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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220222BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20220222BHJP
   H04L 25/38 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G01D5/347 110L
H04L25/02 V
H04L25/38 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018004922
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019124568
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 博和
(72)【発明者】
【氏名】河合 章生
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-065802(JP,A)
【文献】特開2006-284521(JP,A)
【文献】特開2011-064654(JP,A)
【文献】特開2012-145359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01D 5/26- 5/38
H04L 25/00-25/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する発光部と、
前記発光部が発した光の少なくとも一部を通過させる、それぞれパターンが異なる複数のトラックを有するスケールと、
前記複数のトラックのそれぞれを介して受けた光の強度に応じた光信号を出力する複数の受光素子を有する受光部と、
前記複数の光信号を時分割多重化したシリアル信号を生成し、生成した前記シリアル信号を送信する信号生成部と、
を有し、
前記信号生成部は、前記複数の光信号の全てを時分割多重化して1つの前記シリアル信号を生成するモードと、前記複数の光信号を2つのグループに分けてグループごとに時分割多重化して2つの前記シリアル信号を生成するモードとを切り替えることができる、測定装置。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記複数の光信号のレベルを所定の時間にわたって保持するレベル保持部を有し、前記レベル保持部が保持した前記複数の光信号を時分割多重化してシリアル信号を生成する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記信号生成部は、第1位相の複数の光信号を時分割多重化した第1シリアル信号と、前記第1位相と180度の位相差がある第2位相の複数の光信号を時分割多重化した第2シリアル信号を送信する、
請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記信号生成部は、前記シリアル信号の波形を調整する波形調整部を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記信号生成部が生成した前記シリアル信号を伝送する伝送路と、
前記伝送路を介して受信した前記シリアル信号から抽出した前記複数の光信号に基づいて、前記スケールと前記受光部との位置関係を特定する位置特定部と、
をさらに有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記信号生成部は、
前記複数の光信号のうちの1つの光信号を選択する選択部と、
前記選択部が前記1つの光信号を選択するための選択信号を生成する選択信号生成部と、
を有する、
請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記選択信号生成部は、前記複数の光信号の周期よりも短い周期で切り替わる前記選択信号を生成する、
請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記選択信号生成部は、前記伝送路を介して前記位置特定部から受信したクロックに同期して前記選択信号を生成する、
請求項6又は7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記信号生成部は、前記位置特定部が前記シリアル信号に含まれる前記複数の光信号を取得するタイミングを規定するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部を有する、
請求項7又は8に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダを有する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スケールと受光素子との位置関係を特定することにより被測定物の位置や変位量を測定する測定装置として光学式エンコーダが知られている。特許文献1には、スケールに設けられた複数のトラックを介して受けた光の強さに対応する複数の光信号を出力する光学式エンコーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5976279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のトラックを介して取得した複数の光信号に基づいて絶対位置を特定するためには、複数の光信号に基づいて絶対位置を演算するための処理装置に複数の光信号を伝送させる必要がある。複数の光信号を伝送させるためには光信号の数に相当する伝送路が必要であり、プリント基板に形成される伝送路の面積が大きくなったり、伝送路として用いられるケーブルが太くなったりするという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、複数の光信号に基づいて絶対位置を測定する測定装置における伝送路の数を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る測定装置は、光を発する発光部と、前記発光部が発した光の少なくとも一部を通過させる、それぞれパターンが異なる複数のトラックを有するスケールと、前記複数のトラックのそれぞれを介して受けた光の強度に応じた光信号を出力する複数の受光素子を有する受光部と、前記複数の光信号を時分割多重化したシリアル信号を生成し、生成した前記シリアル信号を送信する信号生成部と、を有する。
【0007】
前記信号生成部は、前記複数の光信号のレベルを所定の時間にわたって保持するレベル保持部を有し、前記レベル保持部が保持した前記複数の光信号を時分割多重化してシリアル信号を生成してもよい。
【0008】
前記信号生成部は、第1位相の複数の光信号を時分割多重化した第1シリアル信号と、前記第1位相と180度の位相差がある第2位相の複数の光信号を時分割多重化した第2シリアル信号を送信してもよい。また、前記信号生成部は、前記シリアル信号の波形を調整する波形調整部を有してもよい。
【0009】
前記測定装置は、前記信号生成部が生成した前記シリアル信号を伝送する伝送路と、前記伝送路を介して受信した前記シリアル信号から抽出した前記複数の光信号に基づいて、前記スケールと前記受光部との位置関係を特定する位置特定部と、をさらに有してもよい。
【0010】
前記信号生成部は、前記複数の光信号のうちの1つの光信号を選択する選択部と、前記選択部が前記1つの光信号を選択するための選択信号を生成する選択信号生成部と、を有してもよい。前記選択信号生成部は、例えば、前記複数の光信号の周期よりも短い周期で切り替わる前記選択信号を生成する。前記選択信号生成部は、前記伝送路を介して前記位置特定部から受信したクロックに同期して前記選択信号を生成してもよい。
【0011】
前記信号生成部は、前記位置特定部が前記シリアル信号に含まれる前記複数の光信号を取得するタイミングを規定するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部を有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の光信号に基づいて絶対位置を測定する測定装置における伝送路の数を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】測定装置の構成を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る信号生成部の構成を示す図である。
図3】信号生成部が出力するシリアル信号とクロックとのタイミング関係を示す図である。
図4】第2実施形態に係る信号生成部の構成を示す図である。
図5】信号生成部が出力するシリアル信号とクロックとのタイミング関係を示す図である。
図6】第3実施形態に係る信号生成部の構成を示す図である。
図7】信号生成部が出力するシリアル信号とクロックとのタイミング関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[測定装置Sの構成]
図1は、測定装置Sの構成を模式的に示す図である。測定装置Sは、インクリメンタル方式及びアブソリュート方式を用いて、被測定物の位置を測定するための装置である。インクリメンタル方式は、動作開始後に設定された初期位置に対するスケールの相対位置を連続して特定し続けることにより位置の測定を行う方式である。アブソリュート方式は、動作開始前から予め定められている測定基準位置に対するスケールの絶対位置を特定することにより位置の測定を行う方式である。
【0015】
測定装置Sは、光源1と、レンズ2と、光学格子3と、スケール4と、受光ユニット5と、ケーブル6と、処理装置7とを備える。光源1、レンズ2、光学格子3、スケール4及び受光ユニット5は、位置検出エンコーダとして機能する。ケーブル6は、受光ユニット5が送信するシリアル信号を伝送する伝送路として機能する。処理装置7は、伝送路としてのケーブル6を介して、受光ユニット5を制御するための制御データを含むシリアル信号を送信する。また、処理装置7は、受光ユニット5から受信したシリアル信号に含まれる複数の光信号に基づいて、スケール4と受光ユニット5との位置関係を特定する位置特定部として機能する。
【0016】
光源1は、光を発する発光部として機能するデバイスであり、例えばLED(Light Emitting Diode)である。光源1は、レンズ2に向けて光を発する向きに設けられている。
【0017】
レンズ2は、光源1が発した光がスケール4の所定の領域を照明するように、光源1から入射した光の向きを変える。具体的には、レンズ2は、光源1が発した光が、スケール4に形成された複数のトラックを通過して受光ユニット5に到達するように、光源1が発した光を平行光線に変換する。レンズ2において平行光線に変換された光は、光学格子3に入射する。
【0018】
光学格子3は、レンズ2を介して入射した光の照度を均一化させる。具体的には、光学格子3は、レンズ2から入射される平行光線の照度分布が、受光ユニット5内の光を検知する領域において均一になるようにする。なお、レンズ2から発せられる平行光線の照度分布が十分に均一である場合、測定装置Sに光学格子3が設けられていなくてもよい。
【0019】
スケール4は、光源1が発した光の少なくとも一部を通過させる、それぞれパターンが異なる複数のトラックを有するパネルである。スケール4は、長手方向に、光を透過する領域と光を透過しない領域とが順次配置された第1トラック41、第2トラック42及び第3トラック43を有する。スケール4は、第1トラック41、第2トラック42及び第3トラック43において、光学格子3を介して入射した光を部分的に透過させて、受光ユニット5内の位置によって強度が異なる透過光を発生させる。
【0020】
第1トラック41及び第3トラック43は、アブソリュート方式で被測定物の位置を特定するために用いられるアブソリュートスケールパターン(以下、ABSパターンという)である。第1トラック41のパターンの周期は、第3トラック43のパターンの周期と異なる。
【0021】
第2トラック42は、インクリメンタル方式で被測定物の位置を特定するために用いられるインクリメンタルスケールパターン(以下、INCパターンという)である。第2トラック42のパターンの周期は、第1トラック41のパターンの周期及び第3トラック43のパターンの周期よりも短い。
【0022】
受光ユニット5は、受光部51と、信号生成部52と、通信部53とを有する。
受光部51は、第1トラック41を通過した光に基づいて、それぞれ位相が異なる複数の第1光信号を出力する。受光部51は、第2トラック42を通過した光に基づいて、それぞれ位相が異なる複数の第2光信号を出力する。受光部51は、第3トラック43を通過した光に基づいて、それぞれ位相が異なる複数の第3光信号を出力する。
【0023】
受光部51は、それぞれ位相が異なる複数の光信号を出力するために、第1トラック41、第2トラック42及び第3トラック43のそれぞれを介して受けた光の強度に応じた光信号を出力する複数の受光素子を有する。複数の受光素子は、例えば、光を電流に変換する光電素子である。
【0024】
第1トラック41を介して光を受ける複数の第1受光素子は、第1トラック41に形成されたABSパターンの1周期内に4個の割合でスケール4の長手方向に配列されている。第2トラック42を介して光を受ける複数の第2受光素子は、第2トラック42に形成されたINCパターンの1周期内に4個の割合でスケール4の長手方向に配列されている。第3トラック43を介して光を受ける複数の第3受光素子は、第3トラック43に形成されたABSパターンの1周期内に4個の割合でスケール4の長手方向に配列されている。
【0025】
スケール4に形成されたパターンの1周期内に4個の受光素子が入れてされているので、4個の受光素子は、それぞれ90度ずつ位相が異なる4つの光信号を出力する。本明細書においては、それぞれ位相が異なる4つの光信号を、A信号、AB信号、B信号及びBB信号という。B信号は、A信号に対して位相が90度遅れている。AB信号は、A信号に対して位相が180度遅れている。BB信号は、A信号に対して位相が270度遅れている。
【0026】
受光部51は、第1トラック41、第2トラック42及び第3トラック43のそれぞれに対応するA信号、AB信号、B信号及びBB信号を生成する。すなわち、受光部51は、第1トラック41、第2トラック42及び第3トラック43のそれぞれを介して受けた光に基づいて12の光信号を生成し、生成した光信号を信号生成部52に入力する。
【0027】
信号生成部52は、受光部51から入力された複数の光信号を時分割多重化してシリアル信号を生成する。信号生成部52は、生成したシリアル信号を、ケーブル6を介して処理装置7に送信する。信号生成部52の構成例の詳細については後述する。
【0028】
通信部53は、ケーブル6を介して処理装置7との間でクロック及び制御データを送受信する。通信部53は、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)に対応する通信用デバイスであり、処理装置7からクロックSK及び入力データDIを受信し、処理装置7に対して出力データDOを送信する。
以下、信号生成部52の詳細について説明する。
【0029】
[信号生成部52の第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係る信号生成部52aの構成を示す図である。信号生成部52aは、入力アンプ521と、信号選択部522と、出力アンプ523(523-1、523-2)と、DAコンバータ524(524-1、524-2)と、制御部525とを有する。信号生成部52aは、例えばデジタル回路とアナログ回路とが混在した集積回路である。
【0030】
入力アンプ521は、受光部51から入力された光電流信号を電圧信号に変換する。図2に示す例において、信号生成部52aは、12個の入力アンプ521を有する。なお、図2におけるM1AからM1BBまでの信号は、第1トラック41に対応するA信号、AB信号、B信号及びBB信号である。同様に、M2AからM2BBまでの信号及びM3AからM3BBまでの信号は、それぞれ第2トラック42及び第3トラック43に対応するA信号、AB信号、B信号及びBB信号である。
【0031】
信号選択部522は、複数の光信号のうちの1つの光信号を選択信号として出力する。具体的には、信号選択部522は、複数の入力アンプ521のそれぞれの出力端子に一端が接続され、他端が出力アンプ523-1又は出力アンプ523-2のいずれかの入力端子に接続された複数のスイッチを有する。図2に示す例においては、A信号及びB信号に対応するスイッチの他端は出力アンプ523-1に接続されており、AB信号及びBB信号に対応するスイッチの他端は出力アンプ523-2に接続されている。
【0032】
信号選択部522は、制御部525の制御に基づいて、同一の出力アンプ523に他端が接続されている複数のスイッチのうち一個のスイッチを導通状態とし、他のスイッチを非導通状態とすることができる。このようにすることで、信号選択部522は、複数のA信号及びB信号のうちの1つの光信号を出力アンプ523-1に入力し、複数のAB信号及びBB信号のうちの1つの光信号を出力アンプ523-2に入力することができる。
【0033】
信号選択部522は、制御部525から入力される選択信号に基づいて、導通状態にするスイッチを選択する。選択信号は、信号選択部522が有するスイッチの数に対応するビット幅(例えば6ビット)のデータである。信号選択部522は、例えば選択信号の下位3ビットが000、001、010、011、100、101の場合に、それぞれM1A信号、M1B信号、M2A信号、M2B信号、M3A信号、M3B信号を出力アンプ523-1に入力するためのスイッチを導通状態にする。また、信号選択部522は、選択信号の上位3ビットが000、001、010、011、100、101の場合に、それぞれM1AB信号、M1BB信号、M2AB信号、M2BB信号、M3AB信号、M3BB信号を出力アンプ523-1に入力するためのスイッチを導通状態にする。
【0034】
出力アンプ523は、信号選択部522を介して入力された光信号の波形を調整する波形調整部として機能する。具体的には、出力アンプ523は、入力された光信号のオフセットを変化させたり、光信号を増幅させたりすることにより調整した後の光信号をケーブル6へと出力する。出力アンプ523は、処理装置7から制御データを受信した制御部525の制御に基づいて増幅率を多段階で切り替えることができる。出力アンプ523-1は、増幅後の光信号をOUT1端子から出力し、出力アンプ523-2は、増幅後の光信号をOUT2端子から出力する。
【0035】
DAコンバータ524は、制御部525の制御に基づいて、出力アンプ523が有する増幅器のオフセットキャンセル電圧を発生する。DAコンバータ524は、例えば、増幅器のオフセット成分をキャンセルするためのオフセットキャンセル電圧を出力する。DAコンバータ524-1は、出力アンプ523-1に入力されるオフセットキャンセル電圧を発生し、DAコンバータ524-2は、出力アンプ523-2に入力されるオフセットキャンセル電圧を発生する。
【0036】
制御部525は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を有する。制御部525は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、通信部53を介して処理装置7から受信した制御データに基づいて信号生成部52の各部を制御する。例えば、制御部525は、制御データに基づいて出力アンプ523及びDAコンバータ524を制御することで、光信号のオフセットを調整したり、光信号の振幅を調整したりする。
【0037】
また、制御部525は、信号選択部522が出力アンプ523-1又は出力アンプ523-2に入力する1つの光信号を選択するための選択信号を生成する選択信号生成部として機能する回路を有する。制御部525は、ケーブル6を介して処理装置7から受信したクロックSKに同期して選択信号を生成する。
【0038】
制御部525は、受光部51から入力される複数の光信号の周期よりも短い周期で切り替わる選択信号を生成する。ここで、測定装置Sの仕様で規定されている最大変位速度でスケール4が移動した場合に生じる第2トラック42に対応する光信号の周期をT1とする。また、光信号の多重数、すなわち、出力アンプ523-1又は出力アンプ523-2に入力される光信号の数をMとする。この場合、制御部525が生成する選択信号の切り替わり時間間隔T2は、T2≦T1÷2÷Mとなるように設定されている。
【0039】
上記の条件を満たすようにT2が設定されていることにより、複数の光信号のそれぞれは、各光信号の周波数の2倍以上の周波数(すなわち、ナイキスト周波数以上の周波数)でサンプリングされ、時分割多重化されたシリアル信号として処理装置7へと出力される。したがって、処理装置7は、シリアル信号に含まれている光信号に基づいて、受光部51が出力した光信号を再生することができる。
【0040】
図3は、信号生成部52aが出力するシリアル信号とクロックSKとのタイミング関係を示す図である。入力データDIは、処理装置7が出力するデータであり、信号生成部52aがシリアル信号を送信可能な期間を示すデータである。制御部525は、処理装置7がシリアル信号に含まれる複数の光信号を取得するタイミングを規定するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部としても機能する。具体的には、制御部525は、入力データDIがロウレベルになったことを検出すると、処理装置7が光信号の取得に使用するタイミング信号として、クロックSKを時間tだけ遅延させた出力データDOを生成し、生成した出力データDOを通信部53に出力させる。
【0041】
クロックSKの立ち下がりタイミングに同期して選択信号の値が切り替わることにより、クロックSKの立ち下がりタイミングに同期して、OUT1端子から出力される第1シリアル信号であるOUT1信号が、順次M1A信号、M1B信号、M2A信号、M2B信号、M3A信号及びM3B信号に切り替わっている。同様に、OUT2端子から出力される第2シリアル信号であるOUT2信号が、順次M1AB信号、M1BB信号、M2AB信号、M2BB信号、M3AB信号及びM3BB信号に切り替わっている。OUT1信号は第1位相の複数の光信号が時分割多重化されており、OUT2信号は、第1位相と180度の位相差がある第2位相の複数の光信号が時分割多重化されている。このように、180度の位相差がある複数の光信号をOUT1信号及びOUT2信号として同時に送信することで、受信側で同相ノイズを除去しやすくなる。
【0042】
処理装置7は、ケーブル6等の伝送路を介して受信したシリアル信号から抽出した複数の光信号に基づいて、スケール4と受光部51との位置関係を特定する。処理装置7は、ケーブル6を介して受信したOUT1信号に含まれている光信号を、出力データDOの立ち上がりタイミングで取得する。処理装置7は、例えば出力データDOの立ち上がりタイミングで割り込み処理を実行することにより、OUT1信号及びOUT2信号を取得する。出力データDOは、クロックSKに対して時間tだけ遅延しているので、OUT1信号及びOUT2信号が変化しないタイミングで立ち上がる。したがって、処理装置7は、OUT1信号及びOUT2信号の値が安定したタイミングで、OUT1信号及びOUT2信号を取得することができるので、データ誤りが発生する確率が低い。
【0043】
処理装置7は、OUT1信号及びOUT2信号に含まれているM1A信号、M1B信号、M1AB信号及びM1BB信号に基づいて、第1トラック41に形成されているABSパターンの1周期内の位置を特定する。また、処理装置7は、OUT1信号及びOUT2信号に含まれているM3A信号、M3B信号、M3AB信号及びM3BB信号に基づいて、第3トラック43に形成されているABSパターンの1周期内の位置を特定する。
【0044】
そして、処理装置7は、特定した第1トラック41に形成されているABSパターンの1周期内の位置、及び第3トラック43に形成されているABSパターンの1周期内の位置の組合せに基づいて位相合成することで、スケール4に対する受光ユニット5の絶対位置を特定する。処理装置7は、OUT1信号及びOUT2信号に含まれているM2A信号、M2B信号、M2AB信号及びM2BB信号に基づいて、基準位置に対する相対位置をさらに特定してもよい。
【0045】
[通信部53の動作モード]
信号生成部52は、通信部53を介して処理装置7から受信する制御データに基づいて、通信部53を介してシリアル信号として送信する光信号のオフセットや振幅を調整する。通信部53は、処理装置7から送信されるクロックSKに同期して制御データを含む入力データDIを取得し、取得した入力データDIを制御部525に通知する。また、通信部53は、クロックSKに同期して制御部525が生成した出力データDOを処理装置7に送信する。
【0046】
制御部525は、制御データを受信する処理と出力データDOを送信する処理とを並行して実施することができるが、外部からの指示に基づいて、制御データを受信する動作モードと出力データDOを送信する動作モードとを切り替えてもよい。制御部525がこのように動作モードを切り替えることで、出力データDOを送信する処理を実行中の負荷を軽減できるので、ソフトウェアにより処理を実現しやすくなる。
【0047】
以上のとおり、信号生成部52aは、受光部51から入力された12の光信号のうち、M1A信号、M1B信号、M2A信号、M2B信号、M3A信号及びM3B信号を時分割多重化してOUT1信号を生成する。また、信号生成部52aは、M1AB信号、M1BB信号、M2AB信号、M2BB信号、M3AB信号及びM3BB信号を時分割多重化してOUT2信号を生成する。このようにすることで、受光ユニット5は、2本の伝送路を用いて12の光信号を処理装置7に送信することができるので、受光ユニット5と処理装置7との間をケーブル6で接続する場合であっても、ケーブル6の太さを抑制することができる。
【0048】
[信号生成部52の第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る信号生成部52bの構成を示す図である。図5は、信号生成部52bが出力するシリアル信号とクロックSKとのタイミング関係を示す図である。
【0049】
信号生成部52bは、図2に示した信号生成部52aにおける入力アンプ521の代わりに、入力アンプ526を有する点で異なり、他の点で同じである。入力アンプ526は、入力アンプ521の後段に、複数の光信号のレベルを所定の時間にわたって保持するレベル保持部として機能するサンプルホールド回路を有している。入力アンプ526は、制御部525の制御に基づいて、受光部51から入力された光信号のレベルを所定のタイミングで取り込んで、取り込んだレベルを保持した状態で信号選択部522に出力し続ける。信号選択部522は、入力アンプ526から出力される、保持された光信号のレベルを順次出力アンプ523-1及び出力アンプ523-2に入力する。
【0050】
図5に示す例においては、制御部525が、入力データDIの立ち下がりタイミングからtshの遅延時間の後にSH信号をロウレベルに変化させることで、入力アンプ526に光信号のレベルを取り込ませる。OUT1端子からは、SH信号がロウレベルに変化したタイミングにおけるM1A信号、M1B信号、M2A信号、M2B信号、M3A信号及びM3B信号が時分割多重化されたシリアル信号が出力される。また、OUT2端子からは、SH信号がロウレベルに変化したタイミングにおけるM1AB信号、M1BB信号、M2AB信号、M2BB信号、M3AB信号及びM3BB信号が時分割多重化されたシリアル信号が出力される。
【0051】
このように、信号生成部52bは、複数の光信号を同時にサンプリングして保持し、保持して得られた光信号の値を時分割多重化して送信する。このようにすることで、光源1の点灯時間を短くすることができるので消費電流を削減することができるとともに、同じタイミングにおける複数の光信号の値を送信することが可能になる。
【0052】
また、処理装置7においては、受信したシリアル信号に含まれている複数の光信号の値に基づいて複数の光信号の波形を再生させず、光信号の値をそのまま用いても、スケール4と受光ユニット5との間の位置関係を高い精度で特定できる。この場合、制御部525が光信号の半周期よりも長い時間間隔で信号選択部522を切り替えても、同じタイミングの複数の光信号の値を取得できる。その結果、処理装置7は、スケール4が高速に動く場合であっても、スケール4と受光ユニット5との間の位置関係を特定することが可能になる。
【0053】
[信号生成部52の第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係る信号生成部52cの構成を示す図である。図7は、信号生成部52cが出力するシリアル信号とクロックSKとのタイミング関係を示す図である。
【0054】
信号生成部52cは、図4に示した信号生成部52bにおける信号選択部522の代わりに、信号選択部527を有する点で異なり、他の点で同じである。信号選択部527は、信号生成部52に入力される全ての光信号を出力アンプ523-1に入力できるように、全ての光信号のそれぞれに対応するスイッチを有している。信号選択部527がこのような構成を有することにより、図7に示すように、信号生成部52は、M1A信号、M1B信号、M2A信号、M2B信号、M3A信号、M3B信号、M1AB信号、M1BB信号、M2AB信号、M2BB信号、M3AB信号及びM3BB信号を時分割多重化したシリアル信号をOUT1端子から出力させることができる。その結果、受光ユニット5と処理装置7とを接続するケーブル6の数をさらに減らしたり、プリント基板の配線の面積を減らしたりすることができる。
【0055】
また、信号選択部527は、M1A信号、M1B信号、M2A信号、M2B信号、M3A信号及びM3B信号を出力アンプ523-2に入力させるためのスイッチも有する。信号選択部527は、制御部525の制御に基づいて、当該スイッチを用いるか否かを切り替えることができる。すなわち、信号生成部52は、図7に示すように全ての光信号を時分割多重化させて1つのシリアル信号を生成するモードと、図5に示すように信号生成部52に入力される複数の光信号を2つのグループに分けてグループごとに時分割多重化して2つのシリアル信号を生成するモードとを切り替えることができる。信号生成部52がこのような構成を有することにより、使用可能なケーブル6の本数や光信号の最小周期等に応じて、信号生成部52の使用者が最適なモードを選択できる。
【0056】
[変形例1]
図2に示した第1実施形態の信号生成部52aが、信号選択部522の代わりに、図6に示した第3実施形態の信号生成部52cにおける信号選択部527を有してもよい。この場合、信号生成部52aが、1つのシリアル信号を生成するモードと、2つのグループに分けてグループごとに時分割多重化して二つのシリアル信号を生成するモードとを切り替えることが可能になる。
【0057】
[変形例2]
信号生成部52は、第1実施形態の信号生成部52a及び第2実施形態の信号生成部52bが生成する2つのシリアル信号と異なる組合せの複数の光信号を含む2つのシリアル信号を生成してもよい。例えば、信号生成部52は、1つのトラックに対応する4つの光信号を時分割多重化した3つのシリアル信号を生成し、3つのシリアル信号を処理装置7に送信してもよい。
【0058】
[変形例3]
以上の説明においては、測定装置Sがインクリメンタル方式及びアブソリュート方式の両方に対応している場合を例示したが、測定装置Sがインクリメンタル方式又はアブソリュート方式のいずれか一方のみを有していてもよい。
【0059】
[変形例4]
以上の説明においては、受光ユニット5と位置特定部としての処理装置7との間の伝送路がケーブル6である場合を例示したが、伝送路はケーブル6に限定されない。受光ユニット5と処理装置7とが同一のプリント基板に設けられており、プリント基板に形成された導電パターンが伝送路として機能してもよい。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0061】
1 光源
2 レンズ
3 光学格子
4 スケール
5 受光ユニット
6 ケーブル
7 処理装置
51 受光部
52 信号生成部
53 通信部
521 入力アンプ
522 信号選択部
523 出力アンプ
524 DAコンバータ
525 制御部
526 入力アンプ
527 信号選択部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7