(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】接合装置および接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220217BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220217BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
B23K20/00 310L
B23K20/00 310P
(21)【出願番号】P 2017186416
(22)【出願日】2017-09-27
【審査請求日】2020-08-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「マイクロチップレーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平等 拓範
(72)【発明者】
【氏名】近藤 聖彦
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-134899(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060274(WO,A1)
【文献】特開2014-113633(JP,A)
【文献】特開2007-088241(JP,A)
【文献】特開2003-008182(JP,A)
【文献】特開2009-212215(JP,A)
【文献】特開2009-212214(JP,A)
【文献】特開2015-211130(JP,A)
【文献】特開2016-122702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/683
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、前記第一基板と別体の第二基板とを、前記第一基板および前記第二基板の表面を活性化することにより接合する接合装置であって、
軸方向の一方の端部に前記第一基板を保持する第一保持部と、
前記第一保持部と対向して設けられ、前記第二基板を保持する第二保持部と、
自在継手部を挟んで前記第一保持部と一体に接続されている接続保持部と、
前記第一保持部および前記接続保持部を一体に、前記第二保持部に対して接近または離間する方向へ駆動する駆動機構部と、
前記第一保持部に設けられ、前記第一保持部から径方向外側へ突出している鍔形状部と、
前記接続保持部に設けられ、軸方向において両側から前記鍔形状部を挟み込み、前記鍔形状部を収容する収容部と、
前記接続保持部に設けられ、前記第一保持部の軸方向において前記鍔形状部の一方の面に接し、前記鍔形状部を軸方向へ押し付ける押付部材と、
前記接続保持部において前記鍔形状部を挟んで前記押付部材と反対側に設けられ、前記第一保持部の軸方向において前記鍔形状部の他方の面に接し、前記押付部材によって押し付けられる前記鍔形状部を支持する支持部材と、
を備える接合装置。
【請求項2】
前記押付部材の中心軸と前記支持部材の中心軸とは一致している請求項1記載の接合装置。
【請求項3】
前記第一保持部および前記第二保持部を収容するチャンバと、
前記チャンバの内部を減圧する減圧機構部と、
をさらに備える請求項1または2記載の接合装置。
【請求項4】
前記チャンバの内部に設けられ、前記第一基板の表面および前記第二基板の表面を処理するビームを発するビーム照射部をさらに備える請求項3記載の接合装置。
【請求項5】
前記押付部材は、
前記収容部を形成する前記接続保持部に移動可能に設けられている本体と、
前記本体の前記鍔形状部側の端部に旋回可能に設けられ、前記鍔形状部と接する接触部材と、
を有する請求項1から4のいずれか一項記載の接合装置。
【請求項6】
前記支持部材は、
前記第一保持部の軸方向へ伸縮可能な弾性部材と、
前記弾性部材の前記鍔形状部側の端部に設けられ、前記鍔形状部と接する部分が球面状に形成されている接触部材と、
を有する請求項1から5のいずれか一項記載の接合装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基板を接合する接合装置および接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの基板を接合する技術として比較的高温かつ高圧で接合する拡散接合が広く用いられている。拡散接合の場合、接合時に接合体に加わる温度は、この接合体の使用時の温度よりも高くなる。そのため、接合体は、接合時と大きく異なる温度環境下で用いられることとなり、使用時における歪みや特性の変化が避けられない。例えばパワーレーザの発振装置のように光学的な装置に用いる場合、温度環境の変化にともなうわずかな歪みが性能の大幅な低下を招くおそれがある。
【0003】
近年では、このような拡散接合の問題を解決するために、被接合体の表面をイオンビームなどで活性化することにより接合する表面活性化による接合が実用化されている。この表面活性化による接合は、拡散接合に比較して常温に近い温度や使用条件にあわせた任意の温度での接合が可能となる。これにより、接合体は、接合時と使用時との温度差が小さくなり、歪みや特性の変化が低減される。このような表面活性化による接合を用いた接合装置は、広く提案されている。
【0004】
しかしながら、これら従来の提案は、微小な2つの被接合体を接合する技術の提案に留まっている。ところで、2つの被接合体を接合する場合、接合する被接合体は接合時において互いの面の間で高精度な平行を確保する必要がある。つまり、接合される2つの被接合体の表面は、平行度を高精度で維持しつつ接することが求められる。従来のような微小な被接合体の場合、表面の平行度が接合に与える影響は小さい。ところが、被接合体が大型化するほど、被接合体の表面の平行度は、接合体の接合性能に与える影響が大きくなる。そのため、被接合体が大きくなるほど表面の高度な平行度が要求され、接合体の大型化を妨げているという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2791429号明細書
【文献】特開2002-313688号公報
【文献】特開2006-337619号公報
【文献】特許第5549108号明細書
【文献】特許第6045972号明細書
【0006】
【文献】勝俣、市川、庄司「界面に無反射コーティングを有する常温接合Nd:YAG/ダイアモンド複合構造レーザーの高効率・高出力動作」第64回応用物理学会春季学術講演会 15p-213-8(2017.3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、対向する一対の基板の平行度が高められ、大型の基板でも安定した接合を達成する接合装置および接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明では、第一基板を保持する第一保持部は、自在継手部を挟んで接続保持部と接続している。これにより、第一保持部は、接続保持部に対する姿勢が変化する。また、第一保持部に設けられている鍔形状部は、接続保持部に設けられている押付部材と支持部材との間に挟み込まれている。そのため、第一保持部に設けられている鍔形状部は、押付部材の押付力を調整することにより、押付部材と支持部材との間に固定される。鍔形状部を固定することにより、第一基板を保持する第一保持部は、接続保持部に対する姿勢が固定される。
【0009】
第一基板と第二基板との接合に先立って、第一保持部に保持されている第一基板は第二保持部に保持されている接合対象となる第二基板に押し当てられる。このとき、第一基板と第二基板とが接することにより、第一基板を保持する第一保持部は、自在継手部を支点として旋回し、第二基板にあわせた姿勢となる。すなわち、第一基板と第二基板とが接することにより、第一基板と第二基板とは平行が確保される。そして、第一基板を保持する第一保持部は、接続保持部に対する姿勢が第二基板にあわせて変化している。このように第一保持部の姿勢が変化した状態で鍔形状部を挟み込む押付部材の押付力を調整することにより、接続保持部に対する第一保持部の姿勢は固定される。接続保持部に対する第一保持部の姿勢を固定することにより、第一基板と第二基板とが一旦離間した後に再び接する場合でも、第一基板を保持する第一保持部は、第二基板の姿勢に合わせた姿勢が維持される。その結果、第一保持部に保持されている第一基板は、第二基板との間の平行度が維持されている。したがって、対向する一対の第一基板と第二基板との平行度を高めることができ、大型の基板でも平行度を容易に確保して安定した接合を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による接合装置の要部を示す概略図
【
図2】一実施形態による接合装置の概略的な構成を示す模式図
【
図3】一実施形態による接合装置の要部を示す模式的な断面図
【
図4】一実施形態による接合装置による接合体の接合手順を示す模式図
【
図5】一実施形態による接合装置による接合体の接合手順を示す模式図
【
図6】一実施形態による接合装置による接合体の接合手順を示す模式図
【
図7】一実施形態による接合装置による接合体の接合手順の他の実施形態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、接合装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図2に示す接合装置10は、チャンバ11、真空ポンプ12およびターボ分子ポンプ13を備えている。チャンバ11は、気密の容器であり、真空ポンプ12およびターボ分子ポンプ13によって内部が減圧される。チャンバ11の内部は、ターボ分子ポンプ13を用いることにより、10
-6Pa程度の超高真空状態まで減圧される。チャンバ11は、図示しない建物などの設備に固定されている。真空ポンプ12およびターボ分子ポンプ13は、減圧機構部に相当する。
【0012】
接合装置10は、上記に加え、第一保持部21、第二保持部22、接続保持部23、駆動機構部24、ビーム照射部25およびビーム照射部26を備えている。第一保持部21は、軸方向の一方の端部に第一基板31を保持する。第二保持部22は、第一保持部21と対向して設けられており、第二基板32を保持する。第二保持部22は、チャンバ11に対して固定されている。接続保持部23は、第一保持部21と接続している。駆動機構部24は、接続している第一保持部21および接続保持部23を一体に駆動する。本実施形態の場合、駆動機構部24は、一体の第一保持部21および接続保持部23を、第一保持部21の軸方向へ往復駆動する。すなわち、駆動機構部24は、第一保持部21を、第二保持部22に対して接近または離間する方向へ駆動する。これにより、第一保持部21に保持されている第一基板31と第二保持部22に保持されている第二基板32との間の距離は、駆動機構部24による第一保持部21および接続保持部23の駆動によって変化する。
【0013】
ビーム照射部25およびビーム照射部26は、例えばFAB(Fast Atom Bombardment、またはFast Atom Beam)法などによりイオンビームを発生する。ビーム照射部25は、第一保持部21に保持された第一基板31にビームを照射する。ビーム照射部25から第一基板31にビームを照射することにより、第一基板31は表面処理が施される。同様に、ビーム照射部26は、第二保持部22に保持された第二基板32にビームを照射する。ビーム照射部26から第二基板32にビームを照射することにより、第二基板32は表面処理が施される。
【0014】
第一基板31および第二基板32は、異種の材料または同種の材料とすることができる。例えばレーザー発振素子の接合を行なう場合、第一基板31はNd:YAGなどのレーザー発振材料であり、第二基板32はダイアモンドやサファイアなどの放熱材料である。なお、第一基板31を放熱材料とし、第二基板32を発振材料としてもよい。また、例えば非線形光学材料として用いられる結晶面が異なる水晶のように、同種の材料を第一基板31および第二基板32としてもよい。このように、第一基板31および第二基板32の材料は、任意に選択することができる。
【0015】
次に、接合装置10の要部について
図1、
図3に基づいて説明する。
接合装置10は、鍔形状部41、収容部42、押付部材43および支持部材44をさらに備えている。鍔形状部41は、第一保持部21に設けられている。鍔形状部41は、第一保持部21から径方向外側へ突出している。鍔形状部41は、第一保持部21の周方向の全周にわたり連続する円環状に設けてもよく、周方向へ不連続に設けてもよい。また、本実施形態の場合、鍔形状部41は、第一保持部21の端部、すなわち軸方向において第二保持部22とは反対側の端部に円環状に突出して設けられている。つまり、本実施形態の場合、第一保持部21は、軸方向において一方の端部に第一基板31を保持し、他方の端部に鍔形状部41を有している。なお、鍔形状部41は、第一保持部21の軸方向の端部に限らず、軸方向の途中に設けてもよい。
【0016】
第一保持部21は、自在継手部45を挟んで接続保持部23と一体に接続されている。第一保持部21は、接続保持部23との間に自在継手部45が配置されることにより、自在継手部45を支点として旋回することができる。これにより、第一保持部21と接続保持部23とは、自在継手部45を支点として相対的な姿勢が変化する。接続保持部23は、駆動機構部24によって軸方向すなわち
図1および
図2の上下に駆動される。そのため、接続保持部23は、第一保持部21と一体になって軸方向へ移動する。接続保持部23は、
図2に示すようにチャンバ11に設けられている案内部46に沿って移動する。そのため、接続保持部23は、チャンバ11に対する姿勢は変化しない。これにより、接続保持部23は、チャンバ11に固定されている第二保持部22との間にも、姿勢の変化が生じない。すなわち、接続保持部23は、第二保持部22に保持されている第二基板32に対する姿勢を維持したまま軸方向へ移動する。なお、自在継手部45は、
図1に示す構成に限らず、第一保持部21と接続保持部23との姿勢を変更可能であれば任意の構成とすることができる。
【0017】
接続保持部23は、収容部42を有している。収容部42は、接続保持部23の第二保持部22側の端部に設けられている。本実施形態の場合、収容部42は、軸方向において鍔形状部41を挟み込む第一壁部421および第二壁部422を有している。第一壁部421は、接続保持部23から径方向外側へ突出している。第二壁部422は、第一壁部421の第二保持部22側に第一壁部421と平行に設けられている。鍔形状部41は、これら第一壁部421と第二壁部422との間に挟み込まれている。鍔形状部41は、
図3に示すように第一壁部421と対向する第一面411と、第二壁部422と対向する第二面412を有している。第一壁部421と第二壁部422とは、接続壁部423によって接続されている。これにより、収容部42は、第一壁部421、第二壁部422および接続壁部423によって一体に形成されている。鍔形状部41の軸方向の厚さは、第一壁部421と第二壁部422との間の距離よりも小さい。また、鍔形状部41の外径は、収容部42の内径よりも小さい。そのため、収容部42に収容された鍔形状部41は、収容部42の内部において姿勢を変化させることができる。なお、第一壁部421および第二壁部422は、接続保持部23の周方向へ連続していてもよく、不連続であってもよい。
【0018】
押付部材43は、接続保持部23に設けられている。具体的には、押付部材43は、第一壁部421を貫いて設けられており、先端が鍔形状部41の第一面411に接する。押付部材43は、鍔形状部41に接することにより、収容部42に収容されている鍔形状部41を軸方向へ押し付ける。すなわち、本実施形態の場合、押付部材43は、鍔形状部41を第二保持部22側に押し付ける。
【0019】
本実施形態の場合、押付部材43は、本体431および接触部材432を有している。本体431は、外壁に雄ねじを有している。押付部材43の雄ねじが第一壁部421に形成された雌ねじと噛み合うことにより、押付部材43は第一壁部421を軸方向へ移動可能である。これにより、押付部材43は、ねじを締め込むことにより鍔形状部41側へ移動し、鍔形状部41を第二保持部22側に押し付ける。押付部材43は、収容部42の周方向において2つ以上設けられている。押付部材43は、収容部42の周方向へ3つ以上設けることが好ましい。押付部材43を収容部42の周方向へ3つ設けることにより、押付部材43で押し付けられる鍔形状部41の位置が安定する。
【0020】
接触部材432は、本体431の鍔形状部41側の端部に設けられている。これにより、接触部材432は、鍔形状部41の第一面411に接触可能である。接触部材432は、外壁の一部が球面状に形成されており、本体431の内側で旋回可能である。接触部材432は、先端つまり鍔形状部41側に平坦面433を有しており、この平坦面433が鍔形状部41の第一面411に接することにより、姿勢が安定する。なお、
図3に示す押付部材43は、本実施形態の一例であり、例えばボルトや圧入部材などのように鍔形状部41を軸方向へ押し付け可能な構成であれば、この例に限らず任意の構成とすることができる。
【0021】
支持部材44は、鍔形状部41を挟んで押付部材43と反対側に設けられている。すなわち、支持部材44は、第二壁部422を貫いて設けられており、先端が鍔形状部41の第二面412に接している。これにより、支持部材44は、押付部材43によって押し付けられている鍔形状部41を押付部材43と反対側から支持している。支持部材44は、その中心軸が押付部材43の中心軸と一致することが好ましい。支持部材44と押付部材43の中心軸が一致することにより、鍔形状部41に加わる力が安定し、鍔形状部41の予期しない傾きなどを低減することができる。
【0022】
本実施形態の場合、支持部材44は、本体441、弾性部材442および接触部材443を有している。本体441は、第二壁部422にねじ止めされている。弾性部材442は、軸方向すなわち第一保持部21の軸方向へ伸縮可能である。弾性部材442は、コイルばね、皿ばね、ゴムなど、弾性力を生じるものであれば適用することができる。接触部材443は、弾性部材442の鍔形状部41側の端部に設けられている。これにより、接触部材443は、鍔形状部41の第二面412に接触可能である。接触部材443は、鍔形状部41つまり第二面412と接する部分が球面状に形成されている。本実施形態の場合、接触部材443は球状に形成されている。なお、
図3に示す支持部材44は、本実施形態の一例であり、押付部材43の押し付け力に抗して鍔形状部41を反対側から支持可能であれば、この例に限らず任意の構成とすることができる。例えば、支持部材44は、接触部材443を廃して、弾性部材442のみで構成してもよい。また、ゴムなどの弾性体で接触部材443および弾性部材442を一体化した支持部材44としてもよい。さらに、支持部材44は、弾性部材442を廃して接続保持部23と一体に第二壁部422から突出する形状としてもよい。
【0023】
次に、上記の構成による接合装置10による第一基板31と第二基板32との接合方法について説明する。
(基板保持工程)
図4に示すように第一基板31は、第一保持部21に保持される。同様に、第二基板32は、第二保持部22に保持される。第一基板31および第二基板32は、チャックや吸引などによってそれぞれ第一保持部21および第二保持部22に保持される。第一基板31および第二基板32が保持されると、駆動機構部24は、一体となった第一保持部21および接続保持部23を第二保持部22側へ駆動する。これにより、第一保持部21に保持されている第一基板31は、第二保持部22に保持されている第二基板32に接近する。
【0024】
(位置決め工程)
図5に示すように位置決め工程では、駆動機構部24は、一体となった第一保持部21および接続保持部23を第二保持部22側に駆動する。これにより、第一保持部21に保持された第一基板31と、第二保持部22に保持された第二基板32とは、互いに接する。すなわち、第一基板31は、第二基板32に押し当てられる。このとき、第一基板31が第二基板32に接する力は、実際の接合時に比較して小さく設定されている。また、押付部材43は緩められている。そのため、第一保持部21は、自在継手部45を支点として自由に旋回可能である。
【0025】
第二保持部22に保持されている第二基板32は、接合装置10の寸法的な公差や第二基板32自身の個体差などによって微小な傾斜を含んでいる。第一基板31を第二基板32に軽く押し当てることにより、第一保持部21に保持されている第一基板31は、この微小な傾斜を含む第二基板32の姿勢にあわせて姿勢が変化する。すなわち、上述のように第一基板31を保持する第一保持部21は自在継手部45を支点として旋回可能であることから、第一保持部21は保持する第一基板31の姿勢にあわせて姿勢が変化する。そして、第一基板31と第二基板32とが軽く押し当てられ、第一保持部21に保持された第一基板31の姿勢が第二基板32に合致している状態、つまり第一基板31と第二基板32との面平行が確保されているとき、押付部材43は鍔形状部41側へ進められる。周方向へ複数設けられている押付部材43は、すべて鍔形状部41側へ進められる。本実施形態の場合、雄ねじが形成されている押付部材43を回転することにより、押付部材43は鍔形状部41側へ移動する。鍔形状部41は、押付部材43と反対側が支持部材44で支持される。これにより、鍔形状部41は、押付部材43と支持部材44との間に挟み込まれる。
【0026】
このように、押付部材43を鍔形状部41へ押し付けることにより、第一保持部21と接続保持部23とは姿勢が固定される。すなわち、自在継手部45を支点として旋回する第一保持部21と接続保持部23とは、鍔形状部41を押付部材43と支持部材44とで挟み込むことにより、その位置関係が固定される。ここで、第二基板32を保持する第二保持部22は、チャンバ11および駆動機構部24を通して接続保持部23との姿勢が一定に維持されている。そのため、第一保持部21と接続保持部23との姿勢を固定することにより、第一基板31の姿勢は、第二保持部22に保持されている第二基板32に対して固定される。すなわち、第一基板31の位置は、第二基板32に対し、平行が確保される位置として決定される。そして、第一保持部21と接続保持部23との間の姿勢は、押付部材43によって固定される。
【0027】
(ビーム照射工程)
押付部材43による第一保持部21と接続保持部23との姿勢の固定が完了すると、
図6に示すように駆動機構部24は一体となった第一保持部21および接続保持部23を
図6の上方へ駆動する。これにより、第一基板31は、第二基板32から離間する。第一保持部21および接続保持部23が予め設定された位置まで移動してからチャンバ11内を減圧した後、ビーム照射部25およびビーム照射部26はビームを照射する、すなわち、ビーム照射部25は第一基板31にビーム51を照射し、ビーム照射部26は第二基板32にビーム52を照射する。これにより、第一基板31および第二基板32の表面は、ビーム51またはビーム52によって表面処理が施される。
【0028】
(接合工程)
ビーム照射部25によるビーム51の照射およびビーム照射部26によるビーム52の照射が完了すると、再び
図5に示すように駆動機構部24は一体となった第一保持部21および接続保持部23を下方へ駆動する。これにより、第一基板31は、第二基板32に接近し、接触する。そして、駆動機構部24は、第一基板31と第二基板32との接触力が予め設定された設定値となるように第一保持部21および接続保持部23を下方の第二保持部22側へ押し付ける。これにより、第一保持部21に保持されている第一基板31は、設定値で第二基板32に押し付けられる。このとき、上述の位置決め工程で説明したように第一保持部21と接続保持部23との姿勢を固定しているため、第一保持部21に保持されている第一基板31は、第二基板32との平行度が維持されている。そのため、第一基板31と第二基板32とは、精度の高い平行度で接する。
【0029】
駆動機構部24は、予め設定された時間、第二基板32に対して設定値を維持して第一基板31を押し付け、第一基板31と第二基板32とを接合する。第一基板31と第二基板32との接合が完了すると、駆動機構部24は再び第一保持部21および接続保持部23を一体に上方へ移動する。これにより、第一保持部21に保持されている第一基板31と第二保持部22に保持されている第二基板32との接合は終了する。
【0030】
(変形例)
上記による接合手順の変形例について説明する。
上記の実施形態では、第一基板31と第二基板32とから2層の接合体を形成した。変形例では、2層以上の多層の基板を積層する例を
図7に基づいて説明する。
図7に示す変形例の場合、(A)に示すように第一基板に相当する基板61と第二基板に相当する基板62とが接合体63として接合された後、(B)に示すように接合体63はそのまま第二保持部22に保持される。すなわち、第一保持部21による基板61の保持を解除することにより、第一保持部21および接続保持部23が第二保持部22から離れるとき、基板61と基板62とが接合された接合体63はそのまま第二保持部22に保持された状態となる。このように、第二保持部22に接合体63を保持した状態で第一保持部21は
図7の上方へ移動する。そして、(C)に示すように、この第一保持部21に新たに被接合体64が保持される。この場合、第二保持部22に保持された接合体63は第二基板に相当し、第一保持部21に新たに保持された被接合体64は第一基板に相当する。
【0031】
第一保持部21に新たに被接合体64が保持されると、この被接合体64および第二保持部22に保持された接合体63は、ビーム照射部25およびビーム照射部26からビームが照射される。これにより、被接合体64および接合体63の表面処理が施される。そして、被接合体64を保持している第一保持部21および接続保持部23は、(D)に示すように第二保持部22側へ移動する。これにより、第一保持部21に保持されている被接合体64は、第二保持部22に保持されている接合体63に接合される。
【0032】
(A)に示すように最初に基板61と基板62とを接合する際、上述の実施形態のように基板61と基板62との平行度は接合に先立って調整されている。すなわち、接続保持部23に対する第一保持部21の姿勢は、基板61と基板62との接合に先立つ位置決め工程ですでに固定されている。つまり、ロットが共通する各基板を用いる場合、接合装置10の寸法的な公差や各基板の公差など平行度の確保に影響を与える要素は、最初に基板61と基板62とを接合する際に調整される。そのため、第二段階として(D)において接合体63に新たな被接合体64を接合する場合、接続保持部23に対する第一保持部21の姿勢を調整することなく、接合体63と被接合体64とが接合される。(E)に示すように、接合体63と被接合体64との接合体65も、第二保持部22に保持される。この(A)~(E)の工程を繰り返すことにより、3層以上の多層の接合体を連続的に形成することができる。また、(A)の工程に先立って位置決め工程を実施することにより、3層以上の多層の接合体を形成する場合、高精度に平行度を確保しつつ確実な接合が達成されるとともに、処理工数の低減が図られる。
【0033】
当然ながら接合体の層の数が増加するにつれて微小な誤差が蓄積され、平行度の維持が困難になることも考えられる。このように誤差の蓄積が予想される場合、当初の実施形態の通り、ビーム照射部25、26からビームの照射を行なう前に、2つの被接合体を仮に押し当てて第一保持部21と接続保持部23との姿勢を調整する構成としてもよい。
【0034】
以上説明した一実施形態では、第一基板31を保持する第一保持部21は、自在継手部45を挟んで接続保持部23と接続している。これにより、第一保持部21は、接続保持部23に対する姿勢を変更可能である。また、第一保持部21に設けられている鍔形状部41は、接続保持部23に設けられている押付部材43と支持部材44との間に挟み込まれている。そのため、第一保持部21に設けられている鍔形状部41は、押付部材43の押付力を調整することにより、押付部材43と支持部材44との間に固定される。鍔形状部41を固定することにより、第一基板31を保持する第一保持部21は、接続保持部23に対する姿勢が固定される。
【0035】
第一基板31と第二基板32との接合に先立って、第一保持部21に保持されている第一基板31は第二保持部22に保持されている接合対象となる第二基板32に押し当てられる。このとき、第一基板31と第二基板32とが接することにより、第一基板31を保持する第一保持部21は、自在継手部45を支点として旋回し、第二基板32にあわせた姿勢となる。すなわち、第一基板31と第二基板32とが接することにより、第一基板31と第二基板32とは面平行が確保される。そして、第一基板31を保持する第一保持部21は、接続保持部23に対する姿勢が第二基板32にあわせて変化している。このように第一保持部21の姿勢が変化した状態で鍔形状部41を挟み込む押付部材43の押付力を調整することにより、接続保持部23に対する第一保持部21の姿勢は固定される。接続保持部23に対する第一保持部21の姿勢を固定することにより、第一基板31と第二基板32とが一旦離間した後に再び接する場合でも、第一基板31を保持する第一保持部21は、第二基板32に合わせた姿勢が維持される。その結果、第一保持部21に保持されている第一基板31は、第二基板32との間の面の平行度が維持されている。したがって、対向する一対の第一基板31と第二基板32との平行度を高めることができ、第一基板31および第二基板32が大型化しても平行度を容易に確保して安定した接合を達成することができる。
【0036】
一実施形態では、ビーム照射部25から第一基板31へ、およびビーム照射部26から第二基板32へイオンビームなどのビームを照射することにより、第一基板31および第二基板32の表面処理を施している。これにより、第一基板31および第二基板32が大型化しても、表面活性化による接合が可能となる。そのため、第一基板31と第二基板32とは、任意の温度環境下において接合される。その結果、接合時の温度条件を第一基板31と第二基板32との接合体の使用時に合わせることができる。このように接合時の温度条件を接合体の使用時の温度条件に合わせることにより、使用時において接合体に生じる歪みや特性の変化が低減される。したがって、接合によって得られた接合体の特性が安定し、光学的および物理的な精度の高い接合体を得ることができる。特に、レーザー発振素子などのように使用時の温度条件によって効率の変化が大きな材料などの場合、温度環境によって性能に与える影響を大きく抑えることができる。そして、本実施形態のようにビームの照射に先立って第一基板31と第二基板32とを軽く接触させつつ第一保持部21の位置を決定する構成を利用することにより、寸法の大きなレーザー発振素子が得られる。その結果、レーザー発振素子から照射されるレーザー光の高出力化を図ることができる。
【0037】
一実施形態では、押付部材43は、本体431の先端に旋回可能な接触部材432を有している。また、支持部材44は、鍔形状部41に接する接触部材443が球面状に形成されている。これにより、収容部42に収容されている鍔形状部41は、第一保持部21と接続保持部23との姿勢が固定されている状態でも、極めて微小な姿勢の変化が許容される。また、支持部材44が弾性部材442などの弾性部分を有することによっても、鍔形状部41の微小な姿勢の変化が許容される。そのため、接合装置10の公差に比較して十分に小さな寸法誤差が第一基板31および第二基板32に生じていても、その誤差は収容部42における鍔形状部41の姿勢の変化によって吸収される。すなわち、第一基板31および第二基板32の微小な寸法誤差にともなう第一保持部21と接続保持部23との微小な姿勢の変化は、収容部42における鍔形状部41の姿勢の変化によって吸収される。その結果、第一基板31と第二基板32を連続的に接合する場合、第一保持部21と接続保持部23との姿勢を固定した状態でも、接合ごとに第一保持部21と接続保持部23との姿勢を調整することなく、第一基板31と第二基板32との平行度が確保される。したがって、複数の第一基板31と第二基板32とを繰り返し接合するとき、あるいは多層の基板を連続的に接合するとき、接合ごとに調整を行なうことなく、高精度な平行度を確保することができ、工数の低減を図ることができる。
【0038】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
上述の一実施形態では、第一保持部21と第二保持部22とが重力方向つまり垂直方向に配置される例について説明した。しかし、第一保持部21と第二保持部22とは、垂直方向に限らず、水平方向に配置してもよい。
【0039】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0040】
図面中、10は接合装置、11はチャンバ、12は真空ポンプ(減圧機構部)、13はターボ分子ポンプ(減圧機構部)、21は第一保持部、22は第二保持部、23は接続保持部、24は駆動機構部、25、26はビーム照射部、31は第一基板、32は第二基板、41は鍔形状部、42は収容部、43は押付部材、44は支持部材、45は自在継手部、431は本体、432は接触部材、442は弾性部材、443は接触部材を示す。