(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化膜形成方法、硬化物、パターン化されている硬化膜、及び透明光学部材
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20220222BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20220222BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C08F220/10
C08F2/00 C
G03F7/027 502
(21)【出願番号】P 2017217614
(22)【出願日】2017-11-10
【審査請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040224(JP,A)
【文献】特開2015-193809(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157676(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140245(WO,A1)
【文献】特開2017-043652(JP,A)
【文献】特開2018-059059(JP,A)
【文献】特開2018-059063(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 - 220/70
G03F 7/004 - 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物(A)、及び下記一般式(2)で表される化合物(B)を含む硬化性組成物。
【化1】
(上記式中、環Z
1及び環Z
2は、それぞれ独立に、縮合多環式芳香族炭化水素環を表し、環Y
1及び環Y
2はそれぞれ独立に芳香族炭化水素環を表し、X
1及びX
2はそれぞれ独立に単結合又はチオエーテル結合を表し、Rは単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでいてもよいエチレン基、エーテル結合、-NH-で表される基又はチオエーテル結合を表し、R
1a及びR
1bはそれぞれ独立に単結合、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレンオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表し、R
2a及びR
2bはそれぞれ独立に1価の炭化水素基、水酸基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR
4cで表される基、-N(R
4d)
2で表される基、(メタ)アクリロイルオキシ基もしくはスルホ基を表すか、又は置換基Aを有する、1価の炭化水素基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、-NHR
4cで表される基もしくは-N(R
4d)
2で表される基を表し、前記置換基Aが1価炭化水素基、水酸基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR
4cで表される基、-N(R
4d)
2で表される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基もしくはスルホ基を表し、R
3a及びR
3bは、それぞれ独立に、シアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を表し、R
4a~R
4dはそれぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、R
5a及びR
5bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、m1及びm2は独立に0以上の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。)
【化2】
(上記式中、Z
20は、2個以上の芳香環を含む芳香族基を表し、R
21は直鎖状又は分岐状アルキレン基を表し、pは0を表し、R
22は水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される化合物(A)、下記一般式(2)で表される化合物(B)及び重合開始剤(C)を含み、前記重合開始剤(C)がオキシムエステル化合物を含
み、
前記オキシムエステル化合物が、下記オキシムエステル化合物(C1)~(C3)よりなる群から選択される少なくとも1種のオキシムエステル化合物を含む、硬化性組成物。
【化3】
(上記式中、環Z
1及び環Z
2は、それぞれ独立に、縮合多環式芳香族炭化水素環を表し、環Y
1及び環Y
2はそれぞれ独立に芳香族炭化水素環を表し、X
1及びX
2はそれぞれ独立に単結合又はチオエーテル結合を表し、Rは単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでいてもよいエチレン基、エーテル結合、-NH-で表される基又はチオエーテル結合を表し、R
1a及びR
1bはそれぞれ独立に単結合、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレンオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表し、R
2a及びR
2bはそれぞれ独立に1価の炭化水素基、水酸基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR
4cで表される基、-N(R
4d)
2で表される基、(メタ)アクリロイルオキシ基もしくはスルホ基を表すか、又は置換基Aを有する、1価の炭化水素基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、-NHR
4cで表される基もしくは-N(R
4d)
2で表される基を表し、前記置換基Aが1価炭化水素基、水酸基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR
4cで表される基、-N(R
4d)
2で表される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基もしくはスルホ基を表し、R
3a及びR
3bは、それぞれ独立に、シアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を表し、R
4a~R
4dはそれぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、R
5a及びR
5bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、m1及びm2は独立に0以上の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。)
【化4】
(上記式中、Z
20は、2個以上の芳香環を含む芳香族基を表し、R
21は直鎖状又は分岐状アルキレン基を表し、pは0以上の整数を表し、R
22は水素原子又はメチル基を表す。)
オキシムエステル化合物(C1):下記式(c1)で表され、下記1)~3)のうちの少なくとも1つの条件を満たす化合物
1)R
c1
が-OR
c7
で表される基を含み、R
c7
がハロゲノアルキル基である。
2)mc2が1であり、R
c4
が-OR
c7
で表される基を含み、R
c7
がハロゲノアルキル基である。
3)R
c3
が置換基を有してもよい分岐鎖状アルキル基である。
【化5】
(式(c1)中、R
c1
は、1価の有機基であり、R
c2
は、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよいヘテロシクリル基であり、R
c3
は、1価の有機基であり、R
c4
は、1価の有機基であり、R
c5
、及びR
c6
はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいベンゼン環、又は置換基を有してもよいナフタレン環であり、mc1、mc2、及びmc3はそれぞれ0又は1である。)
オキシムエステル化合物(C2):下記式(c2)で表される化合物
【化6】
(式(c2)中、CRは、下記式(c2a)又は下記式(c2b):
【化7】
で表される基であり、R
c11
は水素原子、ニトロ基又は1価の有機基であり、R
c12
及びR
c13
は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、R
c12
とR
c13
とは相互に結合して環を形成してもよく、R
c14
は1価の有機基であり、R
c15
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、nc1は0以上4以下の整数であり、nc2は0又は1である。)
オキシムエステル化合物(C3):下記式(c3)で表され、下記4)~6)のうちの少なくとも1つを満たす(ただし、Xは、各々独立に、ハロゲン原子である)化合物
4)nc11は1以上4以下の整数であり、R
c21
の少なくとも1つがHX
2
C-又はH
2
XC-で表される基を含む置換基である。
5)R
c24
がHX
2
C-又はH
2
XC-で表される基を含む置換基である。
6)R
c25
がHX
2
C-又はH
2
XC-で表される基を含む置換基である。
【化8】
(上記式(1)中、R
c21
は、各々独立に、水素原子、ニトロ基、又は1価の有機基であり、R
c22
及びR
c23
は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、R
c22
とR
c23
とは相互に結合して環を形成してもよく、R
c24
は1価の有機基であり、R
c25
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、nc11は0以上4以下の整数であり、nc12は0又は1である。)
【請求項3】
前記一般式(1)におけるR
1a及びR
1bがそれぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素原子数3又は4のアルキレンオキシ基であり、前記置換基が、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、又はアリール基である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ただし、前記化合物(B)としてフェノキシベンジル(メタ)アクリレートを除く、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
重合開始剤(C)を更に含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記環Z
1及び環Z
2がナフタレン環である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記芳香族基Z
20が置換基を有していてもよいビフェニリル基又はナフチル基である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記硬化性組成物が更に溶剤(S)を含むか、又は含まず、前記溶剤(S)を含まない状態での屈折率が1.6以上である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性組成物を基材上に適用して塗布膜を形成する工程、及び前記塗布膜を硬化させる工程を含む硬化膜形成方法。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項11】
屈折率が1.6以上である、請求項
10に記載の硬化物。
【請求項12】
請求項
10又は
11に記載の硬化物からなり、パターン化されている硬化膜。
【請求項13】
請求項
10又は
11に記載の硬化物を含む透明光学部材。
【請求項14】
透過型透明スクリーン用、反射型透明スクリーン用又は光拡散シート用である、請求項
12に記載の硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化膜形成方法、硬化物、パターン化されている硬化膜、及び透明光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイないしヘッドマウントディスプレイ装置、プロジェクター等における透過型透明スクリーン、反射型透明スクリーン等は、光源からの投影光の視認性及び透過光(若しくは反射光)の視認性の両立が要求される。このような観点から、マイクロレンズパターンを備える光散乱層を備える透過型透明スクリーン、反射型透明スクリーン等が開示されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
一方、縮合多環式化合物は、種々の優れた機能を有し、様々な用途に用いられている。例えば、縮合多環式芳香族化合物であるフルオレン骨格(9,9-ビスフェニルフルオレン骨格等)を有する(メタ)アクリレートを含む組成物が、高屈折率及び高ガラス転移点を両立し、透明光学部材として好適であることが知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/136827号
【文献】特開第2017-15824号公報
【文献】特開第2017-43652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヘッドアップディスプレイないしヘッドマウントディスプレイ装置、プロジェクター等における透過型透明スクリーン、反射型透明スクリーン等に好適なパターンを形成し得るパターニング特性を有し、また、屈折率に優れる硬化性材料がなお求められている。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであって、屈折率向上及びパターニング特性に優れる硬化性組成物、硬化膜形成方法、硬化物、パターン化されている硬化膜、及び透明光学部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、硬化性組成物が特定構造の(メタ)アクリレート化合物を混合して含むことにより、硬化性組成物のパターニング特性(例えば、インプリント法によるパターニング、現像時の耐クラック性等の現像性等)を向上することができ、また得られる硬化物の屈折率も向上し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
本発明の第1の態様は、
下記一般式(1)で表される化合物(A)、及び下記一般式(2)で表される化合物(B)を含む硬化性組成物である。
【化1】
(上記式中、環Z
1及び環Z
2は、それぞれ独立に、縮合多環式芳香族炭化水素環を表し、環Y
1及び環Y
2はそれぞれ独立に芳香族炭化水素環を表し、X
1及びX
2はそれぞれ独立に単結合又はチオエーテル結合(-S-)を表し、Rは単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでいてもよいエチレン基、エーテル結合(-O-)、-NH-で表される基又は-S-を表し、R
1a及びR
1bはそれぞれ独立に単結合、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレンオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表し、R
2a及びR
2bはそれぞれ独立に1価の炭化水素基、水酸基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR
4cで表される基、-N(R
4d)
2で表される基、(メタ)アクリロイルオキシ基もしくはスルホ基を表すか、又は置換基Aを有する、1価の炭化水素基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、-NHR
4cで表される基もしくは-N(R
4d)
2で表される基を表し、前記置換基Aが1価炭化水素基、水酸基、-OR
4aで表される基、-SR
4bで表される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR
4cで表される基、-N(R
4d)
2で表される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基もしくはスルホ基を表し、R
3a及びR
3bは、それぞれ独立に、シアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を表し、R
4a~R
4dはそれぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、R
5a及びR
5bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、m1及びm2は独立に0以上の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。)
【化2】
(上記式中、Z
20は、2個以上の芳香環を含む芳香族基を表し、R
21は直鎖状又は分岐状アルキレン基を表し、pは0以上の整数を表し、R
22は水素原子又はメチル基を表す。)
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る硬化性組成物を基材上に適用して塗布膜を形成する工程、及び前記塗布膜を硬化させる工程を含む硬化膜形成方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様に係る硬化性組成物の硬化物である。
本発明の第4の態様は、第3の態様に係る硬化物からなり、パターン化されている硬化膜である。
本発明の第5の態様は、第3の態様に係る硬化物を含む透明光学部材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性組成物は、屈折率向上及びパターニング特性に優れる。
本発明の硬化膜形成方法は、上記硬化性組成物を用いることから、良好な微細パターンを形成し得る。
本発明の硬化物は、屈折率に優れ、良好な微細パターンを有し得る。
本発明によれば、各種透明光学部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
また、本明細書において、「~」は特に断りがなければ以上から以下を表す。
【0013】
≪硬化性組成物≫
第1の態様に係る硬化性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物(A)、及び上記一般式(2)で表される化合物(B)を含む。
以下、硬化性組成物が含有する成分について順に説明する。
【0014】
<上記一般式(1)で表される化合物(A)(以下、単に、「化合物(A)」ともいう。)>
硬化性組成物が化合物(A)を含むことにより、屈折率向上及びパターニング特性(例えば、インプリント法によるパターニング、現像時の耐クラック性等の現像性)に寄与し得る。
上記一般式(1)において、環Z1及び環Z2に係る縮合多環式芳香族炭化水素環としては、例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8-20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10-16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Z1及び環Z2は、環Z1及び環Z2は、同一でも異なっていてもよく、少なくとも一方が、ナフタレン環であることが好ましく、いずれもナフタレン環であることがより好ましい。また、X1及びX2の両方が直結する炭素原子にX1又はX2を介して結合する環Z1又は環Z2の置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z1又は環Z2がナフタレン環の場合、上記炭素原子に結合する環Z1又は環Z2に対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基等であってもよい。
【0015】
上記一般式(1)において、環Y1及び環Y2に係る芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8-20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10-16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Y1及び環Y2は、ベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましい。なお、環Y1及び環Y2は、同一でも異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよい。
【0016】
上記一般式(1)において、X1及びX2は、それぞれ独立に単結合又はチオエーテル結合(-S-)を表し、単結合であることが好ましい。
【0017】
上記一般式(1)において、Rは単結合、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基、-O-、-NH-で表される基、又は-S-を表し、単結合であることが好ましい。ここで、置換基としては、例えば、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基等のC1-6アルキル基)、アリール基(フェニル基等のC6-10アリール基)等]等が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、珪素原子等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)において、R1a及びR1bは、それぞれ独立に単結合、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレンオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表し、単結合又は置換基を有していてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキレンオキシ基であることが好ましい。
炭素原子数1以上4以下のアルキレンオキシ基としては、置換基を有していてもよく、例えば、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、n-ブチレンオキシ基等の炭素原子数1以上4以下のアルキレンオキシ基が挙げられ、C2-4アルキレンオキシ基(特に、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のC2-3アルキレンオキシ基)が好ましい。
炭素原子数1以上4以下のアルキレン基としては、置換基を有していてもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン-1,2-ジイル基等の炭素原子数1以上4以下のアルキレン基が挙げられ、C2-4アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基等のC2-3アルキレン基)が好ましい。
炭素原子数1以上4以下のアルキレンオキシ基又はアルキレン基が有し得る置換基としては、例えば、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基等のC1-6アルキル基)、アリール基(フェニル基等のC6-10アリール基)等]等が挙げられる。
なお、R1aとR1bとが同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
上記一般式(1)において、R2a及びR2bとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のC1-12アルキル基、好ましくはC1-8アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基等)、シクロアルキル基(シクロへキシル基等のC5-10シクロアルキル基、好ましくはC5-8シクロアルキル基、より好ましくはC5-6シクロアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のC6-14アリール基、好ましくはC6-10アリール基、より好ましくはC6-8アリール基等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等のC6-10アリール-C1-4アルキル基等)等の1価炭化水素基;水酸基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1-12アルコキシ基、好ましくはC1-8アルコキシ基、より好ましくはC1-6アルコキシ基等)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基等のC5-10シクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等のC6-10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等のC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基)等の-OR4aで表される基[式中、R4aは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のC1-12アルキルチオ基、好ましくはC1-8アルキルチオ基、より好ましくはC1-6アルキルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基等のC5-10シクロアルキルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等のC6-10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基等のC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基)等の-SR4bで示される基[式中、R4bは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アシル基(アセチル基等のC1-6アシル基等);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシ-カルボニル基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等);ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;カルボキシル基;アミノ基;カルバモイル基;アルキルアミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等のC1-12アルキルアミノ基、好ましくはC1-8アルキルアミノ基、より好ましくはC1-6アルキルアミノ基等)、シクロアルキルアミノ基(シクロへキシルアミノ基等のC5-10シクロアルキルアミノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基等のC6-10アリールアミノ基)、アラルキルアミノ基(例えば、ベンジルアミノ基等のC6-10アリール-C1-4アルキルアミノ基)等の-NHR4cで示される基[式中、R4cは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジ(C1-12アルキル)アミノ基、好ましくはジ(C1-8アルキル)アミノ基、より好ましくはジ(C1-6アルキル)アミノ基等)、ジシクロアルキルアミノ基(ジシクロへキシルアミノ基等のジ(C5-10シクロアルキル)アミノ基等)、ジアリールアミノ基(ジフェニルアミノ基等のジ(C6-10アリール)アミノ基)、ジアラルキルアミノ基(例えば、ジベンジルアミノ基等のジ(C6-10アリール-C1-4アルキル)アミノ基)等の-N(R4d)2で示される基[式中、R4dは独立に1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];(メタ)アクリロイルオキシ基;スルホ基;下記置換基Aを有する、上記の1価炭化水素基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、-NHR4cで示される基、もしくは-N(R4d)2で示される基等が挙げられる。
上記置換基Aとしては、上記の1価炭化水素基、水酸基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR4cで示される基、-N(R4d)2で示される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基、もしくはスルホ基等が挙げられる。
上記置換基Aを有する、上記の1価炭化水素基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、-NHR4cで示される基、もしくは-N(R4d)2で示される基としては、例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基等のC1-4アルコキシC6-10アリール基)、アルコキシカルボニルアリール基(例えば、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基等のC1-4アルコキシ-カルボニルC6-10アリール基等)が挙げられる。
【0020】
これらのうち、代表的には、R2a及びR2bは、1価炭化水素基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-NHR4cで示される基、-N(R4d)2で示される基等であってもよい。
【0021】
好ましいR2a及びR2bとしては、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1-6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5-8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6-10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6-8アリール-C1-2アルキル基)等]、アルコキシ基(C1-4アルコキシ基等)等が挙げられる。特に、R2a及びR2bは、アルキル基[C1-4アルキル基(特にメチル基)等]、アリール基[例えば、C6-10アリール基(特にフェニル基)等]等の1価炭化水素基(特に、アルキル基)であるのが好ましい。
【0022】
なお、m1が2以上の整数である場合、R2aは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、m2が2以上の整数である場合、R2bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。更に、R2aとR2bとが同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
上記一般式(1)において、R2aの数m1は、環Z1の種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下、好ましくは0以上3以下、より好ましくは0以上2以下であってもよい。また、上記一般式(1)において、基R2bの数m2は、環Z2の種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下、好ましくは0以上3以下、より好ましくは0以上2以下であってもよい。なお、m1及びm2は、同一でも異なっていてもよい。
【0024】
上記一般式(1)において、R3a及びR3bとしては、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等のC6-10アリール基)等]等の非反応性置換基が挙げられ、シアノ基又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基等のC1-6アルキル基(例えば、C1-4アルキル基、特にメチル基)等が例示できる。なお、n1が2以上の整数である場合、R3aは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、n2が2以上の整数である場合、R3bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。更に、R3aとR3bとが同一であってもよく、異なっていてもよい。また、環Y1及び環Y2に対するR3a及びR3bの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数n1及びn2は、0又は1、特に0である。なお、n1及びn2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0025】
上記一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
(式中、X
1、X
2、Z
1、Z
2、R
1a、R
1b、R
2a、R
3a、R
3b、R
5a、R
5b、m1及びm2は式(1)と同じである。)
【0026】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化4】
【化5】
【0027】
(一般式(1)で表される化合物の製造方法)
上記一般式(1)で表される化合物は、任意の有機合成反応を用いて製造することができ、例えば、水酸基を有するフルオレン系化合物と(メタ)アクリル化剤とを反応させることにより、合成することができる。(メタ)アクリル化剤としては、例えば、(メタ)アクリロイルクロリド等の(メタ)アクリロイルハライド;(メタ)アクリル酸無水物等が挙げられ、(メタ)アクリロイルハライドが好ましく、(メタ)アクリロイルクロリドがより好ましい。また、反応温度としては、例えば、-20℃以上150℃以下、好ましくは-10℃以上100℃以下、より好ましくは0℃以上60℃以下が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル化剤」は、アクリル化剤とメタクリル化剤の両方を意味し、「(メタ)アクリル酸無水物」は、アクリル酸無水物とメタクリル酸無水物の両方を意味する。
【0028】
上記硬化性組成物は、上記化合物(A)を1種類単独又は2種以上を混合して含んでいてもよい。
上記硬化性組成物において、上記化合物(A)の含有量としては本発明の効果を達成し得る限り特に制限はないが、高屈折率性の観点から、上記化合物(A)の質量及び後述する化合物(B)の質量の合計に対する、上記化合物(A)の質量の割合が30質量%以上であることが好ましく、上記化合物(A)の質量の割合が50質量%以上であることがより好ましく、上記化合物(A)の質量の割合が70質量%以上であることが更に好ましい。
上記化合物(A)の質量の割合の上限としては特に制限はないが、95質量%以下が挙げられ、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0029】
<上記一般式(2)で表される化合物(B)(以下、単に、「化合物(B)」ともいう。)>
硬化性組成物が化合物(A)とともに化合物(B)を含むことにより、屈折率向上及び耐熱性向上(例えば、ガラス転移点向上)に寄与し得る。
上記一般式(2)において、Z
20に係る2個以上の芳香環を含む芳香族基としては、置換基を有していてもよく、Z
20が有する芳香環の個数としては5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
上記置換基としては炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数1以上12以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上12以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1以上12以下のアシル基、炭素原子数1以上12以下のアシルオキシ基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基が挙げられる。
Z
20に係る2個以上の芳香環を含む芳香族基を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、Z
20としては上記置換基を有していてもよいビフェニル基又はナフチル基であることが好ましく、ビフェニル基であることがより好ましい。下記式中、*は結合手を表す。
【化6】
【0030】
上記一般式(2)において、R21に係る直鎖状又は分岐状アルキレン基としては、炭素原子数1以上4以下(好ましくは炭素原子数2又は3)の直鎖状又は分岐状アルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン-1,2-ジイル基等が挙げられる。
【0031】
pは、耐熱性(例えば、ガラス転移点向上)の観点から、0以上3以下が好ましく、0以上2以下がより好ましく、0又は1が更に好ましく、0が特に好ましい。
R22は水素原子又はメチル基を表す。
【0032】
上記硬化性組成物は、上記化合物(B)を1種類単独又は2種以上混合して含んでいてもよい。
上記硬化性組成物において、上記化合物(B)の含有量としては本発明の効果を達成し得る限り特に制限はないが、上記化合物(A)の質量及び化合物(B)の質量の合計に対する、上記化合物(B)の質量の割合が5質量%以上であることが好ましく、上記化合物(B)の質量の割合が10質量%以上であることがより好ましい。
上記化合物(B)の質量の割合の上限としては特に制限はないが、高屈折率性の観点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0033】
<重合開始剤(C)>
硬化性組成物は重合開始剤(C)を更に含んでいてもいなくてもよいが、パターニング特性及び硬化促進の観点から更に含んでいることが好ましく、重合開始剤(C)としては光重合開始剤であっても、熱重合開始剤であってもよいが光重合開始剤であることが好ましい。
重合開始剤(C)は単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。
重合開始剤(C)としては、後述する従来公知の重合開始剤であってもよいが、本発明の効果をより確実に達成する観点から、オキシムエステル化合物を含むことが好ましく、中でも下記オキシムエステル化合物(C1)~(C3)よりなる群から選択される少なくとも1種のオキシムエステル化合物を含むことがより好ましい。
【0034】
(オキシムエステル化合物(C1))
オキシムエステル化合物(C1)は、下記式(c1):
【化7】
(式(c1)中、R
c1は、1価の有機基であり、R
c2は、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよいヘテロシクリル基であり、R
c3は、1価の有機基であり、R
c4は、1価の有機基であり、R
c5、及びR
c6はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいベンゼン環、又は置換基を有してもよいナフタレン環であり、mc1、mc2、及びmc3はそれぞれ0又は1である。)
で表され、下記1)~3):
1)R
c1が-OR
c7で表される基を含み、R
c7がハロゲノアルキル基である。
2)mc2が1であり、R
c4が-OR
c7で表される基を含み、R
c7がハロゲノアルキル基である。
3)R
c3が置換基を有してもよい分岐鎖状アルキル基である。
のうちの少なくとも1つの条件を満たす化合物である。
【0035】
式(c1)中、Rc5、及びRc6は置換基を有してもよいベンゼン環、又は置換基を有してもよいナフタレン環である。
式(c1)中に示されるRc3に結合する窒素原子を含む環と、ベンゼン環、又はナフタレン環とは、ベンゼン環、又はナフタレン環中の任意の炭素-炭素結合を共有することにより縮合する。
このため、式(c1)中の、Rc3に結合する窒素原子を含む環は、窒素原子と、Rc5に由来する2つの炭素原子と、Rc6に由来する2つの炭素原子とを環構成原子とする5員環である。
つまり、式(c1)で表される化合物は、Rc5、及びRc6と、上記の5員環とからなる、3環式から5環式の縮合環を中心骨格として有する。
【0036】
R
c5、及び/又はR
c6がナフタレン環である場合、R
c3に結合する窒素原子を含む上記の5員環と、ナフタレン環との縮合の形態他は特に限定されない。
R
c5、及びR
c6の少なくとも一方がナフタレン環である場合、R
c5、及びR
c6と、R
c3に結合する窒素原子を含む上記の5員環とからなる縮合環は、以下のいずれであってもよい。
【化8】
【0037】
Rc5、及びRc6としてのベンゼン環、又はナフタレン環が置換基を有する場合、当該置換基の種類及び数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
置換基の好適な例としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン原子、及びシアノ基等が挙げられる。
Rc5、及びRc6としてのベンゼン環、又はナフタレン環が置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、1以上4以下が好ましい。置換基が複数である場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
Rc5が置換基を有する場合、Rc5が有する置換基と、Rc1、又はRc3とが結合して環を形成してもよい。
また、Rc6が置換基を有する場合、Rc6が有する置換基と、Rc3とが結合して環を形成してもよい。
【0039】
Rc5が有する置換基と、Rc1とが結合して形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。当該複素環に含まれるヘテロ原子は、特に限定されない。好ましいヘテロ原子としては、N、O、S等が挙げられる。
Rc5、及び/又はRc6が有する置換基と、Rc3とが結合して形成される環は、Rc3と結合する窒素原子以外に、その他のヘテロ原子を含んでいてもよい。当該複素環に含まれるヘテロ原子は、特に限定されない。好ましいヘテロ原子としては、N、O、S等が挙げられる。
【0040】
Rc1として好適な1価の有機基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。
【0041】
1価の有機基の中でも、Rc1としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2-メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上10以下が好ましく、5以上8以下がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2-(4-クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0042】
前述の通り、式(c1)で表される化合物は、上記1)~3)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことから、Rc1は、-ORc7で表される置換基で置換されていることが好ましい。Rc7はハロゲノアルキル基である。Rc1が、-ORc7で表される基で置換されている場合、Rc1に含まれる、-ORc7で表される基の数は特に限定されない。Rc1が、-ORc7で表される基で置換されている場合、Rc1に含まれる、-ORc7で表される基の数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
また、式(c1)で表される化合物が有する-ORc7で表される基の数も、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0043】
ハロゲノアルキル基に含まれるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。ハロゲノアルキル基は、1種類のハロゲン原子を含んでいてもよく、2種以上のハロゲン原子を組み合わせて含んでいてもよい。
ハロゲノアルキル基が有するハロゲン原子の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ハロゲノアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が特に好ましい。ハロゲノアルキル基が有するハロゲン原子の数の上限は、式(c1)で表される化合物の、硬化性組成物中の他の成分との相溶性が良好である点で、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。
また、式(c1)で表される化合物に含まれるハロゲン原子の数も、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が特に好ましく、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。
【0044】
ハロゲノアルキル基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ハロゲノアルキル基の炭素原子数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が特に好ましい。ハロゲノアルキル基の炭素原子数の上限は、10以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。
ハロゲノアルキル基としては、フッ素化アルキル基が特に好ましい。ハロゲノアルキル基の好ましい具体例としては、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、及び2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基等が挙げられる。これらの中では、式(c1)で表される化合物の製造が容易であること等から、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基が好ましい。
【0045】
R
c1としてのハロゲノアルキル基で置換された基としては、1つ又は2つのハロゲノアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。具体的には、R
c1としてのハロゲノアルキル基で置換された基は下記式(c1-01):
【化9】
(式(c1-01)中、R
c7は前述の通りであり、R
c9は、R
c1としてのフェニル基が有してもよい置換基であり、mc4は1又は2であり、mc4+mc5は1以上5以下の整数である。)
で表される基が好ましい。
R
c9としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、メチル基、及びエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
mc5は1であることが好ましい。
【0046】
以上説明したR
c1の中では、下記式で表される基が好ましい。
【化10】
【0047】
式(c1)中、Rc2は、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよいヘテロシクリル基である。置換基を有してもよい炭化水素基としては、置換基を有してもよい炭素原子数1以上11以下のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基が好ましい。アリール基としては、フェニル基、及びナフチル基が好ましく、フェニル基が好ましい。Rc2がアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、Rc2がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
【0048】
Rc2としては、メチル基、フェニル基、及びチエニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0049】
式(c1)中、Rc3は、1価の有機基である。Rc3は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。Rc3の好適な例としては、炭素原子数1以上20以下の置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数3以上20以下の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の置換基を有してもよい飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下の置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0050】
Rc3の中では、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。式(c1)で表される化合物の硬化性組成物中での溶解性が良好である点から、Rc3としてのアルキル基の炭素原子数は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が特に好ましい。また、硬化性組成物中での、式(c1)で表される化合物と、他の成分との相溶性が良好である点から、Rc3としてのアルキルの基の炭素原子数は、15以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0051】
Rc3が置換基を有する場合、当該置換基の好適な例としては、水酸基、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下の脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下の脂肪族アシルオキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、-PO(OR)2で表される基(Rは炭素原子数1以上6以下のアルキル基)、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロシクリル基等が挙げられる。
【0052】
前述の通り、式(c1)で表される化合物は、上記1)~3)のうちの少なくとも1つの条件を満たす必要があることから、Rc3が、置換基を有してもよい分岐鎖状アルキル基であることが好ましい。
【0053】
以上説明したRc3の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ペンタン-3-イル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
前述の通り、Rc3として分岐鎖状アルキル基が好ましいことから、上記のアルキル基の中では、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ペンタン-3-イル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、及び2-エチルヘキシル基が好ましい。
また、硬化性組成物中での式(c1)で表される化合物の溶解性が良好である点から、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が好ましく、2-エチルヘキシル基がより好ましい。
【0054】
式(c1)中のRc4は1価の有機基である。Rc4としての1価の有機基としては、Rc1としての1価の有機基と同様の基を挙げることができる。
【0055】
Rc4は、Rc4-(CO)mc3-で表される基として、式(c1)で表される化合物の主骨格に結合する。
【0056】
上記のRc4-(CO)mc3-で表される基の好適な例の中では、1,3,5-トリメチルベンゾイル基が特に好ましい。
【0057】
前述の通り、式(a1)で表される化合物は、上記1)~3)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことから、Rc4は、-ORc7で表される置換基で置換されていることが好ましい。Rc7はハロゲノアルキル基である。
【0058】
Rc4としてのハロゲノアルキル基で置換された基としては、1つ又は2つのハロゲノアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。
式(c1)中、mc1、mc2、及びmc3はいずれも0又は1である。mc1としては、0が好ましい。mc2としては1が好ましい、mc3としては1が好ましい。
【0059】
(オキシムエステル化合物(C2))
オキシムエステル化合物(C2)は、下記式(c2):
【化11】
(式(a2)中、CRは、下記式(c2a)又は下記式(c2b):
【化12】
で表される基であり、R
c11は水素原子、ニトロ基又は1価の有機基であり、R
c12及びR
c13は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、R
c12とR
c13とは相互に結合して環を形成してもよく、R
c14は1価の有機基であり、R
c15は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、nc1は0以上4以下の整数であり、nc2は0又は1である。)
で表される化合物である。
式(c2)で表されるオキシムエステル化合物の合成や入手の容易性や、R
c12及びR
c13の選択により、オキシムエステル化合物の特性を調整しやすい点等から、式(c2)中のCRとしては、式(c2a)で表される基が好ましい。
【0060】
Rc11が有機基である場合、Rc11は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Rc11が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。
【0061】
以上説明した基の中でも、Rc11としては、ニトロ基、又はRc16-CO-で表される基であると、感度が向上する傾向があり好ましい。Rc16は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc16として好適な基の例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc16として、これらの基の中では、2-メチルフェニル基、チオフェン-2-イル基、及びα-ナフチル基が特に好ましい。
【0062】
式(c2a)中、Rc12及びRc13は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。Rc12とRc13とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、Rc12及びRc13として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。Rc12及びRc13が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0063】
Rc12及びRc13として、上記の中でも好適な基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、2-メトキシエチル基、2-シアノエチル基、2-フェニルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基である。
【0064】
Rc14の好適な有機基の例としては、Rc14と同様に、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。また、Rc14としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。
【0065】
有機基の中でも、Rc14としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2-メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上10以下が好ましく、5以上8以下がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2-(4-クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0066】
(オキシムエステル化合物(C3))
オキシムエステル化合物(C3)は、下記式(c3):
【化13】
(上記式(1)中、R
c21は、各々独立に、水素原子、ニトロ基、又は1価の有機基であり、R
c22及びR
c23は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、R
c22とR
c23とは相互に結合して環を形成してもよく、R
c24は1価の有機基であり、R
c25は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、nc11は0以上4以下の整数であり、nc12は0又は1である。)
で表され、下記4)~6):
4)nc11は1以上4以下の整数であり、R
c21の少なくとも1つがHX
2C-又はH
2XC-で表される基を含む置換基である。
5)R
c24がHX
2C-又はH
2XC-で表される基を含む置換基である。
6)R
c25がHX
2C-又はH
2XC-で表される基を含む置換基である。
のうちの少なくとも1つを満たす(ただし、Xは、各々独立に、ハロゲン原子である)化合物である。
【0067】
上記4)のとき、Rc21の内の少なくとも1つは1価の有機基であり、上記1価の有機基の内の少なくとも1つがHX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基に相当し得る。
上記5)のとき、Rc24が1価の有機基であり、上記1価の有機基がHX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基に相当し得る。
上記6)のとき、Rc25が置換基を有する炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基又は置換基を有するアリール基であり、上記置換基を有する脂肪族炭化水素基又は上記置換基を有するアリール基がHX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基に相当し得る。
【0068】
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
HX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基としては、HX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、HX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基、HX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基、HX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基を有する基等が挙げられ、HX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、又はHX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基であることがより好ましい。
【0069】
上記4)のとき、上記Rc21はHX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、又はHX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基であることが好ましく、
上記2)又は3)のとき、上記Rc24又はRc25はHX2C-又はH2XC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基であることが好ましい。
【0070】
式(c3)中、Rc21は、水素原子、ニトロ基又は1価の有機基である。Rc21は、式(c3)中のフルオレン環上で、-(CO)nc12-で表される基に結合する6員芳香環とは、異なる6員芳香環に結合する。式(c3)中、Rc21のフルオレン環に対する結合位置は特に限定されない。式(c3)で表される化合物が1以上のRc21を有する場合、式(c3)で表される化合物の合成が容易であること等から、1以上のRc21のうちの1つがフルオレン環中の2位に結合することが好ましい。Rc21が複数である場合、複数のRc21は同一であっても異なっていてもよい。
【0071】
Rc21が1価の有機基である場合、Rc21は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択されるが、上述のように、上記4)のとき、Rc21の内の少なくとも1つは、1価の有機基であり、上記1価の有機基の内の少なくとも1つがHX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基である。Rc21が1価の有機基である場合の好適な例としては、上記HX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。
【0072】
式(c3)中、Rc22及びRc23は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。Rc22とRc23とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、Rc22及びRc23として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。Rc22及びRc23が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0073】
Rc22及びRc23の好適な基としては、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、2-メトキシエチル基、2-シアノエチル基、2-フェニルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基である。
【0074】
上述のように、Rc24が1価の有機基である場合、上記5)のとき、上記1価の有機基がHX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基である。
Rc24の好適な有機基の例としては、Rc21と同様に、上記HX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。また、Rc24としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基も好ましい。
【0075】
有機基の中でも、Rc24としては、上記HX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2-メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上10以下が好ましく、5以上8以下がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2-(4-クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0076】
式(c3)中、Rc25は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基である。
ただし、上述のように、上記6)のとき、Rc25は置換基を有する炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基又は置換基を有するアリール基であり、上記置換基を有する脂肪族炭化水素基又は上記置換基を有するアリール基がHX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基である。
Rc25が脂肪族炭化水素基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、Rc25がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
【0077】
式(c3)中、Rc25としては、HX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、HX2C-又はH2XC-で表される基を含む置換基、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0078】
上記オキシムエステル化合物(C1)~(C3)は、対応するオキシム基(=N-OH)を有するフルオレン誘導体のアシル化によるオキシムエステルへの変換、HX2C-又はH2XC-で表される基を含むアルコールの芳香族求核置換反応によるHX2C-又はH2XC-で表される基の導入等任意の有機合成反応により製造することができる。
上記オキシムエステル化合物(C1)~(C3)の具体例としては、[11-(2-エチルヘキシル)-5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-8-イル]-[2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-フェニル]-メタノンオキシム O-アセテート、2-[2-メチルフェニル(アセトキシイミノ)アセチル]-9,9-ジ-n-プロピルフルオレン、[2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-フェニル]-(9,9-ジ-n-プロピルフルオレン-2-イル)-メタノンオキシム O-アセテート等を例示することができるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0079】
重合開始剤(C)は、従来公知の重合開始剤であってもよい。
従来公知の光重合開始剤としては、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(ピロール-2-イルカルボニル)-9H-カルバゾル-3-イル],1-(O-アセチルオキシム)、及び1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル化合物、
【0080】
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(すなわち、ミヒラーズケトン)、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン(すなわち、エチルミヒラーズケトン)、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。
【0081】
硬化性組成物が、重合開始剤(C)を含有する場合、重合開始剤(C)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、重合開始剤(C)の含有量は、硬化性組成物の固形分の質量に対して0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、0.05質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.08質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0082】
<フィラー(D)>
硬化性組成物は、フィラー(D)を含んでいてもいなくてもよいが、屈折率を調整ないし向上する観点からは、フィラー(D)を含むことも好ましい。フィラー(E)としては無機フィラー又は有機フィラーが挙げられるが、無機フィラーが好ましい。
硬化性組成物において化合物(A)の含有量が少ない場合であったとしても、硬化性組成物がフィラー(D)を含むことにより屈折率1.60以上を達成することもできる。
無機フィラーとしては、金属酸化物粒子が挙げられる。
金属酸化物粒子としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、ハフニウム、及びタンタルから選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子等が挙げられる。ジルコニウム、チタニウム又はセリウムの酸化物を好ましく用いることができ、高屈折率化の点で、特に好ましくはチタニウム酸化物又はセリウム酸化物である。これら金属酸化物粒子の形状は特に限定されず、平均粒径が動的散乱法で、例えば、200nm以下であり、50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。下限値は、特に限定されず、例えば0.1nm以上であり、2nm以上であってもよい。
フィラー(D)の含有量は、硬化性組成物の溶剤を除く成分のうち、例えば1質量%以上120質量%以下であり、3質量%以上110質量%以下が好ましく、5質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0083】
<ニトロキシ化合物(E)>
硬化性組成物は、ニトロキシ化合物(E)を含んでいてもいなくてもよいが、硬化性を維持する観点(例えば、経時による硬化性低下を抑制する観点)から、ニトロキシ化合物(E)を含むことも好ましい。
上記ニトロキシ化合物としては、ニトロキシドラジカルとして安定に存在し得る化合物であれば特に限定されないが、例えば、ジ-tert-ブチルニトロキシド、ジ-1,1-ジメチルプロピルニトロキシド、ジ-1,2-ジメチルプロピルニトロキシド、ジ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド、及び下記式(E1)、(E2)、又は(E3)で表される化合物が好ましく、下記式(E1)、(E2)、又は(E3)で表される化合物がより好ましい。
【0084】
【0085】
式(E1)、(E2)、及び(E3)中、Re1は、水素原子、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ヘテロ原子で置換されたアルキル基、又はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、若しくはウレタン結合を介して結合した1価の有機基を表す。
Re2は、2価又は3価の有機基を表す。
ne1及びne2は、1≦ne1+ne2≦2を満たす整数である。
ne3及びne4は、1≦ne3+ne4≦2を満たす整数である。
ne5及びne6は、1≦ne5+ne6≦2を満たす整数である。
ne7は、2又は3である。
【0086】
さらに好ましいニトロキシ化合物としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-アテトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-メタクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、3-カルボキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルベンゾアート フリーラジカル、4-イソチオシアナト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、及び4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカルが挙げられる。
ニトロキシ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
硬化性組成物が、ニトロキシ化合物(E)を含有する場合、ニトロキシ化合物(E)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、ニトロキシ化合物(E)の含有量は、硬化性組成物の固形分の質量に対して0.001質量%以上30質量%以下が好ましく、0.005質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0088】
<溶剤(S)>
第1の態様に係る硬化性組成物は、溶剤(S)を含んでいても含んでいなくてもよい。溶剤(S)を含む場合、溶剤(S)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
溶剤(S)は、硬化性組成物の用途に応じて適宜決定すればよいが、一例として、硬化性組成物中の溶剤(S)以外の成分の質量の合計100質量部に対して、50質量部以上900質量部以下程度が挙げられる。
【0090】
<重合性化合物>
第1の態様に係る硬化性組成物は、任意の重合性化合物を含んでいてもいなくてもよく、重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和基を有する樹脂、モノマー又はこれらを組み合わせが挙げられる。
【0091】
(エチレン性不飽和基を有するモノマー)
エチレン性不飽和基を有するモノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。以下、単官能モノマー、及び多官能モノマーについて順に説明する。
【0092】
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチ(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、炭素原子数1以上5以下のアルキレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(中でも、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート)1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
第1の態様に係る硬化性組成物は、上記重合性化合物として使用される樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもいなくてもよい。上記他の樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂等が挙げられる。
【0095】
本明細書においてアルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、濃度0.05質量%のKOH水溶液に1分間浸漬した際に、膜厚0.01μm以上溶解するものをいう。
【0096】
<その他の成分>
第1の態様に係る感光性組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。具体的には、増感剤、硬化促進剤、光架橋剤、分散助剤、充填剤、フィラー、密着促進剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、レべリング剤、フィラー、増粘剤、チキソ性付与剤、界面活性剤等が例示される。
【0097】
第1の態様に係る感光性組成物に使用される熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等を挙げることができる。また、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系等の化合物を、界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン等の化合物を、それぞれ例示できる。
【0098】
(硬化性組成物の調製方法)
第1の態様に係る硬化性組成物は、上記各成分を均一に撹拌、混合し、均一に溶解、分散させた後に、必要に応じて0.2μm以下のメンブランフィルタ、0.5μm以上1μm以下のメンブランフィルタ等のフィルタで濾過して調製することができる。
【0099】
(硬化性組成物の屈折率)
硬化性組成物は、上述のように溶剤(S)を含むか、又は含まず、高屈折率を達成する観点から、溶剤(S)を含まない状態での屈折率が1.6以上であることが好ましく、1.63以上であることがより好ましく、1.65以上であることが更に好ましく、1.7以上であることが特に好ましく、1.75以上であることが最も好ましい。
屈折率の上限としては特に制限はないが、例えば、3以下であり、2.5以下とすることもできる。
本発明において、屈折率とは波長550nmの光線に対する屈折率であることが好ましく、屈折率は特に断らない限り、後記の実施例で測定した条件によるものとする。
また、硬化性組成物の粘度はとしては特に制限はないが、後述のインクジェット法に適用し得る観点から、300cP(mPa・s)以下の範囲が好ましい。硬化性組成物の粘度は、60mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が特に好ましい。下限は特にないが、0.1mPa・s以上である。
なお、上記の粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定される粘度である。
【0100】
(硬化性組成物の用途)
硬化性組成物は、屈折率に優れる硬化物を形成することができる。
また、後述するようにインプリント法又は現像法によるパターン形成に用いることができ、良好な微細パターン(例えば、マイクロレンズアレイパターン、モスアイパターン)を有する、パターン化されている硬化膜を形成することができる。
また、硬化性組成物は、有機溶剤を含む現像液によるパターン形成に好適に用いることができる。
また、硬化性組成物は、後述する各種用途に適用し得る硬化物を形成することができる。
【0101】
≪硬化膜形成方法≫
第2の態様に係る硬化膜形成方法は、第1の態様に係る硬化性組成物を基材上に適用して塗布膜を形成する工程(以下単に「塗布膜形成工程」ともいう。)、及び上記塗布膜を硬化する工程を含む。
第2の態様に係る硬化膜形成方法は、パターン形成工程を更に含むことが好ましく、具体的には、
(1)上記塗布膜表面にモールドを圧接して上記塗布膜にパターン形成する工程を更に含む(インプリント法)、又は
(2)上記塗布膜を硬化させる工程が位置選択的な露光により行われ、位置選択的に露光された前記塗布膜に対して現像を行いパターン形成する工程を更に含むこと(現像法)が好ましい。
上記(2)の現像法において、上記現像はアルカリ現像液又は有機溶剤を含む現像液を用いて行うことができるが、上記現像は有機溶剤を含む現像液を用いて行われることがより好ましい。
【0102】
基材(基板又は支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。また、上記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、又は、非光透過性のものを選択することができる。
【0103】
まず、塗布膜形成工程では、例えば、硬化物が形成されるべき基板上に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、ディスペンサー、インクジェット、スプレー、スクリーン印刷、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて硬化性組成物を適用し、必要に応じて、乾燥(プリベーク)により溶媒を除去して塗布膜を形成することができる。
塗布膜の厚さとしては、特に制限はないが、10nm以上50μm以下であることが好ましく、50nm以上30μm以下であることがより好ましく、100nm以上10μm以下であることが更に好ましく、150nm以上5μm以下であることが特に好ましい。
なお、基板上に盛られた液滴や、凹凸を有する基板の凹部に埋め込めまれた硬化性組成物や、モールドの凹部に充填された硬化性組成物等についても、便宜上「塗布膜」と称する。
第1の態様に係る硬化性組成物はインクジェット法に好適に用い得るため、上記(1)のように、インプリント法によるパターン形成を行う場合、インクジェット法により適用することができる。
【0104】
上記(1)のように、インプリント法によるパターン形成を行う場合、上記塗布膜にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンを上記塗布膜に転写することができる。また、パターンを有するモールドに硬化性組成物を塗布し、基板を押接してもよい。
塗布膜表面に光透過性のモールドを押接し、モールドの裏面から露光し、上記塗布膜を硬化することができる。また、光透過性基材上に硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から露光し、硬化性組成物を硬化させることもできる。
【0105】
モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。光透過性のモールド剤としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0106】
また、非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0107】
上記(1)のように、インプリント法によるパターン形成を行う場合、モールド圧力を10気圧以下で行うことが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
下記露光の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で露光してもよい。露光時における好ましい真空度としては、10-1Paから常圧の範囲である。
【0108】
次いで、形成された塗布膜を硬化することができる。硬化方法は、硬化性組成物を硬化させることができる方法であれば特に限定されず、露光及び/又は加熱を含み、露光を含むことが好ましい。
露光では光源は特に限定されず、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、LED等が挙げられる。このような光源を用い、塗膜にArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線、X線、軟X線、g線、i線、h線、j線、k線等の放射線ないし電磁波を照射して塗布膜を露光し得る。塗布膜に対する露光は、ネガ型のマスクを介して位置選択的に行われてもよい。露光量は硬化性組成物の組成によっても異なるが、例えば10mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下が好ましく、100mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下がより好ましく、200mJ/cm2以上1200mJ/cm2以下が更に好ましい。露光照度は硬化性組成物の組成によっても異なるが、1mW/cm2以上50mW/cm2以下の範囲にすることが好ましい。
加熱を行う際の温度は特に限定されず、180℃以上280℃以下が好ましく、200℃以上260℃以下がより好ましく、220℃以上250℃以下が特に好ましい。加熱時間は、典型的には、1分以上60分以下が好ましく、10分以上50分以下がより好ましく、20分以上40分以下が特に好ましい。
【0109】
上記(2)の現像法のように、上記塗布膜を硬化させる工程が位置選択的な露光により行われ、位置選択的に露光された上記塗布膜に対して現像して、パターン化された硬化膜を得ることができる。
前述の硬化性組成物は、露光後に現像液に対して過度に溶解しにくい。このため、前述の硬化性組成物を用いることにより、露光部を凸部とし、未露光部を凹部とする、良好な形状のパターン化された硬化物を形成することができる。
【0110】
現像工程では、露光された塗膜を現像液で現像することにより、所望する形状にパターン化された硬化物が形成される。現像方法は特に限定されず、浸漬法、スプレー法、パドル法、ダイナミックディスペンス法等を用いることができる。
有機溶剤を含む現像液の具体例としては、PE(プロピレングリコールモノメチルエーテル)等のアルコール系溶剤ないしグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
アルカリ現像液の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【0111】
そして、必要に応じ、露光後の硬化物、又は現像後のパターン化された硬化物にポストベークを施してさらに加熱硬化を進めてもよい。ポストベークの温度は150℃以上270℃以下が好ましい。
【0112】
≪硬化物≫
第3の態様に係る硬化物は、第1の態様に係る硬化性組成物を硬化してなることから、屈折率に優れ、また、良好な微細パターン(例えば、マイクロレンズアレイパターン、モスアイパターン等)も有し得、また、耐熱性及び透明性も良好である。
硬化物の屈折率としては1.6以上であることが好ましく、1.63以上であることがより好ましく、1.65以上であることが更に好ましく、1.7以上であることが特に好ましく、1.75以上であることが最も好ましい。
屈折率の上限としては特に制限はないが、例えば、3以下であり、2.5以下とすることもできる。
硬化物が硬化膜である場合、硬化膜の厚さとしては、特に制限はないが、10nm以上50μm以下であることが好ましく、50nm以上30μm以下であることがより好ましく、100nm以上10μm以下であることが更に好ましく、150nm以上5μm以下であることが特に好ましい。
また、第4の態様に係るパターン化されている硬化膜は、上記硬化物からなるので、上記良好な微細パターンを有し得る。
【0113】
≪硬化物の用途≫
上記硬化物は、以下説明する各種透明光学部材として好適である。
例えば、ヘッドアップディスプレイないしヘッドマウントディスプレイ装置、プロジェクター等における透過型透明スクリーン、反射型透明スクリーン等は、光源からの投影光の視認性及び透過光(若しくは反射光)の視認性の両立が要求される。
上記硬化物は屈折率に優れ、また、良好な微細パターン(例えば、マイクロレンズアレイパターン、モスアイパターン等)有し得ることから、ヘッドアップディスプレイないしヘッドマウントディスプレイ装置、プロジェクター等における透過型透明スクリーン、反射型透明スクリーン等として好適である。
また、透明光学部材(レンズ、マイクロレンズ、ウェハレベルレンズ、光ファイバー、光導波路、プリズムシート、ホログラム、高屈折フィルム、再帰反射フィルム)、光配線部材、回折格子などの光学部材等の種々の用途に好適である。
また、上記硬化物は、屈折率に優れ、また、光散乱反射に良好な微細パターン(例えば、マイクロレンズアレイパターン、モスアイパターン等)有し得ることから、OLED表示素子、OLED照明等における光源の輝度を向上し得る光拡散シートとしても好適である。
【0114】
(その他の用途)
該硬化物は、例えば、OLED表示素子用封止材、OLED照明、ハードコート、絶縁膜、反射防止膜、層間絶縁膜、カーボンハードマスク、ディスプレイパネル材料(平坦化膜、カラーフィルタの画素、有機EL用隔壁、スペーサ)等の種々の用途に好適である。
また、硬化物は、タッチパネル等の表示素子において、金属配線等を被覆する透明被膜として好ましく使用される。
【実施例】
【0115】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0116】
実施例1~6では、化合物(A)として、下記式で表される化合物a1を用いた。
【0117】
【0118】
一方、後述の比較例1では、下記式で表される比較化合物1を用いた。
【化16】
【0119】
また、各実施例及び比較例において、化合物(B)として化合物b1(2-フェニルフェニルメタクリレート)を用いた。
また、各実施例及び比較例において、重合開始剤(C)として、下記式で表される化合物c1又は化合物c2(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を用いた。
【化17】
【0120】
〔実施例1~3〕
下記表1に記載の種類及び量の化合物(A)及び化合物(B)をそれぞれ均一に混合して、各実施例の硬化性組成物を得た。下記条件にて屈折率を測定した。
(屈折率)
多波長アッベ屈折計(アタゴ社製、DR-M2<循環式恒温水槽60-C3>)を用いて、温度25℃、550nmでの屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【表1】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1~3の硬化性組成物は屈折率に優れることが分かる。
【0121】
〔実施例4及び5〕
下記表2に記載の種類及び量の、化合物(A)、化合物(B)、及び重合開始剤(C)を室温にて遠心攪拌機(錬太郎(シンキー社製))にてそれぞれ均一に混合して、各実施例の硬化性組成物を得た。
下記条件にて粘度を測定し、また、後述のようにインプリント法によるパターニングも行った。
(粘度)
硬化性組成物の調製直後の粘度(cP)を、E型粘度計(TV-20型、コーンプレートタイプ、東機産業株式会社製)を用いて測定した。また、硬化性組成物の粘度を、25℃で保存した後に測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0122】
(インプリント法によるパターニング)
各実施例の硬化性組成物を、それぞれ、シリコンウエハ基板上にスピンコーターで塗布して塗布膜を得た。200Paの真空条件下、上記塗布膜をインプリンターを用いてPET製モールドを上記塗布膜上に0.8kNの押圧条件にて押圧した。その後、基板全面に紫外線照射装置により紫外線を波長365nm、露光量1J/cm2、照度33mW、30秒間の条件にて照射して硬化後、上記モールドを離間することにより高さ180nm、ピッチ450nm及び幅230nmのマイクロレンズアレイパターンを有する硬化膜を、実施例4及び5の硬化性組成物いずれについても良好に形成することができた。
【0123】
〔実施例6及び比較例1〕
下記表3に記載の種類及び量の、化合物(A)のメチルエチルケトン40質量%溶液、化合物(B)のメチルエチルケトン40質量%溶液、及び重合開始剤(C)をそれぞれ均一に混合して、実施例6及び比較例1の硬化性組成物を得た。表3中、質量%は組成物の固形分に対する質量%である。
【表3】
【0124】
実施例6及び比較例1の硬化性組成物をそれぞれ基板上にスピンコーターで塗布して膜厚3μmの塗布膜を得た。上記塗布膜に紫外線露光機により250mJ/cm2にてマスクを用いて位置選択的にブロードバンド露光を行った。
上記露光後の膜について、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はアセトンを用いて現像を行った。
【0125】
上記一般式(1)で表される化合物(A)を含む実施例6の硬化性組成物から形成した膜を現像した場合、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びアセトンのいずれについても良好なパターンが形成された。
一方、化合物が上記一般式(1)の要件を満たさない比較例1の硬化性組成物から形成した膜を現像した場合、膜の一部が溶解し膜にクラックが生じパターンが形成されなかった。