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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】シリカ層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/152 20060101AFI20220221BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20220221BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220221BHJP
   C08L 83/00 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
C01B33/152 B
G02B1/111
B05D7/24 303A
B05D7/24 303E
B05D7/24 302Y
B05D7/24 301E
C08L83/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020527867
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 KR2018016447
(87)【国際公開番号】W WO2019125040
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0178519
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・テク・オ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・フン・シン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ス・パク
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-509800(JP,A)
【文献】特開2006-093657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
B05D 1/00 - 7/26
G02B 1/00 - 1/18
C08L 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ前駆体、酸触媒および界面活性剤を含む前駆体組成物で形成された前駆体層をゲル化させる段階を含
前記ゲル化は前記前駆体層をpKaが8以下であるアミン化合物と接触させて遂行するか、又は、
前記前駆体組成物は潜在性塩基発生剤をさらに含み、前記ゲル化は前記潜在性塩基発生剤から塩基を発生させて遂行する、シリカ層の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ前駆体は下記の化学式DまたはEのシラン化合物、前記シラン化合物の加水分解物または前記シラン化合物の縮合反応物である、請求項1に記載のシリカ層の製造方法:
[化学式D]
SiR1(4-n)(OR
前記化学式DでRは、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、エポキシ基または(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~12のアリール基または水素原子であり、nは3または4である:
【化1】
化学式EでLはアルキレン基およびアリーレン基からなる群から選択されたいずれか一つまたは2個以上の組み合わせからなる2価連結基であり、R~Rはそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基または水素原子である。
【請求項3】
前記前駆体組成物はシリカ前駆体を5~60重量%の範囲内の割合で含む、請求項1又は2に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項4】
前記前駆体組成物は溶媒をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は水性溶媒と有機溶媒の混合溶媒である、請求項4に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項6】
前記界面活性剤は前記前駆体層または前記前駆体組成物内でミセルを形成している、請求項1~5のいずれか一項に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体組成物は溶媒をさらに含み、前記界面活性剤の濃度は前記溶媒に対する臨界ミセル濃度の1倍~5倍の範囲となるように調節されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項8】
前記界面活性剤は陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項9】
前記潜在性塩基発生剤は、下記の化学式11で表示される化合物;下記の化学式13~15のうちいずれか一つで表示される陽イオン化合物を有するイオン化合物または下記の化学式18の化合物に含まれているか、それから由来したものである、請求項1~8のいずれか一項に記載のシリカ層の製造方法:
【化2】
化学式11でRは水素、炭素数1~20のアルキル基または炭素数6~12のアリール基であり、R11およびR12はそれぞれ独立に水素または炭素数1~4のアルキル基であり、R10は、水素、炭素数1~4のアルキル基、炭素数7~16のアリールアルキル基または下記の化学式12の置換基である:
【化3】
化学式12でLは炭素数1~4のアルキレンである:
【化4】
化学式13でR13~R20はそれぞれ独立に水素または炭素数1~20のアルキル基である:
【化5】
化学式14でR21~R24はそれぞれ独立に水素または炭素数1~20のアルキル基である:
【化6】
化学式15でR25~R30はそれぞれ独立に水素または炭素数1~20のアルキル基である:
【化7】
化学式18でR31およびR32はそれぞれ独立に水素、炭素数1~4の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数4~8の環状アルキル基であるか、前記R31およびR32は互いに連結されて前記R31およびR32が連結されている窒素原子とともに窒素含有ヘテロ環構造を形成し、Arはアリール基であり、Lは-L-O-または炭素数2~4のアルケニル基であり、前記Lは炭素数1~4のアルキレン基または炭素数1~4のアルキリデン基である。
【請求項10】
前記ゲル化工程後に前記界面活性剤を除去する工程を追加で遂行する、請求項1~のいずれか一項に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項11】
前記界面活性剤の除去はアルコール溶媒、ケトン溶媒またはアセテート溶媒を使って遂行する、請求項1に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項12】
前記前駆体層のゲル化は基材上で進行される、請求項1~1のいずれか一項に記載のシリカ層の製造方法。
【請求項13】
前記基材は、高屈折層、ハードコーティング層および反射防止層からなる群から選択されたいずれか一つの機能性層;偏光フィルム、偏光フィルムの保護フィルム、輝度向上フィルム、位相差フィルム、ディスプレイパネルまたはタッチパネルである、請求項1に記載のシリカ層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2017年12月22日付提出された大韓民国特許出願第10-2017-0178519号に基づいて優先権を主張し、当該大韓民国特許出願文献に開示された内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、シリカ層に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイ製品に対する需要はTV、モニターまたはノートパソコンなどの伝統的な製品に対するものそれだけでなく、スマートフォンのようなモバイル製品、車両用ナビゲーションやインストルメントパネルなどに至るまで拡大している。
【0004】
ディスプレイ製品の製造時に考慮すべき特性のうち製品の表面の反射率がある。通常ディスプレイ製品の外側には光学フィルムが導入されるが、このような光学フィルムは平均的に4%内外の反射率を示す。このような反射率はディスプレイに対する視認性を低下させる。
【0005】
したがって、反射率を調節するためにいわゆる、AG(anti-glare)またはAR(anti-reflection)等の技術が適用される。前記技術のうちAG技術は、反射光だけでなくディスプレイから出る光にも影響を及ぼすため、視認性の側面で適切でない。その反面、AR技術は、蒸着工程などで形成される特性上大型化が難しく、単価が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、シリカ層の製造方法に関する。本出願では簡単かつ効率的な方式で目的とする物性のシリカ層を効果的に形成できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の全体において、ある部材が他の部材上に位置しているとする時、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0008】
本明細書の全体において、ある部分がある構成要素を含むとする時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0009】
本明細書の全体において、「Aおよび/またはB」の記載は、「AまたはB、またはAおよびB」を意味する。
【0010】
本明細書で単位重量部は各成分間の重量の比率を意味し得る。
【0011】
本明細書で言及する物性のうち、測定温度および/または圧力がその物性値に影響を及ぼす場合には特に別途に言及しない限り、当該物性は常温および/または常圧で測定した物性を意味する。
【0012】
本出願で用語常温は加温または冷却されていない自然そのままの温度であり、例えば、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、25℃または23℃程度の温度を意味し得る。また、特に別途に規定しない限り、本出願で温度の単位は摂氏(℃)である。
【0013】
本出願で用語常圧は、特に加圧および減圧していない自然そのままの圧力であって、普通大気圧のような1気圧程度を意味し得る。
【0014】
本出願で用語アルキル基、アルキレン基またはアルコキシ基は、特に別途に規定しない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖アルキル基、アルキレン基またはアルコキシ基を意味するか、炭素数3~20、炭素数3~16、炭素数3~12、炭素数3~8または炭素数3~6の環状アルキル基、アルキレン基あるいはアルコキシ基を意味し得る。
【0015】
本出願で用語アルケニル基は、特に別途に規定しない限り、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8または炭素数2~4の直鎖または分枝鎖のアルケニル基を意味するか、炭素数3~20、炭素数3~16、炭素数3~12、炭素数3~8または炭素数1~6の環状アルケニル基を意味し得る。
【0016】
本出願で用語アリール基またはアリーレン基は、特に別途に規定しない限り、炭素数6~24、炭素数6~18または炭素数6~12のアリール基またはアリーレン基を意味するか、フェニル基またはフェニレン基を意味し得る。
【0017】
本出願で用語エポキシ基は、特に別途に規定しない限り、3個の環構成原子を有する環状エーテル(cyclic ether)または前記環状エーテルを含む化合物から誘導された1価残基を意味し得る。エポキシ基としてはグリシジル基、エポキシアルキル基、グリシドキシアルキル基または脂環式エポキシ基などが例示され得る。前記で脂環式エポキシ基は、脂肪族炭化水素環構造を含み、前記脂肪族炭化水素環を形成している2個の炭素原子がさらにエポキシ基を形成している構造を含む化合物から由来する1価残基を意味し得る。脂環式エポキシ基としては、6個~12個の炭素を有する脂環式エポキシ基が例示され得、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基などが例示され得る。
【0018】
前記アルキル基、アルキレン基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリーレン基またはエポキシ基は、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0019】
本出願はシリカ層の製造方法またはシリカ層に関する。本出願で用語シリカ層はシリカネットワークを主成分に有する層を意味する。
【0020】
用語シリカネットワークはシロキサン結合(Siloxane linkage、-Si-O-Si-)からなるか、それを含んでなる網あるいは3次元のケージ(cage)構造のネットワークを意味し得る。一例示で前記シリカネットワークは後述するアルコキシシランの縮合物であり得る。シリカネットワークは例えば、下記の化学式AまたはBの単位を含み、またそのような単位で構成され得る。前記シリカネットワークが下記の化学式Aおよび/またはBの単位で構成されるとは、前記シリカネットワークが下記の化学式Aの単位および/または下記の化学式Bの単位のみを含むことを意味する。
【0021】
[化学式A]
SiO(4-n)/2
【0022】
[化学式B]
SiO3/21/2
【0023】
化学式AおよびBで、Rは水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、エポキシ基または(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であり、nは0または1であり、Lは、直鎖、分枝鎖または環状アルキレン基およびアリーレン基からなる群から選択されたいずれか一つまたは2個以上の組み合わせからなる2価連結基である。
【0024】
化学式Bで直鎖または分枝鎖アルキレン基としては炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖アルキレン基が例示され得、環状アルキレン基としては、炭素数3~20、炭素数3~16、炭素数3~12、炭素数3~8または炭素数3~6の環状アルキレン基が例示され得る。
【0025】
化学式BでLが環状、分枝鎖状および環状アルキレン基およびアリーレン基からなる群から選択されたいずれか一つまたは2個以上の組み合わせからなる2価連結基とは、Lが前記言及されたアルキレン基またはアリーレン基であるか、あるいはそのうち選択された2種以上が組み合わせられて2価連結基を形成したものを意味する。
【0026】
化学式Aで酸素原子の右側の下付き文字はシリカネットワークで一つのケイ素原子がなしているシロキサン結合の数を意味する。例えば、nが0である場合に化学式AはSiO4/2と表示されるが、これは一つのケイ素原子が4個の酸素原子に連結されて4個のシロキサン結合を形成していることを意味する。シロキサン結合は一つの酸素原子を2個のケイ素原子が共有して形成されるため、化学式で酸素原子の右側の下付き文字4/2は、一つのケイ素原子に4個の酸素原子が結合されており、そのそれぞれの酸素原子がさらに他のケイ素原子とあることを意味する。このようなネットワークは、例えば、後述する製造方法において、原料としてテトラアルコキシシランのような4官能性シランを使って形成することができる。同様にnが1である場合に化学式AはRSiO3/2と表示されるが、これは一つのケイ素原子が3個の酸素原子に連結されて3個のシロキサン結合を形成しており、そのケイ素原子に官能基としてRが結合されている形態を意味する。このようなネットワークは、例えば、後述する製造方法において、原料としてトリアルコキシシランのような3官能性シランを使って形成することができる。
【0027】
化学式Bは一つのケイ素原子が3個の酸素原子と連結され、その3個の酸素原子がそれぞれ他のケイ素原子と連結されて3個のシロキサン結合を形成するとともにそのケイ素原子が他のケイ素原子とLを媒介として連結されて-Si-L-Si-結合を形成していることを意味する。このようなネットワークは、例えば、後述する製造方法において、原料として1,2-ビス(トリエトキシシラン)エタンなどのように2個のトリアルコキシシリル基が2価連結基によって連結されている構造の化合物を使って形成することができる。
【0028】
本出願のシリカ層のシリカネットワークは、化学式AまたはBの単位のうち任意のいずれか一つの単位で構成されるか、あるいは前記単位のうち2個以上の組み合わせを通じて構成され得る。この場合、化学式Aの単位にもnが0である単位およびnが1である単位のうちいずれか一つの単位が使われるか、あるいはその2個の単位がすべて使われ得る。
【0029】
一方、シリカ層にシリカネットワークが主成分として含まれているとは前記シリカ層内での前記シリカネットワークの比率が重量比率で、例えば、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上である場合を意味し得る。前記シリカ層内にシリカネットワークの比率は100重量%以下または100重量%未満であり得る。
【0030】
本出願の製造方法は多孔性(Porous)シリカ層の製造方法であり得る。したがって、一例示で前記シリカ層の内部には空隙(pore)が存在し得る。このようなシリカ層内に存在する空隙の形態は特に制限されるものではないが、いわゆるメソポーラス(mesoporous)形態の空隙が存在するシリカ層が本出願によって製造され得る。このようなシリカ層は多様な用途に使われ得る。一例示で前記シリカ層は反射率を調節する層、例えば、低反射層を形成することに適用され得る。本出願では既存の低反射層が克服できなかった短所が克服され、改善された物性を有する低反射層が製造され得る。したがって、本出願の製造方法は一例示で低反射層の製造方法であり得る。
【0031】
通常低反射層を形成するためにフッ素系高分子を利用した低い屈折率のコーティング層や、中空シリカ粒子を導入した層が適用されている。ところが、前記フッ素系高分子を適用した場合には、膜の機械的強度などの物理的性質が低下し、必要最低限の表面硬度の確保が難しい。また、前記中空シリカ粒子を利用した方法では使用過程や耐久性評価の過程で中空シリカ粒子が膜から脱落する短所があり、その製造方法も複雑である。
【0032】
ところが、本出願で製造されるシリカ層は、低反射効果を発揮できる適切な屈折率特性を有するとともに適切な物理的強度を示し、中空シリカ粒子の脱落などの問題もない。
【0033】
特に本出願によると、前記のようなシリカ層を高価な装備や複雑な工程なしに簡単に製造することができ、工程の進行過程で高温処理も要求されない。したがって、本出願の方式によると、前記のようなシリカ層を必要な場合に高分子フィルムのような耐熱性が落ちる素材の表面上にも直接形成することができる。したがって、本出願の方法によると、シリカ層を光学フィルム上にも直接形成することができる。
【0034】
一方、前記シリカ層は前記シリカネットワークとともに窒素またはリン原子を含むことができる。本発明者らは、シリカ層を形成するにおいて、いわゆるゾルゲル(sol-gel)工程として知られている工法を適用するものの、特定の触媒を適用し、必要に応じて工程条件を調節することによって、前記のような特性の多孔性シリカ層を低温工程でも形成できることを確認した。このような方式は、例えば、通常高密度のシリカ層を形成するものとして知られているシラザンを適用した方式や、高温でゲル化を進行する方式とは全く異なる方式であり、その結果、形成される膜質も異なってくる。
【0035】
例えば、前記シリカ層は前記シリカネットワークとともに前記特定の触媒から由来する成分である窒素原子またはリン原子を含むことができる。
【0036】
一例として、シリカ層を形成する方式の一つであるシラザンを使った方式で形成したシリカ層は、シラザンから由来する窒素原子を含んでいるものの、当該窒素原子はケイ素原子と結合された形態として存在する。すなわち、シラザンを適用した方式で形成したシリカ層はケイ素原子と窒素原子の結合(Si-N)を含む。ところが、本出願のシリカ層での窒素原子は前記状態で存在せず、したがって本出願のシリカ層または前記シリカネットワークは前記ケイ素原子と窒素原子の結合(Si-N)を含まない。一方、前記で高温ゲル化工程を通じて得られるシリカ層も窒素原子などは含まない。
【0037】
一例示で前記シリカ層に含まれる窒素原子またはリン原子は、ルイス塩基である特定アミン化合物、リン化合物またはイミダゾール化合物に含まれているか、それから由来した窒素またはリン原子であり得る。すなわち、前記アミン化合物などは、後述するシリカ層形成工程において触媒として使われるものであり、したがって窒素やリン原子はこのようなアミン化合物などに含まれているか、それから由来し得る。
【0038】
前記で窒素原子またはリン原子が触媒であるアミン化合物などから由来したとは、前記アミン化合物などが触媒として作用して他の種類の化合物に変形された場合にその変形された化合物に当該窒素原子またはリン原子が含まれていることを意味し得る。
【0039】
前記アミン化合物などは、pKaが8以下であり得る。前記pKaは他の例示で7.5以下、7以下、6.5以下、6以下、5.5以下、5以下、4.5以下または略4以下程度であるか、約1以上、1.5以上、2以上、2.5以上または3以上程度であり得る。
【0040】
前記アミン化合物などは、沸点(boiling point)が80℃~500℃の範囲内であり得る。前記沸点は他の例示で90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上、220℃以上、230℃以上、240℃以上、250℃以上、260℃以上、270℃以上、280℃以上、290℃以上、300℃以上、310℃以上、320℃以上、330℃以上、340℃以上または350℃以上であるか、1,000℃以下、900℃以下、800℃以下、700℃以下、600℃以下、500℃以下、400℃以下または300℃以下程度でもよい。
【0041】
一つの例示で前記触媒は沸点が前記範囲内である無水物であり得る。このような触媒は後述するゲル化過程を効果的に進行させて緻密な架橋構造のシリカネットワークを形成できるようにすることができる。一例示で前記触媒は沸点が前記範囲内である液状の無水物であり得る。
【0042】
前記アミン化合物などは引火点(flash point)が80℃以上であり得る。前記引火点は、他の例示で90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上または155℃以上であるか、1,000℃以下、900℃以下、800℃以下、700℃以下、600℃以下、500℃以下、300℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下または170℃以下程度でもよい。
【0043】
前記アミン化合物などは、常温蒸気圧が10,000 Pa以下であり得る。前記常温蒸気圧は他の例示で9,000Pa以下、8,000Pa以下、7,000Pa以下、6,000Pa以下、5,000Pa以下、4,000Pa以下、3,000Pa以下、2,000Pa以下、1,000Pa以下、900Pa以下、800Pa以下、700Pa以下、600Pa以下、500Pa以下、400Pa以下、300Pa以下、200Pa以下、100Pa以下、90Pa以下、80Pa以下、70Pa以下、60Pa以下、50Pa以下、40Pa以下、30Pa以下、20Pa以下、10Pa以下、9、8Pa以下、7Pa以下、6Pa以下、5Pa以下、4Pa以下、3Pa以下、2Pa以下、1Pa以下、0.9Pa以下、0.8Pa以下、0.7Pa以下、0.6Pa以下、0.5Pa以下、0.4Pa以下、0.3Pa以下、0.2Pa以下、0.1Pa以下、0.09Pa以下、0.08Pa以下、0.07Pa以下、0.06Pa以下、0.05Pa以下、0.04Pa以下、0.03Pa以下、0.02Pa以下、0.01Pa以下、0.009Pa以下、0.008Pa以下、0.007Pa以下、0.006Pa以下、0.005Pa以下、0.004Pa以下または0.003Pa以下や、0.0001Pa以上、0.0002Pa以上、0.0003Pa以上、0.0004Pa以上、0.0005Pa以上、0.0006Pa以上、0.0007Pa以上、0.0008Pa以上、0.0009Pa以上、0.001Pa以上、0.0015Pa以上または0.002Pa以上程度であり得る。
【0044】
前述したような特性を有するアミン化合物などを適用することによって、目的とする物性のシリカ層を効果的に得ることができる。前記のような物性のアミン化合物またはリン化合物は、熱的に安定であり、火災の危険が少なく、低い蒸気圧によって悪臭および爆発の危険性も少ない付随的な利点もある。
【0045】
前記アミン化合物などとしては、前記言及された特性を有するものであれば特に制限なく使うことができる。
【0046】
例えば、前記アミン化合物としては、下記の化学式1~4のうちいずれか一つで表示される化合物を使用することができ、前記リン化合物としては下記の化学式5~10のうちいずれか一つで表示される化合物を使うことができる。
【0047】
【化1】
【0048】
【化2】
【0049】
【化3】
【0050】
【化4】
【0051】
化学式1~4において、R~R15はそれぞれ独立に水素またはアルキル基であり得る。一方、化学式2でRおよびRはそれぞれ一つまたは複数で存在し得、複数で存在する場合にそれぞれのRおよびRは同一であるか異なり得る。
【0052】
化学式1~4でアルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~15、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4や、炭素数4~20、炭素数6~20、炭素数8~20、炭素数4~16、炭素数6~16、炭素数8~16、炭素数4~12、炭素数6~12または炭素数8~10の直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であり得る。
【0053】
アミン化合物は、例えば、下記の化学式1-1、化学式2-1、化学式3-1および化学式4-1のうちいずれか一つの化合物でもよい。
【0054】
【化5】
【0055】
【化6】
【0056】
【化7】
【0057】
【化8】
【0058】
前記化学式4-1でC17は直鎖オクチル基である。
【0059】
適切な例示で前記アミン化合物は、化学式4で、R13~R15はアルキル基である化合物であり得る。前記でアルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~15、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4や、炭素数4~20、炭素数6~20、炭素数8~20、炭素数4~16、炭素数6~16、炭素数8~16、炭素数4~12、炭素数6~12または炭素数8~10の直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であり得る。
【0060】
一方、前記で言及したリン化合物またはイミダゾール化合物としては、下記の化学式5~10のうちいずれか一つで表示される化合物が使われ得る。
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
【化11】
【0064】
【化12】
【0065】
【化13】
【0066】
【化14】
【0067】
化学式5~10で、R16~R32はそれぞれ独立に、水素;アルキル基またはアリール基であり得、xは1~3のうちいずれか一つの数であり、o~qは1~4のうちいずれか一つの数であり、r~wは1~5のうちいずれか一つの数であり得る。前記o~xが複数である場合にそれぞれが規定する数の置換基は互いに同一であるか異なり得る。
【0068】
したがって、oが2以上である場合、R16は同一または異なり得、pが2以上である場合、R17は同一または異なり得、qが2以上である場合、R18は同一または異なり得、rが2以上である場合、R19は同一または異なり得、sが2以上である場合、R20は同一または異なり得、tが2以上である場合、R21は同一または異なり得、uが2以上である場合、R22は同一または異なり得、vが2以上である場合、R23は同一または異なり得、wが2以上である場合、R25は同一または異なり得、xが2以上である場合、R32は同一または異なり得る。
【0069】
前記アルキル基は置換または非置換されたものであり得、直鎖または分枝鎖またはリング状であり得、炭素数は特に限定されないが1~40、1~36、1~32、1~28、1~24、1~20、1~16、1~12、1~8または1~4の範囲内であり得る。
【0070】
本明細書で置換は化合物の炭素原子に結合された水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一であるか異なり得る。
【0071】
本明細書において、置換または非置換は重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;アルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アルケニル基;シリル基;ホウ素基;ホスフィンオキサイド基;アミン基;アリールアミン基;アリール基;およびN、O、S、SeおよびSi原子のうち1個以上を含むヘテロアリール基からなる群から選択された1または2以上の置換基で置換されるか、前記例示された置換基のうち2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、またはいかなる置換基も有さないことを意味する。
【0072】
前記アリール基は置換または非置換されたものであり得、アリール基が単環式アリール基である場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数6~50、6~44、6~38、6~32、6~26、6~20、6~14または6~12であり得る。多環式アリール基である場合の炭素数も特に制限されず、例えば、12~50、12~44、12~38、12~32、12~26、12~20または12~14程度であり得る。
【0073】
前記リン化合物またはイミダゾール化合物としては、一例示で下記の化学式で表示されるものなどを使うことができる。
【0074】
【化15】
【0075】
【化16】
【0076】
【化17】
【0077】
【化18】
【0078】
【化19】
【0079】
【化20】
【0080】
【化21】
【0081】
【化22】
【0082】
他の例示で前記窒素原子はいわゆる潜在性塩基発生剤として知られている化合物に含まれたものであるか、それから由来したものであり得る。この時、由来の意味は前記の通りである。用語潜在性塩基発生剤は、常温および常圧などの一般的な環境下では塩基性を示さないものの、適切な熱の印加あるいは紫外線などの光の照射によって塩基性を示す化合物または塩基性を有する化合物乃至触媒で転換される化合物を意味する。
【0083】
例えば、前記潜在性塩基発生剤は下記の化学式11で表示される化合物であり得る。下記の化学式11で表示される化合物は熱塩基発生剤として作用することができる。
【0084】
【化23】
【0085】
化学式11でRは水素、炭素数1~20のアルキル基または炭素数6~12のアリール基であり、R11およびR12はそれぞれ独立に水素または炭素数1~4のアルキル基であり、R10は、水素、炭素数1~4のアルキル基、炭素数7~16のアリールアルキル基または下記の化学式12の置換基であり得る。
【0086】
【化24】
【0087】
化学式12でLは炭素数1~4のアルキレン基であり得例えば、メチレン基またはエチレン基などであり得る。
【0088】
化学式11でRのアルキル基は、一例示で炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基であるか、炭素数1~20、炭素数4~20、炭素数8~20、炭素数12~20または炭素数16~20の直鎖または分枝鎖のアルキル基であり得る。
【0089】
化学式11でRのアリール基は、炭素数6~12のアリール基であるか、フェニル基であり得る。
【0090】
化学式11でR10のアリールアルキル基は炭素数が7~16であり、炭素数1~4のアルキル基を含むアリールアルキル基であり得、例えば、炭素数1~4のアルキル基を有するフェニルアルキル基であり得る。
【0091】
前記でアルキル基、アリール基、アリールアルキル基などは任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよく、このような場合に置換基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基またはシアノ基などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0092】
他の例示で前記塩基発生剤は下記の化学式13で表示される陽イオン(cation)を有するイオン性化合物であり得る。下記の化学式13で表示される陽イオンを有するイオン性化合物は光塩基発生剤として作用することができる。
【0093】
【化25】
【0094】
化学式13でR13~R20はそれぞれ独立に水素または炭素数1~20のアルキル基であり得る。
【0095】
前記アルキル基は炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基であり得、例えば、メチル基、エチル基あるいは分枝鎖のプロピル基などであり得る。
【0096】
他の例示で前記アルキル基は炭素数3~20、炭素数3~16、炭素数3~12、炭素数3~8または炭素数4~8の環状アルキル基であり得、例えば、シクロヘキシル基などであり得る。
【0097】
化学式13のアルキル基は任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよく、このような場合に置換基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基またはシアノ基などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0098】
一つの例示で前記塩基発生剤は下記の化学式14または15で表示される陽イオン(cation)を有するイオン性化合物であり得る。下記の化学式14または15で表示される陽イオンを有するイオン性化合物は光塩基発生剤として作用することができる。
【0099】
【化26】
【0100】
化学式14でR21~R24はそれぞれ独立に水素または炭素数1~20のアルキル基であり得る。
【0101】
【化27】
【0102】
化学式15でR25~R30はそれぞれ独立に水素または炭素数1~20のアルキル基であり得る。
【0103】
化学式14または15でアルキル基は炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基であり得、例えば、メチル基、エチル基あるいは分枝鎖のプロピル基などであり得る。
【0104】
他の例示で化学式14または15でアルキル基は炭素数3~20、炭素数3~16、炭素数3~12、炭素数3~8または炭素数4~8の環状アルキル基であり得、例えば、シクロヘキシル基などであり得る。
【0105】
化学式14または15でアルキル基は任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよく、このような場合に置換基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基またはシアノ基などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0106】
化学式13~15のような陽イオン(cation)と共にイオン性化合物に含まれる陰イオン(anion)の種類は特に制限されず、適切な種類の陰イオンが使われ得る。
【0107】
例えば、前記陰イオンは下記の化学式16または17で表示される陰イオンであり得る。
【0108】
【化28】
【0109】
化学式16でLは炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキレン基であるか、前記のような炭素数を有するアルキリデン基であり得る。
【0110】
【化29】
【0111】
化学式17でR35~R38はそれぞれ独立に水素、アルキル基またはアリール基であり得る。
【0112】
化学式16または17でアルキル基は炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基であり得る。
【0113】
化学式16または17でアリール基は炭素数6~30、炭素数6~24、炭素数6~18または炭素数6~12のアリール基であるか、フェニル基であり得る。
【0114】
一つの例示で前記塩基発生剤は下記の化学式18で表示される化合物であり得る。下記の化学式18で表示される化合物は光塩基発生剤として作用することができる。
【0115】
【化30】
【0116】
化学式18でR31およびR32はそれぞれ独立に水素、直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であり得る。他の例示で前記R31およびR32は互いに連結されて前記R31およびR32が連結されている窒素原子とともに窒素含有ヘテロ環構造を形成することができる。
【0117】
化学式18でArはアリール基であり得、Lは-L-O-または炭素数2~4のアルケニレン基であり得、前記でLは炭素数1~4のアルキレン基または炭素数1~4のアルキリデン基であり得る。
【0118】
化学式18でR31およびR32のアルキル基は炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基であり得、例えば、メチル基、エチル基あるいは分枝鎖のプロピル基などであり得る。
【0119】
他の例示で化学式18でR31およびR32のアルキル基は炭素数3~20、炭素数3~16、炭素数3~12、炭素数3~8または炭素数4~8の環状アルキル基であり得、例えば、シクロヘキシル基などであり得る。
【0120】
他の例示で前記R31およびR32は互いに連結されて前記R31およびR32が連結されている窒素原子とともに窒素含有ヘテロ環構造を形成することができる。前記環構造は前記R31およびR32が連結されている窒素原子を含み、いずれも1つ以上、例えば、1個または2個の窒素原子を含み、また、3個~20個、3個~16個、3個~12個または3個~8個の炭素原子を有する構造であり得る。
【0121】
前記窒素含有ヘテロ環構造ではピペリジン構造またはイミダゾール構造などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0122】
前記窒素含有ヘテロ環構造がピペリジン構造である場合に化学式18の化合物は下記の化学式19で表示され得、イミダゾール構造である場合には下記の化学式20で表示され得る。
【0123】
【化31】
【0124】
【化32】
【0125】
化学式19および20でArはアリール基であり得例えば、炭素数6~30、炭素数6~30または炭素数6~18のアリール基であり得る。
【0126】
前記アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基(anthryl group)あるいはアントラキノニル基(anthraquinonyl group)等が例示され得、具体的には9-アントリル基(9-anthryl group)あるいはアントラキノン-1-イル基(anthroquinon-1-yl group)あるいはアントラキノン-2イル基(anthroquinon-2-yl group)等が例示され得るがこれに制限されるものではない。
【0127】
化学式19および20でLは-L-O-または炭素数2~4のアルケニレン基であり得る。前記で-L-O-の場合にはLがArに連結され、Oが化学式19および20のカルボニル基の炭素原子に連結された構造あるいはOがArに連結され、Lが化学式8のカルボニル基の炭素原子に連結された構造が導き出され得る。
【0128】
は炭素数1~4のアルキレン基または炭素数1~4のアルキリデン基であり得る。
【0129】
化学式18~20のアルキル基、窒素含有ヘテロ環構造、アリール基、アルケニル基、アルキレン基および/またはアルキリデン基には任意に一つ以上の置換基が置換されていてもよく、その例としてはハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基および/またはメタクリルロイルオキシ基などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0130】
潜在性塩基発生剤としては、公知の物質合成法によって合成された前記構造の化合物あるいは業界に公知とされている製品を入手して使うことができる。前記製品としては、WAKO社のWPBGシリーズあるいは四国化学のCurezol製品などがあるがこれに制限されるものではない。
【0131】
本出願でシリカ層に含まれる前記窒素またはリン原子の比率は特に制限されない。すなわち、前述した通り、前記窒素またはリン原子は製造過程で触媒として使われた物質によって由来する物であり得、このような場合には、窒素またはリン原子の割合で使われた触媒の量によって決定され得る。
【0132】
シリカ層に含まれる前記窒素またはリン原子の比率は一例示で、0.0001~6重量%の範囲内であり得る。前記比率は他の例示で約0.0005重量%以上程度、0.001重量%以上程度、0.005重量%以上程度、0.1重量%以上程度、0.15重量%以上程度、0.2重量%以上程度、0.25重量%以上程度、0.3重量%以上程度、0.35重量%以上程度、0.4重量%以上程度、0.45重量%以上程度、0.5重量%以上程度、0.55重量%以上程度または0.6重量%以上程度であるか、5.8重量%以下程度、5重量%以下程度、6重量%以下程度、5.4重量%以下程度、5.2重量%以下程度、5重量%以下程度、4.8重量%以下程度、4.6重量%以下程度、4.4重量%以下程度、4.2重量%以下程度、4重量%以下程度、3.8重量%以下程度、3.6重量%以下程度、3.4重量%以下程度、3.2重量%以下程度、3重量%以下程度、2.8重量%以下程度、2.6重量%以下程度、2.4重量%以下程度、2.2重量%以下程度、2.0重量%以下程度、1.8重量%以下程度、1.6重量%以下程度、1.4重量%以下程度、1.2重量%以下程度、1重量%以下程度、0.8重量%以下程度、0.6重量%以下程度、0.4重量%以下程度、0.2重量%以下程度、0.1重量%以下程度、0.08重量%以下程度、0.06重量%以下程度、0.04重量%以下程度、0.02重量%以下程度、0.01重量%以下程度、0.008重量%以下程度または0.006重量%以下程度でもよい。
【0133】
前記で言及した窒素またはリン原子の比率は、前記言及した触媒から由来した窒素またはリン原子の比率であり得る。
【0134】
このような窒素またはリン原子の比率は光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)で測定することができる。前記方式は光電効果(Photoelectric effect)に基づいて高エネルギーの光と表面の相互作用に起因した光電効果によって放出された電子の運動エネルギーを測定して分析を遂行する。光源としてX線を使って分析試料の元素のコア電子(core electron)を放出させ、放出された電子の運動エネルギーを測定して結合エネルギーを測定することができる。測定された結合エネルギーを分析して試料を構成する元素を確認することができ、化学的シフトを通じて化学結合状態などに対する情報を得ることができる。例えば、シリカ層をシリコンウェハー上に適正厚さ(例えば、約0.5μm~3μm程度)の厚さで形成した後に前記方式で窒素またはリン原子の比率を測定することができる。このような場合に適用される測定装備の具体的な種類は前記光電子分光法の測定が可能であるものであれば特に制限されない。
【0135】
シリカ層は前述した成分に加えて任意に必要な他の成分を含むこともできる。このような成分の例としては、シリカ、セリア、チタニアおよび/またはジルコニアなどの(ナノ)粒子、フッ素系またはケイ素系スリップ剤および/または乾燥遅延剤などが例示され得るが、これに制限されるものではない。このような添加剤は目的を考慮して任意に添加され得るが、その具体的な種類と比率は目的に応じて調節され得る。
【0136】
前記のようなシリカ層は目的とする物性に応じて適切な厚さを有することができる。例えば、前記シリカ層の厚さは略50nm~200μmの範囲内であり得る。他の例示で前記厚さは1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上または10μm以上であるか、19μm以下、18μm以下、17μm以下、16μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下または11μm以下であり得る。
【0137】
本出願のシリカ層の厚さは用途により制御され得、例えば前記シリカ層が低反射層に適用される場合には前記シリカ層が適用された光学部材(例えば、光学フィルム)の表面で反射する光と前記シリカ層で反射する光が互いに相殺干渉する現象などによって消尽され得る範囲で厚さが決定され得る。したがって、このような厚さは適用される光学部材の表面反射率などを考慮して調整され得る。
【0138】
前記シリカ層は、シリカ前駆体および酸触媒を含む前駆体組成物で形成された前駆体層を使って製造することができる。
【0139】
前記前駆体層は、追加成分として潜在性塩基発生剤、すなわち前述した化学構造の化合物を含むか、含まなくてもよい。潜在性塩基発生剤を含む場合には、前記シリカ前駆体に適切な熱を印加したり、光を照射して塩基を発生させ、ゲル化を進行させてシリカ層を形成することができる。潜在性塩基発生剤を含まない場合には前記製造方法は前記前駆体層をルイス塩基と接触させる段階を含むことができる。この時、ルイス塩基としては前述したアミン化合物またはリン化合物(化学式2~10の化合物)が使われ得る。
【0140】
本出願で用語前駆体組成物は、いわゆるゾルゲル法の原料または前記ゾルゲル法進行過程の中間生成物として、縮合性シラン化合物の縮合物であるシリカゾルを含む組成物を意味し得る。したがって、前記シリカ前駆体はシリカ前駆体を含む組成物であり、シリカ前駆体は、適用された原料である縮合性シラン化合物および/または前記縮合性シラン化合物が縮合されて形成されたシリカゾルを意味し得る。
【0141】
本出願の前記前駆体組成物は、原料としてシラン化合物を含む組成物を酸触媒で処理して得られた組成物であり得る。したがって、前記前駆体組成物は、pHが少なくとも5以下であり得る。前記のような範囲のpHを有するように触媒を使って原料の縮合反応を進行させると、続く工程で目的とする物性のシリカ層を形成するのに効果的である。前記pHは他の例示で4.5以下、4以下または3.5以下程度であるか、0以上、0超過、0.5以上または1以上程度であり得る。
【0142】
前記シリカ前駆体は、前記原料である縮合性シラン化合物、前記縮合性シラン化合物の加水分解物および/または前記縮合性シラン化合物の縮合反応物を含むことができる。
【0143】
この時、原料であるシラン化合物としては、例えば、下記の化学式DまたはEの化合物を使うことができる。
【0144】
[化学式D]
SiR1(4-n)(OR
【0145】
化学式DでRは、化学式AでのRの定義と同じであり、Rは炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~12のアリール基または水素原子などであり得、nは3または4である。
【0146】
前記でアルキル基は炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基であり得、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記アルキル基は例えば、メチル基またはエチル基であり得る。
【0147】
前記アルキル基、アルコキシ基またはアリール基は任意に置換されていてもよく、この場合置換基としては、グリシジル基、ハロゲン原子、脂環式エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリルロイルオキシ基などがあるが、これに制限されるものではない。
【0148】
【化33】
【0149】
化学式EでLは、前述した化学式BでのLと同じである。一例示で前記Lは、炭素数1~4のアルキレン基であるか、前記化学式Bの2価連結基であり得る。化学式EでR~Rはそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基または水素原子である。前記でアルキレン基は炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり得、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記アルキレン基は例えば、メチレン基またはエチレン基であり得る。また、化学式Eでアルキル基は炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基であり得、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記アルキル基は例えば、メチル基またはエチル基であり得る。前記でアルコキシは炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルコキシ基であり得、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記アルコキシは例えば、メトキシ基またはエトキシ基であり得る。前記でアリール基は炭素数6~12のアリール基またはフェニル基などであり得る。
【0150】
前駆体組成物は、前述したシリカ前駆体(すなわち、原料であるシラン化合物、その加水分解物および/またはその縮合物など)を例えば、約5~60重量%の範囲内で含むことができる。前記比率は他の例示で約6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、10重量%以上、11重量%以上、12重量%以上、13重量%以上、14重量%以上、15重量%以上、16重量%以上、17重量%以上、18重量%以上、19重量%以上、20重量%以上、21重量%以上、22重量%以上、23重量%以上、24重量%以上、25重量%以上、26重量%以上、27重量%以上、28重量%以上、29重量%以上、30重量%以上、31重量%以上、32重量%以上、33重量%以上、34重量%以上、35重量%以上、36重量%以上、37重量%以上、38重量%以上または39重量%以上であるか、約59重量%以下、58重量%以下、57重量%以下、56重量%以下、55重量%以下、54重量%以下、53重量%以下、52重量%以下、51重量%以下、50重量%以下、49重量%以下、48重量%以下、47重量%以下、46重量%以下、45重量%以下、44重量%以下、43重量%以下、42重量%以下、41重量%以下、40重量%以下、約39重量%以下、38重量%以下、37重量%以下、36重量%以下、35重量%以下、34重量%以下、33重量%以下、32重量%以下、31重量%以下、30重量%以下、29重量%以下、28重量%以下、27重量%以下、26重量%以下、25重量%以下、24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下または15重量%以下程度でもよい。
【0151】
一例示で前記シリカ前駆体の比率は、前記前駆体組成物に対して乾燥および脱水過程を経た後に確認される固形分の量を前記乾燥および脱水前の前駆体組成物の量との関係から計算して求められる百分率値であり得る。一例示で前記乾燥工程は、約80℃で約1時間程度進行され得、前記脱水過程は約200℃で約24時間の間進行され得る。他の例示で前記シリカ前駆体の比率は、前記前駆体組成物の製造に適用されたシラン化合物の量であるか、前記適用されたシラン化合物が100%反応してゾル化される量を計算してその計算結果に基づいて求められる数値でもよい。
【0152】
したがって、以下本明細書で言及する前駆体組成物の成分間の比率規定時にシリカ前駆体の比率乃至重量は、前記乾燥および脱水過程を経た後に残存する成分の比率乃至重量を基準としたものであるか、あるいは前記前駆体組成物の製造に適用されたシラン化合物の量または適用されたシラン化合物が100%反応してゾル化される量を基準としたものであり得る。
【0153】
前駆体組成物内のシリカ前駆体の比率を前記のように調節することによって前駆体組成物の粘度が適切に調節され、コーティング時のハンドリング性を適切に維持することができる。また、工程の過程で乾燥時間を短縮し、シリカ層で発生し得るシミを防止することができ、シリカ層の厚さも均一に維持することができる。
【0154】
シリカ前駆体の含量を前記範囲で維持する方法は特に制限されず、ゾル化過程での適用触媒の種類や工程時間およびその他工程条件を調節して前記含量を達成することができる。
【0155】
前記前駆体組成物は酸触媒を使って誘導された組成物であり得る。例えば、前記シラン化合物を適正な酸触媒と接触してゾル化を進行させて前記前駆体組成物を形成することができる。前記過程で適用される酸触媒の種類およびその比率は特に制限されず、適合な縮合反応を誘導し、前述した範囲のpHが確保され得るものを使うことができる。
【0156】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、フルオロ硫酸、硝酸、燐酸、酢酸、ヘキサフルオロリン酸、p-トルエンスルホン酸およびトリプルオロメタンスルホン酸などから選択された1種または2種以上の混合が例示され得るが、これに制限されはしない。
【0157】
前駆体組成物を形成するために使われる前記酸触媒の量は特に制限されず、前述した範囲のpHおよび/または前記シリカ前駆体の含量が確保されるように制御され得る。
【0158】
一例示で前記酸触媒は、前記前駆体組成物が、前記シリカ前駆体100重量部に対して0.01~50重量部の酸触媒を含むように使われ得る。前記比率は他の例示で0.03重量部以上、0.1重量部以上、0.5重量部以上、1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上または25重量部以上であるか、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、5重量部以下または3重量部以下程度でもよい。
【0159】
前駆体組成物は前記成分に追加として任意の成分を含むことができる。例えば、前記前駆体組成物は溶媒をさらに含むことができる。
【0160】
このような場合に前記前駆体組成物は、前記溶媒および原料であるシラン化合物を含む混合物に前記酸触媒を添加して製造することができる。
【0161】
溶媒としては、例えば、沸点(boiling point)が約50℃~150℃の範囲内である溶媒を使うことができる。このような溶媒としては、水のような水性溶媒または有機溶媒が例示され得、有機溶媒としてはアルコール、ケトンまたはアセテート溶媒などが例示され得る。アルコール溶媒の例には、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、i-ブチルアルコール、n-ブチルアルコールおよび/またはt-ブチルアルコールなどが例示され得、ケトン溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルケトン、メチルイソプロピルケトンおよび/またはアセチルアセトンなどが例示され得、アセテート溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテートおよび/またはブチルアセテートなどが例示され得るがこれに制限されるものではない。
【0162】
一つの例示で前記組成物は、前記水性溶媒と有機溶媒の混合溶媒を含むことができ、このとき水性溶媒としては水が使われ、有機溶媒としては前述したアルコール、ケトンおよび/またはアセテート溶媒が使われ得るがこれに制限されるものではない。
【0163】
前駆体組成物内で前記溶媒の量は、特に制限されるものではないが、例えば、原料としては使われたシラン化合物のモル数対比約2倍~8倍のモル数の溶媒が使われ得る。
【0164】
一例示で前記前駆体組成物は、前記シリカ前駆体100重量部対比40~2,000重量部の溶媒を含むことができる。前記比率は他の例示で略45重量部以上、50重量部以上、55重量部以上、60重量部以上、65重量部以上、70重量部以上、75重量部以上、80重量部以上、85重量部以上、90重量部以上程度、95重量部以上程度、100重量部以上程度、150重量部以上程度、200重量部以上程度、250重量部以上程度、300重量部以上程度、350重量部以上程度、400重量部以上程度、450重量部以上程度、500重量部以上程度、550重量部以上程度、600重量部以上程度、650重量部以上程度、700重量部以上程度または750重量部以上程度であるか、1,800重量部以下、1,600重量部以下、1,400重量部以下または1,300重量部以下程度でもよい。
【0165】
溶媒として、水性溶媒と有機溶媒の混合物を適用する場合には前記有機溶媒100重量部に対して約5~200重量部程度の水性溶媒を使用できるが、これに制限されない。前記比率は他の例示で約10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上または30重量部以上、35重量部以上程度、40重量部以上程度、45重量部以上程度、50重量部以上程度、55重量部以上程度、60重量部以上程度、65重量部以上程度、70重量部以上程度、75重量部以上程度、80重量部以上程度、85重量部以上程度、90重量部以上程度または95重量部以上程度であるか、約180重量部以下程度、160重量部以下程度、140重量部以下程度、120重量部以下程度または110重量部以下程度でもよい。
【0166】
前記前駆体組成物は前述した潜在性塩基発生剤を含んでいてもよい。このような場合に含まれ得る潜在性塩基発生剤の具体的な種類は前述した通りである。
【0167】
潜在性塩基発生剤が含まれる場合にその比率は前記シリカ前駆体100重量部に対して約0.01~50重量部程度であり得る。前記潜在性塩基発生剤の比率は他の例示で略0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上または3.5重量部以上であるか、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下または5重量部以下程度でもよい。
【0168】
前記前駆体組成物は界面活性剤をさらに含む。このような界面活性剤は前駆体組成物内でいわゆるミセル(micelle)を形成し、このようなミセルはシリカ層内で前述した空隙を形成することができる。このような界面活性剤は前述した酸触媒の添加前または後で添加されるか、あるいは前記酸触媒とともに添加され得、その添加順序は特に制限されない。
【0169】
このような前駆体組成物内で前記ミセルを形成し、前記ミセルは前記シリカ層の空隙を形成することができる。前記界面活性剤は前記前駆体組成物内で均一かつ規則的に前記ミセルを形成することができる。
【0170】
界面活性剤としては特に制限なく一般的な陰イオン性、陽イオン性または非イオン性界面活性剤のうち適切な種類が選択および使われ得る。
【0171】
前記で陰イオン界面活性剤としては、カリウムラウレート、トリエタノールアミンステアレート、アンモニウムラウリルスルフィド、リチウムドデシルスルフィド、ナトリウムラウリルスルフィド、ナトリウムドデシルスルフィド、アルキルポリオキシエチレンスルフィド、ナトリウムアルギネート、ジオクチルナトリウムスルホサクシネート、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチド酸およびその塩、グリセリルエステル、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、胆汁酸およびその塩、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート、ステアルサンおよびその塩、カルシウムステアレート、ホスフェート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジオクチルスルホサクシネート、ナトリウムスルホコハク酸のジアルキルエステル、燐脂質およびカルシウムカルボキシメチルセルロースからなる群から選択された1種または二種以上が使われ得る。
【0172】
陽イオン性界面活性剤としては、4級(quaternary)アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、キトサン、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アシルカルニチンヒドロ、ハロゲン化アルキルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、陽イオン性脂質、臭化ポリメチルメタクリレ-トトリメチルアンモニウム、スルホニウム化合物、ポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルスルフィド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ホスホニウム化合物、臭化ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウム、塩化ココナッツトリメチルアンモニウム、臭化ココナッツトリメチルアンモニウム、塩化ココナッツメチルジヒドロキシエチルアンモニウム、臭化ココナッツメチルジヒドロキシエチルアンモニウム、塩化デシルトリエチルアンモニウム、塩化又は臭化デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化C12-15-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化又は臭化C12-15-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ココナッツジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、臭化ココナッツジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルスルフィド、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、臭化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウム、塩化ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムブロマイド、N-アルキル(C12-18)ジメチルベンジルアンモニウム、塩化N-アルキル(C14-18)ジメチル-ベンジルアンモニウム、塩化N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム二水和物、塩化ジメチルジデシルアンモニウム、塩化N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウム、ハロゲン化トリメチルアンモニウムアルキル-トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、塩化ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウム、塩化N-ジデシルジメチルアンモニウム、塩化N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム二水和物、塩化N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルメチルアンモニウム、臭化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、臭化C12トリメチルアンモニウム、臭化C15トリメチルアンモニウム、臭化C17トリメチルアンモニウム、塩化ドデシルベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム、塩化ジメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルジメチルアンモニウム、塩化トリセチルメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化トデシルトリエチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、ポリクアート(POLYQUAT)10、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、コリンエステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアルアルコニウム、臭化セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、4級化(quaternized)ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化塩、「ミラポル(MIRAPOL)」 (ポリクォータニウム-2)、「アルカクォ-ト(Alkaquat)」 (塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、ロディア(Rhodia)製)、アルキルピリジニウム塩、アミン、アミン塩、イミドアゾリニウム塩、量子化4級アクリルアミド、メチル化4級重合体、および陽イオン性グアガム、塩化ベンザルコニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、トリエタノールアミンおよびポロキサミンからなる群から選択された1種または二種以上が使われ得る。
【0173】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪(fatty)アルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ソルビタンエステル、グリセリルエステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールエステル、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポロキサマー、ポロキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、多糖類、デンプン、デンプン誘導体、ヒドロキシエチルデンプン、ポリビニルアルコール、トリエタノールアミンステアレート、アミンオキシド、デキストリン、グリセロール、アカシアガム、コレステロール、トラガカント、およびポリビニルピロリドンからなる群から選択された1種または二種以上が使われ得る。
【0174】
前記非イオン性界面活性剤としてはポリプロピレンオキサイド(PPO)およびポリエチレンオキサイド(PEO)のブロック共重合体も使うことができる。
【0175】
一つの例示で前記界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤を使うことができ、このような場合にはより小さい直径のミセルを形成することができる。
【0176】
他の例示で前記界面活性剤としては、炭素(C)、水素(H)および酸素(O)のみを含む非イオン性界面活性剤を使うことができる。このような場合には陽イオンまたは陰イオンによる残留物が発生しないため、後処理および環境汚染に対する負担が少ない長所がある。
【0177】
前記界面活性剤は前駆体組成物内で目的とする水準のミセルが形成され得るほどの割合で使われ得、一例示で前記原料であるシラン化合物またはシリカ前駆体1モル当り略0.05モル~0.25モルの界面活性剤が使われ得る。
【0178】
他の例示では前記界面活性剤の濃度は、前駆体組成物に適用された前記溶媒に対する臨界ミセル濃度(critical micelle concentration、CMC)の1倍~5倍の範囲内で制御され得る。前記界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度の1倍以上として、シリカ層または前駆体層内に適切な量のミセルを形成することができ、臨界ミセル濃度の5倍以下にして残留界面活性剤の量を最小化するか防止して、シリカ層の優れた物性を維持することができる。
【0179】
他の例示で前記界面活性剤は前記シリカ前駆体100重量部対比30重量部~150重量部の範囲内であり得、他の例示では50重量部~100重量部の範囲内であり得る。このような範囲で目的とする水準の屈折率を実現し、シリカ層の強度も安定的に維持することができる。
【0180】
例えば、前述した前記界面活性剤の含量を通じて最終シリカ層の屈折率(550nm波長基準)は、略1.2~1.3の範囲内の水準で制御することができ、このような屈折率は略1.55内外の屈折率(550nm波長基準)を有する光学基材上に光の相殺干渉等を通して低い光反射率を実現することができる。
【0181】
ところが、前記含量範囲と屈折率の範囲は本出願の一例示であり、該当含量乃至屈折率は目的とする用途などを考慮して変更され得る。
【0182】
前駆体組成物は前述した成分にも多様な添加剤を必要に応じて含むことができるが、その例としては、前記シリカ層の任意成分として例示したものと同じ成分を挙げることができる。
【0183】
ただし、前記前駆体組成物が前記潜在性塩基発生剤を含まず、それにより後述するルイス塩基との接触工程が遂行される場合に前記前駆体組成物は、触媒としては前述した酸触媒のみを含み、他の塩基触媒は含まなくてもよい。すなわち、前記ルイス塩基と接触する前記前駆体層は、触媒としては前述した酸触媒のみを含み、塩基触媒は含まなくてもよい。
【0184】
前記前駆体組成物は、例えば、前記シラン化合物と酸触媒を接触させる過程および/または界面活性剤を添加する過程を経て製造することができる。一つの例示で前記前駆体組成物は、前記溶媒およびシラン化合物を混合してシリカ前駆体分散液を製造した後に前記分散液に酸触媒を添加し、引き続き界面活性剤を添加して製造することができる。また、必要な場合に適正な時期に前述した潜在性塩基発生剤をさらに配合することができる。
【0185】
前記で適用されるシラン化合物、溶媒、酸触媒および界面活性剤などの種類は前述した通りであり、これらの比率も前記言及された範囲により調節され得る。また、前記で酸触媒および/または潜在性塩基発生剤の添加は酸触媒および/または潜在性塩基発生剤そのものだけを分散液に添加してもよく、酸触媒および/または潜在性塩基発生剤を適正な溶媒と混合した後にその混合物を添加する方式で添加してもよい。
【0186】
前記前駆体組成物の形成段階は前述した通り、組成物が5以下のpHを有するように遂行され得る。
【0187】
前記のようにシラン化合物と酸触媒の接触を通じて前駆体組成物を形成し、界面活性剤を添加する段階は、80℃以下の温度で遂行され得る。例えば、前記段階は略常温~80℃以下の温度で遂行され得る。
【0188】
本出願では前記のような前駆体組成物をゲル化させてシリカ層を形成する。このようなゲル化段階は前記前駆体組成物が潜在性塩基発生剤を含む場合には、その塩基発生剤を活性化させて塩基を発生させることによって遂行することができ、前記潜在性塩基発生剤を含まない場合には前駆体組成物を適切な塩基と接触させて遂行することもできる。このようなゲル化工程は、基材上で進行され得る。この場合基材としては適切な工程基材や後述する有機膜、高屈折層、ハードコーティング層および反射防止層からなる群から選択されたいずれか一つの機能性層;偏光フィルム、偏光フィルムの保護フィルム、輝度向上フィルム、位相差フィルム、ディスプレイパネルまたはタッチパネルなどであり得る。
【0189】
このようなゲル化工程は前記前駆体組成物を必要に応じて適切な形状に成形した後に遂行してもよい。
【0190】
例えば、前記ゲル化工程前に前駆体組成物を適切な基材上に塗布して前駆体層を形成する段階を遂行できる。前記で塗布は公知の方式、例えば、バーコーティング、コンマコーティング、リップコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングおよび/またはグラビアコーティング方式などの公知の方式で遂行できる。
【0191】
前記で前駆体層が形成される基材の種類は特に制限されず、適切な工程基材あるいは光学フィルムであり得る。本出願の方法では高温の処理がなくとも目的とするシリカ層を形成できるため、通常耐熱性が落ちる高分子素材でなる光学フィルムなどにも直接シリカ層を形成することができる。基材である光学フィルムの種類は特に制限されず、例えば、偏光フィルム、偏光フィルムの保護フィルム、輝度向上フィルムおよび/または位相差フィルムであり得る。また、前記基材は他の例示でディスプレイパネルまたはタッチパネルでもよい。
【0192】
一つの例示で前記基材は一面上に高屈折層、ハードコーティング層および反射防止層のうち少なくとも1種の機能性層が具備された光学フィルムであり得る。具体的に、前記シリカ層は前記基材の機能性層上に形成され得る。
【0193】
一つの例示で前記基材は高分子フィルムであり得、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート;polyethylene terephthalate)フィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート;Polyethylene naphthalate)フィルム、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン;Polyether ether ketone)フィルムおよびPI(ポリイミド;Polyimide)フィルムなどのフィルムが単層または複層の形態で存在する基材であり得る。
【0194】
また、高分子フィルムとしては、例えば、TAC(トリアセチルセルロース;triacetyl cellulose)フィルム;ノルボルネン誘導体などのCOP(シクロオレフィンコポリマー;cyclo olefin copolymer)フィルム;PMMA(ポリ(メチルメタクリレート);poly(methyl methacrylate)等のアクリルフィルム;PC(ポリカーボネート;polycarbonate)フィルム;PE(ポリエチレン;polyethylene)フィルム;PP(ポリプロピレン;polypropylene)フィルム;PVA(ポリビニルアルコール;polyvinyl alcohol)フィルム;DAC(ジアセチルセルロース;diacetyl cellulose)フィルム;Pac(ポリアクリレート;Polyacrylate)フィルム;PES(ポリエーテルスルホン;poly ether sulfone)フィルム;PEEK(ポリエーテルエーテルケトン;polyetheretherketon)フィルム;PPS(ポリフェニルスルホン;polyphenylsulfone)フィルム、PEI(ポリエーテルイミド;polyetherimide)フィルム;PEN(ポリエチレンナフタレート;polyethylenenaphthatlate)フィルム;PET(ポリエチレンテレフタレート;polyethyleneterephtalate)フィルム;PI(ポリイミド;polyimide)フィルム;PSF(ポリスルホン;polysulfone)フィルム;PAR(ポリアリーレート;polyarylate)フィルムまたはフッ素樹脂フィルムなども適用され得る。
【0195】
必要な場合に前記基材には、適切な表面処理が遂行されていてもよい。
【0196】
前記基材は、必要に応じて適切な機能性フィルム、例えば、位相差フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルムや高屈折または低屈折膜のような光学機能性フィルムでもよい。
【0197】
前記過程で塗布の厚さ、すなわち前駆体層の厚さは目的とするシリカ層の厚さにより定められるものであって、特に制限されず、例えば、略200nm~2μmの範囲内の厚さで塗布され得る。
【0198】
必要であれば、前記前駆体層の形成過程で前駆体組成物の塗布後に乾燥などの追加処理が行われ得る。例えば、前記塗布された前駆体組成物を乾燥して溶媒の一部又は全部を除去する段階が遂行され得る。前記乾燥工程は、例えば、略120℃以下、100℃以下または80℃以下の温度で遂行され得る。前記乾燥工程での温度は他の例示で略20℃以上、40℃以上、50℃以上または60℃以上であり得る。一例示によると、前記乾燥段階は、略120℃以下の温度で遂行され得る。前記乾燥温度 は他の例示で略50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上または75℃以上で遂行されるか、約110℃以下、100℃以下、90℃以下または85℃以下程度で遂行されてもよい。また、乾燥時間は略30秒~1時間の範囲内で調節され得、前記時間は55分以下、50分以下、45分以下、40分以下、35分以下、30分以下、25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、5分以下、3分以下または2分以下程度でもよい。
【0199】
前記過程で必要であれば、任意的に前駆体層に対する適切な前処理が遂行されてもよい。例えば、前記前駆体組成物および/または前駆体層にはプラズマ処理などの表面改質工程などが遂行されてもよい。この時プラズマ処理は大気圧プラズマ処理であり得、直接法または間接法で遂行され得る。このようなプラズマ処理はシリカ層の強度改善を助けることができる。
【0200】
前記のような過程を経て形成された前駆体組成物または前駆体層をゲル化してシリカ層を形成することができる。前記でゲル化は前駆体を硬化させる過程であって、この過程によって前記言及したシリカネットワークが形成され得る。このようなシリカネットワーク内には前述した界面活性剤によるミセルによって形成された空隙が存在することができる。
【0201】
前記ゲル化工程は、前駆体組成物または前駆体層が前記潜在性塩基発生剤を含まない場合、前記前駆体組成物または前駆体を前述したルイス塩基であるアミン化合物などと接触させる段階を通じて遂行できる。用語ルイス塩基は、公知とされている通り、非共有電子対を与え得る物質を意味する。本出願では前述した特定の前駆体組成物または前駆体層をルイス塩基と接触させてゲル化してシリカ層を形成することによって、低温でも目的とする物性のシリカ層を形成することができる。
【0202】
前記前駆体層などを前記ルイス塩基と接触させる方式は特に制限されない。例えば、前記前駆体層をルイス塩基内に浸漬させるか、ルイス塩基を前記前駆体層にコーティング、噴霧および/または滴下する方式などを適用することができる。
【0203】
ルイス塩基としては、前述したpKa、沸点(boiling point)、引火点(flash point)および/または常温蒸気圧を有するアミン化合物を使うことができる。
【0204】
このようなアミン化合物は、120℃または120℃以下の温度で液状であり得る。すなわち、前記アミン化合物はそれ自体でも適用され得、水のような、水性溶媒または有機溶媒などと混合されて適用され得る。例えば、前記化合物が120℃またはそれ以下の温度で固相である場合などには、水性または有機溶媒に溶解して使われ得る。前記で使われ得る有機溶媒はN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチルウレア、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)]エーテル、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)、ガンマブチロラクトン(GBL)、およびエクアミド(Equamide M100、Idemitsu Kosan社)のうちいずれか一つ以上が例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0205】
前述した通り前記ルイス塩基を前述した特定前駆体組成物と接触させてゲル化を遂行することによって、目的とする物性のシリカ層を効果的に得ることができる。
【0206】
すなわち、前記のようなルイス塩基との接触によって前記前駆体層のゲル化乃至は硬化反応が誘導され得る。
【0207】
このようなゲル化乃至硬化は低温条件でも進行され得、特に別の処理がなくても効果的に進行され、目的とする物性のシリカ層を形成することができる。一例示で前記ゲル化乃至硬化反応、すなわちルイス塩基との接触は低温、例えば、約120℃以下程度で遂行され得る。前記接触は、一例示で110℃以下、100℃以下、90℃以下または85℃以下で遂行されてもよく、60℃以上、65℃以上、70℃以上または75℃以上程度で遂行されてもよい。
【0208】
このようなゲル化乃至硬化は適正時間の間遂行され得、例えば、略1分~20分または3分~10分程度遂行され得るが、これに制限されるものではない。
【0209】
潜在性塩基発生剤を含む場合に前記接触工程なしに前記シリカ前駆体に熱を印加したり、光を照射して塩基を発生させることによって、前記ゲル化乃至硬化を進行させてシリカ層を形成することができる。
【0210】
前記潜在性塩基発生剤が含まれた場合には、前記ゲル化工程は前記塩基発生剤を活性化させる段階を通じて遂行できる。活性化段階は該当発生剤が塩基性化合物乃至は触媒で転換されるか、あるいは前記化合物乃至触媒を生成する過程を総称する。
【0211】
前記塩基発生剤の活性化段階の具体的な条件は使われた塩基発生剤の種類を考慮して調節され得る。例えば、熱塩基発生剤が適用された場合に前記活性化段階は前記シリカ層が約50℃~250℃の範囲内の温度、約50℃~200℃の範囲内の温度または約50℃~150℃の範囲内の温度で維持されるように熱を印加して遂行され得、光塩基発生剤が適用される場合には前記シリカ層に略300nm~450nmの波長の光を照射して遂行できる。前記で熱の印加は例えば、略1分~1時間の範囲内の時間の間遂行され得、光の照射は略200mJ/cm~3J/cmの強度で遂行できる。
【0212】
本出願では前記のような方式でシリカ層を形成することができる。本出願ではこのような方式でシリカ層を形成した後に任意の洗浄工程などの他の追加工程を遂行することもできる。
【0213】
例えば、前記ゲル化段階に引き続き、残留する界面活性剤を除去する工程をさらに遂行できる。前記段階を遂行する方式は特に制限されず、例えば、適切な水性溶媒(水など)および/または有機溶媒を利用して前記シリカ層を洗浄する方式で前記段階を遂行できる。一例示で前記残留する界面活性剤を除去する段階は、水性溶媒(水など)および/または有機溶媒を利用した超音波洗浄を利用して遂行することができ、このとき、工程温度は略100℃以内の温度で水性溶媒(水など)および/または有機溶媒を加熱して洗浄する方式で調整することができる。
【0214】
低屈折率を得ようとする場合に前記除去は有機溶媒、例えば、アルコール、ケトン溶媒またはアセテート溶媒を使って遂行できる。これを通じてより効果的に目的とする屈折率を達成することができる。このような場合、アルコール溶媒の例には、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、i-ブチルアルコール、n-ブチルアルコールおよび/またはt-ブチルアルコールなどが例示され得、ケトン溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルケトン、メチルイソプロピルケトンおよび/またはアセチルアセトンなどが例示され得、アセテート溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテートおよび/またはブチルアセテートなどが例示され得るがこれに制限されるものではない。
【0215】
前記洗浄工程の温度は特に制限されない。例えば、前記工程は略20℃~100℃の範囲内の温度で遂行され得る。前記温度は他の例示で約25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上または55℃以上であるか、90℃以下、80℃以下、70℃以下または60℃以下であり得る。
【0216】
前記洗浄時間も制限はなく、例えば、約1~100時間の間遂行され得る。前記時間は他の例示で約2時間以上、3時間以上、4時間以上、5時間以上、6時間以上、7時間以上、8時間以上、9時間以上、10時間以上、11時間以上、12時間以上、13時間以上、14時間以上、15時間以上または16時間以上であるか、90時間以下、80時間以下、70時間以下、60時間以下、50時間以下、40時間以下、30時間以下または20時間以下でもよい。
【0217】
本出願の前記方法ではすべての工程が低温工程で進行され得る。すなわち、本出願のすべての工程は後述する低温工程の温度下で遂行され得る。本出願で用語低温工程は、工程温度が約350℃以下、約300℃以下、約250℃以下、約200℃以下、約150℃以下または約120℃以下である工程を意味する。本出願のシリカ層の製造工程はすべての工程が前記温度範囲で遂行され得る。
【0218】
本出願では前記のような低温工程によっても効果的に目的とする物性のシリカ層、例えば、高密度であり高硬度のシリカ層を形成できるため、例えば、連続的でありながらも低価の工程で目的物性のシリカ層を大量に形成することができ、また、高分子フィルムなどのように熱に弱い基材上にも前記シリカ層を直接効果的に形成することができる。前記低温工程で工程温度の下限は特に制限されず、例えば、前記低温工程は約10℃以上、15℃以上、20℃以上または25℃以上で遂行され得る。
【0219】
このような本出願のシリカ層の製造工程はいわゆるロールツーロール(Roll to Roll)工程などによる連続工程でも効果的に進行され得る。
【0220】
また、本出願のシリカ層は、内部に含む空隙によって適切な屈折率特性を有し、これによって、例えば、低反射層などの用途に効果的に使われ得る。
【0221】
本出願は更には前記シリカ層を含む積層体に関する。前記積層体は例えば、前記シリカ層および当該シリカ層と接している有機膜を含むことができる。前記でシリカ層は前記有機膜上に直接形成されたものであり得、したがって前記シリカ層と前記有機膜の間には他の種類の層は存在しなくてもよい。この時適用される有機膜の種類は特に制限されず、例えば、いわゆる高屈折層、ハードコーティング層または反射防止層などとして知られている機能性層や任意に前記機能性層が表面に形成されている光学フィルム、例えば、偏光フィルム、偏光フィルムの保護フィルム、輝度向上フィルムおよび/または位相差フィルムなどやその他高分子フィルムまたはディスプレイパネルまたはタッチパネルなどであり得るが、これに制限されるものではない。
【発明の効果】
【0222】
本出願ではシリカネットワークを主成分に有する膜として、内部に空隙が形成されており、屈折率などを含む光学特性が適切に制御されたシリカ層を高価な装備を使わず、低温の簡単な工程を通じても容易に形成できる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0223】
以下実施例を通じて本出願の範囲をより具体的に説明するが、本出願の範囲は下記の実施例によって制限されるものではない。
【実施例
【0224】
1.スチールウールテスト
スチールウール抵抗度は、下記形成されたシリカ層を25℃の温度および50%の相対湿度に維持した状態でスチールウールを擦って評価した。前記評価過程で肉眼でスクラッチなどの欠陥が観察される時まで荷重を段階的に増加させながら評価を進行させ、その荷重を評価結果で記載した。前記でスチールウールとしてはヨーロッパのBriwax社で販売する等級#0000のスチールウールを利用した。
【0225】
2.反射率評価
反射率は形成されたシリカ層をPET(ポリ(エチレンテレフタレート);poly(ethylene terephthalate))フィルム上に合紙した後に25℃の温度および50%の相対湿度で測定装備(分光光度計;spectrophotometer、コニカ-ミノルタ社、CM-2600D)を使って550nm波長の光を基準として評価した。
【0226】
実施例1.
TEOS(テトラエトキシシラン;tetraethoxy silane)を溶媒であるエタノール(EtOH)と混合し、10分程度撹はんした。引き続き前記混合物に蒸溜水(HO)および塩酸(HCl)を混合した触媒溶液を略5分にかけてゆっくり滴下して撹はんした。前記滴下後に別途の冷却や恒温維持なしに略18時間の間さらに撹はんした。撹はん後にpHは略2~5の水準であった。前記で混合された成分の比率は略36.14:92.14:104.17:3.65(重量比率:蒸溜水:TEOS:エタノール:塩酸)程度であった。
【0227】
添加されたTEOSがすべて100%反応したと仮定して計算する場合に、前記混合物内でシリカ固形分の含量は略11.25重量%程度と計算され得る。前記得られた混合物に界面活性剤として、CTAB(臭化セチルトリアンモニウムcetyl triammonium bromide、C16;Aldrich)を前記計算された固形分含量100重量部に対して50重量部の割合で混合して前駆体組成物を得た。
【0228】
その後、ガラス基材上に前記前駆体組成物をバーコーティング方式で略1μm程度の厚さに塗布し、80℃程度のオーブンで1分程度の間乾燥して前駆体層を形成した。
【0229】
得られた前駆体層を約80℃でトリオクチルアミン(TOA)に5分程度浸漬して約120nm厚さのシリカ層を形成した。形成されたシリカ層を約40℃程度の流れる水で3分程度洗浄し、80℃オーブンで2分程度乾燥した後に反射率(下記の表1の反射率1)を測定し、残留界面活性剤の除去のために、50℃のエタノールを利用して1時間の間洗浄した後再び反射率を測定した(下記の表1の反射率2).前記形成されたシリカ層の物性評価結果は下記の表1に整理した。
【0230】
実施例2~11
下記の表1のように界面活性剤の種類および比率を制御したことを除いては実施例1と同様にしてシリカ層を製造したし、その結果も下記の表1に整理した。
【0231】
【表1】
【0232】
実施例12~20
下記の表1のように界面活性剤の種類および比率とシリカ層の厚さおよび界面活性剤の洗浄条件を制御したことを除いては実施例1と同様にしてシリカ層を製造し、その結果も下記の表2に整理した。
【0233】
【表2】