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特許7024121前加水分解されたポリシリケートの合成方法
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  • 特許-前加水分解されたポリシリケートの合成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】前加水分解されたポリシリケートの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/02 20060101AFI20220215BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20220215BHJP
   C08L 83/02 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C08G77/02
C08K7/02
C08L83/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020564371
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 KR2019016448
(87)【国際公開番号】W WO2020111765
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0147975
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キュ-リョン
(72)【発明者】
【氏名】オ、キョン-シル
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン-フン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、セ-ウォン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-118635(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0040373(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/02
C08K 7/02
C08L 83/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器にポリシリケート及びアルコールを投入する段階(段階1);
前記反応器に酸性水溶液をさらに投入して反応混合物を製造する段階(段階2);及び
前記反応混合物を撹拌して水和反応を行う段階(段階3);を含み、
前記反応混合物は、前記ポリシリケート100重量部に対して3重量部から42重量部の水を含み、
前記アルコールは、前記ポリシリケート100重量部に対して20から280重量部の量を投入される、
前加水分解されたポリシリケートの合成方法。
【請求項2】
前記酸性水溶液は、前記ポリシリケート100重量部に対して0.005から0.073重量部の酸触媒を含む、請求項1に記載の前加水分解されたポリシリケートの合成方法。
【請求項3】
前記ポリシリケートは、平均重合度が3から30である、請求項1または2に記載の前加水分解されたポリシリケートの合成方法。
【請求項4】
前記段階3)は、15から25℃の条件で30分から2時間行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の前加水分解されたポリシリケートの合成方法。
【請求項5】
前記前加水分解されたポリシリケートの合成方法は、縮合反応段階を含まないものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の前加水分解されたポリシリケートの合成方法。
【請求項6】
前記ポリシリケートは、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、プロピルポリシリケート、イソプロピルポリシリケート、ブチルポリシリケート、セカンダリーブチルポリシリケート、ターシャリーブチルポリシリケート、ヘキシルポリシリケート、シクロヘキシルポリシリケート、ドデシルポリシリケートからなる群から選択された1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の前加水分解されたポリシリケートの合成方法。
【請求項7】
前記ポリシリケートは、シリカ(SiO2)生成収率が30重量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の前加水分解されたポリシリケートの合成方法。
【請求項8】
前記前加水分解されたポリシリケートの重量平均分子量(Mw)は、800から1,600g/molである、請求項1~7のいずれか一項に記載の前加水分解されたポリシリケートの合成方法。
【請求項9】
反応器にポリシリケート及びアルコールを投入する段階(段階1);
前記反応器に酸性水溶液をさらに投入して反応混合物を製造する段階(段階2);
前記反応混合物を撹拌して前加水分解されたポリシリケートを形成する段階(段階3);
前記前加水分解されたポリシリケートに水及びアルコールを添加し混合してシリカゾルを準備する段階(段階4);
前記シリカゾルに塩基性触媒を混合しゲル化させてシリカ湿潤ゲルを形成する段階(段階5);
前記シリカ湿潤ゲルを表面改質剤と混合して表面改質する段階(段階6);及び
表面改質されたシリカ湿潤ゲルを乾燥する段階(段階7);を含み、
前記反応混合物は、前記ポリシリケート100重量部に対して3重量部から42重量部の水を含み、
前記ゲル化は、pH3から10の条件下で行われ、
前記アルコールは、前記ポリシリケート100重量部に対して20から280重量部の量を投入される、
シリカエアロゲルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年11月27日付韓国特許出願10-2018-0147975号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、反応物としてポリシリケートを適用する前加水分解されたポリシリケートの合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲル(aerogel)は、90~99.9%程度の気孔率と1~100nm範囲の気孔サイズを有する超多孔性の高比表面積(≧500m2/g)物質であって、優れた超軽量/超断熱/超低誘電などの特性を有する材料であるため、エアロゲル素材の開発研究は勿論のこと、環境に優しい高温型断熱材、高集積素子用極低誘電薄膜、触媒及び触媒担体、スーパーキャパシタ用電極、海水淡水化用電極材料としての応用研究も活発に行われている。
【0004】
エアロゲルの最大の長所は、従来のスタイロフォーム(登録商標)などの有機断熱材より低い0.300W/m・K以下の熱伝導率を示すスーパー断熱性(super-insulation)であるという点と、有機断熱材の致命的な弱点である火災脆弱性と火災時の有害ガスの発生を解決することができるという点である。
【0005】
一般に、エアロゲルは、水ガラス、アルコキシシラン(alkoxysilane)系列(TEOS、TMOS、MTMSなど)などのシリカ前駆体からヒドロゲルを製造し、ヒドロゲル内部の液体成分を、微細構造を破壊することなく除去することで製造される。代表的なシリカエアロゲルの形態は、粉末、顆粒、モノリスの三種類に分けることができ、一般的には粉末の形態で製造される。
【0006】
特に、前記シリカ前駆体のうちテトラエチルオルトシリケート(Tetra ethyl ortho silicate、TEOS)は、コーティング剤、絶縁剤、多孔性セラミックの製造などの産業分野に多様に用いられている物質であり、市場では純粋なTEOS(pure TEOS)、縮合されたTEOS(condensed TEOS)、前加水分解されたTEOS(pre-hydrolyzed TEOS,HTEOS)などの多様な製品が販売されている。
【0007】
そのうち、HTEOSは、広い分子量分布を有するエチルポリシリケートオリゴマー(ethyl polysilicate oligomer)で部分的に水和されたエチルポリシリケートオリゴマーである。TEOS単量体(TEOS monomer)からオリゴマー(oligomer)形態に合成するとき、ゲル化時間(gelation time)などの物性を調節することができるため、使用者の反応条件に合わせて容易に適用可能である。また、最終結果物の再現性のある物性を作り出すという長所がある。
【0008】
前記HTEOSは、一般にTEOSのようなアルコキシシラン系単量体化合物に対して酸性条件で部分水和反応及び縮合反応を行って合成される。このとき、縮合反応は酸性条件で還流反応で進められるところ、その縮合速度が非常に遅いため、目的とする水準の縮合度を達成するためには長期間縮合反応を進めなければならず、これによって高いエネルギー費用の発生、工程の効率低下の問題があり、反応物として用いるTEOSなどのアルコキシシラン系単量体化合物の原料単価が高いため、製造単価が上昇するという問題がある。一方、縮合速度を増加させるために縮合触媒を用いることもできるが、この場合、反応生成物の分子量を制御し難く、触媒の購入費用が発生し、合成段階において触媒分離工程が追加されなければならないので、工程がさらに複雑で、製造単価が上昇するという短所がある。
【0009】
よって、本発明の発明者等は、反応物としてTEOSのようなアルコキシシラン系単量体化合物ではなく、ポリシリケートを用いることにより、既存の合成方法に比べて縮合反応を省略することができるので、工程が簡単で且つ製造費用を顕著に減少させることができる、新規の前加水分解されたポリシリケートの合成方法を開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2014-501320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであって、前加水分解されたポリシリケートを合成するための反応物としてポリシリケートを適用することで、既存のアルコキシシラン系単量体化合物を反応物として使用した合成方法とは異なり縮合反応を省略することができるので、合成時間を顕著に短縮させることができ、製造費用を減少させることができる、新規の前加水分解されたポリシリケートの合成方法を提供することである。
【0012】
本発明の解決しようとする他の課題は、反応に投入される水の量及び酸触媒の量を適宜調節してポリシリケートの水和度を制御し、優れた貯蔵安定性を確保することができる、新規の前加水分解されたポリシリケートの合成方法を提供することである。
【0013】
また、本発明の解決しようとする他の課題は、前記方法で合成された前加水分解されたポリシリケートをシリカ前駆体として用いてシリカエアロゲル及びシリカエアロゲルブランケットを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記のような課題を解決するためのものであって、反応器にポリシリケート及びアルコールを投入する段階(段階1);前記反応器に酸性水溶液をさらに投入して反応混合物を製造する段階(段階2);及び前記反応混合物を撹拌して水和反応を行う段階(段階3);を含み、前記反応混合物は、前記ポリシリケート100重量部に対して3重量部から42重量部の水を含むものである、前加水分解されたポリシリケートの合成方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、反応器にポリシリケート及びアルコールを投入する段階(段階1);前記反応器に酸性水溶液をさらに投入して反応混合物を製造する段階(段階2);前記反応混合物を撹拌して前加水分解されたポリシリケートを形成する段階(段階3);前記前加水分解されたポリシリケートに水及びアルコールを添加し混合してシリカゾルを準備する段階(段階4);前記シリカゾルに塩基性触媒を混合しゲル化させてシリカ湿潤ゲルを形成する段階(段階5);前記シリカ湿潤ゲルを表面改質剤と混合して表面改質する段階(段階6);及び表面改質されたシリカ湿潤ゲルを乾燥する段階(段階7);を含み、前記反応混合物は、前記ポリシリケート100重量部に対して3重量部から42重量部の水を含み、前記ゲル化はpH3から10の条件下で行われるものである、シリカエアロゲルの製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、シリカ前駆体、水及びアルコールを混合してシリカゾルを準備する段階;及び前記シリカゾルに塩基性触媒を混合した後、ブランケット用基材に含浸させる段階;前記ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルをゲル化させる段階;を含み、前記シリカ前駆体は、前述した合成方法によって合成された前加水分解されたポリシリケートであり、前記ゲル化はpH3から10の条件下で行われるものである、シリカエアロゲルブランケットの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る前加水分解されたポリシリケートの合成方法は、反応物としてポリシリケートを適用することで、既存のアルコキシシラン系単量体化合物を反応物として用いた合成方法とは異なり縮合反応を省略することができるので、合成時間を顕著に短縮させることができ、製造費用を減少させることができる。
【0018】
また、本発明の合成方法による場合、ゲル化反応時間及び重量平均分子量の制御が容易であり、貯蔵安定性及び加工性に優れた前加水分解されたポリシリケートを合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書の図は、本発明の具体的な実施形態を例示するものであり、前述した発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を担うものなので、本発明は、かかる図に記載された事項のみに限定して解釈されてはならない。
図1】本発明の実施例1及び比較例1において、ゲル化時の温度による塩基性触媒の使用量を測定して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。このとき、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0021】
本発明の一実施形態による前加水分解されたポリシリケートの合成方法は、反応器にポリシリケート及びアルコールを投入する段階(段階1);前記反応器に酸性水溶液をさらに投入して反応混合物を製造する段階(段階2);及び前記反応混合物を撹拌して水和反応を行う段階(段階3);を含み、前記反応混合物は、前記ポリシリケート100重量部に対して3重量部から42重量部の水を含むことを特徴とする。
【0022】
一般に、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造時に用いるシリカ前駆体として前加水分解されたTEOSのような単量体化合物を用いる場合、最終生成物の重量平均分子量またはゲル化反応時間の制御が難しく、安定性が低下するため、重量平均分子量が約1、000g/mol程度の前加水分解されたポリシリケートオリゴマーを作製して用いている。これは、TEOSのような単量体化合物とは異なり、オリゴマー形態の物質を用いる場合、ゲル化反応時間の制御のために水和度を高めても安定性を確保することができるためである。しかし、従来の前記前加水分解されたポリシリケートを合成する工程では、反応物としてTEOS単量体のようなアルコキシシラン系単量体化合物を用いるため、部分水和以後に縮合反応が必ず随伴されなければならない。このとき、前記縮合反応は酸性条件で還流反応で進められるところ、その縮合速度が非常に遅いため、目的とする水準の縮合度を達成するためには長期間縮合反応を進めなければならず、これによって高いエネルギー費用の発生、工程の効率低下の問題があり、反応物として用いるTEOSなどのアルコキシシラン系単量体化合物の原料単価が高いため、製造単価が上昇するという問題がある。一方、縮合速度を増加させるために縮合触媒を用いることもできるが、この場合、反応生成物の分子量を制御し難く、触媒購入費用の発生及び合成段階において触媒分離工程が追加されなければならないので、工程がさらに複雑で、製造単価が上昇するという問題点がある。
【0023】
よって、本発明は、前加水分解されたポリシリケートを合成する工程において、反応物としてTEOSのようなアルコキシシラン系単量体化合物を用いることなく、ポリシリケートを用いることにより部分水和する段階のみ含み、縮合反応は省略することで合成工程の効率を高め、相対的に原料単価が安いので製造単価の側面においても経済的効果を得ることができる新規の合成方法を導入して前記問題点を解決し、さらに酸触媒の含量及び酸触媒のpH調節を介してゲル化反応時間及び重量平均分子量を制御しやすく、貯蔵安定性に優れた前加水分解されたポリシリケートを合成することができる、新規の前加水分解されたポリシリケートの合成方法を提供しようとする。
【0024】
以下、本発明の一実施形態による前加水分解されたポリシリケートの合成方法を各段階別に詳しく説明する。
【0025】
段階1)
本発明の一実施形態による前記段階1)は、反応物であるポリシリケートとアルコールを反応器に投入する段階であって、合成工程のうち縮合反応を省略することができ、単位含量当たりのシリカ生成収率がアルコキシシラン系単量体化合物より優れた反応物としてポリシリケートを投入することを特徴とする。
【0026】
本発明の一実施形態による前記ポリシリケートは、シリカ(SiO2)生成収率が30重量%以上であるものであってよく、具体的に30から45重量%のシリカ生成収率を有するものであってよい。ここで、シリカ(SiO2)生成収率は、ポリシリケート100重量%から生成され得るシリカの含量を比率で示した値であり、シリカ生成収率が高い物質であるほど、同一含量で生成され得るシリカの量が多いことを示し、シリカ生成収率が高ければ目的とする水準のシリカ含量を含むシリカ前駆体を得るために相対的に少量の原料を用いることができるので、原料原価を節減することができるという効果がある。
【0027】
本発明において使用可能なポリシリケートは、部分水和反応を介してシリカエアロゲルまたはエアロゲルブランケットのシリカ前駆体として使用可能な前加水分解されたポリシリケートを形成できるポリシリケートであれば限定されず、具体的には、アルキルポリシリケートを用いてよく、より具体的には、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、プロピルポリシリケート、イソプロピルポリシリケート、ブチルポリシリケート、セカンダリーブチルポリシリケート、ターシャリーブチルポリシリケート、ヘキシルポリシリケート、シクロヘキシルポリシリケート、ドデシルポリシリケートからなる群から選択された1種以上を含んでよい。
【0028】
また、本発明の一実施形態によれば、前記ポリシリケートは、平均重合度が3から30であってよく、具体的には5から15、より具体的には6から12であってよく、具体的に前記ポリシリケートは、前記重合度を有するオリゴマーであってよい。ポリシリケートが前記平均重合度を満たすとき、貯蔵安定性と流動性が確保されて使用容易性に優れる。このとき、前記平均重合度は、GPC(Gel Permeation Chromatography、Waters 2489 UV-vis Detector)を用いて測定した。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、段階1)でアルコールの投入量を変化させることができ、前記アルコールは、最終生成される前加水分解されたポリシリケート内に含まれるシリカ(SiO2)の含量が10重量%から30重量%となるようにする量で投入されてよい。シリカの含量が前記範囲内であるとき、最終製造されるブランケットでのシリカエアロゲルの含量が十分なので、目的とする水準の断熱効果を期待することができ、またブランケットの機械的物性、特に優れた水準の柔軟性を確保することができる。ここで、前記シリカ含量が10重量%から30重量%となるようにする量は、具体的にポリシリケート100重量部に比べて20から280重量部、合成される前加水分解されたポリシリケートの水和度が最適の範囲を有し得るようにする側面で、具体的には50から120重量部、より具体的には80から110重量部のアルコールであってよい。
【0030】
前記アルコールは、前加水分解されたポリシリケートを製造する際に使用可能なものとして知られたアルコールであればその種類を限定せず、具体的には炭素数1から20のアルコール、より具体的には炭素数1から5のアルコール、この中でも炭素数1から5の1価アルコールであってよい。
【0031】
段階2)
本発明の一実施形態による前記段階2)は、部分水和するための反応混合物を製造する段階であって、前記反応物が含まれた反応器に酸性水溶液を投入し撹拌して反応混合物を製造する段階である。
【0032】
また、段階2)で製造された反応混合物は、ポリシリケート100重量部に対して3重量部から42重量部の水を含む。
【0033】
ここで、前記酸性水溶液は、酸触媒及び水を含む混合液であって、酸性水溶液に含まれた水を用いてポリシリケートを水和させることができ、水と酸触媒の量及び酸性水溶液のpHを調節してポリシリケートの水和度を制御することができ、ポリシリケートの水和度が制御されるに伴い最終生成された前加水分解されたポリシリケートのゲル化時間とpHを調節することができる。
【0034】
前記酸性水溶液は、反応物であるポリシリケート100重量部に対して0.005重量部から0.073重量部の酸触媒を含むものであってよく、具体的に0.010から0.050重量部、より具体的に0.015から0.030重量部を含むものであってよい。
【0035】
本発明で酸性水溶液に含まれる酸触媒の含量は、反応混合物全体での酸触媒の含量と同一であり、前記酸触媒の含量を満たすことにより後述する水和反応時の水和速度を改善し、水和反応の効率をさらに向上させることができ、これによって合成された前加水分解されたポリシリケートのゲル化反応性も改善させることができ、前加水分解されたポリシリケート自体の重、縮合反応を抑制して優れた貯蔵安定性を確保することができ、過量の酸触媒による腐食性問題を予防することができる。
【0036】
本発明の一実施形態による前記酸触媒は、特に制限されるものではないが、例えば、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸及びフッ酸からなる群から選択された1種以上であってよく、好ましくは塩酸であってよい。
【0037】
また、本発明の一実施形態による前記酸性水溶液はpH0.5から2.5、最適の水和度及びゲル化反応性を有する前加水分解されたエチルポリシリケートを合成する側面で、pH1.0から2.5の酸性水溶液であってよく、前記pH範囲を満たす場合、最適のpH及びゲル化時間を有する前加水分解されたポリシリケートを生成することができる。
【0038】
また、段階2)で製造された反応混合物は、前記ポリシリケート100重量部に対して3重量部から42重量部の水を含んでよく、具体的に3重量部から30重量部、より具体的に6重量部から12重量部を含んでよい。前記水が3重量部未満で含まれる場合、水がポリシリケートの量に比べてあまりにも少量で含まれているので、水和反応時に目的とする水和度を達成することができず、水和度が低い前加水分解されたポリシリケートをエアロゲルの製造工程でシリカ前駆体として適用する場合、ゲル化を誘導するヒドロキシル基(-OH)の比率が低いためゲル化反応が円滑に行われないという問題が発生し得る。また、前記水が42重量部を超過して含まれる場合、最終生成される前加水分解されたポリシリケートの水和度が過渡に高くなるので、シリカ前駆体のアルコキシ官能基が大部分ヒドロキシル基で置換されることで、貯蔵及び保管する過程でゲル化反応が行われることがあり、粘度が容易に増加して貯蔵安定性及び加工性が低下するという問題があり得る。
【0039】
また、段階2)で反応混合物内の水及び酸触媒の含量と、酸性水溶液のpHを調節して水和度を制御することができるので、貯蔵及び保管する過程で所望しないゲル化反応が起こらないようにして、優れた貯蔵安定性を確保することができ、前加水分解されたポリシリケートのゲル化時間も前記変数によって調節され得るので、ゲル化反応を誘導する場合には所望するゲル化時間を達成できるようにする。
【0040】
段階3)
本発明の一実施形態による段階3)は、製造された反応混合物を撹拌して水和反応を行う段階で、部分的に水和された状態である前加水分解されたポリシリケートを形成する段階である。具体的に、本発明の段階3)は、反応混合物を撹拌することにより水和反応が行われ得る。
【0041】
本発明の一実施形態による前記段階3)は、常温、具体的に15から25℃の条件で30分から2時間撹拌を行って部分水和反応を進めることができる。また、本発明は、反応物としてポリシリケートを用いることにより、段階3)の前記水和反応を行うことだけでも前加水分解されたポリシリケートを合成することができ、従来のアルコキシシラン系単量体化合物を反応物にして前加水分解されたポリシリケートを合成する際に必須的に随伴される縮合反応を進める必要がなく、合成工程が簡単であり、相対的に低いエネルギー費用がかかるという効果がある。
【0042】
本発明の合成方法において、反応混合物が水を3から42重量部含み、酸触媒を0.005重量部から0.073重量部含む場合、本発明が目的とする800g/molから1,600g/mol、より具体的には900g/molから1,400g/molの重量平均分子量を有し、平均重合度が3から30、好ましくは5から10、より好ましくは6から12である前加水分解されたポリシリケートを合成してよい。また、前記前加水分解されたポリシリケートは、前記の重合度を有する前加水分解されたポリシリケートオリゴマーで合成されてよい。
【0043】
また、本発明は、前記合成方法によって合成され、粘度特性、貯蔵安定性及び加工性に優れた前加水分解されたポリシリケートを提供する。また、前記前加水分解されたポリシリケートは、具体的に前加水分解されたアルキルポリシリケートであってよく、より好ましくは、シリカエアロゲルまたはシリカエアロゲルブランケットの製造時にシリカ前駆体としての活用度が最も優れた前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)であってよい。
【0044】
本発明で前加水分解されたポリシリケートは、部分水和が行われたポリシリケートを意味するものであってよく、具体的には、ポリシリケートの一部のアルコキシ官能基がヒドロキシル基で置換された状態であるポリシリケートを意味するものであってよい。
【0045】
シリカエアロゲル及びシリカエアロゲルブランケットの製造方法
本発明はまた、前記合成方法によって合成された前加水分解されたポリシリケートをシリカ前駆体にして製造されることを特徴とする、シリカエアロゲル及び/又はシリカエアロゲルブランケットの製造方法を提供する。
【0046】
具体的に、本発明の一実施形態によるシリカエアロゲルの製造方法は、反応器にポリシリケート及びアルコールを投入する段階(段階1);前記反応器に酸性水溶液をさらに投入して反応混合物を製造する段階(段階2);前記反応混合物を撹拌して前加水分解されたポリシリケートを形成する段階(段階3);前記前加水分解されたポリシリケートに水及びアルコールを添加し混合してシリカゾルを準備する段階(段階4);前記シリカゾルに塩基性触媒を混合しゲル化させてシリカ湿潤ゲルを形成する段階(段階5);前記シリカ湿潤ゲルを表面改質剤と混合して表面改質する段階(段階6);及び表面改質されたシリカ湿潤ゲルを乾燥する段階(段階7);を含み、前記反応混合物は、前記ポリシリケート100重量部に対して3重量部から42重量部の水を含み、前記ゲル化はpH3から10の条件下で行われるものであってよい。
【0047】
本発明の一実施形態による段階1)から段階3)は、前述した通りである。
【0048】
本発明の一実施形態による段階4)のアルコールは、合成方法で前述したものと同一であってよい。具体的に、前記アルコールは、エアロゲルの製造時に使用可能なものとして知られたアルコールであればその種類を限定せず、具体的には炭素数1から20のアルコール、水とエアロゲルの混和性の改善の側面で、より具体的には炭素数1から5のアルコールであってよく、この中でも炭素数1から5の1価アルコールであってよい。
【0049】
本発明の一実施形態による段階5)で塩基性触媒は、シリカゾルのpHを増加させて段階5)でのゲル化を促進する役割を担う。
【0050】
本発明の一実施形態によるシリカゾルで使用可能な塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;または水酸化アンモニウムのような有機塩基であってよい。具体的に、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア(NH3)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、モノイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、コリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノエタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ニトリロトリエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジブタノールアミン及びピリジンからなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくは水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化アンモニウムまたはこれらの混合物であってよい。
【0051】
前記塩基性触媒は、シリカゾルのpHが3から10となるようにする量で含まれてよい。前記シリカゾルのpHが前記範囲を満たすように塩基性触媒を添加するとき、最適のゲル化速度を有することができる。また、前記塩基性触媒は、固体状で投入される際に析出される虞があるため、前記アルコールにより希釈された溶液状で添加されることが好ましい。このとき、前記塩基性触媒及びアルコールの希釈比率は、体積基準で1:4から1:100であってよい。
【0052】
本発明の段階5)で行われるゲル化(gelation)は、シリカ前駆体物質から網状構造を形成させるものであってよく、前記網状構造(network structure)は、原子配列が1種あるいはそれ以上の種類からなっている或る特定の多角形がつながった平面網状の構造、または特定の多面体の頂点、角、面などを共有して三次元骨格構造を形成している構造を示すものであってよい。
【0053】
本発明の一実施形態によるゲル化は、pHが3から10、最適のゲル化速度を確保する側面で、好ましくはpHが4から8である条件下で行われてよい。
【0054】
また、本発明の一実施形態によれば、前記段階5)は、前記シリカゾルに塩基性触媒を混合した後、ブランケット用基材に含浸させる段階;前記ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルをゲル化させる段階;を含んでシリカエアロゲルブランケットを製造することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によるブランケット用基材は、シリカエアロゲルブランケットの断熱性を改善する側面で、具体的には多孔質(porous)基材であるものであってよい。多孔質のブランケット用基材を使用すると、シリカゾルが基材内部へ浸透することが容易であるため、ブランケット用基材内部で均一にエアロゲルを形成することで、製造されたシリカエアロゲルブランケットが優れた断熱性を有することができる。
【0056】
本発明の一実施形態によって使用可能なブランケット用基材は、フィルム、シート、ネット、繊維、発泡体、不織布体またはこれらの2層以上の積層体であってよい。また、用途に応じて、その表面に表面粗度が形成されるか、パターン化されたものであってもよい。より具体的には、前記ブランケット用基材は、ブランケット用基材内にシリカエアロゲルの挿入が容易な空間または空隙を含むことにより、断熱性能をより向上させることができる繊維であってよい。また、前記ブランケット用基材は、低い熱伝導度を有することが好ましい。
【0057】
具体的に、前記ブランケット用基材は、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの共重合体など)、セルロース、カーボン、綿、毛、麻、不織布、ガラス繊維またはセラミックウールなどであってよく、より具体的に、本発明において前記ブランケット用基材はガラス繊維(glass fiber)であってよい。
【0058】
また、本発明の段階で前記シリカゾルをブランケット用基材に含浸させることは、一例としてブランケット用基材を収容できる反応容器内で行われてよく、前記ブランケット用基材が収容された反応容器にシリカゾルを注ぐか、シリカゾル入りの反応容器内にブランケット用基材を入れて浸す方法で沈積させることができる。このとき、ブランケット用基材とシリカゾルの結合を良くするために、ブランケット用基材を軽く押して十分含浸されるようにすることができる。また、その後、一定の圧力でブランケット用基材を一定の厚さに加圧して余剰のシリカゾルを除去し、以後の乾燥時間を短縮することもできる。
【0059】
また、前記ブランケットの製造工程でのシリカゾルをゲル化させる段階は、前述した段階5)のゲル化と同一の条件及び同一の方法で行われてよい。
【0060】
さらに、本発明の一実施形態によるシリカエアロゲル及び/又はシリカエアロゲルブランケットの製造方法は、前記シリカ湿潤ゲル及び/又はシリカ湿潤ゲルブランケットを適当な温度で放置して化学的変化が完全になされるようにするための工程で、熟成段階をさらに行ってよく、熟成段階は、前記形成された網状構造をさらに堅固に形成させることができるので、本発明のエアロゲルの機械的安定性を強化させることができる。
【0061】
本発明の熟成段階は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、トリエチルアミン及びピリジンなどの塩基性触媒を有機溶媒に1から10%濃度で希釈させた溶液を添加することで、エアロゲル内にSi-O-Si bondingを最大限誘導してシリカゲルの網状構造をさらに堅固にさせ、その後に行われる速やかな乾燥工程で気孔構造の維持をさらに容易にするという効果がある。このとき、有機溶媒は前述したアルコールであってよく、具体的にはエタノールを含んでよい。
【0062】
また、前記熟成段階は、最適の気孔構造の強化のために適切な温度範囲で行われなければならないが、本発明の熟成段階は30から70℃温度で1から10時間放置させて行うものであってよい。熟成温度が前記範囲内を満たすとき、熟成効率がさらに改善され、生産性が増大し得る。また、有機溶媒としてエタノールを用いる場合、前記温度範囲はエタノールの沸点以下の温度範囲なので、蒸発による溶媒の損失を防止することができる。
【0063】
また、本発明の一実施形態によれば、疎水性のシリカエアロゲル及び/又はエアロゲルブランケットを製造するためのものであって、表面改質段階をさらに行ってよく(段階6)、表面改質は、表面改質剤を段階5)で製造されたシリカ湿潤ゲルと混合することにより行われるものであってよい。
【0064】
乾燥されたシリカエアロゲルは、乾燥直後には低い熱伝導率を維持するが、シリカ表面に存在する親水性のシラノール基(Si-OH)が空気中の水を吸収することにより、熱伝導度が漸次高くなるという短所がある。よって、低い熱伝導度を維持するためには、シリカエアロゲルの表面を疎水性に改質する必要がある。
【0065】
したがって、本発明の一実施形態による前記表面改質は、極性溶媒及び有機シラン化合物を含む表面改質剤によって行われ得る。
【0066】
前記極性溶媒は、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどを用いてよく、前記有機シラン化合物は、トリメチルクロロシラン(Trimethylchlorosilane、TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane、HMDS)、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane)、トリメチルエトキシシラン(trimethylethoxysilane)、エチルトリエトキシシラン(ethyltriethoxysilane)、またはフェニルトリエトキシシラン(phenyltriethoxysilane)などが用いられてよく、具体的にはヘキサメチルジシラザンが用いられてよい。
【0067】
前記表面改質は、溶媒の場合、ゲルに対して1から10の体積比で、有機シラン化合物の場合、ゲルに対して0.1から10の体積比で混合されることが好ましい。有機シラン化合物の体積比が前記範囲を満たすとき、最適の反応時間を有することができ、適正量の表面改質剤で表面改質を行うことで原価上昇の問題を解消し、未反応の表面改質剤が残留して乾燥時にゲル構造が収縮される現象を予防することができる。
【0068】
また、本発明の一実施形態による表面改質されたシリカ湿潤ゲル及び/又は湿潤ゲルブランケットは、乾燥する段階(段階7)を行って疎水性のシリカエアロゲル及び/又はエアロゲルブランケットで製造され得る。本発明の一実施形態による表面改質されたシリカ湿潤ゲル及び/又は湿潤ゲルブランケットは、疎水性のシリカ湿潤ゲル及び/又は湿潤ゲルブランケットであってよい。
【0069】
一方、本発明の一実施形態による製造方法は、前記乾燥前に洗浄する段階をさらに行ってよい。前記洗浄は、反応中に発生された不純物(ナトリウムイオン、未反応物、副産物など)及び超臨界乾燥中にCO2と反応して炭酸アンモニウム塩を発生し得る残留アンモニアなどを除去し、高純度の疎水性のシリカエアロゲルを得るためのものであって、非極性有機溶媒を用いた希釈工程または交換工程で行うことができる。
【0070】
本発明の一実施形態による前記乾燥段階は、熟成されたシリカゲルの気孔構造をそのまま維持しながら溶媒を除去する工程を介して行われてよく、前記乾燥段階は超臨界乾燥または常圧乾燥工程によってよい。
【0071】
前記超臨界乾燥工程は、超臨界二酸化炭素を用いて行われてよい。二酸化炭素(CO2)は、常温及び常圧では気体状態であるが、臨界点(supercritical point)と呼ばれる一定の温度及び高圧の限界を超えると、蒸発過程が起こらないため気体と液体の区別ができない臨界状態となり、この臨界状態にある二酸化炭素を超臨界二酸化炭素と称する。
【0072】
超臨界二酸化炭素は、分子の密度は液体に近いが、粘性度は低いため気体に近い性質を有し、拡散が速く熱伝導性が高いため乾燥効率が高く、乾燥工程時間を短縮させることができる。
【0073】
具体的に、前記超臨界乾燥工程は、超臨界乾燥反応器内に熟成されたシリカゲルを入れた後、液体状態のCO2を満たし、シリカエアロゲル内部のアルコール溶媒をCO2で置換する溶媒置換工程を行う。その後、一定の昇温速度、具体的には0.1℃/minから1℃/minの速度で40から50℃に昇温させた後、二酸化炭素が超臨界状態となる圧力以上の圧力、具体的には100barから150barの圧力を維持し、二酸化炭素の超臨界状態で一定時間、具体的には20分から1時間維持する。一般に、二酸化炭素は31℃の温度、73.8barの圧力で超臨界状態となる。二酸化炭素が超臨界状態となる一定の温度及び一定の圧力で2時間から12時間、より具体的には2時間から6時間維持した後、徐々に圧力を除去して超臨界乾燥工程を完了し、エアロゲルブランケットを製造することができる。
【0074】
また、常圧乾燥工程の場合、70から200℃温度及び常圧(1±0.3atm)下で自然乾燥などの通常の方法によって行われてよい。
【0075】
前記のような乾燥工程の結果、ナノサイズの気孔を有する多孔性シリカエアロゲル及び/又は多孔性シリカエアロゲルを含むブランケットが製造され得る。前記シリカエアロゲルは、高い疎水化度とともに優れた物性的特性、特に低いタブ密度と高い気孔率を有し、これを含むシリカエアロゲル含有ブランケットは、低い熱伝導度とともに優れた機械的柔軟性を有する。
【0076】
また、前記乾燥工程の前または後に、厚さの調節及びブランケットの内部組織と表面形状を均一にするための圧着工程、用途に応じて適切な形態またはモフォロジーを有するようにするための成形工程、または別の機能層を積層する積層工程などをさらに行われてもよい。
【0077】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明はいくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0078】
実施例1
反応器にエチルポリシリケート25.0g及びエタノール23.8gを投入して撹拌した。その後、前記反応器にpH1.8のHCl水溶液2.3g(HCl:0.004g)を投入して反応混合物を製造した。このとき、製造された反応混合物には、総2.296gの水が含まれている。1時間の間常温(20±5℃)で撹拌してエチルポリシリケートを部分水和させ、最終生成物である前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを収去した。
【0079】
実施例2
前記実施例1でpHが1.6であるHCl水溶液2.3g(HCl:0.005g)を投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0080】
実施例3
前記実施例1でエタノールを23.9g投入し、pHが1.5であるHCl水溶液を2.2g(HCl:0.006g)投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0081】
実施例4
前記実施例1でエタノールを23.9g投入し、pHが1.2であるHCl水溶液を2.1g(HCl:0.008g)投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0082】
実施例5
前記実施例1でエタノールを22.0g投入し、pHが1.0であるHCl水溶液を2.1g(HCl:0.010g)投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0083】
実施例6
前記実施例1でエタノールを25.0g投入し、pHが1.8であるHCl水溶液を1.0g(HCl:0.002g)投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0084】
実施例7
前記実施例6でエタノールを23.0g投入し、pHが1.8であるHCl水溶液を3.0g(HCl:0.005g)投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例6と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0085】
実施例8
前記実施例6でエタノールを21.0g投入し、pHが1.8であるHCl水溶液を5.0g(HCl:0.009g)投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例6と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0086】
実施例9
前記実施例6でエタノールを19.0g投入し、pHが1.8であるHCl水溶液を7.0g(HCl:0.012g)投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例6と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0087】
実施例10
前記実施例6でエタノールを17.0g投入し、pHが1.8であるHCl水溶液を9.0g(HCl:0.016g)投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、前記実施例6と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0088】
比較例1
反応器に、TEOS25.0g及びエタノール7.15gを投入して撹拌した後、前記反応器にpH1.8のHCl水溶液3.675g(HCl:0.006g)を投入し、1時間常温(20±5℃)で撹拌してTEOSを部分水和させた。その後、24時間85℃で加熱して縮合反応を行い、常温に温度を下げて最終生成された前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを収去した。
【0089】
比較例2
前記比較例1で縮合反応を行わないことを除き、同様の方法を行っており、縮合反応を行っていないため前加水分解されたエチルポリシリケートが合成されず、水和されたTEOS単量体を収得した。
【0090】
比較例3
前記実施例1でpHが1.8であるHCl水溶液0.5g(HCl:0.001g)を投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、実施例1と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0091】
比較例4
前記実施例1でpHが1.8であるHCl水溶液12g(HCl:0.021g)を投入し、製造された反応混合物の水の含量を下記表1に記載した数値に調節したことを除き、実施例1と同様の方法で前加水分解されたエチルポリシリケート(HTEOS)オリゴマーを合成した。
【0092】
実験例1:重量平均分子量(Mw、g/mol)の測定
前記実施例及び比較例で合成した各前加水分解されたエチルポリシリケートオリゴマーの重量平均分子量を測定し、その結果を表1に示した。前記重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography、Waters 2489 UV-vis Detector)を用いて測定しており、各前加水分解されたエチルポリシリケートオリゴマー0.05gにTHF(tetrahydrofuran)40mlを入れて溶かした後に、0.45μmのフィルターで濾過し、GPC vial(4ml)に入れて各サンプルを作製した。測定1時間前から溶媒(THF)を1.0ml/minの速度で注入させ、測定時間40分、注入体積150μl、流動速度1.0ml/min、UV-vis Detectorで40℃の条件で測定した。このとき、PSスタンダードを用いてキャリブレーションを行った。
【0093】
実験例2:ゲル化反応時間の測定
前記実施例及び比較例で合成した各前加水分解されたエチルポリシリケートオリゴマーを用いてゲル化反応にかかる時間を測定した。
【0094】
具体的に、反応容器に各前加水分解されたエチルポリシリケート、エタノール及び水を重量比2.9:6.5:1の割合で混合して製造した混合溶液に、エタノールに希釈された水酸化アンモニウム(NH4OH)触媒を10体積%の含量で添加し、pHが4から9となるようにしてゲル化反応を行っており、ゲル化が完了した状態、すなわち前記反応物が全てゲル状態に転換したときの時間を測定した。
【0095】
実験例3:貯蔵安定性測定指標(%)の測定
下記数式1のように、前記実施例及び比較例で合成した各前加水分解されたエチルポリシリケートオリゴマーまたは水和されたTEOS単量体を、実験例1で記述した方法で測定した重量平均分子量(Mw)と1ヶ月後に同一の試料を測定した値の変化量の百分率を貯蔵安定性測定の指標として算出した。数値が低いほど安定したことを示し、最初測定分子量に比べ変化率が10%を超過する場合には安定性がないものと判断し、測定不可と示した。
【0096】
【数1】
【0097】
実験例4:ゲル化時の温度による塩基性触媒使用量の測定
前記実施例1及び比較例1で合成した各前加水分解されたエチルポリシリケートオリゴマー(シリカ前駆体)を用いて、10分のゲル化時間を有することができる水酸化アンモニウム(NH4OH)の使用量を温度別に測定し、図1のグラフで示した。
【0098】
【表1】
【0099】
前記表1でのように反応物としてポリシリケートを用い、反応系内の水の含量(投入量)を特定した実施例1から10は、別途の高温条件下で縮合反応なしに常温で水和反応のみ行ってもシリカエアロゲルブランケットの前駆体として好適な前加水分解されたポリシリケート(HTEOS)を製造することができることが確認できる。
【0100】
比較例1は、テトラエトキシシリケート(TEOS)単量体を水和及び縮合してHTEOSを製造したものであって、製造されたHTEOSのpH、重量平均分子量、シリカ含量、ゲル化反応時間及び貯蔵安定性は、実施例と類似の水準であるが、製造工程において高温条件下で長時間行われる縮合反応が必須的に伴われなければならないので、製造の時間が非常に長く、高温条件のための製造装備が別に必要となり、工程上効率が大きく落ち、実施例と同一の量の反応物で同一のシリカ含量を有するHTEOSを製造するとき、HTEOSの生成量が本発明の実施例に比べて顕著に低いことが確認できる。
【0101】
一方、比較例2は、比較例1と同一条件で本発明の実施例でのように縮合反応を進めないことであり、TEOS単量体を反応物として使用しながら縮合反応を進めない場合、エタノール及び酸性水溶液を添加して常温で水和反応を進めてもHTEOSが合成されず、水和された状態のTEOS単量体が生成されることが確認でき、このとき大部分の官能基が水和された状態である。このように水和された単量体として存在するため、測定試料が非常に不安定となり、信頼できる重量平均分子量値を測定することができなかった。水和されたTEOS単量体は、実施例のHTEOSとは異なりゲル化反応性が非常に高い不安定な状態なので、水和されたTEOS単量体状態で保管するとき、単量体同士のシリカ生成反応が行われ、シリカが不溶性塩として析出されて貯蔵安定性を確保できず、さらに、塩基性触媒を添加してゲル化を誘導する場合にも、一部のシリカ成分が3次元の網状構造を形成できず、不溶性塩状態のシリカとして析出されることが確認できる。また、比較例2のようにシリカ成分が不溶性塩の状態で析出されると、シリカゲルの網状構造が堅固に形成され得ないという問題がある。
【0102】
また、反応系内の水の投入量が本発明の範囲を外れて少量である比較例3は、HTEOSの水和度が目的とする水準に到達できないので、塩基性触媒を添加してゲル化を誘導してもゲル化反応が円滑に行われないことが確認でき、比較例3とは逆に過量である比較例4は、HTEOSの水和度が高すぎるため、塩基性触媒を添加する場合、短時間にゲル化が行われ、保管時にゲル化反応が自発的に行われるので、シリカ前駆体状態への貯蔵安定性を確保できないことが確認できる。また、比較例3及び4で製造されたHTEOSは、全て実施例に比べて低いシリカ含量を含むことが確認できる。
【0103】
また、実施例の中でも、実施例1から5が優れた水準の貯蔵安定性を有しながら、最適のゲル化反応性を確保することができることが確認できる。
【0104】
一方、10分のゲル化時間を有する時の水酸化アンモニウム(塩基性触媒)の使用量を温度別に測定した図1に示されている通り、本発明の実施例1のHTEOSは、従来の方法で製造された比較例1のHTEOSと温度別に使用される水酸化アンモニウム(NH4OH)の量が同等または類似の水準であることが確認でき、これから実施例1と比較例1は、類似の水準のゲル化反応性を有することが確認できる。
【0105】
実験例5:エアロゲルブランケット物性の測定
前記実施例及び比較例で製造した各HTEOSをシリカ前駆体にしてシリカエアロゲルブランケットを製造し、前記エアロゲルブランケットに対する物性を測定した。
【0106】
具体的に、前記実施例及び比較例で製造された各HTEOS、エタノール及び水を1:2.25:1の重量比で混合し、シリカゾル(シリカゾル内にシリカ含量4重量%)155mlを製造した。製造されたシリカゾルに塩基性触媒として水酸化アンモニウム(アンモニア水)を添加した後、ガラス繊維を含浸させてゲル化を行って湿潤ゲルを製造した。このとき、水酸化アンモニウム触媒は、有機溶媒であるエタノールに希釈された水酸化アンモニウム希釈液(水酸化アンモニウム:エタノールの体積比1:12.65)を用いた。その後、5%水酸化アンモニウム希釈液(希釈溶媒はエタノール)に製造されたシリカ湿潤ゲルを含浸させて約50℃で1時間ほど熟成させた。
【0107】
その後、熟成された湿潤ゲルブランケットは、約60℃でシリカ湿潤ゲル体積を基準に90体積%の表面改質剤(Hexamethyldisilazane(HMDS))反応溶液が添加された後、表面改質を1時間行った。このとき、前記表面改質剤の反応溶液は、エタノールに希釈された表面改質剤(HMDS)希釈液であり、前記表面改質剤は、反応溶液全体100体積%を基準に5体積%が含まれたものである。表面改質反応が終了した後、湿潤ゲルブランケットは70L超臨界抽出器(extractor)に60℃、150barの条件でCO2を用いて4時間の超臨界乾燥が行われ、150℃及び常圧の条件で1時間乾燥してシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0108】
1)熱伝導度の測定
前記実施例及び比較例で製造したシリカエアロゲルブランケットをNETZSCH社製のHFM436装備を用いて常温(約23℃)熱伝導度を測定し、その結果を表2に示した。
【0109】
2)炭素の含量(wt%)
炭素の含量は、炭素分析機(Carbon-Sulfur Analyzer CS-2000、Eltra社)を用いて測定し、その結果を表2に示した。
【0110】
【表2】
【0111】
前記表2に示されている通り、本発明に係る実施例で合成されたHTEOSを用いてシリカエアロゲルブランケットを製造したとき、優れた水準の熱伝導度、厚さ及び炭素含量を有することが確認できる。また、実施例は、従来に通常用いられる前駆体であるTEOS単量体化合物を適用した比較例1及び2のシリカエアロゲルブランケットとも同等または類似の水準の熱伝導度及び炭素の含量を有することが確認できる。このことから、本発明の方法によって合成されたHTEOSが高断熱及び疎水性を示すシリカエアロゲルブランケットのシリカ前駆体として使用するのに好適な物質であることが分かる。
【0112】
一方、比較例3は、製造されたHTEOSのゲル化反応性が顕著に落ち、ゲルを形成できないため、シリカエアロゲルブランケットを製造することができず、また、比較例4は、製造されたHTEOSのゲル化反応性が高すぎるため、ブランケット用基材にシリカゾルが含浸される前にゲルを形成し始めて、最終的にシリカエアロゲルブランケットを製造することができなかった。
【0113】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解できるであろう。よって、以上で記述した実施形態は、全ての点で例示的なものであり、限定的ではないと理解すべきである。
図1