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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】撮像レンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20220218BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018221598
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020086173
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永見 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小里 哲也
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-136809(JP,A)
【文献】特開2013-061570(JP,A)
【文献】特開2013-195587(JP,A)
【文献】米国特許第05956185(US,A)
【文献】特開2012-181508(JP,A)
【文献】特開2015-075501(JP,A)
【文献】特開2013-235239(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026069(WO,A1)
【文献】特開平07-056086(JP,A)
【文献】特開2003-057546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とからなる3つのレンズ群のみをレンズ群として備えた撮像レンズであって
前記第1レンズ群の最も像側のレンズ面から前記第3レンズ群の最も物体側のレンズ面までの間に開口絞りが配置され、
無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、前記第1レンズ群と前記第3レンズ群とは像面に対して固定されており、前記第2レンズ群が光軸に沿って移動し、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなり、
前記第3レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとを含み、
前記第2レンズ群の焦点距離をf2、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1
無限遠物体に合焦した状態における前記撮像レンズの焦点距離をf、
前記第3レンズ群の焦点距離をf3とした場合、
0.25<f2/f1<1 (1)
-0.8<f/f3<0 (4)
で表される条件式(1)および(4)を満足する撮像レンズ。
【請求項2】
物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とからなる3つのレンズ群のみをレンズ群として備え、
前記第1レンズ群の最も像側のレンズ面から前記第3レンズ群の最も物体側のレンズ面までの間に開口絞りが配置され、
無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、前記第1レンズ群と前記第3レンズ群とは像面に対して固定されており、前記第2レンズ群が光軸に沿って移動し、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなり、
前記第1レンズ群の前記負レンズと前記正レンズとは互いに接合されており、
前記第3レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとを含み、
前記第2レンズ群の焦点距離をf2、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1とした場合、
0.25<f2/f1<1 (1)
で表される条件式(1)を満足する撮像レンズ。
【請求項3】
物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とからなる3つのレンズ群のみをレンズ群として備え、
前記第1レンズ群の最も像側のレンズ面から前記第3レンズ群の最も物体側のレンズ面までの間に開口絞りが配置され、
無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、前記第1レンズ群と前記第3レンズ群とは像面に対して固定されており、前記第2レンズ群が光軸に沿って移動し、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなり、
前記第3レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなり
前記第2レンズ群の焦点距離をf2、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1とした場合、
0.25<f2/f1<1 (1)
で表される条件式(1)を満足する撮像レンズ。
【請求項4】
無限遠物体に合焦した状態における前記撮像レンズの焦点距離をf、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1とした場合、
0.25<f/f1<1 (2)
で表される条件式(2)を満足する請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
無限遠物体に合焦した状態における前記撮像レンズの焦点距離をf、
前記第2レンズ群の焦点距離をf2とした場合、
0.8<f/f2<1.6 (3)
で表される条件式(3)を満足する請求項1からのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
無限遠物体に合焦した状態における前記第2レンズ群の横倍率をβ
無限遠物体に合焦した状態における前記第3レンズ群の横倍率をβとした場合、
1.15<(1-β )×β <2.5 (5)
で表される条件式(5)を満足する請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記第3レンズ群の最も物体側の負レンズは像側に凸面を向けたメニスカスレンズである請求項1からのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
前記第3レンズ群の最も像側の正レンズの像側の面は凸面である請求項1からのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項9】
前記第1レンズ群の前記正レンズのd線基準のアッベ数をν1p、
前記第1レンズ群の前記負レンズのd線基準のアッベ数をν1nとした場合、
0<ν1p-ν1n<30 (6)
で表される条件式(6)を満足する請求項1からのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
前記第3レンズ群の最も像側の正レンズのd線に対する屈折率をN3pとした場合、
1.8<N3p<2.2 (7)
で表される条件式(7)を満足する請求項1からのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項11】
前記第3レンズ群の前記正レンズのd線基準のアッベ数をν3p、
前記第3レンズ群の前記負レンズのd線基準のアッベ数をν3nとした場合、
-5<ν3p-ν3n<15 (8)
で表される条件式(8)を満足する請求項に記載の撮像レンズ。
【請求項12】
前記第3レンズ群が含む全レンズのd線基準のアッベ数の平均をν3aveとした場合、
20<ν3ave<30 (9)
で表される条件式(9)を満足する請求項1から11のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項13】
前記第2レンズ群の焦点距離をf2、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1とした場合、
0.25<f2/f1<0.9 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する請求項1から12のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項14】
0.25<f/f1<0.9 (2-1)
で表される条件式(2-1)を満足する請求項に記載の撮像レンズ。
【請求項15】
0.9<f/f2<1.45 (3-1)
で表される条件式(3-1)を満足する請求項に記載の撮像レンズ。
【請求項16】
-0.75<f/f3<0 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する請求項に記載の撮像レンズ。
【請求項17】
1.25<(1-β )×β <2.4 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する請求項6に記載の撮像レンズ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の撮像レンズを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像レンズ、及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等の撮像装置に適用可能な撮像レンズとして、3群構成のレンズ系が提案されている。例えば、下記の特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、絞りと、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを配列してなるレンズ系が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-63676号公報
【文献】特開2015-43104号公報
【文献】特開2013-61570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記撮像装置に用いられる撮像レンズは、大型の撮像素子に対応可能な構成としつつも、良好な携帯性を確保するために小型であることが求められている。また、撮像装置におけるオートフォーカスの高速化の要望に応えるため、合焦の高速化が図られた撮像レンズであることも求められている。さらに撮像レンズには、合焦の際の収差変動が少なく、良好な収差補正がなされて高い光学性能を有することも求められている。
【0005】
合焦の高速化を図るためには、合焦の際に移動するレンズ群(以下、フォーカス群という)の軽量化が必要である。しかしながら、特許文献1に記載のレンズ系は、合焦の際に、第1レンズ群と第2レンズ群とが移動するフロントフォーカス方式を採っているため、合焦の高速化を図る場合はフォーカス群の軽量化という点で改良の余地がある。
【0006】
特許文献2及び特許文献3に記載のレンズ系は、合焦の際に第2レンズ群が移動するインナーフォーカス方式の構成を採っている。しかしながら、特許文献2に記載された第1レンズ群が2枚構成のレンズ系は、最も物体側から順に、正レンズと、負レンズとが配列されている。このため、負の屈折力を有する第3レンズ群を含めたレンズ系全体の屈折力の対称性が良いとは言えず、倍率色収差等の補正に不利である。特許文献2に記載されたその他のレンズ系は、第1レンズ群のレンズ枚数が3枚以上であり、小型化に不利である。
【0007】
特許文献3に記載のレンズ系もまた、合焦の際に第2レンズ群が移動するインナーフォーカス方式の構成を採っている。しかしながら、特許文献3に記載のレンズ系は、第3レンズ群が物体側に凹面を向けた負レンズのみからなるため、非点収差の補正、及び軸外光束の主光線の像面への入射角の抑制に関して不利である。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みなされたものであり、小型化、かつ、合焦の高速化が図られ、合焦の際の収差変動が少なく、高い光学性能を有する撮像レンズ、及びこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係る撮像レンズは、物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とからなる3つのレンズ群のみをレンズ群として備え、第1レンズ群の最も像側のレンズ面から第3レンズ群の最も物体側のレンズ面までの間に開口絞りが配置され、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第1レンズ群と第3レンズ群とは像面に対して固定されており、第2レンズ群が光軸に沿って移動し、第1レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなり、第3レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとを含み、第2レンズ群の焦点距離をf2、第1レンズ群の焦点距離をf1とした場合、下記条件式(1)を満足する。
0.25<f2/f1<1 (1)
【0010】
本開示の第2の態様に係る撮像レンズは、物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とからなる3つのレンズ群のみをレンズ群として備え、第1レンズ群の最も像側のレンズ面から第3レンズ群の最も物体側のレンズ面までの間に開口絞りが配置され、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第1レンズ群と第3レンズ群とは像面に対して固定されており、第2レンズ群が光軸に沿って移動し、第1レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなり、第2レンズ群は、少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズとが接合された接合レンズを少なくとも2つ含み、第3レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとを含む。
【0011】
上記の本開示の第1及び第2の態様に係る撮像レンズを総括して以下では本開示の上記態様の撮像レンズと称する。本開示の上記態様の撮像レンズは、下記条件式(2)~(7)、(9)、(1-1)~(5-1)のうちの少なくとも1つを満足することが好ましい。
0.25<f/f1<1 (2)
0.8<f/f2<1.6 (3)
-0.8<f/f3<0 (4)
1.15<(1-β )×β <2.5 (5)
0<ν1p-ν1n<30 (6)
1.8<N3p<2.2 (7)
20<ν3ave<30 (9)
0.25<f2/f1<0.9 (1-1)
0.25<f/f1<0.9 (2-1)
0.9<f/f2<1.45 (3-1)
-0.75<f/f3<0 (4-1)
1.25<(1-β )×β <2.4 (5-1)
ただし、
f:無限遠物体に合焦した状態における撮像レンズの焦点距離
f1:第1レンズ群の焦点距離
f2:第2レンズ群の焦点距離
f3:第3レンズ群の焦点距離
β:無限遠物体に合焦した状態における第2レンズ群の横倍率
β:無限遠物体に合焦した状態における第3レンズ群の横倍率
ν1p:第1レンズ群の正レンズのd線基準のアッベ数
ν1n:第1レンズ群の負レンズのd線基準のアッベ数
N3p:第3レンズ群の最も像側の正レンズのd線に対する屈折率
ν3ave:第3レンズ群が含む全レンズのd線基準のアッベ数の平均
である。
【0012】
本開示の上記態様の撮像レンズにおいては、第1レンズ群の負レンズと正レンズとは互いに接合されていることが好ましい。
【0013】
本開示の上記態様の撮像レンズにおいては、第3レンズ群の最も物体側の負レンズは像側に凸面を向けたメニスカスレンズであることが好ましい。また、本開示の上記態様の撮像レンズにおいては、第3レンズ群の最も像側の正レンズの像側の面は凸面であることが好ましい。
【0014】
本開示の上記態様の撮像レンズにおいては、第3レンズ群に含まれるレンズの枚数は2枚であることが好ましい。第3レンズ群に含まれるレンズの枚数が2枚である構成において、下記条件式(8)を満足することが好ましい。
-5<ν3p-ν3n<15 (8)
ただし、
ν3p:第3レンズ群の正レンズのd線基準のアッベ数
ν3n:第3レンズ群の負レンズのd線基準のアッベ数
である。
【0015】
本開示の第3の態様に係る撮像装置は、本開示の第1の態様に係る撮像レンズ及び本開示の第2の態様に係る撮像レンズの少なくとも一方を備えている。
【0016】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、フィルタ、及びカバーガラス等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、及び手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0017】
なお、本明細書の「正の屈折力を有する~群」は、群全体として正の屈折力を有することを意味する。同様に「負の屈折力を有する~群」は、群全体として負の屈折力を有することを意味する。「正の屈折力を有するレンズ」と「正レンズ」とは同義である。「負の屈折力を有するレンズ」と「負レンズ」とは同義である。
【0018】
複合非球面レンズ(球面レンズと、その球面レンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。非球面を含むレンズに関する、屈折力の符号、及びレンズ面の面形状は、特に断りが無い限り、近軸領域で考えることにする。
【0019】
本明細書において、条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、無限遠物体に合焦した状態においてd線を基準とした場合の値である。本明細書に記載の「d線」、「C線」、「F線」、及び「g線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)、g線の波長は435.84nm(ナノメートル)である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、小型化、かつ、合焦の高速化が図られ、合焦の際の収差変動が少なく、高い光学性能を有する撮像レンズ、及びこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施例1の撮像レンズに対応し、本開示の一実施形態に係る撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図2】本開示の実施例2の撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図3】本開示の実施例3の撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図4】本開示の実施例4の撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図5】本開示の実施例5の撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図6】本開示の実施例1の撮像レンズの各収差図である。
図7】本開示の実施例2の撮像レンズの各収差図である。
図8】本開示の実施例3の撮像レンズの各収差図である。
図9】本開示の実施例4の撮像レンズの各収差図である。
図10】本開示の実施例5の撮像レンズの各収差図である。
図11】本開示の一実施形態に係る撮像装置の正面側の斜視図である。
図12】本開示の一実施形態に係る撮像装置の背面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る撮像レンズの構成を示す断面図である。図1に示す例は後述の実施例1の撮像レンズに対応している。図1では、左側が物体側、右側が像側であり、無限遠物体に合焦した状態を示す。また、図1には光束として、軸上光束2及び最大画角の光束3も示している。
【0023】
なお、図1では、撮像レンズが撮像装置に適用されることを想定して、撮像レンズと像面Simとの間に平行平板状の光学部材PPが配置された例を示している。光学部材PPは、各種フィルタ、及び/又はカバーガラス等を想定した部材である。各種フィルタとは例えば、ローパスフィルタ、赤外線カットフィルタ、及び特定の波長域をカットするフィルタ等である。光学部材PPは屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0024】
本開示の撮像レンズは、光軸Zに沿って物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる3つのレンズ群のみをレンズ群として備える。また、第1レンズ群G1の最も像側のレンズ面から第3レンズ群G3の最も物体側のレンズ面までの間に開口絞りStが配置される。なお、図1に示す開口絞りStは、形状を示しているのではなく、光軸上の位置を示している。
【0025】
本開示の撮像レンズでは、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは像面Simに対して固定されており、第2レンズ群G2が光軸Zに沿って移動する。すなわち、本開示の撮像レンズは、第2レンズ群G2をフォーカス群とするインナーフォーカス方式を採っている。インナーフォーカス方式は、合焦の際にレンズ系全長が一定であり、かつ、フロントフォーカス方式に比べて合焦の際の画角変動が少ないという長所を有する。図1に示す例では、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に第2レンズ群G2が物体側へ移動する。図1に示す第2レンズ群G2の下の左方向へ向かう矢印は、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に第2レンズ群G2が物体側へ移動するフォーカス群であることを意味する。
【0026】
フォーカス群を第2レンズ群のみにすることによって、フォーカス群が複数のレンズ群からなるレンズ系に比べて、フォーカス群の軽量化を図ることができる。このため、フォーカス群及びフォーカス群に付随する機械部品を含んで合焦の際に移動するフォーカスユニットを小型化及び軽量化することができ、合焦の高速化に有利となる。
【0027】
また、第1レンズ群G1が正の屈折力を有することによって、第1レンズ群G1から出射した光束は収束作用を受けて第2レンズ群G2へ入射するため、フォーカス群である第2レンズ群G2の小径化を図ることができる。これによって、フォーカス群の小型化及び軽量化を図ることができるので、合焦の高速化に有利となる。
【0028】
第3レンズ群G3が負の屈折力を有することによって、第2レンズ群G2の正の屈折力を強くすることができるので、合焦の際のフォーカス群の移動量を短縮化することができる。これによって、合焦の高速化、及びレンズ系全長の短縮化に有利となる。
【0029】
一例として図1に示す撮像レンズは、第1レンズ群G1が、物体側から像側へ向かって順に、レンズL11~L12の2枚のレンズからなり、第2レンズ群G2が、物体側から像側へ向かって順に、レンズL21~L25の5枚のレンズからなり、第3レンズ群G3が、物体側から像側へ向かって順に、レンズL31~L32の2枚のレンズからなる。ただし、第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3を構成するレンズの枚数は図1に示す例と異なる枚数にすることも可能である。
【0030】
第1レンズ群G1は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなる。第1レンズ群G1が、負レンズ及び正レンズを有することによって、球面収差、及び軸上色収差の補正が容易となる。第3レンズ群G3が負の屈折力を有し、開口絞りStが上記範囲に配置された構成において、第1レンズ群G1のレンズ配列を物体側から負正の順にすることによって、屈折力の対称性が良好になるので、倍率色収差の補正に有利となる。一般に、像高が大きいほど倍率色収差が大きくなりやすいため、第1レンズ群G1の上記レンズ配列は大型の撮像素子に対応可能なレンズ系を構成する際に有利となる。また、第1レンズ群G1を2枚のレンズからなる構成にすることによって、小型化に有利となる。
【0031】
第1レンズ群G1の負レンズと正レンズとは互いに接合されていることが好ましい。このようにした場合は、製造時の各レンズの偏心誤差に起因する性能劣化を抑えるようにレンズを組み合わせて接合できるため、製造誤差による性能低下を抑制することができ、性能確保に有利となる。また、接合しない場合は第1レンズ群G1の負レンズと正レンズとの間に空気間隔が生じ、この空気間隔の誤差に起因して球面収差が変化してしまうが、接合した場合はこのような問題を回避できるので性能確保に有利となる。
【0032】
第1レンズ群G1の負レンズは、物体側に凸面を向けたメニスカスレンズであってもよい。第1レンズ群G1の正レンズは、物体側に凸面を向けたメニスカスレンズであってもよい。第1レンズ群G1の負レンズと正レンズとを互いに接合する場合は、その接合面を物体側に凸面を向けた形状にすれば、倍率色収差の補正に有利となる。
【0033】
第2レンズ群G2は、少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズとが接合された接合レンズを少なくとも2つ有することが好ましい。このようにした場合は、設計の自由度が高くなり、撮影距離が変化して合焦を行った際の軸上色収差の変動及び倍率色収差の変動を抑制することに有利となる。このことは以下に述べる事情による。本開示のレンズ系とは異なる、撮像レンズ全体を移動させて合焦を行う、いわゆる全体繰り出し方式のレンズ系であれば、全系内の任意のレンズを用いて合焦の際の収差変動の抑制を行うことができる。しかし、本開示の撮像レンズは、フォーカス群が第2レンズ群G2のみからなるため、全体繰り出し方式のレンズ系に比べて、合焦の際の収差変動の抑制に使用可能なレンズは少なく限られている。第2レンズ群G2が2つの接合レンズを有するように構成した場合には、光軸上の異なる位置にあるこれら2つの接合レンズでは、倍率色収差に大きく影響する光線の高さが異なるため、設計パラメータの変化量に対する倍率色収差の変化量も異なる。同様に、上記2つの接合レンズでは、軸上色収差に大きく影響する光線の高さが異なるため、設計パラメータの変化量に対する軸上色収差の変化量も異なる。このように作用の異なる2つの接合レンズを用いて倍率色収差と軸上色収差とのバランスをうまくとりながら最適化することによって、好適に色収差の補正を行うことができ、ひいては合焦の際の色収差の変動を好適に抑制することができる。
【0034】
第2レンズ群G2が2つの接合レンズを有する場合は、例えば、第2レンズ群G2は、物体側から像側へ向かって順に、2つの接合レンズと、負レンズとから構成される5枚のレンズからなるように構成することができる。あるいは、色収差よりも小型化、軽量化、及び合焦の高速化を重視する場合は、第2レンズ群G2は、物体側から像側へ向かって順に、正レンズと、1つの接合レンズと、負レンズとから構成される4枚のレンズからなるように構成してもよい。上記の第2レンズ群G2が4枚又は5枚のレンズからなる構成において、第2レンズ群G2が有する接合レンズはいずれも、負レンズと正レンズとが物体側から順に接合されていてもよい。また、第2レンズ群G2が有する接合レンズは、両凹レンズと両凸レンズとからなるように構成してもよい。第2レンズ群G2が上記4枚又は5枚のレンズからなる構成において、第2レンズ群G2の最も像側の負レンズは像側に凸面を向けたメニスカスレンズとしてもよい。
【0035】
第3レンズ群G3は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとを含む。この構成によって、像面湾曲の補正に有利となる。また、第3レンズ群G3において、負正の順にレンズを配置することによって、射出瞳をより物体側へ位置させることができるので、軸外光束の主光線の像面Simへの入射角を抑えることに有利となる。第3レンズ群G3の上記構成は、大型の撮像素子に対応可能なレンズ系を構成する際に有利となる。
【0036】
第3レンズ群G3が有する負レンズのうち、最も物体側の負レンズは、像側に凸面を向けたメニスカスレンズであることが好ましい。このようにした場合は、非点収差及び歪曲収差の抑制に有利となる。
【0037】
第3レンズ群G3が有する正レンズのうち、最も像側の正レンズの像側の面は凸面であることが好ましい。このようにした場合は、軸外光束の主光線の像面Simへの入射角を抑えることに有利となり、また、非点収差の抑制に有利となる。
【0038】
第3レンズ群G3に含まれるレンズの枚数は、2枚であることが好ましい。このようにした場合は、小型化に有利となる。
【0039】
合焦の際には、開口絞りStは像面Simに対して固定されていることが好ましい。このようにした場合は、合焦の際に移動する部材の軽量化に有利となり、合焦の高速化に有利となる。
【0040】
図1に例示するように、開口絞りStは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に配置されることが好ましい。このようにした場合は、正屈折力、開口絞りSt、正屈折力、の配列となり、開口絞りStに隣接配置される屈折力の対称性を維持しやすくなるため、歪曲収差及び像面湾曲の補正に有利となる。また、開口絞りStを第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に配置することによって、フォーカス群内に開口絞りStが位置しないため、合焦の際に開口絞りStが像面Simに対して固定されている構成が可能となり、合焦の高速化に有利となる。さらに、本開示の撮像レンズにおいて開口絞りStを上記のように配置した場合は、開口絞りStを第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に配置した場合よりも、軸外光束の主光線の像面Simへの入射角の抑制、及び周辺光量の確保に有利となる。
【0041】
次に、条件式に関する構成について説明する。第2レンズ群G2の焦点距離をf2、第1レンズ群G1の焦点距離をf1とした場合、下記条件式(1)を満足することが好ましい。条件式(1)の下限以下とならないようにすることによって、合焦の際の収差変動の抑制が容易となる。また、第1レンズ群G1の屈折力を確保できるため、第2レンズ群G2の小径化が容易となる。これによって、フォーカス群の小型化及び軽量化が容易となるため、合焦の高速化に有利となる。条件式(1)の上限以上とならないようにすることによって、合焦の際のフォーカス群の移動量の短縮化に有利となるため、合焦の高速化、及びレンズ系全長の短縮化に有利となる。条件式(1)を満足するように第1レンズ群G1の正の屈折力と第2レンズ群G2の正の屈折力とのバランスをとることによって、合焦の際の収差変動の抑制、合焦の高速化、及び小型化を実現することが容易となる。なお、下記条件式(1-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0.25<f2/f1<1 (1)
0.25<f2/f1<0.9 (1-1)
【0042】
無限遠物体に合焦した状態における撮像レンズの焦点距離をf、第1レンズ群G1の焦点距離をf1とした場合、下記条件式(2)を満足することが好ましい。条件式(2)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の大径化を抑制できるため、フォーカス群の重量の増加を抑制でき、合焦の高速化に有利となる。また、条件式(2)の下限以下とならないように第1レンズ群G1に屈折力を配分することによって、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり過ぎないため、合焦の際の収差変動の抑制が容易となる。条件式(2)の上限以上とならないように第1レンズ群G1に屈折力を配分することによって、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなり過ぎないため、合焦の際のフォーカス群の移動量を短縮化することができる。これによって、合焦の高速化、及びレンズ系全長の短縮化に有利となる。なお、下記条件式(2-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0.25<f/f1<1 (2)
0.25<f/f1<0.9 (2-1)
【0043】
無限遠物体に合焦した状態における撮像レンズの焦点距離をf、第2レンズ群G2の焦点距離をf2とした場合、下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなり過ぎないため、合焦の際のフォーカス群の移動量を短縮化することができる。これによって、合焦の高速化、及びレンズ系全長の短縮化に有利となる。条件式(3)の上限以上とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり過ぎないため、合焦の際の収差変動の抑制が容易となる。なお、下記条件式(3-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0.8<f/f2<1.6 (3)
0.9<f/f2<1.45 (3-1)
【0044】
無限遠物体に合焦した状態における撮像レンズの焦点距離をf、第3レンズ群G3の焦点距離をf3とした場合、下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり過ぎないため、合焦の際の収差変動の抑制が容易となる。条件式(4)の上限以上とならないようにすることによって、像面湾曲の補正が容易となる。なお、下記条件式(4-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
-0.8<f/f3<0 (4)
-0.75<f/f3<0 (4-1)
【0045】
無限遠物体に合焦した状態における第2レンズ群G2の横倍率をβ、無限遠物体に合焦した状態における第3レンズ群G3の横倍率をβとした場合、下記条件式(5)を満足することが好ましい。条件式(5)の下限以下とならないようにすることによって、合焦の際のフォーカス群の移動量を短縮化することができる。これによって、合焦の高速化、及びレンズ系全長の短縮化に有利となる。条件式(5)の上限以上とならないようにすることによって、合焦の際の収差変動の抑制、特に像面湾曲の変動の抑制が容易となる。第2レンズ群G2の横倍率及び第3レンズ群G3の横倍率が条件式(5)を満足するように構成することによって、合焦の高速化、小型化、及び収差補正に有利となる。なお、下記条件式(5-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
1.15<(1-β )×β <2.5 (5)
1.25<(1-β )×β <2.4 (5-1)
【0046】
第1レンズ群G1の正レンズのd線基準のアッベ数をν1p、第1レンズ群G1の負レンズのd線基準のアッベ数をν1nとした場合、下記条件式(6)を満足することが好ましい。条件式(6)を満足することによって、軸上色収差と倍率色収差とをバランス良く補正することができる。なお、下記条件式(6-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0<ν1p-ν1n<30 (6)
0<ν1p-ν1n<15 (6-1)
【0047】
第3レンズ群G3が有する正レンズのうち、最も像側の正レンズのd線に対する屈折率をN3pとした場合、下記条件式(7)を満足することが好ましい。条件式(7)の下限以下とならないようにすることによって、軸外光束の主光線の像面Simへの入射角を抑えることに有利となる。条件式(7)の上限以上とならないようにすることによって、像面湾曲の補正が容易となる。なお、下記条件式(7-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
1.8<N3p<2.2 (7)
1.85<N3p<2.1 (7-1)
【0048】
第3レンズ群G3が、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなる構成において、第3レンズ群G3の正レンズのd線基準のアッベ数をν3p、第3レンズ群G3の負レンズのd線基準のアッベ数をν3nとした場合、下記条件式(8)を満足することが好ましい。条件式(8)を満足することによって、軸上色収差と倍率色収差とをバランス良く補正することができる。なお、下記条件式(8-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
-5<ν3p-ν3n<15 (8)
-5<ν3p-ν3n<10 (8-1)
【0049】
第3レンズ群G3が有する全レンズのd線基準のアッベ数の平均をν3aveとした場合、下記条件式(9)を満足することが好ましい。条件式(9)を満足することによって、軸上色収差と倍率色収差とをバランス良く補正することができる。なお、下記条件式(9-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
20<ν3ave<30 (9)
23.5<ν3ave<30 (9-1)
【0050】
無限遠物体に合焦した状態における第2レンズ群G2の横倍率をβとした場合、下記条件式(10)を満足することが好ましい。条件式(10)の下限以下とならないようにすることによって、合焦の際の収差変動の抑制が容易となる。条件式(10)の上限以上とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなり過ぎないため、合焦の際のフォーカス群の移動量を短縮化することができる。これによって、合焦の高速化、及びレンズ系全長の短縮化に有利となる。なお、下記条件式(10-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0.1<β<0.7 (10)
0.2<β<0.6 (10-1)
【0051】
無限遠物体に合焦した状態における第3レンズ群G3の横倍率をβとした場合、下記条件式(11)を満足することが好ましい。条件式(11)の下限以下とならないようにすることによって、合焦の際のフォーカス群の移動量を短縮化することができる。これによって、合焦の高速化、及びレンズ系全長の短縮化に有利となる。条件式(11)の上限以上とならないようにすることによって、像面湾曲の補正が容易となる。なお、下記条件式(11-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
1<β<2.2 (11)
1.1<β<1.6 (11-1)
【0052】
条件式(10)及び条件式(11)を同時に満足するように第2レンズ群G2の横倍率及び第3レンズ群G3の横倍率を設定した場合は、合焦の高速化、小型化、及び良好な収差補正により有利となる。
【0053】
第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群G3の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と、第3レンズ群G3の最も像側のレンズ面から無限遠物体に合焦した状態における撮像レンズの像側焦点位置までの光軸上の空気換算距離との和をTL、無限遠物体に合焦した状態における撮像レンズの焦点距離をf、最大半画角をωとした場合、下記条件式(12)を満足することが好ましい。条件式(12)の下限以下とならないようにすることによって、像面湾曲及び歪曲収差の補正が容易となる。条件式(12)の上限以上とならないようにすることによって、レンズ系の小型化及び軽量化に有利となる。条件式(12)を満足することによって、小型化と良好な収差補正との両立が容易となる。なお、下記条件式(12-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
2<TL/{f×tan(ω)}<2.7 (12)
2.1<TL/{f×tan(ω)}<2.6 (12-1)
【0054】
条件式に関する構成も含め上述した好ましい構成及び/又は可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。上述した構成を組み合わせた撮像レンズの好ましい2つの態様について以下に述べる。以下に述べる第1及び第2の態様の撮像レンズはともに、上述した好ましい構成及び/又は可能な構成の少なくとも1つをさらに有していてもよい。
【0055】
第1の態様の撮像レンズは、物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる3つのレンズ群のみをレンズ群として備え、第1レンズ群G1の最も像側のレンズ面から第3レンズ群G3の最も物体側のレンズ面までの間に開口絞りStが配置され、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは像面Simに対して固定されており、第2レンズ群G2が光軸Zに沿って移動し、第1レンズ群G1は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなり、第3レンズ群G3は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとを有し、上記条件式(1)を満足する。第1の態様の撮像レンズによれば、小型化、かつ、合焦の高速化が可能であり、合焦の際の収差変動が少なく、高い光学性能を実現することが可能である。
【0056】
第2の態様の撮像レンズは、物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる3つのレンズ群のみをレンズ群として備え、第1レンズ群G1の最も像側のレンズ面から第3レンズ群G3の最も物体側のレンズ面までの間に開口絞りStが配置され、無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは像面Simに対して固定されており、第2レンズ群G2が光軸Zに沿って移動し、第1レンズ群G1は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとからなり、第2レンズ群G2は、少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズとが接合された接合レンズを少なくとも2つ有し、第3レンズ群G3は、物体側から像側へ向かって順に、負レンズと、正レンズとを有する。第2の態様の撮像レンズによれば、小型化、かつ、合焦の高速化が可能であり、合焦の際の収差変動が少なく、特に色収差の変動が少なく、高い光学性能を実現することが可能である。
【0057】
次に、本開示の撮像レンズの数値実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1の撮像レンズの構成を示す断面図は図1に示しており、その図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1の撮像レンズは、物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りStと、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる。無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第1レンズ群G1と、開口絞りStと、第3レンズ群G3とは像面Simに対して固定されており、第2レンズ群G2のみが光軸Zに沿って物体側へ移動する。第1レンズ群G1は、物体側から像側へ向かって順に、レンズL11~L12の2枚のレンズからなる。第2レンズ群G2は、物体側から像側へ向かって順に、レンズL21~L25の5枚のレンズからなる。第3レンズ群G3は、物体側から像側へ向かって順に、レンズL31~L32の2枚のレンズからなる。以上が実施例1の撮像レンズの概要である。
【0058】
実施例1の撮像レンズについて、基本レンズデータを表1に、諸元を表2に、可変面間隔を表3に、非球面係数を表4に示す。表1において、Snの欄には最も物体側の面を第1面とし像側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示し、Rの欄には各面の曲率半径を示し、Dの欄には各面とその像側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。また、Ndの欄には各構成要素のd線に対する屈折率を示し、νdの欄には各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
【0059】
表1では、物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、像側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。表1には開口絞りSt及び光学部材PPも示しており、開口絞りStに相当する面の面番号の欄には面番号と(St)という語句を記載している。表1では合焦の際に間隔が変化する可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の物体側の面番号を付してDの欄に記入している。
【0060】
表2に、撮像レンズの焦点距離f、空気換算距離でのバックフォーカスBf、FナンバーFNo.、及び最大全画角2ωの値をd線基準で示す。2ωの欄の(°)は単位が度であることを意味する。表2に示す値は、無限遠物体に合焦した状態においてd線を基準とした場合の値である。
【0061】
表3では、無限遠物体に合焦した状態における可変面間隔の値、及び物体距離が2000mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態における可変面間隔の値をそれぞれ、「無限遠」及び「2000mm」と表記した欄に示す。なお、物体距離とは、物体から最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離である。
【0062】
表1では、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表4において、Snの欄には非球面の面番号を示し、KA及びAm(m=3、4、5、・・・20)の欄には各非球面についての非球面係数の数値を示す。表4の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KA及びAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h/{1+(1-KA×C×h1/2}+ΣAm×h
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0063】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
図6に、実施例1の撮像レンズの各収差図を示す。図6では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、及び倍率色収差を示す。図6では「無限遠」と付した上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、「2000mm」と付した下段に物体距離が2000mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。球面収差図では、d線、C線、F線、及びg線における収差をそれぞれ実線、長破線、短破線、及び一点鎖線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線における収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線における収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線における収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、F線、及びg線における収差をそれぞれ長破線、短破線、及び一点鎖線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは最大半画角を意味する。
【0069】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、及び図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0070】
[実施例2]
実施例2の撮像レンズの構成を示す断面図を図2に示す。実施例2の撮像レンズは、実施例1の撮像レンズの概要と同様の構成を有する。実施例2の撮像レンズについて、基本レンズデータを表5に、諸元を表6に、可変面間隔を表7に、非球面係数を表8に、各収差図を図7に示す。図7では、上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、下段に物体距離が2000mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
[実施例3]
実施例3の撮像レンズの構成を示す断面図を図3に示す。実施例3の撮像レンズは、実施例1の撮像レンズの概要と同様の構成を有する。実施例3の撮像レンズについて、基本レンズデータを表9に、諸元を表10に、可変面間隔を表11に、非球面係数を表12に、各収差図を図8に示す。図8では、上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、下段に物体距離が2000mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】
【0078】
【表11】
【0079】
【表12】
【0080】
[実施例4]
実施例4の撮像レンズの構成を示す断面図を図4に示す。実施例4の撮像レンズは、実施例1の撮像レンズの概要と同様の構成を有する。実施例4の撮像レンズについて、基本レンズデータを表13に、諸元を表14に、可変面間隔を表15に、非球面係数を表16に、各収差図を図9に示す。図9では、上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、下段に物体距離が2000mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。
【0081】
【表13】
【0082】
【表14】
【0083】
【表15】
【0084】
【表16】
【0085】
[実施例5]
実施例5の撮像レンズの構成を示す断面図を図5に示す。実施例5の撮像レンズは、第2レンズ群G2が物体側から像側へ向かって順に、レンズL21~L24の4枚のレンズからなる点以外は、実施例1の撮像レンズの概要と同様の構成を有する。実施例5の撮像レンズについて、基本レンズデータを表17に、諸元を表18に、可変面間隔を表19に、非球面係数を表20に、各収差図を図10に示す。図10では、上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、下段に物体距離が2000mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。
【0086】
【表17】
【0087】
【表18】
【0088】
【表19】
【0089】
【表20】
【0090】
表21に実施例1~5の撮像レンズの条件式(1)~(12)の対応値を示す。実施例1~5はd線を基準波長としている。表21にはd線基準での値を示す。
【0091】
【表21】
【0092】
以上のデータからわかるように、実施例1~5の撮像レンズは、小型化、かつ、合焦の高速化が図られ、合焦の際の収差変動が少なく、諸収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。
【0093】
次に、本開示の実施形態に係る撮像装置について説明する。図11及び図12に本開示の一実施形態に係る撮像装置であるカメラ30の外観図を示す。図11はカメラ30を正面側から見た斜視図を示し、図12はカメラ30を背面側から見た斜視図を示す。カメラ30は、いわゆるミラーレスタイプのデジタルカメラであり、交換レンズ20を取り外し自在に装着可能である。交換レンズ20は、鏡筒内に収納された本開示の一実施形態に係る撮像レンズ1を含んで構成されている。
【0094】
カメラ30はカメラボディ31を備え、カメラボディ31の上面にはシャッターボタン32、及び電源ボタン33が設けられている。また、カメラボディ31の背面には、操作部34、操作部35、及び表示部36が設けられている。表示部36は、撮像された画像及び撮像される前の画角内にある画像を表示する。
【0095】
カメラボディ31の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント37が設けられ、マウント37を介して交換レンズ20がカメラボディ31に装着される。
【0096】
カメラボディ31内には、交換レンズ20によって形成された被写体像に応じた撮像信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子、その撮像素子から出力された撮像信号を処理して画像を生成する信号処理回路、及びその生成された画像を記録するための記録媒体等が設けられている。このカメラ30では、シャッターボタン32を押すことにより静止画又は動画の撮影が可能であり、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0097】
以上、実施形態及び実施例を挙げて本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態及び実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、及び非球面係数等は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0098】
また、本開示の実施形態に係る撮像装置についても、上記例に限定されず、例えば、ミラーレスタイプ以外のカメラ、フィルムカメラ、ビデオカメラ等、種々の態様とすることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 撮像レンズ
2 軸上光束
3 最大画角の光束
20 交換レンズ
30 カメラ
31 カメラボディ
32 シャッターボタン
33 電源ボタン
34、35 操作部
36 表示部
37 マウント
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
L11~L12、L21~L25、L31~L32 レンズ
PP 光学部材
Sim 像面
St 開口絞り
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12