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特許7025097亜鉛電極用電極材及びその製造方法、並びに、亜鉛電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】亜鉛電極用電極材及びその製造方法、並びに、亜鉛電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20220216BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20220216BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/24 H
H01M4/62 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018012938
(22)【出願日】2018-01-29
(65)【公開番号】P2019133769
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】櫛部 有広
(72)【発明者】
【氏名】大坪 亮二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197976(JP,A)
【文献】特開2014-167910(JP,A)
【文献】特開2015-072832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛を含む第1の粒子と、
ビスマス及びインジウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属の酸化物を含む第2の粒子と、を含有し、
前記第1の粒子の平均粒子径が0.60μm未満であり、
前記第2の粒子の平均粒子径が0.27μm以上0.32μm未満である、亜鉛電極用電極材。
【請求項2】
前記第1の粒子の含有量は、電極材の全質量を基準として、90質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載の電極材。
【請求項3】
前記第2の粒子の平均粒子径は、前記第1の粒子の平均粒子径よりも小さい、請求項1又は2に記載の電極材。
【請求項4】
酸化亜鉛を含む第1の粒子と、
ビスマス及びインジウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属の酸化物を含む第2の粒子と、を混合する工程を備え、
前記第1の粒子の平均粒子径が0.60μm未満であり、
前記第2の粒子の平均粒子径が0.27μm以上0.32μm未満である、亜鉛電極用電極材の製造方法。
【請求項5】
前記第1の粒子の使用量は、得られる電極材の全質量を基準として、90質量%以上99質量%以下である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2の粒子の平均粒子径は、前記第1の粒子の平均粒子径よりも小さい、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電極材又は請求項4~6のいずれか一項に記載の製造方法により得られる電極材を用いて亜鉛電極を得る工程を備える、亜鉛電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛電極用電極材及びその製造方法、並びに、亜鉛電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛電極を用いる電池としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等の亜鉛電池が知られている。例えば、ニッケル亜鉛電池は、水酸化カリウム水溶液等の水系電解液を用いる水系電池であることから、高い安全性を有すると共に、亜鉛電極とニッケル電極との組み合わせにより、水系電池としては高い起電力を有することが知られている。さらに、ニッケル亜鉛電池は、優れた入出力性能に加えて、低コストであることから、産業用途(例えば、バックアップ電源等の用途)及び自動車用途(例えば、ハイブリッド自動車等の用途)への適用可能性が検討されている。
【0003】
亜鉛電池(例えばニッケル亜鉛電池)の充放電反応は、例えば、下記式に従って進行する(放電反応:右向き、充電反応:左向き)。
(正極)2NiOOH+2HO+2e → 2Ni(OH)+2OH
(負極)Zn+2OH → Zn(OH)+2e
【0004】
上記式に示されるように、亜鉛電池では、放電反応により水酸化亜鉛(Zn(OH))が生成する。水酸化亜鉛は電解液に可溶であり、水酸化亜鉛が電解液に溶解すると、テトラヒドロキシド亜鉛酸イオン([Zn(OH)2-)が電解液中に拡散する。その結果、亜鉛電極の形態変化(変形)が進行すると共に充電電流の分布が不均一となること等により、亜鉛電極上の局所で亜鉛の析出が起こり、デンドライト(樹枝状結晶)が発生する。亜鉛電池では、充放電の繰り返しによりデンドライトが成長した場合、デンドライトがセパレータを貫通して短絡が発生することにより寿命性能が劣化する場合がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-126665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような亜鉛電池においては、寿命性能(例えばサイクル寿命性能)を向上させることが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、優れたサイクル寿命性能を有する亜鉛電池を得ることが可能な亜鉛電極用電極材及びその製造方法、並びに、該電極材又は該製造方法により得られる電極材を用いる亜鉛電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
通常、酸化亜鉛粒子の粒子径を小さくした場合には、酸化亜鉛粒子の分散性が低下し、充電電流の分布が不均一となることで、サイクル寿命性能が低下する。一方、本発明者らは、粒子径が小さい酸化亜鉛粒子を用いた場合であっても、特定の粒子径を有する金属酸化物粒子を組み合わせて用いることで、組み合わせによる相乗効果により、亜鉛電極を備える電池(亜鉛電池)のサイクル寿命性能を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の一側面は、酸化亜鉛を含む第1の粒子と、亜鉛以外の他の金属の酸化物を含む第2の粒子と、を含有する亜鉛電極用電極材に関する。この電極材では、第1の粒子の平均粒子径が0.60μm未満であり、第2の粒子の平均粒子径が0.32μm未満である。
【0010】
上記電極材によれば、亜鉛電池におけるサイクル寿命性能を向上させることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、本発明者らは次のように推察している。すなわち、上述のように、酸化亜鉛粒子の粒子径を小さくした場合には、酸化亜鉛粒子の分散性が低下し、シェイプチェンジ、デンドライト等が発生しやすくなる。このことが一因となり、亜鉛電池では、十分なサイクル寿命性能が得られないと推察される。一方、本発明では、酸化亜鉛を含む粒子(第1の粒子)間に、粒子径が小さい亜鉛以外の他の金属の酸化物を含む粒子(第2の粒子)が介在することで酸化亜鉛の凝集が抑制される。その結果、シェイプチェンジ、デンドライト等の発生を抑制できるとともに、活物質である酸化亜鉛の利用率を向上させることができるため、上記サイクル寿命性能の向上効果が得られると推察される。
【0011】
本発明の他の一側面は、酸化亜鉛を含む第1の粒子と、亜鉛以外の他の金属の酸化物を含む第2の粒子と、を混合する工程を備える亜鉛電極用電極材の製造方法に関する。この製造方法では、第1の粒子の平均粒子径が0.60μm未満であり、第2の粒子の平均粒子径が0.32μm未満である。この製造方法によれば、上記と同様の理由から、優れたサイクル寿命性能を有する亜鉛電池を得ることが可能な亜鉛電極用電極材を提供することができる。
【0012】
上記他の金属は、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属であってよい。この場合、よりサイクル寿命性能を向上させることができる。このような効果が得られる理由を本発明者らは次のように推察している。まず、従来の亜鉛電池において十分なサイクル寿命性能が得られない原因の一つとして、亜鉛の酸化還元電位が水素発生電位に近いことが考えられる。すなわち、亜鉛電極を備える従来の亜鉛電池では、亜鉛の酸化還元電位が水素発生電位に近いため、自己放電が起こりやすく、また、充電時に副反応として水素が発生することによる電解液の減少が起こりやすい。一方、本発明では、電極材が亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物を含む粒子を含有するため、自己放電の発生及び電解液の減少が抑制される。また、これら金属の酸化物は、還元電位が亜鉛より貴であるため、電極内では還元され、金属状態で存在することが考えられる。その結果、電極の導電性が向上し、導電性の不均一化による充放電反応の偏在化が解消され、デンドライト又はシェイプチェンジによる劣化が抑制されると推察される。さらに、本発明では、第1の粒子及び第2粒子の平均粒子径が所定の範囲であることにより、上記効果(自己放電の発生の抑制効果、電解液の減少の抑制効果等)が顕著に奏されることとなり、更なるサイクル寿命性能の向上効果が得られると推察される。
【0013】
亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属は、ビスマス及びインジウムからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。この場合、自己放電の抑制効果及び電解液の減少の抑制効果がより顕著となり、サイクル寿命性能をより向上させることができる。
【0014】
本発明の他の一側面は、上記電極材又は上記製造方法により得られる電極材を用いて亜鉛電極を得る工程を備える、亜鉛電池の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れたサイクル寿命性能を有する亜鉛電池を得ることが可能な亜鉛電極用電極材及びその製造方法、並びに、該電極材又は該製造方法により得られる電極材を用いる亜鉛電池の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
(電極材)
本実施形態の電極材は、亜鉛電極に用いられる電極材(亜鉛電極用電極材)であり、酸化亜鉛を含む第1の粒子と、亜鉛以外の他の金属の酸化物を含む第2の粒子と、を含有し、第1の粒子の平均粒子径が0.60μm未満であり、第2の粒子の平均粒子径が0.32μm未満である。この電極材によれば、優れたサイクル寿命性能を有する亜鉛電池を得ることができる。以下、電極材の詳細について説明する。
【0018】
[第1の粒子]
第1の粒子は、電極材において電極活物質(例えば負極活物質)として機能する。すなわち、第1の粒子は電極活物質である。
【0019】
第1の粒子は、酸化亜鉛以外の成分を含んでいてもよいが、主成分として酸化亜鉛を含んでいる。すなわち、第1の粒子を構成する成分のうち、酸化亜鉛の含有比率が最も高い。酸化亜鉛の含有比率(含有量)は、第1の粒子の全質量を基準として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%であり、更に好ましくは90質量%である。酸化亜鉛の含有比率は100質量%であってもよい。すなわち、第1の粒子は酸化亜鉛粒子であってよい。酸化亜鉛の含有量は、X線回折法(XRD)、赤外線分光法(IR)等による定性分析後、発光分光分析法(ICP)によって測定することができる。
【0020】
第1の粒子の平均粒子径は、0.60μm未満である。第1の粒子の平均粒子径は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、0.55μm以下又は0.30μm以下であってよい。第1の粒子の平均粒子径は、混練工程におけるハンドリング性の観点から、0.02μm以上、0.06μm以上又は0.1μm以上であってよい。これらの観点から、第1の粒子の平均粒子径は、0.02μm以上0.60μm未満、0.06~0.55μm又は0.1~0.3μmであってよい。第1の粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装製 9320-X100)によって測定される粒子径である。
【0021】
電極材における第1の粒子の含有量は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、電極材の全質量を基準として、30質量%以上、60質量%以上又は90質量%以上であってよい。また、第1の粒子の含有量は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、99質量%以下、97質量%以下又は95質量%以下であってよい。なお、本明細書では、特に断らない限り、電極材が溶媒成分を含む場合であっても、「電極材の全質量」には溶媒成分の質量は含まれない。
【0022】
[第2の粒子]
第2の粒子に含まれる亜鉛以外の他の金属の酸化物は、特に限定されないが、サイクル寿命性能をより向上させる観点では、好ましくは、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物である。亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属としては、例えば、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、タリウム(Tl)及びスズ(Sn)が挙げられる。これらの中でも、ビスマス、インジウム、タリウム及びスズからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ビスマス及びインジウムからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。第2の粒子がこれらの金属の酸化物を含む場合、自己放電の抑制効果、電解液の減液の抑制効果等が得られやすく、サイクル寿命性能をより向上させることができる。亜鉛以外の他の金属の酸化物としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の、湿潤性の高い金属酸化物;酸化カルシウムなどを用いてもよい。
【0023】
亜鉛以外の他の金属の酸化物(例えば、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物)は、亜鉛以外の他の金属(例えば、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属)を含む複合酸化物であってもよい。
【0024】
第2の粒子は、亜鉛以外の他の金属(例えば亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属)を1種含むものであってよく、複数種含むものであってもよい。また、第2の粒子は、1種の粒子からなっていてよく、複数種の粒子からなっていてもよい。
【0025】
第2の粒子は、亜鉛以外の他の金属の酸化物を主成分として含む。すなわち、第2の粒子を構成する成分のうち、亜鉛以外の他の金属の酸化物の含有比率が最も高い。第2の粒子における、亜鉛以外の他の金属の酸化物の含有比率(含有量)は、第2の粒子の全質量を基準として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%であり、更に好ましくは90質量%である。亜鉛以外の他の金属の酸化物の含有比率は100質量%であってもよい。すなわち、第2の粒子は亜鉛以外の他の金属の酸化物からなる粒子であってよい。亜鉛以外の他の金属の酸化物の含有量は、例えば、X線回折法(XRD)、赤外線分光法(IR)等による定性分析後、発光分光分析法(ICP)によって測定することができる。
【0026】
第2の粒子は、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物を主成分として含んでいてよい。すなわち、第2の粒子を構成する成分のうち、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物の含有比率が最も高くてよい。第2の粒子における、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物の含有比率(含有量)は、第2の粒子の全質量を基準として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%であり、更に好ましくは90質量%である。亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物の含有比率は100質量%であってもよい。すなわち、第2の粒子は亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物からなる粒子であってよい。
【0027】
電極材における亜鉛以外の他の金属(例えば、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属)の含有量は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、電極材の全質量を基準として、酸化物換算で、0.03質量%以上、1質量%以上又は5質量%以上であってよい。また、亜鉛以外の他の金属(例えば、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属)の含有量は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、電極材の全質量を基準として、酸化物換算で、50質量%以下、30質量%以下又は10質量%以下であってよい。
【0028】
第2の粒子の平均粒子径は、0.32μm未満である。第2の粒子の平均粒子径は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、0.30μm以下又は0.25μm以下であってよい。第2の粒子の平均粒子径は、混練工程におけるハンドリング性の観点から、0.02μm以上、0.04μm以上又は0.06μm以上であってよい。これらの観点から、第2の粒子の平均粒子径は、0.02μm以上0.32μm未満、0.04~0.30μm又は0.06~0.25μmであってよい。第2の粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装製 9320-X100)によって測定される粒子径である。
【0029】
第2の粒子の平均粒子径は、第1の粒子の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。第1の粒子の平均粒子径に対する第2の粒子の平均粒子径の比率(第2の粒子の平均粒子径/第1の粒子の平均粒子径)は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、0.99以下、0.8以下又は0.6以下であってよい。また、上記比率は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、0.02以上、0.04以上又は0.06以上であってよい。
【0030】
電極材における第2の粒子の含有量は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、電極材の全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上又は5質量%以上であってよい。また、第2の粒子の含有量は、サイクル寿命性能をより向上させる観点から、50質量%以下、30質量%以下又は10質量%以下であってよい。
【0031】
[他の成分]
電極材は、第1の粒子及び第2の粒子以外の他の成分を含有していてよい。他の成分としては、例えば、分散剤、結着剤、第1の粒子及び第2の粒子以外の金属粒子、溶媒成分(水等)などが挙げられる。
【0032】
電極材が分散材を含む場合、第1の粒子及び第2の粒子が均一に分散した状態で存在しやくなり、サイクル寿命性能をより向上させることができる。好ましい分散剤としては、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリメチルシロキサン等が挙げられる。分散剤の含有量は、例えば、電極材に含まれる金属成分100質量部に対して、0.1~1質量部である。
【0033】
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。結着剤の含有量は、例えば電極活物質100質量部に対して、0.5~10質量部である。亜鉛電極では、結着剤に代えて、酸化アルミニウム等からなるファイバー(繊維)を用いてもよい。
【0034】
第1の粒子及び第2の粒子以外の金属粒子としては、第1の粒子以外の電極活物質が挙げられる。第1の粒子以外の電極活物質としては、例えば、金属亜鉛及び水酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種を主成分として含む粒子(例えば、金属亜鉛粒子及び水酸化亜鉛粒子)が挙げられる。
【0035】
電極活物質の含有量は、例えば、電極材の全質量を基準として50~95質量%である。電極活物質中の酸化亜鉛の含有量は、例えば、電極活物質の全質量を基準として、60~90質量%である。
【0036】
電極活物質以外の他の金属成分としては、水酸化カルシウム等のカルシウム化合物;フッ化カリウム、フッ化カルシウム等のフッ素化合物などが挙げられる。電極活物質以外の他の金属成分の含有量は、例えば電極活物質100質量部に対して、1~20質量部である。
【0037】
本実施形態の電極材は例えば化成前の電極材である。電極材は、乾燥後の電極材であってもよい。すなわち、電極材は溶媒成分を含まない電極材であってよい。
【0038】
以上説明した電極材(亜鉛電極用電極材)は、例えば、酸化亜鉛を含む第1の粒子と、亜鉛よりも酸化還元電位が貴な金属の酸化物を含む第2の粒子と、場合により含有される他の成分(分散剤等)と、を混合する工程を備える製造方法により得られる。上述のとおり、この製造方法において、第1の粒子の平均粒子径は、0.60μm未満であり、第2の粒子の平均粒子径は0.32μm未満である。
【0039】
上記混合する工程では、他の成分として、溶媒成分を混合してよい。この場合、上記混合する工程ではペースト状の電極材(電極材ペースト)が得られる。電極材の製造方法は、得られた電極材ペーストを乾燥する工程を更に備えてよい。
【0040】
(亜鉛電池)
上述した電極材が用いられる亜鉛電極を備える亜鉛電池(例えば亜鉛二次電池)としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が挙げられる。本実施形態の亜鉛電池の基本構成としては、従来の亜鉛電池と同様の構成を用いることができる。以下では、亜鉛電池の一例として、ニッケル亜鉛電池について説明する。
【0041】
亜鉛電池は、例えば、電槽と、電槽に収容された電極群(例えば極板群)及び電解液と、を備える。本実施形態の亜鉛電池は化成後又は未化成のいずれであってもよい。
【0042】
電極群は、例えば、負極(例えば負極板)と、正極(例えば正極板)と、両電極の間に設けられたセパレータと、を備える。電極群は、複数の負極、正極及びセパレータを備えていてよい。複数の負極同士及び複数の正極同士は、例えば、ストラップで連結されていてよい。本実施形態では、負極が亜鉛(Zn)電極であり、正極がニッケル(Ni)電極である。但し、ニッケル電極が負極であり、亜鉛電極が正極であってもよい。
【0043】
負極は、負極集電体(集電体)と、該負極集電体に支持された負極材(電極材)と、を有する。
【0044】
負極集電体は、負極材からの電流の導電路を構成する。負極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。負極集電体は、箔状であってよく、メッシュ状であってもよい。負極集電体は、例えば、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の3次元網目構造を有する集電体であってもよい。負極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、銅、銅合金(例えば真鍮)、ニッケル、亜鉛、鋼、銀等が挙げられる。負極集電体は、発泡金属(例えば発泡銅、発泡真鍮、発泡ニッケル)等で構成されていてもよい。ニッケルは耐食性ニッケルであってよく、亜鉛は耐食性金属亜鉛であってよい。具体的な、負極集電体としては、銅箔(例えば電解銅箔)、銅メッシュ(例えばエキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮箔、真鍮メッシュ(例えばエキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、ニッケルメッシュ(例えばエキスパンドメタル)、パンチングニッケル、発泡ニッケル、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、鋼板、パンチング鋼板、銀箔等が挙げられる。負極集電体には、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等の元素が添加されていてもよい。負極集電体の表面には、Ni、Zn、Sn、Pb、Hg、Bi、In、Tl等によるメッキが施されていてもよい。
【0045】
負極材は、上述した本実施形態の亜鉛電極用電極材(例えば乾燥物)であってよく、該電極材を化成したものであってもよい。負極材は、例えば、層状を呈している。すなわち、負極は、負極材層を有していてよい。負極材は、負極活物質(電極活物質)を含有する。負極活物質としては、例えば、金属亜鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛が挙げられる。負極材は、例えば、満充電状態では金属亜鉛を含有し、放電末状態では酸化亜鉛及び水酸化亜鉛を含有する。負極活物質は例えば粒子状である。すなわち、負極材は、例えば、金属亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子及び水酸化亜鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含む。負極活物質の含有量は、例えば、負極材の全質量を基準として50~95質量%であってよい。
【0046】
正極は、正極集電体(集電体)と、該正極集電体に支持された正極材(電極材)と、を有する。正極集電体としては、負極集電体と同じ集電体を用いることができる。
【0047】
正極材は、例えば、層状を呈している。すなわち、正極は、正極材層を有していてよい。正極材は、正極活物質(電極活物質)を含有する。正極活物質としては、例えば、オキシ水酸化ニッケル及び水酸化ニッケルが挙げられる。正極材は、例えば、満充電状態ではオキシ水酸化ニッケルを含有し、放電末状態では水酸化ニッケルを含有する。正極活物質は例えば粒子状である。すなわち、正極材は、例えば、水酸化ニッケル粒子及び水酸化ニッケル粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含む。正極活物質の含有量は、例えば、正極材の全質量を基準として50~95質量%である。正極活物質が粒子状である場合、正極活物質を含む粒子には、後述する添加剤が含まれていてもよい。例えば、正極活物質を含む粒子(例えば水酸化ニッケルを含む粒子)には、コバルト、亜鉛、カドミウム、マグネシウム、ジルコニウム等が固溶されていてもよい。また、正極活物質を含む粒子の表面は、後述する添加剤で被覆されていてもよい。例えば、正極活物質を含む粒子(例えば水酸化ニッケルを含む粒子)の表面は、コバルト化合物等で被覆されていてもよい。
【0048】
正極材は正極添加剤(添加剤)を更に含有してよい。本明細書において正極添加剤とは、正極材に含まれる成分のうち、正極活物質以外の成分を指す。正極添加剤としては、結着剤等が挙げられる。正極添加剤は、一種を単独で、又は、複数種を組み合わせて用いることができる。
【0049】
結着剤としては、親水性又は疎水性のポリマー等が挙げられる。具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)等が挙げられる。また、結着剤として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系ポリマーを用いることもできる。結着剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して、0.01~1.0質量部であってよい。
【0050】
結着剤以外の他の正極添加剤としては、金属コバルト;酸化コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物;金属ニッケル;金属亜鉛;酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム化合物;希土類金属;希土類金属化合物などが挙げられる。これらの添加剤は、導電助剤として機能する。結着剤以外の他の添加剤の含有量は、例えば正極活物質100質量部に対して、0.05~30質量部であってよい。なお、充電後において、酸化コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物の少なくとも一部は、オキシ水酸化コバルトとして正極材中に存在してもよい。
【0051】
セパレータは、例えば、平板状、シート状等の形状を有するセパレータであってよい。セパレータとしては、ポリオレフィン系微多孔膜、ナイロン系微多孔膜、耐酸化性のイオン交換樹脂膜、セロハン系再生樹脂膜、無機-有機セパレータ、ポリオレフィン系不織布等が挙げられる。
【0052】
電解液は、例えば、溶媒及び電解質を含有している。溶媒としては、水(例えばイオン交換水)等が挙げられる。電解質としては、塩基性化合物等が挙げられる。塩基性化合物としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)等のアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。すなわち、本実施形態の亜鉛電池は、アルカリ電解液を用いたアルカリ亜鉛電池として用いることができる。電解液は、溶媒及び電解質以外の成分を含有してもよく、例えば、リン酸カリウム、フッ化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化チタン等を含有してもよい。電解液は、例えばセパレータに保持(例えば含浸)されていてよい。
【0053】
以上説明した亜鉛電池の製造方法は、例えば、電極(負極及び正極)を得る電極製造工程と、電解液を調製する電解液調製工程と、電極を含む構成部材を組み立てて亜鉛電池を得る組立工程と、を備える。電極製造工程は、例えば、上述した電極材又は上述した製造方法により得られる電極材を用いて亜鉛電極を得る工程を含む。
【0054】
電極製造工程では、負極及び正極を製造する。電極の製造方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。すなわち、電極材の原料と水とを混練してペースト状の電極材(電極材ペースト)を得た後、これを集電体(負極集電体)に塗布又は充填すること等により、集電体に電極材ペーストを支持させる。この際、集電体として3次元網目構造を有する集電体を用いた場合は、網目の間にも電極材ペーストが充填される。その後、電極材ペーストが充填された集電体を乾燥することで集電体上に未化成の電極材層を備える電極が得られる。必要に応じて、電極材層に対してプレス(例えばローラプレス)による加圧を行うことにより、電極材層の密度を高めてよい。なお、電極材ペーストのみを予め圧延してシート状に形成し、これを集電体に圧着して加圧成形した後、乾燥を行うことで、電極を得ることもできる。
【0055】
組立工程では、例えば、まず、電極製造工程で得られた正極及び負極を、セパレータを介して交互に積層し、正極同士及び負極同士をストラップで連結させて電極群を作製する。次いで、この電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着して未化成のニッケル亜鉛電池を得る。
【0056】
次いで、電解液を未化成のニッケル亜鉛電池の電槽内に注入した後、一定時間放置する。次いで、所定の条件にて充電を行うことで化成することによりニッケル亜鉛電池を得る。化成条件は、電極活物質(正極活物質及び負極活物質)の性状に応じて調整することができる。
【0057】
以上、本実施形態の亜鉛電池の一例として、ニッケル亜鉛電池について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、亜鉛電池は、正極が空気極である空気亜鉛電池(例えば空気亜鉛二次電池)であってもよく、正極が酸化銀極である銀亜鉛電池(例えば銀亜鉛二次電池)であってもよい。
【0058】
空気亜鉛電池の空気極としては、空気亜鉛電池に使用される公知の空気極を用いることができる。空気極は、例えば、空気極触媒、電子伝導性材料等を含む。空気極触媒としては、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒を用いることができる。
【0059】
空気極触媒としては、空気亜鉛電池における正極として機能するものを用いることが可能であり、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用可能である。空気極触媒としては、酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料(黒鉛等)、酸化還元触媒機能を有する金属材料(白金、ニッケル等)、酸化還元触媒機能を有する無機酸化物材料(ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等)などが挙げられる。空気極触媒の形状は、特に限定されないが、例えば粒子状であってもよい。空気極における空気極触媒の含有量は、空気極の合計量に対して、5~70体積%であってもよく、5~60体積%であってもよく、5~50体積%であってもよい。
【0060】
電子伝導性材料としては、導電性を有し、かつ、空気極触媒とセパレータとの間の電子伝導を可能とするものを用いることができる。電子伝導性材料としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類;鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類;銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類;ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料;これらの任意の混合物などが挙げられる。電子伝導性材料の形状は、粒子状であってもよく、その他の形状であってもよい。電子伝導性材料は、空気極において厚さ方向に連続した相をもたらす形態で用いられることが好ましい。例えば、電子伝導性材料は、多孔質材料であってもよい。また、電子伝導性材料は、空気極触媒との混合物又は複合体の形態であってもよく、前述したように、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒であってもよい。空気極における電子伝導性材料の含有量は、空気極の合計量に対して、10~80体積%であってもよく、15~80体積%であってもよく、20~80体積%であってもよい。
【0061】
銀亜鉛電池の酸化銀極としては、銀亜鉛電池に使用される公知の酸化銀極を用いることができる。酸化銀極は、例えば酸化銀(I)を含む。
【実施例
【0062】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0063】
[ニッケル電極(正極)の作製]
厚さ1.6mmのスポンジ状ニッケル金属多孔体(多孔度95%)をロールプレスにより1.2mmまで調厚し、集電体を得た。また、コバルトで被覆された水酸化ニッケル粉末(平均粒子径:20μm)88質量部と、添加剤として、コバルト粉末8質量部、酸化コバルト2質量部、酸化亜鉛2質量部及びカルボキシメチルセルロースの2質量%水溶液30質量部と、を混合してニッケル電極用電極材ペースト(正極材ペースト)を作製した。上記で得られた集電体に、上記で得られたペーストを充填した。その後、80℃で60分間乾燥し、ロールプレスにて0.4mmまで加圧成形した。これにより、未化成の電極材(正極材)を備えるニッケル電極(正極)を得た。
【0064】
(実施例1)
[亜鉛電極(負極)の作製]
第1の粒子として、平均粒子径0.55μmの酸化亜鉛粉末(堺化学工業株式会社、商品名日本薬局方)を用い、第2の粒子として、平均粒子径0.30μmの酸化ビスマス粒子(コアフロント社製、商品名4115CB)を用いて、亜鉛電極用電極材及び亜鉛電極を作製した。具体的な作製方法を以下に示す。
まず、第1の粒子82質量部、亜鉛粉末10質量部、及び第2の粒子5質量部を混合し、混合粉末を得た。得られた混合粉末に、PTFEを60質量%含有するPTFEディスパージョン(三井デュポンフロロケミカル社製商品名:テフロン31-JR(テフロンは登録商標))5質量部、及び水10質量部を加えて、乳鉢で剪断応力を加えながら15分間混練して混練物を得た。得られた混練物に水40質量部を加えて、さらに15分間混練して亜鉛電極用電極材ペースト(負極材ペースト)を得た。このペーストをローラで圧延して厚さ1.0mmのシートを得た。得られたシートを所定寸法に切り取り2枚のシートとし、集電体であるスズメッキされた銅製のパンチングメタル(厚さ:0.1mm)の両面に配した。その後、さらにロールプレスにて厚さ0.4mmまで加圧成形して乾燥した。これにより未化成の電極材(負極材)を備える亜鉛電極を得た。
【0065】
[ニッケル亜鉛二次電池の作製]
上記により得られたニッケル電極を袋状に加工したポリプロピレン製微多孔膜中に挿入し、さらにその外周をセルロース系不織布で包んだ。次いで、上記により得られた亜鉛電極も同様に、袋状に加工した微多孔膜中に挿入した。これらを交互にスタックした後、同極性の極板同士をストラップで連結させた。これによりニッケル極/亜鉛極=12枚/13枚の極板群を作製した。この極板群を電槽内に配置して未化成のニッケル亜鉛二次電池とし、これに電解液として水酸化リチウム1質量%を添加した水酸化カリウム30質量%水溶液を注入した後、14時間放置した。その後、0.8A、15時間の条件で充電(化成処理)を行い、公称容量が8.5Ahのニッケル亜鉛二次電池を作製した。得られた亜鉛電池において、亜鉛電極中の電極材を取り出し、酸化亜鉛粒子の平均粒子径及び酸化ビスマス粒子の平均粒子径を測定したところ、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は0.55μmであり、酸化ビスマス粒子の平均粒子径は0.30μmであった。
【0066】
(実施例2~4及び比較例1~6)
亜鉛電極の作製において、表1及び表2に示すように、第1の粒子の種類又は第2の粒子の種類を変更した又は第2の粒子を用いなかったことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~4及び比較例1~6の亜鉛電極を作製し、実施例1と同様にしてニッケル亜鉛二次電池を得た。実施例2、実施例4及び比較例2では、第2の粒子として、平均粒子径0.30μmの酸化ビスマス粒子に代えて平均粒子径0.27μmの酸化インジウム粒子(シグマアルドリッチ社製、商品名:Indium(III)oxide nanopowder)を用いた。実施例3及び実施例4では、第1の粒子として、平均粒子径0.55μmの酸化亜鉛粉末に代えて平均粒子径0.27μmの酸化亜鉛粉末(三井金属社製、商品名:一般品)を用いた。比較例1及び比較例2では、第1の粒子として、平均粒子径0.55μmの酸化亜鉛粉末に代えて平均粒子径0.60μmの酸化亜鉛粉末(堺化学工業株式会社、商品名:1種)を用いた。比較例3では、第2の粒子として、平均粒子径0.30μmの酸化ビスマス粒子に代えて平均粒子径0.33μmの酸化ビスマス粒子(シグマアルドリッチ社製、商品名:Bismuth(III) oxide nanopowder)を用いた。比較例4では、第2の粒子として、平均粒子径0.30μmの酸化ビスマス粒子に代えて平均粒子径0.32μmの酸化インジウム粒子(コアフロント社製、商品名:4115CB)を用いた。
【0067】
<ニッケル亜鉛二次電池の評価>
(サイクル寿命性能評価)
実施例及び比較例のニッケル亜鉛二次電池を用い、サイクルテストを行った。サイクルテストでは、2Aで4.6時間充電し、休止を1時間挟んだ後、直ちに2Aで電池電圧が1.1Vに達するまで放電するという充放電サイクルを1サイクルとし、該充放電サイクルを繰返し行った。そして、電池放電容量が公称容量の60%以下になった時点をサイクル寿命とし、サイクル寿命までのサイクル数を比較することにより、実施例及び比較例のサイクル寿命性能を評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、表中、サイクル寿命(相対比)とは、実施例1の二次電池におけるサイクル寿命を100%としたときの比率である。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1及び表2に示されるように、比較例に対し実施例の二次電池は高いサイクル寿命性能を示すことがわかった。第1の粒子と第2の粒子を組み合わせて用いることで、電極の活物質利用率が向上し、電極板内の充放電反応の不均一化による電析の偏在化を抑制することが可能となり、シェイプチェンジ、デンドライト等といったサイクル特性低下の要因を抑制できたものと考えられる。また、第1の粒子と第2の粒子を組み合わせて用いることで、自己放電の発生、電解液の減少、デンドライト、シェイプチェンジ等を抑制できたものと考えられる。また、実施例1及び2と比較例5との対比、並びに、比較例1及び2と比較例6との対比より、第1の粒子と第2の粒子との組み合わせによる効果は、第1の粒子の平均粒子径が0.60μm未満である場合に、顕著となることが確認された。