(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】低分子量アクリル系樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/00 20060101AFI20220216BHJP
C08F 20/18 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C08F2/00 Z
C08F20/18
(21)【出願番号】P 2020537190
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2019000441
(87)【国際公開番号】W WO2019139396
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0004026
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・マン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ス・ソ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-126307(JP,A)
【文献】特開平10-087712(JP,A)
【文献】特開平07-233203(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031849(WO,A1)
【文献】米国特許第04487897(US,A)
【文献】特開昭60-219203(JP,A)
【文献】特開2017-178975(JP,A)
【文献】特開平09-052922(JP,A)
【文献】特開昭58-053901(JP,A)
【文献】特公昭37-006744(JP,B1)
【文献】特公昭47-024672(JP,B1)
【文献】特開平07-324102(JP,A)
【文献】特開平08-269109(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0066083(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0345476(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
B01J 19/18、19/20
B05D 1/02
B29B 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の(メタ)アクリレート系単量体および熱開始剤を含む無溶剤型アクリル系組成物を、スクリュー撹拌機を含
み前段部と後段部からなる反応部、供給部、および排出部を含む連続流反応器で連続重合して低分子量アクリル系樹脂を製造する方法であって、
前記無溶剤型アクリル系組成物を前記供給部を介して前記反応部に供給するステップと、
前記
前段部の温度を100℃以上150℃以下に維持し、前記後段部の温度を70℃以上110℃以下に維持し、前記供給された組成物を連続重合して重量平均分子量が20,000g/mol以上150,000g/mol以下の低分子量アクリル系樹脂を形成するステップと、
前記低分子量アクリル系樹脂を前記排出部を介して排出するステップとを含
み、
前記無溶剤型アクリル系組成物は、30mL/min以上200mL/min以下の供給流量で前記反応部に供給され、
前記熱開始剤は、前記(メタ)アクリレート系単量体100重量部に対して、0.1重量部以上1重量部以下の含有量で含まれる、低分子量アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記無溶剤型アクリル系組成物は、分子量調節剤を含まない、請求項
1に記載の低分子量アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記スクリュー撹拌機の隣接する撹拌羽根間の離隔距離は、10mm以上20mm以下である、請求項1
又は2に記載の低分子量アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記スクリュー撹拌機の撹拌羽根の外郭末端から撹拌軸までの最短距離は、5mm以上10mm以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の低分子量アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記低分子量アクリル系樹脂を形成するステップは、1時間以上2時間以下の時間で行われる、請求項1~
4のいずれか一項に記載の低分子量アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記低分子量アクリル系樹脂を形成するステップは、反応部の内部圧力を5bar以下に維持させて行われる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の低分子量アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項7】
下記一般式1によって測定した前記アクリル系樹脂の転化率は、70%以上99%以下である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の低分子量アクリル系樹脂の製造方法:
[一般式1]
C=B/A×100%
前記一般式1中、Aは、低分子量アクリル系樹脂の重量(g)を意味し、Bは、前記低分子量アクリル系樹脂
を150℃の温度で50分の時間で乾燥して得られた乾燥物の重量(g)を意味し、Cは、転化率(%)を意味する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2018年1月11日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0004026号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。本発明は、低分子量アクリル系樹脂の製造方法に関する。具体的には、本発明は、無溶剤型アクリル系組成物を連続重合して低分子量アクリル系樹脂を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には多様な光学部材が粘着フィルムによって付着できる。前記粘着フィルムは、表示装置が外部環境に露出しても長い時間粘着性を維持しなければならない。このため、粘着フィルムの粘着物性、具体的には、粘着持続性を向上させるための研究が活発に行われている。特に、粘着フィルムの製造時、低分子量のアクリル系樹脂を含ませてその粘着物性を確保する方法が注目されている。
【0003】
従来は、回分式反応器(batch reactor)を用いて、アクリル系単量体、反応溶剤、鎖延長剤などを含む溶液を用いる低分子量アクリル系樹脂の製造方法が利用されている。
【0004】
ただし、回分式反応器を用いる方法は、反応溶剤および鎖延長剤が残留して、製造されたアクリル系樹脂を用いて粘着フィルムの不良を起こす問題点があった。さらに、回分式反応器を用いる方法は、重合過程で起こる発熱の問題から、反応物が分解されたり、爆発などの安全上の問題点を抱えている。
【0005】
そこで、回分式反応器を用いる方法を代替して前述した問題点を解決できるアクリル系樹脂の製造方法に関する研究が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、無溶剤型アクリル系組成物を連続流反応器で連続重合して低分子量アクリル系樹脂を製造する方法に関する。
【0008】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様は、1種以上の(メタ)アクリレート系単量体および熱開始剤を含む無溶剤型アクリル系組成物を、スクリュー撹拌機を含む反応部、供給部、および排出部を含む連続流反応器で連続重合して低分子量アクリル系樹脂を製造する方法であって、前記無溶剤型アクリル系組成物を前記供給部を介して前記反応部に供給するステップと、前記反応部の温度を70℃以上150℃以下に維持し、前記供給された組成物を連続重合して重量平均分子量が20,000g/mol以上150,000g/mol以下の低分子量アクリル系樹脂を形成するステップと、前記低分子量アクリル系樹脂を前記排出部を介して排出するステップとを含む低分子量アクリル系樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施態様に係る低分子量アクリル系樹脂の製造方法は、無溶剤型アクリル系組成物を用いることにより、残留溶媒による低分子量アクリル系樹脂の品質が低下する現象を防止することができる。
【0011】
本発明の一実施態様に係る低分子量アクリル系樹脂の製造方法は、反応器内の残留反応物の量を最小化することにより、形成された低分子量アクリル系樹脂が容易に排出できるという利点がある。
【0012】
本発明の一実施態様に係る低分子量アクリル系樹脂の製造方法は、別途の分子量調節剤を用いないので、分子量調節剤の使用によるアクリル系樹脂の経時変化の問題点を防止することができる。
【0013】
本発明の一実施態様に係る低分子量アクリル系樹脂の製造方法は、連続重合反応器を用いるので、安定的に低分子量アクリル系樹脂を製造できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施態様に係る製造方法に用いられる連続流反応器の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0016】
本明細書において、単位「重量部」は、各成分間の重量比率を意味する。
【0017】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびB、またはAまたはB」を意味する。
【0018】
本明細書において、用語「単量体」は、重合体の形成反応条件で追加的に一連の同一または異なる分子で共有結合を形成可能な物質を意味することができる。
【0019】
本明細書において、用語「(メタ)アクリレート」は、「メタクリレートまたはアクリレート」を意味する。
【0020】
本明細書において、ある化合物の「重量平均分子量」は、その化合物の分子量と分子量分布を利用して計算される。具体的には、1mlのガラス瓶にテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)と化合物を入れて化合物の濃度が1wt%のサンプル試料を用意し、標準試料(ポリスチレン、polystryere)とサンプル試料をフィルタ(ポアサイズが0.45mm)を通して濾過させた後、GPCインジェクタ(injector)に注入して、サンプル試料の溶離(elution)時間を標準試料のキャリブレーション(calibration)曲線と比較して化合物の分子量および分子量分布を得ることができる。この時、測定機器としてInfinity II 1260(Agilient社)を用いることができ、流速は1.00mL/min、カラム温度は40.0℃に設定することができる。
【0021】
本明細書において、用語「多分散指数(Poly Dispersion Index、PDI)」は、GPCによって測定されるポリスチレンに対する換算数値である重量平均分子量および数平均分子量の比であって、重量平均分子量から数平均分子量を割った値を意味する。
【0022】
本明細書において、用語「アルキル基」は、鎖状および/または枝状に結合した炭化水素を含む官能基を意味し、具体的には、炭素数1~20の鎖状および/または枝状に結合した炭化水素を含む官能基を意味する。
【0023】
本明細書において、用語「シクロアルキル基」は、環状に結合した炭化水素を含む官能基を意味し、具体的には、炭素数3~20の環状に結合した炭化水素を含む官能基を意味し、より具体的には、官能基内に不飽和結合が存在しない炭素環構造を含み、炭素数3~20の単環(monocyclic ring)または多環(polycyclic ring)を含む官能基を意味することができる。
【0024】
本明細書において、用語「隣接する撹拌羽根間の離隔距離」は、撹拌羽根のピッチ(pitch)を意味し、具体的には、いずれか1つの撹拌羽根の一側末端から、これと隣接して備えられた他の1つの撹拌羽根の一側末端までの最短距離を意味する。
【0025】
本明細書において、用語「撹拌羽根の外郭末端から撹拌軸までの最短距離」は、撹拌羽根の外郭末端の前記撹拌軸と平行な仮想の線から、前記撹拌軸の表面への垂直線の長さを意味する。
【0026】
本明細書において、用語「反応部の長さ」は、反応部の軸方向の一側末端から他側末端までの最大距離を意味する。また、用語「反応部の直径」は、反応部の半径方向の一側末端から他側末端までの最大距離を意味する。
【0027】
本明細書において、用語「連続重合」は、前述した連続流反応器内の単量体が連続的な流体の流れ(continuous flow of fluid)によって重合されることを意味することができる。
【0028】
本発明の一実施態様は、1種以上の(メタ)アクリレート系単量体および熱開始剤を含む無溶剤型アクリル系組成物を、スクリュー撹拌機を含む反応部、供給部、および排出部を含む連続流反応器で連続重合して低分子量アクリル系樹脂を製造する方法であって、前記無溶剤型アクリル系組成物を前記供給部を介して前記反応部に供給するステップと、前記反応部の温度を70℃以上150℃以下に維持し、前記供給された組成物を連続重合して重量平均分子量が20,000g/mol以上150,000g/mol以下の低分子量アクリル系樹脂を形成するステップと、前記低分子量アクリル系樹脂を前記排出部を介して排出するステップとを含む低分子量アクリル系樹脂の製造方法を提供する。
【0029】
以下、
図1を参照して、本発明の一実施態様に係る低分子量アクリル系樹脂の製造方法を詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施態様に係る製造方法に用いられる連続流反応器の断面を示す図である。
【0031】
本発明の一実施態様に係る製造方法に用いられる前記連続流反応器10は、反応部100、供給部200、および排出部300を含み、前記反応部、供給部、および排出部は、互いに連続的に連結されたものであってもよい。また、前記反応部100は、スクリュー撹拌機101を含み、前記スクリュー撹拌機101は、前記反応部の一側末端から他側末端まで連結された撹拌軸102と、前記撹拌軸の周りに沿って備えられた複数の撹拌羽根103とを含むことができる。前記複数の撹拌羽根は、互いに離隔して備えられ、前記撹拌羽根は、前記撹拌軸に巻き付けられた(wound)形態で備えられる。そして、前記連続流反応器10は、恒温槽400内に備えられる。また、前記反応部100の温度は、前記恒温槽の熱媒供給部401を介して供給され、熱媒排出部402に沿って排出される熱媒の温度に応じて調節可能である。すなわち、前記熱媒供給部401に一定範囲の温度を有する熱媒を供給し、前記熱媒排出部402を介して前記供給された熱媒を排出することにより、前記反応部100の温度を一定範囲内に維持することができる。一方、前記熱媒は、当業界で熱運搬の媒体として用いられる流体を意味することができ、後述する反応部100の温度範囲を維持するために用いられるものであれば、公知の物質の中から自由に選択可能である。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記撹拌羽根の末端は、前記反応部の内壁と離隔したものであってもよく、具体的には、前記撹拌羽根の末端は、前記反応部の内壁と接しないものであってもよい。これによって、前記スクリュー撹拌機の撹拌時、撹拌羽根によって反応部の内壁が損傷する問題点を防止することができる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記連続流反応器は、ステンレス鋼(steel use stainless、SUS)で形成されたものであってもよい。これによって、外部の熱媒(heat medium)を介して供給された熱エネルギーが前記連続流反応器に高い効率で伝達される。
【0034】
本発明の一実施態様は、無溶剤型アクリル系組成物を供給部200を介して反応部100に供給するステップを含む。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記無溶剤型アクリル系組成物を前記反応部に供給するステップにおいて、前記無溶剤型アクリル系組成物を30mL/min以上200mL/min以下の供給流量(feed flow rate)で供給することができる。前記無溶剤型アクリル系組成物の供給流量が前記範囲内の場合、前記無溶剤型アクリル系組成物から前記低分子量アクリル系樹脂への連続重合反応が円滑に起こり得る。
【0036】
また、本発明の一実施態様によれば、前記連続流反応器に供給される前記無溶剤型アクリル系組成物の流体挙動は、乱流(turbulent flow)であってもよい。すなわち、前記無溶剤型アクリル系組成物に含まれる成分の組成は、前記連続流反応器の半径方向(radial direction)によっては変化しなくてよく、前記連続流反応器の軸方向(axial direction)によって変化するものであってよい。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記無溶剤型アクリル系組成物は、1種以上の(メタ)アクリレート系単量体および熱開始剤を含む。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記(メタ)アクリレート系単量体は、アルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体、シクロアルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体、および極性官能基含有(メタ)アクリレート系単量体のうちの少なくとも1つを含むことができる。すなわち、前記低分子量アクリル系樹脂は、前記アクリル系単量体のうちの少なくとも1つを重合して製造されるものであってもよい。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記アルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体は、(メタ)アクリレート系単量体にアルキル基が結合したものであってもよい。また、前記シクロアルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体は、(メタ)アクリレート系単量体にシクロアルキル基が結合したものであってもよい。さらに、前記極性官能基含有(メタ)アクリレート系単量体は、極性官能基が結合したものであってもよい。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、前記アルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体は、メタクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、およびイソオクチル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記シクロアルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体は、シクロヘキシルアクリレート(CHA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、イソボルニルメタクリレート(IBOMA)、イソボルニルメチル(メタ)アクリレート、および3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(TMCHA、3,3,5-trimethylcyclohexylacrylate)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記極性官能基含有(メタ)アクリレート系単量体は、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体、および窒素含有(メタ)アクリレート系単量体のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0043】
具体的には、前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、および2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0044】
また、前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、2-カルボキシエチルアクリル酸、3-カルボキシプロピルアクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、およびアクリル酸二重体のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、前記窒素含有(メタ)アクリレート系単量体は、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリルアミドのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記無溶剤型アクリル系組成物は、熱開始剤を含むことにより、前記無溶剤型アクリル系組成物に含まれた1種以上の(メタ)アクリレート系単量体の低分子量アクリル系樹脂への重合反応が開始される。前記熱開始剤は、加熱によって架橋を促進する開始剤で、例えば、アゾ系熱開始剤およびパーオキシ系熱開始剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記アゾ系熱開始剤は、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)[V-59、Wako社]、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)[V-60、Wako社]、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)[V-65、Wako社]、4,4-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、および2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)[V-70、Wako]などであってもよい。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、前記熱開始剤は、前記(メタ)アクリレート系単量体100重量部に対して、0.1重量部以上1重量部以下の含有量で含まれる。具体的には、前記熱開始剤の含有量は、前記(メタ)アクリレート系単量体100重量部に対して、0.2重量部以上1重量部以下、0.2重量部以上0.7重量部以下、0.2重量部以上0.5重量部以下、0.5重量部以上0.7重量部以下、0.3重量部以上0.7重量部以下、0.3重量部以上0.5重量部以下、0.3重量部以上1重量部以下、0.7重量部以上1重量部以下、0.5重量部以上1重量部以下、または0.2重量部以上0.3重量部以下であってもよい。
【0049】
前記熱開始剤の含有量が前記範囲内の場合、前記(メタ)アクリレート系単量体の重合反応が開始されるだけでなく、過重合を防止することにより、前記アクリル系樹脂の重量平均分子量範囲を確保することができる。
【0050】
本発明の一実施態様によれば、前記無溶剤型アクリル系組成物は、重合反応に必要な別途の溶剤(溶媒、solvent)を含まないものを意味する。すなわち、前記低分子量アクリル系樹脂は、前記無溶剤型アクリル系組成物を、溶液重合ではない、塊状(バルク)重合して製造されるものであってもよい。前記溶剤は、重合反応に要求される溶剤で、当業界でアクリル系樹脂を製造するために使用できる溶剤であって、公知のものを意味することができる。前記アクリル系組成物が別途の溶剤を含まないことにより、低分子量アクリル系樹脂が残留溶媒によって品質が低下するのを防止することができる。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記無溶剤型アクリル系組成物は、分子量調節剤を含まないものであってもよい。一方、分子量調節剤は、重合反応で添加されることにより、重合速度には影響を与えず、重合生成物の分子量を増加または減少させる物質を意味することができる。前記無溶剤型アクリル系組成物が分子量調節剤を含まない場合、アクリル系樹脂の経時変化の問題点を防止することができる。
【0052】
本発明の一実施態様に係る低分子量アクリル系樹脂の製造方法は、分子量調節剤を含まない無溶剤型アクリル系組成物を用いながらも、アクリル系樹脂が硬化(ゲル化)される問題点、工程過程でハンドリングが難しい問題点、および反応器内にアクリル系樹脂が残留して重合転化率が減少する問題点を解決できるという利点がある。実質的に分子量調節剤を含まないというのは、分子量調節剤を1ppm未満で含む場合を意味することができる。
【0053】
本発明の一実施態様に係る無溶剤型アクリル系組成物は、分子量調節剤を含まないので、前記低分子量アクリル系樹脂は、分子量調節剤に由来する残留物を含まない。
【0054】
本発明の一実施態様は、反応部100の温度を70℃以上150℃以下に維持し、供給された組成物を連続重合して重量平均分子量が20,000g/mol以上150,000g/mol以下の低分子量アクリル系樹脂を形成するステップを含む。
【0055】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂を形成するステップは、前記反応部の温度を70℃以上150℃以下に維持して行われるものである。具体的には、前記反応部の温度を70℃以上130℃以下、70℃以上120℃以下、80℃以上150℃以下、80℃以上130℃以下、80℃以上120℃以下、90℃以上150℃以下、90℃以上130℃以下、または90℃以上120℃以下に維持して行われるものであってもよい。前記反応部の温度が前記範囲内の場合、前記無溶剤型アクリル系組成物の低分子量アクリル系樹脂への連続重合が円滑に行われる。具体的には、前記反応部の温度が前記範囲未満の場合、反応部内の無溶剤型アクリル系組成物の残留量が増加する問題点が発生しうる。また、前記反応部の温度が前記範囲を超える場合、前記無溶剤型アクリル系組成物が過重合されて反応部内にアクリル系樹脂が硬化された状態で残留する問題点が発生するだけでなく、前記反応部の温度上昇によって反応部が爆発する問題点が発生しうる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記反応部の長さおよび直径の比は、14:1~28:1であってもよい。前記反応部の長さおよび直径の比が前記範囲内の場合、前記反応部内の温度制御が容易であり得、供給された無溶剤型アクリル系組成物が前記反応部に残留しない。これによって、前記無溶剤型アクリル系組成物が低分子量アクリル系樹脂に十分に重合できる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記反応部100に含まれるスクリュー撹拌機101の撹拌軸102が回転するに伴ってスクリュー撹拌機に含まれる複数の撹拌羽根が回転して、前記反応部に供給された前記無溶剤型アクリル系組成物が混合され、これによって前記低分子量アクリル系樹脂の連続重合が可能である。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記スクリュー撹拌機の隣接する撹拌羽根間の離隔距離(以下、撹拌羽根のピッチ)は、10mm以上20mm以下であってもよい。また、本発明の一実施態様によれば、前記スクリュー撹拌機の撹拌羽根の外郭末端から前記撹拌軸までの最短距離は、5mm以上10mm以下であってもよい。
【0059】
前記撹拌羽根のピッチおよび前記撹拌羽根の外郭末端から前記撹拌軸までの最短距離が前記範囲を満足する場合、無溶剤型アクリル系組成物の低分子量アクリル系樹脂への連続重合反応が円滑に行われる。具体的には、無溶剤型アクリル系組成物の低分子量アクリル系樹脂への連続重合反応の発熱制御が容易であり得、製造される低分子量アクリル系樹脂が本発明の一実施態様に係る重量平均分子量、転化率および多分散指数範囲を有するようにする。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂を形成するステップは、スクリュー撹拌機の撹拌速度を50rpm以上150rpm以下に維持して行われる。一方、前記撹拌速度は、前記スクリュー撹拌機に含まれる撹拌羽根の時間(単位:分)あたりの回転数を意味する。前記撹拌速度が前記範囲内の場合、前記低分子量アクリル系樹脂への連続重合が円滑に行われ、製造された低分子量アクリル系樹脂が反応器内で滞らず十分に排出される。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂を形成するステップは、1時間以上2時間以下の時間で行われる。すなわち、前記無溶剤型アクリル系組成物から前記低分子量アクリル系樹脂への連続重合反応時間が1時間以上2時間以下であってもよい。前記連続重合反応時間が前記範囲内の場合、前記低分子量アクリル系樹脂が円滑に形成され、前記低分子量アクリル系樹脂の発熱制御がされず硬化(ゲル化)される現象を防止することができ、これによる連続重合反応の安定性を確保することができる。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂を形成するステップは、反応部の内部圧力を5bar以下、具体的には、0bar超過5bar以下、1bar以上5bar以下、1.5bar以上5bar以下、1.5bar以上4.5bar以下、1.5bar以上4bar以下、1.5bar以上3bar以下、または1.5bar以上2bar以下に維持させて行われる。前記反応部の内部圧力が前記範囲内の場合、前記低分子量アクリル系組成物の前記低分子量アクリル系樹脂への連続重合反応が安定的に行われる。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、前記反応部は、前段部と後段部とからなる。一方、本明細書において、前記前段部は、前記反応部の軸方向の一側末端から前記反応部の中間地点までを意味し、前記後段部は、前記反応部の中間地点から前記反応部の軸方向の他側末端までを意味する。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂を形成するステップは、前記前段部と前記後段部の温度を同一または異なって維持し、前記無溶剤型アクリル系組成物を連続重合させることができる。具体的には、前記低分子量アクリル系樹脂を形成するステップは、前記前段部の温度を100℃以上150℃以下に維持し、前記後段部の温度を70℃以上110℃以下に維持し、前記供給された組成物を連続重合するものであってもよい。前記反応部の前段部と後段部を特定温度に維持する場合、前記低分子量アクリル系組成物の前記低分子量アクリル系樹脂への連続重合反応が安定的に行われる。一方、前記前段部の温度は、第1恒温槽の第1熱媒供給部を介して供給され、第1熱媒排出部に沿って排出される熱媒の温度に応じて調節可能であり、前記後段部の温度は、第2恒温槽の第2熱媒供給部を介して供給され、第2熱媒排出部に沿って排出される熱媒の温度に応じて調節可能である。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、前記前段部と前記後段部それぞれのスクリュー撹拌機の撹拌羽根のピッチと、前記スクリュー撹拌機の撹拌羽根の外郭末端から前記撹拌軸までの最短距離は、同一でも異なっていてもよい。具体的には、前記前段部と前記後段部それぞれのスクリュー撹拌機の撹拌羽根のピッチは、独立して10mm以上20mm以下であってもよい。また、前記前段部と前記後段部それぞれのスクリュー撹拌機の撹拌羽根の外郭末端から前記撹拌軸までの最短距離は、独立して5mm以上10mm以下であってもよい。
【0066】
本発明の一実施態様は、前記低分子量アクリル系樹脂を排出部300を介して排出するステップを含む。
【0067】
発明の一実施態様によれば、前記連続流反応器の反応部で生成された低分子量アクリル系樹脂は、前記連続流反応器の供給部を介して排出されることにより得られる。また、前記低分子量アクリル系樹脂が排出されなければ、形成された低分子量アクリル系樹脂が前記連続流反応器の内部に滞留することがある。これによって、前記連続流反応器の内部圧力が増加して前記低分子量アクリル系樹脂の重合安定性が低下し、低分子量アクリル系樹脂の生産性が減少する問題点が発生しうる。
【0068】
本発明の一実施態様によれば、前記無溶剤型アクリル系組成物が連続流反応器の供給部に供給される流量と、前記低分子量アクリル系樹脂が前記連続流反応器の排出部から排出される流量は、同一であってよい。すなわち、本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂を排出するステップは、前記形成されたアクリル系樹脂を30mL/min以上200mL/min以下の排出流量で前記排出部を介して排出するものであってもよい。
【0069】
また、この場合、前記連続流反応器は、定常状態(steady-state)を維持することができる。すなわち、本発明の一実施態様に係る低分子量アクリル系樹脂の製造方法において、前記低分子量アクリル系樹脂の生成速度は、時間によって変化しないものであってもよい。
【0070】
以下、前記製造方法により製造された低分子量アクリル系樹脂についてより詳細に説明する。
【0071】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂は、前記(メタ)アクリレート系単量体をモノマー単位として含むことができる。すなわち、前記(メタ)アクリレート系単量体は、前記低分子量アクリル系樹脂に形成される過程で前記低分子量アクリル系樹脂に繰り返し単位で含まれる。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、前記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、20,000g/mol以上150,000g/mol以下である。具体的には、前記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、25,000g/mol以上150,000g/mol以下、25,000g/mol以上130,000g/mol以下、35,000g/mol以上130,000g/mol以下、45,000g/mol以上150,000g/mol以下、45,000g/mol以上130,000g/mol以下、25,000g/mol以上35,000g/mol以下、または25,000g/mol以上34,000g/mol以下であってもよい。前記低分子量アクリル系樹脂が前記範囲の重量平均分子量を有することにより、前記低分子量アクリル系樹脂が粘着組成物に含まれる場合、優れた付着力を発揮することができ、多様な光学素材に適用可能である。
【0073】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂の多分散指数は、5以下、具体的には、2以上5以下、2以上3.5以下、2.5以上5以下、2.5以上3.5以下、2.9以上3.3以下、または2.9以上3.1以下であってもよい。前記低分子量アクリル系樹脂が前述した範囲の多分散指数を有することは、前記低分子量アクリル系樹脂への連続重合過程で、熱伝達が均一に行われたことを意味することができる。
【0074】
本発明の一実施態様によれば、下記一般式1によって測定した前記低分子量アクリル系樹脂の転化率は、70%以上99%以下、具体的には、70%以上90%以下、より具体的には、70%以上80%以下、70%以上79%以下、71%以上79%以下、83.5%以上85%以下、または84%以上85%以下であってもよい。
【0075】
[一般式1]
C=B/A×100%
【0076】
一般式1中、Aは、低分子量アクリル系樹脂の重量(g)を意味し、Bは、低分子量アクリル系樹脂の乾燥物の重量(g)を意味し、Cは、転化率(%)を意味する。
【0077】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂の乾燥物は、前記低分子量アクリル系樹脂を約150℃の温度で約50分の時間で乾燥して得られたものであってもよい。
【0078】
前記低分子量アクリル系樹脂が前述した範囲の転化率を有することは、供給された無溶剤型アクリル系組成物が反応部にほとんど残留せず、大部分低分子量アクリル系樹脂に連続重合されたことを意味することができる。
【0079】
本発明の他の実施態様は、前記製造方法により製造された低分子量アクリル系樹脂を提供する。
【0080】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量アクリル系樹脂は、前述した低分子量アクリル系樹脂と同一であってよい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0082】
[実施例1]
スクリュー撹拌機を含む前段部(長さ:500mm)とスクリュー撹拌機を含む後段部(長さ:500mm)とからなる反応部、前記反応部の一側末端に備えられた供給部、および前記反応部の他側末端に備えられた排出部を含む連続流反応器を用意した。前記前段部のスクリュー撹拌機の撹拌羽根のピッチは10mmであり、前記撹拌羽根の外郭末端から前記撹拌軸までの最短距離は5mmであった。そして、前記後段部のスクリュー撹拌機の撹拌羽根のピッチは20mmであり、前記撹拌羽根の外郭末端から前記撹拌軸までの最短距離は10mmであった。
【0083】
第1熱媒供給部および第1熱媒排出部を含む第1恒温槽内に前記連続流反応器の前段部が位置するように、第2熱媒供給部および第2熱媒排出部を含む第2恒温槽内に前記連続流反応器の後段部が位置するように、前記連続流反応器を位置させた。
【0084】
52重量部の2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、38重量部のイソボルニルアクリレート(IBOA)、および10重量部のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の総和100重量部に対して、0.2重量部のアゾ系熱開始剤[2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル);V-65、Wako]を含む無溶剤型アクリル系組成物を用意した。
【0085】
前記第1恒温槽の第1熱媒供給部および第1熱媒排出部を介して熱媒(heat medium)のシリコーンオイルを循環させて、前段部の温度を105℃に維持させた。また、前記第2恒温槽の第2熱媒供給部および第2熱媒排出部を介して熱媒のシリコーンオイルを循環させて、後段部の温度を105℃に維持させた。
【0086】
その後、前記連続流反応器の供給部を介して前記無溶剤型アクリル系組成物を前記反応部に200mL/minの流量で供給した。
【0087】
反応部内のスクリュー撹拌機の撹拌速度を50rpm~150rpmに調節し、1時間塊状(バルク)で連続重合して低分子量アクリル系樹脂を形成した。その後、形成された前記低分子量アクリル系樹脂を前記連続流反応器の排出部を介して供給流量と同一の流量で排出して低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0088】
[実施例2]
熱開始剤の含有量を0.5重量部に調節し、1時間5分間塊状(バルク)で連続重合したことを除けば、実施例1と同様の方法で低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0089】
[実施例3]
熱開始剤の含有量を1重量部に調節し、1時間15分間塊状(バルク)で連続重合したことを除けば、実施例1と同様の方法で低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0090】
[実施例4]
熱開始剤の含有量を0.3重量部に調節したことを除けば、実施例1と同様の方法で低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0091】
[実施例5]
熱開始剤の含有量を0.5重量部に調節したこと、後段部の撹拌羽根のピッチが10mmであり、撹拌羽根の外郭末端から撹拌軸までの最短距離が5mmであること、および1時間20分間塊状(バルク)で連続重合したことを除けば、実施例1と同様の方法で低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0092】
[実施例6]
第2恒温槽の第2熱媒供給部および第2熱媒排出部を介して熱媒のシリコーンオイルを循環させて、後段部の温度を70℃に維持させたことと、2時間塊状(バルク)で連続重合したことを除けば、実施例5と同様の方法で低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0093】
[実施例7]
熱開始剤の含有量を0.7重量部に調節したことを除けば、実施例6と同様の方法で低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0094】
[比較例1]
回分式ガラス反応器に、52重量部の2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、38重量部のイソボルニルアクリレート(IBOA)、および10重量部のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を投入し、1時間窒素を投入して反応器内の空気を除去した後、水循環ヒータを用いて反応器の温度を上昇させた。そして、反応器の温度が40℃~80℃に到達した時、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の総和100重量部に対して、0.2重量部のアゾ系熱開始剤[2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル);V-70、Wako]を投入して前記回分式ガラス反応器内の重合反応を誘導した。
【0095】
ただし、この場合、反応器の温度が140℃を超えて、重合反応を強制終結し、低分子量アクリル系樹脂を得ることができなかった。
【0096】
[比較例2]
別途のスクリュー撹拌機を備えていない反応部、前記反応部の一側末端に備えられた供給部、および前記反応部の他側末端に備えられた排出部を含む連続流反応器を用意した。
【0097】
前記連続流反応器を熱媒供給部および熱媒排出部を含む恒温槽内に位置させた。
【0098】
52重量部の2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、38重量部のイソボルニルアクリレート(IBOA)、および10重量部のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の総和100重量部に対して、0.2重量部のアゾ系熱開始剤[2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル);V-70、Wako]を含む無溶剤型アクリル系組成物を用意した。
【0099】
前記恒温槽の熱媒供給部および排出部を介して105℃の熱媒(heat medium)を循環させた。その後、前記連続流反応器の供給部を介して前記無溶剤型アクリル系組成物を前記反応部に供給した。
【0100】
前記反応部の温度を105℃に維持し、低分子量アクリル系樹脂を形成した。その後、前記連続流反応器の排出部を介して排出して低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0101】
[比較例3]
52重量部の2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、38重量部のイソボルニルアクリレート(IBOA)、および10重量部のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の総和100重量部に対して、0.06重量部の光重合開始剤(Irgacure184、CIBA)、0.12重量部の分子量調節剤(イソオクチル-チオグリコレート)、および30重量部のエチルアセテート溶剤を含む溶剤型アクリル系組成物を用意した。
【0102】
前記溶剤型アクリル系組成物を回分式ガラス反応器に投入し、メタルハライドランプを用いて、5時間光照射することにより、低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0103】
[比較例4]
52重量部の2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、38重量部のイソボルニルアクリレート(IBOA)、および10重量部のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を投入し、1時間窒素を投入して反応器内の空気を除去した後、水循環ヒータを用いて反応器の温度を上昇させた。そして、反応器の温度が40℃~80℃に到達した時、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の総和100重量部に対して、0.002重量部のアゾ系熱開始剤[2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル);V-70、Wako]、および0.12重量部の分子量調節剤(ドデシルメルカプタン)を投入して前記回分式ガラス反応器内の重合反応を誘導して低分子量アクリル系樹脂を製造した。
【0104】
[実験例1]-重量平均分子量および多分散指数の測定
実施例1~実施例7および比較例2~比較例4による低分子量アクリル系樹脂をテトラヒドロフラン溶媒に溶かして前記低分子量アクリル系樹脂の濃度が1wt%の試料を製造した。
【0105】
前記試料の重量平均分子量および多分散指数をGPC(Agilnet1260)を用いて測定し、これを下記表1に示した。
【0106】
[実験例2]-転化率の測定
実施例1~実施例7および比較例2~比較例4による低分子量アクリル系樹脂0.1g(A)を採取して試料を製造した。
【0107】
前記試料を150℃のオーブンに50分間乾燥した後の重量(B)を測定し、前記一般式1によって転化率を計算して、下記表1に示した。
【0108】
【0109】
表1によれば、実施例1~実施例7による低分子量アクリル系樹脂の製造方法は、高い転化率で重量平均分子量20,000g/mol~150,000g/molの低分子量アクリル系樹脂を製造できることを確認することができた。特に、前段部と後段部の温度を異なって調節した実施例6および実施例7による低分子量アクリル系樹脂は、重量平均分子量が小さく、転化率が非常に優れていることを確認することができた。
【0110】
一方、回分式ガラス反応器を用いた比較例1による方法は、反応器の温度が140℃以上に増加するので、安全上の問題から、重合反応を強制終結し、この場合、低分子量アクリル系樹脂を製造できないことを確認することができた。
【0111】
スクリュー撹拌機を備えていない連続流反応器を用いた比較例2の製造方法によれば、低分子量体の製造は可能であるが、製造された低分子量アクリル系樹脂の転化率が約65%であって、本発明の一実施態様に係る範囲に達していないことを確認することができた。また、比較例2での重合方法により形成された低分子量アクリル系樹脂は、反応部から十分に排出されないことが分かった。さらに、比較例2での重合方法は、重合安定性に劣り、長時間重合時、圧力が急速に増加して量産工程への適用には不適切な問題点があった。
【0112】
分子量調節剤を含む溶剤型アクリル系組成物を回分式ガラス反応器で光重合して製造された比較例3の場合、溶剤および分子量調節剤を除去する別途の工程が必要になる問題点があった。そして、前記比較例3の場合、反応時間が長くて量産工程への適用には不適切な問題点があった。
【0113】
分子量調節剤を含む無溶剤型アクリル系組成物を回分式ガラス反応器で光重合して製造された比較例4の場合、反応熱制御が円滑に行われず低い転化率を有する問題点があった。
【0114】
前記内容をまとめると、本発明の一実施態様に係る低分子量アクリル系樹脂の製造方法により、短時間の反応時間でも高い転化率および低い多分散指数を有し、重量平均分子量が20,000g/mol~150,000g/molの低分子量アクリル系樹脂を安定的に製造できることが分かる。また、無溶剤型アクリル系組成物を用いるので、残留溶媒による低分子量アクリル系樹脂の品質低下を防止できることが分かる。
【符号の説明】
【0115】
10:連続流反応器
100:反応部
101:スクリュー撹拌機
102;撹拌軸
103:撹拌羽根
200:供給部
300:排出部
400:恒温槽
401:熱媒供給部
402:熱媒排出部