(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】硬化膜の製造方法、硬化膜、固体撮像素子および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/16 20060101AFI20220221BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220221BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20220221BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220221BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20220221BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220221BHJP
C08F 265/00 20060101ALI20220221BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220221BHJP
H01L 41/193 20060101ALI20220221BHJP
H01L 41/107 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
G03F7/16
B05D7/24 302Z
B05D7/24 303A
B05D1/02 Z
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
C08F2/44 Z
C08F265/00
G03F7/004 505
H01L41/193
H01L41/107
(21)【出願番号】P 2019174573
(22)【出願日】2019-09-25
(62)【分割の表示】P 2017544531の分割
【原出願日】2016-10-05
【審査請求日】2019-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2015201581
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】久保田 誠
(72)【発明者】
【氏名】浜田 大輔
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-169556(JP,A)
【文献】特開2013-232665(JP,A)
【文献】特開2012-062446(JP,A)
【文献】特開2012-098688(JP,A)
【文献】特開2002-371204(JP,A)
【文献】特開2015-102792(JP,A)
【文献】特開2011-133670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、重合開始剤と、重合性化合物と、バインダーポリマーと、溶剤と、を含有する硬化性組成物を用いて得られ、基板上に形成される硬化膜であって、
前記硬化性組成物中
の着色顔料の含有量が、前記硬化性組成物中の全固形分に対して、20~80質量%であり、
前記基板側にある前記硬化膜の第1面から、前記第1面に対向する前記硬化膜の第2面に向って、前記硬化膜の厚みの10%となる位置の空隙率をA1とし、
前記第2面から前記第1面に向って前記硬化膜の厚みの10%となる位置の空隙率をA2とした場合において、
前記A1と前記A2とが、A1<A2の関係を満たす、硬化膜。
【請求項2】
前記A1が、0.001%以上3%未満である、請求項1に記載の硬化膜。
【請求項3】
前記A2が、0.1%以上30%未満である、請求項1または2に記載の硬化膜。
【請求項4】
前記硬化膜の前記第2面における表面粗さRaが、0.1~1.2μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項5】
前記硬化膜が、少なくとも2以上の層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項6】
前記着色剤が、黒色顔料である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項7】
前記黒色顔料が、カーボンブラック、チタンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化マンガンおよびグラファイトからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項6に記載の硬化膜。
【請求項8】
前記黒色顔料が、カーボンブラックおよびチタンブラックのうちの少なくとも1種を含む、請求項7に記載の硬化膜。
【請求項9】
前記硬化膜が、第1膜と、前記第1膜上に形成された第2膜と、を有し、前記第1膜と前記第2膜とが同一の前記硬化性組成物を用いて得られ、
前記第1膜が前記空隙率A1となる位置を含み、前記第2膜が前記空隙率A2となる位置を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項10】
遮光膜として用いられる、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項11】
カラーフィルタとして用いられる、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化膜を有する、固体撮像素子。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化膜を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化膜の製造方法、硬化膜、固体撮像素子および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置は、撮影レンズと、この撮影レンズの背後に配されるCCD(電荷結合素子)およびCMOS(相補性金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子と、この固体撮像素子が実装される回路基板とを備える。この固体撮像装置は、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話、スマートフォン等に搭載される。
固体撮像装置においては、可視光の反射によるノイズが生じる場合がある。そのため、固体撮像装置内に所定の遮光膜を設けることが広く行われている。このような遮光膜は、例えば、チタンブラック等の黒色顔料を含有する硬化性組成物(感光性組成物)を用いて形成される。
このような感光性樹脂組成物を用いた成膜方法としては種々の方法が知られており、例えば、特許文献1には、硬化性組成物(黒色重合性組成物)をスプレーにより塗布する工程を経て硬化膜(黒色硬化膜)を製造する方法が開示されている(請求項8、9等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、固体撮像装置の小型化や薄型化、高感度化に伴い、遮光膜のより一層の低反射化や、硬化膜(遮光膜)の形成時のリソグラフィー性能のより一層の向上が求められている。しかしながら、硬化性組成物をスプレーにより塗布した場合、得られる硬化膜の反射率およびリソグラフィー性能が不十分な場合があり、近年求められる性能を必ずしも満足するものではなかった。
具体的には、発明者等が特許文献1の記載を参考にして、スプレー法による一の条件のみを用いて単一の層からなる硬化膜を作製したところ、得られた硬化膜の反射率およびリソグラフィー性能が不十分であり、さらなる改良が必要であることを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、反射率が低く、リソグラフィー性能に優れた硬化膜の製造方法、硬化膜、ならびにこれを有する固体撮像素子および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、硬化膜を製造する場合において、第1塗膜を形成する際の着弾サイズD1と、第2塗膜を形成する際の着弾サイズD2との比が所定範囲内にあることで、所望の性能が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
[1]
着色剤と、重合開始剤と、重合性化合物と、バインダーポリマーと、溶剤と、を含有する硬化性組成物を用いた硬化膜の製造方法であって、
着弾サイズがD1となるように上記硬化性組成物をスプレー塗布して第1塗膜を形成する第1工程と、
着弾サイズがD2となるように上記硬化性組成物をスプレー塗布して第2塗膜を形成する第2工程と、
硬化処理を実施して硬化膜を形成する工程と、
を有し、
上記D1と上記D2とがD1>D2の関係を満たし、かつ、上記D1と上記D2との比D1/D2が5~150である、硬化膜の製造方法。
[2]
上記第2工程が、上記第1工程の後に実施される、上記[1]に記載の硬化膜の製造方法。
[3]
上記第1工程の上記スプレー塗布に用いるスプレー装置のノズルの先端と被塗布面との距離L1が、上記第2工程の上記スプレー塗布に用いる上記スプレー装置のノズルの先端と被塗布面との距離L2よりも小さい、上記[1]または[2]に記載の硬化膜の製造方法。
[4]
上記距離L1が5cm未満であり、上記距離L2が10cm超である、上記[3]に記載の硬化膜の製造方法。
[5]
上記D2が1~30μmである、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の硬化膜の製造方法。
[6]
上記D2が1~10μmである、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の硬化膜の製造方法。
[7]
着色剤と、重合開始剤と、重合性化合物と、バインダーポリマーと、溶剤と、を含有する硬化性組成物を用いて得られ、基板上に形成される硬化膜であって、
上記基板側にある上記硬化膜の第1面から、上記第1面に対向する上記硬化膜の第2面に向って、上記硬化膜の厚みの10%となる位置の空隙率をA1とし、
上記第2面から上記第1面に向って上記硬化膜の厚みの10%となる位置の空隙率をA2とした場合において、
上記A1と上記A2とが、A1<A2の関係を満たす、硬化膜。
[8]
上記A1が、0.001%以上3%未満である、上記[7]に記載の硬化膜。
[9]
上記A2が、0.1%以上30%未満である、上記[7]または[8]に記載の硬化膜。
[10]
上記硬化膜の上記第2面における表面粗さRaが、0.1~1.2μmである、上記[7]~[9]のいずれか1つに記載の硬化膜。
[11]
上記硬化膜が、少なくとも2以上の層を有する、上記[7]~[10]のいずれか1つに記載の硬化膜。
[12]
遮光膜として用いられる、上記[7]~[11]のいずれか1つに記載の硬化膜。
[13]
カラーフィルタとして用いられる、上記[7]~[11]のいずれか1つに記載の硬化膜。
[14]
上記[7]~[11]のいずれか1つに記載の硬化膜を有する、固体撮像素子。
[15]
上記[7]~[11]のいずれか1つに記載の硬化膜を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、反射率が低く、リソグラフィー性能に優れた硬化膜の製造方法、硬化膜、ならびにこれを有する固体撮像素子および画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の硬化膜の製造方法の一例を段階的に示す説明図である。
【
図1B】本発明の硬化膜の製造方法の一例を段階的に示す説明図である。
【
図2】第1実施形態の固体撮像装置を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の固体撮像装置の分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態の固体撮像装置を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態の固体撮像装置を示す断面図である。
【
図6】第3実施形態の固体撮像装置を示す断面図である。
【
図7】第4実施形態の固体撮像装置を示す断面図である。
【
図8】実施例におけるスプレー装置を用いた塗膜の形成方法を説明する上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の硬化膜の製造方法、硬化膜、ならびにこれを有する固体撮像素子および画像表示装置の好適態様について詳述する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0011】
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書中における「放射線」は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を含むものを意味する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタアクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタアクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表し、“(メタ)アクリルアミド”は、アクリルアミドおよびメタアクリルアミドを表す。
本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本明細書における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が2,000以下の化合物をいう。
本明細書中において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物のことをいい、単量体であっても、ポリマーであってもよい。重合性基とは、重合反応に関与する基をいう。
【0012】
[硬化膜の製造方法]
本発明の硬化膜の製造方法は、着色剤と、重合開始剤と、重合性化合物と、バインダーポリマーと、溶剤と、を含有する硬化性組成物を用いた硬化膜の製造方法であって、着弾サイズがD1となるように上記硬化性組成物をスプレー塗布して第1塗膜を形成する第1工程と、着弾サイズがD2となるように上記硬化性組成物をスプレー塗布して第2塗膜を形成する第2工程と、硬化処理を実施して硬化膜を形成する工程と、を有し、上記D1と上記D2とがD1>D2の関係を満たし、かつ、上記D1と上記D2との比D1/D2が5~150である。
【0013】
本発明の硬化膜の製造方法によれば、反射率が低く、リソグラフィー性能に優れた硬化膜を作製することができる。この理由の詳細は明らかになっていないが、以下の理由によるものと推測される。
硬化性組成物をスプレー装置のノズルから噴射すると、硬化性組成物が複数の液滴になって飛翔し、これが被塗布面に着弾する。被塗布面に着弾した液滴は、乾燥して、液滴に含まれていた固形分からなる粒状物になる。この粒状物が複数集まることで、一の膜(塗膜)を形成する。本発明においては、上記粒状物の直径のことを「着弾サイズ」といい、着弾サイズのより詳細な定義は後述する。
ここで、
図1Aおよび
図1Bは、本発明の硬化膜の製造方法の一例を段階的に示す説明図である。
図1Bの例では、塗膜120は、基板100上に形成されており、第1塗膜120Aおよび第2塗膜120Bからなる。塗膜120は、図示しない硬化処理によって硬化して、硬化膜となる。
着弾サイズの大きい粒状物から構成される第1塗膜120Aは、サイズの大きい液滴を用いて形成される。サイズの大きい液滴は、被塗布面に着弾したときに広がりやすくなることから、これにより得られる粒状物120aが平坦で面積の大きいものとなる。さらに、粒状物120a同士が良好に接触した状態になる。これにより、複数の粒状物120aからなる第1塗膜120Aは、平坦でピンホールの少ない膜となることから、第1塗膜120Aを硬化させて形成される第1膜を含む硬化膜のパターン形状の欠けやピンホールの発生などが抑制される。
次に、着弾サイズの小さい粒状物120bから構成される第2塗膜120Bは、サイズの小さい液滴を用いて形成される。サイズの小さい液滴は、被塗布面に着弾したときの広がりが小さいことから、着弾後もその形状を保持しやすい。そのため、複数の粒状物120bから構成される第2塗膜120Bは凸凹な表面を持つことになるので、第2塗膜120Bを硬化させて形成される第2膜を含む硬化膜の反射率を低くできる。
このように、硬化膜は、第1塗膜120Aにより形成される第1膜および第2塗膜120Bにより形成される第2膜のそれぞれの機能が相補的に作用することで、反射率が低く、リソグラフィー性能に優れた膜となるものと推測される。
【0014】
以下、本発明の硬化膜の製造に用いられる硬化性組成物について説明した後に、硬化膜の製造方法における各工程を説明する。
【0015】
<硬化性組成物>
本発明の硬化膜の製造方法に用いられる硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう。)は、着色剤と、重合開始剤と、重合性化合物と、バインダーポリマーと、溶剤と、を含有する。以下、本発明の組成物に含まれる成分および含まれ得る成分について説明する。
【0016】
(a)着色剤
本発明の組成物は、着色剤を含有する。
着色剤は、各種公知の着色顔料および着色染料を用いることができる。
着色染料としては、例えば、カラーフィルタ製造に用いる場合であれば、カラーフィルタの色画素を形成するR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等の有彩色系の染料(有彩色染料)の他、特開2014-42375の段落0027~0200に記載の着色剤を用いることもできる。また、ブラックマトリクス形成用もしくは遮光性膜系形成用に一般に用いられている黒色系染料(黒色染料)を用いることができる。
着色顔料としては、例えば、カラーフィルタ製造に用いる場合であれば、カラーフィルタの色画素を形成するR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等の有彩色系の顔料(有彩色顔料)、およびブラックマトリクス形成用、もしくは遮光性膜系形成用に一般に用いられている黒色系顔料(黒色顔料)を用いることができる。
【0017】
有彩色系の顔料としては、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を用いることができる。また、無機顔料であれ有機顔料であれ、高透過率であることが好ましいことを考慮すると、なるべく細かいものの使用が好ましく、ハンドリング性をも考慮すると、上記顔料の平均一次粒子径は、0.01μm~0.1μmが好ましく、0.01μm~0.05μmがより好ましい。
【0018】
なお、顔料の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて測定できる。透過型電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の透過型顕微鏡HT7700を用いることができる。
透過型電子顕微鏡を用いて得た粒子像の最大長(Dmax:粒子画像の輪郭上の2点における最大長さ)、および最大長垂直長(DV-max:最大長に平行な2本の直線で画像を挟んだ時、2直線間を垂直に結ぶ最短の長さ)を測長し、その相乗平均値(Dmax×DV-max)1/2を粒子径とした。この方法で100個の粒子の粒子径を測定し、その算術平均値を平均粒子径として、顔料の平均一次粒子径とした。本明細書の実施例における「平均一次粒子径」も上記の算術平均値と同じである。
【0019】
無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、および上記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0020】
〔顔料〕
顔料としては、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を挙げることができる。
無機顔料としては、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、および、上記金属の複合酸化物を挙げることができる。
有機顔料として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
有機顔料としては、カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等、
C.I.ピグメントオレンジ 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等、
C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等、
C.I.ピグメントグリーン 7,10,36,37,58,59等、
C.I.ピグメントバイオレット 1,19,23,27,32,37,42等、
C.I.ピグメントブルー 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等、が挙げられる。
これら有機顔料は、単独もしくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。
【0021】
(黒色顔料)
本発明では、顔料として黒色顔料を用いることもできる。以下、黒色顔料についてさらに詳しく説明する。
黒色顔料は、各種公知の黒色顔料を用いることができる。特に、少量で高い光学濃度を実現できる観点から、カーボンブラック、チタンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化マンガン、グラファイト等が好ましく、なかでも、カーボンブラック、チタンブラックのうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、特に露光による硬化効率に関わる開始剤の光吸収波長領域の吸収が少ない観点からチタンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、市販品である、C.I.ピグメントブラック 1等の有機顔料C.I.ピグメントブラック 7等の無機顔料があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0022】
(その他の顔料)
本発明では、顔料として黒色顔料として記載した顔料以外で赤外線吸収性を有する顔料を用いることもできる。
赤外線吸収性を有する顔料としては、タングステン化合物、金属ホウ化物等が好ましく、なかでも、赤外領域の波長における遮光性に優れる点から、タングステン化合物が好ましい。特に露光による硬化効率に関わる開始剤の光吸収波長領域と、可視光領域の透光性に優れる観点からタングステン化合物が好ましい。
【0023】
これらの顔料は、2種以上併用してもよく、また、後述する染料と併用してもよい。色味の調整や、所望の波長領域の遮光性を高めるため、例えば、黒色、または赤外線遮光性を有する顔料に上述した赤色、緑色、黄色、オレンジ色、紫色、およびブルーなどの有彩色顔料もしくは後述する染料を混ぜる態様が挙げられる。黒色、または赤外線遮光性を有する顔料に赤色顔料もしくは染料と、紫色顔料もしくは染料とを含むことが好ましく、黒色、または赤外線遮光性を有する顔料に赤色顔料を含むことが特に好ましい。
【0024】
黒色顔料は、チタンブラックを含有することが好ましい。
チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子である。好ましくは低次酸化チタンや酸窒化チタン等である。チタンブラック粒子は、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または、酸化ジルコニウムで被覆することが可能であり、また、特開2007-302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。
チタンブラックは、典型的には、チタンブラック粒子であり、個々の粒子の一次粒径および平均一次粒径のいずれもが小さいものであることが好ましい。
具体的には、平均一次粒径で10~45nmの範囲のものが好ましい。
【0025】
チタンブラックの比表面積は特に制限されないが、チタンブラックを撥水化剤で表面処理した後の撥水性が所定の性能となるために、BET(Brunauer, Emmett, Teller)法にて測定した値が5~150m2/gが好ましく、20~120m2/gがより好ましい。
チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0026】
さらに、チタンブラックを、チタンブラックおよびSi原子を含む被分散体として含有することも好ましい。
この形態において、チタンブラックは、組成物中において被分散体として含有されるものであり、被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が質量換算で0.05以上が好ましく、0.05~0.5がより好ましく、0.07~0.4がさらに好ましい。
ここで、上記被分散体は、チタンブラックが一次粒子の状態であるもの、凝集体(二次粒子)の状態であるものの双方を包含する。
被分散体のSi/Tiを変更する(例えば、0.05以上とする)ためには、以下のような手段を用いることができる。
先ず、酸化チタンとシリカ粒子とを分散機を用いて分散することにより分散物を得て、この分散物を高温(例えば、850~1000℃)にて還元処理することにより、チタンブラック粒子を主成分とし、SiとTiとを含有する被分散体を得ることができる。上記還元処理は、アンモニアなどの還元性ガスの雰囲気下で行うこともできる。
酸化チタンとしては、TTO-51N(商品名:石原産業製)などが挙げられる。
シリカ粒子の市販品としては、AEROSIL(登録商標)90、130、150、200、255、300、380(商品名:エボニック製)などが挙げられる。
酸化チタンとシリカ粒子との分散は、分散剤を用いてもよい。分散剤としては、後述する分散剤の欄で説明するものが挙げられる。
上記の分散は溶剤中で行ってもよい。溶剤としては、水、有機溶剤が挙げられる。後述する有機溶剤の欄で説明するものが挙げられる。
Si/Tiが、例えば、0.05以上等に調整されたチタンブラックは、例えば、特開2008-266045号公報の段落番号〔0005〕および段落番号〔0016〕~〔0021〕に記載の方法により作製することができる。
【0027】
チタンブラックおよびSi原子を含む被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)を好適な範囲(例えば0.05以上)に調整することで、この被分散体を含む組成物を用いて遮光膜を形成した際に、遮光膜の形成領域外における組成物由来の残渣物が低減される。なお、残渣物は、チタンブラック粒子、樹脂成分等の組成物に由来する成分を含むものである。
残渣物が低減される理由は未だ明確ではないが、上記のような被分散体は小粒径となる傾向があり(例えば、粒径が30nm以下)、さらに、この被分散体のSi原子が含まれる成分が増すことにより、膜全体の下地との吸着性が低減され、これが、遮光膜の形成における未硬化の組成物(特に、チタンブラック)の現像除去性の向上に寄与すると推測している。
また、チタンブラックは、紫外光から赤外光までの広範囲に亘る波長領域の光に対する遮光性に優れることから、上記したチタンブラックおよびSi原子を含む被分散体(好ましくはSi/Tiが質量換算で0.05以上であるもの)を用いて形成された遮光膜は優れた遮光性を発揮する。
なお、被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)は、例えば、特開2013-249417号公報の段落0033に記載の方法(1-1)または方法(1-2)を用いて測定できる。
また、組成物を硬化して得られた遮光膜に含有される被分散体について、その被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が0.05以上か否かを判断するには、特開2013-249417号公報の段落0035に記載の方法(2)を用いる。
【0028】
チタンブラックおよびSi原子を含む被分散体において、チタンブラックは、上記したものを使用できる。
また、この被分散体においては、チタンブラックと共に、分散性、着色性等を調整する目的で、Cu、Fe、Mn、V、Ni等の複合酸化物、酸化コバルト、酸化鉄、カーボンブラック、アニリンブラック等からなる黒色顔料を、1種または2種以上を組み合わせて、被分散体として併用してもよい。
この場合、全被分散体中の50質量%以上をチタンブラックからなる被分散体が占めることが好ましい。
また、この被分散体においては、遮光性の調整等を目的として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、チタンブラックと共に、他の着色剤(有機顔料および染料など)を所望により併用してもよい。
以下、被分散体にSi原子を導入する際に用いられる材料について述べる。被分散体にSi原子を導入する際には、シリカなどのSi含有物質を用いればよい。
用いうるシリカとしては、沈降シリカ、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、合成シリカなどを挙げることができ、これらを適宜選択して使用すればよい。
さらに、シリカ粒子の粒径が遮光膜を形成した際に膜厚よりも小さい粒径であると遮光性がより優れるため、シリカ粒子として微粒子タイプのシリカを用いることが好ましい。なお、微粒子タイプのシリカの例としては、例えば、特開2013-249417号公報の段落0039に記載のシリカが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0029】
また、顔料としては、タングステン化合物、金属ホウ化物も使用できる。
以下に、タングステン化合物、および金属ホウ化物について詳述する。
本発明の硬化性組成物は、タングステン化合物、および/または金属ホウ化物を使用できる。
タングステン化合物、および金属ホウ化物は、赤外線(波長が約800~1200nmの光)に対しては吸収が高く(すなわち、赤外線に対する遮光性(遮蔽性)が高く)、可視光に対しては吸収が低い赤外線遮蔽材である。このため、本発明の硬化性組成物は、タングステン化合物、および/または金属ホウ化物を含有することで、赤外領域における遮光性が高く、可視光領域における透光性が高いパターンを形成できる。
また、タングステン化合物、および金属ホウ化物は、画像形成に用いられる、高圧水銀灯、KrF、ArFなどの露光に用いられる可視域より短波の光に対しても吸収が小さい。このため、後述する重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂、および光重合開始剤と組み合わされることにより、優れたパターンが得られると共に、パターン形成において、現像残渣をより抑制できる。
【0030】
タングステン化合物としては、酸化タングステン系化合物、ホウ化タングステン系化合物、硫化タングステン系化合物などを挙げることができ、下記一般式(組成式)(I)で表される酸化タングステン系化合物が好ましい。
MxWyOz・・・(I)
Mは金属、Wはタングステン、Oは酸素を表す。
0.001≦x/y≦1.1
2.2≦z/y≦3.0
【0031】
Mの金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Biなどが挙げられるが、アルカリ金属であることが好ましい。Mの金属は1種でも2種以上でもよい。
【0032】
Mはアルカリ金属が好ましく、RbまたはCsがより好ましく、Csがさらに好ましい。
【0033】
x/yが0.001以上であることにより、赤外線を十分に遮蔽することができ、1.1以下であることにより、タングステン化合物中に不純物相が生成されることをより確実に回避することできる。
z/yが2.2以上であることにより、材料としての化学的安定性をより向上させることができ、3.0以下であることにより赤外線を十分に遮蔽することができる。
【0034】
上記一般式(I)で表される酸化タングステン系化合物の具体例としては、Cs0.33WO3、Rb0.33WO3、K0.33WO3、Ba0.33WO3などを挙げることができ、Cs0.33WO3またはRb0.33WO3が好ましく、Cs0.33WO3がより好ましい。
【0035】
タングステン化合物は微粒子であることが好ましい。タングステン微粒子の平均粒子径は、800nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。平均粒子径がこのような範囲であることによって、タングステン微粒子が光散乱によって可視光を遮断しにくくなることから、可視光領域における透光性をより確実にすることができる。光酸乱を回避する観点からは、平均粒子径は小さいほど好ましいが、製造時における取り扱い容易性などの理由から、タングステン微粒子の平均粒子径は、通常、1nm以上である。
【0036】
また、タングステン化合物は2種以上を使用することが可能である。
【0037】
タングステン化合物は市販品として入手可能であるが、タングステン化合物が、例えば酸化タングステン系化合物である場合、酸化タングステン系化合物は、タングステン化合物を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理する方法により得ることができる(特許第4096205号公報を参照)。
また、酸化タングステン系化合物は、例えば、住友金属鉱山株式会社製のYMF-02などのタングステン微粒子の分散物としても、入手可能である。
【0038】
また、金属ホウ化物としては、ホウ化ランタン(LaB6)、ホウ化プラセオジウム(PrB6)、ホウ化ネオジウム(NdB6)、ホウ化セリウム(CeB6)、ホウ化イットリウム(YB6)、ホウ化チタン(TiB2)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)、ホウ化ハフニウム(HfB2)、ホウ化バナジウム(VB2)、ホウ化タンタル(TaB2)、ホウ化クロム(CrB、CrB2)、ホウ化モリブデン(MoB2、Mo2B5、MoB)、ホウ化タングステン(W2B5)などの1種または2種以上を挙げることができ、ホウ化ランタン(LaB6)であることが好ましい。
【0039】
金属ホウ化物は微粒子であることが好ましい。金属ホウ化物微粒子の平均粒子径は、800nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。平均粒子径がこのような範囲であることによって、金属ホウ化物微粒子が光散乱によって可視光を遮断しにくくなることから、可視光領域における透光性をより確実にすることができる。光酸乱を回避する観点からは、平均粒子径は小さいほど好ましいが、製造時における取り扱い容易性などの理由から、金属ホウ化物微粒子の平均粒子径は、通常、1nm以上である。
【0040】
また、金属ホウ化物は2種以上を使用することが可能である。
【0041】
金属ホウ化物は市販品として入手可能であり、例えば、住友金属鉱山株式会社製のKHF-7等の金属ホウ化物微粒子の分散物としても、入手可能である。
【0042】
〔染料〕
染料としては、例えば特開昭64-90403号公報、特開昭64-91102号公報、特開平1-94301号公報、特開平6-11614号公報、特登2592207号、米国特許4808501号明細書、米国特許5667920号明細書、米国特許505950号明細書、米国特許5667920号明細書、特開平5-333207号公報、特開平6-35183号公報、特開平6-51115号公報、特開平6-194828号公報等に開示されている色素を使用できる。化学構造として区分すると、ピラゾールアゾ化合物、ピロメテン化合物、アニリノアゾ化合物、トリフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物等を使用できる。また、染料としては色素多量体を用いてもよい。色素多量体としては、特開2011-213925号公報、特開2013-041097号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0043】
また、本発明では、着色剤として、波長800~900nmの範囲に吸収極大を有する着色剤を用いることができる。
このような分光特性を有する着色剤としては、例えば、ピロロピロール化合物、銅化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、イミニウム化合物、チオール錯体系化合物、遷移金属酸化物系化合物、スクアリリウム化合物、ナフタロシアニン化合物、クオタリレン化合物、ジチオール金属錯体系化合物、クロコニウム化合物等が挙げられる。
フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イミニウム化合物、シアニン化合物、スクアリウム化合物およびクロコニウム化合物は、特開2010-111750号公報の段落0010~0081に開示の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。シアニン化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0044】
上記分光特性を有する着色剤として、特開平07-164729号公報の段落0004~0016に開示の化合物、特開2002-146254号公報の段落0027~0062に開示の化合物、特開2011-164583号公報の段落0034~0067に開示のCuおよび/またはPを含む酸化物の結晶子からなり数平均凝集粒子径が5~200nmである近赤外線吸収粒子を使用することもできる。
【0045】
本発明において、波長800~900nmの範囲に吸収極大を有する着色剤は、ピロロピロール化合物が好ましい。ピロロピロール化合物は、顔料であってもよく、染料であってもよいが、耐熱性に優れた膜を形成できる硬化性組成物が得られやすいという理由から顔料が好ましい。
ピロロピロール化合物の詳細については、特開2009-263614号公報の段落番号0017~0047の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることとする。また、その具体例としては、特開2009-263614号公報の段落番号0049~0058に記載の化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0046】
また、国際公開第2014/142144号の段落0027~0200に記載の染料多量体や、特開2011-242752号公報の段落0018~0078の染料多量体も好的に用いることができる。
【0047】
さらに、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて体質顔料を含んでいてもよい。このような体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナ白、グロス白、チタンホワイト、ハイドロタルサイト等を挙げることができる。これらの体質顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。体質顔料の使用量は、着色剤100質量部に対して、通常、0~100質量部、好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~40質量部である。本発明において、着色剤および体質顔料は、場合により、それらの表面をポリマーで改質して使用することができる。
また、黒色顔料、または可視光領域の波長の光の透過性に優れ、赤外線領域の波長の光を遮光する機能に優れる顔料に加えて、必要に応じて赤色、青色、黄色、緑色、紫色等の着色有機顔料、もしくは染料を含んでいてもよい。着色有機顔料、もしくは染料と黒色顔料、または可視光領域の波長の光の透過性に優れ、赤外線領域の波長の光を遮光する機能に優れる顔料とを併用する場合としては、赤色顔料、もしくは染料を黒色顔料、または可視光領域の波長の光の透過性に優れ、赤外線領域の波長の光を遮光する機能に優れる顔料に対して1~40質量%用いることが好ましく、赤色、もしくは染料としてはピグメントレッド254であることが好ましい。
【0048】
組成物中における着色剤(特に好ましくは黒色顔料)の含有量は、組成物中の全固形分に対して、20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、35~60質量%がさらに好ましい。
【0049】
〔分散剤〕
本発明の組成物は、分散剤を含有することが好ましい。分散剤は、上述したチタンブラックなどの着色顔料の分散性向上に寄与する。
分散剤としては、例えば、公知の顔料分散剤を適宜選択して用いることができる。なかでも、高分子化合物が好ましい。
分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、および、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子化合物は、その構造からさらに直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、およびブロック型高分子に分類することができる。
【0050】
高分子化合物は、黒色顔料等の着色剤および所望により併用する顔料等の被分散体の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
一方で、チタンブラック、および、上記したチタンブラックおよびSi原子を含む被分散体の表面を改質することにより、これらに対する高分子化合物の吸着性を促進させることもできる。
【0051】
高分子化合物は、グラフト鎖を有する構造単位を有することが好ましい。なお、本明細書において、「構造単位」とは「繰り返し単位」と同義である。
このようなグラフト鎖を有する構造単位を有する高分子化合物は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、黒色顔料等の着色顔料の分散性、および、経時後の分散安定性に優れるものである。また、組成物においては、グラフト鎖の存在により重合性化合物またはその他の併用可能な樹脂などとの親和性を有するので、アルカリ現像で残渣を生じにくくなる。
グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり分散性は向上するが、一方グラフト鎖が長すぎると黒色顔料等の着色顔料への吸着力が低下して分散性は低下する傾向となる。このため、グラフト鎖は、水素原子を除いた原子数が40~10000の範囲であるものが好ましく、水素原子を除いた原子数が50~2000であるものがより好ましく、水素原子を除いた原子数が60~500であるものがさらに好ましい。
ここで、グラフト鎖とは、共重合体の主鎖の根元(主鎖から枝分かれしている基において主鎖に結合する原子)から、主鎖から枝分かれしている基の末端までを示す。
【0052】
グラフト鎖は、ポリマー構造を有することが好ましく、このようなポリマー構造としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート構造(例えば、ポリ(メタ)アクリル構造)、ポリエステル構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造、ポリアミド構造、および、ポリエーテル構造などを挙げることができる。
グラフト鎖と溶剤との相互作用性を向上させ、それにより分散性を高めるために、グラフト鎖は、ポリエステル構造、ポリエーテル構造およびポリ(メタ)アクリレート構造からなる群から選ばれた少なくとも1種を有するグラフト鎖が好ましく、ポリエステル構造およびポリエーテル構造の少なくともいずれかを有するグラフト鎖がより好ましい。
【0053】
このようなポリマー構造をグラフト鎖として有するマクロモノマーの構造としては、特に限定されないが、好ましくは、反応性二重結合性基を有するマクロモノマーを好適に使用することができる。
【0054】
高分子化合物が有するグラフト鎖を有する構造単位に対応し、高分子化合物の合成に好適に用いられる市販のマクロモノマーとしては、AA-6(商品名、東亜合成(株))、AA-10(商品名、東亜合成(株)製)、AB-6(商品名、東亜合成(株)製)、AS-6(商品名、東亜合成(株))、AN-6(商品名、東亜合成(株)製)、AW-6(商品名、東亜合成(株)製)、AA-714(商品名、東亜合成(株)製)、AY-707(商品名、東亜合成(株)製)、AY-714(商品名、東亜合成(株)製)、AK-5(商品名、東亜合成(株)製)、AK-30(商品名、東亜合成(株)製)、AK-32(商品名、東亜合成(株)製)、ブレンマーPP-100(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP-500(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP-800(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP-1000(商品名、日油(株)製)、ブレンマー55-PET-800(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPME-4000(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPSE-400(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPSE-1300(商品名、日油(株)製)、ブレンマー43PAPE-600B(商品名、日油(株)製)などが用いられる。このなかでも、好ましくは、AA-6(商品名、東亜合成(株)製)、AA-10(商品名、東亜合成(株))、AB-6(商品名、東亜合成(株)製)、AS-6(商品名、東亜合成(株))、AN-6(商品名、東亜合成(株)製)、ブレンマーPME-4000(商品名、日油(株)製)などが用いられる。
【0055】
高分子化合物は、グラフト鎖を有する構造単位として、下記式(1)~式(4)のいずれかで表される構造単位を含むことが好ましく、下記式(1A)、下記式(2A)、下記式(3A)、下記式(3B)、および下記(4)のいずれかで表される構造単位を含むことがより好ましい。
【0056】
【0057】
式(1)~式(4)において、W1、W2、W3、およびW4はそれぞれ独立に酸素原子またはNHを表す。W1、W2、W3、およびW4は酸素原子が好ましい。
式(1)~式(4)において、X1、X2、X3、X4、およびX5は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。X1、X2、X3、X4、およびX5としては、合成上の制約の観点からは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~12のアルキル基が好ましく、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0058】
式(1)~式(4)において、Y1、Y2、Y3、およびY4は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、連結基は特に構造上制約されない。Y1、Y2、Y3、およびY4で表される2価の連結基として、具体的には、下記の(Y-1)~(Y-21)の連結基などが例として挙げられる。下記に示した構造において、A、Bはそれぞれ、式(1)~式(4)における左末端基、右末端基との結合部位を意味する。下記に示した構造のうち、合成の簡便性から、(Y-2)または(Y-13)であることがより好ましい。
【0059】
【0060】
式(1)~式(4)において、Z1、Z2、Z3、およびZ4は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。有機基の構造は、特に限定されないが、具体的には、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、およびアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、Z1、Z2、Z3、およびZ4で表される有機基としては、特に分散性向上の観点から、立体反発効果を有するものが好ましく、各々独立に炭素数5から24のアルキル基またはアルコキシ基が好ましく、その中でも、特に各々独立に炭素数5から24の分岐アルキル基、炭素数5から24の環状アルキル基、または、炭素数5から24のアルコキシ基が好ましい。なお、アルコキシ基中に含まれるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0061】
式(1)~式(4)において、n、m、p、およびqは、それぞれ独立に、1から500の整数である。
また、式(1)および式(2)において、jおよびkは、それぞれ独立に、2~8の整数を表す。式(1)および式(2)におけるjおよびkは、分散安定性、現像性の観点から、4~6の整数が好ましく、5がより好ましい。
【0062】
式(3)中、R3は分岐もしくは直鎖のアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2または3のアルキレン基がより好ましい。pが2~500のとき、複数存在するR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(4)中、R4は水素原子または1価の有機基を表し、この1価の有機基としては特に構造上限定はされない。R4として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基が挙げられ、さらに好ましくは、水素原子、またはアルキル基である。R4がアルキル基である場合、アルキル基としては、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、または炭素数5~20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1~20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基が特に好ましい。式(4)において、qが2~500のとき、グラフト共重合体中に複数存在するX5およびR4は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0063】
また、高分子化合物は、2種以上の構造が異なる、グラフト鎖を有する構造単位を有することができる。即ち、高分子化合物の分子中に、互いに構造の異なる式(1)~式(4)で示される構造単位を含んでいてもよく、また、式(1)~式(4)においてn、m、p、およびqがそれぞれ2以上の整数を表す場合、式(1)および式(2)においては、側鎖中にjおよびkが互いに異なる構造を含んでいてもよく、式(3)および式(4)においては、分子内に複数存在するR3、R4およびX5は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0064】
式(1)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(1A)で表される構造単位であることがより好ましい。
また、式(2)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(2A)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0065】
【0066】
式(1A)中、X1、Y1、Z1およびnは、式(1)におけるX1、Y1、Z1およびnと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(2A)中、X2、Y2、Z2およびmは、式(2)におけるX2、Y2、Z2およびmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0067】
また、式(3)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(3A)または式(3B)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0068】
【0069】
式(3A)または(3B)中、X3、Y3、Z3およびpは、式(3)におけるX3、Y3、Z3およびpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0070】
高分子化合物は、グラフト鎖を有する構造単位として、式(1A)で表される構造単位を有することがより好ましい。
【0071】
高分子化合物において、グラフト鎖を有する構造単位(例えば、上記式(1)~式(4)で表される構造単位)は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対し2~90%の範囲で含まれることが好ましく、5~30%の範囲で含まれることがより好ましい。グラフト鎖を有する構造単位が、この範囲内で含まれると黒色顔料等の着色顔料(特に、チタンブラック粒子)の分散性が高く、硬化膜を形成する際の現像性が良好である。
【0072】
また、高分子化合物は、グラフト鎖を有する構造単位とは異なる(すなわち、グラフト鎖を有する構造単位には相当しない)疎水性構造単位を有することが好ましい。ただし、本発明において、疎水性構造単位は、酸基(例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)を有さない構造単位である。
【0073】
疎水性構造単位は、好ましくは、ClogP値が1.2以上の化合物(モノマー)に由来する(対応する)構造単位であり、より好ましくは、ClogP値が1.2~8の化合物に由来する構造単位である。これにより、本発明の効果をより確実に発現することができる。
【0074】
ClogP値は、Daylight Chemical Information System, Inc.から入手できるプログラム“CLOGP”で計算された値である。このプログラムは、Hansch, Leoのフラグメントアプローチ(下記文献参照)により算出される“計算logP”の値を提供する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、化学構造を部分構造(フラグメント)に分割し、そのフラグメントに対して割り当てられたlogP寄与分を合計することにより化合物のlogP値を推算している。その詳細は以下の文献に記載されている。本発明では、プログラムCLOGP v4.82により計算したClogP値を用いる。
A. J. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P. G. Sammnens, J. B. Taylor and C. A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990 C. Hansch & A. J. Leo. SUbstituent Constants For Correlation Analysis in Chemistry and Biology. John Wiley & Sons. A.J. Leo. Calculating logPoct from structure. Chem. Rev., 93, 1281-1306, 1993.
【0075】
logPは、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、ある有機化合物が油(一般的には1-オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として表す物性値であり、以下の式で示される。
logP=log(Coil/Cwater)
式中、Coilは油相中の化合物のモル濃度を、Cwaterは水相中の化合物のモル濃度を表す。
logPの値が0をはさんでプラスに大きくなると油溶性が増し、マイナスで絶対値が大きくなると水溶性が増すことを意味し、有機化合物の水溶性と負の相関があり、有機化合物の親疎水性を見積るパラメータとして広く利用されている。
【0076】
高分子化合物は、疎水性構造単位として、下記一般式(i)~(iii)表される単量体に由来の構造単位から選択された1種以上の構造単位を有することが好ましい。
【0077】
【0078】
上記式(i)~(iii)中、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、または炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
R1、R2、およびR3は、好ましくは水素原子、または炭素原子数が1~3のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子またはメチル基である。R2およびR3は、水素原子であることがさらに好ましい。
Xは、酸素原子(-O-)またはイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子であることが好ましい。
【0079】
Lは、単結合または2価の連結基である。2価の連結基としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、置換アリーレン基)、2価の複素環基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ基(-NR31-、ここでR31は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、カルボニル基(-CO-)、または、これらの組合せ等が挙げられる。
【0080】
2価の脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。脂肪族基は不飽和脂肪族基であっても飽和脂肪族基であってもよいが、飽和脂肪族基であることが好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、芳香族基および複素環基等が挙げられる。
【0081】
2価の芳香族基の炭素原子数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基および複素環基等が挙げられる。
【0082】
2価の複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基、または、複素環基が挙げられる。
【0083】
Lは、単結合、アルキレン基またはオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造またはオキシプロピレン構造であることがより好ましい。また、Lは、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造またはポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCH2CH2)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数であることがより好ましい。
【0084】
Zとしては、脂肪族基(例えば、アルキル基、置換アルキル基、不飽和アルキル基、置換不飽和アルキル基、)、芳香族基(例えば、アリール基、置換アリール基、アリーレン基、置換アリーレン基)、複素環基、または、これらの組み合わせが挙げられる。これらの基には、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ基(-NR31-、ここでR31は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、カルボニル基(-CO-)が含まれていてもよい。
【0085】
脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。脂肪族基には、さらに環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基、ビフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ-1,4-メタノ-5,8-メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5~8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、芳香族基および複素環基が挙げられる。ただし、脂肪族基は、置換基として酸基を有さない。
【0086】
芳香族基の炭素原子数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基および複素環基が挙げられる。ただし、芳香族基は、置換基として酸基を有さない。
【0087】
複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基および複素環基が挙げられる。ただし、複素環基は、置換基として酸基を有さない。
【0088】
上記式(iii)中、R4、R5、およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、または炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、Z、またはL-Zを表す。ここでLおよびZは、上記におけるものと同義である。R4、R5、およびR6としては、水素原子、または炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0089】
本発明においては、上記一般式(i)で表される単量体として、R1、R2、およびR3が水素原子またはメチル基であって、Lが単結合またはアルキレン基もしくはオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、Xが酸素原子またはイミノ基であって、Zが脂肪族基、複素環基または芳香族基である化合物が好ましい。
また、上記一般式(ii)で表される単量体として、R1が水素原子またはメチル基であって、Lがアルキレン基であって、Zが脂肪族基、複素環基または芳香族基である化合物が好ましい。また、上記一般式(iii)で表される単量体として、R4、R5、およびR6が水素原子またはメチル基であって、Zが脂肪族基、複素環基または芳香族基である化合物が好ましい。
【0090】
式(i)~(iii)で表される代表的な化合物の例としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
なお、式(i)~(iii)で表される代表的な化合物の例としては、特開2013-249417号公報の段落0089~0093に記載の化合物を参照でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0091】
高分子化合物において、疎水性構造単位は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対し10~90%の範囲で含まれることが好ましく、20~80%の範囲で含まれることがより好ましい。含有量が上記範囲において十分なパターン形成が得られる。
【0092】
高分子化合物は、黒色顔料等の着色顔料(特に、チタンブラック)と相互作用を形成しうる官能基を導入することができる。ここで、高分子化合物は、黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基を有する構造単位をさらに有することが好ましい。
この黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基としては、例えば、酸基、塩基性基、配位性基、反応性を有する官能基等が挙げられる。
高分子化合物が、酸基、塩基性基、配位性基、または、反応性を有する官能基を有する場合、それぞれ、酸基を有する構造単位、塩基性基を有する構造単位、配位性基を有する構造単位、または、反応性を有する構造単位を有することが好ましい。
特に、高分子化合物が、さらに、酸基として、カルボン酸基などのアルカリ可溶性基を有することで、高分子化合物に、アルカリ現像によるパターン形成のための現像性を付与することができる。
すなわち、高分子化合物にアルカリ可溶性基を導入することで、本発明の組成物は、黒色顔料等の着色顔料の分散に寄与する分散剤としての高分子化合物がアルカリ可溶性を有することになる。このような高分子化合物を含有する組成物は、露光部の遮光性に優れたものとなり、且つ、未露光部のアルカリ現像性が向上される。
また、高分子化合物が酸基を有する構造単位を有することにより、高分子化合物が溶剤となじみやすくなり、塗布性も向上する傾向となる。
これは、酸基を有する構造単位における酸基が黒色顔料等の着色顔料と相互作用しやすく、高分子化合物が黒色顔料等の着色顔料を安定的に分散すると共に、黒色顔料等の着色顔料を分散する高分子化合物の粘度が低くなっており、高分子化合物自体も安定的に分散されやすいためであると推測される。
【0093】
ただし、酸基としてのアルカリ可溶性基を有する構造単位は、上記したグラフト鎖を有する構造単位と同一の構造単位であっても、異なる構造単位であってもよいが、酸基としてのアルカリ可溶性基を有する構造単位は、上記した疎水性構造単位とは異なる構造単位である(すなわち、上記した疎水性構造単位には相当しない)。
【0094】
黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基である酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、または、フェノール性水酸基などがあり、好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、および、リン酸基のうち少なくとも1種であり、特に好ましいものは、黒色顔料等の着色顔料への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高いカルボン酸基である。
すなわち、高分子化合物は、カルボン酸基、スルホン酸基、および、リン酸基のうち少なくとも1種を有する構造単位をさらに有することが好ましい。
【0095】
高分子化合物は、酸基を有する構造単位を1種または2種以上有してもよい。
高分子化合物は、酸基を有する構造単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、酸基を有する構造単位の含有量は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対して、好ましくは5~80%であり、より好ましくは、アルカリ現像による画像強度のダメージ抑制という観点から、10~60%である。
【0096】
黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基である塩基性基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、N原子を含むヘテロ環、アミド基などがあり、特に好ましいものは、黒色顔料等の着色顔料への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高い第3級アミノ基である。高分子化合物は、これらの塩基性基を1種或いは2種以上、有することができる。
高分子化合物は、塩基性基を有する構造単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、塩基性基を有する構造単位の含有量は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対して、好ましくは0.01%以上50%以下であり、より好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、0.01%以上30%以下である。
【0097】
黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基である配位性基、および反応性を有する官能基としては、例えば、アセチルアセトキシ基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、酸無水物、酸塩化物などが挙げられる。特に好ましいものは、黒色顔料等の着色顔料への吸着力が良好で分散性が高いアセチルアセトキシ基である。高分子化合物は、これらの基を1種または2種以上有してもよい。
高分子化合物は、配位性基を有する構造単位、または、反応性を有する官能基を有する構造単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、これらの構造単位の含有量は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対して、好ましくは10%以上80%以下であり、より好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、20%以上60%以下である。
【0098】
本発明における高分子化合物が、グラフト鎖以外に、黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基を有する場合、上述したような、各種の黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基を含有していればよく、これらの官能基がどのように導入されているかは特に限定はされないが、高分子化合物は、下記一般式(iv)~(vi)で表される単量体に由来の構造単位から選択された1種以上の構造単位を有することが好ましい。
【0099】
【0100】
一般式(iv)~一般式(vi)中、R11、R12、およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、または炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
一般式(iv)~一般式(vi)中、R11、R12、およびR13は、好ましくは、それぞれ独立に水素原子、または炭素原子数が1~3のアルキル基であり、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基である。一般式(iv)中、R12およびR13は、水素原子がさらに好ましい。
【0101】
一般式(iv)中のX1は、酸素原子(-O-)またはイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子が好ましい。
また、一般式(v)中のYは、メチン基または窒素原子を表す。
【0102】
また、一般式(iv)~一般式(v)中のL1は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基の例としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、および置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、および置換アリーレン基)、2価の複素環基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ結合(-NR31’-、ここでR31’は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、カルボニル結合(-CO-)、または、これらの組合せ等が挙げられる。
【0103】
2価の脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基および複素環基が挙げられる。
【0104】
2価の芳香族基の炭素原子数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基および複素環基を挙げられる。
【0105】
2価の複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環のうち1つ以上が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基および複素環基を挙げられる。
【0106】
L1は、単結合、アルキレン基またはオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造またはオキシプロピレン構造がより好ましい。また、L1は、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造またはポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCH2CH2)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数がより好ましい。
【0107】
一般式(iv)~一般式(vi)中、Z1は、グラフト鎖以外に黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基を表し、カルボン酸基、第三級アミノ基が好ましく、カルボン酸基がより好ましい。
【0108】
一般式(vi)中、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、-Z1、またはL1-Z1を表す。ここでL1およびZ1は、上記におけるL1およびZ1と同義であり、好ましい例も同様である。R14、R15、およびR16としては、それぞれ独立に水素原子、または炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0109】
本発明においては、一般式(iv)で表される単量体として、R11、R12、およびR13がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であって、L1がアルキレン基またはオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、X1が酸素原子またはイミノ基であって、Z1がカルボン酸基である化合物が好ましい。
また、一般式(v)で表される単量体として、R11が水素原子またはメチル基であって、L1がアルキレン基であって、Z1がカルボン酸基であって、Yがメチン基である化合物が好ましい。
さらに、一般式(vi)で表される単量体として、R14、R15、およびR16がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であって、L1が単結合またはアルキレン基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。
【0110】
以下に、一般式(iv)~一般式(vi)で表される単量体(化合物)の代表的な例を示す。
単量体の例としては、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、分子内に付加重合性二重結合および水酸基を有する化合物(例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)とコハク酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合および水酸基を有する化合物とフタル酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合および水酸基を有する化合物とテトラヒドロキシフタル酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合および水酸基を有する化合物と無水トリメリット酸との反応物、分子内に付加重合性二重結合および水酸基を有する化合物とピロメリット酸無水物との反応物、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、アクリル酸オリゴマー、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、4-ビニル安息香酸、ビニルフェノール、4-ヒドロキシフェニルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0111】
黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基を有する構造単位の含有量は、黒色顔料等の着色顔料との相互作用、分散安定性、および現像液への浸透性の観点から、高分子化合物の全質量に対して、0.05質量%~90質量%が好ましく、1.0質量%~80質量%がより好ましく、10質量%~70質量%がさらに好ましい。
【0112】
さらに、高分子化合物は、画像強度などの諸性能を向上する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、グラフト鎖を有する構造単位、疎水性構造単位、および、黒色顔料等の着色顔料と相互作用を形成しうる官能基を有する構造単位とは異なる、種々の機能を有する他の構造単位(例えば、分散物に用いられる分散媒との親和性を有する官能基などを有する構造単位)をさらに有していてもよい。
このような、他の構造単位としては、例えば、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるラジカル重合性化合物に由来の構造単位が挙げられる。
高分子化合物は、これらの他の構造単位を1種あるいは2種以上用いることができ、その含有量は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対して、好ましくは0%以上80%以下であり、より好ましくは10%以上60%以下である。含有量が上記範囲において、十分なパターン形成性が維持される。
【0113】
高分子化合物の酸価は、0mgKOH/g以上160mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10mgKOH/g以上140mgKOH/g以下の範囲であり、さらに好ましくは20mgKOH/g以上120mgKOH/g以下の範囲である。
高分子化合物の酸価が160mgKOH/g以下であれば、硬化膜を形成する際の現像時におけるパターン剥離がより効果的に抑えられる。また、高分子化合物の酸価が10mgKOH/g以上であればアルカリ現像性がより良好となる。また、高分子化合物の酸価が20mgKOH/g以上であれば、黒色顔料等の着色顔料(特に、チタンブラック)や、チタンブラックおよびSi原子を含む被分散体の沈降をより抑制でき、粗大粒子数をより少なくすることができ、組成物の経時安定性をより向上できる。
【0114】
本発明において、高分子化合物の酸価は、例えば、高分子化合物中における酸基の平均含有量から算出することができる。また、高分子化合物の構成成分である酸基を含有する構造単位の含有量を変化させることで所望の酸価を有する樹脂を得ることができる。
【0115】
本発明における高分子化合物の重量平均分子量は、硬化膜を形成する際において、現像時のパターン剥離抑制と現像性の観点から、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算値として、4,000~300,000が好ましく、5,000~200,000がより好ましく、6,000~100,000がさらに好ましく、10,000~50,000が特に好ましい。
GPC法は、HLC-8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる方法に基づく。
【0116】
高分子化合物は、公知の方法に基づいて合成でき、高分子化合物を合成する際に用いられる溶剤としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0117】
本発明に用いうる高分子化合物の具体例としては、楠木化成株式会社製「DA-7301」、BYKChemie社製「Disperbyk-101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、111(リン酸系分散剤)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170、190(高分子共重合物)」、「BYK-P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050~4010~4165(ポリウレタン系)、EFKA4330~4340(ブロック共重合体)、4400~4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学社製「フローレンTG-710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS-860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA-703-50、DA-705、DA-725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN-B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL-18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール(株)製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、12000、17000、20000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト共重合体)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS-IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT-8000E等、信越化学工業(株)製、オルガノシロキサンポリマーKP341、裕商(株)製「W001:カチオン系界面活性剤」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、「W004、W005、W017」等のアニオン系界面活性剤、森下産業(株)製「EFKA-46、EFKA-47、EFKA-47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450」、サンノプコ(株)製「ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100」等の高分子分散剤、(株)ADEKA製「アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P-123」、および三洋化成(株)製「イオネット(商品名)S-20」等が挙げられる。また、アクリベースFFS-6752、アクリベースFFS-187、アクリキュア-RD-F8、サイクロマーPを用いることもできる。
また、両性樹脂の市販品としては、例えば、ビックケミー社製のDISPERBYK-130、DISPERBYK-140、DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、DISPERBYK-180、DISPERBYK-187、DISPERBYK-191、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2025、BYK-9076、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB881等が挙げられる。
これらの高分子化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0118】
なお、高分子化合物の具体例の例としては、特開2013-249417号公報の段落0127~0129に記載の高分子化合物を参照でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0119】
また、分散剤としては、上述した高分子化合物以外に、特開2010-106268号公報の段落0037~0115(対応するUS2011/0124824の段落0075~0133欄)のグラフト共重合体が使用でき、これらの内容は援用でき、本明細書に組み込まれる。
また、上記以外にも、特開2011-153283号公報の段落0028~0084(対応するUS2011/0279759の段落0075~0133欄)の酸性基が連結基を介して結合してなる側鎖構造を有する構成成分を含む高分子化合物が使用でき、これらの内容は援用でき、本明細書に組み込まれる。
【0120】
本発明の組成物における分散剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましい。
【0121】
(b)重合開始剤
本発明の組成物は、重合開始剤を含有する。
重合開始剤としては特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができ、例えば、感光性を有するもの(いわゆる、光重合開始剤)が好ましい。
光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、光重合開始剤は、約300nm~800nm(330nm~500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0122】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。上記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53-133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62-58241号公報記載の化合物、特開平5-281728号公報記載の化合物、特開平5-34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0123】
また、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物およびその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体およびその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0124】
より好ましくは、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、さらに好ましくは、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0125】
特に、本発明の硬化性組成物を固体撮像素子の遮光膜の作製に使用する場合には、微細なパターンをシャープな形状で形成する必要があるために、硬化性と共に未露光部に残渣がなく現像されることが重要である。このような観点からは、光重合開始剤としてはオキシム化合物を使用することが特に好ましい。特に、固体撮像素子において微細なパターンを形成する場合、硬化用露光にステッパー露光を用いるが、この露光機はハロゲンにより損傷される場合があり、光重合開始剤の添加量も低く抑える必要があるため、これらの点を考慮すれば、固体撮像素子の如き微細パターンを形成するには光重合開始剤としては、オキシム化合物を用いるのが特に好ましい。また、オキシム化合物を用いることにより、色移り性をより良化できる。
光重合開始剤の具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落0265~0268を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0126】
光重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、および、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィン系開始剤も用いることができる。
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE-907、IRGACURE-369、および、IRGACURE-379EG(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤は、365nmまたは405nm等の長波光源に吸収波長がマッチングされた特開2009-191179号公報に記載の化合物も用いることができる。
アシルホスフィン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE-819やDAROCUR-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0127】
光重合開始剤としては、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。特にオキシム系開始剤は高感度で重合効率が高く、色材濃度によらず硬化でき、色材の濃度を高く設計しやすいため好ましい。
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報記載の化合物、特開2006-342166号公報記載の化合物を用いることができる。
本発明において、好適に用いることのできるオキシム化合物としては、例えば、3-ベンゾイロキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイロキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、および2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。
また、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653-1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202-232、特開2000-66385号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報、特表2004-534797号公報、特開2006-342166号公報の各公報に記載の化合物等も挙げられる。
市販品ではIRGACURE-OXE01(BASF社製)、IRGACURE-OXE02(BASF社製)も好適に用いられる。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司社製)、アデカアークルズNCI-831およびアデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)も用いることができる。
【0128】
また上記記載以外のオキシム化合物として、カルバゾールN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報および米国特許公開2009-292039号記載の化合物、国際公開特許2009-131189号公報に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報記載の化合物、などを用いてもよい。
好ましくは、例えば、特開2013-29760号公報の段落0274~0275を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(OX-1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシムのN-O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0129】
【0130】
一般式(OX-1)中、RおよびBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
一般式(OX-1)中、Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。
一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
一般式(OX-1)中、Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、または、複素環カルボニル基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
一般式(OX-1)中、Aで表される二価の有機基としては、炭素数1~12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アルキニレン基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
【0131】
本発明は、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報記載の化合物、特表2014-500852号公報記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0132】
本発明は、光重合開始剤として、下記一般式(1)または(2)で表される化合物を用いることもできる。
【0133】
【0134】
式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、または、炭素数7~30のアリールアルキル基を表し、R1およびR2がフェニル基の場合、フェニル基同士が結合してフルオレン基を形成してもよく、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基または炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合またはカルボニル基を示す。
【0135】
式(2)において、R1、R2、R3およびR4は、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4と同義であり、R5は、-R6、-OR6、-SR6、-COR6、-CONR6R6、-NR6COR6、-OCOR6、-COOR6、-SCOR6、-OCSR6、-COSR6、-CSOR6、-CN、ハロゲン原子または水酸基を表し、R6は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基または炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合またはカルボニル基を表し、aは0~4の整数を表す。
【0136】
上記式(1)および式(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル、シクロヘキシル基またはフェニル基が好ましい。R3はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基またはキシリル基が好ましい。R4は炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基が好ましい。R5はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基またはナフチル基が好ましい。Xは直接結合が好ましい。
式(1)および式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開2014-137466号公報の段落番号0076~0079に記載された化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0137】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
【0139】
オキシム化合物は、350~500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものが好ましく、360~480nmの波長領域に極大吸収波長を有するものがより好ましく、365nmおよび405nmの吸光度が高いものが特に好ましい。
オキシム化合物は、365nmまたは405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000~300,000であることが好ましく、2,000~300,000であることがより好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
本発明に用いられる光重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0140】
重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%がさらに好ましい。この範囲で、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の硬化性組成物は、重合開始剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0141】
本発明の組成物における重合開始剤の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.1~30質量%が好ましく、1~25質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。
【0142】
(c)重合性化合物
本発明の組成物は、重合性化合物を含有する。
重合性化合物は、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましい。特に、重合性化合物中にはエチレン性不飽和基が2個以上10個以下含まれることが好ましく、いわゆる多官能重合性化合物であることが好ましい。
少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48-41708号、特公昭50-6034号、特開昭51-37193号の各公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48-64183号、特公昭49-43191号、特公昭52-30490号の各公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることができる。さらに、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300~308頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用できる。
また、特開平10-62986号公報において一般式(1)および一般式(2)としてその具体例と共に記載の多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も用いることができる。
なかでも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびこれらのアクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介してジペンタエリスリトールに連結している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
また、特公昭48-41708号、特開昭51-37193号、特公平2-32293号、および特公平2-16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号、特公昭56-17654号、特公昭62-39417号、および特公昭62-39418号の各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、特開昭63-277653号、特開昭63-260909号、および特開平1-105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(商品名、日本製紙ケミカル(株)製)、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(商品名、日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(商品名、共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適であり、市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO-756、およびカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO-1382などが挙げられる。本発明に用いられる重合性化合物としては、4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。4官能以上のアクリレート化合物として、例えばKAYARD DPHA(商品名、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0143】
重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
2種以上の重合性化合物を組み合わせて用いる場合、その組み合わせ態様は、組成物に要求される物性等に応じて適宜設定することができる。重合性化合物の好適な組み合わせ態様の一つとしては、例えば、上述した多官能のアクリレート化合物から選択した2種以上の重合性化合物を組み合わせる態様が挙げられ、その一例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせが挙げられる。
重合性化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物中の全固形分に対して、3~55質量%となるように含有されることが好ましく、7~50質量%がより好ましい。
【0144】
(d)バインダーポリマー
本発明の組成物は、バインダーポリマーを含有する。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような線状有機ポリマーとしては、公知のものを任意に使用することができる。好ましくは、水現像または弱アルカリ水現像を可能とするために、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。なかでも、バインダーポリマーとしては、アルカリ可溶性樹脂(アルカリ可溶性を促進する基を有する樹脂)が特に好ましい。
バインダーポリマーとしては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0145】
バインダーポリマーとしては、例えば、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59-44615号、特公昭54-34327号、特公昭58-12577号、特公昭54-25957号、特開昭54-92723号、特開昭59-53836号、特開昭59-71048号に記載されているもの、すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを単独或いは共重合させた樹脂、酸無水物を有するモノマーを単独或いは共重合させ酸無水物ユニットを加水分解もしくはハーフエステル化もしくはハーフアミド化させた樹脂、エポキシ樹脂を不飽和モノカルボン酸および酸無水物で変性させたエポキシアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4-カルボキシルスチレン等があげられ、酸無水物を有するモノマーの例としては、無水マレイン酸等が挙げられる。また、同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体も例として挙げられる。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
また、欧州特許第993966号、欧州特許第1204000号、特開2001-318463号等の各公報に記載の酸基を有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダーポリマーは、膜強度、現像性のバランスに優れており、好適である。
さらに、この他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げるために、アルコール可溶性ナイロンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0146】
特に、これらの中でも、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体、および〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体は、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
市販品としては、例えばアクリベースFF-187、FF-426(藤倉化成社製)、アクリキュア-RD-F8(日本触媒(株))、ダイセルオルネクス(株)製サイクロマーP(ACA)230AAなどが挙げられる。
【0147】
バインダーポリマーの製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類およびその量、溶剤の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0148】
また、バインダーポリマーとして、グラフト鎖を有する構造単位と、酸基(アルカリ可溶性基)を有する構造単位と、を有するポリマーを使用することも好ましい。
グラフト鎖を有する構造単位の定義は、上述した分散剤が有するグラフト鎖を有する構造単位と同義であり、また好適範囲も同様である。
酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、または、フェノール性水酸基などがあり、好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、および、リン酸基のうち少なくとも1種であり、特に好ましいものは、カルボン酸基である。
【0149】
酸基を有する構造単位としては、下記一般式(vii)~一般式(ix)で表さる単量体に由来の構造単位から選択された1種以上の構造単位を有することが好ましい。
【0150】
【0151】
一般式(vii)~一般式(ix)中、R21、R22、およびR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、または炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
一般式(vii)~一般式(ix)中、R21、R22、およびR23は、好ましくは、それぞれ独立に水素原子、または炭素原子数が1~3のアルキル基であり、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基である。一般式(vii)中、R21およびR23は、水素原子であることがさらに好ましい。
【0152】
一般式(vii)中のX2は、酸素原子(-O-)またはイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子であることが好ましい。
また、一般式(viii)中のYは、メチン基または窒素原子を表す。
【0153】
また、一般式(vii)~一般式(ix)中のL2は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基の例としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、および置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、および置換アリーレン基)、2価の複素環基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ結合(-NR41’-、ここでR41’は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、カルボニル結合(-CO-)、または、これらの組合せ等が挙げられる。
【0154】
2価の脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基および複素環基が挙げられる。
【0155】
2価の芳香族基の炭素原子数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基および複素環基を挙げられる。
【0156】
2価の複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環のうち1つ以上が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R42、ここでR42は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基および複素環基を挙げられる。
【0157】
L2は、単結合、アルキレン基またはオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造またはオキシプロピレン構造であることがより好ましい。また、L2は、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造またはポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCH2CH2)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数であることがより好ましい。
【0158】
一般式(vii)~一般式(ix)中、Z2は、酸基であり、カルボン酸基であることが好ましい。
【0159】
一般式(ix)中、R24、R25、およびR26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、-Z2、またはL2-Z2を表す。ここでL2およびZ2は、上記におけるL2およびZ2と同義であり、好ましい例も同様である。R24、R25、およびR26としては、それぞれ独立に水素原子、または炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0160】
本発明においては、一般式(vii)で表される単量体として、R21、R22、およびR23がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であって、L2がアルキレン基またはオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、X2が酸素原子またはイミノ基であって、Z2がカルボン酸基である化合物が好ましい。
また、一般式(vii)で表される単量体として、R21が水素原子またはメチル基であって、L2がアルキレン基であって、Z2がカルボン酸基であって、Yがメチン基である化合物が好ましい。
さらに、一般式(ix)で表される単量体として、R24、R25、およびR26がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であって、Z2がカルボン酸基である化合物が好ましい。
【0161】
上記バインダーポリマーは、上述したグラフト鎖を有する構造単位を有する顔料分散剤と同様の方法により合成することができ、また、その好ましい酸価、重量平均分子量も同じである。
【0162】
上記バインダーポリマーは、酸基を有する構造単位を1種または2種以上有してもよい。
酸基を有する構造単位の含有量は、質量換算で、上記バインダーポリマーの総質量に対して、好ましくは5~95%であり、より好ましくは、アルカリ現像による画像強度のダメージ抑制という観点から、10~90%である。
【0163】
本発明の組成物におけるバインダーポリマーの含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.3~25質量%がより好ましい。
【0164】
(e)溶剤
本発明の組成物は、溶剤を含有する。
溶剤としては、水または有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤の例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤を2種以上組み合わせて用いる場合、特に好ましくは、上記の3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートからなる群から選択される2種以上で構成される。
本発明の組成物に含まれる溶剤の量としては、組成物の全質量に対し、10~90質量%が好ましく、20~85質量%がより好ましい。
【0166】
<その他任意成分>
本発明の組成物中には、上述した各主成分以外の他の成分が含まれていてもよい。
以下、各種任意成分について詳述する。
【0167】
〔シランカップリング剤〕
シランカップリング剤とは、分子中に加水分解性基とそれ以外の官能基を有する化合物である。なお、アルコキシ基等の加水分解性基は、珪素原子に結合している。
加水分解性基とは、珪素原子に直結し、加水分解反応および/または縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基が挙げられる。加水分解性基が炭素原子を有する場合、その炭素数は6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。特に、炭素数4以下のアルコキシ基または炭素数4以下のアルケニルオキシ基が好ましい。
また、シランカップリング剤は基板と硬化膜間の密着性を向上させるため、フッ素原子および珪素原子(ただし、加水分解性基が結合した珪素原子は除く)を含まないことが好ましく、フッ素原子、珪素原子(ただし、加水分解性基が結合した珪素原子は除く)、珪素原子で置換されたアルキレン基、炭素数8以上の直鎖アルキル基、および、炭素数3以上の分鎖アルキル基は含まないことが望ましい。
【0168】
シランカップリング剤は、以下の式(Z)で表される基を有することが好ましい。*は結合位置を表す。
式(Z) *-Si-(RZ1)3
式(Z)中、RZ1は加水分解性基を表し、その定義は上述の通りである。
【0169】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、および、オキセタニル基からなる群から選択される1種以上の硬化性官能基を有することが好ましい。硬化性官能基は、直接、珪素原子に結合してもよく、連結基を介して珪素原子に結合していてもよい。
なお、上記シランカップリング剤に含まれる硬化性官能基の好適態様としては、ラジカル重合性基も挙げられる。
【0170】
シランカップリング剤の分子量は特に制限されず、取り扱い性の点から、100~1000の場合が多く、本発明の効果がより優れる点で、270以上が好ましく、270~1000がより好ましい。
【0171】
シランカップリング剤の好適態様の一つとしては、式(W)で表されるシランカップリング剤Xが挙げられる。
式(W) RZ2-Lz-Si-(RZ1)3
Rz1は、加水分解性基を表し、定義は上述の通りである。
Rz2は、硬化性官能基を表し、定義は上述のとおりであり、好適範囲も上述の通りである。
Lzは、単結合または2価の連結基を表す。Lzが2価の連結基を表す場合、2価の連結基としては、ハロゲン原子が置換していてもよいアルキレン基、ハロゲン原子が置換していてもよいアリーレン基、-NR12-、-CONR12-、-CO-、-CO2-、SO2NR12-、-O-、-S-、-SO2-、または、これらの組み合わせが挙げられる。なかでも、炭素数2~10のハロゲン原子が置換していてもよいアルキレン基および炭素数6~12のハロゲン原子が置換していてもよいアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種、または、これらの基と-NR12-、-CONR12-、-CO-、-CO2-、SO2NR12-、-O-、-S-、およびSO2-からなる群から選択される少なくとも1種の基との組み合わせからなる基が好ましく、炭素数2~10のハロゲン原子が置換していてもよいアルキレン基、-CO2-、-O-、-CO-、-CONR12-、または、これらの基の組み合わせからなる基がより好ましい。ここで、上記R12は、水素原子またはメチル基を表す。
【0172】
シランカップリング剤Xとしては、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピル-メチルジメトキシシラン(信越化学工業社製商品名 KBM-602)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン(信越化学工業社製商品名 KBM-603)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピル-トリエトキシシラン(信越化学工業社製商品名 KBE-602)、γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン(信越化学工業社製商品名 KBM-903)、γ-アミノプロピル-トリエトキシシラン(信越化学工業社製商品名 KBE-903)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製商品名 KBM-503)、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製商品名 KBM-4803)などが挙げられる。
【0173】
シランカップリング剤の他の好適態様としては、分子内に少なくとも珪素原子と窒素原子と硬化性官能基とを有し、かつ、珪素原子に結合した加水分解性基を有するシランカップリング剤Yが挙げられる。
このシランカップリング剤Yは、分子内に少なくとも1つの珪素原子を有すればよく、珪素原子は、以下の原子、置換基と結合できる。それらは同じ原子、置換基であっても異なっていてもよい。結合しうる原子、置換基は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキル基および/またはアリール基で置換可能なアミノ基、シリル基、炭素数1から20のアルコキシ基、アリーロキシ基などが挙げられる。これらの置換基はさらに、シリル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、チオアルコキシ基、アルキル基および/またはアリール基で置換可能なアミノ基、ハロゲン原子、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、アミド基、ウレア基、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、カルボキシル基、またはその塩、スルホ基、またはその塩などで置換されていてもよい。
なお、珪素原子には少なくとも一つの加水分解性基が結合している。加水分解性基の定義は、上述の通りである。
シランカップリング剤Yには、式(Z)で表される基が含まれていてもよい。
【0174】
シランカップリング剤Yは、分子内に窒素原子を少なくとも1つ以上有し、窒素原子は、2級アミノ基或いは3級アミノ基の形態で存在することが好ましく、即ち、窒素原子は置換基として少なくとも1つの有機基を有することが好ましい。なお、アミノ基の構造としては、含窒素ヘテロ環の部分構造の形態で分子内に存在してもよく、アニリンなど置換アミノ基として存在していてもよい。
ここで、有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、これらの組み合わせなどが挙げられる。これらはさらに置換基を有してもよく、導入可能な置換基としては、シリル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、チオアルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、アミド基、ウレア基、アルキレンオキシ基アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、カルボキシル基、またはその塩、スルホ基などが挙げられる。
また、窒素原子は、任意の有機連結基を介して硬化性官能基と結合していることが好ましい。好ましい有機連結基としては、上述の窒素原子およびそれに結合する有機基に導入可能な置換基を挙げることができる。
【0175】
シランカップリング剤Yに含まれる硬化性官能基の定義は、上述の通りであり、好適範囲も上述の通りである。
シランカップリング剤Yには、硬化性官能基は一分子中に少なくとも一つ以上有していればよいが、硬化性官能基を2以上有する態様をとることも可能であり、感度、安定性の観点からは、硬化性官能基を2~20有することが好ましく、4~15有することがさらに好ましく、最も好ましくは分子内に硬化性官能基を6~10有する態様である。
【0176】
シランカップリング剤Xおよびシランカップリング剤Yの分子量は特に制限されないが、上述した範囲(270以上が好ましい)が挙げられる。
【0177】
本発明の組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましく、1.0~6質量%がさらに好ましい。
【0178】
本発明の組成物は、シランカップリング剤を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。組成物がシランカップリング剤を2種以上含む場合は、その合計が上記範囲内であればよい。
【0179】
〔その他〕
本発明の組成物には、紫外線吸収剤が含まれていてもよい。これにより、パターンの形状をより優れた(精細な)ものにすることができる。
紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系の紫外線吸収剤を使用することができる。これらの具体例としては、特開2012-068418号公報の段落0137~0142(対応するUS2012/0068292の段落0251~0254)の化合物が使用でき、これらの内容が援用でき、本明細書に組み込まれる。
他にジエチルアミノ-フェニルスルホニル系紫外線吸収剤(大東化学製、商品名:UV-503)なども好適に用いられる。
紫外線吸収剤としては、特開2012-32556号公報の段落0134~0148に例示される化合物が挙げられる。
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001~15質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.1~5質量%がさらに好ましい。
【0180】
<<界面活性剤>>
本発明の組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0181】
本発明の組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。即ち、フッ素系界面活性剤を含有する組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行うことができる。
【0182】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0183】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、RS-72-K(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC1068、同SC-381、同SC-383、同S393、同KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。フッ素系界面活性剤としてブロックポリマーを用いることもでき、具体例としては、例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができ、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【0184】
【0185】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。
また、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報0050~0090段落および0289~0295段落に記載された化合物、例えばDIC社製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。
【0186】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。また、和光純薬工業社製の、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002を使用することもできる。
【0187】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA-745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0188】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)、サンデットBL(三洋化成(株)社製)等が挙げられる。
【0189】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0190】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。界面活性剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.005~1.0質量%がより好ましい。
【0191】
上記成分以外にも、本発明の組成物には、以下の成分をさらに添加してもよい。例えば、増感剤、共増感剤、架橋剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、重合禁止剤、可塑剤、希釈剤、感脂化剤などが挙げられ、さらに基板表面への密着促進剤およびその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)等の公知の添加剤を必要に応じて加えてもよい。
これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183~0228(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の[0237]~[0309])、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0102、段落番号0103~0104、段落番号0107~0109、特開2013-195480号公報の段落番号0159~0184等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0192】
本発明の組成物の固形分濃度は5~50質量%であることが好ましく、形成される硬化膜の厚みおよび遮光性のバランスの点で、15~40質量%であることがより好ましい。
【0193】
〔組成物の調製方法〕
本発明の組成物は、上述した各種成分を公知の混合方法(例えば、攪拌機、ホモジナイザー、高圧乳化装置、湿式粉砕機、湿式分散機)により混合して調製することができる。
本発明の組成物は、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタで濾過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等によるフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)、ナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.1~7.0μm程度が適しており、好ましくは0.2~2.5μm程度、より好ましくは0.2~1.5μm程度、さらに好ましくは0.3~0.7μmである。この範囲とすることにより、顔料のろ過詰まりを抑えつつ、顔料に含まれる不純物や凝集物など、微細な異物を確実に除去することが可能となる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合は1回目のフィルタリングの孔径より2回目以降の孔径が同じ、または、大きい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)または株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。第2のフィルタの孔径は、0.2~10.0μm程度が適しており、好ましくは0.2~7.0μm程度、さらに好ましくは0.3~6.0μm程度である。
【0194】
<硬化膜の製造工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、着弾サイズがD1となるように上記硬化性組成物をスプレー塗布して第1塗膜を形成する第1工程と、着弾サイズがD2となるように上記硬化性組成物をスプレー塗布して第2塗膜を形成する第2工程と、硬化処理を実施して硬化膜を形成する工程と、を有する。このようにして、硬化膜が得られる。
ここで、「第1塗膜」は、上記硬化処理によって硬化して「第1膜」となる。同様に「第2塗膜」は、上記硬化処理によって硬化して「第2膜」となる。すなわち、本発明の硬化膜の製造方法により、第1膜および第2膜を有する硬化膜が得られる。
以下、本発明の硬化膜の製造方法の一例について、
図1Aおよび
図1Bを参照しながら説明する。
図1Aおよび
図1Bは、上述したように本発明の硬化膜の製造方法の一例を段階的に示す説明図である。
【0195】
(第1工程)
第1工程は、着弾サイズがD1となるように上記硬化性組成物をスプレー塗布して第1塗膜を形成する工程である。具体的には、
図1Aに示すように、上記硬化性組成物をスプレー装置のノズル210から噴射すると、硬化性組成物が複数の液滴になって飛翔し、これらの複数の液滴が基板100の表面(被塗布面)に着弾する。被塗布面の付着した液滴は、乾燥して粒状物120aとなる。この粒状物120aが複数集合したものが第1塗膜120Aを構成する。
なお、使用される基板の種類は特に制限されない。なかでも、固体撮像装置内に硬化膜を配置する場合は、基板として、固体撮像装置内の各種部材(例えば、赤外光カットフィルタ、固体撮像素子の外周部、ウェハーレベルレンズ外周部、固体撮像素子裏面など)などが好ましく挙げられる。
また、スプレー装置としては、特に限定されず、公知の装置を用いることができる。
【0196】
ここで、本発明における着弾サイズとは、硬化性組成物をスプレー装置のノズルから噴射することで生じる液滴がガラス基板に付着したときに、この液滴を乾燥させて得られる粒状物の直径のこという。具体的には、着弾サイズは、ガラス基板に付着した粒状物を光学顕微鏡で観察し、粒状物が円であると仮定して(円相当径)、粒状物500点を測定し、これを算術平均することで得られる。
なお、着弾サイズを測定する場合における乾燥条件は特に限定されず、液滴に含まれる揮発成分(溶剤など)のうち、80質量%以上が揮発する条件で行えばよい。
【0197】
着弾サイズD1は、35~150μmが好ましく、40~145μmがより好ましく、45~140μmがさらに好ましい。着弾サイズD1が上記範囲内にあることで、硬化膜のリソグラフィー性能がより向上する。
【0198】
着弾サイズは、スプレー塗布の条件を適宜設定することで制御できる。着弾サイズを制御するために好ましい条件としては、スプレー塗布時のノズル高さ、霧化圧、液圧、ノズル開口径などが挙げられる。
【0199】
スプレー塗布時のノズル高さとは、スプレー装置のノズルの先端(ノズルから硬化性組成物が噴射される部分)と、被塗布面(
図1Aにおいては基板100の表面)と、の距離を指す。
第1工程においては、ノズル高さL1(距離L1)は10cm以下が好ましく、5cm未満がより好ましく、4cm以下がさらに好ましく、3cm以下が特に好ましい。また、下限値としては、1cm以上が好ましく、2cm以上がより好ましい。ノズル高さL1を5cm未満とすることで、液滴の飛翔時における揮発成分の揮発を抑制できるので、着弾サイズをより大きくすることができる。これにより、硬化膜のリソグラフィー性能がより向上する。また、ノズル高さL1を1cm以上とすることで、着弾した液滴がダレてしまうことを抑制できるので、第1塗膜の表面状態の荒れ、および、硬化膜のピンホールの発生を抑制できるという利点がある。
【0200】
霧化圧とは、硬化性組成物をスプレー装置のノズルから噴射するために、硬化性組成物にかける圧力のことをいう。
第1工程における霧化圧は、300~500g/cm2が好ましく、350~490g/cm2がより好ましく、380~480g/cm2がさらに好ましい。霧化圧が500g/cm2以下であることで、硬化性組成物をノズルから噴射するときに混入させる気体の量を減らすことができるので、液滴が乾燥しにくくなる。これにより、着弾サイズを大きくできるので、硬化膜のリソグラフィー性能をより向上できる。霧化圧が300g/cm2以上であることで、硬化性組成物をノズルからより良好に噴射できる。
【0201】
液圧とは、硬化性組成物をノズルに供給するために、硬化性組成物にかける圧力のことをいう。
第1工程における液圧は、10~32g/cm2が好ましく、10~30g/cm2がより好ましく、15~28g/cm2がさらに好ましく、18~25g/cm2が特に好ましい。液圧が32g/cm2以下であることで、着弾した液滴がダレてしまうことを抑制できるため、第1塗膜の表面状態の荒れを抑制できるので、第1膜の表面粗さRaを小さくすることができる。液圧が10g/cm2以上であることで、着弾サイズを大きくできるので、硬化膜のリソグラフィー性能をより向上できる。
【0202】
上述したように第1塗膜は、後述する硬化処理によって硬化して「第1膜」になる。
第1膜の膜厚T1は、1~5μmが好ましく、2.2~4.0μmがより好ましく、2.5~3.8μmがさらに好ましい。膜厚T1が2.2μm以上であることで、ピンホールの発生をより抑制できるという利点がある。膜厚T1が4.0μm以下であることで、デバイスを低背化できるという利点がある。
ここで、膜厚T1は、平均厚みであり、第1膜の任意の5点以上の厚みを測定し、それらを算術平均した値である。
また、第1膜の膜厚とは、第2工程を実施せずに、第1工程のみを実施して得られた第1塗膜を硬化して得られる膜の厚みを指す。
膜厚は、塗膜を塗り重ねる回数や、ノズルの移動速度、ピッチなどでも調整が可能である。
【0203】
第1膜の表面粗さRaは、0.01~0.6μmが好ましく、0.01~0.5μmがより好ましく、0.01~0.2μmがさらに好ましく、0.01~0.1μmが特に好ましい。第1膜の表面粗さRaが上記範囲内にあることで、リソグラフィー性能がより向上するという利点がある。
第1膜の表面粗さRaは、表面原子間力顕微鏡(ナノスコープ4A、日本ビーコ製)を用いて測定できる。
また、第1膜の表面粗さRaとは、第2工程を実施せずに、第1工程のみを実施して得られた第1塗膜を硬化して得られる膜の表面粗さRaを指す。
【0204】
第1工程は、上記硬化性組成物をスプレー塗布した後に、被塗布面に付着した液滴を乾燥させる処理を含んでいてもよい。乾燥処理の方法としては特に限定されず、例えば被塗布面(基板)をホットプレートなどで加熱する方法が挙げられる。このような乾燥処理は、プリベーク処理と呼ばれることがある。
乾燥処理の条件は特に限定されないが、通常、ホットプレートであれば80~120℃、1~5分、オーブンであれば80~120℃、0.5~2時間で行われる。
【0205】
(第2工程)
第2工程は、着弾サイズがD2となるように上記硬化性組成物をスプレー塗布して第2塗膜を形成する工程である。
第2工程は、第1工程の前に実施しても、第1工程の後に実施してもよいが、本発明の効果がより発揮されるという観点から、第1工程の後に実施することが好ましい。
【0206】
図1Bの例は、第1工程の後に第2工程が実施される態様を示したものである。具体的には、上記硬化性組成物をスプレー装置のノズル210から噴射すると、硬化性組成物が複数の液滴になって飛翔し、これらの複数の液滴が第1塗膜120Aの表面(被塗布面)に着弾する。第1塗膜120Aの表面に付着した液滴は、乾燥して粒状物120bとなる。この粒状物120bが複数集合したものが第2塗膜120Bを構成する。
【0207】
着弾サイズD2は、1~30μmが好ましく、1~20μmがより好ましく、1~10μmがさらに好ましい。着弾サイズD2が上記範囲内であることで、硬化膜の反射率をより低くできる。ここでの着弾サイズD2は、ガラス基板に付着した粒状物を光学顕微鏡で観察し、粒状物が円であると仮定して(円相当径)、粒状物500点を測定し、算術平均することで得られる。
【0208】
第2工程においては、ノズル高さL2(距離L2)は8cm以上が好ましく、10cm超がより好ましく、12cm以上がさらに好ましく、13cm以上が特に好ましい。また、上限値としては、20cm以下が好ましく、15cm以下がより好ましい。ノズル高さL2を10cm超とすることで、液滴の飛翔時における揮発成分の揮発を促進できるので、着弾サイズをより小さくすることができる。これにより、硬化膜の反射率をより低下できる。また、ノズル高さL2を15cm以下とすることで、所望の膜厚を得るための塗布の繰り返し回数を低減することができ、工程時間を短縮できるという効果がある。
なお、
図1Bにおいては、ノズル高さL2(距離L2)は、スプレー装置のノズル210の先端と、第1塗膜120Aの表面と、の距離を指す。
【0209】
第2工程における霧化圧は、300~500g/cm2が好ましく、400~500g/cm2がより好ましく、410~450g/cm2がさらに好ましい。霧化圧が450g/cm2以下であることで、液滴がノズルから吐出されてから着弾するまでに完全に乾燥して、コーター内(スプレー装置において、被塗布面に液滴を付着させる領域)でパーティクルとして浮遊することを抑制できるので、パーティクルが塗布面に付着してしまうことを抑制できる。これにより、パーティクルが他の装置を汚染することを抑制できたり、パーティクルが基板の裏面に付着して汚染の原因となることを抑制できる。また、霧化圧が300g/cm2以上であることで、硬化性組成物をノズルから噴射するときに混入させる気体の量を多くできるので、液滴が乾燥しやすくなる。これにより、着弾サイズが小さくなるので、硬化膜の反射率をより低下できる。
【0210】
第2工程における液圧は、10~30g/cm2が好ましく、15~25g/cm2がより好ましく、17~24g/cm2がさらに好ましい。液圧が25g/cm2以下であることで、着弾サイズをより小さくすることができる。また、液圧が10g/cm2以上であることで、ノズル中で硬化性組成物が乾燥してしまい、目詰まりが発生してしまう現象を抑制することができる。
【0211】
上述したように第2塗膜は、後述する硬化処理によって硬化して「第2膜」になる。
第2膜の膜厚T2は、0.1~2μmが好ましく、0.1~1.5μmがより好ましく、0.1~1.2μmがさらに好ましい。膜厚T2が上記範囲内にあることで、反射率をより低減できる。
ここで、膜厚T2は、平均厚みであり、第2膜の任意の5点以上の厚みを測定し、それらを算術平均した値である。
また、第2膜の膜厚とは、第1工程を実施せずに、第2工程のみを実施して得られた第2塗膜を硬化して得られる膜の厚みを指す。
【0212】
本発明の硬化膜の製造方法によって硬化膜を得た場合、得られた硬化膜の膜厚は、2.0~8.0μmが好ましく、2.5~6.0μmがより好ましく、3.0~5.0μmがさらに好ましい。
【0213】
第2膜の表面粗さRaは、0.1~2.0μmが好ましく、0.1~1.5μmがより好ましく、0.1~1.0μmがさらに好ましい。第2膜の表面粗さRaが上記範囲内にあることで、硬化膜の反射率がより向上する。
第2膜の表面粗さRaは、第1膜と同様の方法で測定できる。また、第2膜の表面粗さRaとは、第1工程を実施せずに、第2工程のみを実施して得られた第2塗膜を硬化して得られる膜の表面粗さRaを指す。
【0214】
本発明の硬化膜の製造方法によって硬化膜を得た場合、得られた硬化膜の表面粗さRa(第1膜と反対側における第2膜の表面粗さRa)は、0.1~1.2μmが好ましく、0.1~0.8μmがより好ましく、0.1~0.5μmがさらに好ましく、0.1~0.3μmが特に好ましい。
【0215】
第2工程は、上記硬化性組成物をスプレー塗布した後に、被塗布面に付着した液滴を乾燥させる処理(プリベーク処理)を含んでいてもよい。乾燥処理の方法および条件は、上記第1工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0216】
(第1工程および第2工程におけるスプレー塗布条件の関係、ならびに第1膜および第2膜の関係)
着弾サイズD1と着弾サイズD2とは、D1>D2の関係を満たす。
着弾サイズD1と、着弾サイズD2と、の比D1/D2は、5~150であり、10~140が好ましく、10~100がより好ましく、15~85がさらに好ましい。上記比D1/D2が上記範囲内にあることで、硬化膜のリソグラフィー性能および反射率が優れたものになる。
一方、上記比D1/D2が5未満であると、硬化膜のリソグラフィー性能が低下したり、反射率が高くなりすぎてしまったりするという不具合が生じる。また、上記比D1/D2が150を超えると、硬化膜のリソグラフィー性能が低下してしまう。
【0217】
第1工程におけるノズル高さL1(距離L1)は、第2工程におけるノズル高さL2(距離L2)よりも小さいことが好ましい。これにより、着弾サイズのコントロールが容易になる。
第1膜の膜厚T1と、第2膜の膜厚T2と、の比T2/T1は、0.2~1.0が好ましく、0.2~0.8がより好ましく、0.2~0.75がさらに好ましい。比T2/T1が上記範囲内にあることで、硬化膜のリソグラフィー性能および反射率をより優れたものにできる。
第1膜の表面粗さRaは、第2膜の表面粗さRaよりも小さいことが好ましい。これにより、硬化膜のリソグラフィー性能が低下することを抑制できたり、反射率が高くなることを抑制できたりするという利点がある。
【0218】
(硬化膜形成工程)
本発明の硬化膜の製造方法は、硬化処理を実施して硬化膜を形成する工程(硬化膜形成工程)を有する。これにより、第1塗膜が硬化して第1膜となり、第2塗膜が硬化して第2膜となる。このようにして、第1膜および第2膜を有する硬化膜が得られる。
硬化膜形成工程は、第1工程後および第2工程後のそれぞれのタイミングで実施されてもよいし、第1工程および第2工程の両工程の終了後にまとめて行われてもよい。
硬化処理としては、光硬化処理および熱硬化処理の少なくとも一方が実施されることが好ましく、パターン形成が容易である点から、光硬化処理(特に、活性光線または放射線を照射することによる硬化処理)が好ましい。
硬化処理の条件については、特に限定されず、公知の条件にしたがって行えばよい。
【0219】
<パターン状の硬化膜の製造方法>
本発明の硬化膜は、パターン形成された、いわゆるパターン状の硬化膜であってもよい。パターン状の硬化膜を形成する方法としては、例えば、上述した硬化膜形成工程においてパターン状に露光処理を行った後(以下「露光工程」ともいう。)、現像工程を実施する態様が挙げられる。
具体的には、上述した第1工程および第2工程の両工程の終了後、基板上に形成された塗膜(第1塗膜および第2塗膜)に対して、活性光線または放射線を照射する露光工程を実施してパターン状に露光が行われた硬化膜を形成し、その後、パターン状に露光が行われた硬化膜をアルカリ現像する現像工程を実施する態様である。
以下、上記態様における各工程について説明する。なお、第1工程および第2工程については、上述した通りであるので、その説明を省略する。
【0220】
(露光工程)
露光工程では、上記のようにして得られた塗膜(第1塗膜および第2塗膜)を、マスクを介して活性光線または放射線を照射することにより露光し、光照射された塗布膜部分だけを硬化させる。これにより、光未照射部分と、パターン状に露光が行われた部分(すなわち、パターン状に露光が行われた硬化膜)と、が形成される。
露光は放射線の照射により行うことが好ましく、露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、h線、i線等の紫外線が好ましく用いられ、光源としては高圧水銀灯が好まれる。照射強度は5~1500mJ/cm2が好ましく、10~1000mJ/cm2がより好ましい。
【0221】
(現像工程)
露光工程に次いで、現像工程(現像処理)を行い、露光工程における光未照射部分を現像液に溶出させる。これにより、光硬化した部分だけが残る。このようにして、パターン状の硬化膜が得られる。
現像液としては、有機アルカリ現像液を用いることが望ましい。現像温度としては通常20~30℃であり、現像時間は20~90秒である。
アルカリ水溶液としては、例えば、無機系現像液としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、有機アルカリ現像液としては、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-7-ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001~10質量%、好ましくは0.005~0.5質量%となるように溶解したアルカリ水溶液が挙げられる。アルカリ水溶液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、このようなアルカリ水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0222】
なお、以上の工程後に、必要により、形成されたパターン状の硬化膜を加熱および露光の少なくとも一方を行うことでさらに硬化する工程を実施してもよい。
【0223】
[硬化膜の好適態様]
次に、本発明の硬化膜の好適態様のうちの一つを説明する。
本実施形態に係る硬化膜は、上述した硬化性組成物を用いて得られ、基板上に形成される硬化膜であって、上記基板側にある上記硬化膜の第1面から、上記第1面に対向する上記硬化膜の第2面に向って、上記硬化膜の厚みが10%となる位置の空隙率をA1とし、上記第2面から上記第1面に向って上記硬化膜の厚みが10%となる位置の空隙率をA2とした場合において、上記A1と上記A2とが、A1<A2の関係を満たす。
以下、本項において、本実施形態に係る硬化膜を単に「硬化膜」ともいう。
【0224】
硬化膜における上記空隙率A1と上記空隙率A2とが上記関係を満たすことで、反射率が低く、リソグラフィー性能に優れた硬化膜となる。この理由の詳細は明らかになっていないが、以下の理由によるものと推測される。
例えば、硬化性組成物をスプレー装置のノズルから噴射すると、硬化性組成物が複数の液滴になって飛翔し、これが被塗布面に着弾する。被塗布面に着弾した液滴は、乾燥して、液滴に含まれていた固形分からなる粒状物になる。この粒状物が複数集まることで、一の膜(塗膜)を形成し、塗膜が乾燥することで硬化膜が得られる。その際に、硬化膜中には、硬化膜を構成する材料のない隙間が形成される。本発明においては、上記隙間を「空隙」といい、空隙のより詳細な定義は後述する。
【0225】
本実施形態に係る硬化膜において、基板側にある上記硬化膜の第1面に近い位置の空隙率A1が、第1面と対向する位置にある空隙率A2よりも小さい。すなわち、基板側の第1面側は、硬化膜の表面である第2面側と比較して、空隙が少ないといえる。
そうすると、第1面およびこれの近傍の領域は、ピンホールの少ない膜になることから、硬化膜のピンホールの発生などが抑制される他、硬化膜のパターン形状の欠けが抑制される。空隙の回りとそれ以外の部分の硬化性が異なるほか、現像液などの浸透性が異なるため、空隙が少ないと基板との界面付近の現像が均一に進むものと推測される。
一方で、表面側である第2面およびこれの近傍の領域に存在する空隙は、空隙内外の屈折率が異なるため、硬化膜の反射率が低くできるほか、現像液の浸透が促進されるため、硬化膜のパターン形状の欠けやピンホールの発生などが抑制される。
【0226】
本実施形態に係る硬化膜において、本願所望の効果が得られる観点から、上記空隙率A1と空隙率A2との比A1/A2は0.00001以上0.9未満が好ましく、0.0001以上0.8未満がより好ましい。本願所望の効果がより顕著に得られる観点から、0.0001以上0.7未満が特に好ましい。
【0227】
本実施形態に係る硬化膜において、上記空隙率A1は、3.5%以下が好ましく、0.001%以上3%未満がより好ましく、0.01%以上3%未満がさらに好ましく、0.1%以上3%未満が特に好ましい。空隙率A1がこの範囲であることで、本願所望の効果が顕著に得られる。
また、空隙率A1が0.001%以上であることで、現像が促進されるため、硬化膜のパターン形状の欠けがより抑制されやすくなり、3%未満であると空隙が少ないため、上記のように硬化膜のパターン形状の欠けやピンホールの発生などがより抑制されやすくなる。
なお、空隙率の測定方法については後述する。
【0228】
本実施形態に係る硬化膜において、上記空隙率A2は、0.05~35%が好ましく、0.1%以上30%未満がより好ましく、1~20%がさらに好ましく、2~10%が特に好ましい。空隙率A2が上記範囲であることで、本願所望の効果が顕著に得られる。上記の範囲内であることで、空隙内外の屈折率が異なるため反射率(特に正反射光)をより低下させることができる他、硬化膜の表面(第2面)付近の空隙が現像処理により開孔し、硬化膜の表面凹凸形状の形成を促進し光を拡散させるため、他の効果を維持したまま反射率をより低下できる。
また、空隙が1%以上であると現像がより促進されやすくなり、30%未満であると微細なパターン形状がより形成されやすくなり、硬化膜のパターン形状の欠けがより抑制されやすくなる。
なお、空隙率の測定方法については後述する。
【0229】
本実施形態に係る硬化膜の表面粗さRaの好ましい範囲および測定方法は、上述した硬化膜の製造方法の項で説明した硬化膜の表面粗さRaと同じである。
【0230】
本実施形態に係る硬化膜は、少なくとも2以上の層を有することが好ましい。本実施形態に係る硬化膜は、これに限定されないが、上述した硬化膜の製造方法の項で説明した方法で製造されたものであることが好ましい。この場合には、第1面を含み、上記空隙率A1となる位置の含む領域(層)が、上述した第1膜に相当するものとなる。また、第2面を含み、上記空隙率A2となる位置を含む領域(層)が、上述した第2膜に相当するものとなる。
【0231】
(空隙率)
上述した各空隙率(A1およびA2)の測定方法は、次の通りである。
硬化膜の露光部(硬化部)の断面を撮影した写真画像から、画像解析手法(例えば、走査型電子顕微鏡による断面画像)により硬化性組成物層の空隙率を測定する。得られた断面画像は、必要に応じて画像解析が行われてもよい。
具体的には、観察した硬化膜の断面画像に基づいて、硬化膜以外の領域(すなわち、硬化膜中において硬化膜で取り囲まれていない領域)を空隙とし、空隙全体の面積(画素数)を、硬化膜全体の領域面積(画素数)で除することで、空隙率(%)が求められる。
より詳細には、空隙率A1は、第1面から第2面に向って硬化膜の厚みが10±5%の領域内にある断面画像に基づいて算出される。また、空隙率A2は、第2面から第1面に向って硬化膜の厚みが10±5%の領域内にある断面画像に基づいて算出される。写真画像の倍率は、判別しやすい倍率であれば特に限定されないが、3000~20000倍の範囲であることが好ましい。
【0232】
[遮光膜付き赤外光カットフィルタ、固体撮像装置]
着色剤として黒色顔料を用いた場合は、上述した硬化膜はいわゆる遮光膜として好適に適用できる。また、このような遮光膜は、固体撮像装置に好適に適用することができる。
以下では、まず、本発明の遮光膜を有する固体撮像装置の第1実施形態について詳述する。
図2および
図3に示すように、固体撮像装置2は、固体撮像素子としてCMOSセンサ3と、このCMOSセンサ3が実装される回路基板4と、回路基板4を保持するセラミック製のセラミック基板5とを備えている。また、固体撮像装置2は、セラミック基板5に保持され、CMOSセンサ3に向かう赤外光(IR)をカットするIRカットフィルタ6と、撮影レンズ7と、この撮影レンズ7を保持するレンズホルダ8と、このレンズホルダ8を移動自在に保持する保持筒9とを備えている。また、CMOSセンサ3に代えて、CCDセンサや有機CMOSセンサを設けてもよい。
セラミック基板5は、CMOSセンサ3が挿入される開口5aが形成され、枠状となっており、CMOSセンサ3の側面を囲んでいる。この状態で、CMOSセンサ3が実装された回路基板4は、接着剤(例えば、エポキシ系接着剤、以下同様)によりセラミック基板5に固定されている。回路基板4には、各種回路パターンが形成されている。
【0233】
IRカットフィルタ6は、板状のガラスや青ガラスに赤外光を反射する反射膜が形成され、この反射膜が形成された面が入射面6aとなる。IRカットフィルタ6は、開口5aよりも一回り大きいサイズで形成され、開口5aを覆うように接着剤によりセラミック基板5に固定されている。
撮影レンズ7の背後(
図3および
図4における下方)に、CMOSセンサ3が配され、撮影レンズ7とCMOSセンサ3との間に、IRカットフィルタ6が配されている。被写体光は、撮影レンズ7、IRカットフィルタ6を通ってCMOSセンサ3の受光面に入射する。このとき、赤外光は、IRカットフィルタ6によりカットされる。
回路基板4は、固体撮像装置2が搭載される電子機器(例えば、デジタルカメラ)に設けられた制御部に接続され、電子機器から固体撮像装置2に電力が供給される。CMOSセンサ3は、受光面上に多数のカラー画素が二次元に配列されており、各カラー画素は入射光を光電変換し、発生した信号電荷を蓄積する。
【0234】
図3および
図4に示すように、IRカットフィルタ6の入射面6aの端部には、全周に亘って上述した遮光膜(遮光層)11が配置されており、遮光膜付き赤外光カットフィルタが形成されている。撮影レンズ7から出射され、セラミック基板5の前面(
図3および
図4における上面)で反射した反射光R1が、装置内で反射や屈折を繰り返した後にCMOSセンサ3に入射した場合や、撮影レンズ7から出射されたレンズホルダ8の内壁面で反射した反射光R2が、CMOSセンサ3に入射した場合には、撮影画像でフレアが発生する原因となる。遮光膜11は、CMOSセンサ3に向かう反射光R1、R2等の有害光を遮光する。遮光膜11は、上述した硬化膜に相当する。なお、
図3および
図4では、遮光膜11の厚みを誇張して描いている。
【0235】
図5に第2実施形態の固体撮像装置20を示す。なお、第1実施形態のものと同様の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
固体撮像装置20は、CMOSセンサ3と、回路基板4と、セラミック基板5と、IRカットフィルタ6と、撮影レンズ7と、レンズホルダ8と、保持筒9とを備えている。IRカットフィルタ6の側端面に、全周に亘って上述した遮光膜(遮光層)21が形成されている。撮影レンズ7から出射され、セラミック基板5の前面で反射した反射光R3が、装置内で反射や屈折を繰り返した後にCMOSセンサ3に入射した場合には、撮影画像でフレアが発生する原因となる。遮光膜21は、CMOSセンサ3に向かう反射光R3等の有害光を遮光する。
【0236】
図6に第3実施形態の固体撮像装置30を示す。なお、第1実施形態のものと同様の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
固体撮像装置30は、CMOSセンサ3と、回路基板4と、セラミック基板5と、IRカットフィルタ6と、撮影レンズ7と、レンズホルダ8と、保持筒9とを備えている。IRカットフィルタ6の入射面6aの端部および側端面に、全周に亘って上述した遮光膜(遮光層)31が形成されている。すなわち、第1、第2実施形態を組み合わせたものとなっている。この実施形態では、第1、第2実施形態よりも遮光性能が高くなるので、フレアの発生が確実に抑制される。
【0237】
図7に第4実施形態の固体撮像装置40を示す。なお、第1実施形態のものと同様の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
固体撮像装置40は、CMOSセンサ3と、回路基板4と、セラミック基板5と、IRカットフィルタ6と、撮影レンズ7と、レンズホルダ8と、保持筒9とを備えている。IRカットフィルタ6の入射面6aの端部および側端面に、全周に亘って上述した遮光膜(遮光層)31が形成されている。
また、セラミック基板5の内壁面には、遮光膜(遮光層)41が形成されている。撮影レンズ7から出射され、IRカットフィルタ6を通過してセラミック基板5の内壁面で反射した反射光がCMOSセンサ3に入射した場合には、撮影画像のフレアが発生する原因となる。遮光膜41は、セラミック基板5の内壁面よりも遮光性能が高くなるので、フレアの発生が確実に抑制される。
【0238】
[カラーフィルタ]
本発明の硬化膜は、カラーフィルタにも用いることができる。
【0239】
カラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補性金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCDやCMOS等に好適である。カラーフィルタは、例えば、CCDまたはCMOSを構成する各画素の受光部と、集光するためのマイクロレンズと、の間に配置して用いることができる。
【0240】
また、カラーフィルタは、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子用として好ましく用いることができる。有機EL素子としては、白色有機EL素子が好ましい。有機EL素子は、タンデム構造であることが好ましい。
有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。
有機EL素子のタンデム構造としては、例えば、基板の一面において、光反射性を備えた下部電極と光透過性を備えた上部電極との間に有機EL層を設けた構造などが挙げられる。下部電極は、可視光の波長域において十分な反射率を有する材料により構成されていることが好ましい。
有機EL層は、複数の発光層を含み、それら複数の発光層が積層された積層構造(タンデム構造)を有していることが好ましい。有機EL層は、例えば、複数の発光層には、赤色発光層、緑色発光層および青色発光層を含むことができる。そして、複数の発光層と共に、それらは発光層を発光させるための複数の発光補助層を併せて有することが好ましい。
有機EL層は、例えば、発光層と発光補助層とが交互に積層する積層構造とすることができる。こうした構造の有機EL層を有する有機EL素子は、白色光を発光することができる。その場合、有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm-485nm)、緑色領域(530nm-580nm)および黄色領域(580nm-620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加えさらに赤色領域(650nm-700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。白色光を発光する有機EL素子(白色有機EL素子)と、本発明のカラーフィルタとを組み合わせることにより、色再現性上優れた分光が得られ、より鮮明な映像や画像を表示可能である。
【0241】
カラーフィルタにおける着色パターン(着色画素)の膜厚は、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.7μm以下がさらに好ましい。下限は、例えば0.1μm以上とすることができ、0.2μm以上とすることもできる。
また、着色パターン(着色画素)のサイズ(パターン幅)としては、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.7μm以下が特に好ましい。下限は、例えば0.1μm以上とすることができ、0.2μm以上とすることもできる。
【0242】
[画像表示装置]
本発明の硬化膜(カラーフィルタ、遮光膜など)は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの、画像表示装置に用いることができる。
【0243】
表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0244】
本発明におけるカラーフィルタは、カラーTFT(Thin Film Transistor)方式の液晶表示装置に用いてもよい。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに、本発明はIPS(In Plane Switching)などの横電界駆動方式、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)などの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN(Super-Twist Nematic)、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertical Alignment)、OCS(on-chip spacer)、FFS(fringe field switching)、および、R-OCB(Reflective Optically Compensated Bend)等にも適用できる。
また、本発明におけるカラーフィルタは、明るく高精細なCOA(Color-filter On Array)方式にも供することが可能である。COA方式の液晶表示装置にあっては、カラーフィルタに対する要求特性は、前述のような通常の要求特性に加えて、層間絶縁膜に対する要求特性、すなわち低誘電率および剥離液耐性が必要とされることがある。本発明のカラーフィルタは、耐光性などに優れるので、解像度が高く長期耐久性に優れたCOA方式の液晶表示装置を提供することができる。なお、低誘電率の要求特性を満足するためには、カラーフィルタ層の上に樹脂被膜を設けてもよい。
これらの画像表示方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ-技術と市場の最新動向-(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページなどに記載されている。
【0245】
液晶表示装置は、本発明におけるカラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角保障フィルムなど様々な部材から構成される。本発明のカラーフィルタは、これらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。これらの部材については、例えば、「'94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉(株)富士キメラ総研、2003年発行)」に記載されている。
バックライトに関しては、SID meeting Digest 1380(2005)(A.Konno et.al)や、月刊ディスプレイ 2005年12月号の18~24ページ(島 康裕)、同25~30ページ(八木隆明)などに記載されている。
【実施例】
【0246】
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0247】
<チタンブラック(A-1)の作製>
BET比表面積110m2/gの酸化チタンTTO-51N(商品名:石原産業製)を120g、BET表面積300m2/gのシリカ粒子AEROSIL300(登録商標)300/30(エボニック製)を25g、および、分散剤Disperbyk190(商品名:ビックケミー社製)を100g秤量し、イオン交換水71gを加えてKURABO製MAZERSTAR KK-400Wを使用して、公転回転数1360rpm、自転回転数1047rpmにて30分間処理することにより均一な混合物水溶液を得た。この水溶液を石英容器に充填し、小型ロータリーキルン(株式会社モトヤマ製)を用いて酸素雰囲気中で920℃に加熱した後、窒素で雰囲気を置換し、同温度でアンモニアガスを100mL/minで5時間流すことにより窒化還元処理を実施した。終了後回収した粉末を乳鉢で粉砕し、Si原子を含み、粉末状の比表面積85m2/gのチタンブラック(A-1)〔チタンブラック粒子およびSi原子を含む被分散体〕を得た。
【0248】
<顔料分散物の作製>
下記組成1に示す成分を、攪拌機(IKA社製EUROSTAR)を使用して、15分間混合し、分散物aを得た。
なお、以下に記載の分散剤(高分子化合物(G1)。下記式参照。)は特開2013-249417号公報の記載を参照して合成した。また、高分子化合物(G1)の重量平均分子量は30000であり、酸価は60mgKOH/gであり、グラフト鎖の原子数(水素原子を除く)は117であった。
(組成1)
・上記チタンブラックA-1 ・・・25.0質量部
・高分子化合物(G1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量%溶液
・・・37.5質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(溶剤)
・・・10.5質量部
・酢酸ブチル(溶剤) ・・・27.0質量部
得られた分散物aに対し、(株)シンマルエンタープライゼス製のNPM-Pilotを使用して下記条件にて分散処理を行い、顔料分散物を得た。
【0249】
【0250】
(分散条件)
・ビーズ径:φ0.05mm、(ニッカトー製YTZ)
・ビーズ充填率:65体積%
・ミル周速:10m/sec
・セパレータ周速:13m/s
・分散処理する混合液量:15kg
・循環流量(ポンプ供給量):90kg/hour
・処理液温度:19~21℃
・冷却水:水
・処理時間:22時間
【0251】
<硬化性組成物1>
下記に示す成分を、混合、攪拌して、硬化性組成物を得た。
・追添溶媒:PGMEA ・・・30.8質量部
・追添溶媒:エチル-3-エトキシプロピオネート
・・・18質量部
・バインダーポリマー:アクリベースFF-187 (藤倉化成製) 40%PGMEA溶液
・・・7.4質量部
・重合性化合物:DPHA(KAYARAD 日本化薬製)
・・・1.8質量部
・重合禁止剤:p-メトキシフェノール ・・・0.001質量部
・界面活性剤:下記構造の界面活性剤A
・・・0.1質量部
・重合開始剤:IRGACURE OXE-02(BASF社製)
・・・1.6質量部
・分散液:上記の顔料分散物 ・・・40.3質量部
【0252】
【0253】
<リソグラフィー性能の評価に使用する硬化膜の製造>
スプレーコーター(製品名「DC110」、(株)三明製)を用いて、下記第1表の条件(第1塗膜の形成条件)で上記硬化性組成物を8インチのガラス基板の表面(被塗布面)に噴射して塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃のオーブンを用いて2時間加熱して(プリベーク処理)、第1塗膜を形成した(第1工程)。
次いで、上記スプレー装置を用いて、下記第1表の条件(第2塗膜の形成条件)で上記硬化性組成物を第1塗膜の表面(被塗布面)に噴射して、塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃でオーブンを用いて2時間加熱して(プリベーク処理)、第2塗膜を形成した(第2工程)。
その後、基板上に形成された第1塗膜および第2塗膜に対して、プロキシ露光装置EVG610(EVグループジャパン製)を用いて、線幅300μm(幅300μm、長さ4mm)を有するマスクを介して、照射力50mW/cm2で露光量600mJ/cm2となるように光を照射(露光)した(露光工程)。これにより、ガラス基板上に、第1膜、第2膜の順に積層された硬化膜が得られた(第2膜/第1膜/ガラス基板)。
照射(露光)後に、現像液CD2060(商品名、富士フイルム社製、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)濃度0.26質量%)を用いて、ストレートノズルを用いたパドル現像を23℃にて20秒間行った(現像工程)。続いて、リンス液として超純水(DIW)を用いて洗浄を行った(リンス処理)。
最後に、クリーンオーブンCLH-21CDH(光洋サーモ(株)製)を用いて230℃で1時間の加熱処理を行った(ポストベーク工程)。
このようにして、ガラス基板上に、所定のパターンが形成された実施例および比較例の硬化膜を得た。
【0254】
なお、第1塗膜および第2塗膜の形成条件について、第1表で挙げた項目の詳細は次の通りである。
ここで、スプレーコーター(製品名「DC110」、(株)三明製)は、
図8に示す動作を行って、基板100上に所定サイズの膜Pを形成する。具体的には、硬化性組成物をスプレー装置のノズル210から噴射しながら第1方向Xの一方側に移動させる第1動作と、第1方向Xと直交する第2方向Yにノズルを移動させる第2動作と、をこの順に繰り返すことにより所定サイズの塗膜Pを形成する。
そして、このような所定サイズの塗膜Pを形成する動作を繰り返すことで、所定サイズの塗膜Pが積層して(すなわち塗膜Pが塗り重ねられて)、第1塗膜(または第2塗膜)が形成される。
・霧化圧(g/cm
2):硬化性組成物をスプレー装置のノズルから噴射するために、硬化性組成物にかける圧力
・液圧(g/cm
2):硬化性組成物をノズルに供給するために、硬化性組成物にかける圧力
・ノズル開口目盛り:ノズルの開口径を示す指標。この数値が大きいほど、ノズルの開口径が大きいことを示す。
・ノズル高さ(cm):ノズルの先端から被塗布面までの距離
・スピード(mm/s):第1動作におけるノズルの移動速度
・ピッチ(mm):第2動作の1回当たりのノズル移動距離
・回数:所定サイズの塗膜を得るための第1動作の実行回数
・繰り返し:所定サイズの塗膜を塗り重ねた回数
【0255】
<リソグラフィー性能>
(直線性)
上記の所定パターンの形成された実施例および比較例の硬化膜について、倍率50倍の条件で光学顕微鏡(製品名「OLS4500」、オリンパス社製)を用いて観察して、下記の評価基準によって直線性を評価した。「B」評価で合格とした。評価結果を第2表に示す。
「A」:パターンのエッジ部(露光部と未露光部の境界部)がきれいな直線で現像できた。
「B」:パターンのエッジ部が、直線になった。
「C」:パターンのエッジ部が、現像不良で直線にならなかった。
(現像残り)
上記の所定パターンの形成された実施例および比較例の硬化膜について、倍率50倍の条件で光学顕微鏡(製品名「OLS4500」、オリンパス社製)を用いて観察して、下記の評価基準委よって現像残りを評価した。「B」評価で合格とした。評価結果を第2表に示す。
「A」:着弾痕が現像部に残渣としてほとんど観察されず、良好なパターンが形成された。
「B」:着弾痕が現像部に残渣としてやや認められたが、概ね良好なパターンが形成された。
「C」:着弾痕が現像部に残渣として多く認められ、解像不良であった。
【0256】
<ピンホール>
スプレーコーター(製品名「DC111」、(株)三明製)を用いて、下記第1表の条件(第1塗膜の形成条件)で上記硬化性組成物を8インチのガラス基板の表面(被塗布面)に噴射して塗膜を得た。得られた塗膜を100℃で2時間加熱して(プリベーク処理)、第1塗膜を得た。
次いで、上記スプレー装置を用いて、下記第1表の条件(第2塗膜の形成条件)で上記硬化性組成物を第1塗膜の表面(被塗布面)に噴射して塗膜を得た。得られた塗膜を100℃で2時間加熱して(プリベーク処理)、第1塗膜上に第2塗膜が積層された実施例および比較例のピンホール評価用サンプルを得た。
このようにして得られた各ピンホール評価用サンプルについて、倍率50倍にて透過光を用いた光学顕微鏡観察により硬化膜の任意の20視野における明部、つまりピンホールの数をカウントし、下記の基準により評価した。「B」以上の評価で合格とした。評価結果を第2表に示す。
「AA」:0個
「A」:1個以上2個以下
「B」:3個以上10個以下
「C」:10個超
【0257】
<反射率>
上記のピンホールの評価と同様にして、実施例および比較例の反射率測定用サンプルを作製した。
得られた実施例および比較例の反射率測定用サンプルについて、入射角度5°としたときの正反射率を400~1200nmの波長範囲で測定した。測定には、日立ハイテクノロジー製分光器UV4100を用いた。得られたスペクトルのうち最大値を反射率とした。反射率は、3%未満で合格とし、2%未満であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。評価結果を第2表に示す。
【0258】
<膜厚の測定>
(第1膜の膜厚)
スプレーコーター(製品名「DC111」、(株)三明製)を用いて、下記第1表の条件(第1塗膜の形成条件)で上記硬化性組成物を8インチのガラス基板の表面(被塗布面)に噴射して、塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃で2時間加熱して(プリベーク処理)、第1塗膜を得た。その後、基板上に形成された第1塗膜に対して、プロキシ露光装置EVG610(EVグループジャパン製)を用いて、照射力50mW/cm2で露光量600mJ/cm2となるように光を照射(露光)した(露光工程)。このようにして、ガラス基板上に第1膜を形成した。このようにして得られた第1膜について、Decktak XT(Bruker社製)を用いた物理的膜厚の測定を行った。
(第2膜の膜厚)
スプレーコーター(製品名「DC111」、(株)三明製)を用いて、下記第1表の条件(第2塗膜の形成条件)で上記硬化性組成物を8インチのガラス基板の表面(被塗布面)に噴射して、塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃で2時間加熱して(プリベーク処理)、第2塗膜を得た。その後、基板上に形成された第2塗膜に対して、プロキシ露光装置EVG610(EVグループジャパン製)を用いて、照度50mW/cm2で露光量600mJ/cm2となるように光を照射(露光)した(露光工程)。このようにして、ガラス基板上に第2膜を形成した。このようにして得られた第2膜について、DecktakXT(Bruker社製)を用いた物理的膜厚の測定を行った。
(第1膜および第2膜の合計膜厚)
スプレーコーター(製品名「DC110」、(株)三明製)を用いて、下記第1表の条件(第1塗膜の形成条件)で上記硬化性組成物を8インチのガラス基板の表面(被塗布面)に噴射して塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃のオーブンを使用して2時間加熱して(プリベーク処理)、第1塗膜を形成した(第1工程)。
次いで、上記スプレー装置を用いて、下記第1表の条件(第2塗膜の形成条件)で上記硬化性組成物を第1塗膜の表面(被塗布面)に噴射して、塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃のオーブンを使用して2時間加熱して(プリベーク処理)、第2塗膜を形成した(第2工程)。
その後、基板上に形成された第1塗膜および第2塗膜に対して、プロキシ露光装置EVG610(EVグループジャパン製)を用いて、照度50mW/cm2で露光量600mJ/cm2となるように光を照射(露光)した(露光工程)。これにより、ガラス基板上に、第1膜、第2膜の順に積層された硬化膜が得られた(第2膜/第1膜/ガラス基板)。
このようにして得られた硬化膜(第1膜+第2膜)について、Decktak XT(Bruker社製)を用いた物理的膜厚の測定を行った。
なお、各膜厚は、平均厚みであり、各膜の任意の5点の厚みを測定し、それらを算術平均した値である。第1膜および第2膜の各膜厚を第1表に、硬化膜(第1膜+第2膜)の膜厚を第2表にそれぞれ示す。
【0259】
<着弾サイズ>
第1表に示す第1塗膜の形成条件において「回数」および「繰り返し」をそれぞれ1とした以外は、第1表に示す第1塗膜の形成条件と同様にして、スプレーコーター(製品名「DC110」、(株)三明製)を用いて、上記硬化性組成物を8インチのガラス基板の表面(被塗布面)に噴射して、塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃のオーブンを使用して2時間加熱し(プリベーク処理)、着弾サイズD1の測定用サンプルを得た。
測定用サンプルについて、着弾痕(粒状物)を合計で500点以上含むように、倍率50倍にて光学顕微鏡を用いて5ショット撮影した。5ショット中に観察される着弾痕(粒状物)が円であるとみなして、着弾痕(粒状物)500点の直径を測定し、これを算術平均したものを着弾サイズD1とした。
第1表に示す第2塗膜の形成条件において「回数」および「繰り返し」をそれぞれ1とした以外は、第1表に示す第2塗膜の形成条件と同様にして、スプレーコーター(製品名「DC110」、(株)三明製)を用いて、上記硬化性組成物を8インチのガラス基板の表面(被塗布面)に噴射して、塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃で2時間加熱して(プリベーク処理)、着弾サイズD2の測定用サンプルを得た。これ以外は上記着弾サイズD1の測定と同様にして、着弾サイズD2を測定した。
着弾サイズD1および着弾サイズD2の測定結果を第1表に示す。
【0260】
<表面粗さRa>
(第1膜の表面粗さRa)
上記「(第1膜の膜厚)」と同様の条件で第1膜を形成した。得られた第1膜について、原子間力顕微鏡(ナノスコープ4A、日本ビーコ製)を用いて10um×10umの視野で表面凹凸を評価することで表面粗さRaを測定した。
(第2膜の表面粗さRa)
上記「(第2膜の膜厚)」と同様の条件で第1膜を形成した。得られた第2膜について、第1膜と同様の条件で表面粗さRaを測定した。
各膜の表面粗さRaの測定結果を第1表に示す。
(硬化膜の表面粗さ)
上記「(第1膜および第2膜の合計膜厚)」と同様の条件で、ガラス基板上に、第1膜、第2膜の順に積層された硬化膜を形成した(第2膜/第1膜/ガラス基板)。得られた硬化膜について、第1膜と同様の条件で表面粗さRaを測定した。
【0261】
【0262】
【0263】
第2表に示すように、着弾サイズD1と着弾サイズD2との比D1/D2が5~150である実施例1~10の硬化膜の製造方法によれば、反射率が低く、リソグラフィー性能(直線性、現像残りおよびピンホール)に優れた硬化膜が得られることがわかった。
一方、着弾サイズD1と着弾サイズD2との比D1/D2が5~150の範囲外である比較例1~5の硬化膜の製造方法によれば、反射率およびリソグラフィー性能の少なくとも一方が優れないことがわかった。
【0264】
<実施例11~実施例26、比較例6>
実施例1において、着弾サイズD1およびD2は変えずに、霧化圧、液圧、繰り返し回数のみを適宜調整して、第3表に示す実施例11~26の硬化膜を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
また、比較例2において、着弾サイズD1およびD2は変えずに、霧化圧、液圧、繰り返し回数のみを適宜調整して、第3表に示す比較例6の硬化膜を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
各実施例および比較例の評価結果を第3表に示す。
【0265】
(空隙率)
上記のようにして得られた実施例11~26、比較例6の硬化膜について、以下のようにして空隙率を測定した。
具体的には、各硬化膜について、SEM(走査型電子顕微鏡;日本電子(株)製JSM-7401)を用いて断面SEM観察を行った。得られた断面SEM写真を画像ソフト(Adobe Systems,Inc.社製“Adobe Photoshop”)にて閾値を調整して白および黒の二値化し、白と黒のドット数比から空隙率を算出した。白のドットは空隙を指し、黒のドットは硬化膜を指す。
具体的には、空隙率A1は、第1面(基板側の面)から第2面(基板と対向する面)に向って硬化膜の厚みが10±5%の領域内にある断面像に基づいた上記画像解析により、「白のドット数/黒のドット数」を算出することで得られた。また、空隙率A2は、第2面から第1面に向って硬化膜の厚みが10±5%の領域内にある断面像に基づいた上記画像解析により、「白のドット数/黒のドット数」を算出することで得られた。
画像解析による白と黒のドットからなる画像について、10000倍で観察し、上記所定の領域10視野で平均化したものを空隙率とした。
算出した空隙率を以下の基準に従って評価した。
【0266】
(評価結果)
評価結果を下記第3表に示す。
【0267】
【0268】
第3表に示すように、空隙率A1と空隙率A2がA1<A2の関係である実施例11~26の硬化膜によれば、反射率が低く、リソグラフィー性能(直線性、現像残りおよびピンホール)に優れた硬化膜が得られることがわかった。
一方、空隙率A1と空隙率A2がA1>A2の関係である比較例6の硬化膜によれば、リソグラフィー性能(直線性、現像残りおよびピンホール)が悪い硬化膜が得られた。
【0269】
<実施例27>
硬化性組成物1の代わりに硬化性組成物2を用いた以外は実施例2と同様にして評価を行ったところ、着弾サイズ比、硬化膜の膜厚、膜厚の比、反射率、硬化膜の表面粗さ、リソグラフィー性能すべてにおいて実施例2と同程度の良好な硬化膜を得ることができた。
<硬化性組成物2>
下記に示す成分を、混合、攪拌して、硬化性組成物を得た。
・追添溶媒:PGMEA ・・・3.8質量部
・追添溶媒:シクロペンタノン
・・・21.8質量部
・バインダーポリマー:アクリキュアRD-F8 (日本触媒製) 40%PGMEA溶液
・・・6.7質量部
・重合性化合物:DPHA(KAYARAD 日本化薬製)70%PGMEA溶液
・・・7.5質量部
・重合禁止剤:p-メトキシフェノール ・・・0.003質量部
・界面活性剤:上記構造の界面活性剤A(1.0%PGMEA溶液)
・・・2.1質量部
・重合開始剤:IRGACURE OXE-02(BASF社製)
・・・1.6質量部
・分散液:上記の顔料分散物 ・・・56.6質量部
【0270】
<実施例28>
実施例1の顔料分散物の作製において、チタンブラックに変えて、カーボンブラック(商品名「カラーブラック S170」、デグサ社製、平均一次粒子径17nm、BET比表面積200m2/g、ガスブラック方式により製造されたカーボンブラック)を使用した以外は同様の方法により顔料分散物Aを得た。
【0271】
実施例1で使用した硬化性組成物1において、硬化性組成物1で使用した顔料分散物を上記の顔料分散物Aに変えた他は同様にして、硬化性組成物3を得た。
【0272】
硬化性組成物1の代わりに硬化性組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行ったところ、着弾サイズ比、硬化膜の膜厚、膜厚の比、反射率、硬化膜の表面粗さ、リソグラフィー性能すべてにおいて実施例1と同程度の良好な硬化膜を得ることができた。
【0273】
<実施例29>
実施例1の顔料分散物の作製において、チタンブラックに変えて、ピグメントレッド254(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名BK-CF)を使用した以外は同様にして、顔料分散液Bを得た。
【0274】
実施例1の顔料分散物40.3質量部を33質量部に変更し、さらに顔料分散物Bを7.3質量部加えた他は硬化性組成物1と同様にして、硬化性組成物4を作製した。
【0275】
硬化性組成物1の代わりに硬化性組成物4を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行ったところ、着弾サイズ比、硬化膜の膜厚、膜厚の比、反射率、硬化膜の表面粗さ、リソグラフィー性能すべてにおいて実施例1と同程度の良好な硬化膜を得ることができた。
【0276】
<実施例30>
(染料ポリマーの合成)
特開2011-242752号公報の段落0165に記載の造塩化合物(A-1)の製造方法に従って、色素多量体(キサンテンXa)を得た。
なお、以下に使用したモノマー、および、色素の構造を示す。GPC測定により確認した色素多量体(キサンテンXa)の重量平均分子量(Mw)は、10500であった。
【0277】
【0278】
実施例1における顔料分散物40.3質量部を、33.0質量部に変更し、さらに上記の色素多量体(キサンテンXa)を1.8質量部加え、さらにPGMEAを5.5質量部加えた他は硬化性組成物1と同様にして、硬化性組成物5を得た。
【0279】
硬化性組成物1の代わりに硬化性組成物5を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行ったところ、着弾サイズ比、硬化膜の膜厚、膜厚の比、反射率、硬化膜の表面粗さ、リソグラフィー性能すべてにおいて実施例1と同程度の良好な硬化膜を得ることができた。
【0280】
上記の結果から、着色剤を変えた場合、あるいは併用した場合であっても、本願所望の効果が得られることが推定される。
【0281】
<実施例31>
重合開始剤をIRGACURE-907(BASFジャパン社製)に変えた以外は硬化性組成物1と同様にして、硬化性組成物6を調製した。
【0282】
硬化性組成物1の代わりに硬化性組成物6を用いた以外は実施例1同様にして評価を行ったところ、着弾サイズ比、硬化膜の膜厚、膜厚の比、反射率、硬化膜の表面粗さ、リソグラフィー性能すべてにおいて実施例1と同程度の良好な膜を得ることができた。
【0283】
<実施例32>
硬化性組成物1の重合性化合物を、KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製)0.5部、および、PET-30(ペンタエリスリトールトリアクリレート、日本化薬(株)製)1.3部に変えた以外は同様の方法により硬化性組成物7を調製した。
【0284】
硬化性組成物1の代わりに硬化性組成物7を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行ったところ、着弾サイズ比、硬化膜の膜厚、膜厚の比、反射率、硬化膜の表面粗さ、リソグラフィー性能すべてにおいて実施例1と同程度の良好な硬化膜を得ることができた。
【0285】
上記の結果から、重合開始剤や、重合性化合物を変えた場合であっても、本願所望の効果が得られることが推定される。
【符号の説明】
【0286】
2,20,30,40 固体撮像装置
3 CMOSセンサ
4 回路基板
5 セラミック基板
5a 開口
5b 内壁面
6 IRカットフィルタ
7 撮影レンズ
8 レンズホルダ
9 保持筒
11,21,31,41 遮光膜(遮光層)
100 基板
120 塗膜
120A 第1塗膜
120B 第2塗膜
120a,120b 粒状物
210 ノズル
P 所定サイズの塗膜
X 第1方向
Y 第2方向