(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及びその作成装置
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20220216BHJP
G03G 21/04 20060101ALI20220216BHJP
B42D 25/30 20140101ALI20220216BHJP
G07D 7/2033 20160101ALI20220216BHJP
H04N 1/32 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
B41M3/14
G03G21/04 560
B42D25/30 100
G07D7/2033
H04N1/32 144
(21)【出願番号】P 2020138484
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-089971(JP,A)
【文献】特開2016-172340(JP,A)
【文献】特開2013-212629(JP,A)
【文献】特開2001-039004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0164558(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
G03G 21/04
B42D 25/30
G07D 7/2033
H04N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に、所定のピッチでマトリクス状に配置された複数のユニットを備え、
各々の前記ユニットは、第1の方向に沿う同一線上に形成され、第1の画線領域と、第2の画線領域とを有し、
前記第1の画線領域に形成された複写により再現される第1の画線により不可視模様が形成され、前記第2の画線領域に形成された複写により再現されない第2の画線により前記不可視模様に対する相殺模様が形成され、
前記第1の画線領域と前記第2の画線領域とは、補色又は反対色であるとともに、前記複数のユニットにおける前記第1の画線領域を構成する前記第1の画線の少なくとも一部が有彩色を有し、
各々の前記ユニットにおける前記第1の画線と前記第2の画線とを合計した画線面積率が前記ユニット間で同一であることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記第2の画線領域は、前記第1の画線領域を挟持するように2箇所に分割されて配置されることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
各々の前記ユニットにおいて、前記第1の画線領域は前記第2の画線領域より面積が小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の偽造防止印刷物。
【請求項4】
各々の前記ユニットにおける前記第1の画線と前記第2の画線とを合計した画線面積率が、5~40%であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の偽造防止印刷物。
【請求項5】
前記第2の画線領域の一部には、可視模様を形成する第3の画線がさらに形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の偽造防止印刷物。
【請求項6】
前記第1の画線を形成する色材には、赤外線吸収性色素が含まれており、
前記第2の画線を形成する色材には、赤外線吸収性色素は含まれていないことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の偽造防止印刷物。
【請求項7】
前記不可視模様は、前記ユニットごとに前記第1の画線の画線面積率が変化して形成されたことで階調を有し、
前記相殺模様は、前記ユニットごとに前記第2の画線の画線面積率が変化して形成されたことで階調を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の偽造防止印刷物。
【請求項8】
請求項1から7に記載の偽造防止印刷物
に使用されるデータの作成方法であって、
前記不可視模様を作成するための不可視模様画像データを入力する不可視模様入力手段を用いて、前記不可視模様を作成するための不可視模様画像データを入力するステップと、
入力された前記不可視模様画像データを用いて、前記不可視模様を生成する不可視模様生成手段により、前記不可視模様画像データを第1のCMYK画像データに変換するステップと、
前記不可視模様生成手段を用いて、前記第1のCMYK画像データに臨界値配列画像を適用し、各々の前記ユニットの前記第1の画線領域に前記不可視模様を形成する第1の画線データを生成するステップと、
前記不可視模様に対する前記相殺模様を生成する相殺模様生成手段を用いて、相殺模様画像データを第2のCMYK画像データとして生成するステップと、
前記相殺模様生成手段を用いて、前記第1のCMYK画像データにマスクを適用し、各々の前記ユニットの前記第2の画線領域に前記相殺模様を形成する第2の画線データを生成するステップと、
画像を合成する画像合成手段を用いて、各々の前記ユニットに、前記不可視模様の前記第1の画線データと前記相殺模様の前記第2の画線データとを合成した合成画像を生成するステップと、を備え、
各々の前記ユニットにおける前記第1の画線データと前記第2の画線データとを合計した画線面積率が前記ユニット間で同一となるように、前記第1の画線データ及び前記第2の画線データが形成されることを特徴とする偽造防止印刷物
に使用されるデータの作成方法。
【請求項9】
前記不可視模様生成手段を用いて、前記第1のCMYK画像データに第1のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを調整するステップと、
前記相殺模様生成手段を用いて、前記第2のCMYK画像データに第2のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを調整するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の偽造防止印刷物
に使用されるデータの作成方法
【請求項10】
前記第2の画線領域の一部に、可視模様
を形成する第3の画線がさらに形成されている偽造防止印刷物
に使用されるものであって、
前記可視模様を作成するための可視模様画像データを入力する可視模様入力手段を用いて、前記可視模様を作成するための前記可視模様画像データを入力するステップと、
入力された前記可視模様画像データを用いて、前記可視模様を生成する可視模様生成手段により、前記可視模様画像データを第3のCMYK画像データに変換するステップと、
前記可視模様生成手段を用いて、前記第3のCMYK画像データに第3のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを変更するステップと、
前記可視模様生成手段を用いて、前記第3のCMYK画像データにマスクを適用し、各々の前記ユニットの前記第2の画線領域の一部に前記可視模様を形成する第3の画線データを生成するステップと、
前記画像合成手段を用いて、各々の前記ユニットに、前記不可視模様の前記第1の画線データと前記相殺模様の前記第2の画線データと前記可視模様の前記第3の画線データとを合成した合成画像データを生成するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項8及び9のいずれか一項に記載の偽造防止印刷物
に使用されるデータの作成方法。
【請求項11】
請求項1から7に記載の偽造防止印刷物
に使用されるデータの作成装置であって、
前記不可視模様を作成するための不可視模様画像データを入力する不可視模様入力手段と、
入力された前記不可視模様画像データを用いて、前記不可視模様を生成する不可視模様生成手段と、
前記不可視模様に対する前記相殺模様を生成する相殺模様生成手段と、
画像を合成する画像合成手段と、
を備え、
前記不可視模様生成手段は、
前記不可視模様画像データを第1のCMYK画像データに変換し、
前記第1のCMYK画像データに臨界値配列画像を適用し、各々の前記ユニットの前記第1の画線領域に前記不可視模様を形成する第1の画線データを生成し、
前記相殺模様生成手段は、
前記相殺模様を第2のCMYK画像データとして生成し、
前記第1のCMYK画像データにマスクを適用し、各々の前記ユニットの前記第2の画線領域に前記相殺模様を形成する第2の画線データを生成し、
前記画像合成手段は、各々の前記ユニットに、前記不可視模様の前記第1の画線データと前記相殺模様の前記第2の画線データとを合成した合成画像データを生成し、
前記不可視模様生成手段及び前記相殺模様生成手段は、各々の前記ユニットにおける前記第1の画線データと前記第2の画線データとを合計した画線面積率が前記ユニット間で同一となるように、前記第1の画線データ及び前記第2の画線データを形成することを特徴とする偽造防止印刷物
に使用されるデータの作成装置。
【請求項12】
前記不可視模様生成手段は、前記第1のCMYK画像データに第1のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを調整し、前記相殺模様生成手段は、前記第2のCMYK画像データに第2のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを調整することをさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の偽造防止印刷物
に使用されるデータの作成装置。
【請求項13】
前記第2の画線領域の一部に、可視模様
を形成する第3の画線がさらに形成されている偽造防止印刷物
に使用されるものであって、
前記可視模様を作成するための可視模様画像データを入力する可視模様入力手段と、
入力された前記可視模様画像データを用いて、前記可視模様を生成する可視模様生成手段と、
をさらに備え、
前記可視模様生成手段は、前記可視模様画像データを第3のCMYK画像データに変換し、前記第3のCMYK画像データに第3のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを変更し、前記第3のCMYK画像データにマスクを適用し、各々の前記ユニットの前記第2の画線領域の一部に前記可視模様を形成する第3の画線データを生成し、
前記画像合成手段は、各々の前記ユニットに、前記不可視模様の前記第1の画線データと前記相殺模様の前記第2の画線データと前記可視模様の前記第3の画線データとを合成した合成画像データを生成することをさらに備えることを特徴とする請求項11及び12のいずれか一項に記載の偽造防止印刷物
に使用されるデータの作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及びその作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の印刷物において、偽造、改ざん防止策は重要である。これらの印刷物の偽造、改ざん防止策は、主に、幾何学模様を多様化した図柄をデザインに用いる方法と、印刷物に対して何等かの手段と作用を加えることで、目視では認識することができない潜像が現出する方法がある。前者の代表的な例は、証券印刷物等のデザインに広く用いられる地紋、彩紋模様及びレリーフ模様等があり、後者の代表的な例は、潜像凹版やカラー複写機で色が正常に再現されないような機能性インキ又はコピー防止画線等がある。
【0003】
上述の印刷物に対し、何等かの手段と作用を加えることで、目視では認識することができなかった潜像を複写物に現出させる方法の代表的な技術として、一般的にコピー防止画線と称する一連の技術がある。また、用紙の表面に網点で潜像を印刷し、万線で潜像と同濃度の背景を同時印刷し、背景を含む潜像の上面に装飾模様をコピーで再現されない程度の薄色の透明性インキで重ね刷りすることにより、印刷物表面を体裁良く仕上げ、コピーにかけると模様は見えなくなり、背景は再現されるとともに、潜像は再現されず、背景と潜像の濃度差が歴然となって複写物であることが一見して分かるといった方法は、これまでも数多くの出願がある。
【0004】
また、本出願人は、曲線状の集合模様として、潜像を施さない部分の画線を連続線、潜像を施した部分の画線を基本線方向に一定の間隔で配列された形状の画線からなる定周期断絶線で構成し、潜像を施した部分の定周期断絶線のうち、基本線方向に連続した一つの画線部と非画線部からなる一周期に相当する部分の画線面積の総和が、潜像を施さない部分の連続線のうち、上述の潜像部における画線部と非画線部からなる一周期と同一の長さに相当する部分の画線面積と等しくし、さらに、潜像を施した部分の定周期断絶線となっている画線において、定周期断絶線の画線同士が交差する部分で、画線同士のどちらか一方の画線を、もう一方の画線の画線幅の範囲内で削除することを特徴とした複合要素セキュリティ模様の作成方法及びその印刷物を出願している(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、本出願人は、複写機で再生される第1の大きさの画線と、複写機で再生されない第2の大きさの画線によって同一濃度の背景部を形成し、更には、複写機で再生されない第3の大きさの画線によって可視模様部を形成することで、印刷物を通常光下で観察した場合には、背景部上に形成された可視模様部の濃度によって可視模様が観察されるが、印刷物をカラー複写機の複写機で複写した場合、可視模様部を形成する第3の大きさの画線と、背景部を形成する第2の大きさの画線は再生されないことで、可視模様とは全く異なる不可視模様が出現する、画像のチェンジ効果を備えた複写、改ざん防止印刷物を出願している(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、本出願人は、印刷物上に形成された可視模様と複写機で複写した際に出現する不可視模様がチェンジする効果を有し、かつ、複写物に出現する不可視模様を写真画像のような連続階調画像とすることができる偽造防止印刷物を出願している(例えば、特許文献3参照。)。この印刷物は、連続階調を有する不可視模様を大小(太細)の画線により形成し、当該画線と濃度を反転させたカムフラージュ画線を複写機で再現されない大きさの画線で形成することで、印刷物を視認しても不可視模様は確認されないが、複写機で複写した場合にカムフラージュ画線が消失し、連続階調を有する不可視模様が出現するものである。
【0007】
また、本出願人は、第1の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第1の画線及び第2の画線と、第1の方向と直交する第2の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第3の画線及び第4の画線とを有する画線要素が、一定のピッチで複数マトリクス状に配置されており、各々の画線要素における第1の画線と第2の画線、第3の画線と第4の画線は、ネガポジの関係にあり、第1の画線又は第2の画線により第1の不可視模様が形成され、第3の画線又は第4の画線により第2の不可視模様が形成されることを特徴とする偽造防止印刷物を出願している(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
また、本出願人は、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策として、1つの第1の領域と、第1の領域に隣接する1つの第2の領域とが複数組配置され、各々の第2の領域の周囲が、複数の第1の領域に囲まれ、第1の領域は、第2の領域より面積が大きく、第2の領域は赤外線吸収色素を含むブラックインキを用いて構成された第2aの領域と赤外線吸収色素を含まないインキを用いて構成された黒色系である第2bの領域とを有し、各々の第2の領域における第2aの領域と第2bの領域との比率に応じて、複数の第2の領域における第2aの領域により階調画像が形成されていることを特徴とする網点印刷物を出願している(例えば、特許文献5参照)。
【0009】
さらに、本出願人は、特定の波長において吸収する又は発光する第1の色材で印刷した第1の線画と、特定の波長において吸収しない又は発光しない可視光下では第1の色材と同色に見える第2の色材で印刷した第2の線画で構成され、第1の線画と第2の線画はそれぞれ画線幅の違う背景領域と潜像領域で構成され、第2の線画の潜像領域は第1の線画の潜像領域と形状及び大きさが等しく、第1の線画と第2の線画が重なり、背景領域と潜像領域の濃度が等しいことを特徴とする偽造防止印刷物を出願している(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第3268418号公報
【文献】特許第5692663号公報
【文献】特許第6394975号公報
【文献】特許第4635160号公報
【文献】特許第3544536号公報
【文献】特許第4441634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の印刷物は、近年の高機能化された製版及び印刷出力装置を用いた場合、その画線構成を容易に再現することができてしまうことで複合要素セキュリティ機能が発揮されないことがあった。
【0012】
また、特許文献1の印刷物は、複写時の効果は向上したものの、可視模様であった模様が完全に入れ替わるものではなく、可視模様と潜像が重なっている部分については可視模様が優先され、潜像が部分的に欠けた状態となり、複写後に視認される画像の視認性を向上させるという課題があった。
【0013】
また、特許文献2の印刷物は、印刷物と複写物において、可視模様と複写物に出現する不可視模様が完全に入れ替わることから、複写後に視認される画像の視認性は向上したが、可視模様と不可視模様を形成する規則的な画線が残る又は消失するというオン・オフの関係により画像のチェンジ効果を創出しており、不可視模様自体が2値画像であることから、可視模様が消失し、不可視模様が出現した複写物の画像を加工することで偽造品を作成する方法に対しては、高い偽造抵抗力を有するものではないという課題が残されていた。
【0014】
また、特許文献3の印刷物は、連続階調を有する不可視模様を形成することで、複写物を加工する行為に対して極めて高い複合要素セキュリティ効果を有しているが、不可視模様を形成する画線及びこれを相殺させる画線を「線」と「点」で構成していることから、不可視模様の視認性が複写機に搭載されたバンドパス・フィルタ等の画像処理性能に左右され、カムフラージュ画線が完全に消失しない場合がある。そのため、複合要素セキュリティ効果が十分ではないという課題が残されていた。
【0015】
また、特許文献4による偽造防止印刷物は、通常の観察において可視模様を設けることが可能で豊かなデザイン性と、簡易な判別具による潜像の高い視認性を有し、低コストで製造できるという優れた効果があるものの、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策としては不十分であった。
【0016】
また、特許文献5及び6の印刷物は、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策として優れた効果があるものの、特定の波長において吸収する又は発光する色材、例えば、赤外線吸収色素の有無を判別するという特殊性から、判別具が光学系機械部品又は特定の電磁波を受信する機械部品で構成した特殊な装置となるため、特許文献1から4にあるような簡易な判別ができないという問題がある。
【0017】
さらに、特許文献1から3の印刷物では、低コストで製造できるという優れた効果があるものの、高性能なハードコピーにおける偽造防止策としては不十分であった。これにより、限られた印刷面積の中で複数の偽造防止策が共有でき、ユーザーの仕様環境や立場に応じた真偽判別手段を選択することができる偽造防止印刷物が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の偽造防止印刷物は、基材上の少なくとも一部に、所定のピッチでマトリクス状に配置された複数のユニットを備え、各々のユニットは、第1の方向に沿う同一線上に形成され、第1の画線領域と、第2の画線領域とを有し、第1の画線領域に形成された複写により再現される第1の画線により不可視模様が形成され、第2の画線領域に形成された複写により再現されない第2の画線により不可視模様に対する相殺模様が形成され、第1の画線領域と第2の画線領域とは、補色又は反対色であるとともに、複数のユニットにおける第1の画線領域を構成する第1の画線の少なくとも一部が有彩色を有し、各々のユニットにおける第1の画線と第2の画線とを合計した画線面積率がユニット間で同一であることを特徴とする。
【0019】
本発明の偽造防止印刷物における第2の画線領域は、第1の画線領域を挟持するように2箇所に分割されて配置されたものであってもよい。
【0020】
本発明の偽造防止印刷物の各々のユニットにおいて、第1の画線領域は第2の画線領域より面積が小さいものであってもよい。
【0021】
本発明の偽造防止印刷物の各々のユニットにおける第1の画線と第2の画線とを合計した画線面積率が、5~40%であってもよい。
【0022】
本発明の偽造防止印刷物における第2の画線領域の一部には、可視模様を形成する第3の画線がさらに形成されていてもよい。
【0023】
本発明の偽造防止印刷物における第1の画線を形成する色材には、赤外線吸収性色素が含まれており、第2の画線を形成する色材には、赤外線吸収性色素は含まれていないものであってもよい。
【0024】
本発明の偽造防止印刷物における不可視模様は、ユニットごとに第1の画線の画線面積率が変化して形成されたことで階調を有し、ユニットごとに相殺模様は、第2の画線の画線面積率が変化して形成されたことで階調を有するものであってもよい。
【0025】
本発明の偽造防止印刷物用データの作成方法は、不可視模様を作成するための不可視模様画像データを入力する不可視模様入力手段を用いて、不可視模様を作成するための不可視模様画像データを入力するステップと、入力された不可視模様画像データを用いて、不可視模様を生成する不可視模様生成手段により、不可視模様画像データを第1のCMYK画像データに変換するステップと、不可視模様生成手段を用いて、第1のCMYK画像データに臨界値配列画像を適用し、各々の前記ユニットの第1の画線領域に不可視模様を形成する第1の画線データを生成するステップと、不可視模様に対する相殺模様を生成する相殺模様生成手段を用いて、相殺模様画像データを第2のCMYK画像データとして生成するステップと、相殺模様生成手段を用いて、第1のCMYK画像データにマスクを適用し、各々のユニットの第2の画線領域に相殺模様を形成する第2の画線データを生成するステップと、画像を合成する画像合成手段を用いて、各々のユニットに、不可視模様の第1の画線データと相殺模様の第2の画線データとを合成した合成画像を生成するステップと、を備え、各々のユニットにおける第1の画線データと第2の画線データとを合計した画線面積率が前記ユニット間で同一となるように、第1の画線データ及び第2の画線データが形成されることを特徴とする。
【0026】
本発明の偽造防止印刷物用データの作成方法は、不可視模様生成手段を用いて、第1のCMYK画像データに第1のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを調整するステップと、相殺模様生成手段を用いて、第2のCMYK画像データに第2のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを調整するステップとをさらに備えてもよい。
【0027】
本発明の偽造防止印刷物用データの作成方法は、可視模様を作成するための可視模様画像データを入力する可視模様入力手段を用いて、可視模様を作成するための可視模様画像データを入力するステップと、入力された可視模様画像データを用いて、可視模様を生成する可視模様生成手段により、可視模様画像データを第3のCMYK画像データに変換するステップと、可視模様生成手段を用いて、第3のCMYK画像データに第3のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを変更するステップと、可視模様生成手段を用いて、第3のCMYK画像データにマスクを適用し、各々のユニットの第2の画線領域の一部に可視模様を形成する第3の画線データを生成するステップと、画像合成手段を用いて、各々のユニットに、不可視模様の第1の画線データと相殺模様の第2の画線データと可視模様の第3の画線データとを合成した合成画像データを生成するステップとをさらに備えてもよい。
【0028】
本発明の偽造防止印刷物用データの作成装置は、不可視模様を作成するための不可視模様画像データを入力する不可視模様入力手段と、入力された不可視模様画像データを用いて、不可視模様を生成する不可視模様生成手段と、不可視模様に対する相殺模様を生成する相殺模様生成手段と、画像を合成する画像合成手段と、を備え、不可視模様生成手段は、不可視模様画像データを第1のCMYK画像データに変換し、第1のCMYK画像データに臨界値配列画像を適用し、各々のユニットの第1の画線領域に不可視模様を形成する第1の画線データを生成し、相殺模様生成手段は、相殺模様を第2のCMYK画像データとして生成し、第1のCMYK画像データにマスクを適用し、各々のユニットの第2の画線領域に相殺模様を形成する第2の画線データを生成し、画像合成手段は、各々のユニットに、不可視模様の第1の画線データと相殺模様の第2の画線データとを合成した合成画像データを生成し、不可視模様生成手段及び相殺模様生成手段は、各々のユニットにおける第1の画線データと第2の画線データとを合計した画線面積率がユニット間で同一となるように、第1の画線データ及び第2の画線データを形成することを特徴とする。
【0029】
本発明の偽造防止印刷物用データの作成装置における不可視模様生成手段は、第1のCMYK画像データに第1のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを調整し、相殺模様生成手段は、第2のCMYK画像データに第2のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを調整することをさらに備えてもよい。
【0030】
本発明の偽造防止印刷物用データの作成装置は、可視模様を作成するための可視模様画像データを入力する可視模様入力手段と、入力された可視模様画像データを用いて、可視模様を生成する可視模様生成手段と、可視模様生成手段は、可視模様画像データを第3のCMYK画像データに変換し、第3のCMYK画像データに第3のプロファイルを適用し、階調及びカラーバランスを変更し、第3のCMYK画像データにマスクを適用し、各々のユニットの第2の画線領域の一部に可視模様を形成する第3の画線データを生成し、画像合成手段は、各々のユニットに、不可視模様の第1の画線データと相殺模様の第2の画線データと可視模様の第3の画線データとを合成した合成画像データを生成することをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の偽造防止印刷物によれば、カラー複写により不可視模様が出現することにより、カラー複写機という誰もが容易に入手できる機械を用いて安価かつ容易に真偽判別を行うことができる。
【0032】
また、限られた印刷面積の中で複数の偽造防止策を施すことができ、ユーザーの仕様環境や立場に応じた真偽判別手段を選択することができる。また、本発明の偽造防止印刷物における印刷模様に備える意匠性を有する可視模様は、単色の模様の他、連続階調画像、フルカラー画像及びレインボー効果等、さまざまな美麗の表現が可能であり、不可視模様の発現時において視認性を阻害することはなく、印刷物に判別具を重ね合わせることによって、不可視模様が容易かつ鮮明に発現するという効果を奏する。
【0033】
また、本発明の偽造防止印刷物は、カラー複写物において視認される画像を複雑な連続階調を有する画像とすることができることから、顔画像等を含む身分証明書、卒業証書等に用いた場合に複写物上に形成された顔写真と不可視模様を比較することで、容易に真偽判別することができる。
【0034】
また、本発明の偽造防止印刷物は、画線の構成によって偽造防止効果をもたらすことが可能であることから、コストパフォーマンスに優れ、製版及び印刷方法も何ら限定されないため、印刷方式にも自由度があるという効果を奏する。
【0035】
また、本発明の偽造防止印刷物用データの作成方法を用いることにより、カラー複写機に搭載されたバンドパス・フィルタ等の画像処理性能に左右されることなく、確実に複写防止効果を再現することができる方法として、写真画像等連続階調画像が一般的なカラー複写機を用いて連続階調画像として再現できるように印刷模様内に埋め込む技術を誰もが同様、かつ、容易に行うことが可能である。
【0036】
さらに、本発明の偽造防止印刷物用データの作成装置を用いることで、連続階調画像の個人情報、所謂顔写真を簡単に印刷物に付与可能となるため、各自治体での証明書類の印刷・発行や、パスポートにおける個人情報としての顔写真の印刷が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物を通常光下で観察した状態と、カラー複写機によりカラー複写して得られた複写物を示す図。
【
図2】同実施の形態による偽造防止印刷物を通常光下で観察した状態を示す図。
【
図3】同実施の形態による偽造防止印刷物をカラー複写機によりカラー複写して得られた複写物を示す図。
【
図4】同実施の形態による偽造防止印刷物に判別具を所定の位置に重ね合わせた状態を示す図。
【
図5】同実施の形態による偽造防止印刷物を赤外線光下で観察した状態を示す図。
【
図6】同実施の形態による偽造防止印刷物の真偽判別で用いることができる通常のカラー複写機における入出力の色濃度の関係を示すグラフ。
【
図7】顔写真は赤と黒の色成分でカラー表現が可能であることを示す図。
【
図8】同実施の形態による偽造防止印刷物において、顔写真の色成分を赤と黒のみでカラー表現した状態を示す図。
【
図9】同実施の形態による偽造防止印刷物において、顔写真を赤の分解画像と黒の分解画像で表わした状態を示す図。
【
図10】同実施の形態による偽造防止印刷物において、赤の分解画像をイエロー(Y)の分解画像とマゼンタ(M)の分解画像で表わし、黒の分解画像をブラック(K)の分解画像で表わした状態を示す図。
【
図11】同実施の形態による偽造防止印刷物において、不可視模様となる第1のCMYK画像の分解画像を示す図及び第1のCMYK画像の分解画像について第1の画線領域に画線を適用した図。
【
図12】同実施の形態による偽造防止印刷物において、相殺模様となる第2のCMYK画像の分解画像を示す図及び第2のCMYK画像の分解画像について第2の画線領域に画線を適用した図。
【
図13】同実施の形態による偽造防止印刷物において、
図11に示す第1の画線領域及び
図12に示す第2の画線領域に適用した画線を全て合成した状態を示す図。
【
図14】同実施の形態による偽造防止印刷物において、適用した画線を全て合成した状態を示す図。
【
図15】同実施の形態による偽造防止印刷物において、
図11に示す第1の画線領域、
図12に示す第2の画線領域及び
図14に示す第3の画線領域に適用した画線を全て合成した状態を示す図。
【
図16】同実施の形態による偽造防止印刷物において、印刷模様の最小単位であるユニットの構成を示す図。
【
図17】印刷模様の最小単位であるユニットをマトリクス状に配置した例を示す図。
【
図18】不可視模様の原画となる画像の一例を示す図。
【
図19】黒の階調及び赤の階調を5段階で示した図。
【
図20】同実施の形態による偽造防止印刷物において、顔写真の基本色成分である黒と赤のそれぞれの階調を5段階で表した場合のユニットの構成を示す図。
【
図21】同実施の形態による偽造防止印刷物において、顔写真の基本色成分である黒と赤のそれぞれの階調を3段階で表す場合のCMYKの濃度を示す図。
【
図22】同実施の形態による偽造防止印刷物において、
図21で示された黒と赤のそれぞれの3段階の階調において補色により模様の無いフラットなグレー単色にするためのCMYKの濃度割り当てを示す図。
【
図23】同実施の形態による偽造防止印刷物において、
図22で示された黒と赤のそれぞれ3段階の階調の分解画像に網点を適用した状態を示す図。
【
図24】同実施の形態による偽造防止印刷物において、
図23で示された黒と赤のそれぞれ3段階の階調の分解画像を遠くから見た時の濃度が約20%の模様の無いフラットなグレー単色を示す図。
【
図25】本発明の実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成装置の構成を示すブロック図。
【
図26】本発明の実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成方法を示すフローチャート。
【
図27】不可視模様となる顔画像に対する画素領域の平均化処理を示す図。
【
図28】画素領域が平均化された顔画像を第1のCMYK画像データに変換する処理を示す図。
【
図29】第1のCMYK画像データに対してトーンカーブを変更するために適用するプロファイルA2を示す図。
【
図30】第1のCMYK画像データに対して適用する臨界値配列画像を示す図。
【
図31】第1のCMYK画像データに臨界値配列画像が適用されて第1の画線領域に第1の画線のCMYK画像データが生成されることを示す図。
【
図32】不可視模様を相殺するための相殺模様を生成するため、第2のCMYK画像データを生成する処理を示す図。
【
図33】第2のCMYK画像データに対してトーンカーブを変更するために適用するプロファイルB2を示す図。
【
図34】第2のCMYK画像データに適用するマスクを示す図。
【
図35】第2のCMYK画像データにマスクを適用して第2の画線領域に第2の画線のCMYK画像が生成されることを示す図。
【
図36】可視模様の原画となるRGB画像を示す図。
【
図37】可視模様を第3のCMYK画像データに変換する処理を示す図。
【
図38】第3のCMYK画像データに対してトーンカーブを変更するために適用するプロファイルC2を示す図。
【
図39】第3のCMYK画像データに適用するマスクを示す図。
【
図40】第3のCMYK画像データにマスクを適用して第2の画線領域に第3の画線のCMYK画像データが生成されることを示す図。
【
図41】第1の画線領域に第1の画線のCMYK画像データ、第2の画線領域に第2の画線のCMYK画像データ、第2の画線領域に第3の画線のCMYK画像データをそれぞれ生成して乗算し、第1の画像データ、第2の画像データ、第3の画像データが合成されたCMYK画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法、偽造防止印刷物用データの作成装置について、図面を参照して説明する。本発明は、以下に述べる実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる様々な形態が含まれる。
【0039】
図1(a)に、本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物(以下、印刷物と称する)を示す。この印刷物における不可視模様の画像が形成された領域を、通常光下で肉眼により観察した状態を示す。一見すると、模様の無いフラットでグレー単色の印刷が施されているように観察される。
【0040】
この印刷物を通常のカラー複写機により複写すると、
図1(b)に示されたようにカラーの不可視模様が出現する。
【0041】
このような不可視模様が形成された印刷物を、証明書類の一例として旅券冊子に適用した場合について説明する。
図2に示されたように、この印刷物(1)は、表紙と裏表紙の間に複数の記録用のページが綴じ部により一体化されている。この記録用のページを基材とし、その基材の一部に、所有者の顔画像(11)と、カラーの不可視模様の形成領域(2)と、可視模様(8)とが形成されている。
【0042】
カラーの不可視模様は、後述するように、第1の真偽判別方法、第2の真偽判別方法及び第3の真偽判別方法により真偽判別が可能なセキュリティ機能を有するものである。なお、
図2に示した旅券冊子は、本発明による偽造防止印刷物の一例に過ぎず、旅券冊子への適用には限定されず、また旅券冊子に適用する場合であっても
図2に示された画像や模様の配置には限定されない。
【0043】
第1の真偽判別方法は、カラー複写機を用いるものである。
図3に、後述する本発明の実施の形態による偽造防止印刷物(1)が、カラー複写機によって複写されて得られた複写物(12)を示す。印刷物(1)のカラーの不可視模様の形成領域(2)に、
図3に示すように、複写物(12)において不可視模様(7)が可視化されている。可視化された不可視模様(7)と、所有者の顔画像(11)とを照合し、人物の一致を確認することで容易に真偽判別を行うことが可能である。
【0044】
第2の真偽判別方法は、透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具(4)を用いて真偽判別を行うものである。
図4に、本発明の実施の形態による偽造防止印刷物(1)において、判別具(4)を所定の位置に重ね合わせた状態を示す。
図4に示すように、印刷物(1)上のカラーの不可視模様の形成領域(2)に判別具(4)が載置された部分において、不可視模様(7)が可視化されている。可視化された不可視模様(7)と、所有者の顔画像(11)とを照合し、人物の一致を確認することで容易に真偽判別を行うことが可能である。
【0045】
第3の真偽判別方法は、赤外線視するカメラ又は光学式スキャナを搭載した画像入力・表示装置(IRビューアとも称される)を用いて真偽判別を行うものである。
図5に示すように、本発明の実施の形態による偽造防止印刷物(1)を、該画像入力・表示装置によって赤外線視した画像(5)を示す。印刷物(1)上のカラーの不可視模様の形成領域(2)に、赤外線視した画像(5)において印刷模様(6)が出現し不可視模様(7)が可視化されている。可視化された不可視模様(7)と、所有者の顔画像(11)とを照合し、人物の一致を確認することで容易に真偽判別を行うことが可能である。
【0046】
図6に、本発明でカラー複写を行う際に用いる通常のカラー複写機における入出力の明度の関係、即ち原本の濃度と複写物の濃度との関係を示す。通常のカラー複写機では、原本の濃度と複写物の濃度とは点線で示されたリニアの関係にはなく、実線で示されたように、原本の濃度が50%より低い段階では、例えば原本の地色や細かなノイズを再現しないように複写物の濃度はより低く、原本の濃度が50%より高い段階ではシャープネス処理のため複写物の濃度はより高く設定されている。
【0047】
本実施の形態の印刷物は、このようなカラー複写機の入出力の濃度特性を利用して不可視模様の全体の濃度、即ち画線面積率を5~40%、望ましくは例えば20%というように低く設定している。
【0048】
また本実施の形態の印刷物では、不可視模様の原画として個人情報を想定し、その代表的なものとして顔写真を想定しており、顔の基本色成分を赤と黒としている。なお、本発明において不可視模様の原画は顔写真には限定されず、また原画の基本色成分は赤と黒には限定されない。
【0049】
図7に、顔と色空間とを示す。一般には光の三原色R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の全てを用いた色空間でカラー画像が表現される。しかしながら、顔という個人情報の認証には赤と黒のみを用いて十分なレベルまで表現することができる。
【0050】
図8に、赤と黒のみを用いて所定の画素密度で顔を表現した状態を示す。
【0051】
図9に、赤の分解画像と黒の分解画像とを示す。赤のみで表現した顔と、黒のみで表現した顔とを合成することで、赤及び黒で表現した顔を表現することができる。
【0052】
図10に、赤の分解画像をイエロー(Y)とマゼンタ(M)の分解画像で表現し、黒の分解画像をブラック(K)で表現した状態を示す。このように、赤の分解画像と黒の分解画像を、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の分解画像で表現することができる。
【0053】
なお、上記では不可視模様の原画として顔画像を用いた説明であるため、不可視模様をマゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の分解画像で表現したが、不可視模様としては様々な画像を用いることができ、画像に合わせて、シアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の分解画像で表現することができる。
【0054】
図11(a)は、本実施の形態の印刷物における不可視模様となる第1のCMYK画像である。ここでは、顔画像がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の分解画像で表現されており、シアン(C)成分は零である。
図11(b)は、詳細は後述するユニットと称される最小単位であり、ユニットは、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)で構成されている。
図11(a)のCMYK画像の分解画像は、ユニットの第1の画線領域(A)に配置され、その際、
図11(c)に示すように、ユニットの第1の画線領域(A)に、複写機により再現される第1の画線が適用され形成される。なお、画線を適用する際、
図11(b)に示すように、ブラック(K)はユニットにおける第1の画線領域(A)の中央から両外側方向に画線を形成し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)については、両外側から中央方向に形成するとよい。このように形成することで、同一ユニット内に複数の色を配置することができる。
【0055】
図12(a)は、本実施の形態の印刷物における相殺模様となる第2のCMYK画像である。ここでは、顔画像がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の分解画像で表現されており、ブラック(K)成分は零である。
図12(b)は、
図11(b)で示した最小単位のユニットであり、
図12(a)のCMYK画像の分解画像は、ユニットの第2の画線領域(B)に配置され、その際、
図12(c)に示すように、ユニットの第2の画線領域(B)に、複写機により再現されない第2の画線が適用され形成される。
【0056】
ここで、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)に形成されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の分解画像における画線面積率はいずれも50%よりも低く、例えば約20%に設定されている。
【0057】
図13は、
図11と
図12の第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)に適用したイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の分解画像を全て合成し、画線を用いて最終的な画像を構成した状態を示す。上記により形成された印刷物(1)は、一見すると模様の無いフラットなグレー単色であるが、カラー複写すると、カラーの不可視画像が出現する。
【0058】
なお、本実施の形態の印刷物において、相殺模様としては、不可視模様のネガ反転した画像をCMYKに色分解して用いたが、相殺模様はこれに限らず、通常の可視条件下で可視模様を肉眼で視認されないように形成できればよく、任意の画像を使用することができる。
【0059】
図14(a)は、本実施の形態の印刷物における可視模様となる第3のCMYK画像である。可視模様は、前述した不可視模様及び相殺模様に加えて、印刷物に形成することが可能である。ここでは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の分解画像で表現されており、相殺画像と同様にブラック(K)成分は零である。
図14(b)は、
図11(b)及び
図12(b)で示した最小単位のユニットであり、
図14(b)のCMYK画像の分解画像は、ユニットの第2の画線領域(B)に配置され、その際、
図14(c)に示すように、ユニットの第2の画線領域(B)の一部の領域に、複写機により再現されない第3の画線が適用され形成される。ここで、第2の画線領域(B)の一部の領域に形成されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の分解画像における画線面積率はいずれも50%よりも低く、例えば約20%に設定されている。
【0060】
図15は、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)に適用した
図11(c)、
図12(c)及び
図14(c)に示したイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の分解画像を全て合成し、画線を用いて最終的な画像を構成した状態を示す。上記により形成された印刷物(1)は、通常の可視条件下では、波万線状のカラーの可視模様しか確認できないが、複写すると、カラーの可視模様が消え、カラーの不可視画像が出現する。
【0061】
図16に、印刷物(1)に対する印刷模様の一画線の構成を拡大して示す。ここで、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)は400~600μmの範囲であって、例えば、423μmというように1mm以下の大きさである。また、画像解像度を、例えば1200dpiとし、縦横20ピクセルとしている。
【0062】
図16に示された一画線は、ユニットと称される最小単位であり、中央に配置された第1の画線領域(A)と、第1の画線領域(A)を上下に挟持するように配置された第2の画線領域(B)とを備えている。第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)は、ユニットの横方向を長手方向とし、寸法(Sh)を最大幅とする長方形である。なお、中心線(L1)は、判別具(4)を印刷物(1)上に載置する際に関係するものであり、詳しくは後述する。
【0063】
このようなユニットが、印刷物(1)の表面上において複数個マトリクス状に規則的に配置される。また、横方向に隣接するユニット間で第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)が横一直線状に連結される。
【0064】
上述したように、第1の画線領域(A)は不可視模様領域に相当し、第2の画線領域(B)は、不可視模様を相殺する相殺模様を形成するための相殺模様領域に相当する。第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)とが存在することで通常の可視条件下では視認されず、第1の画線領域(A)のみに不可視模様、第2の画線領域(B)のみに相殺模様がそれぞれ形成される。
【0065】
なお、
図16では第1の画線領域(A)は一定の画線面積率で示されているが、不可視模様の構成に応じて可変する。また第2の画線領域(B)は、相殺模様及び可視模様の構成に応じて可変する。具体的な画線構成については後述する。
【0066】
また各ユニットにおいて、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)は、可視光の波長領域においては、肉眼視においては画線面積率20%程度の模様の無いフラットなグレー単色となって視認される。
【0067】
黒の階調を示す各ユニットにおいては、第1の画線領域(A)は、赤外線吸収性色素(例えば、カーボン)を含むブラック(K)の色材で構成され、第2の画線領域(B)は、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の減法混色によって混合されたインキで構成されている。
【0068】
図2に示された印刷物(1)の形成領域(2)に形成された印刷模様は、
図16に示されたユニットが縦ステップ数(Sv)と横ステップ数(Sh)をもってマトリクス状に縦横隙間なく、連続的かつ規則的に配置されて形成される。なお、本実施の形態でいうステップ数とは、印刷模様上で繰り返されるユニットの数のことを指すものである。ここで、ステップ数には何ら制限はなく、このステップ数は可視模様及び不可視模様の画像分解能と比例する。また、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)とが横方向に並ぶことによって、第1の画線領域(A)群から成る平行万線と、第2の画線領域(B)群から成る平行万線とが形成される。このように、線位相変調(Line phase modulation)によって不可視模様が形成される。
【0069】
なお、前述において、ユニットはマトリクス状に縦横隙間なく、連続的かつ規則的に配置されて形成されると記載したが、その配置は、
図17(a)に示すもののほか、
図17(b)のように第1の方向(S1)にブロック状に配置されてもよいし、
図17(c)に示すように、正方形のユニットが配置されてもよい。また、
図17(d)に示すように、ユニットが縦方向に配置されてもよいし、
図17(e)のように縦方向かつブロック状に配置されてもよい。さらに、
図17(a)から(e)は、第1の画線領域(A)を上下に挟持するように第2の画線領域(B)が配置されているが、本発明のユニットは、
図17(f)、
図17(g)で示すように、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)を横方向あるいは縦方向に交互に配置する構成でも効果を有する。
【0070】
また、ユニットを構成する第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)の面積比は、第1の画線領域(A)の面積:第2の画線領域(B)の面積が1:3から1:5程度となるように構成されることが好ましいが、1:4の面積比の構成が最も好ましい。
【0071】
図18に、印刷物(1)における不可視模様(7)の原画となる画像(9)を示す。画像(9)は、例えば、8bitのカラースケール画像で写真階調を有する。
【0072】
図19に、顔写真で基本色成分とした黒の5段階の階調を上段の5個のユニットに示し、赤の5段階の階調を下段の5個のユニットに示す。
【0073】
図20に、上段の5個の各ユニットにおいて、中央に配置された不可視模様の画線領域に黒の5段階の階調を示し、その上下に不可視模様の画線領域を相殺するための相殺模様の画線領域を配置し、相殺模様の画線領域に不可視模様の画線領域の色彩の補色又は反対色を5段階の階調で示す。例えば、一方が黒のとき、他方は白という関係である。
【0074】
さらに、
図20の下段の5個の各ユニットにおいて、中央に配置された不可視模様の画線領域に赤の5段階の階調を示し、その上下に不可視模様を相殺するための相殺模様の画線領域を配置し、相殺模様の画線領域に不可視模様の画線領域の色彩の補色又は反対色を5段階の階調で示す。
【0075】
そして各ユニットにおいて、全体として画線面積率が約20%になるように設定されている。
【0076】
このような不可視模様の画線領域と相殺模様の画線領域とが配置されたことで、全体として通常の可視光下では肉眼では視認されない。カラー複写を行うと、相殺模様の画線領域は不可視模様の画線領域よりもユニット内に占める面積が大きく、かつ相殺模様の画線面積率の平均値は不可視模様の画線面積率の平均値よりも相対的に低いため出力されず、黒の不可視模様及び赤の不可視模様のみが出力されて、不可視模様が出現する。
【0077】
図21に、上段に配置され、より簡約化された3段階の黒の階調を示す3個のユニットと、下段に配置され赤の階調を示す3個のユニットとが配置されたときの、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のデータを示す。
【0078】
上段の3個の各ユニット全体において、黒の3段階の階調が示され、ブラック(K)のデータが左から右へ向かって順に0、50、100のデータとなっている。この場合のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータはいずれも0である。
【0079】
下段の3個の各ユニット全体において、赤の3段階の階調が示され、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータが左から右へ向かって順に0、50、100のデータとなっている。この場合のシアン(C)、ブラック(K)のデータはいずれも0である。
【0080】
図22に、上段に配置され3段階の黒の階調を示す3個のユニットと、下段に配置され赤の階調を示す3個のユニットとが配置され、さらに各ユニットの中央に不可視模様の画線領域が配置され、その上下に相殺模様の画線領域が配置されたときのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のデータを示す。
【0081】
上段の3個の各ユニットにおいて、中央に配置された不可視模様の画線領域に黒の3段階の階調が示され、ブラック(K)のデータが左から右へ向かって順に0、50、100となっている。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータは全て0である。その上下に配置された相殺模様の画線領域には、不可視模様の画線領域における色彩の補色又は反対色がシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成される。具体的には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータが左から右へ向かって順に25、13、0となっており、ブラック(K)のデータは全て0である。
【0082】
下段の3個の各ユニットにおいて、中央に配置された不可視模様の画線領域に赤の3段階の階調が示され、シアン(C)、ブラック(K)のデータが全て0となっており、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータが0、50、100となっている。その上下に配置された相殺模様の画線領域に、不可視模様の画線領域における色彩の補色又は反対色がシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成される。具体的には、シアン(C)が全て25、ブラック(K)が全て0、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータが左から右へ向かって順に25、13、0となっている。
【0083】
ここで、前述した補色又は反対色について説明する。色彩には、赤、青、黄色などの色みを持つ有彩色と、白、黒、そのグラデーション上に位置するグレーといった色みの無い無彩色があり、本発明においては、有彩色及び無彩色のどちらも用いる。有彩色において、補色は色相環で正反対に位置する関係の色の組合せであり、例えば、赤の補色は緑であり、青の補色は橙色である。一方、無彩色は、色相及び彩度がなく明度が異なるのみなので、補色の概念はないが、白の反対色は黒、黒の反対色は白と表せる。これらを本発明に適用したものであり、例えば、無彩色の場合、
図22の上段右側に示すようにユニットの中央に配置された不可視模様の画線領域が「黒」の場合は、ユニットの上下に配置された相殺模様の第2の画線領域(B)には、黒の反対色である「白」として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)が全て0で表される。同様に、
図22の上段左側に示すように、不可視模様の画線領域が「白」の場合は、ユニットの上下に配置された相殺模様の第2の画線領域(B)に白の反対色である「黒」が配置されるが、このとき、ブラック(K)を用いずに、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)をそれぞれ25で形成する。
【0084】
上記で相殺模様の第2の画線領域(B)にブラック(K)ではなく、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成する理由について説明する。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインキは赤外吸収色素を含まないが、ブラック(K)のインキは赤外吸収色素を含むため、印刷物(1)を赤外線視した際にブラック(K)インキで印刷した画像が出現する。本発明の印刷物(1)では、赤外線視した際に第1の画線領域(A)に形成されたブラック(K)インキが不可視画像として出現するところに、第2の画線領域(B)にブラック(K)インキが形成されると、出現する不可視画像が不鮮明になるためである。同様に、有彩色の例として、
図22の下段右側に示すように、不可視模様の画線領域がマゼンタ(M)が100、イエロー(Y)が100で構成される「赤」の場合は、ユニットの上下に配置された相殺模様の画線領域にその補色としてシアン(C)25のみで形成される。
【0085】
次に、
図22に示された上下3個ずつのユニットにおいて、不可視模様の画線領域にはシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)をベタで塗りつぶし、相殺模様の画線領域には網点を配置した状態を
図23に示す。なお、画線配置について、不可視模様をベタ画線で、相殺模様を網点で配置したが、印刷物(1)を複写する際、不可視模様が再現され、相殺模様が再現されないように画線が配置されば上記構成に限定されない。
【0086】
図23に示されたユニットで構成された画像領域全体を視認すると、
図24に示されたようにブラック(K)の画線面積率が約20%で視認される。
【0087】
なお、本発明の印刷物(1)を構成する色彩は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)に限定されるものではなく、他の色であってもよい。ただし、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)を用いる構成は、各色の合成によって表現できる色の範囲が広いことから好ましい。
【0088】
(偽造防止印刷物用データの作成装置)
本発明の実施の形態による偽造防止印刷物用データを作成する装置について説明する。本実施の形態は、写真等の連続階調を有する画像を、連続階調を有する不可視情報として形成するための印刷物用データの作成装置に関するものである。本実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成装置の構成を
図25に示す。この作成装置は、入力手段(M1)、生成手段(M2)、出力手段(M3)、表示手段(M4)、ICメモリ(M5)及びデータベース(M6)を備えている。
【0089】
入力手段(M1)は、少なくとも不可視模様入力手段(M1a)を有し、必要に応じてさらに可視模様入力手段(M1b)を有する。不可視模様入力手段(M1a)は、ICメモリ(M5)又はデータベース(M6)に予め記録された顔画像(11)を含む任意の画像から不可視模様(7)を入力することができる。可視模様入力手段(M1b)も同様に、ICメモリ(M5)又はデータベース(M6)に予め記録された任意の画像から可視模様(8)を入力することができる。
【0090】
生成手段(M2)は、少なくとも不可視模様生成手段(M2a)と、相殺模様生成手段(M2b)と、画像合成手段(M2d)とを有し、必要に応じてさらに可視模様生成手段(M2c)を有する。不可視模様入力手段(M1a)が入力した顔画像(11)を含む任意の画像を用いて、不可視模様生成手段(M2a)により第1の画像データが生成され、相殺模様生成手段(M2b)により第2の画像データが生成される。また可視模様入力手段(M1b)が入力した任意の画像を用いて、可視模様生成手段(M2c)により必要に応じて第3の画像データが生成される。画像合成手段(M2d)により、第1の画像データと第2の画像データが合成され、あるいは可視模様が必要な場合は第1の画像データ、第2の画像データ及び第3の画像データが合成される。
【0091】
出力手段(M3)は、カラー・レーザープリンタ、カラー・インクジェットプリンタ等のコンピュータから出力された画像を印刷することが可能な印刷装置等であって、特に限定されるものではない。表示手段(M4)は、印刷物の画像表示を行うものであって、パーソナルコンピュータのモニタ、専用のモニタ等、特に限定されるものではない。また、ICメモリ(M5)は、例えば
図1に示された印刷物(1)中に設けられたICメモリ(M5)に含まれるものであってもよいが、これに限定されるものではない。またICメモリ(M5)は、通信用アンテナを設けた非接触型又は接続用端子を設けた接触型等、形態・方式が限定されるものではない。
【0092】
(偽造防止印刷物用データの作成方法)
上述した作成装置を用いて印刷物用データを作成する方法について、
図26を用いて詳細に説明する。この作成方法は、不可視模様生成フロー、相殺模様生成フローを少なくとも備え、必要に応じてさらに可視模様生成フローを備えている。
【0093】
(不可視模様生成フロー)
不可視模様の生成フローについて説明する。ステップS1において、不可視模様(7)を設定する。具体的には、不可視模様(7)の原画となる顔画像等の画像がICメモリ(M5)又はデータベース(M6)から入力される。例えば、ICメモリ(M5)から入力された画像が24bitRGB画像に設定される。
【0094】
ステップS2において、画像解像度の最適化を行う。本実施の形態では、解像度を600dpi、画像サイズを横35mm、縦45mmとし、画素数を横827pix、縦1066pixとする。
【0095】
ステップS2において画像解像度を最適化したRGB画像データに対し、ステップS3においてRGB画素領域の平均化を行う。この処理は、いわゆるモザイク処理に相当する。本実施の形態では、後述する臨界値配列画像(A1)及びマスク(C1)の画素数が20pix×10pixの長方形であることから、階調レベルの領域平均化においては、
図27に示すカラースケール画像のように縦寸法(Sv)、横寸法(Sh)が20×10ピクセルの長方形のモザイク状となるように処理する。なお、このステップS3は、必ずしも実施する必要はなく、以降で説明するステップS4以降で用いる画像データに、ステップS2で生成された8bitカラースケール画像データをそのまま用いることも可能である。
【0096】
ステップS3においてRGB画素領域が平均化されたRGB画像データに対し、
図28に示されたように、ステップS4において第1のCMYK画像データに変換する。変換には公知の変換方法であるGCR分解を用いて、ブラック(K)成分が最大出力となるように設定する。なお、本実施の形態では顔画像を黒、赤の色空間で再現するため、シアン(C)成分は零である。このように使用する色空間を限定することにより、処理を高速化することができる。
【0097】
第1のCMYK画像データに対し、ステップS5においてプロファイルA2を適用してトーンカーブの変更を行う。このプロファイルA2は、不可視模様の第1の画線領域(A)に形成される第1の画線の連続階調、及びCMYKのカラーバランスを制御するためのパラメータである。本実施の形態では、
図29に示されたように、入力の画線面積率が0%の場合に出力の画線面積率が0%、入力の画線面積率が100%の場合に出力の画線面積率が100%というように入出力の関係がリニアで直線的な連続的階調を有するトーンカーブとなっている。しかしながらこのトーンカーブは一例であり、必要に応じて設定を変えることができる。
【0098】
ステップS6において、臨界値配列画像(A1)の適用を行う。臨界値配列画像とは、公知技術によるものであって、最終的な印刷画線の形状を得るための制御用パターン画像であり、本実施の形態では不可視模様の第1の画線領域(A)に第1の画線を生成させるためのものである。相殺模様の第2の画線領域(B)には画線は生成されない。
【0099】
図30に示されたように、例えば解像度を600dpi、縦寸法(Sv)、横寸法(Sh)を10×20pixとする臨界値配列画像(A1)は、ユニットの中心部において横に延在する第1の画線領域(A)、その上下に第2の画線領域(B)を設けている。なお、第1の画線領域(A)の中心は、判別具(4)のレンチキュラーレンズの線数60Line/インチのピッチに合致している。ただし、上記では、レンチキュラーレンズのピッチを線数60Line/インチとしたが、これに限らず、ピッチは線数75Line/インチ等、任意のピッチで作製することができる。
【0100】
ステップS6において臨界値配列画像(A1)を適用することで、
図31に示されたように、ステップS7として不可視模様の第1の画線領域(A)に第1の画線のCMYK画像データが生成される。第1の画線領域(A)において、中心部においてブラック(K)画線のみが生成され、その横方向の両端部においてシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の画線データが生成される。
【0101】
(相殺模様生成フロー)
相殺模様生成フローについて説明する。
【0102】
不可視模様生成フローのステップS3においてRGB画素領域が平均化されたRGB画像データに対し、ステップS11において、
図32に示されたように第2のCMYK画像データに変換する。変換の際には、第1のCMYK画像データと同様に公知のGCR分解を用い、ブラック(K)成分を最小出力(出力零)に設定する。この結果、一見してコントラストの低いネガ状の画像として生成される。なお、
図26における相殺模様生成フローのステップS11において、不可視模様のステップS3で得られたRGB画像データから、相殺模様の第2のCMYK画像データを生成する方法を示しているが、相殺模様の第2のCMYK画像データは、必ずしも不可視模様として生成したRGB画像データを用いて作成する必要はなく、別の模様から第2のCMYK画像データを作成することも、第1のCMYK画像データ可能である。
【0103】
第2のCMYK画像データに対し、ステップS12においてプロファイルB2を適用してトーンカーブの変更を行う。このプロファイルB2は、相殺模様の第2の画線領域(B)に形成される第2の画線の連続階調、及びCMYKのカラーバランスを制御するためのパラメータである。本実施の形態では、
図33に示されたように、ブラック(K)は入出力とも全て画線面積率が0%、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の入力の画線面積率が20%の場合に出力の画線面積率が0%というように入出力の関係が、傾きが負で直線的な連続的階調を有するトーンカーブとなっている。しかしながらトーンカーブは
図33に示されたものには限定されず、必要に応じて任意に設定を変えることができる。
【0104】
ステップS13において、
図34に示されたマスク(B1)の適用を行う。このマスク(B1)は、臨界値配列画像(A1)と同一のサイズ、本実施の形態では例えば解像度を600dpi、縦寸法(Sv)、横寸法(Sh)を10×20pixとし、相殺模様の第2の画線領域(B)にのみ第2のCMYK画像の第2の画線データを生成させるためのものである。不可視模様の第1の画線領域(A)には画線は生成されない。
【0105】
ステップS13においてマスク(B1)を適用することで、
図35に示されたように、ステップS14として相殺模様の第2の画線領域(B)に第2の画線のCMYK画像データが生成される。第2の画線領域(B)にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の画線データが生成される。
【0106】
(可視模様生成フロー)
可視模様の生成フローについて説明する。不可視模様(7)を設定するS1と並列して、必要に応じてステップS21において可視模様(8)を設定する。具体的には、可視模様(8)の原画となる
図36に示されたような画像がICメモリ(M5)又はデータベース(M6)から入力される。例えば、ICメモリ(M5)から入力された画像が24bitRGB画像に設定される。画像形式は限定されない。
【0107】
ステップS22において、画像解像度の最適化を行う。通常は不可視模様と同一の画像解像度に設定され、本実施の形態では、解像度を600dpi、画像サイズを横35mm、縦45mmとし、画素数を横827pix、縦1066pixとする。しかしながら、可視模様の画像解像度を不可視模様の画像解像度と異なる値に設定してもよい。
【0108】
ステップS22において画像解像度が最適化されたRGB画像データに対して、
図37に示されたように、ステップS23において第3のCMYK画像データに変換する。変換の際には、第1、第2のCMYK画像データと同様に公知のGCR分解を用い、ブラック(K)成分を最小出力(出力零)に設定する。この結果、一見してコントラストの低いネガ状の画像として生成される。
【0109】
第3のCMYK画像データに対し、ステップS24においてプロファイルC2を適用してトーンカーブの変更を行う。このプロファイルC2は、第2の画線領域(B)に形成される第3の画線の連続階調、及びCMYKのカラーバランスを制御するためのパラメータである。本実施の形態では、
図38に示されたように、ブラック(K)は入出力とも全て画線面積率が0%、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の入力の画線面積率が0%の場合に出力の画線面積率が0%、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の入力の画線面積率が100%の場合に出力の画線面積率が10%というように入出力の関係がリニアで直線的な連続的階調を有するトーンカーブとなっている。しかしながら、必要に応じて任意の入出力関係に設定を変えることができる。
【0110】
ステップS25において、
図39に示されたマスク(C1)の適用を行う。このマスク(C1)は、相殺模様生成フローにおいて用いられたマスク(B1)と同様に、臨界値配列画像(A1)と同一のサイズ、本実施の形態では例えば解像度を600dpi、縦寸法(Sv)、横寸法(Sh)を10×20pixとする。そして、第2の画線領域(B)にのみ第3のCMYK画像データの第3の画線を生成させるためのものである。不可視模様の第1の画線領域(A)には画線は生成されない。
【0111】
ステップS25においてマスク(C1)を適用することで、
図40に示されたように、ステップS26として第2の画線領域(B)の部分的な領域に第3の画線のCMYK画像データが生成され、第1の画線領域(A)には画線は生成されない。なお、
図40に示すように、本実施の形態において、第3の画線のCMYK画像データは、第2の画線領域(B)の右半分の領域に生成しているが、これに限定されるものではなく、第2の画線領域(B)の部分的な領域に生成されれば、第2の画線領域(B)の中央であっても左半分であっても、その他の領域であってもよい。
【0112】
ステップS31において、第1のCMYK画像データ、第2のCMYK画像データ及び第3のCMYK画像データを乗算することによって合成し、第1の画線領域(A)に不可視模様の第1の画線データ、第2の画線領域(B)に相殺模様の第2の画線データ、必要に応じて第2の画線領域(B)の部分的な領域に可視模様の第3の画線データを生成し、
図41に示されたCMYK画像データとして生成する。
【0113】
このようにして作成された印刷物は、通常光下では可視模様が視認される。そしてカラー複写機によりカラー複写されると、可視模様に替わって不可視模様が視認される。判別具を用いて視認した場合、あるいは赤外線視した場合にも不可視模様が視認される。
【0114】
(印刷デバイスによる印刷)
図26に示された処理フローによって生成されたCMYK画像の合成画像データは、各種印刷デバイスにて印刷可能である。なお、印刷設定については各種印刷デバイスによって適時調整されるものであり、限定されるものではない。
【0115】
本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は一例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1 印刷物
2 形成領域
3 印刷模様
4 判別具
5 赤外線視した画像
6 赤外線視した印刷模様
7 不可視模様
8 可視模様
9 画像
11 顔画像
12 複写物
A 第1の画線領域
B 第2の画線領域
A1 臨界値配列画像
B1、C1 マスク
A2、B2、C2 プロファイル
M1 入力手段
M1a 不可視模様入力手段
M1b 可視模様入力手段
M2 生成手段
M2a 不可視模様生成手段
M2b 相殺模様生成手段
M2c 可視模様生成手段
M2d 画像合成手段
M3 出力手段
M4 表示手段
M5 ICメモリ
M6 データベース
L1 中心線
Sv ユニットの縦の寸法
Sh ユニットの横の寸法
【要約】
【課題】通常のカラー複写機により容易に真偽判別が可能な偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及びその装置を提供する。
【解決手段】基材上に、所定のピッチでマトリクス状に配置された複数のユニットが、補色又は反対色の第1の画線領域と第2の画線領域とを有して同一線上に形成され、第1の画線領域の複写により再現される第1の画線により不可視模様が形成され、第2の画線領域の複写により再現されない第2の画線により不可視模様に対する相殺模様が形成され、複数のユニットにおける第1の画線領域を構成する画線の少なくとも一部が有彩色を有し、各々のユニットにおける第1の画線と第2の画線とを合計した画線面積率がユニット間で同一となるように形成されている偽造防止印刷物である。
【選択図】
図26