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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】調理麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220217BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018153100
(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公開番号】P2020025520
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 悠紀
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-031397(JP,A)
【文献】特開2010-207155(JP,A)
【文献】特開2010-246466(JP,A)
【文献】特開2011-155850(JP,A)
【文献】国際公開第2013/171930(WO,A1)
【文献】油化学,1990年,39(9),pp.611-617
【文献】ブログサイト「ktgwkujのブログ」における2012年1月8日に公開された記事「マ・マー ソテースパゲティ ナポリタン(冷凍)食べてみたり」,[オンライン],[検索日:2021年7月20日],URL,https://ameblo.jp/ktgwkuj/entry-12535339265.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Google,Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺全体にナポリタンソースが絡んだ状態で食に供されるナポリタン風スパゲティの製造方法であって、スパゲティを冷凍する前に4万ColorValueパプリカ色素を1~3質量%配合したサラダ油(色素油)のみを1~2質量%、茹でたスパゲティに対して被覆し容器又は袋に収容して、そのスパゲティナポリタンソースを上掛けし、ナポリタンソースが上掛けされた状態のまま冷凍し、電子レンジで加熱解凍した後、ナポリタンソーススパゲティ全体に絡ませるナポリタン風スパゲティの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソース等で被覆されていない冷凍麺の製造において、盛りつけ時の麺同士の付着防止及び加熱調理後のほぐれ改善を目的として、麺を冷凍する前に植物油脂等のほぐれ改良剤で麺を被覆することが行われている。
一方で、ナポリタンスパゲティや焼きそば等は、麺を冷凍する前にソース等で被覆することで盛りつけ時の麺同士の付着防止及び加熱調理後のほぐれ改善を図っている。
このソース等で被覆された冷凍麺を電子レンジで加熱解凍すると麺の突端部に焦げが生じたり水分昇華による麺の硬質化が発生するなど外観や食感が損なわれる場合があった。
特に、糖度もしくは塩分濃度の高いソースやたれで被覆され容器等に収容された冷凍調理麺を電子レンジで加熱解凍する場合は、マイクロ波が集中しやすい包装容器や袋内の角部や麺の突端部分に焦げが生じたり局所的な水分昇華による麺の硬質化が発生し外観や食感を損ねるという問題があった。
なお、麺を冷凍する前にソース等で被覆する場合であっても、例えば、スパゲティ乾麺390質量部を沸騰水中で11分間茹で、ザル上げしてサラダ油20質量部で和え、次に、食塩10.5質量部、ホワイトペッパー1.5質量部、グルタミン酸ソーダ1.5質量部及びパプリカ4.5質量部の混合物を均一に和えた後、トマトケチャップ80質量部及びトマトペースト40質量部で和え、トマト味の調理済みスパゲティを得て、これを小分けして容器に収容し急速冷凍してトマト味の付け合わせ用調理済み冷凍スパゲティを得る場合のように、麺を植物油脂等で被覆することは知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-153054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、ソース等で被覆され容器等に収容された冷凍麺を電子レンジで加熱解凍すると包装容器又は袋内の角部若しくは麺の突端部分に焦げが生じたり水分昇華による麺の硬質化が発生し外観や食感が損なわれるという問題があった。
本発明の目的は、あらかじめ、麺全体にソース等が絡んだ状態で食に供される調理麺の製造方法であって、冷凍麺を電子レンジで加熱解凍する工程を含んでいても焦げや硬質化が発生し難い調理麺の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、麺全体にソース等が絡んだ状態で食に供される調理麺の製造方法において、麺を冷凍する前に色素を含む、ほぐれ改良剤で麺を被覆し容器又は袋に収容して、その麺にソース等を上掛けしてから冷凍し電子レンジで加熱解凍した後、ソース等を麺全体に絡めて食に供することにより電子レンジで加熱解凍する工程を含んでいても焦げや硬質化が発生し難く、喫食時の外観や食感を損ない難い調理麺を得ることが出来ることを見出し本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、麺全体にナポリタンソースが絡んだ状態で食に供されるナポリタン風スパゲティの製造方法であって、スパゲティを冷凍する前に4万ColorValueパプリカ色素を1~3質量%配合したサラダ油(色素油)のみを1~2質量%、茹でたスパゲティに対して被覆し容器又は袋に収容して、そのスパゲティナポリタンソースを上掛けし、ナポリタンソースが上掛けされた状態のまま冷凍し、電子レンジで加熱解凍した後、ナポリタンソーススパゲティ全体に絡ませるナポリタン風スパゲティの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
電子レンジで加熱解凍する工程を含んでいても焦げや硬質化が発生し難く喫食時の外観や食感を損ない難い調理麺を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、麺全体にソース又はたれが絡んだ状態で食に供される調理麺とは、食に供される前に、麺全体にソース又はたれが絡んでいる調理麺をいい、例えば、ナポリタン風スパゲティ、焼きそば、ペペロンチーノ、カルボナーラ、ジェノベーゼ、たらこスパゲティ、うに等のクリームソーススパゲッティ等を挙げることができる。
よって、麺にソース等を上掛けした状態で食に供されるミートソース、あんかけ焼きそば等は本発明の調理麺から除かれる。
【0008】
本発明では、これらの麺を麺全体にソース等が絡んでいる状態で冷凍せず、色素を含むほぐれ改良剤で被覆した麺を容器又は袋に収容してソースを上掛けした状態で冷凍し、電子レンジで加熱解凍した後、ソース又はたれを麺全体に絡ませることで、電子レンジで加熱解凍する工程を含んでいても焦げや硬質化が発生し難く、喫食時の外観や食感を損ない難い調理麺を得ることが出きる。
【0009】
本発明において使用できる、ほぐれ改良剤は、従来から麺のほぐれ改良のために使用されているものであって目的とする色素を溶解させ含ませることができるものであれば特に限定はない。
例えば、サラダ油等の油脂、乳化油脂、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
被覆方法も従来から麺のほぐれ改良のために使用されている方法であれば特に限定はない。
【0010】
本発明で使用する色素は、調理麺の種類により適宜選択できるが、例えば、ナポリタン風スパゲティでは、パプリカ色素のような赤色系色素を使用することができる。
また、焼きそばでは、カラメル色素のような茶色系色素を使用することができる。
色素は、ほぐれ改良剤に添加して使用する。
色素を含むほぐれ改良剤を使用することにより麺が着色され、電子レンジで加熱解凍した後、ソースを絡ませたときに、色調むらが起き難い調理麺を得ることが出きる。
色素の使用量は、目的とする調理麺によって適宜調整すればよく、例えば、ナポリタン風スパゲティでは、4万ColorValueパプリカ色素を1~3質量%配合したサラダ油を1~2質量%、茹でたスパゲティに対して被覆すればよい。
本発明で使用する色素を含む、ほぐれ改良剤を使用せず、ほぐれ改良剤を単に使用した場合は、麺の色がそのまま表れ、ソースをからめたときに麺の色とソースの色がなじみづらく、色調むらにより外観を損ない易い。
【0011】
本発明において、ソース又はたれとは、調理麺に使用されるソースであって必要に応じて具材を含むものをいう。
例えば、ナポリタン風スパゲティで使用するソース等は、トマトケチャップを主体とするソースに、ピーマン、玉ねぎ、ハム、ベーコン、ブロッコリー、チーズなどの具材を含むものをいう。
【0012】
本発明では、色素を含むほぐれ改良剤で麺を被覆し容器又は袋に収容して、その麺にソース又はたれを上掛けして冷凍するが、収容容器を使用する場合は必要に応じてさらに袋で包装してもよい。
【0013】
本発明では、容器又は袋に収容した状態の冷凍麺をそのまま加熱解凍するが、このとき、麺にソース又はたれが上掛けされているので電子レンジで加熱調理しても麺全体にソース又はたれが絡んだ状態に起因する包装容器又は袋内の角部若しくは麺の突端部分に焦げが生じたり水分昇華による麺の硬質化が発生し食感が損なわれることがない。
加熱解凍後にソース又はたれを麺全体に絡ませることでソースをからめたときに麺の色とソースの色がなじみ色調むらがおき難く、外観を損ない難い。
【0014】
麺全体にソース又はたれを絡ませた後は、通常の調理麺と同様に食すことができる。
【実施例
【0015】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
スパゲティ100質量部を13分間、熱湯で茹でた後、冷水で冷却し、250質量部の茹でスパゲティを得た。
サラダ油に4万ColorValueパプリカ色素を2質量%溶解し色素油を得た。
前記茹でスパゲティに前記色素油2質量%添加し十分混合して色素油で茹でスパゲティを被覆した。
前記色素油を混合したスパゲティを紙製容器に盛り付け、麺の上からナポリタンソースをかけ急速凍結した。
これを3日間保存し、レンジで加熱解凍し、ナポリタンソースとスパゲティを容器内で30秒間箸を用いて攪拌して絡め、ナポリタン風スパゲティを得た。
直ぐに、以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
・外観
5点 レンジによる焦げも色調のむらもなく非常に良い
4点 レンジによる焦げ又は色調のむらは詳細に確認して判別できる程度で良い
3点 レンジによる焦げ又は色調のむらが一部に確認されるが普通
2点 レンジによる焦げ又は色調のむらがややあり悪い
1点 レンジによる大きな焦げ又は色調のむらがあり非常に悪い
・食感
5点 焦げによる硬い麺がなく食感を損ねることがなく非常に良い
4点 焦げによる硬い麺をほぼ判別できず食感をほぼ損ねることがなく良い
3点 焦げによる硬い麺をすこし判別でき食感をやや損ねるが普通
2点 焦げによる硬い麺がややあり食感を損ね悪い
1点 焦げによる硬い麺があり食感をひどく損ね非常に悪い
[比較例1]
実施例1において、色素油に代えて、サラダ油を用いた以外は実施例1と同様にしてナポリタン風スパゲティを得て、実施例1と同様にして評価を行った。
[比較例2]
スパゲティ100質量部を13分間、熱湯で茹でた後、冷水で冷却し、250質量部の茹でスパゲティを得た。
前記茹でスパゲティをサラダ油2質量%で被覆した後、ナポリタンソースを絡めてナポリタン風スパゲティを得た。
前記ナポリタン風スパゲティを紙製容器に盛り付け急速凍結した。
これを3日間保存し、レンジで加熱解凍し、実施例1と同様にして評価を行った。
得られた評価結果(平均値)を表1~表2に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
実施例1は、食感、外観を総合評価すると比較例1、比較例2より優れていた。
比較例1は、食感は実施例1と同評価であったが、色調むらの点で外観が劣っていた。
比較例2は、焦げや硬い麺があり、外観、食感ともに劣っていた。