(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1516 20190101AFI20220222BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G02F1/1516
C09K9/02 A
(21)【出願番号】P 2020206496
(22)【出願日】2020-12-14
(62)【分割の表示】P 2015014375の分割
【原出願日】2015-01-28
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 俊也
(72)【発明者】
【氏名】山本 諭
(72)【発明者】
【氏名】金子 史育
(72)【発明者】
【氏名】井上 満美子
(72)【発明者】
【氏名】八代 徹
(72)【発明者】
【氏名】油谷 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】永井 一清
(72)【発明者】
【氏名】島田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】篠田 雅人
【審査官】本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-228957(JP,A)
【文献】特開2014-146534(JP,A)
【文献】特開2001-117251(JP,A)
【文献】特開2005-085731(JP,A)
【文献】特開2005-310469(JP,A)
【文献】Chien-Hsin Yang et al.,The application of triphenylamine-based hole-transporting materials in electrochromic devices,Journal of Electroanalytical Chemistry,2008年02月03日,617,101-110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1516
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極と、第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に電解質と、を有するエレクトロクロミック表示素子であって、
前記第一の電極が、下記一般式(IV)で示される化合物を有することを特徴とするエレクトロクロミック表示素子。
[一般式(IV)]
【化1】
(ただし、前記一般式(IV)中、Yは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、-P(O)(OH)
2、
-Si(OCH
3
)
3
、
-Si(OCH
2
CH
3
)
3
、-COOH、-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基、-COOHで置換されたアルキル基、-P(O)(OH)
2で置換されたアルコキシ基、
-Si(OCH
3
)
3
で置換されたアルキル基、
-Si(OCH
2
CH
3
)
3
で置換されたアルキル基、又は-COOHで置換されたアルコキシ基を示し、前記Yの少なくとも一つは、-P(O)(OH)
2、
-Si(OCH
3
)
3
、
-Si(OCH
2
CH
3
)
3
、-COOH、-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基、-COOHで置換されたアルキル基、-P(O)(OH)
2で置換されたアルコキシ基、
-Si(OCH
3
)
3
で置換されたアルキル基、
-Si(OCH
2
CH
3
)
3
で置換されたアルキル基、又は-COOHで置換されたアルコキシ基である。
R
5からR
28は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はヘテロアリールオキシ基を示す。)
【請求項2】
上記一般式(IV)中、R
9からR
12が、いずれも水素原子を示す請求項1に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項3】
上記一般式(IV)中、R
5からR
8が、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示す請求項1から2のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項4】
前記Yは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、-P(O)(OH)
2、-COOH、-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基、-COOHで置換されたアルキル基、-P(O)(OH)
2で置換されたアルコキシ基、又は-COOHで置換されたアルコキシ基を示し、前記Yの少なくとも一つは、-P(O)(OH)
2、-COOH、-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基、-COOHで置換されたアルキル基、-P(O)(OH)
2で置換されたアルコキシ基、又は-COOHで置換されたアルコキシ基である請求項1から3のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項5】
前記Yは、アルキル基、-P(O)(OH)
2、-COOH、-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基、又は-COOHで置換されたアルキル基を示し、前記Yの少なくとも一つは、-P(O)(OH)
2、-COOH、-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基、又は-COOHで置換されたアルキル基である請求項1から4のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項6】
前記Yは、アルキル基、-P(O)(OH)
2、又は-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基を示し、前記Yの少なくとも一つは-P(O)(OH)
2、又は-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基である請求項1から5のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項7】
前記Yは、アルキル基、又は-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基を示し、前記Yの少なくとも一つは-P(O)(OH)
2で置換されたアルキル基である請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロクロミック表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。前記エレクトロクロミズムを示すエレクトロクロミック材料は、一般に対向する2つの電極間に形成され、イオン伝導可能な電解質層が電極間に満たされた構成で酸化還元反応する。前記対向する2つの電極のうちの一方の近傍で還元反応が生じるときには、他方の電極の近傍では、逆反応である酸化反応が生じる。
【0003】
前記エレクトロクロミック材料を用いたエレクトロクロミック表示素子において、透明な表示デバイスを得る場合や、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の3層の発色層を積層させた構成のデバイスを構築する場合には、無色透明の状態を有する材料により構成されていることが重要である。
前記エレクトロクロミック材料としては、中性状態が透明状態であり、還元状態で発色するエレクトロクロミック現象を示すビオロゲン化合物などが利用されている。前記ビオロゲン化合物との組み合わせにおいては、酸化チタンが好適に用いられている。これらの中でも、積層構成において、エレクトロクロミック化合物の担持粒子として、酸化チタン粒子を用いることで、高い光学的濃度や高コントラスト比を維持できることが報告されている。
【0004】
中性状態が透明状態で、酸化状態で発色するエレクトロクロミック材料としては、トリアリールアミン化合物などが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、トリアリールアミン系材料に重合性官能基を付与した化合物を用いたエレクトロクロミック装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記非特許文献1には、トリアリールアミン化合物との共重合材料とポリメタクリル酸コリン(poly(choline methacrylate):PCM)を十数層に分けて積層したエレクトロクロミック表示素子が開示されており、前記エレクトロクロミック表示素子の作製プロセスが煩雑であり実用的な開示であるとは言いがたく、最良の構成で500回程度の繰返しが評価されているが、光耐久性に関しては記載も示唆もない。
また、前記特許文献1は、重合膜においてキャリア移動度が十分ではなく、表面積が小さいため、高い発色濃度を得るためには膜厚を厚くする必要があり、応答速度が遅くなるという問題がある。
【0006】
そこで、前記ビオロゲン化合物の例と同様に、表面積を大きくし、応答速度を改善する、トリアリールアミン化合物にホスホン酸等の吸着基を付与した下記構造式(A)で示される化合物を、酸化チタンなどの粒子に担持して用いる方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
しかしながら、前記非特許文献2は、応答速度は改善されているが、前記構造式(A)で示される化合物は、消色時の逆電圧耐性等の繰り返し耐久性や光耐久性については不十分であった。
[構造式(A)]
【化1】
【0007】
また、非特許文献3には、下記構造式(B)で示されるTPD-3が記載されている。しかしながら、前記非特許文献3は、有機エレクトロルミネッセンスの注入層としての利用が開示されているのみであり、それをエレクトロクロミック材料として用いた場合の特性については何ら開示されていない。
[構造式(B)]
【化2】
【0008】
したがって、本発明は、安定動作が可能であり、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性に優れるエレクトロクロミック化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としての本発明のエレクトロクロミック化合物は、下記一般式(I)で示される化合物である。
[一般式(I)]
【化3】
(ただし、前記一般式(I)中、R
1からR
28は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、或いは水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示し、少なくとも一つは、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す)
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、安定動作が可能であり、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性に優れるエレクトロクロミック化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明のエレクトロクロミック表示素子の一例を示す概略図である。である。
【
図2】
図2は、本発明のエレクトロクロミック表示素子の他の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明のエレクトロクロミック表示素子のまた他の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施例5で作製したエレクトロクロミック表示層を形成した表示電極の消色状態と発色状態における吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(エレクトロクロミック化合物)
本発明のエレクトロクロミック化合物は、下記一般式(I)で示される。
[一般式(I)]
【化4】
【0013】
ただし、前記一般式(I)中、R1からR28は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、或いは水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示し、少なくとも一つは、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す。
【0014】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0015】
前記一価の有機基としては、例えば、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホンアミド基、アミノスルホニル基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリール基などが挙げられる。これらは、置換基を有していてもよい。
【0016】
前記置換基を有してもよいものとしては、例えば、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノカルボニル基等の置換基を有していてもよいカルボニル基;置換基を有していてもよいアルコキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノスルホニル基等の置換基を有していてもよいスルホニル基;置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基等のアルキルアミノ基;置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基;置換基を有していてもよいアルキニル基;置換基を有していてもよいアリール基;置換基を有していてもよいアルコキシ基;置換基を有していてもよいアリールオキシ基;置換基を有していてもよいアルキルチオ基;置換基を有していてもよいアリールチオ基;置換基を有していてもよいヘテロアリール基などが挙げられる。
【0017】
これらの中でも、炭素数1以上のアルキル基、炭素数2以上のアルケニル基、炭素数2以上のアルキニル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数2以上のヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基が好ましい。
【0018】
前記炭素数1以上のアルキル基としては、例えば、原料の入手性の点から、直鎖又は分岐鎖、或いは環状の炭素数1以上30以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上18以下のアルキル基がより好ましい。
前記炭素数1以上のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0019】
前記炭素数2以上のアルケニル基としては、例えば、前記炭素数1以上のアルキル基と同様に、直鎖又は分岐鎖、或いは環状の炭素数2以上30以下のアルケニル基が好ましく、炭素数1以上18以下のアルケニル基がより好ましい。
前記炭素数2以上のアルケニル基としては、前記炭素数1以上のアルキル基の任意の水素を2つ取り去った置換基であり、例えば、ビニル基(エテニル基)、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプタニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0020】
炭素数2以上のアルキニル基としては、例えば、前記炭素数1以上のアルキル基と同様に、直鎖又は分岐鎖、或いは環状の炭素数2以上30以下のアルキニル基が好ましく、炭素数1以上18以下のアルキニル基がより好ましい。
炭素数2以上のアルキニル基としては、前記炭素数1以上のアルキル基の任意の水素を4つ取り去った置換基であり、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基などが挙げられる。
【0021】
前記炭素数6以上のアリール基としては、例えば、炭素数6以上18以下のアリール基が好ましい。
前記炭素数6以上のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-クロロフェニル基、p-フルオロフェニル基、p-トリフルオロフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。
【0022】
前記炭素数2以上のヘテロアリール基としては、例えば、炭素数2以上12以下のヘテロアリールが好ましい。
前記炭素数2以上のヘテロアリール基の構成元素としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ケイ素原子、セレン原子などが挙げられる。これらの中でも、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子から選択されるいずれか1種を含んでいることが好ましい。
前記炭素数2以上のヘテロアリール基としては、例えば、単環系ヘテロアリール基、多環系ヘテロアリール基などが挙げられる。
前記単環系ヘテロアリール基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、テトラジン、チオフェン環、フラン環、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール、オキサジアゾール環、トリアジン環、テトラゾール環、トリアゾール環などが挙げられる。
前記多環系ヘテロアリール基としては、例えば、キノリン基、イソキノリン基、キナリゾン基、フタラジン基、インドール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチオジアゾール基、アクリジン基、フェノキサジン基、フェノチアジン基、カルバゾール基、ベンゾジチオフェン基、ベンゾジフラン基などが挙げられる。
【0023】
前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基としては、例えば、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、スルホニル基、シリル基、シラノール基などが挙げられる。これらの中でも、合成の簡便さ、担持粒子への吸着性、及び化合物の安定性の点から、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく、ホスホン酸基がより好ましい。
前記ホスホン酸基としては、例えば、メチルホスホン酸基、エチルホスホン酸基、プロピルホスホン酸基、ヘキシルホスホン酸基、オクチルホスホン酸基、デシルホスホン酸基、ドデシルホスホン酸基、オクタデシルホスホン酸基、ベンジルホスホン酸基、フェニルエチルホスホン酸基、フェニルプロピルホスホン酸基、ビフェニルホスホン酸基などが挙げられる。
前記リン酸基としては、例えば、メチルリン酸基、エチルリン酸基、プロピルリン酸基、ヘキシルリン酸基、オクチルリン酸基、デシルリン酸基、ドデシルリン酸基、オクタデシルリン酸基、ベンジルリン酸基、フェニルエチルリン酸基、フェニルプロピルリン酸基、ビフェニルリン酸基などが挙げられる。
前記カルボン酸基としては、例えば、メチルカルボン酸基、エチルカルボン酸基、プロピルカルボン酸基、ヘキシルカルボン酸基、オクチルカルボン酸基、デシルカルボン酸基、ドデシルカルボン酸基、オクタデシルカルボン酸基、ベンジルカルボン酸基、フェニルエチルカルボン酸基、フェニルプロピルカルボン酸基、ビフェニルカルボン酸基、4-プロピルフェニルカルボン酸基、4-プロピルビフェニルカルボン酸基などが挙げられる。
前記スルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、デシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、オクタデシルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、フェニルエチルスルホニル基、フェニルプロピルスルホニル基、ビフェニルスルホニル基などが挙げられる。
前記シリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、ヘキシルシリル基、オクチルシリル基、デシルシリル基、ドデシルシリル基、オクタデシルシリル基、ベンジルシリル基、フェニルエチルシリル基、フェニルプロピルシリル基、ビフェニルシリル基などが挙げられる。
前記シラノール基としては、例えば、メチルシラノール基、エチルシラノール基、プロピルシラノール基、ヘキシルシラノール基、オクチルシラノール基、デシルシラノール基、ドデシルシラノール基、オクタデシルシラノール基、ベンジルシラノール基、フェニルエチルシラノール基、フェニルプロピルシラノール基、ビフェニルシラノール基などが挙げられる。
【0024】
前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基としては、酸化還元に対する耐性が高い点から、例えば、炭素数1以上のアルキル基;炭素数6以上のアリール基;構成炭素数7以上の、アルキル基で置換されたアリール基等の末端に置換されていることが好ましく、アルキル基の末端に置換されていることがより好ましい。
【0025】
前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基が、前記水酸基に対して間接的に結合する場合、少なくとも炭素数2以上のアルキル基を介して結合することが好ましい。
【0026】
前記一般式(I)で示されるエレクトロクロミック化合物としては、例えば、下記一般式(II)で示される化合物などが好適に挙げられる。
【0027】
【0028】
ただし、前記一般式(II)中、R1からR4、及びR13からR28から選択される少なくとも一つが、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す。これらの中でも、前記R1からR4から選択される少なくとも一つが前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基で示されることが好ましく、R1からR4が、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、或いは前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基で示され、かつR1からR4の少なくとも一つが、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基で示されることがより好ましい。
なお、前記R1からR4、及びR13からR28以外は、前記一般式(I)と同様である。
【0029】
前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基の置換位置が、前記化合物の構造の中心に位置するビフェニル骨格ではなく、前記R1からR4、及びR13からR28から選択される少なくとも一つに限定することで、前記化合物の合成における最終段階において水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を導入することができ、合成がより簡便となる。また、前記化合物の構造の中心に位置するビフェニル骨格に導入すると、分子短軸方向に官能基が増えるため、長軸方向に導入した場合よりも結晶性が低下し、目的とする化合物の取扱いがしにくくなる場合がある。
【0030】
前記R1からR4から選択される少なくとも一つが、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基で示される場合、トリフェニルアミン骨格のパラ位に前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基が導入されるため、化合物の結晶性、及び安定性が増す点から好適である。
【0031】
前記一般式(I)で示されるエレクトロクロミック化合物としては、例えば、下記一般式(III)で示される化合物などがより好適に挙げられる。
[一般式(III)]
【化6】
【0032】
ただし、前記一般式(III)中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数2以上のアルケニル基、炭素数2以上のアルキニル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数2以上のヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、或いは水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す。)
なお、前記X以外は、前記一般式(I)と同様である。
【0033】
前記一般式(III)中のトリフェニルアミン骨格のパラ位は、電子密度が高く、反応性が高いため、酸化還元状態で、二量化や環化、分解反応等の予期せぬ副反応を招く可能性が非常に大きい。そこで、前記トリフェニルアミン骨格のパラ位には水素原子以外の前記Xで置換されていることが好ましい。
【0034】
前記一般式(I)で示されるエレクトロクロミック化合物としては、例えば、下記一般式(IV)で示される化合物などがさらに好適に挙げられる。
[一般式(IV)]
【化7】
【0035】
ただし、前記一般式(IV)中、前記Yは、アルキル基、アルコキシ基、或いは水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示し、前記Yの少なくとも一つは、水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す。前記アルキル基、及び前記アルコキシル基自体は反応性が低く、前記一般式(IV)で示される化合物自体の安定性、及び色調の著しい変化を伴わないため好適に用いることができる。なお、前記Y以外は、前記一般式(I)と同様である。
【0036】
前記Yの水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基の数としては、1つ以上2つ以下が好ましい。前記官能基の数が、少なくとも1つ導入されていると、水酸基に対して結合することができ、偶数である2つ以下導入されていると、分子が対称系分子になりやすく、合成、及び精製の点で有利であり、その極性により精製が困難になったり、主骨格の安定性、及び、例えばホスホン酸基が導入されている場合に、ドナーであるトリフェニルアミンの過剰にドーピングし、消色時の着色、駆動時の劣化が生じる等の電気的特性が損なわれることがない。
【0037】
前記一般式(IV)中、R9からR12は、前記一般式(I)中のR9からR12と同様のものを用いることができるが、いずれも水素原子であることが好ましい。R9からR12が、いずれも水素である一般式(V)を下記に示す。
【0038】
【0039】
ただし、前記一般式(V)中、R5からR8、及びR13からR28は、前記一般式(I)中のR5からR8、及びR13からR28と同様であり、Yは、前記一般式(IV)中のYと同様である。
【0040】
前記一般式(IV)中のR9からR12が、いずれも水素原子であると、例えば、メチル基等のアルキル基、塩素原子等のハロゲン原子などの嵩高い置換基が導入された場合のようにビフェニルの二面角が大きくなることを防止するとともに、酸化還元時の化合物の安定性が低下することを抑制することができる。
【0041】
前記一般式(I)で示されるエレクトロクロミック化合物としては、例えば、下記一般式(VI)で示される化合物などが特に好適に挙げられる。
[一般式(VI)]
【化9】
【0042】
ただし、前記一般式(VI)中、Zは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示し、R13からR28は、前記一般式(I)中のR13からR28と同様であり、Yは、前記一般式(IV)中のYと同様である。
【0043】
以下に、本発明の好ましい化合物の構造を具体的に例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
<例示化合物14>
【化23】
Etは、エチル基を示す。
【0058】
<例示化合物15>
【化24】
Etは、エチル基を示す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
<例示化合物20>
【化29】
ただし、Meは、メチル基を示す。
【0064】
<例示化合物21>
【化30】
ただし、Meは、メチル基を示す。
【0065】
-製造方法-
前記エレクトロクロミック化合物は、化合物の入手性、及び毒性の点から、例えば、ハロゲン化合物である下記一般式(VII)で示されるビフェニル化合物と、例えば、一般式(VIII)で示されるアミン化合物とを、例えば、パラジウム触媒、ニッケル触媒、銅触媒等の金属触媒と、必要に応じて塩基とを、適当な溶媒中で炭素-窒素間のクロスカップリング反応させることにより下記一般式(IX)で示されるジアミン又は下記一般式(X)で示されるトリアミン骨格が得られる。
【0066】
[一般式(VII)]
【化31】
ただし、前記一般式(VII)中、R
5からR
12は、前記一般式(I)中のR
5からR
12と同様であり、Halはハロゲン原子又はトリフラート基を示す。
【0067】
[一般式(VIII)]
【化32】
ただし、前記一般式(VIII)中、R
1、及びR
13からR
16は、前記一般式(I)中のR
1、及びR
13からR
16と同様である。
【0068】
[一般式(IX)]
【化33】
ただし、前記一般式(IX)中、R
5からR
12は、前記一般式(VII)中のR
5からR
12と同様であり、R
1、及びR
13からR
16は、前記一般式(VIII)中のR
1、及びR
13からR
16と同様である。
【0069】
[一般式(X)]
【化34】
ただし、前記一般式(X)中、R
5からR
12は、前記一般式(VII)中のR
5からR
12と同様であり、R
1、及びR
13からR
16は、前記一般式(VIII)中のR
1、及びR
13からR
16と同様である。
【0070】
次に、一般式(IX)又は(X)で示されるアミン化合物と、芳香族ハロゲン化物又はトリフラート体との間で同様にクロスカップリング反応を行うことで、前記一般式(I)で示される本発明のエレクトロクロミック化合物を得ることができる。
【0071】
前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基は、芳香族ハロゲン化物又はトリフラート体に導入しておいてもよいし、カップリング後に導入してもよい。
【0072】
前記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらの中でも、塩素原子、臭素原子が好ましい。
前記アミン化合物としては、多置換体の副生を防ぐ点から、アミドの形態でカップリング反応を行い、反応後にアミドの加水分解することが好ましい。
【0073】
前記塩基としては、特に制限はなく、例えば、強塩基などが挙げられる。
前記強塩基としては、例えば、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウムなどが挙げられる。
【0074】
前記溶媒としては、特に制限はなく、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、ジオキサン、tert-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、キノリンなどが挙げられる。
【0075】
前記触媒としては、例えば、酢酸パラジウム、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム、ビスベンジリデンアセトンパラジウム、銅、酸化銅などが挙げられる。前記触媒は、適当なリガンドと組み合わせてもよい。
前記リガンドとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン等のリン配位子;エチレンジアミンやシクロヘキシルジアミン、フェナントロリン、ビピリジル等の窒素系配位子などが挙げられる。
【0076】
前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基としては、例えば、ホスホン酸の場合、前記ハロゲン化アルキルを有する芳香族ハロゲン化物又はトリフラート体をクロスカップリングした後、ハロゲン化アルキルに対して、亜リン酸トリエチルとのミカエリス・アルブーゾフ反応によりホスホネート体を得る。次に、前記ホスホネート体を、例えば、酸、シラン化合物等と反応させることでエステルを加水分解し、目的とするホスホン酸誘導体が得られる。
前記ホスホン酸の場合と同様にして、リン酸基、カルボン酸基、スルホニル基、シリル基、及びシラノール基に付いても公知の反応を用いることで誘導化できる。
前記酸としては、例えば、塩酸、硫酸などが挙げられる。
前記シラン化合物としては、例えば、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルクロリドなどが挙げられる。
【0077】
前記反応後に得られたエレクトロクロミック化合物の粗生成物の精製は、各種既存の精製方法で行うことができる。
前記精製方法としては、例えば、溶媒洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー、再沈殿、昇華精製などが挙げられる。
【0078】
(エレクトロクロミック組成物)
前記エレクトロクロミック組成物は、本発明のエレクトロクロミック化合物と、前記エレクトロクロミック化合物と結合又は吸着する導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体と、を含有し、必要に応じてその他の成分を有してなる。
【0079】
前記エレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミック表示素子に用いたとき、黒色発色を呈し、さらに画像のメモリ性、すなわち発色画像保持特性に優れるものとなる。
前記一般式(I)中のR1からR4から選択される少なくとも一つが、水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基である場合、例えば、本発明のエレクトロクロミック化合物が、結合又は吸着構造としてホスホン酸、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基等を有するとき、前記エレクトロクロミック化合物は容易に前記ナノ構造体と複合化し、発色画像保持性に優れるエレクトロクロミック組成物となる。前記ホスホン酸基、前記スルホン酸基、前記リン酸基、及び前記カルボキシル基としては、エレクトロクロミック化合物中に複数有していてもよい。また、本発明のエレクトロクロミック化合物が、シリル基、シラノール基等を有するとき、シロキサン結合を介して前記ナノ構造体と結合されてその結合は強固なものとなり、安定なエレクトロクロミック組成物を得ることができる。前記シロキサン結合とは、ケイ素原子及び酸素原子を介した化学結合をいう。また、前記エレクトロクロミック組成物は、前記エレクトロクロミック化合物と前記ナノ構造体がシロキサン結合を介して結合した構造をしていればよく、特にその結合方法・形態は限定しない。
【0080】
前記導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体とは、ナノ粒子又はナノポーラス構造体等のナノスケールの凹凸を有する構造体をいう。
前記導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体を構成する材質としては、透明性や導電性の点から、例えば、金属酸化物などが挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケートなどを主成分とするものなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電気伝導性等の電気的特性、光学的性質等の物理的特性の点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステンが好ましく、酸化チタンがより好ましい。前記金属酸化物、又は前記金属酸化物の混合物が用いられたとき、発消色の応答速度に優れる。
【0081】
前記金属酸化物の形状としては、平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物微粒子が好ましい。前記平均一次粒子径が小さいほど金属酸化物に対する光の透過率が向上でき、単位体積当たりの表面積(以下、「比表面積」という。)が大きい形状が用いられる。大きな比表面積を有することで、より効率的にエレクトロクロミック化合物が担持され、発消色の表示コントラスト比に優れた多色カラー表示することができる。ナノ構造の比表面積は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100m2/g以上が好ましい。
【0082】
<エレクトロクロミック表示素子>
本発明のエレクトロクロミック表示素子は、第一の電極と、第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に電解質と、を有し、前記第一の電極が、前記エレクトロクロミック化合物を含む前記エレクトロクロミック組成物を有し、必要に応じてその他の成分を有する。
【0083】
-第一の電極、及び第二の電極-
前記第一の電極、及び前記第二の電極を構成する材料としては、例えば、透明導電基板などが挙げられる。前記透明導電基板としては、例えば、ガラス、プラスチックフィルムに透明導電薄膜をコーティングしたものが好ましい。
【0084】
前記透明導電薄膜の材料としては、導電性を有する透明材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スズをドープした酸化インジウム(以下、「ITO」ともいう)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」ともいう)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」ともいう)、酸化亜鉛等の無機材料などが挙げられる。これらの中でも、InSnO、GaZnO、SnO、In2O3、ZnOが好ましい。
【0085】
さらに、透明性を有するカーボンナノチューブや、他のAu、Ag、Pt、Cuなど高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して、透明度を保持したまま、導電性を改善した電極を用いてもよい。
前記第一の電極、及び前記第二の電極の各々の平均厚みは、エレクトロクロミック層の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整される。
前記第一の電極、及び前記第二の電極の材料としてITOを用いた場合、第一の電極、及び第二の電極の各々の平均厚みは、例えば、50nm以上500nm以下が好ましい。
【0086】
前記第一の電極、及び前記第二の電極の各々の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
前記第一の電極、及び第二の電極の各々の材料の塗布方法としては、塗布形成できるものであれば特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
【0087】
-電解質-
前記電解質は、前記第一の電極と前記第二の電極との間に充填されている。
前記電解質としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩、酸類、アルカリ類等の支持塩などが挙げられ、具体的には、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、KCl、NaClO3、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。これらの中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有しているため、用いることが好ましい。
【0089】
前記室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造としては、カチオン成分としては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾール塩、N,N-メチルエチルイミダゾール塩、N,N-メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N-ジメチルピリジニウム塩、N,N-メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩などが挙げられ、アニオン成分としては、大気中での安定性の点から、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF4
-、CF3SO3
-、PF4
-、(CF3SO2)2N-などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電解質の材料としては、前記カチオン成分と前記アニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体を用いることが好ましい。
【0090】
前記イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー、及び液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、溶解性が悪い場合は、少量の溶媒に溶解させた溶液を光重合性モノマー、オリゴマー、及び液晶材料のいずれかと混合して用いればよい。
【0091】
前記溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0092】
前記電解質としては、低粘性の液体である必要はなく、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型などの様々な形態をとることができる。電解質は、ゲル状、固体状に形成することで、素子強度向上、信頼性向上などの点から有利である。
固体化手法としては、高いイオン伝導度と固体強度とが得られる点から、電解質と溶媒とをポリマー樹脂中に保持することが好ましい。
前記ポリマー樹脂としては、熱重合や溶剤を蒸発させることにより薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間で素子を製造できる点から、光硬化可能な樹脂が好ましい。
前記電解質からなる電解質層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100nm以上100μm以下が好ましい。
【0093】
-その他の部材-
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、支持体、絶縁性多孔質層、劣化防止層、保護層などが挙げられる。
【0094】
--支持体--
前記支持体としては、各層を支持できる透明材料であれば、周知の有機材料や無機材料をそのまま用いることができる。
前記支持体としては、例えば、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、フロートガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス基板;ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基板などが挙げられる。
前記支持体の表面に、水蒸気バリア性、ガスバリア性、紫外線耐性、及び視認性を高めるために透明絶縁層、UVカット層、反射防止層等がコーティングされていてもよい。
【0095】
前記支持体の形状としては、特に制限はなく、長方形であっても、丸型であってもよい。
前記支持体としては、複数の重ねあわせでもよく、例えば、2枚のガラス基板でエレクトロクロミック表示素子を挟持する構造にすることで、水蒸気バリア性、及びガスバリア性を高めることができる。
【0096】
--絶縁性多孔質層--
前記絶縁性多孔質層としては、第一の電極と第二の電極とが電気的に絶縁されるように隔離すると共に、電解質を保持する機能を有する。
前記絶縁性多孔質層の材料としては、多孔質であれば特に制限はなく、絶縁性、及び耐久性が高く成膜性に優れた有機材料、無機材料、及びそれらの複合体が好ましい。
前記絶縁性多孔質層の形成方法としては、例えば、焼結法(高分子微粒子や無機粒子を、バインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法などが挙げられる。
【0097】
--劣化防止層--
前記劣化防止層は、エレクトロクロミック組成物からなるエレクトロクロミック層と逆の化学反応をし、電荷のバランスをとって第一の電極、及び第二の電極が不可逆的な酸化還元反応により腐食や劣化することを抑制することができる。なお、前記逆の化学反応とは、劣化防止層が酸化還元する場合に加え、キャパシタとして作用することも含む意味である。
【0098】
前記劣化防止層の材料としては、第一の電極、及び第二の電極の不可逆的な酸化還元反応による腐食を防止する役割を担う材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化アンチモン錫、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、又はそれらを複数含む導電性金属酸化物、又は半導体性金属酸化物を用いることができる。
【0099】
前記劣化防止層は、電解質の注入を阻害しない程度の多孔質薄膜から構成することができる。例えば、酸化アンチモン錫、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の導電性金属酸化物微粒子又は半導体性金属酸化物微粒子を、例えば、アクリル系、アルキド系、イソシアネート系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系等のバインダにより第二の電極に固定化することで、電解質の浸透性、及び劣化防止層としての機能を満たす、好適な多孔質薄膜を得ることができる。
【0100】
前記劣化防止層として、エレクトロクロミック組成物を構成する導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体と同じものを用いると、第一の電極、及びエレクトロクロミック組成物の製造工程と、第二の電極、及び劣化防止層の製造工程とを一部共有化できるため好ましい。
【0101】
--保護層--
前記保護層は、外的応力、及び洗浄工程の薬品からエレクトロクロミック表示素子を守ることができ、また、前記電解質の漏洩を防ぐことができ、さらに大気中の水分や酸素などエレクトロクロミック表示素子が安定的に動作するために不要なものの侵入を防ぐことができる。
【0102】
前記保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上200μm以下が好ましい。
前記保護層の材料としては、例えば、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などを用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0103】
図1に、本発明のエレクトロクロミック表示素子の構成例である。
図1に示すように、前記エレクトロクロミック表示素子8は、第一の電極1と、前記第一の電極1に対して間隔をおいて対向して設けられた第二の電極2と、前記第一の電極及び前記第二の電極の両電極間に配置し、少なくとも前記エレクトロクロミック化合物4を溶解させた電解質3とを備える。前記エレクトロクロミック表示素子では、前記エレクトロクロミック化合物は電極表面でのみ酸化還元反応により発消色する。
【0104】
図2は、本発明のエレクトロクロミック表示素子の他の構成例である。
図2に示すように、エレクトロクロミック表示素子18は、第一の電極10と、前記第一の電極10に対して間隔をおいて対向して設けた第二の電極12と、前記第一の電極10及び前記第二の電極の両電極間に配置された電解質13とを備え、前記第一の電極10の表面に、前記エレクトロクロミック組成物14aを含む表示層15を備える。
【0105】
図3は、本発明のエレクトロクロミック表示素子のまた他の構成例である。
図3に示すように、エレクトロクロミック表示素子28は、第一の電極20と、前記第一の電極20に対して間隔をおいて対向して設けた第二の電極22と、前記第一の電極20及び前記第二の電極の両電極間に配置された電解質23とを備え、前記第一の電極20の表面に、前記エレクトロクロミック組成物24aを含む表示層25を有する。また、第二の電極22の第一の電極21側に、白色粒子からなる白色反射層26を備える。
【0106】
前記エレクトロクロミック組成物中のエレクトロクロミック化合物は、分子構造中に水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を有し、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を結合基として導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体に結合して、エレクトロクロミック組成物を構成することができる。そして、前記エレクトロクロミック組成物が第一の電極10上に層状に設けられて、表示層15が形成されている。
【0107】
-用途-
本発明のエレクトロクロミック化合物は、安定動作が可能であり、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性に優れているので、例えば、エレクトロクロミックディスプレイ、株価の表示板等の大型表示板、防眩ミラー、調光ガラス等の調光素子、タッチパネル式キースイッチ等の低電圧駆動素子、光スイッチ、光メモリー、電子ペーパー、電子アルバムなどに好適に使用することができる。
【実施例】
【0108】
以下に、本発明の実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り、「質量部」及び「質量%」を示す。
【0109】
(実施例1)
<エレクトロクロミック化合物1の作製例1>
下記スキームに従って、エレクトロクロミック化合物1の合成を行った。
【化35】
【0110】
-中間体1-1の合成-
窒素置換したフラスコに、オルトトリジン(2.12g、10mmol)、パラブロモトルエン(5.73g、30mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド(8.64g、90mmol)、酢酸パラジウム(67mg、0.3mmol)、及びトリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(261mg、0.9mmol)を入れ、アルゴンガスで置換した後、アルゴンガスで脱気したオルトキシレン(40mL)を加えて、115℃で3時間加熱撹拌を行った。反応溶液を室温に戻し、セライト濾過を行った。次に、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:トルエン/ヘキサン)で精製を行い、淡黄色の固体として、下記中間体1-1を得た(収量2.03g、収率42%)。
【0111】
【0112】
-中間体1-2の合成-
窒素置換したフラスコに、前記中間体1-1(2.03g、4.2mmol)、1-ブロモ-4-(3-クロロプロピル)ベンゼン(980mg、4.2mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド(1.21g、12.6mmol)、酢酸パラジウム(67mg、0.3mmol)、及びトリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(261mg、0.9mmol)を入れ、アルゴンガスで置換した後、アルゴンガスで脱気したオルトキシレン(40mL)を加えて、115℃で3時間加熱撹拌を行った。反応溶液を室温に戻し、セライト濾過を行った。次に、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:トルエン)で精製を行い、淡黄色の固体として、下記中間体1-2を得た(収量2.59g、収率97%)。
【0113】
【0114】
-中間体1-3の合成-
窒素置換したフラスコに、前記中間体1-2(2.59g、4.07mmol)、及び亜リン酸トリエチル(50g)を入れ、内温156℃で24時間加熱撹拌を行った。過剰の亜リン酸トリエチルを減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:トルエン/酢酸エチル)で精製し、淡黄色の固体として、下記中間体1-3を得た(収量2.85g、収率95%)。
【0115】
【0116】
-エレクトロクロミック化合物1の合成-
窒素置換したフラスコに前記中間体1-3(2.86g)、及び脱水クロロホルム(50mL)を加え、トリメチルシリルブロミド(3mL)を滴下した。滴下終了後、室温で16時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣にメタノールを加えて、再度減圧留去した。この作業を3回繰り返し、得られた固体をメタノールに分散し、固体を濾取し、無色の固体として、下記エレクトロクロミック化合物1を得た(収量2.60g、収率99%)。
【0117】
【0118】
前記エレクトロクロミック化合物1のMSスペクトル(ESI)を測定したところ、理論値680.32、実測値680.30であり、下記構造式(I)で示されるエレクトロクロミック化合物1であることが確認された。
【0119】
【0120】
(実施例2)
<エレクトロクロミック化合物2の作製例2>
下記スキームに従って、エレクトロクロミック化合物2の合成を行った。
【化41】
【0121】
-中間体2-1の合成-
パラブロモトルエン(5.73g、30mmol)、及びナトリウム-tert-ブトキシド(8.64g、90mmol)を、パラブロモトルエン(3.82g、20mmol)、及びナトリウム-tert-ブトキシド(5.76g、60mmol)に変更した以外は、実施例1の中間体1-1の合成と同様にして、中間体2-1を得た(収率75%)。
【0122】
-中間体2-2の合成-
中間体1-1の代わりに、中間体2-1を用い、1-ブロモ-4-(3-クロロプロピル)ベンゼン(980mg、4.2mmol)を、1-ブロモ-4-(3-クロロプロピル)ベンゼン(1,960mg、8.4mmol)に変更した以外は、実施例1の中間体1-1の合成と同様にして、中間体2-2を得た(収率95%)。
【0123】
-中間体2-3の合成-
次に、前記中間体1-2を前記中間体2-2に変更した以外は、実施例1の中間体1-3の合成と同様にして、中間体2-3を得た(収率98%)。
【0124】
-エレクトロクロミック化合物2の合成-
窒素置換したフラスコに、中間体2-3(2.86g)、脱水クロロホルム(50mL)を加え、トリメチルシリルブロミド(6mL)を滴下した。滴下終了後、室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣にメタノールを加えて、再度減圧留去した。この作業を3回繰り返し、得られた固体をメタノールに分散し、固体を濾取し、無色の固体としてエレクトロクロミック化合物2を得た(収量2.30g、収率99%)。前記エレクトロクロミック化合物2のMSスペクトルを測定したところ、理論値788.31、実測値788.34であり、下記構造式(II)で示されるエレクトロクロミック化合物2であることが確認された。
【0125】
【0126】
(実施例3)
<エレクトロクロミック化合物3の作製例3>
下記スキームに従って、エレクトロクロミック化合物3の合成を行った。
【化43】
【0127】
-中間体3-1の合成-
窒素置換したフラスコに、N,N’-ジ-p-トリルベンジジン(3.65g、10mmol)、1-ブロモ-4-(3-クロロプロピル)ベンゼン(4.66g、20mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド(3.84g、40mmol)、酢酸パラジウム(67mg、0.3mmol)、及びトリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(261mg、0.9mmol)を入れ、アルゴンガスで置換した後、アルゴンガスで脱気したオルトキシレン(40mL)を加えて、115℃で3時間加熱撹拌を行った。反応溶液を室温に戻し、セライト濾過を行った。次に、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:トルエン)で精製を行い、淡黄色の固体として、中間体3-1を得た(収量2.59g、収率95%)。
【0128】
-中間体3-2の合成-
中間体1-1を中間体3-1に変更した以外は、実施例1の中間体1-2の合成と同様にして、中間体3-2を得た(収率98%)。
【0129】
-エレクトロクロミック化合物3の合成-
中間体2-3を中間体3-2に変更した以外は、実施例2のエレクトロクロミック化合物2の合成と同様にして、エレクトロクロミック化合物3を得た(収率95%)。前記エレクトロクロミック化合物3のMSスペクトルを測定したところ、理論値760.28, 実測値760.25であり、下記構造式(III)で示されるエレクトロクロミック化合物3であることが確認された。
【0130】
【0131】
(実施例4)
<エレクトロクロミック化合物4の作製例4>
下記スキームに従って、エレクトロクロミック化合物4の合成を行った。
【化45】
【0132】
-中間体4-1の合成-
パラブロモトルエンを、p-ブロモアニソールに変更した以外は、実施例1の中間体1-1の合成と同様にして、中間体4-1を得た(収率95%)。
【0133】
-中間体4-2の合成-
窒素置換したフラスコに、前記中間体4-1(5.75g、9.5mmol)をジクロロメタン(100mL)に溶解した溶液を0℃に冷却した。次に、三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(濃度1M、25mL)を滴下した。滴下終了後、前記溶液を室温に戻し、そのまま16時間撹拌し反応させた。前記反応後、水、及びジクロロメタンを加え、有機層を分離し、水層をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別し、ろ液を濃縮し得られた残渣をトルエン/酢酸エチル(8/2)に溶解させ、溶液をシリカゲルパッド(固定相:中性シリカゲル、厚さ5cm)に通じた。これを濃縮し、淡黄色の固体として中間体4-2を得た(収量5.42g、収率99%)。
【0134】
-中間体4-3の合成-
窒素置換したフラスコに、前記中間体4-2(5.42g、9.41mmol)をジメチルホルムアミド(50mL)に溶解させ、溶液を0℃に冷却し、水素化ナトリウム(480mg、20mmol)を徐々に加えた。次に、1-ブロモ-2-クロロエタン(2.86g、20mmol)を一度に加え、溶液を室温に戻し、16時間撹拌し反応させた。前記反応させた溶液に、水、及び酢酸エチルを加えて、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を水で2回、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別し、ろ液を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:トルエン)で精製を行い、淡黄色の固体として中間体4-3を得た(収量5.28g、収率80%)。
【0135】
-中間体4-4の合成-
中間体1-2を中間体4-3に変更した以外は、実施例1の中間体1-3の合成と同様にして、中間体4-4を得た(収率98%)。
【0136】
-エレクトロクロミック化合物4の合成-
中間体2-3を、中間体4-4に変更した以外は、実施例2のエレクトロクロミック化合物2の合成と同様にして、エレクトロクロミック化合物4を得た(収率95%)。前記エレクトロクロミック化合物4のMSスペクトルを測定したところ、理論値792.27、実測値792.24であり、下記構造式(IV)で示されるエレクトロクロミック化合物4であることが確認された。
【0137】
【0138】
(実施例5)
<エレクトロクロミック化合物5の作製例5>
下記スキームに従って、エレクトロクロミック化合物5の合成を行った。
【化47】
【0139】
-中間体5-1の合成-
前記中間体1-2(3.18g、5mmol)、4-ヒドロキシ安息香酸エチル(2.08g、12.5mmol、炭酸カリウム(2.07g)、DMF(24mL)をフラスコに入れ、80℃で7時間撹拌した。次に、室温まで冷却した後、水、酢酸エチルを加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄、続けて硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濃縮した残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:ヘキサン/トルエン→トルエン)で精製を行い、無色の固体として中間体5-1を得た(収量3.65g、収率95%)。
【0140】
-エレクトロクロミック化合物5の合成-
フラスコに前記中間体5-1(1.8g、2.35mmol)、THF(90mL)、メタノール(30mL)、水(30mL)、水酸化リチウム1水和物(296mg、7.06mmol)を入れ、90℃で3時間撹拌した。次に、室温に冷却後、1M塩酸(50mL)を加え、析出した固体を濾取し、これを水、続けてヘキサンで洗浄し、真空下乾燥を行い、無色の固体としてエレクトロクロミック化合物5を得た(収量1.48g、収率84%)。前記エレクトロクロミック化合物5のMSスペクトルを測定したところ、理論値736.37、実測値736.44であり、下記構造式(V)で示されるエレクトロクロミック化合物5であることが確認された。
【0141】
【0142】
(実施例6)
<エレクトロクロミック化合物6の作製例6>
下記スキームに従って、エレクトロクロミック化合物6の合成を行った。
【化49】
【0143】
-中間体6-1の合成-
中間体2-2(1.54g、2.2mmol)、4-ヒドロキシ安息香酸エチル(1.83g、11.0mmol、炭酸カリウム(1.82g)、DMF(24mL)をフラスコに入れ、80℃で7時間撹拌した。次に、室温まで冷却した後、水、酢酸エチルを加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄、続けて硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濃縮した残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:トルエン→トルエン/酢酸エチル)で精製を行い、無色の固体として中間体6-1を得た(収量1.70g、収率81%)。
【0144】
-エレクトロクロミック化合物6の合成-
フラスコに前記中間体6-1(1.68g、1.76mmol)、THF(90mL)、メタノール(30mL)、水(30mL)、水酸化リチウム1水和物(441mg、10.53mmol)を入れ、90度で3時間撹拌した。室温に冷却後、1M塩酸(50mL)を加え、析出した固体を濾取し、これを水、続けてヘキサンで洗浄し、真空下乾燥を行い、無色の固体として化合物6を得た(収量1.36g、収率86%)。エレクトロクロミック化合物6のMSスペクトルを測定したところ、理論値900.41、実測値900.50であり、下記構造式(VI)で示されるエレクトロクロミック化合物6であることが確認された。
【0145】
【0146】
(実施例7)
<エレクトロクロミック化合物7の作製例7>
下記スキームに従って、エレクトロクロミック化合物7の合成を行った。
【化51】
【0147】
-中間体7-1の合成-
中間体2-2(1.54g、2.2mmol)、エチル-4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸(2.66g、11.0mmol、炭酸カリウム(1.82g)、DMF(24mL)をフラスコに入れ、80℃で7時間撹拌した。次に、室温まで冷却した後、水、酢酸エチルを加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄、続けて硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濃縮した残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:トルエン→トルエン/酢酸エチル)で精製を行い、無色の固体として中間体7-1を得た(収量2.07g、収率85%)。
【0148】
-エレクトロクロミック化合物7の合成-
フラスコに前記中間体7-1(2.07g、1.87mmol),THF(90mL)、メタノール(30mL)、水(30mL)、水酸化リチウム一水和物(441mg、10.53mmol)を入れ、90℃で3時間撹拌した。次に、室温に冷却後、1M塩酸(50mL)を加え、析出した固体を濾取し、これを水、続けてヘキサンで洗浄し、真空下乾燥を行い、無色の固体としてエレクトロクロミック化合物7を得た(収量1.57g、収率80%)。エレクトロクロミック化合物7のMSスペクトルを測定したところ、理論値1052.48, 実測値1052.55であり、下記構造式(VII)で示されるエレクトロクロミック化合物7であることが確認された。
【0149】
【0150】
(実施例8)
<エレクトロクロミック化合物8の作製例8>
下記スキームに従って、エレクトロクロミック化合物8の合成を行った。
【化53】
【0151】
フラスコに前記中間体2-1(3.92g、10mmol)、3-(4-ブロモフェニル)プロピオン酸メチル(4.86g、20mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド(3.84g、40mmol)、酢酸パラジウム(67mg、0.3mmol)、及びトリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(261mg、0.9mmol)を入れ、アルゴンガスで置換した後、アルゴンガスで脱気したオルトキシレン(40mL)を加えて、115℃で3時間加熱撹拌を行った。反応溶液を室温に戻し、セライト濾過を行った。次に、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:中性シリカゲル、移動相:トルエン)で精製を行い、淡黄色の固体として、中間体8-1を得た(収量5.23g、収率73%)。
【0152】
-エレクトロクロミック化合物8の合成-
フラスコに前記中間体8-1(1.43g、2mmol)、THF(90mL)、メタノール(30mL)、水(30mL)、水酸化リチウム一水和物(441mg、10.53mmol)を入れ、90℃で3時間撹拌した。次に、室温に冷却後、1M塩酸(50mL)を加え、析出した固体を濾取し、これを水、続けてヘキサンで洗浄し、真空下乾燥を行い、無色の固体として化合物8を得た(収量1.18g、収率86%)。エレクトロクロミック化合物8のMSスペクトルを測定したところ、理論値688.83、実測値688.88であり、下記構造式(VIII)で示されるエレクトロクロミック化合物8であることが確認された。
【0153】
【0154】
(実施例9)
<エレクトロクロミック表示素子1の作製例1>
-第一の電極、及びエレクトロクロミック層の作製-
第一の電極としてのスズをドープした酸化インジウム(ITO)導電膜付きガラス基板(40mm×40mm、厚み:0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上に、酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和電工セラミックス株式会社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜を形成した。前記酸化チタン粒子膜に実施例1で作製した前記例示化合物1を含有する2質量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を塗布液としてスピンコート法により塗布し、120℃で10分間アニール処理を行うことによって酸化チタン粒子表面に例示化合物1のエレクトロクロミック化合物を吸着させた平均厚みが1.0μmのエレクトロクロミック層を形成した。
【0155】
-第二の電極上への劣化防止層の形成-
第二の電極としてのITO導電膜付きガラス基板(40mm×40mm、厚み:0.7mm、ITO膜厚:約100nm)に、劣化防止層として酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム株式会社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、平均厚みが1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
【0156】
-エレクトロクロミック表示素子1の作製-
1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名:IRGACURE184、BASFジャパン株式会社製)5質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名:PEG400DA、日本化薬株式会社製)100質量部、及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(メルク社製)50質量部からなる電解質液を得た。得られた電解質液をマイクロピペットで30mg測り取り、前記劣化防止層を有する前記ITO導電膜付きガラス基板に対して滴下した。その上に、電極の引き出し部分があるように、エレクトロクロミック層を有するITO導電膜付きガラス基板を貼り合せ、貼り合せ素子を作製した。前記貼り合せ素子をUV(波長250nm)照射装置(商品名:SPOT CURE、ウシオ電機株式会社製)により10mWで60秒間照射した。以上により、エレクトロクロミック表示素子1を作製した。
【0157】
<応答速度>
作製したエレクトロクロミック表示素子1について、-2Vの電圧を1秒間印加して発色させた。これに重水素タングステンハロゲン光(商品名:DH-2000、オーシャンオプティクス株式会社製)を照射し、透過した光をスペクトロメータ(商品名:USB4000、オーシャンオプティクス株式会社製)で検出し、透過スペクトルを測定した。そのときの可視領域(400nm以上800nm以下)の透過率が最小となる波長をλmaxとした。その時の透過率を、下記基準で評価した。結果を表1に示した。
[評価基準]
○:λmaxの透過率が30%未満である場合
×:λmaxの透過率が30%以上である場合
【0158】
<繰り返し耐久性>
作製したエレクトロクロミック素子1について、-2Vで5秒間、+1.5Vで5秒間の発消色駆動を500回繰り返した。そのときの可視領域(400nm以上800nm以下)の吸収極大をλmaxとした。その時の吸光度変化をスペクトロメータ(商品名:USB4000、オーシャンオプティクス株式会社製)で測定し、下記基準で評価した。結果を表1に示した。
-評価基準-
◎:λmaxの吸光度が初期状態に比べて90%以上である場合
○:λmaxの吸光度が初期状態に比べて80%以上90%未満である場合
△:λmaxの吸光度が初期状態に比べて50%以上80%未満である場合
×:λmaxの吸光度が初期状態に比べて50%未満である場合
【0159】
<耐光性>
作製したエレクトロクロミック素子1について、-2Vで5秒間、+1.5Vで5秒間の発消色駆動を500回繰り返し、その間、可視光(フィルタ;UV、IR、熱線カット:光量;50000Lx)を照射し続け、可視光の照射前後のλmaxの吸光度変化をスペクトロメータ(商品名:USB4000、オーシャンオプティクス株式会社製)で測定し、下記基準で耐光性を評価した。結果を表1に示した。
-評価基準-
○:照射後のλmaxの吸光度が照射前のλmaxと比較して80%以上
△:照射後のλmaxの吸光度が照射前のλmaxと比較して50%以上80%未満
×:照射後のλmaxの吸光度が照射前のλmaxと比較して50%未満
【0160】
(実施例10~29)
例示化合物1で示されるエレクトロクロミック化合物1を、表1に示す例示化合物で示されるエレクトロクロミック化合物に変更した以外は、実施例9と同様にして、実施例10~29のエレクトロクロミック表示素子2~21を作製した。実施例9と同様にして、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を評価した。結果を表1に示す。
【0161】
(比較例1)
例示化合物1の前記エレクトロクロミック化合物1を、Org.Electron.2014,15,428-434.に記載の下記構造式(IX)で示される化合物に変更した以外は、実施例9と同様にして、比較例1のエレクトロクロミック表示素子を作製した。実施例9と同様にして、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を評価した。結果を表1に示す。
【0162】
【0163】
(比較例2)
例示化合物1の前記エレクトロクロミック化合物1を下記構造式(X)で示される化合物に変更した以外は、実施例9と同様にして、比較例2のエレクトロクロミック表示素子を作製した。実施例9と同様にして、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を評価した。結果を表1に示した。
【0164】
【0165】
(比較例3)
例示化合物1の前記エレクトロクロミック化合物1を下記構造式(XI)で示される化合物に変更した以外は、実施例9と同様にして、比較例3のエレクトロクロミック表示素子を作製した。実施例9と同様にして、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を評価した。結果を表1に示した。
【0166】
【0167】
(比較例4)
第一の電極としてのスズをドープした酸化インジウム(ITO)導電膜付きガラス基板(40mm×40mm、厚み:0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上に、下記構造式(XIII)50質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名:IRGACURE184、BASFジャパン株式会社製)5質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名:PEG400DA、日本化薬株式会社製)100質量部、及びメチルエチルケトン900質量部からなるエレクトロクロミック組成物をスピンコート法により塗布し、UV(波長250nm)照射装置(商品名:SPOT CURE、ウシオ電機株式会社製)により10mWで60秒間照射した。以上により、エレクトロクロミック層を形成した。前記エレクトロクロミック層に変更した以外は、実施例9と同様にして、比較例4のエレクトロクロミック表示素子を作製した。実施例9と同様にして、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を評価した。結果を表1に示した。
【0168】
【0169】
【0170】
前記表1より、従来公知の比較化合物を用いた比較例1~4の場合では、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性のいずれかが不満足な素子が提供されるのに対して、本発明のエレクトロクロミック化合物を用いることで、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を兼ね備えたエレクトロクロミック素子を提供できることが分かった。
このことからR1からR4の置換基の有無や、そのアルキル鎖長が電気特性に大きく影響していることが見出せる。加えて、R5からR8の置換基の有無も電気特性に大きく影響していることも見出せる。おそらく、比較例1~4の化合物は電気的に活性な部分が残存しているのではないかと推測される。
【0171】
(実施例30)
―担持粒子を用いない形態―
実施例9の-第一の電極、及びエレクトロクロミック層の作製-において、ITO基板表面に酸化チタンを形成しない以外は実施例9と同様にして、実施例1で合成したエレクトロクロミック化合物1を含有する2質量%DMF溶液を塗布し、エレクトロクロミック表示素子を作製し、実施例9と同様にして、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を評価した。結果を表2に示す。
【0172】
(実施例31~50)
実施例30の例示化合物1で示されるエレクトロクロミック化合物1を、表2に示す例示化合物で示されるエレクトロクロミック化合物2~21に変更した以外は、実施例30と同様にして、実施例31~50のエレクトロクロミック表示素子31~50を作製した。実施例30と同様にして、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を評価した。結果を表2に示した。
【0173】
(比較例5~7)
実施例30の例示化合物1で示されるエレクトロクロミック化合物1を、比較例1~3で用いた化合物に置き換えた以外は、実施例30と同様にして、比較例5~7のエレクトロクロミック表示素子を作製した。実施例30と同様にして、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を評価した。結果を表2に示した。
【0174】
【0175】
前記表2より、従来公知の比較化合物を用いた比較例5~7の場合では、応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性のいずれかが不満足な素子が提供されるのに対して、本発明のエレクトロクロミック化合物を用いることで、酸化チタンなどの担持粒子を用いない場合においても応答速度、繰り返し耐久性、及び耐光性を兼ね備えたエレクトロクロミック素子を提供できることが分かる。
このことからR1からR4の置換基の有無や、そのアルキル鎖長が電気特性に大きく影響していることが見出せる。加えて、R5からR8の置換基の有無も電気特性に大きく影響していることも見出せる。
【0176】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(I)で示されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物である。
[一般式(I)]
【化59】
(ただし、前記一般式(I)中、R
1からR
28は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、或いは水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示し、R
1からR
28のうち少なくとも一つは、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す)
<2> 一般式(I)中、R
1からR
4から選択される少なくとも一つが、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す前記<1>に記載のエレクトロクロミック化合物である。
<3> 一価の有機基が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はヘテロアリールオキシ基である前記<1>から<2>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<4> 一般式(I)中、R
1からR
4における水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基の数が、1つ以上2つ以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<5> 一般式(I)中、R
9からR
12が、いずれも水素原子を示す前記<1>から<4>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<6> 一般式(I)中、R
5からR
8が、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示す前記<1>から<5>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<7> 一般式(I)中、R
1からR
4が、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、或いは前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す前記<1>から<6>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
(ただし、前記一般式(I)中、R
1からR
4の少なくとも一つは、前記水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基を示す)
<8> 水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基が、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、スルホニル基、シリル基、又はシラノール基である前記<1>から<7>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<9> 水酸基に対して直接的に又は間接的に結合することができる官能基が、アルキル基、アリール基、又はアルキル基で置換されたアリール基を含む構造を有する前記<1>から<8>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物と、前記エレクトロクロミック化合物と結合又は吸着する導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体と、を含有することを特徴とするエレクトロクロミック組成物である。
<11> 第一の電極と、第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に電解質と、を有するエレクトロクロミック表示素子であって、
前記第一の電極が、前記<1>から<10>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミック組成物を有することを特徴とするエレクトロクロミック表示素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0177】
【非特許文献】
【0178】
【文献】Chem.Mater.2006,18,5823-58259.
【文献】Org.Electron.2014,15,428-434.
【文献】Advanced Functional Material,第18巻,第3966ページ,2008年
【符号の説明】
【0179】
4 エレクトロクロミック化合物