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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】トナー用ポリエステル樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/85 20060101AFI20220222BHJP
   C08G 63/20 20060101ALI20220222BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20220222BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C08G63/85
C08G63/20
G03G9/087 331
G03G9/08 381
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018060478
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019172755
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】小澤 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 朝子
(72)【発明者】
【氏名】田村 陽子
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-40285(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209289(WO,A1)
【文献】特開2015-225095(JP,A)
【文献】特開2015-75700(JP,A)
【文献】特開2003-337443(JP,A)
【文献】特開2017-48389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/
C08L67/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリオールで構成されるアルコール成分とカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸を95mol部以上と、酸またはアルコールと反応し得る官能基と炭素数30以上の炭化水素基とを有する化合物とを、チタン触媒を用いて重合する、トナー用ポリエステル樹脂の製造方法であって、前記トナー用ポリエステル樹脂が、分子末端に炭素数30以上の炭化水素基を有し、酸価が13mgKOH/g以下、TVOCが380ppm以下であるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記脂肪族ポリオールが、エチレングリコール、ネオペンチグリコール、または12-プロパンジオールである、請求項1に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族ポリオールを前記脂肪族ポリオールと前記カルボン酸成分の合計量に対し、40モル%以上60モル%以下含有する、請求項1または2に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用ポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷法や静電荷現像法により画像を得る方法においては、感光体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像した後、定着が行われる。これらの方法により画像を得るために用いられる装置は、通常、加熱体である定着部を有するため、装置内での温度が上昇する。そのため、トナーには、ブロッキングしないこと、つまり保存性が求められる。加えて、連続印刷時においても装置の汚れやカブリなどが見られないこと、すなわち耐久性もトナーには求められている。
【0003】
トナー用のバインダー樹脂は、トナー特性に大きな影響を与えるものであり、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が用いられている。中でも、性能バランスの良いポリエステル樹脂が特に注目されている。
【0004】
ところで、トナーの製造方法としては、粉砕法、ケミカル法などが挙げられる。粉砕法は、バインダー樹脂および他のトナー配合物(例えば顔料(着色剤)、離型剤等)を溶融混練し、得られた混練物を粉砕機などによって微粉砕し、分級することによってトナーを得る方法であり、工業的に広く用いられている。
【0005】
粉砕法用のバインダー樹脂として、粉砕で小粒子化に要するエネルギーを低減することが可能な、粉砕性に優れるトナー用ポリエステル樹脂が求められている。 また、定着の際などにトナーが加熱されると、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)が発生することがある。 近年、健康や環境保護を考慮してVOCの総量(TVOC:Total Volatile Organic Compound)の低減が求められており、トナーにおいてもTVOCの低減が求められている。
【0006】
例えば、特許文献1にはチタン触媒を用いて重合されたVOC含有量の少ないポリエステル樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-040286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1記載の方法では、TVOCの含有量の低減と粉砕性が不十分であった。 本発明は、このような状況を鑑み、環境保全、安全性とトナー製造時の省エネルギー化に配慮したトナー用樹脂を提供するために、TVOCが少なく、吸湿性、粉砕性に優れるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を有する
1] 脂肪族ポリオールで構成されるアルコール成分とカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸を95mol部以上と、酸またはアルコールと反応し得る官能基と炭素数30以上の炭化水素基とを有する化合物とを、チタン触媒を用いて重合する、トナー用ポリエステル樹脂の製造方法であって、前記トナー用ポリエステル樹脂が、分子末端に炭素数12以上の炭化水素基を有し、酸価が13mgKOH/g以下、TVOC380ppm以下であるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法
2] 前記脂肪族ポリオールが、エチレングリコール、ネオペンチグリコール、12-プロパンジオールである、[1]に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法
3] 前記脂肪族ポリオールを前記脂肪族ポリオールと前記カルボン酸成分の合計量に対して、40モル%以上60モル%以下含有する、[1]または[2]に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法で得られるトナー用ポリエステル樹脂により、TVOCが少なく、吸湿性、粉砕性に優れるトナーを提供できる。
【0011】
<トナー用ポリエステル樹脂の製造方法>本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、脂肪族ポリオールで構成されるアルコール成分とカルボン酸成分と炭素数12以上の炭化水素基を有するモノカルボン酸またはアルコール材料を、チタン触媒を用いて重合する。
【0012】
<アルコール成分> 本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、アルコール成分として、脂肪族ポリオールを用いる。 脂肪族ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロパンジオール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、D-イソソルバイド、L-イソソルバイド、エリスリタン、水素添加ビスフェノールA、スピログリコール、ジオキサングリコール、ズルシッド、ヘキシッド、グリセリン、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサテトラロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0013】
脂肪族ポリオールは、これらの中でも、重合反応性やポリエステル樹脂のガラス転移温
度(Tg)を40℃以上に設計しやすい観点から、エチレングリコール、1,2-プロパ
ンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールが好ましく
、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールが特に好ま
しい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 脂肪族ポリ
オールは、前記脂肪族ポリオールと前記カルボン酸成分の合計量に対し、40モル%以上
60モル%以下含有することが好ましい。脂肪族ポリオールが40モル%以上60モル%
以下であれば吸湿性と粉砕性が良好になる。
【0014】
<カルボン酸成分> カルボン酸成分としては、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。2価のカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびこれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物などが挙げられる。これらジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、モノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、後述の3価以上のカルボン酸と併用してもよい。
【0015】
3価以上のカルボン酸としては、例えば例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物などが挙げられる。 これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、2価のカルボン酸と併用してもよい。
【0016】
<チタン触媒> チタン触媒としては、室温(20℃)で液体であってもよいし、固体状(粉体状)であってもよいが、ポリエステル樹脂の乳化性がより向上する点、特に乳化物の貯蔵安定性の観点から、液体のチタン触媒が好ましい。 液体のチタン触媒としては有機チタン化合物が挙げられ、固体のチタン触媒としては無機チタン化合物が挙げられる。
【0017】
有機チタン化合物としては、例えばアルコキシ基を有するチタンアルコキシド化合物、カルボン酸チタン化合物、カルボン酸チタニル化合物、カルボン酸チタニル塩化合物、チタンキレート化合物など挙げられる。 アルコキシ基を有するチタンアルコキシド化合物としては、例えばテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラペントキシチタン、テトラオクトキシチタンなどが挙げられる。
【0018】
カルボン酸チタン化合物としては、例えば蟻酸チタン、酢酸チタン、プロピオン酸チタン、オクタン酸チタン、シュウ酸チタン、コハク酸チタン、マレイン酸チタン、アジピン酸チタン、セバシン酸チタン、ヘキサントリカルボン酸チタン、イソオクタントリカルボン酸チタン、オクタンテトラカルボン酸チタン、デカンテトラカルボン酸チタン、安息香酸チタン、フタル酸チタン、テレフタル酸チタン、イソフタル酸チタン、1,3-ナフタレンジカルボン酸チタン、4,4-ビフェニルジカルボン酸チタン、2,5-トルエンジカルボン酸チタン、アントラセンジカルボン酸チタン、トリメリット酸チタン、2,4,6-ナフタレントリカルボン酸チタン、ピロメリット酸チタン、2,3,4,6-ナフタレンテトラカルボン酸チタンなどが挙げられる。
【0019】
カルボン酸チタニル化合物としては、例えば安息香酸チタニル、フタル酸チタニル、テレフタル酸チタニル、イソフタル酸チタニル、1,3-ナフタレンジカルボン酸チタニル、4,4-ビフェニルジカルボン酸チタニル、2,5-トルエンジカルボン酸チタニル、アントラセンジカルボン酸チタニル、トリメリット酸チタニル、2,4,6-ナフタレントリカルボン酸チタニル、ピロメリット酸チタニル、2,3,4,6-ナフクレンテトラカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
【0020】
カルボン酸チタニル塩化合物としては、特に限定されないが、例えば上記のカルボン酸チタニル化合物に対するアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)塩もしくはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)塩などが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、反応性の観点で、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタンが好ましい。また、チタンキレート化合物を用いる場合は、配位子が、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、オクチレングリコール、トリエタノールアミン、乳酸、乳酸アンモニウムから選ばれることが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
無機チタン化合物としては、例えばチタン、酸化チタン、窒化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、二酸化チタンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。<他の成分> ポリエステル樹脂の製造方法には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、末端官能基数の調整や他の材料の分散性向上目的で、多価カルボン酸および多価アルコールに加えて、1価のカルボン酸や1価のアルコールを併用してもよい。 1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、p-メチル安息香酸等の炭素数30以下の芳香族カルボン酸;ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数30以下の脂肪族カルボン酸;桂皮酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和二重結合を分子内に1つ以上有
する不飽和カルボン酸などが挙げられる。 1価のアルコールとしては、例えばベンジルアルコール等の炭素数30以下の芳香族アルコール;オレイルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数30以下の脂肪族アルコールなどが挙げられる。 これら1価のカルボン酸および1価のアルコールは、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。<重合条件>
【0023】
エステル化反応またはエステル交換反応、重縮合反応の重合温度は180~280℃が好ましい。重合温度が180℃以上であれば生産性が良好となる傾向にあり、280℃以下であればポリエステル樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にあり、TVOCがより低減する。重合温度の下限値は200℃以上がより好ましく、上限値は270℃以下がより好ましい。 また、重縮合工程の時間(重縮合反応時間および取り出し時間の合計)が短いほど、ポリエステル樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にある。
【0024】
重縮合は、離型剤(ワックス)の存在下で行ってもよい。離型剤の存在下で重縮合を行うことにより、トナーの定着性、ワックス分散性がより向上する傾向にある。離型剤としては、後述する他の成分として挙げるものと同様のものが挙げられ、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重縮合時における離型剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。ただし、TVOCを低減する観点では、離型剤を用いずに重縮合する方が有利である。<トナー用ポリエステル樹脂>
【0025】
本発明のポリエステル樹脂の酸価は、13mgKOH/g以下である。ポリエステル樹脂の酸価が、1mgKOH/g以上であれば帯電性が良好となり、13mgKOH/g以下であれば小粒子径まで粉砕した時の空気中の湿度に依存した、吸湿を抑制できる。
【0026】
ポリエステル樹脂の酸価は、ポリエステル樹脂をベンジルアルコールに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として、0.02規定のKOHベンジルアルコール溶液を用いて滴定して求めた値である。
【0027】
酸価を上記範囲にするためには、例えば、仕込み組成の酸とアルコールの比率で酸の比率をアルコールよりも少なくしたり、樹脂軟化温度を調整したりすることで可能である。樹脂軟化温度を上げ過ぎると、トナーの低温定着性を損なうので、アルコールと酸の比率で調整するのが好ましい。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂は、分子末端に炭素数12以上の炭化水素基を有している。分子末端に炭素数12以上の炭化水素基を有していることで粉砕性が良好となる。またトナーにした際の低極性材料の分散能にも優れるため、低温定着性にも優れるという効果を示す。
【0029】
炭素数12以上の炭化水素基は、化合物がポリエステル樹脂の構成単位として取り込まれた場合に、トナーのワックス分散性を良好にする作用を奏する。また粉砕性が向上する。炭化水素基の炭素数は、有機揮発成分を低減する観点から、30以上が好ましく、35以上が更に好ましい。 化合物中の官能基の結合位置は、特に限定されないが、トナーの定着特性を考慮すると、炭化水素基の片末端炭素に結合していることが好ましい。 分子末端の炭素数12以上の炭化水素基を有する化合物の好ましい形態の具体例としては、例えば、東洋ペトロライト社製ユニリンシリーズのうち数平均分子量が375以上のもので、例えば商品名としてユニリン350(カタログ分子量:Mn375)、ユニリン425(カタログ分子量:Mn460)、ユニリン550(カタログ分子量:Mn550)、ユニリン700(カタログ分子量:Mn700)が挙げられる。
【0030】
分子末端の炭素数12以上の炭化水素基を有するポリエステル樹脂は、酸またはアルコールと反応し得る官能基と炭素数12以上の炭化水素基とを有する化合物を反応させて得られる。このポリエステル樹脂のほかに、分子末端に炭素数12以上の炭化水素基を構成単位として有しないポリエステル樹脂や、未反応の酸またはアルコールと反応し得る官能基と炭素数12以上の炭化水素基とを有する化合物、及び官能基を含まない炭素数12以上の炭化水素基を含有していてもよい。
【0031】
また、酸またはアルコールと反応し得る官能基とは、酸またはアルコールと反応して共有結合を生成する基のことである。酸またはアルコールと反応して共有結合を生成する反応としては、特に制限されないが、例えば、縮合反応、付加反応、エステル交換反応等が挙げられる。これらの反応によって、化合物の官能基とポリエステル樹脂の原料成分である酸またはアルコールとが反応することにより、化合物の残基がポリエステル樹脂中に構成単位として取り込まれる。 このような反応をする官能基としては、特に制限されないが、カルボキシル基またはその無水物、水酸基、グリシジル基、アルコキシ基、イソシアネート基、およびエステル基等が挙げられる。中でも、カルボキシル基またはその無水物、水酸基、エステル基が好ましい。
【0032】
本発明のポリエステル樹脂は、TVOCが380ppm以下である。 ポリエステル樹脂等の結着樹脂は、通常、トナー中に90質量%以下程度含まれる。ポリエステル樹脂のTVOCが380ppm以下であれば、前記ポリエステル樹脂を含有するトナーのTVOCは、概ね300ppm以下となるので、TVOCが十分に低減されたトナーが得られる。ポリエステル樹脂のTVOCは、330ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましい。ポリエステル樹脂のTVOCは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定することができる。
【0033】
TVOCを低減するためには、チタン系触媒の存在下で単量体混合物を重縮合すればよい。重縮合の際にチタン系触媒を用いると、酸成分とアルコール成分との反応性が良好となる。その結果、アルコール成分としてエチレングリコールを含む脂肪族ポリオールを使用しても十分に多価カルボン酸と反応し、未反応のエチレングリコールの割合が少なくなるため、TVOCがより低下する傾向になる。またTVOCは脂肪族ポリオールの沸点に依存しやすいため、高沸点のポリオール、具体的にはネオペンチルグリコールを一定割合入れるとTVOCを低減させやすい。
【0034】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40~85℃が好ましく、45~75℃がより好ましい。ガラス転移温度が、40℃以上であればトナーの保存安定性が向上し、85℃以下であればトナーの低温定着性がより優れる。 ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、以下のようにして求める。すなわち、示差走差熱量計を用い、昇温速度5℃/分で測定したときのチャートの低温側のベースラインと、ガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求め、これをTgとする。
【0035】
ポリエステル樹脂の軟化温度(T4)は、80~170℃が好ましく、85~160℃がより好ましい。軟化温度が80℃以上であれば、耐ホットオフセット性が良好になる。一方、軟化温度が170℃以下であれば、低温定着性が良好になる。ポリエステル樹脂の軟化温度は、フローテスターを用いて測定することができる。
【0036】
[トナー] トナー中の前記ポリエステル樹脂の含有量は、トナー100質量%中、5~90質量%が好ましい。
【0037】
また、トナーは、必要に応じて着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動改質剤、磁性体、本発明のポリエステル樹脂以外の樹脂(他のバインダー樹脂)などの配合物を含んでいてもよい。
【0038】
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染料もしくは顔料などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 トナーをカラートナーとして用いる場合、イエロー系着色剤としてはベンジジンイエロー、モノアゾ系染顔料、縮合アゾ系染顔料などが挙げられ、マゼンタ系着色剤としてはキナクリドン、ローダミン系染顔料、モノアゾ系染顔料などが挙げられ、シアン系着色剤としてはフタロシアニンブルーなどが挙げられる。 着色剤の含有量は特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性に優れる点から、トナー100質量%中、2~10質量%が好ましい。
【0039】
荷電制御剤としては、4級アンモニウム塩や、塩基性もしくは電子供与性の有機物質等の正帯電性の荷電制御剤;金属キレート類、含金属染料、酸性もしくは電子求引性の有機物質等の負帯電性の荷電制御剤が挙げられる。 トナーをカラートナーとして用いる場合、荷電制御剤としては無色ないし淡色で、トナへの色調障害が少ないものが適しており、このような荷電制御剤としては、例えばサリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物などが挙げられる。さらに、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、スルホン酸基を有するビニル重合体を荷電制御剤として用いてもよい。 荷電制御剤の含有量は、トナー100質量%中、0.5~5質量%が好ましい。荷電制御剤の含有量が0.5質量%以上であればトナーの帯電量が十分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下であれば荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
【0040】
離型剤としては、トナーの離型性、保存性、定着性、発色性等を考慮して、カルナバワックス、ライスワックス、蜜蝋、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、合成エステル系ワックス、パラフィンワックス、脂肪酸アミド、シリコーン系ワックス等を適宜選択して使用できる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。離型剤の融点は、トナー性能を考慮して適宜決定すればよい。離型剤の含有量は特に制限されないが、上記のトナー性能を左右することから、トナー100質量%中、0.3~15質量%が好ましい。離型剤の含有量の下限値は、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、離型剤の含有量の上限値は、13質量%以下がより好ましく、12質量%以下が特に好ましい。
【0041】
流動改質剤などの添加剤としては、微粉末のシリカ、アルミナ、チタニア等の流動性向上剤;マグネタイト、フェライト、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、導電性チタニア等の無機微粉末;スチレン樹脂、アクリル樹脂等の抵抗調節剤;滑剤などが挙げられ、これらは内添剤または外添剤として使用される。 これらの添加剤の含有量は、トナー100質量%中、0.05~10質量%が好ましい。これらの添加剤の含有量が0.05質量%以上であればトナーの性能改質効果が十分に得られる傾向にあり、10質量%以下であればトナーの画像安定性が良好となる傾向にある。
【0042】
他の結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂(ただし、本発明の製造方法で得られたポリエステル樹脂を除く。)、スチレン系樹脂、環状オレフィン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
トナーは、磁性1成分現像剤、非磁性1成分現像剤、2成分現像剤の何れの現像剤としても使用できる。トナーを磁性1成分現像剤として用いる場合、トナーは磁性体を含有する。磁性体としては、例えばフェライト、マグネタイト、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金;化合物や強磁性元素を含まないが、適当に熱処理することによって強磁性を示すようになる合金(例えばマンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズ等のマンガンと銅とを含む、所謂ホイスラー合金、二酸化クロム等)などが挙げられる。 磁性体の含有量は特に制限されないが、トナーの粉砕性に大きく影響を与えるため、トナー100質量中、3~70質量%が好ましい。磁性体の含有量が3質量%以上であればトナーの帯電量
が十分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下であればトナーの定着性や粉砕性が良好となる傾向にある。磁性体の含有量の上限値は、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0044】
トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーはキャリアと併用して用いられる。キャリアとしては、例えば鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリアなどが挙げられる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、例えばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などが挙げられる。キャリアの使用量は、トナー100質量部に対して、500~3000質量部が好ましい。キャリアの使用量が500質量部以上であればかぶり等が発生しにくくなる傾向にあり、3000質量部以下であれば定着画像の濃度が十分なものとなる傾向にある。
【0045】
トナーを製造する方法としては特に制限されないが、本発明の製造方法で得られたポリエステル樹脂と、上述した配合物とを混合した後、2軸押出機などで溶融混練し、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って製造する方法(粉砕法);上記ポリエステル樹脂と配合物とを溶剤に溶解・分散させ、水系媒体中にて造粒した後に溶剤を除去し、洗浄、乾燥してトナー粒子を得て、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って製造する方法や、本発明のポリエステル樹脂を水中で乳化し、微粒化した配合物とともに水中で凝集、融合させて造粒し、洗浄、乾燥してトナー粒子を得て、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って製造する方法(ケミカル法)などが挙げられる。
【0046】
トナーの平均粒子径は特に制限されないが、3~15μmが好ましく、5~10μmがより好ましい。トナーの平均粒子径が3μm以上であれば、生産性が良好となる傾向にある、また、塵肺の問題も生じにくい傾向にある。一方、トナーの平均粒子径が15μm以下であれば、高画質な画像を安定して形成できる傾向にある。
【0047】
上記トナーは、上述した本発明の製造方法で得られたポリエステル樹脂を含むので、TVOCが十分に低減されている。
【実施例
【0048】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 本実施例で示されるポリエステル樹脂の評価方法は以下の通りである。
【0049】
[測定・評価方法]<ガラス転移温度(Tg)の測定> ポリエステル樹脂のTgは、示差走差熱量計(島津製作所社製、「DSC-60」)を用いて、昇温速度5℃/minにおけるチャートのベースラインと吸熱カーブの接線との交点から測定した。測定試料は10mg±0.5mgをアルミパン内に計量し、ガラス転移温度以上の100℃で10分融解後、ドライアイスを用いて急冷却処理したサンプルを用いて行った。
【0050】
<軟化温度(T4)の測定> ポリエステル樹脂のT4は、フローテスター(島津製作所社製、「CFT-500D」)を用いて、1mmφ×10mmのノズル、荷重294N、昇温速度3℃/minの等速昇温下で、樹脂サンプル1.0g中の4mmが流出したときの温度を測定し、これを軟化温度とした。
【0051】
<酸価(AV)の測定> ポリエステル樹脂のAVは、以下のようにして測定した。 ポリエステル樹脂約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mLを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱しポリエステル樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10mL、クロロホルム20mL、フェノールフタレイン溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(mL)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(mL))、以下の式に従って算出した。 酸価(mgKOH/g)={(B-C)×0.02×56.11×p}/A
【0052】
<TVOCの評価方法> ポリエステル樹脂のTVOCは、以下のようにして測定した。 測定サンプル約10mg(9.9mg以上、10.1mg未満)を精秤し、測定サンプルから揮発成分を加熱脱着装置内で130℃にて10分間加熱抽出した後、冷却モジュールにてトラップ(濃縮)した。次いで、急速加熱した後、GC-MSに供試し、TVOCを定量した。測定装置、測定条件、定量方法は以下の通りである。
【0053】
(測定装置)・加熱脱着装置:ゲステル株式会社製、「加熱脱着導入システム TDS A/TDS 2/CIS 4」・GC-MS:アジレント・テクノロジー株式会社製、「GC/MS 6890N/5975」
【0054】
(加熱脱着条件)・試料加熱温度:50℃(0.5min)→50℃/min→130℃(10min)・クライオフォーカスおよび急速加熱条件:-30℃(0.5min)→12℃/sec→130℃(10min)・インターフェイス:130℃・キャリアガス:ヘリウム・Desorpthopn Mode:スプリットレス
【0055】
(GC条件)・カラム:フロンティア・ラボ株式会社製、「UA-5(30min×0.25mmI.D.膜厚0.25μm)・カラム温度:35℃(3min)→10℃/min→330℃(7min)・キャリアガス:ヘリウム(流量1.0ml/min)・注入口モード:ソルベントベント(ベント流量50ml/min、スプリットベントライン流量30min/minで0.02minかけて注入した。)・トランスファーライン温度:280℃
【0056】
(MS条件)・イオン化法:EI・イオン化電圧:70V・イオン化電流:300μA・スキャンレンジ:29~550amu
【0057】
(TVOCの定量方法) 得られたクロマトグラムにおいて、n-ヘキサンおよびn-ヘキサデカンのピーク溶出時間の間に検出される成分について、エチレングリコール(EG)を除く各成分のピーク面積総和を、予め作成しておいたトルエン溶液(1000ppm、上記GC条件およびMS条件にて、注入量1μl)の測定結果(ピーク面積)より、トルエン換算濃度として算出した。 EGについては、EGのピーク面積を、予め作成しておいたEG溶液(1000ppm、上記GC条件およびMS条件にて、注入量1μl)の測定結果(ピーク面積)より、EG濃度として算出した。 EGを除く各成分の面積総和の濃度と、EGの濃度の和の値をTVOCとした。上記に示す方法で樹脂に含まれる揮発成分量を評価し、以下評価基準にて判定した。◎(極めて良好):揮発成分量が300ppm未満〇(良好) :揮発成分量が300ppm以上380ppm未満×(劣る) :揮発成分量が380ppm以上
【0058】
<吸湿性の評価方法> 40℃真空下にて4時間以上乾燥した後架橋樹脂を篩いにかけ、16メッシュを通過し22メッシュを通過しない樹脂粉体を得、この分級された樹脂粉末を2.00gアルミ皿に精秤し、35℃×85RH% とした恒温恒湿機(SATAKE社製、J50)内に24時間保存し、耐湿試験前後の重量変化から樹脂重量増加率を算出した。樹脂重量増加量が小さいほど、吸着水を含有する量が少なくなり、小粒子径化した際のトナーの貯蔵安定を良好にできる樹脂となる。 以下の基準を用いて、耐湿性を評価した。 ◎(非常に良好):0.7質量%未満の樹脂重量増加率 ○(良好) :0.7質量%以上、1.0質量%未満の樹脂重量増加率 ×(劣る) :1.0質量%以上の樹脂重量増加率
【0059】
<粉砕性の評価方法> 粉砕性は、メッシュ上に残る樹脂残存率を求めることで評価した。ここで樹脂残存率とは、通常の粉砕工程を終わった樹脂を、16メッシュを通過し22メッシュを通過しない樹脂粉体を得て、この分級された樹脂粉末を10.0g精秤し、トリオブレンダー粉砕器(トリオサイエンス社製)にて3秒間粉砕後、30メッシュの篩いにかけ、通過しない樹脂の重量(A)gを精秤し、次式により、Aの値から残存率を求め、この操作を3回行い平均して求めた値である。(式-1){(A)g/粉砕前の樹脂重量(10.0g)}×100=樹脂残存率(質量%)得られた樹脂残存率より、粉砕性を以下の様に評価した。 ◎(非常に良好):70質量%未満の樹脂残存率 ○(良好) :70質量%以上80質量%未満の樹脂残存率 ×(劣る) :80質量%以上の樹脂残存率
【0060】
(実施例1)<ポリエステル樹脂の製造> 表1に示す仕込み組成の多価アルコールに、多価カルボン酸に対して1000ppmのテトラ-n-ブトキシチタンを50℃に加温したステンレス製の反応容器に投入し、5分間200rpmで攪拌を行った後、多価カルボン酸を蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。 次いで昇温を開始し、反応系内の温度が270℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行った。次いで、反応系内の温度を220℃とし、反応容器内を減圧し、反応系からポリアルコールを留出させながら縮合反応を実施した。 縮合反応中に装置内部を窒素で常圧とした後、約3g樹脂を反応容器からサンプリングして、樹脂を室温まで冷却後、軟化温度を測定して表1記載の軟化温度になるまでサンプリングを繰り返して重合を進めた。 所望の軟化温度になったことを確認後、反応装置の攪拌を停止し、装置内部を常圧とし、窒素により装置内部を加圧して装置下部より反応物を取り出して100℃以下に冷却し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂を、3mmメッシュを吐出口に備えた粉砕器を用いて粗粉砕した。 得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度、軟化温度、酸価を測定し、TVOC、吸湿性、粉砕性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0061】
(実施例2~10、比較例1~3) 実施例2~10と比較例1~3は表1に示す仕込み組成に従い、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を製造し、各種測定および評価を行った。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果から明らかなように、酸価が13mgKOH/gより大きい樹脂を製造した比較例1の場合、ポリエステル樹脂の吸湿性と粉砕性が低位であった。 炭素数12以上の炭化水素基を有する材料を用いずポリエステル樹脂を製造した比較例2の場合、ポリエステル樹脂の粉砕性が劣っていた。 アンチモン触媒を用いてポリエステル樹脂を製造した比較例4の場合、ポリエステル樹脂のTVOCが劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法によれば、環境保全、安全性とトナー製造時の省エネルギー化に配慮したトナー用樹脂を提供するために、有機揮発成分量(TVOC)が少なく、ビスフェノールA誘導体と重金属触媒を使用しない、吸湿性、粉砕性に優ナー用ポリエステル樹脂を得ることができる。