(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/34 20060101AFI20220216BHJP
C08F 210/06 20060101ALI20220216BHJP
C08F 297/08 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C08F2/34
C08F210/06
C08F297/08
(21)【出願番号】P 2018531925
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2017027904
(87)【国際公開番号】W WO2018025864
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2016153180
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】荒川 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】糸口 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉村 直人
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-213923(JP,A)
【文献】特開平07-090035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F2/00-2/60
4/60-4/70
6/00-283/00
283/02-289/00
291/00-297/08
301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単独重合体(I-1)または下記プロピレン共重合体(I-2)と、下記プロピレン共重合体(II)とからなる下記ヘテロファジックプロピレン重合体材料の製造方法であって、
下記工程(1)および下記工程(2)を含むヘテロファジックプロピレン重合体材料の製造方法。
工程(1):プロピレン重合用触媒の存在下、プロピレンを含む単量体を重合し、プロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)を製造する工程であって、下記式(A)を満足する工程。
1100≦α(1.34β)
1/3 (A)
(上記式(A)において、
αは、プロピレン重合用触媒の中位径(単位:μm)を表し、
βは、工程(1)における、プロピレン重合用触媒1gあたりのプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の生産量(単位:g/g)を表す。)
工程(2):上記工程(1)で得られたプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の存在下、1以上の気相重合反応装置を用いて、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合し、プロピレン共重合体(II)を製造する工程であって、
1以上の気相重合反応装置のうち、最終気相重合反応装置内の炭素数6以上のアルカンの濃度が0.01体積%以上0.6体積%以下である工程。
ヘテロファジックプロピレン重合体材料:プロピレン単独重合体または下記プロピレン共重合体(I-2)と、下記プロピレン共重合体(II)とからなり、
プロピレン共重合体(II)の含有量が30重量%以上であるヘテロファジックプロピレン重合
体材料(但し、ヘテロファジックプロピレン重合体材料の全重量を100重量%とする。)。
プロピレン共重合体(I-2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含有し、
上記エチレンおよび上記炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上15重量%未満である(但し、プロピレン共重合体(I-2)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体。
プロピレン共重合体(II):エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含有し、
上記エチレンおよび上記炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が15重量%以上80重量%以下である(但し、プロピレン共重合体(II)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体。
【請求項2】
上記工程(2)において、上記最終気相重合反応装置内の炭素数6のアルカンの濃度が0.01体積%以上0.3体積%以下である、請求項1に記載のヘテロファジックプロピレン重合体材料の製造方法。
【請求項3】
上記ヘテロファジックプロピレン重合体材料中における上記プロピレン共重合体(II)の含有量が40重量%以上である、請求項1または2に記載のヘテロファジックプロピレン重合体材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン単独重合体と、プロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合体とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料は、自動車部品、家電製品、食品・医療容器、建材・土木産業材などの分野に広く利用されている。該プロピレン重合材料の製造方法としては、例えば、第1段階重合工程で、スラリー重合法によりプロピレンの重合を行ってプロピレン単独重合体成分を得た後、第2段階重合工程で、気相重合法によりプロピレンとエチレンとを共重合して、プロピレン系ブロック共重合体を得る方法が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、第2段階重合工程で重合する共重合体成分の含有量が高いヘテロファジックプロピレン重合材料が求められている。しかし、共重合体成分の含有量が高いヘテロファジックプロピレン重合材料を製造しようとすると、重合反応装置内に塊状物が発生しやすいという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、共重合体成分の含有量が高いヘテロファジックプロピレン重合材料を、塊状物の発生を抑制しつつ安定的に連続製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のものを提供する。
<1> プロピレン単独重合体(I-1)または下記プロピレン共重合体(I-2)と、下記プロピレン共重合体(II)とからなる下記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法であって、
下記工程(1)および下記工程(2)を含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(1):プロピレン重合用触媒の存在下、プロピレンを含む単量体を重合し、プロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)を製造する工程であって、下記式(A)を満足する工程。
1100≦α(1.34β)1/3 (A)
(上記式(A)において、
αは、プロピレン重合用触媒の中位径(単位:μm)を表し、
βは、工程(1)における、プロピレン重合用触媒1gあたりのプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の生産量(単位:g/g)を表す。)
工程(2):上記工程(1)で得られたプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の存在下、1以上の気相重合反応装置を用いて、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合し、プロピレン共重合体(II)を製造する工程であって、
1以上の気相重合反応装置のうち、最終気相重合反応装置内の炭素数6以上のアルカンの濃度が0.01体積%以上0.6体積%以下である工程。
ヘテロファジックプロピレン重合材料:プロピレン単独重合体または下記プロピレン共重合体(I-2)と、下記プロピレン共重合体(II)とからなり、
プロピレン共重合体(II)の含有量が30重量%以上であるヘテロファジックプロピレン重合材料(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする。)。
プロピレン共重合体(I-2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含有し、
上記エチレンおよび上記炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上15重量%未満である(但し、プロピレン共重合体(I-2)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体。
プロピレン共重合体(II):エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含有し、
上記エチレンおよび上記炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が15重量%以上80重量%以下である(但し、プロピレン共重合体(II)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体。
<2> 上記工程(2)において、上記最終気相重合反応装置内の炭素数6のアルカンの濃度が0.01体積%以上0.3体積%以下である、<1>に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
<3> 上記ヘテロファジックプロピレン重合材料中における上記プロピレン共重合体(II)の含有量が40重量%以上である、<1>または<2>に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、共重合体成分の含有量が高いヘテロファジックプロピレン重合材料を、塊状物の発生を抑制しつつ安定的に連続製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法>
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法は、プロピレン単独重合体(I-1)または下記プロピレン共重合体(I-2)と、下記プロピレン共重合体(II)とからなる下記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法であって、下記工程(1)および下記工程(2)を含む。
工程(1):プロピレン重合用触媒の存在下、プロピレンを含む単量体を重合し、プロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)を製造する工程であって、下記式(A)を満足する工程。
1100≦α(1.34β)1/3 (A)
(上記式(A)において、
αは、プロピレン重合用触媒の中位径(単位:μm)を表し、
βは、工程(1)における、プロピレン重合用触媒1gあたりのプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の生産量(単位:g/g)を表す。)
工程(2):上記工程(1)で得られたプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の存在下、1以上の気相重合反応装置を用いて、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合し、プロピレン共重合体(II)を製造する工程であって、
1以上の気相重合反応装置のうち、最終気相重合反応装置内の炭素数6以上のアルカンの濃度が0.01体積%以上0.6体積%以下である工程。
ヘテロファジックプロピレン重合材料:プロピレン単独重合体または下記プロピレン共重合体(I-2)と、下記プロピレン共重合体(II)とからなり、
プロピレン共重合体(II)の含有量が30重量%以上であるヘテロファジックプロピレン重合材料(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする。)。
プロピレン共重合体(I-2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含有し、エチレンおよび上記炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上15重量%未満である(但し、プロピレン共重合体(I-2)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体。
プロピレン共重合体(II):エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含有し、エチレンおよび上記炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が15重量%以上80重量%以下である(但し、プロピレン共重合体(II)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体。
【0009】
以下、本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法の一実施形態について具体的に説明する。
【0010】
<ヘテロファジックプロピレン重合材料の構成>
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、(i)プロピレン単独重合体(I-1)とプロピレン共重合体(II)とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料、または、(ii)プロピレン共重合体(I-2)とプロピレン共重合体(II)とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料である。
【0011】
〔プロピレン単独重合体(I-1)〕
本実施形態において、プロピレン単独重合体(I-1)とは、プロピレンに由来する単量体単位からなる単独重合体である。
【0012】
〔プロピレン共重合体(I-2)〕
本実施形態において、プロピレン共重合体(I-2)とは、プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含有し、上記エチレンおよび上記炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上15重量%未満である(但し、プロピレン共重合体(I-2)の全重量を100重量%とする)するプロピレン共重合体である。
【0013】
プロピレン共重合体(I-2)における炭素数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位を導く炭素数4以上12以下のα-オレフィンとしては、例えば1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が挙げられ、好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンであり、より好ましくは1-ブテンである。
【0014】
プロピレン共重合体(I-2)としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-1-デセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体等が挙げられ、好ましくは、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体である。
【0015】
本実施形態において、プロピレン共重合体(I-2)は、ランダム共重合体であってもよく、その具体例としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-α-オレフィンランダム共重合体が挙げられる。
【0016】
〔プロピレン共重合体(II)〕
本実施形態において、プロピレン共重合体(II)とは、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含有し、上記エチレンおよび上記炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が15重量%以上80重量%以下である(但し、プロピレン共重合体(II)の全重量を100重量%とする)プロピレン共重合体である。
【0017】
プロピレン共重合体(II)における炭素数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位を導く炭素数4以上12以下のα-オレフィンの具体例としては、先述したプロピレン共重合体(I-2)における炭素数4以上12以下のα-オレフィンの具体例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0018】
プロピレン共重合体(II)としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-1-デセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体等が挙げられ、好ましくは、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体である。
【0019】
本実施形態において、ヘテロファジックプロピレン重合材料中におけるプロピレン共重合体(II)の含有量は30重量%以上であり、成形品の耐衝撃性の観点から、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする。)。
【0020】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料において、プロピレン共重合体(II)の極限粘度[η]IIは、0.1~10dL/gであることが好ましく、1~5dL/gであることがより好ましく、1.5~4dL/gであることがさらに好ましい。
【0021】
〔ヘテロファジックプロピレン重合材料〕
本発明の製造方法により得られるヘテロファジックプロピレン重合材料は、微粒子状であり、その中位径は好ましくは1300μm以上、より好ましくは1900μm以上である。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料の中位径は5000μm以下であることが好ましく、4000μm以下であることがより好ましい。中位径の範囲がこの範囲であることは、パウダー性状の改善、気相重合反応装置の循環ガス用コンプレッサーの負荷等の観点等より好ましい。
本明細書において、ヘテロファジックプロピレン重合材料の中位径は、レーザー回折式の粒子径分布測定装置により得られる体積基準の中位径である。
【0022】
本発明の製造方法により得られるヘテロファジックプロピレン重合材料の静止嵩密度は、0.400~0.500g/mLであることが好ましく、0.420~0.500g/mLであることがより好ましく、0.450~0.500g/mLであることがさらに好ましい。なお、本明細書において、静止嵩密度とは、パウダー性状の指標を意味するものとする。
【0023】
続いて、本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法について、具体的に説明する。
【0024】
<ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法>
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう)は、上述した構成を有するヘテロファジックプロピレン重合材料を製造する方法であって、工程(1)および工程(2)を含むものである。以下、各工程について具体的に説明する。
【0025】
〔工程(1)〕
本実施形態に係る工程(1)は、プロピレン重合用触媒の存在下、プロピレンを含む単量体を重合し、上述したプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)を製造する工程であって、下記式(A)を満足する工程である。
1100≦α(1.34β)1/3 (A)
上記式(A)において、
αは、プロピレン重合用触媒の中位径(単位:μm)を表し、
βは、工程(1)における、プロピレン重合用触媒1gあたりのプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の生産量(単位:g/g)を表す。
【0026】
本明細書において、プロピレン重合用触媒の中位径は、ISO13320:2009に従い、レーザー回折・散乱法により求められる中位径である。
プロピレン重合用触媒の中位径は、好ましくは40~80μmである。
工程(1)における、プロピレン重合用触媒1gあたりのプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の生産量は、好ましくは10,000~30,000g/gである。工程(1)における、プロピレン重合用触媒1gあたりのプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の生産量は、工程(1)において、重合反応装置内での前記単独重合体または前記共重合体の滞留時間を長くすることにより、大きくすることができる。
プロピレン重合用触媒として、後述のチーグラー・ナッタ型触媒を用いる場合は、式(A)におけるプロピレン重合用触媒の中位径は、該チーグラー・ナッタ型触媒のチタン原子とマグネシウム原子とを含む固体触媒成分の中位径である。
【0027】
プロピレン重合用触媒としては、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくは、チーグラー・ナッタ型触媒である。チーグラー・ナッタ型触媒としては、チタン原子とマグネシウム原子とを含む固体触媒成分を含む触媒が挙げられる。前記固体触媒成分は、さらにハロゲン原子を含むことが好ましい。前記固体触媒成分は、マグネシウム化合物とチタン化合物とを接触させることにより得ることができる。前記チタン化合物は、ハロゲン化チタン化合物が好ましい。
チーグラー・ナッタ型触媒は、前記固体触媒成分以外に、有機アルミニウム化合物および/または電子供与性化合物を含んでもよい。チーグラー・ナッタ型触媒は、前記固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを含む触媒、前記固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを含む触媒が好ましい。
プロピレン重合用触媒は、少量のオレフィンを接触させ、予備活性化させたものを用いてもよい。
【0028】
本実施形態において、プロピレン単独重合体(I-1)は、プロピレンを単独重合することによって得ることができる。プロピレン共重合体(I-2)は、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンとを共重合することによって得ることができる。その際、重合方法としては、例えばバルク重合を採用することができる。バルク重合とは、プロピレン単量体を重合溶媒とし、この重合溶媒中にプロピレン重合用触媒を分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。その際、重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度および圧力で行う。重合温度は、通常、30~100℃であり、好ましくは50~80℃である。重合圧力は、通常、常圧~10MPaであり、好ましくは0.5~5MPaGである。
【0029】
バルク重合には、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41-12916号公報、特公昭46-11670号公報、および特公昭47-42379号公報に記載の撹拌槽型反応装置やループ型反応装置等を用いることができる。
【0030】
また、重合体の分子量を調整するために、例えば、水素等の連鎖移動剤を用いてもよい。
【0031】
本実施形態において、プロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)は、同一の反応装置内で逐次重合により製造してもよく、直列に連結された複数の反応装置を有する多段重合反応装置において連続的に逐次重合により製造してもよい。
【0032】
〔工程(2)〕
本実施形態に係る工程(2)は、工程(1)で得られたプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)の存在下、1以上の気相重合反応装置を用いて、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合し、上述したプロピレン共重合体(II)を製造する工程であって、
1以上の気相重合反応装置のうち、最終気相重合反応装置内の炭素数6以上のアルカンの濃度が0.01体積%以上0.6体積%以下である工程である。
【0033】
工程(2)では、気相重合反応装置に、工程(1)で得られたプロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(I-2)を連続的に供給し、そのポリマーの存在下で、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとの共重合を、気相で行う。
【0034】
気相重合反応装置における重合温度は、通常、0~120℃であり、好ましくは20~100℃であり、より好ましくは40~100℃である。
【0035】
重合圧力は、気相重合反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常常圧~10MPaG、好ましくは0.2~8MPaG、より好ましくは0.5~5MPaGである。
【0036】
本実施形態では、1以上、好ましくは3以上の気相重合反応装置を用いて、共重合が行われる。また、本実施形態では、1以上の気相重合反応装置のうち、最終気相重合反応装置内の炭素数6以上のアルカンの濃度が、0.01体積%以上0.6体積%以下であり、好ましくは0.01体積%以上0.3体積%以下である。前記アルカンの濃度が上記範囲内であることは、パウダー性状の改善という点から好ましい。なお、本明細書において、”最終気相重合反応装置”とは、複数の気相重合反応装置を用いる場合には、そのうちの最も下流側にある気相重合反応装置を意味する。また、1つの気相重合反応装置であれば、その1つの気相重合反応装置が、最終気相重合反応装置である。
【0037】
本実施形態において、炭素数6以上のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。本実施形態では、最終気相重合反応装置内の炭素数6以上のアルカンの濃度は、例えば、循環ガスラインにプロセスガスクロマトクラフィーを設置することにより測定することができる。
【0038】
気相重合反応装置には、公知の重合反応装置、例えば、特開昭58-201802号公報、特開昭590126406号公報、および特開平2-233708号公報等に記載の反応装置を用いることができる。
【0039】
本製造方法によれば、工程(2)において、プロピレン単独重合体(I-1)またはプロピレン共重合体(II)のマトリックスの中で、プロピレン共重合体(II)が分散した構造を有する混合物として、ヘテロファジックプロピレン重合材料が得られる。
【0040】
<ヘテロファジックプロピレン重合材料の用途>
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料は、例えば、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、発泡成形法、中空成形法、ブロー成形法、真空成形法、粉末成形法、カレンダー成形法、インフレーション方法、プレス成形等の成形方法に好適に使用することができる。
【0041】
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料の用途としては、例えば、自動車内装部品および外装部品等の自動車部品、食品・医療容器、家具や電気製品の部品、土木・建築材料等が挙げられる。自動車内装部品としては、例えば、インストルメンタルパネル、トリム、ドアーパネル、サイドプロテクター、コンソールボックス、コラムカバー等が挙げられる。自動車外装部品としては、例えば、バンパー、フェンダー、ホイールカバー等が挙げられる。食品・医療容器としては、例えば、ラップフィルム、食品容器、輸液バッグ、輸液ボトル等が挙げられる。家具や電化製品の部品としては、例えば、壁紙、床材、化粧シート、洗濯機等の排水ホース等が挙げられる。土木・建築材料としては、例えば、防水シート、遮水シート、ホース、ダクト、ガスケット等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
実施例および比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定したものである。
【0043】
(1)プロピレン共重合体(II)の含有量(X、単位:重量%)
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のプロピレン共重合体(II)の含有量(X)(単位:重量%)は、プロピレン単独重合体(I-1)の結晶融解熱量とヘテロファジックプロピレン重合材料全体の結晶融解熱量とに基づき、次式により算出した。結晶融解熱量は、示差走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=(1-(ΔHf)T/(ΔHf)P)×100
X:ヘテロファジックプロピレン重合材料中のプロピレン共重合体(II)の含有量(重量%)
(ΔHf)T:ヘテロファジックプロピレン重合材料全体の融解熱量(J/g)
(ΔHf)P:プロピレン単独重合体(I-1)の融解熱量(J/g)
【0044】
(2)極限粘度(単位:dL/g)
(2)-1.ヘテロファジックプロピレン重合材料の全体の極限粘度([η]T)およびプロピレン単独重合体(I-1)の極限粘度([η]I)
ウベロ-デ型粘度計を用いて、濃度0.1g/dL、0.2g/dL、および、0.5g/dLの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、参考文献「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491項に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で還元粘度の測定を行った。
【0045】
(2)-2.プロピレン共重合体(II)の極限粘度[η]II
プロピレン共重合体(II)の極限粘度[η]IIは、次式により算出した。
[η]II=([η]T-[η]I×(1-X/100))×100/X
[η]I;プロピレン単独重合体(I-1)の極限粘度(dl/g)
[η]T;ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度(dl/g)
【0046】
(3)エチレン含有量(単位:重量%)
(3-1)ヘテロファジックプロピレン重合材料の全体に対する、エチレンに由来する単量体単位の含有量((C2’)T)
下記の条件で測定した13C-NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(参考文献:Macromolecules 1982,15,1150-1152)に基づいて求めた。
<炭素核磁気共鳴(13C-NMR)測定条件>
装置:ブルカー・バイオスピン(株)製 AVANCEIII 600HD
測定プローブ:10mmクライオプローブ
測定溶媒:1,2-ジクロロベンゼン/1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2=85/15(容積比)の混合液
試料濃度:100mg/mL
測定温度:135℃
測定方法:プロトンデカップリング法
積算回数:256回
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
測定基準:テトラメチルシラン
【0047】
(3-2)プロピレン共重合体(II)中のエチレンに由来する単量体単位の含有量((C2’)II)
プロピレン共重合体(II)中のエチレンに由来する単量体単位の含有量(C2’)IIは、次式により算出した。
(C2’)II=(C2’)T/(X/100)
(C2’)T;ヘテロファジックプロピレン重合材料の全体に対する、エチレンに由来する単量体単位の含有量(重量%)
X;ヘテロファジックプロピレン重合材料中のプロピレン共重合体(II)の含有量(重量%)
【0048】
(4)ヘテロファジックプロピレン重合材料の中位径の測定
ヘテロファジックプロピレン重合材料の中位径はレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS、Sympatec社製)を用いて測定した。
【0049】
(5)固体触媒成分の中位径(D50)
ISO13320:2009に従い、レーザー回折・散乱法により固体触媒成分の中位径を分析した。測定装置としてレーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製「マスターサイザー3000」)を用い、屈折率はトルエンを1.49、固体触媒成分を1.53-0.1iとした。アルミナ等で予め水分除去しておいたトルエン溶媒を、開口部を窒素シールした分散装置(ハイドロMV)に投入して測定セルを含めた循環系内部を溶媒で満たした。撹拌速度は2,000rpmに設定し、かつ超音波分散処理せずに測定セル内の溶媒を循環させながら散乱強度3~10%となるように粉末試料を投入して粒度を測定した。得られた粒度体積基準分布図(チャート)より中位径(D50)を求めた。試料は大気および水分と接触しないように取扱い、前処理は実施しなかった。
【0050】
(6)静止嵩密度の測定
静止嵩密度はJIS K6721に従い、嵩比重測定装置を用いて測定した。
【0051】
(7)最終気相重合反応装置内の炭素数6以上のアルカンの濃度の測定
最終気相重合反応装置内の炭素数6以上のアルカンとして、ヘキサン濃度は、気相重合反応装置の循環ガスラインにある、プロセスガスクロマトグラフィー(横河電機社製)を使用し、気相部の水素、エチレン、およびプロピレン濃度と同時に測定した。また、ヘプタン濃度は、気相重合反応装置の循環ガスラインよりテトラバックにサンプリングしたガスを、ガスクロマトグラフィー(GC14B、島津製作所社製)により分析することにより、測定した。
【0052】
(8)5mm以上の塊の量の算出
5mm以上の塊の量の算出は、目開き5mmのステンレス製篩い(TESTING SIEVE、TOKYO SCREEN社製)を使用し、以下の式により算出した。
(5mm以上の塊量[重量ppm])=(篩い後の篩い上残存ポリマー重量)/(篩い前のポリマー重量)×1000000
【0053】
(9)運転性の評価
運転性の評価は、以下の通り実施した。
運転性○;気相反応装置内で、塊化物が生成することなく、安定的にヘテロファジックプロピレン重合材料が連続製造できた。
運転性×;気相反応装置内で、ポリマー粒子の流動状態が悪化し、反応装置内で塊化物が生成したか、または、ポリマー粒子の流動状態が悪化し、反応装置内の温度が急上昇したり、反応装置内から次工程へポリマー粒子を抜出す際の抜出し不良が発生したりして、安定的にヘテロファジックプロピレン重合材料の連続製造ができなかった。
【0054】
(10)工程(1)における、プロピレン重合用触媒1gあたりのプロピレン単独重合体(I-1)の生産量β(単位:g/g)
工程(1)における、プロピレン重合用触媒1gあたりのプロピレン単独重合体(I-1)の生産量β(単位:g/g)は下式により求めた。
β=10γ(100-X)/ε
(式中、
γは、単位時間あたりのヘテロファジックプロピレン重合材料の生産量(単位:kg/時間)を表す。
Xは、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のプロピレン共重合体(II)の含有量(単位:重量%)を表す。
εは、工程(1)における、固体触媒成分の供給量(単位:g/時間)を表す。)
【0055】
〔実施例1:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
(1-1a)固体触媒成分の製造
工程(1-1A):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン36.0mL、四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を1.2K/分の速度で昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル3.15mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内に投入した成分を撹拌した。
得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。
【0056】
工程(1-1B):洗浄後の固体にトルエン38.3mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mL、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を60℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分について、チタン原子含有量は2.53重量%であり、エトキシ基含有量は0.44重量%であり、内部電子供与体含有量は13.7重量%であり、中位径は59.5μmであった。
【0057】
(1-1b)予備活性化
攪拌機付きSUS製オートクレーブに、十分に脱水および脱気したヘキサン1.3L、トリエチルアルミニウム(以下、TEAと称する。)20mmol/L、電子供与体成分としてtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン、および中位径59.5μmの固体触媒成分(I)7.8g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を15℃以下に保持しながら、固体触媒成分1.0g当たりのプロピレン供給量が5.0gに達するまでプロピレンを連続的に供給し、予備活性化を実施した。tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランの添加量は、tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン/TEA=0.1(mol/mol)であった。予備活性化された触媒のスラリーを、攪拌機付きのSUS製希釈槽へ移送し、充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し、10℃以下の温度で保存した。また、予備活性化された触媒のスラリーのオートクレーブ内での残存を防止し、希釈槽内へその全量を移送するために、予備活性化された触媒のスラリーの移送後、1.3Lの十分に脱水および脱気したヘキサンでオートクレーブ内を洗浄し、その洗浄液を希釈槽内へと移送した。この洗浄操作を3回行った。希釈槽内での予備活性化された触媒のスラリー濃度は、0.10g/Lであった。
【0058】
(1-1c)重合
攪拌機付きベッセル型反応装置3槽と、気相重合反応装置1槽とを直列に配置した装置を用い、連続重合を行った。当該ベッセル型反応装置の第1槽目、第2槽目、および第3槽目のそれぞれに、プロピレンを連続的に単独重合してプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活させることなく第4槽目(すなわち、上記気相反応装置)に移送し、第4槽目において、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合してプロピレン-エチレン共重合体を製造した。
【0059】
ベッセル型反応装置の第1槽目において、プロピレンを10kg/h、水素を32NL/hで供給し、さらに、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を250mmol/Lに調整したTEAを23.5mmol/h、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を50mmol/Lに調整したtert-ブチル-ノルマルプロピルジメトキシシランを4.7mmol/hおよび(1-1b)で製造した予備活性化された触媒のスラリーを、固体触媒成分の供給量が0.50g/hとなるように供給し、重合温度58℃、重合圧力3.6MPaGで、連続重合を行った。
【0060】
ベッセル型反応装置の第2槽目では、連続的に第1槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレン3kg/h、水素3NL/hを供給し、重合温度57℃、重合圧力3.1MPaGの条件下で、連続重合を行った。
【0061】
ベッセル型反応装置の第3槽目では、連続的に第2槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレン3kg/hを供給し、重合温度53℃、重合圧力2.8MPaGの条件下で、連続重合を行い、プロピレン単独重合体を得た。
【0062】
前記第3槽目からプロピレン単独重合体を一部系外に抜き出し、分析の結果、プロピレン単独重合体の極限粘度[η]Iは1.06dl/gであった。
【0063】
ベッセル型反応装置の第3槽目の下流に配置された気相重合反応装置であり、最終気相重合反応装置に相当する第4槽目では、連続的に第3槽目から移送されたプロピレン単独重合体の存在下、気相部の水素濃度2.4vol%、エチレン濃度39.7vol%、プロピレン濃度45.2vol%、ヘキサン濃度0.2vol%、ヘプタン濃度0.3vol%を保持するようにプロピレン、エチレン、水素およびヘプタンを連続的に供給し、重合温度70℃、重合圧力1.6MPaGの条件下で、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合し、21.9kg/hのヘテロファジックプロピレン重合材料を安定的に得た。
【0064】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の分析の結果、極限粘度[η]Tは2.39dL/gであり、エチレン含有量(C’2)Tは34.40重量%であった。
【0065】
第4槽目で生成したヘテロファジックプロピレン重合材料中のプロピレン-エチレン共重合体の含有量は65.2重量%であった。プロピレン-エチレン共重合体の極限粘度[η]IIは3.10dL/gであり、プロピレン-エチレン共重合体中のエチレン含有量(C’2)IIは52.76重量%であった。
【0066】
また、得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は微粒子状であり、その中位径は2045μmであり、静止嵩密度は0.440g/mLであった。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中に含まれる、径が5mm以上の塊の量は458重量ppmであった。
【0067】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の分析結果を表1に示す。
【0068】
【0069】
〔実施例2:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
(1-1a)固体触媒成分の製造
実施例1と同様の方法で製造した。
【0070】
(1-1b)予備活性化
攪拌機付きSUS製オートクレーブに、十分に脱水および脱気したヘキサン1.3Lに、TEA20mmol/L、電子供与体成分としてtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン、および中位径59.5μmの固体触媒成分(I)7.8g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を15℃以下に保持しながら、固体触媒成分1.0gあたりのプロピレン供給量が5.0gに達するまでプロピレンを連続的に供給し、予備活性化を実施した。tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランの添加量は、tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン/TEA=0.1(mol/mol)であった。予備活性化された触媒のスラリーを、攪拌機付きのSUS製希釈槽へ移送し、充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し、10℃以下の温度で保存した。また、予備活性化された触媒のスラリーのオートクレーブ内での残存を防止し、希釈槽内へその全量を移送するために、予備活性化された触媒のスラリーの移送後、1.3Lの十分に脱水および脱気したヘキサンでオートクレーブ内を洗浄し、その洗浄液を希釈槽内へと移送した。この洗浄操作を3回行った。希釈槽内での予備活性化された触媒のスラリー濃度は、0.10g/Lであった。
【0071】
(1-1c)重合
攪拌機付きベッセル型反応装置3槽と、気相重合反応装置1槽とを直列に配置した装置を用い、連続重合を行った。当該ベッセル型反応装置の第1槽目、第2槽目、および第3槽目において、プロピレンを連続的に単独重合してプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活させることなく第4槽目(すなわち、上記気相反応装置)に移送し、第4槽目において、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合してプロピレン-エチレン共重合体を製造した。
【0072】
ベッセル型反応装置の第1槽目において、プロピレンを10kg/h、水素を32NL/hで供給し、さらに、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を250mmol/Lに調整したTEAを23.1mmol/h、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を50mmol/Lに調整したtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランを4.7mmol/hおよび(1-1b)で製造した予備活性化された触媒のスラリーを、固体触媒成分の供給量が0.52g/hとなるように供給し、重合温度58℃、重合圧力3.6MPaGで、連続重合を行った。
【0073】
ベッセル型反応装置の第2槽目では、連続的に第1槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレンを3kg/h、水素を3NL/hで供給し、重合温度57℃、重合圧力3.1MPaGの条件下で、連続重合を行った。
【0074】
ベッセル型反応装置の第3槽目では、連続的に第2槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレンを3kg/hを供給し、重合温度52℃、重合圧力2.8MPaGの条件下で、連続重合を行い、プロピレン単独重合体を得た。
【0075】
前記第3槽目から、プロピレン単独重合体を一部系外に抜き出し、分析の結果、プロピレン単独重合体の極限粘度[η]Iは1.06dL/gであった。
【0076】
ベッセル型反応装置の第3槽目の下流に配置された気相重合反応装置であり、最終気相重合反応装置に相当する第4槽目では、連続的に3槽目から移送されたプロピレン単独重合体の存在下、気相部の水素濃度2.3vol%、エチレン濃度39.6vol%、プロピレン濃度45.1vol%、ヘキサン濃度0.3vol%、ヘプタン濃度0.0vol%を保持するようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給し、重合温度70℃、重合圧力1.6MPaGの条件下で、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合し、21.4kg/hのヘテロファジックプロピレン重合材料を安定的に得た。
【0077】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の分析の結果、極限粘度[η]Tは2.38dl/gであり、エチレン含有量(C’2)Tは39.40重量%であった。
【0078】
第4槽目で生成したヘテロファジックプロピレン重合材料中のプロピレン-エチレン共重合体の含有量は65.4重量%であったの。プロピレン-エチレン共重合体の極限粘度[η]IIは3.08dL/gであり、プロピレン-エチレン共重合体のエチレン含有量は51.99重量%であった。
【0079】
また、得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は微粒子状であり、その中位径は1974μmであり、静止嵩密度は0.465g/mLであった。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中に含まれる、径が5mm以上の塊の量は320重量ppmであった。
【0080】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の分析結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
〔比較例1:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
(1-1a)固体触媒成分の製造
実施例1と同様の方法で製造した。
【0083】
(1-1b)予備活性化
攪拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気したヘキサン1.3L、TEA20mmol/L、電子供与体成分としてtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン、および中位径59.5μmの固体触媒成分(I)7.8g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を15℃以下に保持しながら、固体触媒成分1.0gあたりのプロピレン供給量が5.0gに達するまでプロピレンを連続的に供給し、予備活性化を実施した。tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランの添加量は、tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン/TEA=0.1(mol/mol)であった。予備活性化された触媒のスラリーを、攪拌機付きのSUS製希釈槽へ移送し、充分に精製された液体ブタンを加えて希釈し、10℃以下の温度で保存した。また、予備活性化された触媒のスラリーのオートクレーブ内での残存を防止し、希釈槽内へその全量を移送するために、予備活性化された触媒のスラリーの移送後、1.3Lの十分に脱水および脱気したヘキサンでオートクレーブ内を洗浄し、その洗浄液を希釈槽内へと移送した。この洗浄操作を3回行った。希釈槽内での予備活性化された触媒のスラリー濃度は、0.10g/Lであった。
【0084】
(1-1c)重合
攪拌機付きベッセル型反応装置3槽と、気相重合反応装置1槽とを直列に配置した装置を用い、連続重合を行った。当該ベッセル型反応装置の第1槽目、第2槽目、および第3槽目において、プロピレンを連続的に単独重合してプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活させることなく第4槽目(すなわち、上記気相反応装置の第1槽目)に移送し、第4槽目において、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合してプロピレン-エチレン共重合体を製造した。
【0085】
ベッセル型反応装置の第1槽目において、プロピレンを10kg/h、水素を32NL/hで供給、さらに、、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を250mmol/Lに調整したTEAを23.7mmol/h、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を50mmol/Lに調整したtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランを4.8mmol/hおよび(1-1b)で製造した予備活性化された触媒のスラリーを、固体触媒成分の供給量が0.50g/hとなるように供給し、重合温度58℃、重合圧力3.6MPaGで、連続重合を行った。
【0086】
ベッセル型反応装置の第2槽目では、連続的に1槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレン3kg/h、水素を3NL/hで供給し、重合温度57℃、重合圧力3.1MPaGの条件下で、連続重合を行った。
【0087】
ベッセル型反応装置の第3槽目では、連続的に第2槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレンを3kg/hで供給し、重合温度52℃、重合圧力2.8MPaGの条件下で、連続重合を行い、プロピレン単独重合体を得た。
【0088】
前記第3槽目からプロピレン単独重合体を一部系外に抜き出し、分析の結果、プロピレン単独重合体の極限粘度[η]Iは1.06dl/gであった。
【0089】
ベッセル型反応装置の第3槽目の下流に配置された気相重合反応装置であり、最終気相重合反応装置に相当する第4槽目では、連続的に第3槽目から移送されたプロピレン単独重合体の存在下、気相部の水素濃度2.4vol%、エチレン濃度39.6vol%、プロピレン濃度45.3vol%、ヘキサン濃度1.3vol%、ヘプタン濃度0.0vol%を保持するようにプロピレン、エチレン、水素およびヘキサンを連続的に供給し、重合温度70℃、重合圧力1.6MPaGの条件下で、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合していたが、第4槽目の槽内温度が85℃まで急上昇したため、運転を停止した。
【0090】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の生産量は、20.2kg/hであった。また、得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の分析の結果、極限粘度[η]Tは2.45dl/gであり、エチレン含有量(C’2)Tは41.90重量%であった。
【0091】
第4槽目で生成したヘテロファジックプロピレン重合材料中のプロピレン-エチレン共重合体の含有量は65.2重量%であった。プロピレン-エチレン共重合体の極限粘度[η]IIは3.19dL/gであり、プロピレン-エチレン共重合体中のエチレン含有量(C’2)IIは54.29重量%であった。
【0092】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は微粒子状であり、その中位径は、2147μmであった。また、静止嵩密度は0.406g/mLであり、得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中に含まれる、径が5mm以上の塊の量は1395重量ppmであり、いずれも、実施例に対して悪化する結果となった。
【0093】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の分析結果を表3に示す。
【0094】
【0095】
〔比較例2:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
(1-1a)固体触媒成分の製造
実施例1と同様の方法で製造した。
【0096】
(1-1b)予備活性化
攪拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気したヘキサン1.3L、TEA20mmol/L、電子供与体成分としてのtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン、および中位径59.5μmの固体触媒成分(I)を7.8g/L添加し、オートクレーブ内の温度を15℃以下に保持しながら、固体触媒成分1.0gあたりのプロピレン供給量が5.0gに達するまでプロピレンを連続的に供給し、予備活性化を実施した。tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランの添加量は、tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン/TEA=0.1(mol/mol)であった。予備活性化された触媒のスラリーを、攪拌機付きのSUS製希釈槽へ移送し、充分に精製された液体ブタンを加えて希釈し、10℃以下の温度で保存した。また、予備活性化された触媒のスラリーのオートクレーブ内での残存を防止し、希釈槽内へその全量を移送するために、予備活性化された触媒のスラリーの移送後、1.3Lの十分に脱水および脱気したヘキサンでオートクレーブ内を洗浄し、その洗浄液を希釈槽内へと移送した。この洗浄操作を3回行った。希釈槽内での予備活性化された触媒のスラリー濃度は、0.10g/Lであった。
【0097】
(1-1c)重合
攪拌機付きベッセル型反応装置3槽と、気相重合反応装置1槽とを直列に配置した装置を用い、連続重合を行った。当該ベッセル型反応装置の第1槽目、第2槽目、および第3槽目において、プロピレンを連続的に単独重合してプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活させることなく第4槽目(すなわち、上記気相反応装置)に移送し、第4槽目において、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合してプロピレン-エチレン共重合体を製造した。
【0098】
ベッセル型反応装置の第1槽目において、プロピレンを10kg/h、水素を32NL/hで供給し、さらに、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を250mmol/Lに調整したTEAを23.1mmol/h、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を50mmol/Lに調整したtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランを4.3mmol/hおよび(1-1b)で製造した予備活性化された触媒のスラリーを、固体触媒成分の供給量が0.50g/hとなるように供給し、重合温度58℃、重合圧力3.6MPaGで、連続重合を行った。
【0099】
ベッセル型反応装置の第2槽目では、連続的に第1槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレンを3kg/h、水素を3NL/hで供給し、重合温度57℃、重合圧力3.0MPaGの条件下で、連続重合を行った。
【0100】
ベッセル型反応装置の第3槽目では、連続的に第2槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレンを3kg/hで供給し、重合温度52℃、重合圧力2.7MPaGの条件下で、連続重合を行い、プロピレン単独重合体を得た。
【0101】
前記第3槽目からプロピレン単独重合体を一部系外に抜き出し、分析の結果、プロピレン単独重合体の極限粘度[η]Iは1.06dl/gであった。
【0102】
ベッセル型反応装置の第3槽目の下流に配置された気相重合反応装置であり、最終気相重合反応装置に相当する第4槽目では、連続的に第3槽目から移送されたプロピレン単独重合体の存在下、気相部の水素濃度2.3vol%、エチレン濃度41.6vol%、プロピレン濃度46.4vol%、ヘキサン濃度0.1vol%、ヘプタン濃度0.9vol%を保持するようにプロピレン、エチレン、水素およびヘプタンを連続的に供給し、重合温度70℃、重合圧力1.6MPaGの条件下で、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合していたが、槽内から次工程へポリマーを抜出す際、抜出し弁作動毎に抜出されるポリマー量に減少が認められたため、運転を停止した。ヘテロファジックプロピレン重合材料の生産量は、20.2kg/gであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の分析の結果、極限粘度[η]Tは2.07dl/gであり、エチレン含有量(C2’)Tは26.10重量%であった。
【0103】
第4槽目で生成したヘテロファジックプロピレン重合材料のプロピレン-エチレン共重合体の含有量は44.3重量%であった。プロピレン-エチレン共重合体の極限粘度[η]IIは3.34dL/gであり、プロピレン-エチレン共重合体中のエチレン含有量(C’2)IIは58.90重量%であった。
【0104】
また、得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の静止嵩密度は0.388g/mLであり、ヘテロファジックプロピレン重合材料中に含まれる、径が5mm以上の塊の量は19000重量ppmであり、いずれも実施例に対して悪化する結果となった。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の分析結果を表4に示す。
【0105】
【0106】
〔比較例3:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
(1-1a)固体触媒成分の製造
工程(1-1A):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン36.0mL、四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド(粒径37μm)0.75gを6分おきに10回投入した。その後、フラスコ内に投入した成分を0℃で90分間撹拌して、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した。次いで10℃に昇温して同温度で2時間撹拌した後、昇温を開始した。昇温途中、60℃の時点で2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル4.80mLをフラスコ内に投入し、110℃まで昇温した。同温度で2時間、フラスコ内に投入した成分を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。
該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。
【0107】
工程(1-1B):洗浄後の固体にトルエン45.0mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLを投入して混合物を形成し、70℃に昇温した。同温度で2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.75mLをフラスコ内に投入した後、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分の中位径は33.0μmであった。
【0108】
(1-1b)予備活性化
攪拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気したヘキサン1.2L、TEA18mmol/L、電子供与体成分としてtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン、および中位径33.0μmの固体触媒成分(I)8.7g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を15℃以下に保持しながら、固体触媒成分1.0g当たりのプロピレン供給量が1.0gに達するまでプロピレンを連続的に供給し、予備活性化を実施した。tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランの添加量は、tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン/TEA=0.1(mol/mol)であった。予備活性化された触媒のスラリーを、攪拌機付きのSUS製希釈槽へ移送し、充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し、10℃以下の温度で保存した。また、予備活性化された触媒のスラリーのオートクレーブ内での残存を防止し、希釈槽内へその全量を移送するために、予備活性化された触媒のスラリーの移送後、1.2Lの十分に脱水および脱気したヘキサンでオートクレーブ内を洗浄し、その洗浄液を希釈槽内へと移送した。この洗浄操作を3回行った。希釈槽内での予備活性化された触媒のスラリー濃度は、0.10g/Lであった。
【0109】
(1-1c)重合
攪拌機付きベッセル型反応装置3槽と、気相重合反応装置1槽とを直列に配置した装置を用い、連続重合を行った。当該ベッセル型反応装置の第1槽目、第2槽目、および第3槽目において、プロピレンを連続的に単独重合してプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活させることなく第4槽目(すなわち、上記気相反応装置の第1槽目)に移送し、第4槽目において、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合してプロピレン-エチレン共重合体を製造した。
【0110】
ベッセル型反応装置の第1槽目において、プロピレンを40kg/h、水素を224NL/hで供給し、さらに、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を250mmol/Lに調整したTEAを23.2mmol/h、十分に脱水および脱気したヘキサンを用いて濃度を50mmol/Lに調整したtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランを4.6mmol/hおよび(1-1b)で製造した予備活性化された触媒のスラリーを、固体触媒成分の供給量が0.33g/hとなるように供給し、重合温度80℃、重合圧力4.4MPaG、連続重合を行った。
【0111】
ベッセル型反応装置の第2槽目では、連続的に第1槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレンを24kg/h、水素を124NL/hで供給し、重合温度77℃、重合圧力3.8MPaGの条件下で、連続重合を行った。
【0112】
ベッセル型反応装置の第3槽目では、連続的に2槽目から移送されたポリマーの存在下、プロピレンを14kg/h、水素を45NL/hで供給し、重合温度70℃、重合圧力3.6MPaGの条件下で、連続重合を行い、プロピレン単独重合体を得た。
【0113】
前記第3槽目からプロピレン単独重合体を一部系外に抜き出し、分析の結果、プロピレン単独重合体の極限粘度[η]Iは0.89dl/gであった。
【0114】
ベッセル型反応装置の第3槽目の下流に配置された気相重合反応装置であり、最終気相重合反応装置に相当する第4槽目では、連続的に第3槽目から移送されたプロピレン単独重合体の存在下、気相部の水素濃度1.5vol%、エチレン濃度20.2vol%、プロピレン濃度75.4vol%を保持するようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給し、重合温度70℃、重合圧力1.8MPaGの条件下で、プロピレンとエチレンとを連続的に共重合していたが、停止後槽内を確認したところ、拳大の大きさの塊が数個見つかった。
【0115】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の生産量は、19.0kg/hであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の分析の結果、極限粘度[η]Tは2.12dl/gであり、エチレン含有量(C’2)Tは15.79重量%であった。
【0116】
第4槽目で生成したヘテロファジックプロピレン重合材料中のプロピレン-エチレン共重合体の含有量は55.0重量%であった。プロピレン-エチレン共重合体の極限粘度[η]IIは3.13dL/gであり、プロピレン-エチレン共重合体中のエチレン含有量(C’2)IIは28.70重量%であった。
【0117】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の中位径は、1228μmであった。また、静止嵩密度は0.372g/mLであり、ヘテロファジックプロピレン重合材料中に含まれる、径が5mm以上の塊の数は、2385重量ppmであり、いずれも、実施例に対して悪化する結果となった。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の分析結果を表5に示す。
【0118】
【0119】
実施例1および2と、比較例1~3との結果を表6に示す。なお、表6中、固体触媒成分1は実施例1,2および比較例1,2における固体触媒成分を示し、固体触媒成分2は、比較例3における固体触媒成分を示す。
【0120】
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の製造方法によって得られるヘテロファジックポリプロピレン重合材料は、例えば、自動車内装部品および外装部品等の自動車部品、食品・医療容器、家具や電気製品の部品、土木・建築材料等の原料として利用することができる。