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特許7028561レーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】レーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20220222BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20220222BHJP
【FI】
G01S7/40 139
G01S13/931
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017013715
(22)【出願日】2017-01-27
(65)【公開番号】P2018119935
(43)【公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-10-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥之
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隼
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-125598(JP,A)
【文献】特開2006-023236(JP,A)
【文献】特開2012-237724(JP,A)
【文献】特開平10-282229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0309165(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G08G 1/16
B60R 21/00-21/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、物標を検出するレーダ装置において、
前記レーダ装置に生じるブロッケージを電磁波が反射される反射型ブロッケージと、前記電磁波が減衰され、前記電磁波が反射されない減衰型ブロッケージとに分類した場合における前記反射型ブロッケージを検出する第1検出手段と、
前記減衰型ブロッケージを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段による検出結果を提示する提示手段と、
を有し、
前記第1検出手段が前記第2検出手段よりも先に検出動作を実行することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記第1検出手段は、前記レーダ装置の近接領域からの反射信号の有無によって前記反射型ブロッケージを検出することを特徴する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第2検出手段は、他のレーダ装置と重複する検出領域に前記物標が存在する場合に、自身が検出した前記物標からの反射信号と、前記他のレーダ装置が検出した前記物標からの反射信号の振幅を比較することで前記減衰型ブロッケージを検出することを特徴する請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
車両に搭載され、物標を検出するレーダ装置の制御方法において、
前記レーダ装置に生じるブロッケージを電磁波が反射される反射型ブロッケージと、前記電磁波が減衰され、前記電磁波が反射されない減衰型ブロッケージとに分類した場合における前記反射型ブロッケージを検出する第1検出ステップと、
前記減衰型ブロッケージを検出する第2検出ステップと、
前記第1検出ステップおよび前記第2検出ステップにおける検出結果を提示する提示ステップと、
を有し、
前記第1検出ステップが前記第2検出ステップよりも先に実行されることを特徴とするレーダ装置の制御方法。
【請求項5】
車両に搭載され、物標を検出するレーダ装置を複数有するレーダシステムにおいて、
前記レーダ装置に生じるブロッケージを電磁波が反射される反射型ブロッケージと、前記電磁波が減衰され、前記電磁波が反射されない減衰型ブロッケージとに分類した場合における前記反射型ブロッケージを検出する第1検出手段と、
自身が検出した反射信号と、他のレーダ装置が検出した反射信号に基づいて、前記減衰型ブロッケージを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段による検出結果を提示する提示手段と、
を有し、
前記第1検出手段が前記第2検出手段よりも先に検出動作を実行することを特徴とするレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スペクトラム拡散方式により物標の測距を行うレーダ装置であって、参照用PN信号を遅延器により2段階で遅延させ、遅延器により粗い距離分解能と細い距離分解能を確保し、比較器出力を最大とするようVCO周波数を制御して物標との相対速度を求めることで、干渉や妨害に強くなるレーダ装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-256936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示す技術では、レーダ装置が収容された車体の表面(例えば、バンパの表面)に着氷や着雪があったり、あるいは、ユーザがステッカ等を貼付したりした場合、検出感度が低下して物標を正確に検出できなくなる。そのような場合、どのような原因で物標を正確に検出できないかを知ることができないという問題点がある。
【0005】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、着氷、着雪、または、ステッカ等による検出感度の低下を検出することが可能なレーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、車両に搭載され、物標を検出するレーダ装置において、前記レーダ装置に生じるブロッケージを電磁波が反射される反射型ブロッケージと、前記電磁波が減衰される減衰型ブロッケージとに分類した場合における前記反射型ブロッケージを検出する第1検出手段と、前記減衰型ブロッケージを検出する第2検出手段と、前記第1検出手段および前記第2検出手段による検出結果を提示する提示手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、着氷、着雪、または、ステッカ等による検出感度の低下を検出することが可能となる。
【0007】
また、本発明は、前記第1検出手段は、前記レーダ装置の近接領域からの反射信号の有無によって前記反射型ブロッケージを検出することを特徴する。
このような構成によれば、ステッカ等を貼付されたことによる反射型ブロッケージの発生を確実に検出することができる。
【0008】
また、本発明は、前記第2検出手段は、他のレーダ装置と重複する検出領域に前記物標が存在する場合に、自身が検出した前記物標からの反射信号と、前記他のレーダ装置が検出した前記物標からの反射信号の振幅を比較することで前記減衰型ブロッケージを検出することを特徴する。
このような構成によれば、着氷または着雪による減衰型ブロッケージの発生を確実に検出することができる。
【0009】
また、本発明は、前記第1検出手段が前記第2検出手段よりも先に検出動作を実行することを特徴とする。
このような構成によれば、減衰型ブロッケージを反射型ブロッケージとして誤検出することを防止できる。
【0010】
また、本発明は、車両に搭載され、物標を検出するレーダ装置の制御方法において、前記レーダ装置に生じるブロッケージを電磁波が反射される反射型ブロッケージと、前記電磁波が減衰される減衰型ブロッケージとに分類した場合における前記反射型ブロッケージを検出する第1検出ステップと、前記減衰型ブロッケージを検出する第2検出ステップと、前記第1検出ステップおよび前記第2検出ステップにおける検出結果を提示する提示ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、着氷、着雪、または、ステッカ等による検出感度の低下を検出することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、車両に搭載され、物標を検出するレーダ装置を複数有するレーダシステムにおいて、前記レーダ装置に生じるブロッケージを電磁波が反射される反射型ブロッケージと、前記電磁波が減衰される減衰型ブロッケージとに分類した場合における前記反射型ブロッケージを検出する第1検出手段と、自身が検出した反射信号と、他のレーダ装置が検出した反射信号に基づいて、前記減衰型ブロッケージを検出する第2検出手段と、前記第1検出手段および前記第2検出手段による検出結果を提示する提示手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、着氷、着雪、または、ステッカ等による検出感度の低下を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、着氷、着雪、または、ステッカ等による検出感度の低下を検出することが可能なレーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るレーダシステムの実装例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るレーダシステムの構成例を示す図である。
図3図2に示すレーダ装置の詳細な構成例を示すブロック図である。
図4図3に示す制御・処理部の詳細な構成例を示すブロック図である。
図5】車体に着氷または着雪が生じた場合の状態を示す図である。
図6図5の着氷等を検出する動作を説明するための図である。
図7図5の場合における送信信号および受信信号の関係を示す図である。
図8】車体にステッカが貼付された場合の状態を示す図である。
図9図8の場合における送信信号および受信信号の関係を示す図である。
図10】本発明の実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るレーダシステムの実装例を示す図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係るレーダシステムを構成するレーダ装置10-1,10-2は、車両Cの後部の左右にそれぞれ配置されている。これらのレーダ装置10-1,10-2は、車両Cの後方に検出領域を有し、検出領域に物標(例えば、他の車両、自転車、人等)が存在し、かつ、物標が自車両に接触または衝突する可能性がある場合には、警報を発する。
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係るレーダシステムの構成例を示す図である。本実施形態に係るレーダシステムは、ECU(Electric Control Unit)30、レーダ装置10-1,10-2を有し、これらECU30およびレーダ装置10-1,10-2が通信線41,42によって接続されて構成される。
【0017】
ここで、ECU30は、車両の各部を制御するとともに、レーダ装置10-1,10-2から通信線41,42を介して供給される情報に基づいて物標を検出し、必要に応じて警告等を行う。
【0018】
レーダ装置10-1,10-2は、検出対象である物標に対してパルス信号を照射し、反射信号に基づいて物標を検出し、通信線41,42を介してECU30に伝える。また、レーダ装置10-1,10-2は、通信線41,42によって接続され、例えば、一方がマスタとして動作し、他方がスレーブとして動作する。
【0019】
図3は、図2に示すレーダ装置10-1,10-2の構成例を示す図である。なお、レーダ装置10-1,10-2は同様の構成とされているので、以下では、これらをレーダ装置10として説明する。
【0020】
図3に示すように、レーダ装置10は、局部発振部11、送信部12、制御・処理部15、受信部16、および、A/D(Analog to Digital)変換部21を主要な構成要素としている。
【0021】
ここで、局部発振部11は、所定の周波数のCW(Continuous Wave)信号を生成して、送信部12と受信部16に供給する。
【0022】
送信部12は、変調部13および送信アンテナ14を有し、局部発振部11から供給されるCW信号を、変調部13によってパルス変調し、送信アンテナ14を介して物標に対して送信する。
【0023】
送信部12の変調部13は、制御・処理部15によって制御され、局部発振部11から供給されるCW信号をパルス変調してパルス信号を生成して出力する。送信アンテナ14は、変調部13から供給されるパルス信号を、物標に向けて送信する。
【0024】
制御・処理部15は、変調部13、利得可変増幅部19、および、アンテナ切換部18を制御するとともに、A/D変換部21から供給される受信データに対して演算処理を実行することで、物標を検出する。
【0025】
図4は、図3に示す制御・処理部15の詳細な構成例を示すブロック図である。図4に示すように、制御・処理部15は、制御部15a、処理部15b、通信部15c、および、検出部15dを有している。ここで、制御部15aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成され、ROMおよびRAMに記憶されているデータに基づいて装置の各部を制御する。処理部15bは、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等によって構成され、A/D変換部21から供給されるデジタル信号に対する処理を実行し、物標を検出する。通信部15cは、通信線41,42を介して他のレーダ装置との間で情報を授受する。検出部15dは、後述するようにブロッケージの有無を検出する。
【0026】
図3に戻る。受信部16は、受信アンテナ17、アンテナ切換部18、利得可変増幅部19、および、復調部20を有し、送信アンテナ14から送信され、物標によって反射された信号を受信して復調処理を施した後、A/D変換部21に出力する。
【0027】
受信部16の受信アンテナ17は、複数のアンテナ(例えば、4つのアンテナ)によって構成され、送信アンテナ14から送信され、物標によって反射された信号を受信し、アンテナ切換部18に供給する。アンテナ切換部18は、制御・処理部15の制御部15aによって制御され、受信アンテナ17のいずれか1つを選択して、受信信号を利得可変増幅部19に供給する。利得可変増幅部19は、制御・処理部15の制御部15aによって利得が制御され、アンテナ切換部18から供給される受信信号を所定の利得で増幅して復調部20に出力する。復調部20は、利得可変増幅部19から供給される受信信号を、局部発振部11から供給されるCW信号を用いて復調して出力する。
【0028】
A/D変換部21は、復調部20から供給される受信信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して制御・処理部15に供給する。
【0029】
(B)実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作を説明する。以下では、図5図9を参照して本発明の実施形態の動作の概略を説明した後に、図10を参照して詳細な動作について説明する。
【0030】
図5は、レーダ装置10-1が収容されている車体の一部に着氷または着雪が生じた状態を示している。この例では、車両Cのレーダ装置10-1が収容されている部分(この例ではバンパB)の表面に着氷(または着雪)sが生じている。なお、レーダ装置10-2が収容されている部分の表面には着氷は生じていない。
【0031】
図6は、図5に示すように、レーダ装置10-1が収容された車両の表面に着氷を有する場合に、この着氷を検出する場合の動作を説明するための図である。図6の例では、レーダ装置10-1は検出領域Dlを有し、レーダ装置10-2は検出領域Drを有している。また、これらのレーダ装置10-1,10-2は、相互に重複する検出領域である重複検出領域Doを有している。
【0032】
図6のような検出領域を有する場合に、重複検出領域Do内に物標Toが存在する場合を想定する。図7は、図6に示すような場合に、レーダ装置10-1,10-2の送信信号と受信信号の関係を示している。なお、図7(A)は着氷を有しないレーダ装置10-2の送信信号と受信信号の関係を示し、図7(B)は着氷を有するレーダ装置10-1の送信信号と受信信号の関係を示している。なお、図7において横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示している。
【0033】
着氷を有しないレーダ装置10-2では、図7(A)に示すように、送信信号が送信されると、所定の時間が経過した後に、物標Toによって反射された反射信号が受信信号として検出される。また、着氷を有するレーダ装置10-1では、図7(B)に示すように、送信信号が送信されると、所定の時間が経過した後に、物標Toによって反射された反射信号が受信信号として検出される。ところで、着氷を有しないレーダ装置10-2の受信信号の振幅A1と、着氷を有するレーダ装置10-1の受信信号の振幅A2とを比較すると、A1>A2の関係が存在する。すなわち、着氷を有するレーダ装置10-1では、送受信の際に氷によって電磁波が減衰されるので、着氷を有しないレーダ装置10-2に比較すると、受信信号の振幅が小さくなる。
【0034】
そこで、本実施形態では、着氷または着雪等のように、電磁波を減衰するブロッケージ(以下では適宜「減衰型ブロッケージ」と称する)の有無を判定するために、図6に示すように、重複検出領域Do内に物標Toが存在する場合、物標Toに対して信号を送信し、受信信号の振幅A1,A2に対して、例えば、J=|A1-A2|/(A1+A2)を計算し、得られたJの値が所定の閾値Thよりも大きい場合(J>Thの場合)には、レーダ装置10-1,10-2の一方に減衰型ブロッケージが生じていると判定し、例えば、ユーザにブロッケージの発生を通知する。なお、前述した式の右辺の||は絶対値を算出することを示している。
【0035】
つぎに、図8は、レーダ装置10-1が収容されている車体の一部に電磁波を反射する部材(例えば、アルミ製のステッカ)が貼付された状態を示している。この例では、車両Cのレーダ装置10-1が収容されている部分(この例ではバンパB)の表面にステッカrが貼付されている。なお、レーダ装置10-2が収容されている部分の表面にはステッカは貼付されていない。
【0036】
図9は、図8に示すような場合に、レーダ装置10-1,10-2の送信信号と受信信号の関係を示している。なお、図9(A)はステッカ等が貼付されていないレーダ装置10-2の送信信号と受信信号の関係を示し、図9(B)はステッカ等が貼付されたレーダ装置10-1の送信信号と受信信号の関係を示している。なお、図9において横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示している。
【0037】
ステッカ等が貼付されていないレーダ装置10-2では、図9(A)に示すように、送信信号が送信されると、所定の時間が経過した後に、物標が存在する場合には、物標によって反射された反射信号が受信信号として検出される。また、ステッカ等が貼付されたレーダ装置10-1では、図9(B)に示すように、送信信号が送信されると、送信信号の一部はステッカ等によって反射され、反射信号として受信される。この結果、図9(B)に示すように、図8の距離d(レーダ装置10-1とステッカrとの間の距離)に対応するタイミングで反射信号が受信される。
【0038】
そこで、本実施形態では、ステッカ等のように、電磁波を反射するブロッケージ(以下では適宜「反射型ブロッケージ」と称する)の有無を判定するために信号を送信し、バンパBの表面に対応する距離dのタイミングに反射波が現れている場合には、当該反射波が現れた側のレーダ装置に反射型のブロッケージが生じていると判定し、例えば、ユーザにブロッケージの発生を通知する。
【0039】
以上の処理によれば、減衰型ブロッケージおよび反射型ブロッケージを確実に検出することができるので、ユーザにブロッケージの発生を通知し、物標が正確に検出されないことに対する注意を喚起することができる。
【0040】
つぎに、図10を参照して、発明の実施形態の詳細な動作について説明する。
【0041】
図10は、本発明の実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、車両のイグニッションキーがオンの状態にされ、レーダ装置10-1,10-2に対して電源電力の供給が開始された場合に実行される。図10に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0042】
ステップS10では、制御・処理部15の制御部15aは、パルス信号を送信する処理を実行する。より詳細には、制御部15aは、変調部13を制御し、局部発振部11から供給される信号をパルス信号に変換し、送信アンテナ14を介して送信させる。
【0043】
ステップS11では、制御部15aは、反射信号を受信する処理を実行する。より詳細には、物標によって反射されさたパルス信号は、受信アンテナ17によって受信される。ここで、受信アンテナ17は、例えば、4つのアンテナによって構成され、アンテナ切換部18は、これら4つのアンテナを切り換えて入力し、利得可変増幅部19に供給する。利得可変増幅部19は、アンテナ切換部18から供給される信号を増幅し、復調部20に供給する。復調部20は、利得可変増幅部19から供給される信号を局部発振部11から供給されるCW信号を用いて復調し、A/D変換部21に供給する。A/D変換部21は、復調部20から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換して制御・処理部15に供給する。
【0044】
ステップS12では、制御・処理部15の処理部15bは、反射信号を解析する処理を実行する。より詳細には、処理部15bは、A/D変換部21から供給されるデジタル信号に対する解析処理を実行する。
【0045】
ステップS13では、制御・処理部15の検出部15dは、ステップS12における解析処理によって得られた結果を参照し、直近領域からの反射信号が存在するか否かを判定し、存在すると判定した場合(ステップS13:Y)にはステップS14に進み、それ以外の場合(ステップS13:N)にはステップS16に進む。例えば、図8に示すように、レーダ装置10-1が収容されたバンパBの表面にステッカrが貼付されている場合には、図9(B)に示すように、直近領域(例えば、レーダ装置10-1から数センチ~数十センチの領域)からの反射信号が検出されるので、その場合にはYと判定してステップS14に進む。
【0046】
ステップS14では、検出部15dは、反射型ブロッケージがあると判定する。なお、直近領域からの反射信号を1回検出した場合に反射型ブロッケージがあると直ちに判定するのではなく、例えば、同じ位置からの反射信号を複数回検出した場合に反射型ブロッケージがあると判定するようにしてもよい。
【0047】
ステップS15では、制御部15aは、反射型ブロッケージを検出したことをユーザに対して通知する。例えば、制御部15aは、音声メッセージによってユーザに反射型ブロッケージの検出を通知する。なお、その際、直近領域からの反射が生じている方のレーダ装置に反射型ブロッケージが生じていると判定し、判定結果を合わせて通知するようにしてもよい。
【0048】
ステップS16では、検出部15dは、ステップS12における解析処理によって得られた結果を参照し、図6に示す重複検出領域Doに物標が存在するか否かを判定し、物標が存在すると判定した場合(ステップS16:Y)にはステップS17に進み、それ以外の場合(ステップS16:N)にはステップS22に進む。例えば、図6に示すように、重複検出領域Do内に物標Toが存在する場合にはYと判定してステップS17に進む。
【0049】
ステップS17では、検出部15dは、反射信号の振幅を取得する。より詳細には、レーダ装置10-1,10-2のそれぞれの検出部15dは、物標Toに対応する反射信号の振幅を検出する。
【0050】
ステップS18では、検出部15dは、J=|A1-A2|/(A1+A2)に基づいてJの値を計算する。より詳細には、例えば、マスタとなっているレーダ装置10-1の検出部15dは、通信線42を介してレーダ装置10-2から物標Toに対応する反射信号の振幅A1を取得するとともに、自身が検出した物標Toに対応する反射信号の振幅A2を取得し、これらを前述した式に代入し、Jの値を計算する。
【0051】
ステップS19では、検出部15dは、ステップS18で求めたJと、閾値Thとを比較し、J>Thを満たす場合(ステップS19:Y)にはステップS20に進み、それ以外の場合(ステップS19:N)にはステップS22に進む。例えば、レーダ装置10-1,10-2の双方に着氷等がない場合にはA1=A2が成立するのでJ=0となる。しかしながら、図8に示すように、レーダ装置10-1側に着氷等が存在する場合には、A1<A2となるので、前述した式の分子は0とはならない。このため、J>Th(Th>0)の場合には一方のレーダ装置に着氷等が存在すると判定してステップS20に進む。
【0052】
ステップS20では、検出部15dは、減衰型ブロッケージがあると判定する。なお、重複領域の物標Toからの反射信号を1回検出した場合に減衰型ブロッケージがあると直ちに判定するのではなく、例えば、反射信号を複数回検出し、J>Thが複数回成立する場合に反射型ブロッケージがあると判定するようにしてもよい。
【0053】
ステップS21では、制御部15aは、減衰型ブロッケージを検出したことをユーザに対して通知する。例えば、制御部15aは、音声メッセージによってユーザに通知する。なお、その際、振幅A1,A2を比較し、振幅が小さい方のレーダ装置に減衰型ブロッケージが生じていると判定し、判定結果を合わせて通知するようにしてもよい。
【0054】
ステップS22では、制御部15aは、処理を終了するか否かを判定し、終了しないと判定した場合(ステップS22:N)にはステップS10に戻って処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS22:Y)には処理を終了する。
【0055】
以上の処理によれば、前述した実施形態の動作を実現することができる。
【0056】
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、反射型ブロッケージとしては、ステッカが貼付された場合を例に挙げて説明したが、これ以外にも、例えば、ボート等の牽引物や、車両後方の取り付け物(例えば、自転車等)を反射型ブロッケージとして検出するようにしてもよい。
【0057】
また、減衰型ブロッケージとしては、着氷、着雪を例に挙げて説明したが、これ以外にも、例えば、泥等や、鳥類の糞等が付着した場合に、これらを減衰型ブロッケージとして検出するようにしてもよい。
【0058】
また、減衰型ブロッケージは、レーダ装置10-1,10-2によって検出される反射信号の振幅差に基づいて検出するようにした。しかしながら、このような方法は、レーダ装置10-1,10-2の双方に減衰型ブロッケージが存在する場合には検出することができない。そこで、そのような場合には、GPS(Global Positioning System)からの信号に基づいて同じ場所に車両が位置している際(例えば、自宅の駐車場に駐車されている際)に、過去における反射信号の振幅と、その時点における反射信号の振幅を比較し、振幅が減衰している場合には減衰型ブロッケージが発生していると判定するようにしてもよい。そのような方法によれば、同じ物標(例えば、駐車場に隣接する壁等)からの反射信号に基づいて、減衰型ブロッケージの有無を判定することができる。
【0059】
また、図10に示すフローチャートの処理は一例であって、本発明がこれらフローチャートの処理に限定されるものではないことはいうまでもない。例えば、図10に示す処理では、反射型ブロッケージを先に検出するようにしているが、減衰型ブロッケージを先に検出するようにしてもよい。なお、図9からも分かるように、反射型ブロッケージの場合、反射信号の振幅はブロッケージを有する方が小さくなるため、減衰型ブロッケージに対する検出方法でもブロッケージがあると誤判定されてしまう。このため、図10に示すように、反射型ブロッケージを先に実行することで、このような誤判定を防ぐことができる。
【0060】
また、以上の実施形態では、レーダ装置10-1,10-2が反射型ブロッケージしおよび減衰型ブロッケージを検出するようにしたが、例えば、図2に示すECU30がこれらのブロッケージを検出するようにしてもよい。
【0061】
また、以上の実施形態では、減衰型ブロッケージを検出する場合、J=|A1-A2|/(A1+A2)を求めるようにしたが、この式は一例であって、これ以外の式を用いて判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10-1,10-2 レーダ装置
11 局部発振部
12 送信部
13 変調部
14 送信アンテナ
15 制御・処理部
15a 制御部(提示手段)
15b 処理部
15c 通信部
15d 検出部(第1検出手段、第2検出手段)
16 受信部
17 受信アンテナ
18 アンテナ切換部
19 利得可変増幅部
20 復調部
21 A/D変換部
30 ECU
41,42 通信線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10