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特許7024495画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/407 20060101AFI20220216BHJP
   H04N 1/48 20060101ALI20220216BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H04N1/407
H04N1/48
G06T5/00 730
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018032345
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019149639
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和輝
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204786(JP,A)
【文献】特開2017-098928(JP,A)
【文献】特開2017-064979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00- 1/64
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像、および、階調処理部で階調補正された前記入力画像の印刷画像を画像読取部で読み取ることで得られた読み取り画像の比較結果に基づいて、前記入力画像の階調補正を行うための補正値を算出する算出部と、
少なくとも前記補正値の算出に用いられた情報の情報量が前記補正値の算出に必要な情報量であるか否か、および、前記補正値の算出誤差が発生する可能性に基づいて、前記補正値が前記入力画像の階調補正に適した値であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に対応する値に前記補正値を補正して、前記階調処理部に供給する補正部と
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記入力画像に基づいて、前記補正値の算出に適した領域を検出する領域検出部を、さらに備え、
前記判定部は、前記領域検出部により検出された前記領域の数を、前記補正値の算出に用いられた情報量として用いて、前記補正値の前記判定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、基本色の所定の各階調に対応する前記領域の数を用いて、前記補正値の前記判定を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記入力画像の前記印刷画像上における前記領域の分布を用いて、前記補正値の前記判定を行うこと
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記算出部は、所定の複数ページを1セットとした各入力画像、及び、前記階調処理部で階調補正された前記1セットの前記各入力画像の印刷画像をそれぞれ前記画像読取部で読み取ることで得られた各読み取り画像の比較結果に基づいて、前記1セット分の前記入力画像の階調補正を行うための前記補正値を算出し、
前記判定部は、前記1セット分の前記入力画像の階調補正を行うための前記補正値に対して前記判定を行うこと
を特徴とする請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記算出部は、所定の複数ページを1セットとした各入力画像、及び、前記階調処理部で階調補正された前記1セットの前記各入力画像の印刷画像をそれぞれ前記画像読取部で読み取ることで得られた各読み取り画像の比較結果に基づいて、前記1セット分の前記入力画像の階調補正を行うための前記補正値を算出し、
前記判定部は、前記領域検出部により検出された前記領域の数が所定数得られた時点のページ数を前記1セットとして、前記1セット分の前記入力画像の階調補正を行うための前記補正値に対して前記判定を行うこと
を特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記補正部は、前記判定部の判定結果毎に、所定の値の第1の補正閾値と、前記第1の補正閾値よりも大きな値となる第2の補正閾値とを有し、前記補正値が、前記判定部の判定結果に対応する前記第1の補正閾値以上で前記第2の補正閾値未満であった場合に、前記補正値に所定の係数を乗算処理して値を補正すること
を特徴とする請求項1から請求項6のうち、いずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正部は、前記補正値が、前記判定部の判定結果に対応する前記第1の補正閾値未満であった場合は、前記補正値の値を補正せずに前記階調処理部に供給すること
を特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記補正部は、前記補正値が、前記判定部の判定結果に対応する前記第2の補正閾値以上であった場合、前記補正値の値を零に補正すると共に、所定の通知制御を行うこと
を特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
入力画像の階調補正を行う階調処理部と、
前記入力画像の印刷を行う印刷部と、
前記印刷部で印刷された前記入力画像の印刷画像の読み取りを行う画像読取部と、
請求項1~請求項9のうち、いずれか一項に記載の画像処理装置と
を有する画像処理システム。
【請求項11】
コンピュータを、
入力画像、および、階調処理部で階調補正された前記入力画像の印刷画像を画像読取部で読み取ることで得られた読み取り画像の比較結果に基づいて、前記入力画像の階調補正を行うための補正値を算出する算出部と、
少なくとも前記補正値の算出に用いられた情報の情報量が前記補正値の算出に必要な情報量であるか否か、および、前記補正値の算出誤差が発生する可能性に基づいて、前記補正値が前記入力画像の階調補正に適した値であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に対応する値に前記補正値を補正して、前記階調処理部に供給する補正部として機能させること
を特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロダクションプリンティングなどの電子写真方式の印刷システムで大量印刷を行う場合、現像装置の現像剤に含まれるトナーの帯電量が、印刷過程で大きく変化することで現像濃度ムラが発生し、ページ間での色の見え方が変化する現象を生ずることがある。この現象に対し、ユーザ画像の印刷を行う毎に、印刷したユーザ画像をスキャンして、基準となる色の画像と比較し、両者の差分(変動分)に基づいて後の印刷の階調補正を行う技術が知られている。これにより、後の印刷物の色の変動をリアルタイムに抑制することができる。
【0003】
なお、特開2017-64979号公報(特許文献1)には、印刷用紙の状態に応じた適切な検出及び補正の少なくとも一方を行い、より良い印刷物を得ることを目的としたインクジェット印刷装置が開示されている。また、特開2012-205124号公報(特許文献2)には、種類が未知の媒体であっても適切な階調値で印刷可能することを目的とした印刷方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、印刷したユーザ画像に基づいてリアルタイムに階調補正を従来の印刷手法においては、情報量の不足により階調補正精度が低下する問題があった。具体的には、印刷を行うユーザ画像の傾向は様々であり、中には画像の構成の関係上、情報量が不十分であり、十分な階調補正精度を得ること困難な画像も存在する。情報量が不十分であると、階調補正量の算出誤差が大きくなり、必要以上に強い補正がかかり、目標とする色との差が大きくなる不都合を生ずる(過補正)。この過補正が発生すると、階調補正の補正精度が低下し、印刷に対する信頼性を維持することが困難となる。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、階調補正精度を向上させることができる画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、入力画像、および、階調処理部で階調補正された入力画像の印刷画像を画像読取部で読み取ることで得られた読み取り画像の比較結果に基づいて、入力画像の階調補正を行うための補正値を算出する算出部と、少なくとも補正値の算出に用いられた情報の情報量が前記補正値の算出に必要な情報量であるか否か、および、前記補正値の算出誤差が発生する可能性に基づいて、補正値が入力画像の階調補正に適した値であるか否かを判定する判定部と、判定部の判定結果に対応する値に補正値を補正して、階調処理部に供給する補正部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、階調補正精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態の画像処理システムのシステム構成図である。
図2図2は、実施の形態の画像処理システムに設けられている色調制御部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態の画像処理システムに設けられているレーザプリンタ装置の鉛直断面図である。
図4図4は、実施の形態の画像処理システムの階調補正処理の動作の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、面内偏差を説明するための図である。
図6図6は、実施の形態の画像処理システムにおける、階調補正処理前後の濃度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一例として、画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理プログラムを適用した実施の形態の画像処理システムの説明をする。
【0010】
[実施の形態のシステム構成]
図1は、実施の形態の画像処理システムの要部のシステム構成図である。この図1に示すように、実施の形態の画像処理システムは、ユーザのパーソナルコンピュータ装置(ユーザPC)1、サーバ装置7および画像形成装置8を、例えばLAN(Local Area Network)又はインターネット等の所定のネットワーク2を介して相互に接続して形成されている。ユーザPC1は、ネットワーク2に対して少なくとも1台接続されており、画像形成装置8に対して画像データおよび印刷要求を送信する。サーバ装置7は、画像処理部3で行われる色変換に必要な情報が記憶(蓄積)されている。
【0011】
画像形成装置8は、ネットワーク2を介して入力される原稿データ30を展開して処理する画像処理部3、印刷を実行する電子写真方式のプリンタエンジン4、プリンタエンジン4の制御を行うエンジン制御部9を有している。また、画像形成装置8は、画像処理部3で展開された画素配列をプリンタエンジン4で出力可能な階調数に変換する階調処理部31、および、プリンタエンジン4からの出力画像6を出力前に画像検査部5で検査する画像検査部5(画像読取部の一例)を有している。また、画像形成装置8は、画像検査部5で検出された画像から出力画像の色調変動(濃度変動又は色相変動など)を検出し、階調処理部31に対して補正パラメータを供給する色調制御部28を有している。
【0012】
エンジン制御部9は、プリンタエンジン4と同一の筐体に設けられている。エンジン制御部9、プリンタエンジン4、画像検査部5、及び、色調制御部28は、本体ユニット群32を構成している。なお、図1の例では、階調処理部31を、本体ユニット群32の外部に設けるかたちで図示しているが、階調処理部31は、本体ユニット群32の内部に設けてもよい。
【0013】
画像処理部3は、ソフトウェアおよび拡張ボードで構成されている。画像処理部3は、本体ユニット群32とは別体となっており、本体ユニット群32に対して交換可能となっている。
【0014】
画像検査部5は、画像計測部となるRGBラインセンサ(RGB:赤緑青)、および、紙送り機構を備えたスキャナ装置を有している。この画像検査部5により、画像を面で測色することを可能としている。
【0015】
通常、ユーザPC1から印刷要求された際に送信される原稿データ30は、例えば図2に示すようにRGBあるいはCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、キープレート)でカラー指定されたビットマップデータ又はテキストデータなどの、図形の描画命令を含んだ複雑なデータフォーマットのデータであり、ネッワーク2を介して画像処理部3に送信される。
【0016】
画像処理部3は、デジタルフロントエンド(DFE)とも呼ばれる。画像処理部3は、受信した原稿データ30を展開し、プリンタエンジン4の基本色で構成された画素配列のデータ(ビットマップデータ、又は、ビットマップデータと等価な圧縮形式のデータ)として階調処理部31に供給する。階調処理部31は、例えばビットマップデータの各画素データを、プリンタエンジン4で表現可能な階調数の画素データに変換処理する。プリンタエンジン4は、このような変換処理が施されたビットマップデータに基づいて、用紙上に出力画像6を形成する。
【0017】
画像検査部5は、プリンタエンジン4の出力画像をスキャン処理し、色調制御部28に供給する。色調制御部28は、原画像の色(原稿データ30の色)と、画像検査部5でスキャン処理された画像の色との差を最小とする階調補正データを階調処理部31に設定する。これにより、階調処理部31において、原稿データ30の階調補正処理を行い、出力画像6の再現色を安定化させることができる。
【0018】
(色調制御部の構成)
図2は、色調制御部28の各機能を示すブロック図である。この図2に示すように、色調制御部28は、差分検出部40、および、補正TRC算出部41(TRC:Tone Reproduction Curve)を有している。差分検出部40は、RGB変換部70、位置合わせ部71,72、および、減算器73を有している。
【0019】
補正TRC算出部41は、領域抽出部81、主走査偏差補正処理部82、局所θ算出部83、記憶部(バッファメモリ)84、副走査偏差補正処理部85(算出部の一例)、妥当性判定処理部86、転送部87、マップ生成部88、測色リスト生成部89、および、タイマ90を有している。妥当性判定処理部86は、妥当性判定部91、および、θ補正部92を有している。
【0020】
このような差分検出部40、および、補正TRC算出部41は、一部又は全部をハードウェアで実現してもよいし、一部又は全部をソフトウェアで実現してもよい。差分検出部40および補正TRC算出部41をソフトウェアで実現するための画像処理プログラムは、画像形成装置8のROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶部に記憶され、画像形成装置8のCPU(Central Processing Unit)等の制御部により実行されることで、上述の各機能が実現される。
【0021】
図2において、画像処理部3は、上述のように様々な入力形式で記述された原稿データ30を、ページ毎にCMYKの各値がそれぞれ8bitの面順次の画素配列であるCMYKマスタ画像(入力画像の一例)として差分検出部40、補正TRC算出部41および階調処理部31に供給する。
【0022】
階調処理部31は、例えば面積階調法によりCMYKの色面毎に8bitとされた画素配列を、プリンタエンジン4で描画可能なbit数(例えば2bit)の階調の画素配列に変換して出力する。画像検査部5は、実際にはプリンタエンジン4に直接接続(直結)されており、プリンタエンジン4の印刷処理により形成された出力画像6をインラインでスキャンする。
【0023】
色調制御部28の差分検出部40は、画像検査部5がプリンタエンジン4からの出力画像6をスキャンすることで形成されたスキャン画像(RGB)と、画像処理部3からのCMYKマスタ画像をRGB画像に変換したRGBマスタ画像に基づいて、印刷再現色の変化(差分)を検出する。そして、色調制御部28の補正TRC算出部41は、検出した両者の差分を小さくする階調補正データ(TRC)を階調処理部31に設定する。これにより、出力画像6の再現色を安定化させることができる。
【0024】
具体的には、補正TRC算出部41は、CMYKマスタ画像、および、RGBマスタ画像とスキャン画像との差分から得られたデータに基づき、リアルタイムで階調補正処理を行う。差分検出部40から得られたRGBマスタ画像とスキャン画像との差分であるRGB差分データ(ΔRGB)と、画像処理部3から得られたCMYKマスタ画像から色の変動モデルに対する係数(以下、θ値)を算出して階調補正データ(TRC)を更新し、階調処理部31に供給する。
【0025】
(差分検出部の動作)
すなわち、差分検出部40の各部の動作は、以下のとおりである。RGB変換部70は、原稿データ30のCMYK値、および、印刷した原稿データ30から得られるRGB値が対応付けされたデータテーブルを有している。このデータテーブルの値は、キャリブレーション毎に更新される。RGB変換部70は、データテーブルを参照することで、原稿データ30のCMYK値(CMYKマスタ画像)をRGB値に変換して、RGBマスタ画像を形成する。
【0026】
位置合せ部71および位置合せ部72は、画像検査部5がインラインで印刷物6のスキャンを行うことで形成されたスキャン画像と、上述のRGBマスタ画像との間の位置のズレを補正する(位置合せ処理)。減算器73は、画像検査部5でスキャンされたスキャン画像と、RGBマスタ画像との差分を検出し、差分データ(ΔRGB)を補正TRC算出部41の領域抽出部81に供給する。
【0027】
(補正TRC算出部の動作)
補正TRC算出部41の各部の動作は、以下のとおりである。マップ生成部88は、CMYKマスタ画像から、CMYKの色毎に測色領域として使用可能な小領域を抽出し、抽出した測色領域を全てまとめたマップを形成する。一例ではあるが、マップ生成部88は、以下の条件に基づいて小領域を抽出する。
【0028】
1.小領域のサイズは20×20画素(変更可能)、
2.小領域を拡げた拡張領域内の各色の濃度変化が小さい、
3.拡張領域のサイズは50×50画素(変更可能)、
4.小領域が紙の端から既定値以上離れている、
5.小領域内の各色の平均濃度が既定の値域内である、
6.小領域内のトナー総量が一定値以下である、
7.CMY版の場合、混色されているKの濃度が既定の閾値未満である、
8.K版の場合は混色されているCMYの濃度に対し一定の割合以上の濃度になっている。このような条件に基づいて形成されたマップは、測色リスト生成に用いられる。
【0029】
測色リスト生成部89は、上述のマップに基づいて、各セグメントから規定の数の測色領域をランダムに選択して「測色リスト」を形成する。セグメントは、画像を副走査方向に均等に分割した各領域である。画像の分割数は、例えば1ページあたり16セグメントとなっている(変更可能)。上述の「θ値」は、測色リストに登録された測色領域の情報に基づいて算出される。
【0030】
次に、領域抽出部81は、領域検出部の一例であり、測色リストに登録されている測色領域に対応するRGBの差分データを抽出し、座標情報およびCMYK階調情報と共に、主走査偏差補正処理部82に供給する。
【0031】
ここで、現像剤、トナーの偏り又は帯電ムラなどにより主走査方向の濃度バラツキが生ずることで、主走査方向に沿って印刷した色に変動偏り(主走査偏差)が生ずることがある。主走査偏差補正処理部82は、抽出された測色領域に対して、座標情報およびCMYK階調情報に基づいて主走査偏差量を算出する。そして、主走査偏差補正処理部82は、算出した主走査偏差量を、測色領域におけるRGB差分から減算処理することで、主走査偏差の影響を除去したRGBの差分データを形成し、これを後段の局所θ算出処理部83に供給する。
【0032】
局所θ算出部83は、測色リストに登録された測色領域の座標情報、CMYK情報、および、主走査偏差補正処理済みのRGB差分情報に基づいて、上述のセグメント毎に局所θを算出する。算出された各セグメントの局所θは、バッファメモリ等の記憶部84に記憶される。なお、十分な数の測色領域を得ることが困難なセグメントは無効のセグメントとなり、この無効のセグメントから算出された局所θは使用されない。
【0033】
次に、感光体ドラム(図3の符号50k等)は、通常、厳密な管理によって位置決めされているが、部品の管理精度内のばらつきにより、ドラム回転軸とドラムの中心軸に微小な偏心を生じる。このような偏心が生ずると、感光体ドラムの位相に対応した周期変動(副走査偏差)が生ずる。副走査偏差は、周期的に現れる。このため、ドラム周期が半位相ずれた位置の色同士は、副走査偏差の影響を相殺して軽減することが可能となる。
【0034】
副走査偏差補正処理部85は、局所θ算出部83で算出された局所θのうち、ドラム周期が半位相ずれた領域から算出した局所θのペアを検出する。この際、副走査偏差補正処理部85は、既定の数以上のペアが検出された場合は、それらの局所θのペアを平均化して1つの局所θとして扱い、さらにペアから算出されたθを平均化して最終的なθ値(平準化θ)とする。また、副走査偏差補正処理部85は、ペア数が既定の数に満たない場合、全ての局所θを平均化して最終的なθ値(平準化θ)とする。この平準化θは、1セットを形成する複数ページの入力画像に対して共通して用いる階調補正用の係数となっている。また、この平準化θは、補正値の一例である。
【0035】
妥当性判定処理部86は、タイマ90からのタイマ情報、副走査偏差補正処理部85で検出されたドラム位相半周期ペア数、測色リスト生成部89からの測色領域情報に基づいて、階調補正を行うための平準化θの値の妥当性を判定し、判定結果に基づいて平準化θの値を補正する。合成部93は、補正されたθ値に基づいて階調補正データ(TRC)を生成(更新)し転送部87に供給する。転送部87は、生成された階調補正データ(TRC)を階調処理部31に供給する。これにより、階調補正処理を施したCMYK画像で印刷を実行でき、初期の印刷特性を維持して、安定した色再現性の印刷物を得ることができる。
【0036】
(全体的な印刷処理の流れ)
次に、図4のフローチャートを用いて、全体的な印刷処理の流れを説明する。なお、以下に説明する領域抽出部81、主走査偏差補正処理部82、局所θ算出部83、副走査偏差補正処理部85(平準化θ算出を含む)、妥当性判定処理部86、マップ生成部88、測色リスト生成部89、および、合成部93の各処理は、CMYKの色版毎に独立して実行される。
【0037】
まず、ステップS1では、差分検出部40及び補正TRC算出部41が、印刷画像の画像データ(CMYK画像データ)を、画像処理部から取得する。ステップS2では、差分検出部40のRGB変換部70が、CMYK画像データをRGBマスターデータに変換する。
【0038】
ステップS3では、差分検出部40の減算器73が、画像検査部5(スキャナ)によりスキャンされた印刷画像のRGB画像データと、RGBマスターデータとの差分(ΔRGB)を算出し、補正TRC算出部41に供給する。
【0039】
ステップS4では、補正TRC算出部41のマップ生成部88が、CMYKマスタ画像から、上述の1~8の条件に基づいてCMYKの色毎に測色領域として使用可能な小領域を抽出し、抽出した測色領域を全てまとめたマップを形成する。また、ステップS4では、補正TRC算出部41の測色リスト生成部89が、上述のマップに基づいて、各セグメントから規定の数の測色領域をランダムに選択して「測色リスト」を形成する。
【0040】
ステップS5では、補正TRC算出部41の領域抽出部81が、測色リストに登録されている測色領域に対応するRGBの差分データを抽出し、座標情報およびCMYK階調情報と共に、主走査偏差補正処理部82に供給する。主走査偏差補正処理部82は、抽出された測色領域に対して、座標情報およびCMYK階調情報に基づいて主走査偏差量を算出する。また、主走査偏差補正処理部82は、算出した主走査偏差量を、測色領域におけるRGB差分から減算処理することで、主走査偏差の影響を除去したRGBの差分データを形成する。
【0041】
また、ステップS5では、局所θ算出処理部83が、測色リストに登録された測色領域の座標情報、CMYK情報、および、主走査偏差補正処理済みのRGB差分情報に基づいて、上述のセグメント毎に局所θを算出し、記憶部84に記憶する。
【0042】
ステップS6では、色調制御部28が、所定枚数分の画像である1セット分の全ての画像に対して、ステップS1~ステップS5の処理が完了したか否かを判別する。1セット分の全ての画像に対するステップS1~ステップS5の処理が完了していない場合は、ステップS1に処理が戻され、ステップS1~ステップS5の処理が繰り返し実行される。これに対して、1セット分の全ての画像に対するステップS1~ステップS5の処理が完了した場合は、ステップS7に処理が進む。1セット分の全ての画像に対するステップS1~ステップS5の処理が完了した時点で、記憶部84には、1セット分の全ての画像のセグメント毎の局所θがそれぞれ記憶される。
【0043】
次に、1セット分の全ての画像に対するステップS1~ステップS5の処理が完了することでステップS7に処理が進むと、補正TRC算出部41の副走査偏差補正処理部85が、局所θ算出部83で算出された局所θのうち、感光体ドラム(例えば、感光体ドラム50k)のドラム周期が半位相ずれた領域から算出した局所θのペアを検出して平均化し、最終的なθ値(平準化θ)を算出する。
【0044】
(平準化θの算出手法の詳細)
このような平準化θの算出手法を、詳細に説明する。まず、図5(a)は、用紙に対するインクヘッドの移動方向である主操作方向、および、用紙の搬送方向である副走査方向の、いずれの方向にも面内偏差が発生しておらず、用紙に一様に色が印刷された理想の状態の画像を示している。
【0045】
しかし、実際は、画像形成装置8の部品精度のばらつきなどの要因で、多くの場合、図5(b)に示すように主走査方向、および、副走査方向にそれぞれ周期的な面内偏差が発生する。このような面内偏差はθ値を算出する際のノイズとなり、誤差の要因となる。
【0046】
例えば、図5(c)に示すオブジェクト100が含まれるCMYKマスタ画像を、図5(b)に示す面内偏差が生じている画像に重ねて印刷する。この場合、図5(c)に示すように、オブジェクト100が含まれるCMYKマスタ画像は、全体的には色の変動は生じていないのであるが、図5(b)に示す面内偏差が生じている画像と重ねて印刷すると、図5(d)に示すように色が印刷されるオブジェクト100の領域には、図5(b)に示す面内偏差の影響が強く現れる。このため、本来であればθ値は「0」となるのであるが、面内偏差の分だけθ値に誤差の影響が出る。また、次以降のページに同じ画像が来るとは限らず、ページにより面内偏差の現れ方も変わるため、面内偏差の誤差の影響を受けた状態で階調補正を行っても、正しい階調補正が困難となる。
【0047】
このようなことから、実施の形態の画像形成システムは、色が濃くなる偏差が現れる領域と色が薄くなる偏差が現れる領域を均等に抽出し、両者の影響を相殺することで、面内偏差の影響を軽減している。
【0048】
具体的に説明すると、主走査偏差の場合、図5(e)に示すように、副走査方向の影響が小さい。このため、主走査方向の座標で現れる偏差量を事前に算出しておき、各測色領域のRGB差分情報から取り除くことで、ある程度偏差の影響を解消できる。しかし、さらに高い階調補正精度を得るには、主走査方向から満遍なく測色領域が抽出されることが望ましい。
【0049】
副走査偏差の場合、図5(f)に示すように主走査方向の影響は小さいが、紙搬送における紙間の存在により周期性は存在するが、ページ毎に偏差の位相が変化するため、事前に偏差量を算出することが困難である。
【0050】
このため、実施の形態の画像形成システムは、ドラム周期の半位相分ずれた位置にあるセグメント同士をペアとみなし、それらのセグメントで算出された局所θの平均を使用することで偏差の影響を相殺する。なお、ペアとして選出されなかったセグメントの偏差は残ってしまうため、選出されなかったセグメントの局所θは平準化θ算出に使用しない。また、画像の配置の関係でセグメントのペアが検出困難である場合、副走査偏差補正処理部85は、ペア同士の局所θの平均は算出せずに、有効なセグメントの局所θの全平均を算出する。これにより、全体の副走査偏差の影響を軽減することができる。
【0051】
一例ではあるが、副走査偏差補正処理部85は、図5(f)に示すセグメントAおよびセグメントBのように、偏差が逆位相に現れているセグメント同士をペアとして検出する。また、副走査偏差補正処理部85は、偏差が弱いセグメントCおよびセグメントDも、逆位相に位置しているため、ペアとして検出する。
【0052】
なお、図5(f)の例では、8つのセグメントを図示しているが、1ページのセグメント数は自由であり、例えば上述のように1ページあたり16個のセグメントに分割してもよい。また、セット内であれば他のページのセグメントをペアとして検出してもよい。
【0053】
(妥当性の判定動作)
次に、図4のフローチャートのステップS8では、妥当性判定処理部86の妥当性判定部91(判定部の一例)が、副走査偏差補正処理部85で算出された平準化θの値が、階調補正処理に用いるのに妥当な値であるか否かの判定である妥当性判定処理を行う。また、ステップS8では、妥当性判定処理部86のθ補正部92(補正部の一例)が、妥当性判定部91の判定結果に基づいて、平準化θの値の補正処理を行う。
【0054】
具体的には、妥当性の判定を行う場合、θ値の算出に必要な情報量(θ値の算出に用いられた情報量)、および、θ値の算出誤差が発生する可能性を考慮する必要がある。なお、この例では、θ値の算出に必要な情報量(θ値の算出に用いられた情報量)、および、θ値の算出誤差が発生する可能性の2つのファクタから妥当性の判定を行うこととするが、いずれか一方のファクタに基づいて、妥当性の判定を行ってもよい。この場合、妥当性の判定演算の演算量を削減でき、高速に判定結果を得ることができる。
【0055】
θ値の算出に必要な情報量としては、測色領域数、セグメントのペア数、階調色の網羅性が関連する。測色領域数は、多ければ利用できる情報量が増えるため妥当性が向上する。セグメントのペア数も同様であり、多ければ妥当性が向上する。以下に示す表1に示す「25組」という数値は、ペア数が十分に存在するか否かを判別するための閾値となっており、妥当性判定部91は、ペア数が25組以上であればペア毎に局所θを平均化して平準化θを算出し、25組未満であればペア毎の平均は算出せずにセグメント全部を平均化して平準化θを算出する。
【0056】
階調色の網羅性に関しては、色版における測色領域の階調が所定の範囲内であった場合、所定の範囲外の階調では情報が足りず、その範囲の色の変動は正しく算出できなくなる可能性がある。このため、広い範囲の階調の情報を得ることで、上述の妥当性の判断精度を向上させることが可能となる。
【0057】
θ値の算出誤差が発生する可能性は、面内偏差、および、処理時間などが発生要因となる。上述のように、面内偏差が含まれるとθ値算出の精度が落ちる。このため、広い範囲の測色領域から十分な情報量の情報を得て、面内偏差の影響を抑えることが好ましい。妥当性判定部91は、主走査方向においては、1ページを3分割し、分割した各範囲内に存在する測色領域の個数の割合を検出することにより、測色点が広く分布している否かを判断する。また、副走査偏差に関しては、広く分布していれば、この分布に応じてセグメントのペア数も増えることが予想される。このため、妥当性判定部91は、副走査偏差に関しては、セグメントのペア数に基づいて判断を行う。
【0058】
処理時間に関しては、θ値算出と並行してユーザ画像の印刷が行われるため、時間の経過と共にプリンタエンジン4で印刷される色が変化する可能性がある。このため、算出されたθ値が、時間と共に変動する実際の色の変化に追従していない可能性が高くなる。このため、妥当性判定部91は、処理時間に関しては、ある一定時間内に印刷処理が完了しなければ妥当性が失われると判断する。
【0059】
以下、一例として示す表1~表5を用いて、このような妥当性の判定処理に用いられる各条件について説明する。この表1~表5は、画像のセット毎に算出した平準化θの妥当性を判定する具体的な条件である。各表内の数値は色版毎、セット毎に集計した数値である。また、この数値は一例であり、設計等に応じて任意に変更してもよい。
【0060】
まず、妥当性判定部91は、以下の表1に示す条件に合致する場合、算出された平準化θの値は、「妥当性が高い」と判定する。
【0061】
【表1】
【0062】
この表1に示すように、測色領域をその色版でハイライト、ミドル、シャドウの3つの階調領域に分類したとき、それぞれの階調領域に測色領域が187以上存在し(基本色の階調の分布)、主走査方向に画像を3分割したときに、左側.中央.右側の3つの領域に、それぞれ測色領域が全数の1/6以上存在しており、副走査偏差の逆位相に位置する有効なセグメントのペアが25組以上成立しており、設定された時間内に印刷処理が完了している、との条件を満たす場合、十分な情報量の情報を取得できており、誤差が軽減されているため、妥当性判定部91は、算出された平準化θの値は、「妥当性が高い」と判定する。
【0063】
この表1に示す条件の場合、主走査偏差および副走査偏差の両方の誤差を十分に抑えることが可能と考えられる。また、階調毎に見ても広い範囲で分布していると考えられる。表1において、測色領域数の条件を空欄としているが、これは、副走査のセグメントのペアの処理により、使用されない測色領域が出てしまうために、この部分での指定が意味を持たないこと、および、代わりに階調色で具体的な個数を指定していることなどが理由である。
【0064】
次に、妥当性判定部91は、以下の表2に示す条件に合致する場合、算出された平準化θの値は、「妥当性が高い」と判定する。
【0065】
【表2】
【0066】
この表2に示すように、測色領域をその色版でハイライト、ミドル、シャドウの3つの階調領域に分類した際に、それぞれの階調領域に測色領域が全数の1/6以上存在しており、主走査方向に画像を3分割したときに、左側.中央.右側の3つの領域に、測色領域が全数の1/6以上存在しており、測色領域数が全部で560以上存在し、設定された時間内に印刷処理が完了している、との条件を満たす場合、妥当性判定部91は、算出された平準化θの値は、「妥当性が高い」と判定する。
【0067】
この表2の条件は、副走査のセグメントのペア数が十分に取得できなかったが、測色領域が十分に存在しているため、副走査偏差の影響をカバーできていると考えられる条件である。この表2の条件においては、測色領域数の判定に具体的な数値を設定しているため、階調色は測色領域数の割合で判定している。
【0068】
次に、妥当性判定部91は、以下の表3に示す条件に合致する場合、算出された平準化θの値は、「妥当性が中程度」と判定する。
【0069】
【表3】
【0070】
この表3に示すように、測色領域をその色版でハイライト、ミドル、シャドウの3つの階調領域に分類したときに、測色領域が187以上存在する階調領域が1つ以上存在し、主走査方向に画像を3分割したときに、左側,中央,右側の3領域に、それぞれ測色領域が全数の1/8以上存在しており、測色領域数が全部で360以上存在し、設定された時間内に印刷処理が完了しており、かつ、上述の表1及び表2の各条件を満たさない場合に、妥当性判定部91は、算出された平準化θの値は、「妥当性が中程度」と判定する。
【0071】
この表3の条件は、主走査、副走査、階調色のいずれかが、平準化θに発生している誤差をカバーしきれない可能性があることを示す条件である。
【0072】
次に、妥当性判定部91は、以下の表4に示す条件に合致する場合、算出された平準化θの値は、「妥当性が低い」と判定する。
【0073】
【表4】
【0074】
この表4に示すように、測色領域数が全部で1つ以上存在し、設定された時間内に印刷処理が完了しており、かつ、上述の表1~表3の条件を満たさない場合に、妥当性判定部91は、算出された平準化θの値は、「妥当性が低い」と判定する。すなわち、この表4の条件は、測色領域が最低限の数だけ存在していることを示す条件である。この条件では誤差はかなり大きくなる可能性が高いため、妥当性判定部91は、算出された平準化θの値は、「妥当性が低い」と判定する。
【0075】
次に、妥当性判定部91は、以下の表5に示す条件に合致する場合、算出された平準化θは「無効」と判定する。
【0076】
【表5】
【0077】
この表5は、上述の表1~表4の条件を、いずれも満たさず、測色領域が存在しないことを示す条件である。この場合、色の変動の判断材料がないため、算出された平準化θは破棄される。
【0078】
1ページ毎に得られる測色領域のみでは、精度よくθ値を算出するための情報量が不十分となることが多いため、実施の形態の画像形成システムの場合、数ページをまとめて1セットとし、1セット毎にθ値を算出して階調処理部31にフィードバックしている。これにより、測色領域数、および、副走査のセグメントのペア数の確保を容易化することができる。そして、上述の画像形成システムでは、上述の妥当性判定処理も、1セット毎に行うことで、実施の形態の画像形成システムのθ値算出の仕組みに即した判定を行うことができる。
【0079】
1セットのページ数は、測色領域数の確保、および、副走査のセグメントのペア数が一般的なカタログなどの原稿で経験的に十分に確保できるページ数(例えば、A3サイズで8枚程度)を予め設定しておく。または、1セットのページ数は事前に設定せずに、原稿の印刷およびスキャンを繰り返し、上述の表1の条件又は表2の条件に該当する測色領域数、副走査のセグメントのペア数が得られた時点のページ数を1セットとするような動的な決め方でもよい。
【0080】
(θ値の補正動作)
次に、図4のフローチャートのステップS8では、妥当性判定処理部86のθ補正部92が、妥当性判定部91の判定結果に基づいて、平準化θの値を補正処理することで、誤差の影響を軽減する。以下に示す表6~表9は、上述の表1~表5で説明した条件別に、θ値に施す補正の是非を判断するための閾値および補正値を示した表となっている。なお、一例ではあるが、表6~表9に示す数値の大小の関係は、「数値A>数値B>数値C>数値D」、「係数F>係数G>係数H」となっている。このような数値及び係数は、変動モデルの取り方などに基づいて設定すればよい。また、数値A、数値Bおよび数値Cは、第1の補正閾値の一例であり、数値Dは、第2の補正閾値の一例である。
【0081】
【表6】
【0082】
まず、表6は、上述の表1および表2の条件に基づいて、妥当性が「高」と判定された平準化θ値に対する補正の是非を判断するための閾値および補正値を示した表である。この表6に示すように、θ補正部92は、妥当性が「高」と判定された平準化θ値が数値D以上の値であった場合、例えば通知部を介して濃度異常の発生を通知(音声メッセージ、文字によるエラーメッセージ、又は、電子音等)すると共に、平準化θ値を「0」に補正する。この場合、階調補正データ(TRC)は更新されない。また、θ補正部92は、妥当性が「高」と判定された平準化θ値が数値D未満~数値C以上の値であった場合、一例として平準化θ値に係数Hを乗算処理して補正する。また、θ補正部92は、妥当性が「高」と判定された平準化θ値が数値C未満の値であった場合、平準化θ値に対して補正は施さない。
【0083】
【表7】
【0084】
次に、表7は、上述の表3の条件に基づいて、妥当性が「中」と判定された平準化θ値に対する補正の是非を判断するための閾値および補正値を示した表である。この表7に示すように、θ補正部92は、妥当性が「中」と判定された平準化θ値が数値D以上の値であった場合、例えば通知部を介して濃度異常の発生を通知(音声メッセージ、文字によるエラーメッセージ、又は、電子音等)すると共に、平準化θ値を「0」に補正する。この場合、階調補正データ(TRC)は更新されない。また、θ補正部92は、妥当性が「中」と判定された平準化θ値が数値D未満~数値B以上の値であった場合、一例として平準化θ値に係数Gを乗算処理して補正する。また、θ補正部92は、妥当性が「中」と判定された平準化θ値が数値B未満の値であった場合、平準化θ値に対して補正は施さない。
【0085】
【表8】
【0086】
次に、表8は、上述の表4の条件に基づいて、妥当性が「低」と判定された平準化θ値に対する補正の是非を判断するための閾値および補正値を示した表である。この表8に示すように、θ補正部92は、妥当性が「低」と判定された平準化θ値が数値D以上の値であった場合、例えば通知部を介して濃度異常の発生を通知(音声メッセージ、文字によるエラーメッセージ、又は、電子音等)すると共に、平準化θ値を「0」に補正する。この場合、階調補正データ(TRC)は更新されない。また、θ補正部92は、妥当性が「低」と判定された平準化θ値が数値D未満~数値A以上の値であった場合、一例として平準化θ値に係数Fを乗算処理して補正する。また、θ補正部92は、妥当性が「低」と判定された平準化θ値が数値A未満の値であった場合、平準化θ値に対して補正は施さない。
【0087】
【表9】
【0088】
次に、表9は、上述の表5の条件に基づいて、妥当性が「無効」と判定された平準化θ値に対する補正の是非を判断するための閾値および補正値を示した表である。この表9に示すように、θ補正部92は、妥当性が「無効」と判定されている場合、平準化θ値を「0」に補正する。この場合、階調補正データ(TRC)は更新されない。
【0089】
平準化θのθ値が大きいということは、それだけ色が変動しているということを意味する。このため、θ補正部92は、θ値が所定の閾値以上であれば、誤差の影響が強くなっている可能性が高いと判断し、逆にθ値が所定の閾値未満であれば誤差の影響は弱いと判断する。誤差の影響でθ値が大きい場合に、そのまま階調補正データ(TRC)を生成すると、過補正になる可能性が高いため、θ補正部92は、小さな値となるようにθ値を補正する。
【0090】
これに対してθ値の値が小さい場合、誤差の影響があっても過補正になる可能性は低く、補正を施すと制御不足となり、色の変動の解消が困難となる可能性が高い。この場合、θ補正部92は、θ値に対する補正は施さない。
【0091】
また、誤差の影響ではなく、大きな色変動が生した際にもθ値が大きくなり、θ値に対する補正が施されるが、この場合でも数セット分の階調補正処理を繰り返すことで、過補正を防ぎつつ徐々に色の変動を元に戻すことができる。また、エンジンのプロセスコントロールなどで、実施の形態の画像形成システムにおけるリアルタイムの階調補正処理を行う機能と共に、色の変動を補正するための別機能が設けられていた場合、この別機能の補正処理と合わせて二重に補正が行われることで、過補正となる不都合も最小限に抑制できる。なお、θ値の値が大きすぎる場合は、プリンタエンジン4に異常が発生している可能性が高いため、θ補正部92が通知部を介して異常の発生を通知(音声メッセージ、文字によるエラーメッセージ、又は、電子音等)し、プリンタエンジン4の異常解消のための処理を行う。
【0092】
(θ値の補正による効果)
図6は、濃度変動と印刷したセット数の関係を表したグラフである。太線のグラフは妥当性判断によるθ値補正をかけない場合の色の変動を示し、細線のグラフは妥当性判断によるθ値補正をかけた場合の色の変動を示している。また、点線は、基準となる濃度を示している。リアルタイムでの階調補正処理では、色の変動を、点線で示す基準となる濃度に近くなるように、階調補正処理を行うことが好ましい。
【0093】
ある時点で誤差の影響が大きくなった場合、θ値を補正しないと、太線のグラフに示すように基準の濃度に対して、濃度変化が大きくなる。濃度変化が大きくなると、次のセットで元に戻す場合も、誤差が大きくなり、再び行き過ぎた補正になる可能性がある。
【0094】
これに対して、ある時点で誤差の影響が大きくなった場合に、θ値に対して上述の補正処理を施すと、細線のグラフに示すように、濃度変化を小さく抑えることができる。また、θ値に対する誤差の影響が大きくなる前は、θ値に補正を施さないときと同等の制御となり、制御不足になることもない。
【0095】
(印刷処理)
次に、このように平準化θ値に対して、平準化θ値の妥当性に応じた補正処理が施されると、図4のフローチャートのステップS9に処理が進む。ステップS9では、合成部93が、θ補正部92から供給された値に階調補正データ(補正TRC)を更新する。この階調補正データ(補正TRC)は、ステップS10において、補正TRC算出部41の転送部により、階調処理部31に転送される。ステップS11では、階調処理部31が、画像処理部3により取得されたCMYKマスタ画像に対して、更新された補正TRCに基づいた階調補正処理を施してプリンタエンジン4に供給する。これにより、補正TRCを反映させた印刷を実行することができる。
【0096】
最後に、ステップS12において、プリンタエンジン4が、ユーザから指定されている全ページの印刷が完了したか否かを判別する。全ページの印刷が完了していない場合(ステップS12:No)、ステップS2に処理が戻り、上述のステップS2以降の各処理が繰り返し実行される。これに対して、全ページの印刷が完了した場合(ステップS12:Yes)、図4のフローチャートの処理が終了する。
【0097】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、実施の形態の画像処理システムは、複数枚の画像を1セットとすることで、単体の画像では不足する情報量を補うことができる。また、そのセット内の情報量(濃度分布ごとの測色領域数、および画像に付与されていると思われる面内変動量)を考慮して、そのセットの妥当性(上述の平準化θ値の妥当性)を判定する。判定結果に応じて補正量を調整する閾値又は調整倍率を決定する。
【0098】
具体的には、補正量(平準化θ値)が所定の閾値を超えていた場合、誤差の影響の可能性が高いとみなして補正量(平準化θ値)に調整倍率を乗算処理することで、補正量を抑え、過補正となる不都合を防止できる。例えば、誤差ではなく実際に急激な色の変動が生ずることで大きな補正量が算出されていた場合、そのセット内では十分な補正を行うことは困難であるが、次以降のセットでは、過補正を防止しつつ、徐々に正しい補正量に近づけながら階調補正処理を行うことができる。
【0099】
このため、補正量が急激に大きくなる不都合を防止できるうえ、補正量の上限を定める手法、および、そのセットの補正をスキップする手法を比較して少ないセット数で正しい補正量に近づけることができる。従って、階調補正精度を向上させることができる。
【0100】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、上述の実施の形態の説明では、説明を簡素化するために、画像検査部5によるユーザ画像測色RGBを評価値として使用することとしたが、RGBの代わりに、これらを変換したLab(L:明度、a:緑/赤、b:青/イエロー)等を用いてもよい。Lab等の均等色空間の表色値を用いることで、より色差に忠実な制御が可能となる。この場合も、上述と同様の効果を得ることができる。
【0101】
上述の新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、実施の形態および実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0102】
1 ユーザのパーソナルコンピュータ装置(ユーザPC)
2 ネットワーク
3 画像処理部
4 プリンタエンジン
5 画像検査部
6 出力画像
7 サーバ装置
8 画像形成装置
9 エンジン制御部
31 階調処理部
40 差分検出部
41 補正TRC算出部
70 RGB変換部
71 位置合せ部
72 位置合せ部
73 減算器
81 領域抽出部
82 主走査偏差補正処理部
83 局所θ算出部
84 記憶部
85 副走査偏差補正処理部
86 妥当性判定処理部
87 転送部
88 マップ生成部
89 測色リスト生成部
90 タイマ
91 妥当性判定部
92 θ補正部
93 合成部
100 オブジェクト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【文献】特開2017-64979号公報
【文献】特開2012-205124号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6