(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】電子写真感光体並びにそれを含有する電子写真カートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/05 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
G03G5/05 101
(21)【出願番号】P 2018540273
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2017033967
(87)【国際公開番号】W WO2018056326
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2016184371
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 篤
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-351113(JP,A)
【文献】特開2005-172968(JP,A)
【文献】特開2000-181096(JP,A)
【文献】特開平10-081737(JP,A)
【文献】特開平01-280762(JP,A)
【文献】特開2000-284508(JP,A)
【文献】特開2002-131956(JP,A)
【文献】特開平10-020516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、前記導電性支持体上に少なくとも感光層とを有する電子写真感光体であって、
前記感光層はポリエステル樹脂を含有し、
前記ポリエステル樹脂は、下記式(1)で表される構
造及び下記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1の構造αを含有し、前記構造αの数平均分子量は15000以下であり、かつ
前記ポリエステル樹脂は、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を含有する、電子写真感光体。
【化1】
(式(1)中、R
1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、n
1は1以上100以下の整数である
。
式(3)中、R
1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、R
3は2価の基を表し、n
4及びn
5はそれぞれ独立に1以上100以下の整数である。)
【化2】
(式(5)中、R
2は置換基を有してもよいアルキレン基を表し、n
2は1以上10以下の整数である。)
【請求項2】
前記構造αが、前記ポリエステル樹脂中に0.01質量%以上50質量%以下の割合で含まれる請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記2価フェノール残基が下記式(6)で表される構造を含む請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【化3】
(式(6)中、R
4及びR
5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。X
1は、単結合、―CR
6R
7-、-O-、-CO-又は-S-を表す。またR
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R
6とR
7とは、互いに結合して環を形成していてもよい。m
1及びm
2は、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。)
【請求項4】
前記2価カルボン酸残基が下記式(7)で表される構造を含む請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化4】
(式(7)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。X
2は、単結合、-O-、-S-、下記式(8)で表される構造を有する2価の基又は下記式(9)で表される構造を有する2価の基を表す。kは0以上5以下の整数を表す。)
【化5】
(式(8)中、R
8及びR
9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R
8とR
9とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(9)中、R
10は、アルキレン基、アリーレン基又は上記式(10)で表される基を表す。
式(10)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、Ar
3はアリーレン基を表す。)
【請求項5】
導電性支持体と、前記導電性支持体上に少なくとも感光層とを有する電子写真感光体であって、
前記感光層はポリエステル樹脂を含有し、
前記ポリエステル樹脂は、下記式(4)で表される構造、並びに、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を含有し、
前記2価フェノール残基は下記式(6)で表される構造を含有し、
前記2価カルボン酸残基は下記式(7)で表される構造を含有し、かつ
少なくとも一部の前記式(6)で表される構造と、少なくとも一部の前記式(7)で表される構造とが直接結合している、電子写真感光体。
【化6】
(式(4)中、R
1は置換基を有してもよいアルキレン基又は上記式(5)で表される2価の基を表し、n
6は2以上100以下の整数である。
式(5)中、R
2は置換基を有してもよいアルキレン基を表し、n
2は1以上10以下の整数である。
式(6)中、R
4及びR
5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。X
1は、単結合、―CR
6R
7-、-O-、-CO-又は-S-を表す。またR
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R
6とR
7とは、互いに結合して環を形成していてもよい。m
1及びm
2は、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。
式(7)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。X
2は、単結合、-O-、-S-、下記式(8)で表される構造を有する2価の基又は下記式(9)で表される構造を有する2価の基を表す。kは0以上5以下の整数を表す。)
【化7】
(式(8)中、R
8及びR
9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R
8とR
9とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(9)中、R
10は、アルキレン基、アリーレン基又は上記式(10)で表される基を表す。
式(10)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、Ar
3はアリーレン基を表す。)
【請求項6】
前記式(4)で表される構造が、前記ポリエステル樹脂中に0.01質量%以上50質量%以下の割合で含まれる請求項5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の電子写真感光体を含む電子写真カートリッジ。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の電子写真感光体を含む画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂を含む電子写真感光体、並びに、それを含有する電子写真カートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンターの分野でも広く使われ応用されている。電子写真技術の中核となる電子写真感光体は、無公害で製造が容易である等の利点から有機系の光導電材料を使用した感光体が多く利用されている。
電子写真感光体(以下、単に「感光体」と称することがある。)は、電子写真プロセスにおいて、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等のサイクルで繰り返し使用されるため、その間の様々なストレスを受けて劣化する。感光体の劣化は、感光体の寿命を制限する大きな要因となっているため、いかに劣化を抑制できるかが重要である。また、近年では100,000枚以上印刷する高速機種が開発されており、多量の印刷においても実用可能な長寿命感光体が求められている。
【0003】
感光体の劣化としては、例えば、帯電器として通常用いられるコロナ帯電器から発生する強酸化性のオゾンやNOxによるダメージ、除電光及び外部からの光に起因する感光層組成物の化学的な劣化、像露光で生成したキャリアー(電流)が感光層内を流れること、帯電や転写の際に高電圧がかかること等による感光体に使用している化合物の電気的劣化がある。さらに、クリーニングブレード、磁気ブラシ等の摺擦、現像剤、紙との接触等による感光層表面の摩耗、傷の発生、膜の剥がれ等の機械的劣化がある。また、このような機械的なストレスを継続的に受けることにより、感光層が支持体から剥がれてしまうおそれがあるため、長寿命感光体には感光層の接着性も求められる。
【0004】
上記のような負荷は感光体の表面層である感光層が受け易い。感光層は、通常、バインダー樹脂と光導電性物質とからなり、実質的に機械強度および支持体との接着性を決めるのはバインダー樹脂であるが、光導電性物質のドープ量が相当多いため充分な機械強度を持たせるには至っていない。近年、感光層のバインダー樹脂として、感度や塗布液溶解性、耐摩耗性に優れているポリエステル樹脂が使用されている(特許文献1~3)。
【0005】
ポリエステル樹脂の製造方法は種々知られているが、分子量が高く、且つ着色が少なく、純度の高いポリエステル樹脂が得られる界面重合が広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開平9-22126号公報
【文献】日本国特開2008-293006号公報
【文献】日本国特開2009-271152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、脂肪族2価アルコールを界面重合法により共重合しようとした場合、脂肪族アルコール水酸基の酸解離定数が水と同等であることから、水中でアルコキシドになりづらく反応性が悪い。そのため、ポリエステル樹脂中に脂肪族2価アルコールを導入することができず、2価アルコール残基を共重合したポリエステル樹脂の特性は不明であった。
【0008】
本発明者の検討によると、前記特許文献1~3に記載のポリエステル樹脂を使用した感光体では、100,000枚以上印刷するような高寿命・高速機種においては、機械強度は十分なものではなかった。また、支持体や下引き層との接着性(層同士の接着性)も十分ではなかった。
さらに、前記特許文献3に記載の技術により、脂肪族2価カルボン酸残基を導入することにより耐クラック性を向上させることは可能であるが、十分な耐摩耗性は得られない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、特に耐摩耗性に優れたポリエステル樹脂を含有することで、実用上の負荷に対する耐摩耗性及び初期の電気特性に優れ、好ましくは、さらに層同士の接着性にも優れた電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決しうる電子写真感光体について鋭意検討を行なった結果、感光層に特定の部分構造、並びに、2価フェノール残基および2価カルボン酸残基を含むポリエステル樹脂を用いることにより、耐摩耗性および初期の電気特性に優れ、好ましくは、さらに層同士の接着性にも優れた電子写真感光体を得ることができることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。即ち、発明の要旨は、以下[1]~[8]に存する。
[1]
導電性支持体と、前記導電性支持体上に少なくとも感光層とを有する電子写真感光体であって、
前記感光層はポリエステル樹脂を含有し、
前記ポリエステル樹脂は、下記式(1)で表される構造、下記式(2)で表される構造及び下記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1の構造αを含有し、前記構造αの数平均分子量は15000以下であり、かつ
前記ポリエステル樹脂は、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を含有する、電子写真感光体。
【0011】
【0012】
(式(1)中、R1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、n1は1以上100以下の整数である。
式(2)中、R1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、R3は2価の基を表し、n3は1以上100以下の整数である。
式(3)中、R1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、R3は2価の基を表し、n4及びn5はそれぞれ独立に1以上100以下の整数である。)
【0013】
【0014】
(式(5)中、R2は置換基を有してもよいアルキレン基を表し、n2は1以上10以下の整数である。)
【0015】
[2]
前記構造αが、前記ポリエステル樹脂中に0.01質量%以上50質量%以下の割合で含まれる前記[1]に記載の電子写真感光体。
[3]
前記2価フェノール残基が下記式(6)で表される構造を含む前記[1]又は[2]に記載の電子写真感光体。
【0016】
【0017】
(式(6)中、R4及びR5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。X1は、単結合、―CR6R7-、-O-、-CO-又は-S-を表す。またR6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R6とR7とは、互いに結合して環を形成していてもよい。m1及びm2は、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。)
【0018】
[4]
前記2価カルボン酸残基が下記式(7)で表される構造を含む前記[1]乃至[3]の何れか一に記載の電子写真感光体。
【0019】
【0020】
(式(7)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。X2は、単結合、-O-、-S-、下記式(8)で表される構造を有する2価の基又は下記式(9)で表される構造を有する2価の基を表す。kは0以上5以下の整数を表す。)
【0021】
【0022】
(式(8)中、R8及びR9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R8とR9とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(9)中、R10は、アルキレン基、アリーレン基又は上記式(10)で表される基を表す。
式(10)中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、Ar3はアリーレン基を表す。)
【0023】
[5]
導電性支持体と、前記導電性支持体上に少なくとも感光層とを有する電子写真感光体であって、
前記感光層はポリエステル樹脂を含有し、
前記ポリエステル樹脂は、下記式(4)で表される構造、並びに、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を含有し、
前記2価フェノール残基は下記式(6)で表される構造を含有し、
前記2価カルボン酸残基は下記式(7)で表される構造を含有し、かつ
少なくとも一部の前記式(6)で表される構造と、少なくとも一部の前記式(7)で表される構造とが直接結合している、電子写真感光体。
【0024】
【0025】
(式(4)中、R1は置換基を有してもよいアルキレン基又は上記式(5)で表される2価の基を表し、n6は2以上100以下の整数である。
式(5)中、R2は置換基を有してもよいアルキレン基を表し、n2は1以上10以下の整数である。
式(6)中、R4及びR5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。X1は、単結合、―CR6R7-、-O-、-CO-又は-S-を表す。またR6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R6とR7とは、互いに結合して環を形成していてもよい。m1及びm2は、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。
式(7)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。X2は、単結合、-O-、-S-、下記式(8)で表される構造を有する2価の基又は下記式(9)で表される構造を有する2価の基を表す。kは0以上5以下の整数を表す。)
【0026】
【0027】
(式(8)中、R8及びR9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R8とR9とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(9)中、R10は、アルキレン基、アリーレン基又は上記式(10)で表される基を表す。
式(10)中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、Ar3はアリーレン基を表す。)
【0028】
[6]
前記式(4)で表される構造が、前記ポリエステル樹脂中に0.01質量%以上50質量%以下の割合で含まれる前記[5]に記載の電子写真感光体。
[7]
前記[1]乃至[6]の何れか一に記載の電子写真感光体を含む電子写真カートリッジ。
[8]
前記[1]乃至[6]の何れか一に記載の電子写真感光体を含む画像形成装置。
【0029】
本発明で使用されるポリエステル樹脂は、感光層形成用塗布液に用いる溶媒に対して高い溶解性及び優れた塗布液安定性を有し、それを用いた感光体は耐摩耗性や電気特性に優れ、好ましくは、さらに層同士の接着性等の諸特性にも優れたものとなる。
この耐摩耗性の向上の理由については明らかではないが、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造はいずれも前記ポリエステル樹脂中で比較的柔軟な部位であるため、ポリエステル樹脂が機械的なストレスを受けた際にストレスエネルギーを緩和させることができ、結果として感光体の耐摩耗性を向上できるものと考えられる。
また、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造はいずれも前記ポリエステル樹脂中で比較的運動性が高いと考えられ、より好ましい態様を採用することにより、前記ポリエステル樹脂を含む感光層は、導電性支持体(以下、単に「支持体」と称することがある。)や下引き層と絡み合いやすく、層同士の接着性も向上すると考えられる。
【0030】
また後述するように、前記ポリエステル樹脂を製造する際には、原料化合物のうち比較的反応性が低い、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び/又は式(4)で表される構造を有する2価アルコールと、2価カルボン酸クロリドとをあらかじめ反応させる第1工程と、該第1工程の反応生成物と2価フェノールを反応させる第2工程とをこの順に行うことにより、前記ポリエステル樹脂を効率的に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、特に耐摩耗性に優れ、初期の電気特性にも優れた電子写真感光体が得られる。また、さらに好ましい態様を採用することにより、さらに層同士の接着性にも優れた電子写真感光体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の電子写真感光体を含む画像形成装置の一実施例を表す概念図である。
【
図2】
図2は、実施例で用いた電荷発生層形成用塗布液Aの調製に用いたオキシチタニウムフタロシアニンのCuKα特性X線によるX線回折スペクトルである。
【
図3】
図3は、実施例で用いた電荷発生層形成用塗布液Bの調製に用いたオキシチタニウムフタロシアニンのCuKα特性X線によるX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書において‘質量%’と‘重量%’とは同義であり、‘質量部’、‘重量部’、及び単に‘部’とした場合はいずれも同義である。また、‘ppm’は質量百万分率を示し、‘重量ppm’と同義である。
【0034】
≪ポリエステル樹脂≫
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に少なくとも感光層とを有し、前記感光層は特定のポリエステル樹脂を含有する。
本発明におけるポリエステル樹脂は下記式(1)で表される構造、下記式(2)で表される構造、下記式(3)で表される構造及び下記式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を含む。
【0035】
ポリエステル樹脂の第1の態様は、下記式(1)で表される構造、下記式(2)で表される構造及び下記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造αを含有し、前記構造αの数平均分子量が15000以下であり、さらに、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を含む。
ポリエステル樹脂の第2の態様は、下記式(4)で表される構造、並びに、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を含有し、前記2価フェノール残基が下記式(6)を含み、前記2価カルボン酸残基が下記式(7)を含み、かつ少なくとも一部の前記式(6)で表される構造と少なくとも一部の式(7)で表される構造とが直接結合している。
【0036】
【0037】
(式(1)中、R1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、n1は1以上100以下の整数である。
式(2)中、R1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、R3は2価の基を表し、n3は1以上100以下の整数である。
式(3)中、R1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、R3は2価の基を表し、n4及びn5はそれぞれ独立に1以上100以下の整数である。
式(4)中、R1は置換基を有してもよいアルキレン基又は下記式(5)で表される2価の基を表し、n6は2以上100以下の整数である。)
【0038】
【0039】
(式(5)中、R2は置換基を有してもよいアルキレン基を表し、n2は1以上10以下の整数である。)
【0040】
R1の置換基を有してもよいアルキレン基として直鎖状、分岐状、環状のものが挙げられ、好ましくは直鎖状、分岐状のものであり、更に好ましくは直鎖状のものである。直鎖状である方が、柔軟性構造となり易く耐摩耗性が良好となる。
【0041】
アルキレン基の炭素数に特に制限はないが、通常1以上、好ましくは2以上であり、一方通常8以下、好ましくは6以下、更に好ましくは5以下である。
直鎖状の場合、炭素数は通常2以上であり、一方、通常8以下であり、溶解性の観点から6以下が好ましく、耐摩耗性の観点から4以下がより好ましい。
分岐状の場合、電気特性の観点から炭素数は通常2以上、好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、一方通常8以下、好ましくは6以下である。
環状の場合、炭素数は通常5以上であり、一方通常8以下、好ましくは7以下である。
それぞれ上記範囲内の炭素数にすることにより、前記式(1)で表される構造、前記式(2)で表される構造、前記式(3)で表される構造及び前記式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造部分と、2価フェノール残基や2価カルボン酸残基との相溶性が良く、電荷輸送層の透明性に優れたり、良好な電気特性が得られたりする。
【0042】
アルキレン基の置換基として、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、芳香族基等が挙げられる。置換基の具体例は、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ハロゲン化フェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、ハロゲン化ナフチル基、アントラセン基等が挙げられる。置換基は、耐摩耗性の観点から無置換が好ましい。
【0043】
アルキレン基の具体例としては、直鎖状のものとしてエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。分岐状のものとしてメチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、2-メチル-2-エチル-トリメチレン基、2‐ブチル-2-エチル-トリメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-メチル-ペンタメチレン基、1,2-ジメチル-ペンタメチレン基、1,3-ジメチルペンタメチレン基、1-メチルヘキサメチレン基、2-メチルヘキサメチレン基、3-メチルヘキサメチレン基等が挙げられる。環状のものとして、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、1,4-シクロへキシレン基、1,4-シクロヘキサンジメチレン基等が挙げられる。
【0044】
R2は置換基を有してもよいアルキレン基であり、前記R1が置換基を有してもよいアルキレン基である場合と同様のものが好ましい。
【0045】
R3は、2価の基であれば特に制限はされないが、電気特性の観点から前記R1と同様の基又は置換基を有してもよいアリーレン基が好ましい。
置換基を有してもよいアリーレン基の具体例として、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。電気特性の観点からフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基が好ましく、溶解性の観点からフェニレン基が好ましい。
置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、ベンジル基等が挙げられる。これらの置換基のうち、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基の炭素数は、通常1以上であり、一方通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキソキシ基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、クロロアルキル基、フルオロアルキル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基である。
R3は、耐摩耗性の観点から置換基を有していないアリーレン基がより好ましい。
【0046】
n1は繰返し単位の繰返し数を表し、1以上100以下の整数である。好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、一方、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。上記の範囲とすることにより、ポリエステル樹脂に対し適度な柔軟性を与えることができ、ポリエステル樹脂の耐摩耗性が良好となる。
【0047】
n2は繰返し単位の繰返し数を表し、1以上10以下の整数である。耐摩耗性及び電気特性の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、一層好ましくは2以下であり、特に好ましくは1である。
n3は繰返し単位の繰返し数を表し、1以上100以下の整数である。好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、一方、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。上記の範囲とすることにより、ポリエステル樹脂に対し適度な柔軟性を与えることができ、ポリエステル樹脂の耐摩耗性が良好となる。
【0048】
n4、n5はそれぞれ、繰返し単位の繰返し数を表し、それぞれ独立して1以上100以下の整数である。好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、一方、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。上記の範囲とすることにより、ポリエステル樹脂に対し適度な柔軟性を与えることができ、ポリエステル樹脂の耐摩耗性が良好となる。
【0049】
n6は繰り返し単位の繰返し数を表し、2以上100以下の整数である。好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、一方、好ましくは80以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。上記の範囲とすることにより、ポリエステル樹脂に対し適度な柔軟性を与えることができ、ポリエステル樹脂の耐摩耗性が良好となる。
【0050】
式(1)で表される構造を誘導する2価ポリカーボネートジオールの具体例としては、例えば、ポリ(1,2-エタンジオールカーボネート)、ポリ(1,3-プロパンジオールカーボネート)、ポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールカーボネート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールカーボネート)、ポリ(1,8-オクタンジオールカーボネート)、ポリ(1,10-デカンジオールカーボネート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールカーボネート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールカーボネート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールカーボネート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールカーボネート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールカーボネート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールカーボネート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)カーボネート]等が挙げられる。
これらの中でも、接着性の観点から、ポリ(1,2-エタンジオールカーボネート)、ポリ(1,3-プロパンジオールカーボネート)、ポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールカーボネート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールカーボネート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールカーボネート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールカーボネート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールカーボネート)が好ましい。
耐摩耗性の観点からポリ(1,2-エタンジオールカーボネート)、ポリ(1,3-プロパンジオールカーボネート)、ポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)が特に好ましい。
これらのポリカーボネートジオールは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよく、また複数種を重合した共重合体を用いてもよい。
【0051】
式(2)で表される構造を誘導する2価ポリエステルジオールの具体例としては、例えば、ポリ(1,2-エタンジオールマロネート)、ポリ(1,3-プロパンジオールマロネート)、ポリ(1,4-ブタンジオールマロネート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールマロネート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールマロネート)、ポリ(1,8-オクタンジオールマロネート)、ポリ(1,10-オクタンジオールマロネート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールマロネート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールマロネート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールマロネート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールマロネート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールマロネート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールマロネート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)マロネート]、ポリ(1,2-エタンジオールスクシネート)、ポリ(1,3-プロパンジオールスクシネート)、ポリ(1,4-ブタンジオールスクシネート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールスクシネート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールスクシネート)、ポリ(1,8-オクタンジオールスクシネート)、ポリ(1,10-オクタンジオールスクシネート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールスクシネート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールスクシネート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールスクシネート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールスクシネート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールスクシネート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールスクシネート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)スクシネート]、ポリ(1,2-エタンジオールグルタレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールグルタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールグルタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールグルタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールグルタレート)、ポリ(1,8-オクタンジオールグルタレート)、ポリ(1,10-オクタンジオールグルタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールグルタレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールグルタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールグルタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールグルタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールグルタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールグルタレート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)グルタレート]、ポリ(1,2-エタンジオールアジペート)、ポリ(1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールアジペート)、ポリ(1,8-オクタンジオールアジペート)、ポリ(1,10-オクタンジオールアジペート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールアジペート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールアジペート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)アジペート]、ポリ(1,2-エタンジオールピメレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールピメレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールピメレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールピメレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールピメレート)、ポリ(1,8-オクタンジオールピメレート)、ポリ(1,10-オクタンジオールピメレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールピメレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールピメレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールピメレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールピメレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールピメレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールピメレート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)ピメレート]、ポリ(1,2-エタンジオールスベレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールスベレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールスベレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールスベレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールスベレート)、ポリ(1,8-オクタンジオールスベレート)、ポリ(1,10-オクタンジオールスベレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールスベレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールスベレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールスベレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールスベレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールスベレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールスベレート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)スベレート]、ポリ(1,2-エタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールテレフタレート)、ポリ(1,8-オクタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,10-オクタンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールテレフタレート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)テレフタレート]、ポリ(1,2-エタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールイソフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールイソフタレート)、ポリ(1,8-オクタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,10-オクタンジオールイソフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールイソフタレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールイソフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールイソフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールイソフタレート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)イソフタレート]、ポリ(1,2-エタンジオールフタレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)、ポリ(1,8-オクタンジオールフタレート)、ポリ(1,10-オクタンジオールフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールフタレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノールフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジオールフタレート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)フタレート]等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、溶解性の観点から、ポリ(1,2-エタンジオールマロネート)、ポリ(1,3-プロパンジオールマロネート)、ポリ(1,4-ブタンジオールマロネート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールマロネート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールマロネート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールマロネート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールマロネート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールマロネート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールマロネート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)マロネート]、ポリ(1,2-エタンジオールスクシネート)、ポリ(1,3-プロパンジオールスクシネート)、ポリ(1,4-ブタンジオールスクシネート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールスクシネート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールスクシネート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールスクシネート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールスクシネート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールスクシネート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールスクシネート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)スクシネート]、ポリ(1,2-エタンジオールグルタレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールグルタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールグルタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールグルタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールグルタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールグルタレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールグルタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールグルタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールグルタレート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)グルタレート]、ポリ(1,2-エタンジオールアジペート)、ポリ(1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールアジペート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)アジペート]、ポリ(1,2-エタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)テレフタレート]、ポリ(1,3-プロパンジオールイソフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールイソフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールイソフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,2-エタンジオールフタレート)、ポリ(1,3-プロパンジオールフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールフタレート)が好ましい。
【0053】
接着性の観点から、ポリ(1,2-エタンジオールアジペート)、ポリ(1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールアジペート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)、ポリ[ジ(エチレングリコール)アジペート]、ポリ(1,4-ブタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールイソフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールイソフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールフタレート)がより好ましい。
【0054】
耐摩耗性の観点からポリ(1,2-エタンジオールアジペート)、ポリ(1,3-プロパンジオールアジペート)、ポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)、ポリ(1,4-ブタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールイソフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールフタレート)が特に好ましい。
【0055】
電気特性の観点から、ポリ(1,4-ブタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,3-プロパンジオールテレフタレート)、ポリ(2-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールイソフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールイソフタレート)、ポリ(1,4-ブタンジオールフタレート)、ポリ(1,5-ペンタンジオールフタレート)、ポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールフタレート)がさらに好ましい。
これらのポリエステルジオールは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよく、また複数種を重合した共重合体を用いてもよい。
【0056】
式(3)で表される構造の具体例として以下に示す。
【0057】
【0058】
電気特性および耐摩耗性の観点から以下の具体例に示すようなポリカプロラクトンジオール残基が特に好ましい。
【0059】
【0060】
式(4)で表される構造を誘導する2価ポリ(アルキレングリコール)の具体例としては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(1,2-プロピレングリコール)、ポリ(1,3-プロピレングリコール)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリ(1,5-ペンチレングリコール)等が挙げられる。電気特性及び耐摩耗性の観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが特に好ましい。
これらのポリ(アルキレングリコール)は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよく、また複数種を重合した共重合体を用いてもよい。
【0061】
下記に前記式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造が2価カルボン酸残基と連結する基を例示するが、これらに限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。中でも、原料の製造の簡便性を鑑みると下記式(1-1)、式(2-1)、式(3-1)、及び式(4-1)からなる群より選ばれる少なくとも1の式で表される基を有することが好ましい。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
本発明におけるポリエステル樹脂は、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種を有すればよく、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造及び式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造αを有することが好ましい。これらは、必要に応じて複数の構造を組み合わせて用いることも可能である。なお複数の構造を組合わせて使用する場合、異なる構造中のR1やR2は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
また、本発明におけるポリエステル樹脂は式(4)で表される構造を含むことも好ましく、その場合には、2価フェノール残基が式(6)で表される構造を含有し、2価カルボン酸残基が式(7)で表される構造を有し、かつ、少なくとも一部の式(6)で表される構造と、少なくとも一部の式(7)で表される構造とが直接結合していることが好ましい。
【0067】
前記式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造や前記構造αの含有量に特に制限はないが、ポリエステル樹脂中において、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上である。一方、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。上記の範囲とすることにより、ポリエステル樹脂に適度な柔軟性を与えポリエステル樹脂の耐摩耗性を向上させることができ、また、電荷輸送物質と相溶性に優れるため良好な電気特性を得ることができる。
【0068】
本発明におけるポリエステル樹脂は式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造以外に、任意の非芳香族の2価アルコール残基を含むことが可能である。該非芳香族2価アルコール残基の元なる2価アルコールとして、具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール等の直鎖アルキレンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の分岐アルキレンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の環状アルキレンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、パーフルオロアルキル含有ジオール、ポリシロキサン含有ジオール等が挙げられる。
【0069】
式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1の構造の数平均分子量は、通常16000以下であり、好ましくは15000以下であり、より好ましくは14000以下であり、さらに好ましくは12000以下であり、より更に好ましくは10000以下であり、一層好ましくは8000以下であり、特に好ましくは6000以下であり、最も好ましくは4000以下である。上記の範囲内であると、塗膜にした際相分離の発生が抑制され、電荷の輸送を妨げる局所構造が生じにくくなり、良好な電気特性が得られやすい。
一方、下限に特に制限はないが、通常300以上、好ましくは500以上、より好ましくは800以上、更に好ましくは1000以上である。上記範囲とすることにより、ポリエステル樹脂の応力緩和能力を高めることができ、良好な耐摩耗性が得られやすい。
【0070】
本発明において、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び/又は式(4)で表される構造の数平均分子量を直接測定することはできないが、その部分構造を誘導する原料(プレポリマー)の数平均分子量は、JIS K 1557-1:2007年に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出することができる。
具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、{(56.1×1000×価数)/水酸基価}[mgKOH/g]で算出する。前記式において、価数は1分子中の水酸基の数である。
【0071】
本明細書における数平均分子量は、水酸基換算分子量(OH基換算分子量)と同義である。なお、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び/又は式(4)で表される構造自体の数平均分子量は、通常、これらプレポリマーの数平均分子量から2(両末端の水素原子の原子量)を引いた値になる。
【0072】
本発明におけるポリエステル樹脂は2価フェノール残基を含有する。2価フェノール残基としては特に構造は制限されないが、例えば、下記式(6)で表される構造が挙げられる。また、式(6)で表される構造以外の2価フェノール残基として、2価フェノール残基の元となる2価フェノールを例示すると、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、レソルシノール、カテコール、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、4-ヒドロキシフェニル4-ヒドロキシベンゾエート、1,4-ビス(4-ヒドロキシ安息香酸)フェニル、4,4’-ビス(4-ヒドロキシ安息香酸)ビフェニル、4,4’-ビス(4-ヒドロキシ安息香酸)-3,3’,5,5’-テトラメチル-ビフェニル等が挙げられる。
これらの中で、電気特性、耐摩耗性および溶解性の観点から2価フェノール残基としては下記式(6)で表される構造を含むことが好ましい。
【0073】
【0074】
式(6)中、R4及びR5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。X1は、単結合、-CR6R7-、-O-、-CO-又は-S-を表す。またR6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。また、前記R6とR7とは、互いに結合して環を形成していてもよい。m1及びm2は、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。
【0075】
R4、R5のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられ、製造上の簡便性、耐摩耗性の観点から好ましくはフッ素原子である。
R4、R5の炭化水素基に特に制限はないが、その具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基である。
炭化水素基の炭素数に特に制限はないが通常1以上であり、一方通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下、一層好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。
アルキル基の場合、その炭素数に特に制限はないが、通常1以上であり、一方通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、一層好ましくは6以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは1である。アルケニル基の場合、その炭素数に特に制限はないが、通常1以上であり、一方通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、一層好ましくは6以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは2である。アルキニル基の場合、その炭素数に特に制限はないが、通常1以上であり、一方通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、一層好ましくは6以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは2である。アリール基の場合、その炭素数に特に制限はないが、通常6以上であり、一方通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下、一層好ましくは10以下、特に好ましくは8以下、最も好ましくは6である。
上記の範囲であれば、製造上の簡便性、耐摩耗性の観点から好ましい。
【0076】
R4、R5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基であり、より好ましくはメチル基である。
一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されているアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられ、好ましくはフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、より好ましくはトリフルオロメチル基である。
アリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されているアリール基としては、ハロゲン化フェニル基等が挙げられ、好ましくはフルオロフェニル基である。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキソキシ基等が挙げられる。
上記の置換基であれば、製造上の簡便性、耐摩耗性の観点から好ましい。
【0077】
R6及びR7がそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基の場合、R6及びR7は、R4又はR5と同義である。
R6とR7が互いに結合して環を形成している場合、その炭素数に特に制限はないが、通常5以上、好ましくは6以上であり、一方通常20以下、好ましくは16以下、より好ましく12以下、更に好ましくは10以下であり、より更に好ましくは8以下である。R6とR7が互いに結合して環を形成している場合の具体例としては、シクロアルキリデン基等が挙げられ、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロへプチリデン基が好ましい。これらの置換基に更に前記炭化水素基が置換されている場合も好ましく、その具体例としては、2,2,4-トリメチルペンチリデン基が好ましい。
【0078】
m1、m2は、耐摩耗性の観点から0以上2以下が好ましく、より好ましくは0または1である。
なお、m1、m2が0~3の整数である場合、無置換部位は水素原子を表す。例えば、m1=4かつR4がすべて水素原子であることと、m1=0であることは同義である。同様にm2=4かつR5がすべて水素原子であることと、m2=0であることは同義である。
【0079】
前記式(6)で表される構造は、耐摩耗性の観点から下記式(6-1)で表される構造であることが好ましい。
【0080】
【0081】
式(6)で表される2価フェノール残基の元となる2価フェノールとして具体的に例示すると、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス-(4-ヒドロキー3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
この中でも、二価フェノール成分の製造の簡便性及び溶解性、電気特性を考慮すれば、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルが好ましい。
さらに機械物性を考慮すれば、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンがより好ましい。
【0082】
式(6)で表される2価フェノール残基の含有量は、全2価フェノール残基の合計量に対し、50モル%以上が好ましく、溶解性の観点から、70モル%以上がより好ましい。
【0083】
本発明におけるポリエステル樹脂は2価カルボン酸残基を含有する。2価カルボン酸残基としては特に構造は制限されないが、例えば、下記式(7)で表される構造を有する2価芳香族カルボン酸残基が挙げられる。また、式(7)で表される構造以外の2価カルボン酸残基として、2価カルボン酸残基の元となる2価カルボン酸を例示すると、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の2価脂肪族カルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、ピリジン-2,4-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸等が挙げられる。
【0084】
2価カルボン酸残基は、電気特性および耐摩耗性の観点から下記式(7)で表される構造を含むことが好ましい。
【0085】
【0086】
式(7)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。X2は、単結合、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、下記式(8)で表される構造を有する2価の基又は下記式(9)で表される構造を有する2価の基を表す。kは0以上5以下の整数を表す。
【0087】
【0088】
式(8)中のR8及びR9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。また、R8とR9とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(9)中、R10は、アルキレン基、アリーレン基又は上記式(10)で表される基を表す。
式(10)中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、Ar3はアリーレン基を表す。
【0089】
式(7)中、Ar1及びAr2は、炭素数6~20のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基等が挙げられる。中でも、溶解性と機械物性を両立される観点から、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニレン基がより好ましい。
【0090】
前記アリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、縮合多環基、ハロゲン原子が挙げられる。
感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性を勘案すれば、アルキル基の炭素数は、通常1以上であり、一方通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは2以下である。特に好ましくはメチル基である。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、製造上の簡便性、耐摩耗性の観点から好ましくはフッ素原子である。
Ar1、Ar2それぞれの置換基の数に特に制限は無いが、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることが特に好ましい。
電気特性、溶解性の観点から、Ar1とAr2は同じ置換基を有する同じアリーレン基であることが好ましく、耐摩耗性の観点から無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
【0091】
式(7)中、X2は、単結合、酸素原子、硫黄原子、式(8)で表される構造を有する2価の基又は式(9)で表される構造を有する2価の基を表す。X2は、耐摩耗性の観点から、酸素原子であることが好ましい。
式(8)中、R8及びR9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R8とR9とは、互いに結合して環を形成していてもよい。R8及びR9は、式(6)におけるX1中のR6及びR7と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(9)中、R10は、アルキレン基、アリーレン基又は式(10)で表される基であって、式(10)中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、Ar3はアリーレン基を表す。R10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等が挙げられ、R10のアリーレン基としては、フェニレン基、テルフェニレン基等が挙げられる。式(10)で表される基としては、具体的には下記式(11)で表される基等が挙げられる。
【0092】
【0093】
式(7)中、kは0以上5以下の整数であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下であり、特に好ましくは1である。上記の範囲であれば、耐摩耗性の観点から好ましい。
kが0の場合、2価カルボン酸残基を誘導する2価カルボン酸化合物の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸等が挙げられる。溶解性、耐摩耗性の観点からテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。kが1である場合、式(7)で表される構造は、下記一般式(12)で表される構造であることが特に好ましい。
【0094】
【0095】
式(12)中、R13及びR14は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。m3及びm4は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。
式(12)中、R13及びR14は、式(6)中のR4及びR5と同義であり、好ましい態様も同様である。式(12)で表される構造を有する2価カルボン酸残基を誘導する2価カルボン酸化合物の製造上の簡便性を考慮すれば、R13及びR14は、水素原子、メチル基がより好ましい。
m3及びm4は、それぞれ独立に0以上4以下の整数であり、特に好ましくは、m3=m4=0である。
【0096】
式(12)で表される構造を有する2価カルボン酸残基を誘導する2価カルボン酸化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、機械物性を考慮すれば、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸が特に好ましい。
【0097】
前記ポリエステル樹脂における2価カルボン酸残基は、必要に応じて複数の化合物を組み合わせて用いることも可能である。組み合わせる場合、2価カルボン酸残基に特に制限はないが、溶解性、電気特性および耐摩耗性の観点から、2価カルボン酸残基の元となる2価カルボン酸として、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びビフェニル-4,4’-ジカルボン酸から選ばれるいずれか2種以上を組み合わせることが好ましい。
【0098】
前記ポリエステル樹脂において、式(7)で表される構造を有する2価カルボン酸残基の合計含有量に特に制限はないが、全2価カルボン酸成分に対し70モル%以上であることが好ましい。耐摩耗性の観点から、好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは100モル%である。
前記ポリエステル樹脂は、式(6)で表される構造を有する2価フェノール残基及び式(7)で表される構造を有する2価カルボン酸残基の両方を有していることが好ましく、少なくとも一部の式(6)で表される構造と少なくとも一部の式(7)で表される構造とが直接結合していることがより好ましい。
式(6)で表される構造と式(7)で表される構造が直接結合した部分を有することにより電気特性や耐摩耗性の観点から好ましい。
【0099】
前記ポリエステル樹脂において、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を含み、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を、その合計量でポリエステル樹脂中において80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましい。上記合計量とすることにより、生産性が良く、電気特性及び溶解性、機械特性に優れたポリエステル樹脂を得ることができる。
【0100】
前記ポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)に特に制限はないが、通常、10,000以上であり、機械的強度の観点から、好ましくは25,000以上、さらに好ましくは35,000以上である。また、通常、200,000以下であり、塗布性の観点から、好ましくは150,000以下である。
【0101】
前記ポリエステル樹脂の末端に存在するカルボン酸クロリド基量に特に制限はないが、通常0.1μ当量/g以下、好ましくは0.05μ当量/g以下である。一方、好ましくは0.001μ当量/g以上、より好ましくは0.003μ当量/g以上である。末端カルボン酸クロリド基量が上記範囲であれば、ポリエステル樹脂を電子写真感光体用塗布液とした際の保存安定性が良い。
【0102】
前記ポリエステル樹脂のカルボキシル酸価に特に制限はないが、300μ当量/g以下とすることが好ましく、より好ましくは150μ当量/g以下、特に好ましくは100μ当量/g以下である。一方、0.1μ当量/g以上が好ましく、0.5μ当量/g以上がより好ましい。カルボキシル酸価が上記範囲内であれば、これを用いて得られる電子写真感光体の感度等の電気特性が良好であり、さらに該ポリエステル樹脂を電子写真感光体用塗布液とした際の保存安定性が良い。
【0103】
前記ポリエステル樹脂の末端に存在するOH基量は、通常100μ当量/g以下、好ましくは50μ当量/g以下、特に好ましくは30μ当量/g以下である。一方、0.1μ当量/g以上が好ましく、0.5μ当量/g以上がより好ましい。末端OH基量が上記範囲内であれば、良好な電気特性が得られる。
【0104】
前記ポリエステル樹脂に含まれる全窒素量(T-N量)は、500ppm以下が好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、200ppm以下であることが特に好ましい。一方、0.1ppm以上が好ましく、0.5ppm以上がより好ましい。上記範囲とすることにより、良好な電気特性が得られる。
【0105】
前記ポリエステル樹脂に含まれる遊離の2価カルボン酸量は、特に限定されないが、感光体の電気特性や画像特性の観点から、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。ポリエステル樹脂の安定性の観点から、0.01ppm以上であることが好ましく、0.1ppm以上であることがより好ましい。
【0106】
前記ポリエステル樹脂に含有される遊離の2価フェノールについては、その量は特に限定されないが、感光体の電気特性や透明性の観点から好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。ポリエステル樹脂の安定性の観点から、0.01ppm以上であることが好ましく、0.1ppm以上であることがより好ましい。
【0107】
前記ポリエステル樹脂に含有される遊離の2価アルコールについては、その量は特に限定されないが、感光体の電気特性や透明性の観点から好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。ポリエステル樹脂の安定性の観点から、0.01ppm以上であることが好ましく、0.1ppm以上であることがより好ましい。
【0108】
本発明に係る電子写真感光体における感光層には、前記ポリエステル樹脂が含まれていればよいが、前記ポリエステル樹脂と他の樹脂とを混合して用いることも可能である。ここで混合される他の構造を有する樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体及びその共重合体;ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂及び種々の熱硬化性樹脂等及びこれらの共重合体が挙げられる。これら樹脂のなかでもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂とシリコーン樹脂の共重合体及びポリエステル樹脂とシリコーン樹脂の共重合体が好ましい。
【0109】
また、混合される他の樹脂の混合割合は、特に限定されないが、前記式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造が、本発明のポリエステル樹脂中において0.01質量%以上10質量%以下の割合で含まれる場合、前記ポリエステル樹脂の割合を超えない範囲で併用することが好ましい。具体的には前記ポリエステル樹脂以外の樹脂の含有量は、感光層に含まれる全バインダー樹脂100質量部に対して、通常50質量部以下であり、耐摩耗性の観点から、30質量部以下が好ましい。
【0110】
一方、前記式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造が、本発明におけるポリエステル樹脂中において、10質量%より多く50質量%以下の割合で含まれる場合、前記ポリエステル樹脂に対する他の樹脂の含有量は前記全バインダー樹脂を100質量部とすると、50質量部以上が好ましく、電気特性の観点から、60質量部以上が好ましく、さらに70質量部以上が好ましい。一方、通常99.9質量部以下、好ましくは99質量部以下、より好ましくは95質量部以下であり、更に好ましくは90質量部以下、一層好ましくは85質量部以下である。上記範囲とすることにより、良好な電気特性および耐摩耗性が得られる。
【0111】
前記他の樹脂としては下記式(14)で表される繰返し構造を有するポリカーボネート樹脂や、下記式(15)で表される繰返し構造を有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0112】
【0113】
式(14)中、R15及びR16は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。X3は、単結合、―CR17R18-、-O-、-CO-又は-S-を表す。またR17、R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R17とR18とは、互いに結合して環を形成していてもよい。m5及びm6は、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。
【0114】
【0115】
式(15)中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。X4は、単結合、酸素原子、硫黄原子、下記式(16)で表される構造を有する2価の基又は下記式(17)で表される構造を有する2価の基を表す。lは0以上5以下の整数を表す。R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。X5は、単結合、―CR26R27-、-O-、-CO-又は-S-を表す。またR26及びR27はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。前記R26とR27とは、互いに結合して環を形成していてもよい。m7及びm8は、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。
【0116】
【0117】
式(16)中、R21及びR22は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、前記炭化水素基およびアルコキシ基は、一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。また、R21とR22とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(17)中、R23は、アルキレン基、アリーレン基又は上記式(18)で表される基であり、式(18)中、R24及びR25は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、Ar6はアリーレン基を表す。
【0118】
式(14)又は式(15)におけるR15、R16、R19及びR20は、それぞれ独立に上記式(6)におけるR4及びR5と同様の基から選択することが好ましい。
式(14)又は式(15)におけるm5、m6、m7及びm8は、それぞれ独立に上記式(6)におけるm1及びm2と同様の基から選択することが好ましい。
式(15)におけるAr4及びAr5は、それぞれ独立に上記式(7)におけるAr1及びAr2と同様の基から選択することが好ましい。
式(15)におけるX4は、上記式(7)におけるX2と同様の基から選択することが好ましい。
式(15)におけるlは、上記式(7)におけるkと同様の範囲が好ましい。
【0119】
本発明における感光層におけるバインダー樹脂として、前記ポリエステル樹脂以外に含まれていてもよい前記他の樹脂の好適な構造の具体例を以下に表す。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなるバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
これらの中でも、resin1、resin2、resin3、resin6、resin8、resin9、resin12がより好ましい。
【0124】
≪ポリエステル樹脂の製造方法≫
次に、本発明に係る電子写真感光体の感光層に含まれるポリエステル樹脂(以下、「電子写真感光体用ポリエステル樹脂」と称することがある。)の製造方法について説明する。
電子写真感光体用ポリエステル樹脂は一般的には不純物の含有量が少ない界面重合法で製造される。しかしながら、本発明におけるポリエステル樹脂を製造する場合、前記式(1)~(4)のいずれかで表される構造を誘導する原料(プレポリマー)として2価アルコールを使用する場合、当該2価アルコールは2価フェノールに比べ反応性が劣るため、界面重合法では2価の酸クロリドとのエステル化反応が十分に進行しない。そこで、2価アルコールでもエステル化反応が進行しやすい溶液重合法、又は溶液重合法と界面重合法を組み合わせた重合方法を使用することが好ましい。
【0125】
また、本発明におけるポリエステル樹脂は、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1の構造を有する2価アルコールと、2価フェノールを原料として用いて製造される。前記2価アルコールと2価フェノールとは大きく反応性が異なる。これら式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び/又は式(4)で表される構造を有する2価アルコールと、2価フェノールとを同時に反応させた場合、反応性の高い2価フェノールのみ反応が優先的に進行し、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び/又は式(4)で表される構造を有する2価アルコールがポリエステル樹脂中にほとんど導入されず、目的物が得られない。そのため、予め反応性が劣る式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び/又は式(4)で表される構造を有する2価アルコールを2価カルボン酸クロリド等の2価酸クロリドと反応させる第1工程を経た後に、第1工程の反応生成物に対し反応性の高い2価フェノールを反応させる第2工程とをこの順に行うことにより目的とする共重合体ポリエステル樹脂が得られる。以下に溶液重合法によるポリエステル樹脂の製造法の一例を説明する。
【0126】
<溶液重合法による製造方法>
溶液重合法による製造の場合は、例えば、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び/又は式(4)で表される構造を有する2価アルコール(以下、単に「2価アルコール」と称することがある)及び2価酸クロリドとして2価カルボン酸クロリドを溶媒に溶解させ、トリエチルアミン等の塩基を添加し、2価アルコールのエステル化の第1工程を経た後に、2価フェノールを反応させる第2工程を経ることで製造することができる。重合温度は-10℃~40℃の範囲、重合時間は0.5時間~10時間の範囲であるのが生産性の点で好ましい。重合終了後、有機相中に溶解しているポリエステル樹脂を、洗浄、回収することにより、目的とするポリエステル樹脂が得られる。
【0127】
溶液重合法で用いられる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジプロピルエチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N,N-ジエチルイソプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミンや、ピリジン、4-メチルピリジン等のピリジン類及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等の有機塩基が挙げられる。また、フォスファゼン塩基、無機塩基等エステル化反応に使用されるような塩基ならば特に制限されない。これらの塩基の中で、エステル化反応の反応性の観点からトリエチルアミン、N,N-ジプロピルエチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、ピリジンが好ましく、酸クロリドの分解抑制や洗浄における除去の容易さの観点からトリエチルアミンが特に好ましい。
塩基の使用量としては、2価アルコールと反応させる第1工程では、2価アルコールの1~3倍当量の範囲が好ましく、第2工程では反応系中に含まれるカルボン酸クロリド基の1.01倍当量~2倍当量の範囲が好ましい。
【0128】
溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物、トルエン、アニソール、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素化合物、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等のエーテル化合物、酢酸エチル、安息香酸メチル、酢酸ベンジル等のエステル化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド化合物等が挙げられる。また、ピリジンを塩基かつ溶媒として使用してもよい。これらの中で、モノマーや生成するオリゴマーの溶解性及びエステル化反応の反応性の観点から、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ピリジンが好ましい。さらに洗浄効率及び電気特性の観点からジクロロメタンが特に好ましい。
【0129】
使用する2価の酸クロリドの純度は98.0%以上が好ましく、99.0%以上がさらに好ましく、99.5%以上が特に好ましい。純度が低い場合、2価の酸クロリドが加水分解し1つがカルボン酸となった1価の酸クロリドおよび両方カルボン酸になった2価のカルボン酸が含まれ、この不純物が停止剤の役割を果たす可能性がある。そのため、上記範囲の純度とすることにより十分に伸長したポリエステル樹脂を得ることができる。
【0130】
使用する2価フェノールの純度は98.0%以上が好ましく、98.5%以上がさらに好ましく、99.0%以上が特に好ましい。98.0%以上の純度とすることにより、ポリエステル樹脂の分子量を十分伸長させることができ、また、良好な電気特性が得られる。
使用する2価アルコールの純度は95.0%以上が好ましく、98.0%以上がさらに好ましい。95.0%以上の純度とすることにより良好な電気特性が得られやすい。
【0131】
溶液重合法においてポリエステル樹脂を製造する場合、2価アルコール及び2価フェノールと2価カルボン酸クロリドの比率は特に決まりがないが、高分子量のポリエステル樹脂の製造及び末端基の制御の観点から、2価アルコール及び2価フェノールの合計量:2価カルボン酸クロリドはモル比率で1:0.95~1:1.05が好ましく、さらに好ましくは1:0.99~1:1.01、特に好ましくは1:0.992~1:1.008である。
【0132】
ポリエステル樹脂を製造する際には、分子量調節剤を使用することができる。分子量調節剤としては、例えば、フェノール、o-,m-,p-クレゾール、o-,m-,p-エチルフェノール、o-,m-,p-プロピルフェノール、o-,m-,p-(tert-ブチル)フェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6-ジメチルフェノール誘導体、2-メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類;o-,m-,p-フェニルフェノール等の1官能性のフェノール;酢酸クロリド、酪酸クロリド、オクチル酸クロリド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルホニルクロリド、ベンゼンスルフィニルクロリド、スルフィニルクロリド、ベンゼンホスホニルクロリドやそれらの置換体等の1官能性酸ハロゲン化物等が挙げられる。
また、メタノール、エタノール、プロパノール等の1官能脂肪族アルコールや、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシメタクリレート等のアクリル類を有する1官能アルコール、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-n-オクタノール、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノール等のパーフルオロアルキルを有する1官能アルコール、シロキサンを有する1官能アルコール等が挙げられる。
これらの分子量調節剤の中でも、分子量調節能が高く、かつ溶液安定性の点で好ましいのは、o-,m-,p-(tert-ブチル)フェノール、2,6-ジメチルフェノール誘導体、2-メチルフェノール誘導体である。特に好ましくは、p-(tert-ブチル)フェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノールである。
【0133】
また、2価フェノールを酸化させないために、重合反応中や洗浄液中に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト(次亜硫酸ナトリウム)、二酸化硫黄、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、酸化防止の効果及び環境負荷の低減からもハイドロサルファイトが特に好ましい。
酸化防止剤の使用量に特に制限はないが、全2価フェノールに対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、一方通常10.0質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
【0134】
ポリエステル樹脂の重合後の洗浄方法は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の方法を用いることができるが、例えば、ポリエステル樹脂の溶液を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液;塩酸、硝酸、リン酸等の酸水溶液;水等で洗浄した後、静置分離、遠心分離等により分液する方法が挙げられる。
洗浄後のポリエステル樹脂溶液は、ポリエステル樹脂が不溶の水、アルコールその他有機溶媒中に析出させるか、ポリエステル樹脂の溶液を温水又はポリエステル樹脂が不溶の分散媒中で溶媒を留去するか、加熱、減圧等により溶媒を留去することにより取り出してもよいし、スラリー状で取り出した場合は遠心分離器、濾過器等により固体を取り出すこともできる。
【0135】
ポリエステル樹脂の乾燥は、通常ポリエステル樹脂の分解温度以下の温度で乾燥するが、好ましくは20℃以上、ポリエステル樹脂の溶融温度以下で乾燥することができる。このとき減圧下で乾燥することが好ましい。
乾燥時間は残存溶媒等の不純物の純度が一定以下になるまでの時間以上行うことが好ましく、具体的には、残存溶媒が通常1000ppm以下、好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下になる時間以上乾燥する。
【0136】
≪電子写真感光体≫
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けた感光層を少なくとも有し、前記感光層が、前記ポリエステル樹脂を含有するものである。
前記ポリエステル樹脂の一態様としては、前記式(1)で表される構造、前記式(2)で表される構造及び前記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1の構造αを含有し、前記構造αの数平均分子量は15000以下であり、かつ前記ポリエステル樹脂は、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を含有する。
また、前記ポリエステル樹脂の他の一態様としては、前記式(4)で表される構造、並びに、2価フェノール残基及び2価カルボン酸残基を含有し、前記2価フェノール残基は前記式(6)で表される構造を含有し、前記2価カルボン酸残基は前記式(7)で表される構造を含有し、かつ少なくとも一部の前記式(6)で表される構造と、少なくとも一部の前記式(7)で表される構造とが直接結合している。
なお、本発明に係る電子写真感光体の感光層におけるポリエステル樹脂の好ましい態様は、上記≪ポリエステル樹脂≫に記載された好ましい態様と同様である。
【0137】
感光層の具体的な構成としては、例えば、導電性支持体上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とする電荷輸送層と、を積層した積層型感光体;導電性支持体上に、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた感光層を有する分散型(単層型)感光体;等が挙げられる。
前記ポリエステル樹脂は、通常、バインダー樹脂として電荷輸送物質を含有する層に用いられ、好ましくは積層型感光体の電荷輸送層に用いられる。
【0138】
<導電性支持体>
導電性支持体について特に制限は無いが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0139】
導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いてもよい。
【0140】
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
【0141】
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでもよい。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
【0142】
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂や、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。また、下引き層は、単一層からなるものであっても、複数層からなるものであってもよい。下引き層には、公知の酸化防止剤等、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させて用いてもよい。
【0143】
下引き層の膜厚は、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、繰り返し特性、及び製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0144】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムの粒子が好ましく、特に酸化チタンの粒子が好ましい。
酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
【0145】
金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の点から、その平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、特に10nm以上50nm以下が好ましい。この平均一次粒径は、TEM写真等から得ることができる。
【0146】
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタンアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知のバインダー樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を表すことから好ましい。
【0147】
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、バインダー樹脂に対して、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0148】
<感光層>
感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、何れの形式であってもよい。
積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
【0149】
[電荷発生層-積層型]
積層型感光体(機能分離型感光体)の場合、電荷発生層は、電荷発生物質をバインダー樹脂で結着することにより形成される。その膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上であり、また、通常10μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲である。
【0150】
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
【0151】
電荷発生物質として無金属フタロシアニン化合物、金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られ、またモノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、又は660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光、例えば450nm、400nm近辺の波長を有するレーザーに対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
【0152】
電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を使用する場合、具体的には無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム等の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類等が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ-オキソ-ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ-オキソ-アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
【0153】
また、これらフタロシアニンの中でも、A型(別称β型)、B型(別称α型)、及び粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.1゜、もしくは27.3゜に明瞭なピークを表すことを特徴とするD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型及び28.1゜に最も強いピークを有すること、また26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有し、かつ25.9゜の半値幅Wが0.1゜≦W≦0.4゜であることを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ-オキソ-ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。これらの中でも、D型(Y型)チタニルフタロシアニンが良好な感度を表すため好ましい。
【0154】
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、日本国特開平10-48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
【0155】
電荷発生層に用いるバインダー樹脂は特に制限されないが、例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アルキッド樹脂、シリコン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いてもよい。
【0156】
電荷発生層において、バインダー樹脂と電荷発生物質との配合比(質量)は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常10質量部以上、好ましくは30質量部以上であり、また、通常1000質量部以下、好ましくは500質量部以下の範囲である。
【0157】
[電荷輸送層-積層型]
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。電荷輸送層は、単一の層から成ってもよいし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでもよい。その膜厚は、通常、5μm~50μmであり、好ましくは10μm~45μmである。
【0158】
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。電荷輸送物質の例としては、2,4,7-トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は単独で用いてもよいし、いくつかを混合してもよい。電荷輸送物質の好適な構造の具体例を以下に表す。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
上記の電荷輸送物質のうち、好ましくは、HTM6、HTM10、HTM25、HTM26、HTM29、HTM31、HTM32、HTM33、HTM34、HTM35、HTM37、HTM39、HTM40、HTM41、HTM42、HTM43及びHTM44からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、HTM6、HTM26、HTM29、HTM34、HTM39、HTM40、HTM41、HTM42、HTM43及びHTM44からなる群から選ばれる少なくとも1種である。上記の電荷輸送物質であれば、本発明のポリエステル樹脂を用いた場合においても良好な電気特性を得られるため好ましい。
【0163】
前記ポリエステル樹脂は、電荷輸送層のバインダー樹脂として用いられることが好ましい。前記バインダー樹脂は、前記ポリエステル樹脂とその他の構造を有する樹脂を混合してもよく、他の樹脂としては、前記感光層において混合される他の樹脂として記載したものが挙げられる。
バインダー樹脂全体において、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造の含有量に特に制限はないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、一方、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。上記範囲とすることで良好な電気特性や耐摩耗性が得られるだけでなく、良好な耐フィルミング性が得られる。
【0164】
バインダー樹脂全体と電荷輸送物質との割合としては、通常同一層中のバインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質を10質量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から20質量部以上が好ましく、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から30質量部以上がより好ましい。一方、通常電荷輸送物質を150質量部以下、感光層の熱安定性の観点から好ましくは120質量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送物質とバインダー樹脂との相溶性の観点から100質量部以下がより好ましく、耐摩耗性の観点から80質量部以下がさらに好ましい。
【0165】
尚、電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、染料、顔料、レベリング剤等の添加剤を含有させてもよい。
可塑剤の例としては、炭化水素化合物、エステル化合物、エーテル化合物、チオエーテル化合物等が挙げられる。電気特性の観点から、炭化水素化合物、エステル化合物、エーテル化合物が好ましく、炭化水素化合物、エーテル化合物がより好ましい。可塑剤は、バインダー樹脂へ相溶性の観点から、芳香族基を有することが好ましい。
【0166】
可塑剤の分子量は、150以上が好ましく、170以上がより好ましく、200以上がさらに好ましく、一方、400以下が好ましく、380以下がより好ましく、350以下がさらに好ましい。上記範囲内の分子量とすることで、成膜/乾燥時における昇華を抑えつつ、バインダー樹脂と馴染むことにより耐クラック性や耐ガス性を向上させることが可能となる。
【0167】
これらの可塑剤は単独で用いてもよいし、いくつかを混合してもよい。可塑剤の好適な構造の具体例を以下に表す。
【0168】
【0169】
これらの可塑剤の中でも、好ましくはAD-2、AD-4、AD-5、AD-6、AD-8、AD-10、AD-11、AD-13であり、より好ましくは、AD-2、AD-6、AD-8、AD-10、AD-11、AD-13である。上記の可塑剤であれば、電気特性を悪化させることなく、耐ガス性や耐クラック性を向上させることができる。
【0170】
酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、トリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられる。
【0171】
電荷輸送層には、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、アルミナ、シリカ等の無機粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン粒子、ポリエチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋(メタ)アクリレート粒子等の有機粒子等を含有させてもよい。
【0172】
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダー樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
【0173】
電荷輸送物質及びバインダー樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
【0174】
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があることから、単層型感光層全体に対して通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上であり、また、通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上であり、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0175】
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上であり、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。この場合にも成膜性、可撓性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、保存安定性を向上させる酸化防止剤、界面活性剤、例えばシリコ-ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていてもよい。また、アルミナ、シリカ等の無機粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン粒子、ポリエチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋(メタ)アクリレート粒子等の有機粒子等を含有させてもよい。
【0176】
<その他の機能層>
耐摩耗性を向上させる目的で最表面に保護層を有してもよい。保護層のバインダー樹脂として本発明のポリエステル樹脂を含有させてもよい。
さらにその他の層として必要に応じて、バリアー層、接着層、ブロッキング層等の中間層、透明絶縁層等、電気特性、機械特性の改良のための層を有していてもよい。
【0177】
<各層の形成方法>
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
【0178】
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2-ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n-ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。これらの溶剤の中で、環境配慮の観点から非ハロゲン系溶剤が好ましく、溶解性の観点から、トルエン、キシレン、アニソール、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンが特に好ましい。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0179】
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上とし、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を通常10cps以上、好ましくは50cps以上とし、また、通常500cps以下、好ましくは400cps以下の範囲とする。
【0180】
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上とし、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、通常0.01cps以上、好ましくは0.1cps以上とし、また、通常20cps以下、好ましくは10cps以下の範囲とする。
【0181】
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
【0182】
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行なってもよい。
【0183】
<画像形成装置>
本発明に係る電子写真感光体を含む画像形成装置(本発明に係る画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を表す
図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0184】
図1に表すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明に係る電子写真感光体であれば特に制限はないが、
図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0185】
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。すなわち、本発明は前記電子写真感光体を含む電子写真カートリッジにも関する。
この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【実施例】
【0186】
以下に、本発明の具体的態様を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0187】
[ポリエステル樹脂の製造]
合成例1(ポリエステル樹脂(1)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)(2.00g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(11.64g)を秤取り、ジクロロメタン(50mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(0.41g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。
【0188】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(9.24g)を加えた。その後、トリエチルアミン(7.95g)とジクロロメタン(20mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。反応内温を18~23℃に保ちながら、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(190mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(190mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(190mL)にて洗浄を2回行った。
【0189】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(300ml)を加えて希釈し、メタノール(2000ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(1)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は38,000であった。また、ポリエステル樹脂(1)中に含まれるポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)残基量は10質量%である。ポリエステル樹脂(1)の構造式を以下に表す。
【0190】
【0191】
[粘度平均分子量(Mv)の測定]
ポリエステル樹脂をジクロロメタンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製した。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定した。以下の式に従って粘度平均分子量(Mv)を算出した。
a=0.438×ηsp+1
ηsp=t/t0-1
b=100×ηsp/C
C=6.00(g/L)
η=b/a
Mv=3207×η1.205
【0192】
合成例2(ポリエステル樹脂(2)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)(1.00g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(12.17g)を秤取り、ジクロロメタン(50mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(0.12g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。
【0193】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(9.82g)を加えた。その後、トリエチルアミン(8.77g)とジクロロメタン(20mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。反応内温を18~23℃に保ちながら、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(190mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(190mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(190mL)にて洗浄を2回行った。
【0194】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(300ml)を加えて希釈し、メタノール(2000ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(2)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は48,000であった。また、ポリエステル樹脂(2)中に含まれるポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)残基量は5質量%である。ポリエステル樹脂(2)の構造式を以下に表す。
【0195】
【0196】
合成例3(ポリエステル樹脂(3)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にポリ(2,2-ジメチル1,3-プロパンジオールカーボネート)(分子量1000:OH基換算)(1.00g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(12.23g)を秤取り、ジクロロメタン(50mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(0.26g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。
【0197】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(9.76g)を加えた。その後、トリエチルアミン(8.74g)とジクロロメタン(20mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。反応内温を18~23℃に保ちながら、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(190mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(190mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(190mL)にて洗浄を2回行った。
【0198】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(300ml)を加えて希釈し、メタノール(2000ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(3)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は47,000であった。また、ポリエステル樹脂(3)中に含まれるポリ(2,2-ジメチル1,3-プロパンジオールカーボネート)残基量は5質量%である。ポリエステル樹脂(3)の構造式を以下に表す。
【0199】
【0200】
合成例4(ポリエステル樹脂(4)の製造)
合成例1のポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)をポリ(2,2-ジメチル1,3-プロパンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)に変更した以外は、合成例1と同様に操作しポリエステル樹脂(4)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は37,000であった。また、ポリエステル樹脂(4)中に含まれるポリ(2,2-ジメチル1,3-プロパンジオールカーボネート)残基量は10質量%である。ポリエステル樹脂(4)の構造式を以下に表す。
【0201】
【0202】
合成例5(ポリエステル樹脂(5)の製造)
合成例1のポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)をポリ(1,10-デカンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)に変更した以外は、合成例1と同様に操作しポリエステル樹脂(5)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は45,000であった。また、ポリエステル樹脂(5)中に含まれるポリ(1,10-デカンジオールカーボネート)残基量は10質量%である。ポリエステル樹脂(5)の構造式を以下に表す。
【0203】
【0204】
合成例6(ポリエステル樹脂(6)の製造)
合成例1のポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)をポリ[ジ(エチレングリコール)アジペート](分子量2500:OH基換算)に変更した以外は、合成例1と同様に操作しポリエステル樹脂(6)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は41,000であった。また、ポリエステル樹脂(6)中に含まれるポリ[ジ(エチレングリコール)アジペート]残基量は10質量%である。ポリエステル樹脂(6)の構造式を以下に表す。
【0205】
【0206】
合成例7(ポリエステル樹脂(7)の製造)
合成例1のポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)をポリ[カプロラクトンジオール](分子量2000:OH基換算)に変更した以外は、合成例1と同様に操作しポリエステル樹脂(7)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は44,000であった。また、ポリエステル樹脂(7)中に含まれるポリ[カプロラクトンジオール]残基量は10質量%である。ポリエステル樹脂(7)の構造式を以下に表す。
【0207】
【0208】
合成例8(ポリエステル樹脂(8)の製造)
合成例1のポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)をポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000:OH基換算)に変更した以外は、合成例1と同様に操作しポリエステル樹脂(8)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は35,000であった。また、ポリエステル樹脂(8)中に含まれるポリテトラメチレンエーテルグリコール残基量は10質量%である。ポリエステル樹脂(8)の構造式を以下に表す。
【0209】
【0210】
合成例9(ポリエステル樹脂(9)の製造)
合成例2のポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)をポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000:OH基換算)に変更した以外は、合成例2と同様に操作しポリエステル樹脂(9)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は50,000であった。また、ポリエステル樹脂(9)中に含まれるポリテトラメチレンエーテルグリコール残基量は5質量%である。ポリエステル樹脂(9)の構造式を以下に表す。
【0211】
【0212】
合成例10(ポリエステル樹脂(10)の製造)
合成例1のポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量2000:OH基換算)をポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量3000:OH基換算)に変更した以外は、合成例1と同様に操作しポリエステル樹脂(10)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は52,000であった。また、ポリエステル樹脂(10)中に含まれるポリテトラメチレンエーテルグリコール残基量は10質量%である。ポリエステル樹脂(10)の構造式を以下に表す。
【0213】
【0214】
合成例11(ポリエステル樹脂(11)の製造)
合成例3のポリ(1,4-ブタンジオールカーボネート)(分子量1000:OH基換算)をポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量650:OH基換算)に変更した以外は、合成例3と同様に操作しポリエステル樹脂(11)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は37,000であった。また、ポリエステル樹脂(11)中に含まれるポリテトラメチレンエーテルグリコール残基量は5質量%である。ポリエステル樹脂(11)の構造式を以下に表す。
【0215】
【0216】
合成例12(ポリエステル樹脂(12)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)(分子量2000:OH基換算)(2.48g)およびテレフタロイルクロリド(6.24g)、イソフタロイルクロリド(6.24g)を秤取り、ジクロロメタン(70mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(0.31g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら1.5時間撹拌を続けた。
【0217】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(14.35g)および2,3,5-トリメチルフェノール(0.16g)を加え、ジクロロメタン(70mL)で希釈した。その後、トリエチルアミン(13.34g)とジクロロメタン(60mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。30分間撹拌した後、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、反応内温を18~23℃に保ちながら、さらに3時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(240mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(240mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(240mL)にて洗浄を2回行った。
【0218】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(200ml)を加えて希釈し、メタノール(2500ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(12)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は31,000であった。また、ポリエステル樹脂(12)中に含まれるポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)残基量は10質量%である。ポリエステル樹脂(12)の構造式を以下に表す。
【0219】
【0220】
比較合成例1(ポリエステル樹脂(13)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000:OH基換算)(2.00g)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(9.24g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(11.65g)を秤取り、ジクロロメタン(80mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(8.55g)とジクロロメタン(20mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ30分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら1時間撹拌を続けた。続いて、ジクロロメタン(150mL)で希釈した後、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(190mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(190mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(190mL)にて洗浄を2回行った。
【0221】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(300ml)を加えて希釈し、メタノール(2000ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(13)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は102,000であった。なお、NMR測定の結果、ポリテトラメチレンエーテルグリコールは共重合されておらず、未反応のポリテトラメチレングリコールが2.5質量%含まれていた。
【0222】
比較合成例2(ポリエステル樹脂(14)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にバイロン200(東洋紡(株)社製、非晶性ポリエチレンテレフタレート変性樹脂、分子量17000:OH基換算)(3.00g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(17.24g)を秤取り、ジクロロメタン(70mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(0.07g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。
【0223】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(13.94g)、2,3,5-トリメチルフェノール(0.08g)を加え、ジクロロメタン(150mL)で希釈した。その後、トリエチルアミン(12.69g)とジクロロメタン(100mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。30分撹拌後、ジクロロメタン(50mL)で希釈し、反応内温を18~23℃に保ちながら、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(290mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(290mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(290mL)にて洗浄を2回行った。
【0224】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(200ml)を加えて希釈し、メタノール(2500ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(14)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は53,000であった。また、ポリエステル樹脂(14)中に含まれるバイロン200残基量は10質量%である。
【0225】
<感光体シート(電子写真感光体)の作製>
[実施例13]
10質量部のオキシチタニウムフタロシアニンと、150質量部の4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノンとを混合し、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い顔料分散液を製造した。尚、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)9.3゜、10.6゜、13.2゜、15.1゜、15.7゜、16.1゜、20.8゜、23.3゜、26.3゜及び27.1゜に強い回折ピークを表す。
【0226】
この顔料分散液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業株式会社製、商品名デンカブチラール♯6000C)の5質量%1,2-ジメトキシエタン溶液を50質量部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHH)の5質量%1,2-ジメトキシエタン溶液を50質量部混合し、更に、適量の1,2-ジメトキシエタンを加え、固形分濃度4.0%の電荷発生層形成用塗布液を調製した。この電荷発生層形成用塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が0.4μmになるように塗布、乾燥して電荷発生層を設けた。
【0227】
次に、電荷輸送物質として、下記に表す構造を主成分とする、幾何異性体の化合物群からなる、日本国特開2002-080432号公報の実施例1に記載の方法で製造した混合物(HTM39)を50質量部、前記合成例1で製造したポリエステル樹脂(1)を100質量部、酸化防止剤(イルガノックス1076)8質量部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05質量部を、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶媒(テトラヒドロフラン80質量%、トルエン20質量%)640質量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
【0228】
【0229】
この電荷輸送層形成用塗布液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シート(以下、単に「感光体」と称することがある。)を作製した。
【0230】
[実施例14~24]
表-1に示すように、ポリエステル樹脂(1)を合成例2~12で製造したポリエステル樹脂(2)~(12)に代えた以外は実施例13と同様にして、感光体シートを作製した。
【0231】
[比較例3]
ポリエステル樹脂(1)を日本国特開2006-53549号公報の実施例6に記載の方法により製造した以下に表す構造を有するポリエステル樹脂(15)(粘度平均分子量36,200)に代えた以外は実施例13と同様にして、感光体シートを作製した。
【0232】
【0233】
[比較例4]
ポリエステル樹脂(1)を比較合成例1で製造したポリエステル樹脂(13)に代えた以外は実施例13と同様にして、感光体シートを作製した。
【0234】
[比較例5]
ポリエステル樹脂(1)を比較合成例2で製造したポリエステル樹脂(14)に代えた以外は実施例13と同様にして、感光体シートを作製した。
【0235】
[電気特性評価]
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(電子写真学会編「続電子写真技術の基礎と応用」、コロナ社、1996年11月15日発行、404-405頁記載)を使用し、上記感光体をアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を-700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用い、露光光を2.4μJ/cm2照射した時点の表面電位(VL)を測定した。
VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を139msとした。また、表面電位が初期表面電位の半分(-350V)となる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー:μJ/cm2)を感度(E1/2)として測定した。VLの値の絶対値が小さいほど電気特性が良好であることを示し、E1/2の値が小さいほど高感度であることを示す。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%下(N/N)で行った。結果を表-1に示す。
【0236】
[摩耗試験]
感光体フィルムを直径10cmの円状に切断しテーバー摩耗試験機(東洋精機社製)により、摩耗評価を行った。試験条件は、25℃、50%RHの雰囲気下、摩耗輪CS-10Fを用いて、荷重500gで1000回回転後の摩耗量を試験前後の質量を比較することにより測定した。値が小さい方が耐摩耗性に優れる。結果を表-1に示す。
【0237】
[接着性試験]
上記各実施例13~24、比較例3~5における感光体フィルムの作製において、アルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシートに代えて、厚さ1mmのアルミ板にした以外は同様にアルミ板上に電荷発生層および実施例、比較例に応じた電荷輸送層を塗布した感光層を作製した。
アルミ板上の感光層に対してNTカッターを用いて、2mm間隔で縦に6本、横に6本切り込みを入れ、5×5の25マスを作製した。その上からセロハンテープ(3M)を密着して貼り付け、接着面に対し90゜に引き上げることで、感光層(電荷発生層)と下引き層の接着性を試験した。これを2箇所行い、計50マスのうち、支持体上に残存した感光層のマス数の割合を残存率として評価した。評価結果は、残存率90%以上を◎、70~90%以上を○、残存率20~70%を△、残存率20%以下を×とした。結果を表-1に示す。
【0238】
【0239】
以上から、式(1)で表される構造、式(2)で表される構造、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を含み、2価フェノール、及び2価カルボン酸を共重合させたポリエステル樹脂をバインダー樹脂に用いることにより、電子写真感光体の電気特性を維持しながら耐摩耗性を向上させることができる(実施例13~24)。特に式(1)で表される構造、式(2)で表される構造及び式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造αを含有するポリエステル樹脂をバインダー樹脂に用いることで、感光層の接着性も向上させることができる(実施例13~19、24)。一方で、原料の2価アルコールが共重合されず未反応のまま残存する場合は、電気特性、耐摩耗性、接着性のいずれも悪化した(比較例3)。また、数平均分子量を17000とすると、膜中で相分離してしまうためか電気特性が大幅に悪化した(比較例5)。
【0240】
[感光体ドラム用ポリエステル樹脂の製造]
合成例25(ポリエステル樹脂(16)の製造)
窒素置換した1000mL4つ口反応容器にポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)(分子量2000:OH基換算)(1.50g)、2,3,5-トリメチルフェノール(0.15g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(16.00g)を秤取り、ジクロロメタン(90mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(0.33g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ添加し、その後内温を18~23℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。
【0241】
続いて上記反応容器内へ、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(16.00g)、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン(21.80g)を加えた。その後、トリエチルアミン(17.56g)とジクロロメタン(160mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。
【0242】
5分撹拌した後、4-ヒドロキシ安息香酸4-ヒドロキシフェニル(2.46g)を加えた。その後、トリエチルアミン(5.80g)とジクロロメタン(190ml)との混合溶液を10分かけて滴下した。その後内温を18~23℃に保ちながら30分撹拌した後、ジクロロメタン(230mL)で希釈を行った。続いて、3時間撹拌した後、ジクロロメタン(250mL)で再度希釈を行った。
【0243】
その後、脱塩水(700mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(700mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(700mL)にて洗浄を2回行った。
【0244】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(300ml)を加えて希釈し、メタノール(5000ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(14)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は65,000であった。また、ポリエステル樹脂(16)中に含まれるポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)残基量は3質量%である。ポリエステル樹脂(16)の構造式を以下に表す。
【0245】
【0246】
比較合成例6(ポリエステル樹脂(17)の製造)
合成例25においてポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)を添加しない以外は同様にして、粘度平均分子量(Mv)が65,000のポリエステル樹脂(17)を製造した。ポリエステル樹脂(17)の構造式を以下に表す。
【0247】
【0248】
合成例26(ポリエステル樹脂(18)の製造)
窒素置換した1000mL4つ口反応容器にポリ(1,2-エタンジオールアジペート)(分子量2000:OH基換算)(1.75g)、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(32.62g)を秤取り、ジクロロメタン(115mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(0.27g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ添加し、その後内温を18~23℃に保ちながら1.5時間撹拌を続けた。
【0249】
続いて上記反応容器内へ、2,3,5-トリメチルフェノール(0.18g)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(10.49g)およびビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(13.00g)を加えた後、ジクロロメタン(70mL)で希釈した。その後、トリエチルアミン(24.09g)とジクロロメタン(100mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。その後、内温を18~23℃に保ちながら30分撹拌した後、ジクロロメタン(300mL)で希釈を行った。続いて、3時間撹拌した後、ジクロロメタン(310mL)で再度希釈を行った。
【0250】
その後、脱塩水(700mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(700mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(700mL)にて洗浄を2回行った。
【0251】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(300ml)を加えて希釈し、メタノール(5000ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(18)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は65,000であった。また、ポリエステル樹脂(18)中に含まれるポリ(1,2-エタンジオールアジペート)残基量は3.5質量%である。ポリエステル樹脂(18)の構造式を以下に表す。
【0252】
【0253】
<電子写真感光体ドラムの作製>
<下引き層形成用塗布液の製造>
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部を混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM-015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
【0254】
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1-プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε-カプロラクタム[下記式(F)で表される化合物]/ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(G)で表される化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(H)で表される化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(I)で表される化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(J)で表される化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた。その後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1-プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0質量%の下引き層形成用塗布液を作製した。
【0255】
【0256】
<電荷発生層形成用塗布液の製造>
電荷発生物質として、
図2のCuKα特性X線によるX線回折スペクトルを示すオキシチタニウムフタロシアニン20部と1,2-ジメトキシエタン280部とを混合し、サンドグラインドミルで1時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2-ジメトキシエタンの255部と4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノンの85部との混合液に溶解させて得られた結着液、及び230部の1,2-ジメトキシエタンを混合して電荷発生層形成用塗布液Aを調製した。
【0257】
電荷発生物質として、
図3のCuKα特性X線によるX線回折スペクトルを示すオキシチタニウムフタロシアニン20部と1,2-ジメトキシエタン280部とを混合し、サンドグラインドミルで4時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2-ジメトキシエタンの255部と4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノンの85部との混合液に溶解させて得られた結着液、及び230部の1,2-ジメトキシエタンを混合して電荷発生層形成用塗布液Bを調製した。
【0258】
電荷発生層形成用塗布液Aと電荷発生層形成用塗布液Bを55:45の質量比で混合し、本実施例で用いる電荷発生層形成用塗布液を作製した。
【0259】
<電荷輸送層形成用塗布液の製造>
[塗布液C1]
合成例25で製造したポリエステル樹脂(16)97.5部、下記に示す繰り返し構造、及び末端構造を有するポリアリレート樹脂(19)2.5部(粘度平均分子量35,000、ポリマー中のポリシロキサン構造の含有量12.5質量%)、下記HTM34で表される電荷輸送物質を40部、添加剤AD-13を10部、酸化防止剤2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールを2部、トリベンジルアミンを1部、ジメチルポリシロキサン(信越化学社製KF96-10CS)0.05部をテトラヒドロフラン/トルエン(8/2(質量比))混合溶媒650部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液C1を調製した。
【0260】
【0261】
[塗布液C2]
前記塗布液においてポリエステル樹脂(16)を比較合成例6で製造したポリエステル樹脂(17)に変更した以外は塗布液C1と同様にして塗布液C2を作製した。
【0262】
[塗布液C3]
前記塗布液においてポリエステル樹脂(16)を合成例26で製造したポリエステル樹脂(18)に変更した以外は塗布液C1と同様にして塗布液C3を作製した。
【0263】
[塗布液C4]
前記塗布液においてポリエステル樹脂(16)を下記に示す構造を有するポリエステル樹脂(20)に変更した以外は塗布液C1と同様にして塗布液C4を作製した。
【0264】
【0265】
<感光体ドラムの製造>
表面が切削加工された外径24mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーに、塗布液の製造例で作製した下引き層形成用塗布液、電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥し、乾燥後の膜厚がそれぞれ、1.5μm、0.4μm、36μmとなるように、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し、感光体ドラムを製造した。なお、電荷輸送層の乾燥は、125℃で24分間行なった。
【0266】
<画像試験>
得られた感光体を、Samsung社製モノクロプリンタ M4580(非磁性1成分非接触現像)の感光体カートリッジに搭載して、気温25℃、相対湿度50%下において、印字率5%で、400,000枚の連続印刷を行った。印刷後の電荷輸送層の膜厚を測定し、印刷前後の電荷輸送層の膜厚比較することにより膜減り量を確認し、耐刷性を評価した。値が小さい方が耐摩耗性に優れる。
【0267】
[実施例27、28、比較例7、8]
表-2に示す感光体ドラムを作製し、耐刷性、及び電子写真感光体の評価を行った。結果を表-2に示す。
【0268】
【0269】
以上から、本発明に係る電子写真感光体は、耐摩耗性に非常に優れることを明らかとした。
【0270】
[ポリエステル樹脂の製造(式(1)~式(4)の含有量増量)] 合成例29(ポリエステル樹脂(21)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量650:OH基換算)(8.87g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(15.58g)を秤取り、ジクロロメタン(90mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(2.90g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。
【0271】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(9.40g)を加え、ジクロロメタン(50mL)で希釈した。その後、トリエチルアミン(8.80g)とジクロロメタン(70mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。30分撹拌した後、ジクロロメタン(105mL)で希釈し、反応内温を18~23℃に保ちながら、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(240mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(240mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(240mL)にて洗浄を2回行った。
【0272】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(100ml)を加えて希釈し、メタノール(2500ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(21)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は18,000であった。また、ポリエステル樹脂(21)中に含まれるポリテトラメチレンエーテルグリコール残基量は30質量%である。ポリエステル樹脂(21)の構造式を以下に表す。
【0273】
【0274】
合成例30(ポリエステル樹脂(22)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)(分子量1000:OH基換算)(8.97g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(14.79g)を秤取り、ジクロロメタン(90mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(1.95g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。
【0275】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(9.89g)を加え、ジクロロメタン(50mL)で希釈した。その後、トリエチルアミン(9.09g)とジクロロメタン(70mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。30分撹拌した後、ジクロロメタン(105mL)で希釈し、反応内温を18~23℃に保ちながら、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(240mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(240mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(240mL)にて洗浄を2回行った。
【0276】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(100ml)を加えて希釈し、メタノール(2500ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(22)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は31,000であった。また、ポリエステル樹脂(22)中に含まれるポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)残基量は30質量%である。ポリエステル樹脂(22)の構造式を以下に表す。
【0277】
【0278】
合成例31(ポリエステル樹脂(23)の製造)
窒素置換した1000mL4つ口反応容器にポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)(分子量2000:OH基換算)(12.01g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(18.73g)を秤取り、ジクロロメタン(90mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(1.33g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら1.5時間撹拌を続けた。
【0279】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(13.89g)を加え、ジクロロメタン(150mL)で希釈した。その後、トリエチルアミン(12.67g)とジクロロメタン(100mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。30分撹拌した後、ジクロロメタン(80mL)で希釈し、反応内温を18~23℃に保ちながら、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(320mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(320mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(320mL)にて洗浄を2回行った。
【0280】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(200ml)を加えて希釈し、メタノール(400ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(23)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は36,000であった。また、ポリエステル樹脂(23)中に含まれるポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)残基量は30質量%である。ポリエステル樹脂(23)の構造式を以下に表す。
【0281】
【0282】
合成例32(ポリエステル樹脂(24)の製造)
合成例31のポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)(分子量2000:OH基換算)および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタンを、ポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)(分子量2000:OH基換算)および1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに変更した以外は、合成例31と同様に操作しポリエステル樹脂(24)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は47,000であった。また、ポリエステル樹脂(24)中に含まれるポリ(1,4-ブタンジオールアジペート)残基量は30質量%である。ポリエステル樹脂(24)の構造式を以下に表す。
【0283】
【0284】
合成例33(ポリエステル樹脂(25)の製造)
合成例31のポリ(1,6-ヘキサンジオールフタレート)(分子量2000:OH基換算)をポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)(分子量2000:OH基換算)に変更した以外は、合成例31と同様に操作しポリエステル樹脂(25)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は44,300であった。また、ポリエステル樹脂(25)中に含まれるポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)残基量は30質量%である。ポリエステル樹脂(25)の構造式を以下に表す。
【0285】
【0286】
比較合成例9(ポリエステル樹脂(26)の製造)
窒素置換した500mL4つ口反応容器にバイロン200(東洋紡(株)社製、非晶性ポリエチレンテレフタレート変性樹脂、分子量17000:OH基換算)(9.00g)およびジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸クロリド(13.47g)を秤取り、ジクロロメタン(70mL)に溶解させた。続いて、トリエチルアミン(0.16g)とジクロロメタン(10mL)との混合溶液を5~15℃へ冷却した反応容器内へ5分かけて滴下し、その後内温を18~23℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。
【0287】
続いて上記反応容器内へ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン(10.85g)を加え、ジクロロメタン(150mL)で希釈した。その後、トリエチルアミン(9.89g)とジクロロメタン(100mL)との混合溶液を反応容器内へ5~15℃へ冷却した反応容器内へ20分かけて滴下した。30分撹拌後、ジクロロメタン(50mL)で希釈し、反応内温を18~23℃に保ちながら、4時間攪拌を続けた。その後、脱塩水(290mL)にて洗浄を行い、30分間静置した後に有機層を分離した。この有機層を続いて0.2N塩酸(290mL)にて洗浄を3回行い、さらに、脱塩水(290mL)にて洗浄を2回行った。
【0288】
洗浄後の有機層にジクロロメタン(200ml)を加えて希釈し、メタノール(2500ml)に注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的のポリエステル樹脂(26)を得た。得られたポリエステル樹脂の粘度平均分子量(Mv)は31,000であった。また、ポリエステル樹脂(26)中に含まれるバイロン200残基量は30質量%である。
【0289】
【0290】
<感光体シートの作製>
[実施例34]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1-プロパノールのボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1-プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、前記感光体ドラム作製時の下引き層形成用塗布液作製時に使用した同様のポリアミド樹脂のペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた。その後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1-プロパノール/トルエンの質量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層分散液とした。この下引き層用分散液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が1.5μmになるように塗布、乾燥し下引き層を設けた。
【0291】
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、
図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン10部を1,2-ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い顔料分散液を作製した。こうして得られた顔料分散液160質量部と、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5%1,2-ジメトキシエタン溶液100質量部と、適量の1,2-ジメトキシエタンとを混合して、最終的に固形分濃度4.0%の電荷発生層塗布液を作製した。この電荷発生層用塗布液を、上述の下引き層上に、乾燥後の膜厚が0.4μmになるように塗布、乾燥して電荷発生層を設けた。
【0292】
次に、下記に示す構造からなる電荷輸送物質(HTM34)を40質量部、合成例29で製造したポリエステル樹脂(21)を100質量部、酸化防止剤2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールを2部、トリベンジルアミンを1部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05質量部を、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶媒(テトラヒドロフラン80質量%、トルエン20質量%)640質量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
【0293】
【0294】
この電荷輸送層形成用塗布液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シートを作製した。
【0295】
[実施例35~38]
表-4に示すように、ポリエステル樹脂(21)を合成例30~33で製造したポリエステル樹脂(22)~(25)に代えた以外は実施例34と同様にして、感光体シートを作製した。
【0296】
[実施例39]
ポリエステル樹脂(21)100質量部を、ポリエステル樹脂(21)30質量部とポリエステル樹脂(15)70質量部の混合物(30:70(質量比))に代えた以外は実施例34と同様にして、感光体シートを作製した。
【0297】
[実施例40~47]
表-4に示すように、ポリエステル樹脂(21)~(25)とポリエステル樹脂(15)または以下に構造を示すポリカーボネート樹脂(PC-1)の混合物(混合比は表-4に示す)とした以外は、実施例39と同様にして感光体シートを作製した。
【0298】
【0299】
[比較例10~11]
表-4に示すように、ポリエステル樹脂(21)をポリエステル樹脂(26)、(15)、ポリカーボネート樹脂(PC-1)に代えた以外は実施例34と同様にして、感光体シートを作製した。
【0300】
[電気特性評価]
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(電子写真学会編「続電子写真技術の基礎と応用」、コロナ社、1996年11月15日発行、404-405頁記載)を使用し、上記感光体をアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を-700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用い、露光光を1.0μJ/cm2照射した時点の表面電位(VL)を測定した。
VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を139msとした。また、表面電位が初期表面電位の半分(-350V)となる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー:μJ/cm2)を感度(E1/2)として測定した。VLの値の絶対値が小さいほど電気特性が良好であることを示し、E1/2の値が小さいほど高感度であることを示す。なお、VLの値が初期表面電位の半分(-350V)に未達の場合は、E1/2の測定が不可能であるため(-)で記載する。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%下(N/N)で行った。結果を表-4に示す。
【0301】
[摩耗試験]
感光体フィルムを直径10cmの円状に切断しテーバー摩耗試験機(東洋精機社製)により、摩耗評価を行った。試験条件は、25℃、50%RHの雰囲気下、摩耗輪CS-10Fを用いて、荷重1000gで700回回転後の摩耗量を試験前後の質量を比較することにより測定した。値が小さい方が耐摩耗性に優れる。結果を表-4~表-6に示す。
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
以上のように本発明における式(1)~式(4)の少なくともいずれか1で表される構造を有するポリエステル樹脂を含む電子写真感光体は電気特性および耐摩耗性に優れる(実施例34~38)。一方、分子量が15,000より大きいジオール残基を含有するポリエステル樹脂を含む電子写真感光体は電気特性が悪い(比較例10)。さらに、本発明におけるポリエステル樹脂と他のポリエステル樹脂と混合することにより、良好な電気特性を維持しつつ、耐摩耗性がより優れたものとなる(実施例39~45、比較例11)。また、本発明におけるポリエステル樹脂と他のポリカーボネート樹脂と混合させた場合においても、良好な電気特性を維持しつつ、耐摩耗性がより優れたものとなる(実施例46~47、比較例12)。
【0306】
以上から、本発明に係る電子写真感光体は、耐摩耗性に非常に優れ、かつ、初期の電気特性にも優れることを明らかにした。さらには、層同士の接着性の向上も可能であることを明らかとした。
【0307】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2016年9月21日出願の日本特許出願(特願2016-184371)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0308】
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙