(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法および分析プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/20 20190101AFI20220222BHJP
G06F 16/28 20190101ALI20220222BHJP
G06F 16/906 20190101ALI20220222BHJP
A61B 5/35 20210101ALI20220222BHJP
A61B 5/372 20210101ALI20220222BHJP
A61B 5/397 20210101ALI20220222BHJP
A61B 5/398 20210101ALI20220222BHJP
【FI】
G06F16/20
G06F16/28
G06F16/906
A61B5/35
A61B5/372
A61B5/397
A61B5/398
(21)【出願番号】P 2018106525
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】税所 修
(72)【発明者】
【氏名】塚田 信吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 実
(72)【発明者】
【氏名】岡田 崇
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-536053(JP,A)
【文献】特開平02-005925(JP,A)
【文献】米国特許第05092343(US,A)
【文献】特開2003-334219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0126821(US,A1)
【文献】市川 かおる,外1名,「筋電信号を用いた顔の動作識別インタフェースシステムの開発」,FIT2011 第10回情報科学技術フォーラム 講演論文集 第2分冊,日本,一般社団法人情報処理学会 社団法人電子情報通信学会,2011年08月22日,p.559-560
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
A61B 5/35-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列の生体信号を取得する取得部と、
取得された生体信号を行動単位に分割する分割部と、
分割された行動単位の生体信号の波形を
、ユーザのスキルレベルまたは筋疲労度によって異なるパターンごとに分類する分類部と、
前記時系列の生体信号における各パターンの出現時点を特定
し、特定した前記出現時点を用いて、前記時系列の生体信号における各パターンの時系列に移動する所定幅の移動窓内での出現頻度を算出し、該出現頻度の変化を出力する特定部と、
を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記パターンごとの標準波形を記憶する記憶部をさらに備え、
前記分類部は、前記標準波形を用いて前記生体信号の波形を分類することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記分類部は、分類した前記パターンごとの標準波形を抽出して記憶部に記憶させることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
分析装置で実行される分析方法であって、
時系列の生体信号を取得する取得工程と、
取得された生体信号を行動単位に分割する分割工程と、
分割された行動単位の生体信号の波形を
、ユーザのスキルレベルまたは筋疲労度によって異なるパターンごとに分類する分類工程と、
前記時系列の生体信号における各パターンの出現時点を特定
し、特定した前記出現時点を用いて、前記時系列の生体信号における各パターンの時系列に移動する所定幅の移動窓内での出現頻度を算出し、該出現頻度の変化を出力する特定工程と、
を含んだことを特徴とする分析方法。
【請求項5】
時系列の生体信号を取得する取得ステップと、
取得された生体信号を行動単位に分割する分割ステップと、
分割された行動単位の生体信号の波形を
、ユーザのスキルレベルまたは筋疲労度によって異なるパターンごとに分類する分類ステップと、
前記時系列の生体信号における各パターンの出現時点を特定
し、特定した前記出現時点を用いて、前記時系列の生体信号における各パターンの時系列に移動する所定幅の移動窓内での出現頻度を算出し、該出現頻度の変化を出力する特定ステップと、
をコンピュータに実行させるための分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、分析方法および分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体信号の信号強度や周波数に注目した分析が行われている。例えば、筋電位のRMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)やMNF(MeaN Frequency:平均周波数)等を用いて、筋疲労度や行動のスキルが定量的に表されている。ここでは、筋疲労度が増すにつれ、RMSが増大し、MNFが減少するとされている(非特許文献1参照)。
【0003】
この場合には、周波数フィルタ等を用いてノイズを除去して目的の信号のみを抽出したうえで、信号強度や周波数の解析が行われている。
【0004】
また、近年、導電性を有するファブリックを素材とするスポーツウェアを用いて、運動中に心拍数等の生体信号を取得する技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Mario Cifrek et al., “Surface EMG based muscle fatigue evaluation in biomechanics”, 2009年, Clinical Biomechanics 24, pp.327-340
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実践的なフィールドにおける生体信号の長時間計測または常時計測では、生体信号には外乱要素が混入しやすいという問題があった。すなわち、運動中等のより実践的なフィールドでの生体信号の長時間計測または常時計測では、計測環境や被験者のコンディションの変化により、計測中に生体信号の減衰や歪みや雑音がより多く混入する。例えば、運動中の生体信号には、病院等で静止時に取得する生体信号に比較して、ノイズが混入しやすい。
【0007】
特に、競技場における競技者の生体信号の計測においては、激しい体動に伴って生体組織の振動や変形が生じ、生体信号に歪みが生じる。また、生体電極と生体との接触の不安定化によっても雑音が発生する。さらに、気候や体調の変化により生体インピーダンスが変動する。例えば、発汗に伴う生体信号の減衰や周波数特性の変化は、生体信号の分析の障害となっている。
【0008】
また、ノイズ除去を行っても、場面に応じて周波数特性の変化や信号の減衰を修正することは困難であった。このように、環境の変化を伴うフィールドにおいて、生体信号の連続的な長時間計測または常時計測では、均一なデータを連続的に取得し、一括して信号の処理を行うことは困難であった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体信号の分析を外乱要素に頑健に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る分析装置は、時系列の生体信号を取得する取得部と、取得された生体信号を行動単位に分割する分割部と、分割された行動単位の生体信号の波形をパターンごとに分類する分類部と、前記時系列の生体信号における各パターンの出現時点を特定する特定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生体信号の分析を外乱要素に頑健に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る分析装置の概略構成を例示する模式図である。
【
図2】
図2は、分割部の処理を説明するための説明図である。
【
図3】
図3は、分類部の処理を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、特定部の処理を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、分析処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、分析プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0014】
[分析装置の構成]
図1は、本実施形態に係る分析装置の概略構成を例示する模式図である。
図1に例示するように、分析装置10は、パソコン等の汎用コンピュータで実現され、入力部11、出力部12、通信制御部13、記憶部14、および制御部15を備える。
【0015】
入力部11は、キーボードやマウス等の入力デバイスによって実現され、操作者による入力操作に対応して、制御部15に対して処理開始などの各種指示情報を入力する。出力部12は、液晶ディスプレイなどの表示装置、プリンター等の印刷装置等によって実現される。
【0016】
通信制御部13は、NIC(Network Interface Card)等で実現され、LAN(Local Area Network)やインターネット等の電気通信回線を介した管理サーバ等の外部の装置と制御部15との通信を制御する。
【0017】
記憶部14は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部14には、分析装置10を動作させる処理プログラムや、処理プログラムの実行中に使用されるデータなどが予め記憶され、あるいは処理の都度一時的に記憶される。なお、記憶部14は、通信制御部13を介して制御部15と通信する構成でもよい。
【0018】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等によって実現され、メモリに記憶された処理プログラムを実行する。これにより、制御部15は、
図1に例示するように、取得部15a、分割部15b、分類部15cおよび特定部15dとして機能する。なお、これらの機能部は、それぞれ、あるいは一部が異なるハードウェアに実装されてもよい。
【0019】
取得部15aは、時系列の生体信号を取得する。例えば、取得部15aは、運動中の競技者の手首や腕や足等に装着されたウェアラブル端末から、このウェアラブル端末で計測された生体信号の時系列データの入力を、通信制御部13を介して受け付ける。取得部15aは、生体信号の時系列データを例えばオペレータ等から入力部11を介して取得してもよい。
【0020】
ここで、生体信号とは、人間が体を動かした場合に発生する信号であり、例えば、筋電位(EMG,ElectroMyoGram)、心電、眼電、脳波、心拍、脈拍等が例示される。
【0021】
分割部15bは、取得された生体信号を行動単位に分割する。具体的には、分割部15bは、例えばTH(THreshold)法と呼ばれる技術を用いて、生体信号の時系列データから行動中の区間の生体信号を行動単位に抽出する。
【0022】
ここで、TH法とは、筋電位等の生体信号を時系列データとして扱って、行動単位を検出する技術である(周知文献参照)。
【0023】
[周知文献]Staude et al., “Onset detection in surface electromyographic signals:a systematic comparison of methods”, 2001年, EURASIP Journal on Applied Signal Processing 2001:2, pp.67-81
【0024】
また、
図2は、分割部15bの処理を説明するための説明図である。
図2(0)に示すように、分割部15bは、まず、取得された生体信号の時系列データに対し、例えばバンドパスフィルタ、整流化、スムージング等の前処理を行う。
【0025】
バンドパスフィルタでは、ノイズが除去される。整流化では、生体信号の強度を示す縦軸の負の値が除外される。スムージングでは、移動平均をとって瞬間的なピーク値が除去される。
【0026】
図2(a)には、バンドパスフィルタ処理後の生体信号(筋電位)の強度と時間との関係が例示されている。また、
図2(b)には、整流化後の筋電位の強度と時間との関係が例示されている。
【0027】
なお、
図2および後述する
図4には、500Hzで計測された筋電位が例示されており、各図の横軸の時間は計測回で表されている。つまり、横軸の単位は(1/500)秒に相当する。
【0028】
次に、分割部15bは、TH法を用いて、生体信号のオンセット、例えば筋電位の力を入れている区間を検出し、行動単位の生体信号として抽出する。
【0029】
具体的には、まず、分割部15bは、
図2(1)に示すように、30秒程度の所定の区間の脱力状態の生体信号を取得する。この区間(以下、無音区間と記す。)の生体信号には、ノイズのみが加わっているものとして、分割部15bは、無音区間の生体信号の強度の平均μおよび標準偏差σを算出する。
【0030】
また、分割部15bは、
図2(2)に示すように、オンセットを判定するための閾値E
th(μ,σ)=μ+nσを算出する。ここで、nは3前後の定数である。
【0031】
次に、分割部15bは、
図2(3)に示すように、例えば50ms程度の所定の幅Lの移動窓を時間軸上でスライドさせながら、移動窓内での平均μ
tを算出する。μ
tが閾値E
thより大きい場合に、分割部15bは、この移動窓内のデータはオンセットと判定する。これにより、分割部15bは、
図2に網掛で示すオンセットの区間を検出し、行動単位の生体信号として抽出する。
【0032】
図1の説明に戻る。分類部15cは、分割された行動単位の生体信号の波形をパターンごとに分類する。具体的には、分類部15cは、分割部15bが分割した行動単位の生体信号の波形に着目したクラスタリングを行って、パターンごとに分類する。
【0033】
例えば、スポーツやリハビリ等の行動中の筋電位について、使われている筋肉やその使われ方の違いにより波形のパターンが異なる。したがって、分類部15cが筋電位の波形のパターンによるクラスタリングを行うことは、使われている筋肉やその使われ方による分類を行うことに相当する。
【0034】
まず、分類部15cは、行動単位の生体信号に対し、計測によって生じる欠損の線形補間を行う。また、分類部15cは、各行動単位の生体信号の時間軸方向の長さを合わせるリサンプリングを行って、各行動単位の生体信号の波形を表すベクトルの次元数を統一する。これにより、各行動単位の生体信号の経過時間のぶれや、長時間の計測中に生じる周波数特性の変化を吸収することが可能となる。
【0035】
また、分類部15cは、各行動単位の生体信号の最大出力で正規化を行う。なお、フィルタリング等の前処理により、各行動単位の生体信号からスパイクノイズ等は除去されているものとする。
【0036】
これにより、全ての行動単位の生体信号の波形を表すベクトルの要素が[0,1]で表現されることになる。したがって、ユーザの状態の変化や長時間の計測中に生じる生体信号の減衰等の強度への影響を吸収することが可能となる。なお、分類部15cは、ここでスムージング等の処理を合わせて行ってもよい。
【0037】
次に、分類部15cは、リサンプリングおよび正規化がなされた各行動単位の生体信号の波形の特徴でクラスタリング(分類)を行う。また、分類部15cは、分類した各クラス(パターン)の標準波形を抽出する。
【0038】
ここで、
図3は、分類部15cの処理を説明するための説明図である。
図3に示すように、分類部15cは、波形の特徴で分類した各パターンについて、標準波形を抽出する。
図3には、サイクリング中に計測された太ももの筋電位の波形が、パターン0~パターン4の5つのパターンにクラスタリングされた場合が例示されている。
【0039】
例えば、ユーザのスキルレベルや筋疲労度等に応じて、ペダルを踏み込むタイミングや回数等が異なり、
図3に示すように複数のパターンに分類される。例えばパターン2は、2回に分けてペダルを踏み込んだ場合の筋電位の波形を例示しており、スキルレベルの低いユーザや、ユーザの疲労度が高い場合等に出現する。また、例えばパターン0は、スキルレベルの高いユーザが、上手く体幹を使って早いタイミングでペダルを踏み込んだ場合の筋電位の波形を例示している。
【0040】
また、分類部15cは、分類したパターンごとの標準波形を抽出して記憶部14に記憶させる。それ以降、分類部15cは、標準波形を用いて生体信号の波形を分類してもよい。例えば、分類部15cは、リサンプリングおよび正規化がなされた各行動単位の生体信号と各標準波形との類似度を算出し、類似度が所定の閾値以上の標準波形のパターンとして、生体信号を分類する。
【0041】
その場合に、分類部15cは、分類した各パターンの標準波形を改めて抽出し、記憶部14の標準波形を更新してもよい。
【0042】
なお、記憶部14には、予め既知の標準波形が記憶されていてもよい。その場合には、分類部15cは、上記と同様に、標準波形を用いて生体信号の波形を分類してもよい。また、分類部15cは、分類した各パターンの標準波形を改めて抽出し、記憶部14の標準波形を更新してもよい。
【0043】
図1の説明に戻る。特定部15dは、時系列の生体信号における各パターンの出現時点を特定する。また、特定部15dは、特定した各パターンの出現時点を出力部12あるいは通信制御部13を介して出力する。例えば、ディスプレイに表示させたり、外部の装置に出力したりする。
【0044】
ここで、
図4は、特定部15dの処理を説明するための説明図である。
図4(a)には、処理対象の生体信号の強度と時間との関係が例示されており、
図4(b)には、各パターンと時間との関係が例示されている。
【0045】
図4に示すように、特定部15dは、取得部15aが取得した生体信号の時系列データにおいて、分割部15bが抽出した行動単位の区間を、分類部15cが分類したパターンを区別して特定し、出力部12等に出力する。これにより、各パターンの時間軸上の分布を分析することが可能となる。
【0046】
図4に示す例では、時間軸上の初期には、パターン2の出現回数が多く、中間期にはパターン0やパターン3の出現回数が多く、後期にはパターン4の出現回数が多いことがわかる。
【0047】
なお、特定部15dは、特定した出現時点を用いて、時系列の生体信号における各パターンの時系列に移動する所定幅の移動窓内での出現頻度を算出してもよい。具体的には、特定部15dは、生体信号の時系列データの時間軸上で所定幅の移動窓をスライドさせながら、移動窓内での各パターンの出現頻度を算出する。
【0048】
これにより、各パターンの出現頻度の変化を時系列でとらえることが可能となる。したがって、例えば、時間経過とともに筋疲労度が高い場合に出現するパターンの出現頻度が高くなった場合等には、筋疲労度の変化を発見することが可能となる。あるいは、時間経過とともに、各競技における筋肉の使い方においてスキルレベルの低いことを示すパターンの出現頻度が増加した場合等には、筋肉の使い方の変化やスキルの良し悪しを分析することが可能となる。
【0049】
[分析処理]
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る分析装置10による分析処理について説明する。
図5は、分析処理手順を示すフローチャートである。
図5のフローチャートは、例えば、開始を指示する操作入力があったタイミングで開始される。
【0050】
まず、取得部15aが、生体信号の時系列データを取得する。また、分割部15bが、取得された生体信号の時系列データを、行動単位に分割する(ステップS1)。すなわち、分割部15bは、生体信号の時系列データから行動中の区間の生体信号を行動単位に抽出する。
【0051】
次に、分類部15cが、行動単位の生体信号の波形に着目したクラスタリングを行って、パターンごとに分類する(ステップS2)。具体的には、分類部15cは、各行動単位の生体信号のリサンプリングを行って、各行動単位の生体信号の波形を表すベクトルの次元数を統一する。また、分類部15cは、各行動単位の生体信号の最大出力で正規化を行う。そして、分類部15cは、リサンプリングおよび正規化がなされた各行動単位の生体信号を、波形の特徴を示すパターンで分類する。
【0052】
次に、特定部15dが、時系列の生体信号における各パターンの出現時点を特定し、各パターンの分布を分析する(ステップS3)。また、特定部15dは、特定した各パターンの出現時点を出力部12あるいは通信制御部13を介して出力する。これにより、一連の分析処理が終了する。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態の分析装置10において、取得部15aが、時系列の生体信号を取得する。また、分割部15bが、取得された生体信号を行動単位に分割する。また、分類部15cが、分割された行動単位の生体信号の波形をパターンごとに分類する。そして、特定部15dが、時系列の生体信号における各パターンの出現時点を特定する。
【0054】
これにより、例えば、スポーツやリハビリ等の行動中の筋電位について、使われている筋肉やその使われ方の違いにより異なる波形のパターンの出現時点を特定することができる。このような波形のパターンは、非定常的な外乱要素の影響を受け難いため、連続的な長時間計測または常時計測においても、安定かつ一括して信号の処理を行うことが可能となる。このように、本実施形態の分析装置10は、生体信号の分析を外乱要素に頑健に行うことができる。また、本実施形態の分析装置10は、例えば筋疲労度の変化や競技における筋肉の使い方やスキルの良し悪し等の高度な分析が可能となる。
【0055】
また、分類部15cは、記憶部14に記憶されている標準波形を用いて生体信号の波形を分類してもよい。また、分類部15cは、分類したパターンごとの標準波形を抽出して記憶部14に記憶させ、以降の処理に用いてもよい。これにより、標準波形を用いない場合より分類部15cの処理負荷を軽減することが可能となる。
【0056】
また、特定部15dは、特定した出現時点を用いて、時系列の生体信号における各パターンの時系列に移動する所定幅の移動窓内での出現頻度を算出してもよい。これにより、各パターンの出現頻度の変化を時系列でとらえることが可能となる。したがって、例えば、筋疲労度の変化を発見したり、各競技における筋肉の使い方の変化やスキルの良し悪しを分析したりすることが容易に可能となる。
【0057】
[プログラム]
上記実施形態に係る分析装置10が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。一実施形態として、分析装置10は、パッケージソフトウェアやオンラインソフトウェアとして上記の分析処理を実行する分析プログラムを所望のコンピュータにインストールさせることによって実装できる。例えば、上記の分析プログラムを情報処理装置に実行させることにより、情報処理装置を分析装置10として機能させることができる。ここで言う情報処理装置には、デスクトップ型またはノート型のパーソナルコンピュータが含まれる。また、その他にも、情報処理装置にはスマートフォン、携帯電話機やPHS(Personal Handyphone System)などの移動体通信端末、さらには、PDA(Personal Digital Assistants)などのスレート端末などがその範疇に含まれる。
【0058】
また、分析装置10は、ユーザが使用する端末装置をクライアントとし、当該クライアントに上記の分析処理に関するサービスを提供するサーバ装置として実装することもできる。例えば、分析装置10は、生体信号の時系列データを入力とし、波形のパターンごとの出力時点を出力する分析処理サービスを提供するサーバ装置として実装される。この場合、分析装置10は、Webサーバとして実装することとしてもよいし、アウトソーシングによって上記の分析処理に関するサービスを提供するクラウドとして実装することとしてもかまわない。以下に、分析装置10と同様の機能を実現する分析プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。
【0059】
図6は、分析プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010と、CPU1020と、ハードディスクドライブインタフェース1030と、ディスクドライブインタフェース1040と、シリアルポートインタフェース1050と、ビデオアダプタ1060と、ネットワークインタフェース1070とを有する。これらの各部は、バス1080によって接続される。
【0060】
メモリ1010は、ROM(Read Only Memory)1011およびRAM1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、ハードディスクドライブ1031に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、ディスクドライブ1041に接続される。ディスクドライブ1041には、例えば、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が挿入される。シリアルポートインタフェース1050には、例えば、マウス1051およびキーボード1052が接続される。ビデオアダプタ1060には、例えば、ディスプレイ1061が接続される。
【0061】
ここで、ハードディスクドライブ1031は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093およびプログラムデータ1094を記憶する。上記実施形態で説明した各情報は、例えばハードディスクドライブ1031やメモリ1010に記憶される。
【0062】
また、分析プログラムは、例えば、コンピュータ1000によって実行される指令が記述されたプログラムモジュール1093として、ハードディスクドライブ1031に記憶される。具体的には、上記実施形態で説明した分析装置10が実行する各処理が記述されたプログラムモジュール1093が、ハードディスクドライブ1031に記憶される。
【0063】
また、分析プログラムによる情報処理に用いられるデータは、プログラムデータ1094として、例えば、ハードディスクドライブ1031に記憶される。そして、CPU1020が、ハードディスクドライブ1031に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出して、上述した各手順を実行する。
【0064】
なお、分析プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1031に記憶される場合に限られず、例えば、着脱可能な記憶媒体に記憶されて、ディスクドライブ1041等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、分析プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、LANやWAN(Wide Area Network)等のネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶され、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10 分析装置
11 入力部
12 出力部
13 通信制御部
14 記憶部
15 制御部
15a 取得部
15b 分割部
15c 分類部
15d 特定部