(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】分離剤、当該分離剤の使用、及び当該分離剤を用いたステビオール配糖体の分離方法、並びに当該分離方法を用いたステビオール配糖体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/285 20060101AFI20220216BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20220216BHJP
B01J 20/283 20060101ALI20220216BHJP
B01J 20/282 20060101ALI20220216BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20220216BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20220216BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220216BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220216BHJP
B01D 15/42 20060101ALN20220216BHJP
A23L 27/00 20160101ALN20220216BHJP
【FI】
B01J20/285 S
B01J20/281 X
B01J20/285 N
B01J20/283
B01J20/282 Z
G01N30/88 C
B01J20/281 G
B01J20/26 L
B01J20/34 G
B01J20/28 A
B01J20/26 H
B01D15/42
A23L27/00 101B
(21)【出願番号】P 2019501390
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2018006320
(87)【国際公開番号】W WO2018155517
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2017031392
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 正
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-086205(JP,A)
【文献】特開平02-251251(JP,A)
【文献】特表2008-528966(JP,A)
【文献】特表2012-504552(JP,A)
【文献】ZHANG,R. et al.,Hydrophilic modification gigaporous resins with poly(ethylenimine) for high-throughput proteins ion-,Journal of Chromatography A,2014年,Vol.1343,pp.109-118
【文献】BA,Jing et al.,Separation of Rebaudiana A from Steviol glycoside using a polymeric adsorbent with multi-hydrogen bo,Journal of Chromatography B,2014年,Vol.971,pp.141-149
【文献】カラム総合カタログ2016-2017Shodex,昭和電工株式会社,2016年,22-23頁
【文献】CHEN,B. et al.,Purification and Preparation of Rebaudioside A from Steviol Glycosides Using One-Dimensional Hydroph,Journal of Chromatographic Science,2016年,Vol.54,No.8,pp.1408-1414
【文献】ZHOU,W. et al.,Synthesis of macroporous poly(glycidyl methacrylate) microspheres by surfactant reverse micelles swe,European Polymer Journal,2007年,Vol.43,pp.4493-4502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/34
G01N 30/02 - 30/88
B01D 15/42
A23L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系高分子、酢酸ビニル系高分子、多糖類、シリカ、及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の多孔性粒子に、ポリエチレンイミンが固定化された、ステビオール配糖体分離に用いる分離剤。
【請求項2】
前記多孔性粒子が(メタ)アクリル系高分子を含む、請求項
1に記載の分離剤。
【請求項3】
窒素含有率が0.3質量%~30質量%である、請求項
1又は2に記載の分離剤。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の分離剤のステビオール配糖体分離への使用。
【請求項5】
2種以上のステビオール配糖体を含む溶液を、請求項1~
3のいずれか1項に記載の分離剤に負荷し、前記分離剤に溶媒Aを流通することにより、前記ステビオール配糖体中の少なくとも2種のステビオール配糖体を分離する液体クロマトグラフィー工程を有する、ステビオール配糖体の分離方法。
【請求項6】
前記2種以上のステビオール配糖体を含む溶液が、レバウジオシドAを含み、前記液体クロマトグラフィー工程にて得られる画分の少なくとも1つが、レバウジオシドAを主成分とする画分である、請求項
5に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項7】
前記溶媒Aが、水と自由に混和するアルコール類を含む、請求項
5又は6に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項8】
前記液体クロマトグラフィー工程において、前記溶液中の色素成分の脱色も同時に行う、請求項
5~7のいずれか1項に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項9】
2種以上のステビオール配糖体と溶媒Bとを含む溶液と、請求項1~
3のいずれか1項に記載の分離剤とを接触させて、前記ステビオール配糖体を前記分離剤に吸着させる吸着工程と、次いで溶媒Cを用いて前記分離剤から前記ステビオール配糖体を溶離させる溶離工程とを含み、異なるステビオール配糖体を主成分とする画分を2以上得る、ステビオール配糖体の分離方法。
【請求項10】
前記2種以上のステビオール配糖体を含む溶液が、レバウジオシドAを含み、前記溶離工程にて得られる画分の少なくとも1つが、レバウジオシドAを主成分とする画分である、請求項
9に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項11】
前記溶媒B及び前記溶媒Cが、水と自由に混和するアルコール類を含む、請求項
9又は10に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項12】
前記溶媒Cが、前記溶媒Bよりも極性が高い、請求項
9~11のいずれか1項に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項13】
前記溶媒Bが、プロピルアルコール、エチルアルコール又はメチルアルコールである、請求項
9~12のいずれか1項に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項14】
前記溶離工程において、前記溶液中の色素成分の脱色も同時に行う、請求項
9~13のいずれか1項に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項15】
請求項
5~14のいずれか1項に記載のステビオール配糖体の分離方法により2種以上のステビオール配糖体を含む溶液から、少なくとも2種のステビオール配糖体を分離する工程を有する、ステビオール配糖体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用充填剤に好適に用いられる分離剤に関するものであり、中でも特定のステビオール配糖体に対して高い選択性を有する分離剤、当該分離剤の使用、及び当該分離剤を用いたステビオール配糖体の分離方法、並びに当該分離方法を用いたステビオール配糖体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステビオール配糖体はステビア葉等に含まれており、低カロリーにして蔗糖に比べて数十倍から数百倍の甘味があることから、ダイエット甘味料としての需要が増大している。ステビア葉からのステビオール配糖体の分離精製方法としてはステビア葉を水、水溶性有機溶媒またはこれらの混合溶媒にて抽出し、各種夾雑物を薬剤処理により沈殿・濾過除去させたのちに合成吸着剤やイオン交換樹脂等の各種分離剤を用いて分離・脱塩・脱色を行う方法が多用されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
ステビア葉には種々の化学構造を有する各種ステビオール配糖体が存在するが、主成分としてステビオシドとレバウジオシドAがある。ステビオシドは通常のステビア葉に最も多く含まれているが、甘味の他に独特の風味があり甘味料として広範囲な用途に用いるには不利とされる。一方、レバウジオシドAではステビオシドに比べて独特の風味が少ないことから高純度のレバウジオシドAの供給が求められている。
【0004】
高純度レバウジオシドAを得る方法としては例えば特許文献1に記載される様なレバウジオシドAの含有量・含有率の高い品種のステビア葉を用いることが最も容易な方法であるが、これらの品種は一般的に用いることが出来ない。従って、各種ステビオール配糖体を含む通常品種のステビア葉抽出物から高純度レバウジオシドAを分離精製する方法が求められる。
例えば、非特許文献1に例示されるように、合成吸着剤により甘味成分を吸着させ、アルコール水溶液で溶離させた後、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の2床2塔で脱塩脱色後、仕上げ精製するという一般的なステビオール配糖体の分離精製方法が挙げられるが、本方法ではレバウジオシドAを高純度に分離精製することは出来なかった。
そこで、非特許文献2では、架橋合成高分子粒子にエチレンジアミンからテトラエチレンペンタミンまでの分子量の低いポリアルキレンポリアミンを結合させた分離剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】ダイヤイオンマニュアル2 (三菱ケミカル株式会社発行)
【文献】Journal of Chromatography B,971 (2014),p141.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献2の分離剤の実用例では、分離工程において、価格が高く、水との混和性が7.8質量%(20℃)と低いために分離工程後の分離剤の水洗・再生工程への移行が煩雑となるn-ブチルアルコール溶液を用いているので、工業的に不利と言える。
【0008】
このように、一般的なステビア葉から特定のステビオール配糖体、特に高純度のレバウジオシドAを工業的な使用が容易となる水と自由に混和する溶媒を用いて高い分離性にて有利に分離精製するための分離剤、分離方法は未だ知られてはいなかった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ステビオール配糖体の選択性が高く、なかでも特にレバウジオシドAの分離効率が良好な分離剤およびステビオール配糖体の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者が鋭意研究を行なった結果、特定の多孔性粒子に、ポリエチレンイミンが固定化された分離剤が、特定のステビオール配糖体、特にレバウジオシドAに対して、高い選択性にて吸着・分離性能を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)
架橋構造及び水酸基を有する(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子に、ポリエチレンイミンが固定化された、分離剤。
(2)
ポリエチレンイミンの質量平均分子量が200以上である、前記(1)に記載の分離剤。
(3)
窒素含有率が0.3質量%~30質量%である、前記(1)又は(2)に記載の分離剤。
(4)
多孔性粒子の細孔直径が1nm~1000nmである、前記(1)~(3)のいずれか1に記載の分離剤。
(5)
(メタ)アクリル系高分子、酢酸ビニル系高分子、多糖類、シリカ、及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の多孔性粒子に、ポリエチレンイミンが固定化された、ステビオール配糖体分離に用いる分離剤。
(6)
多孔性粒子が(メタ)アクリル系高分子を含む、前記(5)に記載の分離剤。
(7)
窒素含有率が0.3質量%~30質量%である、前記(5)又は(6)に記載の分離剤。
(8)
前記(1)~(7)のいずれか1に記載の分離剤のステビオール配糖体分離への使用。
(9)
2種以上のステビオール配糖体を含む溶液を、前記(1)~(7)のいずれか1に記載の分離剤に負荷し、分離剤に溶媒Aを流通することにより、ステビオール配糖体中の少なくとも2種のステビオール配糖体を分離する液体クロマトグラフィー工程を有する、ステビオール配糖体の分離方法。
(10)
2種以上のステビオール配糖体を含む溶液が、レバウジオシドAを含み、液体クロマトグラフィー工程にて得られる画分の少なくとも1つが、レバウジオシドAを主成分とする画分である、前記(9)に記載のステビオール配糖体の分離方法。
(11)
溶媒Aが、水と自由に混和するアルコール類を含む、前記(9)又は(10)に記載のステビオール配糖体の分離方法。
(12)
液体クロマトグラフィー工程において、溶液中の色素成分の脱色も同時に行う、前記(9)~(11)のいずれか1に記載のステビオール配糖体の分離方法。
(13)
2種以上のステビオール配糖体と溶媒Bとを含む溶液と、前記(1)~(7)のいずれか1に記載の分離剤とを接触させて、ステビオール配糖体を分離剤に吸着させる吸着工程と、溶媒Cを用いて分離剤からステビオール配糖体を溶離させる溶離工程とを含み、異なるステビオール配糖体を主成分とする画分を2以上得る、ステビオール配糖体の分離方法。
(14)
2種以上のステビオール配糖体を含む溶液が、レバウジオシドAを含み、溶離工程にて得られる画分の少なくとも1つが、レバウジオシドAを主成分とする画分である、前記(13)に記載のステビオール配糖体の分離方法。
(15)
溶媒B及び溶媒Cが、水と自由に混和するアルコール類を含む、前記(13)又は(14)に記載のステビオール配糖体の分離方法。
(16)
溶媒Cが、溶媒Bよりも極性が高い、前記(13)~(15)のいずれか1に記載のステビオール配糖体の分離方法。
(17)
溶媒Bが、プロピルアルコール、エチルアルコール又はメチルアルコールである、前記(13)~(16)のいずれか1に記載のステビオール配糖体の分離方法。
(18)
溶離工程において、溶液中の色素成分の脱色も同時に行う、前記(13)~(17)のいずれか1に記載のステビオール配糖体の分離方法。
(19)
前記(9)~(18)のいずれか1に記載のステビオール配糖体の分離方法により2種以上のステビオール配糖体を含む溶液から、少なくとも2種のステビオール配糖体を分離する工程を有する、ステビオール配糖体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分離剤は、特定の多孔性粒子に、ポリエチレンイミンを固定化した分離剤であり、これによって特定のステビオール配糖体、特にレバウジオシドAに対して、高い選択性にて吸着・分離性能を示すものである。また、本発明の分離剤はステビオール配糖体の工業的分離精製工程に好適に用いることができ、目的のステビオール配糖体を純度高く分離精製して得ることができる分離方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1の分離剤を用いてクロマトグラフィーによる分離性評価を行った結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例2の分離剤を用いてクロマトグラフィーによる分離性評価を行った結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、比較例1の分離剤を用いてクロマトグラフィーによる分離性評価を行った結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、比較例2の分離剤を用いてクロマトグラフィーによる分離性評価を行った結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例1の分離剤を用いて吸着及び溶離による分離性評価を行った結果を示す吸着および溶離プロファイルである。
【
図6】
図6は、実施例1の分離剤を用いて吸着及び溶離による分離性評価を行った結果の、各成分の含有量及びその比を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例4の分離剤を用いて吸着及び溶離による分離性評価を行った結果を示す吸着および溶離プロファイルである。
【
図8】
図8は、実施例4の分離剤を用いて吸着及び溶離による分離性評価を行った結果の、各成分の含有量及びその比を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例5の分離剤を用いて吸着及び溶離による分離性評価を行った結果を示す吸着および溶離プロファイルである。
【
図10】
図10は、実施例5の分離剤を用いて吸着及び溶離による分離性評価を行った結果の、各成分の含有量及びその比を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施例6の分離剤を用いて吸着及び溶離による分離性評価を行った結果を示す吸着および溶離プロファイルである。
【
図12】
図12は、実施例6の分離剤を用いて吸着及び溶離による分離性評価を行った結果の、各成分の含有量及びその比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値または物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の一方または双方をさし、「(メタ)アクリレート」についても同様である。また、「(ポリ)エチレン・・・」は、「エチレン・・・」と「ポリエチレン・・・」の一方または双方をさす。
【0015】
[1]分離剤
本発明の分離剤は、特定の多孔性粒子に、ポリエチレンイミンが固定化されていることを特徴とする。以下、各構成要素に分けて、詳細に説明する。
【0016】
[1-1].多孔性粒子
本明細書において、多孔性粒子は、多数の微細な細孔を有する粒子をいう。多孔性粒子の平均粒径、比表面積、細孔直径の好ましい範囲は、後述する。
本発明で用いられる多孔性粒子の一態様は、架橋構造及び水酸基を有する(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子であり、別の態様は、(メタ)アクリル系高分子、酢酸ビニル系高分子、多糖類、シリカ、ガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の多孔性粒子である。以下に詳細に説明する。
(メタ)アクリル系高分子、酢酸ビニル系高分子、多糖類、シリカ、ガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の多孔性粒子とすることで、多孔性粒子とステビオール配糖体との不必要な疎水性相互作用が抑制できるため、好ましい。これらの中でも、多孔性粒子とステビオール配糖体との不必要な疎水性相互作用をより抑制することができることから、(メタ)アクリル系高分子が好ましい。
【0017】
(1-1):(メタ)アクリル系高分子
(メタ)アクリル系高分子からなる多孔性粒子としては、例えば、架橋性(メタ)アクリレートを含む単量体を重合して得られる、架橋構造を有する多孔性粒子が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル系高分子とは、重合体を構成する原料となる単量体の50質量%以上、好ましくは80質量%以上が、(メタ)アクリレートからなることを言う。よって、(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子は、高分子の全構成単位の50質量%以上が(メタ)アクリレート由来の構成単位であればよく、(メタ)アクリレート以外の単量体由来の構成単位を含んでいてもよい。耐加水分解性に優れ、得られる分離剤の使用可能期間が向上することから、高分子の全構成単位に対する(メタ)アクリレート由来の構成単位の比率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0018】
次に、(メタ)アクリル系高分子からなる多孔性粒子の製造方法について説明する。
(メタ)アクリル系高分子からなる本発明で用いられる多孔性粒子は、典型的には、(メタ)アクリレートを50質量%以上含む単量体、多孔質化剤、重合開始剤等を含む単量体相を、分散安定剤等を含む水相に分散させ、加熱等による重合反応を行うことによって、架橋構造を持つ、球状の多孔性粒子として得られる。
【0019】
このような多孔性粒子を得るための方法は、例えば、日本国特公昭58-058026号公報に開示されているような方法を用い、懸濁重合や乳化重合させることによって行うことができる。
【0020】
多孔性粒子を構成する原料の単量体としては、非架橋性単量体及び架橋性単量体を用いることができる。架橋構造を有する多孔性粒子を構成するためには、原料の単量体として架橋性単量体を用いればよい。
【0021】
非架橋性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;反応性官能基を有する(メタ)アクリレート;イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等の芳香族ビニル単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルピリジン;ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの非架橋性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの非架橋性単量体の中でも、ポリエチレンイミンを固定化できることから、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
反応性官能基を有する(メタ)アクリレートは、ポリエチレンイミンを固定化できるような反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、又はこのような反応性官能基を有する化合物(以下「スペーサー」ともいう。詳細は後述する。)と反応可能な官能基を有する(メタ)アクリレートがあり、本発明にはそのいずれも使用可能である。
【0023】
反応性官能基を有する(メタ)アクリレートの反応性官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン基、エポキシ基等が挙げられる。これらの官能基の中でも、反応性官能基を導入しやすく、ポリエチレンイミンとの反応性に優れることから、エポキシ基が好ましい。また、詳細は後述するが、反応性官能基としてエポキシ基を用いた場合は、固定化反応後に残存したエポキシ基を後処理により水酸基へ変換することが好ましい。すなわち、本発明の分離剤において、ポリエチレンイミンが固定化された(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子は、水酸基を有することが好ましい。
【0024】
反応性官能基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシブチル(メタ)アクリレート、9,10-エポキシステアリル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの反応性官能基を有する(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの反応性官能基を有する(メタ)アクリレートの中でも、反応性官能基を導入しやすく、ポリエチレンイミンとの反応性に優れることから、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートがより好ましく、グリシジルメタクリレートがさらに好ましい。
【0025】
反応性官能基を有する(メタ)アクリレートの使用量は、全単量体100質量%中、5質量%以上、95質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは10質量%以上、90質量%以下である。
反応性官能基を有する(メタ)アクリレートの使用量が5質量%以上であると、ポリエチレンイミンの固定化反応が十分進行し、ポリエチレンイミンの導入量が十分であり、ステビオール配糖体の吸着量が十分となる。一方、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートの使用量が95質量%以下であると、細孔構造の発達が十分で、得られる多孔性粒子の機械的強度に優れる。
【0026】
架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の架橋性(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、2,4,6-トリビニルエチルベンゼン、アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリアリル等の(メタ)アクリレート以外の架橋性単量体等が挙げられる。これらの架橋性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの架橋性単量体の中でも、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートとの重合反応性に優れることから、架橋性(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0027】
架橋性単量体の使用量は、全単量体100質量%中、5質量%以上、95質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは10質量%以上、90質量%以下である。
架橋性単量体の使用量が5質量%以上であると、細孔構造の発達が十分で、得られる多孔性粒子の機械的強度に優れる。一方、架橋性単量体の使用量が95質量%以下であると、ポリエチレンイミンの固定化反応が十分進行し、ポリエチレンイミンの導入量が十分であり、ステビオール配糖体の吸着量が十分となる。
【0028】
(1-2):酢酸ビニル系高分子
酢酸ビニル系高分子からなる多孔性粒子としては、例えば、ポリ(酢酸ビニル-イソシアヌル酸トリアリル)共重合体等が挙げられる。
【0029】
ポリ(酢酸ビニル-イソシアヌル酸トリアリル)共重合体の場合には、酢酸ビニル基を加水分解することにより反応性官能基としての水酸基を生成し得ることから好ましい。
【0030】
(1-3):多糖類
多糖類からなる多孔性粒子としては、例えば、架橋アガロース粒子、架橋デキストラン粒子、架橋セルロース粒子等が挙げられ、いずれも反応性官能基としての水酸基を有することから好ましい。
【0031】
(1-4):シリカおよびガラス
多孔性シリカおよび多孔性ガラス粒子については、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の反応性官能基を有する有機ケイ素化合物を反応させることでポリエチレンイミンの導入が可能となる。
【0032】
(2)多孔性粒子の物性
1)平均粒径
本発明の分離剤を構成する多孔性粒子の平均粒径は1μm以上、1000μm以下であることが好ましい。
一例として、このような平均粒径を有する(メタ)アクリル系高分子または酢酸ビニル系の多孔性粒子は、日本国特開昭64-54004号に記載されているような、懸濁重合法により製造することができる。
また、上記多孔性粒子の平均粒径の調整方法としては、懸濁重合の操作条件、例えば、上記の各種単量体の種類・量の選択、乳化剤及び/又は保護コロイド剤の種類・量の選択、及び撹拌の強度(撹拌回転数等)、その他を調節する方法などが挙げられる。
また、生成粒子を、篩網、水篩、風篩などの方法で分級して粒径を揃えてもよい。
【0033】
より好ましい平均粒径は、用いる充填用カラムの用途や大きさにもよるが、4μm以上、700μm以下であり、更に好ましい平均粒径は10μm以上、500μm以下である。
平均粒径がこの下限以上であると、カラムに充填して通液した時の圧力損失が小さくなり、そのため通液速度を充分に高くすることができ、分離処理の生産性が向上する。一方、平均粒径がこの上限以下であると、カラムの効率が向上し、吸着量や分離性能が向上する。
【0034】
平均粒径は、既知の方法で測定することができる。例えば、光学顕微鏡にて、100個以上の粒子の粒径を測定し、その分布から体積メジアン径を算出することで得られる。
粒径分布の幅の指標である均一係数は、通常小さい方がカラムに充填して通液する時の圧力損失が小さくなり好ましい。均一係数が大きくなると、カラムへの充填効率は高くなるものの、圧力損失が大きくなる傾向にある。
【0035】
2)比表面積、細孔直径
多孔性粒子の比表面積は窒素吸着法(BET法)、細孔直径は水銀圧入法により測定される。
比表面積は1~1,000m2/gであることが好ましい。より好ましくは10~500m2/gである。
細孔直径は10Å(1nm)以上、10,000Å(1000nm)以下であることが好ましい。より好ましい細孔直径は、20Å以上、5,000Å以下、更に好ましい値としては、20Å以上、2,000Å以下である。
水銀圧入法は、圧力をかけて水銀を開孔部に侵入させ、圧力値と対応する侵入水銀体積とを用いて、円柱状と仮定した細孔の径をWashburnの式から算出する方法であり、ISO 15901-1を準用する。
細孔直径は、最頻度直径とする。
【0036】
これらの細孔直径や比表面積は、用いる重合性単量体の種類・量や、重合時の水と単量体との量比、あるいは重合に際して重合に不活性な有機溶媒を反応系中に所定量共存させ、その種類や量を制御することによって調整することができる。更に、重合開始剤の種類・量によっても調整が可能である。
細孔直径が先述の下限値以上である場合、固定化されるポリエチレンイミンが粒子の細孔中に入りやすくなり、固定化反応が充分に進行し、またステビオール配糖体も粒子の細孔中に入りやすくなり、結果的にステビオール配糖体の吸着量が増加することとなる。一方、細孔直径が先述の上限値以下である場合、細孔内部に吸着に寄与しない空間ができにくく、ステビオール配糖体の吸着量が低下することなく、更に分離剤粒子の機械的な強度も向上する。
【0037】
[1-2].ポリエチレンイミン
本発明の分離剤は、前述の多孔性粒子にポリエチレンイミンが固定化されている。なお、ポリエチレンイミンは、共有結合により多孔性粒子に固定化されていることが好ましい。
本発明に用いられるポリエチレンイミンは、質量平均分子量(以下、単に「分子量」ともいう)が200以上、10万以下であることが好ましい。ポリエチレンイミンの分子量は、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上であって、より好ましくは10万以下、さらに好ましくは1万以下である。本発明の分離剤では官能基であるポリエチレンイミンが分離対象であるステビオール配糖体と三次元的に相互作用するために分離性が向上するものと推定されることから、分子量が200以上であると分離対象であるステビオール配糖体との相互作用程度が向上する。また10万以下であると粘度が高くなりすぎないことから固定化反応に際して多量の溶媒での希釈が必要なくなり、また固定化反応の反応率が向上し分離剤への導入量が増加することから結果的にステビオール配糖体の吸着量が増加する。
なお、この分子量とは代表的な値であり、具体的には株式会社日本触媒より販売される工業用ポリエチレンイミン(商品名:エポミン)や各種試薬会社より販売される試薬ポリエチレンイミン等に表記される分子量を指す。
また、ポリエチレンイミンの分子量については例えば加水分解反応等によりポリエチレンイミンを分離剤を構成する多孔性粒子から脱離させる、または分離剤を構成する多孔性粒子を溶媒に可溶化させた後、多孔性粒子構成化合物とポリエチレンイミンを分離する等の方法にて単離し、サイズ排除クロマトグラフィー法等を用いることで求めることもできる。
【0038】
(1)多孔性粒子の反応性官能基
上述のポリエチレンイミンを、多孔性粒子に固定化する方法の一例として、架橋構造を有する(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子に固定化する方法として通常用いられる方法を以下に記載するが、これに限定されるものではない。また、(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子に代えて酢酸ビニル系高分子、多糖類、シリカ又はガラスの多孔性粒子を用いる場合にも同様の方法を採用することができる。
固定化は、(メタ)アクリル系高分子粒子に反応性官能基付与性を有する(メタ)アクリレートを共重合等の形で取り込ませておいた上で、この反応性官能基と、ポリエチレンイミンとを直接反応させる方法や、或いは(メタ)アクリル系高分子の構成成分に有する官能基及びポリエチレンイミンにそれぞれ反応可能な官能基を分子内にそれぞれ1個以上有する低分子又は高分子化合物(スペーサー)を介して結合させる方法が用いられる。
【0039】
例えば前者の方法としては、(メタ)アクリル系高分子粒子にエポキシ基、カルボキシル基などのアミノ基と共有結合を形成する官能基を含有させておき、これとポリエチレンイミンを直接反応させて固定化する方法が例示できる。
また、後者の方法としては、スペーサーとしてアミノ酸(アミノカルボン酸)類を用い、そのアミノ基部位と(メタ)アクリル系高分子のエポキシ基とを反応させた上で、他の末端のカルボキシル基によってポリエチレンイミンのアミノ基と反応させる方法や、スペーサーとして(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物を用いて、(メタ)アクリル系高分子中の水酸基やアミノ基とポリグリシジル化合物の一方の末端を結合させ、残る末端のエポキシ基をポリエチレンイミンと結合させる方法などが挙げられる。
【0040】
なお、スペーサーとしては直線状の構造を有しているスペーサーを用いることが好ましく、この場合ポリエチレンイミンとの反応性や固定化時の(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子との立体障害が小さくなり、吸着量が増加する傾向となる。
【0041】
(2)ポリエチレンイミンの固定化反応
ポリエチレンイミンの固定化反応に際しては、例えばポリエチレンイミンをそのまま、あるいは有機溶媒溶液または水溶液として、上記エポキシ基等を有する(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子に供給し、反応を行わせる。
ポリエチレンイミンを単独で用いると粘度が高く、工業的に製造するには設備的な問題があることから、有機溶媒溶液または水溶液として上記エポキシ基等を有する(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子に供給することが好ましく、さらにエポキシ基を有する(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子を用いる場合には水溶液系ではエポキシ基への水付加によるジオール生成反応との競争反応となることから有機溶媒溶液として上記エポキシ基等を有する(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子に供給することが特に好ましい。
【0042】
有機溶媒については、ポリエチレンイミンを溶解することが可能なものが好ましく、ブチルアルコール類、プロピルアルコール類、エチルアルコールおよびメチルアルコール等のアルコール類や、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピランおよびジオキサン等のエーテル類、またジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等が例示されるが、上記エポキシ基等を有する(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子を膨潤させるエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、THFおよびジオキサン等のエーテル類がさらに好ましい。
固定化反応の温度は、20℃~100℃程度が好ましい。温度が20℃以上であると、反応時間を短縮化することができ、一方、温度が100℃以下であると、(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子の分解を抑制することができる。
【0043】
(3)後処理
上記のように固定化反応を行った後、多孔性粒子側に残存する反応性官能基は、後処理により不活性化しておくことが好ましい。不活性化せずに残った反応性官能基は、徐々にステビオール配糖体やステビア葉抽出物中の夾雑物等の活性基と反応し、分離剤の吸着容量を低下させたり、分離選択性を悪化させたりする場合がある。
【0044】
このような後処理としては、例えば反応性官能基としてエポキシ基を例に取れば、水と反応させて水酸基に(すなわち、ジオールに)変換する方法が例示できる。このときの触媒としてリン酸、硫酸等の無機酸水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類水溶液が挙げられ、特に硫酸水溶液の使用が好ましい。硫酸水溶液の濃度や反応温度、反応時間等の処理条件は、特に制限されるものではないが、通常、濃度1~30質量%、温度10~90℃の条件で0.1~24時間実施することができる。さらに好ましい処理条件は濃度3~20質量%、温度20~80℃にて1~10時間である。
【0045】
[1-3].分離剤の特性
(1)平均粒径
本発明の分離剤の平均粒径は1μm以上、1000μm以下であることが好ましい。分離剤の平均粒径は、用いる多孔性粒子の平均粒径を反映するが、ポリエチレンイミンの固定化により、用いた多孔性粒子の平均粒径より一般的に0~20%程度大きくなる。より好ましい平均粒径は、用いる充填用カラムの用途や大きさにもよるが、4μm以上、700μm以下であり、更に好ましい平均粒径は10μm以上、500μm以下である。
平均粒径がこの下限以上であると、カラムに充填して通液した時の圧力損失が小さくなり、そのため通液速度を充分に高くすることができ、分離処理の生産性が向上する。一方、平均粒径がこの上限以下であると、カラムの効率が向上し、吸着量や分離性能が向上する。
【0046】
平均粒径は、既知の方法で測定することができる。例えば、光学顕微鏡にて、100個以上の粒子の粒径を測定し、その分布から体積メジアン径を算出することで平均粒径が得られる。
粒径分布の幅の指標である均一係数は、通常小さい方がカラムに充填して通液する時の圧力損失が小さくなり好ましい。均一係数が大きくなると、カラムへの充填効率は高くなるものの、圧力損失が大きくなる傾向にある。
【0047】
(2)比表面積、細孔直径
多孔性粒子の比表面積は窒素吸着法(BET法)、細孔直径および細孔容積は水銀圧入法により測定される。分離剤の比表面積および細孔容積は、用いる多孔性粒子の比表面積および細孔容積を反映するが、ポリエチレンイミンの固定化状態により0~50%程度変化する。
比表面積は1~1,000m2/gであることが好ましい。より好ましくは10~500m2/gである。
細孔直径は10Å以上、10,000Å以下であることが好ましい。より好ましい細孔直径は、20Å以上、5,000Å以下、更に好ましい値としては、20Å以上、2,000Å以下である。
細孔直径は、最頻度直径とする。
【0048】
細孔直径がこの下限値以上である場合、分離剤の製造時においては分離対象の化合物が粒子の細孔中に入りやすくなり、固定化反応が充分に進行し、また製造された分離剤によるステビオール配糖体の分離精製工程においてはステビオール配糖体が粒子の細孔中に入りやすくなり、結果的にステビオール配糖体の吸着量が増加することとなる。一方、細孔直径が上限値以下である場合、細孔内部に吸着に寄与しない空間ができにくく、ステビオール配糖体の吸着量が低下することなく、更に分離剤粒子の機械的な強度も向上する。
細孔容積は0.1mL/g以上、3.0mL/g以下であることが好ましい。より好ましい細孔容積は、0.2mL/g以上、2.5mL/g以下、更に好ましい値としては、0.5mL/g以上、2.0mL/g以下である。
【0049】
(3)窒素含有率、総交換容量
ポリエチレンイミンの固定化量については、元素分析による窒素含有率(N含量)や得られた分離剤の総交換容量測定により定量することができる。
窒素含有率については0.3質量%以上であることが好ましい。またその上限は特に限定されないが、通常30質量%以下である。
窒素含有率が0.3質量%以上ではステビオール配糖体の吸着量が増加し、分離剤の効率が高くなる。一方、窒素含有率が30質量%以下では、分離剤細孔内部の空間の内、ポリエチレンイミンが占める部分の割合が適切な範囲となることによりステビオール配糖体が、好適に拡散浸透し、吸着量が高くなる。
分離剤の総交換容量は、同様の理由より0.1ミリ等量/g以上20ミリ等量/g以下、好ましくは0.1ミリ等量/g以上10ミリ等量/g以下である。
なお、総交換容量の測定方法については、乾燥分離剤0.5~1.5gに相当する分離剤試料を精秤し、0.2N-HCl水溶液250mL中、30℃にて8時間振盪を行った後、上清中のHCl濃度を滴定により求め、計算により求めることが出来る。
【0050】
(4)用途
本発明の分離剤は、後述する通り、2種以上のステビオール配糖体を分離可能であり、ステビオール配糖体分離用の分離剤として好ましく用いられる。
【0051】
[2]本発明の分離剤を用いた分離方法
本発明の分離剤は、2種以上のステビオール配糖体、好ましくはレバウジオシドAを、さらに好ましくはステビオシドおよびレバウジオシドAを分離対象とし、これらの分離に好適に使用される。
2種以上のステビオール配糖体を含む溶液から、それぞれのステビオール配糖体を分離する方法としては、以下の2つの分離方法が挙げられる。
【0052】
(A)2種以上のステビオール配糖体を含む溶液を本発明の分離剤に負荷し、該分離剤に溶媒Aを流通することにより該ステビオール配糖体群中の少なくとも2種のステビオール配糖体を分離する液体クロマトグラフィー工程を有する、ステビオール配糖体の分離方法。
(B)2種以上のステビオール配糖体と溶媒Bとを含む溶液と本発明の分離剤を接触させてステビオール配糖体群を該分離剤に吸着させる吸着工程と、次いで溶媒Cを用いて該分離剤から該ステビオール配糖体群を溶離させる溶離工程とを含み、異なるステビオール配糖体を主成分とする画分を2以上得るステビオール配糖体の分離方法。
なお、説明の便宜上、液体クロマトグラフィー工程においてもちいる溶媒を溶媒A、吸着工程において用いる溶媒を溶媒B、溶離工程において用いる溶媒を溶媒Cとしたが、これらはそれぞれ同じ溶媒であっても、異なる溶媒であってもよい。
【0053】
いずれの方法においても、複数のステビオール配糖体を含む溶液から特定のステビオール配糖体を分離することが可能である。ステビオール配糖体としてはステビオシド、ステビオールビオシドやレバウジオシドA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、OおよびズルコシドA、Bなどが挙げられるが、これらの中から2種以上が選択されるステビオール配糖体群の中から、少なくともレバウジオシドAを高純度で分離できることが好ましく、より好ましくはステビア葉の主成分であるステビオシドとレバウジオシドAとを高効率に分離できることである。
【0054】
具体的には、前記2種以上のステビオール配糖体を含む溶液がレバウジオシドAを含む場合、前記液体クロマトグラフィー工程または溶離工程にて得られる画分の少なくとも1つが含有するステビオール配糖体群のうちレバウジオシドAが主成分であることが好ましく、即ち90質量%以上がレバウジオシドAであることが好ましく、より好ましくは93質量%以上である。
また、別の好ましい例としては、前記2種以上のステビオール配糖体を含む溶液がステビオシドとレバウジオシドAを含む場合、前記液体クロマトグラフィー工程または溶離工程にて得られる画分として、該溶液に含まれていたステビオシドとレバウジオシドAのそれぞれの含有量の90質量%以上が別々の画分に溶離されることである。これはステビア葉の主成分であるステビオシドとレバウジオシドAの分離能が高いことを意味し、より高純度のレバウジオシドAを、容易にかつ高効率に得ることができるため好ましい。
【0055】
前記吸着工程で分離剤に吸着されるステビオール配糖体群としては、前記溶液に含まれる全てのステビオール配糖体である必要はなく、少なくとも目的の分離対象であるステビオール配糖体を1以上吸着させればよい。
ステビオール配糖体群として少なくともステビオシドとレバウジオシドAを含む溶液から、ステビオシドとレバウジオシドAを分離するための分離処理は、以下の工程にて行うことができる。
【0056】
(A-1)ステビア葉等から抽出されたステビオシドおよびレバウジオシドAを含むステビオール配糖体群含有溶液を本発明の分離剤を充填したカラムに負荷し、カラムに溶媒Aを流通することによりステビオシドとレバウジオシドAをクロマトグラフィー分離させる工程。
または、
(B-1)ステビア葉等から抽出されたステビオシドおよびレバウジオシドAを含むステビオール配糖体群と溶媒Bとを含む溶液を本発明の分離剤に接触させて、ステビオール配糖体群を分離剤に吸着させる工程。
(B-2)次いで溶媒Cを用いてステビオール配糖体群を吸着した分離剤から該ステビオール配糖体を溶離する工程。
【0057】
または、
(BB-1)ステビア葉等から抽出されたステビオシドおよびレバウジオシドAを含むステビオール配糖体群と溶媒Bとを含む溶液を本発明の分離剤に接触させて、ステビオール配糖体群を分離剤に吸着させる工程。
(BB-2)次いで溶媒C1を用いてステビオール配糖体群を吸着した分離剤からステビオシドを主とするステビオール配糖体群を溶離する工程。
(BB-3)次いで溶媒C2を用いてステビオール配糖体を吸着した分離剤からレバウジオシドAを主とするステビオール配糖体群を溶離する工程。
なお、(BB-2)において用いる溶媒を溶媒C1、(BB-3)において用いる溶媒を溶媒C2と称したが、これらはいずれも溶離工程において用いる溶媒Cの一態様であり、溶媒C1と溶媒C2は同じ溶媒であっても、異なる溶媒であってもよい。
【0058】
または、
(BBB-1)ステビア葉等から抽出されたレバウジオシドAを含むステビオール配糖体群と溶媒Bとを含む溶液を本発明の分離剤に接触させて、主にレバウジオシドAを分離剤に吸着させる工程。
(BBB-2)次いで溶媒Cを用いてレバウジオシドAを主成分とするステビオール配糖体群を吸着した分離剤から該ステビオール配糖体を溶離する工程。
このような方法により、目的のステビオール配糖体を選択性良く分離することが可能である。
このような分離処理に際しては、バッチ処理法およびカラム処理法等の処理方法が用いられるが、上記の分離剤を含み、少なくとも1つの容器を備えたカラムを用いたカラム処理法が好ましい。
【0059】
溶媒A、溶媒B、及び溶媒Cは、それぞれ独立してステビオール配糖体を溶解することが可能なものであればよく、イソブチルアルコール[溶解度パラメーター:21.5MPa(1/2)]、n-ブチルアルコール[溶解度パラメーター:23.3MPa(1/2)]、sec-ブチルアルコール[溶解度パラメーター:22.1MPa(1/2)]、t-ブチルアルコール[溶解度パラメーター:21.7MPa(1/2)]のブチルアルコール類、1-プロピルアルコール[溶解度パラメーター:24.3MPa(1/2)]や2-プロピルアルコール[溶解度パラメーター:23.5MPa(1/2)]のプロピルアルコール類、エチルアルコール[溶解度パラメーター:26.0MPa(1/2)]およびメチルアルコール[溶解度パラメーター:29.7MPa(1/2)]等のアルコール類や、エチレングリコール[溶解度パラメーター:29.9MPa(1/2)]、ジエチレングリコール[溶解度パラメーター:24.8MPa(1/2)]等の(ポリ)エチレングリコール類やグリセリン[溶解度パラメーター:33.8MPa(1/2)]等のポリオール類、エチレングリコールジメチルエーテル[溶解度パラメーター:17.6MPa(1/2)]、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル[溶解度パラメーター:15.1MPa(1/2)]、THF[溶解度パラメーター:18.6MPa(1/2)]およびジオキサン[溶解度パラメーター:20.5MPa(1/2)]等のエーテル類、またジメチルホルムアミド[溶解度パラメーター:24.8MPa(1/2)]、ジメチルアセトアミド[溶解度パラメーター:22.1MPa(1/2)]等のアミド類および水[溶解度パラメーター:47.9MPa(1/2)]等が例示されるが、溶媒A、及び溶媒Bはステビオール配糖体の溶解度の高いものが好ましい。
【0060】
溶媒A、溶媒B、及び溶媒Cのいずれにおいても、水と自由に混和するt-ブチルアルコール、プロピルアルコール類、エチルアルコール、メチルアルコールなどのアルコール類、および(ポリ)エチレングリコール類、グリセリンがより好ましく、溶媒Bにおいて特に好ましくはステビオール配糖体の吸着力の高いプロピルアルコール、エチルアルコール又はメチルアルコールを含む溶媒が挙げられる。一方で、溶媒Aはプロピルアルコール類およびエチルアルコールに水またはメタノールを混合して濃度を低くした混合溶媒であることが好ましい。
【0061】
ステビオール配糖体の分離作用機構は親水性相互作用クロマトグラフィーに基づくものと推定されることから、溶媒Cとしては、溶媒Bに比べて極性の高い溶媒を用いるか、溶媒Bに極性の高い溶媒および水を混合した混合溶媒を用いることが好ましい。また、溶媒Cとして2種以上の溶媒を別々に用いて溶離を行うことで、異なるステビオール配糖体をそれぞれ主成分とする画分を2以上得ることができる。溶媒Cとして用いられる2種以上の溶媒としては、上記で列記した溶媒から異なる2種以上を組み合わせる、または2種の溶媒を選択しその混合比率を2種類以上変化させること等を選択することができるが、分離剤と分離対象となるステビオール配糖体との親水性相互作用を調整することができる2種以上溶媒を選択すればよい。
なお、溶媒の極性の判断指標として極性の寄与度を包含した溶解度パラメーターがあり、15MPa(1/2)以上が好ましく、特に好ましくは18MPa(1/2)以上である。なお、各溶媒に記載の溶解度パラメーターはWILEY社、ポリマーハンドブック第3版(1989年発行)に記載の値を参照した。
【0062】
また、本発明の分離剤を用いると、液体クロマトグラフィー工程又は溶離工程においてステビオール配糖体群含有溶液中の色素成分の脱色も同時に行うことも可能であり、好ましい。色素成分は、本発明の分離剤を用いる場合、液体クロマトグラフィー工程および溶離工程のいずれにおいてもカラム内にとどまっているため、分離対象となるステビオール配糖体を主成分とする画分からこれら色素成分を除去することができる。カラム内にとどまった色素成分は別途溶離させ、分離剤を再生して用いることができる。
【0063】
上記に説明した分離方法により2種以上のステビオール配糖体を含む溶液から、少なくとも2種のステビオール配糖体を分離する工程、及び、従来ステビオール配糖体の製造方法として公知の工程を用いて、ステビオール配糖体を製造することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0065】
[物性の評価方法]
以下の実施例及び比較例で得られた分離剤の物性の評価方法は以下の通りである。
【0066】
<平均粒径>
平均粒径は光学顕微鏡にて、100個以上の粒子の粒径を測定し、その分布から体積メジアン径を算出することで得た。
【0067】
<比表面積>
比表面積は、窒素吸着法により測定した。窒素吸着法は、吸着前後の圧力変化からBETの式により単分子層吸着量を求める方法であり、窒素ガス1分子の断面積から比表面積を計算することが出来る。
乾燥処理した試料樹脂粒子を秤量し、マイクロメリテックス社製フローソーブIII型を用いて比表面積を測定した。
【0068】
<細孔容積、細孔直径>
細孔容積と細孔直径は、マイクロメリテックス社製オートポア9520型を用いて水銀圧入法により測定した。
【0069】
<総交換容量>
総交換容量の測定方法については、乾燥分離剤0.5~1.5gに相当する分離剤試料を精秤し、0.2N-HCl水溶液250mL中、30℃にて8時間振盪を行った後、上清中のHCl濃度を滴定により求め、計算により求めた。
【0070】
<窒素含有率>
窒素含有率はPerkin Elmer社製CHN計 2400IIを用いた元素分析により測定した。
【0071】
[分離剤の製造]
(実施例1)
グリシジルメタクリレート70質量部、エチレングリコールジメタクリレート30質量部から成り、平均粒径30μm、比表面積49~56m2/g、細孔直径382~522Å、細孔容積0.88~0.98mL/gである(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子の複数ロットの混合物40質量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル140質量部、ポリエチレンイミン(純正化学社製、試薬、分子量600)60質量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、ポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子を水洗した。
【0072】
水洗後のポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子に10質量%硫酸水溶液200質量部を添加し、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を50℃に昇温し、5時間保持することにより未反応のエポキシ基への水付加によるジオール生成反応を実施した。
冷却後、多孔性粒子を水洗し、さらに2N水酸化ナトリウム水溶液によりイオン交換基の再生を行って分離剤1を得た。
得られた分離剤1の平均粒径は35μm、総交換容量3.25ミリ等量/g、元素分析による窒素含有率は5.7質量%、比表面積38m2/g、細孔直径782Å、細孔容積0.88mL/gであった。
【0073】
(実施例2)
グリシジルメタクリレート70質量部、エチレングリコールジメタクリレート30質量部から成り、比表面積36m2/g、細孔直径1,204Å、細孔容積0.93mL/gである(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子40質量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル140質量部、ポリエチレンイミン(純正化学社製、試薬、分子量1,200)60質量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、ポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子を水洗した。
水洗後のポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子に対して、実施例1と同様にしてジオール生成反応、イオン交換基の再生を行い、篩網を用いて粒径75~220μmの粒子を選別して分離剤2を得た。
得られた分離剤2の総交換容量は2.20ミリ等量/g、元素分析による窒素含有率は3.8質量%、比表面積32m2/g、細孔直径1,204Å、細孔容積0.80mL/gであった。
【0074】
(実施例3)
グリシジルメタクリレート70質量部、エチレングリコールジメタクリレート30質量部から成り、比表面積38m2/g、細孔直径1,204Å、細孔容積1.07mL/gである(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子40質量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル140質量部、ポリエチレンイミン(純正化学社製、試薬、分子量1,200)60質量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、ポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子を水洗した。
水洗後のポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子に対して、実施例1と同様にしてジオール生成反応、イオン交換基の再生を行い、篩網を用いて粒径150~500μmの粒子を選別して分離剤3を得た。
得られた分離剤3の総交換容量は1.98ミリ等量/g、元素分析による窒素含有率は3.4質量%、比表面積28m2/g、細孔直径1,504Å、細孔容積1.00mL/gであった。
【0075】
(実施例4)
グリシジルメタクリレート60質量部、エチレングリコールジメタクリレート40質量部から成り、比表面積127m2/g、細孔直径1,204Å、細孔容積1.20mL/gである(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子40質量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル140質量部、ポリエチレンイミン(純正化学社製、試薬、分子量300)60質量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、ポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子を水洗した。
水洗後のポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子に対して、実施例1と同様にしてジオール生成反応、イオン交換基の再生を行い、分離剤4を得た。
得られた分離剤4の平均粒径は75μm、総交換容量3.70ミリ等量/g、比表面積95m2/g、細孔直径302Å、細孔容積1.65mL/gであった。
【0076】
(実施例5)
グリシジルメタクリレート70質量部、エチレングリコールジメタクリレート30質量部から成り、比表面積37m2/g、細孔直径942Å、細孔容積0.99mL/gである(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子40質量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル140質量部、ポリエチレンイミン(純正化学社製、試薬、分子量1,200)60質量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、ポリエチレンイミンが固定化された反応させた多孔性粒子を水洗した。
水洗後のポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子に対して、実施例1と同様にしてジオール生成反応、イオン交換基の再生を行い、分離剤5を得た。
得られた分離剤5の平均粒径は139μm、総交換容量2.21ミリ等量/g、比表面積30m2/g、細孔直径944Å、細孔容積0.80mL/gであった。
【0077】
(実施例6)
グリシジルメタクリレート70質量部、エチレングリコールジメタクリレート30質量部から成り、比表面積37m2/g、細孔直径942Å、細孔容積0.99mL/gである(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子400質量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1400質量部、ポリエチレンイミン(和光純薬社製、試薬、分子量600)600質量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、ポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子を水洗した。
水洗後のポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子に対して、実施例1において用いる10質量%硫酸水溶液の量を2000質量部とした以外は同様にしてジオール生成反応、イオン交換基の再生を行い、分離剤6を得た。
得られた分離剤6の平均粒径は140μm、総交換容量2.99ミリ等量/g、比表面積31m2/g、細孔直径944Å、細孔容積0.85mL/gであった。
【0078】
(比較例1)
グリシジルメタクリレート70質量部、エチレングリコールジメタクリレート30質量部から成り、比表面積36m2/g、細孔直径1,204Å、細孔容積0.93mL/gである(メタ)アクリル系高分子の多孔性粒子40質量部に、水160質量部、テトラエチレンペンタミン(和光純薬社製、化学用)40質量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、テトラエチレンペンタミンが固定化された多孔性粒子を水洗した。
水洗後のテトラエチレンペンタミンが固定化された多孔性粒子に対して、実施例1と同様にしてジオール生成反応、イオン交換基の再生を行い、篩網を用いて粒径75~220μmの粒子を選別して分離剤7を得た。
得られた分離剤7の元素分析による窒素含有率は2.7質量%であった。
【0079】
(比較例2)
スチレン90質量部、ジビニルベンゼン10質量部から成り、比表面積17m2/g、細孔直径782Å、細孔容積0.39mL/gであるスチレン系多孔性粒子をクロロメチル化したもの20質量部に、水38質量部、水酸化ナトリウム32質量部、トルエン40質量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液にポリエチレンイミン(和光純薬社製、試薬、分子量300)60質量部を加え、80℃に昇温し、4時間反応させた。
反応後、水蒸気蒸留によりトルエンを留去し、冷却後、ポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子を水洗し、さらに2N水酸化ナトリウム水溶液によりイオン交換基の再生を行い篩網を用いて粒径300~1,180μmの粒子を選別して分離剤8を得た。
得られた分離剤8の総交換容量は6.66ミリ等量/g、比表面積15m2/g、細孔直径782Å、細孔容積0.34mL/gであった。
【0080】
[分離性の評価方法]
(クロマトグラフィーによる分離性評価1)
実施例1にて得られた分離剤1を、内径16mm、長さ100mmのガラス製カラムに充填した。これを高速液体クロマトグラフに接続し、90%エタノール水溶液を溶媒として、流速1.00mL/minにて高速液体クロマトグラフィー分析を行った。
サンプルは、ステビオシド、レバウジオシドA(東京化成社製、試薬)それぞれの90%エタノール2mg/mL水溶液を用意し、各200μLを溶媒を流通させたカラムに注入することでカラム内の分離剤に負荷し、UV検出器波長210nmにてクロマトグラムを測定した。
図1にクロマトグラムを示す。ステビオシドとレバウジオシドAの保持時間が離れており、完全分離が可能である。
【0081】
(クロマトグラフィーによる分離性評価2)
実施例2にて得られた分離剤2、または比較例1にて得られた分離剤7を、内径9mm、長さ100mmのポリカーボネート製カラムに充填した。これを高速液体クロマトグラフに接続し、90%エタノール水溶液を溶媒として、流速0.32mL/minにて高速液体クロマトグラフィー分析を行った。
サンプルとしてステビオシド、レバウジオシドA(東京化成社製、試薬)それぞれ2mg/mLの90%エタノール水溶液を用意し、各63μLを溶媒を流通させたカラムに注入することでカラム内の分離剤に負荷し、UV検出器波長210nmにてクロマトグラムを測定した。
図2に実施例2にて得られた分離剤2を充填したカラムでのクロマトグラムを、
図3に比較例1にて得られた分離剤7を充填したカラムでのクロマトグラムを示す。実施例2の分離剤2では比較例1の分離剤7に比べてステビオシドとレバウジオシドAの保持時間がより離れており、分離性が良好である。
【0082】
(クロマトグラフィーによる分離性評価3)
比較例2にて得られた分離剤8を、内径9mm、長さ100mmのポリカーボネート製カラムに充填した。これを高速液体クロマトグラフに接続し、70%エタノール水溶液を溶媒として、流速0.32mL/minにて高速液体クロマトグラフィー分析を行った。
サンプルとしてステビオシド、レバウジオシドA(東京化成社製、試薬)それぞれ2mg/mLの90%エタノール水溶液を用意し、各63μLを溶媒を流通させたカラムに注入することでカラム内の分離剤に負荷し、UV検出器波長210nmにてクロマトグラムを測定した。
図4に比較例2の分離剤8を充填したカラムでのクロマトグラムを示す。比較例2の分離剤8においてはステビオシドとレバウジオシドAの保持時間が完全に一致しており、ポリスチレン系多孔性粒子にポリエチレンイミンを導入した分離剤では、多孔性粒子とステビオール配糖体との不必要な疎水性相互作用により、総交換容量が高いにもかかわらずステビオシドとレバウジオシドAの分離が困難であった。
【0083】
(吸着及び溶離による分離性評価1)
吸着及び溶離による分離性評価1に用いるステビオール配糖体含有液は「ダイヤイオンマニュアル2(三菱ケミカル株式会社発行)p329」に記載の手法に倣い、さらにイソプロピルアルコール溶液にしたものを用いた。
すなわち、ステビア葉を60℃にて抽出、塩化カルシウム及び酸化マグネシウムを添加後に濾過を行い抽出液を得た。これを合成吸着剤ダイヤイオンSP700(三菱ケミカル株式会社製)に通液しステビオール配糖体を吸着させ、水洗押し出しを行った。次に85%メチルアルコール水溶液にて溶離された画分および更なる水洗押し出し画分をまとめてステビオール配糖体の約40%メチルアルコール水溶液を得た。この溶液をカチオン交換樹脂ダイヤイオンSK1BH(三菱ケミカル株式会社製)に通液してカチオン成分を脱塩し、次いでアニオン交換樹脂ダイヤイオンHPA25L(三菱ケミカル株式会社製)に通液してアニオン成分の脱塩および色素成分の脱色を行った。得られた溶液を更に合成吸着剤ダイヤイオンHP20(三菱ケミカル株式会社製)に通液しステビオール配糖体を吸着させ、その後100%イソプロピルアルコールにて溶離することにより得られたものを用いた。
【0084】
実施例1にて得られた分離剤1を、内径9mm、長さ100mmのポリカーボネート製カラムに充填した。これを高速液体クロマトグラフに接続し、流速0.63mL/minにてステビオール配糖体のイソプロピルアルコール溶液(ステビオシド濃度1.43g/L、レバウジオシドA濃度0.44g/L、ステビオシド/レバウジオシドA=79/21、液中の着色成分の指標として紫外分光計にて420nm波長、1cm光路長にて測定した値をステビオシドおよびレバウジオシドAの総濃度で除した値0.003AU/(mg/mL))を60分通液した(ステビオシド供給量54.4mg、レバウジオシドA供給量16.8mg)。
【0085】
次いで流速0.63mL/minにてエチルアルコールを10分通液し、その後に流速0.63mL/minにて95%エチルアルコール水溶液を30分、流速0.63mL/minにて90%エチルアルコール水溶液を40分通液した。
上記の工程においてフラクションを2.5分ごとに採取し、UV検出器波長210nmの高速液体クロマトグラフ分析にてステビオシド、レバウジオシドAの含有量を求めた。
【0086】
図5に吸着および溶離プロファイルを、
図6に各フラクション中のステビオシドとレバウジオシドAの含有量および(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)(%)を示す。
エチルアルコール通液フラクションと95%エチルアルコール水溶液通液フラクションの一部をまとめた画分のステビオシド含有量は42.6mg、レバウジオシドA含有量0.0mg、(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)=100%であった。
また、90%エチルアルコール水溶液通液フラクションの一部をまとめた画分のステビオシド含有量は0.0mg、レバウジオシドA含有量17.6mg、(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)=0%であった。なお、レバウジオシドAの含有量が供給量より多いが、フラクションの高速液体クロマトグラフ分析での定量濃度誤差に起因するものと推定される。
【0087】
(吸着及び溶離による分離性評価2)
吸着及び溶離による分離性評価2に用いるステビオール配糖体含有液は「ダイヤイオンマニュアル2 (三菱ケミカル株式会社発行)p329」に記載の手法から、塩化カルシウム及び酸化マグネシウムの添加工程およびアニオン交換樹脂通液による脱色工程を省略し、次いでイソプロピルアルコール溶液にしたものを用いた。
すなわち、ステビア葉を60℃にて抽出、濾過を行い抽出液を得た。これを合成吸着剤ダイヤイオンHP20(三菱ケミカル株式会社製)に通液しステビオール配糖体を吸着させ、水洗押し出しを行った。次にエチルアルコールにて溶離された画分および更なる水洗押し出し画分をまとめてステビオール配糖体の約50%エチルアルコール水溶液を得た。この溶液をカチオン交換樹脂ダイヤイオンSK1BH(三菱ケミカル株式会社製)に通液してカチオン成分を脱塩し、次いで合成吸着剤ダイヤイオンHP20(三菱ケミカル株式会社製)に通液しステビオール配糖体を吸着させ、その後100%イソプロピルアルコールにて溶離することにより得られたものを用いた。
【0088】
実施例4にて得られた分離剤4を、内径9mm、長さ100mmのポリカーボネート製カラムに充填した。これを高速液体クロマトグラフに接続し、流速0.44mL/minにてステビオール配糖体のイソプロピルアルコール溶液(ステビオシド濃度3.64g/L、レバウジオシドA濃度2.27g/L、ステビオシド/レバウジオシドA=66/34、液中の着色成分の指標として紫外分光計にて420nm波長、1cm光路長にて測定した値をステビオシドおよびレバウジオシドAの総濃度で除した値0.169AU/(mg/mL))を42分通液した(ステビオシド供給量67.4mg、レバウジオシドA供給量42.1mg)。
【0089】
次いで流速0.63mL/minにてイソプロピルアルコールを10分通液し、その後に流速0.63mL/minにてエチルアルコール水溶液を40分、流速0.63mL/minにて95%エチルアルコール水溶液を40分通液した。
上記の工程においてフラクションを2.5分ごとに採取し、高速液体クロマトグラフ分析にてステビオシド、レバウジオシドAの含有量を求めた。
図7に吸着および溶離プロファイルを、
図8に各フラクション中のステビオシドとレバウジオシドAの含有量および(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)(%)を示す。
【0090】
エチルアルコール水溶液通液フラクションの一部をまとめた画分のステビオシド含有量は35.7mg、レバウジオシドA含有量7.3mg、(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)=83%であった。
また、95%エチルアルコール水溶液通液フラクションの一部をまとめた画分のステビオシド含有量は0.80mg、レバウジオシドA含有量29.4mg、(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)=3%であった。
【0091】
更に該分離剤充填カラムへ通液するステビオール配糖体含有液の着色成分を紫外分光計にて420nm波長、1cm光路長にて測定した値をステビオシドおよびレバウジオシドAの総濃度で除した値、0.169AU/(mg/mL)に対して、ステビオシド含有画分では0.004AU/(mg/mL)、レバウジオシドA画分では0.008AU/(mg/mL)と低下しており、ステビオール配糖体の分離とともに脱色も同時に行うことが可能であった。
【0092】
(吸着及び溶離による分離性評価3)
吸着及び溶離による分離性評価3に用いるステビオール配糖体含有液は、吸着及び溶離による分離性評価2と同様のものを用いた。
実施例5にて得られた分離剤5を、内径9mm、長さ100mmのポリカーボネート製カラムに充填した。これを高速液体クロマトグラフに接続し、流速0.63mL/minにてステビオール配糖体のイソプロピルアルコール溶液(ステビオシド濃度3.46g/L、レバウジオシドA濃度2.22g/L、ステビオシド/レバウジオシドA=61/39、液中の着色成分の指標として紫外分光計にて420nm波長、1cm光路長にて測定した値をステビオシドおよびレバウジオシドAの総濃度で除した値0.169AU/(mg/mL))を20分通液した(ステビオシド供給量54.8mg、レバウジオシドA供給量16.5mg)。
【0093】
次いで流速0.63mL/minにてイソプロピルアルコールを10分通液し、その後に流速0.63mL/minにてエチルアルコール水溶液を20分、流速0.63mL/minにて95%エチルアルコール水溶液を30分、流速0.63mL/minにて90%エチルアルコール水溶液を40分通液した。
上記の工程においてフラクションを2.5分ごとに採取し、高速液体クロマトグラフ分析にてステビオシド、レバウジオシドAの含有量を求めた。
【0094】
図9に吸着および溶離プロファイルを、
図10に各フラクション中のステビオシドとレバウジオシドAの含有量および(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)(%)を示す。
実施例5にて得られた分離剤5を用いた場合は、吸着及び溶離による分離性評価2(分離剤4を用いた場合)で見られたエチルアルコール通液でのステビオール配糖体の溶離はなかった。95%エチルアルコール水溶液通液フラクションの一部をまとめた画分のステビオシド含有量は34.8mg、レバウジオシドA含有量2.2mg、(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)=97%であった。
【0095】
また、90%エチルアルコール水溶液通液フラクションの一部をまとめた画分のステビオシド含有量は0.1mg、レバウジオシドA含有量19.4mg、(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)=1%であった。
更に該分離剤充填カラムへ通液するステビオール配糖体含有液の着色成分を紫外分光計にて420nm波長、1cm光路長にて測定した値をステビオシドおよびレバウジオシドAの総濃度で除した値、0.169AU/(mg/mL)に対して、ステビオシド含有画分では0.003AU/(mg/mL)、レバウジオシドA画分では0.004AU/(mg/mL)と低下しており、ステビオール配糖体の分離とともに脱色も同時に行うことが可能であった。
【0096】
(吸着及び溶離による分離性評価4)
吸着及び溶離による分離性評価4に用いるステビオール配糖体含有液は、試薬ステビオシドと試薬レバウジオシドA(東京化成社製、試薬)を用い、エタノール溶液としたものを用いた。
実施例6にて得られた分離剤6を、内径18mm、長さ200mmのポリカーボネート製カラムに充填した。これを高速液体クロマトグラフに接続し、流速2.54mL/minにてステビオール配糖体のエタノール溶液(ステビオシド濃度1.14g/L、レバウジオシドA濃度2.57g/L、ステビオシド/レバウジオシドA=31/69)を30分通液した(ステビオシド供給量86.5mg、レバウジオシドA供給量195.3mg)。
【0097】
次いで流速2.54mL/minにてエチルアルコールを20分通液し、その後に流速2.54mL/minにて97.5%エチルアルコール水溶液を60分、流速2.54mL/minにて90%エチルアルコール水溶液を60分通液した。
上記の工程においてフラクションを3分ごとに採取し、高速液体クロマトグラフ分析にてステビオシド、レバウジオシドAの含有量を求めた。
【0098】
図11に吸着および溶離プロファイルを、
図12に各フラクション中のステビオシドとレバウジオシドAの含有量および(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)(%)を示す。
97.5%エチルアルコール水溶液通液フラクションの一部をまとめた画分のステビオシド含有量は59.1mg、レバウジオシドA含有量0.6mg、(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)=99%であった。
【0099】
また、90%エチルアルコール水溶液通液フラクションの一部をまとめた画分のステビオシド含有量は0.8mg、レバウジオシドA含有量196.0mg、(ステビオシド含有量)/(ステビオシド含有量+レバウジオシドA含有量)=1%であった。なお、レバウジオシドAの含有量が供給量より多いが、フラクションの高速液体クロマトグラフ分析での定量濃度誤差に起因するものと推定される。
【0100】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2017年2月22日付けで出願された日本特許出願(特願2017-031392)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の分離剤はステビオール配糖体、特にレバウジオシドAに対して高い選択性での吸着・分離性能を示し、かつステビア葉抽出物中の色素成分の脱色も同時に行えるものであり、食品工業分野における実用上の価値は極めて高い。