(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】異方性磁石の成形用金型及びこれを用いた異方性磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20220222BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20220222BHJP
B22F 3/035 20060101ALI20220222BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20220222BHJP
【FI】
B29C33/38
H01F41/02 G
B22F3/035 D
B22F3/00 C
(21)【出願番号】P 2018004336
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】松田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】坪井 義博
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-194806(JP,A)
【文献】特開2005-312167(JP,A)
【文献】実開昭60-174228(JP,U)
【文献】特開昭61-230309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/38
H01F 41/02
B22F 3/035
B22F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、
前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、
前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、
前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、
前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造で
あり、
前記外径金型部品の外側には外部から作用する磁場の磁束を絞り込んで前記外径金型部品に与える磁性材からなる磁束絞り部品を備えることを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項2】
成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、
前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、
前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、
前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、
前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造で
あり、
前記内径金型部品は、成形すべき円環状の異方性磁石の内径に対する前記磁性部品の厚さが8.3%以下であることを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項3】
成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、
前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、
前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、
前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、
前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造で
あり、
前記内径金型部品は、前記磁性部品の飽和磁化が1.3T以上で、前記非磁性部品の飽和磁化が0.2T以下であることを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項4】
成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、
前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、
前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、
前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、
前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造で
あり、
前記内径金型部品は、前記磁性部品の硬度がHRCで50以上であることを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項5】
請求項
1乃至4のいずれかに記載の異方性磁石の成形用金型において、
成形すべき円環状の異方性磁石の磁化配向の方向が当該磁石の直径方向に対して2極で、当該方向に磁化が整列されることを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれかに記載の異方性磁石の成形用金型において、
前記内径金型部品は、前記磁性部品と前記非磁性部品とを固定したものであることを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれかに記載の異方性磁石の成形用金型を用いて異方性磁石を製造するに際し、
前記成形用金型の空洞部に成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物を充填する充填工程と、
前記充填工程後において前記成形用金型に外部から磁場を作用させることで前記空洞部に充填された組成物を磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、
前記配向・成形工程にて成形された異方性磁石を冷却して前記成形用金型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする異方性磁石の製造方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の異方性磁石の製造方法において、
成形すべき異方性磁石が、異方性Sm-Fe-N系磁石粉末、異方性Nd-Fe-B系磁石粉末、異方性Sm-Co系磁石粉末および異方性フェライト系磁石粉末のいずれか1種類以上の磁石粉末と、樹脂との混合物を主成分とするものであることを特徴とする異方性磁石の製造方法。
【請求項9】
請求項
7又は
8に記載の異方性磁石の製造方法において、
成形すべき異方性磁石が、磁石粉末と熱可塑性樹脂との混合物を主成分とし、射出成形、押出成形および射出圧縮成形のいずれかの成形法で形成されることを特徴とする異方性磁石の製造方法。
【請求項10】
成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、
前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、
前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、
前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、
前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造である異方性磁石の成形用金型を用いて異方性磁石を製造するに際し、
前記成形用金型の空洞部に成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物を充填する充填工程と、
前記充填工程後において前記成形用金型に外部から磁場を作用させることで前記空洞部に充填された組成物を磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、
前記配向・成形工程にて成形された異方性磁石を冷却して前記成形用金型から取り出す取出工程と、を含み、
成形された異方性磁石が、当該異方性磁石を着磁後の表面磁束密度のN極とS極が切り替わる角度位置を中心に±10°以内の角度範囲で、各角度の表面磁束密度と理想直線から算出される磁束密度との差を、前記角度範囲内の最大と最小の磁束密度差で割った値を直線性の指標とした場合、当該指標が±1%F.S.以下の直線性を有することを特徴とする異方性磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性磁石を磁化配向して成形する成形用金型に関し、より詳しくは、所望の表面磁束密度波形を得るための異方性磁石の磁化配向を調整する成形用金型及びこれを用いた異方性磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンド磁石は、磁石粉末、有機樹脂等のバインダ成分、及び強化剤、可塑剤、滑剤等の添加剤等から成る複合ペレットを、射出成形、圧縮成形又は押出成形することにより製造される。特に、ポリアミド(PA)樹脂やポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の熱可塑性樹脂をバインダとし、さらに射出成形法を用いて製造されるボンド磁石は、寸法精度が高い、後加工が必要ない、複雑な形状が簡単に成形できる、金属や樹脂等との一体成形により接着の必要がない、など焼結磁石にはない多くの利点があり、エアコン室外機のファンモータなどの動力用や、車載バルブの回転角度検出センサなどのセンサ用など幅広い用途で使われている。近年は、車両の軽量化や電動化に伴いモータ、磁気センサの車両搭載数は年々増加傾向にあり、磁力が強い希土類ボンド磁石の使用も増えている。
【0003】
ボンド磁石には、粒子内で磁化方向がランダムな方向の等方性磁石粉を用いた等方性ボンド磁石と、粒子内で磁化方向が揃った異方性磁石粉を用いた異方性ボンド磁石とがある。
等方性ボンド磁石は、形状作成時に磁化方向を揃える必要がなく容易に形状を成形でき、表面磁束密度等の所望の磁束密度波形は形状や着磁ヨークの工夫で得られる。しかし、モータの更なる小型化、高トルク化、高効率化など、磁気センサの小型化、高ギャップ化、高精度化等に対しての要望には応えきれず、より磁力の高い異方性ボンド磁石の採用が拡がりつつある。
異方性ボンド磁石は、形状作成時に磁石材料が充填される空間(キャビティ)にコントロールされた磁場を与えて磁化方向を揃える必要がある。キャビティに磁場を与える方法は、金型内に配向用磁石を埋め込み配向磁場を発生させる方法と、金型や成形機に配置されたコイルに電流を流して配向磁場を発生させる方法の2種類がある。後者のコイルにより配向磁場を発生させる方法では、一部のメーカから射出成型機にコイルを埋め込んだ磁場射出成型機が市販されている。
【0004】
この種の成形機に配置されたコイルに電流を流して配向磁場を発生させる方法では、配向用磁石やコイルを金型内に埋め込む必要がないため金型を安価に作製できることや、成形後に金型内で成形体の磁力を適度に減磁して後工程での取扱いを容易にできることなどの利点がある。
前記のように磁石の用途には、モータ等の動力用および位置検出等の磁気センサ用がある。磁気センサは、磁石や強磁性体などの磁気的変化を発生する信号源とこれを検出する磁気センサ素子を主として構成される。磁気センサ素子には、ホール効果を用いたホール素子やホールIC、磁気抵抗効果を用いたMR素子やGMR素子、磁歪効果を用いた素子などがある。磁気センサは、更なる小型・高精度化に加えて、異物等の影響を少なくするために広ギャップ化や、外部磁場の影響を受けないことや、温度変化等の外部環境の影響が少ないことなどが要求されている。これら要求に応えるために、近年の磁気センサには、信号処理用のICを用いて磁気センサ素子の出力信号の直線性補正、温度補完などを行っているものもある。しかし、これらは高価なICを用いるために一部用途に限られている。
【0005】
安価に精度のよい磁気センサを実現する手段として、例えば特許文献1には回転角に対する磁石と磁気センサ素子との距離が変わるように特殊な形状の磁性体や磁石を用いた構成が示されている。
また、特許文献2には、磁石と磁気センサ素子の距離は同じであるが、回転角に対して磁石の厚さが変わるように内径部に特殊な形状を有する磁石を用いた構成が示されている。
更に、特許文献3には、円環状磁石と、内側と外側にそれぞれ集磁ヨークを配置した構成が考案され、実施例には当該文献の
図4に示された円環状磁石の等方性のネオジムボンド磁石を平行に着磁した円環状磁石が使われている。
しかしなから、特許文献1~3の手法は、磁石と磁気センサ素子の距離が離れて信号強度が弱くなること、磁石の重心に偏りが生じて回転時の振動に影響すること、磁石構造が複雑になりコストアップになることなどの問題点がある。
そこで、安価に磁気センサの精度を上げるには、一般的に、入力に対する出力の関係を直線にする、すなわち、検出磁場に対する磁気センサ素子の電気出力を直線にすればよい。このためには、信号源となる磁石の表面磁束密度波形が、回転変位や直線変位に対して直線であればよく、すなわち、三角波に近づけることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-310609号公報(発明の実施の形態,
図3,
図9)
【文献】特開2007-024689号公報(発明を実施するための最良の形態,
図1)
【文献】特開2009-145086号公報(発明を実施するための最良の形態,
図1,
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁石の表面磁束密度波形が三角波になると、ゼロクロス近傍で磁束密度分布が直線となる範囲を広くとれるため、磁気センサの使用範囲、精度が高くなることが知られている。
ここで、成形時に磁化の整列(以下、配向とする)を必要としない等方性磁石では、成形後の着磁で磁石の表面磁束密度の波形を調整できる。しかしながら、等方性磁石の磁力は、成形時に配向を行った異方性磁石の磁力に比べて低い。したがって、磁気センサの小型化、軽量化、広ギャップ化、耐磁気ノイズ性向上などでは、配向が調整された異方性磁石が求められ、これには金型内の空間(キャビティ)に作用する磁場分布を最適にコントロールすることが必要となる。すなわち、金型を用いて成形する場合は金型内の空間(キャビティ)に作用する磁場分布を最適にコントロールすることが求められる。
配向のための主たる磁場を金型内の空間(キャビティ)に発生させる方法には、金型が起磁力源(永久磁石、電磁石)を有する場合と有さない場合がある。いずれの場合も成形された磁石の表面磁束密度波形は、その磁石の配向に強く支配される。
以上のように、等方性磁石に比べて磁力が強い異方性磁石の表面磁束密度を所望の波形になるようにするには空間(キャビティ)内の磁場の強さと方向のコントロールが要求され、これを実現する金型の磁気回路設計が重要となる。
特に径方向2極に配向する磁石を製造する金型では、空間(キャビティ)を構成する部品に非磁性材を使用して、磁石の表面磁束密度波形として三角波を得る磁気回路が用いられることがある。しかしながら、非磁性材の鋼材であるHPM75(日立金属株式会社社製品名)や、SUS304などは硬度が低く、異方性磁石用金型として使用する際には耐久性が懸念される。
すなわち、金型内の空間(キャビティ)には、材料充填時の強い圧力と、金型開閉時の強い衝撃が繰り返し加わるため、空間(キャビティ)を構成する部品には耐摩耗性と耐衝撃性に強い鋼材が要求され、一般には磁性材が用いられる。しかしながら、磁性材のみで構成された金型では、成形する磁石の表面磁束密度波形の調整が難しく、単純に空間(キャビティ)を構成する部品を磁性材とした構成では、成形された磁石の表面磁束密度波形は矩形波に近いものとなる。
以上のように、異方性磁石の金型を構成する材料には、耐磨耗性と耐衝撃性に優れた非磁性材が要求される。硬度が高い非磁性材としては超硬やセラミックスなどが挙げられるが、衝撃に弱い(脆い)ため割れや欠けが生じやすいという懸念がある。
また、空間(キャビティ)を構成する金型部品を単に非磁性材で構成した磁気回路では、成形する磁石の大きさが大きくなるに従い、配向に十分な磁場が得られない問題が生じる。
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、円環状の異方性磁石を成形するに際し、金型部品の耐久性を確保し、金型内の空間(キャビティ)に強い磁場を発生させ、かつ、外部から作用する磁場により成形する磁石の表面磁束密度波形を所望の形状に調整可能とする異方性磁石の成形用金型を提供し、更に、この成形用金型を用いた異方性磁石の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の技術的特徴は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造であり、前記外径金型部品の外側には外部から作用する磁場の磁束を絞り込んで前記外径金型部品に与える磁性材からなる磁束絞り部品を備えることを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第2の技術的特徴は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造であり、前記内径金型部品は、成形すべき円環状の異方性磁石の内径に対する前記磁性部品の厚さが8.3%以下であることを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第3の技術的特徴は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造であり、前記内径金型部品は、前記磁性部品の飽和磁化が1.3T以上で、前記非磁性部品の飽和磁化が0.2T以下であることを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第4の技術的特徴は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造であり、前記内径金型部品は、前記磁性部品の硬度がHRCで50以上であることを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第5の技術的特徴は、第1乃至第4のいずれかの技術的特徴を備えた異方性磁石の成形用金型において、成形すべき円環状の異方性磁石の磁化配向の方向が当該磁石の直径方向に対して2極で、当該方向に磁化が整列されることを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第6の技術的特徴は、第1乃至第5のいずれかの技術的特徴を備えた異方性磁石の成形用金型において、前記内径金型部品は、前記磁性部品と前記非磁性部品とを固定したものであることを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
【0010】
本発明の第7の技術的特徴は、第1乃至第6の技術的特徴のいずれかを備えた異方性磁石の成形用金型を用いて異方性磁石を製造するに際し、前記成形用金型の空洞部に成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物を充填する充填工程と、前記充填工程後において前記成形用金型に外部から磁場を作用させることで前記空洞部に充填された組成物を磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、前記配向・成形工程にて成形された異方性磁石を冷却して前記成形用金型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする異方性磁石の製造方法である。
本発明の第8の技術的特徴は、第7の技術的特徴を備えた異方性磁石の製造方法において、成形すべき異方性磁石が、異方性Sm-Fe-N系磁石粉末、異方性Nd-Fe-B系磁石粉末、異方性Sm-Co系磁石粉末および異方性フェライト系磁石粉末のいずれか1種類以上の磁石粉末と、樹脂との混合物を主成分とするものであることを特徴とする異方性磁石の製造方法である。
本発明の第9の技術的特徴は、第7又は第8の技術的特徴を備えた異方性磁石の製造方法において、成形すべき異方性磁石が、磁石粉末と熱可塑性樹脂との混合物を主成分とし、射出成形、押出成形および射出圧縮成形のいずれかの成形法で形成されることを特徴とする異方性磁石の製造方法である。
本発明の第10の技術的特徴は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な円環状空間部を区画し、外部から作用する磁場中に前記円環状空間部を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、前記円環状空間部の外径面を区画する外径金型部品と、前記円環状空間部の内径面を区画する内径金型部品と、を備え、前記外径金型部品は、少なくとも前記円環状空間部の外径面に接する部分が磁性材からなり、前記内径金型部品は、前記円環状空間部の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品を配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品を接触配置した二重構造である異方性磁石の成形用金型を用いて異方性磁石を製造するに際し、前記成形用金型の空洞部に成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物を充填する充填工程と、前記充填工程後において前記成形用金型に外部から磁場を作用させることで前記空洞部に充填された組成物を磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、前記配向・成形工程にて成形された異方性磁石を冷却して前記成形用金型から取り出す取出工程と、を含み、成形された異方性磁石が、当該異方性磁石を着磁後の表面磁束密度のN極とS極が切り替わる角度位置を中心に±10°以内の角度範囲で、各角度の表面磁束密度と理想直線から算出される磁束密度との差を、前記角度範囲内の最大と最小の磁束密度差で割った値を直線性の指標とした場合、当該指標が±1%F.S.以下の直線性を有することを特徴とする異方性磁石の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1乃至第4の技術的特徴によれば、円環状の異方性磁石を成形するに際し、金型部品の耐久性を確保し、金型内の空間(キャビティ)に強い磁場を発生させ、かつ、外部から作用する磁場により成形する磁石の表面磁束密度波形を所望の波状、特に三角波状に調整する上で有効である。
更に、本発明の第1の技術的特徴によれば、磁束絞り部品を有しない場合に比べて、円環状空間部に作用する磁場を強くすることができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、本構成を有しない態様に比べて、検出角度範囲における理想信号からの誤差が小さい三角波状の表面磁束密度を有する異方性磁石を成形する形成用金型を提供することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、磁性部品と非磁性部品の材質を最適に選択することで、より精緻に異方性磁石の表面磁束密度波形が調整可能な成形用金型を提供することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、磁性部品の表面硬度を最適に選択することで、耐久性が高く、異方性磁石の表面磁束密度波形が調整可能な成形用金型を提供することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、三角波状の表面磁束密度を有する径方向2極の異方性磁石を成形する成形用金型を提供することができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、成形用金型から成形された異方性磁石を取り出す際に、内径金型部品が分離する事態を有効に回避することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、金型部品の耐久性を確保し、金型内の空間(キャビティ)に強い磁場を発生させ、かつ、外部から作用する磁場により成形する磁石の表面磁束密度波形を所望の波状に調整可能な異方性磁石の成形用金型を利用し、所望の波状の表面磁束密度波形を有する円環状の異方性磁石を容易に製造することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、フェライト系磁石に比べて、信号強度の強い異方性磁石を製造することができる。
本発明の第9の技術的特徴によれば、射出成形、押出成形及び射出圧縮成形のいずれの方法でも、表面磁束密度波形が調整された異方性磁石を製造することができる。
本発明の第10の技術的特徴によれば、着磁後の表面磁束密度波形のゼロクロス付近が直線状である異方性磁石を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は本発明が適用された異方性磁石の成形用金型の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す異方性磁石の成形用金型を利用した異方性磁石の製造方法を示す説明図である。
【
図2】実施の形態1に係る異方性磁石の製造装置を示す説明図である。
【
図3】(a)は実施の形態1で用いられる異方性磁石の成形用金型の詳細を示す説明図、(b)は(a)中B部分の拡大説明図である。
【
図4】実施の形態1に係る異方性磁石の製造装置で成形された異方性磁石の一例を示す説明図である。
【
図5】実施例1に係る異方性磁石の表面磁束密度分布例を示す説明図である。
【
図6】
図5に示す異方性磁石の表面磁束密度分布において、N極とS極が切替わる角度(以下、ゼロクロス角度)を中心に±20°の範囲を拡大したグラフと、当該ゼロクロス角度の±10°の範囲におけるゼロクロス角度を通過する近似直線のグラフとを示す説明図である。
【
図7】
図6に示した表面磁束密度分布と近似直線とにおいて、各角度における表面磁束密度の値と近似直線の値とを、±10°の範囲の近似直線の最大最小値の絶対値で除した値を直線性のズレとして%で表したグラフである。
【
図8】実施例2に係る異方性磁石の成形用金型において、成形する異方性磁石の内径面に接する磁性部品の厚さを変えた金型を用いて得られた異方性磁石の表面磁束密度波形の直線性を示す実施例1と同等のグラフである。
【
図9】比較例1に係る異方性磁石の成形用金型(実施例1の磁性部品の内側に配置する非磁性部品をなくして、内径金型部品を全て磁性材のSKD61で構成した金型)を用いて得られた異方性磁石の表面磁束密度分布を示すグラフである。
【
図10】
図9に示す異方性磁石の表面磁束密度分布において、N極とS極が切替わる角度(ゼロクロス角度)を中心に±20°の範囲を拡大したグラフと、当該ゼロクロス角度の±10°の範囲におけるゼロクロス角度を通過する近似直線とを示すグラフである。
【
図11】
図10に示した表面磁束密度分布と近似直線とにおいて、各角度における表面磁束密度の値と近似直線の値を、±10°の範囲の近似直線の最大最小値の絶対値で除した値を直線性のズレとして%で表したグラフである。
【
図12】比較例2に係る異方性磁石の成形用金型(実施例1の磁性部品をなくし、内径金型部品を全て非磁性材からなる非磁性部品のHPM75で構成した金型を用いて得られた異方性磁石の表面磁束密度分布を示すグラフである。
【
図13】
図12に示す異方性磁石の表面磁束密度分布において、N極とS極が切替わる角度(ゼロクロス角度)を中心に±20°の範囲を拡大したグラフと、当該ゼロクロス角度の±10°の範囲におけるゼロクロス角度を通過する近似直線とを示すグラフである。
【
図14】
図13に示した表面磁束密度分布と近似直線とにおいて、各角度における表面磁束密度の値と近似直線の値を、±10°の範囲の近似直線の最大最小値の絶対値で除した値を直線性のズレとして%で表したグラフである。
【
図15】実施例1,2及び比較例1,2について、各角度における表面磁束密度の値と近似直線の値を、±10°の範囲の近似直線の最大最小値の絶対値で除した値を直線性の最大ズレを表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された異方性磁石の成形用金型の実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、異方性磁石の成形用金型1は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物Cmが充填可能な円環状空間部4を区画し、外部から作用する磁場H中に円環状空間部4を配置可能とする異方性磁石の成形用金型であって、円環状空間部4の外径面を区画する外径金型部品2と、円環状空間部4の内径面を区画する内径金型部品3と、を備え、外径金型部品2は、少なくとも円環状空間部4の外径面に接する部分が磁性材からなり、内径金型部品3は、円環状空間部4の内径面に接する側に磁性材からなる磁性部品3aを配置すると共に、その内側に非磁性材からなる非磁性部品3bを接触配置した二重構造である。
【0014】
このような技術的手段において、本願の成形用金型1は円環状磁石を磁化配向して成形するものを対象とし、成形すべき円環状磁石に対応した円環状空間部4を有すると共に、外部から作用する磁場H中に円環状空間部4を配置可能としたものである。
ここで、「外部から磁場Hを作用させる」とは成形用金型1の外部にコイル等の磁場発生源を有し、当該磁場発生源から発生された磁場Hを成形用金型1内の円環状空間部に作用させることを意味する。但し、本態様では、成形用金型1内に主たる起磁力源(永久時磁石、電磁石)を有しない態様のみならず、成形用金型1の外部に設置された磁場発生源に加えて、成形用金型1内に補助的に起磁力源を設置し、磁場発生源からの磁場Hの配向を調整する態様も含むことは勿論である。
また、外径金型部品2は円環状空間部4の外径面に面して配置されるが、少なくとも外径面に接する部分が磁性材からなっていればよい。このとき、円環状空間部4に接する材料とその外側の材料を分けるなど、外部から作用する磁場を効率よく円環状空間部4に導くことを損なわないならば複数種類の磁性材で構成してもよい。また、円環状空間部4の外径面に接する部分が非磁性材であれば外部から作用する磁場Hによる磁化配向が円環状空間部4へ十分に寄与しない懸念があり、好ましくないが、円環状空間部4の外径面に面していない箇所であれば非磁性材を配置することは差し支えない。
更に、内径金型部品3は円環状空間部4の内径面に接する箇所に磁性部品3aを有し、その内側に非磁性部品3bを接触して有していることを要する。ここで、磁性部品3a、非磁性部品3bについては適宜選定して差し支えないが、特に、円環状空間部4の内径面に接触する磁性部品3aについては、厚さ、飽和磁化、硬度などについて好ましい条件がある。
【0015】
次に、異方性磁石の成形用金型の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、成形用金型1の好ましい態様としては、円環状空間部4に加わる磁場を強くする上で、外径金型部品2の外側には外部から作用する磁場Hの磁束を絞り込んで外径金型部品2に与える磁性材からなる磁束絞り部品5を備える態様が挙げられる。
また、成形すべき異方性磁石の代表的態様としては、成形すべき円環状の異方性磁石の磁化配向の方向が当該磁石の直径方向に対して2極で、当該方向に磁化が整列される態様が挙げられる。本態様では、外部から作用する磁場Hとして容易に得られる一方向の配向磁場の下で簡単に使用できる点で好ましい。ここで、2極を超える極数を有する異方性磁石の成形用金型1についても本発明を適用することは可能であるが、2極の場合に比べてより複雑な金型の構成が必要となり、金型内に配向用の磁石を埋め込んだほうが安価に目的を達成できる場合がある。
【0016】
更に、内径金型部品3の代表的態様としては、磁性部品3aと非磁性部品3bとを固定したものが挙げられる。ここで、内径金型部品3の磁性部品3aと非磁性部品3bとは、成形された異方性磁石が円環状空間部4から取出される際にも互いが動くことなく固定されている必要がある。この固定方法は、例えば接着剤を用いる方法、両部品3a,3bの間に柔軟性のある材料を充填する方法、焼き嵌めを用いる方法など適宜選定して差し支えない。また、円環状空間部4には成形時に高い圧力が加わるため、両部品3a,3bの間はできるだけ隙間なく、強固な材料で固定されていることが好ましい。更には、磁性部品3aは耐摩耗性の高い材質で構成されるが、成形される異方性磁石の数量に依っては交換の必要が生じることから、交換性を考慮すると、前記方法のうち焼き嵌めを用いる方法がより好ましい。
【0017】
また、内径金型部品3の好ましい態様としては、成形すべき円環状の異方性磁石の内径に対する磁性部品3aの厚さが8.3%以下である態様が挙げられる。ここで、磁性部品3aの厚さは、円環状空間部4の内径面に接する部分の磁性材の厚さで、その内側に非磁性材からなる非磁性部品3bを有する配置、すなわち、0より大きく円環状の異方性磁石の内径Riの半分より小さい範囲で設計できる。当該厚さが薄すぎると加工が困難となり、逆に厚いと所望の波形の実現が困難となる。好ましくは、成形する円環状の異方性磁石の内径Riに対する磁性部品3aの厚さが8.3%以下であり、0.5mm以上であれば一般の加工機で加工が可能である。
【0018】
更に、内径金型部品3の好ましい態様としては、磁性部品3aの飽和磁化が1.3T以上で、非磁性部品3bの飽和磁化が0.2T以下である態様が挙げられる。ここで、磁性部品3aの飽和磁化が1.3未満では円環状空洞部4の周辺の磁気抵抗が大きくなり、配向のための十分な磁場が得られない場合がある。また、非磁性部品3bの飽和磁化が0.2を超えると、内径金型部品3の磁性、非磁性の特性差が小さくなり、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形を所望の波形形状にすることが困難になる懸念がある。
【0019】
更にまた、内径金型部品3の好ましい態様としては、磁性部品3aの硬度がHRCで50以上である態様が挙げられる。HRCが50未満でも磁気特性を満たせば、異方性磁石の表面磁束密度波形を所望のものにすることは可能であるが、繰り返し使用により部品表面の摩耗や当該摩耗による部品のかじりが生じ、頻繁に部品の交換が強いられる懸念がある。尚、非磁性部品3bは円環状空間部4と磁性部品3aで隔てられており、成形する異方性磁石の材料が直接接触することはない。このため、磁性部品3aのような硬度特性は求められない。
【0020】
前述した異方性磁石の成形用金型1を用いた異方性磁石の製造方法の代表的態様としては、
図1(b)に示すように、異方性磁石の成形用金型1を用いて異方性磁石を製造するに際し、成形用金型1の空洞部4に成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物Cmを充填する充填工程と、充填工程後において成形用金型1に外部から磁場Hを作用させることで空洞部4に充填された組成物Cmを磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、配向・成形工程にて成形された異方性磁石を冷却して成形用金型1から取り出す取出工程と、を含むものが挙げられる。
ここでいう配向・成形工程としては射出成形、押出成形などが挙げられる。
また、取出工程としては、成形用金型1に配向・成形工程時の磁場Hが反転させられた磁場を作用させて行うようにすることが好ましい。本例は、成形用金型1から成形された異方性磁石(成形品)を取り出す際に、外部から反転磁場を作用させることで成形品の磁力を脱磁し成形品の取出しを阻害する磁力を抑制する点で好ましい。
【0021】
成形すべき異方性磁石の好ましい材料としては、異方性Sm-Fe-N系磁石粉末、異方性Nd-Fe-B系磁石粉末、異方性Sm-Co系磁石粉末および異方性フェライト系磁石粉末のいずれか1種類以上の磁石粉末と、樹脂との混合物を主成分とするものが挙げられる。
また、異方性磁石の製造方法の代表的態様としては、成形すべき異方性磁石が、磁石粉末と熱可塑性樹脂との混合物を主成分とし、射出成形、押出成形および射出圧縮成形のいずれかの成形法で形成される態様が挙げられる。本例における異方性磁石の成形用金型1は、例えば磁場中圧縮成形法などの成形法においても適用可能であるが、特に、射出成形、押出成形及び射出圧縮成形のいずれかの成形法にて有用である。
ボンド磁石の圧縮成形は等方性Nd-Fe-B系ボンド磁石の成形で多く用いられており、ロータリー式の成形機などで連続的に大量生産されている。磁場中圧縮成形で成形するボンド磁石も既に実用化され量産されている。いずれも、磁石粉が重量比で96~98%程度の高い含有量の磁石で、樹脂による流動は殆どなく、磁石粉と摺動頻度が多くなるためキャビティ周辺の金型材質は主に超硬材料が用いられている。したがって、磁場中圧縮成形法にて本実施の形態に係る異方性磁石の成形用金型1を採用しようとすると、選択可能な磁性材/非磁性材の種類が限られ、所望の表面磁束密度となる異方性磁石の成形用金型の実現が困難になる場合が生じる。
【0022】
更に、成形された異方性磁石の好ましい態様としては、異方性磁石を着磁後の表面磁束密度のN極とS極が切り替わる角度位置(ゼロクロス角度)を中心に±10°以内の角度範囲で、各角度の表面磁束密度と理想直線から算出される磁束密度との差を、前記角度範囲内の最大と最小の磁束密度差で割った値を直線性の指標とした場合、当該指標が±1%F.S.以下の直線性を有する態様が挙げられる。ここで、角度範囲を±10°としたのは、この範囲を超えた場合に前記直線性の指標で表される±1%F.S.以下の直線性が満足できない場合が生じることを考慮し、角度範囲を±10°に絞ることでこれをも含める趣旨である。
【0023】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-異方性磁石の製造装置-
図2は実施の形態1に係る異方性磁石の製造装置の全体構成を示す。
同図において、異方性磁石の製造装置は、射出成形にて異方性磁石を製造する射出成形機であって、異方性磁石を成形する成形用金型(以下金型と略記する)30と、異方性磁石の材料を含む組成物Cmを金型30内に射出注入する射出ユニット20と、金型30内に射出注入された組成物Cmに対して外部から磁場を作用させる外部磁場器50と、を備えている。
本例では、異方性磁石はボンド磁石を対象としており、磁石の材料としては、異方性Sm-Fe-N系磁石粉末、異方性Nd-Fe-B系磁石粉末、異方性Sm-Co系磁石粉末および異方性フェライト系磁石粉末のいずれか1種類以上の磁石粉末と、樹脂との混合物を主成分で構成された材料が用いられる。例えば、異方性Sm-Fe-N系磁石粉末とナイロン樹脂とが混合された住友金属鉱山株式会社製Wellmax-S3系異方性ボンド磁石用射出成形材料、異方性Nd-Fe-B系磁石粉末および異方性Sm-Fe-N系磁石粉末の混合物にナイロン樹脂とが更に混合された同社Wellmax-S5系異方性ボンド磁石用射出成形材料、異方性フェライト系磁石粉末および異方性Sm-Fe-N系磁石粉末の混合物にナイロン樹脂とが更に混合された同社Wellmax-S4系異方性ボンド磁石用射出成形材料などが好ましい。
【0024】
<射出ユニット>
本例では、射出ユニット20は、磁石材料を含む組成物Cmをホッパ22からシリンダ21内に投入し、シリンダ21内に投入された組成物Cmをヒータ23にて加熱溶融すると共に、シリンダ21内で進退可能なスクリューロッド24で溶融した組成物Cmをシリンダ21の射出口(図示せず)側に所定量貯めた後、金型30内に射出するものである。
【0025】
<金型>
本例では、金型30は、
図2及び
図3(a)(b)に示すように、成形すべき異方性ボンド磁石の材料を含む組成物Cmが充填可能な円環状空洞部(キャビティ)33を区画するものであって、円環状のキャビティ34の外径面を区画する外径金型部品31と、円環状のキャビティ33の内径面を区画する内径金型部品32と、外径金型部品31の外側には外部から作用する磁場Hの磁束を絞り込んで外径金型部品31に与える磁束絞り部品34と、を備えている。
本例において、金型30は、図示外のセット機構により予め決められたセット位置にセットされ、外部磁場器50にて生成される磁場Hが作用するようになっている。
【0026】
-外径金型部品-
本例において、外径金型部品31は、円柱状の空間部を有する磁性材からなる部品であって、円柱状の空間部内に内径金型部品32を同心的に配置することで内径金型部品32との間に円環状のキャビティ33を確保するものである。そして、外径金型部品31は、磁束絞り部品34からの磁束を効率よく円環状のキャビティ33に導くと同時に、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物Cmに接触することから、後述するように、内径金型部品32で使用される磁性材と同等の特性が求められる。
【0027】
-内径金型部品-
本例において、内径金型部品32は、円環状のキャビティ33の内径面に接する磁性材からなる磁性部品32aと、この磁性部品32aの内側に接触配置される非磁性材からなる非磁性部品32bとを備えている。
金型30の材質としてはアズロールド鋼、プレハードン鋼、焼入れ・焼戻し鋼、時効処理鋼など種々の磁性を有する鋼材から選択可能である。円環状のキャビティ33の周辺を構成する金型30の材質としては耐久性や耐食性に優れたプレハードン鋼、焼入れ・焼戻し鋼が多く用いられる。
本例では、磁性部品32aは、これら材質の磁性を有する材料を選択すればよく、飽和磁化が1.3T以上である材料が好ましい。更には、硬度がHRCで50以上である材料がより好ましい。
ここで、磁性部品32aの飽和磁化が1.3T未満では、円環状のキャビティ33の周辺の磁気抵抗が大きくなり、配向のための十分な磁場が得られない場合がある。特に、成形するボンド磁石の材料が希土類系ボンド磁石材料の場合には、配向用磁場の不足で材料本来の持つ特性が十分得られず、成形された異方性ボンド磁石の磁力不足や設計と異なる表面磁束密度波形の原因となる虞れがある。
また、磁性部品32aの硬度についてはHRCが50未満でも前記磁気特性を満足すれば、成形する異方性ボンド磁石の表面磁束密度波形は所望の波形形状が得られる。しかしながら、繰り返しの使用による部品表面の磨耗や当該磨耗による部品のかじりが生じ、頻繁に当該部品の交換が強いられる。特に磁石粉の粒径が大きい異方性Nd-Fe-B系微粉末および異方性Sm-Co粉末や、樹脂がPPS樹脂や液晶樹脂等の流動性が高い樹脂を用いた材料で顕著に現れる。好ましい磁性部品32aとしては、例えば焼入れ・焼戻し鋼で、HRCが50~53、飽和磁化が1.6~1.8TのSKD61などが挙げられる。
【0028】
また、非磁性部品32bは、前述した金型の材質のうち非磁性を有する材料を選択すればよく、飽和磁化が0.2T以下である材料が好ましい。
ここで、非磁性部品32bの飽和磁化が0.2Tを超えた材質では、内径金型部品32の磁性、非磁性の特性差が小さくなり、成形する異方性ボンド磁石の表面磁束密度波形を所望の波形形状とすることが困難になる。また、非磁性部品32bは、円環状のキャビティ33と磁性部品32aで隔てられており、成形する異方性ボンド磁石の材料が直接接触することはない。このため、磁性部品32aのような硬度は求められず、前記磁気特性を満足する加工性の良い材料、例えば、高硬度非磁性快削鋼の日立金属工具鋼株式会社製HPM75などが良い。
更に、本例では、磁性部品32aと非磁性部品32bとは部品交換を考慮して例えば焼き嵌めにて固定されている。これにより、例えば成形時に内径金型部品32に高い圧力が作用したり、成形された異方性ボンド磁石を円環状のキャビティ33から取り出す場合でも、磁性部品32a、非磁性部品32bは互いに動くことなく固定されている。
更にまた、磁性部品32aの厚さについては、加工性や成形すべき異方性ボンド磁石の内径Riを考慮して選定するようにすればよく、
図3(a)(b)に示すように、本例では異方性ボンド磁石の内径Riに対する磁性部品32aの厚さtが8.3%以下であり、0.5mm以上になるように選定されている。
【0029】
-磁束絞り部品-
磁束絞り部品34は、
図3(a)に示すように、外部から作用する磁場Hの磁束を絞り込むものであるため、外径金型部品31よりも大きくした磁性材からなる部品である。
そして、磁束絞り部品34は、後述する外部磁場器50の励磁コイル51,52の対向する部位に一対設置されている。
ここで、磁束絞り部品34のうち外部磁場配向方向と直交する幅寸法Yは、円環状のキャビティ33の外径Ro(成形する円環状の異方性ボンド磁石の外径に相当)より大きくする必要がある。しかし、いたずらに大きくすることは強い配向磁場を実現する上で好ましくない。すなわち、配向に寄与しない磁束が外径金型部品31のうち(Y-Ro)/2の間を通過するため、(Y-Ro)/2の間が広いと円環状のキャビティ33に加わる配向磁場が弱くなる。一方、(Y-Ro)/2の間が狭すぎると加工が難しい、成形時の強度に耐えられないなどの問題が生じる。そこで、成形する円環状の異方性ボンド磁石の外径Roにも依るが、本例では、(Y-Ro)/2を5~10mmとして設計するようにした。
また、対構成の磁束絞り部品34間の寸法X(外径金型部品31の磁場配向方向に沿う幅寸法に相当)は、特に規定されないが、例えば複数個のキャビティ33を有する金型では、大きな寸法Xはキャビティ33の間隔を拡げる要因となり、材料の流動や製品率(成形する製品の重量/容量等に対する1回の成形に要する材料の重量/容量等)の低下を招く。成形する円環状の異方性ボンド磁石の外径Roにも依るが、寸法XはRo+20~40mm程度として設計されることが多い。
尚、本例では、円環状の異方性ボンド磁石の成形用金型は、
図3(a)に示すように構成されているが、円環状のキャビティ33に対する磁気回路構成として、外部磁場器50のみによる態様以外に金型30内に主たる起磁力源(永久時磁石、電磁石)を補助的に設けるようにしてもよい。
【0030】
<外部磁場器>
本実施の形態において、外部磁場器50は、
図2に示すように、金型30を挟んだ部位に励磁コイル51,52を対向して配設し、一方の励磁コイル51を射出ユニット20側に設置すると共に、他方の励磁コイル52を図示外の移動機構にて進退可能に配置し、金型30を予め決められたセット位置にセットした後、これらの励磁コイル51,52に通電することで、
図3(a)に示すように、金型30における円環状のキャビティ33の水平方向に沿う径方向に向かって横切る磁場Hを生成するようにしたものである。このため、本例では、成形される異方性ボンド磁石は、その磁化配向の方向が当該磁石の直径方向に対して2極で、当該方向に磁化が整列されるものが得られる。
尚、励磁コイル51,52に配向時とは逆方向に通電することにより、金型30の円環状のキャビティ33を横切る方向が反転する反転磁場を生成することも可能である。尚、本実施の形態においては、金型30内の空間(キャビティ33)に強い磁場を発生させ、かつ、外部から作用する磁場により成形する磁石の表面磁束密度波形を所望の形状に調整可能とする異方性磁石の成形用金型であれば、外部磁場器50の構成に依存するものではない。
【0031】
<異方性磁石の製造方法>
次に、本実施の形態に係る異方性ボンド磁石の製造方法について説明する。
先ず、
図2に示すように、図示外のセット機構により金型30を所定のセット位置にセットし、この後、外部磁場器50の励磁コイル51,52による外部磁場Hを作用させると、外部磁場Hは、磁束絞り部品34を介して磁束が絞られた後、外径金型部品31に導かれ、
図3(a)に示すように、金型30の円環状のキャビティ33に対して水平の直径方向に向かうように配向され、金型30の外部金型部品31及び内部金型部品32を磁化し、円環状のキャビティ33を横切る方向の磁場配向が生成される。
更に、射出ユニット20により異方性磁石の材料を含む組成物Cmを金型30の円環状のキャビティ33に射出注入して保圧する。一般的には、キャビティ33に配向磁場を加えた状態で射出するが、キャビティ33に充填された材料が配向に十分な流動性を有するならば外部磁場Hを作用するタイミングは直接関係はない。
この状態において、円環状のキャビティ33に充填された成形すべき異方性ボンド磁石の組成物Cmには磁化配向の方向が当該磁石の直径方向に対して2極で、当該方向に磁化が整列される態様として成形される。
この後、成形された異方性ボンド磁石を冷却、固化させた後、金型30を開き、金型30から異方性ボンド磁石の成形品を取り出すようにすればよい。この際、外部磁場器50の励磁コイル51,52に配向時と逆方向に電流を調整して通電することで成形品が金型30に磁力で吸着することなく容易に取出すことができる。
この後、
図4に示すように、成形された異方性ボンド磁石60を着磁すると、配向・成形工程による配向に則って磁石の直径方向に対して2極(S極、N極)が生成され、着磁後の表面磁束密度波形の波形形状を調べたところ、所望も波形、具体的には三角波に近い波形を得ることができ、磁気センサに使用可能な直線性の指標の良好な異方性ボンド磁石を製造することができた。
ここで、異方性ボンド磁石の表面磁束密度波形の波形形状について評価した直線性の指標としては、成形された異方性ボンド磁石が、当該異方性ボンド磁石を着磁後の表面磁束密度のN極とS極が切り替わる角度位置(ゼロクロス位置)を中心に±10°以内の角度範囲で、各角度の表面磁束密度と理想直線から算出される磁束密度との差を、前記角度範囲内の最大と最小の磁束密度差で割った値を直線性の指標とし、当該指標が±1%F.S.以下の直線性を満たすか否かで評価した。
【実施例】
【0032】
◎実施例1
実施例1は、実施の形態1に係る金型30をより具現化したものである。
具体的には、金型30の内径金型部品32において、内径面に接する磁性部品32aを、材料がSKD61、厚みが1mmとし、当該磁性部品32aの内側にHPM75の非磁性部品32bを焼き嵌めで形成した。当該内径金型部品32に対して同心円状に3mm隔ててSKD61材質で形成した外径金型部品31を配置して円環状のキャビティ33を構成すると共に、更に当該外径金型部品31の両端にSKD61材質で作成した磁束絞り部品34を配置し、
図2に示す態様の異方性ボンド磁石の金型30を作成した。
そして、当該金型30を、株式会社日本製鋼所社製磁場中射出成形機(J110AD)に搭載し、住友金属鉱山株式会社製Wellmax-S3A12M異方性ボンド磁石用射出成形材料を用いて異方性ボンド磁石を作成した。ここで、異方性ボンド磁石の形状は、外径が30mm、内径が24mmで高さが10mmで、極数は径方向2極の磁石である。
【0033】
得られたボンド磁石を、発生磁場が3T以上のパルス磁場が生じる空芯コイルで着磁し、着磁後のボンド磁石の表面磁束密度を、エーデーエス社製ガウスメータ(HGM-7100)とプローブ(FS-3)を用い、プローブを磁石表面から10mm離れた、磁石の高さ方向中心に配置して、磁石を回転して測定し、
図5に示す結果を得た。
図5の表面磁束密度波形の結果を、波形結果がN極からS極に変わる90°の角度(ゼロクロス角度)を中心に±10°の角度範囲におけるピーク値を結ぶ直線(±10°F。S.範囲直線)と比較した結果を
図6に示す。
図6の結果において、±10°の角度範囲におけるピーク値に対する、各角度における実測結果と±10°F。S.範囲直線の値との差を直線性のズレ(%/F.S.)として表し、当該角度範囲における表面磁束密度の直線性の指標として
図7で表した。
本実施例において、成形された異方性ボンド磁石の直線性は0.20%/F.S.を示した。
【0034】
◎実施例2
実施例2は、実施の形態1に係る金型30において内径金型部品32の磁性部品32aの厚みの変化による影響を調べたものである。
具体的には、円環状のキャビティ33の内径面に接する磁性部品32aの厚みを、2mm、3mm、5mm、8mmと変えた以外は実施例1と同様の構成となる異方性ボンド磁石の金型を作成し、実施例1と同様の方法で成形、着磁後の異方性ボンド磁石の表面磁束密度波形の直線性を評価した。
各厚みにおける直線性のズレを
図8に示す。
同図によれば、磁性部品32aの厚みが薄い方がより直線性が高いことが理解される。
【0035】
◎実施例3
実施例3は、内径金型部品32の磁性部品32aの材質を実施例1と異なるものを使用した例である。
具体的には、円環状のキャビティ33の内径面に接する磁性部品32aの材質を、飽和磁化が1.3Tのマルテンサイト系ステンレス材料であるボーラー・ウッデホルム株式会社製ELMAX(登録商標)と変えた以外は実施例1と同様の構成となる異方性ボンド磁石の金型を作成し、実施例1と同様の方法で成形、着磁後の異方性ボンド磁石の表面磁束密度の直線性を評価した。直線性は0.20%/F.S.であった。
【0036】
◎比較例1
比較例1は内径金型部品32の構成を実施例1~3と異なる態様にしたものである。
具体的には、円環状のキャビティ33の内径面に接する磁性部品32aの内側に配置する非磁性材の非磁性部品32bをなくして、内径金型部品32を全て磁性材のSKD61で構成した以外は、実施例1と同様の異方性ボンド磁石の金型を作成し、実施例1と同じ異方性ボンド磁石材料、射出成形機で異方性ボンド磁石を作製し、当該ボンド磁石の表面磁束密度を実施例1と同じ方法で測定したところ、
図9に示す結果を得た。
そして、実施例1と同様に、
図9の表面磁束密度波形の結果を、ゼロクロス角度を中心に±10°の角度範囲におけるピーク値を結ぶ直線(±10°F。S.範囲直線)と比較した結果を
図10に示す。
更に、実施例1と同様に得られた異方性ボンド磁石の直線性を評価し、
図11の結果を得た。得られたボンド磁石の直線性は1.04%/F.S.であり、実施例1~3の評価に比べて直線性が劣ることが把握される。
【0037】
◎比較例2
比較例2は内径金型部品32の構成を実施例1~3と異なる態様にした別の例である。
具体的には、円環状のキャビティ33の内径面に接する磁性部品32aをなくして、内径金型部品32を全て非磁性材のHPM75で構成した以外は、実施例1と同様の異方性ボンド磁石の金型を作成し、同じ異方性ボンド磁石材料、射出成形機、評価方法で成形した異方性ボンド磁石の表面磁束密度分布の直線性を評価した。
得られた異方性ボンド磁石の表面磁束密度波形を
図12に、当該結果を、ゼロクロス角度を中心に±10°の角度範囲におけるピーク値を結ぶ直線(±10°F。S.範囲直線)と比較した結果を
図13に、直線性の評価結果を
図14にそれぞれ示す。
直線性は0.22%/F.S.と、実施例1に示した磁性部品32aの厚みを1mmとした構成に比べて悪くなったものの、当該厚みが2mmの場合と同等の直線性を示した。
更に、作製した異方性ボンド磁石の金型では、試作・評価のため数~数十個程度の成形であるが、成形後の内径金型部品には、当該部品が実施例1における内径金型部品2の構成(磁性部品32aと非磁性部品32bとの多重構造の構成)では見られなかった成形品取出しに因る数多くの縦筋が生じており、当該部品の磨耗が進んでいたことが確認された。
【0038】
以上の実施例1,2及びび比較例1,2について、内径金型部品32のうち、円環状のキャビティ33の内径面に接する磁性部品32aの厚みに対する直線性のズレは
図15に示すようになり、磁性部品32aの厚さが8.3%以下で優れた直線性を示すことがわかる。尚、
図15において、比較例2は磁性部品32aがない例なので、磁性部品32aの厚みは0とする。
更に加えて、内径金型部品32の磁性部品32aはHRCで50以上の硬い表面を有しており、耐摩耗性にも優れていることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の異方性磁石の成形用金型は、高い磁力を有するSm-Fe-N系ボンド磁石材料や異方性Nd-Fe-B系磁石材料を用いて成形するボンド磁石においても表面磁束密度波形を所望の波形形状に調整することできる。当該ボンド磁石を用いた磁気センサは従来の磁石を用いた磁気センサに比べて広いギャップで、かつ精度の高い磁気センサの製造に有用である。この磁気センサを、例えば各種機器の制御用途で用いることで機器の高精度化、高機能化にもつながる。
【符号の説明】
【0040】
1 成形用金型
2 外径金型部品
3 内径金型部品
3a 磁性部品
3b 非磁性部品
4 円環状空間部
5 磁束絞り部品
Cm 組成物
H 外部磁場
20 射出ユニット
21 シリンダ
22 ホッパ
23 ヒータ
24 スクリューロッド
30 成形用金型(金型)
31 外径金型部品
32 内径金型部品
32a 磁性部品
32b 非磁性部品
33 円環状空間部(キャビティ)
34 磁束絞り部品
50 外部磁場器
51 励磁コイル
52 励磁コイル
M 異方性ボンド磁石