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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】画像形成方法、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20220221BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20220221BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 120
C09D11/328
B41J2/01 501
B41J2/01 305
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018049248
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019155847
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】前川 勉
(72)【発明者】
【氏名】葛城 弘二
(72)【発明者】
【氏名】玉井 崇詞
(72)【発明者】
【氏名】花澤 宏文
(72)【発明者】
【氏名】張 東植
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222774(JP,A)
【文献】特開2015-174868(JP,A)
【文献】特開2016-078428(JP,A)
【文献】特開2016-168695(JP,A)
【文献】特開2016-107519(JP,A)
【文献】特開2017-155137(JP,A)
【文献】特開2017-200992(JP,A)
【文献】特開2014-122310(JP,A)
【文献】特開2000-238414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
C09D 11/30
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中空粒子を含む白インクを記録媒体に付与する白インク付与工程と、
前記白インクが付与された前記記録媒体に対して直径200mm以下の加熱ローラが接触する接触工程と、を有する画像形成方法であって、
前記樹脂中空粒子は、下記構造式(1)で表される構造単位と、下記構造式(2)で表される構造単位、下記構造式(3)で表される構造単位、及び下記構造式(4)で表される構造単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位と、を含む共重合体で形成されており、
更に、前記樹脂中空粒子は50%体積粒径(d50)が0.4μm以上0.6μm以下であり、IRスペクトルにおける1600cm -1 ±10cm -1 の最大値Xと、1730cm -1 ±10cm -1 の最大値Yの比(Y/X)が3.0以上6.0以下である
ことを特徴とする画像形成方法。
【化9】
【請求項2】
前記接触工程において、前記加熱ローラが、前記記録媒体に接触した後、前記接触工程において前記加熱ローラが接触した面の裏面に、加熱ローラが接触する第二の接触工程を有する請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記記録媒体の坪量が70gsm以下、前記白インクの塗布量が3.0mg/cm2以上である請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記白インクが、クマリン誘導体またはベンゾオキサゾール誘導体を含む請求項1からのいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
更に、前記白インクが紫外線吸収剤を含む請求項1からのいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
更に、前記白インクが有機溶剤を含み、3質量%以上含有する有機溶剤の混合SP値が12.0[cal/cm30.5以上15.0[cal/cm30.5以下である請求項1からのいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
更に、前記白インクがウレタン樹脂粒子およびアクリルシリコーン系樹脂粒子から選択される少なくともいずれか1種を含み、1質量%以上含有する樹脂粒子の混合SP値が8.0[cal/cm30.5以上10.0[cal/cm30.5以下である請求項1からのいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記接触工程において、前記加熱ローラは前記記録媒体と、前記記録媒体を搬送する方向と直行する方向である幅方向の全域にわたって接触する請求項1からのいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項9】
樹脂中空粒子を含む白インクと、
前記白インクを記録媒体に付与する白インク付与手段と、
前記白インクが付与された前記記録媒体に対して接触する直径200mm以下の加熱ローラと、を有する画像形成装置であって、
前記樹脂中空粒子は、下記構造式(1)で表される構造単位と、下記構造式(2)で表される構造単位、下記構造式(3)で表される構造単位、及び下記構造式(4)で表される構造単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位と、を含む共重合体で形成されており、
更に、前記樹脂中空粒子は50%体積粒径(d50)が0.4μm以上0.6μm以下であり、IRスペクトルにおける1600cm -1 ±10cm -1 の最大値Xと、1730cm -1 ±10cm -1 の最大値Yの比(Y/X)が3.0以上6.0以下である
ことを特徴とする画像形成装置。
【化9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明記録媒体に白色を表現する場合や着色記録媒体にカラーインクで着色する場合、前記透明記録媒体の透明色やカラーインクの着色性を向上させるために着色記録媒体の被印刷面を、比重が軽く沈降しにくい樹脂中空粒子を含有する白色液体インクで隠蔽することが行われている。
【0003】
特許文献1は、白色色材と、定着樹脂としてウレタン系樹脂とアクリル系樹脂を質量基準で10:2~10:5の量比で含み、かつウレタン樹脂の平均粒径が100nm以上である白色インク組成物の記載がある。白色色材として、金属化合物および樹脂中空粒子から選ばれる少なくとも1種を含有する。
特許文献2は、沸点が100℃以上のグリコール系溶剤と白色微粒子及び蛍光物質を配合したインクジェット受容性隠蔽層形成用インクの記載がある。
特許文献3は、白色顔料、重合性化合物、蛍光増白剤などを含有し、重合性化合物が芳香族単官能エチレン性不飽和化合物を含有し、更にN-ビニルラクタム類及び脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物から選択される1つの化合物を含有するインク組成物に関する記載がある。白色顔料として、中空ポリマーを用いることができることが記載されている。
特許文献4は、白色インクに異なる2種類以上の白色色材を含有させる記録方法に関する記載がある。2種類以上の白色色材として、樹脂中空粒子および/または二酸化チタンを用いている。
特許文献5は、高分子合成樹脂エマルションと、ガラス転移温度が40~140℃である樹脂製の中空粒子とを含有してなる水性樹脂組成物に関する記載がある。
特許文献6は、画像が形成された面と反対の裏面側に接触して、媒体を加熱する媒体加熱手段を有し、媒体が接触する所定の曲率の接触面を有するローラ部材である画像形成装置に関する記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像を形成した際に、白色ベタ部の明度が高く、薄紙においてもコックリングが防止できる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の画像形成方法は、以下に記載する通りのものである。
(1)樹脂中空粒子を含む白インクを記録媒体に付与する白インク付与工程と、
前記白インクが付与された前記記録媒体に対して直径200mm以下の加熱ローラが接触する接触工程と、を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の画像形成方法により、白ベタ部の明度が高く、薄紙においてもコックリングが防止された画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る画像形成装置の一例の説明図である。
図2】実施形態における媒体と接触面との密着性の説明に供する斜視説明図である。
図3】比較例における媒体と接触面との密着性の説明に供する斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、下記(1)に係るものであるが、下記の(2)~(10)も実施の形態として含む。
(1)樹脂中空粒子を含む白インクを記録媒体に付与する白インク付与工程と、
前記白インクが付与された前記記録媒体に対して直径200mm以下の加熱ローラが接触する接触工程と、を有する画像形成方法。
(2)前記樹脂中空粒子は、50%体積粒径(d50)が0.4μm以上0.6μm以下であり、IRスペクトルにおける1600cm-1±10cm-1の最大値Xと、1730cm-1±10cm-1の最大値Yの比(Y/X)が3.0以上6.0以下である前記(1)に記載の画像形成方法。
(3)前記接触工程において、前記加熱ローラが、前記記録媒体に接触した後、前記接触工程において前記加熱ローラが接触した面の裏面に、加熱ローラが接触する第二の接触工程を有する前記(1)または(2)に記載の画像形成方法。
(4)前記記録媒体の坪量が70gsm以下、前記白インクの塗布量が3.0mg/cm2以上である前記(1)から(3)のいずれかに記載の画像形成方法。
(5)前記白インクが、クマリン誘導体またはベンゾオキサゾール誘導体を含む前記(1)から(4)のいずれかに記載の画像形成方法。
(6)更に、前記白インクが紫外線吸収剤を含む前記(1)から(5)のいずれかに記載の画像形成方法。
(7)更に、前記白インクが有機溶剤を含み、3質量%以上含有する有機溶剤の混合SP値が12.0[cal/cm30.5以上15.0[cal/cm30.5以下である前記(1)から(6)のいずれかに記載の画像形成方法。
(8)更に、前記白インクがウレタン樹脂粒子およびアクリルスチレン樹脂粒子から選択される少なくともいずれか1種を含み、1質量%以上含有する樹脂粒子の混合SP値が8.0[cal/cm30.5以上10.0[cal/cm30.5以下である前記(1)から(7)のいずれかに記載の画像形成方法。
(9)前記接触工程において、前記加熱ローラは前記記録媒体と、前記記録媒体を搬送する方向と直行する方向である幅方向の全域にわたって接触する前記(1)から(8)のいずれかに記載の画像形成方法。
(10)樹脂中空粒子を含む白インクと、
前記白インクを記録媒体に付与する白インク付与手段と、
前記白インクが付与された前記記録媒体に対して接触する直径200mm以下の加熱ローラと、
を有する画像形成装置。
【0009】
本発明の画像形成方法(以下、記録方法とも呼称する)は、樹脂中空粒子を含む白インクを記録媒体に付与する白インク付与工程と、前記白インクが付与された前記記録媒体に対して直径200mm以下の加熱ローラが接触する接触工程と、を有する。
耐沈降性に優れる樹脂中空粒子を含む白インクを記録媒体に付与し、形成された白色画像を直径200mm以下の加熱ローラを用いて接触乾燥することで、記録媒体のコックリングを矯正するだけでなく、中空樹脂の乾燥性向上およびコックリングのない紙面となり中空樹脂が適正に配列されることで明度(白色度)が向上するという相互効果が得られる。加熱ローラの直径が200mmを超えると、押し当てる記録媒体の屈曲が小さくなり、効果が低下する。加熱ローラの直径は、30mm以上200mm以下が好ましい。
加熱ローラは、基本的には、印字面の裏面から当てて記録媒体と接触させて乾燥させる。印字面の裏面から加熱ローラを当てて記録媒体と接触させて乾燥した後、印字面に加熱ローラを当てて接触させて乾燥することもでき、白色画像面に対して加熱ローラを押し当てることで、より明度が向上する効果も有する。
例えば、印字画像の裏面から加熱ローラを接触させて乾燥した記録媒体をひっくり返し、両面印刷した場合、両面印字後に印字画像の裏面から加熱ローラを接触させて乾燥するが、この時、最初の印字面側から加熱ローラを当てることになる。白色画像面に対して加熱ローラを押し当てることで、より明度が向上する効果も有する。印字画像の表面と裏面がそれぞれ異なる加熱ローラに接触してもよい。
【0010】
<白インク>
本発明において、白インクは、樹脂中空粒子を含有し、その他必要に応じて、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、有機溶剤、水、樹脂、添加剤を含有する。
白色色材として樹脂中空粒子のみを含有するものの他に、前記色材に加えて他の色材を追加的に含有するものなども含む。
【0011】
<樹脂中空粒子>
本発明で使用する樹脂中空粒子は、内層が中空、外層を樹脂で形成したものであり、その外径は0.1μm以上1μm以下が好ましく、内径が0.04μm以上0.8μm以下が好ましい。内層が中空であるため、白インクとしての比重は1前後であり、比重が大きい金属酸化物のように経時で沈降することはない。経時での沈降を回避するということから、樹脂中空粒子の樹脂の厚さは樹脂中空粒子全体の大きさに対して10%以上20%以下が好ましい。
【0012】
本発明に使用する樹脂中空粒子は、明度及び樹脂中空粒子の耐熱性向上を目的に、下記構造式(1)で表される構造単位と、下記構造式(2)で表される構造単位または下記構造式(3)で表される構造単位または下記構造式(4)で表される構造単位の少なくとも1種を含むもの、または下記構造式(1)と下記構造式(2)~構造式(4)の少なくともいずれか1種との共重合体で形成されているものが好ましい。
白インク乾燥膜のIRスペクトルにおいて、1600cm-1±10cm-1における最大値Xと、1730cm-1±10cm-1における最大値Yの比率(Y/X)は3.0以上6.0以下が好ましく、3.0以上5.5以下がより好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
構造式(1)の構造単位は主に明度を向上させる目的で使用しており、構造式(2)~構造式(4)の構造単位は主に耐熱性を向上させる目的で使用している。樹脂中空粒子中の構造式(1)と構造式(2)~構造式(4)の比率は、白インクとした場合に、白インクに含まれる構造式(1)と構造式(2)~構造式(4)の比率にほぼ一致する。比率の算出には樹脂中空粒子乾燥膜のIRスペクトルを使用し、構造式(1)の芳香族のC=C伸縮振動による1600cm-1±10cm-1の吸収帯の最大値Xと、構造式(2)~構造式(4)のカルボニル伸縮振動に由来する1730cm-1±10cm-1の吸収帯の最大値Yの比率(Y/X)を取ることで算出することができ、本発明ではこの比率を3.0以上6.0以下とすることが好ましい。この比率(Y/X)が3.0以上であることによって、樹脂中空粒子の耐熱性が向上し、結果として熱などのエネルギーにより樹脂中空粒子の樹脂が溶解することで生じる明度の低下を抑制することができる。一方、比率(Y/X)が6.0以下であることによって、樹脂中空粒子の明度が向上するとともに、樹脂中空粒子の沈降性も改善することができる。なお、樹脂中空粒子における構造式(1)と構造式(2)~構造式(4)の比率(Y/X)も3.0以上6.0以下であることが好ましい。
【0018】
本発明では樹脂中空粒子の50%体積粒径(d50)が400nm以上600nm以下であることが好ましい。50%体積粒径(d50)が400nm以上であることによって、上質紙などのような記録媒体に対しても明度を確保することが可能である。一方、50%体積粒径(d50)が600nm以下であることによって、沈降性の改善、吐出安定性の改善が可能となる。なお、ここで言う50%体積粒径(d50)とは、その集団の全体積を100%として累積カーブを求めた時、その累積カーブが50%となる点の粒子径を示す。
【0019】
白インク中における樹脂中空粒子の含有量は、5質量%以上20質量%以下が好ましく、8質量%以上15質量%以下がより好ましい。樹脂中空粒子の含有量を5質量%以上とすることによって、上質紙などの記録媒体に対しても白インクの膜厚を確保することが可能となる。一方、樹脂中空粒子の含有量を20質量%以下とすることによって、沈降性の改善、吐出安定性の改善が可能となる。
【0020】
白インク中における樹脂中空粒子の樹脂層の厚さは、30nm以上100nm以下が好ましく、40nm以上60nm以下がより好ましい。樹脂中空粒子の樹脂層の厚さを30nm以上とすることによって、熱などのエネルギーにより樹脂中空粒子の樹脂が溶解することで生じる明度の低下を抑制することができる。一方、樹脂中空粒子の樹脂層の厚さを100nm以下とすることによって、沈降性の改善、吐出安定性の改善が可能となる。
樹脂層の厚さは、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて粒子のサイズから求めることができる。
【0021】
白インク中における樹脂中空粒子の中空率は、30%以上60%以下が好ましく、30%以上50%以下がより好ましい。樹脂中空粒子の中空率を30%以上とすることによって、沈降性の改善、吐出安定性の改善が可能となる。一方、樹脂中空粒子の中空率を60%以下とすることによって、記録媒体の下地色に影響されずに狙いとする明度を発現することができる。なお、樹脂中空粒子の中空率は以下の式(1)により算出する。
【数1】
前記中空率は、体積空隙率であり、空隙の体積は、中空部分に入っている水の重さから求めることができる。具体的には、分散液を遠心分離して沈降した粒子の質量とそれを乾燥させた後の重量の比率から求めることができる。
【0022】
白インク中における樹脂中空粒子のガラス転移温度は、100℃以上140℃以下が好ましく、110℃以上130℃以下がより好ましい。樹脂中空粒子のガラス転移温度を100℃以上とすることによって、熱などのエネルギーにより樹脂中空粒子の樹脂が溶解することで生じる明度の低下を抑制することができる。一方、樹脂中空粒子のガラス転移温度を140℃以下とすることによって、記録媒体の下地色に影響されずに狙いとする明度を発現することができる。
【0023】
本発明の白インクを用いて印刷物を作成する場合、印刷層を形成するインク膜の膜厚は4μm以上20μm以下が好ましく、10μm以上17μm以下がより好ましい。インク膜の膜厚が4μm以上であることによって、記録媒体の下地色に影響されずに狙いとする明度を発現することができる。一方、インク膜の膜厚が20μm以下であることによって、定着性や生産性を維持することが可能となる。
また、記録媒体の坪量が70gsm以下の薄い用紙に対して、白インクの塗布量が3.0mg/cm2以上の場合には、コックリング(用紙の波打ち)が発生して、印刷物の品質を低下させたり、用紙を積み上げたときに不安定な状態になるなどの課題が発生するが、加熱ローラが接触する接触工程を追加することにより、平滑にすることが可能となる。
【0024】
<樹脂中空粒子の製造方法>
樹脂中空粒子の製造方法は、特に制限されるものではなく公知の方法を適用することができる。樹脂中空粒子の製造方法としては、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、架橋剤および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら攪拌することにより樹脂中空粒子エマルションを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0025】
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、ビニルモノマーとしては、二官能性ビニルモノマーを使用することもできる。二官能性ビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,5-ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた樹脂中空粒子を得ることができる。
【0026】
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであれば良く、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を使用することができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
架橋剤としては、水に可溶な公知の化合物を使用することができ、例えば、エチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶剤などが挙げられる。
【0027】
<蛍光増白剤>
蛍光増白剤とは、目に見えない短波長側の紫外線を吸収し、目に見える紫~青色の光に変えるものであり、蛍光染料とも呼ばれる。本発明では明度を向上させる目的でこの蛍光増白剤を使用している。
【0028】
本発明で使用する蛍光増白剤は、下記構造式(5)または構造式(6)で表される構造を有するものを使用することが好ましい。
【化5】
【化6】
【0029】
蛍光増白剤としては、ベンゾオキサゾールまたはその誘導体が好ましく、ベンゾオキサゾール誘導体としては構造式(5)で表される構造を有する化合物が好ましい。また、蛍光増白剤としては、クマリンまたはその誘導体が好ましく、クマリン誘導体としては構造式(6)で表される構造を有する化合物が好ましい。末端に水酸基等が付与されている親水性、または疎水性いずれのものであっても良い。
【0030】
白インク中における蛍光増白剤の含有量は、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.2質量%以下がより好ましい。蛍光増白剤の含有量を0.001質量%以上とすることによって、記録媒体の下地色に影響されずに狙いとする明度を発現することができる。一方、蛍光増白剤の含有量を1質量%以下とすることによって、入射光がすぐに吸収されたり、分子同士の衝突により蛍光強度が減少したりする濃度消光現象を抑制することができる。
【0031】
蛍光増白剤としては、例えば、市販品としてBASF社製のTINOPAL OB、日本化学工業所社製のNikkafluor OBやNikkabright PAW-L、日本化学工業社製のNikkafluor MCTなどが挙げられる。
【0032】
<蛍光増白増強剤>
本発明では蛍光増白剤の効果を向上させるものとして蛍光増白増強剤を使用しても良い。蛍光増白増強剤は蛍光増白剤の分散性を向上させ、かつ表面移行させることにより蛍光増白剤の効果を向上させるものであり、具体的にはポリエーテルポリオールである。
白インク中における蛍光増白増強剤の含有量は、白色色材の含有量に対して0.2質量%以上2質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。蛍光増白増強剤の含有量を白色色材の含有量に対して0.2質量%以上とすることによって、記録媒体の下地色に影響されずに狙いとする明度を発現することができる。一方、蛍光増白増強剤の含有量を白色色材の含有量に対して2質量%以下とすることによって、吐出安定性の改善が可能となる。
蛍光増白増強剤としては、例えば、市販品としてサンノプコ社製のオプティアクト I-10などが挙げられる。
【0033】
<紫外線吸収剤>
本発明では蛍光増白剤を用いた際の耐光性を向上させるものとして紫外線吸収剤を使用しても良い。紫外線吸収剤は紫外線を吸収することにより耐光性を向上させるものであり、具体的にはベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤を用いることができる。
【0034】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)などが、サリチレート系紫外線吸収剤としては、フェニルサリチレート、p-tert-ブチルフェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレートなどが、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、エチル-2-シアノー3,3’-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート、ブチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレートなどが、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェレート)-n-ブチルアミンニッケル(II)、2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェレート)-2-エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノレート)トリエタノールアミンニッケル(II)などが挙げられる。
【0035】
白インク中における紫外線吸収剤の含有量は、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0036】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては、白インク中の有機溶剤の溶解度パラメータ(以下、SP値と記載)から計算される混合SP値が12.0[cal/cm30.5以上15.0[cal/cm30.5以下であることが好ましい。有機溶剤の混合SP値を12.0[cal/cm30.5以上とすることによって、有機溶剤による樹脂中空粒子の樹脂の溶解を抑制することができる。一方、有機溶剤の混合SP値を15.0[cal/cm30.5以下とすることによって、乾燥不良による定着性悪化を抑制することができる。
溶解性パラメーター(SP値)は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義された値であり、本発明で記載したSP値は、Fedors法で算出した値である。
なお、白インク中に含有する有機溶剤の混合SP値は、有機溶剤の体積の合計を1とし、各溶剤の体積分率及びSP値を求め、下記式により算出した。
白インク中の有機溶剤の混合SP値[cal/cm30.5
=[有機溶剤AのSP値×有機溶剤Aの体積分率]+・・・
+[有機溶剤ZのSP値×有機溶剤Zの体積分率]
【0037】
また、本発明における有機溶剤は、機能上、浸透剤や消泡剤などとして分類されるものも含まれるが、本発明では白インク全体に対して3質量%以上含有しているもののみ上記混合SP値の計算で使用する。
【0038】
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0039】
更に水素結合項が3.0[cal/cm30.5以上6.8[cal/cm30.5以下であり、かつ沸点が150℃以上300℃以下である有機溶剤を使用すると定着性が良好となりより好ましい。
なお、水素結合項はKrevelenの提案した有機分子を原子団として取り扱った原子団総和法を利用して求めることができる(Krevelen,Properties of Polymer 3rd Edition,New York,p200~p204参照)。
【0040】
上記条件を満たす有機溶剤としては、グリセリン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、イソプレングリコール、オキセタン化合物が特に好ましい。
【0041】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0042】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、白インクの浸透性を向上させることができる。
【0043】
有機溶剤の白インク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、白インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0044】
<水>
白インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、白インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0045】
<樹脂粒子>
白インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合して白インクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子およびアクリルスチレン樹脂から選択される少なくともいずれか1種を含有することが好ましい。ウレタン樹脂粒子およびアクリルスチレン樹脂から選択される少なくともいずれか1種をインクに添加することにより、低粘度で定着性を改善できる場合が多い。
尚、樹脂粒子は、中空ではないものを言う。
【0047】
また、衝撃などから樹脂中空粒子のつぶれを抑制する目的で、樹脂粒子のロックウェル硬度(JIS Z2245、JIS B7726)は80以上130以下が好ましく、80以上110以下がより好ましい。
樹脂粒子のSP値から計算される混合SP値が、8.0[cal/cm30.5以上10.0[cal/cm30.5以下であることが好ましい。樹脂粒子の混合SP値を8.0[cal/cm30.5以上とすることによって、樹脂粒子による樹脂中空粒子の樹脂の溶解を抑制することができる。一方、樹脂粒子の混合SP値を10.0[cal/cm30.5以下とすることによって、定着性の悪化を抑制することができる。
なお、白インク中に含有する樹脂粒子の混合SP値は下記式により算出した。
白インク中の樹脂粒子の混合SP値[cal/cm30.5
=[樹脂粒子AのSP値×樹脂粒子Aの体積分率]+・・・
+[樹脂粒子ZのSP値×樹脂粒子Zの体積分率]
尚、本発明では白インク全体に対して0.5質量%以上含有している樹脂粒子のみ上記混合SP値の計算で使用する。
【0048】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上150nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0049】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、白インクの保存安定性の点から、白インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0050】
白インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、400nm以上600nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0051】
<滑剤>
本発明で使用される白インクには画像部に滑り性を付与する目的でワックスまたはシロキサン化合物を含有することが好ましい。
前記ワックスの中でも、特に白インクを画像部に付与した際の成膜性、滑り性などの観点からポリエチレンワックスもしくはカルナバワックスが好ましい。
前記ワックスの融点は80℃以上140℃以下が好ましく、100℃以上140℃以下がより好ましい。融点を80℃以上とすることによって、室温環境下でもワックスが過剰に溶融または凝固することが少なくなり、白インクの保存安定性を維持することが可能となる。一方、融点を140℃以下とすることで、室温環境下でもワックスが十分に溶融し、白インクに滑り性を付与することが可能となる。
前記ワックスの粒子径は0.01μm以上であることが好ましく、0.01μm以上0.1μm以下がより好ましい。粒子径を0.01μm以上とすることによって、白インク表面にワックス粒子が配向しやすくなり、白インクに滑り性を付与することが可能となる。
【0052】
前記ポリエチレンワックスとしては、例えば、市販品として東邦化学工業社製のハイテックシリーズ、BYK社製のAQUACERシリーズなどが挙げられる。
前記カルナバワックスとしては、例えば、市販品として中京油脂社製のセロゾール524、トラソルCNなどが挙げられる。
前記ワックスの含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
前記シロキサン化合物としては、例えば、市販品としてBYK社製のBYK307、BYK333、BYK378などが挙げられる。
前記シロキサン化合物の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0053】
<添加剤>
白インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0054】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化7】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0056】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化8】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
n2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)a-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCm2m+1でmは1~6の整数、又はCH2CH(OH)CH2-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCp2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0057】
白インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0058】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0059】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0060】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0061】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0062】
白インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
白インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
白インクの表面張力としては、記録媒体上で好適に白インクがレベリングされ、白インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、30mN/m以下がより好ましい。
白インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0063】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。
【0064】
<記録物>
白インクを使用した記録物は、記録媒体上に、本発明の白インクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0065】
本発明の画像形成装置(以下、記録装置とも呼称する)は、樹脂中空粒子を含む白インクと、前記白インクを記録媒体に付与する白インク付与手段と、前記白インクが付与された前記記録媒体に対して接触する直径200mm以下の加熱ローラと、を有する。
以下は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を用いた場合について説明するが、これらに代えて、あるいはこれらに加えて白インクを用いる。また、更に色材を含有しない透明液体組成物を使用しても良い。
【0066】
<記録装置、記録方法>
本発明の白インクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対して白インクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、白インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、白インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱温度は100℃以上200℃以下が好ましく、120℃以上150℃以下がより好ましい。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、白インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0067】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。図1は同画像形成装置の概略説明図である。
この画像形成装置は、フルライン型インクジェット記録装置であり、連続紙である媒体110に対して所要の色の液滴を吐出して画像を形成する液体吐出ヘッドで構成された画像形成部101を有している。
【0068】
画像形成部101は、例えば、媒体搬送方向上流側から、複数色のインクを吐出する複数のフルライン型記録ヘッドが配置されおり、最も搬送方向上流側に記録ヘッド111wが配置されている。各記録ヘッド111は、それぞれ、搬送される媒体110に対してホワイトW、ブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液滴を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
媒体110は、元巻きローラ102から巻き出され、搬送部103の搬送ローラ112によって、画像形成部101に対向して配置された搬送ガイド部材113上に送り出され、搬送ガイド部材113で案内されて搬送される。
画像形成部101によって画像が形成された媒体110は、本発明に係る乾燥装置104を経て、排出ローラ114によって送られて、巻取りローラ105に巻き取られる。
次に、乾燥装置104は、媒体加熱手段を構成する接触部材であるローラ部材としての加熱ローラ121と、複数の案内ローラ122とを備えている。
加熱ローラ121は、画像が形成された媒体110の画像形成面と反対の裏面側に接触する位置に配置されている。
【0069】
加熱ローラ121は、媒体110が接触する所定の曲率の接触面200を含む周面を有する接触部材であり、媒体110は、媒体搬送方向における接触範囲で、媒体搬送方向と直交する方向である幅方向の全域に亘って、接触面200に密着している。
つまり、加熱ローラ121の接触面200となる周面の曲率を、媒体110が媒体搬送方向における接触範囲で、媒体送り方向と直交する方向である幅方向の全域に亘って、接触面200に密着する曲率にしている。
具体的には、加熱ローラ121は、直径200mm以下である。
このとき、加熱ローラ121の半径の下限値については、内部に熱源を配置すること、強度が必要であること、媒体110を加熱するための媒体110の押し付け幅(媒体110がローラ121に当たる幅(長さ))が長い方が熱をより媒体110に伝達しやすいことから、半径30mm以上とすることが好ましい。
【0070】
すなわち、図3に示す比較例のように、接触面200の曲率が小さい(半径が大きい)ときには、画像形成時の液体付着によって生じた媒体110のコックリングによって、媒体送り方向における接触面200との接触範囲201で、媒体搬送方向と直交する方向である媒体幅方向において、媒体110が接触面200に密着しなくなる箇所が生じる。
その結果、媒体110が接触面200から浮き上がって密着していない箇所では、接触面200からの熱が伝達されない、あるいは、輻射熱が伝わるだけであるので、搬送方向と直交する幅方向で乾燥ムラが発生し、効率的な乾燥を行うことができない。
【0071】
これに対し、図2に示す本実施形態のように、接触面200の曲率が大きい(半径が小さい)ときには、画像形成時の液体付着によって生じた媒体110のコックリングが矯正されて、媒体110が接触面200に密着する。つまり、コックリングが矯正されることで、媒体110が接触面200から浮き上がって密着しない箇所が生じなくなる。
これにより、媒体搬送方向にわたって、かつ、媒体搬送方向と直交する幅方向の全域にわたって、媒体110が接触面200に密着することで、接触面200の熱が直接的に媒体110に伝達されるので、媒体110を効率的に乾燥することができる。
【0072】
このように、媒体は、媒体搬送方向における接触範囲で、媒体搬送方向と直交する方向である幅方向の全域に亘って、接触部材に密着していることで、加熱手段による加熱を効率的に行うことができ、速やかに媒体ないし付着した液滴を乾燥することができる。
搬送媒体110に対して111wから白インクを吐出した後、そのほか各色カラーインクを付与する。白インクとカラーインクの吐出の間に直径200mm以下の加熱ローラ121と接触する工程を有することが好ましく、この場合は、連続紙であれば白インクを付与し、加熱ローラと接触して巻き取ったロール紙を再度給紙側に戻して2度刷りをし、111wと111k,c,m,yの間に加熱ローラを配置することで実施可能で有り、カット紙であれば、111wから白インクを記録媒体に吐出し加熱ローラと接触させたあと再度上流側に搬送し111k,c,m,yからインクを付与してもよく、111wと111k,c,m,yの間に加熱ローラを配置することで実施可能である。
【0073】
この記録装置には、白インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などの白インクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0074】
なお、白インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0075】
本発明の白インクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、白インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、白インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、白インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上に白インクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0076】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【実施例
【0077】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」である。
【0078】
<樹脂中空粒子の製造>
(1)種粒子エマルションの合成
攪拌機、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフラスコに、脱イオン水(726.0部)、メチルメタクリレート(5.0部)、メタクリル酸(0.1部)を仕込み攪拌しながら加温した。そして、セパラブルフラスコ内の内温が70℃になったところで、10%過硫酸アンモニウム水溶液(1.0部)を添加し、20分間80℃で加温した。一方、メチルメタクリレート(141.0部)、メタクリル酸(94.9部)、アニオン性乳化剤として、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(5.0部:第一工業製薬社製 ネオゲンSF-20)、脱イオン水(120.0部)をホモディスパーで乳化させ、プレエマルションとした後、滴下ロートに投入した。
次にセパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、上記で得たプレエマルションを3時間かけて均一に滴下し、これと同時に10%過硫酸アンモニウム水溶液(10.0部)を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、80℃で3時間熟成し、冷却後120メッシュのろ布を用いて濾過し、種粒子エマルションを得た。
【0079】
(2)樹脂中空粒子の合成
(1段目重合)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフラスコに、脱イオン水(188.2部)を仕込み、上記で得た種粒子エマルション(66.0部)を滴下し、攪拌しながら80℃に加温した。一方、ブチルアクリレート(2.4部)、ブチルメタクリレート(1.1部)、メチルメタクリレート(19.5部)、メタクリル酸(0.7部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(5.0部:第一工業製薬社製 ネオゲンSF-20)、脱イオン水(55.3部)をホモディスパーで乳化させ、プレエマルション1とした後、滴下ロートに投入した。そして、セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、上記で得たプレエマルション1を30分かけて均一に滴下し、これと同時に10%過硫酸ナトリウム水溶液(1.2部)を30分かけて均一に滴下した。
【0080】
(2段目重合)
スチレン(75.0部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(5.0部:第一工業製薬社製 ネオゲンSF-20)、脱イオン水(51.8部)をホモディスパーで乳化させ、プレエマルション2とした後、滴下ロートに投入した。そして、セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、プレエマルション1の滴下が終了してから1時間後に、上記で得たプレエマルション2を60分かけて均一に滴下し、これと同時に10%過硫酸ナトリウム水溶液(3.5部)を60分かけて均一に滴下した。プレエマルション2の滴下終了後、種粒子を膨潤、溶解させるために、28%のアンモニア水(7.5部)を滴下し、80℃で1時間熟成した。冷却後120メッシュのろ布を用いて濾過し、樹脂中空粒子Bを得た。
なお、上記2段目重合におけるスチレンを22.3部として同様の製造方法で合成したものを樹脂中空粒子Eとした。
また、樹脂中空粒子の1600cm-1±10cm-1の吸収帯の最大値Xと、1730cm-1±10cm-1の吸収帯の最大値Yは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 顕微FT-IR測定装置(iN10MX/iZ10)及び解析ソフト(OMNIC)を用いて測定を行った。
【0081】
(実施例1~23、比較例1~6)
<白インクの調製>
まず、表に示す有機溶剤、蛍光増白剤、蛍光増白増強剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、脱イオン水を1時間攪拌して均一に混合した。次に、樹脂粒子、滑剤成分を加えて更に1時間攪拌して均一に混合した。その後、白色色材を加えて更に1時間攪拌して均一に混合した。この混合物を平均孔径5μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにより加圧ろ過し、粗大粒子やゴミを除去して白インクを得た。
なお、白インクの乾燥膜における1600cm-1±10cm-1の吸収帯の最大値Xと、1730cm-1±10cm-1の吸収帯の最大値Yは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製顕微FT-IR測定装置(iN10MX/iZ10)及び解析ソフト(OMNIC)を用いて測定を行った。白インクの値はほぼ樹脂中空粒子の値と一致したので記載は省略する。
【0082】
(白色色材)
二酸化チタン(大日精化工業社製 RCW-7)
50%体積粒径(d50):200nm
樹脂中空粒子A(ダウケミカル社製 ROPAQUE ULTRA E)
Y/X=1.5、樹脂構造:構造式(1)/構造式(2)
50%体積粒径(d50):400nm、樹脂層の厚さ:40nm、
中空率:51.0%
樹脂中空粒子B(※上記合成法にて得た)
Y/X=3.0、樹脂構造:構造式(1)/構造式(2)
50%体積粒径(d50):700nm、樹脂層の厚さ:60nm、
中空率:45.0%
樹脂中空粒子C(サイデン化学社製 サイビノール X-213-913E-43)
Y/X=4.9、
樹脂構造:構造式(1)/構造式(2)/構造式(3)/構造式(4)
50%体積粒径(d50):700nm、樹脂層の厚さ:100nm、
中空率:36.4%
樹脂中空粒子D(ダウケミカル社製 ROPAQUE HT1432)
Y/X=5.1、樹脂構造:構造式(1)/構造式(2)/構造式(4)
50%体積粒径(d50):500nm、樹脂層の厚さ:60nm、
中空率=32.0%
樹脂中空粒子E(※上記合成法にて得た)
Y/X=6.0、樹脂構造:構造式(1)/構造式(2)
50%体積粒径(d50):700nm、樹脂層の厚さ:60nm、
中空率:30.1%
樹脂中空粒子F(JSR社製 SX868)
Y/X=9.3、50%体積粒径(d50)=600nm
【0083】
(有機溶剤)
有機溶剤A(阪本薬品社製 グリセリン:SP値=17.4(cal/cm30.5
有機溶剤B(東京化成工業社製 1,2-プロパンジオール
:SP値=14.3(cal/cm30.5
有機溶剤C(東京化成工業社製 1,2-ブタンジオール
:SP値=13.1(cal/cm30.5
有機溶剤D(東京化成工業社製 3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン
:SP値=11.0(cal/cm30.5
有機溶剤E(東京化成社製 2-エチル-1,3-ヘキサンジオール
:SP値=10.9(cal/cm30.5
【0084】
(蛍光増白剤)
蛍光増白剤A(日本化学工業所社製 Nikkabright PAW-L
:親水性ベンゾオキサゾール蛍光増白剤)
蛍光増白剤B(日本化学工業所社製 Nikkafluor OB
:疎水性ベンゾオキサゾール蛍光増白剤)
蛍光増白剤C(BASF社製 TINOPAL OB
:疎水性ベンゾオキサゾール蛍光増白剤)
蛍光増白剤D(日本化学工業所社製 Nikkafluor MCT
:疎水性クマリン蛍光増白剤)
【0085】
(蛍光増白増強剤)
蛍光増白増強剤(サンノプコ社製 オプティアクト I-10)
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤(東京化成工業製 ベンゾフェノン)
【0086】
(樹脂粒子)
樹脂粒子A(第一工業製薬社製 スーパーフレックス 420
:SP値=11.6(cal/cm30.5
樹脂粒子B(信越シリコーン社製 KP-543
:SP値=7.5(cal/cm30.5
【0087】
(滑剤)
ポリエチレンワックス(BYK社製 AQUACER-539)
カルナバワックス(中京油脂社製 セロゾール 524)
ポリジメチルシロキサン化合物(BYK社製 BYK333)
【0088】
(界面活性剤)
信越シリコーン社製 KF-640
(消泡剤)
信越シリコーン社製 KM-72F
(pH調整剤)
東京化成工業社製 2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール
(防腐防黴剤)
アビシア社製 LV(S)
【0089】
<樹脂中空粒子のY/X測定>
上記で得た樹脂中空粒子のサンプルを、90℃に設定した恒温槽(ESPEC社製 PR-3J)にて24時間乾燥させた後、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 顕微FT-IR測定装置(iN10MX/iZ10)及び解析ソフト(OMNIC)を用いて。1600cm-1±10cm-1の吸収帯の最大値Xと、1730cm-1±10cm-1の吸収帯の最大値Yの測定を行った。
【0090】
<沈降性の測定方法>
白インク中の樹脂中空粒子の沈降性は、沈降性測定装置(英弘精機社製 タービスキャンクラシック MA2000)を用いて以下の通り測定した。
白インクを、超音波洗浄機(アズワン社製 US-3)を使用して超音波処理(100W、40分間)し、均一状態にしてからピペットを使用して装置専用のガラス管(アズワン社製 ねじ口試験管)に各白インクを5.5ml入れた。
ガラス管内の白インクの液面が安定した後に測定を行い、この時間を沈降性評価開始時間とする。その後、25℃で静置し、168時間後まで測定を行う。沈降性評価開始時間を基準とした偏差表示にて樹脂中空粒子の沈降性を確認する。沈降性の確認は、樹脂中空粒子の沈降に伴う後方散乱光強度ピークを積算(ガラス管下方20mmから液面まで)し、25℃で168時間静置後の上澄み相対変化量百分率の平均値(%)を算出し、下記判断基準にて判定を行った。なお、△以上が使用可能なレベルである。
○:-2%以上
△:-4%以上-2%未満
×:-4%未満
【0091】
<保存安定性の測定方法>
以下の条件で白インクの粘度を粘度計(東機産業社製 RE-85L)にて測定し、保存前後の粘度変化率を算出し、下記判断基準にて判定を行った。なお、△以上が使用可能なレベルである。
保存条件:70℃に設定した恒温槽(ESPEC社製 PR-3J)に14日間静置
○:初期粘度±2.5%以内
△:初期粘度±5%以内
×:初期粘度±5%を超える
【0092】
<印刷方法>
まず、表に示す白インクを画像形成装置(リコー社製 IPSiO GXe5500)により記録媒体(大王製紙 色上質紙 ブルー 薄口(厚み:約0.08mm、坪量:64.5g/m2)、またはエイピーピー 色上質紙シナールカラー 水色 紙厚:95μm(0.095mm)、坪量:76.7g/m2)、印字解像度:1200×1200dpi、白インクの付着量:3.0mg/cm2で印字した後、90℃に設定した恒温槽(ESPEC社製 PR-3J)にて60秒乾燥させた。次に、120℃に加熱した、表に示す直径の加熱ローラに、印字面の裏側から接触させ、直交する方向に押し当てたものを印刷サンプルとした。また、実施例5,6については、更に印字面側にも前記加熱ローラを接触させ、押し当てたものを印刷サンプルとした。なお、印刷チャートはドットパターンで形成された20cm四方のベタ画像を使用した。
【0093】
<白インクが印刷された画像の明度測定方法>
白インクが印刷された画像の明度を分光測色計(X-Rite社製 939)で測定した。なお、明度は50以上が使用可能なレベルであり、65以上が好ましく、70以上が更に好ましく、特に好ましくは85以上である。
【0094】
<定着性試験>
サンプルに対し、1.2cm四方に切った紙(Lumi Art Gloss 90gsm)を用いて画像を20回擦った。擦った紙に転写したインク付着汚れを反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)により測定し、擦った紙の地肌色を差し引いたインク付着汚れの濃度を算出した。算出したインク付着汚れの濃度を下記評価基準に基づいて分類し定着性を評価した。なお、△以上であると好ましい。
(評価基準)
○: インク付着汚れの濃度が0.1未満
△: インク付着汚れの濃度が0.1以上0.2未満
×: インク付着汚れの濃度が0.2以上
【0095】
<コックリング>
サンプルに対し、下記判断基準にて判定を行った。なお、△以上が実用可能なレベルである。
○:コックリングなし
△:若干コックリングあり
×:コックリングあり
【0096】
<耐光性>
サンプルを、
評価装置:ATLAS社製 Ci35AW
評価条件:
ブラックパネル温度:89℃±3℃
キセノンアーク照射強度:0.35±0.02W/m2
照射時間:24hr
の条件にて、耐光性試験を行った。試験前後の色差ΔEを分光測色計(X-Rite社製 939)で測定した。なお、△以上が実用可能なレベルである。
○:ΔE≦0.8
△:0.8<ΔE≦1.5
×:ΔE>1.5
【0097】
【表1-1】
【0098】
【表1-2】
【符号の説明】
【0099】
101画像形成部
102元巻きローラ
103搬送部
104乾燥装置
105巻取りローラ
110媒体
111k、111c、111m、111y、111w 記録ヘッド
112搬送ローラ
113搬送ガイド部材
114排出ローラ
121加熱ローラ
122案内ローラまたは加熱ローラ
200接触面
201接触範囲
300印字部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【文献】特許5935867号公報
【文献】特開2002-356633号公報
【文献】特開2009-191118号公報
【文献】特開2011-062946号公報
【文献】特開2015-054883号公報
【文献】特開2016-078428号公報
図1
図2
図3