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  • 特許-化粧料のハリ感の評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】化粧料のハリ感の評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20220218BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220218BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220218BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20220218BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220218BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20220218BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20220218BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220218BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q1/04
A61Q17/04
A61Q19/02
A61K8/84
A61K8/73
G01N33/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019539644
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2018032265
(87)【国際公開番号】W WO2019045020
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2017165525
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相見 牧子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 那緒子
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴胤
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-137219(JP,A)
【文献】特開2017-036338(JP,A)
【文献】特開2006-328024(JP,A)
【文献】特開2016-098224(JP,A)
【文献】特開2007-269723(JP,A)
【文献】特開2005-263702(JP,A)
【文献】特開2001-039850(JP,A)
【文献】特開2014-210711(JP,A)
【文献】特開2016-014060(JP,A)
【文献】製品カタログ「化粧品用・医薬品用製品カタログ」,日油,2015年5月,p.8-9
【文献】光井武夫,新化粧品学,株式会社南山堂,1993年 1月12日,第1版,p.149-150,364-365
【文献】日本化粧品技術者会 編,化粧品事典,丸善,2003年12月15日,p.126-127
【文献】肌ラボ 極潤αハリ化粧水しっとりタイプ,Cosmetic-Info.jp [online],2016年8月22日,[2021.06.17検索],https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=46864
【文献】Shape + Fill Expert Serum,ID 3417979 ,Mintel GNPD[online],2015年8月,[検索日2021.06.17],https://www.portal.mintel.com
【文献】Gold Moisture Cream,ID 3360241 ,Mintel GNPD[online],2015年8月,[検索日2021.06.17],https://www.portal.mintel.com
【文献】ルネセア ヘア&スカルプ コンセントレート バイタライザー,Cosmetic-Info.jp [online],2012年10月18日,[2021.06.17検索],https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=26803
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
G01N 33/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハリ感を測定される物質、室温で皮膜形成する水溶性高分子、及び着色物質を含有する化粧料を、透明な固体上に塗布する工程を有する化粧料のハリ感の評価方法であって、
化粧料を透明な固体上に塗布して形成された未乾燥皮膜の面積を第一の面積として測定し、未乾燥皮膜を乾燥させて形成された乾燥皮膜の面積を第二の面積として測定し、第一の面積に対する第二の面積の比を算出することを含む、化粧料のハリ感の評価方法。
【請求項2】
第一の面積に対する第二の面積の比が5%以上となるハリ感を測定される物質を選択する、請求項に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚用化粧料及び化粧料のハリ感の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肌表面の凹凸構造(キメ)は、加齢とともに平滑化され、大きさもばらつき、弾力が低下する(ハリ感が失われる)ことが知られている。また、キメの整った肌は、反射光が多く、全体に均一に反射するが、加齢肌は、反射光が少なく、方向も偏り見た目のハリ感も失われる。
【0003】
皮膜形成能を有する水溶性高分子、疎水性皮膜形成性高分子の水分散液等を含む化粧料が提案されている。例えば、特許第3905457号公報には、乾くと適度なハリを与える化粧料が得られると開示されている。
【0004】
また、ハリについて、被験者の顔画像の頬領域について輝度の階調画像を得て、高輝度領域と中輝度領域の面積比等をハリ感の評価指標とするハリ感評価方法が提案されている。例えば、特許第5250956号公報には、中輝度ないし高輝度領域において、その広さ、形状がハリ感の評価に対応すると開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許第3905457号公報に記載の化粧料は、皮膚に薄くのばし、皮膚上に皮膜を形成させた後、水又はぬるま湯により除去する化粧料であり、皮膜自体がハリを出すように意図していない。
特許第5250956号公報に記載の評価方法は、顔画像を取得し、画像解析が必要な方法であって、簡便性に欠け、化粧料に含まれる成分のスクリーニング又は設計に用いることは難しい。
【0006】
本発明の一実施形態の課題は、肌表面に伸縮性のある皮膜構造を形成することにより、ハリを向上させることができる皮膚用化粧料を提供することにある。
本発明の別の実施形態の課題は、測定される物質により形成される皮膜の伸縮性を客観的に評価できる化粧料のハリ感の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、以下の実施形態を含む。
【0008】
<1> 主鎖又は側鎖に環状構造を有する水溶性高分子及びジメチル基又はトリメチルアミノ基を有する水溶性高分子から選ばれる少なくとも一種、及び、室温で皮膜形成する水溶性高分子から選ばれる少なくとも一種を含有する皮膚用化粧料。
<2> 主鎖又は側鎖に環状構造を有する水溶性高分子がポリイミド-1、ポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも一種である、上記<1>に記載の皮膚用化粧料。
<3> ジメチル基又はトリメチルアミノ基を有する水溶性高分子が、ジメチル基又はトリメチルアミノ基を有するポリアクリル酸系共重合体及びジメチル基又はトリメチルアミノ基を有するポリメタクリル酸系共重合体から選ばれる少なくとも一種である、上記<1>又は<2>に記載の皮膚用化粧料。
<4> 室温で皮膜形成する水溶性高分子が、多糖類である水溶性高分子から選ばれる少なくとも一種である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の皮膚用化粧料。
<5> 多糖類である水溶性高分子が、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、プルラン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、寒天、アルギン酸、ペクチン、セルロース、コーンスターチ及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の皮膚用化粧料。
<6> 室温で皮膜形成する水溶性高分子を皮膚用化粧料の全質量に対して0.01~5質量%含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の皮膚用化粧料。
【0009】
<7> ハリ感を測定される物質、室温で皮膜形成する水溶性高分子、及び着色物質を含有する化粧料を、透明な固体上に塗布する工程を有する化粧料のハリ感の評価方法であって、化粧料を透明な固体上に塗布して形成された未乾燥皮膜の面積を第一の面積として測定し、未乾燥皮膜を乾燥させて形成された乾燥皮膜の面積を第二の面積として測定し、第一の面積に対する第二の面積の比を算出することを含む、化粧料のハリ感の評価方法。
<8> 第一の面積に対する第二の面積の比が5%以上となるハリ感を測定される物質を選択する、<7>に記載の評価方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、肌表面に伸縮性のある皮膜構造を形成することにより、ハリを向上させることができる皮膚用化粧料を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、ハリ感を測定される物質により形成される皮膜の伸縮性を客観的に評価できる化粧料のハリ感の評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の皮膜評価において得られた画像である。
図2】実施例の皮膜評価の結果を示すグラフである。
図3】実施例のキメの評価において皮膚表面のキメを撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の皮膚用化粧料及び化粧料のハリ感の評価方法の実施形態の一例について説明する。但し、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の趣旨の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0013】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、室温とは、25℃である。
【0014】
<皮膚用化粧料>
本開示の皮膚用化粧料(以下、単に「皮膚用化粧料」と称することがある。)は、主鎖又は側鎖に環状構造を有する水溶性高分子及びジメチル基又はトリメチルアミノ基を有する水溶性高分子の少なくとも一種、及び、室温で皮膜形成する水溶性高分子の少なくとも一種を含有する皮膚用化粧料である。
本開示の化粧料によれば、肌表面に伸縮性のある皮膜構造を形成することにより、ハリを向上させることができる。
【0015】
本開示において、水溶性高分子とは、加熱操作を加えて水中に高分子を所定の濃度(5g/L)で溶解させた後、25℃まで冷却した際に水中に高分子が析出および/または沈殿が確認されないことを意味する。
【0016】
本開示において、主鎖又は側鎖に環状構造を有する水溶性高分子及びジメチル基又はトリメチルアミノ基を有する水溶性高分子の少なくとも一種(以下、「第一の高分子」と称することがある)は、皮膚にハリを付与する性質を持つことが好ましい。
【0017】
主鎖又は側鎖に環状構造を有する水溶性高分子は、特に限定されないが、環状構造は、窒素原子を含む5員環構造であることが好ましく、ピロリドン又はマレイミドであることがより好ましく、水溶性高分子の側鎖にピロリドンの窒素原子が結合した構造又は水溶性高分子の主鎖にマレイミドの炭素―炭素結合を含む構造であることがさらに好ましい。主鎖又は側鎖に環状構造を有する水溶性高分子として、具体的には、ポリイミド-1、ポリビニルピロリドン及びこれらの共重合体、等が挙げられる。
【0018】
ポリイミド-1は、アクアフレックス(登録商標)XL-30 (AQUAFLEX XL-30)とも呼ばれ、イソブチレン/ジメチルアミノプロピル マレイミド/エトキシ化マレイミド/マレイン酸コポリマー(isobutylene/dimethylaminopropyl maleimide/ethoxylated maleimide/maleic acid copolymer)である。ポリビニルピロリドンは、特に制限されないが、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90、等が好ましい。
【0019】
ジメチル基又はトリメチルアミノ基を有する水溶性高分子は、特に限定されないが、ジメチル基又はトリメチルアミノ基を有するポリアクリル酸、及びジメチル基又はトリメチルアミノ基を有するポリメタクリル酸系共重合体の少なくとも一種であることが好ましい。なお、本開示では、トリメチルアミノ基としてホスホリルコリン基を含む。
【0020】
ジメチル基又はトリメチルアミノ基を有する水溶性高分子として、具体的には、アミンオキシド系のポリマー(アクリレーツ/アクリル酸ラウリル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-72、等が挙げられる。
【0021】
なお、ジメチル基又はトリメチルアミノ基を有する水溶性高分子として、具体的には、ダイヤフォーマー Z-651、ユカフォーマー 301、リピジュアHM、リピジュアPMB、リピジュアC等が挙げられる。
【0022】
本開示の皮膚用化粧料では、皮膚用化粧料に対して、主鎖又は側鎖に環状構造を有する水溶性高分子及びジメチル又はトリメチルアミノ基を有する水溶性高分子の少なくとも一種(第一の高分子)の総量を0.01質量%~5質量%含有することが好ましく、0.1質量%~3質量%含有することがより好ましく、1質量%~3質量%含有することがさらに好ましい。この範囲内であれば、皮膚用化粧料を皮膚に塗布して、室温で乾燥させた場合、皮膜を形成、収縮して、皮膚にハリを与えやすくなる。
【0023】
本開示において、室温で皮膜形成する水溶性高分子の少なくとも一種(以下、「第二の高分子」と称することがある)は、第一の高分子とともに化粧料に溶解し、室温で皮膚等に塗布して乾燥させると、皮膜を形成できる性質を持つことが好ましい。
【0024】
室温で皮膜形成する水溶性高分子は、特に限定されないが、室温で皮膜形成する水溶性高分子であればよく、多糖類であることが好ましい。本開示では、多糖類として、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、プルラン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、寒天、アルギン酸、ペクチン、セルロース、コーンスターチおよびこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。多糖類として、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、プルラン、グァーガム、ペクチン、セルロース、コーンスターチおよびこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、キサンタンガム、プルラン、ジェランガム、グァーガム、ヒドロキシプロピルグァーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、ペクチンおよび変性コーンスターチからなる群から選ばれる少なくとも一種であることがさらに好ましい。
【0025】
なお、室温で皮膜形成する水溶性高分子の市販品として、具体的には、ノムコート(登録商標)Z、サンエース(登録商標)C、エコーガム(登録商標)、ケルコゲル(登録商標)HM、CG-LA、グリロイド(登録商標)6C、ケルトロール(登録商標)CGシリーズ、GENUVISCO(登録商標)type PJ-JPE、SUNALGIN200/80、SUPERGEL CSA 200/50、GENUGUM(登録商標)type RL-200-J、JAGUAR(登録商標) HP-105、NEOVISCO MC、SANHEC、GENUGEL(登録商標)WG-108、WR-78-J、GENU(登録商標)ペクチンLN-5CD-J、ミルスタイルCP、サンジェロース(登録商標)90L、60M、AMAZE等が挙げられる。
【0026】
本開示の皮膚用化粧料では、室温で皮膜形成する水溶性高分子の含有量は、使用態様の種類、目的によって適宜選択することができる。皮膚用化粧料の全質量に対して、室温で皮膜形成する水溶性高分子(第二の高分子)の総量を0.01質量%~5質量%含有することが好ましく、0.1質量%~1質量%含有することがより好ましい。この範囲内であれば、皮膚用化粧料を皮膚に塗布して乾燥させた場合、皮膜を形成しやすくなる。
【0027】
本開示の皮膚用化粧料は、本開示の効果を損なわない範囲において、皮膚用化粧料の態様に応じて添加可能な成分を適宜含有してもよい。
【0028】
本開示の皮膚用化粧料は、皮膚用の化粧料であれば特に限定されない。例えば、スキンケア化粧料(化粧水、美容液、乳液、クリーム、美白化粧料等)、日焼け止め化粧料、化粧下地クリーム、ファンデーション、口紅等のメークアップ化粧料等を挙げることができるが、これらに制限されない。
【0029】
本開示の皮膚用化粧料は、上述した成分を用いて、通常の方法に従って製造することができる。具体的には、本開示の皮膚用化粧料は、上述した第一及び第二の高分子を、必要に応じて水などの溶媒を加えてできる混合物を撹拌、混合することで皮膚用化粧料を得ることができる。また、本開示の皮膚用化粧料は、必要に応じて添加可能な成分を常法により混合等して得ることができる。
【0030】
本開示の皮膚用化粧料の使用方法の一例として、皮膚用の化粧料として皮膚に薄くのばして塗布することができる。皮膚に適用した場合、皮膚用化粧料が乾燥することで、皮膜を形成して、皮膚にハリを与えることができる。
【0031】
<化粧料のハリ感の評価方法>
本開示の化粧料のハリ感の評価方法(以下、単に「評価方法」と称することがある。)は、ハリ感を測定される物質、室温で皮膜形成する水溶性高分子、及び着色物質を含有する化粧料を、透明な固体上に塗布する工程を有する化粧料のハリ感の評価方法であって、化粧料を透明な固体上に塗布して形成された未乾燥皮膜の面積を第一の面積として測定し、未乾燥皮膜を乾燥させて形成された乾燥皮膜の面積を第二の面積として測定し、第一の面積に対する第二の面積の比を算出することを含む、化粧料のハリ感の評価方法である。
本開示の評価方法により、化粧料に含有されるハリ感を測定される物質により形成される皮膜の伸縮性(即ち、ハリ感)を、皮膚に直接化粧料を適用しなくとも客観的に評価できる。また、本開示の評価方法は、皮膚にハリ感を付与する観点から皮膚用化粧料に含有させる成分を選択するために好適に用いることができる。
【0032】
本開示の化粧料のハリ感の評価方法において、ハリ感の評価のために用いる測定のための化粧料は、ハリ感を測定される物質、室温で皮膜形成する水溶性高分子、及び着色物質を含有する。測定のための化粧料には、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
【0033】
ハリ感を測定される物質は、特に限定されないが、皮膚にハリを付与する性質を持つ高分子であることが好ましい。ハリ感を測定される物質の化粧料に対する含有量は、特に限定されない。化粧料における実用的な使用範囲を探索する観点からは、ハリ感を測定される物質の含有量は、皮膚用化粧料の説明で上述した第一の高分子の含有量と同様であることが好ましい。ハリ感を測定される物質は、一種又は二種以上を測定のための化粧料に含有されてもよい。
【0034】
また、室温で皮膜形成する水溶性高分子とは、皮膚用化粧料で上述した室温で皮膜形成する水溶性高分子と同義である。室温で皮膜形成する水溶性高分子の含有量は、特に限定されない。化粧料における実用的な使用範囲を探索する観点からは、室温で皮膜形成する水溶性高分子の含有量は、皮膚用化粧料の説明で上述した第二の高分子の含有量と同様であることが好ましい。室温で皮膜形成する水溶性高分子は、一種又は二種以上を測定のための化粧料に含有してもよい。
【0035】
評価方法においては、ハリ感を測定される物質を含む測定のための化粧料を塗布して形成される第一の面積(未乾燥皮膜の面積)に対して、化粧料が乾燥してできる第二の面積(乾燥皮膜の面積)の比が5%以上となるハリ感を測定される物質を選択することが好ましい。すなわち、第一の面積に対する第二の面積の比は、皮膜が乾燥した際の皮膜の収縮率として理解することができる。この収縮率は、化粧料を塗布した皮膚のハリ感と相関すると考えられる。評価方法において、第一の面積に対する第二の面積の比は、皮膚へのハリの付与という観点から、5%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。上限値として、60%以下であることが好ましく、50%以下であることが好ましい。
【0036】
評価方法において、測定のための化粧料は着色物質を含む。着色物質としては、着色を示すものであれば限定されないが、化粧料に用いられる着色物質を用いることが好ましい。着色物質として、アスタキサンチン、リコピン、βカロテン、クチナシ、ベニバナ、ベニコウジ、コチニール、ラック、ビートレッド、アントシアニン、トウガラシ、アナトー、マリーゴールド、カラメル、クロロフィルなどの天然色素、または、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色213号、赤色214号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色203号、緑色202号、青色1号、青色2号、青色205号などの法定色素、酸化鉄等が好ましい。
【0037】
評価方法において、第一の面積を測定する塗布膜(未乾燥皮膜)を乾燥させる温度は、皮膜が乾燥できる温度であれば限定されないが、測定する部屋の温度であればよく、0℃~40℃であればよい。
【0038】
評価方法において、測定のための化粧料は、透明な固体上に塗布される。
透明とは、可視光の透過率が60%以上であることを示し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。透明な固体とは、透明な固体であれば限定されず、例えば、透明なガラス板、透明な樹脂成形体、等の固体を挙げることができる。
例えば、透明な樹脂としては、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート又はエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。また、二層以上の透明な樹脂を積層したフィルムを用いることもできる。
透明な固体の形状は、限定されず、例えば、矩形、多角形、円形、楕円形等であればよく、測定対象の塗布膜(皮膜)の形状に応じて適宜選択すればよい。
透明な固体の厚さも、特に限定されず、例えば、0.5mm~1.5mmであることが好ましく、0.8mm~1.2mmであることがより好ましい。
【0039】
化粧料を透明な固体上に塗布する方法は、特に限定されないが、材料の消費量を抑制するために、薄膜を形成できる塗布量で塗布できる方法であればよい。具体的には、第一の面積(未乾燥皮膜の面積)を形成するため化粧料の塗布量は、10μL~1000μLの範囲で適宜設定すればよく、10μL~500μLの範囲が好ましく、10μL~100μLの範囲がより好ましい。本開示の評価方法では、例えば、50μLを、透明な固体上に化粧料を塗り広げて形成される円形状のスポットを、未乾燥皮膜として用いる。
【0040】
評価方法においては、第一の面積及び第二の面積を測定し、第一の面積に対する第二の面積の比を算出する。なお、第一の面積は、透明な固体上に、化粧料を塗布する所定の塗布対象領域(例えば、円形状のスポット)をあらかじめ記載し、塗布対象領域の面積を算出することで、測定を省略することができる。また、第一の面積は、画像撮像装置(例:デジタルカメラ、CCDカメラ等)を用いて測定できる。第二の面積(乾燥皮膜の面積)は、画像撮像装置を用いて画像処理する公知の方法で求めることができる。
第一の面積に対する第二の面積の比は、第一の面積に対する第二の面積の百分率(%)として算出する。
第一の面積及び第二の面積、並びに、第一の面積に対する第二の面積の比は、具体的には、後述する実施例にて用いる方法により求めることができる。
【実施例
【0041】
以下、皮膚用化粧料及び化粧料のハリ感の評価方法について、実施例を挙げてより具体的に説明する。下記実施例は実施形態の一例を示しており、本開示は、実施例に何ら制限されない。
なお、特に断らない限り、「%」は質量基準である。
【0042】
〔実施例1~33、比較例1~4〕
表1~表6に記載の成分を80℃に加熱し、80℃の温度を維持したまま1時間撹拌して、皮膚用化粧料を得た。
【0043】
表1~表4中に記載の成分については、それぞれ以下のものを用いた。
・ポリイミド-1:Aquaflex(登録商標)XL-30(30%aq)、アシュランド・ジャパン株式会社
・ポリビニルピロリドン1:ポリビニルピロリドン K-30(100%粉末)、株式会社日本触媒
・ポリビニルピロリドン2:ポリビニルピロリドンK-90(100%粉末)、株式会社日本触媒
・(ビニルピロリドン/VA)コポリマー1:PVP/VA W-735(酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体)、アシュランド・ジャパン株式会社
・(ビニルピロリドン/VA)コポリマー2:PVP/VA S-630(酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体)、アシュランド・ジャパン株式会社
・(アクリレーツ/アクリル酸ラウリル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー:ダイヤフォーマー(登録商標)Z651(30%aq)、三菱ケミカル株式会社
・(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー:ユカフォーマー(登録商標)301(30%aq)、三菱ケミカル株式会社
ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン:リピジュア(登録商標)HM(40%aq)、日油株式会社
・ポリクオタニウム-51:リピジュア(登録商標)PMB(5%aq)、日油株式会社
・ポリクオタニウム-64:リピジュア(登録商標)C(5%aq)、日油株式会社
【0044】
表5及び表6中に記載の成分については、それぞれ以下のものを用いた。
・ポリイミド-1:Aquaflex(登録商標)XL-30(30%aq)、アシュランド・ジャパン株式会社
・プルラン:化粧品用プルラン、株式会社林原
アルギン酸:SUNALGIN200/80、三晶株式会社
・ローカストビーンガム:GENUGAMU(登録商標) RL-200J、三晶株式会社
・ジェランガム:KELCOGEL(登録商標) CG-LA、三晶株式会社
・グアーガム:SUPERGEL CSA200/50、三晶株式会社
・ヒドロキシプロピルグアーガム:JAGUAR(登録商標) HP-105、三晶株式会社
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース:NEOVISCO MC、三晶株式会社
・ヒドロキシエチルセルロース:SANHEC、三晶株式会社
・κ-カラギーナン1:GENUGEL(登録商標) type WR-78-J、三晶株式会社
・κ-カラギーナン2:GENUGEL(登録商標) type WG-108、三晶株式会社
・ペクチン:GENU(登録商標) PECTIN LN-5CD-J、三晶株式会社
・ポリクオタニウム-72:ミルスタイルCP(HEC変性);そのほか成分としてフェノキシエタノールおよび水を混合物として含む、クローダジャパン株式会社
・疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース1:サンジェロース(登録商標)90L、大同化学株式会社
・疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース2:サンジェロース(登録商標)60M、大同化学株式会社
【0045】
以下の方法によって、得られた皮膚化粧料を評価した。
【0046】
1.専門パネラーによるハリ感の評価(官能評価)
実施例1~33及び比較例1~4の各皮膚用化粧料100μLを、専門パネラー5名の前腕に均一に塗布した後、下記の評価基準に沿ってハリ感を評価した。続いて、専門パネラーの結果を算術平均して各皮膚用化粧料のハリ感について平均値を求め、下記の評価基準に沿って官能評価を評価した。結果を表1~表6に示す。
【0047】
(1)ハリ感の評価基準
5:皮膚用化粧料を塗布した部分に皮膜が形成される感覚が感じられ、引っ張られる感覚は強く感じられる。
4:皮膚用化粧料を塗布した部分に皮膜が形成される感覚、及び、引っ張られる感覚が、ともに感じられる。
3:皮膚用化粧料を塗布した部分に皮膜が形成された感覚は感じられるが、引っ張られる感覚は僅かに感じられる。
2:皮膚用化粧料を塗布した部分に皮膜が形成される感覚、及び、引っ張られる感覚が、ともに僅かに感じられる。
1:皮膚用化粧料を塗布した部分に皮膜が形成される感覚、及び、引っ張られる感覚が、ともにほとんど感じられない。
【0048】
(2)官能評価の評価基準
A:ハリ感の平均値が3.5以上5.0以下
B:ハリ感の平均値が3.1以上3.5未満
C:ハリ感の平均値が3.1未満
【0049】
2.皮膜によるハリ感の評価(皮膜評価)
実施例1~33及び比較例1~4の各皮膚用化粧料について、以下の手順に沿って面積及び収縮率(面積の比)を算出し、皮膜のハリ感の評価をした。
【0050】
(1)第一の面積を測定する未乾燥皮膜の形成
真円(直径2cm)を印刷した用紙の上にスライドガラスを設置した。シリンジを用いて、作製した皮膚用化粧料を50μL採取した後、上述した真円の大きさになるように各皮膚用化粧料をそれぞれスライドガラス上に塗り広げて試料を調製した。
(2)第二の面積を測定する乾燥皮膜の形成
(1)で調製した試料を20時間以上室温下で静置し、スライドガラス上に皮膜を形成させた。
(3)第一の面積及び第二の面積、並びに、収縮率の算出
スライドガラス上の皮膜側を上にして、以下に示す撮像条件に従って各試料を撮像した。
画像解析ソフトを用いて上述した真円を撮像した画像から抽出し、真円の大きさを算出した後、真円の大きさが800×800ピクセルとなるよう規格化してRGB画像とした。
続いて、RGB画像からL画像を経由して彩度Cを、下記の式(1)に従って算出した。
彩度C={(a+(b1/2・・・式(1)
>21.2となる領域を抽出し、抽出領域に対して面積を合計し、第二の面積とした。
なお、第一の面積は真円(直径2cm)の面積として算出した。
下記の式(2)に従って収縮率を求め、下記の評価基準に沿って、皮膜によるハリ感を評価した。
収縮率=(第二の面積)/(第一の面積)×100(%)・・・式(2)
結果を表1~表6、図1及び図2に示す。
なお、図1は、上記の皮膜評価において撮像された画像である。図2は、実施例及び比較例の化粧料についてハリ感と収縮率との関係を示すグラフであり、本図では、実施例3、4、5、6、9、10及び12、並びに、比較例1の結果を示した。
【0051】
・収縮率の評価基準
収縮率が30%以上:A
収縮率が5%以上30%未満:B
収縮率が5%未満:C
皮膜が形成されない:D
【0052】
3.キメの評価
実施例3及び比較例1の各皮膚化粧料100μLを被験者(1名)の前腕に均一に塗布し、形状解析レーザー顕微鏡(VK-X1000、株式会社キーエンス)にて皮膚表面のキメを撮影した。結果を図3に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】



【0059】
表1~表6及び図2から分かるように、本開示の評価方法としての皮膜評価の結果は、皮膚における官能評価の結果と同様の傾向を示している。これは、本開示の評価方法は、皮膚に直接化粧料を適用しなくても、ハリ感を評価できる方法であり有用であることを示す。
【0060】
図3図3中の左側の写真は比較例1を表し、図3中の右側写真は実施例3を表す。)から分かるように、本開示の皮膚用化粧料は、官能評価においてキメが細いため皮膚のハリ感があることが分かった。これは、本開示の皮膚用化粧料は、皮膚のキメを整え、ハリ感をもつ化粧料であり、有用であることを示す。
図1
図2
図3