(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】シリコーンを除去する方法及びリサイクルポリアミド製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20220215BHJP
C09D 9/00 20060101ALI20220215BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20220215BHJP
D06H 7/00 20060101ALI20220215BHJP
D06M 11/38 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B29B17/02
C09D9/00
D06M11/00 110
D06H7/00
D06M11/38
(21)【出願番号】P 2020183000
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】鈴岡 章黄
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 剛博
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-179816(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035673(WO,A1)
【文献】特開2017-124553(JP,A)
【文献】特開2013-166312(JP,A)
【文献】特表2010-509490(JP,A)
【文献】特開2008-239985(JP,A)
【文献】特開2020-002336(JP,A)
【文献】特開2020-097180(JP,A)
【文献】特開2009-269475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B17/00-17/04
C08J11/00-11/28
B60R21/235
D06M11/00-11/84
C09D9/00
D06H7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品からシリコーンを除去する方法であって、
前記ポリアミド繊維製品を
綿状になるように開繊する工程と、
前記開繊されたポリアミド繊維製品を、シリコーンを溶解させる溶解液により処理する工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
前記溶解液により処理する工程が、前記溶解液を攪拌する工程を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶解液により処理する工程が、前記開繊する工程の後に行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミド繊維製品を開繊する工程が、前記溶解液により処理する工程と同時に行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶解液により処理する工程が、攪拌装置を用いて前記溶解液を攪拌する工程を有し、
前記攪拌装置が、攪拌時に回転する攪拌翼を有し、
攪拌時に前記溶解液中の前記ポリアミド繊維製品が、前記攪拌翼に衝突するように、前記攪拌装置が構成されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
更に、前記ポリアミド繊維製品を裁断する工程を備え、
前記裁断されたポリアミド繊維製品が、前記溶解液中に投入される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアミド繊維製品が、エアバッグである、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアミド繊維製品が、脂肪族ポリアミド製である、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の方法により、前記ポリアミド繊維製品から、前記シリコーンを除去し、洗浄済ポリアミド繊維を得る工程と、
前記洗浄済ポリアミド繊維を加工し、リサイクルポリアミド製品を製造する工程と、
を含む、
リサイクルポリアミド製品の製造方法。
【請求項10】
前記リサイクルポリアミド製品が、衣料品である、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンを除去する方法及びリサイクルポリアミド製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン6,6等のポリアミド製の製品は、様々な用途に使用されている。ポリアミドは、合成樹脂である。環境負荷の観点から、ポリアミドをリサイクルすることが望まれている。
【0003】
ポリアミド製品のなかには、シリコーンが塗布された布により構成されるものがある。そのようなポリアミド製品として、例えば、エアバッグの基布が挙げられる。エアバッグの基布には、空気のリークを防ぐため、シリコーンが塗布されることがある。
【0004】
シリコーンが塗布されたポリアミド製品をリサイクルするためには、シリコーンをポリアミド製品から除去しなければならない。
これに関連して、特許文献1(特開2009-269475号公報)には、シリコーンがコーティングされたポリアミド繊維からなるエアバッグ基布を、アルカリ-イソプロピルアルコール液に浸漬することにより、エアバッグ基布にコーティングされたシリコーンをエアバッグ基布から除去することを特徴とするエアバッグ基布からのシリコーン除去方法において、エアバッグ基布を裁断した上で、アルカリ-イソプロピルアルコール液に浸漬する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリコーンが塗布されたポリアミド製品のリサイクルを実用化するためには、より短時間でシリコーンを除去する技術が必要である。従って、本発明の課題は、布状のポリアミド繊維製品からシリコーンを短時間で除去することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討した結果、開繊処理を行うことにより、上記課題が解決できることを見出した。すなわち、本発明は、以下の事項を含むものである。
[1]シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品からシリコーンを除去する方法であって、前記ポリアミド繊維製品を開繊する工程と、前記開繊されたポリアミド繊維製品を、シリコーンを溶解させる溶解液により処理する工程と、を有する、方法。
[2]前記溶解液により処理する工程が、前記溶解液を攪拌する工程を有している、[1]に記載の方法。
[3]前記溶解液により処理する工程が、前記開繊する工程の後に行われる、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記ポリアミド繊維製品を開繊する工程が、前記溶解液により処理する工程と同時に行われる、[1]又は[2]に記載の方法。
[5]前記溶解液により処理する工程が、攪拌装置を用いて前記溶解液を攪拌する工程を有し、前記攪拌装置が、攪拌時に回転する攪拌翼を有し、攪拌時に前記溶解液中の前記ポリアミド繊維製品が、前記攪拌翼に衝突するように、前記攪拌装置が構成されている、[4]に記載の方法。
[6]更に、前記ポリアミド繊維製品を裁断する工程を備え、前記裁断されたポリアミド繊維製品が、前記溶解液中に投入される、[4]又は[5]に記載の方法。
[7]前記ポリアミド繊維製品が、エアバッグである、[1]乃至[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記ポリアミド繊維製品が、脂肪族ポリアミド製である、[1]乃至[7]のいずれかに記載の方法。
[9][1]乃至[8]のいずれかに記載の方法により、前記ポリアミド繊維製品から、前記シリコーンを除去し、洗浄済ポリアミド繊維を得る工程と、前記洗浄済ポリアミド繊維を加工し、リサイクルポリアミド製品を製造する工程と、を含む、ポリアミド製品の製造方法。
[10]前記リサイクルポリアミド製品が、衣料品である、[9]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、布状のポリアミド繊維製品からシリコーンを短時間で除去することのできる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る方法は、シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品からシリコーンを除去する方法、及び、この方法を利用したポリアミド製品の製造方法(リサイクル方法)に関する。
本発明に係る方法は、布状のポリアミド繊維製品を開繊する工程と、開繊されたポリアミド繊維製品を、シリコーンを溶解させる溶解液により処理する工程とを有する。布状のままで溶解液により処理するのではなく、開繊されたポリアミド繊維製品に対して溶解液処理を行うことで、短時間でシリコーンを除去することが可能になる。
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0011】
(1)第1の実施形態(乾式開繊)
本実施形態に係る方法は、開繊処理を行う工程(ステップS1)と、溶解液により処理を行う工程(ステップS2)と、リサイクルポリアミド製品を製造する工程(ステップS3)とを備えている。以下、各ステップについて説明する。
【0012】
(ステップS1:開繊)
まず、布状のポリアミド繊維製品を準備し、必要に応じて適切な大きさに裁断し、乾式で開繊処理を施す。
本発明において、開繊処理とは、布状のポリアミド繊維を綿状に戻すことをいう。開繊処理には、一般的に使用される反毛開繊機を使用することができる。
【0013】
尚、本実施形態において処理される対象となるポリアミド繊維製品としては、ポリアミド繊維が織られた布状のものであればよく、特に限定されるものではない。
例えば、脂肪族ポリアミド製、好ましくはナイロン6,6製の繊維が織られることにより形成された布などが挙げられる。
具体的には、ポリアミド繊維製品として、エアバッグの基布が挙げられる。エアバッグの基布の製造時は、端材が生じる。そのような端材についてリサイクルできれば好ましい。一方で、エアバッグの基布には、空気漏洩の防止などを目的として、シリコーンが塗布されることがある。本実施形態に係る方法は、シリコーンを短時間で除去できるので、シリコーンが塗布されたエアバッグの基布のリサイクルに好適に適用される。
【0014】
本実施形態において除去されるシリコーンは、特に限定されるものではないが、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を主骨格とした高分子化合物、すなわちシリコーンゴムであることが好ましい。
シリコーンゴムの具体例として、例えば、メチルシリコーンゴム、ビニルメチルシリコーンゴム、及びフェニル・メチルシリコーンゴムなどが挙げられる。
【0015】
(ステップS2:溶解液による処理)
続いて、ステップS1において開繊されたポリアミド繊維製品を、シリコーンを溶解する機能を有する溶解液により処理する。具体的は、開繊されたポリアミド繊維製品を溶解液に投入し、溶解液を攪拌する。これにより、ポリアミド繊維製品からシリコーンが除去され、洗浄済ポリアミド繊維が得られる。
【0016】
本工程において使用される溶解液は、シリコーンを溶解する機能を有するものであればよく、特に限定されるものではない。
好ましくは、溶解液として、アルキルベンゼンスルホン酸と鎖状飽和炭化水素とを含有する液が用いられる。このような液を用いれば、シリコーンをより短時間で除去することができる。
【0017】
アルキルベンゼンスルホン酸は、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸である。
溶解液中のアルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、シリコーンを溶解させ、かつ、回収対象であるポリアミドを溶解させないように、設定することができる。溶解液中のアルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、例えば0.1~75質量%、好ましくは1~50質量%、より好ましくは1~15質量%である。尚、除去するシリコーンがメチルシリコーンゴム又はビニルメチルシリコーンゴムである場合には、アルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、1質量%以上であればよい。一方、シリコーンがフェニル・メチルシリコーンゴムを含む場合には、アルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、6質量%以上であることが好ましい。
【0018】
鎖状飽和炭化水素としては、ドデカン、デカン、イソオクタン、トリメチルペンタン、などが挙げられる。鎖状飽和炭化水素は、シリコーンを溶解する機能を有している。一方で、回収の対象とされるポリアミド繊維は、鎖状飽和炭化水素には溶解しにくい。従って、鎖状飽和炭化水素を溶媒として用いることにより、シリコーンを選択的に溶解させることが可能となる。
鎖状飽和炭化水素の構造は特に限定されるものではなく、直鎖構造のものであっても、分岐鎖構造のものであってもよい。
鎖状飽和炭化水素としては、好ましくは炭素数6~16、より好ましくは炭素数8~14のものが用いられる。
また、鎖状飽和炭化水素としては、引火点が高い(具体的には1気圧における引火点が70℃以上)であるものが好ましく用いられる。引火点が高い鎖状飽和炭化水素は、消防の観点から、取り扱いやすく好ましい。
最も好ましい鎖状飽和炭化水素は、溶剤の衛生性・安全性や取扱いの法規制などの観点から、ドデカンである。
【0019】
尚、溶解液中には、種々の目的で、アルキルベンゼンスルホン酸及び鎖状飽和炭化水素以外の添加剤が含まれていてもよい。
但し、好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸及び鎖状飽和炭化水素が溶解液の大部分を占める。具体的には、溶解液中のアルキルベンゼンスルホン酸と鎖状飽和炭化水素の合計含有量が、80質量%超であることが好ましく、合計含有量が85質量%以上であることがより好ましく、合計含有量が90質量%以上であることが更に好ましい。
【0020】
溶解液の温度は、例えば0~50℃、好ましくは5~40℃である。このような範囲内であれば、シリコーンを短時間に除去することができる。一方で、回収対象となるポリアミド繊維は溶解しにくい。従って、シリコーンを選択的に除去しやすくなる。
【0021】
溶解液によるポリアミド繊維製品の処理時間は、例えば0.1~100分であり、好ましくは0.5~60分である。このような処理時間であれば、シリコーンが十分に除去されるとともに、回収対象となるポリアミド繊維は溶解しにくい。従って、シリコーンを選択的に除去しやすくなる。
尚、溶解液は、処理性能が低下すると、真空蒸留(1~500Torr程度)を行うことで精製し、再利用してもよい。
【0022】
(ステップS3:洗浄済ポリアミド繊維からのリサイクルポリアミド製品の製造)
続いて、ステップS2で得られた洗浄済ポリアミド繊維から、リサイクルポリアミド製品を製造する。本工程は、特に限定されるものではないが、例えば、洗浄済ポリアミド繊維を溶解液から分離する工程(ステップS3-1)、洗浄済ポリアミド繊維を脱色する工程(ステップS3-2)、脱色された洗浄済ポリアミド繊維をペレット化する工程(ステップS3-3)、及びペレットを用いてリサイクルポリアミド製品を得る工程(ステップS3-4)を備える方法により実現できる。以下に、各工程について説明する。
【0023】
ステップS3-1:分離
ステップS2で得られた洗浄済ポリアミド繊維は、ポリアミド繊維に溶解液が染み込んだ状態になっている。そこで、遠心分離器を用いて、洗浄済ポリアミド繊維と溶解液とを分離する。遠心分離機の回転数は、例えば、1000~8000rpm、好ましくは1500~5000rpmである。これにより、洗浄済ポリアミド繊維を溶解液から分離し、回収できる。
【0024】
ステップS3-2:脱色
続いて、必要に応じて、脱色処理を行う。例えば、ジメチルホルムアミドを用いて、120~160℃、10~60分間処理を行うことにより、洗浄済ポリアミド繊維を脱色することができる。脱色後、遠心分離器を用いて、300~8000rpmで処理を行うことにより、脱色に使用した溶剤を洗浄済ポリアミド繊維から分離する。
尚、脱色に使用したジメチルホルムアミド等の脱色溶剤は、脱色性能が低下したら、例えば50~500Torrの真空度で蒸留することにより、再使用することができる。
【0025】
ステップS3-3:ペレット化
続いて、洗浄済ポリアミド繊維をペレット化する。ペレット化は、公知の手段を用いて行えばよい。
【0026】
ステップS3-4:リサイクルポリアミド製品の製造
続いて、ステップS2-3で得られたペレットからリサイクルポリアミド製品を製造する。例えば、ペレットを原料として紡糸処理を行い、ポリアミド長繊維を作成し、これを用いて衣料品を製造することができる。
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、開繊処理を行うことにより、短時間でポリアミド繊維製品からシリコーンを除去し、ポリアミドをリサイクルすることが可能になる。
【0028】
(2)第2の実施形態(湿式開繊)
続いて、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、開繊処理が、溶解液による処理の前に行われる場合について説明した。すなわち、開繊処理が乾式で行われる場合について説明した。これに対して、本実施形態では、開繊処理が、溶解液による処理と同時に行われる。すなわち、開繊処理が湿式で行われる。
【0029】
以下に、本実施形態に係る方法について詳述する。尚、第1の実施形態と同様の構成を採用できる部分については、説明を省略する。本実施形態に係る方法は、裁断を行う工程(ステップS4)、溶解液による処理及び開繊を行う工程(ステップS5)、及びリサイクルポリアミド製品を製造する工程(ステップS6)を備えている。以下に、各工程について説明する。
【0030】
(ステップS4:裁断)
まず、布状のポリアミド繊維製品を、裁断する。例えば、ポリアミド繊維製品を、1辺のサイズが0.1~50cmの範囲になるような不定形になるように、裁断する。あるいは、面積が1~2500cm2の範囲になるように、裁断する。裁断後の形状は、正方形に近いことが望ましい。
【0031】
(ステップS5:溶解液による処理及び開繊)
続いて、裁断されたポリアミド繊維製品を、溶解液に投入する。そして、裁断されたポリアミド繊維製品が開繊されるように、溶解液を攪拌する。これにより、洗浄済ポリアミド繊維が得られる。
例えば、溶解液の攪拌は、攪拌時に中心軸回りに回転する攪拌翼を有する攪拌装置を用いて、実施することができる。好ましくは、攪拌装置として、攪拌時に裁断されたポリアミド繊維製品が攪拌翼に衝突するように構成された装置を用いる。このような装置を用い、高速(例えば、6000~30000rpm、好ましくは8000~20000rpm)で攪拌翼を回転させる。これにより、裁断されたポリアミド繊維製品が攪拌翼に衝突し、衝撃力(剪断力)によってポリアミド繊維製品を開繊することができる。
【0032】
(ステップS6:洗浄済ポリアミド繊維からのリサイクルポリアミド製品の製造)
その後、洗浄済ポリアミド繊維から、リサイクルポリアミド製品を製造する。本ステップは、第1の実施形態におけるステップS3と同様の処理とすることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のように、開繊処理を湿式で行うことによっても、短時間でシリコーンを除去することが可能になる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0035】
(実験例1)
シリコーンが塗布されたナイロン6,6製のエアバッグ基布の製品を入手した。尚、分析の結果、塗布されたシリコーンは、ビニル・メチルシリコーンゴム又はメチルシリコーンゴムであることを確認した。
準備したエアバッグ基布を、1辺が1~1.5cmの矩形状になるように裁断し、カット布を準備し、カット布のテストサンプルを作製した。
一方で、エアバッグ基布を乾式開繊機(反毛機)を用いて開繊し、綿状のテストサンプルも得た。
準備したカット布のテストサンプル及び綿状のテストサンプルを、溶解液が入れられたサンプル瓶に投入し、スターラーにて攪拌した。溶解液としては、NaOH約0.7g、水7g、イソアプロピルアルコール12.5gからなる液を用いた。温度及び時間を変えて試験を行い、試験後にシリコーンが除去されたか否かを観察した。尚、シリコーンは着色されているので、シリコーンが除去されたか否かは、目視により確認した。
【0036】
試験条件および結果を表1に示す。尚、表1の結果において、「布」はカット布をテストサンプルとした場合の結果であり、「綿」は開繊処理により得られた綿状のテストサンプルの場合の結果である。
表1に示されるように、「布」については、いずれの条件でも、シリコーンを除去できなかった。一方「綿」については、いずれの条件でも、シリコーンを除去できた。すなわち、開繊処理を行うことにより、シリコーンを短時間で除去できることが理解できる。
【0037】
(実験例2)
続いて、溶解液の組成及び試験条件(温度及び時間)を変更し、シリコーンの除去性を確認した。エアバッグ基布としては、実験例1とは異なるもの(製品A)を準備した。製品Aに塗布されたシリコーンを分析したところ、ビニルメチルシリコーンゴムであった。準備した製品Aを用いて、各種条件を変更し、実験例1と同様にシリコーンの除去性を検討した。
また、溶解液としては、IP-1016(出光興産社製の非環状脂肪族炭化水素溶媒の商品名、イソパラフィン系溶媒)とDBSA(n-ドデシルベンゼンスルホン酸)との混合物を用いた。
【0038】
試験条件および結果を表2に示す。表2に示されるように、DBSAが1質量%の場合には、「布」については、常温で120分の処理を行ってもシリコーンを除去することが出来なかったが、「綿」については、シリコーンを除去できた(例2-1参照)。
また、例2-2に示されるように、DBSAが5質量%、常温、30分の条件においても、「布」についてはシリコーンを除去できなかったが、「綿」については除去できた。これら実験結果からも、開繊処理の有効性が確認された。
【0039】
(実験例3)実機テスト
溶解槽として、湿式でエアバッグ基布を開繊できるような攪拌装置が設けられたものを準備した。具体的には、回転軸に連結された攪拌翼を有しており、カット布が投入された溶解液を攪拌した場合に、攪拌翼にカット布が衝突してカット布に剪断力が加わるように構成された攪拌装置を準備した。
【0040】
一方で、溶解液として、鎖状飽和炭化水素の一種であるドデカンと、ドデシルベンゼンスルホン酸(10重量%)とからなる液(その他に成分は存在しない)を準備した。
【0041】
テストサンプルとして、シリコーンが塗布されたエアバッグ基布を、1cm×1cmの正方形になるように裁断されたカット布を準備した。尚、溶解液の投入前に開繊処理は行っていない。
【0042】
テストサンプルを溶解槽に投入し、攪拌装置を高速回転(約9000~16000rpm)させ、シリコーンが除去されるまでの時間を観察した。
【0043】
その結果、30秒後には、テストサンプルが開繊されるとともに、シリコーンが除去されていることが確認された。すなわち、湿式で解繊処理を行うことによっても短時間でシリコーンを除去できることが判った。
【0044】
【要約】
【課題】布状のポリアミド繊維製品からシリコーンを短時間で除去することのできる技術を提供すること。
【解決手段】ポリアミド繊維製品を開繊する工程と、開繊されたポリアミド繊維製品を、シリコーンを溶解させる溶解液により処理する工程とを有する、方法。
【選択図】なし