(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】廃溶媒の精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/76 20060101AFI20220215BHJP
C07C 29/80 20060101ALI20220215BHJP
C07C 31/08 20060101ALI20220215BHJP
C01B 33/16 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C07C29/76
C07C29/80
C07C31/08
C01B33/16
(21)【出願番号】P 2020505331
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(86)【国際出願番号】 KR2018013736
(87)【国際公開番号】W WO2019093847
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2017-0150507
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0113172
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スン-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ソン-クン
(72)【発明者】
【氏名】チュ、ウン-チョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン-ホ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-334871(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104760964(CN,A)
【文献】特開平11-028353(JP,A)
【文献】特開平06-191822(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105031960(CN,A)
【文献】社団法人日本化学会,第5版実験化学講座1-基礎編I 実験・情報の基礎―,2013年,p.167-189
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア、二酸化炭素、水及び溶媒を含む廃溶媒の精製方法であって、
前記溶媒は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールであり、
前記廃溶媒を減圧させて二酸化炭素を除去する段階;
前記減圧された廃溶媒を蒸留塔に流入させる段階;及び
前記流入された廃溶媒を蒸留してアンモニアを除去する段階を含み、
前記蒸留は、多段蒸留方式によって行われ、
前記減圧は、30乃至50℃の温度及び100乃至200mbarの圧力で行われることを特徴とすることを特徴とする、廃溶媒の精製方法。
【請求項2】
前記蒸留塔に流入される廃溶媒に含まれたアンモニアは、400乃至1000ppmであり、前記蒸留後に回収される溶媒に含まれたアンモニアは50ppm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項3】
前記蒸留後に回収される溶媒に含まれたアンモニアは、30ppm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項4】
前記廃溶媒は、超臨界乾燥工程後に発生する超臨界廃液から由来したことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項5】
前記減圧後に廃溶媒のpHは、9.0乃至10.0であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項6】
前記蒸留は、20乃至30段の多段蒸留方式によって行われることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項7】
前記蒸留塔に流入される廃溶媒の流入速度に対する蒸留塔から排出される蒸気の排出速度の比は、0.01乃至0.07であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項8】
前記蒸留塔に流入される廃溶媒の流入速度1kg/hrを基準とするリボイラーの出力は、200乃至700Wであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項9】
前記蒸留の還流比(reflux ratio)は、3乃至10であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項10】
前記精製された溶媒の回収率は、93%以上であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の廃溶媒の精製方法。
【請求項11】
シリカエアロゲルの製造方法であって、
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の方法によって
廃溶媒を精製し、前記精製された
廃溶媒を使用
してシリカエアロゲルを製造することを特徴とするシリカエアロゲルの製造方法。
【請求項12】
シリカエアロゲルブランケットの製造方法であって、
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の方法によって
廃溶媒を精製し、前記精製された
廃溶媒を使用
してシリカエアロゲルブランケットを製造することを特徴とするシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年11月13日付韓国特許出願10-2017-0150507号及び2018年09月20日付韓国特許出願10-2018-0113172号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願等の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、超臨界乾燥工程後に発生した超臨界廃液から由来する廃溶媒を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットは高多孔性物質であって、高い気孔率(porosity)と比表面積、そして低い熱伝導度(thermal conductivity)を有するので、断熱材、触媒、吸音材、半導体回路の層間絶縁物質など多様な産業分野に活用されている。
【0004】
しかし、高価の原料と製造工程、そして製造過程で発生する大量の廃溶媒処理費用などによって、製品の価格が他の断熱材に比べて相対的に高いという短所がある。
【0005】
前記で言及した価格上昇の要因のうち、原料を交替したり、製造工程を変更して原価を節減する方法は、製品の品質に直接的な影響を与えることができるため適用し難いところ、最も容易に原価を低める方法は、製造過程で発生する廃液を再使用する方法である。
【0006】
超臨界流体を用いた乾燥工程時に発生する廃液の組成は、殆ど溶媒と水からなっているが、少量のアンモニアを含んでいるので再使用することができない。これを再使用するために、さらに溶媒を加えて希釈させたり、酸で中和させる技術を使用したりするが、溶媒を追加する場合、原価が上昇する問題があり、この場合、実際に残留するアンモニア自体は全く除去されないという問題があり、酸で中和させて再使用する場合、最終製品で中和によって生成される塩が発生する問題がある。
【0007】
また、前記超臨界流体として二酸化炭素を用いた場合には、超臨界廃液に二酸化炭素が溶けているので、炭酸アンモニウム塩が発生する問題がある。
【0008】
よって、超臨界乾燥工程後に発生する超臨界廃液から由来する廃溶媒で二酸化炭素及びアンモニアを効率的に除去して高純度の溶媒に精製し、精製過程で気化されて損失される溶媒を最小化する廃溶媒の精製方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】CN205145937U(2016.04.13公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであって、超臨界乾燥工程後に発生する超臨界廃液から由来する廃溶媒に含まれた二酸化炭素を減圧工程にて除去し、アンモニアを多段蒸留工程を介して除去することにより、高純度で溶媒を精製し、精製過程で損失される溶媒を最小化して溶媒回収率を最大化する廃溶媒の精製方法を提供することである。
【0011】
また、前記精製された溶媒を再使用するシリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記のような課題を解決するためのものであって、
廃溶媒を減圧させる段階;
前記減圧された廃溶媒を蒸留塔に流入させる段階;及び
前記流入された廃溶媒を蒸留する段階を含み、
前記蒸留は、多段蒸留方式によって行われることを特徴とする廃溶媒の精製方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記精製された溶媒を再使用するシリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る廃溶媒の精製方法は、超臨界乾燥工程後に発生する超臨界廃液から由来する廃溶媒に含まれた二酸化炭素を減圧工程にて除去し、アンモニアを多段蒸留工程を介して除去することにより、高純度に溶媒を精製し、精製過程で損失される溶媒を最小化して溶媒回収率を最大化することができる。
【0015】
また、減圧工程及び多段蒸留工程の運転条件を調節して、溶媒の純度及び溶媒回収率を調節することができる。
【0016】
また、前記精製された溶媒をシリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造に再使用することにより、物性の低下なしにシリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造原価を節減することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をさらに詳細に説明する。このとき、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0018】
本発明は、超臨界乾燥工程後に発生する超臨界廃液から由来する廃溶媒に含まれた二酸化炭素を減圧工程にて除去し、アンモニアを多段蒸留工程を介して除去することにより、高純度に溶媒を精製し、精製過程で損失される溶媒を最小化して溶媒回収率を最大化することができる廃溶媒の精製方法を提供することを目的とする。
【0019】
具体的に、本発明は、
廃溶媒を減圧させる段階;
前記減圧された廃溶媒を蒸留塔に流入させる段階;及び
前記流入された廃溶媒を蒸留する段階を含み、
前記蒸留は、多段蒸留方式によって行われることを特徴とする。
【0020】
本発明において、前記廃溶媒は、溶媒、水、アンモニア及び二酸化炭素を含み、超臨界乾燥工程後に発生する超臨界廃液から由来したことを特徴とする。
【0021】
また、溶媒は、具体的にメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのような一価アルコール;またはグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びソルビトールなどのような多価アルコールであってよく、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が用いられてよい。この中でも水及びエアロゲルとの混和性を考慮するとき、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのような炭素数1乃至6の一価アルコールであってよく、最も好ましくはエタノールであってよい。
【0022】
従来、溶媒を分離したり廃溶媒を精製する技術は多く提案されたが、従来の技術は溶媒と水の混合物を対象とするものであって、本発明の溶媒、水、少量のアンモニア及び二酸化炭素が含まれた超臨界廃液から由来した廃溶媒を精製対象とする廃溶媒の精製方法とは差がある。
【0023】
もし、前記アンモニアを除去せずに廃溶媒をシリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造に再使用する場合、高いpHの影響でゲル化の時間を調節することができず、製品の物性が低下される問題があり得る。
【0024】
また、超臨界流体として二酸化炭素を用いた場合には、廃溶媒に二酸化炭素が溶けているので、残留アンモニアと反応して炭酸アンモニウム塩を形成することができる。この塩は、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの断熱性能にも悪影響を与えることができ、製造工程中に設備ラインの詰まりなどの致命的な問題を起こすことができる。
【0025】
したがって、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造に再使用するためには、アンモニア及び二酸化炭素を全て除去することが必須である。
【0026】
本発明の廃溶媒の精製方法は、前記二酸化炭素を除去するために超臨界乾燥工程後に発生する超臨界廃液から由来する廃溶媒を減圧させる減圧工程を先に行うことを特徴とする。前記減圧工程を行わずに蒸留工程を行う場合には、冷却塔で炭酸アンモニウム塩が発生する問題があり得る。
【0027】
前記減圧工程は、二酸化炭素を効率的に除去するために温度及び圧力を最適の範囲に調節することができ、具体的に、前記減圧工程は30乃至50℃、より具体的には35乃至45℃の温度、及び100乃至200mbar、より具体的には150乃至200mbarの圧力で行われることを特徴とする。
【0028】
前記減圧工程後の廃溶媒は、二酸化炭素が除去されるところ、減圧工程の前に比べてpHが増加し、本発明の場合、減圧後の廃溶媒のpHは9.0乃至10.0、より具体的に8.5乃至9.5であってよく、この範囲を満たす水準で二酸化炭素を除去して前記炭酸アンモニウムの形成を最小化することができる。
【0029】
一方、本発明の精製対象となる廃溶媒は、アンモニアを400乃至1000ppm、より好ましくは400乃至800ppm含むことができる。廃溶媒内に含まれたアンモニアの含量が前記範囲であるとき、最適の精製効率を出すことができる。
【0030】
また、本発明の廃溶媒の精製方法は、蒸留条件等を最適化して精製及び回収効率を最大化させることができる。
【0031】
具体的に、本発明の廃溶媒の精製方法は、前記減圧させた廃溶媒を蒸留塔に流入させ、これを多段蒸留方式で蒸留させることを特徴とする。具体的に本発明の蒸留は20乃至30段、より具体的には25乃至30段の多段蒸留塔を用いて行うものであってよい。段数が前記範囲より少ない場合、蒸留によるアンモニアの除去効果が不完全であることがあり、前記範囲より多い場合、精製及び回収効率は有意味な水準に増加しないながら、不要なエネルギーのみ浪費されることもある。
【0032】
前記のように本発明は、溶媒を高純度に得るために多段蒸留を介して廃溶媒を精製することを特徴とする。単蒸留方式は、精製効率が低いため所望する純度の溶媒に精製するように調節するのが容易でないことがあり、蒸留の過程で気化されて損失される溶媒の量が多いので、溶媒回収率、ひいては溶媒再使用率が高くない問題があり得る。
【0033】
本発明の蒸留は1乃至10bar、より具体的には1乃至3barの圧力条件で行われ得るものであってよい。本発明の廃溶媒の精製方法は、前記範囲で投入エネルギー及び時間に比べての高い精製効率及び高い溶媒回収率を期待することができる。
【0034】
前記範囲より低い圧力で蒸留を行う場合、別途の真空設備が追加されなければならない問題があり得、前記範囲より高い圧力で蒸留を行う場合、蒸留塔の運転温度が増加する問題が発生し得る。
【0035】
本発明の蒸留は70乃至90℃、より具体的には75乃至80℃の温度条件で行われるものであってよい。本発明の廃溶媒の精製方法は、前記範囲で投入エネルギー及び時間に比べて高い精製効率及び高い溶媒回収率を期待することができる。
【0036】
前記範囲より低い温度で蒸留を行う場合、精製効率が低いことがあり、前記範囲より高い温度で蒸留を行う場合、精製効率は高いことがあるが、溶媒損失が多く発生する問題があり得る。
【0037】
本発明の前記蒸留塔に流入される廃溶媒の流入速度は200乃至1000kg/hr、より好ましくは400乃至600kg/hrであってよい。本発明は、前記範囲で高い精製効率及び高い溶媒回収率を期待することができる。
【0038】
前記範囲より低い速度で流入される場合、精製容量が低減して精製された溶媒を用いるエアロゲルの生産性が低下される問題があり得、前記範囲より高い速度で流入される場合、精製効率が落ちる問題があり得る。
【0039】
また、本発明の前記蒸留塔に流入される廃溶媒の流入速度に対する蒸留塔から排出される蒸気の排出速度の比は0.01乃至0.07、より具体的には0.015乃至0.07であってよい。一方、前記蒸気は、水蒸気及びアンモニアを含んでよい。
【0040】
蒸留塔に流入される廃溶媒の流入速度に対する蒸留塔から排出される蒸気の排出速度の比が前記範囲未満である場合、精製効率が低い問題があり得、前記範囲を超過する場合、精製効率は高いが、溶媒損失量が多いので、溶媒回収率が低い問題があり得る。
【0041】
また、本発明の蒸留塔に流入される廃溶媒の流入速度1kg/hrを基準とするリボイラー出力は200乃至700W、より具体的には320乃至550Wであってよい。リボイラー出力とは、蒸留塔に投入されるエネルギーを意味するものであって、本発明は前記範囲で精製効率及び溶媒回収率の最大化が可能である。
【0042】
リボイラー出力が前記範囲未満である場合、精製効率が低い問題があり得、前記範囲を超過する場合、精製効率は高いが、溶媒損失量が多いため溶媒回収率が低い問題があり得る。
【0043】
また、本発明の還流比(reflux ratio)は3乃至10、より具体的には4乃至8であってよい。一般的に蒸留を行うとき、蒸留塔の塔頂から出る蒸気の一部または全部が凝縮器で凝縮されて液体となるが、前記液体の一部は再び塔頂に還流され、残りは蒸留塔の外に排出される。このとき、蒸留塔の外に排出される量に比べて再び塔頂に還流される量を還流比と言う。本発明は、前記範囲で精製効率及び溶媒回収率の最大化が可能である。
【0044】
還流比が前記範囲未満である場合、精製効率が低い問題があり得、前記範囲を超過する場合、精製効率は高いが、溶媒損失量が多いため溶媒回収率が低く、不要なエネルギーの消費が増加する問題があり得る。
【0045】
前記のような蒸留条件を有する本発明の廃溶媒の精製方法を介して精製された溶媒の回収率は93%以上、より具体的には94%以上であってよい。
【0046】
本発明の廃溶媒の精製方法は、多段蒸留を介してアンモニアを除去することにより、単蒸留に比べて気化されて損失される溶媒の量を減少させ、精製された溶媒の回収率を最大化させることができる。
【0047】
また、本発明の廃溶媒の製造方法によって精製された溶媒は、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットに再使用されてよい。
【0048】
一般的にシリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットは、シリカゾルの製造-(ブランケットに含浸)-ゲル化反応-熟成-表面改質-超臨界乾燥を経て製造され、具体的に前記精製された溶媒はシリカゾルの製造段階、熟成または表面改質段階のうち一つ以上の段階で再使用されてよい。
【0049】
一方、本発明の廃溶媒の精製方法によって精製された溶媒は、アンモニアを50ppm以下、具体的には30ppm以下、より具体的には20ppm以下で含むことができる。
【0050】
アンモニアが前記範囲で含まれた溶媒は、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造工程に再使用されても、物性の低下なしに同等または類似水準の物性を有する製品を具現することができ、これを介して溶媒の使用量が節減され、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造原価及び廃液処理費用を効果的に節減することができるという効果がある。
【0051】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0052】
(実施例1)
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)とエタノールを3:1の重量比で混合して製造した混合溶液に、水で希釈した塩酸溶液(濃度=0.15重量%)を前記混合溶液のpHが1となるように添加した後、混合してシリカゾル(シリカゾル内のシリカ含量=4重量%)を製造した。次に、前記シリカゾルにアンモニア触媒を100:0.5(シリカゾル:アンモニア触媒)の体積比で添加し、ガラス繊維に浸漬させた後、ゲル化させてシリカ湿潤ゲル複合体を製造した。
【0053】
その後、シリカ湿潤ゲル複合体をエタノールに浸漬させた後、70℃のオーブンで2時間熟成させた。前記熟成されたシリカ湿潤ゲル複合体をエタノールとHMDSの混合物(エタノール:HMDSの体積比:1:19)である表面改質溶液を用いて70℃で5時間表面改質させた。
【0054】
それ以後、超臨界装備内の抽出器に前記表面改質されたシリカ湿潤ゲル複合体を入れて超臨界CO2を用いて超臨界乾燥を行い、150℃及び常圧条件で1時間乾燥し、シリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0055】
前記超臨界乾燥後に発生した超臨界廃液から由来した廃エタノールに対して40℃及び170mbar条件で減圧工程を行った後、蒸留塔に流入される廃エタノールの流入速度1kg/hrを基準とするリボイラー出力374W及び還流比4の条件で多段蒸留を行って廃エタノールを精製した。
【0056】
(実施例2)
前記実施例1において、蒸留の条件を下記表1に記載された条件で行ったことを除き、実施例1と同様にして廃エタノールを精製した。
【0057】
(比較例1乃至4)
前記実施例1で減圧工程を行わずに、具体的な蒸留条件を下記表1に記載された条件で行ったことを除き、実施例1と同様にして廃エタノールを精製した。
【0058】
(比較例5)
前記実施例1で減圧工程を行わずに、多段蒸留の代わりに単蒸留工程を行っており、具体的な蒸留条件は下記表1に記載された条件で行ったことを除き、実施例1と同様にして廃エタノールを精製した。
【0059】
(実験例)
前記実施例1及び2、比較例1乃至5において、減圧工程の遂行可否、蒸留塔に流入される廃エタノールのpH、蒸留工程以後に残留するアンモニア濃度、エタノール回収率及び冷却塔内の塩の発生可否を測定して下記表1に示した。
【0060】
【0061】
前記表1で示すように、本発明の実施例1及び2は減圧工程を行って蒸留前に二酸化炭素を先に除去するので、蒸留塔に流入される廃エタノールのpHが減圧工程を行わずに蒸留を行う比較例に比べて高く、蒸留工程中に冷却塔で塩が発生しないことが確認できた。それ以後、多段蒸留工程を行って残留アンモニア濃度が20ppm未満の高純度のエタノールを回収することができ、エタノール回収率も93%以上であって、蒸留過程で損失されるエタノールもまた最小化させ得ることが確認できた。
【0062】
しかし、比較例1乃至4は、残留アンモニア濃度が20ppm未満の高純度のエタノールを93%以上の回収率で収得できたが、蒸留工程前に減圧工程を行わなかったため、蒸留工程中に冷却塔で塩が生成される問題が発生することが確認できた。
【0063】
一方、比較例5は、単蒸留を介して廃エタノールを精製したところ、回収されたエタノールの残留アンモニアが100ppmを超過し、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造に再使用できない水準であり、エタノールの回収率も高くないなど精製効率が良くなかった。また、減圧工程も行わなかったので、蒸留工程中に冷却塔で塩が生成される問題が発生することが確認できた。
【0064】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくとも他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。よって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。