(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】抵抗体、及び、めっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 17/10 20060101AFI20220221BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20220221BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
C25D17/10 A
C25D17/00 F
C25D17/06 C
(21)【出願番号】P 2021559593
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021023016
【審査請求日】2021-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 良輔
(72)【発明者】
【氏名】下山 正
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰之
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-152600(JP,A)
【文献】特開2002-054000(JP,A)
【文献】特表2016-504500(JP,A)
【文献】国際公開第2004/009879(WO,A1)
【文献】特許第6906729(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽において基板とアノードとの間に配置される
電場調整用の抵抗体であって、
同心であり且つ径が異なる3以上の基準円上にそれぞれ形成された第1の複数の孔と、
前記3以上の基準円を囲む外周基準線であって少なくとも一部がトロコイド曲線である外周基準線上に形成された第2の複数の孔と、
が形成されている抵抗体。
【請求項2】
前記第2の複数の孔のうち少なくとも一部は、周方向に沿って長い長孔である、請求項1に記載の抵抗体。
【請求項3】
前記長孔は、前記3以上の基準円から離れた領域に形成されるほど前記周方向に沿って長い、請求項2に記載の抵抗体。
【請求項4】
前記3以上の基準円における最外周の前記基準円と前記外周基準線との距離が第1距離未満の所定領域では、前記第2の複数の孔は形成されない、請求項1から3の何れか1項に記載の抵抗体。
【請求項5】
前記所定領域では、前記最外周の基準円に形成された前記第1の複数の孔は、前記所定領域ではない前記最外周の基準円に形成された前記第1の複数の孔に比して大きい、請求項4に記載の抵抗体。
【請求項6】
前記第1の複数の孔は、前記基準円上に周方向に沿って等間隔に配置される、請求項1から5の何れか1項に記載の抵抗体。
【請求項7】
前記第1の複数の孔それぞれは、少なくとも前記3以上の基準円における最外周の前記基準円に形成される孔を除いて同一寸法である、請求項1から6の何れか1項に記載の抵抗体。
【請求項8】
任意の前記基準円の径と隣接する前記基準円の径との差が一定である、請求項1から7の何れか1項に記載の抵抗体。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載された抵抗体と、
前記抵抗体を収容するめっき槽と、を備えためっき装置。
【請求項10】
基板を保持する基板ホルダと、
前記基板ホルダを回転させる回転機構と、
を更に備えた請求項9に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗体、及び、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハやプリント基板等の基板の表面に配線、バンプ(突起状電極)等を形成することが行われている。この配線及びバンプ等を形成する方法として、電解めっき法が知られている。
【0003】
電解めっき法によるめっき装置では、ウェハ等の円形基板とアノードとの間に多数の孔を有する電場調整用の抵抗体を配置することが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、めっき装置の一例としてカップ式の電解めっき装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。カップ式の電解めっき装置は、被めっき面を下方に向けて基板ホルダに保持された基板(例えば半導体ウェハ)をめっき液に浸漬させ、基板とアノードとの間に電圧を印加することによって、基板の表面に導電膜を析出させる。カップ式のめっき装置では、基板にめっき層が均一に形成されるように、基板を回転させながらめっき処理を施すことも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-225129号公報
【文献】特開2008-19496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カップ式の電解めっき装置においても、多数の孔を有するパンチングプレートを電場調整用の抵抗体として設けることが考えられる。こうした場合、抵抗体に同心の複数の基準真円上に多数の孔を形成することで、好適に電場調整を行うことができる。しかしながら、本発明者らの研究により、このように形成した抵抗体を用いた場合、ウェハの外周部近傍の膜厚均一性が低くなる場合があることが分かっている。これは、例えば、多数の孔の形成精度、またはめっき槽の寸法精度等の影響によるものと考えられる。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものである。その目的の一つは、基板に形成されるめっき膜の均一性を向上させることができる抵抗体、及び、めっき装置を提案することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態によれば、めっき槽において基板とアノードとの間に配置される抵抗体が提案される。前記抵抗体は、同心であり且つ径が異なる3以上の基準円上にそれぞれ形成された第1の複数の孔と、前記3以上の基準円を囲む外周基準線であって少なくとも一部がトロコイド曲線である外周基準線上に形成された第2の複数の孔と、が形成されている。
【0009】
本発明の他の一形態によれば、めっき装置が提供される。このめっき装置は、上記抵抗体と、前記抵抗体を収容するめっき槽と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のめっきモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の抵抗体を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の抵抗体に形成される複数の孔を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、抵抗体に形成される複数の孔の第2例を示している。
【
図7】
図7は、抵抗体に形成される複数の孔の第3例を示している。
【
図8】
図8は、抵抗体に形成される複数の孔の第4例を示している。
【
図9】
図9は、抵抗体に形成される複数の孔の第5例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
<めっき装置の全体構成>
図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。本実施形態のめっき装置は、基板に対してめっき処理を施すために使用される。基板は、角形基板、円形基板を含む。
図1、2に示すように、めっき装置1000は、ロード/アンロードモジュール100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤモジュール600、搬送装置700、および、制御モジュール800を備える。
【0013】
ロード/アンロードモジュール100は、めっき装置1000に半導体ウェハなどの基板を搬入したりめっき装置1000から基板を搬出したりするためのモジュールであり、基板を収容するためのカセットを搭載している。本実施形態では4台のロード/アンロードモジュール100が水平方向に並べて配置されているが、ロード/アンロードモジュール100の数および配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロード/アンロードモジュール100、アライナ120、および搬送装置700の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110および搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、図示していない仮置き台を介して基板の受け渡しを行うことができる。アライナ120は、基板のオリフラ(オリエンテーションフラット)やノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数および配置は任意である。
【0014】
プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面に純水または脱気水などの処理液(プリウェット液)を付着させるためのモジュールである。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数および配置は任意である。プリソークモジュール300は、めっき処理前の基板の被めっき面の酸化膜をエッチングするためのモジュールである。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数および配置は任意である。
【0015】
めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施すためのモジュールである。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数および配置は任意である。
【0016】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板を洗浄するためのモジュールである。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数および配置は任意である。スピンリンスドライヤモジュール600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤモジュールが上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤモジュールの数および配置は任意である。
【0017】
搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するためのモジュールであり、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0018】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロード/アンロードモジュール100に基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロード/アンロードモジュール100から基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、オリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板を搬送装置700へ受け渡す。
【0019】
搬送装置700は、搬送ロボット110から受け取った基板をプリウェットモジュール200へ搬送する。プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0020】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤモジュール600へ搬送する。スピンリンスドライヤモジュール600は、基板に乾燥処理を施す。搬送装置700は、乾燥処理が施された基板を搬送ロボット110へ受け渡す。搬送ロボット110は、搬送装置700から受け取った基板をロード/アンロードモジュール100へ搬送する。最後に、ロード/アンロードモジュール100から基板が搬出される。
【0021】
<めっきモジュールの構成>
次に、めっきモジュール400の構成を説明する。本実施形態における24台のめっきモジュール400は同一の構成であるので、1台のめっきモジュール400のみを説明する。
図3は、本実施形態のめっきモジュール400の構成を概略的に示す縦断面図である。
図3に示すように、めっきモジュール400は、めっき液を収容するためのめっき槽410を備える。めっき槽410は、上面が開口した円筒形の内槽412と、内槽412の上縁からオーバーフローしためっき液を溜められるように内槽412の周囲に設けられた図示しない外槽と、を含んで構成される。
【0022】
めっきモジュール400は、被めっき面Wf-aを下方に向けた状態で基板Wfを保持するための基板ホルダ440を備える。また、基板ホルダ440は、図示していない電源から基板Wfに給電するための給電接点を備える。めっきモジュール400は、基板ホルダ440を昇降させるための昇降機構442を備える。また、一実施形態では、めっきモジュール400は、基板ホルダ440を鉛直軸まわりに回転させる回転機構448を備える。昇降機構442および回転機構448は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる
【0023】
めっきモジュール400は、内槽412の内部を上下方向に隔てるメンブレン420を備える。内槽412の内部はメンブレン420によってカソード領域422とアノード領域424に仕切られる。カソード領域422とアノード領域424にはそれぞれめっき液が充填される。なお、本実施形態ではメンブレン420が設けられる一例を示したが、メンブレン420は設けられなくてもよい。
【0024】
アノード領域424の内槽412の底面にはアノード430が設けられる。また、アノード領域424には、アノード430と基板Wfとの間の電解を調整するためのアノードマスク426が配置される。アノードマスク426は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノード430の前面(上方)に設けられる。アノードマスク426は、アノード430と基板Wfとの間に流れる電流が通過する開口を有する。なお、本実施形態では、アノードマスク426が設けられる一例を示したが、アノードマスク426は設けられなくてもよい。さらに、上記したメンブレン420は、アノードマスク426の開口に設けられてもよい。
【0025】
カソード領域422にはメンブレン420に対向する抵抗体450が配置される。抵抗体450は、基板Wfの被めっき面Wf-aにおけるめっき処理の均一化を図るための部材である。
図4は、本実施形態の抵抗体を模式的に示す平面図である。なお、
図4では、理解の容易のために、抵抗体の一部を拡大して併せて示している。また、
図4に示す例は、後述する第5例(
図9)に相当する。
図4に示すように、抵抗体450は、複数の孔452、454を有する。孔452、454は、抵抗体450の表面と裏面との間を貫通し、めっき液及びめっき液中のイオンを通過させる経路を構成する。本実施形態に係る抵抗体450には、第1の複数の孔452と、第2の複数の孔454とが形成されている。
【0026】
第1の複数の孔452は、同心であり且つ径が異なる3以上の仮想的な基準円(
図4中、一点鎖線を参照)上に配置されている。言い換えれば、第1の複数の孔452は、抵抗体450の径方向に分散するように配置される。第1の複数の孔452は、基準円上に周方向に沿って等間隔に配置されることが好ましい。これにより、基準円の周方向に沿って孔452を分散して配置することができる。また、抵抗体450では、任意の基準円の径と、これに隣接する基準円との径との差が一定であることが好ましい。言い換えれば、孔452は径方向において等間隔に配置されることが好ましい。これにより、基準円の径方向に沿って孔452を分散して配置することができる。また、一実施形態では、第1の複数の孔452のそれぞれは、上面から見て真円形である。第1の複数の孔452のそれぞれは、互いに同一の寸法であってもよい。なお、本明細書において、「等間隔」および「同一」は、数学的に完全な等間隔に限らず、機械加工等の誤差に起因した多少のずれも含み得る。
【0027】
第2の複数の孔454は、第1の複数の孔452の外周側に配置されている。具体的には、第2の複数の孔454は、第1の複数の孔452が配置される基準円を囲む外周基準線(
図4中、二点鎖線を参照)上に形成される。ここで、本実施形態では、外周基準線はトロコイド曲線である。本発明者らの研究により、このように外周側の第2の複数の孔454を、少なくとも一部がトロコイド曲線である外周基準線上に配置することにより、めっきモジュール400において基板Wfに形成されるめっき膜の均一性を向上できることが分かっている。
【0028】
図5は、本実施形態の抵抗体に形成される複数の孔を説明するための模式図である。なお、
図5の上段には、比較例として、第2の複数の孔452が真円である基準円(
図5中、破線参照。以下、「参照円」と称する。)上に配置されている例を示している。また、
図5の下段には、抵抗体に形成される複数の孔の第1例として、第2の複数の孔452がトロコイド曲線である外周基準線(
図5中、2点鎖線を参照)上に配置されている例を示している。
図5の下段に示すように、外周基準線は、所定の動円を参照円の内周に沿って移動させた際に動円の所定の定点が描くトロコイド曲線であり得る。ただし、こうした例に限定されず、外周基準線は、所定の動円を参照円の外周に沿って移動させた際に動円の所定の定点が描くトロコイド曲線であり得る。ここで、動円は、一例として、参照円を沿って一周するときに7回転(2520°回転)するように定められ得る。
【0029】
図6は、抵抗体に形成される複数の孔の第2例を示している。
図6に示すように、トロコイド曲線である外周基準線のうち、第1の複数の孔452との距離が近い領域(
図6中、ハッチングを付した領域。「所定領域」とも称する。)においては、第2の複数の孔454が形成されないものとしてもよい。一例として、所定領域は、外周基準線と第1の複数の孔452の基準円との距離が、予め定められた閾値よりも小さい領域である。第2例によれば、第1の複数の孔452と第2の複数の孔454との距離が近づきすぎないようにすることができ、所定領域において開口率が過大になることを抑制できる。なお、上記した第1例(
図5)では、理解の容易のために、第1の複数の孔452と第2の複数の孔454との一部が重なり合っているが、当該例は誇張して示されているものであり、第1の複数の孔452と第2の複数の孔454とは互いに重なり合わないことが好ましい。
【0030】
図7は、抵抗体に形成される複数の孔の第3例を示している。上記した第2例(
図6)において、第2の複数の孔454が形成されない領域(
図7中、ハッチングを付した領域。「所定領域」とも称する。)において、第3例では、第1の複数の孔452が他の領域の孔452よりも大きくされている。つまり、第3例では、所定領域における第1の複数の孔452の径raが、所定領域外の第1の複数の孔452の径rbよりも大きい。こうした例によれば、所定領域の境界付近において、抵抗体の開口率が急激に変化することを抑制することができ、基板Wfに形成されるめっき膜の均一性を向上させることができる。
【0031】
図8は、抵抗体に形成される複数の孔の第4例を示している。
図8に示すように、第2の複数の孔454は、周方向に長い長孔であってもよい。この場合、一例として、第2の複数の孔454は、第1の複数の孔452(または、その基準円)から遠い位置に配置される孔ほど、周方向に長い長孔とされてもよい。このように、第2の複数の孔454の少なくとも一部が長孔であることにより、外周基準線に沿った開口率の変化を小さくすることができ、基板Wfに形成されるめっき膜の均一性を向上させることができる。なお、
図8に示す例では、上記した第2例(
図6)と同様に、第1の複数の孔452との距離が近い領域(所定領域)においては、第2の複数の孔454が形成されていないが、こうした例には限定されない。
【0032】
図9は、抵抗体に形成される複数の孔の第5例を示している。
図9に示す第5例では、第4例(
図8)と同様に、第2の複数の孔454は、周方向に長い長孔とされている。また、
図9に示す第5例では、第3例(
図7)と同様に、所定領域においては第2の複数の孔454が形成されず、第1の複数の孔452が大きくされている。こうした例によれば、抵抗体の開口率を滑らかに変化させることができ、基板Wfに形成されるめっき膜の均一性を向上させることができる。
【0033】
ここで、本実施形態のめっきモジュール400におけるめっき処理についてより詳細に説明する。昇降機構442を用いて基板Wfをカソード領域422のめっき液に浸漬させることにより、基板Wfがめっき液に暴露される。めっきモジュール400は、この状態でアノード430と基板Wfとの間に電圧を印加することによって、基板Wfの被めっき面Wf-aにめっき処理を施すことができる。一実施形態では、回転機構448を用いて基板ホルダ440を回転させながらめっき処理が行われる。めっき処理により、基板Wf-aの被めっき面Wf-aに導電膜(めっき膜)が析出する。そして、本実施形態では、上記した抵抗体450が採用されることにより、抵抗体450に形成されている孔密度が均等であり、基板に形成されるめっき膜の均一性を向上させることができる。
【0034】
(変形例)
上記した実施形態では、第2の複数の孔454が形成される外周基準線がトロコイド曲線であるものとした。しかしながら、外周基準線は、少なくとも一部がトロコイド曲線であればよく、
図10に一例を示すように、定円に対する変位位相(凹凸)が反対である2つのトロコイド曲線(
図10中、一点鎖線C1および二点鎖線C2を参照)のブーリアン和からなる線(
図10中、太線参照)であってもよい。また、この場合には、2つのトロコイド曲線は、互いに同一の定円であって動円の半径が異なる曲線であってもよい。なお、2つのトロコイド曲線では、動円が、参照円を沿って一周するときに7回転(2520°回転)するように定められ得る。
【0035】
本発明は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、めっき槽において基板とアノードとの間に配置される抵抗体が提案され、前記抵抗体は、同心であり且つ径が異なる3以上の基準円上にそれぞれ形成された第1の複数の孔と、前記3以上の基準円を囲む外周基準線であって少なくとも一部がトロコイド曲線である外周基準線上に形成された第2の複数の孔と、が形成されている。
形態1によれば、めっき装置に使用された際に、基板に形成されるめっき膜の均一性を向上させることができる。
【0036】
[形態2]形態2によれば、形態1において、前記第2の複数の孔のうち少なくとも一部は、周方向に沿って長い長孔である。
形態2によれば、めっき装置に使用された際に、基板に形成されるめっき膜の均一性をより向上させることができる。
【0037】
[形態3]形態3によれば、形態2において、前記長孔は、前記3以上の基準円から離れた領域に形成されるほど前記周方向に沿って長い。
形態3によれば、めっき装置に使用された際に、基板に形成されるめっき膜の均一性をより向上させることができる。
【0038】
[形態4]形態4によれば、形態1から3において、前記3以上の基準円における最外周の前記基準円と前記外周基準線との距離が第1距離未満の所定領域では、前記第2の複数の孔は形成されない。
形態4によれば、めっき装置に使用された際に、基板に形成されるめっき膜の均一性をより向上させることができる。
【0039】
[形態5]形態5によれば、形態4において、前記所定領域では、前記最外周の基準円に形成された前記第1の複数の孔は、前記所定領域ではない前記最外周の基準円に形成された前記第1の複数の孔に比して大きい。
形態5によれば、めっき装置に使用された際に、基板に形成されるめっき膜の均一性をより向上させることができる。
【0040】
[形態6]形態2によれば、形態1から5において、前記第1の複数の孔は、前記基準円上に周方向に沿って等間隔に配置される。
【0041】
[形態7]形態7によれば、形態1から6において、前記第1の複数の孔それぞれは、少なくとも前記3以上の基準円における最外周の前記基準円に形成される孔を除いて同一寸法である
【0042】
[形態8]形態8によれば、形態1から7において、任意の前記基準円の径と隣接する前記基準円の径との差が一定である。
【0043】
[形態9]形態9によれば、形態1から8の何れか1つに記載された抵抗体と、前記抵抗体を収容するめっき槽と、を備えためっき装置が提案される。
形態9によれば、基板に形成されるめっき膜の均一性をより向上させることができる。
【0044】
[形態10]形態10によれば、形態9において、基板を保持する基板ホルダと、前記基板ホルダを回転させる回転機構と、を更に備える。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
400…めっきモジュール
410…めっき槽
420…メンブレン
422…カソード領域
424…アノード領域
430…アノード
440…基板ホルダ
442…昇降機構
448…回転機構
450…抵抗体
452…第1の複数の孔
454…第2の複数の孔
800…制御モジュール
1000…めっき装置
Wf…基板
【要約】
基板に形成されるめっき膜の均一性を向上させることができる抵抗体等を提供する。
めっき槽において基板とアノードとの間に配置される抵抗体が提供される。この抵抗体には、同心であり且つ径が異なる3以上の基準円上にそれぞれ形成された第1の複数の孔と、前記3以上の基準円を囲む外周基準線であって少なくとも一部がトロコイド曲線である外周基準線上に形成された第2の複数の孔と、が形成されている。