(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物、その製造方法、これを含むディップ成形用のラテックス組成物およびこれから成形された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 13/02 20060101AFI20220216BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20220216BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220216BHJP
C08F 236/12 20060101ALI20220216BHJP
C08F 220/46 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C08L13/02
C08K3/06
C08K5/00
C08F236/12
C08F220/46
(21)【出願番号】P 2020531096
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 KR2019001635
(87)【国際公開番号】W WO2019172539
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0027279
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ、スン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】シン、サン-チン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ウォン-サン
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126660(WO,A1)
【文献】特開2003-252667(JP,A)
【文献】特開2009-138194(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0060793(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 13/00- 13/02
C08L 33/00- 33/26
C08K 3/00- 13/08
C08F 236/00-236/22
C08F 220/00-220/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むラテックス組成物
および架橋剤組成物を含む、ディップ成形用のラテックス組成物であって、
カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位を
1.5重量%~6重量%で含み、
カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内の凝固物の含量が1重量%未満
であり、
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位からなり、
前記架橋剤組成物は、加硫剤および加硫促進剤を含む、
ディップ成形用のラテックス組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位40重量%~80重量%、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位10重量%~50重量%、エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位
1.5重量%~6重量%からなる、
請求項1に記載の
ディップ成形用のラテックス組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内の凝固物の含量が0.01重量%未満である、
請求項1または2に記載の
ディップ成形用のラテックス組成物。
【請求項4】
前記架橋剤組成物は、多価金属カチオン化合物を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のディップ成形用のラテックス組成物。
【請求項5】
前記多価金属カチオン化合物は、アルミニウムグリコレート(aluminium glycolate)、アルミニウムアセチルアセトネート(aluminium acetylacetonate)、アルミニウムラクテート(aluminium lactate)およびアルミニウムタルトレート(aluminium tartrate)からなる群から選択される1種以上である、
請求項4に記載のディップ成形用のラテックス組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のディップ成形用のラテックス組成物由来の層を含む成形品。
【請求項7】
単量体混合物の全含量に対して、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を
1.5重量%~6重量%で含む単量体混合物を重合し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を製造するステップ(S10)を含み、
前記単量体混合物は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位からなり、
前記単量体混合物に含まれる2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、
前記(S10)ステップの重合開始の前に一部投入し、重合転化率20%~60%の時点で
残量投入する、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年3月8日付の韓国特許出願第10‐2018‐0027279号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されているすべての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物に関し、より詳細には、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物、その製造方法、これを含むディップ成形用のラテックス組成物およびこれから成形された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、産業用、医療用および食品用の手袋と、風船、コンドームなど、伸縮性を要する製品の原料として、天然ゴムが主に使用されてきた。しかし、近年、天然ゴムが一部のユーザに深刻なタンパク質アレルギーを起こす副作用が生じ、天然ゴムの代わりにニトリル系ゴムが使用されている。ニトリル系ゴムは、高い耐油性を有しており、特に、有機溶剤を扱うユーザが使用する作業用の手袋や、医療用および食品用の手袋で多く使用されている。また、ニトリル系ゴムから製造された製品は、天然ゴムから製造された製品に比べ、注射針などによって簡単に穴が開かない特性を有しており、鋭いメスや注射針などを扱う医療関係者が使用するに適するという利点がある。
【0004】
また、近年、天然ゴムの不安定な需給によって、多くの手袋メーカーが、天然手袋生産ラインをニトリル系ゴム手袋生産ラインに転換しており、安全性に対する認識が高くなるにつれて、ニトリル系ゴムから製造された使い捨て手袋の使用が増加し続けている。
【0005】
かかる傾向に合わせて、手袋メーカーは、手袋の生産性を高めるために、薄くて破れにくい手袋を製造することを目標としており、このために、高い引張強度を有する手袋を作製できるディップ成形用ラテックスが求められている。手袋を製造するにあたり、引張強度に影響を及ぼす最大の因子の一つとして、ディップ成形用ラテックスの製造時に用いられる単量体の一つであるメタクリル酸と、ディップ成形用のラテックス組成物に投入される酸化亜鉛の亜鉛イオンとの間で生じるイオン結合が挙げられる。前記イオン結合がどれ位多く形成されるかによって手袋の引張強度が決定される。しかし、手袋の引張強度を高めるために、ディップ成形用ラテックスの製造時にメタクリル酸単量体の含量を高める場合、ディップ成形用のラテックス組成物の粘度が上昇しすぎるという問題があり、酸化亜鉛の投入量を高める場合、ディップ成形用のラテックス組成物の安定性が低下し、手袋不良の原因になるという問題がある。そのため、メタクリル酸単量体の含量および酸化亜鉛の投入量を増加させることが難しく、特に、食品用の手袋の場合には、手袋の使用時に溶出される酸化亜鉛の量が規制などで制限されており、ディップ成形用のラテックス組成物に投入される酸化亜鉛の投入量も制限的である。また、手袋の引張強度を向上させるために、手袋の製造時にゲルの含量を高めるか、メタクリル酸と、酸化亜鉛とのイオン結合の量を高める場合、300%モジュラス値の上昇によって、手袋の着用時にゴワツキによって手袋の着用性が低下するという問題がある。
【0006】
また、手袋をしていると、ユーザの汗や、扱う溶液などによって手袋が使用中に破れる場合が生じ得るが、これを防止するために、手袋にはある程度の水準以上の耐久性が求められ、特に、産業分野において使用される手袋の場合、酸、塩基または有機溶媒などに露出する環境で用いられるため、ユーザの身体を保護するための耐薬品性が求められる。しかし、手袋が薄くなるほど手袋の耐久性および耐薬品性は低下するため、高い引張強度および低い300%モジュラスを示すとともに、より優れた耐久性および耐薬品性を有する手袋が求められ続けている。
【0007】
一方、手袋の引張強度、耐久性および耐薬品性などの物性を向上させるためには、手袋の製造時に、フィルムの形成過程の速度を高める必要があるが、これを高める場合、手袋の製造時の作業性が低下するという問題がある。特に、作業性として表される物性の一つであるシネレシス(Syneresis)は、ラテックス内の粒子の凝集が生じると脱水が行われる現象であるが、手袋の製造時にフィルムの形成速度を高める場合、かかるシネレシスの速度も速くなる。シネレシスの速度が速すぎると、ディップ成形のためのラテックス組成物のラテックス安定性が低下し、凝集物が生じ、これは、つまり、手袋の不良の原因になる。
【0008】
また、近年、環境および安全などへのニーズが高くなるにつれて、手袋内の残留物への関心も高くなっている。これに関連し、手袋を製造するためのラテックス内に残留単量体の含量が多い場合、これは、つまり、手袋内の残留単量体の含量の増加の原因になり、これは、手袋の利用時に、不愉快なにおいの原因になる。特に、沸点の高い単量体が残留する場合、ラテックスの脱臭工程と手袋の製造工程で除去されず、最終の製品に残留する可能性が高くなる。したがって、ラテックスの製造時に、沸点の高い単量体の場合、特に、未反応による単量体が残留しないように共重合体の重合効率を考慮しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景になる技術で言及した問題を解決するために、ディップ成形によって製造されたディップ成形品の引張強度を向上させ、300%モジュラスを下げて着用感を改善するとともに、耐久性、耐薬品性および作業性を同時に改善し、且つ残留単量体の含量を低減することである。
【0010】
すなわち、本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、ディップ成形用のラテックス組成物を用いて、手袋などのディップ成形品の製造時に、作業性を向上させるとともに、300%モジュラスが低くて手袋の着用性に優れ、引張強度が高くて薄い厚さを有する手袋であっても破れ難く耐久性に優れ、耐薬品性にも優れ、残留単量体の含量が低いディップ成形品を製造するためのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物、その製造方法およびこれを含むディップ成形用のラテックス組成物と、これから成形されたディップ成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むラテックス組成物であって、カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位を0.1重量%超~12重量%未満で含み、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内の凝固物の含量が1重量%未満であるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、単量体混合物の全含量に対して、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を0.1重量%超~12重量%未満で含む単量体混合物を重合し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を製造するステップ(S10)を含み、前記単量体混合物に含まれる2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、前記(S10)ステップの重合開始の前に全量投入;重合開始の前に一部投入し、重合転化率20%~60%の時点で残量投入;または重合転化率20%~60%の時点で全量投入するカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体組成物および架橋剤組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記ディップ成形用のラテックス組成物由来の層を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物を用いて、手袋などのディップ成形品を製造する場合、製造されたディップ成形品の引張強度を向上させ、300%モジュラスを下げて着用感を改善し、且つ、ディップ成形品の耐久性、耐薬品性および作業性を改善し、残留単量体の含量を低減するという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の説明および請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善を方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0017】
以下、本発明に関する理解を助けるために本発明をより詳細に説明する
本発明において、「由来の繰り返し単位」という用語は、ある物質から起因した成分、構造またはその物質自体を示し得、具体例として、「由来の繰り返し単位」は、重合体の重合時に、投入される単量体が重合反応に参加して重合体内でなす繰り返し単位を意味し得る。
【0018】
本発明において、「ラテックス」という用語は、重合によって重合された重合体または共重合体が水に分散された形態で存在するものを意味し得、具体例として、乳化重合によって重合されたゴム状の重合体またはゴム状の共重合体の微粒子がコロイド状で水に分散された形態で存在するものを意味し得る。
【0019】
本発明において、「凝固物」という用語は、ラテックス内に分散された共重合体などが凝固および/または凝集された平均粒径74μm以上の粒子を意味し得、具体例として、200メッシュサイズのふるいでふるい分けた平均粒径74μm以上の粒子を意味し得る。
【0020】
本発明において、「由来の層」という用語は、重合体または共重合体から形成された層を示し得、具体例として、ディップ成形品の製造時に、重合体または共重合体がディップ成形型上で付着、固定、および/または重合されて重合体または共重合体から形成された層を意味し得る。
【0021】
本発明において、「架橋剤由来の架橋部」という用語は、化合物から起因した成分、構造またはその物質自体を示し得、架橋剤組成物が作用および反応して形成された重合体内、または重合体間の架橋(cross linking)の役割を果たす架橋部(cross linking part)を意味し得る。
【0022】
本発明に係るカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むラテックス組成物であって、カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位を0.1重量%超~12重量%未満で含み、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内の凝固物の含量が1重量%未満であってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を形成する単量体または各単量体から由来した繰り返し単位とともに、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を形成するものであってもよく、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体内に2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位を含むことで、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から製造された成形品の引張強度などの引張特性を向上させ、300%モジュラスを下げて着用感を改善し、耐久性および耐薬品性に優れるという効果がある。
【0024】
本発明に係る2‐ヒドロキシエチルメタクリレートと類似した単量体として、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、3‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、2‐ヒドロキシブチルメタクリレート、3‐ヒドロキシブチルメタクリレート、4‐ヒドロキシブチルメタクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、3‐ヒドロキシプロピルアクリレート、2‐ヒドロキシブチルアクリレート、3‐ヒドロキシブチルアクリレートおよび4‐ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体なども、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造時に、単量体として利用可能ではあるが、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルメタクリレート単量体は、各単量体由来の繰り返し単位毎、外部に形成されたヒドロキシアルキル基のアルキル基の鎖、すなわち側鎖の鎖が長くて各単量体由来の繰り返し単位で形成された主鎖間の距離を増加させて、架橋剤組成物によって形成される架橋剤由来の架橋部の架橋能力を低下させる。また、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルメタクリレート単量体は、本発明によってカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を製造するにあたり、共役ジエン系単量体およびエチレン性不飽和ニトリル系単量体との共重合の際、共重合体の形成効率が、2‐ヒドロキシエチルメタクリレートに比べて50%以上低下する。これにより、重合されなかった残留単量体がラテックス組成物内に存在することになり、これらは沸点が高く、脱臭工程後にも容易に除去されず、成形品の残留単量体の含量を高める原因になる。
【0025】
また、2‐ヒドロキシエチルアクリレートをはじめ、ヒドロキシプロピルアクリレートなどの単量体は、本発明によってカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を製造するにあたり、重合時にラテックス安定性が低下し、これによって、ラテックスは言うまでもなく、成形品内の凝固物(coagulum)の含量が増加し、単量体から由来した繰り返し単位によって期待する機能が正常に発現されず、耐久性および耐薬品性に加え、シネレシスの改善が微細である。
【0026】
したがって、本発明によってカルボン酸変性ニトリル系共重合体内に2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位を特定の含量で含むことが、これから成形された成形品の引張特性を向上させ、300%モジュラスを下げて着用感を改善し、耐久性および耐薬品性を改善することは言うまでもなく、残留単量体の含量を低減し、作業性を改善するために最も好ましい。
【0027】
また、本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位を、0.1重量%超~12重量%未満、0.5重量%~10重量%、1重量%~8重量%、または1.5重量%~6重量%で含んでもよく、この範囲内であるときに、架橋剤組成物によって形成される架橋剤由来の架橋部の架橋能力が向上し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から製造された成形品の引張強度などの引張特性を向上させ、300%モジュラスを下げて着用感を改善し、耐久性および耐薬品性に優れ、作業性に優れ、ラテックス組成物の長期貯蔵安定性に優れるという効果がある。前記「重量%」で記載された2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対する含量であってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位とともに、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を含んでもよい。すなわち、本発明の一実施形態による前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位を含んでもよい。具体例として、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位40重量%~80重量%、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位10重量%~50重量%、エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体由来の繰り返し単位0.1重量%超~12重量%未満を含んでもよい。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を形成する共役ジエン系単量体は、1,3‐ブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2‐エチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体例として、1,3‐ブタジエンまたはイソプレンであってもよく、より具体的な例として、1,3‐ブタジエンであってもよい。前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を40重量%~80重量%、45重量%~80重量%、または45重量%~70重量%で含むことができ、この範囲内であるときに、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から成形されたディップ成形品が、柔軟で、着用感が優れるとともに、耐油性および引張強度に優れるという効果がある。前記「重量%」で記載された共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対する含量であってもよい。
【0030】
また、本発明の一実施形態によると、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位を形成するエチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α‐クロロニトリルおよびα‐シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体例として、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルであってもよく、より具体的な例として、アクリロニトリルであってもよい。前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位を10重量%~50重量%、15重量%~50重量%、または15重量%~45重量%で含むことができ、この範囲内であるときに、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から成形されたディップ成形品が、柔軟で、着用感が優れるとともに、耐油性および引張強度に優れるという効果がある。前記「重量%」で記載されたエチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対する含量であってもよい。
【0031】
また、本発明の一実施形態によると、前記エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を形成するエチレン性不飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基のような酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であってもよく、具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸および無水シトラコン酸などのポリカルボン酸無水物;スチレンスルホン酸のようなエチレン性不飽和スルホン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸モノ‐2‐ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和ポリカルボン酸部分エステル(partial ester)単量体からなる群から選択される1種以上であってもよく、より具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群から選択される1種以上であってもよく、さらに具体的な例として、メタクリル酸であってもよい。前記エチレン性不飽和酸単量体は、重合時に、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩などの塩の形態で使用され得る。また、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、前記エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を0.1重量%~10重量%、0.5重量%~9重量%、または2重量%~8重量%で含むことができ、この範囲内であるときに、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物から成形されたディップ成形品が、柔軟で、着用感に優れるとともに、引張強度に優れるという効果がある。前記「重量%」で記載されたエチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対する含量であってもよい。
【0032】
また、本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内の凝固物(coagulum)の含量が1重量%未満、0.9重量%未満、0.1重量%未満、または0.01重量%未満であってもよく、この範囲内であるときに、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の重合安定性およびラテックス安定性に優れ、成形品内に凝固物による物性の低下を防止するという効果がある。前記凝固物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内に存在する平均粒径74μm以上の粒子であってもよく、単量体の種類および投入時期によって発生量が減少または増加することができ、具体例として、200メッシュサイズのふるいでふるい分けた平均粒径74μm以上の粒子であってもよい。また、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内の凝固物の含量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の全含量に対する含量であってもよい。
【0033】
また、本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物は、固形分の含量(濃度)が10重量%~80重量%、30重量%~60重量%、または35重量%~55重量%であってもよく、pHが7~12、7~10、または8~9.5であってもよく、この範囲内であるときに、ラテックス安定性および貯蔵安定性に優れ、ディップ成形用のラテックス組成物の製造が容易であるという効果がある。
【0034】
また、本発明は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を製造するためのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造方法を提供する。前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造方法は、単量体混合物の全含量に対して、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を0.1重量%超~12重量%未満で含む単量体混合物を重合してカルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を製造するステップ(S10)を含み、前記単量体混合物に含まれる2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、前記(S10)ステップの重合開始の前に全量投入;重合開始の前に一部投入し、重合転化率20%~60%の時点で残量投入;または重合転化率20%~60%の時点で全量投入してもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によると、前記単量体混合物は、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、エチレン性不飽和酸単量体および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を含んでもよい。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記重合は乳化重合によって実施され得る。前記重合は、前記単量体混合物の重合によって実施され得、前記単量体混合物に含まれる各単量体は、前記で言及した単量体の種類および含量で投入され得、一括投入、または連続して投入することができる。
【0037】
一方、前記重合の際、前記単量体混合物に含まれる2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、前記重合のいかなるステップでも行われ得、重合ステップで2回以上分割して投入され得る。具体例として、前記2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、重合の前に、重合開始の前に全量を各単量体とともに重合反応器に投入してもよく、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体の一部を重合開始の前に重合反応器に1次投入し、重合開始の後に残量を投入してもよく、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を重合開始の前に投入せず、重合開始の後に全量を投入してもよい。
【0038】
より具体的な例として、前記単量体混合物に含まれる2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、前記(S10)ステップの重合開始の前に全量投入されてもよく、この場合、重合安定性に優れるという効果があり;2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、重合開始の前に一部投入し、重合転化率20%~60%、20%~50%、または20%~40%の時点で残量投入されてもよく、この場合、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体から由来した繰り返し単位がカルボン酸変性ニトリル系共重合体内に均一に分布されて、引張強度などの引張特性がさらに向上する効果があり;または2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、重合転化率20%~60%、20%~50%、または20%~40%の時点で全量投入されてもよく、この場合、未反応の単量体の含量を低減する効果がある。特に、前記2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体は、一括投入または分割投入などのすべての場合において、重合転化率60%以前、50%以前、または40%以前に全量投入されることが好ましく、この場合、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体の共重合体の形成効率を向上させ、成形品の耐久性および耐薬品性を向上させ、作業性も改善するという効果がある
本発明の一実施形態によると、前記重合転化率は、所定の時間間隔で反応中の組成物から所定量の試料を採取し、試料内の固形分の含量を測定した後、下記数学式1によって計算され得る。
【0039】
【0040】
前記数学式1中、Msは、乾燥した共重合体の重量であり、Moは、乳化剤および重合開始剤の重量の和であり、Mpは、100%重合された共重合体の重量であり、M’oは、乳化剤および重合開始剤の重量の和である。
【0041】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合は、乳化剤、重合開始剤および分子量調節剤などの存在下で実施され得る。
【0042】
前記重合が乳化剤を含んで実施される場合、前記乳化剤は、一例として、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体例として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、α‐オレフィンスルホン酸塩およびアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選択される1種以上の陰イオン界面活性剤であってもよい。また、前記乳化剤は、単量体混合物の全含量100重量部に対して、0.3重量部~10重量部、0.8重量部~8重量部、または1.5重量部~6重量部で投入され得、この範囲内であるときに、重合安定性に優れ、泡発生量が少なくて、成形品の製造が容易であるという効果がある。
【0043】
また、前記重合が重合開始剤を含んで実施される場合、前記重合開始剤は、一例として、ラジカル開始剤であってもよく、具体例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウムおよび過酸化水素などの無機過酸化物;t‐ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p‐メンタンヒドロペルオキシド、ジ‐t‐ブチルペルオキシド、t‐ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5‐トリメチルヘキサノールペルオキシドおよびt‐ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス‐2,4‐ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルおよびアゾビスイソ酪酸(ブタン酸)メチルなどの窒素化合物からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体例として、無機過酸化物であってもよく、より具体的な例として、過硫酸塩であってもよい。また、前記重合開始剤は、単量体混合物の全含量100重量部に対して0.01重量部~2重量部、または0.02重量部~1.5重量部で投入され得、この範囲内であるときに、重合速度を適正水準に維持することができるという効果がある。
【0044】
また、前記重合が分子量調節剤を含んで実施される場合、前記分子量調節剤は、一例として、α‐メチルスチレンダイマー;t‐ドデシルメルカプタン、n‐ドデシルメルカプタンおよびオクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレンおよび臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィドおよびジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体例として、t‐ドデシルメルカプタンであってもよい。また、前記分子量調節剤は、単量体混合物の全含量100重量部に対して0.1重量部~2.0重量部、0.2重量部~1.5重量部、または0.3重量部~1.0重量部で投入され得、この範囲内であるときに、重合安定性に優れ、重合後、成形品の製造時に、成形品の物性に優れるという効果がある。
【0045】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合は活性化剤を含んで実施されてもよく、前記活性化剤は、一例として、ナトリウムホルムアルデヒド、スルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。また、前記活性化剤は、単量体混合物の全含量100重量部に対して0.001重量部~5重量部で投入され得る。
【0046】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合は、媒質として、水、具体例として、脱イオン水で実施され得、重合容易性の確保のために、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、粒径調節剤、老化防止剤および酸素捕捉剤などの添加剤をさらに含んで実施され得る。本発明の一実施形態によると、前記乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤、添加剤などは、前記単量体混合物とともに、重合反応器に一括投入、または分割投入されてもよく、各投入の際、連続して投入されてもよい。
【0047】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合は、10℃~90℃、20℃~80℃、または25℃~75℃の重合温度で実施され得、この範囲内であるときに、ラテックス安定性に優れるという効果がある。
【0048】
また、本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法は、重合反応を終了してカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を取得するステップを含むことができる。前記重合反応の終了は、重合転化率90%以上、または95%以上の時点で実施され得る。また、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法は、前記重合反応の終了後、脱臭工程による未反応の単量体の除去ステップをさらに含んでもよい。
【0049】
また、本発明によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用のラテックス組成物が提供される。前記ディップ成形用のラテックス組成物は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体および架橋剤組成物を含んでもよい。本発明の一実施形態によると、前記架橋剤組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体に対して、架橋反応により架橋剤由来の架橋部を形成するためのものであってもよい。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記架橋剤組成物は、加硫剤および加硫促進剤を含んでもよく、より具体的な例として、加硫剤、加硫促進剤および酸化亜鉛を含んでもよい。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記加硫剤は、前記ディップ成形用のラテックス組成物を加硫させるためのものであり、硫黄であってもよく、具体例として、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理された硫黄および不溶性硫黄などの硫黄であってもよい。前記加硫剤の含量は、ディップ成形用のラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部(固形分基準)に対して、0.1重量部~10重量部、または1重量部~5重量部であってもよく、この範囲内であるときに、加硫による架橋能力に優れるという効果がある。
【0052】
また、本発明の一実施形態によると、前記加硫促進剤は、2‐メルカプトベンゾチアゾール(MBT、2‐mercaptobenzothiazole)、2,2‐ジチオビスベンゾチアゾール‐2‐スルフェンアミド(MBTS、2,2‐dithiobisbenzothiazole‐2‐sulfenamide)、N‐シクロヘキシルベンゾチアゾール‐2‐スルフェンアミド(CBS、N‐cyclohexylbenzothiasole‐2‐sulfenamide)、2‐モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS、2‐morpholinothiobenzothiazole)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM、tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD、tetramethylthiuram disulfide)、ジエチルジチオカルバメート亜鉛(ZDEC、zinc diethyldithiocarbamate)、ジ‐n‐ブチルジチオカルバメート亜鉛(ZDBC、zinc di‐n‐butyldithiocarbamate)、ジフェニルグアニジン(DPG、diphenylguanidine)およびジ‐o‐トリルグアニジン(di‐o‐tolylguanidine)からなる群から選択される1種以上であってもよい。前記加硫促進剤の含量は、ディップ成形用のラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部(固形分基準)に対して0.1重量部~10重量部、または0.5重量部~5重量部であってもよく、この範囲内であるときに、加硫による架橋能力に優れるという効果がある。
【0053】
また、本発明の一実施形態によると、前記酸化亜鉛は、前記ディップ成形用のラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体のカルボキシ基などとイオン結合を行って、カルボン酸変性ニトリル系共重合体内、またはカルボン酸変性ニトリル系共重合体の間イオン結合による架橋部を形成するための架橋剤であってもよい。前記酸化亜鉛の含量は、ディップ成形用のラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部(固形分基準)に対して、0.1重量部~5重量部、または0.5重量部~4重量部であってもよく、この範囲内であるときに、架橋能力に優れ、ラテックス安定性に優れ、製造されたディップ成形品の引張強度および柔軟性に優れるという効果がある。
【0054】
また、本発明の一実施形態によると、前記架橋剤組成物は、多価金属カチオン化合物を含んでもよい。本発明の一実施形態によると、前記多価金属カチオン化合物は、アルミニウムイオンとアルミニウムイオンがゆっくり溶出させるリガンドを含む化合物であってもよく、具体例として、アルミニウムグリコレート(aluminium glycolate)、アルミニウムアセチルアセトネート(aluminium acetylacetonate)、アルミニウムラクテート(aluminium lactate)およびアルミニウムタルトレート(aluminium tartrate)からなる群から選択される1種以上であってもよく、この際、アルミニウムイオンをゆっくり溶出させるリガンドは、アルミニウム使用量の1当量~3当量であってもよい。前記のように、アルミニウムカチオン化合物をイオン結合または共有結合の架橋剤として用いる場合、酸性溶液での結合弱化を防止することができ、これによって、ディップ成形品の強度の低下を防止することができるという効果がある。また、この場合、加硫促進剤の投入なしにディップ成形品の製造が可能で、加硫促進剤によるユーザの副作用を防止するという効果がある。
【0055】
また、本発明の一実施形態によると、前記多価金属カチオン化合物の含量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物100重量部(固形分基準)に対して、0.1重量部~5重量部、0.5重量部~5重量部、または0.5重量部~3重量部であってもよく、この範囲内であるときに、酸性溶液での結合弱化を防止することができ、これにより、ディップ成形品の強度の低下を防止することができるという効果がある。
【0056】
また、本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用のラテックス組成物は、一例として、固形分含量(濃度)が5重量%~40重量%、8重量%~35重量%、または10重量%~30重量%であってもよく、この範囲内であるときに、ラテックス運送の効率に優れ、ラテックス粘度の上昇を防止し、貯蔵安定性に優れるという効果がある。
【0057】
他の例として、前記ディップ成形用のラテックス組成物は、pHが9~12、9~11.5、または9.5~11であってもよく、この範囲内であるときに、ディップ成形品の製造時に加工性および生産性に優れるという効果がある。前記ディップ成形用のラテックス組成物のpHは、前記のpH調節剤の投入によって調節可能である。前記pH調節剤は、一例として、1重量%~5重量%濃度の水酸化カリウム水溶液、または1重量%~5重量%濃度のアンモニア水であってもよい。
【0058】
また、本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用のラテックス組成物は、必要に応じて、チタンジオキシドなどの顔料、シリカなどの充填剤、増粘剤、pH調節剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0059】
本発明によると、前記ディップ成形用のラテックス組成物由来の層を含む成形品が提供される。前記成形品は、前記ディップ成形用のラテックス組成物をディップ成形して製造されたディップ成形品であってもよく、ディップ成形によってディップ成形用のラテックス組成物から形成されたディップ成形用のラテックス組成物由来の層を含む成形品であってもよい。前記成形品を成形するための成形品の製造方法は、前記ディップ成形用のラテックス組成物を直接浸漬法、アノード(anode)凝着浸漬法、ティーグ(Teague)凝着浸漬法などによって浸漬するステップを含むことができ、具体例として、アノード凝着浸漬法によって実施されてもよく、この場合、均一な厚さのディップ成形品を取得することができるという利点がある。
【0060】
具体例として、前記成形品の製造方法は、ディップ成形型に凝固剤を付着させるステップ(S100)と、前記凝固剤が付着されたディップ成形型をディップ成形用のラテックス組成物に浸漬し、ディップ成形用のラテックス組成物由来の層、すなわち、ディップ成形層を形成するステップ(S200)と、前記ディップ成形層を加熱し、前記ディップ成形用のラテックス組成物を架橋させるステップ(S300)とを含むことができる。
【0061】
本発明の一実施形態によると、前記(S100)ステップは、ディップ成形型に凝固剤を形成させるために、ディップ成形型を凝固剤溶液に浸漬してディップ成形型の表面に凝固剤を付着させるステップであり、前記凝固剤溶液は、凝固剤を水、アルコールまたはこれらの混合物に溶解した溶液であり、凝固剤溶液内の凝固剤の含量は、凝固剤溶液の全含量に対して5重量%~75重量%、10重量%~65重量%、または15重量%~55重量%であってもよい。前記凝固剤は、一例として、バリウムクロライド、カルシウムクロライド、マグネシウムクロライド、亜鉛クロライドおよびアルミニウムクロライドなどの金属ハライド;バリウムナイトレート、カルシウムナイトレートおよび亜鉛ナイトレートなどの硝酸塩;バリウムアセテート、カルシウムアセテートおよび亜鉛アセテートなどの酢酸塩;およびカルシウムサルフェート、マグネシウムサルフェートおよびアルミニウムサルフェートなどの硫酸塩からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体例として、カルシウムクロライドまたはカルシウムナイトレートであってもよい。また、本発明の一実施形態によると、前記(S100)ステップは、ディップ成形型に凝固剤を付着させるために、ディップ成形型を凝固剤溶液に1分以上浸漬し、取り出した後、70℃~150℃で乾燥させるステップをさらに含んでもよい。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記(S200)ステップは、ディップ成形層を形成するために凝固剤を付着させたディップ成形型を本発明に係るディップ成形用のラテックス組成物に浸漬し、取り出してディップ成形型にディップ成形層を形成するステップであってもよい。また、本発明の一実施形態によると、前記(S200)ステップは、ディップ成形型にディップ成形層を形成するために、前記浸漬の際、浸漬を1分以上実施することができる。
【0063】
本発明の一実施形態によると、前記(S300)ステップは、ディップ成形品を取得するために、ディップ成形型に形成されたディップ成形層を加熱して液体成分を蒸発させ、前記ディップ成形用のラテックス組成物を架橋させて硬化を行うステップであってもよい。この際、本発明に係るディップ成形用のラテックス組成物を用いる場合、ディップ成形用のラテックス組成物内に含まれた架橋剤組成物の加硫および/またはイオン結合による架橋が実施され得る。また、本発明の一実施形態によると、前記加熱は、70℃~150℃で1分~10分間1次加熱した後、100℃~180℃で5分~30分間2次加熱して実施され得る。
【0064】
本発明の一実施形態によると、前記成形品は、手術用の手袋、検査用の手袋、産業用の手袋および家庭用の手袋などの手袋、コンドーム、カテータ、または健康管理用品であってもよい。
【0065】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白であり、これに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0066】
実施例
実施例1
<カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造>
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガスの引込口と、単量体、乳化剤、開始剤を連続して投入するために、投入口が備えられた10Lの高圧反応器を窒素で置換し、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン59重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート3重量%の単量体混合物100重量部と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、t‐ドデシルメルカプタン0.6重量部およびイオン交換水140重量部を投入し、38℃まで昇温した。昇温が完了した後、重合開始剤である過硫酸カリウム0.3重量部を投入して重合を行い、重合転化率が95%になったときに、ナトリウムジメチルジチオカルバメート0.1重量部を投入し、重合を停止した。次に、脱臭工程により未反応の単量体を除去し、アンモニア水、酸化防止剤および消泡剤を添加して、固形分濃度45重量%およびpH8.5のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を取得した。
【0067】
<ディップ成形用のラテックス組成物の製造>
前記取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物100重量部(固形分基準)に、硫黄1重量部、ジ‐n‐ブチルジチオカルバメート亜鉛(ZDBC、zinc di‐n‐butyldithiocarbamate)0.7重量部、酸化亜鉛1.5重量部および酸化チタン1重量部と水酸化カリウム溶液および2次蒸留水を加え、固形分濃度16重量%およびpH10のディップ成形用のラテックス組成物を取得した。
【0068】
<ディップ成形品の製造>
13重量%のカルシウムナイトレート、86.5重量%の水、0.5重量%の湿潤剤(Huntsman Corporation、Australia製、製品名:Teric 320)を混合して凝固剤溶液を製造し、この溶液に手形状のセラミックモールドを1分間浸漬し、取り出した後、80℃で3分間乾燥し、凝固剤を手形状のモールドに塗布した。
【0069】
次いで、凝固剤が塗布された手形状のモールドを前記取得したディップ成形用のラテックス組成物に1分間浸漬して取り出した後、80℃で1分間乾燥し、水に3分間浸漬した。また、モールドを80℃で3分間乾燥した後、125℃で20分間架橋させた。次に、架橋されたディップ成形層を手形状のモールドから取り出し、手袋状のディップ成形品を取得した。
【0070】
実施例2
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル30重量%、1,3‐ブタジエン58重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート6重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0071】
実施例3
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン60.5重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート1.5重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0072】
実施例4
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル30重量%、1,3‐ブタジエン58重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート6重量%の単量体混合物100重量部を投入し、この際、2‐ヒドロキシエチルメタクリレートは重合開始の前に3重量%、重合転化率が30%である時点で3重量%に、分割して投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0073】
実施例5
<カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造>
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガスの引込口と、単量体、乳化剤、開始剤を連続して投入するために、投入口が備えられた10Lの高圧反応器を窒素で置換し、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン59重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート3重量%の単量体混合物100重量部と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、t‐ドデシルメルカプタン0.6重量部およびイオン交換水140重量部を投入し、38℃まで昇温した。昇温が完了した後、重合開始剤である過硫酸カリウム0.3重量部を投入して重合を行い、重合転化率が95%になったときに、ナトリウムジメチルジチオカルバメート0.1重量部を投入し、重合を停止した。次に、脱臭工程により未反応の単量体を除去し、アンモニア水、酸化防止剤および消泡剤を添加して固形分濃度45重量%およびpH8.5のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を取得した。
【0074】
<ディップ成形用のラテックス組成物の製造>
前記取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物100重量部(固形分基準)に、アルミニウムアセチルアセトネート2重量部および酸化チタン1重量部と水酸化カリウム溶液および2次蒸留水を加え、固形分濃度16重量%およびpH10のディップ成形用のラテックス組成物を取得した
<ディップ成形品の製造>
13重量%のカルシウムナイトレート、86.5重量%の水、0.5重量%の湿潤剤(Huntsman Corporation、Australia製、製品名:Teric 320)を混合して凝固剤溶液を製造し、この溶液に手形状のセラミックモールドを1分間浸漬し、取り出した後、80℃で3分間乾燥し、凝固剤を手形状のモールドに塗布した。
【0075】
次いで、凝固剤が塗布された手形状のモールドを前記取得したディップ成形用のラテックス組成物に1分間浸漬して取り出した後、80℃で1分間乾燥し、水に3分間浸漬した。また、モールドを80℃で3分間乾燥した後、125℃で20分間架橋させた。次に、架橋されたディップ成形層を手形状のモールドから取り出し、手袋状のディップ成形品を取得した。
【0076】
実施例6
<カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造>
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガスの引込口と、単量体、乳化剤、開始剤を連続して投入するために、投入口が備えられた10Lの高圧反応器を窒素で置換し、アクリロニトリル30重量%、1,3‐ブタジエン58重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート6重量%の単量体混合物100重量部と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、t‐ドデシルメルカプタン0.6重量部およびイオン交換水140重量部を投入し、38℃まで昇温した。昇温が完了した後、重合開始剤である過硫酸カリウム0.3重量部を投入して重合を行い、重合転化率が95%になったときに、ナトリウムジメチルジチオカルバメート0.1重量部を投入し、重合を停止した。次に、脱臭工程により未反応の単量体を除去し、アンモニア水、酸化防止剤および消泡剤を添加して、固形分濃度45重量%およびpH8.5のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を取得した。
【0077】
<ディップ成形用のラテックス組成物の製造>
前記取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物100重量部(固形分基準)に、アルミニウムグリコレート2重量部および酸化チタン1重量部と水酸化カリウム溶液および2次蒸留水を加え、固形分濃度16重量%およびpH10のディップ成形用のラテックス組成物を取得した。
【0078】
<ディップ成形品の製造>
13重量%のカルシウムナイトレート、86.5重量%の水、0.5重量%の湿潤剤(Huntsman Corporation、Australia製、製品名:Teric 320)を混合して凝固剤溶液を製造し、この溶液に手形状のセラミックモールドを1分間浸漬し、取り出した後、80℃で3分間乾燥し、凝固剤を手形状のモールドに塗布した。
【0079】
次いで、凝固剤が塗布された手形状のモールドを前記取得したディップ成形用のラテックス組成物に1分間浸漬して取り出した後、80℃で1分間乾燥し、水に3分間浸漬した。また、モールドを80℃で3分間乾燥した後、125℃で20分間架橋させた。次に、架橋されたディップ成形層を手形状のモールドから取り出し、手袋状のディップ成形品を取得した。
【0080】
比較例1
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン62重量%およびメタクリル酸6重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0081】
比較例2
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル27重量%、1,3‐ブタジエン56.5重量%、メタクリル酸4.5重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート12重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0082】
比較例3
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン61.9重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート0.1重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0083】
比較例4
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル30重量%、1,3‐ブタジエン58重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルメタクリレート6重量%の単量体混合物100重量部を投入し、この際、2‐ヒドロキシエチルメタクリレートは重合開始の前に投入せず、重合転化率が70%である時点で全量(6重量%)を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0084】
比較例5
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン59重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシエチルアクリレート3重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0085】
比較例6
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン59重量%、メタクリル酸6重量%および2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート3重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0086】
比較例7
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン59重量%、メタクリル酸6重量%および4‐ヒドロキシブチルアクリレート3重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0087】
比較例8
前記実施例1で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の製造の際、同じ反応器に、単量体混合物として、アクリロニトリル32重量%、1,3‐ブタジエン59重量%、メタクリル酸6重量%および4‐ヒドロキシブチルメタクリレート3重量%の単量体混合物100重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。この際、取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分濃度は45重量%であり、pHは8.5であった。
【0088】
実験例
前記実施例1~6および比較例1~8で製造されたそれぞれのカルボン酸変性ニトリル系共重合体組成物の重合安定性および長期貯蔵安定性と、ディップ成形品の引張強度、伸び率および300%モジュラスの引張特性、耐薬品性、耐久性、シネレシスおよび総揮発性有機化合物(TVOC、Total Volatile Organic Compounds)の含量を各カルボン酸変性ニトリル系共重合体の単量体組成(重量%、単量体混合物)と投入時期(%、重合転化率)、および架橋剤組成物の種類と含量(重量部、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の固形分100重量部基準)とともに下記表1および表2に示した。
【0089】
*引張特性(引張強度、伸び率および300%モジュラス):各実施例および比較例で取得したディップ成形品を用いて、ASTM D‐412に準じてダンベル状の試験片を作製した。この試験片をUTM(Universal Testing Machine)機器を用いて伸張速度500mm/分で引っ張り、破断時の引張強度および伸び率を測定し、伸び率が300%である時の応力(300%モジュラス)を測定した。引張強度および伸び率は、高いほど引張特性に優れていることを示し、300%モジュラスは、低いほど着用感に優れていることを示す。
【0090】
*耐久性(時間(hour)):各実施例および比較例で取得したディップ成形品である手袋を着用し、手袋が破れるまでかかる時間を測定し示した。手袋の着用後、4時間以上が経過した後にも破れていない場合、耐久性が十分であると判断するため、耐久性の測定の際、測定時間は4時間を基準とした。
【0091】
*耐薬品性(分(min)):各実施例および比較例で取得したディップ成形品を用いて、EN374‐3:2003に準じて耐薬品性を測定するための試験片を作製した。この試験片を直径が51mmであり、深さが35mmである実験容器に満たされている測定しようとする化学物質であるヘキサン(hexane)と接触させ、ヘキサンが1μg/cm2/minの速度で試験片を透過するのにかかる時間を測定し示した。
【0092】
*シネレシス(分(min)):ディップ成形品の製造時に用いられた凝固剤溶液に手形状のセラミックモールドを1分間浸漬し、取り出した後、80℃で3分間乾燥し、凝固剤を手形状のモールドに塗布した。次に、凝固剤が塗布された手形状のモールドを各実施例および比較例のディップ成形用のラテックス組成物に1分間浸漬し、取り出した後、手形状のモールドから液滴(droplet)が落下するのにかかる時間を測定した。5分以内に液滴が落下しなかった場合、×で表示した。
【0093】
*ディップ成形品(手袋)の総揮発性有機化合物(TVOC、Total Volatile Organic Compounds)の含量測定(ppm):各実施例および比較例で取得したディップ成形品をテドラーバッグ(Tedlar bag)に入れた後、大気成分の空気1Lを満たし、60℃で24時間放置した。24時間後、テドラーバッグ内の空気を吸着チューブ(Tenax tube)に捕集し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS、gas chromatograph‐mass spectrometer)を用いて、捕集した空気中の揮発性有機化合物(VOC)の含量を測定し示した。
【0094】
*重合安定性(重量%):各実施例および比較例で製造されたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を、200メッシュサイズ(mesh size)のふるいでふるい分け、平均粒径74μm以上に凝固された粒子を分離し、ラテックス組成物内に形成された凝固物(coagulum)の重量を測定し、ラテックス組成物の全重量に対する重量%を計算し示した。
【0095】
*長期貯蔵安定性:各実施例および比較例でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物の重合が完了した後、3ヶ月間40%の湿度および25℃の温度の条件で保管した後、ラテックス組成物の状態を観察し、凝集されていない場合◎、固形分基準2重量%以下に凝集物が生成されている場合○、2重量%超~10重量%未満に凝集物が生成されている場合△、10重量%以上に凝集物が生成されている場合×で表示した。
【0096】
【0097】
【0098】
前記表1および表2に示されているように、本発明により製造された実施例1~6の場合、アクリロニトリル、1,3‐ブタジエンおよびメタクリル酸のみを単量体として用いて製造された比較例1に比べ、同等水準以上の引張強度、伸び率および300%モジュラスを示すとともに、耐久性および耐薬品性が非常に優れ、シネレシスが発生しなくて作業性に優れ、ディップ成形品の製造の際、不良率を低減することが可能であり、残留単量体の含量が少なく、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内の凝固物の含量が0.01重量%未満と重合安定性に優れ、長期貯蔵安定性に優れていることを確認することができた。
【0099】
一方、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を用いても、過量で投入した比較例2の場合、他の単量体の含量の減少によって引張特性が低下し、過量投入された2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体によって長期貯蔵安定性が非常に劣っていることを確認することができ、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を用いても、微量で投入した比較例3の場合には、耐久性、耐薬品性およびシネレシスの改善効果が極めて微細であることを確認できた。
【0100】
また、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を重合後期の重合転化率70%である時点で全量投入した比較例4の場合には、実施例2および実施例4と同じ含量で投入しても、耐久性および耐薬品性の改善効果は微細である反面、むしろ重合安定性および長期貯蔵安定性と、シネレシスは低下し、ディップ成形品のTVOCも増加したことを確認することができた。特に、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体を適正含量で投入しても、重合後期の重合転化率70%である時点で全量投入する場合、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物内の凝固物の含量が1重量%と示され、重合安定性が劣っていることを確認することができ、これは、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体の投入時期によって重合安定性に差があることを意味し、他の共単量体と比較して、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体の反応性が低く、重合が完了する時点まで2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体の全量が重合反応に参加することができず、残留単量体としてラテックス組成物内に存在したことから起因した。
【0101】
一方、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート係単量体を用いて、この際、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート単量体ではなく、2‐ヒドロキシエチルアクリレートを用いた比較例5、2‐ヒドロキシプロピルアクリレートを用いた比較例6、4‐ヒドロキシブチルアクリレートを用いた比較例7および4‐ヒドロキシブチルメタクリレートを用いた比較例8は、いずれも耐久性、耐薬品性およびシネレシスの改善効果が微細であるか、むしろ低下し、重合安定性が劣っており、ディップ成形品のTVOCが増加したことを確認することができた。特に、アルキル基の炭素数が高い比較例7および比較例8の場合、他の共単量体との共重合体の形成効率が劣っており、残留単量体がラテックス組成物内に存在し、沸点が高くて脱臭工程の後にも容易に除去されず、重合安定性を低下させ、ディップ成形品のTVOCを増加させるとともに、長期貯蔵安定性も劣っていることを確認することができた。
【0102】
本発明者らは、上記のような結果から、本発明に係るカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用のラテックス組成物を用いて、手袋などのディップ成形品を製造する場合、製造されたディップ成形品の引張強度を向上させ、300%モジュラスを下げて着用感を改善し、且つ、ディップ成形品の耐久性、耐薬品性および作業性を改善し、残留単量体の含量を低減することを確認することができた。