(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】クリームコロッケ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20220221BHJP
A23L 11/45 20210101ALN20220221BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L11/45 Z
(21)【出願番号】P 2018029286
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】照屋 望美
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-131372(JP,A)
【文献】特開昭63-181984(JP,A)
【文献】特開昭51-076452(JP,A)
【文献】特開昭53-069847(JP,A)
【文献】特開昭59-059169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 35/00
A23L 11/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させ、凝固物を流動化してなる豆腐様流動性食品であって、豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01~0.07質量部である前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上含むクリームコロッケ
であって、前記豆腐様流動性食品の粘度が、300cp以上4000cp以下(品温15℃、C型粘度計、ローターNo.3、回転速度20rpm)である、前記クリームコロッケ。
【請求項2】
豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、
豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、
前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び
前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する工程
を含む、クリームコロッケの製造方法
であって、前記豆腐様流動性食品の粘度が、300cp以上4000cp以下(品温15℃、C型粘度計、ローターNo.3、回転速度20rpm)である、前記クリームコロッケの製造方法。
【請求項3】
豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、
豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、
前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上添加する工程
を含む、クリームコロッケのパンク防止方法
であって、前記豆腐様流動性食品の粘度が、300cp以上4000cp以下(品温15℃、C型粘度計、ローターNo.3、回転速度20rpm)である、前記クリームコロッケのパンク防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームコロッケ及びその製造方法に関する。またクリームコロッケのパンク防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホワイトソース等のソース具材を揚げ種の主要な具材とするクリームコロッケは、衣のサクサクとした香ばしい食感と中身のホワイトソースの滑らかでクリーミーな食感とが絶妙に調和したものであり、広く好まれている食品の一つである。しかしながら、主要具材であるホワイトソースは、水分含量が高いため、フライ中にその水分が気化して膨張し、クリームコロッケの衣がパンクするという問題があった。
各種コロッケ類、カツ類等のフライ食品では、中具を十分に加熱し且つ衣の程よい色付き(良好な狐色の揚げ色)を得るため、170℃~180℃で5~6分間フライする。これらのフライ食品は、油に入れた直後はフライ鍋などの底に沈むが、3~4分のフライ時間で浮上し、5~6分間のフライ時間で良好な狐色の揚げ色となる。この浮上は衣に含まれる水分と中具に含まれる水分とが気化して比重が軽くなることで起こり、中具が十分に加熱された目安となる。
しかしながら一般的なクリームコロッケでは、浮上するまでフライすると、同時にパンクの可能性も高まるため、パンクする前にフライを終了することが多く、例えば業務用クリームコロッケなどでは、170℃~180℃で2~3分間程度の比較的短いフライ時間を推奨しており、揚げ色も淡い狐色にとどまるものであった。
クリームコロッケのパンクを予防するために、具材の水分含量を下げる、衣を厚くする等の方法を取り得るが、いずれも食感が損なわれるという問題点があった。またフライ温度でゲル化するゲル化剤をソース具材に添加することによってパンクを防止する方法として、特許文献1には、ホワイトソース具材中に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを1.0~5.0質量%含有するクリームコロッケ、特許文献2には、アルギン酸ナトリウム、塩類及び増粘多糖類を含有する中種組成物等が開示されているが、ホワイトソースに粘性物質を添加するために食感が損なわれるという問題があった。
また一方で、近年、肥満や糖尿病などの生活習慣病の増加が大きな社会問題となっているが、その大きな原因の一つとして食習慣の変化に伴った脂質や糖質の過剰摂取が上げられる。この対策の一つとして、食品の低糖質化及び低脂質化が検討され、数多くのそのような食品が市場に流通するようになってきた。ホワイトソースには小麦粉や澱粉等の糖質源、乳やショートニング等の油脂類が含まれているため、クリームコロッケにおいても低糖質化及び低脂質化が要望されている。
このような近年のヘルシー嗜好から、大豆加工品を使用した揚物類が提供されている。例えば、特許文献3には豆腐成分を50~95重量%、澱粉質成分を1~5重量%を含有することを特徴とする豆腐コロッケ、特許文献4には豆腐製造工程で排出された生おからに対して、水を20~150重量%加えた状態で粉砕処理されたおからを使用したコロッケ等が開示されている。しかしながら、このような豆腐やおからを揚げ種の原料に使用すると、その食感のためにボソつきやザラつきがあり、クリームコロッケのように滑らかな食感とは大きく異なるものであった。
また特許文献5には所定量の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を所定量の酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させることでザラつきがなく滑らかな食感をしており、静置保存、ソース等への加熱加工処理及び加熱加工処理後の凍結解凍をしても離水しがたく食感が損なわれない豆腐様流動性食品が開示されているが、揚げ種の原料として使用した例は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-154578
【文献】特開2003-245059
【文献】特開2004-344010
【文献】特開2004-313193
【文献】特願2016-241450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主要具材として低糖質及び低脂質素材である豆乳を使用し、フライ中にパンクすることがなく、フライ後、時間が経っても中具が固まることなく滑らかな食感を維持する事ができるクリームコロッケを提供する。また、クリームコロッケのパンク防止方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題を解決する為鋭意研究を重ねた結果、クリームコロッケの揚げ種として、多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させ、凝固物を流動化してなる豆腐様流動性食品であって、豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01~0.07質量部である前記豆腐様流動性食品をホワイトソース具材中に25質量%以上使用することにより、フライ中にパンクすることがなく、フライ後、時間が経っても中具が固まることなく滑らかな食感を維持する事ができることを見いだし、上記課題を解決した。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させ、凝固物を流動化してなる豆腐様流動性食品であって、豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01~0.07質量部である前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上含むクリームコロッケ。
[2]豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する工程を含む、クリームコロッケの製造方法。
[3]豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上添加する工程を含む、クリームコロッケのパンク防止方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、衣の程よい色付きが得られるフライ時間(目安として170℃~180℃で5~6分間)以上フライしてもパンクせず、フライ後、時間が経っても中具が固まることなく滑らかな食感を維持する事ができるクリームコロッケを提供することができる。本発明のクリームコロッケは、小麦粉や澱粉等の糖質源、乳やショートニング等の油脂類が含まれているホワイトソースを揚げ種の主要原料とする従来のクリームコロッケと比較して低糖質及び低脂質である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のクリームコロッケは、多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させ、凝固物を流動化してなる豆腐様流動性食品であって、豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01~0.07質量部である前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上含むことを特徴とする。
【0008】
本発明において「クリームコロッケ」とは、豆腐様流動性食品を含むソース具材を含む揚げ種に衣付けした後に油ちょうしたものを言う。
【0009】
本発明において「ソース具材」とはクリームコロッケの揚げ種のうち、玉ねぎ、コーンなどの野菜や、カニ、エビ、ホタテなどの魚介類、鶏肉、牛肉、豚肉などの肉類に例示されるような固体の具材以外のソース状の部分を指す。本発明においてソース具材は豆腐様流動性食品を含み、その他ホワイトソース、牛乳などを含んでも良い。
【0010】
本発明において「豆腐様食品」とは豆乳を含む溶液を凝固剤で凝固したものであり、「豆腐様流動性食品」とは豆腐様食品を流動化した食品をいう。
本発明において、豆乳を含む溶液を凝固剤で凝固する工程は、例えば豆乳に、後述する塩基性物質を添加して分散機等を使用して撹拌均一化し、さらに後述する酸凝固剤及び/又は塩凝固剤を添加して分散機等を使用して撹拌均一化した後、混合物を容器等に流しいれ、90~95℃で10~20分静置することにより行うことができる。塩基性物質及び凝固剤の添加中に豆乳の凝固反応が進行しないように、塩基性物質及び凝固剤の添加工程は、豆乳の温度を室温近く(10~25℃)に保ちながら行うことが好ましい。
本発明において、豆腐様食品を流動化する工程は、流動状にできればどのような手段で行っても構わないが、例えば豆腐様食品をミキサーなどで物理的に撹拌することにより行うことができる。具体的には、市販のジュースミキサーで5~20秒攪拌することにより行うことができる。
【0011】
本発明において、豆腐様流動性食品の粘度は、適宜調整することができる。なお、流動化工程の条件を一定にした場合の豆腐様流動食品の粘度は豆乳中の大豆タンパク質の凝固の程度の目安となる。市販されているジューサーミキサーを使用し、15秒攪拌することにより流動化工程を行った場合、品温を15℃に保ち、C型粘度計で計測した場合の粘度は好ましくは300cp以上4000cp以下、さらに好ましくは、1000~3000cpである。粘度が300cp以上4000cp以下の範囲であれば、冷凍解凍時に利水が生じにくく、ボソツキやざらつきが生じにくい。
【0012】
本発明において「豆乳」とは浸漬大豆に加水して湿式粉砕及び均質化処理して生呉とするか、大豆粉砕物に加水後適当な時間放置して生呉とし、必要に応じてタンパク質濃度の調節を目的として生呉を加熱処理し、次いで固液分離によりオカラを除去して製造される液のことを言う。
【0013】
本発明において「豆乳」は大豆又は大豆粉砕物の何れを原料として調製してもよい。豆乳を大豆から調製する場合、十分に浸漬させた大豆に4~6倍容量の水を加えて湿式粉砕し、必要に応じて均質化処理して生呉とし、そのままおからを絞り取って、又は、数分程度焦げないように攪拌しながら煮沸した後におからを絞り取って調製することができる。豆乳を大豆粉砕物から調製する場合、大豆粉砕物に5~8倍容量の水を加え1~2時間放置してからおからを絞り取って、又は、数分程度焦げないように攪拌しながら煮沸した後おからを絞り取って調製することができる。この様にして調製される豆乳は、市販の豆乳も含め何れも本発明の原料として使用することができる。
【0014】
本発明においては豆乳の大豆固形分濃度は特に限定されるものではない。JAS規格では、豆乳は大豆固形分が8%以上、調製豆乳が6%以上、豆乳飲料が4%以上と規定されているが、これに拘束されない。本発明に使用する豆乳のBrixは、好ましくは5~17、さらに好ましくは8~14、より好ましくは11~13である。豆乳の大豆固形分濃度が5質量%未満であっても本発明の効果は得られるが、豆乳の風味が弱くなる傾向にある。豆乳の大豆固形分濃度が17質量%を超えると、固形の浮遊物が生じ易く食感を損なう傾向にある。
【0015】
豆乳の大豆固形分濃度は適宜調製することができる。大豆固形分濃度が低い場合には、例えば特開平09-248128や特開2006―136298等に記載されている濃縮方法及び公知の濃縮方法により所望の大豆固形分濃度に調製することができる。また豆乳の大豆固形分濃度が高い場合には、水で希釈することにより所望の大豆固形分濃度に調製することができる。なお、豆乳の大豆固形分濃度は、糖用屈折計(例えば株式会社アタゴ社製 MASTER 53T Brix0.0-53.0%)を用いて簡易的に測定することができ、その標準関係式は「豆乳の大豆固形分濃度=糖用屈折計示度(Brix)×0.93」である。本発明では、大豆固形分濃度として換算係数0.93を乗じないBrixで表記する。
【0016】
本発明において「塩基性物質」は、多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質である。本発明において塩基性物質としては、食品に使用可能な多価酸のアルカリ金属塩または多価酸のアンモニウム塩であって、水溶液が塩基性を示すものであれば特に制限なく使用することができる。本発明において塩基性物質は、豆乳に添加して豆乳をアルカリ性にすることにより酸凝固剤による凝固速度を遅延させることができる。またアルカリ金属塩およびアンモニウム塩は1価カチオンであるから、塩凝固剤に含まれる2価カチオンと豆乳蛋白質との架橋凝固を拮抗的に抑制させることができる。本発明において多価酸の例としては炭酸、リン酸、ピロリン酸などが挙げられる。本発明において塩基性物質は、炭酸水素塩、リン酸水素塩、ピロリン酸塩であることが好ましく、例えば重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、ピロリン酸4ナトリウム、ピロリン酸4カリウムなどの単塩又は混合したものを使用することができる。さらに好ましくは重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウムであり、最も好ましくは重曹(炭酸水素ナトリウム)である。
本発明において塩基性物質は、豆乳100質量部に対して0.01~0.07質量部添加することができる。好ましくは0.03~0.06質量部、さらに好ましくは0.03~0.05質量部添加することができる。0.01~0.07質量部では、凝固剤による豆乳の大豆蛋白の凝固力の緩和の程度が適度であって、適度な粘度となり、なめらかな食感となる。また、加熱中にガスが発生して豆乳に泡立ちが生じるといったことがなく、豆腐様食品を製造する上で好ましい作業性を有する。
【0017】
本発明において、「凝固剤」は酸凝固剤及び/又は塩凝固剤である。塩凝固剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、乳酸カルシウム等の二価カチオン塩又はニガリを例示することができる。酸凝固剤としては、グルコノデルタラクトン(GDL)、乳酸、リンゴ酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸を例示することができる。
凝固剤の添加量は、使用する凝固剤の種別によって適宜変更することができるが、豆乳100質量部に対して好ましくは0.08質量部以上添加することができる。より好ましくは0.08~0.5質量部である。凝固剤の添加量が0.08質量部未満では、大豆タンパク質の凝固が起こりにくくなり、粘度が低くなる傾向にある。凝固剤の添加量が0.5質量部を超えると、添加量に依存して凝固剤の異味(エグミ、苦味、酸味)が感じられる傾向にある。
【0018】
本発明において、塩基性物質を含む豆乳にさらに塩化ナトリウムを添加することができる。塩化ナトリウムの添加により豆乳の凝固剤による凝固が遅延緩和され、よりザラつきのない滑らかな食感になる。塩化ナトリウムの添加量は特に限定されないが、好ましくは豆乳100質量部に対して0.05~1.5質量部添加する。
【0019】
本発明における前記豆腐様流動性食品において、食品に利用される改質剤であれば何れも使用可能である。澱粉(食用の澱粉及びその変性澱粉)、タンパク質(大豆タンパク質等)、酵素製剤(トランスグルタミナーゼ等)、増粘多糖類(キサンタンガム、ローカストビーンガム等)、糖類(単糖、2糖、オリゴ糖、デキストリン等)、油脂類、乳化油脂類、食物繊維(おからやふすま等の天然繊維質、結晶セルロース等の精製繊維質、難消化性澱粉等の加工繊維質)乳化剤、香料など、本発明の品質を損なわない程度で添加することができる。
【0020】
本発明のクリームコロッケは、前記豆腐様流動性食品をソース具材中に25質量%以上含むことを特徴とする。好ましくは前記豆腐様流動性食品をソース具材中に40質量%以上含み、より好ましくは前記豆腐様流動性食品をソース具材中に45質量%以上95質量%未満含む。前記豆腐様流動性食品をソース具材中に25質量%以上含むことで、得られるクリームコロッケを衣の程よい色付きが得られるフライ時間(目安として170℃~180℃で5~6分間)以上フライしてもパンクしないようにすることが出来、フライ後、時間が経っても中具が固まることなく滑らかな食感を維持する事ができる。
【0021】
本発明のクリームコロッケにおいて、揚げ種に含まれる豆腐様流動性食品を含むソース具材以外の原料として、本発明の効果を損なわない範囲で、スイートコーン、グリーンピース、ダイスカットした根菜類等の茹で野菜;ほうれん草、ケール等の葉野菜乾燥粉末;大豆蛋白、緑豆蛋白、卵白粉、卵黄粉、乳蛋白等の蛋白質素材;動物油脂、植物油脂、硬化油脂、粉末油脂等の油脂類;タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉等の澱粉類;澱粉類を化学的、物理的、酵素的に変性させた変性澱粉;キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸塩、寒天、セルロース誘導体等の増粘剤;砂糖等の糖類;食塩等の無機塩類;甘味料;香辛料;調味料;色素;香料等の副原料や添加物を使用することができる。
【0022】
本発明のクリームコロッケの製造方法は、豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、前記塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する工程を含む。
【0023】
本発明のクリームコロッケの製造方法は、豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程を含み、塩基性物質は、好ましくは豆乳100質量部に対して0.03~0.06質量部、さらに好ましくは0.03~0.05質量部添加することができる。豆乳に塩基性物質を添加する工程は、豆乳に塩基性物質を添加して分散機等を使用して撹拌均一化することによって行うことができる。塩基性物質の添加中に豆乳の凝固反応が進行しないように、塩基性物質を添加する工程中は、豆乳の温度を室温近く(10~25℃)に保ちながら行うことが好ましい。
【0024】
本発明のクリームコロッケの製造方法において、豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させる工程は、例えば前述の塩基性物質を含む豆乳に、酸凝固剤及び/又は塩凝固剤を添加して分散機等を使用して撹拌均一化した後、混合物を容器等に流しいれ、90~95℃で10~20分静置することにより行うことができる。凝固剤の添加中に豆乳の凝固反応が進行しないように、凝固剤を添加する工程中は、豆乳の温度を室温近く(10~25℃)に保ちながら行うことが好ましい。
【0025】
本発明のクリームコロッケの製造方法において、凝固物を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程は流動状にすることができればどのような手段で行っても構わないが、例えば凝固物をミキサーなどで物理的に撹拌することにより行うことができる。具体的には、市販のジュースミキサーで5~20秒攪拌することにより行うことができる。
【0026】
本発明のクリームコロッケの製造方法は、前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する工程を含む。好ましくは前記豆腐様流動性食品をソース具材中に40質量%以上使用し、より好ましくは前記豆腐様流動性食品をソース具材中に45質量%以上95質量%未満使用する工程を含む。前記豆腐様流動性食品をソース具材中に25質量%以上使用することで、得られるクリームコロッケを衣の程よい色付きが得られるフライ時間(目安として170℃~180℃で5~6分間)以上フライしてもパンクしないようにすることが出来、フライ後、時間が経っても中具が固まることなく滑らかな食感を維持する事ができる。
本発明のクリームコロッケの製造方法は、上記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する以外は標準的なクリームコロッケと同様の方法に従って製造することが出来る。
例えばソース具材を含む揚げ種を冷蔵庫又は冷凍庫で冷却又は凍結して固体化し、定法のフライ食品の製造と同様に揚げ種に打ち粉、バッター、パン粉等を付着させた後、170~185℃程度で数分間フライすることによりクリームコロッケを製造することができる。
【0027】
本発明のクリームコロッケのパンク防止方法は、豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、前記塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する工程を含む。
【0028】
本発明のクリームコロッケのパンク防止方法は、豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程を含み、塩基性物質は、好ましくは豆乳100質量部に対して0.03~0.06質量部、さらに好ましくは0.03~0.05質量部添加することができる。豆乳に塩基性物質を添加する工程は、豆乳に塩基性物質を添加して分散機等を使用して撹拌均一化することによって行うことができる。塩基性物質の添加中に豆乳の凝固反応が進行しないように、塩基性物質を添加する工程中は、豆乳の温度を室温近く(10~25℃)に保ちながら行うことが好ましい。
【0029】
本発明のクリームコロッケのパンク防止方法において、豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させる工程は、例えば前述の塩基性物質を含む豆乳に、酸凝固剤及び/又は塩凝固剤を添加して分散機等を使用して撹拌均一化した後、混合物を容器等に流しいれ、90~95℃で10~20分静置することにより行うことができる。凝固剤の添加中に豆乳の凝固反応が進行しないように、凝固剤を添加する工程中は、豆乳の温度を室温近く(10~25℃)に保ちながら行うことが好ましい。
【0030】
本発明のクリームコロッケのパンク防止方法において、凝固物を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程は流動状にすることができればどのような手段で行っても構わないが、例えば凝固物をミキサーなどで物理的に撹拌することにより行うことができる。具体的には、市販のジュースミキサーで5~20秒攪拌することにより行うことができる。
【0031】
本発明のクリームコロッケのパンク防止方法は、前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上添加する工程を含む。
なお本発明において「クリームコロッケのパンク防止」とは、一般的なクリームコロッケの製造において、衣の程よい色付きが得られるフライ時間(目安として170℃~180℃で5~6分間)以上フライしてもパンクしないようにすることを言う。
【0032】
本発明のクリームコロッケのパンク防止方法において、好ましくは前記豆腐様流動性食品をソース具材中に40質量%以上添加し、より好ましくは前記豆腐様流動性食品をソース具材中に45質量%以上95質量%未満添加する。前記豆腐様流動性食品をソース具材中に25質量%以上添加することで、得られるクリームコロッケを衣の程よい色付きが得られるフライ時間(目安として目安として170℃~180℃で5~6分間)以上フライしてもパンクしないようにすることが出来る。
本発明のクリームコロッケのパンク防止方法は、上記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上添加する以外は標準的なクリームコロッケの製造方法に従ってクリームコロッケを製造することによりクリームコロッケのパンクを防止することが出来る。
【実施例】
【0033】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
[製造例1(豆乳の製造)]
(1)洗浄した100質量部の大豆を水に浸漬し、吸水して膨潤した浸漬大豆230質量部を得た。
(2)浸漬大豆100質量部に水200質量部を加え、湿式粉砕、次いで均質化して生呉を得た。
(3)生呉を98℃で10分間加熱した後、圧搾ろ過によりオカラを除去して豆乳を得た。
なお得られた豆乳は、使用するまで冷蔵保管した。
【0035】
[製造例2 豆腐様流動性食品]
(1)Brix11に調製した豆乳100質量部に重曹0.01質量部を混合し、分散機(スリーワンモータ TYPE HEIDOn 3000H)を用いて回転速度300rpmで攪拌均質化した。
(2)凝固剤である塩化マグネシウム0.15質量部を重曹含有豆乳に添加し、更に20秒攪拌均質化した。なお、工程(1)と(2)は、豆乳の凝固が進行しないように品温(中心温度)15℃で行った。
(3)200ml容量の充填容器に投入し、92℃で15分間静置して凝固させた。
(4)得られた豆乳凝固物を家庭用ジューサーミキサーに投入し、15秒間攪拌混合して豆腐様流動性食品を得た。
【0036】
[製造例3 クリームコロッケの揚げ種及びクリームコロッケ様食品の製造]
下記表1の配合に従い、以下手順でクリームコロッケの具材を製造した。
(1)油1.5質量部をひいて熱したフライパンにみじん切りにした玉ねぎ15質量部を投入し、玉ねぎが半透明になるまでいためた。
(2)豆腐様流動性食品と粉末原料をミキサー(Stephan社製UMC5)に投入し、均一になるまで撹拌混合した。
(3)工程(2)で得られた撹拌混合物をホールコーンと共にフライパンに投入し、ひと煮立ちするまで加熱混合した。
(4)粗熱を取った後、縦6cm横4cmの樹脂製容器に40gずつ充填し、急速冷凍してクリームコロッケ様食品の揚げ種とした。
(5)工程(4)で得られた冷凍揚げ種に打ち粉(日本製粉社製F910)をまぶし、バッターミックス(日本製粉社製B2467)を水溶きしたバッター液にくぐらせ、パン粉(日本製粉社製NF白生パン粉・中目)を付着させてクリームコロッケ様食品を得た。
(6)得られたクリームコロッケ様食品5個を175℃に加温したサラダ油に投入し、6分間フライしてフライ済みクリームコロッケ様食品を得た。
【表1】
植物性たんぱくは大豆たんぱく(不二製油社製サンラバー10)、増粘剤はヒドロキシプロピルタピオカ澱粉(カーギルジャパン社製C☆CreamTex75750)である。
【0037】
[評価例1 豆腐様流動性食品の粘度測定]
豆腐様流動性食品の粘度は、品温を15℃に保ち、ローターNo.3を装着したC型粘度計(TOKI SANGYO社製のVISCOMETER、MODEL TVC-7)を用いて回転速度20rpmで測定した。なお、製造例2で使用した豆乳の粘度は、ローターNo.2を装着したC型粘度計で同様に測定したところ、44cpであった。豆乳のBrixにもよるが、豆乳の粘度は概ね20~50cp程度である。
【0038】
[評価例2 パンク時間の測定]
製造例3で得られたクリームコロッケ様食品5個を175℃に加温したサラダ油に投入し、衣の一部が破裂して具材が噴出するまでの平均時間を測定した。なお、標準的なクリームコロッケをパンクさせることなくフライしようとする場合、フライ時間は2~3分間(120~180秒間)程度であり、この場合浮上せず、揚げ色は淡い狐色に仕上がる。
【0039】
[評価例3 食感評価]
製造例3で得られたフライ済みクリームコロッケ様食品のフライ直後(6分間フライした後あら熱を取ったもの)及び3時間後(6分間フライした後3時間室温で放置したもの)の食感を、10名の熟練パネラーにより、下記表2に示す評価表に従って評価した。なお、市販のクリームコロッケ(万星食品社製)を指定のフライ目安時間である2分30秒間フライしたフライ済みクリームコロッケを評点3点とした。なお、2分30秒間フライした市販のクリームコロッケは、淡い狐色であり、浮上することはなかった。
【表2】
【0040】
[試験例1 重曹、凝固剤の添加量の検討]
豆乳100質量部に対する重曹の添加量、凝固剤の種別、凝固剤の添加量を表3に記載の通りにした以外は製造例2及び3に従ってフライ済みクリームコロッケ様食品を得た。 対照例1では豆腐様流動性食品に代えて市販のホワイトソース(ハインツ日本社製ホワイトソース)を使用した以外は製造例3に従ってフライ済み食品を得た(対照例は標準的なクリームコロッケである)。評価例1及び2に従って評価し、結果を表3に記載した。
【表3】
本願所定の量の重曹と凝固剤を含む実施例1~5では、3~4分程度で浮上し、パンクするまでのフライ時間が360秒以上であり、揚げ色は良好な狐色をしており、フライ直後(6分間フライした後あら熱を取ったもの)の食感は滑らかでとろみのある良好な食感であった。またこの結果は凝固剤の種別によって変化しなかった。比較例1及び2、対照例1及び2では、360秒以内且つ浮上前にパンクしたため、食感評価を行わなかった(対照例2の括弧書き食感評価点は、2分30秒間フライした際の基準例である)。比較例3では、豆腐感が強く、ザラつきがあり不適であった。また、フライ後、3時間経過した実施例1~5のクリームコロッケ様食品の食感評価を行ったところ、滑らかさととろみは維持されていた。フライ後、3時間経過した対照例2の基準例では、中具のとろみがあまり感じられなくなり、ザラつきが生じた。
【0041】
[試験例2 クリームコロッケの具材における豆腐様流動性食品配合量の検討]
実施例4の配合で製造した豆腐様流動性食品と市販のホワイトソースとを表4記載の割合で混合した混合物100質量部に対し、外割で配合表の粉末原料を添加した以外は製造例3に従ってクリームコロッケ様食品(玉ねぎ、ホールコーンなし)を製造し、パンク時間を測定した。結果を表4に示す。
【表4】
その結果、本発明の豆腐様流動性食品は、ソース具材中に本願所定量の範囲で添加することで、いずれも充分に揚げ色が付く360秒を遙かに超えるパンク時間を示し、パンク防止剤として有効であることが示された。