(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】アミド系化合物の回収方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/267 20060101AFI20220216BHJP
C02F 1/04 20060101ALI20220216BHJP
C07C 233/03 20060101ALN20220216BHJP
C07C 233/05 20060101ALN20220216BHJP
C07C 231/24 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
C07D207/267
C02F1/04 D
C07C233/03
C07C233/05
C07C231/24
(21)【出願番号】P 2020537625
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 KR2019015679
(87)【国際公開番号】W WO2020130367
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0164128
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サンファン・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ジン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ハンソル・キム
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199869(WO,A1)
【文献】特開2012-136629(JP,A)
【文献】特開2010-100701(JP,A)
【文献】特開昭54-143404(JP,A)
【文献】特開昭59-089327(JP,A)
【文献】特開昭59-001536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生した水およびアミド系化合物を含む廃液を貯蔵タンクに収集する第1段階;
前記廃液を脱去部で蒸留して、脱去部の上部に蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を分離し、脱去部の下部に蒸気化されなかったアミド系化合物を含む液相混合物を分離する第2段階;
前記脱去部の上部で分離された蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を精留部に移送して蒸留を行う第3段階;
熱交換器を利用して脱去部および精留部の蒸留工程で発生した熱を循環させる第4段階;
前記精留部で蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を還流させて、精留部の上部に蒸気化された水を流出させ、還流で液化されたアミド系化合物を精留部の下部に流出させた後、脱去部に再循環させる第5段階;および
前記脱去部で流出されたアミド系化合物を含む液相混合物を脱去部下部に流出させる第6段階;
を含
み、
前記アミド系化合物は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン、およびテトラメチル尿素からなる群より選択される1種以上である、アミド系化合物の回収方法。
【請求項2】
前記熱交換器は、脱去部および精留部の間に1個以上連結設置されている、請求項1に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項3】
前記熱交換器は、1個乃至3個を含む、請求項1又は2に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項4】
前記熱交換器は、精留部の蒸留塔の塔頂を基準として、脱去部の蒸留塔の2段乃至7段の間に位置させる、請求項1~3のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項5】
前記第2段階乃至第6段階は、少なくとも1回以上繰り返して連続的に行う、請求項1~4のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項6】
前記脱去部は、上部に圧縮器が連結設置され、下部に再沸器が連結設置される、請求項1~5のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項7】
前記脱去部は、蒸留塔の理論段数が5段乃至10段になるようにして蒸留工程を行う、請求項1~6のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項8】
前記脱去部の蒸留塔の塔頂領域の温度は、90℃乃至110℃に調節され、前記脱去部の蒸留塔の塔底領域の温度は、170℃乃至190℃に調節される、請求項1~7のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項9】
前記精留部の蒸留塔の塔頂領域の温度は、125℃乃至145℃に調節され、前記精留部の蒸留塔の塔底領域の温度は、125℃乃至145℃に調節される、請求項1~8のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項10】
前記精留部は、蒸留塔の理論段数が6段乃至10段になるようにして蒸留工程を行う、請求項1~9のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項11】
前記第1段階の廃液は、濾過手段を利用する前処理過程を通じてポリアリーレンスルフィド製造工程の反応混合物から無機塩およびポリアリーレンスルフィドの微粉が除去されたものである、請求項1~
10のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項12】
前記廃液は、アルカリ金属のハロゲン化物、ジハロゲン化芳香族化合物、アルカリ金属の硫化物およびポリアリーレンスルフィドをさらに含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年12月18日付韓国特許出願第10-2018-0164128号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生したN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を含む廃液からN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を効率よく回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene sulfide;PPS)に代表されるポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)は、優れた強度、耐熱性、難燃性および加工性により自動車、電気・電子製品、機械類などで金属、特にアルミニウムや亜鉛などのダイカスト(die casting)金属を代替する素材として幅広く使用されている。特に、PPS樹脂の場合、Super EPのうちの一つであり、流動性がよいため、ガラス繊維などのフィラーや補強剤と混練してコンパウンドとしての使用に有利である。
【0004】
一般にPAS重合工程でN-メチルピロリドン(NMP)などのアミド系化合物を溶媒として使用する方法が工業的に広く知られている。また、PASを重合した後にも、残留する未反応物質をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系化合物や水で洗浄して除去している。このように使用されたN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物は、通常の有機溶媒より高価であるばかりか、水溶液で排出した場合、環境汚染の主原因になると知られており、一般に回収精製して循環再利用されている。
【0005】
しかし、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物は、有機物への溶解性が高い分、水との相溶性にも優れて水と無限大に混合し、またPAS製造工程からの流出液のように無機塩が多量に溶解されている場合にはそのまま蒸留することも困難であるため、多様な回収方法が試みられてきている。
【0006】
例えば、PAS重合後に残る未反応物質はNMPや水で洗浄して除去する。この時、使用されたNMPは大部分蒸留工程を通じて回収された。しかし、既存に知られている蒸留工程の場合には、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物は、アミド系化合物を高純度に分離回収するために蒸留塔の理論段数を高めるための多くの装置費用がかかり、エネルギー消費が多いという短所がある。また、PAS製造工程からの流出液のように無機塩が溶解されている場合には、蒸留塔内の流動性を確保するために多くのアミド系化合物を残さなければならないため、残留成分への損失が大きく、処理費用が大きくなるという短所がある。このような蒸留工程の短所を克服するために、抽出工程やメンブレン工程の開発が試みられたが、抽出溶媒に不純物として含まれている無機塩が混入されて追加的に水で抽出し、この過程でアミド系化合物が逆抽出されることが発生するなど、まだ分離効率性能がよくないため、当該技術は失効または廃棄されて広く使用されていない。
【0007】
そのために、全体工程のエネルギー消費を最小化し、初期装置費用を低減することができ、より効率よく高純度の化合物を分離することができるアミド系化合物の回収工程に対する開発が持続的に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、廃液を処理する蒸留工程で発生した熱エネルギーを循環させる方法を用いることによって、ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生したN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を含む廃液からN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を回収して全体工程のエネルギー消費を低減することができる、アミド系化合物の回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生した水およびアミド系化合物を廃液を貯蔵タンクに収集する第1段階;
前記廃液を脱去部で蒸留して、脱去部の上部に蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を分離し、脱去部の下部に蒸気化されなかったアミド系化合物を含む液相混合物を分離する第2段階;
前記脱去部の上部で分離された蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を精留部に移送して蒸留を行う第3段階;
熱交換器を利用して脱去部および精留部の蒸留工程で発生した熱を循環させる第4段階;
前記精留部で蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を還流させて、精留部の上部に蒸気化された水を流出させ、還流で液化されたアミド系化合物を精留部の下部に流出させた後、脱去部に再循環させる第5段階;および
前記脱去部で流出されたアミド系化合物を含む液相混合物を脱去部下部に流出させる第6段階;を含む
アミド系化合物の回収方法を提供する。
【0010】
以下、発明の具体的な実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造工程で発生した廃液からアミド系化合物を回収する方法についてより詳細に説明する。
【0011】
本発明において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0012】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0013】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0014】
以下、本発明を段階別により詳細に説明する。
【0015】
発明の一実施形態により、ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生した水およびアミド系化合物を含む廃液を貯蔵タンクに収集する第1段階;
前記廃液を脱去部で蒸留して、脱去部の上部に蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を分離し、脱去部の下部に蒸気化されなかったアミド系化合物を含む液相混合物を分離する第2段階;
前記脱去部の上部で分離された蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を精留部に移送して蒸留を行う第3段階;
熱交換器を利用して脱去部および精留部の蒸留工程で発生した熱を循環させる第4段階;
前記精留部で蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を還流させて、精留部の上部に蒸気化された水を流出させ、還流で液化されたアミド系化合物を精留部の下部に流出させた後、脱去部に再循環させる第5段階;および
前記脱去部で流出されたアミド系化合物を含む液相混合物を脱去部下部に流出させる第6段階;
を含むアミド系化合物の回収方法が提供される。
【0016】
本発明は、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を含む水溶液からN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を効率よく回収する方法および装置を提供する。
【0017】
特に、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)製造工程から生成される多様な無機塩と不純物が含まれている廃液から高純度のアミド系化合物を効率よく分離することができるように、抽出工程を用いることなく、蒸留工程と熱交換器を同時に利用して脱去部と精留部で発生した熱を交換することによって、分離効率性能を向上させながら、従来の全体工程のエネルギー消費を最小化し、初期装置費用も節減することができる方法を提供することができる。
【0018】
具体的には、前記アミド系化合物の回収方法は、
図1に示された方法により行われ得る。
【0019】
図1に示されているように、本発明は、ポリアリーレンスルフィドの製造工程で発生した廃液を収集した後、脱去部2、精留部6、および前記脱去部および精留部の間に位置する1個以上の熱交換器8により行い、前記廃液からアミド系化合物を効果的に回収することができる。この時、
図1は、単に例示的なものであり、熱交換器の設置位置および個数により前記アミド系化合物の回収工程および装置の範囲が添付した図面に制限されない。
【0020】
前記方法は、精留部のエネルギーを脱去部の各段を通じて熱統合(Heat integrated distillation column、HIDic)を導入することによって行われ得る。
【0021】
特に、前記方法は、前記蒸留塔の全ての段を熱統合せず、選択された段のみを熱統合させるため、設計過程を単純化することができる。
【0022】
前記熱交換器は、脱去部および精留部の間に1個以上連結設置されてもよい。
【0023】
発明の一実施形態において、前記第1段階は、ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生した水およびアミド系化合物を含む廃液を貯蔵タンクに収集する段階である。
【0024】
前記ポリアリーレンスルフィドの製造工程は、当該分野によく知られた方法により行うことができ、ポリアリーレンスルフィドの重合完了後、洗浄工程を行って廃液が収集され得る。
【0025】
この時、前記第1段階の廃液は、濾過手段を利用する前処理過程を通じてポリアリーレンスルフィド製造工程の反応混合物から無機塩およびポリアリーレンスルフィドの微粉が除去されたものが好ましい。また、前記濾過手段は、当該分野によく知られた方法により行われ得るところ、その方法が制限されない。例えば、前記第1段階の廃液は、ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生した反応混合物を濾過して、NaClおよびPPSなどの微粉を除去して収集されたものであってもよい。
【0026】
例えば、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)製造工程で洗浄後廃液の組成は、NMPなどのアミド系化合物を約20重量%乃至約70重量%、または約30重量%乃至約60重量%を含み、塩化ナトリウム(NaCl)が含まれているブラインの組成は、約30重量%乃至約80重量%、または約40重量%乃至約70重量%を含むことができる。また、前記廃液にはp-DCB、NaSH、Na2Sおよび分散されたPPS微細粒子を含むその他不純物を前記溶液媒質の総重量に対して約10重量%以内、または約5重量%以内に追加的に含むことができる。その他不純物には、2-ピロリジノン(2-pyrrolidinone)、1-メチル-2,5-ピロリジノン(1-methyl-2,5-pyrrolidinone)そして3-クロロ-N-メチルアニリン(3-Chloro-N-Methylaniline)などがあり、これらのうちの一つ以上であり得る。水およびアミド系化合物を含む廃液を濾過などの前処理過程を通じてNaClおよびPPSなどの微粉を除去して貯蔵タンクに収集する。
【0027】
前記第2段階は、前記廃液を脱去部で蒸留して、脱去部の上部に蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を分離し、脱去部の下部に蒸気化されなかったアミド系化合物および水性媒質を含む液相混合物を分離する段階である。
【0028】
前記脱去部に原料廃液が供給された後、蒸留を通じて廃液から液体および蒸気に分離を行うことができる。その後、廃液原料は、脱去部で蒸留塔の塔底に液相廃液混合物が流れ下りて再沸器に流入され得、前記蒸留塔の塔頂に蒸気化された廃液混合物が排出された後、圧縮器を通じて精留部に流入され得る。
【0029】
また、前記脱去部(stripping section)は、複数の段からなる蒸留塔を含むことができる。また、前記脱去部の蒸留塔に廃液が原料として一定の流速で供給され得る。
【0030】
前記脱去部に原料廃液1が供給された後、分別蒸留が行われると、脱去部の上部に水および一部のアミド系化合物が移動し、脱去部の下部に一部の水とアミド系化合物が移動され得る。前記脱去部の下側段に移動された液相の混合物は、脱去部の蒸留塔の塔底に移動された後、再沸器10に流入され得る。特に、前記脱去部では熱交換器と再沸器で伝達された熱を通じて蒸留が行われ、このような過程によりアミド系化合物および水性媒質が分離されて、再沸器を経て外部に流出され得る。
【0031】
前記第3段階は、脱去部で分離された蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を、圧縮器を通じて昇圧して精留部に移送する段階である。本工程では引入する圧力の2乃至3倍に該当する圧力に昇圧後、精留部に移動する。
【0032】
また、第4段階は、熱交換器を利用して精留部の熱を脱去部に伝達して精留部では凝縮器のエネルギーを節減させ、脱去部では再沸器のエネルギーを節減させ、蒸留工程を行う段階である。これは熱交換器で戻ってくる流体が精留部では還流させる役割を通じて凝縮器の負荷を低減することができ、脱去部では液体が気体に戻ることによって再沸器の負荷を低減することができるようになる。
【0033】
前記第5段階は、前記精留部で蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を還流させて、精留部の上部に蒸気化された水を流出させ、還流で液化されたアミド系化合物を精留部の下部に流出させた後、脱去部に再循環させる段階である。
【0034】
前記脱去部で廃液の蒸留を進行後、廃液に含まれている水およびアミド系化合物の混合物は蒸気化されるため、このような蒸気化された水およびアミド系化合物は、圧縮器を経て精留部に伝達される。その後、前記精留部で蒸留を通じて還流が行われて、前記蒸気化された水およびアミド系化合物の気相混合物中の蒸気は精留部の上部に流出された後、凝縮器を通じて回収され得る。
【0035】
この時、凝縮器の還流比は、約0.05乃至0.1モルであってもよい。
【0036】
また、蒸気化されたアミド系化合物中の一部は、液化されて精留部の下部に排出され得、このように排出された液相アミド系化合物は脱去部に再循環され得る。
【0037】
具体的に、前記第3段階の精留部で還流は精留部の下に流れ得、還流されなかった蒸気化された水は凝縮器を通じて凝縮された後に分離されて、一定の液位が維持される別途の水貯蔵槽に収集され得る。
【0038】
また、前記第4段階では、脱去部および精留部の蒸留工程で発生した熱が循環するが、このような過程は、精留部から熱交換器に気体が引入して脱去部から入る液体を気化させるのにエネルギーを伝達した後に戻る液体は還流を増大させるのに役割を果たし得る。
【0039】
好ましい実施形態により、前記精留部に流入された蒸気はラインを通じて脱去部との間に連結された熱交換器に移動され得、前記熱交換器ではラインを通じて脱去部で流入された液相が移動する。したがって、前記精留部の蒸気と脱去部の液相ストリームが熱交換器により接触して熱伝達がなされ得る。
【0040】
前記脱去部および精留部の間には、前記脱去部および精留部の熱エネルギーを循環させるための1個以上の熱交換器が連結設置されることによって、熱伝達がなされ得る。
【0041】
特に、このような過程が1回以上繰り返されることによって、本発明では再沸器のエネルギーを節約することができる。
【0042】
一方、前記第6段階は、脱去部で流出されたアミド系化合物を含む液相混合物を脱去部下部に流出させる段階である。
【0043】
これによって廃液からアミド系化合物の99%以上が回収され得、エネルギー消費量も減らすことができる。
【0044】
一方、
図1は、本発明の一実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの重合工程で発生した廃液からアミド系化合物を回収するための工程および装置を例示的に示す模式図である。
【0045】
図1をみると、供給された廃液は供給(Feed)1ラインを通じて脱去部2に引入されて蒸留が行われる。一般的な蒸留塔のように再沸器10で熱を与え、蒸気化された(vaporized)水とアミド系化合物は、ライン3を通じて圧縮器4で圧力を高めてライン5を通過して精留部6に引入される。この時、圧縮器4を通過した蒸気(vapor)は、圧力が高まりながら同時に温度が上昇し、上昇した温度の分、熱伝達がなされる。前記ライン5は、圧縮器を経た脱去部の塔頂ストリームを精留部に移送させるラインを意味する。
【0046】
また、前記精留部6に入った蒸気は、ライン9を通じて熱交換器8でライン7を通じて脱去部2から入る液体が接触して熱伝達がなされ、伝達される熱の分、再沸器10のエネルギーを節約することができる。
【0047】
この時、熱交換器8の個数と連結される段の位置は熱伝達量と分離効率が最適化されるように設計されなければならない。
【0048】
好ましくは、前記熱交換器の個数は、熱伝達面積、熱交換流量、カラム内流量対熱交換流量の比に対する最適化を経て1個乃至3個を選定することができる。また、前記熱交換器は、精留部の蒸留塔の塔頂を基準として、脱去部をなす蒸留塔の2段乃至7段の間あるいは2段乃至6段の間に位置させ得る。例えば、前記熱交換器は、前記脱去部の理論段数の3、4、5段および精留部の理論段数3、4、5の間に位置するように所定間隔を置いて1個以上あるいは1乃至3個が設置され得る。
【0049】
前記熱交換器の位置が前記位置に設置されなければ、熱伝達量の最適化を達成することができず、エネルギー節減効率低下の問題がある。
【0050】
前記精留部6で分離された水13は、凝縮器(condenser)12を通じて排出され、アミド系化合物は、バルブ14を通じて供給(Feed)1に合流されて再循環される。脱去部2でも再沸器10と熱交換器8で伝達された熱を通じて蒸留が行われ、アミド系化合物(好ましくは、NMP)11は脱去部下部に流出される。
【0051】
また、前記のように水とアミド系化合物を含む廃液から前述のように塔頂領域および塔底領域でアミド系化合物を流出させるために、脱去部および精留部の蒸留塔内部の温度および圧力条件が制御され得る。
【0052】
前記脱去部の蒸留塔の塔頂領域の温度は、約90℃乃至110℃、または約95℃乃至約105℃、または99℃乃至101℃に調節することができる。また、前記脱去部の蒸留塔の塔底領域の温度は、約170℃乃至190℃、または約175℃乃至約185℃、または181℃乃至183℃に調節することができる。
【0053】
前記精留部の蒸留塔の塔頂領域の温度は、約125℃乃至145℃、または約130℃乃至約140℃、または133℃乃至135℃に調節され得る。また、前記精留部の蒸留塔の塔底領域の温度は、約125℃乃至145℃、または約130℃乃至約140℃、または134℃乃至135℃に調節され得る。
【0054】
前記温度範囲を満足するように脱去部および精留部の蒸留塔には温度調節手段が備えられ得る。前記条件により脱去部および精留部の塔頂および塔底領域温度が調節されて、水とアミド系化合物を含む廃液からアミド系化合物をエネルギー消費なしに効率よく回収することができる。
【0055】
また、前記各蒸留工程は、大気圧条件下で行うことができる。
【0056】
一方、発明の他の一実施形態によれば、前述の方法に用いることができるアミド系化合物の回収装置が提供される。
【0057】
前記アミド系化合物の回収装置は、ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生した廃液を蒸留するための脱去部の蒸留塔、前記脱去部を通じて気相化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を蒸留するための精留部、および前記脱去部と精留部の間に位置した1個以上の熱交換器を含むことができる。
【0058】
前記アミド系化合物の回収工程で用いることができる脱去部および精留部の蒸留塔の具体的な種類は特に制限されない。
【0059】
例えば、前記脱去部および精留部は、一般的な構造の蒸留塔を用い、精製効率を考慮して精留部と脱去部の段数が異なるように設計して用いることも可能である。
【0060】
好ましい実施形態により、再沸器が含まれている脱去部と凝縮器が含まれている精留部そして圧縮器を利用して行うことができる。
【0061】
また、前記脱去部および精留部の蒸留塔の段数および内径なども特に制限されず、例えば、精製しようとする廃液の組成を考慮した蒸留曲線から類推される理論段数などを基盤として設定することができる。
【0062】
発明の一実施形態において、前記脱去部は、蒸留塔の理論段数が5段乃至10段あるいは7段乃至9段になるようにして蒸留工程を行うことができる。また、前記精留部は、蒸留塔の理論段数が6段乃至10段あるいは6段乃至8段になるようにして蒸留工程を行うことができる。ここで、「理論段数」は、前記蒸留塔で気相および液相の二つの相が互いに平衡をなす仮想的な領域または段の数を意味する。
【0063】
前記脱去部の蒸留塔は、水とアミド系化合物を含む廃液が投入される供給ポートを含む。また、前記供給ポートは、前記廃液が含まれている廃液タンクと連結されて廃液が流入されるようにできる。
【0064】
前記廃液が投入される供給ポートは、脱去部蒸留塔の塔頂を基準として算出された理論段数の50%以内あるいは10%乃至30%に位置することができる。
【0065】
また、前記精留部6の蒸留塔は、脱去部を通過して、蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物が投入され得る供給ポートが設置され得る。前記供給ポートは、精留部蒸留塔の塔頂を基準として算出された理論段数の50%以内あるいは10%乃至30%に位置することができる。
【0066】
また、前記気相混合物は、圧縮器4を通じて精留部に投入され得る。
【0067】
前記脱去部は、上部に圧縮器が連結設置され、下部に再沸器が連結設置され得る。
【0068】
また、前記精留部は、上部に気相の水を凝縮するための凝縮器が設置され得、下部には精留部で蒸留を通じて液相で生成されたアミド系化合物を脱去部に移送するためのラインが連結設置され得る。
【0069】
一方、前記アミド系化合物の回収装置は、圧縮器(compressor)、凝縮器(condenser)、再沸器(reboiler)などを追加的に含むことができる。
【0070】
前記「圧縮器」は、蒸留塔と別途に設置された装置であって、気相混合物を圧縮する役割を果たす当該分野によく知られた装置が全て使用可能である。例えば、前述したとおり、脱去部で分離された蒸気化された水およびアミド系化合物を含む気相混合物を昇圧して圧縮する装置を意味し得る。前記「凝縮器」は、蒸留塔と別途に設置された装置であって、前記本体で流出された物質を外部から流入された冷却水と接触させるなどの方式で冷却させるための装置を意味し得る。例えば、
図1に例示したアミド系化合物の回収装置で凝縮器12は、前記精留部の塔頂領域で流出される塔頂ストリームを凝縮させる装置であってもよい。また、前記「再沸器」は、脱去部2の塔底に循環されるように連結される外部に設置された加熱装置であって、沸点が高いストリームを再び加熱および蒸発させるための装置を意味し得る。つまり、再沸器は、蒸気を作って塔底に戻す役割を果たす。例えば、
図1に例示したアミド系化合物の回収装置で再沸器10は、前記脱去部2の蒸留塔の塔底領域で流出される塔底ストリームを加熱する装置であってもよい。
【0071】
一方、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)製造工程から生成される多様な無機塩と不純物が含まれている廃液から、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を効率よく分離しようとするものである。そのために、前記廃液は、水とアミド系化合物と共にアルカリ金属の水硫化物、アルカリ金属の硫化物、アルカリ金属のハロゲン化物、ジハロゲン化芳香族化合物、およびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される1種以上を追加的に含むものであってもよい。具体的に、前記混合液は、水とアミド系化合物と共に塩化ナトリウム(NaCl)、o-ジクロロベンゼン(o-DCB)、m-ジクロロベンゼン(m-DCB)、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)、硫化水素ナトリウム(NaSH)、硫化ナトリウム(Na2S)、およびポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる群より選択される1種以上を追加的に含むものであってもよい。
【0072】
一例として、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)製造工程で洗浄後廃液の組成は、前述したとおり、NMPなどのアミド系化合物を約20重量%乃至約70重量%、または約30重量%乃至約60重量%を含み、塩化ナトリウム(NaCl)が含まれているブラインの組成は、約30重量%乃至約80重量%、または約40重量%乃至約70重量%を含むことができる。また、前記廃液には、p-DCB、NaSH、Na2Sおよび分散されたPPS微細粒子を含むその他不純物を前記溶液媒質の総重量に対して約10重量%以内、または約5重量%以内に追加的に含むことができる。その他不純物には2-ピロリジノン(2-pyrrolidinone)、1-メチル-2,5-ピロリジノン(1-methyl-2,5-pyrrolidinone)そして3-クロロ-N-メチルアニリン(3-Chloro-N-Methylaniline)などがあり、これらのうちの一つ以上であり得る。
【0073】
ここで、前記アミド系化合物の具体的な例としては、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン化合物;N-メチル-ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム化合物;1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンなどのイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素などの尿素化合物;またはヘキサメチルリン酸トリアミドなどのリン酸アミド化合物などが挙げられ、これらのうちの一つ以上であり得る。
【0074】
前記ポリアリーレンスルフィドの具体的な製造方法および前記アミド系化合物の具体的な分離回収方法は、後述する実施例を参考とすることができる。しかし、ポリアリーレンスルフィドの製造方法やアミド系化合物の分離回収方法が本明細書に記述した内容に限定されるのではなく、前記製造方法および分離回収方法は、本発明が属する技術分野における通常採用する段階を追加的に採用することができ、前記製造方法および分離回収方法の段階は通常変更可能な段階により変更され得る。
【発明の効果】
【0075】
前述のように、本発明によれば、脱去部および精留部の間の所定の位置に1個以上の熱交換器を設置することによって、ポリアリーレンスルフィド製造工程で発生した廃液からN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物の分離効率性能を向上させて高純度のアミド系化合物を回収することができる。
【0076】
特に、本発明は、精留部のエネルギーを脱去部の各段に循環させることができ、そのために前記脱去部および精留部の熱統合が可能である。したがって、前記精留部で生成される気体と脱去部の液体の熱伝達を通じてNMPなどのアミド系化合物の回収にかかるエネルギー消費量を減少させることができる。また、前記方法は、各蒸留塔の全ての段を熱統合するのではなく、選択された段のみを熱統合させるため、設計過程を単純化させることができる。したがって、本発明は、全体工程のエネルギー消費を最小化し、初期装置費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】本発明の一実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの重合工程で発生した廃液からアミド系化合物を回収するための工程を例示的に示す模式図である。
【
図2】比較例1による従来の蒸留工程を利用したアミド系化合物の回収工程を例示的に示す模式図である。
【
図3】比較例2による従来の抽出工程を利用したアミド系化合物の回収工程を例示的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供させるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されない。
【実施例】
【0079】
<ポリフェニレンスルフィドの製造>
製造例1
PPSポリマーを作るために70%硫化水素ナトリウム(NaSH)と水酸化ナトリウム(NaOH)を1:1.05比率で混合して硫化ナトリウムを製造した。この時、0.33当量の酢酸ナトリウム(CH3COONa)粉末および1.65当量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、4.72当量の脱イオン水(DI water)を反応器に添加した。ここで、当量はモル当量(eq/mol)を意味する。この時、固体試薬を先に入れてNMP、DI waterの順に投入した。次いで、反応器を約150rpmで攪拌し、約215℃まで加熱して脱水させた。その後、硫化水素ナトリウムより1.04倍多い当量のパラ-ジクロロベンゼン(p-DCB)と1.65当量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を反応器に添加した。その後、反応混合物は前段重合を230℃で3時間、後段重合反応を260℃で1時間進行後、蒸留水を添加した後、攪拌してPPSポリマーを得た。
【0080】
前記重合工程を終えた後、反応生成物は、残留する未反応物質や副産物を除去するために約90℃のDI waterとNMPを利用してそれぞれ一回ずつ洗浄した後に濾過させた。このような洗浄と濾過過程をさらに二回反復実施し、最終生成物である線状ポリフェニレンスルフィド(PPS)および洗浄後廃液でNMPを含む水性媒質を回収した。
【0081】
この時、前記洗浄後廃液にはNMP含有の水性媒質であるブライン(NaCl水溶液)が含まれており、ここでNMP組成が5乃至40重量%であり、NaClが含まれているブラインの組成が1~15重量%であり、水20乃至95重量%が含まれた。また、前記廃液にはNMPとブラインの溶媒総重量に対してp-DCB、NaSH、Na2S、微粉PPS、および2-ピロリジノン(2-pyrrolidinone)などの微細粒子を含むその他不純物を約10重量%以内含んでいた。
【0082】
<N-メチル-2-ピロリドンの分離回収>
実施例1
製造例1のPPS重合後、洗浄工程から得られた廃液に対して濾過(filter)などの前処理過程を通じてNaClおよびPPSなどの微粉を除去し、NMP 20重量%および水80重量%を含む組成の混合液を
図1に示したように熱統合蒸留塔に導入して、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。
【0083】
この時、前記脱去部は、理論段数が8段である蒸留塔の蒸留領域で、大気圧条件下で蒸留工程を行った。前記脱去部の蒸留塔の塔頂領域の運転温度は約101℃になるように調節し、塔底領域の運転温度は約183℃に調節した。
【0084】
また、精留部は、理論段数が7段である蒸留塔の蒸留領域で圧縮器4排出圧である3atmの圧力条件下で蒸留工程を行った。前記精留部の蒸留塔の塔頂領域の運転温度は約134℃になるように調節し、塔底領域の運転温度は約134.5℃に調節した。前記蒸留塔の塔頂領域の還流比は約0.05モル(mole)に設定した。
【0085】
前記熱交換器は、前記脱去部の理論段数3、4および5段および精留部の理論段数3、4および5段の間に位置するように所定間隔を置いて3個を設置した。
【0086】
前記工程を通じて、前記廃液で回収されたNMPは全体成分に対して99.9重量%以上で、純粋(99.9%)NMPであることを確認した。
【0087】
実施例1の各ストリーム条件を下記の表1に整理した。
【0088】
【0089】
比較例1
製造例1のPPS重合後、洗浄工程から得られた廃液に対して濾過(filter)などの前処理過程を通じてNaClおよびPPSなどの微粉を除去し、NMP 20重量%および水20重量%を含む組成の混合液を、
図2に示したような既存の蒸留塔を利用してN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。
【0090】
まず、水とNMPを含む前記混合液(
図2の混合液投入ストリーム15)を別途の抽出溶媒なしに700kg/hrの流量で理論段数が15段である既存の蒸留塔の8段に位置する混合液供給ポートに流入して分離工程を行った。この時、蒸留工程は塔上部温度を100.02℃にし、塔下部温度を176.38℃にする条件で行った。
【0091】
前記塔頂ストリーム(
図2で、凝縮器18を経た塔頂ストリーム16)内のNMPの含有量は、前記塔頂ストリームに含まれる全体成分に対して1重量%以下であり、前記塔底ストリーム(
図2で、再沸器19を経た後のストリーム17)内のNMPの含有量は、前記塔底ストリームに含まれる全体成分に対して98重量%以上であることを確認した。
【0092】
比較例1の各ストリーム条件を下記の表2に整理した。
【0093】
【0094】
比較例2
製造例1のPPS重合後、洗浄工程から得られた廃液に対して濾過(filter)などの前処理過程を通じてNaClおよびPPSなどの微粉を除去し、NMP 20重量%および水80重量%を含む組成の混合液を、
図3に示したように抽出溶媒を投入して抽出工程を行った後、別途の蒸留装置を利用してN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。
【0095】
まず、水とNMPを含む前記混合液(
図3の混合液投入ストリーム20)と抽出溶媒としてクロロホルム(
図3の抽出溶媒投入ストリーム21)を共に抽出塔に投入して、約25℃の大気圧条件で抽出工程を行った。この時、前記抽出溶媒は、前記混合液の総重量100重量部を基準として185重量部の含有量で投入した。このような抽出工程を通じて液/液分離が終わり、抽出塔の上部に流出されるNMP、水、抽出溶媒を含む抽出液(
図3のストリーム23)は総有量1439kg/hrで、理論段数が15段である既存の蒸留塔の8段に位置する抽出液供給ポートに流入して蒸留工程を追加的に行った。この時、蒸留工程は約203℃で、大気圧条件で行った。
【0096】
一方、前記抽出工程の塔下部に99重量%以上の水を含む流出液(
図3のストリーム22)が吐出された。蒸留塔に導入されたNMP、抽出溶媒そして水は蒸留塔で分離されて、蒸留塔上部のストリーム(
図3で、凝縮器26を経た塔頂ストリーム24)で99%以上の抽出溶媒が排出されて抽出段階に再循環され、蒸留塔下部のストリーム(
図3で、再沸器27を経た塔底ストリーム25)で純粋なNMPが99%濃度で排出された。
【0097】
比較例2の各ストリーム条件を下記の表3に整理した。
【0098】
【0099】
実験例
実施例および比較例によるメチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程でエネルギー消費量と最終製品の純度は次の方法で評価し、測定結果は下記表4に示したとおりである。
【0100】
1)総エネルギー使用量(kW)
同等な原料投入量と最終回収された製品の純度を基準として、実施例および比較例の精製工程に使用された総エネルギー使用量を時間単位で測定した。
【0101】
2)最終回収された製品の純度(%)
同等な原料投入量を基準として最終回収された製品中でNMPおよび水の純度(%)を測定した。
【0102】
【0103】
*NMP内に残留する抽出溶媒除去のために追加的な蒸留実施
前記表4に示したように、本発明による実施例1は、比較例1乃至2と比較して、使用されたエネルギー総量に比べてNMP回収にかかるエネルギー消費量を効果的に減少させることができた。
【0104】
反面、比較例1は、大部分のポリフェニレンスルフィドの重合後廃水中のNMP回収方法として、蒸留工程を用いることによって、エネルギー消費が大きく、装置費および運転費が大きいという短所が示された。
【0105】
また、比較例2の場合、抽出工程の導入で実施例1と比較して、別途の抽出塔および蒸留塔が必要であった。また、前記方法は、残留抽出溶媒などの理由でNMP回収工程で多く使用されない。
【符号の説明】
【0106】
1:廃液投入ストリーム
2:脱去部
3:脱去部と圧縮器移送ライン
4:圧縮器
5:圧縮器を経た脱去部の塔頂ストリームを精留部に移送させるライン
6:精留部
7:脱去部と熱交換器移送ライン
8:熱交換器
9:精留部と熱交換器移送ライン
10:再沸器
11:再沸器を通過したNMP
12:凝縮器
13:凝縮器を通過した水
14:バルブ
15:蒸留塔の混合液投入ストリーム
16:蒸留塔の塔頂ストリーム
17:蒸留塔の塔底ストリーム
18:蒸留塔の凝縮器
19:蒸留塔の再沸器
20:抽出塔の混合液投入ストリーム
21:抽出塔の抽出溶媒投入ストリーム
22:抽出塔の塔底ストリーム
23:蒸留塔の抽出液投入ストリーム
24:蒸留塔の塔頂ストリーム
25:蒸留塔の塔底ストリーム
26:蒸留塔の凝縮器
27:蒸留塔の再沸器