(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】原子層堆積による多層耐プラズマ性コーティング
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20220217BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220217BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20220217BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20220217BHJP
【FI】
C23C16/40
C23C16/44 B
C23C16/56
H01L21/316 X
(21)【出願番号】P 2018134044
(22)【出願日】2018-07-17
(62)【分割の表示】P 2018000888の分割
【原出願日】2018-01-06
【審査請求日】2021-01-04
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】シャオウェイ ウー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド フェンウィック
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー ワイ サン
(72)【発明者】
【氏名】グオドン ツァン
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/131024(WO,A1)
【文献】特開2016-216817(JP,A)
【文献】特表2004-511909(JP,A)
【文献】特表2016-530192(JP,A)
【文献】特表2016-516887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子層堆積(ALD)プロセスを使用してチャンバコンポーネントの表面上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップであって、
ALDプロセスを用いて表面上にアモルファスAl
2O
3を含む第1の層を10nm~約1.5μmの厚さまで堆積させるステップと、
ALDプロセスを用いて第1の層上にY
2O
3-ZrO
2固溶体を含む第2の層を10nm~約1.5μmの厚さまで堆積させるステップを含む耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップを含み、
耐プラズマ性コーティングは、チャンバコンポーネントの表面を均一に覆い、最高350℃の温度で割れ及び層間剥離に対して耐性があり、空孔が無い方法。
【請求項2】
第1の層を堆積させるステップは堆積サイクルを実行することを含み、堆積サイクルは、
チャンバコンポーネントを含む堆積チャンバ内にアルミニウム含有前駆体を注入し、アルミニウム含有前駆体をチャンバコンポーネントの表面上に吸着させるステップと、
酸素含有反応物を堆積チャンバ内に注入し、酸素含有反応物をアルミニウム含有前駆体と反応させ、Al
2O
3を形成するステップとを含み、
第1の層を堆積させるステップは第1の層の目標厚さが達成されるまで堆積サイクルを1回以上繰り返す請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の層を堆積させるステップは、1以上の堆積サイクルによって、Y
2O
3とZrO
2の交互の堆積によりY
2O
3-ZrO
2固溶体を含む相を形成することを含み、1以上の堆積サイクルは、
チャンバコンポーネントを含む堆積チャンバ内にイットリウム含有前駆体を注入し、イットリウム含有前駆体を第1の層の表面上に吸着させるステップと、
酸素含有反応物を堆積チャンバ内に注入し、酸素含有反応物をイットリウム含有前駆体と反応させ、Y
2O
3のサブ層を形成するステップと、
ジルコニウム含有前駆体を堆積チャンバ内に注入し、ジルコニウム含有前駆体をY
2O
3のサブ層の表面上に吸着させるステップと、
酸素含有反応物又は代替的な酸素含有反応物を堆積チャンバ内に注入し、酸素含有反応物又は代替的な酸素含有反応物をジルコニウム含有前駆体と反応させ、ZrO
2のサブ層を形成するステップとを含み、
第2の層を堆積させるステップは、目標厚さが達成されるまで1以上の堆積サイクル又は1以上の追加の堆積サイクルの少なくとも1を1回以上繰り返す請求項1記載の方法。
【請求項4】
耐プラズマ性コーティングをアニールし、Y
2O
3のサブ層とZrO
2のサブ層を相互拡散し、Y
2O
3-ZrO
2固溶体を含む相を形成するステップを含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
第2の層を堆積させるステップは、堆積サイクルを実行することによって、Y
2O
3とZrO
2を同時堆積させて、Y
2O
3-ZrO
2固溶体を含む相を形成することを含み、堆積サイクルは、
チャンバコンポーネントを含む堆積チャンバ内にY
2O
3の第1の前駆体とZrO
2の第2の前駆体の混合物を同時注入し、第1の前駆体と第2の前駆体を第1の層の表面上に吸着させるステップと、
酸素含有反応物を堆積チャンバ内に注入し、酸素含有反応物を第1の前駆体と第2の前駆体と反応させて、Y
2O
3-ZrO
2固溶体を含む相を形成するステップを含み、
第2の層を堆積させるステップは、目標厚さが達成されるまで堆積サイクルを1回以上繰り返す請求項1記載の方法。
【請求項6】
第2の層は、10~90mol%のY
2O
3と10~90mol%のZrO
2の混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2の層は、40~80mol%のY
2O
3と20~60mol%のZrO
2との混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
第2の層は、60~70mol%のY
2O
3と30~40mol%のZrO
2との混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
耐プラズマ性コーティングが堆積されるチャンバコンポーネントの表面は、長さの幅に対するアスペクト比が10:1~300:1であり、耐プラズマ性コーティングは表面を均一に覆う請求項1記載の方法。
【請求項10】
第2の層は、Y
4Al
2O
9とY
2O
3-ZrO
2固溶体とを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
原子層堆積(ALD)プロセスを使用して、Y
2O
3-ZrO
2固溶体を含む第1の材料とアモルファス酸化物を含む第2の材料の交互層のスタックをチャンバコンポーネントの表面上に堆積させるステップであって、
1以上の第1の前駆体を使用してALDプロセスを1~30サイクル実行し、Y
2O
3-ZrO
2固溶体を含む第1の材料を堆積させるステップと、
第2の前駆体を使用してALDプロセスの1~2サイクルを実行し、アモルファス酸化物を含む第2の材料を堆積させるステップと、
1以上の第1の前駆体を用いて第1の材料を堆積させるALDプロセスの1~30サイクルと、第2の前駆体を用いて第2の材料を堆積させるALDプロセスの1~2サイクルを交互に繰り返すステップを含み、
交互層のスタックは10nm~1.5μmの厚さを有し、第2の材料の層は第1の材料の層内での結晶形成を防止する方法。
【請求項12】
交互の層のスタックを堆積させる前に、ALDプロセスの複数のサイクルを使用して、表面上にアモルファスAl
2O
3層を10nm~1.5μmの厚さに堆積させる請求項11記載の方法。
【請求項13】
第1の材料の層の1つを堆積させるステップはY
2O
3とZrO
2との交互堆積を含み、第1の材料の層の1つを堆積させるステップは、
1以上の堆積サイクルを実行するステップであって、
イットリウム含有前駆物質をチャンバコンポーネントを含む堆積チャンバに注入し、イットリウム含有前駆体をチャンバコンポーネントの表面に吸着させるステップと、
酸素含有反応物を堆積チャンバ内に注入し、酸素含有反応物をイットリウム含有前駆体と反応させ、Y
2O
3のサブ層を形成するステップとを含む1以上の堆積サイクルを実行するステップと、
1以上の追加の堆積サイクルを実行するステップであって、
ジルコニウム含有前駆体を堆積チャンバに注入し、ジルコニウム含有前駆体をY
2O
3のサブ層の表面上に吸着させるステップと、
酸素含有反応物又は代替的な酸素含有反応物を堆積チャンバに注入して、酸素含有反応物または代替的な酸素含有反応物をジルコニウム含有前駆体と反応させてZrO
2のサブ層を形成するステップを含む1以上の追加の堆積サイクルを実行するステップを含む請求項11記載の方法。
【請求項14】
チャンバコンポーネントをアニールし、Y
2O
3のサブ層とZrO
2のサブ層を相互拡散させ、Y
2O
3-ZrO
2の固溶体を含む相を形成する請求項13記載の方法。
【請求項15】
第1の材料の層の1つを堆積させるステップは、Y
2O
3とZrO2とを共堆積させて、Y
2O
3-ZrO
2の固溶体を含む相を形成するステップを含み、
第1の材料の層の1つを堆積させるステップは、
Y
2O
3の第1の前駆体とZrO
2の第2の前駆体との混合物をチャンバコンポーネントを含む堆積チャンバに共注入し、第1の前駆体と第2の前駆体をチャンバコンポーネントの表面に吸着させるステップと、
酸素含有反応物を堆積チャンバに注入し、酸素含有反応物を第1の前駆体および第2の前駆体と反応させ、Y
2O
3-ZrO
2の固溶体を含む相を形成させるステップを含む堆積サイクルを実行するステップを含む請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、物品、コーティングされたチャンバコンポーネント、及び多層耐プラズマ性コーティングを有するチャンバコンポーネントをコーティングする方法に関する。プラズマセラミックスコーティングは、アモルファス応力緩和層と、1以上の希土類金属を含有する酸化物(例えば、イットリウム含有酸化物)層とを有する。コーティングの各層は、原子層堆積を用いて形成される。
【背景】
【0002】
様々な製造プロセスは、高温、高エネルギープラズマ、腐食性ガスの混合物、高ストレス、及びそれらの組み合わせに半導体処理チャンバコンポーネントを曝露させる。これらの極端な条件は、チャンバコンポーネントを腐食及び/又は浸食させ、チャンバコンポーネントの欠陥に対する感受性を増加させる可能性がある。このような極端な環境において、これらの欠陥を低減し、コンポーネントの耐腐食性及び/又は耐浸食性を改善することが望ましい。
【0003】
保護コーティング膜は、典型的には、様々な方法(例えば、溶射、スパッタリング、イオンアシスト蒸着(IAD)、プラズマ溶射、又は蒸発技術)によってチャンバコンポーネント上に堆積される。これらの技術は、約10:1~約300:1のアスペクト比を有するチャンバコンポーネントの特定の構造(例えば、ピット、シャワーヘッド孔など)の中にコーティングを堆積させることができない。このような構造のコーティングの不良は、品質の悪い膜又はまったくコーティングされないチャンバコンポーネントの部分をもたらす可能性がある。
【概要】
【0004】
本明細書に記載の実施形態のいくつかは、約3:1~約300:1のアスペクト比を有する部分を有する物品を網羅する。物品は、物品の一部の表面上に耐プラズマ性コーティングを含む。耐プラズマ性コーティングは、約10nm~約1.5μmの厚さを有するアモルファス応力緩和層と、約10nm~約1.5μmの厚さを有する希土類金属含有酸化物層とを含み、希土類金属含有酸化物層は、アモルファス応力緩和層を覆う。耐プラズマ性コーティングは、その部分を均一に覆い、最高300℃の温度で割れ及び層間剥離に対して耐性があり、空孔が無い。
【0005】
いくつかの実施形態では、方法は、原子層堆積(ALD)プロセスを使用してチャンバコンポーネントの表面上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップを含む。ALDプロセスは、ALDを用いて表面上にアモルファス応力緩和層を約10nm~約1.5μmの厚さまで堆積させるステップと、ALDを用いて応力緩和層上に希土類金属含有酸化物層を約10nm~約1.5μmの厚さまで堆積させるステップとを含む。耐プラズマ性コーティングは、チャンバコンポーネントの表面を均一に覆い、最高350℃の温度で割れ及び層間剥離に対して耐性があり、空孔が無い。いくつかの実施形態では、希土類金属含有酸化物を堆積させるステップは、イットリウム含有酸化物と追加の金属酸化物を同時堆積させて単相イットリウム含有酸化物層を形成するステップを含む。同時堆積は、イットリウム含有酸化物のための第1の前駆体と追加の金属酸化物のための第2の前駆体との混合物をチャンバコンポーネントを含む堆積チャンバに同時注入することによって実行され、第1の前駆体と第2の前駆体をアモルファス応力緩和層の表面に吸着させて第1の半反応を形成することができる。続いて、酸素含有反応物質を堆積チャンバ内に注入して、第2の半反応を形成することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、方法は、原子層堆積(ALD)プロセスを使用してチャンバコンポーネントの表面上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップを含む。ALDプロセスは、ALDプロセスの複数のサイクルを使用して、約10nm~約1.5μmの厚さまで表面上にアモルファス応力緩和層を堆積させるステップを含む。ALDプロセスは、希土類金属含有酸化物と第2の酸化物との交互層のスタックを約10nm~約1.5μmの厚さまで続いて堆積させるステップを更に含む。希土類金属含有酸化物の層の各々は、約1~30サイクルのALDプロセスを実行することによって形成され、約1~100オングストロームの厚さを有する。第2の酸化物の層の各々は、1~2サイクルのALDプロセスを実行することによって形成され、約0.5~4オングストロームの厚さを有する。第2の酸化物の層は、希土類金属含有酸化物の層内の結晶形成を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示は、同じ参照符号が同様の要素を示す添付図面の図において、限定としてではなく例として示されている。本開示における「1つの」又は「一」実施形態への異なる参照は、必ずしも同じ実施形態への参照ではなく、そのような参照は少なくとも1つを意味することが留意されるべきである。
【
図2A】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの一実施形態を示す。
【
図2B】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
【
図2C】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
【
図3A】本明細書に記載の原子層堆積を使用して耐プラズマ性コーティングを生成する方法を示す。
【
図3B】本明細書に記載の原子層堆積を使用して耐プラズマ性コーティングを生成する方法を示す。
【
図4A】実施形態に係るシャワーヘッドチャンバコンポーネントを示す。
【
図4B】ガス導管の内部が本明細書に記載されるような耐プラズマ性コーティングでコーティングされているガス導管の拡大図を示す。
【
図4C】実施形態に係るサーマルパイチャンバコンポーネントを示す。
【
図5】異なる材料に対して、1分当たりの総質量損失(μg/cm
2)におけるガス放出を比較したチャートである。
【
図6】高アスペクト比の構造を有するコンポーネント上の、本明細書に記載されるような耐プラズマ性コーティングの画像である。
【
図7A】本明細書に記載されるような耐プラズマ性コーティングのトップダウンSEM画像を示す。
【
図7B】
図7Aの耐プラズマ性コーティングのTEM断面画像を示す。
【
図8A】物品上にAl
2O
3応力緩和層のないY
2O
3のALDコーティングのトップダウンSEM画像を示す。
【
図8B】物品上の
図8AのALDコーティングの断面画像を示す。
【
図9】
図2Cに関して記載されたようなAl6061基板上の耐プラズマ性セラミックスコーティング構造の断面側面TEM画像を示す。
【
図10】
図9に示す耐プラズマ性セラミックス試料の走査透過型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(STEM-EDS)の線走査である。
【詳細な説明】
【0008】
本明細書に記載の実施形態は、応力緩和層と、希土類金属含有酸化物層(例えば、イットリウム含有酸化物層)とを有する耐プラズマ性コーティングが、コンポーネントの表面上に堆積された物品、コーティングされたチャンバコンポーネント、及び方法を網羅する。本明細書で使用される場合、耐プラズマ性という用語は、プラズマならびに化学物質及びラジカルに対する耐性を意味する。表面は、アルミニウム(例えば、Al6061、Al6063)又はセラミックス材料とすることができる。堆積プロセスは、希土類金属含有酸化物層のための前駆体の同時堆積を含むことができる原子層堆積(ALD)プロセスである。耐プラズマ性コーティングは、二層スタックから構成することができる。二層スタックは、酸化アルミニウム(Al2O3)(例えば、アモルファスAl2O3)の応力緩和層と、イットリウム含有酸化物層とを含むことができる。本明細書の実施形態は、一例としてイットリウム含有酸化物層を用いて説明される。最上層は、(すなわち、イットリウムを含む又は含まない)任意の希土類金属酸化物又は希土類金属酸化物の単相又は多相混合物を含むことができることが理解される。
【0009】
多層耐プラズマ性コーティングにおける各層の厚さは、約10nm~約1.5μmとすることができる。実施形態において、応力緩和層(例えば、アモルファスAl2O3)は、約1.0μmの厚さを有することができ、希土類金属含有酸化物層は、約50nmの厚さを有することができる。応力緩和層の厚さに対する希土類金属含有酸化物層の厚さの比は、200:1~1:200とすることができる。厚さの比は、特定のチャンバ用途に応じて選択することができる。コーティングは、2つの層の間に相互拡散した固体相を含む1以上の中間層を生成するためにアニールされてもよい。耐プラズマ性コーティングは、約10:1~約300:1のアスペクト比を有する物品内の構造の表面をコーティングする又は覆うことができる。耐プラズマ性コーティングはまた、実質的に均一な厚さでそのような構造をコンフォーマルに覆うことができる。一実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、約±20%未満の厚さばらつき、±10%の厚さばらつき、±5%の厚さばらつき、又はより小さい厚さばらつきを有する均一な厚さによってコーティングされた下地表面(コーティングされた表面構造を含む)のコンフォーマルな被覆を有する。
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、応力緩和層(例えばアモルファスAl2O3)及びその上に希土類金属含有酸化物層(例えば、イットリウム含有酸化物層(例えば、別の希土類金属酸化物と単一相に堆積されたY2O3))を有する耐プラズマ性コーティングでチャンバコンポーネント及び他の物品の高アスペクト比の構造を効果的にコーティングすることを可能にする。耐プラズマ性コーティングは、高アスペクト比の構造内でコンフォーマルであり、実質的に均一なコーティング(例えば、約±5%以下の厚さのばらつき)で構造を覆うことができる。耐プラズマ性コーティングはまた、約0%の空孔率によって非常に稠密である(例えば、耐プラズマ性コーティングは、実施形態において、空孔無しとすることができる)。応力緩和層及び希土類含有酸化物層を有する耐プラズマ性コーティングは、プラズマエッチング化学物質(例えば、CCl4/CHF3プラズマエッチング化学物質、HCl3Siエッチング化学物質、及びNF3エッチング化学物質)からの腐食及び浸食に対して耐性があることができる。また、応力緩和層及び希土類金属含有酸化物層を有する本明細書に記載の耐プラズマコーティングは、最高約350℃の温度で割れ及び層間剥離に耐性を有することができる。例えば、本明細書に記載の耐プラズマ性コーティングを有するチャンバコンポーネントは、約200℃の温度への加熱を含むプロセスで使用することができる。チャンバコンポーネントは、耐プラズマ性コーティング内に割れ又は層間剥離を導入することなく、室温と約200℃の温度との間で熱サイクルさせることができる。
【0011】
ALDは、物品の表面との化学反応を介して材料の制御された自己制限的堆積を可能にする。コンフォーマルプロセスに加えて、ALDはまた、一様なプロセスである。高アスペクト比の構造(例えば、約10:1~約300:1)を含む、物品の露出された全ての面は、堆積された材料と同じ又はほぼ同じ量を有する。ALDプロセスの典型的な反応サイクルは、前駆体(すなわち、単一の化学物質A)をALDチャンバ内に溢れさせて、物品の表面上に吸着させることから始まる。過剰な前駆体は、その後、反応物質(すなわち、単一の化学物質R)がALDチャンバに導入され、その後、洗い流される前に、ALDチャンバから洗い流される。しかしながら、セラミックスコーティング中のイットリウム含有酸化物層(又は他の希土類金属酸化物層)は、材料の同時堆積によって形成することができる。これを達成するために、2つの前駆体(例えば、イットリウム含有酸化物前駆体(A)(例えばY2O3)と別の希土類金属酸化物(B)前駆体)の混合物を任意の数の比率(例えば、A90+B10、A70+B30、A50+B50、A30+B70、A10+A90など)でチャンバ内に同時注入し(AxBy)、物品の表面に吸着させる。これらの例において、x及びyは、Ax+Byのモル分率(モル%)で表される。例えば、A90+B10は、Aの90モル%とBの10モル%である。余分な前駆体は洗い流される。反応物質がALDチャンバに導入され、過剰な化学物質が洗い流される前に吸着された前駆体と反応して固体層を形成する。ALDにとっては、材料の最終的な厚さは、各反応サイクルが1原子層又は原子層の一部とすることができる一定の厚さの層を成長させるので、実行される反応サイクルの数に依存する。
【0012】
高アスペクト比の構造を有するコンポーネント上にコーティングを堆積させるために典型的に使用される他の技術(例えば、プラズマ溶射コーティング及びイオンアシスト蒸着)とは異なり、ALD技術は、そのような構造内に(すなわち、構造の表面上に)材料の層を堆積させることができる。また、ALD技術は、空孔の無い(すなわち、ピンホールの無い)比較的薄い(すなわち、1μm以下の)コーティングを生成し、これは、堆積中の割れの形成を排除することができる。本明細書で使用される場合、「空孔の無い」という用語は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定されたときに、コーティングの深さ全体に沿って、細孔、ピンホール、空隙、又は割れが無いことを意味する。TEMは、明視野、暗視野、又は高解像度モードで、200kVで操作されるTEMを用いて、集束イオンビームミーリングによって調製された厚さ100nmのTEM薄片を用いて行うことができる。対照的に、従来の電子ビームIAD又はプラズマ溶射技術では、5又は10μmの厚さでさえも堆積の際に割れが形成され、空孔率は1~3%となる可能性がある。
【0013】
処理チャンバコンポーネント(例えば、チャンバ壁、シャワーヘッド、ノズル、プラズマ生成ユニット(例えば、ハウジング付き高周波電極)、ディフューザ及びガスライン)は、過酷なエッチング環境でコンポーネントを保護するために、これらの耐プラズマ性コーティングを有することから恩恵を受ける。これらのチャンバコンポーネントの多くは、約10:1~約300:1の範囲のアスペクト比を有し、従来の堆積方法を用いてそれらを良好にコーティングすることは困難となる。本明細書に記載された実施形態は、高アスペクト比の物品(例えば、上述の処理チャンバコンポーネント)が、物品を保護する耐プラズマコーティングでコーティングされることを可能にする。例えば、実施形態は、ガスラインの内部、ノズルの内部、シャワーヘッドの穴の内部などを希土類金属含有酸化物セラミックスコーティングでコーティングすることを可能にする。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る応力緩和層及び希土類金属含有酸化物層を有する耐プラズマ性コーティングでコーティングされた1以上のチャンバコンポーネントを有する半導体処理チャンバ100の断面図である。処理チャンバ100は、プラズマ処理条件を有する腐食性プラズマ環境が提供される処理に対して使用することができる。例えば、処理チャンバ100は、プラズマエッチング装置又はプラズマエッチングリアクタ、プラズマ洗浄装置、プラズマ強化CVD、又はALDリアクタなどのためのチャンバとすることができる。耐プラズマ性コーティングを含むことができるチャンバコンポーネントの例には、複雑な形状及び高アスペクト比を有する孔を有するチャンバコンポーネントが含まれる。いくつかの例示的なチャンバコンポーネントは、基板支持アセンブリ148、静電チャック(ESC150)、リング(例えば、プロセスキットリング又は単一リング)、チャンバ壁、ベース、ガス分配プレート、処理チャンバのシャワーヘッド、ガスライン、ノズル、蓋、ライナー、ライナーキット、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザー、冷却ベース、チャンバビューポート、チャンバ蓋などを含む。以下でより詳細に説明される耐プラズマ性コーティングは、ALDプロセスを用いて施される。ALDは、複雑な形状及び高アスペクト比を有する構造を有するコンポーネントを含む全てのタイプのコンポーネントに空孔の無い実質的に均一な厚さのコンフォーマルなコーティングを施すことができる。
【0015】
耐プラズマ性コーティングは、応力緩和層のための前駆体と、希土類金属含有酸化物の堆積のための、又は1以上の追加の酸化物と組み合わせて希土類金属含有酸化物を同時堆積して希土類金属含有酸化物層を形成するための1以上の前駆体とを用いたALDを使用して成長又は堆積させることができる。一実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、多結晶構造を有する。希土類金属含有酸化物は、イットリウム、タンタル、ジルコニウム、及び/又はエルビウムを含むことができる。例えば、希土類金属含有酸化物は、イットリア(Y2O3)、酸化エルビウム(Er2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)等とすることができる。実施形態では、希土類金属含有酸化物は、多結晶イットリアである。他の実施形態では、希土類金属含有酸化物は、アモルファスイットリアである。希土類金属含有酸化物はまた、1以上の希土類元素(例えば、イットリウム、ジルコニウム、及び/又はエルビウム)と混合されたアルミニウムを含むことができる。希土類金属含有酸化物層を形成するために、希土類金属含有酸化物と同時堆積することができる追加の1又は複数の酸化物は、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化エルビウム(Er2O3)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。多層耐プラズマ性コーティングのためのイットリウム含有酸化物層は、例えば、YxZryOz、YaZrxAlyOz、YxAlyOz、又はYxEryOzとすることができる。イットリウム含有酸化物は、空間群Ia-3(206)を有する立方体構造を有するイットリア石を有するイットリア(Y2O3)であってもよい。
【0016】
一実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、Y2O3、Er2O3、Y3Al5O12(YAG)、Er3Al5O12(EAG)、又はY4Al2O9(YAM)のうちの1つである。希土類金属含有酸化物層はまた、YAlO3(YAP)、Er4Al2O9(EAM)、ErAlO3(EAP)、Y2O3-ZrO2の固溶体、及び/又はY4Al2O9とY2O3-ZrO2固溶体とを含むセラミックス化合物であってもよい。
【0017】
Y2O3-ZrO2の固溶体に関して、希土類金属含有酸化物層は、10~90モル分率(モル%)の濃度のY2O3と、10~90モル%のZrO2とを含むことができる。いくつかの例では、Y2O3-ZrO2の固溶体は、10~20モル%のY2O3と、80~90モル%のZrO2とを含むことができる、20~30モル%のY2O3と、70~80モル%のZrO2とを含むことができる、30~40モルのY2O3と、60~70モル%のZrO2とを含むことができる、40~50モル%のY2O3と、50~60モル%のZrO2とを含むことができる、60~70モル%のY2O3と、30~40モル%のZrO2とを含むことができる、70~80モル%のY2O3と、20~30モル%のZrO2とを含むことができる、80~90モル%のY2O3と、10~20モル%のZrO2とを含むことができる、などである。
【0018】
Y4Al2O9とY2O3-ZrO2固溶体とを含むセラミックス化合物に関して、一実施形態では、セラミックス化合物は、62.93モル分率(モル%)のY2O3と、23.23モル%のZrO2と、13.94モル%のAl2O3とを含む。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、50~75モル%の範囲のY2O3と、10~30モル%のZrO2と、10~30モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~100モル%の範囲のY2O3と、0.1~60モル%のZrO2と、0.1~10モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~60モル%の範囲のY2O3と、30~50モル%のZrO2と、10~20モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~50モル%の範囲のY2O3と、20~40モル%のZrO2と、20~40モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、70~90モル%の範囲のY2O3と、0.1~20モル%のZrO2と、10~20モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、60~80モル%の範囲のY2O3と、0.1~10モル%のZrO2と、20~40モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~60モル%の範囲のY2O3と、0.1~20モル%のZrO2と、30~40モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。他の実施形態では、セラミックス化合物に対して他の配分を使用することもできる。
【0019】
一実施形態では、希土類金属含有酸化物層に対して、Y2O3、ZrO2、Er2O3、Gd2O3、及びSiO2の組み合わせを含む代替のセラミックス化合物が使用される。一実施形態では、代替のセラミックス化合物は、40~45モル%の範囲のY2O3と、0~10モル%のZrO2と、35~40モル%のEr2O3と、5~10モル%の範囲のGd2O3と、5~15モル%のSiO2とを含むことができる。第1の例では、代替のセラミックス化合物は、40モル%のY2O3と、5モル%のZrO2と、35モル%のEr2O3と、5モル%のGd2O3と、15モル%のSiO2とを含む。第2の例では、代替のセラミックス化合物は、45モル%のY2O3と、5モル%のZrO2と、35モル%のEr2O3と、10モル%のGd2O3と、5モル%のSiO2とを含む。第3の例では、代替のセラミックス化合物は、40モル%のY2O3と、5モル%のZrO2と、40モル%のEr2O3と、7モル%のGd2O3と、8モル%のSiO2とを含む。
【0020】
上記希土類金属含有酸化物層のいずれも、微量の他の物質(例えば、ZrO2、Al2O3、SiO2、B2O3、Er2O3、Nd2O3、Nb2O5、CeO2、Sm2O3、Yb2O3、又は他の酸化物)を含んでいてもよい。
【0021】
応力緩和層は、アモルファス酸化アルミニウム又は同様の材料を含むことができ、耐プラズマ性コーティングのチャンバコンポーネントへの接着性を改善するとともに、最高約350℃(一実施形態では、200℃、又は約200℃~約350℃)の温度で耐プラズマ性コーティングの割れ及び層間剥離に対する耐熱性を向上させる。
【0022】
図示のように、基板支持アセンブリ148は、一実施形態に係る耐プラズマ性コーティング136を有する。しかしながら、他のチャンバコンポーネント(例えば、チャンバ壁、シャワーヘッド、ガスライン、静電チャック、ノズル、その他)のいずれも、セラミックスコーティングでコーティングされてもよいことが理解されるべきである。
【0023】
一実施形態では、処理チャンバ100は、チャンバ本体102と、内部容積106を囲むシャワーヘッド130とを含む。シャワーヘッド130は、シャワーヘッドベース及びシャワーヘッドガス分配プレートを含むことができる。あるいはまた、シャワーヘッド130は、いくつかの実施形態では、蓋及びノズルによって置き換えてもよく、又は他の実施形態では、複数のパイ形のシャワーヘッド区画及びプラズマ生成ユニットによって置き換えてもよい。チャンバ本体102は、アルミニウム、ステンレス鋼、又は他の適切な材料から製造することができる。チャンバ本体102は、一般的に、側壁108及び底部110を含む。シャワーヘッド130(又は蓋及び/又はノズル)、側壁108、及び/又は底部110のいずれも、耐プラズマ性コーティングを含むことができる。
【0024】
外側ライナー116は、側壁108に隣接して配置され、チャンバ本体102を保護することができる。外側ライナー116は、二層コーティングで製造及び/又はコーティングすることができる。一実施形態では、外側ライナー116は、酸化アルミニウムから製造される。
【0025】
排気ポート126は、チャンバ本体102内に画定されることができ、内部容積106をポンプシステム128に結合することができる。ポンプシステム128は、排気して処理チャンバ100の内部容積106の圧力を調節するために使用される1以上のポンプ及びスロットルバルブを含むことができる。
【0026】
シャワーヘッド130は、チャンバ本体102の側壁108上に支持することができる。シャワーヘッド130(又は蓋)は、処理チャンバ100の内部容積106へのアクセスを可能にするように開放することができ、閉じている間は、処理チャンバ100に対してシールを提供することができる。ガスパネル158は、処理チャンバ100に結合されて、処理ガス及び/又は洗浄ガスを、シャワーヘッド130又は蓋及びノズルを介して内部容積106に提供することができる。シャワーヘッド130は、誘電体エッチング(誘電体材料のエッチング)に使用される処理チャンバ用に使用することができる。シャワーヘッド130は、ガス分配プレート(GDP)133を含み、GDP133は、GDP133の全域にわたって複数のガス供給穴132を有する。シャワーヘッド130は、アルミニウムベース又は陽極酸化アルミニウムベースに接合されたGDP133を含むことができる。GDP133は、Si又はSiCから製造することができる、又はセラミックス(例えば、Y
2O
3、Al
2O
3、Y
3Al
5O
12(YAG)など)とすることができる。シャワーヘッド130及び送出穴132は、
図4A及び
図4Bに関して以下でより詳細に説明するように、耐プラズマ性コーティングでコーティングすることができる。
【0027】
導体エッチング(導電性材料のエッチング)用に使用される処理チャンバでは、シャワーヘッドではなく蓋を使用することができる。蓋は、蓋の中心穴に嵌合する中心ノズルを含むことができる。蓋は、セラミックス(例えば、Al2O3、Y2O3、YAG)、又はY4Al2O9とY2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物とすることができる。ノズルもまた、セラミックス(例えば、Y2O3、YAG)、又はY4Al2O9とY2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物とすることができる。蓋、シャワーヘッドベース104、GDP133、及び/又はノズルは、一実施形態に係る耐プラズマ性コーティングですべてコーティングされてもよい。
【0028】
処理チャンバ100内で基板を処理するために使用することができる処理ガスの例は、ハロゲン含有ガス(例えば、とりわけ、C2F6、SF6、SiCl4、HBr、NF3、CF4、CHF3、CH2F3、F、NF3、Cl2、CCl4、BCl3、及びSiF4)、及び他のガス(例えば、O2又はN2O)を含む。キャリアガスの例は、N2、He、Ar、及び処理ガスに対して不活性な他のガス(例えば、非反応性ガス)を含む。基板支持アセンブリ148は、シャワーヘッド130又は蓋の下方の処理チャンバ100の内部容積106内に配置される。基板支持アセンブリ148は、処理中に基板144を保持する。リング146(例えば、単一のリング)は、静電チャック150の一部を覆うことができ、覆われた部分が処理中にプラズマに曝露されないように保護することができる。一実施形態では、リング146はシリコン又は石英であってもよい。
【0029】
内側ライナー118は、基板支持アセンブリ148の周囲を覆うことができる。内側ライナー118は、ハロゲン含有ガス耐性材料(例えば、外側ライナー116を参照して論じられたもの)とすることができる。一実施形態では、内側ライナー118は、外側ライナー116と同じ材料から製造されてもよい。更に、内側ライナー118はまた、本明細書で説明されたような耐プラズマ性コーティングでコーティングされてもよい。
【0030】
一実施形態では、基板支持アセンブリ148は、台座152を支持する取り付けプレート162と、静電チャック150とを含む。静電チャック150は、熱伝導ベース164と、熱伝導ベースに接合剤138によって接合された静電パック166とを更に含み、接合剤138は、一実施形態では、シリコーン接合剤とすることができる。静電パック166の上面は、図示の実施形態では、イットリウム系酸化物耐プラズマ性コーティング136によって覆うことができる。耐プラズマ性コーティング136は、熱伝導性ベース164及び静電パック166の外側及び側部周縁部を含む静電チャック150の露出面全体、ならびに静電チャック内でアスペクト比の大きい他の幾何学的に複雑な部品又は穴に配置することができる。取り付け板162は、チャンバ本体102の底部110に結合され、ユーティリティ(例えば、流体、電力線、センサリードなど)を熱伝導ベース164及び静電パック166に経路付ける(ルーティングする)ための通路を含む。
【0031】
熱伝導ベース164及び/又は静電パック166は、1以上のオプションの埋設された加熱素子176、埋設された熱アイソレータ174、及び/又は導管168、170を含み、基板支持アセンブリ148の横方向の温度プロファイルを制御することができる。導管168、170は、導管168、170を介して温度調節流体を循環させる流体源172に流体的に結合することができる。一実施形態では、埋設されたアイソレータ174は、導管168、170の間に配置することができる。ヒータ176は、ヒータ電源178によって調整される。導管168、170及びヒータ176を使用して、熱伝導ベース164の温度を制御することができる。導管及びヒータは、静電パック166及び処理される基板(例えば、ウェハ)144を加熱及び/又は冷却する。静電パック166及び熱伝導ベース164の温度は、コントローラ195を使用して監視することができる複数の温度センサ190、192を使用して監視することができる。
【0032】
静電パック166は、複数のガス通路(例えば、溝、メサ、及びパック166の上面に形成することができる他の表面構造)を更に含むことができる。これらの表面構造は、すべて、一実施形態に係るイットリウム系酸化物耐プラズマ性コーティングでコーティングすることができる。ガス通路は、静電パック166内に穿孔された孔を介して、熱伝達(又は裏面)ガス(例えば、He)の供給源に流体結合させることができる。動作中、裏面ガスは、制御された圧力でガス通路に供給され、静電パック166と基板144との間の熱伝達を促進することができる。
【0033】
静電パック166は、チャッキング電源182によって制御される少なくとも1つのクランプ電極180を含む。クランプ電極180(又は静電パック166又はベース164内に配置された他の電極)は、処理チャンバ100内の処理ガス及び/又は他のガスから形成されたプラズマを維持するための整合回路188を介して1以上のRF電源184、186に更に結合することができる。RF電源184、186は、一般的に、約50kHz~約3GHzの周波数と、最大約10000ワットの電力を有するRF信号を生成することができる。
【0034】
図2Aは、物品上に耐プラズマ性コーティングを成長又は堆積させるためのALD技術による堆積プロセスの一実施形態を示す。
図2Bは、本明細書に記載されるような原子層堆積技術による堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
図2Cは、本明細書に記載されるような原子層堆積技術による堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
【0035】
様々なタイプのALDプロセスが存在し、特定のタイプは、いくつかの要因(例えば、コーティングされるべき表面、コーティング材料、表面とコーティング材料との間の化学的相互作用など)に基づいて選択することができる。様々なALDプロセスの一般的な原理は、自己限定的に一度に1つずつ表面と化学的に反応するガス状化学前駆体のパルスにコーティングされる表面を繰り返し曝露させることによって薄膜層を成長させることを含む。
【0036】
図2A~
図2Cは、表面を有する物品210を示す。物品210は、基板支持アセンブリ、静電チャック(ESC)、リング(例えば、プロセスキットリング又は単一リング)、チャンバ壁、ベース、ガス分配プレート、ガスライン、シャワーヘッド、プラズマ電極、プラズマハウジング、ノズル、蓋、ライナー、ライナーキット、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザー、冷却ベース、チャンバビューポート、チャンバ蓋、ディフューザなどを含むがこれらに限定されない様々な処理チャンバコンポーネントを表すことができる。物品210は、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼)、セラミックス、金属セラミックス複合材料、ポリマー、ポリマーセラミックス複合材料、マイラー、ポリエステル、又は他の適切な材料から作製することができ、AlN、Si、SiC、Al
2O
3、SiO
2等の材料を更に含んでもよい。
【0037】
ALDの場合、表面上への前駆体の吸着又は吸着された前駆体との反応物質の反応は、「半反応」と呼ぶことができる。第1の半反応の間、前駆体は、前駆体を表面上に完全に吸着可能にするのに十分な時間の間、物品210の表面上に(又は物品210上に形成された層上に)パルスされる。前駆体が表面上の有限数の利用可能な部位に吸着され、表面上に均一な連続吸着層を形成するので、吸着は自己限定的である。前駆体によって既に吸着された任意の部位は、吸着した部位が均一な連続コーティング上に新たな利用可能な部位を形成する処理に付されない限り、及び/又はそのような処理に付されるまで、同じ前駆体によって更に吸着することができなくなる。例示的な処理は、プラズマ処理、均一な連続吸着層をラジカルに曝露することによる処理、又は表面に吸着された直近の均一な連続層と反応することができる異なる前駆体の導入とすることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、2以上の前駆体が共に注入され、物品の表面上に吸着される。過剰な前駆体は、酸素含有反応物質が注入されて固体の単相又は多相層(例えば、YAGの層、Y2O3-ZrO2の相など)を形成するために吸着物と反応するまで汲み出される。この新鮮な層は、次のサイクルで前駆体を吸着する準備ができている。
【0039】
図2Aにおいて、物品210の表面が第1の前駆体260で完全に吸着されて吸着層214を形成するまで、物品210は、第1の期間の間、前駆体260に導入することができる。続いて、物品210は、第1の反応物質265に導入され、吸着層214と反応して、固体応力緩和層216を成長させることができる。(例えば、これによって応力緩和層216は、完全に成長又は堆積される。ここで成長及び堆積という用語は、本明細書内で交換可能に使用することができる。)第1前駆体260は、例えば、アルミニウム又は他の金属のための前駆体とすることができる。応力緩和層216が酸化物である場合、第1の反応物質265は、酸素、水蒸気、オゾン、純酸素、酸素ラジカル、又は別の酸素源とすることができる。従って、ALDを用いて応力緩和層216を形成することができる。
【0040】
応力緩和層216がアルミナ(Al2O3)応力緩和層である一例では、表面上のすべての反応部位が消費されるまでの第1の期間の間、第1の前駆体260(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))に物品210(例えば、Al6061基板)を導入することができる。残りの第1の前駆体260を洗い流し、次いでH2Oの第1の反応物質265をリアクタに注入して、第2の半サイクルを開始する。H2O分子が第1の半反応によって生成されたAl含有吸着層と反応した後、Al2O3の応力緩和層216が形成される。
【0041】
応力緩和層216は、均一で、連続的であり、コンフォーマルとすることができる。応力緩和層216は、実施形態において空孔が無い(例えば、0の空孔率を有する)、又は約0の空孔率(例えば、0%~0.01%の空孔率)を有することができる。層216は、単一のALD堆積サイクル後、いくつかの実施形態では、1原子層未満~数原子の厚さを有することができる。いくつかの有機金属前駆体分子は大きい。反応物質265と反応した後、大きな有機配位子は無くなり、はるかに小さな金属原子を残す可能性がある。(例えば、前駆体260の導入に続いて反応物質265が導入されるステップを含む)1つの完全なALDサイクルは、単一の原子層未満になる可能性がある。例えば、TMA及びH2Oによって成長させたAl2O3単分子層は、典型的には、約0.9~1.3Å/サイクルの成長速度を有し、一方、Al2O3格子定数は、a=4.7Å及びc=13Å(三方晶構造の場合)である。
【0042】
複数の完全なALD堆積サイクルを実施して、1原子~数原子の追加の部分によって厚さに追加する(例えば、前駆体260の導入、洗い流し、反応物質265の導入、及び再び洗い流しを含む)各完全サイクルによって、より厚い応力緩和層216を堆積させることができる。図示されているように、最高n回の完全サイクルが実行され、応力緩和層216を成長させることができ、ただし、nは1よりも大きい整数値である。実施形態では、応力緩和層216は、約10nm~約1.5μmの厚さを有する。応力緩和層216は、実施形態において約10nm~約15nm、他の実施形態において約0.8~1.2μmの厚さを有することができる。
【0043】
応力緩和層216は、堅牢な機械的特性を提供する。応力緩和層216は、絶縁耐力を向上させることができ、耐プラズマ性コーティングの(例えば、Al6061、Al6063、又はセラミックスで形成された)コンポーネントへのより良好な接着力を提供することができ、及び最高約200℃、最高約250℃、又は約200℃~約250℃の温度で耐プラズマ性コーティングの割れを防止することができる。更なる実施形態では、応力緩和層216は、最高約350℃の温度で耐プラズマ性コーティングの割れを防止することができる。そのような金属物品は、耐プラズマ性コーティングの希土類金属含有酸化物層の熱膨張係数よりも著しく高い可能性のある熱膨張係数を有する。最初に応力緩和層216を塗布することによって、物品と希土類金属含有酸化物層との間の熱膨張係数の不一致の有害な影響を管理することができる。堆積のためにALDが使用されるので、高アスペクト比の構造(例えば、シャワーヘッド内のガス送出穴又はガス送出ライン)の内面をコーティングすることができ、従って、コンポーネントの全体を腐食環境に曝露されることから保護することができる。
【0044】
実施形態では、層216は、Al2O3(例えば、アモルファスAl2O3)とすることができる。アモルファスAl2O3は、(例えば、イットリウム含有酸化物よりも)高い温度性能を有する。従って、イットリウム含有酸化物層又は他の希土類金属含有酸化物層の下に応力緩和層としてアモルファスAl2O3層を追加することは、イットリア/Al6061界面の一部の領域に集中する上昇した応力を緩和することによって、耐プラズマ性コーティング全体の耐熱性を高めることができる。更に、Al2O3は、共通元素(すなわち、アルミニウム)のため、アルミニウムベースのコンポーネントとの良好な接着性を有する。同様に、Al2O3は、共通元素(すなわち、酸化物)のため、希土類金属含有酸化物に対する良好な接着性を有する。これらの改良された界面は、ひび割れを開始しやすい界面欠陥を減少させる。
【0045】
また、アモルファスAl2O3層は、コンポーネント又は物品からの金属汚染物(例えば、Mg、Cuなどの微量金属)の希土類金属含有酸化物層内への移動を防止する障壁として作用することができる。例えば、銅ソース層がAl2O3応力緩和層216の上に堆積された試験が実施された。二次イオン質量分析(SIMS)深さプロファイルは、300℃で4時間アニールした後に、Al2O3応力緩和層216内に、又はAl2O3応力緩和層216を介して銅が拡散しなかったことを示している。
【0046】
その後、応力緩和層216の表面が1以上の追加の前駆体270で完全に吸着されて吸着層218を形成するまで、第2の期間の間、層216を有する物品210を追加の1以上の前駆体270に導入することができる。その後、物品210を反応物質275に導入して、吸着層218と反応させて、簡単のために第2の層220とも呼ばれる固体希土類金属含有酸化物層220を成長させることができる(例えば、これによって第2の層220は、完全に成長又は堆積される)。従って、第2の層220は、ALDを用いて応力緩和層216の上に完全に成長又は堆積される。一例では、前駆体270は、第1の半サイクルで使用されるイットリウム含有前駆体とすることができ、反応物質275は、第2の半サイクルで使用されるH2Oとすることができる。
【0047】
第2の層220は、イットリウム含有酸化物層又は他の希土類金属含有酸化物層を形成し、これは、均一で、連続的、かつコンフォーマルとすることができる。第2の層220は、実施形態では1%未満、更なる実施形態では0.1%未満、及び実施形態では約0%の非常に低い空孔率を有する、又は更なる別の実施形態では空孔が無いことが可能である。第2の層220は、単一の完全なALD堆積サイクルの後に、1原子未満~数原子(例えば、2~3原子)の厚さを有することができる。複数のALD堆積段階を実施して、より厚い第2の層220を堆積させることができ、各段階で1原子~数原子の追加の部分が厚さに追加される。図示されるように、完全堆積サイクルは、m回繰り返されて、第2の層220が所望の厚さを有するようにすることができ、ただし、mは1より大きい整数値である。実施形態では、第2の層220は、約10nm~1.5μmの厚さを有することができる。第2の層220は、実施形態では、約10nm~約20nmの厚さを有することができ、又はいくつかの実施形態では、約50nm~約60nmの厚さを有することができる。他の実施形態では、第2の層220は、約90nm~約110nmの厚さを有することができる。
【0048】
応力緩和層の厚さに対する希土類金属含有酸化物層の厚さの比は、200:1~1:200とすることができる。応力緩和層の厚さに対する希土類金属含有酸化物層の厚さのより高い比(例えば、200:1、100:1、50:1、20:1、10:1、5:1、2:1など)は、より良好な耐腐食性及び耐浸食性を提供し、一方、応力緩和層の厚さに対する希土類金属含有酸化物層の厚さのより低い比(例えば、1:2、1:5、1:10、1:20、1:50、1:100、1:200)は、より良好な耐熱性(例えば、熱サイクルによって引き起こされる割れ及び/又は層間剥離に対する改善された耐性)を提供する。厚さ比は、特定のチャンバ用途に応じて選択することができる。一例では、高いスパッタレートを有する容量結合プラズマ環境に対しては、50nmの応力緩和Al2O3層上に1μmの最上層を堆積させることができる。高エネルギーイオン衝撃を伴わない高温化学又はラジカル環境に対しては、500nmの最下層を有する100nmの最上層が最適である可能性がある。厚い最下層はまた、耐プラズマ性コーティングが施されている下地の基板又は物品からの微量金属の拡散を防ぐことができる。
【0049】
第2の層220は、上述の希土類金属含有酸化物層のいずれかであってもよい。例えば、第2の層220は、単独又は1以上の他の希土類金属酸化物と組み合わせたY2O3とすることができる。いくつかの実施形態では、第2の層220は、ALDによって同時堆積された少なくとも2つの希土類金属含有酸化物前駆体の混合物から形成された単相材料(例えば、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2のうちの1以上の組み合わせ)である。例えば、第2の層220は、YxZryOz、YxEryOz、Y3Al5O12(YAG)、Y4Al2O9(YAM)、Y2O3安定化ZrO2(YSZ)、又はY4Al2O9と、Y2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物のうちの1つとすることができる。一実施形態では、応力緩和層216はアモルファスAl2O3であり、第2の層220は、単独又は1以上の他の希土類金属酸化物材料と単相にある多結晶又はアモルファスのイットリウム含有酸化物化合物(例えば、Y2O3、YxAlyOz、YxZryOz、YxEryOz)である。従って、応力緩和層216は、イットリウム含有酸化物層の堆積前に堆積された応力緩和層とすることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、第2の層220は、Er2O3、Y2O3、Al2O3、又はZrO2を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の層220は、ErxAlyOz(例えば、Er3Al5O12)、ErxZryOz、EraZrxAlyOz、YxEryOz、又はEraYxZryOz(例えば、Y2O3、ZrO2、及びEr2O3の単相固溶体)のうちの少なくとも1つの多成分材料である。第2の層220はまた、Y3Al5O12(YAG)、Y4Al2O9(YAM)、Y2O3安定化ZrO2(YSZ)、又はY4Al2O9と、Y2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物のうちの1つであってもよい。一実施形態では、第2の層220は、エルビウム含有化合物(例えば、Er2O3、ErxAlyOz、ErxZryOz、EraZrxAlyOz、YxEryOz、又はEraYxZryOz)である。
【0051】
図2B~
図2Cを参照すると、いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、3以上の層を含む。具体的には、耐プラズマ性コーティングは、応力緩和層と希土類金属含有酸化物層との交互層のシーケンスを含むことができる、又は応力緩和層と、希土類金属含有酸化物層のための交互層のシーケンスとを含むことができる。いくつかの実施形態では、希土類金属含有酸化物層は交互サブ層の層である。例えば、希土類金属含有酸化物層は、Y
2O
3とAl
2O
3の一連の交互サブ層、Y
2O
3とZrO
2の一連の交互サブ層、Y
2O
3とAl
2O
3とZrO
2との一連の交互サブ層などとすることができる。
【0052】
図2Bを参照すると、応力緩和層216を有する物品210を堆積チャンバに挿入することができる。応力緩和層216は、
図2Aを参照して説明したように形成することができる。応力緩和層216を有する物品210は、応力緩和層216の表面が1以上の追加の前駆体280に完全に吸着されて吸着層222を形成するまでの間、1以上の前駆体280に導入することができる。続いて、物品210は、反応物質282に導入されて、吸着層222と反応して、固体金属酸化物層224を成長させることができる。従って、金属酸化物層224は、ALDを使用して応力緩和層216の上に完全に成長又は堆積される。一例では、前駆体280は、第1の半サイクルで使用されるイットリウム含有前駆体とすることができ、反応物質282は、第2の半サイクルで使用されるH
2Oとすることができる。金属酸化物層224は、Y
2O
3、ZrO
2、Al
2O
3、Er
2O
3、Ta
2O
5、又は別の酸化物のうちの第1のものであってもよい。
【0053】
応力緩和層216及び金属酸化物層224を有する物品210は、金属酸化物層224の表面が1以上の前駆体284で完全に吸着されて吸着層226を形成するまでの間、1以上の前駆体284に導入することができる。続いて、物品210は、反応物質286に導入されて、吸着層226と反応して、追加の固体金属酸化物層228を成長させることができる。従って、追加の金属酸化物層228は、ALDを用いて金属酸化物層224の上に完全に成長又は堆積される。一例では、前駆体284は、第1の半サイクルで使用されるジルコニウム含有前駆体とすることができ、反応物質286は、第2の半サイクルで使用されるH2Oとすることができる。金属酸化物層224は、Y2O3、ZrO2、Al2O3、Er2O3、Ta2O5、又は別の酸化物のうちの第2のものであってもよい。
【0054】
図示のように、金属酸化物224及び第2の金属酸化物228の堆積は、n回繰り返して、交互層のスタック237を形成することができる(ただし、nは2より大きい整数値である)。Nは、目標とされる厚さ及び特性に基づいて選択される有限数の層を表すことができる。交互層のスタック237は、複数の交互サブ層を含む希土類金属含有酸化物層と考えることができる。従って、前駆体280、反応物質284、前駆体284、及び反応物質286は、順次繰り返して導入され、追加の交互層230、232、234、236などを成長又は堆積させることができる。層224、224、230、232、234、236等の各々は、単一原子層未満から数原子層の厚さを有する非常に薄い層とすることができる。例えば、TMA及びH2Oによって成長させたAl2O3単分子層は、典型的には、約0.9~1.3Å/サイクルの成長速度を有し、一方、Al2O3格子定数は、a=4.7Å及びc=13Å(三方晶構造の場合)である。
【0055】
上述の交互層224~236は1:1の比を有し、第2の金属酸化物の各単一層に対して第1の金属酸化物の単一層が存在する。しかしながら、他の実施形態では、異なる種類の金属酸化物層の間に他の比(例えば、2:1、3:1、4:1など)が存在してもよい。例えば、一実施形態では、各ZrO2層に対して2つのY2O3層を堆積させることができる。また、交互層224~236のスタック237は、2種類の金属酸化物層の交互の連なりとして記載されている。しかしながら、他の実施形態では、3種類以上の金属酸化物層が交互スタック237内に堆積されてもよい。例えば、スタック237は、3つの異なる交互層(例えば、Y2O3の第1の層、Al2O3の第1の層、ZrO2の第1の層、Y2O3の第2の層、Al2O3の第2の層、ZrO2の第2の層など)を含むことができる。
【0056】
交互層のスタック237が形成された後、アニール処理が実行され、異なる材料の交互層を互いに拡散させ、単相又は多相を有する複合酸化物を形成させることができる。従って、アニール処理後、交互層237のスタックは、単一の希土類金属含有酸化物層238となることができる。例えば、スタック中の層がY2O3、Al2O3、及びZrO2である場合、得られる希土類金属含有酸化物層238は、Y4Al2O9と、Y2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物となることができる。スタック中の層がY2O3及びZrO2である場合、Y2O3-ZrO2の固溶体を形成することができる。
【0057】
図2Cを参照すると、応力緩和層216を有する物品210を堆積チャンバに挿入することができる。応力緩和層216は、
図2Aを参照して説明したように形成することができる。応力緩和層216を有する物品210は、応力緩和層216の表面が1以上の前駆体290で完全に吸着されて吸着層240を形成するまでの間、1以上の前駆体290に導入することができる。その後、物品210は、反応物質292に導入されて、吸着層240と反応して固体希土類酸化物層242を成長させることができる。前駆体290及び反応物質292は、実施形態では、前駆体270及び反応物質275に対応することができる。従って、希土類酸化物層242は、ALDを用いて応力緩和層216の上に完全に成長又は堆積される。前駆体290を導入し、次いで反応物質292を導入するプロセスは、n回繰り返して、希土類酸化物層242を所望の厚さにすることができる(ただし、nは1より大きい整数)。
【0058】
応力緩和層216及び希土類酸化物層242を有する物品210は、希土類酸化物層242の表面が1以上の前駆体294で完全に吸着されて吸着層244を形成するまでの間、1以上の前駆体294に導入することができる。続いて、物品210を反応物質296に導入して、吸着層244と反応させてバリア層246を成長させることができる。前駆体294及び反応物質296は、実施形態では、前駆体260及び反応物質265に対応することができる。従って、バリア層244は、応力緩和層216と同じ材料組成を有してもよい。バリア層246は、ALDを用いて希土類酸化物層242の上に完全に成長又は堆積される。前駆体294を導入し、次いで反応物質296を導入するプロセスは、1~2回実行して、希土類酸化物層内の結晶成長を防止することができる薄いバリア層246を形成することができる。
【0059】
図示のように、希土類酸化物242及びバリア層228の堆積をm回繰り返して、交互層のスタック248を形成することができる(ただし、mは1より大きい整数値である)。Nは、目標とされた厚さ及び特性に基づいて選択される有限数の層を表すことができる。交互層のスタック248は、複数の交互のサブ層を含む希土類金属含有酸化物層と考えることができる。
【0060】
図2Cに示される最終構造は、アモルファス応力緩和層216と、希土類金属含有酸化物242と第2の酸化物又は他のセラミックス228との交互層のスタック248とを含む耐プラズマ性コーティングでコーティングされた物品210の断面側面図である。アモルファス応力緩和層216は、約10nm~約1.5μmの厚さを有することができる。実施形態では、応力緩和層は、約10~100nmの厚さを有することができる。更なる実施形態では、応力緩和層216は、約20~50nmの厚さを有することができる。更に別の実施形態では、応力緩和層216は、約20~30nmの厚さを有することができる。
【0061】
第2の酸化物又は他のセラミックスは、いくつかの実施形態において応力緩和層を形成するために使用される酸化物(例えば、Al2O3)と同じ酸化物であってもよい。あるいはまた、第2の酸化物又はセラミックスは、応力緩和層を形成するために使用される酸化物とは異なる酸化物であってもよい。
【0062】
希土類金属含有酸化物の各層は、約5~10オングストロームの厚さを有することができ、ALDプロセスの約5~10サイクルを実行することによって形成することができ、各サイクルは、希土類金属含有酸化物の1つのナノレイヤー(又は、1つのナノレイヤーよりもわずかに少ない又は多いナノレイヤー)を形成する。一実施形態では、希土類金属含有酸化物の各層は、約6~8ALDサイクルを使用して形成される。第2の酸化物又は他のセラミックスの各層は、単一のALDサイクル(又は数回のALDサイクル)から形成することができ、1原子未満~数原子の厚さを有することができる。希土類金属含有酸化物の層は、それぞれ、約5~100オングストロームの厚さを有することができ、第2の酸化物の層は、実施形態では、それぞれ約1~20オングストロームの厚さを有することができ、更なる実施形態では、1~4オングストロームの厚さを有することができる。希土類金属含有酸化物242及び第2の酸化物又は他のセラミックス228の交互層のスタック248は、約10nm~約1.5μmの合計厚さを有することができる。更なる実施形態では、スタック248は、約100nm~約1.5μmの厚さを有することができる。更なる実施形態では、スタック248は、約100nm~約300nm、又は約100~150nmの厚さを有することができる。希土類金属含有酸化物の層242の間の第2の酸化物又は他のセラミックス246の薄層は、希土類金属含有酸化物層における結晶形成を防止することができる。これにより、アモルファスイットリア層を成長可能にすることができる。
【0063】
【0064】
図2A~
図2Cを参照して説明された実施形態では、表面反応(例えば、半反応)が順次行われ、様々な前駆体及び反応物質は、実施形態においては接触していない。新しい前駆体又は反応物質の導入に先立って、ALDプロセスが行われるチャンバは、不活性キャリアガス(例えば、窒素又は空気)でパージして、未反応の前駆体及び/又は表面前駆体反応副生成物を除去することができる。前駆体は各層で異なり、イットリウム含有酸化物層又は他の希土類金属含有酸化物層のための第2の前駆体は、2つの希土類金属含有酸化物前駆体の混合物として、これらの化合物の同時堆積を促進して、単相材料層を形成することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの前駆体が使用され、他の実施形態では、少なくとも3つの前駆体が使用され、更に別の実施形態では、少なくとも4つの前駆体が使用される。
【0065】
ALDプロセスは、プロセスのタイプに応じて様々な温度で行うことができる。特定のALDプロセスに対して最適な温度範囲は、「ALD温度ウィンドウ」と呼ばれる。ALD温度ウィンドウより低い温度は、不良な成長速度と非ALDタイプの堆積をもたらす可能性がある。ALD温度ウィンドウより高い温度は、化学気相成長(CVD)機構を介して起こる反応をもたらす可能性がある。ALD温度ウィンドウは、約100℃~約400℃の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、ALD温度ウィンドウは、約120~300℃である。
【0066】
ALDプロセスは、複雑な幾何学的形状、高アスペクト比の孔、及び三次元構造を有する物品及び表面上に均一な厚さを有するコンフォーマルな耐プラズマ性コーティングを可能にする。各前駆体の表面への十分な曝露時間は、前駆体が分散し、その三次元の複雑な構造の全てを含む表面全体と完全に反応することを可能にする。高アスペクト比の構造においてコンフォーマルALDを得るために利用される曝露時間は、アスペクト比の2乗に比例し、モデリング技術を使用して予測することができる。また、ALD技術は、原材料(例えば、粉末原料及び焼結されたターゲット)の長期かつ困難な製造を必要とせずに、特定の組成物又は配合物のインサイチューでオンデマンドの材料合成を可能にするので、他の通常使用されるコーティング技術よりも有利である。いくつかの実施形態では、ALDを使用して、約10:1~約300:1のアスペクト比の物品をコーティングする。
【0067】
本明細書に記載のALD技術を用いて、多成分膜(例えば、YxAlyOz(例えば、Y3Al5O12)、YxZryOz、YaZrxAlyOz、YxEryOz、YxEryFz、又はYwErxOyFz)を、上記で説明され、以下の例においてより詳細に説明されるように、(例えば、希土類金属含有酸化物を単独で又は1以上の他の酸化物と組み合わせて成長させるために使用される前駆体の適切な混合物によって)成長、堆積、又は同時堆積することができる。
【0068】
図3Aは、物品(例えば、実施形態に係る処理チャンバコンポーネント)上に応力緩和層及び希土類金属含有酸化物層を含む耐プラズマ性コーティングを形成する方法300を示す。方法300は、約3:1~約300:1のアスペクト比(例えば、20:1、50:1、100:1、150:1などのアスペクト比)を有する物品を含む物品をコーティングするために使用することができる。本方法は、オプションとして、耐プラズマ性コーティングのための応力緩和層及びイットリウム含有酸化物層に対する組成を選択することによって開始してもよい。組成の選択及び形成方法は、同じエンティティによって、又は複数のエンティティによって実行されてもよい。
【0069】
本方法は、ブロック305において、酸性溶液で物品を洗浄することをオプションとして含むことができる。一実施形態では、物品は酸性溶液の浴中に浸される。酸性溶液は、実施形態において、フッ化水素酸(HF)溶液、塩酸(HCl)溶液、硝酸(HNO3)溶液、又はそれらの組み合わせとすることができる。酸性溶液は、物品から表面汚染物質を除去することができる、及び/又は物品の表面から酸化物を除去することができる。物品を酸性溶液で洗浄することにより、ALDを用いて堆積されたコーティングの品質を改善することができる。一実施形態では、約0.1~5.0体積%のHFを含む酸性溶液を使用して、石英から作られたチャンバコンポーネントを洗浄する。一実施形態では、約0.1~20体積%のHClを含む酸性溶液を使用して、Al2O3から作られた物品を洗浄する。一実施形態では、約5~15体積%のHNO3を含む酸性溶液を使用して、アルミニウム及び他の金属から作られた物品を洗浄する。
【0070】
ブロック310において、物品は、ALD堆積チャンバ内にロードされる。ブロック320において、本方法は、ALDを使用して物品の表面上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップを含む。一実施形態では、ブロック325において、ALDが実行され、応力緩和層を堆積させる。一実施形態では、ブロック330において、ALDが実行され、希土類金属含有酸化物層を単独で、又は1以上の他の酸化物と共に、堆積又は同時堆積させる。ALDは、実施形態において行われるような非常にコンフォーマルなプロセスであり、耐プラズマ性コーティングの表面粗さを、コーティングされる物品の下にある表面の表面粗さと一致させることができる。耐プラズマ性コーティングは、いくつかの実施形態では、約20nm~約10μmの全厚さを有することができる。他の実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、約100nm~約2ミクロンの厚さを有することができる。耐プラズマ性コーティングは、実施形態では約0%の空孔率を有してもよく、又は実施形態では空孔が無くてもよく、約±5%以下、±10%以下、又は±20%以下の厚さばらつきを有してもよい。
【0071】
一実施形態では、ブロック335において、ALDを実行して、希土類金属含有酸化物と追加の酸化物の交互層のスタックを堆積させる。追加の酸化物は、応力緩和層に使用される酸化物と同じであっても異なっていてもよい。
【0072】
イットリウム含有酸化物層は、イットリウム含有酸化物を含み、1以上の追加の希土類金属酸化物を含むことができる。イットリウムを含む希土類含有酸化物材料は、イットリウム含有酸化物が一般的に高い安定性、高い硬度、及び優れた耐浸食特性を有するので、実施形態において耐プラズマ性コーティングを形成するために使用することができる。例えば、Y2O3は、最も安定な酸化物の1つであり、標準生成ギブス自由エネルギー(ΔGf)が-1816.65kJ/molであり、Y2O3と大部分のプロセス化学物質との反応が標準条件下では熱力学的に不利であることを示している。本明細書の実施形態に従って堆積されたY2O3を有する応力緩和層及び希土類金属含有酸化物層を含む耐プラズマ性コーティングはまた、多くのプラズマ及び化学環境に対して低い浸食速度(例えば、200ワットのバイアス及び500℃で直接NF3プラズマ化学物質に曝露されたときの約0μm/秒の浸食速度)を有することができる。例えば、200ワットと500℃での直接NF3プラズマの1時間の試験では、測定可能な浸食は生じなかった。本明細書の実施形態に従って堆積された耐プラズマ性コーティングはまた、実施形態において最高約250℃まで、又は実施形態において最高約200℃まで、又は更なる実施形態において約200℃から約250℃までの温度で、割れ及び層間剥離に対して耐性を持つことができる。対照的に、従来のプラズマ溶射コーティング又はイオンアシスト蒸着を使用して形成されたコーティングは、堆積時及び200℃以下の温度で割れを形成する。
【0073】
耐プラズマ性コーティングを形成することができるイットリウム含有酸化物化合物の例としては、Y2O3、YxAlyOz(例えば、Y3Al5O12)、YxZryOz、YaZrxAlyOz、又はYxEryOzを含む。耐プラズマ性コーティング中のイットリウム含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及ぶことができる。イットリウム含有酸化物の場合、イットリウム含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及び、酸素含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及ぶことができる。
【0074】
耐プラズマ性コーティングを形成することができるエルビウム含有酸化物化合物の例としては、Er2O3、ErxAlyOz(例えば、Er3Al5O12)、ErxZryOz、EraZrxAlyOz、YxEryOz、及びEraYxZryOz(例えば、Y2O3、ZrO2、及びEr2O3の単相固溶体)を含む。耐プラズマ性コーティング中のエルビウム含有量は、約0.1原子%から約100原子%近くまで及ぶことができる。エルビウム含有酸化物の場合、エルビウム含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及ぶことができ、酸素含有量は、約0.1原子%~100原子%近くまで及ぶことができる。
【0075】
有利には、Y2O3及びEr2O3は混和性である。Y2O3とEr2O3との任意の組み合わせに対して単相固溶体を形成することができる。例えば、わずかに0モル%を超えるEr2O3とわずかに100モル%を下回るY2O3との混合物を組み合わせて同時堆積して、単相固溶体である耐プラズマ性コーティングを形成することができる。また、わずかに0モル%を超えるE2O3とわずかに100モル%を下回るY2O3との混合物を組み合わせて、単相固溶体である耐プラズマ性コーティングを形成することができる。YxEryOzの耐プラズマ性コーティングは、0モル%超~100モル%未満のY2O3と、0モル%超~100モル%未満のEr2O3とを含むことができる。いくつかの顕著な例には、90~99モル%のY2O3と1~10モル%のEr2O3、80~89モル%のY2O3と11~20モル%のEr2O3、70~79モル%のY2O3と21~30モル%のEr2O3、60~69モル%のY2O3と31~40モル%のEr2O3、50~59モル%のY2O3と41~50モル%のEr2O3、40~49モル%のY2O3と51~60モル%のEr2O3、30~39モル%のY2O3と61~70モル%のEr2O3、20~29モル%のY2O3と71~80モル%のEr2O3、10~19モル%のY2O3と81~90モル%のEr2O3、及び1~10モル%のY2O3と90~99モル%のEr2O3を含む。YxEryOzの単相固溶体は、約2330℃未満の温度で単斜立方状態を有することができる。
【0076】
有利には、ZrO2をY2O3及びEr2O3と組み合わせて、ZrO2、Y2O3、及びEr2O3の混合物を含む単相固溶体を形成することができる(例えば、EraYxZryOz)。YaErxZryOzの固溶体は、立方晶系、六方晶系、正方晶系及び/又は立方体の蛍石構造を有することができる。YaErxZryOzの固溶体は、0モル%超~60モル%のZrO2と、0モル%超~99モル%のEr2O3と、0モル%超~99モル%のY2O3とを含むことができる。使用することができるZrO2のいくつかの顕著な量は、2モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、30モル%、50モル%、及び60モル%を含む。使用することができるEr2O3及び/又はY2O3のいくつかの顕著な量は、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、及び90モル%を含む。
【0077】
YaZrxAlyOzの耐プラズマ性コーティングは、0モル%超~60モル%のZrO2、0モル%超~99モル%のY2O3、及び0モル%超~60モル%のAl2O3を含むことができる。使用することができるZrO2のいくつかの顕著な量は、2モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、30モル%、50モル%、及び60モル%を含む。使用することができるY2O3のいくつかの顕著な量は、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、及び90モル%を含む。使用することができるAl2O3のいくつかの顕著な量は、2モル%、5モル%、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、及び60モル%を含む。一例では、YaZrxAlyOzの耐プラズマ性コーティングは、42モル%のY2O3、40モル%のZrO2、及び18モル%のAl2O3を含み、層状構造を有する。別の一例では、YaZrxAlyOzの耐プラズマ性コーティングは、63モル%のY2O3、10モル%のZrO2、及び27モル%のAl2O3を含み、層状構造を有する。
【0078】
実施形態では、応力緩和層及びY2O3、YxAlyOz(例えば、Y3Al5O12)、YxZryOz、YaZrxAlyOz、又はYxEryOzの希土類金属含有酸化物層を含む耐プラズマ性コーティングは、低いガス放出速度、約1000V/μmのオーダーの絶縁破壊電圧、約1E-8トル/秒未満の気密性(リークレート)、約600~約950又は約685のビッカース硬さ、スクラッチテストで測定して約75mN~約100mN、又は約85mNの接着力、及び室温でのX線回折によって測定して約-1000~-2000MPa(例えば、約-1140MPa)膜応力を有する。
【0079】
図3Bは、アルミニウム物品(例えば、Al6061又はAl6063)(例えば、一実施形態に係る処理チャンバコンポーネント)上にイットリウム含有酸化物耐プラズマ性コーティングを形成する方法350を示す。本方法は、オプションとして耐プラズマ性コーティング用の組成物を選択することによって開始することができる。組成物の選択及び形成方法は、同じエンティティによって、又は複数のエンティティによって実行されてもよい。
【0080】
方法350のブロック352では、(例えば、処理チャンバコンポーネントの)物品の表面を、酸性溶液を用いて洗浄する。酸性溶液は、方法300のブロック305に関して上述した酸性溶液のいずれであってもよい。その後、物品をALD堆積チャンバにロードすることができる。
【0081】
ブロック355によると、本方法は、ALDを介して物品の表面上にアモルファスAl2O3の第1の層を堆積させるステップを含む。アモルファスAl2O3は、約10nm~約1.5μmの厚さを有することができる。ブロック360によると、本方法は、ALDを介してアモルファスAl2O3の応力緩和層上にイットリウム含有酸化物前駆体及び別の酸化物前駆体の混合物を同時堆積させる(すなわち、1ステップ内で堆積させる)ことによって第2の層を形成するステップを更に含む。第2の層は、例えば、Al2O3又はEr2O3又はZrO2との単一相内にY2O3を含むことができる。あるいはまた、第2の層は、複数の相(例えば、Y4Al2O9の相)と、Y2O3-ZrO2の固溶体を含む別の相とを含むことができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、応力緩和層は、ALDのために、ジエチルアルミニウムエトキシド、トリス(エチルメチルアミド)アルミニウム、アルミニウムsec-ブトキシド、アルミニウムトリブロミド、アルミニウムトリクロライド、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、又はトリス(ジエチルアミド)アルミニウムから選択される酸化アルミニウム前駆体から形成することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、イットリアであるか、又はイットリアを含み、希土類金属含有酸化物層を形成するために使用される酸化イットリウム前駆体は、ALDのために、トリス(N、N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム(III)、又はイットリウム(III)ブトキシドから選択されるか、又はそれを含むことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、酸化ジルコニウムを含む。希土類金属含有酸化物層が酸化ジルコニウムを含む場合、酸化ジルコニウム前駆体は、ALDのために、臭化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、又はテトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)を含む。これらの酸化ジルコニウム前駆体のうちの1以上は、酸化イットリウム前駆体と共に同時堆積させてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、酸化エルビウムを更に含むことができる。酸化エルビウム前駆体は、ALDのために、トリス-メチルシクロペンタジエニルエルビウム(III)(Er(MeCp)3)、エルビウムボランアミド(Er(BA)3)、Er(TMHD)3、エルビウム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、又はトリス(ブチルシクロペンタジエニル)エルビウム(III)から選択することができる。
【0086】
上述のように、希土類金属含有酸化物層は、複数の異なる酸化物の混合物を含むことができる。このような希土類金属含有酸化物層を形成するために、前述のイットリア前駆体、酸化エルビウム前駆体、アルミナ前駆体、及び/又は酸化ジルコニウム前駆体の任意の組み合わせを、ALD堆積チャンバに共に導入して、様々な酸化物を同時堆積させ、単相又は多相を有する層を形成することができる。ALD堆積又は同時堆積は、オゾン、水、O-ラジカル、又は酸素供与体として機能し得る他の前駆体の存在下で実行することができる。
【0087】
ブロック370では、追加の層が追加されるべきかどうか(例えば、多層スタックが形成されるべきかどうか)を決定することができる。追加の層を追加する場合、本方法はブロック355に戻ることができ、追加のAl2O3層を形成することができる。さもなければ、本方法はブロック375に進むことができる。
【0088】
ブロック375では、チャンバコンポーネント上の物品(例えば、チャンバコンポーネント)及び耐プラズマ性コーティングの両方の層が加熱される。加熱は、アニーリングプロセス、熱サイクルプロセス、及び/又は半導体処理中の製造ステップを介して行われてもよい。一実施形態では、熱サイクルプロセスは、製造後のチェックとして試験片(クーポン)に対して実行され、品質管理のための割れを検出し、試験片は、部品が処理中に経験する可能性のある最高温度に循環(サイクル)される。熱サイクル温度は、部品が使用される特定の1つのアプリケーション又は複数のアプリケーションに依存している。例えば、(
図4Cに示す)サーマルパイの場合、例えば、試験片は、室温と250℃との間で循環させることができる。温度は、物品、表面、及び膜層の構成材料に基づいて選択され、これによってそれらの完全性を維持し、これらのコンポーネントのいずれか又は全てを変形、分解、又は溶融させないようにすることができる。
【0089】
図4A~
図4Cは、異なる実施形態に係る耐プラズマ性コーティングの変形を示している。
図4Aは、一実施形態に係る物品410の表面405の多層耐プラズマ性コーティングを示している。例えば、物品410は、基板支持アセンブリ、静電チャック(ESC)、リング(例えば、プロセスキットリング又は単一のリング)、チャンバ壁、ベース、ガス分配プレート、ガスライン、シャワーヘッド、ノズル、蓋、ライナー、ライナーキット、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザー、冷却ベース、チャンバビューポート、チャンバ蓋などを含むが、これらに限定されない様々な半導体処理チャンバコンポーネントを含むことができる。半導体処理チャンバコンポーネントは、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼)、セラミックス、金属セラミックス複合材料、ポリマー、ポリマーセラミックス複合材料、又は他の適切な材料から製造することができ、更に、AlN、Si、SiC、Al
2O
3、SiO
2などの材料を含むことができる。
【0090】
図4Aでは、二層コーティング組成物は、ALDプロセスを使用して物品410の表面405上にコーティングされたアモルファス酸化アルミニウムの応力緩和層と、ALDプロセスを使用して物品410の応力緩和層上にコーティングされた希土類金属含有酸化物層とを含む。
【0091】
図4Aは、シャワーヘッド400の底面図を示す。以下に提供されるシャワーヘッドの例は、本明細書の実施形態に記載されたような耐プラズマ性コーティングの使用によって性能を改善することができる1つの例示的なチャンバコンポーネントに過ぎない。他のチャンバコンポーネントの性能もまた、本明細書に開示された耐プラズマ性コーティングでコーティングされた場合でも改善可能であることを理解すべきである。シャワーヘッド400は、本明細書に示されるように、複雑な幾何学的形状及び高アスペクト比を有する孔を有する表面を有する半導体処理チャンバコンポーネントの1つの例示として選択された。
【0092】
下面405の複雑な幾何学的形状は、本明細書に記載の実施形態に従って耐プラズマ性コーティングを受けることができる。シャワーヘッド400の下面405は、均一に分布した同心円状のリング内に配置されたガス導管410を画定する。他の実施形態では、ガス導管410は、代わりの幾何学的構成で構成されてもよく、利用されるリアクタ及び/又は処理のタイプに応じて、必要に応じて多くのガス導管又は少ないガス導管を有してもよい。耐プラズマ性コーティングは、複雑な幾何学的形状及び孔の大きなアスペクト比にもかかわらず、表面上ならびにガス導管の孔内に比較的均一な厚さ及びゼロの空孔率の(空孔の無い)コンフォーマルなコーティングを可能にするALD技術を用いて、表面405上及びガス導管孔410内で成長又は堆積される。
【0093】
シャワーヘッド400は、腐食性化学物質(例えば、フッ素)に曝露される可能性があり、シャワーヘッドとのプラズマ相互作用のために浸食する可能性がある。耐プラズマ性コーティングは、そのようなプラズマ相互作用を低減し、シャワーヘッドの耐久性を改善することができる。容量結合プラズマ環境において、コーティングされた/コーティングされていない境界がアーク放電を引き起こす傾向があるため、コンフォーマルコーティングは、プラズマに曝露される表面にとって重要である。ALDで堆積された耐プラズマ性コーティングは、シャワーヘッドの機能を妨害しないように、下面405及びガス導管410の相対的な形状及び幾何学的構成を維持する。同様に、他のチャンバコンポーネントに適用される場合、耐プラズマ性コーティングは、表面の形状及び幾何学的構成を維持することができ、コンポーネントの機能を妨げず、耐プラズマ性を提供し、全表面にわたって耐腐食性及び/又は耐浸食性を改善するようにコーティングされることが意図される。
【0094】
コーティング材料のプラズマに対する耐性は、「エッチング速度」(ER)によって測定され、コーティングされたコンポーネントの動作及びプラズマへの曝露の持続時間全体にわたって、ミクロン/時(μm/時)の単位を有することができる。異なる処理時間の後に測定を行ってもよい。例えば、測定は、処理前、50処理時間後、150処理時間後、200処理時間後などに行うことができる。シャワーヘッド上又は任意の他の処理チャンバコンポーネント上に成長又は堆積された耐プラズマ性コーティングの組成のばらつきは、複数の異なるプラズマ抵抗又は浸食速度値をもたらす可能性がある。また、様々なプラズマに曝露された単一の組成を有する耐プラズマ性コーティングは、複数の異なるプラズマ抵抗又は浸食速度値を有することができる。例えば、耐プラズマ性材料は、第1のタイプのプラズマに関連する第1の耐プラズマ性又は浸食速度、及び第2のタイプのプラズマに関連する第2の耐プラズマ性又は浸食速度を有することができる。実施形態では、200WのNF3直接プラズマに500℃で1時間曝露した後に検出可能なエッチングは起こらなかった。
【0095】
図4Bは、一実施形態に従ってコーティングされた高アスペクト比を有するガス導管410の拡大図を示す。ガス導管410は、長さL及び直径Dを有することができる。ガス導管410は、L/Dとして定義される高アスペクト比を有することができ、アスペクト比は、約10:1から約300:1までの範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、アスペクト比は、約50:1~約100:1とすることができる。
【0096】
ガス導管410は、耐プラズマ性コーティングでコーティングすることができる内面455を有することができる。耐プラズマ性コーティングは、応力緩和層460と、希土類金属含有酸化物層465とを含むことができる。応力緩和層460は、アモルファスAl2O3を含むことができる。希土類金属含有酸化物層465は、多結晶酸化イットリウムを単独で、又は追加の希土類金属酸化物(例えば、酸化エルビウム、酸化ジルコニウムなど)と共に含むことができる。希土類金属含有酸化物層465は、任意の希土類金属含有酸化物材料(例えば、本明細書内で上記したもの)を有することができる。各々の層は、ALDプロセスを用いてコーティングすることができる。ALDプロセスは、高アスペクト比にもかかわらず、ガス導管410の内面全体にわたって空孔の無い均一な厚さのコンフォーマルなコーティング層を成長させることができると同時に、最終的な多成分コーティングはまた、シャワーヘッド内のガス導管を塞がないほど十分に薄くすることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、各層は、均一な厚さの単層又は薄層を含むことができる。各単層又は薄層は、約0.1ナノメートル~約100ナノメートルの範囲の厚さを有することができる。他の実施形態では、層は、均一な厚さの厚層を含むことができる。各厚層は、約100ナノメートル~約1.5マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。更に他の実施形態では、層は、単層、薄層、及び/又は厚層の組み合わせを含むことができる。
【0098】
図4Cは、実施形態に係るサーマルパイチャンバコンポーネント470を示す。サーマルパイチャンバコンポーネント470は、本明細書の実施形態に記載されるような耐プラズマ性コーティングを含む。サーマルパイは、空間ALDチャンバで使用される8つの相互に隔離されたシャワーヘッドのうちの1つである。8つのシャワーヘッドのうちのいくつかはプラズマパイであり、いくつかはサーマルパイである。ウェハは、処理中にこれらのシャワーヘッドの下に配置され、それらのそれぞれを通過し、これらのシャワーヘッドが順次提供する異なる化学物質及びプラズマに曝露される。一実施形態では、サーマルパイは、10:1のアスペクト比の穴475を有し、苛酷な化学物質に曝露される。
【0099】
以下の実施例は、本明細書に記載の実施形態の理解を助けるために記載されており、本明細書に記載され請求される実施形態を具体的に限定するものとして解釈されるべきではない。当業者の知識の範囲内にある、現在知られているか又は後に開発される全ての均等物の置換を含むそのような変形、及び実験設計における処方(設計)の変更又は軽微な変更は、本明細書に組み込まれた実施形態の範囲内にあるとみなされるべきである。これらの例は、上述の方法300又は方法350を実行することによって達成することができる。
【0100】
実施例1:Al2O3応力緩和層をAl6061基板上に形成し、応力緩和層をY2O3含有コーティングでコーティングする
【0101】
耐プラズマ性コーティングをAl6061のアルミニウム基板上に(例えば、室温~約300℃の温度で)堆積させた。原子層堆積を用いてアモルファス酸化アルミニウムの応力緩和層をアルミニウム基板上に堆積させた。応力緩和層のための前駆体を、1又は数ミリトルから1又は数トルのスケールの圧力及び約100~250℃の温度で基板に導入した。続いて、原子層堆積を用いて多結晶イットリウム含有酸化物層を応力緩和層上に堆積させた。イットリウム含有酸化物層のための前駆体を、1又は数ミリトルから1又は数トルのスケールの圧力及び約100~250℃の温度で基板に導入した。
【0102】
アルミニウム基板上に得られた耐プラズマ性コーティングは、とりわけ透過型電子顕微鏡を用いて特徴付けられた。応力緩和層の厚さは約5nm~約15nmであり、イットリウム含有酸化物層の厚さは約90nm~約110nmであった。
【0103】
選択的領域回折及び収束ビーム電子回折を用いて、各層の材料の構造を決定した。応力緩和層中の酸化アルミニウムはアモルファス構造を有し、一方、イットリウム含有酸化物層は多結晶構造を有していた。走査前電子顕微鏡(SEM)を使用して、コーティング前及び後の両方のアルミニウム基板を特徴付けた。SEM画像は、耐プラズマ性コーティングがアルミニウム基板上の全ての構造を覆っていることを示した。
【0104】
コーティングされた基板の絶縁破壊電圧もまた測定された。絶縁破壊電圧は、1μmのイットリアに対して約305~約560であった。実施形態では、耐プラズマ性セラミックスコーティングの絶縁破壊電圧は、耐プラズマ性セラミックスコーティングを形成するために使用されるセラミックスに対する固有の絶縁破壊電圧よりも低い。コーティングされた基板はまた、500℃、200WでNF3直接プラズマに曝露させた。NF3プラズマとの反応により、観察可能なエッチング又は表面劣化は観察されなかった。
【0105】
コーティングされた基板はまた、200℃で5回の熱サイクルを受けた。SEM画像は、コーティングに割れがないことを示したが、従来のプラズマ溶射又はイオンアシスト蒸着コーティングでは、割れが観察された。コーティングされた基板の硬度も評価した。基板は、約500~約830又は約626.58±98.91、又は約5500~約9000MPa又は約6766±1068のビッカース硬さを有していた。コーティングされた基板のヤング率は、約75GPa~約105GPa又は約91.59±8.23GPaであった。コーティングされた基板は、約0.110μm~約0.135μm又は約0.125±0.007μmの最大硬度を示した。
【0106】
アルミニウム基板へのコーティングの接着力を、スクラッチ試験によって測定した。第1の層間剥離Lcは、約75~約100mN又は約85.17±9.59で生じた。コーティングされた基板の膜応力は、室温でのX線回折によって測定された。膜応力は、約-1140MPa又は約-165.4(KSi)であった。
【0107】
図5は、時間(分)の関数としての総質量損失(μg/cm
2)中の125℃におけるガス放出比較試験の結果500を示す。以下の材料を比較した:3時間の焼成によるバルクイットリア材料505、3時間の焼成によるポリシリコン及びイットリア材料510、3時間の焼成によるDura HPM材料515、3時間の焼成による無垢のSST材料520、ALDを用いてコーティングされた場合のアルミニウム1500nm上に堆積された酸化アルミニウム525、及びステンレス鋼(SST)材料上のParylene(商標名)HT530。
図5に示すように、アルミニウム525上に堆積されたアルミナは、比較的低いガス放出を有していた。
【0108】
実施例2 350℃の熱サイクル後にAl6061基板上のAl2O3層上にY2O3/Al2O3交互サブ層を有する希土類酸化物含有層を有する耐プラズマ性コーティング
【0109】
図6は、透過電子分光法(TEM)によって生成されたコーティングされた基板605の画像を示す。基板605はアルミニウム(Al6061)から構成される。ALDを用いてアモルファス酸化アルミニウムの応力緩和層610を基板605上に堆積させた。交互Y
2O
3及びAl
2O
3サブ層を含む希土類酸化物含有層615は、応力緩和層610の上に堆積された。基板605はピット630を含む。図示されているように、層610、615は、ピット630のコンフォーマルなコーティングを提供する。例えば、ピット630内の溝632は、応力緩和層610によって密閉された。ピット630の残りは、その後、希土類金属含有酸化物層615によって密閉された。応力緩和層610及び希土類金属含有酸化物層615を有する基板605は、その後、350℃で熱サイクルを受け、割れ又は層間剥離は無かった。TEM画像用のサンプル上に配置されたキャッピング層620が図示される。しかしながら、キャッピング層620は、製造部品には使用されない。
【0110】
図7Aは、本明細書に記載されるような耐プラズマ性コーティングのトップダウンSEM画像を示す。
図7Bは、
図7Aの耐プラズマ性コーティングのTEM断面画像を示す。画像は、トップダウン画像705と、トップダウン画像に示された領域708から切り取られた試験片から取られた断面側面画像710とを含む。断面側面画像710に示すように、物品715は、応力緩和層720及び希土類酸化物層725を含む耐プラズマ性コーティングを含む。希土類酸化物層は約600nmの厚さを有し、応力緩和層は約200nmの厚さを有する。TEM画像は、室温と200℃の温度の間で熱サイクルを行った後に撮った。図示されているように、熱サイクルの結果として耐プラズマ性コーティングに割れは発生せず、耐プラズマ性コーティングは物品から剥離しない。同様の試験では、250℃と300℃の熱サイクル後に割れ又は層間剥離の無い対応する結果が示されている。
【0111】
図8Aは、物品上にAl
2O
3応力緩和層を有さないY
2O
3のALDコーティング804のトップダウンSEM画像を示す。
図8Bは、物品802上の
図8AのALDコーティング804の断面画像を示す。図示のように、熱サイクル後にY
2O
3コーティング804に割れ805が形成された。
【0112】
図9は、
図2Cに関して記載されたような耐プラズマ性セラミックス試料の断面側面
図TEM画像を示す。試料を、明視野(BF)TEMモードで200kVで操作されたFEI Tecnai TF-20FEG/TEMで画像化した。図示されるように、試料は、約20nmの厚さを有する応力緩和層915と、交互のサブ層のスタックを含む希土類金属含有酸化物層920とを含む耐プラズマ性コーティングを有する物品910を含み、スタックは、約134nmの厚さを有する。粒子からの結晶性のコントラストは、交互層のスタック920に見ることができる。しかしながら、交互層のスタック920は、図示されたTEM画像において大部分が短距離オーダーのアモルファスである。
【0113】
図10は、
図9に示す耐プラズマ性セラミックス試料の走査透過型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(STEM-EDS)の線走査である。図示のように、物品910はアルミニウム6061基板である。応力緩和層915は、約60~80原子%の酸素1010及び約20~40原子%のアルミニウム1025を含む。希土類金属含有酸化物層920は、主に酸素1010及びイットリウム1015から構成され、約5原子%のアルミニウムを有する。
【0114】
前述の説明は、本発明のいくつかの実施形態の良好な理解を提供するために、具体的なシステム、コンポーネント、方法等の例などの多数の具体的な詳細を説明している。しかしながら、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施することができることが当業者には明らかであろう。他の例において、周知のコンポーネント又は方法は、本発明を不必要に不明瞭にしないために、詳細には説明しないか、単純なブロック図形式で提示されている。従って、説明された具体的な詳細は、単なる例示である。特定の実装では、これらの例示的な詳細とは異なる場合があるが、依然として本発明の範囲内にあることが理解される。
【0115】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」への参照は、その実施形態に関連して記載された特定の構成、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。従って、本明細書を通じて様々な場所における「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すものではない。また、用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく包含的な「又は」を意味することを意図している。「約」又は「ほぼ」という用語が本明細書で使用される場合、これは提示される公称値が±10%以内で正確であることを意味することを意図している。
【0116】
本明細書内の本方法の操作は、特定の順序で図示され説明されているが、特定の操作を逆の順序で行うように、又は特定の操作を少なくとも部分的に他の操作と同時に実行するように、各方法の操作の順序を変更することができる。別の一実施形態では、異なる操作の命令又は副操作は、断続的及び/又は交互の方法とすることができる。
【0117】
なお、上記の説明は例示であり、限定的ではないことを意図していることが理解されるべきである。上記の説明を読み理解することにより、多くの他の実施形態が当業者にとって明らかとなるであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を、そのような特許請求の範囲が権利を与える均等物の全範囲と共に参照して決定されるべきである。