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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】頭部装着型表示装置および表示システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20220222BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B26/10 C
G02B26/10 104Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018050259
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019159286
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平野 成伸
(72)【発明者】
【氏名】片野 泰男
(72)【発明者】
【氏名】亀山 健司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 規和
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-083539(JP,A)
【文献】特開2005-070671(JP,A)
【文献】特開2013-178549(JP,A)
【文献】特開平06-098281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0164599(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0133881(KR,A)
【文献】特表2017-529635(JP,A)
【文献】特開2016-224345(JP,A)
【文献】特表2018-512562(JP,A)
【文献】特表2017-500605(JP,A)
【文献】国際公開第2017/151670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
G02B 26/10-26/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源から出射されたレーザー光を伝播する光ファイバーと、
前記光ファイバーから伝播された前記レーザー光の角度を変更するマイクロミラーデバイスと、
前記マイクロミラーデバイスにより角度が変更された前記レーザー光を装着者の瞳に導く導光板と、
を有し、
前記導光板は、導光部と、前記導光部を経由した光を反射する複数の反射部を備え、
前記マイクロミラーデバイスは、前記導光板の前記レーザー光を前記瞳に導く面とは異なる面に配置されている頭部装着型表示装置。
【請求項2】
前記マイクロミラーデバイスは、二次元に動作する1つのマイクロミラーを有する請求項1に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項3】
前記装着者の耳にかかることにより、前記頭部装着型表示装置を支持するテンプルと、
前記テンプルを折り畳む、または取り外す機構と、
を更に有する請求項1または2に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項4】
前記テンプルが折り畳んだ状態、または取り外された状態では前記レーザー光が出射されない機構、
を更に有する請求項3に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項5】
装着者に装着される請求項1~4のいずれか一項に記載の頭部装着型表示装置と、
前記装着者に装着されない装置であり、前記頭部装着型表示装置にレーザー光を出射するレーザー光源と、
を有する表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部装着型表示装置および表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くのメガネ型の頭部装着型表示装置(形状に応じてヘッドマウントディスプレイ(HMD)、VR(Virtual Reality)ゴーグル、VRグラス、スマートグラス、AR(Augmented Reality)グラス、グラスディスプレイ、グラスデバイスなどと呼称される)が開発されている。眼前のディスプレイに仮想映像を表示したり、現実の背景に仮想画像を重畳して表示したりすることで、従来の卓上型ディスプレイ、スマートフォン、およびタブレット端末とは全く異なる体験を得ることができる。頭部装着型表示装置は、主に以下の3つのタイプに分けられる。
【0003】
1つ目は、ディスプレイが眼前にあり、直接、またはレンズを通して見るタイプである。このタイプは、両眼非透過型のVR表示をするヘッドマウントディスプレイ、または小型単眼型のヘッドマウントディスプレイなどで用いられる。例えば、1つ目のタイプとして、左右2ユニットの画像表示素子、駆動回路および光学系をそれぞれ眼前に設置して、視野角90度以上の大画面表示を可能とする両眼非透過型のヘッドマウントディスプレイが開示されている(特許文献1を参照)。また、眼前に小型の画像表示素子、駆動回路および光学系を1ユニットだけ搭載して、重量が30g程度の軽量を可能とする小型単眼型のヘッドマウントディスプレイが開示されている(特許文献2を参照)。
【0004】
2つ目は、画像表示素子から出る画像光を投射し、眼前にあるミラーまたはハーフミラー等の半透過素子で反射させることにより見るタイプである。このタイプは、画像表示素子と、ミラーまたはハーフミラー等の半透過素子とを離して設置することができるため、画像表示素子を眼球表面より後ろ側に配置することで眼前の重量を軽減し、鼻への負担を減らすことができる。例えば、2つ目のタイプとして、顔の横から眼前のミラーまたはハーフミラー等の半透過素子に画像光を投射する表示装置が開示されている(特許文献3を参照)。
【0005】
3つ目は、画像表示素子から出る画像光を、導光板を通して見るタイプである。このタイプは、例えば、両眼透過型のAR表示をするヘッドマウントディスプレイなどで用いられる。このタイプは、画像表示素子から出る画像光を、コリメートレンズまたはミラーで導光板に導き、当該導光板を通して眼に対して入射させる。このように、画像光を導光板に通すことで、視野角20度以上の画像表示が可能となり、導光板の構造によっては視野角が60度程度の大画像表示も可能となる。例えば、3つ目のタイプとして、画像表示素子、コリメートレンズ、ミラーおよび導光板が一体型となった構造を有し、当該構造体の重心が眼球表面よりも前に位置する表示装置が開示されている(特許文献4~6を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、1つ目のタイプでは次のような問題がある。例えば、特許文献1に記載されたような両眼非透過型のヘッドマウントディスプレイは、視野角90度以上の大画面表示が可能であるが、左右2ユニットの画像表示素子、駆動回路および光学系をそれぞれ眼前に設置する構造であるため、眼前の総重量が500g以上となる場合が多い。そのため、重い構造体を長時間装着し続けることは困難である。また、上記両眼非透過型のヘッドマウントディスプレイは、当該構造体を折り畳んだり分解したりすることは難しく、持ち運ぶ場合、かさばってしまう。また、特許文献2に記載されたような小型単眼型のヘッドマウントディスプレイは、眼前に小型の画像表示素子、駆動回路および光学系を1ユニットだけ搭載するため、重量が30g程度と軽量ではあるが、視野角が15度程度であるため、表示画面が小さく、利用範囲が限られる。また、上記小型単眼型のヘッドマウントディスプレイは、画像表示素子と光学系とが一体型となった構造であるため、持ち運びのときにコンパクトに畳むことができない。
【0007】
また、2つ目のタイプでは次のような問題がある。例えば、特許文献3に記載されたような表示装置は、顔の横から眼前のミラーまたはハーフミラー等の半透過素子に投射することから、大画面を表示させることが難しい。また、このタイプは、現在、公表されているものでも、視野角が10度以下のような小さい画面しか表示できない。
【0008】
また、3つ目のタイプでは次のような問題がある。例えば、特許文献4~6に記載されたような表示装置は、画像表示素子、コリメートレンズ、ミラーおよび導光板が一体型となった構造であることにより、当該構造体の重心が眼球表面より前にあるため、少なくとも以下の3点の問題点がある。
【0009】
1点目の問題点は、鼻に対する荷重負担の問題である。具体的には、特許文献4~6に記載されたような表示装置は、画像表示素子、コリメートレンズ、ミラーおよび導光板が一体型となった構造であるため、40gから100g程度の重量である。さらに重心位置より鼻パッドと耳パッドでの重量比は8:2~9:1となり、鼻パッド部には30gから80g程度の荷重がかかる。近視矯正眼鏡では鼻パッドへの荷重は10g程度であることから、通常の近視矯正眼鏡の3倍から8倍もの荷重が鼻にかかる。このため、当該構造体を長時間装着すると、鼻パッド付近の皮膚が炎症して痛みが発生する可能性がある。
【0010】
2点目の問題点は、視野に関する問題である。両眼透過型ヘッドマウントディスプレイは、現実世界を見ながら画像表示情報を同時に見たり、画像をAR重畳させたりして利用するため、装着しながら歩いたり作業をしたりすることを前提とする。しかしながら、特許文献4~6に記載されたような表示装置は、画像表示素子、コリメートレンズ、ミラーおよび導光板が一体型となった構造であるため、当該構造体が、装着者の左右の周辺視野を塞ぐ形態となっている。一般的な人間の視野は180度以上であるが、当該構造体を装着すると100度以下に低下する可能性があるため、視野が狭い状態で動いたり作業をしたりすることは危険を伴い、装着時の安全性が低下する可能性がある。
【0011】
3点目の問題点は、大きさに関する問題である。ヘッドマウントディスプレイは、外出先などで大画面表示をするときに有効であるが、持ち運びやすいように形状がコンパクトであることも重要な要素である。例えば、ヘッドマウントディスプレイを持ち運ぶために折り畳んだり、簡易に分解または組み立てができたりするとよい。しかしながら、特許文献4~6に記載されたような表示装置は、画像表示素子、コリメートレンズ、ミラーおよび導光板が一体型であるゆえに、形状がコンパクトではなく、例えば、折り畳みや分解ができない構造となっている。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、眼前の大画面表示を可能とし、なおかつ、装着時の鼻への荷重負荷を軽減し、また、装着者の左右の周辺視野を確保し、また、形状をコンパクトにすることができる頭部装着型表示装置および表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、レーザー光源から出射されたレーザー光を伝播する光ファイバーと、光ファイバーから伝播されたレーザー光の角度を変更するマイクロミラーデバイスと、マイクロミラーデバイスにより角度が変更されたレーザー光を装着者の瞳に導く導光板とを有し、前記導光板は、導光部と、前記導光部を経由した光を反射する複数の反射部を備え、マイクロミラーデバイスは、導光板のレーザー光を瞳に導く面と異なる面に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、眼前の大画面表示を可能とし、なおかつ、装着時の鼻への荷重負荷を軽減し、また、装着者の左右の周辺視野を確保し、また、形状をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置を備えた表示システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第2の実施形態に係る頭部装着型表示装置のマイクロミラーデバイスの動作の一例を示す図である。
図3図3は、第2の実施形態に係る頭部装着型表示装置のマイクロミラーデバイスの動作の一例を示す図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る頭部装着型表示装置のマイクロミラーデバイスの動作の一例を示す図である。
図5図5は、第3の実施形態に係る頭部装着型表示装置の構成の一例を示す図である。
図6図6は、第4の実施形態に係る頭部装着型表示装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、頭部装着型表示装置および表示システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、各実施形態及び図面において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10を備えた表示システム1の構成の一例を示す図である。ここで、図1に示す頭部装着型表示装置10は、一般の眼鏡と類似の形態を有するが、この形態に限定されるものではない。
【0018】
図1に示すように、表示システム1は、レーザー光源20と、頭部装着型表示装置10とを備えている。頭部装着型表示装置10は、装着者に装着される装置である。レーザー光源20は、装着者に装着されない装置であり、頭部装着型表示装置10にレーザー光を出射する。
【0019】
頭部装着型表示装置10は、導光板100a、100bと、光ファイバー200と、マイクロミラーデバイス300a、300bと、ブリッジ400と、テンプル500a、500bとを備えている。
【0020】
テンプル500a、500bは、装着者の左右の耳にかかる部材であり、それぞれ、左右の導光板100a、100bの一端部150a、150bに取り付けられている。テンプル500a、500bは、装着者の耳にかかることにより、装着者から頭部装着型表示装置10が落下しないように、頭部装着型表示装置10を支持する。
【0021】
ブリッジ400は、左右の導光板100a、100bの他端部を繋ぎ、装着者の鼻にかかる部材である。また、ブリッジ400には、装着者の鼻を両脇から挟んで頭部装着型表示装置10を支持するためのパッド(鼻あて)が取り付けられている。
【0022】
光ファイバー200は、その一部がテンプル500a、500bに沿ってそれぞれ設けられている。以下、光ファイバー200の一部を、光ファイバー200a、200bと記載する。光ファイバー200a、200bは、それぞれ、左右の導光板100a、100bの一端部150a、150bに取り付けられている。光ファイバー200a、200bは、レーザー光源20から出射されたレーザー光を伝播する。
【0023】
マイクロミラーデバイス300a、300bは、光ファイバー200a、200bから伝播されたレーザー光の角度を変更する。マイクロミラーデバイス300a、300bは、それぞれ、マイクロミラー310a、310bと、ミラー制御部320a、320bとを有する。ミラー制御部320a、320bは、それぞれ、レーザー光の導光板100a、100bへの入射角が変更されるように、マイクロミラー310a、310bの角度を変更する。
【0024】
導光板100a、100bは、それぞれ、その本体に、導光部110a、110bと、反射部120a、120bとを有する。導光部110a、110bは、それぞれ、マイクロミラーデバイス300a、300bにより角度が変更されたレーザー光を全反射させながら導光する部分である。反射部120a、120bは、それぞれ、導光部110a、110bにより導光されたレーザー光を、装着者の瞳800a、800bに導くように反射させる部分である。
【0025】
導光板100a、100bにおいて、一端部150a、150bは、例えば、頭部装着型表示装置10を上から見た場合は三角形状であり、第1面と、第2面と、第3面とを有する。一端部150a、150bの第1面は、それぞれ、導光板100a、100bの本体に接する面である。一端部150a、150bの第2面は、それぞれ、例えば第1面に直交する面であり、テンプル500a、500bと光ファイバー200a、200bとが取り付けられる。一端部150a、150bの第3面は、それぞれ、例えば第1面および第2面と交差する面であり、マイクロミラーデバイス300a、300bが取り付けられ、マイクロミラー310a、310bと対向する。
【0026】
この導光板100a、100bの形状により、マイクロミラーデバイス300a、300bは、それぞれ、導光板100a、100bのレーザー光を瞳800a、800bに導く側とは反対側に配置されている。
【0027】
第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10の処理について説明する。まず、レーザー光源20から出射された光が光ファイバー200a、200bで導光板100a、100bまで導かれる。次に、導光板100a、100bの瞳800a、800bとは反対側の表面(外側表面)に位置するマイクロミラーデバイス300a、300bに光照射される。マイクロミラーデバイス300a、300bで反射されたレーザー光は導光板100a、100bの中を導光して瞳800a、800bに入る。ここで、マイクロミラーデバイス300a、300bは高速でミラーの角度が変わるデバイスであるため、画像信号に応じてミラーの角度を変えることで、装置者は導光板100a、100bから画像として認識することができる。
【0028】
このように、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10は、マイクロミラーデバイス300a、300bを備える構造であるため、装着時の鼻への荷重負荷を軽減し、また、装着者の左右の周辺視野を確保し、また、形状をコンパクトにすることができる。
【0029】
例えば、従来の頭部装着型表示装置(呼称としてヘッドマウントディスプレイ(HMD)、VRゴーグル、VRグラス、スマートグラス、ARグラス、グラスディスプレイ、グラスデバイスなど)は、画像表示素子として光源、ディスプレイ、レンズが一体型であり、大きく、重量のある構造である。近年のディスプレイ技術の発展で画素数1280×720を有する画面サイズが0.5インチ以下のマイクロディスプレイが製造されているが、光源、レンズを合わせてパッケージングすると1辺あたり20mm以上の筐体となり、重量も20g以上となる。
【0030】
一方、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10では、レーザー光源20を備えていない構造であるため、レーザー光源20が装着者に装着されない。また、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10では、コリメーターレンズ等を使用せずに、マイクロミラーデバイス300a、300bを備える構造であるため、マイクロミラーデバイス300a、300bの角度変化だけで導光板100a、100bに画像光を入れることができる。頭部装着型表示装置10は、マイクロミラーデバイス300a、300bの制御部分を含めて10g以下であり、小型、軽量の頭部装着型表示装置となる。このように、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10では、鼻、耳の重量負担を軽減することができ、長時間着用し続けられる。また、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10では、コリメーターレンズ等を使用しないため、装着者の左右の周辺視野を確保することができる。また、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10では、マイクロミラーデバイス300a、300bが、それぞれ、導光板100a、100bのレーザー光を瞳800a、800bに導く側とは反対側に配置されているため、形状をコンパクトにすることができる。
【0031】
ここで、マイクロミラーデバイス300a、300bへ電源供給、画像信号の伝達部分は頭部装着型表示装置10の内部にあっても外部にあっても構わないが、装置の小型軽量化を考慮すると、頭部装着型表示装置10の外部にあり、有線で繋がれていることが望ましい。例えば電源線、画像信号を伝達するための信号線が光ファイバー200a、200bと並行して通っており、レーザー光源20と並んで電源、画像制御ユニットがあればよい。
【0032】
また、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10は、導光板100a、100bを備える構造であるため、大画面表示を可能とする。
【0033】
例えば、レーザー光源20とマイクロミラーデバイス300a、300bを用いた頭部装着型表示装置としては、レーザー光源を装置者の網膜に直接結像させる網膜投射型表示装置が一般的に知られている。網膜投射型表示装置は装置者の視力や視力矯正の状況に関わらず焦点が合うことが特長であるが、一方でレーザー光を網膜上に集光させるため大きな反射ミラーを使用するなど小型化が難しい。また大画面表示も難しい。第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10は網膜投射型ではなく、導光板100a、100bを備える構造であるため、導光板100a、100bを用いることで薄型、軽量でありながら大画面表示を可能とする。導光板100a、100bは、ハーフミラーを使うタイプ、ポログラム素子を使うタイプ、多段反射など幾何構造を持つタイプなど様々なものがあるが、いずれを用いても構わない。
【0034】
ここで、レーザー光源20は一般的なもので構わないが、眼にレーザー光を入れるため、光強度の管理は十分に行う必要がある。一定以上の光強度にならないようなストッパー構造があることが望ましい。第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10では、単色でも文字表示や矢印など記号表示ができるので、情報アシスト機能として十分な価値があるが、赤、緑、青の3種類のレーザーを使い、高速で切り替えることにより、フルカラーを表示することができる。フルカラー表示できれば、画像、動画など多くの表現ができ、使用価値を大きく上げることができる。レーザーは3種類であるが、光源側で高速に切り替える機構をもたせれば、光ファイバー200は1本あればよい。
【0035】
光ファイバー200a、200bは、ガラス製、プラスチック製のどちらを用いても構わない。ガラス製は、耐久性が高く、また、プラスチック製は軽量であるので、用途に応じて選択すればよい。光ファイバー200a、200bから出た光は、マイクロミラーデバイス300a、300bに確実に照射する必要があるため、位置や角度がずれないように、テンプル500a、500bに対して固定することが望ましい。
【0036】
以上の説明により、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10は、眼前の大画面表示を可能とし、なおかつ、装着時の鼻への荷重負荷を軽減し、また、装着者の左右の周辺視野を確保し、また、形状をコンパクトにすることができる。
【0037】
なお、第1の実施形態において、頭部装着型表示装置10の導光板100a、100bの眼とは反対側の表面には、非透過状態と透過または半透過状態とに切り替える機構を付与してもよい。切り替える機構としては、サングラスのような遮光板をヒンジなどの可動部材を介して導光板100a、100bの前面に付ければいい。VRを表示するために非透過型装置にしたい場合は遮光板を導光板100a、100bの前面に置く。また、AR表示をする透過型装置にしたい場合は、遮光板が導光板100a、100bの前面に位置しないように上下左右方向に動かせばよい。
【0038】
また、第1の実施形態において、透過状態と透過または半透過状態とに切り替える機構としては、電気的に透過状態と非透過状態を切り替えられる調光素子を用いればよい。調光素子としては液晶素子、エレクトロクロミック素子などがある。特にエレクトロクロミック素子は透過状態と非透過状態とのコントラストが大きく、没入感のある非透過型装置と現実世界の視認性が高い透過型装置とに切り替えることができる。
【0039】
また、第1の実施形態において、頭部装着型表示装置10には外部の映像の撮影や位置の検出、対象物の確認などに使用するカメラや、使用者の姿勢、動作方向、向きなどを検出するためのセンサを含んでもよい。頭部装着型表示装置10の両端の位置に二台のカメラを設置した場合、撮影した二つの画像には位置がずれた結果が得られる。この得られた画像から、視差を求めることで、頭部装着型表示装置10と対象物との距離を求めることができる。
【0040】
また、第1の実施形態において、頭部装着型表示装置10に9軸センサ(加速度、角速度、地磁気)を付与してもよい。9軸センサを付与することで、頭部装着型表示装置10を装着した人物(装着者)の頭の方向や傾きがリアルタイムで把握することができ、頭の方向や傾きに応じてオブジェクトを表示させたり、消去したりといったことができる。
【0041】
また、第1の実施形態において、頭部装着型表示装置10にデプスセンサを付与してもよい。デプスセンサを付与することで、頭部装着型表示装置10を装着した人物(装着者)が実空間の何処にいるか把握できるので、頭部装着型表示装置10で表示するオフジェクトを自由に配置したり、固定したりすることができる。また、頭部装着型表示装置10を装着した人物が移動した場合であっても実空間が把握できているので、当該固定したオブジェクトが異なる位置に移動することなく表示させることができる。
【0042】
また、第1の実施形態において、頭部装着型表示装置10にアイトラッカーを付与してもよい。アイトラッカーを付与することにより、頭部装着型表示装置10を装着した人物(装着者)の視線が何処を向いているか分かるので、見た文字や物を認識することができ、適切な付加情報(ポップアップ)を表示することができる。
【0043】
また、第1の実施形態において、頭部装着型表示装置10に骨伝導スピーカーを付与してもよい。骨伝導スピーカーを付与することで、頭部装着型表示装置10を装着した作業者(装着者)が耳を塞がずにガイダンスや、遠隔地からの指示などの音声が聞けるので、効率よく作業を進めることかでき、周囲の音も同時に聞こえるので安全に作業することができる。
【0044】
なお、第1の実施形態において、図1に示した頭部装着型表示装置10は、両眼眼鏡型のヘッドマウントディスプレイであるが、これに限定されるものではなく、片眼用のヘッドマウントディスプレイであってもよい。また、頭部装着型表示装置10を眼鏡のように直接掛けてもよいが、例えば、ヘルメットや帽子などに取り付けてもよし、ゴーグルなどに入れて使用してもよい。
【0045】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る頭部装着型表示装置10について、第1の実施形態に係る頭部装着型表示装置10と相違する点を中心に説明する。
【0046】
図2図4は、第2の実施形態に係る頭部装着型表示装置10のマイクロミラーデバイス300a、300bの動作の一例を示す図である。ここで、図2図4には、右側の機構、すなわち、右側の導光板100b、光ファイバー200b、マイクロミラーデバイス300bおよびテンプル500bの図示を省略する。
【0047】
第2の実施形態に係る頭部装着型表示装置10では、マイクロミラーデバイス300a、300bは、それぞれ、二次元に動作する1つのマイクロミラー310a、310bを有する。マイクロミラーデバイス300a、300bがそれぞれ1つのマイクロミラー310a、310bのみを用いることで、デバイスの大きさは小さくなり、制御もシンプルになる。このため、マイクロミラー310a、310bとミラー制御部320a、320bとをそれぞれ搭載する制御基板も小さくすることができる。
【0048】
例えば、図2図3図4に示すように、マイクロミラー310a、310bの角度を変えることで、レーザー光の導光板100a、100bへの入射角を変えることができ、導光板100a、100bからの出射角が変わる。マイクロミラー310a、310bの角度走査を高速に行うことで、装着者の瞳800a、800bには残像効果により二次元画像が見える。ミラーの振り角が±15度の制御が可能なマイクロミラーデバイス300a、300bを用いると、振り角の2倍の±30度の角度を付けて、導光板100a、100bに光を入射することができる(ミラーへの入射角、反射角が各々15度であるため)。従って、導光板100a、100bから出射される画像光は視野角60度の広角を有しており、従来の頭部装着型表示装置と比較して大きな面積の画像を表示できる。
【0049】
また、画素数はレーザー径と点滅速度とに依存するが、フルHD(1920×1080画素)を周波数60Hzで描画する程度は十分に可能である。既存のマイクロディスプレイである液晶、有機EL(Electro-Luminescence)などと比較しても優位である。
【0050】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る頭部装着型表示装置10について、第2の実施形態に係る頭部装着型表示装置10と相違する点を中心に説明する。
【0051】
図5は、第3の実施形態に係る頭部装着型表示装置10の構成の一例を示す図である。第3の実施形態に係る頭部装着型表示装置10は、テンプル500a、500bを折り畳む、または取り外す機構を有する。例えば、その機構として、導光板100a、100bとテンプル500a、500bとの接触部分に、それぞれ、ヒンジ部600a、600bが設けられている。
【0052】
ここで、従来の頭部装着型表示装置は、マイクロディスプレイ、レンズ、導光板100a、100bが一体型になっている構造であり、光軸がずれないように筐体で固定化されている。従って、一般的な矯正眼鏡のようにレンズとテンプル500a、500b(つる)の部分で折り曲げて小さく収納することはできない。マイクロディスプレイの後ろのテンプル500a、500bの部分に折り畳み機構を設けても50mm程度の幅は必要となり、収納ケースも大きくなる。頭部装着型表示装置10の使い場所としては、オフィスのデスク作業というより、外出時、屋外、作業現場などが想定され、持ち運びの便利さは重要な要素となる。
【0053】
第3の実施形態に係る頭部装着型表示装置10の構成では、マイクロミラーデバイス300a、300bは導光板100a、100bの外側表面に付いており、テンプル500a、500bと並行して光ファイバー200a、200bと電源/信号ケーブルがあるだけであるので、テンプル500a、500bに対して、光ファイバー200a、200bと電源/信号ケーブルを固定しておけば、導光板100a、100b部分とテンプル500a、500b部分は切り離すことができる。例えば一般的な矯正眼鏡のようにヒンジ部600a、600bを付けて折り畳む機構をつければ、導光板100a、100bの厚さとテンプル500a、500bの幅に折り畳むことができ、30mm程度の幅にまとめることができる。また、テンプル500a、500bを取り外せる機構を設けておけば、よりコンパクトに収納できる。
【0054】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る頭部装着型表示装置10について、第3の実施形態に係る頭部装着型表示装置10と相違する点を中心に説明する。
【0055】
図6は、第4の実施形態に係る頭部装着型表示装置10の構成の一例を示す図である。第4の実施形態に係る頭部装着型表示装置10は、テンプル500a、500bが折り畳んだ状態、または取り外された状態ではレーザー光が出射されない機構を有する。例えば、その機構として、導光板100a、100bとテンプル500a、500bとの接触部分に、それぞれ、上記機構が設けられている。第4の実施形態に係る頭部装着型表示装置10は、レーザー光源20を使用するため、扱いはより慎重にしなければならない。特に装置を使用していないときにレーザー光が出射されてしまうと、誤って直接に眼に入ってしまう可能性があるため危険である。従って、頭部装着型表示装置10が使用されていない状態であるテンプル500a、500bが折り畳まれているとき、またはテンプル500a、500bが取り外されているときはレーザー光が出射されないようにする機構は有用である。
【0056】
その機構は、どのようなものでも構わないが、例えば、導光板100a、100bとテンプル500a、500bとの接触部分にそれぞれセンサを設け、導光板100a、100bとテンプル500a、500bとが一定以上近づいたときだけ、レーザー光源20をONさせる制御信号をレーザー光源20に送信したり、導光板100a、100bへのレーザー光の入射を禁止したりする方法が考えられる。あるいは、導光板100a、100bとテンプル500a、500bとの接触部分にそれぞれプッシュ型スイッチ700a、700bを設け、テンプル500a、500bが導光板100a、100bと接してプッシュ型スイッチ700a、700bがONになったときだけ、レーザー光源20をONさせる制御信号をレーザー光源20に送信したり、導光板100a、100bへのレーザー光の入射を禁止したりする方法が考えられる。
【実施例
【0057】
上述のように、表示システム1は、レーザー光源20と頭部装着型表示装置10とを備え、頭部装着型表示装置10は、導光板100a、100bと、光ファイバー200と、マイクロミラーデバイス300a、300bと、ブリッジ400と、テンプル500a、500bとを備えている。以下、頭部装着型表示装置10を備えた表示システム1の実施例を記載する。
【0058】
(実施例1)
実施例1では、レーザー光源20、マイクロミラーデバイス300a、300b、導光板100a、100bおよび光ファイバー200を図1に示すような配置とした。
・導光板100a、100b:アクリル樹脂、厚み5mm、長さ45mm、高さ25mm、出射部に角度45度でハーフミラー
・レーザー光源20:住友電工RGB CANユニット(SLM-RGB-T20-F)
・光ファイバー200:三菱電線工業 ST100E
・マイクロミラーデバイス300a、300b:浜松ホトニクス S12237-03P
【0059】
<実施内容>
マイクロミラーデバイス300a、300bはX、Y軸方向に各々±15度ずつ振れる。XY軸を180Hzでスキャンさせることで、RGB各波長のレーザー光を順次導光板に光入射した。レーザーはX軸を1回走査する間に1920ドット点灯し、Y軸を1回走査する間に1080ドット点灯させた。レーザー強度は最大30マイクロワットから0まで256段階で調整し、階調表示させた。
【0060】
<実施結果>
マイクロミラーデバイス300a、300bの大きさは制御基板込みで約14mm×8mm×4mmであり、導光板100a、100bの隅に設置した場合、視界を塞ぐことはなかった。重量も5g程度であり、軽量であった。所望の画像信号に応じて画像表示をしたところ、導光板越に装着者は視野角60度相当の大画面をみることができた。
【0061】
(実施例2)
実施例2において、頭部装着型表示装置10は、実施例1の構成に対して、導光板100a、100bとテンプル500a、500bとの接触部分にそれぞれ設けられたヒンジ部600a、600bを備えている。実施例2では、ヒンジ部600a、600bを図5に示すような配置とした。
・ヒンジ部600a、600b:スガツネ工業 HG-TS型
【0062】
<実施結果>
ヒンジ部600a、600bでテンプル500a、500bが折り畳まれ、コンパクトな大きさ(幅28mm)になった。
【0063】
(実施例3)
実施例3において、頭部装着型表示装置10は、実施例2の構成に対して、導光板100a、100bとテンプル500a、500bとの接触部分にそれぞれ設けられたプッシュ型スイッチ700a、700bを備えている。実施例3では、プッシュ型スイッチ700a、700bを図6に示すような配置とした。
・プッシュ型スイッチ700a、700b:Leye電子工学
【0064】
<実施内容>
プッシュ型スイッチ700a、700bとレーザー光源20のスイッチとを連動させ、プッシュ型スイッチ700a、700bがONでない場合はレーザー光源20のスイッチがONにならないようにした。
【0065】
<実施結果>
ヒンジ部600a、600bでテンプル500a、500bが折り畳まれている場合、プッシュ型スイッチ700a、700bがONにならず、レーザー光源20が誤発射することはなかった。
【符号の説明】
【0066】
1 表示システム
10 頭部装着型表示装置
20 レーザー光源
100a、100b 導光板
110a、110b 導光部
120a、120b 反射部
150a、150b 一端部
200、200a、200b 光ファイバー
300a、300b マイクロミラーデバイス
310a、310b マイクロミラー
320a、320b ミラー制御部
400 ブリッジ
500a、500b テンプル
600a、600b ヒンジ部
700a、700b プッシュ型スイッチ
800a、800b 瞳
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【文献】国際公開第2015/137165号
【文献】特開2011-227379号公報
【文献】特開2015-219405号公報
【文献】特開2007-094175号公報
【文献】特開2013-200553号公報
【文献】特開2013-210633号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6