(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】端子圧着装置および端子圧着方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/048 20060101AFI20220217BHJP
H01R 43/052 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
H01R43/052
(21)【出願番号】P 2018066392
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】津本 一俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸雄
(72)【発明者】
【氏名】重光 徹
(72)【発明者】
【氏名】北川 公一
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】太田 賢一
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518619(JP,A)
【文献】特開2012-204102(JP,A)
【文献】国際公開第1996/024179(WO,A1)
【文献】特開2014-007043(JP,A)
【文献】特開2015-211039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/027- 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を支持するアンビルと、前記アンビルに対して接近および離反が可能なプレス部材と、前記プレス部材を前記アンビルに向けて駆動する圧着アクチュエータとを有する圧着機本体と、
電線を把持する把持装置と、
前記把持装置の把持力を調整する把持力調整アクチュエータと、
前記圧着アクチュエータおよび前記把持力調整アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記把持装置により前記電線を把持した状態にて、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始する第1制御部と、
前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始してから終了するまでの間に、前記把持装置の把持力を弱める第2制御部と、を有し
、
前記把持装置は、第1挟持部および第2挟持部を有し、前記電線を前記第1挟持部と前記第2挟持部とにより挟持するクランプを有し、
前記把持力調整アクチュエータは、前記第1挟持部および前記第2挟持部が互いに接近および離反するように前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方を駆動する挟持アクチュエータからなり、
前記制御装置の前記第1制御部は、前記第1挟持部および前記第2挟持部により前記電線を挟持した状態にて、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始するように構成され、
前記制御装置の前記第2制御部は、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始してから終了するまでの間に、前記クランプの前記第1挟持部および前記第2挟持部による挟持力を弱めることによって前記把持力を弱めるように構成され、
前記第1挟持部は、前記電線の長手方向に沿って見たときに前記第2挟持部から離れる方に向けて凹状に形成された第1のクランプ爪からなり、
前記第2挟持部は、前記電線の長手方向に沿って見たときに前記第1のクランプ爪から離れる方に向けて凹状に形成された第2のクランプ爪からなっており、
前記挟持アクチュエータは、筒状のシリンダ本体と、前記シリンダ本体を第1室と第2室とに仕切るピストンと、前記ピストンから前記第2室を通って前記シリンダ本体の外部に延び、前記第1のクランプ爪および前記第2のクランプ爪の少なくとも一方に連結されたロッドとを有し、
前記クランプは、前記ロッドの伸張および収縮のいずれか一方に伴って前記第1のクランプ爪および前記第2のクランプ爪が互いに接近し、前記ロッドの伸張および収縮の他方に伴って前記第1のクランプ爪および前記第2のクランプ爪が互いに離反するように構成され、
流体を供給する流体供給源と前記第1室とを連通しかつ前記流体供給源と前記第2室との連通を解除する第1位置と、前記流体供給源と前記第2室とを連通しかつ前記流体供給源と前記第1室との連通を解除する第2位置と、前記流体供給源と前記第1室との連通を解除しかつ前記流体供給源と前記第2室との連通を解除する第3位置と、に切り替え可能なソレノイドバルブを備えた、端子圧着装置。
【請求項2】
前記第2制御部は、前記プレス部材が前記端子または前記電線の端部に接触した後に前記把持力を弱めるように構成されている、請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近が終了した後に、前記把持装置が前記電線を把持するように前記把持装置の把持力を強める第3制御部を有している、請求項1または2に記載の端子圧着装置。
【請求項4】
前記第2制御部は、前記第1挟持部および前記第2挟持部を互いに離反させることにより前記挟持力を弱めるように構成されている、請求項
1、2、または3に記載の端子圧着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端部に端子を圧着する端子圧着装置および端子圧着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤハーネス等の材料として、端子が圧着された電線が用いられている。電線の端部に端子を圧着するために、端子圧着装置が用いられる。
図11は端子圧着装置の一例を示す図である。この端子圧着装置は、電線100を挟持するクランプ101と、端子102を支持するアンビル103と、電線100の端部が挿入された端子102を圧縮するプレス部材104とを備えている。
【0003】
近年、電線100および端子102の材料が多様化しており、電線100および端子102を従来よりも強く圧縮しなければならない場合がある。ところが、圧縮の程度を大きくすると、電線100は局所的に長手方向に膨張する。この際、電線100はクランプ101によって挟持され、長手方向の移動が拘束されているので、
図12に示すように電線100の一部100Aが曲がってしまう場合がある。これにより、電線100の品質が低下するという問題が生じる。
【0004】
特許文献1には、端子の圧着と同時にクランプをアンビルから離れる方に移動させ、電線を引っ張る技術が記載されている。特許文献1には、このように電線を引っ張ることにより、電線の一部が曲がってしまうことを防止できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の技術では、端子圧着のタイミングとクランプを移動させるタイミングとを正確に合わせると共に、クランプの移動量(言い換えると、電線の引っ張り量)を適切に保たないと、電線を無理に引っ張ってしまい、電線を傷めるおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子圧着時に電線を無理に引っ張って傷めることがなく、かつ、電線の一部が曲がってしまうことがない端子圧着装置および端子圧着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る端子圧着装置は、圧着機本体と、電線を把持する把持装置と、把持力調整アクチュエータと、制御装置とを備える。前記圧着機本体は、端子を支持するアンビルと、前記アンビルに対して接近および離反が可能なプレス部材と、前記プレス部材を前記アンビルに向けて駆動する圧着アクチュエータとを有する。前記把持力調整アクチュエータは、前記把持装置の把持力を調整する。前記制御装置は、前記圧着アクチュエータおよび前記把持力調整アクチュエータを制御する。前記制御装置は、前記把持装置により前記電線を挟持した状態にて、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始する第1制御部と、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始してから終了するまでの間に、前記把持装置の把持力を弱める第2制御部と、を有している。
【0009】
上記端子圧着装置によれば、端子圧着のためにプレス部材がアンビルに向かって接近を開始した後、把持装置の把持力が弱められる。その結果、電線は把持装置に対して電線の長手方向に移動可能となる。電線は把持装置に拘束されないので、プレス部材が端子および電線の端部を圧縮したときに電線が長手方向に膨張しても、その膨張の分だけ電線の一部が長手方向に移動する。したがって、電線の一部が曲がってしまうことを防止することができる。また、上記端子圧着装置によれば、端子圧着の際に電線を引っ張ることがない。よって、電線を無理に引っ張ることによる電線の損傷が生じるおそれがない。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第2制御部は、前記プレス部材が前記端子または前記電線の端部に接触した後に、前記把持力を弱めるように構成されている。
【0011】
上記態様によれば、端子圧着のためにプレス部材がアンビルに接近したときに、少なくともプレス部材が端子または電線の端部に接触するまでは、把持装置の把持力は弱められない。そのため、電線は把持装置によって把持され続ける。したがって、端子および電線の端部がプレス部材とアンビルに挟まれる前に電線の端部の位置がずれるおそれがない。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記制御装置は、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近が終了した後に、前記把持装置が前記電線を把持するように前記把持装置の把持力を強める第3制御部を有している。
【0013】
上記態様によれば、端子が圧着された後、電線は再び把持装置によって把持される。そのため、例えばその後に把持装置が移動することにより、電線の他の処理を良好に行うことができる。
【0014】
本発明の好ましい一態様によれば、前記把持装置はクランプを有している、前記クランプは、第1挟持部および第2挟持部を有し、前記電線を前記第1挟持部と前記第2挟持部とにより挟持する。前記把持力調整アクチュエータは、前記第1挟持部および前記第2挟持部が互いに接近および離反するように前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方を駆動する挟持アクチュエータからなっている。前記制御装置の前記第1制御部は、前記第1挟持部および前記第2挟持部により前記電線を挟持した状態にて、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始するように構成されている。前記制御装置の前記第2制御部は、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始してから終了するまでの間に、前記クランプの前記第1挟持部および前記第2挟持部による挟持力を弱めることによって前記把持力を弱めるように構成されている。
【0015】
上記態様によれば、端子圧着のためにプレス部材がアンビルに向かって接近を開始した後、クランプの挟持力が弱められる。その結果、電線はクランプに対して電線の長手方向に移動可能となる。電線はクランプに拘束されないので、プレス部材が端子および電線の端部を圧縮したときに電線が長手方向に膨張しても、その膨張の分だけ電線の一部が長手方向に移動する。したがって、電線の一部が曲がってしまうことを防止することができる。
【0016】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第2制御部は、前記第1挟持部および前記第2挟持部を互いに離反させることにより前記挟持力を弱めるように構成されている。
【0017】
上記態様によれば、クランプの挟持力を弱める際に、第1挟持部および第2挟持部は互いに離反するように移動する。その結果、第1挟持部と第2挟持部との間の間隔が広がる。よって、電線の一部が長手方向に移動する際に、電線と両挟持部との間の摩擦が低減される。したがって、摩擦による電線の損傷を抑えることができる。
【0018】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記クランプは、前記第1挟持部および前記第2挟持部よりも前記アンビルの方に配置されたノズルを有している。
【0019】
上記態様によれば、端子圧着のためにプレス部材がアンビルに接近した後、クランプの挟持力が弱められたときに、電線は少なくともノズルによって支持されるので、落下することが防止される。よって、端子圧着を良好に行うことができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記挟持アクチュエータは、筒状のシリンダ本体と、前記シリンダ本体を第1室と第2室とに仕切るピストンと、前記ピストンから前記第2室を通って前記シリンダ本体の外部に延び、前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方に連結(直接連結されていてもよく、他の部材を介して間接的に連結されていてもよい)されたロッドとを有している。前記クランプは、前記ロッドの伸張および収縮のいずれか一方に伴って前記第1挟持部および前記第2挟持部が互いに接近し、前記ロッドの伸張および収縮の他方に伴って前記第1挟持部および前記第2挟持部が互いに離反するように構成されている。前記端子圧着装置は、流体を供給する流体供給源と前記第1室とを連通しかつ前記流体供給源と前記第2室との連通を解除する第1位置と、前記流体供給源と前記第2室とを連通しかつ前記流体供給源と前記第1室との連通を解除する第2位置と、に切り替え可能なソレノイドバルブを備えている。
【0021】
上記態様によれば、挟持アクチュエータとして流体圧シリンダを利用することができ、第1位置と第2位置とに切り替え可能なソレノイドバルブにより、クランプの挟持力を制御することができる。
【0022】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1挟持部は、前記電線の長手方向に沿って見たときに前記第2挟持部から離れる方に向けて凹状に形成された第1のクランプ爪からなり、前記第2挟持部は、前記電線の長手方向に沿って見たときに前記第1のクランプ爪から離れる方に向けて凹状に形成された第2のクランプ爪からなっている。
【0023】
上記態様によれば、第1挟持部および第2挟持部が一対の凹状のクランプ爪からなっているので、端子圧着のためにプレス部材がアンビルに接近した後、クランプの挟持力が弱められたときに、電線は少なくともクランプ爪によって支持される。そのため、落下することが防止される。よって、端子圧着を良好に行うことができる。
【0024】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記挟持アクチュエータは、筒状のシリンダ本体と、前記シリンダ本体を第1室と第2室とに仕切るピストンと、前記ピストンから前記第2室を通って前記シリンダ本体の外部に延び、前記第1のクランプ爪および前記第2のクランプ爪の少なくとも一方に連結(直接連結されていてもよく、他の部材を介して間接的に連結されていてもよい)されたロッドとを有している。前記クランプは、前記ロッドの伸張および収縮のいずれか一方に伴って前記第1のクランプ爪および前記第2のクランプ爪が互いに接近し、前記ロッドの伸張および収縮の他方に伴って前記第1のクランプ爪および前記第2のクランプ爪が互いに離反するように構成されている。前記端子圧着装置は、流体を供給する流体供給源と前記第1室とを連通しかつ前記流体供給源と前記第2室との連通を解除する第1位置と、前記流体供給源と前記第2室とを連通しかつ前記流体供給源と前記第1室との連通を解除する第2位置と、前記流体供給源と前記第1室との連通を解除しかつ前記流体供給源と前記第2室との連通を解除する第3位置と、に切り替え可能なソレノイドバルブを備えている。
【0025】
上記態様によれば、挟持アクチュエータとして流体圧シリンダを利用することができ、第1位置と第2位置と第3位置とに切り替え可能なソレノイドバルブにより、クランプの挟持力を制御することができる。
【0026】
本発明に係る端子圧着方法は、端子を支持するアンビルと前記アンビルに対して接近および離反が可能なプレス部材とを有する圧着機本体と、電線を把持する把持装置と、を用いて端子を圧着する方法であって、前記把持装置により前記電線を把持した状態にて、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始し、前記アンビルに対する前記プレス部材の接近を開始してから終了するまでの間に、前記把持装置の把持力を弱める方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、端子圧着時に電線を無理に引っ張って傷めることがなく、かつ、電線の一部が曲がってしまうことがない端子圧着装置および端子圧着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】電線処理装置の構成を模式的に表す平面図である。
【
図8A】実施形態に係るF側の端子圧着動作の一工程の動作説明図である。
【
図8B】実施形態に係るF側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図8C】実施形態に係るF側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図8D】実施形態に係るF側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図8E】実施形態に係るF側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図8F】実施形態に係るF側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図8G】実施形態に係るF側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図9A】実施形態に係るR側の端子圧着動作の一工程の動作説明図である。
【
図9B】実施形態に係るR側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図9C】実施形態に係るR側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図9D】実施形態に係るR側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図9E】実施形態に係るR側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図9F】実施形態に係るR側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図9G】実施形態に係るR側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図9H】実施形態に係るR側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図10A】他の実施形態に係るF側の端子圧着動作の一工程の動作説明図である。
【
図10B】他の実施形態に係るF側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図10C】他の実施形態に係るF側の端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【
図11】従来の端子圧着装置による端子圧着動作の一工程の動作説明図である。
【
図12】従来の端子圧着装置による端子圧着動作の他の一工程の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る端子圧着装置8を備えた電線処理装置1の構成を模式的に表す平面図である。以下の説明では、
図1の右側、左側をそれぞれ前側、後側とする。
図1の上側、下側をそれぞれ左側、右側とする。ただし、各方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、本発明に係る端子圧着装置の設置位置などを何ら限定するものではない。
【0030】
電線処理装置1は、電線5を送り出す送給装置2と、送給装置2に送り出された電線5の前端部を挟持するクランプ3Fと、クランプ3Fに挟持された電線5の前端部に端子7を圧着する圧着機本体4Fと、カッター装置10と、カッター装置10の前方の電線5の後端部を挟持するクランプ3Rと、クランプ3Rに挟持された電線5の後端部に端子7を圧着する圧着機本体4Rとを備えている。なお、クランプ3F、クランプ3Rは、それぞれ電線5の前端部、後端部を挟持するものであるので、以下では、それぞれF側(前側)、R側(後側)のクランプと適宜称する。圧着機本体4F、圧着機本体4Rは、それぞれ電線5の前端部、後端部に端子7を圧着するものであるので、それぞれF側(前側)、R側(後側)の圧着機本体と適宜称する。
【0031】
送給装置2の構成は何ら限定されないが、ここでは送給装置2は、前後に配置された一対のプーリ2Aと、両プーリ2Aに巻かれた搬送ベルト2Bとを、左右に一つずつ備えている。図示は省略するが、プーリ2Aの少なくとも一つには、モータが連結されている。このモータが駆動することにより上記プーリ2Aが回転し、搬送ベルト2Bが循環する。これにより、左右の搬送ベルト2Bに挟まれた電線5は前方に送り出される。
【0032】
図示は省略するが、電線5はいわゆる被覆電線であり、金属などの導体からなる心線と、心線の周囲を囲む樹脂などの絶縁材とを含んでいる。カッター装置10は、電線5を切断する切断刃11と、F側クランプ3Fに挟持された電線5の前端部の絶縁材を剥ぎ取るストリップ刃12Fと、R側クランプ3Rに挟持された電線5の後端部の絶縁材を剥ぎ取るストリップ刃12Rとを有している。
【0033】
図2に示すように、F側クランプ3Fは、孔13aが形成された前壁13と、孔14aが形成された後壁14と、前壁13と後壁14との間に配置された第1ブロック16Aと、第1ブロック16Aの下方に配置された第2ブロック16Bと、前壁13から前方に延びるノズル15とを有している。第2ブロック16Bは昇降可能に構成されており、第1ブロック16Aに対して接近および離反が可能である。電線5は、後壁14の孔14a、両ブロック16A,16Bの間、前壁13の孔13a、およびノズル15を通って前方に搬送される。
【0034】
第2ブロック16Bは、エアシリンダ20Fのロッド21に連結されている。エアシリンダ20Fは、ロッド21が上下に移動するように配置されている。エアシリンダ20Fの構成は何ら限定されないが、ここでは
図3に示すように、シングルロッド式の複動シリンダによって構成されている。エアシリンダ20Fは、筒状のシリンダ本体25Aと、シリンダ本体25Aを第1室41Fと第2室42Fとに仕切るピストン25と、ピストン25から第2室42Fを通ってシリンダ本体25Aの外部に延びるロッド21とを有している。エアシリンダ20Fには、ソレノイドバルブ22Fを介して、高圧ガス(ここでは圧縮空気)を供給するガス供給源23が接続されている。ここでは、ソレノイドバルブ22Fは、ガス供給源23と第1室41Fとを連通しかつガス供給源23と第2室42Fとの連通を解除する位置(以下、挟持位置という)と、ガス供給源23と第2室42Fとを連通しかつガス供給源23と第1室41Fとの連通を解除する位置(以下、挟持解除位置という)とに切替可能である。なお、本実施形態では、第1室41Fおよび第2室42Fは、ガス供給源23との連通を解除されたときには大気開放される。
【0035】
図3(b)に示すように、ソレノイドバルブ22Fが挟持位置に切り替えられると、エアシリンダ20Fのロッド21は伸張する。言い換えると、エアシリンダ20Fのロッド21は上昇する。すると、第2ブロック16Bは上昇し、第1ブロック16Aに接近する。その結果、第1ブロック16Aおよび第2ブロック16Bは電線5を挟持する。一方。
図3(a)に示すように、ソレノイドバルブ22Fが挟持解除位置に切り替えられると、エアシリンダ20Fのロッド21は収縮する。言い換えると、エアシリンダ20Fのロッド21は下降する。すると、第2ブロック16Bは下降し、第1ブロック16Aから離反する。その結果、第1ブロック16Aと第2ブロック16Bとの間隔が広がり、電線5の挟持が解除される。電線5は、長手方向に沿って移動可能となる。
【0036】
また、
図2に示すように、F側クランプ3Fはガイド部材17に支持されており、ガイド部材17には移動アクチュエータ24Fが連結されている。移動アクチュエータ24Fは、F側クランプ3Fを前後に移動可能に構成されている。移動アクチュエータ24Fの構成は何ら限定されず、モータ等の公知の任意のアクチュエータを利用することができる。
【0037】
図4および
図5に示すように、R側クランプ3Rは、第1クランプ爪26Aと、第2クランプ爪26Bと、第1クランプ爪26Aを支持するアーム27Aと、第2クランプ爪26Bを支持するアーム27Bと、両アーム27A,27Bを回転自在に支持する軸28とを有している。両アーム27A,27Bが軸28周りに回転することにより、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは互いに接近および離反が可能である。
図5(b)に示すように、第1クランプ爪26Aは、電線5の長手方向に沿って見たときに、第2クランプ爪26Bから離れる方に向けて凹状に形成されている。第2クランプ爪26Bは、電線5の長手方向に沿って見たときに、第1クランプ爪26Aから離れる方に向けて凹状に形成されている。両クランプ爪26A,26Bは鋏状に形成されている。
【0038】
R側クランプ3Rは、エアシリンダ20Rと連結されている。詳しくは、エアシリンダ20Rのロッド31にブロック30が固定され、ブロック30とアーム27A,27Bとは、リンクバー29A,29Bを介してアーム27A,27Bに連結されている。リンクバー29A,29Bの上端部はブロック30に回転可能に連結され、リンクバー29A,29Bの下端部はアーム27A,27Bに回転可能に連結されている。R側のエアシリンダ20Rもシングルロッド式の複動シリンダによって構成されているが、特に限定されない。エアシリンダ20Rは、筒状のシリンダ本体25Dと、シリンダ本体25Dを第1室41Rと第2室42Rとに仕切るピストン25Bと、ピストン25Bから第2室42Rを通ってシリンダ本体25Dの外部に延びるロッド31とを有している。エアシリンダ20Rには、ソレノイドバルブ22Rを介してガス供給源23が接続されている。ソレノイドバルブ22Rは、ガス供給源23と第1室41Rとを連通しかつガス供給源23と第2室42Rとの連通を解除する位置(以下、挟持位置という)と、ガス供給源23と第2室42Rとを連通しかつガス供給源23と第1室41Rとの連通を解除する位置(以下、挟持解除位置という)と、ガス供給源23と第1室41Rとの連通を解除しかつガス供給源23と第2室42Rとの連通を解除する位置(以下、開放位置という)とに切替可能である。なお、本実施形態では、第1室41Rおよび第2室42Rは、ガス供給源23との連通を解除されたときには大気開放される。
【0039】
図5(b)に示すように、エアシリンダ20Rのロッド31が伸張すると(言い換えると、ロッド31が下降すると)、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは互いに接近する。その結果、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは電線5を挟持する。一方、
図5(a)に示すように、エアシリンダ20Rのロッド31が収縮すると(言い換えると、ロッド31が上昇すると)、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは互いに離反する。その結果、第1クランプ爪26Aと第2クランプ爪26Bとの間隔が広がり、電線5の挟持が解除される。挟持が解除されると、電線5は長手方向に沿って移動可能となる。
【0040】
図4に示すように、R側クランプ3Rはガイド部材32に支持されており、ガイド部材32には移動アクチュエータ24Rが連結されている。移動アクチュエータ24Rは、R側クランプ3Rを前後に移動可能に構成されている。移動アクチュエータ24Rの構成は何ら限定されず、モータ等の公知の任意のアクチュエータを利用することができる。
【0041】
F側の圧着機本体4FとR側の圧着機本体4Rとは、同様の構成を備えている。ここでは、F側の圧着機本体4Fについて説明し、R側の圧着機本体4Rの説明は省略する。
図6に示すように、圧着機本体4Fは、端子7を支持するアンビル41と、アンビル41に対して接近および離反が可能なプレス部材42とを有している。ここでは、プレス部材42は昇降可能に構成されている。プレス部材42は、電線5の端部に端子7を打ち付けることにより密着させるプレス体である。また、圧着機本体4Rは、プレス部材42を昇降させるアクチュエータ43を有している。アクチュエータ43の構成は何ら限定されず、モータ等の公知の任意のアクチュエータを利用することができる。なお、
図6(a)はプレス部材42が最も高い位置にある状態を表し、
図6(b)はプレス部材42が最も低い位置にある状態を表す。
図6(a)はプレス部材42が端子圧着を開始する前の状態を表し、
図6(b)はプレス部材42が端子圧着を終了した状態を表す。
【0042】
図1に示すように、端子圧着装置8は、F側クランプ3Fのソレノイドバルブ22F、R側クランプ3Rのソレノイドバルブ22R、F側の圧着機本体4Fのアクチュエータ43、R側の圧着機本体4Rのアクチュエータ43に通信可能に接続された制御装置9を備えている。制御装置9は、コンピュータからなり、CPU、ROM、RAMなどを備えている。制御装置9は、端子圧着装置8の専用のコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータであってよい。
図7は制御装置9の機能ブロック図である。制御装置9は、プレ制御部90、第1制御部91、第2制御部92、および第3制御部93を有している。なお、各制御部90~93が行う処理については後述する。
【0043】
次に、電線処理装置1の動作について説明する。まず、送給装置2により、前方(
図1の右方)に向かって電線5が送り出される。次に、電線5は、F側クランプ3FおよびR側クランプ3Rによって挟持され、カッター装置10の切断刃11により切断される。
【0044】
次に、F側クランプ3Fは、切断後の電線5を挟持したまま左側(
図1の上側)に旋回し、当該電線5の前端部をストリップ刃12Fに導く。一方、R側クランプ3Rは、電線5を挟持したまま右側(
図1の下側)に旋回し、当該電線5の後端部をストリッパ刃12Rに導く。そして、ストリップ刃12Fおよび12Rにより、両電線5の端部の絶縁材が剥ぎ取られる。
【0045】
その後、F側クランプ3Fは、電線5を挟持したまま更に左側に旋回し、
図1に仮想線で示すように、電線5の前端部をF側の圧着機本体4Fの手前に導く。R側クランプ3Rは、電線5を挟持したまま更に右側に旋回し、
図1に仮想線で示すように、電線5の後端部をR側の圧着機本体4Rの手前に導く。そして、圧着機本体4F,4Rにより、それぞれの電線5の端部に端子7が圧着される。なお、端子圧着の動作については、後ほど詳述する。
【0046】
次に、F側クランプ3Fは、端子7が圧着された電線5を挟持したまま、切断刃11に対向する初期位置(
図1に実線で示す位置)に戻り、当該電線5の挟持を解除する。すなわち、電線5を放す。R側クランプ3Rは、端子7が圧着された電線5を放した後、切断刃11に対向する初期位置(
図1に実線で示す位置)に戻る。なお、R側クランプ3Rが放した電線(両端に端子7が圧着された電線)5は落下し、図示しないトレイに回収される。その後は、上述の動作を繰り返す。これにより、両端に端子7が圧着された電線5が順次作製される。
【0047】
次に、端子圧着方法について詳しく説明する。まず、
図8A~
図8Gを参照しながら、F側の端子圧着方法について説明する。なお、理解しやすいように、
図8A、
図8C、
図8E、および
図8Gでは、左側に圧着機本体4Fの部分拡大図を追記している。
図8C~
図8Gでは、右側にエアシリンダ20Fおよびソレノイドバルブ22Fの状態図を追記している。
【0048】
図8Aに示すように、F側クランプ3Fが圧着機本体4Fの手前の位置まで移動すると、
図8Bに示すように、F側クランプ3Fは電線5を挟持したまま、電線5の端部がアンビル41上の端子7に重なるまで前進する。ここでは、端子7はいわゆるクローズドバレル端子であり、端子7には挿入部7aが形成されている。F側クランプ3Fは電線5の端部が端子7の挿入部7aに挿入されるまで前進する。この動作は、制御装置9のプレ制御部90によって実行される。
【0049】
次に、圧着機本体4Fのアクチュエータ43が駆動され、プレス部材42がアンビル41に向けて下降を開始する。この動作は、制御装置9の第1制御部91によって実行される。プレス部材42は、所定の位置まで下降すると端子7に接触し、
図8Cに示すように端子7を圧縮し始める。
【0050】
そして、
図8Dに示すように、プレス部材42が端子7に接触した後、プレス部材42が最も低い位置まで下降する前に、ソレノイドバルブ22Fが挟持解除位置に切り替えられる。これにより、第2ブロック16Bが第1ブロック16Aから離反し、F側クランプ3Fによる電線5の挟持が解除される。F側クランプ3Fの挟持力が弱まり、ここでは零となる。この動作は、制御装置9の第2制御部92によって実行される。
【0051】
その後、F側クランプ3Fによる電線5の挟持を解除したまま、プレス部材42は最も低い位置まで下降を続け、端子7の圧縮を続ける。その結果、端子7の一部が電線5の端部を挟み込むまで端子7が変形し、端子7が電線5に密着する(
図8E参照)。その際に、端子7だけでなく電線5もプレス部材42によって圧縮されるので、電線5が長手方向に局所的に膨張する場合がある。ところが、本実施形態によれば、F側クランプ3Fの挟持が解除されているので、電線5は長手方向に移動することができる。したがって、電線5は膨張した分だけ長手方向に移動し、電線5の先端部が曲がってしまうことが防止される。
【0052】
プレス部材42が最も低い位置まで下降した後、ソレノイドバルブ22Fが挟持位置に切り替えられる。これにより、
図8Fに示すように、第2ブロック16Bが第1ブロック16Aに接近し、F側クランプ3Fは電線5を挟持する。この動作は、制御装置9の第3制御部93によって実行される。
【0053】
その後、
図8Gに示すようにプレス部材42が上昇し、一連の動作が完了する。以上がF側の端子圧着方法である。
【0054】
次に、
図9A~
図9Hを参照しながら、R側の端子圧着方法について説明する。なお、理解しやすいように、
図9A、
図9C、
図9F、および
図9Hでは、左側に圧着機本体4Rの部分拡大図を追記している。
図9C~
図9Hでは、右側にエアシリンダ20Rおよびソレノイドバルブ22Rの状態図を追記している。
【0055】
図9Aに示すように、R側クランプ3Rが圧着機本体4Rの手前の位置まで移動すると、
図9Bに示すように、R側クランプ3Rは電線5を挟持したまま、電線5の端部がアンビル41上の端子7に重なるまで後進する(すなわち、アンビル41に接近する)。ここでは、R側クランプ3Rは、電線5の端部が端子7の挿入部7aに挿入されるまで後進する。この動作は、制御装置9のプレ制御部90によって実行される。
【0056】
次に、圧着機本体4Rのアクチュエータ43が駆動され、プレス部材42がアンビル41に向けて下降を開始する。この動作は、制御装置9の第1制御部91によって実行される。プレス部材42は所定の位置まで下降すると端子7に接触し、
図9Cに示すように端子7を圧縮し始める。
【0057】
図9Dに示すように、プレス部材42が端子7に接触した後、プレス部材42が最も低い位置まで下降する前に、ソレノイドバルブ22Rは挟持位置から一時的に挟持解除位置に切り替えられる。これにより、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは互いに離反するように移動し、R側クランプ3Rによる電線5の挟持が解除される。この動作は、制御装置9の第2制御部92によって実行される。
【0058】
その後、
図9Eに示すように、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bが所定の位置に移動する前に、ソレノイドバルブ22Rが開放位置に切り替えられる。これにより、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bの移動が停止する。この動作も制御装置9の第2制御部92によって実行される。第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bが互いに離反しかつ停止することにより、R側クランプ3Rの挟持力が弱められ、ここでは零となる。また、電線5は長手方向に移動可能となる。
【0059】
なお、上記の所定の位置とは、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bが電線5を支持しなくなる位置のことである。言い換えると、電線5の長手方向に沿って見たときに、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bのいずれの部分も、電線5の下方かつ電線5の中心を通る鉛直線上に位置しなくなる位置のことである。以下の説明では、電線5の下方かつ電線5の中心を通る鉛直線上の位置のことを、電線5の真下という。第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bの一部が電線5の真下にある間にソレノイドバルブ22Rを挟持解除位置から開放位置に切り替えることにより、電線5の落下が防止される。
【0060】
本実施形態では、電線5の上下位置が大きくずれないように、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bのうち電線5の真下の部分と、電線5が第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bによって挟持されているとき(
図9C参照)の電線5の中心との距離が、電線5の直径と等しくなる前に、ソレノイドバルブ22Rが開放位置に切り替えられる。言い換えると、電線5の位置が電線5の半径分だけ下にずれる前に、ソレノイドバルブ22Rが開放位置に切り替えられる。ただし、上記距離は特に限定される訳ではない。例えば、電線5の位置が電線5の直径分だけ下にずれる前に、ソレノイドバルブ22Rを開放位置に切り替えるようにしてもよい。
【0061】
その後、
図9Fに示すように、プレス部材42は最も低い位置まで下降を続け、端子7の圧縮を続ける。その結果、端子7の一部が電線5の端部を挟み込むまで端子7が変形し、端子7が電線5に密着する。端子7および電線5はプレス部材42によって圧縮されるので、電線5が長手方向に局所的に膨張する場合がある。ところが、電線5は第1クランプ爪26Aと第2クランプ爪26Bとの間で長手方向に移動することができる。したがって、電線5は膨張した分だけ長手方向に移動し、電線5の先端部が曲がってしまうことが防止される。
【0062】
プレス部材42が最も低い位置まで下降した後、ソレノイドバルブ22Rは挟持位置に切り替えられる。これにより、
図9Gに示すように、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは再び互いに接近し、R側クランプ3Rは電線5を挟持する。この動作は、制御装置9の第3制御部93によって実行される。
【0063】
その後、
図9Hに示すようにプレス部材42が上昇し、一連の動作が完了する。以上がR側の端子圧着方法である。
【0064】
なお、プレス部材42が端子7または電線5の端部に接触する位置は、端子7および電線5の仕様に基づいて予め計算により求めることができる。あるいは、予め試験を行い、その試験結果に基づいて定めてもよい。制御装置9の第2制御部92は、プレス部材42の実際の位置に基づいてソレノイドバルブ22F,22Rを制御するようにしてもよい。また、圧着機本体4F,4Rのアクチュエータ43としてサーボモータを用い、そのサーボモータの回転位置に基づいて、プレス部材42が端子7または電線5の端部に接触する位置を特定し、ソレノイドバルブ22F,22Rを制御してもよい。また、プレス部材42の位置と、プレス部材42がアンビル41に対する接近を開始してからの経過時間との間には、一義的な関係がある。そこで、プレス部材42の位置に代えて、プレス部材42が接近を開始してからの経過時間に基づいて、ソレノイドバルブ22F,22Rを制御するようにしてもよい。ソレノイドバルブ22F,22Rの切替制御の詳細については何ら限定されない。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る端子圧着装置8および端子圧着方法によれば、プレス部材42が端子7および電線5の端部を圧縮したときに電線5が長手方向に膨張しても、電線5はクランプ3F,3Rに拘束されていないので、その膨張の分だけ長手方向に移動することができる。したがって、電線5の一部が曲がってしまうことを防止することができる。また、本実施形態に係る端子圧着装置8および端子圧着方法によれば、端子圧着の際に電線5を引っ張らない。よって、電線5を無理に引っ張って損傷させてしまうことを防止することができる。
【0066】
端子圧着の際にクランプ3F,3Rの挟持力を弱めるタイミングは特に限定されないが、本実施形態では、プレス部材42が端子7または電線5の端部に接触し始めてから挟持力を弱めることとしている。逆に言えば、プレス部材42が端子7または電線5の端部に接触するまでは、クランプ3F,3Rの挟持力は弱められない。そのため、電線5はクランプ3F,3Rに挟持され続け、アンビル41上の電線5の位置がずれることがない。プレス部材42が端子7または電線5の端部に接触した後は、電線5はプレス部材42およびアンビル41によって挟まれるので、挟持力を弱めたとしてもアンビル41上の電線5の位置はずれにくい。したがって、端子7を電線5に良好に圧着させることができる。
【0067】
本実施形態では、F側クランプ3Fにおいて挟持力を弱める際に、エアシリンダ20Fの駆動力を用いて第2ブロック16Bを第1ブロック16Aから離反させることとしている。第1ブロック16Aと第2ブロック16Bとの間隔が広がるので、電線5が長手方向に移動する際に、電線5と両ブロック16A,16Bとの間の摩擦を低減することができる。R側クランプ3Rにおいても挟持力を弱める際に、エアシリンダ20Rの駆動力を用いて第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bを互いに離反させることとしている。第1クランプ爪26Aと第2クランプ爪26Bとの間隔が広がるので、電線5が長手方向に移動する際に、電線5と両クランプ爪26A,26Bとの間の摩擦を低減することができる。したがって、本実施形態によれば、摩擦による電線5の損傷を抑えることができる。
【0068】
ただし、挟持力を弱める方法は特に限定されない。前記実施形態では、
図9C~
図9Eに示すように、R側クランプ3Rにおいて、ソレノイドバルブ22Rを挟持位置、挟持解除位置、開放位置の順に切り替えたが、挟持位置から開放位置に直ちに切り替えるようにしてもよい。すなわち、挟持解除位置への切替をなくしてもよい。ソレノイドバルブ22Rを開放位置に切り替えると、エアシリンダ20Rの第1室41Rおよび第2室42Rのいずれにも圧縮空気は供給されなくなり、電線5に対する挟持力が弱まる。第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは、電線5の弾性力(特に、心線の外側の絶縁材の弾性力)を受け、互いに離れる方向に若干移動する。これにより、電線5は長手方向に移動可能となる。この場合にも、端子圧着の際に電線5の一部が曲がってしまうことを防止することができる。
【0069】
本実施形態によれば、F側クランプ3Fにおいて、プレス部材42がアンビル41に向けた接近を終了した後(言い換えると、プレス部材42が最も低い位置まで下降した後)、第2ブロック16Bは第1ブロック16Aに接近し、第1ブロック16Aおよび第2ブロック16Bは電線5を挟持する。よって、クランプ3Fにより、端子圧着の後の処理を良好に行うことができる。本実施形態では、端子圧着が完了した後、クランプ3Fが移動することにより、電線5をR側のクランプ3Rの正面(
図1に実線で示す初期位置)に位置付けることができる。よって、送給装置2が電線5を送り出した後、R側クランプ3Rが電線5を挟持することができ、その後、電線5の切断等の処理を良好に行うことができる。
【0070】
F側クランプ3Fは、第1ブロック16Aおよび第2ブロック16Bよりもアンビル41の方に配置されたノズル15を有している。端子圧着の際に、第2ブロック16Bが第1ブロック16Aから離反しても、電線5は少なくともノズル15によって支持される。そのため、電線5が落下することが防止され、端子圧着を良好に行うことができる。
【0071】
F側クランプ3Fは、挟持位置と挟持解除位置とに切り替え可能なソレノイドバルブ22Fによって駆動される。ソレノイドバルブ22Fが挟持解除位置に切り替えられたときに、第2ブロック16Bは第1ブロック16Aから離反する。しかし、上述の通り、電線5は少なくともノズル15によって支持されるので、落下することがない。したがって、F側クランプ3Fのアクチュエータとして、2位置のソレノイドバルブ22Fを用いることができる。
【0072】
電線5の長手方向に沿って見たときに、R側クランプ3Rの第1クランプ爪26Aは第2クランプ爪26Bから離れる方に向けて凹状に形成され、第2クランプ爪26Bは第1クランプ爪26Aから離れる方に向けて凹状に形成されている。端子圧着の際に、R側クランプ3Rが電線5の挟持力を弱めたとき(
図9D~
図9F参照)に、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bの一部(電線5の真下の部分)により電線5を支持することができる。よって、電線5が落下することが防止され、端子圧着を良好に行うことができる。
【0073】
R側クランプ3Rは、挟持位置と挟持解除位置と開放位置とに切り替え可能なソレノイドバルブ22Rによって駆動される。ソレノイドバルブ22Rが挟持解除位置および開放位置にあるときに、R側クランプ3Rの挟持力が弱められる。R側クランプ3Rでは上述の通り、挟持力が弱められたときでも、電線5は第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bの一部によって支持されるので、落下しない。したがって、R側クランプ3Rのアクチュエータとして、3位置のソレノイドバルブ22Rを用いることができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎず、他にも種々の実施形態が可能であることは勿論である。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0075】
プレス部材42がアンビル41に向けて下降を開始してから最下点で停止するまでの間、プレス部材42は下降し続けてもよく、途中でいったん停止してもよい。例えば、プレス部材42が下降をいったん停止した後、ソレノイドバルブ22F,22Rが挟持解除位置に切り替えられ、その後にプレス部材42が下降を再開するようにしてもよい。ソレノイドバルブ22F,22Rの挟持解除位置への切り替えのタイミングは、プレス部材42の下降中であってもよく、一時停止中であってもよい。
【0076】
前記実施形態では、電線5の端部が端子7の挿入部7aに挿入された後に、プレス部材42がアンビル41に向けて下降を開始する。しかし、電線5の端部は、プレス部材42が端子7または電線5の端部に接触するまでに、端子7の挿入部7aに挿入されていればよい。そのため、プレス部材42が下降を開始するタイミングは、必ずしも電線5の端部が端子7の挿入部7aに挿入された後でなくてもよい。プレス部材42が下降を開始するタイミングは、電線5の端部が端子7の挿入部7aに挿入された時と同時であってもよく、挿入される前であってもよい。
【0077】
前記実施形態では、F側クランプ3Fは、2位置のソレノイドバルブ22Fによって駆動される。しかし、F側クランプ3Fのアクチュエータとして、3位置のソレノイドバルブを用いることも可能である。例えば、3位置のソレノイドバルブ22Faを備え、前記実施形態と同様に(
図8C参照)、圧着機本体4Fが駆動されてプレス部材42が所定の位置(すなわち、端子7に接触する位置)まで下降した後、
図10Aに示すように、3位置のソレノイドバルブ22Faを挟持位置から開放位置に切り替えてもよい。これにより、電線5は長手方向に移動可能となる。その後、
図10Bに示すように、プレス部材42は最も低い位置まで下降し、端子7が電線5に圧着される。本実施形態においても、圧着に伴って電線5が膨張した場合、電線5は膨張した分だけ長手方向に移動し、電線5の先端部が曲がってしまうことが防止される。プレス部材42が最も低い位置まで下降した後、
図10Cに示すように、ソレノイドバルブ22Faは開放位置から挟持位置に切り替えられる。これにより、F側クランプ3Fは電線5を挟持する。
【0078】
前記実施形態では、F側クランプ3Fは、第1挟持部および第2挟持部として、それぞれ第1ブロック16Aおよび第2ブロック16Bを有している。しかし、第1挟持部および第2挟持部の形状はブロック状に限られない。例えば、第1挟持部および第2挟持部として、一対のプレートを備えていてもよい。前記実施形態では、第1ブロック16Aは移動不能に構成され、第2ブロック16Bは移動可能に構成されていた。しかし、第1ブロック16Aおよび第2ブロック16Bが相対的に接近および離反が可能であればよく、特に限定されない。第1ブロック16Aが移動可能に構成され、第2ブロック16Bが移動不能に構成されていてもよい。また、R側クランプ3Rのように、第1ブロック16Aおよび第2ブロック16Bの両方が移動可能に構成されていてもよい。
【0079】
前記実施形態では、R側クランプ3Rは、第1挟持部および第2挟持部として、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bを有している。第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bの輪郭は直線状に形成されているが(
図5参照)、曲線状に形成されていてもよい。第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bの形状は、前記実施形態の形状に何ら限定されない。
【0080】
前記実施形態では、F側クランプ3Fの第1ブロック16Aおよび第2ブロック16Bは、エアシリンダ20Fのロッド21が伸張すると互いに接近し、収縮すると互いに離反するように構成されている。しかし、第1ブロック16Aおよび第2ブロック16Bは、エアシリンダ20Fのロッド21が収縮すると互いに接近し、伸張すると互いに離反するように構成されていてもよい。
【0081】
前記実施形態では、R側クランプ3Rの第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは、エアシリンダ20Rのロッド31が伸張すると互いに接近し、収縮すると互いに離反するように構成されている。しかし、第1クランプ爪26Aおよび第2クランプ爪26Bは、エアシリンダ20Rのロッド31が収縮すると互いに接近し、伸張すると互いに離反するように構成されていてもよい。
【0082】
前記実施形態では、F側クランプ3FおよびR側クランプ3Rの挟持アクチュエータとして、エアシリンダ20F,20Rを用いている。エアシリンダ20F,20Rに供給される高圧ガスとして、圧縮空気を用いている。しかし、エアシリンダ20F,20Rに供給される高圧ガスは空気に限らず、窒素等であってもよい。
【0083】
前記実施形態では、エアシリンダ20F,20Rは、シングルロッド式の複動シリンダである。しかし、エアシリンダ20F,20Rは、単動シリンダであってもよく、ダブルロッド式であってもよい。
【0084】
また、挟持アクチュエータはエアシリンダに限定されない。エアシリンダの代わりに、油圧シリンダを用いることも可能である。また、ソレノイド、モータ等を用いてもよい。
【0085】
電線5の心線および絶縁材の材料は特に限定されない。心線は、例えば、銅製、アルミ製であってもよい。アルミ製の心線は銅製の心線に比べて、端子7を圧着するために、より強い力で圧縮しなければならない傾向がある。そのため、前記実施形態に係る端子圧着装置8は、アルミ製の心線を備えた電線5に対して特に効果的である。
【0086】
前記実施形態では、端子7は、電線5が挿入される挿入部7aを有するクローズドバレル端子である。しかし、端子7の種類は何ら限定されない。端子7は、いわゆるオープンバレル端子であってもよい。端子7がオープンバレル端子の場合、クランプ3F,3Rは、それぞれ電線5の端部が端子7の上方に位置するまで前進、後進する。プレス部材42は、端子7の上方の電線5と端子7とを下方に向けて圧縮することにより、電線5の端部に端子7を圧着する。
【0087】
前記実施形態では、F側、R側のクランプ3F,3Rは、それぞれ旋回することによりF側、R側の圧着機本体4F,4Rの手前の位置に移動するように構成されている。しかし、クランプ3F,3Rの移動の態様は何ら限定されない。例えば、F側のクランプ3Fは、向きを変えずに左右にスライドすることによってF側の圧着機本体4Fの手前の位置に移動するように構成されていてもよい。同様に、R側のクランプ3Rも、向きを変えずに左右にスライドすることによってR側の圧着機本体4Rの手前の位置に移動するように構成されていてもよい。なお、上記の場合、圧着機本体4F,4Rは電線5の搬送方向(
図1の左右方向)と平行な方向を向くように設置される。このように、F側、R側のクランプ3F,3Rは、旋回式でなく、スライド式に構成されていてもよい。
【0088】
前記実施形態において、クランプ3F,3Rは電線5を把持する把持装置の一例であるが、本発明に係る把持装置はクランプ3F,3Rに限定されない。把持装置は、電線5を把持可能な装置であればよく、必ずしも電線5を挟持する装置に限定されない。例えば、把持装置は電線5を握るように構成された装置であってもよい。また、エアシリンダ20F,20Rは本発明に係る把持力調整アクチュエータの一例であるが、把持力調整アクチュエータはエアシリンダに限定されない。エアシリンダの代わりに、油圧シリンダを用いることも可能である。また、ソレノイド、モータ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
3F,3R クランプ(把持装置)
4F,4R 圧着機本体
5 電線
7 端子
8 端子圧着装置
9 制御装置
16A 第1ブロック(第1挟持部)
16B 第2ブロック(第2挟持部)
20F,20R エアシリンダ(挟持アクチュエータ、把持力調整アクチュエータ)
26A 第1クランプ爪(第1挟持部)
26B 第2クランプ爪(第2挟持部)
41 アンビル
42 プレス部材
43 アクチュエータ(圧着アクチュエータ)
91 第1制御部
92 第2制御部