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  • 特許-スケールおよびその製造方法 図1
  • 特許-スケールおよびその製造方法 図2
  • 特許-スケールおよびその製造方法 図3
  • 特許-スケールおよびその製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】スケールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
G01D5/347 110A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017233154
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019100896
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】青木 敏彦
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-023222(JP,U)
【文献】特開2009-281870(JP,A)
【文献】特開平05-332792(JP,A)
【文献】特開2004-145064(JP,A)
【文献】特開2004-053576(JP,A)
【文献】特開2003-021547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0191286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマエッチング装置を用いて、基板の一面上に形成された被エッチング層に対してエッチングを行うことで、所定の間隔で複数の格子が配置された目盛格子を形成するエッチング工程と、
前記プラズマエッチング装置の操作条件を変更することで、前記一面上に前記目盛格子が設けられた前記基板に対し、フッ化物ガスのプラズマ重合によって、前記基板の前記一面の露出部分と前記目盛格子とを覆うように形成された保護膜を形成する膜形成工程を含むことを特徴とするスケールの製造方法。
【請求項2】
前記膜形成工程において、前記保護膜表面を略平坦に形成することを特徴とする請求項1記載のスケールの製造方法。
【請求項3】
前記エッチング工程において、マスクを用いてエッチングを行うことで前記目盛格子を形成し、
前記プラズマエッチング装置を用いて前記マスクを除去することを特徴とする請求項1または2に記載のスケールの製造方法。
【請求項4】
前記フッ化物は、フルオロカーボンであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のスケールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、スケールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学式の変位測定装置において、基板上に目盛格子が形成されたスケールが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-178312号公報
【文献】特開2008-256655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スケールの目盛格子には、汚染物質が付着することがある。しかしながら、汚染物質を拭き取ろうとすると、目盛格子を傷つけるおそれがある。また、格子と格子との間の凹部に汚染物質が残留することもある。そこで、目盛格子を覆う保護膜を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、保護膜に汚染物質が付着することがあり、付着した汚染物質を除去するのは容易ではない。
【0005】
1つの側面では、本発明は、汚染物質の付着を抑制することができるとともに、汚染物質の除去が容易なスケールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスケールの製造方法は、プラズマエッチング装置を用いて、基板の一面上に形成された被エッチング層に対してエッチングを行うことで、所定の間隔で複数の格子が配置された目盛格子を形成するエッチング工程と、前記プラズマエッチング装置の操作条件を変更することで、前記一面上に前記目盛格子が設けられた前記基板に対し、フッ化物ガスのプラズマ重合によって、前記基板の前記一面の露出部分と前記目盛格子とを覆うように形成された保護膜を形成する膜形成工程を含むことを特徴とする
【0012】
上記スケールの製造方法の前記膜形成工程において、前記保護膜表面を略平坦に形成してもよい。
【0014】
上記スケールの製造方法において、前記エッチング工程において、マスクを用いてエッチングを行うことで前記目盛格子を形成し、前記プラズマエッチング装置を用いて前記マスクを除去してもよい。
【0015】
上記スケールの製造方法において、前記フッ化物は、フルオロカーボンとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
汚染物質の付着を抑制することができるとともに、汚染物質の除去が容易なスケールおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】比較形態に係るスケールの断面図である。
図2】(a)は実施形態に係るスケールの平面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図3】(a)~(e)はスケールの製造方法を例示する図である。
図4】(a)および(b)は他の製造方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(比較形態)
実施形態に先立って、比較形態について説明する。図1は、比較形態に係るスケール200の断面図である。図1で例示するようにスケール200は、基板10の一面上に、所定の間隔で複数の格子が配置された目盛格子20を備えている。この構成により、スケール200は、所定の光透過特性、所定の光反射特性などの光特性を実現する。
【0019】
スケール200には、汚染物質が付着することがある。このような汚染物質は、スケール200の光特性に影響を及ぼすため、除去することが好ましい。例えば、目盛格子20の表面や、スケール200の露出部分に付着した汚染物質を拭き取ることが考えられる。しかしながら、汚染物質を拭き取ろうとすると、目盛格子20を傷つけるおそれがある。または、格子と格子との間の凹部に汚染物質が残留することもある。特に、目盛格子20の格子間距離が小さい場合や各格子がなす段差が大きい場合には、汚染物質が残留しやすい。それにより、スケールを用いた測定装置の測定精度が低下するおそれがある。
【0020】
そこで、目盛格子20を保護膜で覆うことが考えられる。しかしながら、保護膜に汚染物質が付着することがあり、付着した汚染物質を除去するのは容易ではない。また、汚染物質の付着自体を抑制することも困難である。以下の実施形態では、汚染物質の付着を抑制することができるとともに、汚染物質の除去が容易なスケールおよびその製造方法について説明する。
【0021】
(実施形態)
図2(a)は、実施形態に係るスケール100の平面図である。図2(b)は、図2(a)のA-A線断面図である。図2(a)および図2(b)で例示するように、スケール100は、基板10の一面上に、所定の間隔で複数の格子が配置された目盛格子20を備えている。基板10の一面上の露出部分および目盛格子20は、保護膜30によって覆われている。保護膜30は、表面が略平坦となっている。
【0022】
基板10は、特に限定されるものではない。スケール100が光透過型であれば、基板10は、光透過性材料によって構成されている。光透過性材料は、ガラスなどである。石英ガラス(合成溶融石英)のような低膨張係数材料が用いられることもある。スケール100が反射型であれば、基板10は、光不透過性材料によって構成されている。この場合の光不透過性材料は、金属などである。
【0023】
目盛格子20は、特に限定されるものではない。例えば、目盛格子20は、位相格子、振幅格子、反射型、透過型などの種類に応じて、最適な光透過性または不透過性(吸収または反射)の材料によって構成されている。光透過性材料としては、例えば、ガラス、二酸化ケイ素、酸化チタン、フッ化マグネシウム等の透明な酸化物、フッ化物等が用いられる。不透過性材料としては、例えば、クロム、ニッケル、チタンシリサイド、銅、金、アルミ、チタン等の金属や、黒色めっき、有色酸化被膜などが挙げられる。
【0024】
保護膜30は、フッ化物を材料とする。一例として、フッ化物としてフルオロカーボン系を用いることができる。フルオロカーボン系材料として、例えば、テトラフルオロカーボンなどを用いることができる。フッ化物は、撥水性を有しているため、防汚性を有している。それにより、汚染物質の付着を抑制することができる。また、フッ化物の摩擦係数は、比較的小さくなっている。それにより、保護膜30に汚染物質が付着した場合であっても、汚染物質を容易に拭き取ることができる。以上のことから、本実施形態に係るスケール100は、汚染物質の付着を抑制することができるとともに、汚染物質の除去が容易な構成を有している。さらに、フッ化物は、耐薬品性にも優れている。さらに、フッ化物は、屈折率が二酸化ケイ素より小さいので、界面反射等、光学的にも優れた性質を示す。
【0025】
フッ化物の保護膜30は、特に、格子間距離が2μm以下の目盛格子20を備えるスケールにおいて特に効果的である。また、保護膜30の表面が略平坦に形成されていることで、汚染物質の付着がより抑制されるとともに、汚染物質をより容易に拭き取ることができる。
【0026】
図3(a)~図3(e)は、スケール100の製造方法を例示する図である。まず、図3(a)で例示するように、基板10の一面上に、被エッチング層40を形成する。被エッチング層40は、目盛格子20を形成するための層であるため、目盛格子20と同じ材料からなる。なお、基板10が目盛格子20と同じ材料からなる場合、基板10の一部を被エッチング層40として用いることもできる。
【0027】
次に、図3(b)で例示するように、被エッチング層40上に、所定間隔でレジストパターン50を形成する。レジストパターン50は、目盛格子20のパターンを有している。レジストパターン50は、所定のマスクを用いてレジスト層をエッチングすることによって形成することができる。次に、図3(c)で例示するように、レジストパターン50をマスクとして用いて、被エッチング層40に対してエッチングを行う(エッチング工程)。それにより、目盛格子20を形成することができる。
【0028】
次に、図3(d)で例示するように、レジストパターン50を除去する。次に、図3(e)で例示するように、基板10の一面上の露出部分および目盛格子20を覆うように、保護膜30を形成する(膜形成工程)。保護膜30は、大気圧または減圧下でのプラズマ重合によって形成することができる。材料ガスとして、フッ化物ガスを用いることができる。フッ化物ガスとして、CF、C、C、CHFなどのフルオロカーボンガスを用いることができる。なお、保護膜30の表面を略平坦に形成することが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る製造方法によれば、フッ化物ガスのプラズマ重合によって、フッ化物の保護膜30を形成することができる。それにより、スケール100に対する汚染物質の付着を抑制することができるとともに、汚染物質の除去が容易である。また、プラズマ重合を用いることで、保護膜30を薄膜化することができる。例えば、樹脂の保護膜をコーティングによって形成する場合と比較して、保護膜30を大幅に薄膜化することができる。例えば、保護膜30を5μm以下の薄膜に形成することができる。保護膜30は、成膜しやすさの観点から3μm以下であることが好ましく、膜厚バラツキによる光学的特性への影響を抑制する観点から50nm~1μmとすることがより好ましい。また、プラズマ重合の条件を調整し、保護膜形成後にエッチバックをかけることで、格子間のみフッ化物膜で充填することも可能である。これにより保護膜による光学特性の劣化を最小限に抑えることが可能となる。なお、ここでの膜厚は、格子上面から保護膜30の上面までの厚みのことを意味する。
【0030】
なお、フルオロカーボンガスなどのフッ化物ガスをエッチングガスとして用いるプラズマエッチング装置では、フッ化物ガスがプラズマによって分解され、CF2+、CF3+などのイオンや、F、CF、CF、Cなどのラジカルが形成される。それにより、ターゲット表面のエッチングと、ターゲット表面に対する重合物の被覆とが同時に進行する。プラズマエッチング装置の操作条件を変更することで、エッチング効果を大きくすることができ、または、重合物による表面被覆効果を大きくすることができる。例えば、ターゲットに印加されるバイアスを増加させることで、エッチング効果を大きくすることができる、一方、ターゲットに印加されるバイアスを低下させることで、イオンの引き込みによるエッチング効果が低減され、重合物による表面被覆を促進することができる。
【0031】
そこで、プラズマエッチング装置を用いることで、図3(c)のエッチング処理と、図3(d)のレジスト除去処理と、図3(e)の被覆処理とを、連続して行うことができる。すなわち、1台のプラズマエッチング装置により、エッチング処理、レジスト除去処理および被覆処理の一連の処理を行うことができる。また、エッチング処理、レジスト除去処理および被覆処理の一連の処理を、真空雰囲気を維持した状態で行うことができる。また、エッチング処理および被覆処理を同種のフッ化物ガスを用いて行うこともできる。なお、レジスト除去処理においては、ガスを酸素等の酸化性ガスに切り替えることで、レジストを除去することができる。
【0032】
なお、フッ化物の重合物の被覆過程において、図4(a)で例示するように、目盛格子20の上面にフッ化物が堆積し、保護膜30が基板10の一面上の露出部分を十分に埋め込むことができないおそれがある。例えば、目盛格子20がなす段差が大きい場合には、目盛格子20の上面に堆積したフッ化物が目盛格子20上面から基板10の面方向にはみ出した凸部によって、基板10の露出面の埋め込みが阻害されるおそれがある。そこで、フッ化物ガスに若干のOを含ませるか、またはフッ化物の重合工程の途中でOプラズマ暴露工程を行うことで、電荷が集中する凸部を除去しつつ、図4(b)で例示するように、フッ化物の堆積層を緻密化および平坦化することができる。
【0033】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 基板
20 目盛格子
30 保護膜
40 被エッチング層
50 レジストパターン
100 スケール
図1
図2
図3
図4