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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220222BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 530
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018025916
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019144301
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】岩谷直毅
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-281843(JP,A)
【文献】特開2007-199614(JP,A)
【文献】特開2016-217781(JP,A)
【文献】特開2012-177794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な定着部材と、
前記定着部材と当接することにより前記定着部材との間にニップ部を形成する対向回転体
と、
前記定着部材を加熱する加熱源とを備え、
前記ニップ部に未定着画像を担持した記録媒体を搬送して、当該記録媒体に未定着画像を
定着する定着装置を有する画像形成装置において、
前記画像形成装置の本体構造部材に保持された前記定着部材用の温度検知手段の背面から検知面へ向かう気流を発生させる気流発生手段が設けられ、
さらに、前記気流発生手段の排気部に接続した気流案内手段が画像形成装置内に設けられ、
前記気流案内手段の排気口は二股に分かれた形状であり、前記排気口は、前記本体構造部
材と前記温度検知手段の隙間に向けて配置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記排気口は前記温度検知手段の背面側に向けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、未定着トナー像が形成された記録媒体を定着させる定着装置では、定着部材の温度制御を精度良く行う必要がある。ウォームアップ時間を短縮させるため低熱容量化された定着装置では、熱源から受ける熱量や記録媒体に奪われる熱量による定着部材の温度変動が特に顕著になるため、定着部材の温度検知手段には高応答及び高精度が求められる。
【0003】
近年、非接触型の赤外線センサ(以下、サーモパイルとよぶ)が主に温度検知手段として用いられている。サーモパイルは対象物から一定の距離を保った位置で保持され、温度検知を行うが、その検知面が水滴や異物(トナー成分など)で汚れてしまうと正常な検知が行えず、対象物の温度を誤検知して定着不良などの不具合が発生してしまう。
【0004】
サーモパイルの誤検知防止のために、水滴が溜まりにくい場所に配置するなどのサーモパイルの配置位置の工夫や、カバー部材でサーモパイルを覆うことで異物付着を防止する防止手段などが既に知られている。
【0005】
しかし、サーモパイル周辺に気流、特にサーモパイル検知面に吹き付ける方向の気流が生じた場合には、サーモパイルの配置位置の変更やカバー部材による防止手段だけでは、水滴や異物付着が検知面に発生し、画像不具合の問題が発生してしまう。
【0006】
特許文献1は、サーモパイル検知面の結露を防止するために、サーモパイルを加熱部材(電磁誘導加熱部材)の外側に配置し、さらに定着ニップから上方に発生する水蒸気を避けるためにサーモパイルを定着部材よりも下方に配置する方法を開示している。しかし、特許文献1では、サーモパイル周辺の気流には着目されておらず、サーモパイル検知面へ吹き付ける方向の気流が生じている場合には、やはり上述した不具合が発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、定着装置において、温度検知手段の周辺の気流を制御することで温度検知手段の検知面への水滴や異物の付着を防止して温度検知手段の誤検知を防止し、画像の不具合を生じさせないことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、回転可能な定着部材と、前記定着部材と当接することにより前記定着部材と
の間にニップ部を形成する対向回転体と、前記定着部材を加熱する加熱源とを備え、前記
ニップ部に未定着画像を担持した記録媒体を搬送して、当該記録媒体に未定着画像を定着
する定着装置を有する画像形成装置において、前記画像形成装置の本体構造部材に保持された前記定着部材用の温度検知手段の背面から検知面へ向かう気流を発生させる気流発生
手段が設けられ、さらに、
前記気流発生手段の排気部に接続した気流案内手段が画像形成装置内に設けられ、
前記気流案内手段の排気口は二股に分かれた形状であり、前記排気口は、前記本体構造部
材と前記温度検知手段の隙間に向けて配置されることにより解決される。
【発明の効果】
【0009】
温度検知手段の背面から検知面へ向かう気流を発生させる気流発生手段によって、温度検知手段の検知面への水滴や異物の付着を防止することができる。これにより、温度検知手段の誤検知が防止され、誤検知に起因する画像の不具合が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】定着装置の概略構成図である。
図3】定着装置と定着装置周辺の本体構造部の概略断面図である。
図4】定着装置と定着装置周辺の本体構造部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、画像形成装置の全体構成について説明する図です。
以下、本発明を電子写真方式の画像形成装置であるプリンタに適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタ1を示す概略構成図である。装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0012】
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
【0013】
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0014】
各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35を備える。
【0015】
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
【0016】
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
【0017】
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
【0018】
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35から伸びた廃トナー移送ホースは、廃トナー収容器の入り口部に接続されている。
【0019】
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には補給用のトナーを収容した4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間には、補給路が設けてあり、この補給路を介して各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
【0020】
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けてある。ここで、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
【0021】
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを搬送する搬送手段としての一対のレジストローラ12が配設されている。
【0022】
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
【0023】
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0024】
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。そして、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
【0025】
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写し切れなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。その後、除電装置によって各感光体5の表面が除電され、表面電位が初期化される。
【0026】
画像形成装置の下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によってタイミングを計られて、二次転写ローラ36と二次転写バックアップローラ32との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。
【0027】
その後、中間転写ベルト30の周回走行に伴って、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達したときに、上記二次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーは廃トナー収容器へと搬送され回収される。
【0028】
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上の未定着トナー画像Tが当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
【0029】
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0030】
次に、図2に基づき、上記定着装置20の構成について説明する。
図2に示すように、定着装置20は、回転可能な定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21と当接することにより定着ベルト21との間にニップ部Nを形成する対向回転体としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内側に配設されたニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21から用紙を分離する分離部材28と、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する加圧手段等を備えている。なお、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としてのサーモパイル110は定着装置20の外側、すなわちプリンタ1に設けられる。しかし、これに限られずサーモパイル110は定着装置20に設けられてもよい。
【0031】
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0032】
上記加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22の表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられたモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
【0033】
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナー画像Tを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。また、定着回転体と対向回転体は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
【0034】
上記各ハロゲンヒータ23は、それぞれの両端部が定着装置20の側板に固定されている。各ハロゲンヒータ23は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、上記サーモパイル110による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。
【0035】
上記ニップ形成部材24は、定着ベルト21の軸方向又は加圧ローラ22の軸方向に渡って長手状に配設され、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。なお、ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましいが、ステー25を樹脂製とすることも可能である。
【0036】
また、ニップ形成部材24は、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材で構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定したニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。ニップ形成部材24には、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂を用いることが可能である。
【0037】
また、ニップ形成部材24は、その表面に低摩擦シートを有している。定着ベルト21が回転する際、この低摩擦シートに対し定着ベルト21が摺動することで、定着ベルト21に生じる駆動トルクが低減され、定着ベルト21への摩擦力による負荷が軽減される。
【0038】
上記反射部材26は、ステー25とハロゲンヒータ23との間に配設されている。本実施形態では、反射部材26をステー25に固定している。また、反射部材26は、ハロゲンヒータ23によって直接加熱されるため、高融点の金属材料等で形成されることが望ましい。このように反射部材26を配設していることにより、ハロゲンヒータ23からステー25側に放射された光が定着ベルト21へ反射される。これにより、定着ベルト21に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。また、ハロゲンヒータ23からの輻射熱がステー25等に伝達されるのを抑制することができるので、省エネルギー化も図れる。
【0039】
また、本実施形態のような反射部材26を設けずに、ステー25のハロゲンヒータ23側の面を研磨又は塗装などの鏡面処理を施し、反射面を形成してもよい。また、上記反射部材26又はステー25の反射面の反射率は、90%以上であることが望ましい。
【0040】
ただ、ステー25はその強度を確保するために形状や材質が自由に選択できないため、本実施形態のように反射部材26を別途設けた方が、形状や材質の選択の自重度が広がり、反射部材26とステー25はそれぞれの機能に特化することができる。また、反射部材26をハロゲンヒータ23とステー25との間に設けることにより、ハロゲンヒータ23に対する反射部材26の位置が近くなるので、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。
【0041】
また、光の反射による定着ベルト21の加熱効率をさらに向上させるには、反射部材26又はステー25の反射面の向きを検討する必要がある。例えば、反射部材26をハロゲンヒータ23を中心とする同心円状に配設した場合は、光がハロゲンヒータ23に向かって反射されるため、その分、加熱効率が低下してしまう。これに対し、反射部材26の一部又は全部を、ハロゲンヒータ23以外の方向で定着ベルト側へ光を反射する向きに配設した場合は、ハロゲンヒータ23の方向へ反射される光量が少なくなるため、反射光による加熱効率を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る定着装置20は、さらなる省エネ性及びファーストプリントタイムなどの向上のために、種々の構成上の工夫が施されている。
具体的には、ハロゲンヒータ23によって定着ベルト21をニップ部N以外の箇所において直接加熱できるようにしている(直接加熱方式)。本実施形態では、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21の図2の左側の部分の間に何も介在させないようにし、その部分においてハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21に直接与えるようにしている。
【0043】
また、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、100~300μm、10~50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20~40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
【0044】
なお、本実施形態では、加圧ローラ22の直径を20~40mmに設定しており、定着ベルト21の直径と加圧ローラ22の直径を同等となるように構成している。ただし、この構成に限定されるものではない。例えば、定着ベルト21の直径が加圧ローラ22の直径よりも小さくなるように形成してもよい。その場合、ニップ部Nにおける定着ベルト21の曲率が加圧ローラ22の曲率よりも小さくなるため、ニップ部Nから排出される用紙が定着ベルト21から分離されやすくなる。
【0045】
次に、図3に基づき第1実施形態に係る定着装置に関して説明する。
図3は、定着装置と定着装置周辺の本体構造部の概略断面図である。定着装置20は、本体構造部材100に対して所定の位置に配置される。定着装置20は、本体構造部材100に対して直接位置決めしてもよいし、別の位置決め部材を介して位置決めしてもよい。本体構造部材100はプリンタ1の筐体の内側にある骨組みの一部である。定着装置内の定着ベルト21の温度を検知するための非接触式のサーモパイル110は、定着ベルト21から所定の距離を確保するため、定着ベルト21に対向する位置で本体構造部材100に保持されている。本体構造部材100にサーモパイル110を保持させる場合、取り付け穴などが必要になるため本体構造部材100とサーモパイル110の間に隙間ができてしまう。このとき定着ニップ出口からサーモパイル方向への気流F1が生じるとサーモパイル110に向かう流路ができてしまい、検知面110aへの水分付着やワックス付着が発生してしまう。
【0046】
なお、サーモパイル110は定着装置20に保持されてもよいが、この場合、定着ベルト21とサーモパイル110の間に所定の距離を確保する必要があるため、定着装置が大型化してしまう。
【0047】
図1図2の矢印A1にも示されているように、用紙Pは定着装置20の下方から上方に向かって搬送される。用紙P上の未定着画像を定着させるために所定の温度に加熱された定着部(ニップ部N)を用紙Pが通過する際に、用紙Pに含まれる水分が放出される。また、他にもトナーに含まれるワックス成分なども放出される。
【0048】
放出された水分やワックス成分がそのまま用紙Pと同じく上方へ向かっていけば問題ないが、例えば定着ベルト21の回転に連れられて、定着ベルト21の回転方向、すなわち定着ニップ出口からサーモパイル110に向かう気流F1が発生することがある。すると、本体構造部材100とサーモパイル110の間の隙間のために、放出された水分やワックス成分がサーモパイル110に向かって放出されてサーモパイル110の検知面110aに付着し、誤検知が生じる恐れがある。
【0049】
そこで、プリンタ1の本体構造部材100に保持された定着ベルト21用のサーモパイル110の周辺において、サーモパイル110の背面110bから検知面110aへ向かう気流F2を発生させる気流発生手段であるファン120を設ける。具体的には、ファン120とファンの排気部に接続した気流案内手段であるダクト130をプリンタ1内に設け、ダクト130の排気口130aをサーモパイル110の背面側に向ける。このとき、ダクト130の排気口130aを本体構造部材100とサーモパイル110の間の隙間に向けて配置するのが好ましい。また、本実施形態ではダクト130の排気口130aはサーモパイル110の背面110bよりも後方に位置しているが、背面110bよりも前方であって本体構造部材100の近傍に位置していてもよい。また、ファン120はプリンタ1内の任意の箇所に配置でき、ファン120から延びるダクト130の長さや形状を調節しつつ、その排気口130aをサーモパイル110の背面側に向ければよい。
【0050】
このようにして、サーモパイル110と本体構造部材100の隙間にサーモパイル110の背面110bから検知面110aへ向かう気流F2が発生する。したがって、ニップ部Nから放出された水分やワックス成分は、気流F2によりサーモパイル110と反対方向に押し流され、定着ニップ出口からサーモパイル110に向かう気流F1が打ち消されるため、水分やワックス成分がサーモパイル110の検知面110aへ付着することを防止できる。
【0051】
ファン120は、水分などが発生する、用紙Pがニップ部Nを通過するタイミングで起動されてもよい。これにより、節電しつつ好適なタイミングでサーモパイル110の背面110bから検知面110aへ向かう気流F2を発生させることができる。
【0052】
次に、図4に基づき第2実施形態に係る定着装置に関して説明する。
本実施形態では、気流方向を制御するのではなく、サーモパイル110の周辺に生じる気流を遮断する。上述したように、本体構造部材100にサーモパイル110を保持させる場合、取り付け穴などが必要になるため本体構造部材100とサーモパイル110の間に隙間ができてしまう。このとき定着ニップ出口からサーモパイル110に向かう気流が生じるとサーモパイル110に向かう流路ができてしまい、検知面110aへの水分付着やワックス付着が発生してしまう。
【0053】
そこで、プリンタ1の本体構造部材100に保持された定着ベルト21用のサーモパイル110の周辺の気流を遮断する気流遮断部材である、例えばスポンジやゴム等の弾性部材140を、本体構造部材100とサーモパイル110の間の隙間に配置する。弾性部材140をサーモパイル周辺の隙間を埋めるように配置することで、定着ニップ出口からサーモパイル110に向かう気流を遮断することが可能となり、サーモパイル110の検知面110aへの水分付着やワックス付着を防止できる。また、スポンジやゴム等の弾性部材を用いれば、サーモパイル110の取り付け位置精度にも影響が出ないので望ましい。なお、弾性部材に代えて接着テープなどの接着部材でサーモパイル周辺の隙間を完全に埋めてもよい。接着部材は、プリンタ1の本体構造部材100に保持された定着ベルト21用のサーモパイル110の周辺の気流を遮断する気流遮断部材の一例である。
【0054】
また、弾性部材や接着部材でサーモパイル周辺の隙間を完全に埋めて気流を完全に遮断することで検知面110aへ向かってくる気流は無くなるが、水蒸気は上方へ向かって放出されるため、サーモパイル110をニップ部Nの出口より下方へ配置することが好ましい。
【0055】
以上のように、本発明は、特に電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置において、定着部材用の温度検知手段として非接触のサーモパイルを用いる際に、サーモパイルの検知面が水滴やトナー成分などの異物付着により汚れることでサーモパイルが定着部材温度を誤検知してしまう不具合を防止するものである。その際、サーモパイル周辺の気流を制御する(検知面の背面から検知面へ向かう方向の気流を発生させる又はサーモパイル周辺の気流を遮断する)ことで、サーモパイル検知面への水滴や異物の付着を防止することができる。よって、サーモパイルの誤検知が防止され、誤検知に起因する画像不具合が生じない。
【符号の説明】
【0056】
1 プリンタ(画像形成装置)
20 定着装置
21 定着ローラ(定着部材)
22 加圧ローラ(対向回転体)
23 ハロゲンヒータ(加熱源)
100 本体構造部材
110 サーモパイル(温度検知手段)
110a 検知面
110b 背面
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【文献】特開2012-177794号公報
図1
図2
図3
図4