[4]のいずれか一つに記載のゴム組成物。
[7] 加硫促進剤が、スルフェンアミド系加硫促進剤を含む前記[1]~[6]のいずれか一つに記載のゴム組成物。
[8] さらにカーボンブラックを混練して得られる前記[1]~[7]のいずれか一つに記載のゴム組成物。
【0011】
[9] さらに硫黄成分を混練して得られる前記[1]~[8]のいずれか一つに記載のゴム組成物。
[10] 前記[9]に記載のゴム組成物を加硫することによって得られる加硫ゴム組成物。
[11] 前記[10]に記載の加硫ゴム組成物を含むタイヤ。
【0012】
[12] シリカを含む加硫ゴム組成物の耐摩耗性を向上させるための、式(I):
【0013】
【0014】
[式中、mおよびnは、それぞれ独立に、0~3を表す。
R1およびR2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1-18アルキル基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC6-18アリール基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキル基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキルオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC6-18アリールオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキルオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいC6-18アリールオキシ基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC6-18アリール-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、またはニトロ基を表し、mが2または3である場合、複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2または3である場合、複数のR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で示される化合物の使用。
【0015】
[13] R1およびR2が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1-18アルキル基、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニルオキシ基、アミノ基、またはモノ(置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニル)アミノ基であり、mが2または3である場合、複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、およびnが2または3である場合、複数のR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい前記[12]に記載の使用。
[14] R1およびR2が、それぞれ独立に、C1-6アルキル基であり、mが2または3である場合、複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、およびnが2または3である場合、複数のR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい前記[12]に記載の使用。
[15] mおよびnが、それぞれ独立に、0または2である前記[12]~[14]のいずれか一つに記載の使用。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加硫ゴム組成物の低燃費性(特に、転がり抵抗特性)を大きく損なうことなく、その耐摩耗性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を順に説明する。なお、以下では、「式(I)で示される化合物」を「化合物(I)」と略称することがある。他の式で示される化合物等も同様に略称することがある。
【0018】
本発明は、以下のものを提供する:
(1)ゴム成分、加硫促進剤、シリカ、化合物(I)および必要に応じて他の成分を混練して得られるゴム組成物、
(2)ゴム成分、加硫促進剤、シリカ、化合物(I)、硫黄成分および必要に応じて他の成分を混練して得られるゴム組成物、
(3)前記(2)のゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴム組成物、
(4)前記(3)の加硫ゴム組成物を含むタイヤ、
(5)シリカを含む加硫ゴム組成物の耐摩耗性を向上させるための化合物(I)の使用。
【0019】
なお、化合物(I)は、混練中にゴム成分および/または他の成分(例えば、シリカ、カーボンブラック)と反応し、これらと化合物を形成する可能性がある。しかし、形成され得る化合物は、固体であるゴム組成物中に含まれるため、その構造または特性によって直接特定することは、現在の技術では不可能であるか、またはおよそ実際的でない。そのため、本明細書および特許請求の範囲では、本発明のゴム組成物を、「ゴム成分および化合物(I)を混練して得られるゴム組成物」として特定する。なお、硫黄成分や、後述の他の成分を使用する場合も同様である。
【0020】
<定義>
まず、本明細書中で用いられる各置換基等の定義について、順に説明する。
「Cx-y」とは、炭素数がx以上y以下(xおよびyは数を表す)を意味する。
【0021】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、例えば1~18である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
【0023】
アルキル基は置換基を有していてもよい。アルキル基を一部分として含む他の基(例えばアルコキシ基)も同様に置換基を有していてもよい。アルキル基(例えばC1-18アルキル基)および一部分としてアルキル基(例えばC1-18アルキル基)を含む他の基が有し得る置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる:
(1)ハロゲン原子、
(2)シクロアルキル基(好ましくはC3-8シクロアルキル基)、
(3)アルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基)、
(4)シクロアルキルオキシ基(好ましくはC3-8シクロアルキルオキシ基)、
(5)アリールオキシ基(好ましくはC6-14アリールオキシ基)、
(6)アラルキルオキシ基(好ましくはC7-16アラルキルオキシ基)、
(7)置換基を有していてもよいアミノ基。
【0024】
シクロアルキル基の炭素数は、例えば3~10である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0025】
アリール基の炭素数は、例えば6~18である。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基が挙げられる。
【0026】
アラルキル基の炭素数は、例えば7~20である。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フェニルプロピル基が挙げられる。
【0027】
シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基は、いずれも置換基を有していてもよい。シクロアルキル基等を一部分として含む他の基(例えばシクロアルキルオキシ基等)も同様に置換基を有していてもよい。シクロアルキル基(例えばC3-10シクロアルキル基)、アリール基(例えばC6-18アリール基)およびアラルキル基(例えばC7-20アラルキル基)、並びにこれらの基を一部分として含む他の基が有し得る置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる:
(1)ハロゲン原子、
(2)アルキル基(好ましくはC1-6アルキル基)、
(3)シクロアルキル基(好ましくはC3-8シクロアルキル基)、
(4)アリール基(好ましくはC6-14アリール基)、
(5)アラルキル基(好ましくはC7-16アラルキル基)、
(6)アルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基)、
(7)シクロアルキルオキシ基(好ましくはC3-8シクロアルキルオキシ基)、
(8)アリールオキシ基(好ましくはC6-14アリールオキシ基)、
(9)アラルキルオキシ基(好ましくはC7-16アラルキルオキシ基)、
(10)置換基を有していてもよいアミノ基。
【0028】
アルコキシ基(即ち、アルキルオキシ基)の一部であるアルキル基の説明は、上述の通りである。後述する基の一部であるアルキル基の説明も同様である。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0029】
シクロアルキルオキシ基の一部であるシクロアルキル基の説明は、上述の通りである。後述する基の一部であるシクロアルキル基の説明も同様である。シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基が挙げられる。
【0030】
アリールオキシ基の一部であるアリール基の説明は、上述の通りである。後述する基の一部であるアリール基の説明も同様である。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基が挙げられる。
【0031】
アラルキルオキシ基の一部であるアラルキル基の説明は、上述の通りである。後述する基の一部であるアラルキル基の説明も同様である。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、フェニルプロピルオキシ基が挙げられる。
【0032】
アルキル-カルボニルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、3-メチルブタノイルオキシ基、2-メチルブタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基が挙げられる。なお、「C1-18アルキル-カルボニルオキシ基」との記載は、この基の一部であるアルキル基の炭素数が1~18であることを表す。他の記載も同様の意味である。
【0033】
シクロアルキル-カルボニルオキシ基としては、例えば、シクロプロピル-カルボニルオキシ基、シクロブチル-カルボニルオキシ基、シクロペンチル-カルボニルオキシ基、シクロヘキシル-カルボニルオキシ基、シクロヘプチル-カルボニルオキシ基、シクロオクチル-カルボニルオキシ基が挙げられる。
【0034】
アリール-カルボニルオキシ基としては、例えば、ベンゾイルオキシ基、1-ナフトイルオキシ基、2-ナフトイルオキシ基が挙げられる。
【0035】
アラルキル-カルボニルオキシ基としては、例えば、フェニルアセチルオキシ基、フェニルプロピオニルオキシ基が挙げられる。
【0036】
アルコキシ-カルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0037】
シクロアルキルオキシ-カルボニル基としては、例えば、シクロプロピルオキシカルボニル基、シクロブチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘプチルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0038】
アリールオキシ-カルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基、1-ナフチルオキシカルボニル基、2-ナフチルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0039】
アラルキルオキシ-カルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ナフチルメチルオキシカルボニル基、フェニルプロピルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0040】
置換基を有していてもよいカルバモイル基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および置換基を有していてもよいアラルキル基から選ばれる1または2個の置換基を有していてもよいカルバモイル基が挙げられる。
【0041】
置換基を有していてもよいカルバモイル基の好適な例としては、以下のものが挙げられる:
(1)カルバモイル基、
(2)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアルキル)カルバモイル基(例、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、N-エチル-N-メチルカルバモイル基)、
(3)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいシクロアルキル)カルバモイル基(例、シクロプロピルカルバモイル基、シクロヘキシルカルバモイル基)、
(4)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアリール)カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル基)、
(5)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアラルキル)カルバモイル基(例、ベンジルカルバモイル基、フェネチルカルバモイル基)。
ここで、「モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアルキル)カルバモイル基」とは、モノ(置換基を有していてもよいアルキル)カルバモイル基またはジ(置換基を有していてもよいアルキル)カルバモイル基を表す。他も同様である。また、「モノ(置換基を有していてもよいアルキル)カルバモイル基」とは、置換基を有していてもよいアルキル基を1個の置換基として有するカルバモイル基を表す。他も同様である。
【0042】
置換基を有していてもよいアミノ基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルキル-カルボニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル-カルボニル基、置換基を有していてもよいアリール-カルボニル基、および置換基を有していてもよいアラルキル-カルボニル基から選ばれる1または2個の置換基を有していてもよいアミノ基が挙げられる。
【0043】
置換基を有していてもよいアミノ基の好適な例としては、以下のものが挙げられる:
(1)アミノ基、
(2)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアルキル)アミノ基(例、メチルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジブチルアミノ基)、
(3)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいシクロアルキル)アミノ基(例、シクロプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、
(4)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアリール)アミノ基(例、フェニルアミノ基)、
(5)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアラルキル)アミノ基(例、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基)、
(6)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアルキル-カルボニル)アミノ基(例、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基)、
(7)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいシクロアルキル-カルボニル)アミノ基(例、シクロプロピルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基)、(8)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアリール-カルボニル)アミノ基(例、ベンゾイルアミノ基)、
(9)モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアラルキル-カルボニル)アミノ基(例、ベンジルカルボニルアミノ基)。
ここで、「モノ-またはジ-(置換基を有していてもよいアルキル)アミノ基」とは、モノ(置換基を有していてもよいアルキル)アミノ基またはジ(置換基を有していてもよいアルキル)アミノ基を表す。他も同様である。また、「モノ(置換基を有していてもよいアルキル)アミノ基」とは、置換基を有していてもよいアルキル基を1個の置換基として有するアミノ基を表す。他も同様である。
【0044】
<式(I)で示される化合物>
本発明は、式(I):
【0045】
【0046】
で示される化合物を使用することを特徴の一つとする。化合物(I)は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0047】
式(I)中のmおよびnは、それぞれ独立に、0~3を表す。なお、mが2以上である場合、複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上である場合、複数のR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。複数のR1は、同じものであることが好ましい。また、複数のR2は、同じものであることが好ましい。mおよびnは、それぞれ独立に、好ましくは0~2、より好ましくは0または2である。
【0048】
式(I)中のR1およびR2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1-18アルキル基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC6-18アリール基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキル基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキルオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC6-18アリールオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキルオキシ-カルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいC6-18アリールオキシ基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC3-10シクロアルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC6-18アリール-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいC7-20アラルキル-カルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、またはニトロ基を表す。R1およびR2は、同じものであることが好ましい。
【0049】
R1およびR2は、それぞれ独立に、好ましくは置換基を有していてもよいC1-18アルキル基、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニルオキシ基、アミノ基、またはモノ(置換基を有していてもよいC1-18アルキル-カルボニル)アミノ基であり、より好ましくはC1-18アルキル基、ヒドロキシ基、C1-18アルコキシ基、C1-18アルキル-カルボニルオキシ基、アミノ基、またはモノ(C1-18アルキル-カルボニル)アミノ基であり、さらに好ましくはC1-6アルキル基である。R1およびR2は、同じものであることが好ましい。
【0050】
化合物(I)の中でも、低燃費性および耐摩耗性の観点から、下記式(Ia)で示される化合物(即ち、2,2’-ジピリミジルジスルフィド)および下記式(Ib)で示される化合物が好ましい(下記式(Ib)中のR1およびR2は、前記と同義である)。
【0051】
【0052】
化合物(I)の量(2種以上の化合物(I)を使用する場合は、その合計量)は、低燃費性および耐摩耗性の観点から、ゴム成分100重量部あたり、0.02~10重量部、好ましくは0.02~8重量部、より好ましくは0.1~6重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部である。
【0053】
化合物(I)は、公知の方法に従って製造することができる。化合物(I)は、例えば、以下に示すような工程(1)によって製造することができる(下記式中の基の定義は前記の通りである)。
【0054】
【0055】
工程(1)は、化合物(a)および化合物(b)の酸化およびジスルフィド結合の形成である。この酸化は、過酸化水素、フェリシアン化カリウム、酸素、ヨウ素、臭素、ヨードベンゼンジアセテート、過ヨウ素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等の酸化剤を使用して行うことができる。酸化剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。また、過酸化水素とヨウ化ナトリウムとを併用することによって、系中でヨウ素を発生させてもよい。酸化剤の使用量(2種以上の酸化剤を使用する場合は、その合計量)は、化合物(a)および化合物(b)の合計1モルに対して、好ましくは1~10モル、より好ましくは1~3モルである。
【0056】
工程(1)の反応(即ち、酸化およびジスルフィド結合の形成)は、通常、溶媒中で行われる。この溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルエーテル等のエーテル系溶媒、水、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒が挙げられる。溶媒は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0057】
工程(1)の反応(即ち、酸化およびジスルフィド結合の形成)は、化合物(a)および化合物(b)に、過酸化水素水溶液を添加して行うことが好ましい。過酸化水素水溶液を用いる酸化およびジスルフィド結合の形成は発熱反応である。過酸化水素水溶液の添加後、混合物を好ましくは0~100℃、より好ましくは0~60℃で、好ましくは0.1~48時間、より好ましくは0.1~24時間撹拌することが好ましい。
【0058】
工程(1)の反応後、公知の手段(ろ過、抽出、濃縮等)によって、化合物(I)を得ることができる。得られた化合物(I)を、公知の手段によって精製してもよい。
【0059】
<ゴム成分>
ゴム成分としては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、天然ゴム(NR)(変性天然ゴム、例えば、エポキシ化天然ゴム、脱蛋白天然ゴムを含む)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレン・イソブチレン共重合ゴム(IIR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム(HR)等が挙げられる。ゴム成分は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
SBRとしては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の210~211頁に記載されている乳化重合SBRおよび溶液重合SBRが挙げられる。乳化重合SBRおよび溶液重合SBRを併用してもよい。
【0061】
溶液重合SBRとしては、変性剤で変性して得られる、分子末端に窒素、スズおよびケイ素の少なくとも一つの元素を有する、変性溶液重合SBRが挙げられる。変性剤としては、例えば、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素化合物、N,N-ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物、アミノシラン化合物、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物との併用変性剤、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物との併用変性剤等が挙げられる。これらの変性剤は、単独で用いてもよいし、複数を用いてもよい。変性溶液重合SBRとしては、具体的には、日本ゼオン社製「Nipol(登録商標)NS116」等の4,4’-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、JSR社製「SL574」等のハロゲン化スズ化合物を用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、および旭化成社製「E10」および「E15」等のシラン変性溶液重合SBR等が挙げられる。
【0062】
また、乳化重合SBRおよび溶液重合SBRに、プロセスオイルやアロマオイル等のオイルを添加した油展SBRも使用することができる。
【0063】
天然ゴムとしては、例えば、RSS#1、RSS#3、TSR20、SIR20等のグレードの天然ゴムを挙げることができる。エポキシ化天然ゴムとしては、エポキシ化度10~60モル%のもの(例えば、クンプーラン ガスリー社製ENR25やENR50)が挙げられる。脱蛋白天然ゴムとしては、総窒素含有率が0.3重量%以下である脱蛋白天然ゴムが好ましい。その他の変性天然ゴムとしては、例えば、天然ゴムに4-ビニルピリジン、N,N,-ジアルキルアミノエチルアクリレート(例えばN,N,-ジエチルアミノエチルアクリレート)、2-ヒドロキシアクリレート等を反応させた極性基を含有する変性天然ゴムが挙げられる。
【0064】
BRとしては、タイヤ工業において一般的なBRを使用できる。BRは、しばしば、SBRおよび/または天然ゴムとのブレンドで使用される。
【0065】
BRとしては、耐摩耗性の向上効果が高いという理由から、シス含有量が高いBRが好ましく、シス含有量が95質量%以上であるハイシスBRがより好ましい。ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン社製のBR1220、宇部興産社製のBR150B等が挙げられる。
【0066】
変性剤で変性して得られる、分子末端に窒素、スズ、およびケイ素の少なくとも一つの元素を有する変性BRを使用することもできる。変性剤としては、例えば、4,4’-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、ハロゲン化スズ化合物、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素化合物、N,N-ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(例えば、トリアルコキシシラン化合物)、アミノシラン化合物、スズ化合物、アルキルアクリルアミド化合物等が挙げられる。これらの変性剤は、単独で用いてもよいし、複数を用いてもよい。変性BRとしては、例えば、日本ゼオン製「Nipol(登録商標)BR 1250H」等のスズ変性BRが挙げられる。
【0067】
ゴム成分は、好ましくはジエン系ゴムを含む。ここで、ジエン系ゴムとは、共役二重結合を持つジエンモノマーを原料としたゴムを意味する。ジエン系ゴムとしては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
【0068】
ジエン系ゴムを使用する場合、ゴム成分中のジエン系ゴムの量(即ち、ゴム成分100重量%あたりのジエン系ゴムの量)は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは70~100重量%、さらに好ましくは80~100重量%、最も好ましくは100重量%である。即ち、ゴム成分がジエン系ゴムからなることが最も好ましい。
【0069】
本発明の一態様では、ゴム成分は、好ましくはSBRを含む。この態様における、ゴム成分中のSBRの量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは70~100重量%、さらに好ましくは80~100重量%、最も好ましくは100重量%である。即ち、この態様では、ゴム成分がSBRからなることが最も好ましい。
【0070】
本発明の一態様では、ゴム成分は、好ましくはSBRおよびBRを含む。この態様では、ゴム成分中のSBRおよびBRの合計量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは70~100重量%、さらに好ましくは80~100重量%、最も好ましくは100重量%である。即ち、この態様における、ゴム成分がSBRおよびBRからなることが最も好ましい。この態様において、BRの量とSBRの量との重量比(BRの量/SBRの量)は、低燃費性および耐摩耗性の観点から、好ましくは5/95~50/50、より好ましくは10/90~40/60、さらに好ましくは20/80~40/60である。
【0071】
<加硫促進剤>
加硫促進剤としては、例えば、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日 社団法人 日本ゴム協会発行)に記載されているものを使用することができる。加硫促進剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤等が挙げられる。
【0072】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N―オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、N,N-ジシクロへキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。スルフェンアミド系加硫促進剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0073】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾール シクロヘキシルアミン塩(CMBT)、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZMBT)等が挙げられる。チアゾール系加硫促進剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0074】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、N,N'-ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)等が挙げられる。グアニジン系加硫促進剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0075】
加硫促進剤の量(2種以上の加硫促進剤を使用する場合は、その合計量)は、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは0.5~10.5重量部、より好ましくは0.7~8重量部、さらに好ましくは0.8~6重量部、特に好ましくは0.8~5.5重量部である。
【0076】
加硫促進剤は、好ましくはスルフェンアミド系加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤は、好ましくは、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N―オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、およびN,N-ジシクロへキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)である。
【0077】
スルフェンアミド系加硫促進剤を使用する場合、その量(2種以上のスルフェンアミド系加硫促進剤を使用する場合は、その合計量)は、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.1~7重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部、特に好ましくは1~5重量部である。
【0078】
硫黄成分の量と加硫促進剤の量との重量比(硫黄成分の量/加硫促進剤の量)は、特に制限されないが、好ましくは1/10~10/1、より好ましくは1/5~5/1である。なお、2種以上の加硫促進剤(例えば、CBSおよびDPG)を使用する場合、前記重量比は、硫黄成分の量と、2種以上の加硫促進剤の合計量とを用いて算出する。
【0079】
<充填剤>
本発明では、充填剤としてシリカを使用することを特徴の一つとする。
シリカのBET比表面積は、好ましくは20~400m2/g、より好ましくは20~350m2/g、さらに好ましくは20~300m2/gである。このBET比表面積は、多点窒素吸着法(BET法)によって測定することができる。
【0080】
シリカとしては、例えば、(i)pHが6~8であるシリカ、(ii)ナトリウムを0.2~1.5重量%含むシリカ、(iii)真円度が1~1.3の真球状シリカ、(iv)シリコーンオイル(例、ジメチルシリコーンオイル)、エトキシシリル基を含有する有機ケイ素化合物、アルコール(例、エタノール、ポリエチレングリコール)等で表面処理したシリカ、(v)二種類以上の異なった表面積を有するシリカの混合物等が挙げられる。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
シリカの市販品としては、例えば、東ソー・シリカ社製「Nipsil(登録商標)AQ」、「Nipsil(登録商標)AQ-N」、EVONIK社製「Ultrasil(登録商標)VN3」、「Ultrasil(登録商標)VN3-G」、「Ultrasil(登録商標)360」、「Ultrasil(登録商標)7000」、「Ultrasil(登録商標)9100GR」、Solvay社製「Zeosil(登録商標)115GR」、「Zeosil(登録商標)1115MP」、「Zeosil(登録商標)1205MP」、「Zeosil(登録商標)Z85MP」が挙げられる。
【0082】
シリカの量は、低燃費性および耐摩耗性の観点から、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは10~120重量部、より好ましくは20~120重量部、さらに好ましくは30~120重量部、特に好ましくは40~100重量部、最も好ましくは50~100重量部である。
【0083】
本発明では、充填剤としてカーボンブラックを使用してもよい。
カーボンブラックのBET比表面積は、好ましくは10~130m2/g、より好ましくは20~130m2/g、さらに好ましくは40~130m2/gである。このBET比表面積は、多点窒素吸着法(BET法)によって測定することができる。
【0084】
カーボンブラックとしては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の494頁に記載されるものが挙げられる。カーボンブラックは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。カーボンブラックとしては、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、ISAF-HM(Intermediate SAF-High Modulus)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF(Medium Abrasion Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)が好ましい。
【0085】
カーボンブラックを使用する場合、その量は、低燃費性、耐摩耗性および補強性の観点から、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは1~40重量部、より好ましくは1~30重量部、さらに好ましくは1~25重量部である。
【0086】
カーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックの量とシリカの量との重量比(カーボンブラックの量/シリカの量)は、低燃費性および耐摩耗性の観点から、好ましくは1/120~3/4、より好ましくは1/100~1/2、さらに好ましくは1/100~5/12である。
【0087】
本発明では、シリカおよびカーボンブラックとは異なる他の充填剤を使用してもよい。他の充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、瀝青炭粉砕物、タルク、クレー(特に、焼成クレー)、酸化チタンが挙げられる。
【0088】
水酸化アルミニウムとしては、窒素吸着比表面積5~250m2/g、DOP給油量50~100ml/100gの水酸化アルミニウムが例示される。
【0089】
瀝青炭粉砕物の平均粒径は、好ましくは0.001mm以上であり、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.05mm以下、さらに好ましくは0.01mm以下である。なお、瀝青炭粉砕物の平均粒径は、JIS Z 8815-1994に準拠して測定される粒度分布から算出された質量基準の平均粒径である。
【0090】
瀝青炭粉砕物の比重は、1.6以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.3以下がさらに好ましい。比重が1.6を超える瀝青炭粉砕物を使用すると、ゴム組成物全体の比重が増加し、タイヤの低燃費性向上が充分に図れないおそれがある。瀝青炭粉砕物の比重は、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。比重が0.5未満である瀝青炭粉砕物を使用すると、混練時の加工性が悪化するおそれがある。
【0091】
<硫黄成分>
硫黄成分としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等が挙げられる。
【0092】
硫黄成分の量は、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.1~3重量部、さらに好ましくは0.1~2重量部である。
【0093】
<他の成分>
本発明では、上述の化合物(I)、ゴム成分、加硫促進剤、充填剤および硫黄成分とは異なる他の成分を使用してもよい。他の成分としては、ゴム分野で公知のものを使用することができ、例えば、シリカと結合可能な化合物(例、シランカップリング剤)、加硫促進助剤、樹脂、粘弾性改善剤、老化防止剤、加工助剤、オイル、ワックス、しゃく解剤、リターダー、オキシエチレンユニットを有する化合物、触媒(ナフテン酸コバルト等)が挙げられる。他の成分は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
シリカと結合可能な化合物の例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、EVONIK社製「Si-69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、EVONIK社製「Si-75」)、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(別名:「オクタンチオ酸S-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エステル」、例えば、ジェネラルエレクトロニックシリコンズ社製「NXTシラン」)、オクタンチオ酸S-[3-{(2-メチル-1,3-プロパンジアルコキシ)エトキシシリル}プロピル]エステル、オクタンチオ酸S-[3-{(2-メチル-1,3-プロパンジアルコキシ)メチルシリル}プロピル]エステル、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランおよび3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらの中で、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、EVONIK社製「Si-69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、EVONIK社製「Si-75」)、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(例えば、ジェネラルエレクトロニックシリコンズ社製「NXTシラン」)が、好ましい。
【0095】
シリカと結合可能な化合物を使用する場合、その量は、シリカ100重量部あたり、好ましくは2~10重量部である。
【0096】
シリカと結合可能な化合物に加えて、エタノール、ブタノール、オクタノール等の1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリエーテルポリオール等の多価アルコール;N-アルキルアミン;アミノ酸;分子末端がカルボキシ変性またはアミン変性された液状ポリブタジエン等を使用してもよい。
【0097】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛、シトラコンイミド化合物、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、有機チオスルフェート化合物および式(III):
R16-S-S-R17-S-S-R18 (III)
(式中、R17は、C2-10アルカンジイル基を示し、R16およびR18は、それぞれ独立に、窒素原子を含む1価の有機基を示す。)
で示される化合物が挙げられる。
なお、本発明において酸化亜鉛は、加硫促進助剤の概念に包含され、上述の充填剤の概念には包含されない。
【0098】
酸化亜鉛を使用する場合、その量は、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは0.01~20重量部、より好ましくは0.1~15重量部、さらに好ましくは0.1~10重量部である。
【0099】
シトラコンイミド化合物としては、熱的に安定であり、ゴム成分中への分散性に優れるという理由から、ビスシトラコンイミド類が好ましい。具体的には、1,2-ビスシトラコンイミドメチルベンゼン、1,3-ビスシトラコンイミドメチルベンゼン、1,4-ビスシトラコンイミドメチルベンゼン、1,6-ビスシトラコンイミドメチルベンゼン、2,3-ビスシトラコンイミドメチルトルエン、2,4-ビスシトラコンイミドメチルトルエン、2,5-ビスシトラコンイミドメチルトルエン、2,6-ビスシトラコンイミドメチルトルエン、1,2-ビスシトラコンイミドエチルベンゼン、1,3-ビスシトラコンイミドエチルベンゼン、1,4-ビスシトラコンイミドエチルベンゼン、1,6-ビスシトラコンイミドエチルベンゼン、2,3-ビスシトラコンイミドエチルトルエン、2,4-ビスシトラコンイミドエチルトルエン、2,5-ビスシトラコンイミドエチルトルエン、2,6-ビスシトラコンイミドエチルトルエンなどが挙げられる。
【0100】
シトラコンイミド化合物のなかでも、熱的に特に安定であり、ゴム成分中への分散性に特に優れ、高硬度(Hs)の加硫ゴム組成物を得ることができる(リバージョン制御)という理由から、下記式で表される1,3-ビスシトラコンイミドメチルベンゼンが好ましい。
【0101】
【0102】
加硫促進助剤として、高硬度(Hs)の加硫ゴム組成物を得ることができるという理由から、式(IV):
【0103】
【0104】
[式中、nは0~10の整数であり、Xは2~4の整数であり、R19はC5-12アルキル基である。]
で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を使用することが好ましい。
【0105】
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(IV)のゴム成分中への分散性が良いという理由から、式(IV)中のnは、好ましくは1~9の整数である。
【0106】
Xが4を超えると、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(IV)が熱的に不安定となる傾向があり、Xが1であるとアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(IV)中の硫黄含有率(硫黄の重量)が少ない。高硬度を効率よく発現させることができる(リバージョン抑制)という理由から、Xは2であることが好ましい。
【0107】
R19は、C5-12アルキル基である。ゴム成分中へのアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(IV)の分散性が良いという理由から、R19は、好ましくはC6-9アルキル基である。
【0108】
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(IV)の具体例として、式(IV)中のnが0~10であり、Xが2であり、R19がオクチル基であり、硫黄含有率が24重量%である田岡化学工業社製のタッキロールV200が挙げられる。
【0109】
加硫促進助剤として、高硬度(Hs)の加硫ゴム組成物が得られる(リバージョン抑制)という理由から、式(V):
HO3S-S-(CH2)s-S-SO3H (V)
[式中、sは3~10の整数である。]
で表される有機チオスルフェート化合物の塩(以下「有機チオスルフェート化合物塩(V)」と記載することがある。)を使用することが好ましい。結晶水を含有する有機チオスルフェート化合物塩(V)を使用してもよい。有機チオスルフェート化合物塩(V)としては、例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、ニッケル塩、コバルト塩等が挙げられ、カリウム塩、ナトリウム塩が好ましい。
【0110】
sは、3~10の整数であり、好ましくは3~6の整数である。sが2以下では、充分な耐熱疲労性が得られない傾向があり、sが11以上では、有機チオスルフェート化合物塩(V)による耐熱疲労性の改善効果が充分に得られない場合がある。
【0111】
有機チオスルフェート化合物塩(V)としては、常温常圧下で安定であるという観点から、そのナトリウム塩1水和物、ナトリウム塩2水和物が好ましく、コストの観点からチオ硫酸ナトリウムから得られる有機チオスルフェート化合物塩(V)がより好ましく、下記式で表される1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物がさらに好ましい。
【0112】
【0113】
ゴム成分中へ良く分散すること、およびアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(IV)と併用した場合にアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(IV)の-SX-架橋の中間に挿入されて、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(IV)とのハイブリッド架橋を形成することが可能であるという理由から、式(III):
R16-S-S-R17-S-S-R18 (III)
(式中、R17はC2-10アルカンジイル基を示し、R16およびR18は、それぞれ独立に、窒素原子を含む1価の有機基を示す。)
で示される化合物を、加硫促進助剤として使用することが好ましい。
【0114】
R17は、C2-10アルカンジイル基、好ましくはC4-8アルカンジイル基であり、より好ましくは直鎖状のC4-8アルカンジイル基である。R17は、直鎖状であることが好ましい。R17の炭素数が1以下では、熱的な安定性が悪い場合がある。また、R17の炭素数が11以上では、加硫促進助剤を介したポリマー間の距離が長くなり、加硫促進助剤を添加する効果が得られない場合がある。
【0115】
R16およびR18は、それぞれ独立に、窒素原子を含む1価の有機基である。窒素原子を含む1価の有機基としては、芳香環を少なくとも1つ含むものが好ましく、芳香環および=N-C(=S)-基を含むものがさらに好ましい。R16およびR18は、それぞれ同一でも、異なっていてもよいが、製造の容易さなどの理由から、同一であることが好ましい。
【0116】
化合物(III)としては、例えば、1,2-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)エタン、1,3-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)プロパン、1,4-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ブタン、1,5-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ペンタン、1,6-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、1,7-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘプタン、1,8-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)オクタン、1,9-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ノナン、1,10-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)デカンなどが挙げられる。なかでも、熱的に安定であり、ゴム成分中への分散性に優れるという理由から、1,6-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンが好ましい。
【0117】
化合物(III)の市販品としては、例えば、バイエル社製のVULCUREN TRIAL PRODUCT KA9188、VULCUREN VP KA9188(1,6-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)が挙げられる。
【0118】
本発明では、レゾルシノール等の有機化合物、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂および変性フェノール樹脂等の樹脂を使用してもよい。レゾルシノールやこれらの樹脂を使用することにより、加硫ゴム組成物の破断時伸び、複素弾性率を向上させることができる。また、ゴム組成物をコードと接触するゴム製品の製造に使用する場合、レゾルシノールや樹脂を使用することにより、コードとの接着性を高めることができる。
【0119】
レゾルシノールとしては、例えば、住友化学社製のレゾルシノール等が挙げられる。レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。変性レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。具体的には、インドスペック社製のペナコライト樹脂B-18-S、B-20、田岡化学工業社製のスミカノール620、ユニロイヤル社製のR-6、スケネクタディー化学社製のSRF1501、アッシュランド社製のArofene7209等が挙げられる。
【0120】
クレゾール樹脂としては、例えば、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。変性クレゾール樹脂としては、例えば、クレゾール樹脂の末端のメチル基をヒドロキシ基に変更したもの、クレゾール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。具体的には、田岡化学工業社製のスミカノール610、住友ベークライト社製のPR-X11061等が挙げられる。
【0121】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。また、変性フェノール樹脂としては、フェノール樹脂をカシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミンなどを用いて変性した樹脂が挙げられる。
【0122】
その他の樹脂としては、例えば、住友化学社製の「スミカノール507AP」等のメトキシ化メチロールメラミン樹脂;日鉄化学社製のクマロン樹脂NG4(軟化点81~100℃)、神戸油化学工業社製の「プロセスレジンAC5」(軟化点75℃)等のクマロン・インデン樹脂;テルペン樹脂、テルペン・フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;三菱瓦斯化学社製の「ニカノール(登録商標)A70」(軟化点70~90℃)等のロジン誘導体;水素添加ロジン誘導体;ノボラック型アルキルフェノール系樹脂;レゾール型アルキルフェノール系樹脂;C5系石油樹脂;液状ポリブタジエンが挙げられる。
【0123】
粘弾性改善剤としては、例えば、N,N’-ビス(2-メチル-2-ニトロプロピル)-1,6-ヘキサンジアミン(例えば、住友化学社製「スミファイン(登録商標)1162」)、特開昭63-23942号公報記載のジチオウラシル化合物、田岡化学工業社製「タッキロール(登録商標)AP」、「タッキロール(登録商標)V-200」、特開2009-138148号公報記載のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(例えば、バイエル社製「KA9188」)、1,6-ヘキサメチレンジチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン(例えば、フレキシス社製「パーカリンク900」)、1-ベンゾイル-2-フェニルヒドラジド、1-ヒドロキシ-N’-(1-メチルエチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-N’-(1-メチルエチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、特開2004-91505号公報記載の1-ヒドロキシ-N’-(1-メチルプロピリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-N’-(1-メチルプロピリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、1-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、1-ヒドロキシ-N’-(2-フリルメチレン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-N’-(2-フリルメチレン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド等のカルボン酸ヒドラジド誘導体、特開2000-190704号公報記載の3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジフェニルエチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-N’-(1-メチルエチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、特開2006-328310号公報記載のビスメルカプトオキサジアゾール化合物、特開2009-40898号公報記載のピリチオン塩化合物、特開2006-249361号公報記載の水酸化コバルト化合物が挙げられる。
【0124】
老化防止剤としては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の436~443頁に記載されるものが挙げられる。老化防止剤としては、N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン(略称「6PPD」、例えば住友化学社製「アンチゲン(登録商標)6C」)、アニリンとアセトンの反応生成物(略称「TMDQ」)、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-)ジヒドロキノリン)(例えば、松原産業社製「アンチオキシダントFR」)、合成ワックス(パラフィンワックス等)、植物性ワックスが好ましく用いられる。
【0125】
老化防止剤を使用する場合、その量は、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは0.01~15重量部、より好ましくは0.1~10重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部である。
【0126】
加工助剤としては、例えば、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、そのエステルおよびアミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩等が挙げられる。市販品としては、例えば、SCHILL & SEILACHER Gmbh. & CO.製「STRUKTOL A50P」、STRUKTOL A60」、「STRUKTOL EF44」、「STRUKTOL HT204」、「STRUKTOL HT207」、「STRUKTOL HT254」、「STRUKTOL HT266」、「STRUKTOL WB16」などが挙げられる。
【0127】
加工助剤を使用する場合、その量は、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは0.01~20重量部、より好ましくは0.1~15重量部、さらに好ましくは0.1~10重量部である。
【0128】
加工助剤としてステアリン酸を使用する場合、その量は、ゴム成分100重量部あたり、好ましくは0.01~15重量部、より好ましくは0.1~10重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部である。
【0129】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂等が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、MES(軽度抽出溶媒和物)オイル、TDAE(処理留出物芳香族系抽出物)オイルが挙げられる。市販品としては、例えば、アロマチックオイル(コスモ石油社製「NC-140」)、プロセスオイル(出光興産社製「ダイアナプロセスPS32」)、TDAEオイル(H&R社製「VivaTec500」)が挙げられる。
【0130】
オイルを使用する場合、その量は、ゴム成分100重量部あたり5~70重量部が好ましく、20~60重量部がより好ましい。
【0131】
ワックスとしては、大内新興化学工業社製の「サンノック(登録商標)ワックス」、日本精蝋社製の「OZOACE-0355」等が挙げられる。
【0132】
しゃく解剤としては、ゴム分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の446~449頁に記載される、芳香族メルカプタン系しゃく解剤、芳香族ジスルフィド系しゃく解剤、芳香族メルカプタン金属塩系しゃく解剤が挙げられる。中でも、ジキシリルジスルフィド、o,o’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(大内新興化学工業社製「ノクタイザーSS」)が好ましい。しゃく解剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0133】
しゃく解剤を使用する場合、その量は、ゴム成分100重量部あたり0.01~1重量部が好ましく、0.05~0.5重量部がより好ましい。
【0134】
リターダーとしては、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、N-ニトロソジフェニルアミン、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(CTP)、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトール ジホスファイト等が例示され、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(CTP)が好ましく用いられる。
【0135】
リターダーを使用する場合、その量は、ゴム成分100重量部あたり0.01~1重量部が好ましく、0.05~0.5重量部がより好ましい。
【0136】
本発明では、式:-O-(CH2-CH2-O)r-H[式中、rは1以上の整数である。]で表される構造を有するオキシエチレンユニットを有する化合物を使用してもよい。ここで、上記式中、rは、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。また、rは16以下が好ましく、14以下がより好ましい。rが17以上では、ゴム成分との相溶性および補強性が低下する傾向がある。
【0137】
オキシエチレンユニットを有する化合物中のオキシエチレンユニットの位置は、主鎖でも、末端でも、側鎖でもよい。得られるタイヤ表面における静電気の蓄積防止効果の持続性および電気抵抗の低減の観点から、オキシエチレンユニットを有する化合物の中でも、少なくとも側鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物が好ましい。
【0138】
主鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンスチレン化アルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアマイドなどが挙げられる。
【0139】
少なくとも側鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物を使用する場合、オキシエチレンユニットの個数は、主鎖を構成する炭素数100個当たり4個以上が好ましく、8個以上がより好ましい。オキシエチレンユニットの個数が3個以下では、電気抵抗が増大する傾向がある。また、オキシエチレンユニットの個数は12個以下が好ましく、10個以下がより好ましい。オキシエチレンユニットの個数が13個以上では、ゴム成分との相溶性および補強性が低下する傾向がある。
【0140】
少なくとも側鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物を使用する場合、その主鎖としては、主としてポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンから構成されるものが好ましい。
【0141】
<本発明の一態様>
本発明の一態様では、ゴム成分として、
(1)ケイ素化合物で分子末端を変性した溶液重合SBR単独、または
(2)前記末端変性の溶液重合SBRを主成分とし、未変性の溶液重合SBR、乳化重合SBR、天然ゴムおよびBRからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムを副成分とするブレンド
を使用する。以下、この態様を「態様1」と略称する。
【0142】
態様1では、充填剤として、シリカを主成分とし、カーボンブラックを副成分とするブレンドを使用することが好ましい。さらに、態様1では、N,N’-ビス(2-メチル-2-ニトロプロピル)-1,6-ヘキサンジアミン(住友化学社製「スミファイン(登録商標)1162」)、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン(NQ-58)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si-69)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si-75)、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)-ヘキサン(バイエル社製「KA9188」)、ヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン(フレキシス社製「パーカリンク900」)、田岡化学製「タッキロール(登録商標)AP」、「タッキロール(登録商標)V-200」等のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、等の粘弾性改善剤を併用することが好ましい。態様1のゴム組成物は、乗用車タイヤのトレッド部材用ゴム組成物として好適である。
【0143】
本発明の一態様において、ゴム組成物は、
(1)100重量部の乳化重合スチレンブタジエンゴムおよび/または溶液重合スチレンブタジエンゴム、
(2)0.1~10重量部の加硫促進剤、
(3)5~150重量部の、CTAB表面積が60~180m2/gであり、窒素吸着比表面積が50~300m2/gであるシリカ、並びに
(4)0.1~10重量部の化合物(I)、
を混練して得られる。以下、この態様を「態様2」と略称する。態様2の成分量は、ゴム成分(即ち、乳化重合スチレンブタジエンゴムおよび/または溶液重合スチレンブタジエンゴム)100重量部に対する値である。態様2のゴム組成物は、粘弾性特性(低燃費性)を大きく損なうことなく、優れた耐摩耗性および耐久性を有する加硫ゴム組成物を与えることができる。
【0144】
本発明の一態様において、ゴム組成物は、
(1)100重量部のジエン系ゴム(例えば、NR、IR、BR、SBR、IIR、ハロゲン化IIR、CR、NBR等)
(2)好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.3~3重量部の化合物(I)、
(3)好ましくは5~150重量部のCTAB表面積が60~180m2/gであり、窒素吸着比表面積が50~300m2/gであるシリカ、
(4)好ましくは5~25重量部の樹脂(例えば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂等)、
(5)好ましくは5.1~7.0重量部の硫黄、
(6)好ましくは1.0~2.0重量部のヘキサメチレンテトラミン、
(7)好ましくは2.0~5.0重量部のスルフェンアミド系加硫促進剤および/またはチアゾール系加硫促進剤、並びに
(8)好ましくは0.1~5重量部の、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、有機チオスルフェート化合物および上述の化合物(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種の加硫促進補助剤
を混練して得られる。以下、この態様を「態様3」と略称する。態様3の成分量は、ジエン系ゴム100重量部に対する値である。
【0145】
態様3のゴム組成物は、加工性が良好であり、また、優れた耐摩耗性を有する加硫ゴムを与えるため、特にビードエイペックスおよび/またはクリンチエイペックス用ゴム組成物として使用することが好ましい。
【0146】
<ゴム組成物の製造>
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、加硫促進剤、シリカ、および化合物(I)、並びに必要に応じて他の成分を混練することによって製造することができる。
【0147】
さらに硫黄成分を混練して得られる本発明のゴム組成物(以下「硫黄成分を含有する本発明のゴム組成物」と記載することがある。)は、ゴム成分、加硫促進剤、シリカ、化合物(I)および硫黄成分、並びに必要に応じて他の成分を混練することによって製造することができる。硫黄成分を含有する本発明のゴム組成物は、まず、ゴム成分、シリカ等の充填剤、および必要に応じて他の成分を混練する工程(以下「工程1」と略称することがある。)、次いで工程1で得られたゴム組成物、硫黄成分、および必要に応じて他の成分を混練する工程(以下「工程2」と略称することがある。)を経て製造することが好ましい。さらに、工程1(即ち、ゴム成分と充填剤等との混練)の前に、ゴム成分を加工しやすくするため、ゴム成分を素練りする予備混練工程を設けてもよい。
【0148】
硫黄成分を含有する本発明のゴム組成物の製造では、化合物(I)の全量を、予備混練工程、工程1または工程2のいずれかでゴム成分等と混練してもよく、化合物(I)をそれぞれ分割して、予備混練工程~工程2の少なくとも二つの工程でゴム成分等と混練してもよい。また、化合物(I)を、上述の充填剤に予め担持してから、ゴム成分等と混練してもよい。
【0149】
酸化亜鉛を配合するときは、工程1でそれとゴム成分等とを混練することが好ましい。ステアリン酸を配合するときは、工程1でそれとゴム成分等とを混練することが好ましい。加硫促進剤を配合するときは、工程2でそれとゴム成分等とを混練することが好ましい。しゃく解剤を配合するときは、工程1でそれとゴム成分等とを混練することが好ましい。予備混練工程を設ける時は、予備混練工程でしゃく解剤の全量とゴム成分とを混練するか、またはしゃく解剤を分けて、予備混練工程および工程1の両方でそれの一部とゴム成分とを混練することが好ましい。リターダーを配合するときは、工程2でそれとゴム成分等とを混練することが好ましい。
【0150】
工程1における混練には、例えば、バンバリーミキサーを含むインターナルミキサー、オープン型ニーダー、加圧式ニーダー、押出機、および射出成型機等を使用することができる。工程1における混練後のゴム組成物の排出温度は、200℃以下が好ましく、120~180℃がより好ましい。
【0151】
工程2における混練には、例えば、オープンロール、カレンダー等を使用することができる。工程2における混練温度(混練しているゴム組成物の温度)は、60~120℃が好ましい。
【0152】
<加硫ゴム組成物の製造>
硫黄成分を含有する本発明のゴム組成物を加硫することによって、加硫ゴム組成物を製造することができる。硫黄成分を含有する本発明のゴム組成物を特定の形状に加工してから加硫することによって、加硫ゴム組成物を製造してもよい。
【0153】
加硫温度は、120~180℃が好ましい。当業者であれば、ゴム組成物の組成に応じて、加硫時間を適宜設定することができる。加硫は、通常、常圧または加圧下で行われる。
【0154】
<用途>
本発明のゴム組成物および加硫ゴム組成物は、様々な製品(例えば、タイヤ、タイヤ用部材、防振ゴム、コンベアベルト用ゴム、エンジンマウントゴム等)を製造するために有用である。そのような製品としては、タイヤおよびタイヤ用部材が好ましく、タイヤがより好ましい。タイヤ用部材としては、例えば、本発明の加硫ゴム組成物およびスチールコードを含むタイヤ用ベルト部材、本発明の加硫ゴム組成物およびカーカス繊維コードを含むタイヤ用カーカス部材、タイヤ用サイドウォール部材、タイヤ用インナーライナー部材、タイヤ用キャップトレッド部材またはタイヤ用アンダートレッド部材が挙げられる。
【実施例】
【0155】
以下、実施例等を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0156】
製造例1:化合物(Ia)の製造
【0157】
【0158】
2-メルカプトピリミジン22.9g(0.20mol)に酢酸エチル500mLを加えた後、塊となっている2-メルカプトピリミジンを超音波によって粉砕した(40℃、30分)。そこにヨウ化ナトリウム3.0g(0.020mol)を加えた後、35重量%過酸化水素水溶液19.4mL(0.200mol)を室温で約2時間かけて滴下すると発熱し、過酸化水素水溶液の全量を滴下した後には、完全な溶液が得られた。溶液を室温で45分間攪拌し、TLCにて2-メルカプトピリミジンの消失を確認した後、溶液にチオ硫酸ナトリウム35.0g(0.22mol)の100mL水溶液を添加してクエンチし、過酸化物試験紙で過酸化水素が消失していることを確認した。得られた溶液を分液漏斗に移し、酢酸エチル150mLで2回抽出した後、まとめた有機層を飽和食塩水100mLで洗浄した。分液した有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過によって固体を除去した後、ろ液をエバポレータにて濃縮し、減圧乾燥することで、化合物(Ia)(即ち、2,2’-ジピリミジルジスルフィド)21.8g(収率98%)を淡黄色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δppm:7.10(4H,t,J=4.8Hz),8.56(2H,d,J=4.8Hz)
【0159】
製造例2:化合物(Ib-1)の製造
【0160】
【0161】
4,6-ジメチル-2-メルカプトピリミジン21.5g(0.15mol)に酢酸エチル500mLを加えた後、塊となっている4,6-ジメチル-2-メルカプトピリミジンを超音波によって粉砕した(40℃、30分)。そこにヨウ化ナトリウム2.3g(0.015mol)を加えた後、35重量%過酸化水素水溶液14.4mL(0.15mol)を1時間33分かけて滴下したところ、発熱が確認された。過酸化水素水溶液の全量を滴下した後には、完全な溶液は得られず、固体が一部析出した分散液が得られた。分散液を室温で8時間40分間攪拌し、TLCにて4,6-ジメチル-2-メルカプトピリミジンの消失を確認した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液100mLを添加してクエンチし、過酸化物試験紙で過酸化水素が消失していることを確認した。析出した固体を吸引ろ過により分取し、水、次いで酢酸エチルで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、酢酸エチル250mLで2回抽出した後、まとめた有機層を飽和食塩水100mLにて洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過によって固体を除去した後、ろ液をエバポレータにて濃縮して固体を得た。吸引ろ過により分取した固体とエバポレーターによって得られた固体とをあわせて、減圧乾燥することで、化合物(Ib-1)(即ち、2,2’-ビス(4,6-ジメチルピリミジル)ジスルフィド)21.0g(収率98%)を淡黄色固体として得た。1H-NMR(CDCl3,400MHz) δppm:2.39(12H,s),6.76(2H,s)
【0162】
実施例1
<工程1>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mLラボプラストミル)を用いて、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(旭化成社製「SBRタフデン2000」)100重量部、シリカ(東ソー・シリカ社製「Nipsil(登録商標)AQ」、BET比表面積:205m2/g)70重量部、カーボンブラックHAF(旭カーボン社製「旭#70」)5重量部、ステアリン酸2重量部、酸化亜鉛3重量部、老化防止剤(N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、住友化学社製「アンチゲン(登録商標)6C」)1.5重量部、TDAEオイル(H&R社製「VivaTec500」)30重量部、およびシリカと結合可能な化合物(EVONIK社製「Si-75」)7重量部および化合物(Ia)0.50重量部を混練し、ゴム組成物を得た。該工程では、ミキサー設定温度140℃およびミキサー回転数60rpmの条件で成分を5分間混練した。混練終了時のゴム組成物の温度は160~170℃であった。
【0163】
<工程2>
ロール設定温度50℃のオープンロール機で、工程1で得られたゴム組成物と、加硫促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)2.45重量部およびジフェニルグアニジン(DPG)1.64重量部)と、粉末硫黄(細井化学社製「微粉硫黄」)1.05重量部とを混練して、ゴム組成物を得た。
【0164】
<加硫>
工程2で得られたゴム組成物を170℃で10分加熱することによって、加硫ゴム組成物を得た。かかる加硫ゴム組成物は、キャップトレッド用として好適である。
【0165】
実施例2~5、参考例1および比較例1
表1に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~5、参考例1および比較例1の加硫ゴム組成物を得た。
なお、後述の低燃費性および耐摩耗性の評価のために、実施例1~5および比較例1の加硫ゴム組成物の硬度と、参考例1の加硫ゴム組成物の硬度とが同等となるように、実施例1~5、参考例1および比較例1では、粉末硫黄、CBSおよびDPGの量を調整した。後述する実施例6等も同様である。
【0166】
<低燃費性の評価>
GABO EPLEXOR動的粘弾性装置を用いて、化合物(Ia)または化合物(Ib-1)を使用した実施例1~5で得られた加硫ゴム組成物、4,4’-ジピリジルジスルフィドを使用した比較例1で得られた加硫ゴム組成物、およびこれら化合物を使用しなかった参考例1で得られた加硫ゴム組成物の粘弾性特性を測定し、それらの60℃および2.5%歪での損失係数(tanδ)を求めた。下記式:
低燃費性の指数
=100×(参考例1のtanδ)/(実施例1~5または比較例1のtanδ)
により実施例1~5および比較例1の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表1に示す。この指数が大きいほど、低燃費性(転がり抵抗特性)が良好である。
【0167】
<耐摩耗性の評価>
DIN摩耗試験機 AB-6111(上島製作所製)を用い、JIS K6264-2:2005 「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-耐摩耗性の求め方-」に準拠して、化合物(Ia)または化合物(Ib-1)を使用した実施例1~5で得られた加硫ゴム組成物、4,4’-ジピリジルジスルフィドを使用した比較例1で得られた加硫ゴム組成物、およびこれら化合物を使用しなかった参考例1で得られた加硫ゴム組成物の摩耗体積(単位:mm3)を測定した。下記式:
耐摩耗性の指数
=100×(参考例1の摩耗体積)/(実施例1~5または比較例1の摩耗体積)
により実施例1~5および比較例1の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表1に示す。この指数が大きいほど、耐摩耗性が良好である。
【0168】
【0169】
表1に示されるように、4,4’-ジピリジルジスルフィドを使用した比較例1では、加硫ゴム組成物の耐摩耗性がほとんど向上しなかった(耐摩耗性の指数=101)。一方、化合物(Ia)または化合物(Ib-1)を使用した実施例1~5では、加硫ゴム組成物の低燃費性を大きく損なうことなく(低燃費性の指数=97~99)、その耐摩耗性を向上させることができた(耐摩耗性の指数=115~150)。
【0170】
実施例6および参考例2
表2に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6および参考例2の加硫ゴム組成物を得た。表1および2において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。
【0171】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例2のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例6のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例6の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表2に示す。
【0172】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例2の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例6の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例6の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表2に示す。
【0173】
【0174】
実施例7および参考例3
表3に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7および参考例3の加硫ゴム組成物を得た。表1および3において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用した。
【0175】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例3のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例7のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例7の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表3に示す。
【0176】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例3の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例7の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例7の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表3に示す。
【0177】
【0178】
実施例8および参考例4
表4に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例8および参考例4の加硫ゴム組成物を得た。表1および4において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用した。
【0179】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例4のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例8のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例8の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表4に示す。
【0180】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例4の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例8の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例8の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表4に示す。
【0181】
【0182】
実施例9および参考例5
表5に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例9および参考例5の加硫ゴム組成物を得た。表1および5において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとしてJSR社製「BR01」を使用した。
【0183】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例5のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例9のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例9の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表5に示す。
【0184】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例5の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例9の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例9の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表5に示す。
【0185】
【0186】
実施例10および参考例6
表6に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例10および参考例6の加硫ゴム組成物を得た。表1および6において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用した。
【0187】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例6のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例10のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例10の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表6に示す。
【0188】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例6の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例10の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例10の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表6に示す。
【0189】
【0190】
実施例11および参考例7
表7に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例11および参考例7の加硫ゴム組成物を得た。表1および7において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用し、シリカとして、EVONIK社製「Ultrasil 9100GR」(BET比表面積:235m2/g)を使用した。
【0191】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例7のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例11のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例11の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表7に示す。
【0192】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例7の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例11の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例11の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表7に示す。
【0193】
【0194】
実施例12および参考例8
表8に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例12および参考例8の加硫ゴム組成物を得た。表1および8において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用し、シリカとして、Solvay社製「Zeosil(登録商標)1115MP」(BET比表面積:115m2/g)を使用した。
【0195】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例8のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例12のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例12の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表8に示す。
【0196】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例8の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例12の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例12の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表8に示す。
【0197】
【0198】
実施例13および参考例9
表9に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例13および参考例9の加硫ゴム組成物を得た。表1および9において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用した。
【0199】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例9のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例13のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例13の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表9に示す。
【0200】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例9の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例13の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例13の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表9に示す。
【0201】
【0202】
比較例2および参考例10
表10に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2および参考例10の加硫ゴム組成物を得た。表1および10において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用し、カーボンブラックとして、旭カーボン社製「旭#80」(ISAF)を使用した。
【0203】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例10のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに比較例2のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、比較例2の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表10に示す。
【0204】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例10の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに比較例2の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、比較例2の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表10に示す。
【0205】
【0206】
表10に示されるように、充填剤としてカーボンブラックのみを使用した比較例2では、化合物(Ib-1)を使用したにも関わらず、加硫ゴム組成物の耐摩耗性を向上させることができなかった(耐摩耗性の指数=99)。
【0207】
実施例14および参考例11
表11に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例14および参考例11の加硫ゴム組成物を得た。表1および11において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用し、加硫促進剤として、非スルフェンアミド系加硫促進剤であるジフェニルグアニジン(DPG)および2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)を使用した。
【0208】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例11のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例14のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例14の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表11に示す。
【0209】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例11の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わり実施例14の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例14の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表11に示す。
【0210】
【0211】
実施例15および参考例12
表12に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例15および参考例12の加硫ゴム組成物を得た。表1および12において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用した。
【0212】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例12のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例15のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例15の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表12に示す。
【0213】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例12の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例15の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例15の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表12に示す。
【0214】
【0215】
実施例16および参考例13
表13に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例16および参考例13の加硫ゴム組成物を得た。表1および13において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用した。
【0216】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例13のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例16のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例16の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表13に示す。
【0217】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例13の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例16の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例16の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表13に示す。
【0218】
【0219】
実施例17および参考例14
表14に示す種類および量の成分を工程1および2で使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例17および参考例14の加硫ゴム組成物を得た。表1および14において、同じ記載のものは、同じ成分を表す。なお、ブタジエンゴムとして、JSR社製「BR01」を使用した。
【0220】
<低燃費性の評価>
低燃費性の指数の上記式において、参考例1のtanδの代わりに参考例14のtanδを使用し、実施例1~5または比較例1のtanδの代わりに実施例17のtanδを使用したこと以外は上記と同様にして、実施例17の加硫ゴム組成物の低燃費性の指数を算出した。結果を表14に示す。
【0221】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の指数の上記式において、参考例1の摩耗体積の代わりに参考例14の摩耗体積を使用し、実施例1~5または比較例1の摩耗体積の代わりに実施例17の摩耗体積を使用したこと以外は上記と同様にして、実施例17の加硫ゴム組成物の耐摩耗性の指数を算出した。結果を表14に示す。
【0222】
【0223】
実施例18
<工程1>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1500(JSR社製)100重量部、シリカ(商品名「Ultrasil(登録商標)VN3-G」、EVONIK社製)78.4重量部、カーボンブラック(商品名「N-339」、三菱化学社製)6.4重量部、シランカップリング剤(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、商品名「Si-69」、EVONIK社製)6.4重量部、プロセスオイル(商品名「NC-140」、コスモ石油社製)47.6重量部、老化防止剤(N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、商品名「アンチゲン(登録商標)6C」、住友化学社製)1.5重量部、酸化亜鉛2重量部、ステアリン酸2重量部、および化合物(Ib-1)3重量部を混練することによって、ゴム組成物が得られる(混練の温度範囲:70~120℃、ミキサーの回転数:成分投入後から最初の5分間は80rpm、その後の5分間は100rpm)。
【0224】
<工程2>
オープンロール機で30~80℃の温度にて、工程1により得られるゴム組成物、加硫促進剤N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)1重量部、加硫促進剤ジフェニルグアニジン(DPG)1重量部、ワックス(商品名「サンノック(登録商標)N」大内新興化学工業社製)1.5重量部および硫黄1.4重量部を混練することによってゴム組成物が得られる。
【0225】
実施例19
実施例18の工程2で得られるゴム組成物を160℃で熱処理することによって加硫ゴム組成物が得られる。かかる加硫ゴム組成物は、キャップトレッド用として好適である。
【0226】
実施例20
スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1500(JSR社製)に替えて溶液重合SBR(「アサプレン(登録商標)」旭化成ケミカルズ社製)を用いること以外は実施例18の工程1および2と同様にして、ゴム組成物が得られる。
【0227】
実施例21
実施例20の工程2で得られるゴム組成物を160℃で熱処理することによって加硫ゴム組成物が得られる。かかる加硫ゴム組成物は、キャップトレッド用として好適である。
【0228】
実施例22
スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1500(JSR社製)に替えてSBR#1712(JSR社製)を用い、プロセスオイルの使用量を21重量部に変更し、酸化亜鉛を仕込むタイミングを工程2に変更すること以外は実施例18の工程1および2と同様にして、ゴム組成物が得られる。
【0229】
実施例23
実施例22の工程2で得られるゴム組成物を160℃で熱処理することによって加硫ゴム組成物が得られる。かかる加硫ゴム組成物は、キャップトレッド用として好適である。
【0230】
製造例3:重合開始剤の製造
窒素雰囲気の100ml耐圧容器に、1,3-ジビニルベンゼンのヘキサン溶液(1.6M、東京化成工業社製)10mlを加え、0℃にてn-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M、和光純薬工業社製)20mlを滴下し、1時間攪拌することで重合開始剤溶液が得られる。
【0231】
製造例4:ジエン系重合体(変性ジエン系重合体)の製造
窒素雰囲気の1000ml耐圧容器に、シクロヘキサン(東京化成工業社製、純度99.5%以上))600ml、スチレン(東京化成工業社製、純度99%以上)0.12mol、1,3-ブタジエン(東京化成工業社製)0.8mol、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(和光純薬工業社製)0.7mmolを加え、更に、製造例3で得られる重合開始剤溶液1.5mlを加えて40℃で攪拌する。3時間後、変性剤であるテトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(和光純薬工業社製)1.0mmolを加えて攪拌する。1時間後、イソプロパノール(和光純薬工業社製)3mlを加えて重合を停止させる。反応溶液に2,6-tert-ブチル-p-クレゾール(和光純薬工業社製)1gを添加後、メタノール(関東化学社製)で再沈殿処理を行い、加熱乾燥させることによって、ジエン系重合体(末端などの変性部位を2個以上有する変性ジエン系重合体)が得られる。
【0232】
実施例24~32
表15または16に示す硫黄、加硫促進助剤および加硫促進剤以外の成分を、表15または16に示す量で、バンバリーミキサーを用いて165℃で4分間混練することによってゴム組成物が得られる。
【0233】
上記のようにして得られるゴム組成物に、表15または16に示す硫黄、加硫促進助剤および加硫促進剤を表15または16に示す量で添加し、オープンロールを用いて80℃で4分間混練することによって、ゴム組成物が得られる。
【0234】
【0235】
【0236】
表15および16に示す成分は以下の通りである。
化合物(Ib-1):製造例2で得られる化合物
ジエン系重合体:製造例4で得られる重合体
BR:ブタジエンゴム(日本ゼオン社製「NipolBR1220」、シス含量:97重量%)
NR:天然ゴム、RSS#3
シリカ:EVONIK社製「Ultrasil VN3」(N2SA:175m2/g)
カーボンブラック:三菱化学社製「ダイアブラックI」(N220、N2SA:96m2/g、DBP吸油量:114ml/100g)
シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(EVONIK社製「Si-75」)
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製「亜鉛華1号」
ステアリン酸:日油社製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(住友化学社製「アンチゲン6C」)
ワックス:大内新興化学工業社製「サンノックワックス」
アロマオイル:JX日鉱日石エネルギー社製「プロセスX-140」
硫黄:軽井沢硫黄社製の粉末硫黄
加硫促進助剤:1,6-ビス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(ランクセス社製「Vulcuren VP KA9188」)
加硫促進剤(1):N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)
加硫促進剤(2):ジフェニルグアニジン(DPG)
【0237】
製造例5:重合体1の製造
内容積20リットルのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3-ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを重合反応容器内に投入する。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン11.1mmolおよびn-ブチルリチウム13.1mmolを、それぞれ、シクロヘキサン溶液およびn-ヘキサン溶液として投入し、重合を開始する。
【0238】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、単量体を重合反応容器内に連続的に供給しながら、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合を3時間行う。全重合での1,3-ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gである。次に、重合体溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン11.1mmolを添加し、15分間撹拌する。重合体溶液にメタノール0.54mlを含むヘキサン溶液20mlを加えて、更に重合体溶液を5分間撹拌する。
【0239】
重合体溶液に2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)1.8g、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)0.9gを加え、次に、スチームストリッピングによって重合体溶液から重合体1を回収する。
【0240】
製造例6:重合体2の製造
内容積20リットルのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3-ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを重合反応容器内に投入する。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン11.0mmolおよびn-ブチルリチウム14.3mmolを、それぞれ、シクロヘキサン溶液およびn-ヘキサン溶液として投入し、重合を開始する。
【0241】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、単量体を重合反応容器内に連続的に供給しながら、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合を3時間行う。全重合での1,3-ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gである。次に、重合体溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン11.0mmolを添加し、15分間撹拌する。重合体溶液にメタノール0.54mlを含むヘキサン溶液20mlを加えて、更に重合体溶液を5分間撹拌する。
【0242】
重合体溶液に2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)1.8g、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)0.9gを加え、次に、スチームストリッピングによって重合体溶液から重合体2を回収する。
【0243】
製造例7:重合体3の製造
内容積20リットルのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3-ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを重合反応容器内に投入する。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン10.5mmolおよびn-ブチルリチウム14.9mmolを、それぞれ、シクロヘキサン溶液およびn-ヘキサン溶液として投入し、重合を開始する。
【0244】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、単量体を重合反応容器内に連続的に供給しながら、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合を3時間行う。全重合での1,3-ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gである。次に、重合体溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド10.5mmolを添加し、15分間撹拌する。重合体溶液にメタノール0.54mlを含むヘキサン溶液20mlを加えて、更に重合体溶液を5分間撹拌する。
【0245】
重合体溶液に2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)1.8g、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)0.9gを加え、次に、スチームストリッピングによって重合体溶液から重合体3を回収する。
【0246】
製造例8:重合体4の製造
内容積20リットルのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3-ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを重合反応容器内に投入する。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン16.0mmolおよびn-ブチルリチウム18.5mmolを、それぞれ、シクロヘキサン溶液およびn-ヘキサン溶液として投入し、重合を開始する。
【0247】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、単量体を重合反応容器内に連続的に供給しながら、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合を3時間行う。全重合での1,3-ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gである。次に、重合体溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート4.0mmolを添加し、15分間撹拌する。重合体溶液にメタノール0.80mlを含むヘキサン溶液20mlを加えて、更に重合体溶液を5分間撹拌する。
【0248】
重合体溶液に2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)1.8g、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)0.9gを加え、次に、スチームストリッピングによって重合体溶液から重合体4を回収する。
【0249】
製造例9:重合体5の製造
内容積20リットルのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3-ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを重合反応容器内に投入する。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン11.5mmolおよびn-ブチルリチウム14.1mmolを、それぞれ、シクロヘキサン溶液およびn-ヘキサン溶液として投入し、重合を開始する。
【0250】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、単量体を重合反応容器内に連続的に供給しながら、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合を3時間行う。全重合での1,3-ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gである。次に、重合体溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール11.5mmolを添加し、15分間撹拌する。重合体溶液にメタノール0.54mlを含むヘキサン溶液20mlを加えて、更に重合体溶液を5分間撹拌する。
【0251】
重合体溶液に2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)1.8g、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)0.9gを加え、次に、スチームストリッピングによって重合体溶液から重合体5を回収する。
【0252】
製造例10:重合体6の製造
内容積5リットルのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、ヘキサン(比重0.68g/cm3)2.55kg、1,3-ブタジエン137g、スチレン43g、テトラヒドロフラン1.0ml、エチレングリコールジエチルエーテル1.0mlを重合反応容器内に投入する。次に、n-ブチルリチウム3.6mmolをn-ヘキサン溶液として投入し、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合を2.5時間行う。重合中、攪拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、単量体を重合反応容器内に連続的に供給する。1,3-ブタジエンの供給量は169g、スチレンの供給量は101gである。該2.5時間の重合後、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン11.1mmolをシクロヘキサン溶液として、攪拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件下で、重合反応器内に投入し30分攪拌する。次に、メタノール0.14mlを含むヘキサン溶液20mlを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌する。
【0253】
重合体溶液に2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)1.8g、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)0.9gを加え、次に、スチームストリッピングによって重合体溶液から重合体6を回収する。
【0254】
製造例11~15:重合体7~11の製造
ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン11.1mmolの代わりにビス{ジ(n-ブチル)アミノ}メチルビニルシラン11.1mmolを使用すること以外は製造例5~9と同様にして、重合体7~11が得られる。
【0255】
製造例16~25:重合体12~21の製造
スチームストリッピングの代わりに、重合体溶液を常温で24時間蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥を行うこと以外は製造例5~9と同様にして、重合体12~21が得られる。
【0256】
実施例33~57
表17~21のいずれかに示す硫黄および加硫促進剤以外の成分を、表17~21のいずれかに示す量で、1.7Lバンバリーミキサーを用いて150℃で5分間混練することによってゴム組成物が得られる。
【0257】
上記のようにして得られるゴム組成物に、表17~21のいずれかに示す硫黄および加硫促進剤を表17~21のいずれかに示す量で添加し、オープンロールを用いて80℃で5分間混練することによってゴム組成物が得られる。
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
表17~21に示す成分は以下の通りである。
化合物(Ib-1):製造例2で得られる化合物
NR(1):天然ゴム、RSS#3
NR(2):エポキシ化天然ゴム(Kumplan Guthrie Berhad製「ENR25」、エポキシ化率:25モル%)
NR(3):エポキシ化天然ゴム(Kumplan Guthrie Berhad製「ENR50」、エポキシ化率:50モル%)
BR:ブタジエンゴム(宇部興産社製「BR150B」、シス含量:97重量%)
重合体1~21:製造例5~25で得られる重合体
シリカ:EVONIK社製「Ultrasil VN3-G」(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:EVONIK社製「Si-69」
カーボンブラック:三菱化学社製「ダイアブラックN339」(N2SA:96m2/g、DBP吸油量:124ml/100g)
アロマオイル:JX日鉱日石エネルギー社製「プロセスX-140」
老化防止剤:大内新興化学工業社製「アンチゲン3C」
ステアリン酸:日油社製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製「亜鉛華1号」
ワックス:大内新興化学工業社製「サンノックN」
硫黄:鶴見化学工業社製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ-G」)
加硫促進剤(2):ジフェニルグアニジン(住友化学社製「ソクシノールD」)
【0264】
実施例58~61
表22に示す硫黄および加硫促進剤以外の成分を、表22に示す量で、1.7Lバンバリーミキサーを用いて150℃で5分間混練することによってゴム組成物が得られる。
【0265】
上記のようにして得られるゴム組成物に、表22に示す硫黄および加硫促進剤を表22に示す量で添加し、オープンロールを用いて80℃5分間混練することによって、ゴム組成物が得られる。
【0266】
【0267】
表22に示す成分は以下の通りである。
化合物(Ib-1):製造例2で得られる化合物
E-SBR1:乳化重合スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン社製「Nipol 9548」、スチレン含有量:37重量%、Tg:-37℃、ゴム成分100重量部に対してオイル37.5重量部を含む油展品)
変性S-SBR:ヒドロキシル基を有する溶液重合スチレンブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ社製「タフデン E581」、スチレン含有量:37重量%、Tg:-27℃、ゴム成分100重量部に対してオイル37.5重量部を含む油展品)
S-SBR:溶液重合スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン社製「Nipol NS522」、スチレン含有量:39重量%、Tg:-23℃、ゴム成分100重量部に対してオイル37.5重量部を含む油展品)
NR:天然ゴム、RSS#3
シリカ:Solvay社製「Zeosil 1165MP」
カーボンブラック:キャボットジャパン社製「ショウブラックN339」
テルペン樹脂:芳香族変性テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSレジンTO125」、軟化点125℃)
酸化亜鉛:正同化学工業社製「酸化亜鉛3種」
ステアリン酸:日油社製「ビーズステアリン酸YR」
老化防止剤:フレキシス社製「サントフレックス6PPD」
ワックス:大内新興化学工業社製「サンノック」
加工助剤:SCHILL & SEILACHER Gmbh. & CO.製「STRUKTOL A50P」
シランカップリング剤:硫黄含有シランカップリング剤(EVONIK社製「Si-75」)
硫黄:鶴見化学工業社製「金華印油入微粉硫黄」
加硫促進剤:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)(大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ-G」)
【0268】
実施例62~66
表23に示す硫黄および加硫促進剤以外の成分を、表23に示す量で、バンバリーミキサーを用いて150℃で5分間混練することによってゴム組成物が得られる。
【0269】
上記のようにして得られるゴム組成物に、表23に示す硫黄および加硫促進剤を表23に示す量で添加し、オープンロールを用いて80℃で3分間混練することによって、ゴム組成物が得られる。
【0270】
上記のようにして得られるゴム組成物を、プレス機を用いて、170℃で15分間加熱することによって、加硫ゴム組成物が得られる。
【0271】
【0272】
表23に示す成分は以下の通りである。
化合物(Ib-1):製造例2で得られる化合物
SBR1:変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン社製「Nipol NS116R」、スチレン含量:21重量%、シス含量:9.5重量%、ビニル含量:65重量%、Tg:-25℃、N-メチルピロリドンにより片末端を変性)
SBR2:溶液重合スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン社製「Nipol 1502」、スチレン含量:23.5重量%、Tg:-25℃)
BR1:ブタジエンゴム(宇部興産社製「BR150B」、シス含量:97重量%、ML1+4(100℃):40、25℃における5重量%トルエン溶液粘度:48cps、Mw/Mn:3.3、Tg:-104℃)
NR:天然ゴム、RSS#3
シリカ1:EVONIK社製「Ultrasil 360」(CTAB比表面積:50m2/g、BET比表面積:50m2/g、平均一次粒子径:38nm、pH:9.0)
シリカ2:Solvay社製「Zeosil Premium 200MP」(CTAB比表面積:200m2/g、BET比表面積:220m2/g、平均一次粒子径:10nm、pH:6.5、アグリゲートサイズ:65nm、D50:4.2μm、18μmを超える粒子の割合:1.0重量%、細孔分布幅W:1.57、細孔分布曲線中の細孔容量ピーク値を与える直径Xs:21.9nm)
シリカ3:東ソー・シリカ社製「Nipeil E-743」(CTAB比表面積:40m2/g、BET比表面積:40m2/g、平均一次粒子径:67nm、pH:7.8)
カーボンブラック:キャボットジャパン社製「ショウブラックN110」(N2SA:143m2/g)
シランカップリング剤1:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(EVONIK社製「Si-69」)
シランカップリング剤2:Momentive社製「NXT-Z45」
ミネラルオイル:出光興産社製のPS-32(パラフィン系プロセスオイル)
樹脂:α-メチルスチレンおよびスチレンのコポリマー(イーストマン社製「RESIN2336 Hydrocarbon RESIN」、軟化点:82~88℃、Mn:600、Mw:1250)
ステアリン酸:日油社製「桐」
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製「酸化亜鉛2種」
老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製「ノクラック6C」)
ワックス:大内新興化学工業社製「サンノックワックス」
硫黄:鶴見化学工業社製の粉末硫黄
加硫促進剤BBS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製「ノクセラーNS」)
加硫促進剤DPG:ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製「ノクセラーD」)
【0273】
実施例67および68
表24に示す硫黄、加硫促進剤、および加硫促進助剤以外の成分を、表24に示す量で、バンバリーミキサーを用いて約150℃で5分間混練することによってゴム組成物が得られる。
【0274】
上記のようにして得られるゴム組成物に、表24に示す硫黄、加硫促進剤および加硫促進助剤を表24に示す量で添加し、2軸オープンロールを用いて約80℃で5分間混練することによってゴム組成物が得られる。
【0275】
上記のようにして得られるゴム組成物を、プレス機を用いて、150℃で35分間加熱することによって、加硫ゴム組成物が得られる。
【0276】
【0277】
表24に示す成分は以下の通りである。
化合物(Ib-1):製造例2で得られる化合物
SBR:スチレンブタジエンゴム(JSR社製「SBR1502」、スチレン含量:23.5重量%)
BR:ブタジエンゴム(宇部興産社製「BR130B」)
NR:天然ゴム、RSS#3
変性ジエン系重合体:住友化学社製の変性スチレンブタジエンゴム(スチレン含量:25重量%、ビニル含量:57重量%、下記式(D)で示される化合物により末端が変性)
【0278】
【0279】
加硫促進助剤:田岡化学工業社製「タッキロールV200」 変性フェノール性樹脂:カシューオイル変性フェノール樹脂(住友ベークライト社製「住ライトレジンPR12686」)
シリカ:EVONIK社製「Ultrasil VN3」(N2SA:175m2/g)
カーボンブラック:三菱化学社製「ダイアブラックI」(ISAF、N220、N2SA:114m2/g)
シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(EVONIK社製「Si-69」)
オイル:ジャパンエナジー社製「X-140」
ステアリン酸:日油社製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製の亜鉛華
老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
ワックス:日本精蝋社製「OZOACE-0355」
ヘキサメチレンテトラミン:大内新興化学工業社製「ノクセラーH」
硫黄:不溶性硫黄(日本乾溜工業社製「セイミサルファー」)
加硫促進剤1:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製「ノクセラーNS」)
加硫促進剤2:ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製「ノクセラーD」)
【産業上の利用可能性】
【0280】
本発明のゴム組成物および加硫ゴム組成物は、様々な製品(例えば、タイヤ、タイヤ用部材、防振ゴム、コンベアベルト用ゴム、エンジンマウントゴム等)の製造に有用である。