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特許7024378情報処理装置、プログラム、情報処理方法及び三次元造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、情報処理方法及び三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20220216BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220216BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20220216BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220216BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y30/00
B33Y50/00
B33Y10/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017243160
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019107835
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】窪田 愛
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001216(JP,A)
【文献】特開2016-088066(JP,A)
【文献】特開2016-193567(JP,A)
【文献】特開2016-107582(JP,A)
【文献】特開2001-277369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
B33Y 30/00
B33Y 50/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形装置が造形に使用するスライスデータを生成する情報処理装置であって、
物体の三次元データから、前記物体を平行な複数の面で切断した断面に対応するスライス画像を複数生成する切断部と、
前記スライス画像を構成する任意の画素が、前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定する判定部と、
前記スライス画像と前記任意の画素に対する判定の結果を示す情報とに基づいて、前記三次元造形装置で前記物体を造形するためのスライスデータを生成する生成部とを備え、
前記判定部は、前記任意の画素から前記三次元データにおいて任意の方向に向かう直線上で交差する前記物体の内部と外部とを区分するフェースの数に基づいて、前記任意の画素が前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定し、
前記判定部は、前記フェースが前記物体の内部から外部へ向かう直線上で交差する裏面であるか、前記フェースが前記物体の外部から内部へ向かう直線上で交差する表面であるかをフェースごとに判別し、前記裏面であるフェースの数が、前記表面であるフェースの数より大である場合、前記任意の画素が前記物体の内部であると判定する情報処理装置。
【請求項2】
三次元造形装置が造形に使用するスライスデータを生成する情報処理装置で実行可能なプログラムであって、
物体の三次元データから、前記物体を平行な複数の面で切断した断面に対応するスライス画像を複数生成する切断手順と、
前記スライス画像を構成する任意の画素が、前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定する判定手順と、
前記スライス画像と前記任意の画素に対する判定の結果を示す情報とに基づいて、前記三次元造形装置で前記物体を造形するためのスライスデータを生成する生成手順とを前記情報処理装置に実行させ、
前記判定手順は、前記任意の画素から前記三次元データにおいて任意の方向に向かう直線上で交差する前記物体の内部と外部とを区分するフェースの数に基づいて、前記任意の画素が前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定する手順を含み、
前記判定手順は、前記フェースが前記物体の内部から外部へ向かう直線上で交差する裏面であるか、前記フェースが前記物体の外部から内部へ向かう直線上で交差する表面であるかをフェースごとに判別し、前記裏面であるフェースの数が、前記表面であるフェースの数より大である場合、前記任意の画素が前記物体の内部であると判定する手順を含むプログラム。
【請求項3】
三次元造形装置が造形に使用するスライスデータを生成する情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
物体の三次元データから、前記物体を平行な複数の面で切断した断面に対応するスライス画像を複数生成する切断手順と、
前記スライス画像を構成する任意の画素が、前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定する判定手順と、
前記スライス画像と前記任意の画素に対する判定の結果を示す情報とに基づいて、前記三次元造形装置で前記物体を造形するためのスライスデータを生成する生成手順とを有し、
前記判定手順は、前記任意の画素から前記三次元データにおいて任意の方向に向かう直線上で交差する前記物体の内部と外部とを区分するフェースの数に基づいて、前記任意の画素が前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定する手順を含み、
前記判定手順は、前記フェースが前記物体の内部から外部へ向かう直線上で交差する裏面であるか、前記フェースが前記物体の外部から内部へ向かう直線上で交差する表面であるかをフェースごとに判別し、前記裏面であるフェースの数が、前記表面であるフェースの数より大である場合、前記任意の画素が前記物体の内部であると判定する手順を含む情報処理方法。
【請求項4】
造形に使用されるスライスデータを生成する三次元造形装置であって、
物体の三次元データから、前記物体を平行な複数の面で切断した断面に対応するスライス画像を複数生成する切断部と、
前記スライス画像を構成する任意の画素が、前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定する判定部と、
前記スライス画像と前記任意の画素に対する判定の結果を示す情報とに基づいて、前記三次元造形装置で前記物体を造形するためのスライスデータを生成する生成部とを有し、
前記判定部は、前記任意の画素から前記三次元データにおいて任意の方向に向かう直線上で交差する前記物体の内部と外部とを区分するフェースの数に基づいて、前記任意の画素が前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定し、
前記判定部は、前記フェースが前記物体の内部から外部へ向かう直線上で交差する裏面であるか、前記フェースが前記物体の外部から内部へ向かう直線上で交差する表面であるかをフェースごとに判別し、前記裏面であるフェースの数が、前記表面であるフェースの数より大である場合、前記任意の画素が前記物体の内部であると判定し、
前記スライスデータに基づいて、前記物体を造形する三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、情報処理方法及び三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料を順次積層することによって立体造形を行い、造形物の三次元モデルを構成する造形物を生成する装置が知られている。これらの装置で採用されている積層造形法は、造形物の三次元データを平行な複数の面でスライスし、薄板を重ね合わせたものを造形に使用する元データとして作成し、それに粉体、樹脂、鋼板、紙等の材料を積層して造形物を生成する。このような積層造形法としては、インクジェット法、粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等が既に知られている。
【0003】
ここで、完全なソリッドモデルとしての条件を満たしていない三次元データからスライスデータを生成する目的で、三次元造形物を切断した断面を表すスライスデータを生成するスライスデータ生成装置が既に知られている(例えば特許文献1)。スライスデータ生成装置は、ポリゴンメッシュを輪切りにした際の輪郭線を示す輪郭ポリラインが得られるように、ポリゴンメッシュの位相情報を変更する変更手段と、上記変更手段によって位相情報を変更されたポリゴンメッシュから輪郭ポリラインを取得し、上記取得した輪郭ポリライン内の領域である内部を正常に塗り潰すことができるように上記輪郭ポリラインを修正する修正手段とを有し、上記修正手段によって修正された輪郭ポリラインに基づきスライスデータを生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の三次元データからスライスデータを作成する方法は、稜線の重複を修正する技術であり、ソリッドモデル同士が組み合わされているか、又は一方がもう一方に完全に内包されているかして、自己干渉を起こしている三次元データの場合、適切なスライスデータを生成できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、三次元データから生成された適切なスライスデータを用いて三次元造形装置で印刷を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで上記課題を解決するため、情報処理装置は、三次元造形装置が造形に使用するスライスデータを生成し、物体の三次元データから、前記物体を平行な複数の面で切断した断面に対応するスライス画像を複数生成する切断部と、前記スライス画像を構成する任意の画素が、前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定する判定部と、前記スライス画像と前記任意の画素に対する判定の結果を示す情報とに基づいて、前記三次元造形装置で前記物体を造形するためのスライスデータを生成する生成部とを備え、前記判定部は、前記任意の画素から前記三次元データにおいて任意の方向に向かう直線上で交差する前記物体の内部と外部とを区分するフェースの数に基づいて、前記任意の画素が前記物体の内部に含まれるか外部に含まれるかを判定し、前記判定部は、前記フェースが前記物体の内部から外部へ向かう直線上で交差する裏面であるか、前記フェースが前記物体の外部から内部へ向かう直線上で交差する表面であるかをフェースごとに判別し、前記裏面であるフェースの数が、前記表面であるフェースの数より大である場合、前記任意の画素が前記物体の内部であると判定する。
【発明の効果】
【0007】
三次元データから生成された適切なスライスデータを用いて三次元造形装置で印刷を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態における3Dプリンタシステムの一例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における情報処理装置10のハードウェア構成例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における情報処理装置10の機能構成例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態におけるスライスデータを作成する処理を説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態における自己干渉している三次元データを説明するための図である。
図6】本発明の実施の形態における物体の内部又は外部を判定する処理を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態における物体の内部又は外部を判定する例(1)を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における物体の内部又は外部を判定する例(2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態における3Dプリンタシステムの一例を示す図である。図1に示されるように、本発明の実施の形態における3Dプリンタシステムは、情報処理装置10及び3Dプリンタ20を有する。
【0011】
情報処理装置10は、PC(Personal Computer)等のコンピュータであり、後述するプログラムによって機能を実現する装置である。他の例として、情報処理装置10は、タブレット型端末、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話、ウェアラブルPC、ゲーム機器、カーナビゲーション端末、電子ホワイトボード又はプロジェクタ等であってもよい。
【0012】
3Dプリンタ20は、例えば、押し出し方式(FDM方式)により、造形物を生成する装置である。3Dプリンタ20は、情報処理装置10から送信されるデータを受信して、当該データに基づいて形成する層を積層することにより、立体物を形成する。情報処理装置10と3Dプリンタ20とは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)又はインターネット等で接続されてもよい。また、情報処理装置10と3Dプリンタ20とは、USBケーブル等を介して接続されてもよい。当該接続は、有線で構築されてもよいし、一部又は全てが無線で構築されてもよい。
【0013】
情報処理装置10は、3Dデータを解析して3Dモデルを構築し、当該3Dモデルを積層厚(積層ピッチ)で等間隔にスライスしてスライスデータを生成する。情報処理装置10は、スライスデータを含む印刷データを3Dプリンタ20に送信する。スライスデータは、USBメモリ又はSDメモリカード等の記憶媒体に記憶された状態で3Dプリンタ20に提供されてもよい。3Dプリンタ20は、記憶媒体I/Fに装着された記憶媒体からスライスデータを含む印刷データを読み込んでもよい。なお、情報処理装置10は、スライサと呼ばれてもよい。
【0014】
なお、情報処理装置10及び3Dプリンタ20が一体に構成されてもよい。すなわち、3Dプリンタ20が、情報処理装置10の機能を有し、3Dデータからスライスデータを生成する等の処理を行ってもよい。
【0015】
3Dプリンタ20は、スライスデータを元に造形物を造形する。3Dプリンタ20の造形方式としては、材料押出堆積法(FDM)、マテリアルジェッティング、バインダージェッティング、粉末焼結積層造形(SLS)、光造形(SLA)等がある。材料押出堆積法(FDM)は主に熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、積み上げて造形物を造形する。樹脂の他、金属などの流動体であれば3Dプリンタ20の材料となりうる。マテリアルジェッティングはインクジェットヘッドから噴射した樹脂を、紫外線で硬化させて積層する方式である。バインダージェッティングは、インクジェットヘッドから液体の結合剤を噴射し、石膏又は樹脂粉末を一層ずつ硬化させる方式である。粉末焼結積層造形(SLS)は粉末状の素材にレーザを照射して焼結させる方式である。光造形(SLA)は液体状の光硬化性樹脂を、紫外線レーザで一層ずつ硬化させて積層していく方式である。3Dプリンタ20の解像度は、例えば、0.01mmから0.05mm程度であってもよい。
【0016】
本実施形態では説明の便宜上、材料押出堆積法(FDM)の3Dプリンタ20を例に説明する。本発明の実施の形態におけるスライスデータの生成方法は、それぞれの造形方式において適用できる。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態における情報処理装置10のハードウェア構成例を示す図である。情報処理装置10は、CPU101、ROM102、RAM103、HD104(Hard Disk)、HDD(Hard Disk Drive)105、ディスプレイ108、ネットワークI/F109、キーボード111、マウス112、メディアドライブ107、光学ドライブ114、USBI/F115、及び、これらを電気的に接続するためのアドレスバス又はデータバス等のバスライン110を備えている。
【0018】
CPU101は、情報処理装置10全体の動作を制御する。ROM102は、CPU101を機能させるプログラム及び当該機能に必要なデータを記憶する。なお、CPU101は、GPU(Graphics Processing Unit)に相当するハードウェア又は機能を有していてもよい。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用される。HD104は、プログラム、OS(Operating System)及び各種データを記憶する。HDD105は、CPU101の制御に従ってHD104に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。ネットワークI/F109は、ネットワークを利用してデータ通信を行うためのインタフェースである。キーボード111は、文字、数値、各種指示等をユーザが入力するための複数のキーを備えた装置である。マウス112は、各種指示の選択、実行、処理対象の選択、カーソルの移動等をユーザが入力するための装置である。メディアドライブ107は、フラッシュメモリ等の記録メディア106に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。光学ドライブ114は着脱可能な記憶媒体の一例としての光学ディスク(CD-ROM、DVD(登録商標)、Blu-Ray(登録商標)等)113に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。ディスプレイ108はカーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像等の各種情報を表示する。ディスプレイ108はプロジェクタなどでもよい。USBI/F115はUSBケーブル又はUSBメモリ等を接続するインタフェースである。
【0019】
図3は、本発明の実施の形態における情報処理装置10の機能構成例を示す図である。図3に示されるように、情報処理装置10は、通信部1001、三次元データ読込部1002、スライス切断部1003、スライス内外判定部1004、スライスデータ生成部1005及び記憶部1006を有する。記憶部1006は、プログラム1007、三次元データ記憶部1008及びスライスデータ記憶部1009を有する。情報処理装置10が有する各機能部は、図2に示されるHD104からRAM103上に展開されたプログラム1007を実行するCPU101によって実現される。
【0020】
通信部1001は、図2に示されるネットワークI/F109又はUSBI/F115によって実現され、3Dプリンタ20に、三次元データから生成されるスライスデータ等の印刷データを送信する。
【0021】
三次元データ読込部1002は、三次元データ記憶部1008に記憶されている三次元データから、造形対象である物体の閉じたフェースから成るソリッドモデルを取得する。ソリッドモデルは、体積を有する3次元構造によるモデリングで生成され、閉じたフェースから構成される。フェースとは、ソリッドモデルの内部と外部とを区分する面である。
【0022】
スライス切断部1003は、三次元データ読込部1002が取得したソリッドモデルにおいて、スライスデータを取得する位置にスライス平面を作成し、平行な複数の面でソリッドモデルを切断する。
【0023】
スライス内外判定部1004は、スライス切断部1003によりソリッドモデルを切断したスライス平面上の必要な画素に対して、物体の内部であるか外部であるかを判定した内外判定結果を生成する。詳細は後述する。
【0024】
スライスデータ生成部1005は、スライス内外判定部1004が判定した画素に対する内外判定結果を含むスライスデータを生成する。
【0025】
記憶部1006は、各機能部を実現するプログラム1007、造形対象である物体の三次元データを保持する三次元データ記憶部1008及び3Dプリンタ20に出力するスライスデータを保持するスライスデータ記憶部1009を有する。記憶部1006は、CPU101の制御により、各機能部に必要なデータを供給する。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態におけるスライスデータを作成する処理を説明するためのフローチャートである。図4において、情報処理装置10が、三次元データからスライスデータを生成する処理を説明する。スライスデータは、3Dプリンタ20において印刷に使用される。
【0027】
ステップS1において、三次元データ読込部1002は、三次元データ記憶部1008に記憶されている三次元データから、造形対象である物体の閉じたフェースから成るソリッドモデルを取得する。
【0028】
続いて、ステップS2において、スライス切断部1003は、三次元データ読込部1002が取得したソリッドモデルにおいて、スライスデータを取得する位置にスライス平面を作成し、ソリッドモデルを切断する。スライス平面は、ソリッドモデルに対していずれの方向から切断した断面であってもよい。
【0029】
続いて、ステップS3において、ステップS2で生成されたスライス平面上の画素において、物体の内部であるか外部であるかをスライス内外判定部1004が判定する。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態における自己干渉している三次元データを説明するための図である。ここで、自己干渉を起こしている三次元データの例を説明する。図5に示される1.aは、自己干渉を起こしていない三次元データである。一方、図5に示される1.bは、自己干渉を起こしている三次元データである。図5に示される1.c及び1.dは、1.a及び1.bをそれぞれ側面から見た図である。図5に示される1.e及び1.fは、1.c及び1.dに示される破線Aによって切断される平面を示しており、1.a及び1.bを上方から見た図である。
【0031】
図5に示される1.bは、下部の直方体と、上部の角柱とがそれぞれ閉じたフェースを有するソリッドモデルであり、直方体に角柱の一部が干渉している状態である。三次元データは、図5に示される1.bのように、自己干渉が発生することがある。
【0032】
図5に示される1.bのように、自己干渉が発生している三次元データにおいても、図5に示される1.aのように自己干渉を起こしていない三次元データと同様なスライスデータを生成できることが求められている。しかしながら、1.bを1.dに示される平面で切断すると、1.fのように立方体の輪郭線の内側に、角柱の輪郭線が出現する。当該角柱の輪郭線により、スライス平面の各画素において、物体の内部であるか外部であるかを正しく判定することができないため、適切なスライスデータを生成できないことがあった。
【0033】
図6は、本発明の実施の形態における物体の内部又は外部を判定する処理を説明するためのフローチャートである。図6において、スライス平面上の任意の画素において、以下に説明する手順で、ソリッドモデルの内部であるか外部であるかを判定する。当該判定手順は、図4に示される「物体の内外を判定」の詳細手順である。図6に示されるフローチャートで、スライス平面上の任意の画素におけるソリッドモデルの内部であるか外部であるかを判定することで、図5に示されるような自己干渉を起こしている三次元データにおいても、適切なスライスデータを生成することができる。スライス平面上の任意の画素において、以下の手順で物体の内外を判定する。
【0034】
ステップS31において、スライス平面上のある画素の下方にある裏向きフェースの数を数える。続いて、ステップS32において、スライス平面上のある画素の下方にある表向きフェースの数を数える。以下、フェースの裏表の数え方について説明する。
【0035】
図7は、本発明の実施の形態における物体の内部又は外部を判定する例(1)を示す図である。図5の1.bに示されるような三次元データに対して、図7に示されるスライス平面SLP1、SLP2及びSLP3の位置で、スライスデータを作成する。各スライス平面上のP1及びP2の位置において、ソリッドモデルの内部であるか外部であるかを判定する。
【0036】
図8は、本発明の実施の形態における物体の内部又は外部を判定する例(2)を示す図である。図8に示されるように、スライス平面SLP1、SLP2及びSLP3において、P1及びP2の位置が、ソリッドモデルの内部であるか外部であるかを説明する。
【0037】
図8に示されるスライス平面SLP1の場合、画素P1の下方には、直方体の底面を構成するフェースが存在する。フェースには、裏表が定義されており、物体の外を向いている面が表であり、物体の内を向いている面が裏である。P1の下方に存在するフェースは、図中に示す矢印の方向が表であるため、裏を向くフェースが1あるとカウントする。また、P1の下方に表を向くフェースは存在しない。すなわち、P1では裏を向くフェースの数が1、表を向くフェースの数が0である。裏を向くフェースの数が、表を向くフェースの数より多いため、スライス平面SPL1におけるP1は、物体の内部であると判定する。スライス平面SPL2におけるP2では裏を向くフェースの数が1、表を向くフェースの数が0であるため、P1同様に物体の内部であると判定する。
【0038】
図8に示されるスライス平面SLP2の場合、画素P1の下方には、直方体の底面及び角柱の底面の2つのフェースが存在する。当該2つのフェースは、いずれも裏を向くフェースである。また、P1の下方に表を向くフェースは存在しない。すなわち、P1では裏を向くフェースの数が2、表を向くフェースの数が0である。裏を向くフェースの数が、表を向くフェースの数より多いため、スライス平面SPL2におけるP1は、物体の内部であると判定する。スライス平面SPL2におけるP2では、裏を向くフェースの数が1、表を向くフェースの数が0である。裏を向くフェースの数が、表を向くフェースの数より多いため、スライス平面SPL2におけるP2は、物体の内部であると判定する。
【0039】
図8に示されるスライス平面SPL3の場合、画素P1の下方には、直方体の底面、角柱の底面及び直方体の天面の3つのフェースが存在する。直方体の底面及び角柱の底面は裏を向くフェースであり、直方体の天面のフェースは表を向くフェースである。すなわち、P1では裏を向くフェースの数が2、表を向くフェースの数が1である。裏を向くフェースの数が、表を向くフェースの数より多いため、スライス平面SPL2におけるP1は、物体の内部であると判定する。したがって、裏を向くフェースの数が、表を向くフェースの数より多いため、スライス平面SPL3におけるP1は、物体の内部であると判定する。スライス平面SPL3におけるP2の下方には、直方体の底面及び直方体の天面が存在する。すなわち、裏を向くフェースの数が1、表を向くフェースの数が1である。裏を向くフェースの数と表を向くフェースの数とが等しいため、スライス平面SPL3におけるP2は、物体の外部であると判定する。
【0040】
なお、図8においては、P1又はP2から鉛直下方向に向かう直線上で交差するフェースの数をカウントしたが、P1又はP2から任意の方向に向かう直線上で交差するフェースの数をカウントしてもよい。例えば、P1又はP2から、上方向に向かう直線上で交差するフェースの数をカウントしてもよいし、任意の水平方向に向かう直線上で交差するフェースの数をカウントしてもよいし、3次元空間における任意の方向に向かう直線上で交差するフェースの数をカウントしてもよい。いずれの方向においても、裏を向くフェースの数と表を向くフェースの数とをカウントして比較することで、図8で説明した手順と同様に物体の内部であるか外部であるかを判定することが可能である。
【0041】
図6に戻る。図8で説明したように、ステップS31及びステップS32で、スライス平面のある画素における裏向きのフェース及び表向きのフェースの数を数える。続いてステップS33において、表裏のフェースの枚数を比較する。裏向きのフェースの数が、表向きのフェースの数より大きい場合(S33の「表<裏」)、ステップS34に進む。表向きのフェースの数が、裏向きのフェースの数と等しいか小さい場合(S33の表≧裏)、ステップS35に進む。なお、ステップS33における判定は、スライス平面上の画素ごとにすべての画素に対して実行されてもよいし、スライス平面上の一部の画素に対して実行されてもよい。スライス平面上の画素は、例えば、3Dプリンタ20の解像度に対応する大きさで構成されてもよい。
【0042】
ステップS34において、スライス平面のある画素は、ソリッドモデルの内部にあると判定する。ステップS35において、スライス平面のある画素は、ソリッドモデルの外部にあると判定する。
【0043】
必要に応じて、スライス内外判定部1004は、スライス平面上の画素、又はスライス平面を更新して、図6に示されるフローチャートを繰り返し実行してもよい。なお、計算量削減のため、スライス平面上の画素すべてが、図6に示されるフローチャートで判定されなくてもよい。スライス平面上の画素の一部を判定した結果が周囲の画素に適用されてもよい。
【0044】
図4に戻る。ステップS3における物体の内外の判定に基づいて、スライスデータ生成部1005は、3Dプリンタ20で印刷するためのスライスデータをスライス平面における画素が物体の内部にあるか外部にあるかが判別できる情報を含むように生成し(S4)、スライスデータ記憶部1009に記憶させる。
【0045】
情報処理装置10は、通信部1001を介して、生成したスライスデータを3Dプリンタ20に送信する。3Dプリンタ20は、スライスデータの各画素が、物体の内部にあるか外部にあるかを知ることができるため、適切に三次元造形物の印刷を実行することができる。
【0046】
上述のように、本発明の実施の形態によれば、情報処理装置10は、三次元データからスライスデータを生成するとき、スライス平面の画素が物体の内部にあるか外部にあるかを判定した情報を付加することができる。そのため、3Dプリンタ20において、当該スライスデータを用いて、三次元造形物を正しく印刷することができる。
【0047】
すなわち、三次元データから生成された適切なスライスデータを用いて三次元造形装置で印刷を実行することができる。
【0048】
なお、本発明の実施の形態において、3Dプリンタ20は、三次元造形装置の一例である。スライス切断部1003は、切断部の一例である。スライス内外判定部1004は、判定部の一例である。スライスデータ生成部1005は、生成部の一例である。スライス平面は、スライス画像の一例である。
【0049】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 情報処理装置
20 3Dプリンタ
1001 通信部
1002 三次元データ読込部
1003 スライス切断部
1004 スライス内外判定部
1005 スライスデータ生成部
1006 記憶部
1007 プログラム
1008 三次元データ記憶部
1009 スライスデータ記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【文献】特開2016-088066号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8