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特許7024726光硬化性組成物、粘着シート、粘着シート積層体、硬化物、画像表示装置構成用積層体及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】光硬化性組成物、粘着シート、粘着シート積層体、硬化物、画像表示装置構成用積層体及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 285/00 20060101AFI20220216BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220216BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20220216BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220216BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220216BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220216BHJP
   C08F 290/04 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
C08F285/00
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/06
B32B27/00 M
B32B27/30 A
C08F290/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018554155
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2017042596
(87)【国際公開番号】W WO2018101252
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2016234672
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 かほる
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
(72)【発明者】
【氏名】増田 絵理
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】品田 弘子
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105296(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137178(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002763(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024618(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/088697(WO,A1)
【文献】特表平09-501732(JP,A)
【文献】特開2000-355605(JP,A)
【文献】特開2003-002934(JP,A)
【文献】特開2015-230342(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194937(WO,A1)
【文献】特開2017-095659(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00 - 299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロモノマー及び(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、及び架橋開始剤(C)を含む光硬化性組成物であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する(共)重合体のガラス転移温度が-70~0℃で、枝成分を構成するマクロモノマーのガラス転移温度が30~120℃であり、
小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルにおいて、半値幅X1(nm-1)が0.05<X1<0.30であるピークを有することを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項2】
積算光照射量として4000mJ/mの光を照射した際の小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルにおいて、半値幅X2(nm-1)が0.05<X2<0.25であるピークを有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、マクロモノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー及びビニル単量体を含有する単量体を重合して得られたものである請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
マクロモノマー(a)の数平均分子量が500~10万であることを特徴とする請求項3に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
少なくとも架橋剤(B)及び架橋開始剤(C)の何れかが、(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
20℃において粘着性を示し、かつ、50~100℃において軟化又は流動化する性質を有することを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の光硬化性組成物からなる粘着シート。
【請求項8】
粘着シートをガラスに貼着し、積算光照射量として4000mJ/mの光を照射した際の、ガラスに対する180°剥離強度が3N/cm以上であることを特徴とする請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の粘着シートと離型フィルムとを積層してなる構成を備えた粘着シート積層体。
【請求項10】
請求項1~6の何れかに記載の光硬化性組成物が、2つの画像表示装置用構成部材の間に介在してなる構成を備えた画像表示装置用積層体。
【請求項11】
マクロモノマー及び(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、及び架橋開始剤(C)を含む光硬化性組成物を光硬化させてなる硬化物であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する(共)重合体のガラス転移温度が-70~0℃で、枝成分を構成するマクロモノマーのガラス転移温度が30~120℃であり、
小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルにおいて、半値幅X3(nm-1)が0.05<X3<0.25であるピークを有することを特徴とする硬化物。
【請求項12】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、マクロモノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー及びビニル単量体を含有する単量体を重合して得られたものである請求項11に記載の硬化物。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の硬化物が、2つの画像表示装置用構成部材の間に介在してなる構成を備えた画像表示装置用積層体。
【請求項14】
前記画像表示装置構成部材が、タッチセンサー、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルム、位相差フィルムからなる群のうちの何れか2種類以上の組み合わせからなる積層体であることを特徴とする請求項10又は13に記載の画像表示装置用積層体。
【請求項15】
請求項10、13又は14に記載の画像表示装置構成用積層体を備えた画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロモノマーを構成単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体を用いた光硬化性組成物、並びに、それを用いた粘着シート、粘着シート積層体、硬化物、画像表示装置構成用積層体及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マクロモノマーは、結合可能な官能基を持つ高分子量モノマーである。マクロモノマーは、他のモノマーと付加又は共重合することにより、グラフト共重合体を容易に合成することができる。そして、マクロモノマーを用いてグラフト共重合体を合成すると、物性の異なる樹脂を枝成分と幹成分とにそれぞれ別々に、しかも簡便且つ純度良く組み込むことができるため、粘接着剤分野においても、この種のマクロモノマーを用いた粘着剤組成物が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、タック、接着力、凝集力などの粘着物性が良好な粘着剤用樹脂組成物として、数平均分子量が1000~100000でかつガラス転移温度が-20℃以下のマクロモノマー、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体および他の単量体をラジカル重合させることによって得られるグラフト共重合体からなり、幹ポリマーのガラス転移温度が枝ポリマーのガラス転移温度よりも高い粘着剤用樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、高温・高湿条件における耐久性と再剥離性を向上させる方法として、ガラス転移温度が40℃以上でかつ数平均分子量が2000~20000の(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー0.2~3質量部と、アルキル(メタ)アクリレート57~98.8質量部と、官能基含有モノマー1~20質量部と、少なくとも該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマー0~20質量部との共重合体(重量平均分子量50万~200万)を用いた接着剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には、種々の被着体に容易に接合することができ、接合後に硬化させて接着剤なみの接着力を発揮させることができ、かつ切断加工した際の切断面からの粘接着剤のはみ出しや切断面同士の接着が生じ難い粘接着剤組成物として、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、全モノマー成分中1~30質量%を占める数平均分子量Mnが1000~200000、ガラス転移点Tgが30~150℃のマクロモノマーと、を共重合してなるアクリル系粘着性ポリマーと、光カチオン重合性化合物と、光カチオン光重合開始剤とを含む硬化型粘接着剤組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4には、粘着テープの粘着層に、高含有量で充填剤が含有された場合であっても、粘着性に優れ、高温に曝された場合であっても粘着性を維持する感圧接着剤として、(メタ)アクリル系共重合体を幹ポリマーとし、(メタ)アクリル系マクロモノマーを枝ポリマーとする(メタ)アクリル系グラフト共重合体と架橋剤と充填剤とを含有することを特徴とする感圧接着剤が提案されている。
【0007】
特許文献5には、通常状態、すなわち、室温状態では、剥離可能な程度の接着性(“タック性”と称する)を備えることができると共に、ホットメルト可能な温度に加熱すると、流動性を持つようになり、貼合面の段差部に追従して隅々まで充填することができ、最終的には被着物同士を強固に接着させることができる粘着剤樹脂組成物として、アクリル系共重合体(A)100質量部と、架橋剤(B)0.5~20質量部と、架橋開始剤(C)0.1~5質量部とを含有する粘着剤樹脂組成物であって、アクリル系共重合体(A)は、重量平均分子量が5.0×10~5.0×10であるグラフト共重合体であり、当該グラフト共重合体の幹成分として(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含有し、当該グラフト共重合体の枝成分として数平均分子量5.0×10以上6.0×10未満のマクロモノマー由来の繰り返し単位を含有し、且つ、当該マクロモノマー由来の繰り返し単位をアクリル系共重合体(A)中に0.1~3mol%の割合で含有することを特徴とする粘着樹脂組成物が開示されている。
【0008】
また、特許文献6には、数量平均分子量が500以上6000未満のマクロモノマー(a)およびビニル単量体(b)を含有する単量体混合物を重合して得られる、重量平均分子量が5万~100万である(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物、並びに、この粘着剤組成物を用いた粘着シートが開示されている。
【0009】
特許文献7には、室温状態では、シート状の形状を保持することができ、剥離可能な程度の貼着性を備えることができ、ホットメルトによって流動性を持つようになり、最終的には架橋して画像表示装置構成部材同士を強固に接着することができる新たな画像表示装置構成用積層体の製造方法が開示されている。
【0010】
特許文献8には、印刷隠蔽部など光が届き難い箇所があっても光硬化させることができ、ある程度の厚さを有する粘着シートであってもシート全体を硬化させることができる、光硬化性の粘着シートが開示されている。
【0011】
特許文献9には、透明粘着材を介して、2つの光学装置構成用部材を一旦貼合してなる光学装置構成用積層体から、2つの光学装置構成用部材を引き離して、光学装置構成用部材をリサイクルする方法が開示されている。
【0012】
特許文献10には、画像表示装置構成部材の貼合において、粘着層と離型層との界面における異物混入や、粘着層への離型剤の移行転写を抑えることができ、貼合後の耐久性にも優れた、粘着シート積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平1-203412号公報
【文献】特開平8-209095号公報
【文献】特開平11-158450号公報
【文献】特開2011-219582号公報
【文献】特開2015-105296号公報
【文献】国際公開第2015/080244A1
【文献】国際公開第2015/137178A1
【文献】国際公開第2016/024618A1
【文献】国際公開第2016/002763A1
【文献】国際公開第2016/088697A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述のような従来開示されていた光硬化性組成物、すなわち、マクロモノマーを構成単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを有する光硬化性組成物をさらに改良することにより、ホットメルト可能な温度に加熱すると、貼合面の凹凸部に追従して隅々まで充填することができ、光硬化後は、被着物同士をより一層強固に接着させることができる新たな光硬化性組成物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、マクロモノマー及び(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、及び架橋開始剤(C)を含む光硬化性組成物であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の幹成分を構成する(共)重合体のガラス転移温度が-70~0℃で、枝成分を構成するマクロモノマーのガラス転移温度が30~120℃であり、
小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルにおいて、半値幅X1(nm-1)が0.05<X1<0.30であるピークを有することを特徴とする光硬化性組成物を提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提案する光硬化性組成物によれば、室温状態でシート状を保持しつつ自着性(“タック性”と称する)を示すことができ、未架橋状態において加熱すると、軟化乃至流動し、例えばマクロモノマーのガラス転移温度以上に加熱することにより軟化乃至流動し、貼合面の凹凸部に追従して隅々まで充填することができる。さらに、光硬化することにより、優れた凝集力を発揮することができるから、被着物同士を強固に貼着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明が下記実施形態に制限されるものではない。
【0018】
[本光硬化性組成物]
本発明の実施形態の一例に係る組成物(「本光硬化性組成物」と称する)は、マクロモノマーを構成単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)及び架橋開始剤(C)を含む光硬化性組成物であって、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X1(nm-1)が0.05<X1<0.30であることを特徴とする光硬化性組成物である。
上記「マクロモノマーを構成単位として含有する」とは、(メタ)アクリル系共重合体(A)の共重合体成分としてマクロモノマーを含む場合のほか、(メタ)アクリル系共重合体(A)の付加結合成分として含む場合など、当該共重合体成分以外の構成単位として含有する場合を包含する意味である。
【0019】
本光硬化性組成物は、少なくとも架橋剤(B)及び架橋開始剤(C)の何れかが、(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されてなる構成を備えたものであるのが好ましい。
少なくとも架橋剤(B)及び架橋開始剤(C)の何れかが、(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されていれば、結合した架橋剤(B)や架橋開始剤(C)のブリードアウトを抑制することができる。また、少なくとも架橋剤(B)及び架橋開始剤(C)の何れかが(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されることで、光架橋反応の反応効率が促進されることから、より凝集力の高い光硬化物を得ることができる。
さらに、少なくとも架橋剤(B)及び架橋開始剤(C)の何れかが(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されていれば、(メタ)アクリル系共重合体(A)が架橋される箇所を意図的に設計することが可能となるため、本発明で規定する小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅を制御することが容易となる。
ここで、上記「(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されている」とは、架橋剤(B)又は架橋開始剤(C)と(メタ)アクリル系共重合体(A)とが共有結合、イオン結合及び金属結合を包含する化学結合で結合した状態を指す。
【0020】
本光硬化性組成物は、上記したように、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X1(nm-1)が0.05<X1<0.30であることを特徴とする。
小角X線散乱測定とは、散乱角が数度以下(具体的には例えば10°以下)の散乱X線を観察することにより、ナノスケール(1~100nm)の構造情報を得る手法である。
したがって、小角X線散乱測定において1次元散乱プロファイルが観測可能な組成物であるということは、小角X線散乱測定において1次元散乱プロファイルが観測されない状態の組成物ではないことを意味している。なお、小角X線散乱測定において1次元散乱プロファイルが観測可能であれば、本光硬化性組成物の形状や状態を限定するものではない。
【0021】
本光硬化性組成物における(メタ)アクリル系共重合体(A)は、マクロモノマーを構成単位として含有する共重合体である。一般にマクロモノマーを構成単位とする共重合体は、グラフト共重合体或いはブロック共重合体を形成する。マクロモノマーの重合性基が1つである場合は、通常、他のモノマーとの付加、縮合又は共重合によってグラフト共重合体となる。また、マクロモノマーの重合性基が2つである場合は、通常、他のモノマーとの付加、縮合又は共重合によってブロック共重合体となる。一般に、グラフト共重合体やブロック共重合体は、(ミクロ)相分離構造を形成することが知られている。
本光硬化性組成物についての小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅の規定は、上記のような(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む組成物が形成する(ミクロ)相分離構造の“相分離状態”の尺度として考えることができる。すなわち、例えばグラフト共重合体における幹成分と枝成分、或いはブロック共重合体における個々のブロック成分は、異なる“相”としてミクロに分離した状態を形成している。
ここで、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅が大きい(広い)場合は、ピークがブロードであることを意味し、半値幅が小さい場合と比較して、相分離している各相の密度差が小さい場合や相分離構造が不均一であることを意味している。
一方、半値幅が小さい(狭い)ほど、ピークがシャープであることを意味し、半値幅が大きい場合と比較して、相分離した各相の密度差がより明確である場合や相分離構造がより均一であることを意味している。
よって、本光硬化性組成物では、上記半値幅を特定の範囲内に制御することにより、ミクロに相分離した各々の相が、異なる粘着特性を別個に担うことが可能となる。
そのため、一般的には両立させることが困難な特性を兼備することが可能となったものと考えることができる。
【0022】
以下の説明では「枝成分」、「幹成分」という語を用いてグラフト共重合体を例に説明する場合があるが、ブロック共重合体においては、これを「各ブロック成分」(例えば「ブロック成分A」、「ブロック成分B」)と読み替えればよい。
【0023】
上記のような観点から、本光硬化性組成物において、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X1は、マクロモノマーを構成単位として含む共重合ポリマーにおいて、マクロモノマーから成る枝成分と、幹成分とが成す(ミクロ)相分離構造が、処方する架橋剤や光開始剤によって変化した後の状態の指標とすることができる。
よって、本光硬化性組成物において、0.05<X1<0.30であることにより、上述のような従来開示されていた光硬化性組成物、すなわち、マクロモノマーを構成単位として含む(メタ)アクリル系共重合体と、架橋剤とを有する従来の光硬化性組成物に比べて、背反物性である粘着性と形状安定性とをより高い水準で両立することができ、ハンドリング性向上の効果を得ることができる。
【0024】
かかる観点から、本光硬化性組成物において、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X1は0.05<X1<0.30であるのが好ましく、中でも0.06<X1或いはX1<0.27、その中でも0.08<X1或いはX1<0.25、さらにその中でも0.11<X1或いはX1≦0.23であるのがより一層好ましい。
【0025】
以上から、前記半値幅X1は、0.05<X1<0.30、0.05<X1<0.27、0.05<X1<0.25又は0.05<X1≦0.23のいずれかであることが好ましく、中でも0.06<X1<0.30、0.06<X1<0.27、0.06<X1<0.25又は0.06<X1≦0.23のいずれかであることがより好ましく、その中でも0.08<X1<0.30、0.08<X1<0.27、0.08<X1<0.25又は0.08<X1≦0.23のいずれかであることがさらに好ましく、さらにその中でも0.11<X1<0.30、0.11<X1<0.27、0.11<X1<0.25又は0.11<X1≦0.23のいずれかであることがもっとも好ましい。
【0026】
本光硬化性組成物において、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X1を調整するための主な手段として、ベースポリマーである(メタ)アクリル系共重合体(A)の構造や組成、分子量などを調整すると共に、架橋剤(B)や架橋開始剤(C)の種類と量を調整したり選択したりする手段を挙げることができる。但し、このような手段に限定するものではない。なお、「ベースポリマー」とは、光硬化性組成物中に含まれる主成分をいい、また、「主成分」とは、光硬化性組成物の40質量%を超えて含まれる成分をいう。
ここで、(メタ)アクリル系共重合体(A)の構造の選択としては、例えばグラフト共重合体であるかブロック共重合体であるかの選択を挙げることができる。
【0027】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の組成の調整としては、幹成分と枝成分(ブロック共重合体の場合は各ブロック成分)の組成の調整を挙げることができる。
具体的には、(メタ)アクリル系共重合体(A)の枝成分に基づく相及び幹成分に基づく相のガラス転移温度(Tg)を調整したり、枝成分及び幹成分の相溶性パラメータのバランスを最適化したり、枝成分及び幹成分の親水性・疎水性のバランスを最適化することによっても、上記半値幅を制御することができる。例えば、枝成分でTgの高い相を、幹成分でTgの低い相を形成し、上記半値幅を制御することができる。
以上のように、グラフトポリマーを使用し、枝成分と幹成分の相溶性のバランスを最適化することで半値幅を制御して最適な相分離状態を形成して、タック性とホットメルト性を兼備することができる。
【0028】
架橋剤(B)や架橋開始剤(C)の種類の調整としては、例えば(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する親水性成分との相溶性を調整することを挙げることができる。架橋剤(B)や架橋開始剤(C)を、(メタ)アクリル系共重合体(A)の成す幹成分と枝成分(ブロック共重合体の場合は各ブロック成分)のうち、いずれか若しくは両方の相への相溶性が高い成分としたり、添加量を調整したりすることにより、(メタ)アクリル系共重合体(A)の成す幹成分と枝成分(ブロック共重合体の場合は各ブロック成分)の相溶性を調整して、相分離状態、すなわち、1次元散乱プロファイルの半値幅を制御することができる。
中でも、本光硬化性組成物の上記半値幅X1の調整方法としては、後述するように、幹成分と枝成分を構成するモノマーが有する官能基の種類や含有割合の最適化や、枝成分の分子量の最適化などで(メタ)アクリル系共重合体(A)を最適化すると共に、架橋剤(B)や架橋開始剤(C)の種類と量の調整を行うことが有効である。
【0029】
さらに、本光硬化性組成物において、上記半値幅X1を好ましい範囲に調整するためには、詳しくは後述するように、例えば(1)(メタ)アクリル系共重合体(A)の主となる共重合成分(幹成分)として、炭素数が5以上、中でも8以上、その中でも9以上、特に10以上の(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマーを用いることが好ましい。具体的には、後述するアクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有するモノマーの例示から選択することが好ましい。
【0030】
また、(2a)前記(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー以外の前記共重合性成分(幹成分)として、親水性成分を用いることが好ましい。具体的には、後述するアクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有する親水性モノマーの例示から選択することが好ましい。加えて、(2b)当該親水性成分を、前記共重合成分(幹成分)100に対して0.1~20の質量割合で含有させて幹成分の親水性を高めることがさらに好ましい。
【0031】
さらに、(3a)(メタ)アクリル系共重合体(A)の枝成分として、炭素数4以下の(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー成分を、幹成分100に対して1~100の質量割合となるように配合させて、幹成分の相と枝成分の相とが成すミクロ相分離状態を調整することが好ましい。また、(3b)(メタ)アクリル系共重合体(A)の枝成分として、環状構造を有する(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー成分を、幹成分100に対して1~100の質量割合となるように配合させて、幹成分の相と枝成分の相とが成すミクロ相分離状態を調整することが好ましい。
【0032】
さらに、(4a)架橋剤(B)として親水性成分との相溶性の高い水酸基含有化合物等を用いることが好ましい。具体的には、後述する架橋剤(B)の例示から選択することが好ましい。加えて、(4b)前記架橋剤(B)を、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.05~30質量部添加せしめて、幹成分からなる相の極性を適宜調整することがさらに好ましい。
【0033】
以上のように、上記(1)~(4b)を、それぞれ独立して適宜選択することで、幹成分と枝成分とが成す相分離構造を調整することができる。中でも、上記(1)~(4b)の方法のうち、(1)と(2a)及び/又は(2b)とを組み合わせることや、(1)と(3a)及び/又は(3b)とを組み合わせることが好ましく、(1)と(3a)及び/又は(3b)と(4a)及び/又は(4b)とを組み合わせることがより好ましく、(1)~(4b)の全ての方法を採用することが最も好ましい。但し、この方法に限定するものではない。
【0034】
上述したとおり、グラフトポリマーを使用し、枝成分と幹成分の相溶性のバランスを最適化することによって、最適な相分離状態を形成すればよいことから、上記の他にも、例えば、上記共重合体(A)の主となる共重合性成分(幹成分)として疎水性成分を用い、かつ、上記共重合体(B)の枝成分として親水性成分を用いることによって、上記半値幅X1を制御することもできる。
【0035】
本光硬化性組成物は、積算光照射量として4000mJ/mの光を照射した際の小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X2(nm-1)が0.05<X2<0.25であることがより一層好ましい。
本光硬化性組成物において、積算光照射量として4000mJ/mの光を照射した際の該1次元散乱プロファイル、すなわち光を照射した後の本光硬化性組成物の該1次元散乱プロファイルの半値幅X2(nm-1)が0.05<X2<0.25であることにより、X1が所定範囲にある場合の効果に加えて、さらに光硬化後の組成物において高い凝集力を得る効果を得ることができる。照射光の波長は、後述する架橋開始剤(C)が感応する波長であるのが好ましい。
【0036】
かかる観点から、本光硬化性組成物において、積算光照射量として4000mJ/mの光を照射した際の小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X2(nm-1)は0.05<X2<0.25であるのが好ましく、中でも0.06<X2或いはX2<0.24、その中でも0.08<X2或いはX2<0.22、さらにその中でも0.10<X2或いはX2<0.20であるのがより一層好ましい。
【0037】
以上から、前記半値幅X2は、0.05<X2<0.25、0.05<X2<0.24、0.05<X2<0.22又は0.05<X2<0.20のいずれかであることが好ましく、中でも0.06<X2<0.25、0.06<X2<0.24、0.06<X2<0.22又は0.06<X2<0.20のいずれかであることがより好ましく、その中でも0.08<X2<0.25、0.08<X2<0.24、0.08<X2<0.22又は0.08<X2<0.20のいずれかであることがさらに好ましく、さらにその中でも0.10<X2<0.25、0.10<X2<0.24、0.10<X2<0.22又は0.10<X2<0.20のいずれかであることがもっとも好ましい。
【0038】
本光硬化性組成物において、積算光照射量として4000mJ/mの光を照射した際の小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X2(nm-1)を調整するため手段は、上記半値幅X1を調整するための手段と同様である。例えば、ベースポリマーである(メタ)アクリル系共重合体(A)の構造や組成、分子量などを調整すると共に、架橋剤(B)や架橋開始剤(C)の種類と量を調整したり選択したりする手段を挙げることができる。但し、このような手段に限定するものではない。
【0039】
さらに、本光硬化性組成物において、上記半値幅X2を好ましい範囲に調整するためには、詳しくは後述するように、(1)(メタ)アクリル系共重合体(A)の主となる共重合成分(幹成分)として、炭素数が5以上、中でも8以上、その中でも9以上、特に10以上の(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマーを用いることが好ましい。具体的には、後述するアクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有するモノマーの例示から選択することが好ましい。
【0040】
また、(2a)前記(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー以外の前記共重合成分(幹成分)として、親水性成分を用いることが好ましい。具体的には、後述するアクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有する親水性モノマーの例示から選択することが好ましい。加えて、(2b)当該親水性成分を、前記共重合成分(幹成分)100に対して0.1~20の質量割合で含有させて幹成分の親水性を高めることがさらに好ましい。
【0041】
さらに、(3a)(メタ)アクリル系共重合体(A)の枝成分として、炭素数4以下の(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー成分を、幹成分100に対して1~100の質量割合となるように配合させて、幹成分の相と枝成分の相とが成すミクロ相分離状態を調整することが好ましい。また、(3b)(メタ)アクリル系共重合体(A)の枝成分として、環状構造を有する(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー成分を、幹成分100に対して1~100の質量割合となるように配合させて、幹成分の相と枝成分の相とが成すミクロ相分離状態を調整することが好ましい。
【0042】
さらに、(4a)架橋剤(B)として親水性成分との相溶性の高い水酸基含有化合物等を用いることが好ましい。具体的には、後述する架橋剤(B)の例示から選択することが好ましい。加えて、(4b)前記架橋剤(B)を、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.05~30質量部添加せしめて、幹成分からなる相の極性を適宜調整することがさらに好ましい。
【0043】
以上のように、上記(1)~(4b)を、それぞれ独立して適宜選択することで、幹成分と枝成分とが成す相分離構造を調整することができる。中でも、上記(1)~(4b)の方法のうち、(1)と(2a)及び/又は(2b)とを組み合わせることや、(1)と(3a)及び/又は(3b)とを組み合わせることが好ましく、(1)と(3a)及び/又は(3b)と(4a)及び/又は(4b)とを組み合わせることがより好ましく、(1)~(4b)の全ての方法を採用することが最も好ましい。但し、この方法に限定するものではない。
【0044】
上述したとおり、グラフトポリマーを使用し、枝成分と幹成分の相溶性のバランスを最適化することによって、最適な相分離状態を形成すればよいことから、上記の他にも、例えば、上記共重合体(A)の主となる共重合性成分(幹成分)として疎水性成分を用い、かつ、上記共重合体(B)の枝成分として親水性成分を用いることによって、上記半値幅X2を制御することもできる。
【0045】
なお、前述のとおり、本光硬化性組成物の形状や状態は限定されない。上記の4000mJ/mの光が光硬化性組成物に対して均一に照射されない場合は、当該光硬化性組成物を厚さ150μmのシート状に成形したものを基準(測定対象)として判断すればよい。
【0046】
本光硬化性組成物は、20℃において粘着性を示し、且つ、50~100℃において軟化又は流動化する性質を有することが好ましい。
上述のように、本光硬化性組成物において、後述する(メタ)アクリル系共重合体(A1)をベース樹脂として用いることにより、このような性質を有することができる。
【0047】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)>
マクロモノマーを構成単位として含む(メタ)アクリル系共重合体(A)として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体(A1)を一例として挙げることができる。
本光硬化性組成物は、架橋剤(B)及び架橋開始剤(C)の作用によって架橋するため、その効率の点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)はグラフト共重合体が好適である。
【0048】
上記(メタ)アクリル系共重合体(A1)をベース樹脂として本光硬化性組成物を作製すれば、本発明で規定する小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅を制御することが容易となる。すなわち、当該半値幅を範囲内とする達成手段の一態様である。このため、本光硬化性組成物は、室温状態で所定の形状、例えばシート状を保持しつつ自着性(自己粘着性)を示すことができ、未架橋状態において加熱すると軟化乃至流動するホットメルト性を有し、さらには光硬化させることができ、光硬化後は優れた凝集力を発揮させて接着させることができる。
【0049】
よって、本光硬化性組成物のベースポリマーとして(メタ)アクリル系共重合体(A1)を使用すれば、未架橋状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50~90℃、より好ましくは60℃以上或いは80℃以下の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えることができる。
【0050】
(幹成分)
前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する(共)重合体のガラス転移温度は-70~0℃であるのが好ましい。
この際、幹成分を構成する(共)重合体成分のガラス転移温度とは、(メタ)アクリル系共重合体(A1)の幹成分を組成するモノマー成分のみを重合して得られるポリマーのガラス転移温度を指す。具体的には、当該(共)重合体各成分のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率から、Foxの計算式によって算出される値を意味する。なお、幹成分のみからなるポリマーは、単独重合体(ホモポリマー)、共重合体の何れの場合もある。
【0051】
なお、Foxの計算式とは、以下の式であり、ポリマーハンドブック〔PolymerHandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
【0052】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する(共)重合体のガラス転移温度は、室温状態での本光硬化性組成物の柔軟性や、被着体への本光硬化性組成物の濡れ性、すなわち接着性に影響するため、本光硬化性組成物が室温状態で適度な接着性(タック性)を得るためには、当該ガラス転移温度は、-70℃~0℃であるのが好ましく、中でも-65℃以上或いは-5℃以下、その中でも-60℃以上或いは-10℃以下であるのが特に好ましい。
但し、当該(共)重合体のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば幹成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0053】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを挙ることができ、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p-クミルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0054】
また、これらの(メタ)アクリル酸エステルモノマーに親水基を結合したヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
また、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマーを用いることもできる。
【0055】
更には、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド・塩化メチル塩、(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー;ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー;2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1'-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基またはブロックイソシアネート基を含有するモノマー;2-[2-ヒドロキシ-5-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性基を含有するモノマーなどを用いることもできる。
また、上記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
【0056】
また、(メタ)アクリル系共重合体(A1)の幹成分は、疎水性のモノマーと、親水性のモノマーとを構成単位として含有するのが好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体(A1)の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入して湿熱白化を防止するのが好ましい。
【0057】
具体的には、上記(メタ)アクリル系共重合体(A1)の幹成分として、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーと、マクロモノマーの末端の重合性官能基とがランダム共重合してなる共重合体成分を挙げることができる。
【0058】
ここで、上記の疎水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばエチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、メチルメタクリレートを挙げることができる。
また、疎水性のビニルモノマーとしては酢酸ビニル等のアルキルビニルエステル、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマーなどを挙げることができる。
【0059】
中でも、後述する枝成分が成す相と適度な相分離構造を形成しやすい点と、本光硬化性組成物に適度な接着性(タック性)を付与する観点から、炭素数が5以上、中でも8以上、その中でも9以上、特に10以上のアルキル(メタ)アクリレ-トであるのが好ましい。
例えばタッチセンサー機能をもつ部材に、本光硬化性組成物が用いられる場合、タッチ検出感度の変化を吸収して検出信号のノイズ発生を抑えるために、比誘電率の低い光硬化性組成物が求められる場合がある。このとき、本光硬化性組成物及び/又は本光硬化性組成物を光硬化させてなる硬化物の比誘電率を低く調整する観点から、疎水性モノマーとして、炭素数が5以上、中でも8以上、その中でも9以上、特に10以上のアルキル(メタ)アクリレ-トを用いるのが好ましい。
ここで、炭素数8以上のアルキル(メタ)アクリレ-トとしては、例えば2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト等を挙げることができる。
【0060】
上記の親水性のモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの他、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いることができる。
【0061】
上記の中でも、本光硬化性組成物の湿熱白化を防止しつつ、被着体への密着性を向上させる観点から、上記の親水性のモノマーとして、水酸基含有モノマーや、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0062】
他方、本光硬化性組成物が金属若しくは金属酸化物等の腐食性を有する部材に用いられる場合は、本光硬化性組成物及び/又は本光硬化性組成物を光硬化させてなる硬化物による被着体の腐食劣化を防ぐために、酸性度の高いカルボキシル基や酸無水物を含有しない親水性成分を用いるのが好ましい。かかる観点からは、上記の親水性のモノマーとして、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0063】
(枝成分:マクロモノマー)
(メタ)アクリル系共重合体(A1)は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入し、マクロモノマーを構成単位として含むことが好ましい。
マクロモノマーとは、末端の重合性官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
【0064】
マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、上記(メタ)アクリル系共重合体(A1)を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、本光硬化性組成物の加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、30℃~120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
マクロモノマーがこのようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、50℃から80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度を意味し、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0065】
また、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って粘着剤組成物として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、しかも、適度な温度に加熱することで前記物理的架橋が解れて流動性を得ることができるようにするためには、マクロモノマーの分子量や含有量を調整することも好ましい。
かかる観点から、マクロモノマーは、(メタ)アクリル系共重合体(A1)中に5質量%~30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
【0066】
また、マクロモノマーの数平均分子量は、500~10万であるのが好ましく、中でも8000未満であることが好ましく、中でも800以上或いは7500未満、その中でも1000以上或いは7000未満であるのが好ましい。
【0067】
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
【0068】
マクロモノマーの高分子量骨格成分は、アクリル系重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
前記マクロモノマーの高分子量骨格成分としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p-クミルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーや、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマー、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド等の各種ビニルモノマーが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
マクロモノマーは、ラジカル重合性基、またはヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオール基等の重合性官能基を有するものである。マクロモノマーとしては、他のモノマーと共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。ラジカル重合性基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。マクロモノマーが官能基を有する場合も官能基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。また、ラジカル重合性基と官能基はどちらか一方でも、両方含有していてもよい。ラジカル重合性基と官能基を両方含有する場合は、他のモノマーからなる重合物ユニットとの付加する官能基、または他のモノマーと共重合するラジカル重合性基の何れか以外の官能基、もしくはラジカル重合性基は二つ以上であってもよい。
よって、前記マクロモノマーの末端官能基としては、例えばメタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基などのラジカル性重合基のほか、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオール基等の官能基を挙げることができる。
【0070】
中でも、前記マクロモノマーの末端官能基としては、他のモノマーと共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。この際、該ラジカル重合性基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。
マクロモノマーが官能基を有する場合においても、官能基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。
また、ラジカル重合性基と官能基は、どちらか一方でも、両方含有していてもよい。ラジカル重合性基と官能基を両方含有する場合は、他のモノマーからなる重合物ユニットとの付加する官能基、または他のモノマーと共重合するラジカル重合性基の何れか以外の官能基、もしくはラジカル重合性基は二つ以上であってもよい。
【0071】
マクロモノマーは、公知の方法で製造できる。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α-メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合性基を化学的に結合させる方、及び熱分解による方法が挙げることができる。これらの中で、マクロモノマーの製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。
【0072】
(製造方法)
アクリル系共重合体(A1)は、例えば特定のマクロモノマー(a)をビニル単量体(b)からなる重合物に付加して得ることもできるし、また、特定のマクロモノマー(a)とビニル単量体(b)を含有する単量体混合物を重合して得ることもできる。
【0073】
<架橋剤(B)>
本光硬化性組成物における架橋剤(B)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む組成物が形成する(ミクロ)相分離構造の制御剤、言い換えれば、本光硬化性組成物の柔軟性と凝集力を調整する制御剤としての役割を有している。
【0074】
架橋剤(B)としては、例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、N-置換(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、上記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0075】
中でも、架橋反応の制御のし易さの観点からは、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類の他、多官能アクリルアミド等を挙げることができる。
【0076】
上記に挙げた中でも、被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、上記多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの中でも、水酸基やカルボキシル基、アミノ基、アミド基等の極性官能基を含有する多官能モノマーもしくはオリゴマーが好ましい。その中でも、水酸基又はアミド基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
湿熱白化を防止する観点からは、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A1)、すなわちグラフト共重合体の幹成分として、疎水性のアクリレートモノマーと、親水性のアクリレートモノマーとを含有するのが好ましく、さらには、架橋剤(B)として、水酸基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
また、密着性や耐湿熱性、耐熱性等の効果を調整するために、架橋剤(B)と反応する、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルを、更に加えてもよい。
【0077】
また、2種以上の架橋性官能基を有する架橋剤としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマーや、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基またはブロックイソシアネート基を含有するモノマーの他、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の各種シランカップリング剤を挙げることができる。
【0078】
2種以上の架橋性官能基を有する架橋剤は、一方の架橋性官能基を(メタ)アクリル系共重合体と反応させ、(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されてなる構造をとってもよい。
架橋剤(B)が(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されることで、架橋剤(B)のブリードアウトや粘着剤組成物の予期せぬ可塑化を抑制することができる。また、架橋剤(B)が(メタ)アクリル系共重合体(A)に結合されることで、光架橋反応の反応効率が促進されるから、より凝集力の高い硬化物を得ることができる。
【0079】
架橋剤(B)の含有量は、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅を適正範囲に調整して適度な相分離構造を維持し、本光硬化性組成物の柔軟性と凝集力をバランスさせる観点から、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部或いは30質量部の割合で含有するのが好ましく、中でも0.1質量部或いは20質量部の割合で含有するのが好ましく、その中でも0.5質量部以上或いは15質量部以下、特に1質量部以上或いは13質量部以下の割合であるのが特に好ましい。
【0080】
本光硬化性組成物は、架橋剤(B)の架橋性官能基と反応する単官能モノマーをさらに含有してもよい。単官能モノマーを含有することにより、本光硬化性組成物の小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X1の値を増大させたり、ホットメルト時の流動性を高めたりする他、被着体への密着性向上や、湿熱白化抑制の効果を向上させることができる。
【0081】
このような単官能モノマーとしては、例えばメチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートの他、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等を挙げることができる。
中でも被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0082】
<架橋開始剤(C)>
本光硬化性組成物に用いられる架橋開始剤(C)は、架橋剤(B)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たすものである。
【0083】
架橋開始剤は、現在公知のものを適宜使用することができる。中でも、波長380nm以下の紫外線に感応する光重合開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
【0084】
一方、波長380nmより長波長の光に感応する光重合開始剤は、高い光反応性を得られる点及び、感応する光が、本光硬化性組成物をシート状に賦形した場合に、シートの深部まで到達しやすい点で好ましい。
【0085】
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
【0086】
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると架橋開始剤としての機能をもたなくなる。このため、架橋反応が終了した後の粘着材中に活性種として残存することがなく、粘着材に予期せぬ光劣化等をもたらす可能性がないため、好ましい。
他方、水素引抜型光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0087】
前記開裂型光重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、1,2-オクタンジオン,1-(4-(フェニルチオ),2-(o-ベンゾイルオキシム))、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0088】
前記水素引抜型光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3‘-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2‐フェニル‐2‐オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、カンファーキノンやその誘導体などを挙げることができる。
但し、光重合開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。上記に挙げた開光重合開始剤のうちのいずれか一種またはその誘導体を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0089】
この中でも、光に対する感応性が高く、かつ反応後に分解物となり消色する点では、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。
【0090】
また、反応制御のし易さ及び、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体との相性からは、架橋開始剤(C)としてベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3‘-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチルなどを用いるのが好ましい。
【0091】
架橋開始剤(C)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1~10質量部、中でも0.5質量部以上或いは5質量部以下、その中でも1質量部以上或いは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。
架橋開始剤(C)の含有量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0092】
さらに、架橋開始剤(C)成分に加えて増感剤を使用することも可能である。
増感剤としては、特に限定はなく、光重合開始剤に用いられる増感剤であれば問題なく使用できる。例えば芳香族アミンやアントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、クマリン誘導体、チオキサントン誘導体、フタロシアニン誘導体等や、ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ミヒラーケトン、9,10-フェナントラキノンなどの芳香族ケトン及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0093】
<その他の成分>
本光硬化性組成物は、上記以外の成分として、通常の粘着組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、消泡剤、無機粒子などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を、必要に応じて適宜含有してもよい。
【0094】
<本粘着シート>
本光硬化性組成物から粘着シート(「本粘着シート」と称する)を作製することができる。
【0095】
本粘着シートは、単一層からなるシートであっても、2層以上が積層してなる多層シートであってもよい。
本粘着シートを3層以上の粘着シートとする場合、例えば、中間層と最外層とを備えた積層構成の粘着シートを形成する場合には、その最外層を、本光硬化性組成物から形成することが好ましい。
【0096】
本粘着シートを中間層と最外層とを備えた積層構成の粘着シートを形成する場合には、各最外層の厚さと中間層の厚さの比率は1:1~1:20であるのが好ましく、中でも1:2~1:10であるのがさらに好ましい。
中間層の厚みが、上記範囲であれば、積層体における粘着材層の厚みの寄与が大きくなりすぎず、柔軟すぎて裁断や取回しに係る作業性が劣るようになることがなく好ましい。
また、最外層が上記範囲であれば、凹凸や屈曲した面への追随性に劣ることがなく、被着体への接着力や濡れ性を維持することができて、好ましい。
【0097】
(本粘着シートの厚み)
本粘着シートの厚みについては、シート厚を薄くすることで、薄肉化要求に応えることができる一方、シート厚を薄くし過ぎると、たとえば被着面に凹凸部あった場合に充分に凹凸に追従できなかったり、十分な接着力を発揮できなかったりする可能性がある。
かかる観点から、本粘着シートの厚みは20μm~500μmであるのが好ましく、中でも25μm以上或いは350μm以下、その中でも50μm以上或いは250μm以下であるのが特に好ましい。
【0098】
(本粘着シートの粘着力)
本粘着シートは、ガラスに貼着し、積算光照射量として4000mJ/mの光を照射した際の、ガラスに対する180°剥離強度、すなわち光を照射した後の本粘着シートの該180°剥離強度が3N/cm以上であるのが好ましい。
ガラスに対する当該180°剥離強度が3N/cm以上であれば、優れた凝集力を発揮することができるから、被着物同士を強固に貼着することができる。よって、後述する画像表示構成部材同士をより強固に貼着することができる。
かかる観点から、本粘着シートは、上記のように光照射した際のガラスに対する180°剥離強度が3N/cm以上であるのが好ましく、中でも5N/cm以上、その中でも10N/cm以上であるのがさらに好ましい。
【0099】
(本粘着シートの使用方法)
本粘着シートは、そのまま単独で使用することも可能である。また、他の部材と積層して使用することも可能である。
【0100】
<本粘着シート積層体>
本粘着シート積層体とは、本粘着シートを層構成に含む積層体であれば、その構成は任意である。例えば、本粘着シートの一側又は両側に離型フィルムを積層して粘着シート積層体を構成することが可能である。
【0101】
離型フィルムとしては、現在公知のものを任意に使用することができる。
上記離型フィルムの厚みは特に制限されない。中でも、例えば加工性及びハンドリング性の観点からは、25μm~500μmであるのが好ましく、その中でも38μm以上或いは250μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0102】
<本硬化物>
上記本光硬化性組成物を、光を照射して硬化させる(「光硬化」と称する)させることにより、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X3(nm-1)が0.05<X3<0.25であることを特徴とする硬化物(「本硬化物」と称する)を得ることができる。
ここで、硬化物とは、本光硬化性組成物に光を照射して硬化させたものを意味し、その形態は任意である。よってシート状であっても、シート状でなくてもよい。
【0103】
本硬化物において、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X3(nm-1)が0.05<X3<0.25であることにより、高凝集力で信頼性の高い硬化物を得ることができる。
【0104】
かかる観点から、本硬化物において、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X3(nm-1)は、上記本光硬化性組成物と同様の観点から、0.05<X3<0.25であるのが好ましく、中でも0.06<X3或いはX3<0.24、その中でも0.08<X3或いはX3<0.22、さらにその中でも0.10<X3或いはX3<0.20であるのがより一層好ましい。
【0105】
以上から、前記半値幅X3は、0.05<X3<0.25、0.05<X3<0.24、0.05<X3<0.22又は0.05<X3<0.20のいずれかであることが好ましく、中でも0.06<X3<0.25、0.06<X3<0.24、0.06<X3<0.22又は0.06<X3<0.20のいずれかであることがより好ましく、その中でも0.08<X3<0.25、0.08<X3<0.24、0.08<X3<0.22又は0.08<X3<0.20のいずれかであることがさらに好ましく、さらにその中でも0.10<X3<0.25、0.10<X3<0.24、0.10<X3<0.22又は0.10<X3<0.20のいずれかであることが最も好ましい。
【0106】
本硬化物において上記半値幅X3を調整するための主な手段としては、上記半値幅X1(nm-1)を調整するための手段と同様である。例えば、ベースポリマーである(メタ)アクリル系共重合体(A)の構造や組成、分子量などを調整すると共に、架橋剤(B)や架橋開始剤(C)の種類と量を調整したり選択したりする手段を挙げることができる。但し、これらの手段に限定するものではない。
【0107】
さらに、本硬化物において、上記半値幅X3を好ましい範囲に調整するためには、詳しくは前述したように、(1)(メタ)アクリル系共重合体の主となる共重合成分(幹成分)として、炭素数が5以上、中でも8以上、その中でも9以上、特に10以上の(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマーを用いることが好ましい。具体的には、前述したアクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有するモノマーの例示から選択することが好ましい。
【0108】
また、(2a)前記(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー以外の前記共重合性成分(幹成分)として、親水性成分を用いることが好ましい。具体的には、後述するアクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有する親水性モノマーの例示から選択することが好ましい。加えて、(2b)当該親水性成分を、前記共重合成分(幹成分)100に対して0.1~20の質量割合で含有させて幹成分の親水性を高めることがさらに好ましい。
【0109】
さらに、(3)(メタ)アクリル系共重合体(A)の枝成分として、炭素数4以下の(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー成分を、幹成分100に対して1~100の質量割合となるように配合させて、幹成分の相と枝成分の相とが成すミクロ相分離状態を調整することが好ましい。また、(3b)(メタ)アクリル系共重合体(A)の枝成分として、環状構造を有する(メタ)アクリル系モノマー又はビニルモノマー成分を、幹成分100に対して1~100の質量割合となるように配合させて、幹成分の相と枝成分の相とが成すミクロ相分離状態を調整することが好ましい。
【0110】
さらに、(4a)架橋剤(B)として親水性成分との相溶性の高い水酸基含有化合物等を用いることが好ましい。具体的には、前述した架橋剤(B)の例示から選択することが好ましい。加えて、(4b)前記架橋剤(B)を、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.05~30質量部含有せしめて幹成分の極性を適宜調整することがさらに好ましい。
【0111】
以上のように、上記(1)~(4)を、それぞれ独立して適宜選択することで、幹成分と枝成分とが成す相分離構造を調整することができる。中でも、上記(1)~(4b)の方法のうち、(1)と(2a)及び/又は(2b)とを組み合わせることや、(1)と(3a)及び/又は(3b)とを組み合わせることが好ましく、(1)と(3a)及び/又は(3b)と(4a)及び/又は(4b)とを組み合わせることがより好ましく、(1)~(4b)の全ての方法を採用することがもっとも好ましい。但し、この方法に限定するものではない。
【0112】
上述したとおり、グラフトポリマーを使用し、枝成分と幹成分の相溶性のバランスを最適化することによって、最適な相分離状態を形成すればよいことから、上記の他にも、例えば、上記共重合体(A)の主となる共重合性成分(幹成分)として疎水性成分を用い、かつ、上記共重合体(B)の枝成分として親水性成分を用いることによって、上記半値幅X3を制御することもできる。
【0113】
<本画像表示装置構成用積層体>
2つの画像表示装置用構成部材を、上記本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物を介して積層して画像表示装置構成用積層体(「本画像表示装置構成用積層体」と称する)を構成することが可能である。
【0114】
この際、2つの画像表示装置用構成部材としては、例えばタッチセンサー、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルムからなる群のうちの何れか、或いは2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
【0115】
本画像表示装置構成用積層体の具体例としては、例えば離型シート/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/タッチパネル、離型シート/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/保護パネル、離型シート/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/画像表示パネル、画像表示パネル/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/タッチパネル、画像表示パネル/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/保護パネル、画像表示パネル/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/タッチパネル/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/保護パネル、偏光フィルム/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/タッチパネル、偏光フィルム/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/タッチパネル/本光硬化性組成物又は上記本粘着シート又は上記本硬化物/保護パネルなどの構成を挙げることができる。但し、これらの積層例に限定されるものではない。
上記タッチパネルは、保護パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体や、画像表示パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体も含む。
【0116】
<本画像表示装置>
上記のような本画像表示装置構成用積層体を用いて、画像表示装置(「本画像表示装置」と称する)を構成することができる。
本画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイなどの画像表示装置を構成することができる。
【0117】
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」又は「X≦」(Xは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」旨の意図も包含する。
また、「Y以下」又は「Y≧」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0118】
一般的にシートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例
【0119】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明が実施例に限定されるものではない。
【0120】
[実施例1]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、数平均分子量2500のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー15質量部、ブチルアクリレート81質量部、及び、アクリル酸4質量部をランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A-1、質量平均分子量:20万)1kgに対し、架橋剤(B)としてプロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルATM-4PL)(B-1)50g、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(IGM社製)(C-1)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物1を得た。
【0121】
次に、前記光硬化性組成物1を、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRV、厚さ100μm)上に、厚さ150μmとなるようシート状に成形した後、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm)を被覆し、粘着シート積層体1を作製した。
【0122】
[実施例2]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、末端官能基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(数平均分子量3000)を15質量部、ブチルアクリレート81質量部、及び、アクリル酸4質量部をランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A-2、質量平均分子量:15万)1kgに対し、架橋剤(B)としてプロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルATM-4PL)(B-1)110g、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(IGM社製)(C-1)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物2を得た。
前記光硬化性組成物2は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体2を作製した。
【0123】
[実施例3]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、末端官能基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(数平均分子量6700)を15質量部、ブチルアクリレート81質量部、及び、アクリル酸4質量部をランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A-3、質量平均分子量:4.6万)1kgに対し、架橋剤(B)としてノナンジオールジアクリレート(大阪有機工業社製、ビスコート260)(B-2)5g、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(IGM社製)(C-1)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物3を得た。
前記光硬化性組成物3は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体3を作製した。
【0124】
[実施例4]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、末端官能基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(数平均分子量2500)を30質量部、ブチルアクリレート66質量部、及び、アクリル酸4質量部をランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A-4、質量平均分子量:11万)1kgに対し、架橋剤(B)として、2-イソシアナエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)(B-3)を27g混合した。80℃で4時間加熱して(メタ)アクリル系共重合体(A-4)のカルボキシル基と架橋剤(B-3)のイソシアネート基とを反応させた。その後、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(IGM社製)(C-1)15g及び、ヒドロキシブチルアクリレートを100g添加し、均一混合して、光硬化性組成物4を得た。
前記光硬化性組成物4は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体4を作製した。
【0125】
[実施例5]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、実施例2で用いたアクリル系共重合体(A-2、質量平均分子量:15万)1kgに対し、架橋剤(B)として、2-イソシアナエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)(B-3)を36g混合した。80℃で4時間加熱して(メタ)アクリル系共重合体(A-4)のカルボキシル基と架橋剤(B-3)のイソシアネート基とを反応させた。その後、光開始剤(C)としてエザキュアKTO46(IGM社製)(C-2)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物5を得た。
前記光硬化性組成物5は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体5を作製した。
【0126】
[実施例6]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として数平均分子量2500の末端官能基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(数平均分子量2500)を11質量部、2-エチルヘキシルアクリレート86質量部、及びアクリル酸3質量部をランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A-5、質量平均分子量:7.4万)1kgに対し、架橋剤(B)としてプロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルATM-4PL)(B-1)90g、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(IGM社製)(C-1)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物6を得た。
前記光硬化性組成物6は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体6を作製した。
【0127】
[実施例7]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、イソボルニルメタクリレート:メタクリル酸メチル=1:1からなる、末端官能基がメタクリロイル基のマクロモノマー(数平均分子量3000)を13.5質量部、ラウリルアクリレートを43.7質量部、2-エチルヘキシルアクリレートを40質量部、及びアクリルアミド2.8質量部をランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A-6、質量平均分子量:16万)1kgに対し、架橋剤(B)としてプロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルATM-4PL)(B-1)50g、光開始剤(C)としてメチルベンゾイルフォーメート(Lambson社製、スピードキュアMBF)(C-3)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物7を得た。
前記光硬化性組成物7は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体7を作製した。
【0128】
[実施例8]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、イソボルニルメタクリレート:メタクリル酸メチル=1:1からなる、末端官能基がメタクリロイル基のマクロモノマー(数平均分子量3000)を30質量部、ラウリルアクリレートを33質量部、2-エチルヘキシルアクリレートを34質量部、及びアクリルアミド3質量部をランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A-7、質量平均分子量:7.9万)1kgに対し、架橋剤(B)としてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学社製、DCP)(B-4)200g、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(IGM社製)(C-1)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物8を得た。
前記光硬化性組成物8は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体8を作製した。
【0129】
[実施例9]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、イソボルニルメタクリレート:メタクリル酸メチル=1:1からなる、末端官能基がメタクリロイル基のマクロモノマー(数平均分子量8800)を13.5質量部、ラウリルアクリレートを43.7質量部、2-エチルヘキシルアクリレートを40質量部、及びアクリルアミド2.8質量部をランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A-8、質量平均分子量:11万)1kgに対し、架橋剤(B)としてプロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルATM-4PL)(B-1)90g、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(IGM社製)(C-1)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物9を得た。
前記光硬化性組成物9は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体9を作製した。
【0130】
[比較例1]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、ブチルアクリレートとメチルメタクリレートからなるMMA-BA-MMAトリブロック型共重合体(クラレ社製、クラリティLA2140e)(A-9、質量平均分子量:7.4万)1kgに対し、架橋剤(B)としてプロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルATM-4PL)(B-1)110g、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(IGM社製)(C-1)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物10を得た。
前記光硬化性組成物10は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体10を作製した。
【0131】
[比較例2]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、2-エチルヘキシルアクリレート24質量部、ブチルアクリレート74質量部、及び、アクリル酸2質量部からなるアクリル系共重合体(A-10、質量平均分子量:50万)1kgに対し、架橋剤(B)として、ノナンジオールジアクリレート(大阪有機工業社製、ビスコート260)(B-2)5.5g、光架橋開始剤(C)として、エザキュアTZT(C-1)(IGM社製)9.5gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物11を得た。なお、前記(メタ)アクリル系共重合体(A-10)はマクロモノマー成分を含まない共重合体である。
前記光硬化性組成物11は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体11を作製した。
【0132】
[比較例3]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、イソボルニルメタクリレート:メタクリル酸メチル=1:1からなる、末端官能基がメタクリロイル基のマクロモノマー(数平均分子量3000)を13.5質量部、ラウリルアクリレートを43.7質量部、2-エチルヘキシルアクリレートを40質量部、及びアクリルアミド2.8質量部をランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A-11、質量平均分子量:4.9万)1kgに対し、架橋剤(B)としてプロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルATM-4PL)(B-1)90g、光開始剤(C)としてエザキュアTZT(C-1)(IGM社製)15gを添加し、均一混合して、光硬化性組成物12を得た。
前記光硬化性組成物12は、実施例1と同様の方法で粘着シート積層体12を作製した。
なお、前記(メタ)アクリル系重合体(A-11)は分子量が低く流動性が高いため、光硬化性組成物12は室温において粘ちょう液体状となった。
【0133】
<評価>
次に、上記実施例及び比較例で得た光硬化性組成物、粘着シート又は粘着シート積層体についての評価方法について説明する。
【0134】
[小角X線散乱]
小角X線散乱測定は大型放射光施設であるSPring-8のBL03XU(フロンティアソフトマター開発産学連合ビームライン)にて行った。
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体すなわち光硬化前の光硬化性組成物について、両面の離型フィルムを剥がして粘着シートを試料用治具に設置した。
X線のビーム形状は縦長を120μmとして横長を120μmに調整した。X線波長は1Åとし、検出器はCCD(Hamamatsu Photonics V7739P+ORCA R2)を用いた。カメラ長は約4mにセットして、標準試料(コラーゲン)を用いて補正を行った。アッテネータ(減衰板)の種類や厚み、露光時間を調整して、強力なX線で検出器が損傷しないよう設定したうえでサンプルにX線を照射してサンプルの2次元散乱像を得た。
【0135】
前記の手順で得られたサンプルの2次元散乱像からバックグランドの補正を行った。具体的には、サンプルが無い状態で前記手順と同じ操作を行ったバックグランドの2次元散乱像を取得して、画像処理ソフト(Image-J)を用いてサンプルの2次元散乱像からバックグランドの2次元散乱像を差し引いて、解析用の2次元散乱像を得た。解析用の2次元散乱像にはリング状の散乱が確認された。次に、解析用の2次元散乱像から1次元散乱プロファイルに変換した。具体的には、解析用の2次元散乱像をX線データ処理ソフト(Fit2d)に読み込ませて、全方位角にわたって、且つq=0.04~0.4の範囲において積分することで、横軸をq[nm-1]、縦軸を散乱強度とした1次元散乱プロファイルを得た。
【0136】
得られた1次元散乱プロファイルから、ピークの半値幅Xやピーク位置Yを求めた。1次元散乱プロファイルにはq=0.1付近で極小値をとって原点に向かって散乱強度が高くなる場合と、q=0.1付近で変曲点を経たあと原点に向かって散乱強度が小さくなる場合があった。q=0.1付近で極小値をとって原点に向かって散乱強度が高くなる場合は、極小値のqより大きい領域を解析対象とした。またq=0.1付近で変曲点を経たあと原点に向かって散乱強度が小さくなる場合は、変曲点のqより大きい領域を解析対象とした。次にベースライン補正として、解析対象領域の散乱強度の最小値を求めて、全領域にわたって最小値を差し引いてベースライン補正を行った。得られた補正後の1次元散乱プロファイルをガウス関数とローレンツ関数でフィッティングを行い、得られた合成関数の半値幅をX1、ピーク位置をY1とした。フィッティングには波形分離ソフト(Fityk)を用いた。
また、本光硬化性組成物が成す相分離構造のドメイン間距離Z1を、Z1=2π/Y1として算出した。なお、得られた1次元散乱プロファイルからピークが検出されなかったものについては、表中に(ND)と表記した。
【0137】
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体について、一方の離型フィルム側から、高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が4000mJ/cmとなるよう光照射し、光硬化性組成物を硬化した。光硬化後の光硬化性組成物すなわち硬化物について、上述した光硬化前の光硬化性組成物と同様にして、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルのピーク半値幅(X2)及びピーク位置(Y2)を求め、ピーク位置(Y2)からドメイン間距離(Z2)を算出した。
【0138】
[保持力]
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体を40mm×50mmに裁断して片面の離型フィルムを剥がし、裏打用のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂製 ダイアホイルS-100、厚さ38μm)をハンドローラーで背貼りした後、これを幅25mm×長さ100mmの短冊状に裁断して試験片とした。
次に、残る離型フィルムを剥がして、SUS板(120mm×50mm×厚さ1.2mm)に対して、貼着面積が25mm×20mmとなるようハンドローラーで貼着した。
その後、試験片を40℃の雰囲気下で15分養生させた後、試験片に500gf(4.9N)の錘を垂直方向に取り付けて掛けて静置した後、錘の落下時間(分)を測定した。30分以内に落下しなかったものについては、SUSと試験片との貼着位置が下方にズレた長さ(mm)、すなわちズレ量を測定した。
なお、表中の「<0.2mm」はズレ量が0.2mm未満で、ほとんどズレのない状態の意味である。
【0139】
[ガラス接着力]
<硬化前接着力の測定>
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体について、一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製;商品名「コスモシャインA4300」、厚み100μm)をハンドローラーにてロール圧着した。これを10mm幅×100mm長の短冊状に裁断し、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、ソーダライムガラスにハンドローラーを用いてロール貼着した。オートクレーブ処理(70℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上貼着し、光硬化前のガラス接着力測定サンプルを作製した。裏打ちフィルムを180°をなす角度に剥離速度60mm/分にて引っ張りながらガラスから粘着シートを剥離し、ロードセルで引張強度を測定して、光硬化前における粘着シートのガラスに対する180°剥離強度(N/cm)を測定した。
【0140】
<硬化後接着力の測定>
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体について、一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製;商品名「コスモシャインA4300」、厚み100μm)をハンドローラーにてロール圧着した。これを10mm幅×100mm長の短冊状に裁断し、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、ソーダライムガラスにハンドローラーを用いてロール貼着した。オートクレーブ処理(70℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上貼着した後、裏打ちフィルム側から、高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が4000mJ/cmとなるよう粘着シートに光照射し、光硬化後のガラス接着力測定サンプルを作製した。裏打ちフィルムを180°をなす角度に剥離速度60mm/分にて引っ張りながらガラスから粘着シートを剥離し、ロードセルで引張強度を測定して、光硬化後における粘着シートのガラスに対する180°剥離強度(N/cm)を測定した。
なお、表中の「<0.5」は、剥離強度が小さすぎて測定不能であった状態を示す。
【0141】
[比誘電率]
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体について、一方の離型フィルム側から、高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が4000mJ/cmとなるよう光照射し、光硬化性組成物を硬化した。その後、離型フィルムを順次剥がし、電極(キーコム社製、DPT-009)に貼着した。LCRメータ(アジレントテクノロジー社製、E4980A)にてJIS K6911に準拠して23℃50%RH、周波数100kHzにおける比誘電率を測定した。
周波数100kHzにおける比誘電率が3.5以上の場合を「×(poor)」と評価し、3.5未満の場合を「○(good)」と評価した。
【0142】
[耐金属腐食性]
ガラス基板(60mm×45mm)上に、線巾70μm、線長さ46mm、線間隔30μmで10.5往復するように、厚さ100~150Åの酸化インジウム(ITO)の往復線を5本形成すると共に、該往復線の両末端にITOからなる2mm角の正方形を形成してITOパターン(長さ約97cm)を形成し、耐金属腐食性評価用ITOガラス基板を作製した。
実施例及び比較例で作製した粘着シートの一方の離型フィルムを剥がし、その露出面にPETフィルム(東洋紡績製、コスモシャインA4100、125μm)をハンドローラーにて貼着した。次に、前記粘着シートを52mm×45mmに切り出した後、残る離型フィルムを剥がして、ITOの5本の往復線を被覆するように、耐金属腐食性評価用ITOガラス基板に粘着シートをハンドローラーにて貼着した。オートクレーブ処理(70℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上貼着した後、PETフィルム側から、高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が4000mJ/cmとなるよう粘着シートに光照射し、耐金属腐食性評価用サンプル(粘着シート付ITO配線)を作製した。
【0143】
この耐金属腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付ITO配線)における5本のITO配線についてそれぞれ、室温での抵抗値を測定し、初期の配線抵抗値の平均値(Ω0)を求めた。
当該耐腐食信頼性評価用サンプル(粘着シート付ITO配線)を、65℃90%RH環境下で800時間保管した。保管後、耐金属腐食性評価用サンプル(粘着シート付ITO配線)におけるITO配線の抵抗値を同様に測定し、環境試験後の配線抵抗値の平均値(Ω)を求めた。
そして、ITO抵抗値すなわち線末端間抵抗値の変化率(%)[((Ω/Ω0)-1)×100]を算出し、表に「抵抗値変化」として示した。
抵抗値の変化が5%未満のものを「◎(very good)」、5%以上10%未満を「○(good)」、10%以上のものを「×(poor)」と判定した。
【0144】
[形状安定性]
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体について、一方の離型フィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm)側から、他方の離型フィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRV、厚さ100μm)を貫通しないように、粘着シートを30mm×30mmの正方形状にハーフカットした。
裁断された一方の離型フィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm)を剥離して、露出した粘着面に、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRT、厚さ50μm)を被覆した。両側の剥離フィルムを50mm×50mmに裁断し、光硬化前の形状安定性評価用サンプルを作製した。
前記形状安定性評価用サンプルを温度40℃、湿度90%の環境下で300時間養生し、養生後の粘着シートの端面の粘着材のはみ出し量を観察した。粘着材のはみ出しの量は、裁断した養生後の粘着シートについて、各辺の中央部における粘着材のはみ出し距離を測定し、4辺の平均距離を粘着材のはみ出し量(mm)とした。
【0145】
養生後に粘着シートがつぶれ、粘着材のはみ出し量が2mm以上であったものを「×(poor)」、粘着材のはみだしが見られたが、1mm以上2mm未満であったものを「○(good)」、1mm未満であったものを「◎(very good)」と判定した。
なお、表中の「<0.1mm」は、粘着材のはみ出し量が0.1mm未満で、ほとんど粘着材のはみ出しのない状態の意味であり、「>2.0mm」は粘着材のはみ出しがより顕著で、はみ出し量が2.0mmより大きかった状態を指す。
【0146】
[段差吸収性]
58mm×110mm×厚さ0.8mmのガラスの周縁部(長辺側3mm、短辺側15mm)に、厚さ40~50μmの印刷を施し、中央の凹部が52mm×80mmの印刷段差付きガラス板を準備した。
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体の一方の離型フィルムを剥がし、ソーダライムガラス(54mm×82mm×厚さ0.5mm)の全面にロール貼合した。残る離型フィルムを剥がし、前記印刷段差付きガラス板の額縁状の印刷段差に、粘着シートがかかるようにして真空プレスを用いてプレス圧着(絶対圧5kPa、温度70℃、プレス圧0.04MPa)して評価サンプルを作製した。
【0147】
前記評価サンプルの段差吸収性について、60℃、0.3MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理を施した後、貼り合せた評価サンプルの外観を確認し、印刷段差近傍に気泡がみられたものを「×(poor)」、気泡がみられないものを「○(good)」と判定した。
【0148】
[耐発泡信頼性]
54mm×82mm×厚さ0.5mmのソーダライムガラスに、粘着層付き偏光板(サンリッツ社製、VLC2-1518AGD2SF4、寸法54mm×82mm)をハンドローラーにて貼着し、オートクレーブ処理(25℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して、偏光板基材を作製した。
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体の片面の離型フィルムを剥がし、その露出面に54mm×82mm×厚さ0.5mmのソーダライムガラスをハンドローラーにて貼着した。次に、粘着シート積層体の残る離型フィルムを剥がし、その露出面に前述の偏光板基材の偏光板面をハンドロールにて貼着した。オートクレーブ処理(温度60℃、気圧0.4MPa、30分)を施して仕上げ貼着した後、ソーダライムガラス面から高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が4000mJ/cmとなるよう粘着シートに光照射し、耐発泡信頼性評価サンプルを作製した。
【0149】
前記評価サンプルを95℃環境下で100時間養生し、発泡等なく外観に変化がみられなかったものを「○(good)」、発泡や剥離がみられたものを「×(poor)」と判定した。
【0150】
【表1】
【0151】
実施例で作製した光硬化性組成物は、小角X線散乱測定で求められる光硬化性組成物の半値幅が所定の範囲にあることから、適度な凝集力と粘着性を両立しており、保管安定性や貼合信頼性にも優れるものであった。
光硬化前後の光硬化性組成物の半値幅が0.08以上のものについては、特に保持力が高い結果となった。
また、(メタ)アクリル系共重合体(A)の主となる共重合成分として、炭素数5以上の疎水性モノマーを用いている光硬化性組成物6~9については、周波数100kHzにおける比誘電率が3.5以下と低く、タッチセンサーに対し、より好適に用いられるものであった。
さらに、光硬化性組成物7~9については、(メタ)アクリル系共重合体(A)の共重合成分として、酸性度の高いカルボキシル基含有モノマーや酸無水物基含有モノマーを用いず、親水性成分としてアクリルアミドを用いている。このため、光硬化性組成物7~9は耐金属腐食性に特に優れ、金属及び金属酸化物等の腐食性を有する被着体にも好適に用いられるものであった。
【0152】
一方、比較例1で作製した光硬化性組成物は、小角X線散乱測定で求められる光硬化性組成物の半値幅X1が0.05未満であり本発明の規定外であるため、凝集力が強すぎて粘着性に乏しく、段差吸収性に劣るものであった。
比較例2で作製した光硬化性組成物は、小角X線散乱測定による1次元散乱プロファイルが観測されなかった。このため光硬化性組成物は凝集力に乏しく、光硬化前における保管安定性や、貼合後の耐発泡信頼性に劣るものであった。
比較例3で作製した光硬化性組成物は、マクロモノマーを構成単位として含む(メタ)アクリル系重合体を用いているが、室温において粘ちょう液体状となり、光硬化性組成物は小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルが観測されなかった。このため光硬化性組成物は凝集力に乏しく、光硬化前における保管安定性や貼合後の耐発泡信頼性に劣るものであった。