(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】磁気検出センサ、回転検出センサ及びセンサ付きケーブル
(51)【国際特許分類】
G01P 1/02 20060101AFI20220222BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20220222BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G01P1/02
G01R33/02 U
G01D5/245 B
(21)【出願番号】P 2018104547
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鬼本 隆
(72)【発明者】
【氏名】今堀 雅明
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-264350(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0128704(US,A1)
【文献】特許第4241267(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P
G01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と前記中心導体の外周に被覆されている絶縁体とを備える一対の信号線を有するケーブルの端部に設けられ、磁極からの磁界を検出する磁気検出センサであって、
前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部、及び、前記検出部から延出され、前記検出部の検出信号を出力するための一対のリードフレームを有する磁気センサと、
前記磁気センサを収容するハウジング部と、
前記磁気センサと別体に設けられ、前記ハウジング部に収容されたコンデンサと、を備え、
前記一対のリードフレームと前記一対の信号線とをそれぞれ接合する第1接合部と、前記一対のリードフレームと前記コンデンサの一対のリード線とをそれぞれ接合する第2接合部とが、前記ハウジング部内に設けられて
おり、
前記ハウジング部から前記ケーブルが延出される延出方向に対して交差する方向に、前記一対の信号線と前記コンデンサとが重なって配置されている、
磁気検出センサ。
【請求項2】
中心導体と前記中心導体の外周に被覆されている絶縁体とを備える一対の信号線を有するケーブルの端部に設けられると共に、回転部材の回転に伴って回転しない非回転部材に取り付けられ
、前記回転部材と共に回転する磁極からの磁界を検出することで、前記回転部材の回転を検出する回転検出センサであって、
前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部、及び、前記検出部から延出され、前記検出部の検出信号を出力するための一対のリードフレームを有する磁気センサと、
前記磁気センサを収容するハウジング部と、
前記磁気センサと別体に設けられ、前記ハウジング部に収容されたコンデンサと、を備え、
前記一対のリードフレームと前記一対の信号線とをそれぞれ接合する第1接合部と、前記一対のリードフレームと前記コンデンサの一対のリード線とをそれぞれ接合する第2接合部とが、前記ハウジング部内に設けられて
おり、
前記ハウジング部から前記ケーブルが延出される延出方向に対して交差する方向に、前記一対の信号線と前記コンデンサとが重なって配置されている、
回転検出センサ。
【請求項3】
前記コンデンサは、一対のリード線を有し、
前記一対のリードフレームは、それぞれ板状に形成され、
前記リードフレームの一方の面に前記第1接合部が設けられ、
前記リードフレームの他方の面に前記第2接合部が設けられて
おり、
前記一対のリードフレームの延出方向と前記一対のリード線の延出方向は、反対方向である、
請求項2に記載の回転検出センサ。
【請求項4】
前記第1接合部と前記第2接合部とは、前記リードフレームの長さ方向において重ならない位置に設けられている、
請求項3に記載の回転検出センサ。
【請求項5】
中心導体と前記中心導体の外周に被覆されている絶縁体とを備える一対の信号線を有するケーブルと、
前記ケーブルの端部に設けられると共に、回転部材の回転に伴って回転しない非回転部材に取り付けられ、前記回転部材と共に回転する磁極からの磁界を検出することで、前記回転部材の回転を検出する回転検出センサと、を備えたセンサ付きケーブルであって、
前記回転検出センサは、
前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部、及び、前記検出部から延出され、前記検出部の検出信号を出力するための一対のリードフレームを有する磁気センサと、
前記磁気センサを収容するハウジング部と、
前記磁気センサと別体に設けられ、前記ハウジング部に収容されたコンデンサと、を備え、
前記一対のリードフレームと前記一対の信号線とをそれぞれ接合する第1接合部と、前記一対のリードフレームと前記コンデンサの一対のリード線とをそれぞれ接合する第2接合部とが、前記ハウジング部内に設けられて
おり、
前記ハウジング部から前記ケーブルが延出される延出方向に対して交差する方向に、前記一対の信号線と前記コンデンサとが重なって配置されている、
センサ付きケーブル。
【請求項6】
前記一対のリードフレームは、それぞれ板状に形成され、
前記リードフレームの一方の面に前記第1接合部が設けられ、
前記リードフレームの他方の面に前記第2接合部が設けられている、
請求項5に記載のセンサ付きケーブル。
【請求項7】
前記第1接合部と前記第2接合部とは、前記リードフレームの長さ方向において重ならない位置に設けられている、
請求項6に記載のセンサ付きケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出センサ、回転検出センサ及びセンサ付きケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輪の軸受ユニットに用いられ、車輪と共に回転する回転部材の回転速度を検出する回転検出装置が知られている。回転検出装置としては、例えば、回転部材の周方向に沿って複数の磁極を有する被検出部材と、被検出部材と対向するように非回転部材に取り付けられ、被検出部材の磁界を検出する回転検出センサと、を備えたものが知られている。
【0003】
回転検出センサとして、被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子、磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路、及び磁気検出素子と信号処理回路とを一括して覆う覆い体を有する板状の検出部を有する磁気センサを用いたものが知られている。
【0004】
特許文献1では、磁気センサにノイズ防止用のコンデンサを搭載した回転検出センサについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ノイズ防止用のコンデンサとしては、外部のノイズに応じた静電容量のものを選択することが望まれる。しかし、特許文献1の回転検出センサでは、検出部にノイズ防止用のコンデンサが内蔵されているため、静電容量の調整が容易ではない。
【0007】
そこで、本発明は、ノイズ防止用のコンデンサの静電容量調整が容易な磁気検出センサ、回転検出センサ及びセンサ付きケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、一対の信号線を有するケーブルの端部に設けられ、磁極からの磁界を検出する磁気検出センサであって、前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部、及び、前記検出部から延出され、前記検出部の検出信号を出力するための一対のリードフレームを有する磁気センサと、前記磁気センサを収容するハウジング部と、前記磁気センサと別体に設けられ、前記ハウジング部に収容されたコンデンサと、を備え、前記一対のリードフレームと前記一対の信号線とをそれぞれ接合する第1接合部と、前記一対のリードフレームと前記コンデンサの一対のリード線とをそれぞれ接合する第2接合部とが、前記ハウジング部内に設けられている、磁気検出センサを提供する。
【0009】
また本発明は、上記課題を解決することを目的として、一対の信号線を有するケーブルの端部に設けられると共に、回転部材の回転に伴って回転しない非回転部材に取り付けられ、前記回転部材と共に回転する磁極からの磁界を検出することで、前記回転部材の回転を検出する回転検出センサであって、前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部、及び、前記検出部から延出され、前記検出部の検出信号を出力するための一対のリードフレームを有する磁気センサと、前記磁気センサを収容するハウジング部と、前記磁気センサと別体に設けられ、前記ハウジング部に収容されたノイズ防止用のコンデンサと、を備え、前記一対のリードフレームと前記一対の信号線とをそれぞれ接合する第1接合部と、前記一対のリードフレームと前記コンデンサの一対のリード線とをそれぞれ接合する第2接合部とが、前記ハウジング部内に設けられている、回転検出センサを提供する。
【0010】
また本発明は、上記課題を解決することを目的として、一対の信号線を有するケーブルと、前記ケーブルの端部に設けられると共に、回転部材の回転に伴って回転しない非回転部材に取り付けられ、前記回転部材と共に回転する磁極からの磁界を検出することで、前記回転部材の回転を検出する回転検出センサと、を備えたセンサ付きケーブルであって、前記回転検出センサは、前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部、及び、前記検出部から延出され、前記検出部の検出信号を出力するための一対のリードフレームを有する磁気センサと、前記磁気センサを収容するハウジング部と、前記磁気センサと別体に設けられ、前記ハウジング部に収容されたノイズ防止用のコンデンサと、を備え、前記一対のリードフレームと前記一対の信号線とをそれぞれ接合する第1接合部と、前記一対のリードフレームと前記コンデンサの一対のリード線とをそれぞれ接合する第2接合部とが、前記ハウジング部内に設けられている、センサ付きケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノイズ防止用のコンデンサの静電容量調整が容易な磁気検出センサ、回転検出センサ及びセンサ付きケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る回転検出センサの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1においてハウジング部を省略した斜視図である。
【
図3】(a)は
図2の平面図、(b)はそのA-A線断面図である。
【
図4】(a)は
図2においてさらにホルダを省略した斜視図であり、(b)はその側面図である。
【
図5】(a)は
図4において信号線側から見た平面図、(b)はそのコンデンサ側から見た平面図である。
【
図6】本発明の一変形例に係るセンサ付きケーブルを示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はケーブルの断面図である。
【
図7】本発明の一変形例に係る回転検出センサを示す図であり、(a)は外観を示す斜視図、(b)はそのハウジング部を省略した斜視図である。
【
図8】(a),(b)は、
図7(b)においてさらにホルダを省略した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る回転検出センサの外観を示す斜視図である。
図2は、
図1のハウジング部を省略した斜視図であり、
図3(a)はその平面図、
図3(b)は
図3(a)のA-A線断面図である。また、
図4(a)は
図2においてさらにホルダを省略した斜視図であり、
図4(b)はその側面図である。
図5(a)は
図4において信号線側から見た平面図、
図5(b)はそのコンデンサ側から見た平面図である。
【0015】
この回転検出センサ1は、回転部材の回転に伴って回転しない非回転部材に取り付けられ、回転部材と共に回転する磁極からの磁界を検出することで、回転部材の回転を検出するものである。本実施の形態に係る回転検出センサ1は、自動車に搭載され、車輪の回転速度(車輪速)を検出するために用いられる。この場合、回転部材としての車輪(内輪)には、その回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極を有する被検出部材が設けられる。回転検出センサ1は、非検出部材と径方向(回転軸を中止とした径方向)に対向するように、ナックル等の非回転部材に取り付けられる。
【0016】
図1乃至5に示すように、回転検出センサ1は、一対の信号線4を有するケーブル40の端部に設けられており、磁気センサ2と、ハウジング部3と、コンデンサ5と、を備えている。ケーブル40と回転検出センサ1とを備えたものが、本実施の形態に係るセンサ付きケーブル10である。
【0017】
磁気センサ2は、検出部21と、検出部21から延出された一対のリードフレーム(接続端子)22と、を有している。検出部21は、回転部材に取り付けられた磁極からの磁界を検出する磁気検出素子(不図示)と、磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路(不図示)と、磁気検出素子と信号処理回路とを一括して覆う樹脂モールド21aと、を有している。検出部21は、平面視で略長方形(長方形の4つの角部のうち1つが面取りされた形状)の板状に形成されている。磁気検出素子の検出軸(磁界の検出方向)は、
図3(a)における上下方向(回転部材の回転軸線を中心とした円の接線方向)である。磁気センサ2として、例えば、ホール素子、GMR(Giant Magneto-Resistive)素子、TMR(Tunneling Magneto-Resistive)素子等を用いることができる。
【0018】
一対のリードフレーム22は、検出部21の検出信号(信号処理回路からの出力信号)を出力するためのものであり、検出部21の一方の長辺(面取りされた角部に接続されていない側の長辺)から当該長辺と垂直な方向に延出されている。両リードフレーム22は互いに平行に形成されている。本実施の形態では、両リードフレーム22は板状(帯状)に形成されている。両リードフレーム22は、検出部21と略平行に設けられている。
【0019】
一対の信号線4は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた撚線導体からなる中心導体4aと、中心導体4aの外周に被覆されており、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる絶縁体4bと、をそれぞれ有している。一対の信号線4は、一括してシース41に覆われている。ケーブル40は、一対の信号線4をシース41で覆って構成されている。
【0020】
ケーブル40の端部においては、シース41から一対の信号線4が露出され、さらに信号線4の端部において、絶縁体4bから中心導体4aが露出されている。絶縁体4bから露出された中心導体4aは、対応する磁気センサ2のリードフレーム22に、抵抗溶接により接合され電気的に接続されている。一対のリードフレーム22と一対の信号線4(中心導体4a)とをそれぞれ接合する部分を、第1接合部7と呼称する。第1接合部7の詳細については後述する。
【0021】
コンデンサ5は、ノイズ防止用の容量素子である。本実施の形態では、コンデンサ5は、磁気センサ2とは別体に設けられている。コンデンサ5は、一対のリード線51を有しており、両リード線51が対応する磁気センサ2のリードフレーム22に、抵抗溶接により接合され電気的に接続されている。一対のリードフレーム22と一対のリード線51とをそれぞれ接合する部分を、第2接合部8と呼称する。第2接合部8の詳細については後述する。
【0022】
ハウジング部3は、磁気センサ2と、ケーブル40の端部(一対の信号線4の端部)と、コンデンサ5とを一括して覆う略円柱状の本体部31と、回転検出センサ1を非回転部材に固定するためのフランジ部32と、を一体に形成してなる。本体部31は、ケーブル40のシース41の端部を覆っており、本体部31内で、信号線4がシース41から延出されている。フランジ部32には、固定用のボルト(不図示)を通すためのボルト穴32aが形成されており、ボルト穴32aには、当該ボルト穴32aの内周面に沿うように、ボルト固定の際にフランジ部32の変形を抑制するための金属からなる円筒状のカラー33が設けられている。
【0023】
ハウジング部3は、樹脂をモールドすることにより形成される。本実施の形態では、樹脂のモールドの際に磁気センサ2やコンデンサ5を保護すると共に、これらをモールド用の金型に保持するホルダ6を有している。
【0024】
ホルダ6は、底壁61と側壁62とに囲まれた凹状のコンデンサ収容空間63を有しており、このコンデンサ収容空間63内にコンデンサ5が収容されている。本実施の形態においては、ホルダ6の底壁61上にコンデンサ5を配置すると共に、コンデンサ5上に一対の信号線4を配置するようにした。つまり、本実施の形態では、底壁61上に、コンデンサ5と一対の信号線4とが上下に(底壁61と直交する方向に)重なって配置されている。なお、一対の信号線4は、底壁61と平行な方向に並んで配置されている。このように構成することで、樹脂をモールドする際に、樹脂の熱によりコンデンサ5がダメージを受けてしまうことが抑制される。
【0025】
ハウジング部3としては、例えばPA(ポリアミド)612や、ナイロン66(ナイロンは登録商標)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等からなるものを用いることができる。また、ハウジング部3としては、樹脂にガラスフィラー等を混入させたものを用いることもできる。ホルダ6としては、樹脂のモールド時にハウジング部3と一体化するように、ハウジング部3と同じ材料(主成分が同一である材料)からなるものを用いるとよい。
【0026】
(第1接合部7及び第2接合部8)
本実施の形態に係る回転検出センサ1では、ノイズ防止用のコンデンサ5が磁気センサ2とは別体に設けられており、かつ、一対のリードフレーム22と一対の信号線4とをそれぞれ接合する第1接合部7と、一対のリードフレーム22とコンデンサ5の一対のリード線51とをそれぞれ接合する第2接合部8とが、ハウジング部3内に設けられている。
【0027】
ノイズ防止用のコンデンサ5を磁気センサ2と別体にすることにより、用途(つまり使用環境における外部ノイズ)に応じてコンデンサ5の静電容量を容易に変更可能になる。従来のように磁気センサ2に一体にノイズ防止用のコンデンサ5を搭載した場合には、用途に応じて適切な静電容量のコンデンサ5を搭載した磁気センサ2を選択する必要があり、場合によっては磁気センサ2の特注が必要になるなど、コスト上昇の原因となっていた。本実施の形態のように磁気センサ2と別体にコンデンサ5を設けることで、コンデンサ5の静電容量を容易に変更可能となるため、使用環境によらず従来使用している磁気センサ2をそのまま使用できコスト削減が可能になると共に、適切な静電容量を選択して外部ノイズに対する耐性をより向上させることが可能になる。
【0028】
磁気センサ2と別体にコンデンサ5を設ける場合、樹脂をモールドしてハウジング部3を形成する際の熱による影響を回避することが求められるが、コンデンサ5のリード線51の長さを適宜調整することで、ハウジング部3内でのコンデンサ5の配置位置の自由度を高めることができる。つまり、リード線51の長さを適宜調整することで、樹脂をモールドする際に溶融樹脂が直接あたらないコンデンサ収容空間63にコンデンサ5を収容し、コンデンサ5の破損等を抑制することが可能になる。
【0029】
本実施の形態では、上述のように、一対のリードフレーム22は、それぞれ板状(帯状)に形成されている。これらリードフレーム22の一方の面(表面)に第1接合部7が設けられ、リードフレーム22の他方の面(裏面)に第2接合部8が設けられている。つまり、リードフレーム22の一方の面に信号線4(中心導体4a)が接合され、他方の面にコンデンサ5(リード線51)が接合される。これにより、信号線4とコンデンサ5の両者をリードフレーム22の一方の面に接合する場合と比べて、接合部全体をコンパクトにすることができ、回転検出センサ1の小型化に寄与する。本実施の形態では、コンデンサ収容空間63にコンデンサ5を収容するため、コンデンサ収容空間63の底壁61側に第2接合部8が配置されることになる。
【0030】
また、本実施の形態では、第1接合部7と第2接合部8とは、リードフレーム22の長さ方向において重ならない位置に設けられている。抵抗溶接により接合する際には、接合する部材を挟み込むように電極を配置する必要があるが、第1接合部7と第2接合部8とがリードフレーム22の長さ方向に重なっていると、電極の配置が困難となってしまう。本実施の形態のように、第1接合部7と第2接合部8をリードフレーム22の長さ方向において重ならない位置に設定することで、信号線4とリード線51の接合作業をそれぞれ個別に行うことが可能になり、作業性及び生産性が向上する。
【0031】
本実施の形態では、リードフレーム22の先端部(検出部21と反対側の端部)に第1接合部7を設け、第1接合部7よりも基端側(検出部21側)に第2接合部8を設けている。本実施の形態では、コンデンサ収容空間63が第2接合部8よりもケーブル40の延出側に設けられているため、コンデンサ5のリード線51は第2接合部8から第1接合部7側へ延びることになる。よって、接合作業時には、まずリードフレーム22の表面に信号線4の中心導体4aを接合して第1接合部7を形成し、その後、リードフレーム22の裏面にコンデンサ5のリード線51を接合して第2接合部8を形成するとよい。
【0032】
(センサ付きケーブルの変形例)
上記実施の形態では、ケーブル40が、一対の信号線4をシース41で一括して覆ったものであったが、これに限らず、ケーブル40は、回転検出センサ1用の信号線4以外の電線を含むものであってもよい。
【0033】
例えば、
図6(a),(b)に示すセンサ付きケーブル10aでは、ケーブル40aは、1対の信号線4を撚り合わせてなる対撚線42と、信号線4よりも外径及び導体断面積が大きい一対の電源線43と、対撚線42と電源線43とが撚り合わされてなる集合体44の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材45と、テープ部材45の外周に被覆されているシース41と、を備えている。
【0034】
対撚線42の一端部には、回転検出センサ1が設けられている。対撚線42の他端部には、車両の車体に設けられた中継ボックス内における電線群との接続のための車体側センサ用コネクタ91が取り付けられている。
【0035】
本実施の形態では、電源線43は、車両の車輪に搭載された電動パーキングブレーキ(以下、EPB)用の電気モータ(不図示)に駆動電流を供給するための電源線からなる。
【0036】
EPBとは、車両の停止時に、パーキングブレーキ作動スイッチがオフ状態からオン状態に操作されたとき、所定時間(例えば1秒間)にわたって電気モータに駆動電流を出力することにより、電気モータによりブレーキパッドを車輪のディスクロータに押し付けた状態とし、車輪に制動力を発生させる電動式の制動装置である。また、EPBでは、パーキングブレーキ作動スイッチがオン状態からオフ状態に操作されたとき、あるいは、アクセルペダルが踏込操作されたときに、電気モータに駆動電流を出力し、ブレーキパッドを車輪のディスクロータから離間させて、車輪への制動力を解除するように構成されている。つまり、EPBの作動状態は、パーキングブレーキ作動スイッチがオンされてから、パーキングブレーキ作動スイッチがオフされるかアクセルペダルが踏み込まれるまで維持される。
【0037】
電源線43は、電源線用中心導体43a、電源線用中心導体43aの外周に被覆されている電源線用絶縁体43bと、を有している。電源線用中心導体43aは、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた撚線導体からなり、電源線用絶縁体43bは、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる。一対の電源線43の一端部には、EPB用の電気モータとの接続のための車輪側電源コネクタ92が取り付けられ、一対の電源線43の他端部には、中継ボックス内における電線群との接続のための車体側電源コネクタ93が取り付けられている。
【0038】
なお、EPBでは、基本的に車両の停止時に電気モータに駆動電流を供給する。これに対して、回転検出センサ1は車両の走行時に使用されるものであり、電源線43に駆動電流が供給されているときに回転検出センサ1が使用されることはない。そこで、本実施の形態では、電源線43や対撚線42の周囲に設けられるシールド導体を省略している。シールド導体を省略することで、シールド導体を設けた場合と比較してケーブル40aの外径を小さくすることができ、また部品点数を削減してコストを抑制することも可能になる。
【0039】
対撚線42と電源線43とテープ部材45との間には、ケーブル40aの長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在46が配置されている。本実施の形態では、この介在46と対撚線42と電源線43とを共に撚り合わせることにより、集合体44を構成している。これにより、集合体44の外周にテープ部材45を巻き付けた際の断面形状をより円形状に近づけることができる。介在46としては、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。
【0040】
集合体44の周囲には、テープ部材45が螺旋状に巻き付けられており、テープ部材45は、テープ部材45が覆う全ての電線(一対の信号線4及び1対の電源線43)に接触している。テープ部材45は、集合体44とシース41との間に介在し、屈曲時に集合体44(信号線4及び電源線43)とシース41間の摩擦を低減する役割を果たす。すなわち、テープ部材45を設けることで、タルク粉体等の潤滑剤を用いることなく、信号線4や電源線43とシース41間の摩擦を低減し、屈曲時に信号線4や電源線43にかかるストレスを低減して、耐屈曲性を向上させることが可能になる。
【0041】
テープ部材45としては、信号線4の絶縁体4bや、電源線43の電源線用絶縁体43bに対して、滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることが望ましく、例えば、不織布や紙、あるいは樹脂(樹脂フィルム等)からなるものを用いることができる。テープ部材45は、その幅方向(テープ部材45の長手方向及び厚さ方向と垂直な方向)の一部が重なり合うように、螺旋状に集合体44に巻き付けられている。なお、テープ部材45が重なり合う部分は、接着剤等により接着されていない。
【0042】
(磁気センサの変形例)
上記実施の形態では、リードフレーム22が検出部21に対して平行に延びている場合について説明したが、これに限らず、リードフレーム22が適宜曲がっていてもよい。例えば、
図7(a),(b)及び
図8(a),(b)に示す回転検出センサ1aのように、リードフレーム22をその基端部(検出部21側の端部)において略直角に折り曲げてもよい。これにより、回転検出センサ1全体の長さを短縮し、より小型な回転検出センサ1aを実現することが可能になる。
【0043】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る回転検出センサ1では、磁気センサ2と別体に設けられ、ハウジング部3に収容されたノイズ防止用のコンデンサ5を備え、一対のリードフレーム22と一対の信号線4とをそれぞれ接合する第1接合部7と、一対のリードフレーム22とコンデンサ5の一対のリード線51とをそれぞれ接合する第2接合部8とが、ハウジング部3内に設けられている。
【0044】
このように構成することで、使用環境の外部ノイズに応じてノイズ防止用のコンデンサ5の静電容量を容易に調整することが可能になり、外部ノイズに対する特性が良好な回転検出センサ1を低コストに実現することが可能になる。
【0045】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0046】
[1]一対の信号線(4)を有するケーブル(40)の端部に設けられ磁極からの磁界を検出する磁気検出センサ(1)であって、前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部(21)、及び、前記検出部(21)から延出され、前記検出部(21)の検出信号を出力するための一対のリードフレーム(22)を有する磁気センサ(2)と、前記磁気センサ(2)を収容するハウジング部(3)と、前記磁気センサ(2)と別体に設けられ、前記ハウジング部(3)に収容されたコンデンサ(5)と、を備え、前記一対のリードフレーム(22)と前記一対の信号線(4)とをそれぞれ接合する第1接合部(7)と、前記一対のリードフレーム(22)と前記コンデンサ(5)の一対のリード線(51)とをそれぞれ接合する第2接合部(8)とが、前記ハウジング部(3)内に設けられている、磁気検出センサ(1)。
【0047】
[2]一対の信号線(4)を有するケーブル(40)の端部に設けられると共に、回転部材の回転に伴って回転しない非回転部材に取り付けられ、前記回転部材と共に回転する磁極からの磁界を検出することで、前記回転部材の回転を検出する回転検出センサ(1)であって、前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部(21)、及び、前記検出部(21)から延出され、前記検出部(21)の検出信号を出力するための一対のリードフレーム(22)を有する磁気センサ(2)と、前記磁気センサ(2)を収容するハウジング部(3)と、前記磁気センサ(2)と別体に設けられ、前記ハウジング部(3)に収容されたコンデンサ(5)と、を備え、前記一対のリードフレーム(22)と前記一対の信号線(4)とをそれぞれ接合する第1接合部(7)と、前記一対のリードフレーム(22)と前記コンデンサ(5)の一対のリード線(51)とをそれぞれ接合する第2接合部(8)とが、前記ハウジング部(3)内に設けられている、回転検出センサ(1)。
【0048】
[3]前記一対のリードフレーム(22)は、それぞれ板状に形成され、前記リードフレーム(22)の一方の面に前記第1接合部(7)が設けられ、前記リードフレーム(22)の他方の面に前記第2接合部(8)が設けられている、[2]に記載の回転検出センサ(1)。
【0049】
[4]前記第1接合部(7)と前記第2接合部(8)とは、前記リードフレーム(22)の長さ方向において重ならない位置に設けられている、[3]に記載の回転検出センサ(1)。
【0050】
[5]一対の信号線(4)を有するケーブル(40)と、前記ケーブル(40)の端部に設けられると共に、回転部材の回転に伴って回転しない非回転部材に取り付けられ、前記回転部材と共に回転する磁極からの磁界を検出することで、前記回転部材の回転を検出する回転検出センサ(1)と、を備えたセンサ付きケーブル(10)であって、前記回転検出センサ(1)は、前記磁極からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部(21)、及び、前記検出部(21)から延出され、前記検出部(21)の検出信号を出力するための一対のリードフレーム(22)を有する磁気センサ(2)と、前記磁気センサ(2)を収容するハウジング部(3)と、前記磁気センサ(2)と別体に設けられ、前記ハウジング部(3)に収容されたコンデンサ(5)と、を備え、前記一対のリードフレーム(22)と前記一対の信号線(4)とをそれぞれ接合する第1接合部(7)と、前記一対のリードフレーム(22)と前記コンデンサ(5)の一対のリード線(51)とをそれぞれ接合する第2接合部(8)とが、前記ハウジング部(3)内に設けられている、センサ付きケーブル(10)。
【0051】
[6]前記一対のリードフレーム(22)は、それぞれ板状に形成され、前記リードフレーム(22)の一方の面に前記第1接合部(7)が設けられ、前記リードフレーム(22)の他方の面に前記第2接合部(8)が設けられている、[5]に記載のセンサ付きケーブル(10)。
【0052】
[7]前記第1接合部(7)と前記第2接合部(8)とは、前記リードフレーム(22)の長さ方向において重ならない位置に設けられている、[6]に記載のセンサ付きケーブル(10)。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0054】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、回転検出センサ1が車輪速を検出するものである場合を説明したが、これに限らず、例えば、ドライブシャフトセンサやクランク角センサ等にも本発明は適用可能である。
【0055】
また、上記実施の形態では、磁気センサ2の検出部21にノイズ防止用のコンデンサが設けられていない場合について説明したが、これに限らず、磁気センサ2の検出部21にノイズ防止用のコンデンサが設けられていてもよい。この場合、磁気センサ2と別体に設けられるコンデンサ2は、外部ノイズに応じて静電容量を調整する役割を果たすことになる。
【符号の説明】
【0056】
1…回転検出センサ
10…コネクタ付きケーブル
2…磁気センサ
21…検出部
22…リードフレーム
3…ハウジング部
4…信号線
40…ケーブル
5…コンデンサ
51…リード線
7…第1接合部
8…第2接合部