IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-射出成形体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】射出成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20220222BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220222BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20220222BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220222BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220222BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20220222BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20220222BHJP
   B29K 33/04 20060101ALN20220222BHJP
   B29K 105/16 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
C08J5/00 CEY
B29C45/00
C08L33/12
C08K3/36
C08K3/22
C08K3/40
C08K5/00
B29K33:04
B29K105:16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018518357
(86)(22)【出願日】2017-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2017018700
(87)【国際公開番号】W WO2017200048
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2019-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2016101170
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016195487
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】川本 佳未
(72)【発明者】
【氏名】安富 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大松 一喜
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-170847(JP,A)
【文献】特表2002-530455(JP,A)
【文献】特開2008-030353(JP,A)
【文献】特開2003-211598(JP,A)
【文献】特開2011-110916(JP,A)
【文献】特開2014-000770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02
C08J5/12-5/22
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
B29C45/00-45/24
B29C45/46-45/63
B29C45/70-45/72
B29C45/74-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル樹脂と無機フィラーと染料とを含有するメタクリル樹脂組成物からなり、算術平均粗さが20nm以上280nm以下である表面を有する射出成形体であって、
メタクリル樹脂が、メタクリレートに由来する単量体単位を50重量%以上含有する樹脂であり、
無機フィラーが、平均粒径が0.3μm以上20μm以下の無機粒子であり、かつ、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ガラスおよび酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物であり、
無機フィラーの含有量が0.01重量%以上10重量%以下である(ただし、メタクリル樹脂と無機フィラーとの合計量を100重量%とする)、射出成形体。
【請求項2】
メタクリル樹脂と無機フィラーと染料とを含有するメタクリル樹脂組成物からなり、算術平均粗さが20nm以上200nm以下である表面を有する射出成形体であって、
メタクリル樹脂が、メタクリレートに由来する単量体単位を50重量%以上含有する樹脂であり、
無機フィラーが、平均粒径が0.3μm以上20μm以下の無機粒子であり、かつ、金属酸化物であり、
無機フィラーの含有量が0.01重量%以上10重量%以下である(ただし、メタクリル樹脂と無機フィラーとの合計量を100重量%とする)、射出成形体。
【請求項3】
メタクリル樹脂と無機フィラーと染料とを含有するメタクリル樹脂組成物からなり、算術平均粗さが20nm以上280nm以下である表面を有する射出成形体からなる自動車部材であって、
メタクリル樹脂が、メタクリレートに由来する単量体単位を50重量%以上含有する樹脂であり、
無機フィラーが、平均粒径が0.3μm以上20μm以下の無機粒子であり、かつ、金属酸化物であり、
無機フィラーの含有量が0.01重量%以上10重量%以下である(ただし、メタクリル樹脂と無機フィラーとの合計量を100重量%とする)、自動車部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル樹脂と無機フィラーとを含有する(メタ)アクリル樹脂組成物からなる射出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ピラー部位等の自動車外装部材の材料としては、PP樹脂やABS樹脂などの汎用樹脂が多く使用されている。耐傷付き性が求められる自動車外装部材の分野では、このような樹脂を射出成形してなる成形体の表面にハードコート層や加飾フィルムを積層することにより、耐傷つき性を補うことがある。
近年、ハードコート層や加飾フィルムの積層工程を省く手段として、樹脂自体の耐傷付き性を向上する技術が着目されつつある。例えば、特開2004-131702号公報には、アクリル樹脂にサブミクロンオーダーの大きさの無機微粒子を配合してなる樹脂組成物が、向上した表面硬度を有する成形体を与えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-131702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
意匠性の高い自動車部材は、黒色に着色されることが多く、また、光沢度が高い着色部材が求められつつある。しかしながら、光沢度が高い着色部材は、着色していない部材に比べると、傷が目視にて発見されやすいため、いわゆる「耐傷付き性」が劣る傾向にある。そのため、着色されていても耐傷付き性に優れ光沢度の高い射出成形体が求められている。
しかしながら、上記特許文献に記載の樹脂組成物から得られた射出成形体は、着色されていると耐傷付き性が劣る傾向にあり、光沢度も満足できるものではなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、着色されていても耐傷付き性に優れ、光沢度が高い射出成形体、および該射出成形体からなる自動車部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[5]に記載の態様を含む。
[1](メタ)アクリル樹脂と無機フィラーとを含有する(メタ)アクリル樹脂組成物からなり、算術平均粗さが20nm以上280nm以下である表面を有する射出成形体。
[2]前記無機フィラーが、平均粒径が0.1μm以上100μm以下の無機粒子である前記[1]に記載の射出成形体。
[3]前記(メタ)アクリル樹脂組成物中の前記無機フィラーの含有量が、0.01重量%以上30重量%以下である(メタ)アクリル樹脂組成物からなる前記[1]または[2]に記載の射出成形体。
[4]前記無機フィラーが、金属酸化物である前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の射出成形体。
[5]前記(メタ)アクリル樹脂組成物が、染料または顔料を含んでいる前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の射出成形体。
[6]
前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の射出成形体からなる自動車部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着色されていても耐傷付き性に優れ、光沢度が高い射出成形体、および該射出成形体からなる自動車部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例4で得られた射出成形体の表面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[定義]
本明細書において、用語「無機フィラー」とは、無機材料で構成されたフィラーを意味する。本明細書において、用語「フィラー」とは、室温および大気圧にて固体である物質であって、組成物の各成分に対し、これらの成分が室温よりも高い温度まで、特にそれらの軟化点またはそれらの融点まで高められた場合でさえも不溶である、任意の物質を意味する。
本明細書において、用語「(メタ)アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を50重量%以上含有する樹脂(ただし、該樹脂に含まれる単量体単位の全量を100重量%とする。)を意味する。
本明細書において、用語「(メタ)アクリル樹脂組成物」とは、(メタ)アクリル樹脂と該(メタ)アクリル樹脂以外の1種類以上の成分との混合物であって、(メタ)アクリル樹脂の含有量が50重量%以上である混合物を意味する。
本明細書において、用語「射出成形体」とは、射出成形により製造された成形体を意味する。
本明細書において、用語「無機粒子」とは、無機材料からなる粒子を意味する。
本明細書において、用語「自動車部材」とは、自動車の一部を成すための部材を意味する。

本発明の射出成形体は、(メタ)アクリル樹脂と無機フィラーとを含有する(メタ)アクリル樹脂組成物からなり、算術平均粗さが20nm以上280nm以下である表面を有する成形体である。以下、算術平均粗さをRaと称することがある。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「メタクリル」または「アクリル」を指し、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」または「アクリレート」を指す。
【0010】
本発明の射出成形体の表面のRaは、JIS B 0601で定義されている算術平均粗さを指すが、20nm以上280nm以下であり、好ましくは20nm以上200nm以下である。Raを上記の範囲内に調整することにより、着色されていても耐傷付き性に優れ、光沢度が高い射出成形体を得ることができる。
本発明の射出成形体の表面のRaは、無機フィラーの種類、粒径、および添加量や、射出成形時の成形条件等を変更することによって調整することができる。例えば、無機フィラーの粒径を小さくすることにより、Raを小さくすることができ、射出成形時の金型温度を低くすることにより、Raを大きくすることができる。
【0011】
また、本発明の射出成形体の表面には、平均孔径が30μm以上100μm以下の非貫通孔(すなわち、凹み)を有していることが好ましい。表面に平均孔径が30μm以上100μm以下である非貫通孔を有する本発明の射出成形体は、着色されていてもより耐傷付き性に優れる。
なお、射出成形体の表面のRa及び非貫通孔の平均孔径は、3次元表面構造解析顕微鏡を用いて測定され、具体的には、測定視野の大きさを0.70mm×0.53mmにし、測定条件を以下のように設定して、算出される。Raは、該画像からJIS B 0601に従って、算出される。一方、平均孔径は、画像内の孔径を測定した平均値に従って算出される。
<測定条件>
レンズ:
対物レンズ:10倍
測定条件
Camera Mode:640×480 72Hz
Substruct Sys Err:OFF
Min Mod(%):7
Min Area Size:7
Scan length:10μm
FDA Res:normal
【0012】
射出成形体の鉛筆硬度は、H以上であることが好ましい。鉛筆硬度は、鉛筆硬度測定器を用いて、JIS K 5600(荷重750g)に従って測定される。
【0013】
本発明の射出成形体は、(メタ)アクリル樹脂と無機フィラーを含有する(メタ)アクリル樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形することにより製造される。
(メタ)アクリル樹脂組成物の成形方法としては、押出成形法、プレス成形法、射出成形法等の様々な方法がある。しかしながら、本発明では、成形方法として射出成形法を選択し、製造される射出成形体の表面のRaを上記の範囲内に調整することによって、耐傷付き性に優れ、光沢度の高い成形体を得ることができる。
【0014】
射出成形法としては、例えば、射出成形機のシリンダー内で樹脂組成物を加熱して溶融させて、圧力をかけた状態で金型のキャビティ内に流し込んで成形する方法が挙げられる。射出成形時の金型の温度としては、40℃以上150℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。射出成形時にヒート&クール成型技術を用いれば、高い金型温度で成形することができる。金型の温度が上記範囲内であれば、金型内の温度に起因するひけ等の外観不良の発生を抑えることができ、成形サイクルを短くすることができる。また、着色されていてもより耐傷つき性に優れ、光沢度が高い射出成形体を得ることができる。また、金型温度を低くすることにより、Raを大きくすることができる。シリンダー温度としては、150℃以上300℃以下が好ましく、200℃以上300℃以下がより好ましい。シリンダー温度が上記範囲内であれば、(メタ)アクリル樹脂組成物の流動性を高くすることができ、(メタ)アクリル樹脂の分解に起因する変色を抑えることができる。射出圧力としては、50MPa以上200MPa以下が好ましい。保持圧力としては、20MPa以上100MPa以下が好ましい。このような条件で射出成形を行うことにより、後述するような入射角60°における光沢度が60以上である表面を有する射出成形体を得ることができる。
【0015】
(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を50重量%以上含有する樹脂である(ただし、該樹脂に含まれる単量体単位の全量を100重量%とする。)。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、1種類の(メタ)アクリレートに由来する単量体単位のみを含有する樹脂、2種類以上の(メタ)アクリレートに由来する単量体単位のみを含有する樹脂、(メタ)アクリレートに由来する単量体単位と、(メタ)アクリレートと重合できる他の単量体に由来する単量体単位とを含有する樹脂等が挙げられる。本発明において、前記(メタ)アクリル樹脂組成物は、1種類の(メタ)アクリル樹脂を含有してよく、また、2種類以上の(メタ)アクリル樹脂を含有してもよい。
(メタ)アクリル樹脂に含まれる単量体単位の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフィーなどを利用した分析によって求めることができる。
(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート(これは、アルキル(メタ)アクリレートとも称される。);シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環状(メタ)アクリレート(これは、シクロアルキル(メタ)アクリレートとも称される。):フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート(これは、アリール(メタ)アクリレートとも称される。)等が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、ポリメチルメタクリレートが好ましい。
【0016】
(メタ)アクリル樹脂のメルトフローレート(以下においてMFRと記すことがあり、JIS K 7210に従って、温度230℃、荷重3.8kgで測定される)は、0.3g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上10g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0017】
(メタ)アクリレートと重合できる他の単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル樹脂の製造方法としては、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。
【0019】
前記(メタ)アクリル樹脂組成物は、上記の(メタ)アクリル樹脂に加えて、他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。前記(メタ)アクリル樹脂組成物における該熱可塑性樹脂の含有量は通常50重量%以下であり、好ましくは30重量%以下である。但し、前記(メタ)アクリル樹脂と、該(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂との合計量を100重量%とする。
【0020】
前記(メタ)アクリル樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル樹脂の含有量は、70重量%以上99.99重量%以下であることが好ましく、90重量%以上99.99重量%以下であることがより好ましい。ただし、(メタ)アクリル樹脂と無機フィラーとの合計量を100重量%とする。(メタ)アクリル樹脂の含有量を上記の範囲内にすることにより、着色されていてもより耐傷付き性に優れ、且つ光沢度が高い射出成形体を得ることができる。
【0021】
本発明に使用する無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属塩、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、ガラス、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物等が挙げられ、金属酸化物が好ましい。無機フィラーは表面処理が施されていてもよい。本発明では、1種類の無機フィラーを用いてもよいし、2種類以上の無機フィラーを用いてもよい。無機フィラーとしては、着色されていてもより耐傷付き性に優れる射出成形体が得られる点で、球状の無機粒子が好ましい。
【0022】
無機粒子の平均粒径は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上20μm以下であることがよりに好ましく、0.1μmを超えて20μm以下であることがさらに好ましい。無機粒子の平均粒径を大きくすることにより、Raを大きくすることができる。無機粒子の平均粒径を上記の範囲内にすることにより、着色されていてもより耐傷つき性に優れ、光沢度が高い射出成形体を得ることができる。無機粒子の平均粒径は、5μm未満であれば動的光散乱法で測定することができ、5μm以上であればレーザー回折法で測定することができる。本明細書における無機粒子の平均粒径は、一次粒径を表す。
【0023】
(メタ)アクリル樹脂組成物に含まれる無機フィラーの含有量は、0.01重量%以上30重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上10重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以上5重量%以下であることがさらに好ましい。ただし、(メタ)アクリル樹脂と無機フィラーとの合計量を100重量%とする。無機フィラーの含有量を上記の範囲内にすることにより、着色されていてもより耐傷付き性に優れ、且つ光沢度が高い射出成形体を得ることができる。
【0024】
(メタ)アクリル樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、顔料、染料等を用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック等の無機顔料や、キナクリドン、ポリアゾイエロー、アンスラキノンイエロー、ポリアゾレッド、アゾレーキイエロー、ペリレン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー等の有機顔料、ピアノブラック等の油溶性染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料等の染料等が挙げられる。これらの着色剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。着色剤の含有量は、(メタ)アクリル樹脂組成物100重量部に対して、0.001重量部以上1重量部以下であることが好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル樹脂組成物は、酸化防止剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤等を含有してもよい。酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられ、離型剤としては、例えば高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩等が挙げられ、帯電防止剤としては、例えば導電性無機粒子、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、カチオン系アクリル酸エステル誘導体、カチオン系ビニルエーテル誘導体等が挙げられる。滑剤としては、例えば高級脂肪酸アミドが挙げられる。本明細書において、「高級脂肪酸」とは、炭素数が12個以上である脂肪酸を意味する。一般的に、滑剤として機能し得る物質の内には、離型剤としても機能し得るものが含まれことがあり、逆に、離型剤として機能し得る物質の内には、滑剤としても機能し得るものが含まれることがある。例えば、高級脂肪酸アミドは、本発明において滑剤としても離型剤としても機能し得る物質の例である。ある物質が、滑剤としても離型剤としても機能し得るものであるとき、一般的に、該物質が滑剤として効果的に機能するために好ましい配合量と、離型剤として効果的に機能するために好ましい配合量とは異なるが、このような物質がある量で配合された場合に、滑剤としても離型剤としても機能する場合はあり得る。しかしながら、一般的には、ある物質を主に滑剤として機能させようとする場合には、その物質を主に離型剤として機能させようとする場合の配合量よりも多い量で配合する。
【0026】
本発明に適用できる高級脂肪酸アミドとしては、例えばオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。本発明には、1種類の高級脂肪酸アミドを用いてもよく、2種類以上の高級脂肪酸アミドを併用してもよい。高級脂肪酸アミドの添加量は、(メタ)アクリル樹脂組成物100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下であることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル樹脂組成物は、ゴム粒子を配合してもよい。(メタ)アクリル樹脂組成物にゴム粒子を配合することにより、耐衝撃性を付与することができる。ここで、ゴム粒子としては、例えば、アクリル系ゴム粒子、ブタジエン系ゴム粒子、スチレン―ブタジエン系ゴム粒子などのものを用いることができるが、中でも、耐候性、耐久性の点から、アクリル系ゴム粒子が好ましく用いられる。なお、ゴム粒子は、1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法としては、公知の技術を適宜適用することができる。例えば、(メタ)アクリル樹脂を溶媒に溶解させ、無機フィラーが溶液に分散するように混合させる溶液混合法、(メタ)アクリル樹脂と無機フィラーを、単軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練装置を用いて溶融混練する方法、重合による(メタ)アクリル樹脂の製造時に無機フィラーを分散させて重合するキャスト重合法や乳化重合法などが挙げられる。溶液混合法において混合時の溶液の温度は100℃以下が好ましく、溶融混練する方法において混練時の樹脂の温度は200℃以上300℃以下が好ましく、キャスト重合法における重合温度は150℃以下が好ましく、乳化重合法における重合温度は100℃以下が好ましい。
【0029】
本発明の射出成形体は、着色されたものであっても、耐傷付き性に優れる。なお、本明細書において「着色」とは、上記着色剤を使用して色を着けたものを指す。
【0030】
前記の方法によって得られる射出成形体は、その表面の入射角60°における光沢度が60以上であるため、高い意匠性が求められる部材として使用できる。なお、入射角60°における光沢度は、グロスメーターを用いて、JIS Z 8741に従って測定される。
【0031】
本発明の射出成形体は、自動車部材を構成することができ、かかる自動車部材としては、ピラー、フロントグリル、リアーガーニッシュ等の自動車外装部材や、パワーウインドウスイッチカバー等の自動車内装部材が挙げられる。
【実施例
【0032】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0033】
メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210に従って、温度230℃、荷重3.8kgでメタクリル樹脂のMFRを測定した。
【0034】
メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量、アクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量(単位:重量%)
熱分解ガスクロマトグラフィーを利用した分析によって、メタクリル樹脂に含まれる単量体単位の全量100重量%に対する、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量と、アクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量を算出した。
<熱分解条件>
試料調製:メタクリル樹脂を精秤(目安2~3mg)し、樋状に形成した金属セルの中央部に入れ、金属セルを畳んでその両端を軽くペンチで押さえて封入した。
熱分解装置:CURIE POINT PYROLYZER JHP-22(日本分析工業(株)製)
金属セル:Pyrofoil F590(日本分析工業(株)製)
恒温槽の設定温度:200℃
保温パイプの設定温度:250℃
熱分解温度:590℃
熱分解時間:5秒
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
ガスクロマトグラフィー分析装置:GC-14B((株)島津製作所製)
検出方法:FID
カラム:7G 長さ3.2m×内径3.1mm((株)島津製作所製)
充填剤:FAL-M((株)島津製作所製、パックドカラム)
キャリアガス:空気/N/H圧力=50kPa/100kPa/50kPa、流量:80ml/min
カラムの昇温条件:100℃で15分間保持→速度10℃/minで150℃まで昇温→150℃で14分間保持
INJ温度(カラム入口の温度):200℃
DET温度(検出側の温度):200℃
【0035】
上記の熱分解条件でメタクリル樹脂を熱分解させ、発生した分解生成物を上記のガスクロマトグラフィー分析条件下で分析し、検出されたメタクリル酸メチルの量に対応するピーク面積(a1)及び検出されたアクリル酸エステルの量に対応するピーク面積(b1)を測定した。そして、これらのピーク面積から、ピーク面積比A(=b1/a1)を求めた。
【0036】
一方、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位に対するアクリル酸メチルに由来する単量体単位の重量比が既知値W0(アクリル酸メチルに由来する単量体単位の重量/メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の重量)であるメタクリル樹脂の標準品を上記の熱分解条件下で熱分解させ、発生した分解生成物を上記のガスクロマトグラフィー分析条件下で分析し、検出されたメタクリル酸メチルの量に対応するピーク面積(a0)及び検出されたアクリル酸メチルの量に対応するピーク面積(b0)を測定し、これらピーク面積から、b0/a0により定義されるピーク面積比A0を求めた。
そして、このピーク面積比A0と、上記の重量比W0とから、W0/A0により定義されるファクターfを求めた。
次に、上記のピーク面積比Aに上記のファクターfを乗じることにより、測定対象のメタクリル樹脂に含まれるメタクリル酸メチルに由来する単量体単位に対するアクリル酸メチルに由来する単量体単位の重量比W(アクリル酸メチルに由来する単量体単位の重量/メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の重量)を求め、この重量比Wから、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位及びアクリル酸メチルに由来する単量体単位の合計量に対するメタクリル酸メチルに由来する単量体単位の比率(重量%)およびアクリル酸メチルに由来する単量体単位の比率(重量%)をそれぞれ算出した。
【0037】
射出成形体の表面の算術平均粗さ(Ra)および非貫通孔(凹み)の平均孔径
射出成形体の表面形状を、3次元表面構造解析顕微鏡(zygo社製の「NewView600」)を用いて測定した。具体的には、測定視野の大きさを0.70mm×0.53mmにし、測定条件を以下のように設定して、射出成形体の表面を撮影して画像を得た。得られた画像から、射出成形体の表面の非貫通孔の平均孔径(単位:μm)を算出した。
<測定条件>
レンズ:
対物レンズ:10倍
測定条件
Camera Mode:640×480 72Hz
Substruct Sys Err:OFF
Min Mod(%):7
Min Area Size:7
Scan length:100μm
FDA Res:normal
<測定場所>
射出成形体の中心部。
【0038】
得られた画像を、解析用のコンピュータで、以下の解析条件にて解析し、JIS B 0601に従って測定視野内の算術平均粗さRa(単位:nm)を求めた。
<解析条件>
Filter:OFF
Filter Type:average
Filter Window Size:3
Trim Mode:All
Remove Spike:OFF
Spike Height:2.5
Data Fill :OFF
Data Fill Max:25
【0039】
鉛筆硬度測定
株式会社安田精機製作所社製鉛筆硬度試験器を用いて成形体表面の鉛筆硬度をJIS K 5600に準じて測定した。
【0040】
入射角60°における光沢度
コニカミノルタ株式会社製「MULTIGLOSS 268plus」を用いて、成形体表面の光沢度をJIS Z 8741に準じて測定した。
【0041】
スチールウール傷付き試験
株式会社大栄科学精器製作所製「平面摩耗試験機 PA-2A」を用いて、以下の条件で評価した。
摩擦ストローク:140mm
試験台往復速度:60±2回/分
試験台往復回数:5往復
試験荷重:1000g
摩擦面;2cm×2cm
スチールウール番手:#0000(ボンスター販売株式会社製)
評価場所:射出成形体(200mm×120mm×3mm)を3つに分けた60mm×120mm×3mmを用いて実施(計3回)
【0042】
軍手傷付き試験
株式会社大栄科学精器製作所製「平面摩耗試験機 PA-2A」を用いて、以下の条件で評価した。
摩擦ストローク:140mm
試験台往復速度:60±2回/分
試験台往復回数:20往復
試験荷重:2000g
摩擦面;2cm×2cm
軍手:綿100%軍手(ミタニコーポレーション製)
評価場所:射出成形体(200mm×120mm×3mm)を3つに分けた60mm×120mm×3mmを用いて実施(計3回)
【0043】
日本電色工業株式会社製「分光色彩計SD-7000」を用いて、スチールウール傷付き試験または軍手傷付き試験前後の成形体表面をJIS Z 8722に準じて測定し、JIS Z 8730に準じてΔE*abを算出した。
測定方式:SCE(正反射除去)
測定光源:D65
測定視野:10°
ΔE*abの値が小さいほど、耐傷付き性に優れる。
【0044】
使用した主な材料
シリカ1:日産化学工業株式会社製 スノーテックスO (平均粒径:18nm)
シリカ2:株式会社アドマテックス製 アドマファインS0-C1(平均粒径:0.3μm)
シリカ3:株式会社アドマテックス製 アドマファインS0-C2(平均粒径:0.5μm)
シリカ4:株式会社アドマテックス製 アドマファインS0-C5(平均粒径:1.5μm)
シリカ5:AGCエスアイテック株式会社製 サンスフェアNP-30(平均粒径:4.0μm)
ガラスフィラー:日本フリット株式会社製 CF0025-05C(平均粒径:5.0μm)
ピアノブラック染料:住化ケムテックス株式会社製「Sumiplast Black HLG」
滑剤1:日本精化株式会社製 ニュートロンS(主成分:エルカ酸アミド)
【0045】
<メタクリル樹脂Aの製造>
攪拌器を備えた重合反応器に、メタクリル酸メチル97.5重量部及びアクリル酸メチル2.5重量部の混合物と、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.016重量部と、n-オクチルメルカプタン0.16重量部とを、それぞれ連続的に供給し、255℃、平均滞留時間43分で重合反応を行った。次いで、重合反応器から出る反応液(部分重合体)を予熱した後、脱揮押出機に供給し、未反応の単量体成分を気化して回収するとともに、ペレット状のメタクリル樹脂Aを得た。得られたメタクリル樹脂Aの、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が97.5重量%であり、アクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が2.5重量%であり、MFRは2g/10分であった。
【0046】
実施例1
<造粒>
メタクリル樹脂A98重量%とシリカ2を2重量%とを混合した後、スクリュー径20mmの単軸押出機(株式会社東洋精機製 D20-25)を使用し、溶融混練してメタクリル樹脂組成物を得、これをストランド状に押出し、水冷し、ストランドカッターでカッティングすることにより、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。
(造粒条件)
押出機温度:押出機の原料投入口と出口との間で該押出機のバレルに設けられた4つのヒーターの温度を、原料投入口側から順に、それぞれ200℃、230℃、240℃、250℃に設定した。
スクリュー回転数:75rpm
<射出成型>
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械株式会社製IS-130F)を用いて、200mm×120mm×3mm厚の平板形状に成形し、射出成形体を得た。
(成型条件)
スクリュー温度:射出成形機の原料投入口と出口との間で該射出成形機のスクリューに設けられた5つのヒーターの温度を、原料投入口側から順に、それぞれ210℃、220℃、220℃、230℃、230℃に設定した。
射出圧力(PI):70MPa(最高圧力の35%に相当)
保持圧力(PH):71MPa(最高圧力の35%に相当)
金型温度:60℃
【0047】
実施例2
メタクリル樹脂組成物100重量部に対して、さらにピアノブラック染料を0.46重量部追加して混合した以外は、上記実施例1と同様に成形した。なお、表1において、「ピアノブラック染料」は「PB染料」と表示する。
【0048】
実施例3、5、7、9
シリカ2の代わりに、表1の無機粒子を用いた以外は上記実施例1と同様に成形した。
【0049】
実施例4、6、8、10
シリカ2の代わりに、表1の無機粒子を用いた以外は上記実施例2と同様に成形した。
【0050】
比較例1
メタクリル樹脂Aを射出成形機(東芝機械株式会社製IS-130F)を用いて、200mm×120mm×3mm厚の平板形状に成形した。
(成型条件)
スクリュー温度:射出成形機の原料投入口と出口との間で該射出成形機のスクリューに設けられた5つのヒーターの温度を、原料投入口側から順に、それぞれ210℃、220℃、220℃、230℃、230℃に設定した。
射出圧力(PI):70MPa(最高圧力の35%に相当)
保持圧力(PH):71MPa(最高圧力の36%に相当)
金型温度:60℃
【0051】
比較例2
<造粒>
メタクリル樹脂A99.55重量%とピアノブラック染料を0.45重量%とを混合した後、スクリュー径20mmの単軸押出機を使用して溶融混練してメタクリル樹脂組成物を得、これをストランド状に押出し、水冷し、ストランドカッターでカッティングすることにより、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。
(造粒条件)
押出機温度:押出機の原料投入口と出口との間で該押出機のバレルに設けられた4つのヒーターの温度を、原料投入口側から順に、それぞれ200℃、230℃、240℃、250℃に設定した。
回転数:75rpm
<射出成型>
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械株式会社製IS-130F)を用いて、200mm×120mm×3mm厚の平板形状に成形し、射出成形体を得た。
(成型条件)
スクリュー温度:射出成形機の原料投入口と出口との間で該射出成形機のスクリューに設けられた5つのヒーターの温度を、原料投入口側から順に、それぞれ210℃、220℃、220℃、230℃、230℃に設定した。
射出圧力(PI):70MPa(最高圧力の35%に相当)
保持圧力(PH):71MPa(最高圧力の36%に相当)
金型温度:60℃
【0052】
比較例3
(乳化重合)
ガラス製反応容器に、純水を2300重量部、シリカ1を990重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを23.4重量部入れ、窒素雰囲気下で、30分間200rpmで攪拌を行った。次に、得られた混合物を200rpmで撹拌しながら83℃に昇温し、メタクリル酸メチル997.1重量部、アクリル酸メチル43.4重量部、ノルマルオクチルメルカプラン3.5重量部と過硫酸ナトリウム1.0重量部、純水400重量部を同温度で50分間にわたって連続的に添加し、添加終了後、さらに攪拌しながら30分間熟成した。その後、得られた混合物を98℃まで昇温させ、同温度で30分間保持した後に、室温まで冷却し、メタクリル樹脂粒子とシリカ粒子とを含む分散液を得た。
【0053】
(塩析/洗浄/乾燥)
得られた分散液を―20℃で24時間冷却して凍結し、凍結した後の分散液を融解させてメタクリル樹脂粒子とシリカ粒子との凝集物を含有するスラリーを得た。次いで、スラリーをろ過して、前記凝集物を単離した。この凝集物を20重量倍の純水に投入し、攪拌後、ろ過することにより、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、80℃設定のオーブンで乾燥し、粉末状のメタクリル樹脂組成物を得た。
【0054】
(成形)
メタクリル樹脂Aの代わりに、上記粉末状のメタクリル樹脂組成物を使用した以外は、比較例1と同様に成形した。
【0055】
比較例4
メタクリル樹脂Aの代わりに、上記粉末状のメタクリル樹脂組成物を使用した以外は、比較例2と同様に成形した。
【0056】
比較例5
射出成形時の金型温度を40℃に設定した以外は、上記実施例8と同様に成形した。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例4で得られた射出成形体は、図1に示すとおり、表面に平均孔径が30μmの非貫通孔を有していた。また、実施例1~10及び比較例1~5で得られた成形体について、表面の算術平均粗さ、鉛筆硬度および光沢度を測定した結果を表2に示す。比較例1、2及び3,4では、染料を添加した成形体は、添加していない成形体よりも鉛筆硬度が大幅に低い。また、比較例5では金型温度を下げたため、算術平均粗さが高く、光沢度が著しく低い。一方で、実施例1~10では、染料を添加した成形体は、染料を添加していない成形体と比べて、鉛筆硬度がほとんど同じである。上記の結果から、表面の算術平均粗さが20nm以上280nm以下である射出成形体は、表面の算術平均粗さが20nm未満または280nmを超える射出成形体に比べて、着色されていても耐傷付き性に優れ、光沢度が高いことが分かる。
【0059】
【表2】
【0060】
実施例11
実施例4で得られたメタクリル樹脂組成物100重量部に対して、さらに滑剤1を2.0重量部追加して混合した以外は、上記実施例4と同様に成形した。
【0061】
実施例4、11及び比較例2で得られた成形体について、スチールウール耐傷付き試験の評価結果を表3に示す。比較例2では、ΔE*abの値が著しく大きかった。一方、実施例4および11では、ΔE*ab値が小さかった。上記の結果から、表面の算術平均粗さが20nm以上280nm以下の射出成形体は、表面の算術平均粗さが20nm未満の射出成形体に比べて、着色されていても耐傷付き性が高いことが分かる。
【0062】
【表3】

【0063】
実施例11及び比較例2で得られた成形体について、軍手耐傷付き試験の評価結果を表4に示す。実施例11では、ΔE*abの値が小さく、比較例2では、ΔE*abの値が大きかった。また、軍手耐傷付き試験後の成形体の表面を目視で確認したところ、実施例11の成形体の表面には、傷が発見できなかったが、比較例2の成形体の表面には、多数の傷が発見された。上記の結果から、表面の算術平均粗さが20nm以上280nm以下の射出成形体は、表面の算術平均粗さが20nm未満の射出成形体に比べて、着色されていても耐傷付き性が高いことが分かる。
【0064】
【表4】
図1