(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】窒化ケイ素含有基板をエッチングするための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20220218BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
H01L21/308 E
H01L21/306 E
(21)【出願番号】P 2020512852
(86)(22)【出願日】2018-09-06
(86)【国際出願番号】 US2018049701
(87)【国際公開番号】W WO2019051053
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-05-13
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クーパー, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ビロドー, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ, ウェン-ホー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ミン-チェ
(72)【発明者】
【氏名】トゥ, シェン-ハン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, シン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ソンジン
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-515245(JP,A)
【文献】特開2000-058500(JP,A)
【文献】特開2016-029717(JP,A)
【文献】特開2012-033561(JP,A)
【文献】国際公開第2014/077199(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0092872(US,A1)
【文献】特開2007-012640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素に対してSiNをエッチングする選択性を有する、窒化ケイ素(SiN)及び酸化ケイ素を含む表面を有する基板のエッチングに使用するための組成物であって、
組成物の総重量の、少なくとも60重量%の濃リン酸、
ヘキサフルオロケイ酸(HFSA)、及び
アミノアルコキシシラン
を含む、組成物。
【請求項2】
5~50,000パーツパーミリオン(ppm)のヘキサフルオロケイ酸(HFSA)、及び
20~10,000ppmのアミノアルコキシシラン
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アミノアルコキシシランが式
Si(R1)(R2)(R3)(R4)
(式中、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、アルキル基、アルキルアミン基、アルコキシ又はヒドロキシル基であり、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つはアルコキシ又はヒドロキシル基であり、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つは、アルキルアミン基である)
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
R1、R2、R3及びR4のそれぞれが、
式:
-(CH
2)
xNW
2(式中、xは1~12の範囲である)、又は
-(CH
2)
x1-NW-(CH
2)
x2-NW-...(CH
2)
xn-NW
2(式中、WはHまたはCH
3基に等しく、x1、x2、...xnは1~12の範囲であり、n≦100である)
を有するアルキルアミン基、
式-O(CH
2)
yCH
3を有するアルコキシ基(式中、yは1~6の範囲である)
ヒドロキシル基、又は
式-(CH
2)
zCH
3(式中、zは1~18の範囲である)を有するアルキル基
である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
カルボン酸化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の総重量に基づいて0.01~10重量%のカルボン酸化合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
アルキルアミン化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
5~10,000ppmのアルキルアミン化合物を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
溶解シリカまたは可溶性ケイ素含有化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
組成物の総重量に基づいて約5~10,000パーツパーミリオンの溶解シリカ又は可溶性ケイ素含有化合物を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
さらに有機溶媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
酸化ケイ素に対するSiNのエッチングの選択性を有する、窒化ケイ素(SiN)及び酸化ケイ素を含む表面を有する基板をエッチングする方法であって、
エッチング組成物の総重量の、少なくとも60重量%の濃リン酸、
ヘキサフルオロケイ酸(HSFA)、及び
アミノアルコキシシラン
を含むエッチング組成物を提供すること、
窒化ケイ素及び酸化ケイ素を含む表面を有する基板を提供すること、並びに
表面からSiNを除去する条件で基板を組成物と接触させること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載された発明は、酸化ケイ素の存在下で窒化ケイ素をエッチングするための組成物および方法に関し、窒化ケイ素材料を有用なまたは有利に高いエッチング速度および特に多層半導体ウェハ構造において酸化ケイ素の露出したまたは下層の層に対して窒化ケイ素の有用なまたは有利に高い選択率で、有効におよび効率的にエッチングするための組成物および方法を含む。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス業界では、デバイスの性能を改善し、デバイスのサイズを縮小し、デバイスのフィーチャサイズを縮小するという継続的な需要がある。フィーチャサイズの低減により、デバイスのフィーチャ密度が向上し、デバイスの速度が増加するという2つの利点が与えられる。
【0003】
フィーチャおよびデバイスのサイズを低減するには、マイクロエレクトロニクスデバイスを製造する多段階方法の工程を改善する新しい方法を見つける必要がある。多くのタイプのマイクロエレクトロニクスデバイスを調製する方法では、窒化ケイ素を除去する工程が一般的である。通常、シラン(SiH4)およびアンモニア(NH3)から化学気相成長法で堆積した窒化ケイ素(Si3N4)の薄層は、マイクロエレクトロニクスデバイスにおいて水およびナトリウムのバリアとして有用であり得る。また、パターン化された窒化ケイ素層は、空間的に選択的な酸化ケイ素成長のためのマスクとして使用される。塗布された後、これらの窒化ケイ素材料のすべてまたは一部は、一般にエッチングによって実行される除去が必要な場合がある。
【0004】
エッチングによる基板からの窒化ケイ素の除去は、好ましくは、マイクロエレクトロニクスデバイスの他の露出したまたは覆われたフィーチャを損傷または破壊しない方法で実行することができる。多くの場合、窒化ケイ素を除去する方法は、酸化ケイ素などのマイクロエレクトロニクスデバイス基板の表面に同様に存在する他の材料に対して窒化ケイ素を優先的に除去する方法で実行される。種々の商業的方法によれば、窒化ケイ素は、高温で、例えば150℃~180℃の範囲の温度を有する浴中で、基板表面を濃リン酸(H3PO4)に曝すことを含む湿式エッチング方法によってマイクロエレクトロニクスデバイス表面から除去される。酸化ケイ素に対して窒化ケイ素を選択的に除去する従来の湿式エッチング技術は、リン酸(H3PO4)水溶液、典型的には約85重量%のリン酸および15重量%の水を使用してきた。新鮮な熱リン酸を使用すると、典型的なSi3N4:SiO2選択性は約40:1であることができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、湿式エッチング法によりマイクロエレクトロニクスデバイス基板の表面から窒化ケイ素を除去するための新規で発明性のあるエッチング組成物および関連方法に関する。例示的な方法では、エッチング組成物を使用して、窒化ケイ素および酸化ケイ素、ならびに他の任意の導電性、絶縁性、または半導体性材料、またはマイクロエレクトロニクスデバイスの製造中に有用な処理材料を含む表面から窒化ケイ素を除去する。
【0006】
過去において、集積回路および半導体製造産業は、窒化ケイ素をエッチングするためのエッチング組成物として熱リン酸を使用してきた。性能を改善するために、溶解シリカなどの添加剤が含まれている場合がある。例えば、米国特許第6162370号明細書および米国特許第8940182号明細書を参照し、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、これらの熱リン酸組成物は商業的に有用であるが、窒化ケイ素のエッチング速度、および他の材料(例えば、酸化ケイ素)に対する窒化ケイ素のエッチングの選択性の改善が依然として所望されている。性能の異なる尺度として、基板は、エッチング後、その表面に固体シリカ粒子などの許容可能な低レベルの固体粒子を含むはずであり、これらはエッチング工程中にエッチング組成物中に生成され(例えば、沈殿し)、基板表面に粒子として再堆積する場合があり、エッチング工程中に基板表面に生成および堆積するこれらのタイプの固体粒子がより少ない改善されたエッチング組成物が所望される。
【0007】
出願人の発明によれば、エッチング組成物は、リン酸、ヘキサフルオロケイ酸、およびアルキルアミンアルコキシシランの組み合わせを含むことができる。組成物はまた、例えばリン酸または別の成分に存在する、または別個の成分として添加できるある量の水を含んでもよい。組成物はまた、任意に、カルボン酸化合物、例えばリン酸にシリカを溶解することによりまたは可溶性ケイ素含有化合物を溶解することにより提供され得る溶解シリカ、有機溶媒、界面活性剤、およびアミノアルキル化合物の1つ以上を含んでいてもよい。記載されたエッチング組成物は、窒化ケイ素および酸化ケイ素材料を含む基板から窒化ケイ素を除去するための湿式エッチング工程に使用される場合に所望のまたは有利な性能特性、例えば有用なまたは高い窒化ケイ素エッチング速度、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の有用なまたは高い選択性、有用なまたは有利に高いエッチング速度と有用なまたは有利に高い窒化ケイ素の選択性とのバランス、ならびにエッチング工程後の基板表面上の固体粒子の存在の減少を提供できる。
【0008】
表面に窒化ケイ素および酸化ケイ素フィーチャを含むマイクロエレクトロニクスデバイス基板をエッチングする方法で使用される場合、本発明のエッチング組成物は、同じ基板を用いる同じ方法において先行技術または比較可能なエッチング組成物の使用に比べて、望ましい、有用な、または有利な性能を示すことができる。比較可能なエッチング組成物の一例は、溶解シリカまたは可溶性シリカ化合物を含む濃リン酸(例えば、85重量%のリン酸水溶液)であり、その存在により、窒化ケイ素のエッチングの選択性が増加する。このタイプの比較可能なエッチング組成物の例は、米国特許第6162370号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
先行技術のエッチング組成物または比較可能な組成物と比較した本発明のエッチング組成物の改善された性能は、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチングの改善された選択性、改善された窒化ケイ素のエッチング速度(同一の基板および異なるが比較可能なエッチング組成物およびエッチング方法を使用して実行される窒化ケイ素のエッチング速度と比較して)、または選択性およびエッチング速度の改善された組み合わせの1つ以上として測定できる。窒化ケイ素の絶対エッチング速度は、その堆積方法に大きく依存する。したがって、本明細書に記載の「改善された」窒化ケイ素エッチング速度は、同じタイプの窒化ケイ素材料を処理する場合、異なるが比較可能なエッチング組成物およびエッチング方法を使用する方法によって達成されるエッチング速度と比較して、本明細書に記載の組成物およびエッチング方法を用いた窒化ケイ素材料の改善された(すなわち増加した)エッチング速度を指すと理解される。
【0010】
一般に、典型的な範囲内では、典型的な範囲の下限にある酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の選択性と組み合わせて、比較的高い窒化ケイ素エッチング速度が生じ得るが、逆に、窒化ケイ素の比較的低いエッチング速度と組み合わせて、比較的高い酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の選択性が生じ得る。現在記載されている組成物は、窒化ケイ素のエッチング速度および選択性のさまざまなレベルおよびレベルの組み合わせを実現できる。いくつかの使用によれば、組成物は、有用であるが必ずしも有利ではない窒化ケイ素の高い選択性とともに有利に高い窒化ケイ素エッチング速度(例えば、先行技術または比較可能なエッチング速度に対して改善される)を達成できる。他の使用によれば、組成物は、有用であるが必ずしも有利ではないが高い窒化ケイ素のエッチング速度とともに有利に高い窒化ケイ素選択性を達成することができる。
【0011】
改善されたエッチング速度(その用語が本明細書で使用されるように)は、比較可能なまたは先行技術のエッチング組成物およびエッチング方法を使用して実行される同一の窒化ケイ素材料のエッチング速度より少なくとも25%大きいものであり得る。改善された選択性は、比較可能なまたは先行技術の選択性よりも少なくとも50%高いものであることができる。エッチング速度(またはエッチング方法の他の性能)の比較は、同じ条件下、同じ方法で製造された基板で実行された実験に基づくべきである。
【0012】
性能比較のために、ウェハの処理に使用されたエッチング溶液を使用して、エッチング速度および選択性を同程度に測定できる。一例として、新鮮で以前に使用されていないエッチング組成物を使用して、エッチング方法の開始時に2つのエッチング組成物の性能を比較する目的で、エッチング速度および選択性を測定できる。あるいは、これらの測定は、組成物を使用して多数のウェハを処理した後など、エッチング組成物を使用して基板を特定量処理した後に実行することができる。ある量の処理後の性能と比較して、処理に使用される前のエッチング組成物の性能(窒化ケイ素のエッチング速度および選択性に関する)は、溶解シリカが窒化ケイ素の溶解生成物として溶液に添加されるので、酸化物のエッチング速度が抑制され(さらに窒化物のエッチング速度よりも相当少ない程度に)、したがって選択性の増加を引き起こすため、全く異なり得る。ただし、選択性の大幅な増加により、特定の基板領域で粒子としての酸化ケイ素の再堆積、または膜としての酸化物の再成長が生じる可能性がある。これらの現象は望ましくなく、防止されるべきである。
【0013】
別の言い方をすると、エッチング組成物またはエッチング組成物を使用する方法は、商業的な湿式エッチング方法に一般に適した範囲内で、窒化ケイ素の選択性と組み合わせて、窒化ケイ素のエッチング速度を達成するのに有用であり得る。典型的に商業的に使用される有用なエッチング速度の例(例えば、150~160℃の範囲のエッチング方法温度にて)は、毎分少なくとも30オングストローム、少なくとも毎分400または500オングストロームのはるかに速い速度であり得る。商業的に適切な選択性も大きく変化する可能性があり、20または50 100(例えば酸化ケイ素に対して)から最大500または1000の範囲であり得る。
【0014】
エッチング速度は、エッチング方法の既知の性能尺度であり、時間あたりに除去される材料の量(例えば厚さ)の単位で報告できる(例えば毎分オングストロームの材料)。窒化ケイ素のエッチング速度を決定する方法は、マイクロエレクトロニクスデバイス製造業界では周知である。一般に、エッチング速度の測定は、表面に窒化ケイ素を含む基板をエッチングし、経時的に基板から除去された窒化ケイ素の量を測定することにより行われる。所定の時間ごとに除去される材料の量を測定する任意の方法が有効であり、分光エリプソメトリーが窒化ケイ素(および酸化ケイ素)のエッチング速度を測定するための有用なおよび好ましい方法の1つである。
【0015】
選択性は、2つ以上の材料のフィーチャを有する表面のエッチングを実行するエッチング方法の性能の既知の尺度であり、一方の材料(例えば窒化ケイ素)の、別の材料(例えば、酸化ケイ素)の除去速度に対する除去速度として計算される。
【0016】
性能の別の尺度として、エッチング工程の後、好ましくはポストエッチング洗浄工程(例えば、20~90℃の範囲の温度にて水で完全にすすぐ)の後の基板は、表面において許容できるほど低いレベルの固体粒子を含むはずである。固体粒子は、エッチング工程中にエッチング組成物中に生成(例えば、沈殿)し、固体粒子として基板表面に再堆積するシリカの粒子であり得る。シリカ基板(例えば、熱酸化物、PETEOS)では、このような再堆積は酸化物膜の厚膜化の形態をとることがある。エッチング工程中にこれらのタイプの固体粒子が生成されて基板表面に堆積することが少ない、改善されたエッチング組成物が所望される。
【0017】
エッチング工程後の基板表面の粒子数は、エッチング工程に続くポストエッチング洗浄工程のようなエッチング工程の後の基板表面上の粒子の数の統計学的に有用な定性的または定量的比較に有効な任意の方法で測定できる。一例の方法は、拡大を用いる、例えば走査電子顕微鏡を用いる光学(視覚)検査であることができる。改善されたエッチング組成物は、エッチング工程、任意にその後に続くポスト洗浄工程を可能にでき、同一の基板上で行われた同一の方法であるが、比較可能なエッチング組成物または先行技術のエッチング組成物を用いる場合と比較して粒子の数が低減した表面を生じる。表面に存在する粒子の低減は、比較可能なエッチング組成物または先行技術のエッチング組成物を使用して処理された同一の基板の表面に存在する粒子の数と比較して、少なくとも20、30、または50%の低減であり得る。さらに、本明細書の有用なおよび好ましい改善されたエッチング組成物は、再堆積酸化物をごくわずかな量しか含まない表面を生成することができ、特に局所パターン幾何形状を、例えばチャンネルの狭小化またはブロッキングによって変更する再堆積酸化物が回避されなければならない。
【0018】
一態様では、本発明は、窒化ケイ素(SiN)および酸化ケイ素を含む表面を有する基板を、酸化ケイ素に対してSiNをエッチングする選択性でエッチングする際に使用する組成物に関する。組成物には、リン酸、ヘキサフルオロケイ酸(HFSA)、およびアミノアルコキシシランが含まれる。
【0019】
別の態様において、本発明は、窒化ケイ素(SiN)および酸化ケイ素を含む表面を有する基板を、酸化ケイ素に対するSiNのエッチングの選択性でエッチングする方法に関する。この方法は、濃リン酸、ヘキサフルオロケイ酸(HSFA)、およびアミノアルコキシシランを含むエッチング組成物を提供すること、窒化ケイ素および酸化ケイ素を含む表面を有する基板を提供すること、および表面からSiNを除去する条件で基板を組成物と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】記載される例示的な基板の構造を、同様に記載される選択的エッチング工程の前後で、概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素、およびマイクロエレクトロニクスデバイスに有用な導電性材料、半導体材料、または絶縁性材料あるいはマイクロエレクトロニクスデバイスを調製するのに有用な処理材料を含んでいてもよい任意の他の材料を含むマイクロエレクトロニクスデバイスの表面をエッチングするための新規であり、発明性のある湿式エッチング組成物に関する。記載されたエッチング組成物は、リン酸、ヘキサフルオロケイ酸、アミノアルキルシラン、およびエッチング組成物の成分に関連するか、または別々に添加されるある量の水を含む。組成物はまた、任意に、カルボン酸化合物、例えばリン酸にシリカを溶解することにより、または可溶性ケイ素含有化合物を添加することにより提供され得る溶解シリカ、有機溶媒、およびアミノアルキル化合物の1つ以上を含み得る。
【0022】
本発明はまた、窒化ケイ素を除去するためにマイクロエレクトロニクスデバイス基板をエッチングするために記載された湿式エッチング組成物を使用する方法(method)、方法(process)、およびシステムに関する。出願人は、窒化ケイ素および酸化ケイ素を含む基板を用いた湿式エッチング方法で使用される場合、記載の組成物が窒化ケイ素の有用なまたは有利に高いエッチング速度、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の有用なまたは有利に高い選択性あるいはこれらの性能特性の有用なまたは有利なバランスを生じ得ることを見出した。さらに、窒化ケイ素を含む基板を用いた湿式エッチング方法で使用される場合、例示的なエッチング組成物は、エッチング後に基板表面に存在する粒子の量が低減した窒化ケイ素の有効なエッチングをもたらし得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「マイクロエレクトロニクスデバイス」(または「マイクロエレクトロニクスデバイス基板」または単に「基板」)は、エレクトロニクス、マイクロエレクトロニクス、および半導体製造技術におけるこの用語の一般的に理解される意味と一致する方法で使用され、例えばさまざまな異なるタイプのいずれか、半導体基板、集積回路、ソリッドステートメモリデバイス、ハードメモリディスク、読み取り、書き込みおよび読み取り/書き込みヘッド、およびその機械的または電子部品、フラットパネルディスプレイ、相変化メモリデバイス、1つ以上の太陽電池デバイスを含むソーラーパネルおよび他の製品、太陽光発電、およびマイクロエレクトロニクス、集積回路、エネルギー収集、またはコンピューターチップアプリケーションで使用するために製造されたマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)を指す。「マイクロエレクトロニクスデバイス」という用語は、マイクロエレクトロニクスデバイスまたはマイクロエレクトロニクスアセンブリで使用される最終的なエレクトロニクス用の機能的な電子(電流を運ぶ)構造、機能的な半導体構造、および絶縁構造を含む、または含むように準備されている任意の製造過程のマイクロエレクトロニクスデバイスまたはマイクロエレクトロニクスデバイス基板を指すことができることを理解されるべきである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「窒化ケイ素」という用語には、マイクロエレクトロニクスおよび半導体製造産業で使用される用語の意味と一致する意味が与えられている。それと一致して、窒化ケイ素は、アモルファス窒化ケイ素(Si3N4)で作られた薄膜を含む材料を指し、例えば、シラン(SiH4)およびアンモニア(NH3)から化学蒸着により堆積され、商業的に有用な低レベルの他の材料または不純物を含む。窒化ケイ素は、デバイスの機能的フィーチャとして、例えばバリア層または絶縁層として、マイクロエレクトロニクスデバイス基板の一部として存在してもよく、またはマイクロエレクトロニクスデバイスを調製するための多段階製造方法を容易にする材料として機能するように存在してもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「酸化ケイ素」という用語には、マイクロエレクトロニクスおよび半導体製造産業で使用される用語の意味と一致する意味が与えられている。それと一致して、酸化ケイ素は、酸化ケイ素(SiOx)、例えばSiO2、「熱酸化物」(ThOx)などで製造された薄膜を指す。酸化ケイ素は、TEOSまたは別の供給源からの化学気相堆積によって堆積される、または熱堆積されるなどの任意の方法によって基板上に配置することができる。酸化ケイ素は、好ましくは商業的に有用な低レベルの他の材料または不純物を含むことができる。酸化ケイ素は、例えば、絶縁層として、マイクロエレクトロニクスデバイスのフィーチャとして、マイクロエレクトロニクスデバイス基板の一部として存在してもよい。
【0026】
特定の現在好ましいエッチング組成物の例には、水性リン酸(例えば、濃リン酸および任意のある量の添加水)とともに、窒化ケイ素の所望のエッチング(有用なまたは有利なエッチング速度を含む)を生じるのに有効な量のヘキサフルオロケイ酸、窒化ケイ素のエッチング速度または酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の選択性を改善するのに有効な量のアミノアルキルシラン、任意にカルボン酸化合物、任意にホスホン酸、任意にアミノアルキル化合物、任意に界面活性剤、任意に有機溶媒、任意に水、および任意に溶解シリカを含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる水溶液の形態の組成物を含む。これらおよび他の例示的な組成物は、列挙された成分および任意の成分を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなることができる。本記載を通しての一般的な慣習として、特定の成分または材料の群から「本質的になる」と言われる、組成物、例えば記載されたエッチング組成物、またはその成分もしくは構成成分は、少量またはわずかな量以下の他の成分または材料、例えば5、2、1、0.5、0.1、または0.05重量部以下の他の成分または材料とともに、その特定の成分または材料を含む組成物を指す。例えば、水性リン酸、ヘキサフルオロケイ酸、アミノアルキルシラン、および記載されている任意の成分から本質的になる材料を含むエッチング組成物は、これらの成分と、5、2、1、0.5、0.1または0.05重量部以下の、同定された材料以外の任意の他の溶解または非溶解材料(個別または全体として)とを含むエッチング組成物を意味する。
【0027】
エッチング組成物は、窒化ケイ素の所望のエッチングを生成するのに有効な量の水性リン酸(例えば、濃リン酸)を含む。「水性リン酸」という用語は、エッチング組成物の他の成分と混合または組み合わされてエッチング組成物を形成するエッチング組成物の成分を指す。「リン酸固体」という用語は、水性リン酸成分、または水性リン酸成分から調製されるエッチング組成物の非水性構成成分を指す。
【0028】
エッチング組成物に含まれるリン酸固体の量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、所望の窒化ケイ素エッチング速度および選択性を含む所望のエッチング性能を提供する量であることができ、これは典型的には、比較的高い量(濃度)のリン酸固体を必要とする。例えば、エッチング組成物は、エッチング組成物の総重量に基づいて少なくとも約50重量%のリン酸固体、例えば、エッチング組成物の総重量に基づいて少なくとも70、または少なくとも約80または85重量%のリン酸固体に基づく量のリン酸固体を含むことができる。
【0029】
所望の量のリン酸固体を提供するために、組成物は、エッチング組成物を製造するために他の成分(1つの成分は任意に特定の形態の水である)と混合または組み合わせられる成分として「濃」リン酸を含んでもよい。「濃」リン酸とは、低量または最小量の水の存在下で多量または最大量のリン酸固体を含み、他の成分を実質的に含まない(例えば、0.5または0.1重量%未満の任意の非水または非リン酸固体材料)水性リン酸成分を指す。濃リン酸は、典型的には、約15または20重量%の水中に少なくとも約80または85重量%のリン酸固体を有すると見なすことができる。あるいは、エッチング組成物は、水で希釈されたある量の濃リン酸を含むと考慮され得、例えばエッチング組成物の他の成分と組み合わされる前または後にある量の水で希釈された濃リン酸または任意の方法で形成された同等物を意味する。別の代替として、エッチング組成物の成分は、濃リン酸または希リン酸であることができ、エッチング組成物は、異なる成分の構成成分としてまたは別個の水成分としてエッチング組成物に提供される追加量の水を含むことができる。
【0030】
例として、エッチング組成物を形成するために濃リン酸が使用される場合、濃リン酸の量(水中で85重量%)は、エッチング組成物の総重量に基づいて、エッチング組成物の少なくとも60、例えば少なくとも80または少なくとも90、93、95、または少なくとも98重量%である量であることができる。
【0031】
本明細書で使用される「ヘキサフルオロケイ酸」(「フルオロケイ酸」または「HFSA」とも呼ばれる)は、H2SiF6を指す。ヘキサフルオロケイ酸は、既知の商業的に入手可能な材料であり、希釈された溶液、例えば水中35重量%の形態での成分として一般に販売または使用されている。HFSAはまた、フッ化水素酸(HF)および溶解または懸濁シリカからその場で形成することもできる。
【0032】
エッチング組成物に含まれるヘキサフルオロケイ酸化合物(または存在するその誘導体化合物)の量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、所望の窒化ケイ素エッチング速度および選択性を含む所望のエッチング性能を提供する量であることができる。例えば、エッチング組成物は、エッチング組成物の総重量に基づいて、約5~10,000またはさらに最大50000パーツパーミリオン(すなわち0.0005~1またはさらに5重量%)の範囲、例えばエッチング組成物の総重量に基づいて約20~2000パーツパーミリオン(すなわち、0.002~0.2重量%)などの範囲のヘキサフルオロケイ酸化合物の量を含むことができる。
【0033】
エッチング組成物は、アミノアルキルアルコキシシラン、または略して「アミノアルコキシシラン」を含み、これらの用語が本明細書で使用される場合、少なくとも1つのケイ素原子、および化合物のアルキルまたはアルコキシ置換基に位置する少なくとも1つのアミン基、すなわち直接または酸素結合を介してケイ素原子に結合したアミノアルキル置換基を含むシラン(-SiO-)ベースの化合物または分子を指す。ケイ素原子は、1つ以上のそのようなアミノアルキル置換基で置換することができ、さらに1つ以上の水酸化物(-OH)基、有機化学(例えば、アルキル)基、または酸素を介して別のケイ素原子で置換して、シロキサン連結、すなわち、複数の(例えば、2、3、4など)-Si-O連結を有する分子を形成することができ、本明細書によれば、アミノアルキルアルコキシシラン化合物は、記載の置換基を含み、ケイ素原子の少なくとも1つの置換基は、ケイ素原子に直接結合するか、二価酸素(-O-)連結を介してケイ素原子に結合するアミノアルキル置換基、例えばアミノアルキルまたはアミノアルコキシ置換基である。例示的な化合物は、米国特許第8940182号明細書に示されている。欧州特許出願0 498 458も参照のこと。
【0034】
単一のケイ素原子のみを含む特定の好ましいアミノアルコキシシラン化合物は、以下の式を有するものとして表すことができる、
Si(R1)(R2)(R3)(R4)
式中、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アルキルアミン基、またはアルコキシアミン(アミノアルコキシ)基であり、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つはアルキル、アルコキシ、またはヒドロキシル基であり、およびR1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、アルキルアミン基またはアルコキシアミン基である。アルキル鎖を含むR1、R2、R3、またはR4基には、分岐したアルキルが含まれる場合があるが、直鎖基、および1、2、3、4、または5個の炭素原子を有するアルキル基などの低級アルキル基を含む鎖が好ましい場合がある。好ましいR1、R2、R3、およびR4基も非環状、飽和であり、エーテル連結を含まない。
【0035】
本発明によれば、出願人は、ヘキサフルオロケイ酸と組み合わせてリン酸を含むエッチング組成物の一部としてのアミノアルコキシシラン化合物の存在は、本明細書に記載の改善された性能を示すことができ、(アミン官能基を含まないアルコキシシラン化合物とは対照的に)アミノアルコキシシラン化合物におけるアミン官能基の存在(例えば、アルキルアミン基またはアルコキシアミン基の一部)は、性能特性を改善するのに特に有効であることができることを見出した。アミン含有基は、窒化ケイ素エッチング速度、窒化ケイ素選択性、またはエッチング工程後の基板の表面での粒子数の1つまたは組み合わせの改善など、エッチング性能の望ましい改善を提供する任意の基であることができる。アミノアルコキシシラン化合物のアミン含有基のいくつかの一般的な例には、第一級アミン、すなわち末端アミンを含むアルキルアミン基、第二級または第三級アミンを含むアルキルアミン基、およびポリ(エチレンイミン)オリゴマーおよび同様の基が含まれる。
【0036】
特定の現在好ましいアミノアルコキシシラン化合物によれば、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは、
式-(CH2)xNW2[式中、xが1~12の範囲である]または-(CH2)x1-NW-(CH2)x2-NW-...(CH2)xn-NW2[式中、WはHまたはCH3基に等しく、x1、x2、...xnは1~12(好ましくは2または3)の範囲であり、n≦100]を有するアルキルアミン基、
式-O-(CH2)xNW2[式中、xは1~12の範囲である]または-O-(CH2)x1-NW-(CH2)x2-NW-...(CH2)xn-NW2[式中、WはHまたはCH3基に等しく、x1、x2、...xnは1~12(好ましくは2または3)の範囲であり、n≦100]を有するアミノアルコキシ基、
式-O(CH2)yCH3[式中、yは1~6の範囲である]を有するアルコキシ基
ヒドロキシル基(シラノール、-OH)、または
式-(CH2)zCH3[式中、zは1~18の範囲である]を有するアルキル基
である。
【0037】
酸素原子を介してケイ素原子に結合したR基は通常少なくとも部分的に溶媒和されるが、アミノアルコキシシラン化合物は、好ましくは別の方法ではエッチング組成物中で化学的に安定であることができ、リン酸またはエッチング組成物の別の成分によって分解されず、エッチング組成物の顕著な着色を引き起こさない(変色は存在し得るが)ことが好ましい。使用中、リン酸に含まれる場合、アミン基は通常プロトン化される。
【0038】
現在好ましいアミノアルコキシシラン化合物の例には、以下の種、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES、CAS番号919-30-2)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS、CAS番号13922-56-5)、(3-アミノプロピル)シラントリオール(CAS番号58160-99-9)、およびAHAPTES(N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、CAS番号51895-58-0)は、単独で、互いに組み合わせて、または別のアミノアルコキシシランと組み合わせて使用できる。
【0039】
エッチング組成物に含まれるアミノアルコキシシラン(またはその誘導体)の量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、所望の窒化ケイ素エッチング速度および選択性を含む所望のエッチング性能を提供する量であることができる。例えば、エッチング組成物は、エッチング組成物の総重量に基づいて約20~10000パーツパーミリオン(すなわち0.0020~1.0重量%)の範囲で、またはエッチング組成物の総重量に基づいて約20~2000、4000または5000パーツパーミリオン(すなわち0.002~0.2、0.4、または0.5重量%)で、単一種または2種以上の組み合わせであり得る量のアミノアルコキシシラン化合物を含むことができる。
【0040】
任意におよび好ましくは、例示的なエッチング組成物は、少なくとも1つのカルボン酸基を含む有機化合物を意味する量のカルボン酸化合物を含むことができる。本発明によれば、記載のエッチング組成物中のカルボン酸化合物の存在は、酸化ケイ素の再堆積またはその粒子の形成を抑制することにより性能を改善することができる。記載のエッチング組成物で使用するのに好ましいカルボン酸化合物には、酢酸、マロン酸、コハク酸、2-メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、サリチル酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸(別名トリカルバリル酸)、2-ホスホノ酢酸、3-ホスホノプロパン酸、および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTCA)、そのいずれかを単独で、互いに組み合わせて、または異なるカルボン酸化合物と組み合わせて使用できる。
【0041】
エッチング組成物に含まれるカルボン酸化合物(その誘導体を含む)の量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、エッチング組成物の性能または化学的安定性に影響を与えずに所望のエッチング性能を提供する量であることができる。例えば、エッチング組成物は、エッチング組成物の総重量に基づいて約0.01~約10重量%の範囲で、またはエッチング組成物の総重量に基づいて約0.1~約5または8重量%の量で、単一種または2種以上の組み合わせであってもよいカルボン酸化合物の量を含むことができる。
【0042】
任意に、記載のエッチング組成物(例えば、エッチング方法で使用する前)は、例えば、固体シリカ材料をリン酸に溶解するか、または水性リン酸との反応によって溶解シリカを形成できる可溶性ケイ素含有化合物を添加することにより、リン酸に溶解したある量のシリカも含むことができ、このような化合物には、TMAS(テトラメチルアンモニウムシリケート)、テトラアセトキシシラン、またはテトラアルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが含まれる。溶解シリカは、窒化ケイ素に対するエッチング組成物の選択性を改善するのに有効であり得る。その量は、エッチング組成物の総重量に基づいて約5~10000パーツパーミリオンの溶解シリカまたは可溶性ケイ素含有化合物、またはエッチング組成物の総重量に基づいて、約20~5000、3000、1000、または500パーツパーミリオンなどの、エッチング方法の条件で前処理のシリカ過飽和に至らない任意の有用な量であり得る。
【0043】
また、任意に、記載されるエッチング組成物は、窒化ケイ素のエッチング速度、選択性、またはこれらの組み合わせを増加させることなどにより、エッチング組成物の性能を向上させるためにある量のアルキルアミンを含むことができる。アルキルアミンは、例えば式R5NH2のアミン置換基(例えば、第一級アミン)を含む有機アルキル化合物であることができ、ここでR5は、約2~約15個の炭素原子、例えば約4~約12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐鎖、好ましくは飽和、好ましくは非置換アルキル鎖である。好ましいアルキルアミン化合物の例には、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、およびデシルアミンが含まれる。アルキルアミンは、特に溶解シリカの存在下で使用される場合、窒化ケイ素のエッチング速度または選択性を改善するのに有効であり得る。エッチング組成物中のアルキルアミンの量は、エッチング組成物の総重量に基づいて、約5~10000パーツパーミリオンのアルキルアミン、例えば約20~1000パーツパーミリオンのアルキルアミンなど、任意の有用な量であってよい。
【0044】
エッチング組成物は、任意に、関連する動作温度(例えば、エッチング浴の温度)で液体であり、エッチング組成物の熱リン酸の存在下、実質的に混和性、適合性、および安定な任意の有機化合物であることができる有機(非水性)溶媒を含むことができる。有機溶媒は、記載されたエッチング組成物の高い範囲の性能であるエッチング速度を必要としないエッチング組成物に有用であり得、エッチング方法中に、粒子の再堆積(例えば、シリカ粒子の再堆積を低減または最小化し、それによってエッチング後の基板表面上の固体粒子の存在を低減するのに有効であり得る。有用なまたは現在好ましい非水性溶媒の例には、エーテル、ポリオール、アルコール、スルホン、およびリン酸エステルなどの有機化合物が含まれる。特定の有用な有機溶媒の特定の例には、スルホラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、およびリン酸トリエチルが含まれ、これらはいずれも単独で、または1つ以上の他の有機溶媒と組み合わせて使用され得る。
【0045】
エッチング組成物中の有機溶媒の量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、所望の全体的な性能を提供する量であることができる。例えば、エッチング組成物は、エッチング組成物の総重量に基づいて約0.1~約25重量%、例えば、約0.5~約10、15、または20重量%の範囲であり得る有機溶媒の総量を含むことができる。
【0046】
エッチング組成物は、エッチング組成物の性能を改善するために、界面活性剤(本記載の他の任意のまたは必要な成分とは異なる)を任意に含むことができる。本明細書で使用される場合「界面活性剤」という用語は、2つの液体間または液体と固体との間の表面張力(または界面張力)を低下させる有機化合物を指し、典型的には、疎水基(例えば、炭化水素(例えば、アルキル)「テール」)および親水性基を含む有機両親媒性化合物を指す。好ましい界面活性剤は熱的に安定であり、本発明のエッチング方法の条件などの強酸性条件下でイオン性を維持する。例には、ペルフルオロアルキルスルホン酸および長鎖第四級アンモニウム化合物(例えば、硫酸水素ドデシルトリメチルアンモニウム)が含まれる。Chemours’Capstone(登録商標)FS-31/FS-35などのフッ素化非イオン性界面活性剤も使用できる。ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)コポリマー(「PEG-PPG」)などの非イオン性非フッ素化界面活性剤も使用でき、動作範囲の低温、低酸性度の部分により適している(例えば100~130℃、50~75%のH3PO4)。
【0047】
エッチング組成物中の界面活性剤の量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、所望の全体的な性能を提供する量であることができる。例えば、エッチング組成物は、エッチング組成物の総重量に基づいて約0.001~約10重量%、例えば約0.01~約0.5、1、2、7または7重量%の範囲であってもよいある量の界面活性剤を含むことができる。
【0048】
エッチング組成物は、1つまたは複数の供給源からの水を含むことができる。例えば水性リン酸成分には水が存在する。加えて、エッチング組成物の他の成分の1つ以上の担体として水を使用してもよく、水をそれ自体の成分として単独で添加してもよい。水の量は、エッチング組成物が有用な(十分に高い)窒化ケイ素のエッチング速度を含む、望ましいまたは好ましいまたは有利な性能特性を示すことができるように十分に少なくなければならない。水の存在の増加は、窒化ケイ素のエッチング速度を増加させる傾向があるが、エッチング組成物の沸点も低下させる可能性があり、エッチング組成物の動作温度の低下および逆効果を強いる。エッチング組成物中のすべての供給源からの水の量の例は、エッチング組成物の総重量に基づいて、約50、40、または30重量%未満、例えば約5重量%~約25重量%の範囲、またはエッチング組成物の総重量に基づいて約10~20重量%の範囲の水であることができる。
【0049】
任意に、記載されたこれらおよび他の例のエッチング組成物は、リン酸、ヘキサフルオロケイ酸、アミノアルコキシシラン、および特定された任意の成分のいずれか1つまたは任意の組み合わせを含む、それらからなる、または本質的になることができる。エッチング組成物の特定の好ましい例は、エッチング組成物に典型的には含まれない他のタイプの成分、例えばpH調整剤(本明細書の潜在的成分として言及される酸以外)および研磨粒子などの固体材料を必要とせず、除外してもよい。
【0050】
記載されたエッチング組成物は、記載されたエッチング組成物を製造するのに有用である任意の方法によって調製することができる。1つの方法により、水性または固体成分を、任意に加熱して組み合わせて、任意に均一に混合することができる。
【0051】
上述のエッチング組成物は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板の表面から窒化ケイ素を除去する方法に有用であることができる。基板は、絶縁体、バリア層、導電性材料、半導体材料、またはマイクロエレクトロニクスデバイスの処理に有用な材料(例えば、特にフォトレジスト、マスク)の1つ以上などのマイクロエレクトロニクデバイスに有用な他の材料を含むことができる。例示的な基板は、窒化ケイ素、熱酸化物(ThOx)およびPETEOS(プラズマ強化テトラエチルオルトシリケートを使用して堆積された酸化物)を含む表面を有する。
【0052】
使用中、記載のエッチング組成物は、商業的性能のニーズおよび期待に基づいて有用なエッチング性能を提供でき、好ましくは、先行技術または比較エッチング組成物と比較して、窒化ケイ素のエッチング速度および選択性に関して、およびエッチング後に基板の表面に存在する粒子の量、および基板表面の酸化物膜の再成長の量に関して改善された性能を提供できる。
【0053】
マイクロエレクトロニクスデバイス基板をエッチングする方法は、半導体製造技術分野で知られており、既知の市販の機器で実行することができる。一般に、基板をエッチングして基板の表面の材料を選択的に除去するために、エッチング組成物を表面に塗布し、表面構造に接触させて特定の構造を化学的に選択的に除去することができる。
【0054】
組成物は酸化物を非常にゆっくりとエッチングするように設計されているため、窒化ケイ素膜は、エッチング方法を阻害する可能性のある薄い酸化表面を有することがある。そのような場合、希薄HFを使用した非常に短時間の処理が、有用な最初の方法工程であることができる。
【0055】
エッチング工程において、エッチング組成物は、表面にエッチング組成物を噴霧する、基板をエッチング組成物に(組成物の静的または動的な体積で)浸漬することにより、表面をエッチング組成物が吸収された別の材料、例えば、パッド、または繊維状吸着剤アプリケータ要素と接触させることにより、循環プール内で基板をある量のエッチング組成物と接触させることにより、またはシリコンゲルマニウムおよびケイ素を含むマイクロエレクトロニクス基板の表面とエッチング組成物を除去接触させる任意の他の適切な手段、方法または技術によって、任意の適切な方法で表面に塗布することができる。塗布は、動的または静的な洗浄のために、バッチまたは単一ウェハ装置であり得る。
【0056】
有用なエッチング方法の条件(例えば、時間および温度)は、有効または有利であることがわかっている任意のものであることができる。一般に、エッチング組成物は、窒化ケイ素を選択的に除去するのに十分な時間、エッチング組成物の浴への浸漬などにより表面と接触させる。エッチング組成物への曝露時間およびエッチング組成物の温度は、基板の表面から窒化ケイ素を所望量除去するのに有効であることができる。エッチング工程の時間量は短すぎてはならないが、これは窒化ケイ素のエッチング速度が速すぎる可能性があり、方法を制御するのが難しく、エッチング工程の終了時にマイクロエレクトロニクデバイスの質を低下させ得ることを意味するからである。もちろん、エッチング方法および半導体製造ラインの良好な効率および処理量を可能にするために、エッチング工程に必要な時間量は過度に長くないことが好ましい。エッチング工程の有用な時間の例は、約100℃~約180℃の範囲の温度にて、約5分~約200分、好ましくは約10分~約60分の範囲であり得る。そのような接触時間および温度は例示であり、必要な除去選択性を達成するのに有効な他の任意の適切な時間および温度条件を採用してもよい。
【0057】
本記載のエッチング工程は、任意のタイプの基板の表面から窒化ケイ素材料をエッチングするのに有用であり得る。特定の実施形態によれば、基板は、窒化ケイ素層と酸化ケイ素との交互薄膜層を含む基板の構造的フィーチャとして、窒化ケイ素の交互薄膜層を含むことができる。酸化ケイ素層は、酸化ケイ素の層の間に配置された窒化ケイ素層を含む高アスペクト比構造である。
図1を参照すると、本明細書に記載の選択的エッチング工程の前後の基板が示されており、これは、選択的な方法で、例えば酸化ケイ素に対して優先的に基板から窒化ケイ素を除去するのに有効である。エッチング工程前の基板は、高アスペクト比の酸化ケイ素構造間の開口部に配置された窒化ケイ素の交互層を含む。エッチング工程は、
図1の右側基板として示されるように、窒化ケイ素を除去して酸化ケイ素層を残し、酸化ケイ素層を分離する開口部または「スリット」を有する。本記載によれば、
図1に示されるように、エッチング方法を使用して、
図1に示される基板をエッチングすることができる。エッチング方法の例は、先行技術および比較可能なエッチング組成物およびエッチング方法と比較して、SiNエッチング速度の大幅な増加、酸化ケイ素に対する良好な選択性(>50、好ましくは100に近いかそれ以上)、および主要なシリカの再堆積(スリット開口部の閉鎖または閉鎖に近いことから証明されるように)の回避を示すことができる。
【0058】
窒化ケイ素の所望の量の選択的エッチングの完了後、エッチングされたマイクロエレクトロニクスデバイスの表面上に残るエッチング組成物は、すすぎ、洗浄、または他の除去工程などの任意の所望の有用な方法によって、水(または任意のリン酸とそれに続く水)を使用して表面から除去できる。例えば、エッチング後、マイクロエレクトロニクデバイス基板は、脱イオン水のすすぎで(例えば、約20~約90℃の範囲の温度で)すすぎ、その後、例えば、スピン乾燥、N2、蒸気乾燥などで乾燥させてもよい。すすぎに続いて、表面の粒子の存在および量について、基板表面を測定してもよい。
【実施例】
【0059】
エッチング組成物の実施例を以下の表に記載する。示されているように、一部の成分は、組成物の他の成分と組み合わせる前に、担体として濃リン酸に溶解させた。性能結果も、表面に窒化ケイ素を含む基板をエッチングする方法でのエッチング組成物の使用に基づいて列挙される。
【0060】
表内:
1.実施例13と5との比較は、カルボン酸化合物の存在による性能の違いを示す。
2.実施例6および8は、溶液に追加の100ppmのSiO
2を充填した場合に200ppmのアルキルアミンを装填することによるプラスの効果を示す。SiO
2のこの装填は、エッチング組成物の成分として溶解シリカを添加することにより生じる可能性があり、またはSiN溶解により溶液に酸化物が追加されるため、長時間エッチング方法でエッチング組成物を使用する際に生じる場合がある。
3.実施例7および9は、シリカ装填がなく、アミン添加剤が存在する場合であっても、APTESを省略するマイナスの効果を示す。
4.実施例14は、実施例13と比較して、添加された界面活性剤のプラスの効果を示す。
5.列A、B、Cに記録された結果は、スリットパターンの30分間のエッチング(
図1参照)からのものであり、80分間の新鮮な通常の(plain)85%H
3PO
4ランで実行されたランと比較される(AおよびB)。列Cは、通常のH
3PO
4を使用した30分間のランを本発明の組成物の30分間のランと比較した場合、SiNエッチング速度(スリットへの浸透の深さで表される)は典型的に約2倍大きいことを示す。(列Cの結果は計算で得られたもので、80分のエッチング深さを2.667で割ったものである。通常のH
3PO
4の30分間のラン結果は利用できなかった。)
6.列D、E、およびFは、ブランケット膜のエッチング速度およびそれぞれの選択性を示す。
7.列Aの「閉鎖」という用語を含む結果は、30分間のランでスリット開口部が閉じた配合物(列Bの「酸化物ギャップ」)の結果である。同じ実施例では、ブランケット膜でのマイナスの酸化物エッチング速度が示され、選択性(F)は適用不可である。これらのデータ(列Aの「閉鎖」結果)は、極端な性能要件に関連していると見なすことができ、関連する実施例の配合物(6、9、13、および15)は、他の基板、より小さなアスペクト比のパターンのエッチングに、または別のエッチング条件または撹拌の改善などの方法工程を使用する場合に、有効である可能性がある。