(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/304 611A
(21)【出願番号】P 2021072089
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2021-08-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑宜
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-169694(JP,A)
【文献】特開平09-266186(JP,A)
【文献】特表2018-536991(JP,A)
【文献】特開2001-044154(JP,A)
【文献】特開2000-12411(JP,A)
【文献】特開2018-78260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの製造方法であって、
原料ウェーハの表裏面を研削加工して、2μm
2当たりの算術表面粗さSaが10nm以下のウェーハを得る研削工程と、
前記研削工程により得られたウェーハを、片面当たり1μm以下のエッチング代での等方性の全面ドライエッチングに供して、前記研削工程で導入された前記ウェーハの表裏面の加工歪層を除去するドライエッチング工程と、
前記ドライエッチング工程後に、前記ウェーハの両面を片面当たり3μm以下の研磨代で研磨する両面研磨工程と
を含むことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記ドライエッチング工程において、エッチングレートを0.3μm/分以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの製造方法
。
【請求項3】
前記ドライエッチング工程において、前記等方性の全面ドライエッチングの前処理として、オゾンガスによる表裏面酸化処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンウェーハ製造方法。
【請求項4】
前記ドライエッチング工程において、前記等方性の全面ドライエッチングの後処理として、オゾンガスによる表裏面酸化処理を行うことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のシリコンウェーハ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用シリコンウェーハの製造方法において、特に平坦化する技術として研削(グライディング)加工が用いられている。この研削加工後のシリコンウェーハ表面には、機械的な研削加工による加工歪層が形成されており、加工歪層を除去するために混酸やアルカリの液によるエッチング加工が行われている。
【0003】
しかしながら、この混酸エッチング加工ではウェーハ全面を均一にエッチングすることが困難であるため、平坦化の悪化が問題となっている。
【0004】
更にアルカリによるエッチングにおいては、異方性エッチングにより面粗さが悪化したり深いピットが形成される。この面粗さや深いピットを除去するために次工程である研磨工程において、多くの研磨代が必要となり、生産性の低下が問題となっている。
【0005】
加えて混酸やアルカリによるエッチングでは、多量の化学薬品を使用するため、排ガス処理や排水処理等の環境負荷やコスト増大が課題となっている。
【0006】
特許文献1には、研削後にプラズマアシストエッチングを行い、更に局所的なプラズマアシストエッチングによって平坦度の修正後、その後に研磨することで平坦度の良いシリコンウェーハの製造を行うことが記載されている。
特許文献2には、片面をプラズマエッチングする方法であって、事前に測定したシリコンウェーハ厚さ分布に応じて、プラズマエッチング代を調整して平坦化する技術が記載されている。
特許文献3は、スライス、面取り工程後にシリコンウェーハの形状測定を行い、測定結果に基づいて裏面側をプラズマエッチングで平坦化して、表面側の研削加工を行い、更に表面側を研磨するウェーハ製造方法を開示している。
その他、特許文献4~10にも、半導体ウェーハの製造方法において、プラズマを用いた乾式エッチング、ドライエッチング又は気相エッチングを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-12411号公報
【文献】特開2001-185537号公報
【文献】特開2004-63883号公報
【文献】特開平9-260314号公報
【文献】特開2001-244240号公報
【文献】特開2008-153404号公報
【文献】特開平9-266186号公報
【文献】特開2001-110767号公報
【文献】特開2019-110213号公報
【文献】特開2019-169694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のウェーハプロセスは、研削後に不純物や加工歪除去のために混酸またはアルカリによるエッチング処理を行っている。しかし、混酸エッチングでは、不均一なエッチングによる平坦度の悪化、アルカリエッチングでは面粗さ悪化や深いピットが形成され、両面研磨の研磨代増大による平坦度悪化の要因になっている。つまり、混酸及びアルカリエッチングによる平坦度悪化が課題となっている。
【0009】
加えて、このウェットエッチングでは多量の薬品と排ガスや排水処理により、コストと環境負荷の問題を抱えている。
【0010】
また、混酸及びアルカリエッチングの代わりにドライエッチングを用いる場合であっても、十分な研磨代の低減による生産性の向上や高い平坦度の達成ができていないのが実情である。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、平坦度の高いウェーハ製造が可能となるシリコンウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、シリコンウェーハの製造方法であって、
原料ウェーハの表裏面を研削加工して、2μm2当たりの算術表面粗さSaが10nm以下のウェーハを得る研削工程と、
前記研削工程により得られたウェーハを、片面当たり1μm以下のエッチング代での等方性の全面ドライエッチングに供して、前記研削工程で導入された前記ウェーハの表裏面の加工歪層を除去するドライエッチング工程と、
前記ドライエッチング工程後に、前記ウェーハの両面を片面当たり3μm以下の研磨代で研磨する両面研磨工程と
を含むことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法を提供する。
【0013】
このような本発明のウェーハの製造方法によれば、研削後の良好な平坦度を悪化させること無く、加工歪層の除去が可能となり、研磨代も低減できるため、平坦度の高いウェーハを高い生産性で製造することが可能となる。同時に、ウェットエッチングを行う必要がないため、混酸やアルカリを用いたエッチングで使用する多量の薬品・排ガスや排水処理にかかるコスト、環境負荷が低減できる。
【0014】
前記ドライエッチング工程において、エッチングレートを0.3μm/分以下とすることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、研削後の良好な平坦度の悪化をより確実に防止しながら、平坦度の高いウェーハ製造が可能となる。
【0016】
前記ドライエッチング工程において、前記等方性の全面ドライエッチングの前処理として、オゾン(O3)ガスによる表裏面酸化処理を行うことが好ましい。
【0017】
このように等方性の全面ドライエッチング前に、オゾン雰囲気にて表裏面酸化処理することにより、ウェーハの表裏面に付着した有機物を簡易的に除去できる。
【0018】
前記ドライエッチング工程において、前記等方性の全面ドライエッチングの後処理として、オゾン(O3)ガスによる表裏面酸化処理を行うことが好ましい。
【0019】
このように等方性の全面ドライエッチングの後に、オゾン雰囲気にて表裏面酸化処理することにより、ウェーハの表裏面に酸化保護膜を簡易的に形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明のウェーハの製造方法によれば、研削後の良好な平坦度を悪化させること無く、加工歪層の除去が可能となり、平坦度の高いウェーハ製造が高い生産性で可能となる。同時に、ウェットエッチングを行う必要がないため、混酸やアルカリを用いたエッチングで使用する多量の薬品・排ガスや排水処理にかかるコスト、環境負荷が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のウェーハの製造方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述のように、平坦度の高いウェーハ製造が可能となるシリコンウェーハの製造方法の開発が求められていた。
【0023】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、研削工程によって2μm2当たりの算術表面粗さSaが10nm以下のウェーハを得て、このウェーハを、片面当たり1μm以下のエッチング代での等方性の全面ドライエッチングに供して、加工歪層を除去し、次いで、両面研磨工程においてウェーハの両面を片面当たり3μm以下の研磨代で研磨することにより、研削後の良好な平坦度を悪化させること無く、加工歪層の除去が可能となり、平坦度の高いウェーハ製造が高い生産性で可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0024】
即ち、本発明は、シリコンウェーハの製造方法であって、
原料ウェーハの表裏面を研削加工して、2μm2当たりの算術表面粗さSaが10nm以下のウェーハを得る研削工程と、
前記研削工程により得られたウェーハを、片面当たり1μm以下のエッチング代での等方性の全面ドライエッチングに供して、前記研削工程で導入された前記ウェーハの表裏面の加工歪層を除去するドライエッチング工程と、
前記ドライエッチング工程後に、前記ウェーハの両面を片面当たり3μm以下の研磨代で研磨する両面研磨工程と
を含むことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法である。
【0025】
なお、特許文献1~10には、半導体ウェーハの製造方法において、プラズマを用いた乾式エッチング、ドライエッチング又は気相エッチングを行う技術が開示されているが、いずれの文献も、研削工程によって2μm2当たりの算術表面粗さSaが10nm以下のウェーハを得て、このウェーハを、片面当たり1μm以下のエッチング代での等方性の全面ドライエッチングに供して、加工歪層を除去し、次いで、両面研磨工程においてウェーハの両面を片面当たり3μm以下の研磨代で研磨することを記載も示唆もしていない。
【0026】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
本発明は、高い平坦度が求められる半導体用シリコンウェーハの製造方法において、研削加工後に行うドライエッチング工程を含む半導体用シリコンウェーハの製造方法に関する。
【0028】
本発明のウェーハの製造方法は、
図1に示す、研削工程と、ドライエッチング工程と、両面研磨工程とを含む。本発明のウェーハの製造方法は、例えば
図1に示すように、スライス工程、面取り工程、鏡面面取り研磨工程、片面研磨工程、及び仕上洗浄工程を更に含むこともできるが、これらの工程は任意である。
【0029】
以下、各工程をより詳細に説明する。
【0030】
スライス工程は、例えば、シリコンインゴットをワイヤーソーによって、円盤状のシリコンウェーハへと切断加工を行う工程である。
【0031】
面取り工程は、加工工程においてスライスされて得られたシリコンウェーハのエッジ部の欠けや割れを防止するために、ウェーハ外周部を例えばダイヤモンド砥粒が電着された砥石にて、面取り加工を行う工程である。例えばこの面取り加工により、続く研削工程で研削加工する原料ウェーハを得ることができる。
【0032】
研削工程は、スライス工程でシリコンウェーハ表裏面に形成された加工歪層の除去と平坦化を目的とした工程である。研削工程では、例えばダイヤモンドを電着した砥石にて、原料ウェーハの表裏面を研削加工し、2μm2当たりの算術表面粗さSaが10nm以下のウェーハを得る。研削加工は、片面ずつ行う方式と両面を同時に行う方式があるが、どちらでも構わない。砥石は♯8000(8000番手)以上のものを使用することが好ましい。砥石の番手の上限は、特に限定されないが、研削加工時間を考慮して例えば♯12000(12000番手)とすることができる。研削工程により得られるウェーハの2μm2当たりの算術表面粗さSaは、小さければ小さい程よいが、例えば3nm以上とすることができる。同時に、研削工程により得られるウェーハの平坦度はGBIRで表した場合、例えば0.5μm以下とすることができる。一方、研削工程により得られるウェーハの2μm2当たりの算術表面粗さSaを10nmよりも大きくすると、以下に詳細に説明するドライエッチング工程でのエッチング代又は研磨工程での研磨代をより多く取る必要があるため、研削後の良好な平坦度を維持することができない。
【0033】
ドライエッチング工程では、研削工程により得られたウェーハを、等方性の全面ドライエッチングに供して、研削工程で導入されたウェーハの表裏面の加工歪層を除去する。例えば、等方性の全面ドライエッチングでは、エッチングガスを高周波で励起してプラズマを発生させ、研削工程でシリコンウェーハ表裏面に形成された加工歪層の除去を行う。ここで、プロセスガスとしては、例えばフッ素ラジカルを発生させるガス(例えば、CF4、SF6)を用いることができる。本発明のウェーハの製造方法のドライエッチング工程では、局所的ドライエッチングではなく、等方性の全面ドライエッチングを行う。また、等方性の全面ドライエッチングでのエッチング代は片面当たり1μm以下とする。エッチング代が小さいため、研削後の良好な平坦度を維持できる。例えば、ドライエッチング工程における平坦度の悪化はGBIRで0.1μm以下とすることができる。また、等方性の全面ドライエッチングであるため局所的なラージピットの発生もないエッチング(加工歪除去)が可能となる。この場合、ドライエッチング工程において、エッチングレートを、0.3μm/分以下とすることが好ましい。一方、ウェーハの全面に局所的ドライエッチングを行なったり、等方性の全面ドライエッチングでのエッチング代を1μmよりも大きくしたりすると、研削後の良好な平坦度を維持できない。
【0034】
また、
図1に示すように、ドライエッチング工程において、等方性の全面ドライエッチング前には、シリコンウェーハ表裏面の有機物除去のために、オゾンガスによる表裏面酸化処理を行ってもよい。このオゾンガス処理によってシリコンウェーハ表裏面に付着した有機物の除去を行い、面内にムラの無いドライエッチングが可能となる。例えば、エッチング装置(チャンバー)外からエッチング装置内にオゾンガスを導入して、エッチング装置内をオゾン雰囲気することができる。或いは、エッチング装置内を酸素雰囲気とし、酸素雰囲気中でプラズマを発生させ、オゾンを発生させても良い。更に、同じく
図1に示すように、ドライエッチング工程において、ドライエッチング後には、シリコンウェーハ表裏面に保護膜として酸化膜を形成させるために、オゾンガスによる表裏面酸化処理を行ってもよいし、或いはエッチング装置内を酸素雰囲気とし、酸素雰囲気中でプラズマを発生させ、オゾンを発生させてもよい。この処理は、ドライエッチング前に行なうことができるオゾンガスによる表裏面酸化処理と技術的方法は同じである。このオゾン処理によって、シリコンウェーハ表裏面に安定した酸化膜が保護膜として形成され、後工程におけるシリコンウェーハ表裏面品質の悪化を防止することが可能となる。なお、オゾンガスによる表裏面酸化処理は、任意であり、必ずしも行わなくても良い。
【0035】
続く両面研磨工程では、ウェーハの両面を片面当たり3μm以下の研磨代で研磨する。例えば、ドライエッチングされたシリコンウェーハの両面を研磨布と研磨スラリにより同時に研磨することができる。この工程により、シリコンウェーハの表裏面を研磨面に加工するのと同時に平坦化を行う。先に説明したSaが10nm以下となる研削工程及び1μmのエッチング代のドライエッチング工程を行うことにより、この両面研磨工程での研磨代を3μm以下としても、研削後の良好な平坦度を維持しつつ表裏面を研磨面にすることができる。これらにより生産性を向上させることができる。
【0036】
鏡面面取り研磨工程では、両面研磨されたウェーハの面取り部を研磨布と研磨スラリを用いて鏡面加工をして鏡面化を行う。
【0037】
片面研磨工程では、両面研磨されたシリコンウェーハの表面の研磨布と研磨スラリを用いて片面のみの仕上研磨を行う。
【0038】
仕上洗浄工程では、シリコンウェーハ表面に付着しているパーティクルや金属不純物の除去を行う。洗浄方法は、バッチ式でも枚葉スピン方式でも構わない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(実施例)
実施例では、
図1に示したフロー図に従って、直径300mmのP型シリコン単結晶ウェーハを50枚製造した。本実施例に係わる半導体用シリコンウェーハの製造方法に関して以下に説明をする。
【0041】
スライス工程では、シリコン単結晶インゴットをワイヤソーを用いて円盤状のシリコンウェーハに切断した。切断されたシリコンウェーハ表面には、切断時に発生したうねりと加工歪層が20~30μm程度形成されていた。
【0042】
面取り工程では、切断されたシリコンウェーハの外周部をダイヤモンドが電着された3000番手の砥石で面取りを行い、面取り形状の形成と同時にウェーハ製造工程における欠けや割れを防止した。この面取り加工により、続く研削工程で研削加工する原料ウェーハを得た。
【0043】
研削工程では、スライス工程でシリコンウェーハ表面に形成された加工歪層の除去と平坦化を行った。具体的には、ダイヤモンドを電着した♯8000(8000番手)の砥石を使用して、原料ウェーハの表裏面の研削加工を片面ずつ行った。研削代は片面当たり15μmとした。研削工程における研削後ウェーハは、2μm2当たりの算術表面粗さSaの最大値が10nmであり、同時に平坦度はGBIRで0.5μm以下となった。加えて、研削工程で形成されたシリコンウェーハの表裏面の加工歪層は0.1μm以下であった。2μm2当たりの算術表面粗さSaは、MitsutoyoのSJ-410を用いて1mmのプロービングで測定した。また、平坦度の指標であるGBIRは、KLA製、WaferSightを用いて測定した。
【0044】
ドライエッチング工程では、研削工程でシリコンウェーハ表裏面に形成された加工歪層の除去を、高周波で励起させて発生させたエッチングガスのプラズマを用いた等方性の全面ドライエッチングで行った。ここでは、プロセスガスとして、フッ素ラジカルを発生させるガスであるCF4を用いた。ドライエッチング工程でのエッチング代は片面当たり1μm以下とし、エッチングレートは0.3μm/分以下とした。また、全面ドライエッチング前には、エッチング装置にオゾンガスを導入し、シリコンウェーハ表裏面の有機物の分解除去のためにオゾンガスによる表裏面酸化処理を行った。また、全面ドライエッチング後には、エッチング装置にオゾンガスを導入し、シリコンウェーハ表裏面に保護膜として酸化膜を形成させるためにオゾンガスによる表裏面酸化処理を行った。ウェーハ表裏面の付着有機物の分解やシリコンウェーハ表裏面を酸化するためのオゾンガス濃度は、20ppmとした。ドライエッチング工程における平坦度の悪化はGBIRで0.1μm以下であった。
【0045】
両面研磨工程では、ドライエッチングされたシリコンウェーハの表裏面を研磨布と研磨スラリにより同時に研磨した。シリコンウェーハの両面を研磨面に加工するのと同時に平坦化を行った。両面研磨工程での研磨代は片面当たり3μmとし、両面研磨後のシリコンウェーハの平坦度はGBIRで0.5μmとなった。
【0046】
鏡面面取り工程では、両面研磨されたウェーハの面取り部を研磨布と研磨スラリを用いて鏡面加工を行った。鏡面面取りによって、面取り部も加工歪の無い鏡面が得られた。
【0047】
仕上研磨工程では、両面研磨されたシリコンウェーハの表裏面の研磨布と研磨スラリを用いて片面のみの仕上研磨を行う。仕上研磨では、Haze面となった平滑な表面が得られた。
【0048】
仕上洗浄工程では、シリコンウェーハ表面に付着しているパーティクルや金属不純物の除去を行った。ここではバッチ式で行い、薬液はSC1とSC2を使用して洗浄した。
【0049】
(比較例1)
比較例1では、以下の手順で実施例と同じ枚数の半導体ウェーハを製造した。
【0050】
スライス工程と面取り工程は、実施例と同様とした。
【0051】
研削工程は、3000番手の砥石を用いたこと以外は、実施例と同様とした。研削工程における研削後ウェーハは、2μm2当たりの算術表面粗さSaが50nmであり、同時に平坦度はGBIRで0.5μmとなった。加えて、研削工程で形成されたシリコンウェーハの表裏面の加工歪層は0.5μmであった。
【0052】
エッチング工程は、研削工程でシリコンウェーハ表裏面に形成された加工歪層の除去を行うが、ここでは薬液によるウェットエッチングとしてHFとHNO3による混酸方式とで行った。混酸はHF容積1に対し、HNO3容積を2とした組成を用いた。混酸エッチングのエッチング代は片面当たり10μmとした。混酸エッチング後のGBIRの悪化量は3~4μm程度であった。
【0053】
両面研磨工程では、混酸エッチングされたシリコンウェーハの両面研磨を行った。混酸エッチングで悪化したGBIRを両面研磨で修正するためには、研磨代が片面当たり15μm必要となり、両面研磨後のシリコンウェーハの平坦度もGBIRで1.3μmとなった。
【0054】
鏡面面取り工程、片面研磨工程、及び仕上洗浄工程は、実施例と同様とした。
【0055】
(比較例2)
比較例2では、以下の手順で実施例と同じ枚数の半導体ウェーハを製造した。
【0056】
スライス工程、面取り工程、及び研削工程は比較例1と同様とした。
【0057】
エッチング工程は、薬液としてNaOHによるアルカリエッチングで行った。アルカリエッチング代は片面当たり10μmとした。アルカリエッチングでは表面粗さの悪化や深いピットが形成された。
【0058】
両面研磨工程では、アルカリエッチングされたシリコンウェーハの両面研磨を行った。アルカリエッチングで悪化した表面粗さの修正と深いピットの除去のため、研磨代が片面当たり13μm必要となり、両面研磨後のシリコンウェーハの平坦度もGBIRで0.9μmとなった。
【0059】
鏡面面取り工程、片面研磨工程、仕上洗浄工程は、実施例と同様とした。
【0060】
(比較例3)
比較例3では、研削工程を比較例1の研削工程と同様にして行ったこと、及び両面研磨工程において表面粗さの改善のために研磨代を片面当たり10μmとしたこと以外は実施例と同様にして、同じ枚数の半導体ウェーハを製造した。
【0061】
両面研磨後のシリコンウェーハの平坦度は、GBIRで0.7μmとなった。
【0062】
上記実施例、並びに比較例1、2及び3について、各工程の加工条件及び各工程後のウェーハの状態を、以下の表1にまとめる。
【0063】
【0064】
表1から明らかなように、実施例では、研削工程によって2μm2当たりの算術表面粗さSaが10nm以下のウェーハを得て、このウェーハを、片面当たり1μm以下のエッチング代での等方性の全面ドライエッチングに供して、加工歪層を除去し、次いで、両面研磨工程においてウェーハの両面を片面当たり3μm以下の研磨代で研磨することにより、研削後の良好な平坦度を悪化させること無く、加工歪層の除去が可能となり、平坦度の高いウェーハを高い生産性で製造することが可能となった。
【0065】
一方、混酸エッチングを行った比較例1は、平坦度の指標であるGBIRが悪化し、研削後の良好な平坦度を維持することができなかった。アルカリエッチングを行った比較例2では、深いピットの除去のため大きな研磨取り代が必要となり、生産性も低下した。
【0066】
また、研削工程によって2μm2当たりの算術表面粗さSaを10nmよりも大きくした比較例3では、両面研磨工程でより多くの研磨代が必要となり、その結果、生産性が低下すると共に、研削後の良好な平坦度を維持することができなかった。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【要約】
【課題】平坦度の高いウェーハ製造が可能となるシリコンウェーハの製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコンウェーハの製造方法であって、原料ウェーハの表裏面を研削加工して、2μm
2当たりの算術表面粗さSaが10nm以下のウェーハを得る研削工程と、前記研削工程により得られたウェーハを、片面当たり1μm以下のエッチング代での等方性の全面ドライエッチングに供して、前記研削工程で導入された前記ウェーハの表裏面の加工歪層を除去するドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、前記ウェーハの両面を片面当たり3μm以下の研磨代で研磨する両面研磨工程とを含むことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【選択図】
図1