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特許7025877受信チャンネル同期装置および受信チャンネル同期制御プログラム、ならびに、放送受信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】受信チャンネル同期装置および受信チャンネル同期制御プログラム、ならびに、放送受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20220217BHJP
   H04N 21/438 20110101ALI20220217BHJP
   H04N 21/4425 20110101ALI20220217BHJP
   H04H 20/22 20080101ALI20220217BHJP
   H04H 40/18 20080101ALI20220217BHJP
   H04H 60/27 20080101ALI20220217BHJP
   H04H 60/42 20080101ALI20220217BHJP
   H04H 60/50 20080101ALI20220217BHJP
   H04H 60/51 20080101ALI20220217BHJP
【FI】
H04B7/08 372B
H04N21/438
H04N21/4425
H04H20/22
H04H40/18
H04H60/27
H04H60/42
H04H60/50
H04H60/51
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017186075
(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2019062428
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)日本放送協会(NHK広島放送局及びNHK松山放送局)が平成29年4月21日に発行した「第27回 中国四国地方 放送技術報告会 予稿」において予稿発表 (2)日本放送協会(NHK広島放送局及びNHK松山放送局)が平成29年5月17日~18日に開催した「第27回 中国四国地方放送技術報告会」において、平成29年5月17日に講演発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡 章
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-028561(JP,A)
【文献】特開2011-223439(JP,A)
【文献】国際公開第2010/131637(WO,A1)
【文献】特開2012-231317(JP,A)
【文献】特開2004-297142(JP,A)
【文献】国際公開第2011/142113(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
H04N 21/438
H04N 21/4425
H04H 20/22
H04H 40/18
H04H 60/27
H04H 60/42
H04H 60/50
H04H 60/51
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、それぞれのアンテナで受信する放送信号を合成するダイバーシティ受信装置との間に備えられ、同じ放送番組を放送する放送局の系統として中継局により異なる物理チャンネルで送信される放送信号を、前記複数のアンテナで受信して、前記ダイバーシティ受信装置に出力する受信チャンネル同期装置であって、
前記系統ごとに、予め定めた大きさの地域メッシュの区分単位で、前記区分で受信可能な放送信号を送信する1以上の中継局について、前記系統に対応する物理チャンネルと、前記放送信号の伝搬遅延時間と、前記放送信号の送信出力とを設定した中継局データベースを予め記憶した記億手段と、
緯度および経度の位置情報を計測する位置計測手段と、
前記複数のアンテナに対応した複数の信号変換手段と、
視聴者によって選択された前記系統において、前記位置計測手段で計測された位置情報に対応する前記地域メッシュの区分で受信可能な物理チャンネルの受信を前記複数の信号変換手段に割り当てて予め定めた周波数のチャンネル信号に変換させ、前記伝搬遅延時間の最も遅い信号に同期するように前記複数の信号変換手段を制御する制御手段と、を備え
前記制御手段は、前記複数の信号変換手段を、前記送信出力の大きさの割合に応じて、それぞれの中継局の物理チャンネルの受信に割り当てることを特徴とする受信チャンネル同期装置。
【請求項2】
前記信号変換手段は、
前記制御手段で割り当てられた物理チャンネルの放送信号を前記予め定めた周波数のチャンネル信号に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段で変換されたチャンネル信号を、前記制御手段から指示される時間だけ遅延させる遅延時間調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信チャンネル同期装置。
【請求項3】
コンピュータを、請求項1または請求項2に記載の受信チャンネル同期装置として機能させるための受信チャンネル同期制御プログラム。
【請求項4】
複数のアンテナを介して、放送信号を受信する放送受信装置であって、
同じ放送番組を放送する放送局の系統ごとに、予め定めた大きさの地域メッシュの区分単位で、前記区分で受信可能な放送信号を送信する1以上の中継局について、前記系統に対応する物理チャンネルと、前記放送信号の伝搬遅延時間と、前記放送信号の送信出力とを設定した中継局データベースを予め記憶した記億手段と、
緯度および経度の位置情報を計測する位置計測手段と、
前記複数のアンテナに対応した複数の信号変換手段と、
視聴者によって選択された前記系統において、前記位置計測手段で計測された位置情報に対応する前記地域メッシュの区分で受信可能な物理チャンネルの受信を前記複数の信号変換手段に割り当てて予め定めた周波数のチャンネル信号に変換させ、前記伝搬遅延時間の最も遅い信号に同期するように前記複数の信号変換手段を制御する制御手段と、
前記複数の信号変換手段で同期した放送信号をダイバーシティ合成するダイバーシティ受信手段と、を備え
前記制御手段は、前記複数の信号変換手段を、前記送信出力の大きさの割合に応じて、それぞれの中継局の物理チャンネルの受信に割り当てることを特徴とする放送受信装置。
【請求項5】
前記信号変換手段は、
前記制御手段で割り当てられた物理チャンネルの放送信号を前記予め定めた周波数のチャンネル信号に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段で変換されたチャンネル信号を、前記制御手段から指示される時間だけ遅延させる遅延時間調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項に記載の放送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる物理チャンネルで送信される同じ放送番組の放送信号を同期して受信するための受信チャンネル同期装置および受信チャンネル同期制御プログラム、ならびに、放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の地上デジタル放送は、伝送方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を採用している。そのため、放送信号を伝送するネットワークは、SFN(Single Frequency Network)やMFN(Multi Frequency Network)で構成することが可能である。
SFNは、複数の中継局が重複する放送サービスエリア内で同じ物理チャンネル(周波数)で放送を行うネットワーク構成である。MFNは、複数の中継局が重複する放送サービスエリア内で異なる物理チャンネルで放送を行うネットワーク構成である。なお、日本の地上デジタル放送では、フェージングの影響等、地域の状況に応じてSFNおよびMFNを使い分けているが、多くの地域でMFNを採用している。
【0003】
MFNは、図9(a)に示すように、隣接する複数の中継局S(ここでは、中継局S、中継局S)が、それぞれ異なる物理チャンネル(周波数)で放送を行う。
この場合、図9(b)に示すように、中継局Sは、Xチャンネルで放送を行い、中継局Sは、中継局Sとは異なる物理チャンネルであるYチャンネルで放送を行う。そのため、各放送エリアを移動する移動体の端末で放送を視聴しようとすると、選局する物理チャンネルを切り替えなければならない。
【0004】
例えば、図10に示すように、中継局Sの放送エリア内を自動車で走行中に、車内の放送受信装置(不図示)で、ある放送番組を視聴していた場合、中継局Sと中継局Sとの間で、XチャンネルからYチャンネルに物理チャンネルを変更する必要がある。その場合、放送受信装置は、放送信号として受信可能な物理チャンネル(ここでは、Yチャンネル)を探索するため、その探索期間中、放送番組が停止してしまう。
【0005】
このような問題を解決するため、中継局(送信塔)の位置情報とサービスエリア情報とをテーブルで保持し、移動中に放送受信装置が最も近い中継局を選択して放送信号を受信する手法が開示されている(特許文献1参照)。
また、従来、マルチパス環境下でフェージングの影響を抑えるため、複数のアンテナで放送信号を受信し合成するダイバーシティ受信の技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-219701号公報
【文献】特開2004-297142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された発明のように、予めテーブルで保持している最も近い中継局のチャンネルを選局する手法は、中継局の送信出力がすべて同じではないため、たとえ、近い中継局のチャンネルを選局したとしても、受信レベルが低くなり、正常に放送信号を受信することができない場合があるという問題がある。
また、特許文献1に記載された発明は、フェージングを考慮していないため、マルチパス環境において放送信号の劣化が生じてしまう。
【0008】
なお、特許文献1に記載された発明に、特許文献2に記載された発明のようなダイバーシティ受信の技術を取り込んだとしても、最も近い中継局から受信した放送信号の受信レベルが最も高いとは限らず、受信レベルが低くなってしまうことで正常に放送信号を受信することができないという問題を解決することはできない。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、MFNの構成において、異なる物理チャンネルで送信される同じ放送番組の放送信号を、受信レベルの低下を抑えて受信することが可能な受信チャンネル同期装置および受信チャンネル同期制御プログラム、ならびに、放送受信装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係る受信チャンネル同期装置は、複数のアンテナと、それぞれのアンテナで受信する放送信号を合成するダイバーシティ受信装置との間に備えられ、同じ放送番組を放送する放送局の系統(放送サービス区分)として中継局により異なる物理チャンネルで送信される放送信号を、前記複数のアンテナで受信して、前記ダイバーシティ受信装置に出力する受信チャンネル同期装置であって、記億手段と、位置計測手段と、信号変換手段と、制御手段と、を備える構成とした。
【0011】
かかる構成において、受信チャンネル同期装置は、系統ごとに、予め定めた大きさの地域メッシュの区分単位で、その区分で受信可能な放送信号を送信する1以上の中継局について、系統に対応する中継局の物理チャンネルと、当該中継局から送信される放送信号の伝搬遅延時間と、放送信号の送信出力とを設定した中継局データベースを予め記憶手段に記憶しておく。
この中継局データベースを参照することで、地域メッシュの位置で、同じ放送番組で異なる物理チャンネルで送信している中継局を認識することが可能になる。
そして、受信チャンネル同期装置は、位置計測手段によって、現在位置の緯度および経度の位置情報を計測する。これによって、現在位置に対応する地域メッシュを特定することができる。
【0012】
そして、受信チャンネル同期装置は、制御手段によって、視聴者が選択した系統において、位置計測手段で計測された位置情報に対応する地域メッシュの区分で受信可能な物理チャンネルの受信を、複数の信号変換手段に割り当てて予め定めた周波数(中間周波数)のチャンネル信号に変換させる。さらに、受信チャンネル同期装置は、制御手段によって、周波数変換後のチャンネル信号を、伝搬遅延時間の最も遅い信号に同期するように複数の信号変換手段を制御する。このとき、制御手段は、複数の信号変換手段を、送信出力の大きさの割合に応じて、それぞれの中継局の物理チャンネルの受信に割り当てる。
【0013】
このように、受信チャンネル同期装置は、同じ放送番組を送信する異なる物理チャンネルを同じ周波数の放送信号に変換し同期させることができる。これによって、後段のダイバーシティ受信装置においてダイバーシティ合成を行うことが可能になる。
なお、受信チャンネル同期装置は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるための受信チャンネル同期制御プログラムで動作させることができる。
【0014】
また、前記課題を解決するため、本発明に係る放送受信装置は、複数のアンテナを介して、放送信号を受信する放送受信装置であって、記億手段と、位置計測手段と、信号変換手段と、制御手段と、ダイバーシティ受信手段と、を備える構成とした。
【0015】
かかる構成において、放送受信装置は、系統ごとに、予め定めた大きさの地域メッシュの区分単位で、その区分で受信可能な放送信号を送信する1以上の中継局について、系統に対応する中継局の物理チャンネルと、当該中継局から送信される放送信号の伝搬遅延時間と、放送信号の送信出力とを設定した中継局データベースを予め記憶手段に記憶しておく。
そして、放送受信装置は、位置計測手段によって、現在位置の緯度および経度の位置情報を計測する。
【0016】
そして、放送受信装置は、制御手段によって、視聴者が選択した系統において、位置計測手段で計測された位置情報に対応する地域メッシュの区分で受信可能な物理チャンネルの受信を、複数の信号変換手段に割り当てて予め定めた周波数のチャンネル信号に変換させる。さらに、放送受信装置は、制御手段によって、周波数変換後のチャンネル信号を、伝搬遅延時間の最も遅い信号に同期するように複数の信号変換手段を制御する。このとき、制御手段は、複数の信号変換手段を、送信出力の大きさの割合に応じて、それぞれの中継局の物理チャンネルの受信に割り当てる。
そして、放送受信装置は、信号合成手段によって、複数の信号変換手段で同期した放送信号をダイバーシティ合成する。
これによって、放送受信装置は、MFNの構成において、異なる物理チャンネルで放送される複数の中継局から送信される放送信号を合成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、MFNの構成において、異なる物理チャンネルで送信される同じ放送番組の放送信号を、周波数が同じで同期した放送信号に変換し、合成することができる。
これによって、本発明を移動体受信で使用する場合、移動中であっても、移動地点における複数の中継局の異なる物理チャンネルの放送信号を合成することができるため、再生する放送番組の劣化を抑えることができる。
また、本発明を固定受信で使用する場合、複数の中継局の異なる物理チャンネルの放送信号を合成することができるため、フェージングの影響を抑え、再生する放送番組の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る放送受信装置の構成を示すブロック構成図である。
図2】地域メッシュの領域を説明するための図であって、(a)は1次メッシュ、(b)は2次メッシュ、(c)は3次メッシュ、(d)は4次メッシュの領域を示す。
図3】中継局データベースの構造例を示すデータ構造図である。
図4】4つの信号変換手段にチャンネルを割り当てる例を説明するための図であって、(a)は、Xchを3つの信号変換手段、Ychを1つの信号変換手段に割り当てた例、(b)は、Xchを2つの信号変換手段、Ychを2つの信号変換手段に割り当てた例を示す。
図5】本発明の実施形態に係る放送受信装置を移動端末とした場合のチャンネルの切り替えと、放送番組の画面の表示例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る放送受信装置の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る放送受信装置の変形例の構成を示すブロック構成図である。
図8】本発明の実施形態に係る放送受信装置で固定受信を行う例を説明するための説明図である。
図9】MFNの放送サービスエリアを説明するための説明図であって、(a)は2つの中継局の配置例を示し、(b)はそれぞれの中継局の放送サービスエリアを示す。
図10】従来の放送受信装置を移動端末とした場合のチャンネルの切り替えと、放送番組の画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[放送受信装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る放送受信装置1の構成について説明する。
放送受信装置1は、MFN(Multi Frequency Network)で構成された放送ネットワークで送信される地上デジタル放送の放送信号を受信するものである。この放送受信装置1は、例えば、自動車の車内に備えられ、移動体の受信装置として機能する。
ここでは、放送受信装置1は、複数のアンテナ2と、受信チャンネル同期装置3と、ダイバーシティ受信装置4と、を備える。なお、ダイバーシティ受信装置4で受信した放送信号は復調され、表示装置5において放送番組の映像・音声として表示される。
【0020】
アンテナ2は、中継局から無線で送信される地上デジタル放送のOFDM変調された放送波を受信するものである。このアンテナ2は、自動車の車内に備える場合、例えば、フィルムアンテナを用いることができる。ここでは、アンテナ2を4本接続した例を示しているが、少なくとも2本以上あればよい。
このアンテナ2は、それぞれ、受信チャンネル同期装置3の信号変換手段33に信号線で接続される。すなわち、アンテナ2は、受信した放送波を放送信号として受信チャンネル同期装置3の信号変換手段33に出力する。
【0021】
受信チャンネル同期装置3は、同じ放送番組を放送する放送局の系統として中継局により異なる物理チャンネルの周波数を同じ周波数になるように周波数変換するとともに、各放送信号を同期させるものである。ここでは、受信チャンネル同期装置3は、位置計測手段30と、中継局DB(データベース)記憶手段31と、制御手段32と、アンテナ2と同数の信号変換手段33と、を備える。
【0022】
位置計測手段30は、放送受信装置1の位置情報を計測するものである。この位置計測手段30は、図示を省略したGPS(Global Positioning System)受信アンテナで受信したGPS信号に基づいて、緯度および経度の位置情報を算出する。この位置計測手段30は、制御手段32からの指示により、位置情報を計測し、制御手段32に位置情報を出力する。
【0023】
中継局DB(データベース)記憶手段31は、中継局データベースを予め記憶しておくものである。この中継局DB記憶手段31は、半導体メモリ等の一般的な記憶装置で構成することができる。
【0024】
中継局データベースは、放送局の系統ごとに、地域メッシュの区分単位で、その区分で受信可能な放送信号を送信する1以上の中継局の情報を予め設定したものである。
ここで、放送局の系統とは、物理チャンネルとは別に放送局に固有に割り当てられている視聴チャンネル(リモコンチャンネル)を区分するサービス区分である。この系統には、同じ放送局であっても異なる放送番組を放送する放送系統があり、例えば、NHKが放送するNHK総合、NHK教育のような放送形態である。もちろん、放送局によっては、系統が1つの場合もある。
【0025】
また、地域メッシュとは、全国を予め定めた大きさに区分した領域である。ここでは、例えば、地域メッシュを、国土交通省が公表している国土数値情報の3次メッシュ(基準地域メッシュ)を緯度方向および経度方向に2等分した領域である4次メッシュ(2分の1地域メッシュ)とする。もちろん、地域メッシュは、これに限定されるものではない。
【0026】
ここで、図2を参照して、地域メッシュの具体例について説明する。
図2(a)は、緯度の間隔を40分、経度の間隔を1度とした1次メッシュの領域を示す。図2(b)は、1次メッシュをさらに区分した、緯度の間隔を5分、経度の間隔を7分30秒とした2次メッシュの領域を示す。図2(c)は、2次メッシュをさらに区分した、緯度の間隔を30秒、経度の間隔を45秒とした3次メッシュの領域を示す。
図2(d)は、図2(c)の3次メッシュを緯度方向および経度方向に2等分した領域である4次メッシュの領域を示す。
【0027】
次に、図3を参照して、中継局データベースの構成について具体的に説明する。
図3に示すように、中継局データベースには、系統別に中継局の各種情報を設定しておく。なお、ここでは、各系統を、地域、都道府県、系統に階層化したフォルダ単位で分類した例を示している。
各系統(例えば、地域「四国」、都道府県「徳島」、系統「NHK総合」)には、メッシュ位置情報と、該当する地域メッシュにおける受信レベルの高い予め定めた数(ここでは、受信レベル上位3局)までの中継局に関する情報(中継局情報)とを設定しておく。なお、中継局情報は、地域メッシュによっては、1つまたは2つしかない場合もある。
【0028】
「メッシュ位置情報」は、地域メッシュ(4次メッシュ)の位置情報となる緯度、経度である。なお、ここでは、メッシュ位置情報における緯度、経度は、図2(d)に示した地域メッシュ(4次メッシュ)の左下の位置(南端緯度、西端経度)を示す。
【0029】
「中継局情報」は、地域メッシュに対応した中継局の情報であって、例えば、局コード、物理チャンネル、送信出力、伝搬遅延時間である。
「局コード」は、中継局を特定するコードである。
「物理チャンネル」は、中継局が送信する当該系統(例えば、NHK総合)の周波数帯を数値化した値である。具体的には、地上デジタル放送で使用するUHF帯を6MHzごとに13~52チャンネルに割り当てたチャンネル番号である。
「送信出力」は、中継局が送信する放送信号の送信出力である。
「伝搬遅延時間」は、中継局から当該地域メッシュの位置に放送信号が到達するまでの時間である。
さらに、中継局データベースには、中継局の局コードに対応付けて、中継局の位置情報(緯度、経度)を設定しておくこととしてもよい。
【0030】
図3に示した中継局データベースにおいて、地域メッシュにおける中継局を順位付けるための受信レベルは、一般的な電波伝搬シミュレータを用いて求めることができる。すなわち、地域メッシュの中央点において到来する中継局の電界値を、電波伝搬シミュレータを用いて計算し、その値が高い中継局から予め定めた数(ここでは、受信レベル上位3局)についての中継局情報をデータベース化すればよい。
図1に戻って、放送受信装置1の構成について説明を続ける。
【0031】
制御手段32は、位置計測手段30で計測される位置情報に対応する地域メッシュの区分で受信可能な物理チャンネルの受信を複数の信号変換手段33に割り当てる制御を行うものである。ここでは、制御手段32は、中継局探索手段320と、チャンネル割当手段321と、遅延時間設定手段322と、を備える。
【0032】
中継局探索手段320は、中継局DB記憶手段31に記憶されている中継局データベースから、現在の位置で、視聴者によって選局された系統(リモコンチャンネル)の番組を放送している中継局を探索するものである。
ここでは、中継局探索手段320は、位置計測手段30から現在の位置情報(メッシュ位置情報)を取得し、中継局データベースにおいて、視聴者によって選局された系統とメッシュ位置情報とが一致する中継局情報を探索する。
なお、中継局探索手段320は、図示を省略した時間を計時するタイマにより、定期的(例えば、数秒間隔)に中継局を探索する。
中継局探索手段320は、探索した中継局情報をチャンネル割当手段321および遅延時間設定手段322に出力する。
【0033】
チャンネル割当手段321は、視聴者から選局された系統に対する中継局ごとの物理チャンネルの受信を複数の信号変換手段33に割り当てるものである。このチャンネル割当手段321は、割り当てた物理チャンネルを、対応する信号変換手段33に設定する。なお、受信する物理チャンネルをそれぞれの信号変換手段33に割り当てる手法は、どのような手法であっても構わない。
【0034】
例えば、チャンネル割当手段321は、中継局探索手段320から入力された中継局情報における受信レベルの上位の中継局ほど重み付けを大きくして、割り当てる信号変換手段33の数を多くする。また、例えば、チャンネル割当手段321は、中継局情報における送信出力の大きい中継局ほど、重み付けを大きくしてもよい。
また、例えば、チャンネル割当手段321は、現在の地域メッシュから近い中継局ほど、重み付けを大きくしてもよい。また、例えば、チャンネル割当手段321は、現在の地域メッシュの周辺(例えば、8近傍)で設定されている中継局の数が多いほど、重み付けを大きくしてもよい。
【0035】
ここでは、説明を簡略化するため、現在の位置で2つの中継局の放送信号が受信可能であり、信号変換手段33は、図1に示すように4つとする。
その場合、チャンネル割当手段321は、図4(a)に示すように、3つの信号変換手段33に、1つ目の中継局が送信するXチャンネル(Xch)の受信を割り当て、1つの信号変換手段33に、2つ目の中継局が送信するYチャンネル(Ych)の受信を割り当てる。あるいは、チャンネル割当手段321は、図4(b)に示すように、Xチャンネル(Xch)およびYチャンネル(Ych)の受信を、2つずつの信号変換手段33に割り当てる。図4中、Zchは、信号変換手段33で変換されたチャンネル(中間周波数)を意味する。
なお、現在の位置で1つの中継局の放送信号しか受信可能でない場合、チャンネル割当手段321は、すべての信号変換手段33に対して、同じ物理チャンネルを割り当てる。
【0036】
遅延時間設定手段322は、信号変換手段33のそれぞれが受信する放送信号を同期させるための遅延時間を設定するものである。
この遅延時間設定手段322は、チャンネル割当手段321で割り当てた中継局に対応する放送信号の伝搬遅延時間を中継局探索手段320で探索された中継局情報から取得し、最も伝搬遅延時間の長い放送信号にすべての放送信号が同期するように、同期遅延時間を信号変換手段33に設定する。
【0037】
すなわち、遅延時間設定手段322は、伝搬遅延時間が最も長い中継局からの受信を割り当てられた信号変換手段33には、同期遅延時間を“0”に設定し、それ以外の中継局からの受信を割り当てられた信号変換手段33には、最も長い伝搬遅延時間と、それぞれの中継局の伝搬遅延時間との差分を同期遅延時間として設定する。
【0038】
信号変換手段33は、アンテナ2を介して受信した放送信号を、他の信号変換手段33と同期させるために信号変換を行うものである。ここでは、信号変換手段33は、周波数変換手段330と、遅延時間調整手段331と、を備える。
【0039】
周波数変換手段330は、アンテナ2を介して受信した放送信号から、制御手段32で設定された物理チャンネルの帯域を切り出し、中間周波数(IF:Intermediate Frequency)のチャンネル信号に変換するものである。なお、中間周波数は、ダイバーシティ受信装置4で予め定めた受信可能な周波数帯域であれば、特に限定されるものではない。
これによって、異なる物理チャンネルの周波数が、同じ中間周波数に変換されることになる。
この周波数変換手段330は、周波数変換後の放送信号(チャンネル信号)を、遅延時間調整手段331に出力する。
【0040】
遅延時間調整手段331は、周波数変換手段330で周波数変換された放送信号(チャンネル信号)を、制御手段32で設定された同期遅延時間だけ遅延させるものである。
この遅延時間調整手段331は、遅延させた放送信号をダイバーシティ受信装置4に出力する。
これによって、受信チャンネル同期装置3は、図4に示すように、異なる物理チャンネル(Xch,Ych)で受信した放送信号を、同じチャンネル信号(Zch)に変換して、ダイバーシティ受信装置4に出力する。
なお、受信チャンネル同期装置3は、一般的なコンピュータを、前記した各手段として機能させるためのプログラム(受信チャンネル同期制御プログラム)で動作させることができる。
【0041】
ダイバーシティ受信装置4は、受信チャンネル同期装置3で同期した複数の放送信号をダイバーシティ合成し、復調するものである。なお、ダイバーシティ受信装置4は、既存の装置を用いることができる。ここでは、ダイバーシティ受信装置4は、アンテナ2と同数の受信手段40と、合成手段41と、復調手段42と、を備える。
【0042】
受信手段40は、受信チャンネル同期装置3から出力される放送信号を受信するものである。この受信手段40は、受信チャンネル同期装置3の信号変換手段33で周波数変換された放送信号から、視聴者によって選局された系統(リモコンチャンネル)の信号を抽出するチューナである。
この受信手段40は、抽出した放送信号を、合成手段41に出力する。
【0043】
なお、ここでは、ダイバーシティ受信装置4は、既存の装置を用いることとしているため、チューナである受信手段40を備えている。しかし、受信チャンネル同期装置3において、すでに所望の系統が選局されているため、本発明においては、必ずしも受信手段40は必須ではない。
【0044】
合成手段41は、複数の受信手段40から入力される放送信号を合成するものである。なお、合成手段41における合成手法は、一般的なダイバーシティ合成手法を用いればよく、例えば、最大比合成、等利得合成、選択合成等を用いることができる。
この合成手段41は、合成した放送信号を復調手段42に出力する。
【0045】
復調手段42は、合成手段41で合成された放送信号を復調するものである。すなわち、復調手段42は、OFDM変調された放送信号を、OFDM復調する。なお、OFDM復調は、一般的な技術であるため、説明を省略する。
この復調手段42は、選択されたチャンネルの復調後の放送信号を、表示装置5に出力する。
【0046】
以上説明したように放送受信装置1を構成することで、放送受信装置1は、MFNの構成において、異なる物理チャンネルで送信される同じ放送番組の放送信号を受信することができる。また、放送受信装置1は、自動車等に設置され、移動中であっても、受信可能な物理チャンネルを把握し、受信不良になる前に、物理チャンネルを切り替えて放送信号を受信することができる。
これによって、放送受信装置1は、MFNのマルチパス環境下でも、精度よく放送信号を受信することができる。
【0047】
例えば、図5に示すように、中継局Sの放送エリア内を自動車で走行中に、車内の放送受信装置1で、ある放送番組を視聴していた場合、中継局Sと中継局Sとの間で、Xチャンネルの受信レベルが弱くなっていく場合でも、受信レベルが強くなっていくYチャンネルの放送信号と合成することができる。そのため、視聴者は、物理チャンネルが切り替わる場所においても絶え間なく放送番組を視聴することができる。
【0048】
[放送受信装置の動作]
次に、図6を参照(構成については、適宜図1参照)して、本発明の実施形態に係る放送受信装置1の動作について説明する。
【0049】
ステップS1において、放送受信装置1は、受信チャンネル同期装置3の制御手段32およびダイバーシティ受信装置4の受信手段40によって、視聴チャンネル(リモコンチャンネル)の選択を受け付ける。
【0050】
以下、受信チャンネル同期装置3がステップS2からステップS6までの動作を行う。
ステップS2において、位置計測手段30は、現在の位置情報(緯度、経度)を計測する。
ステップS3において、制御手段32の中継局探索手段320は、ステップS2で計測された現在の位置情報に基づいて、当該位置情報で特定される地域メッシュに対応して、ステップS1で選択された視聴チャンネル(系統)の番組を放送している中継局の情報を取得する。具体的には、中継局探索手段320は、選択された系統の番組を放送する中継局の物理チャンネルおよび伝搬遅延時間を取得する。
【0051】
ステップS4において、制御手段32のチャンネル割当手段321は、ステップS3で取得した1以上の中継局の物理チャンネルを割り当てる信号変換手段33を決定する。
例えば、チャンネル割当手段321は、受信レベルの上位の中継局ほど割り当てる信号変換手段33の数を多くする。
【0052】
ステップS5において、制御手段32の遅延時間設定手段322は、ステップS4で割り当てた信号変換手段33ごとに、ステップS3で取得した伝搬遅延時間の最も長い時間に合わせて、放送信号を同期させる遅延時間(同期遅延時間)を算出する。なお、伝搬遅延時間の最も長い中継局に対応する信号変換手段33の同期遅延時間は“0”とする。
ステップS6において、制御手段32は、それぞれの信号変換手段33に対して、ステップS4で決定された物理チャンネルと、ステップS5で算出された同期遅延時間とを設定する。
【0053】
ステップS7において、それぞれの信号変換手段33は、周波数変換手段330によって、アンテナ2を介して受信した放送信号から、ステップS6で設定された物理チャンネルの帯域を切り出し、中間周波数に変換する。
ステップS8において、それぞれの信号変換手段33は、ステップS7で周波数を変換した放送信号を、ステップS6で設定された同期遅延時間だけ遅延させる。これによって、それぞれの信号変換手段33が出力する放送信号を同期させることができる。
【0054】
以下、ダイバーシティ受信装置4がステップS9からステップS11までの動作を行う。
ステップS9において、それぞれの受信手段40は、ステップS8で同期した信号変換手段33から出力される放送信号から、ステップS1で選択された視聴チャンネル(系統)の放送信号を抽出する。
【0055】
ステップS10において、合成手段41は、ステップS9で抽出したそれぞれの受信手段40から出力される放送信号を、最大比合成等により合成する。
ステップS11において、復調手段42は、ステップS10で合成された放送信号を復調(OFDM復調)する。
【0056】
ステップS12において、制御手段32の中継局探索手段320は、前回の中継局探索から所定時間経過したか否かを判定する。
ここで、前回の中継局探索から所定時間経過していなければ(ステップS12:No)、放送受信装置1は、ステップS7に戻って、放送信号の受信動作を継続する。
一方、前回の中継局探索から所定時間経過していれば(ステップS12:Yes)、放送受信装置1は、ステップS2に戻って、位置計測手段30による現在位置の計測から動作を継続しなおす。
【0057】
以上の動作を継続することで、放送受信装置1は、自動車等に設置され、移動中であったとしても、複数の中継局からの異なる物理チャンネルで同じ番組の放送信号を受信し、合成することができる。
【0058】
[変形例]
以上、本発明の実施形態に係る放送受信装置1の構成および動作について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
ここでは、図1に示すように、放送受信装置1を、受信チャンネル同期装置3およびダイバーシティ受信装置4のそれぞれ個別の装置で構成した。
しかし、放送受信装置1は、図7に示すように、受信チャンネル同期装置3およびダイバーシティ受信装置4を一体の構成としても構わない。
【0059】
図7に示す放送受信装置1Bは、受信チャンネル同期手段3Bと、ダイバーシティ受信手段4Bとを備え、複数のアンテナ2を介して放送信号を合成して受信する。
なお、受信チャンネル同期手段3Bは、図1で説明した受信チャンネル同期装置3と同じ構成であり、ダイバーシティ受信手段4Bは、図1で説明したダイバーシティ受信装置4と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0060】
また、ここでは、放送受信装置1を自動車等の車内用の放送受信装置(移動体端末)として説明した。
しかし、放送受信装置1は、家屋内に固定して設置する形態であってもよい。
この場合、図8に示すように、放送受信装置1のアンテナ2を屋外に設置し、アンテナ2を個別に中継局の放送波を受信する向きに合わせておく。ここでは、4本のアンテナ2に対して、2本のアンテナ2Baの向きを中継局Sの向きに合わせ、2本のアンテナ2Bb向きを中継局Sに合わせた状態を示している。
【0061】
そして、図1に示した放送受信装置1の構成において、中継局探索手段320は、放送受信装置1の設置時に1回だけ動作させればよい。また、アンテナ2Ba,2Bbが対応する中継局は既知であるため、チャンネル割当手段321は、放送受信装置1の設置時に1回だけ、物理チャンネルを、その物理チャンネルに対応する中継局の方向に向けたアンテナ2に接続された信号変換手段33に手動で割り当てればよい。
【0062】
このように、放送受信装置1を放送の固定受信に適用することで、難視地区において、1つの中継局からの放送信号では、フェージング等によって、受信不良が発生する場合でも、複数の中継局から、放送信号を合成して受信することができるため、受信不良を抑えることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 放送受信装置
2 アンテナ
3 受信チャンネル同期装置(受信チャンネル同期手段)
30 位置計測手段
31 中継局DB(データベース)記憶手段
32 制御手段
320 中継局探索手段
321 チャンネル割当手段
322 遅延時間設定手段
33 信号変換手段
330 周波数変換手段
331 遅延時間調整手段
4 ダイバーシティ受信装置(ダイバーシティ受信手段)
40 受信手段
41 合成手段
42 復調手段
5 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10