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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】表面処理組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/37 20060101AFI20220222BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20220222BHJP
   C11D 1/12 20060101ALI20220222BHJP
   C11D 1/34 20060101ALI20220222BHJP
   C09G 1/04 20060101ALI20220222BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D3/22
C11D1/12
C11D1/34
C09G1/04
H01L21/304 622Q
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018541916
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2017023949
(87)【国際公開番号】W WO2018061365
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2016190375
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉▲崎▼ 幸信
(72)【発明者】
【氏名】坂部 晃一
(72)【発明者】
【氏名】鎗田 哲
(72)【発明者】
【氏名】古本 健一
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043767(WO,A1)
【文献】特開2008-047842(JP,A)
【文献】特開2010-258014(JP,A)
【文献】特開2010-163608(JP,A)
【文献】特開2012-072267(JP,A)
【文献】特開2010-138271(JP,A)
【文献】特開2009-203471(JP,A)
【文献】特開平06-260466(JP,A)
【文献】特開2005-303060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0027995(US,A1)
【文献】国際公開第2013/144654(WO,A1)
【文献】特開2012-094852(JP,A)
【文献】特開2008-270360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 3/37
C11D 3/22
C11D 1/12
C11D 1/34
C09G 1/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨済半導体基板のリンス研磨処理または洗浄処理に用いられる表面処理組成物であって、
下記A群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子と、
下記B群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤と、
水と、を含む、表面処理組成物:
A群:重量平均分子量が100万以上300万以下である、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種の水溶性多糖類;重量平均分子量が1万以上100万以下であるポリビニルアルコール;アセトアセチル基、アセチル基、エチレンオキサイド基またはカルボキシル基により変性されたポリビニルアルコール;およびブテンジオール・ビニルアルコール共重合体(ただし、下記B群に含まれる化合物を除く)
B群:スルホン酸(塩)基を有する化合物、硫酸エステル(塩)基を有する化合物、ホスホン酸(塩)基を有する化合物、リン酸(塩)基を有する化合物、およびホスフィン酸(塩)基を有する化合物。
【請求項2】
研磨済半導体基板のリンス研磨処理または洗浄処理に用いられる表面処理組成物であって、
下記A群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子と、
下記B群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤と、
水と、を含む、表面処理組成物:
A群:ポリビニルピロリドンおよびその誘導体(ただし、下記B群に含まれる化合物を除く)
B群:スルホン酸(塩)基を有する高分子型界面活性剤。
【請求項3】
前記A群から選択される水溶性高分子が、前記水溶性多糖類より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
前記A群から選択される水溶性高分子が、前記水溶性多糖類より選択される少なくとも一種を含み、
該水溶性多糖類の含有量が、前記表面処理組成物の総質量に対して0.0001質量%以上0.0166質量%以下である、請求項1または3に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記A群から選択される水溶性高分子が、重量平均分子量が10万以上100万以下であるポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載の表面処理組成物
【請求項6】
前記A群から選択される水溶性高分子が、前記ポリビニルアルコールを含み、
該ポリビニルアルコールの含有量が、前記表面処理組成物の総質量に対して0.1質量%以上0.150質量%以下である、請求項1または5に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
前記A群から選択される水溶性高分子が、ポリビニルピロリドンの誘導体を含む、請求項2に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
前記B群から選択されるアニオン性界面活性剤が、スルホン(塩)酸基含有ポリスチレンおよびスルホン酸(塩)基含有ポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
前記B群から選択されるアニオン性界面活性剤は、重量平均分子量が8000以上100万以下である、請求項8に記載の表面処理組成物
【請求項10】
pHが4以上12以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項11】
pH緩衝剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項12】
前記pH緩衝剤は、リン酸、コハク酸、酒石酸、イタコン酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、イミノ二酢酸ならびにこれらのカリウム塩、アンモニウム塩およびアミン塩;トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ジグリコールアミンならびにこれらのリン酸塩およびカルボン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項11に記載の表面処理組成物。
【請求項13】
前記B群から選択されるアニオン性界面活性剤に対する前記A群から選択される水溶性高分子の質量比が、0.70以上2以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項14】
砥粒を実質的に含有しない、請求項1~13のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項15】
前記研磨済半導体基板がシリコンを含み、該研磨済半導体基板のリンス研磨処理に用いられる、請求項1~14のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項16】
前記研磨済半導体基板が、ポリシリコンを含む、請求項15に記載の表面処理組成物。
【請求項17】
前記A群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子と、
前記B群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤と、
水と、を混合することを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の表面処理組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載の表面処理組成物を用いて研磨済半導体基板をリンス研磨処理または洗浄処理することを含む、表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面処理組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、物理的に半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカやアルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、酸化珪素、窒化珪素や、金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
CMP工程後の半導体基板表面には、不純物(異物)が多量に残留している。不純物としては、CMPで使用された研磨用組成物由来の砥粒、金属、防食剤、界面活性剤等の有機物、研磨対象物であるシリコン含有材料、金属配線やプラグ等を研磨することによって生じたシリコン含有材料や金属、更には各種パッド等から生じるパッド屑等の有機物などが含まれる。
【0004】
半導体基板表面がこれらの不純物により汚染されると、半導体の電気特性に悪影響を与え、デバイスの信頼性が低下する可能性がある。したがって、CMP工程後に洗浄工程を導入し、半導体基板表面からこれらの不純物を除去することが望ましい。
【0005】
かような洗浄工程に用いられる洗浄剤(表面処理組成物)として、例えば、特開2006-5246号公報(米国特許出願公開第2005/282718号明細書に対応)には、水溶性多糖類等の水溶性高分子と、水とを含有するリンス用組成物が開示されている。
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、CMP工程後に半導体基板表面に付着、残存したパーティクルや有機物残渣を、さらに効率的に除去することができる技術が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、研磨済研磨対象物の表面に残留するパーティクルおよび有機物残渣といった異物を効率的に除去することができる表面処理組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を進めた。その結果、特定の水溶性高分子、特定のアニオン性界面活性剤、および水を含む表面処理組成物により、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の上記課題は、下記A群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子と、下記B群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤と、水と、を含む、表面処理組成物により解決される:
A群:水溶性多糖類、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ならびにポリビニルピロリドンおよびその誘導体(ただし、下記B群に含まれる化合物を除く)
B群:スルホン酸(塩)基を有する化合物、硫酸エステル(塩)基を有する化合物、ホスホン酸(塩)基を有する化合物、リン酸(塩)基を有する化合物、およびホスフィン酸(塩)基を有する化合物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る表面処理組成物は、研磨工程において研磨された後の研磨対象物(研磨済研磨対象物)の表面を洗浄するために用いられ、特にリンス研磨処理をするために好適に用いられる。
【0011】
化学的機械的研磨(CMP)工程後に行われる洗浄工程は、半導体基板(研磨済研磨対象物)の表面に残留する不純物(パーティクル、金属汚染、有機物残渣、パッド屑などの異物)を除去することを目的として行われる。この際、例えば特開2006-5246号公報(米国特許出願公開第2005/282718号明細書に対応)に開示された洗浄剤を用いて洗浄することで、これら異物が除去されうる。しかし、本発明者らは、より効率的な異物の除去を達成すべく、鋭意検討した。その結果、本発明に係る表面処理組成物を用いることにより、パーティクルおよび有機物残渣といった異物が極めて効率的に除去されることを見出した。
【0012】
本発明に係る表面処理組成物は、下記A群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子と、下記B群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤と、水と、を含む:
A群:水溶性多糖類、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ならびにポリビニルピロリドンおよびその誘導体(ただし、下記B群に含まれる化合物を除く)
B群:スルホン酸(塩)基を有する化合物、硫酸エステル(塩)基を有する化合物、ホスホン酸(塩)基を有する化合物、リン酸(塩)基を有する化合物、およびホスフィン酸(塩)基を有する化合物。
【0013】
本発明者らは、本発明によって上記課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
【0014】
半導体基板等の研磨済研磨対象物の表面の親疎水性は、研磨対象物により各々異なるが、特に撥水性の高い研磨対象物は、この状態の研磨済研磨対象物の表面に、水を含む洗浄剤が接液しにくくなることで、異物が研磨済研磨対象物の表面から異物が除去されにくくなり、洗浄効果が低下する。
【0015】
これに対し、本発明の表面処理組成物は、水溶性高分子を含む。よって、当該水溶性高分子の効果により研磨済研磨対象物の表面の親水性(濡れ性)を高めることができる。その結果、本発明の表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物の表面処理を行うことで、研磨済研磨対象物の表面からの異物の除去を促進することができ、また、付着した異物が乾燥して研磨済研磨対象物の表面に固着することが抑制される。したがって、本発明の表面処理組成物によれば、良好な異物の除去効果が得られる。
【0016】
上記に加え、本発明の表面処理組成物は、特定のアニオン性界面活性剤もまた含む。当該アニオン性界面活性剤は、異物を除去する際、上記水溶性高分子を補助し、特に有機物残渣の除去を促進する。その結果、異物の除去効果がより高まる。
【0017】
本発明に係るアニオン性界面活性剤は、アニオン性基以外の部分と、異物(特に疎水性成分)との親和性により、ミセルを形成しうる。よって、このミセルが表面処理組成物中に溶解または分散することにより、疎水性成分である異物が効果的に除去されると考えられる。
【0018】
さらに、本発明に係るアニオン性界面活性剤は、特定のアニオン性基(スルホン酸(塩)基、硫酸エステル(塩)基、ホスホン酸(塩)基、リン酸(塩)基、またはホスフィン酸(塩)基)を含む。研磨済研磨対象物の表面がカチオン性である場合、上記特定のアニオン性基がアニオン化することにより、当該研磨済研磨対象物の表面に吸着しやすくなる。その結果、研磨済研磨対象物の表面には、上記アニオン性界面活性剤が被覆した状態となると考えられる。他方、残留した異物(特にカチオン性を帯びやすいもの)には、アニオン性界面活性剤のアニオン性基が吸着しやすいため、異物の表面がアニオン性を帯びることとなる。よって、その表面がアニオン性となった異物と、研磨済研磨対象物の表面に吸着したアニオン性界面活性剤のアニオン化したアニオン性基とが、静電的に反発する。また、異物がアニオン性である場合は、異物自体と、研磨済研磨対象物上に存在するアニオン化したアニオン性基とが静電的に反発する。したがって、このような静電的な反発を利用することで、異物を効果的に除去することができると考えられる。
【0019】
さらに、研磨済研磨対象物が電荷を帯びにくい場合には、上記とは異なるメカニズムによって異物が除去されると推測される。まず、疎水性である研磨済研磨対象物に対し、異物(特に疎水性成分)は疎水性相互作用によって付着しやすい状態にあると考えられる。ここで、アニオン性界面活性剤のアニオン性基以外の部分(疎水性構造部位)は、その疎水性に起因して、研磨済研磨対象物の表面側に向き、他方、親水性構造部位であるアニオン性基は、研磨済研磨対象物表面側とは反対側に向く。これにより、研磨済研磨対象物の表面は、アニオン化したアニオン性基に覆われた状態となり、親水性となると推測される。その結果、異物(特に疎水性成分)と、上記研磨済研磨対象物との間に疎水性相互作用が生じにくくなり、異物の付着がさらに抑制されると考えられる。よって、上記水溶性高分子と共にアニオン性界面活性剤を含む表面処理組成物は、異物の除去効果が極めて向上する。
【0020】
そして、研磨済研磨対象物の表面に吸着した水溶性高分子およびアニオン性界面活性剤は、さらに水洗等を行うことにより、容易に除去される。
【0021】
このように、本発明の表面処理組成物を用いることにより、研磨済研磨対象物の表面に存在する異物を効果的に除去することができる。よって、本発明によれば、研磨済研磨対象物の表面に残留するパーティクルおよび有機物残渣といった異物を効率的に除去することができる表面処理組成物が提供される。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0022】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行った。
【0023】
<表面処理組成物>
以下、表面処理組成物に含まれる各成分について説明する。
【0024】
[水溶性高分子]
本発明に係る表面処理組成物は、水溶性多糖類、ポリビニルアルコール(PVOH)およびその誘導体、ならびにポリビニルピロリドン(PVP)およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子を含む。これらの水溶性高分子は、単独で使用されてもまたは二種以上を混合して用いてもよい。ここで、上記水溶性高分子は、以下で詳説するB群(アニオン性界面活性剤)に含まれる化合物を含まない。よって、例えば、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールは、スルホン酸基を有し、アニオン性界面活性剤として作用するため、B群に含まれるアニオン性界面活性剤であり、A群に含まれる水溶性高分子には属さない。
【0025】
また、本明細書中、「水溶性」とは、水(25℃)に対する溶解度が1g/100mL以上であることを意味し、「高分子」とは、重量平均分子量が1,000以上である重合体をいう。なお、本明細書中、重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0026】
水溶性高分子は、研磨済研磨対象物の表面の親水性(濡れ性)を高めることにより、研磨済研磨対象物の表面に異物が付着することを抑制し、洗浄効果を向上させる。また、付着した異物が乾燥して研磨済研磨対象物の表面に固着することを抑制する。
【0027】
(含有量)
水溶性高分子の含有量は、特に制限されないが、以下の範囲であると好ましい。
【0028】
すなわち、水溶性高分子として水溶性多糖類が含まれる場合、水溶性多糖類の含有量(二種以上含む場合は、合計量。以下同じ)は、表面処理組成物の総質量に対して、0.0001質量%以上であることが好ましい。当該含有量が0.0001質量%以上であると、異物の除去効果が向上する。同様の観点から、上記含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらにより好ましく、0.015質量%以上であることが特に好ましい。
【0029】
また、水溶性多糖類の含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、5質量%以下であることが好ましい。当該含有量が5質量%以下であると、表面処理後の水溶性多糖類自体の除去が容易となる。同様の観点から、上記含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0030】
水溶性高分子としてポリビニルアルコールおよびその誘導体が含まれる場合、ポリビニルアルコールおよびその誘導体の含有量(二種以上含む場合は、合計量。以下同じ)は、表面処理組成物の総質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。当該含有量が0.1質量%以上であると、異物の除去効果が向上する。同様の観点から、上記含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、0.15質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることが特に好ましい。
【0031】
また、ポリビニルアルコールおよびその誘導体の含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、5質量%以下であることが好ましい。当該含有量が5質量%以下であると、表面処理後の水溶性高分子自体の除去が容易となる。同様の観点から、上記含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0032】
水溶性高分子としてポリビニルピロリドンおよびその誘導体が含まれる場合、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体の含有量(二種以上含む場合は、合計量。以下同じ)は、表面処理組成物の総質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。当該含有量が0.1質量%以上であると、異物の除去効果が向上する。同様の観点から、上記含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、0.15質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることが特に好ましい。
【0033】
また、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体の含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、5質量%以下であることが好ましい。当該含有量が5質量%以下であると、表面処理後の水溶性高分子自体の除去が容易となる。同様の観点から、上記含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
なお、水溶性高分子として、水溶性多糖類、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ならびにポリビニルピロリドンおよびその誘導体からなる群から選択される二種以上を含む場合(例えば、水溶性多糖類およびポリビニルアルコールを含む場合)、それぞれの水溶性高分子の含有量が、上記各含有量の範囲内であると好ましい。
【0035】
また、B群から選択されるアニオン性界面活性剤に対する、A群から選択される水溶性高分子の質量比(A群から選択される水溶性高分子の合計質量/B群から選択されるアニオン性界面活性剤の合計質量)は、特に制限されないが、0.01以上であると好ましい。当該質量比が0.01以上であると、異物の除去効果を十分に得ることができる。さらに、異物の除去効果を向上させるという観点から、上記質量比は、0.02以上であるとより好ましく、0.10以上であるとさらにより好ましく、0.70以上であると特に好ましく、0.80以上であると最も好ましい。
【0036】
一方、上記質量比(A群から選択される水溶性高分子の合計質量/B群から選択されるアニオン性界面活性剤の合計質量)の上限は特に制限されないが、表面処理後の水溶性高分子自体の除去の容易性を考慮すると、100以下であると好ましく、50以下であるとより好ましく、20以下であるとさらにより好ましく、10以下であるとさらにより好ましく、5以下であると特に好ましく、2以下であると最も好ましい。
【0037】
以上より、アニオン性界面活性剤に対する水溶性高分子の質量比は、0.01以上100以下であると好ましく、0.02以上50以下であるとより好ましく、0.10以上20以下であるとさらにより好ましく、0.70以上10以下であるとさらにより好ましく、0.70以上5以下であるとさらにより好ましく、0.70以上2以下であると特に好ましく、0.80以上2以下であると最も好ましい。
【0038】
(重量平均分子量)
水溶性高分子の重量平均分子量は、特に制限されないが、以下の範囲であると好ましい。
【0039】
すなわち、水溶性高分子として水溶性多糖類が含まれる場合、水溶性多糖類の重量平均分子量は、1万以上であると好ましい。当該重量平均分子量が1万以上であると、研磨済研磨対象物の表面の親水性(濡れ性)をより高めやすくなり、より異物の付着を抑制する効果が向上しやすい。同様の観点から、上記重量平均分子量は、10万以上であるとより好ましく、50万以上であるとさらにより好ましく、100万以上であると特に好ましい。
【0040】
一方、水溶性多糖類の重量平均分子量の上限値は特に制限されないが、300万以下であると好ましい。当該重量平均分子量が300万以下であると、異物の除去効果がさらに高まる。かかる理由は、洗浄工程後の親水性高分子の除去性がより良好となるからであると推測される。同様の観点から、上記重量平均分子量は、200万以下であることがより好ましく、150万以下であることが特に好ましい。
【0041】
水溶性高分子としてポリビニルアルコールおよびその誘導体が含まれる場合、ポリビニルアルコールおよびその誘導体の重量平均分子量は、1万以上であると好ましい。当該重量平均分子量が1万以上であると、より異物の付着を抑制する効果が向上しやすい。同様の観点から、上記重量平均分子量は、5万以上であるとより好ましく、10万以上であると特に好ましい。
【0042】
一方、ポリビニルアルコールおよびその誘導体の重量平均分子量の上限値は特に制限されないが、100万以下であると好ましい。当該重量平均分子量が100万以下であると、異物の除去効果がさらに高まる。同様の観点から、上記重量平均分子量は、80万以下であることがより好ましく、50万以下であることが特に好ましい。
【0043】
水溶性高分子としてポリビニルピロリドンおよびその誘導体が含まれる場合、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体の重量平均分子量は、5千以上であると好ましい。当該重量平均分子量が5千以上であると、より異物の付着を抑制する効果が向上しやすい。同様の観点から、上記重量平均分子量は、1万5000以上であるとより好ましく、3万以上であると特に好ましい。
【0044】
一方、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体の重量平均分子量の上限値は特に制限されないが、50万以下であると好ましい。当該重量平均分子量が50万以下であると、異物の除去効果がさらに高まる。同様の観点から、上記重量平均分子量は、30万以下であることがより好ましく、10万以下であることが特に好ましい。
【0045】
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0046】
以下、A群に含まれる水溶性高分子の種類について説明する。
【0047】
(水溶性多糖類)
本発明に係る表面処理組成物は、水溶性高分子として水溶性多糖類を含んでいると好ましい。A群の中でも、水溶性多糖類は、少量で異物の除去効果を高めることができる。ここで、「多糖類」とは、単糖分子がグリコシド結合によって多数重合した糖のことをいう。
【0048】
水溶性多糖類としては、上記定義を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、セルロース誘導体、デンプン誘導体といった多糖類が挙げられる。本発明の一実施形態において、水溶性高分子としての水溶性多糖類は、セルロース誘導体およびデンプン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を含むと好ましい。
【0049】
セルロース誘導体は、主たる繰返し単位としてβ-グルコース単位を含むポリマーである。セルロース誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらのなかでも、入手容易性や本発明の効果を得やすくするという観点から、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)が好ましい。
【0050】
デンプン誘導体は、主たる繰返し単位としてα-グルコース単位を含むポリマーである。デンプン誘導体の具体例としては、アルファ化デンプン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、シクロデキストリン等が挙げられる。これらのなかでも、入手容易性や本発明の効果を得やすくするという観点から、なかでもプルランが好ましい。
【0051】
異物の除去効果および入手容易性を考慮すると、水溶性高分子としての水溶性多糖類は、セルロース誘導体であると好ましい。
【0052】
なお、上記水溶性多糖類は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。また、水溶性多糖類は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0053】
上記市販品としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセルファインケム株式会社製、SPシリーズや、住友精化株式会社製、CFシリーズ)等を用いることができる。
【0054】
(ポリビニルアルコールおよびその誘導体)
本発明に係る水溶性高分子としてのポリビニルアルコールおよびその誘導体は、ビニルアルコールに由来する構成単位を主成分として有するポリマーであれば特に制限されず、例えば、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコール;変性ポリビニルアルコールといったポリビニルアルコールの誘導体が挙げられる。また、ポリビニルアルコールおよびその誘導体のケン化度は、特に制限されない。ポリビニルアルコールおよびその誘導体のケン化度は、水溶性が損なわれない限りにおいて、自由に選択できるが、5%以上99.5%以下であると好ましく、50%以上99.5%以下であるとより好ましく、60%以上99.5%以下であるとさらにより好ましく、70%以上99.5%以下であると特に好ましく、70%以上99.5%未満であると最も好ましい。かような範囲内であれば、ポリビニルアルコールまたはその誘導体の分解が抑制され、表面処理組成物の良好な洗浄効果を保持しやすくなる。
【0055】
変性ビニルアルコールとしては、アセトアセチル基、アセチル基、エチレンオキサイド基、カルボキシル基等の水溶性基により変性されたポリビニルアルコール;ブテンジオール・ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0056】
これらポリビニルアルコール類は、単独でも、または重合度や変性の種類が異なるものなどの二種以上を併用してもよい。また、ポリビニルアルコール類は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0057】
上記市販品としては、例えば、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製のJMR Hシリーズ、同HHシリーズ、同Mシリーズ、同Lシリーズ、株式会社クラレ製のクラレポバール(PVAシリーズ)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールシリーズ)、エチレンオキサイド基変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、ゴーセネックス(登録商標、以下同じ)LWシリーズ、同WOシリーズ)、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、ゴーセネックスZシリーズ)、ブテンジオール・ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業株式会社製、Nichigo G-Polymer シリーズ)等を用いることができる。
【0058】
(ポリビニルピロリドンおよびその誘導体)
本発明に係る水溶性高分子としてのポリビニルピロリドンおよびその誘導体は、ビニルピロリドンに由来する構成単位を主成分として有するポリマーであれば特に制限されず、例えば、ポリビニルピロリドン;ポリビニルピロリドン・ポリビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系グラフトポリマー等のポリビニルピロリドンの誘導体が挙げられる。なお、水溶性高分子がポリビニルアルコール骨格およびポリビニルピロリドン骨格の両方を有している場合には、当該水溶性高分子は、ポリビニルピロリドンの誘導体に含まれるものとする。
【0059】
これらポリビニルピロリドン類は、単独でも、または重合度や変性の種類が異なるものなどの二種以上を併用してもよい。また、ポリビニルピロリドン類は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0060】
上記市販品としては、例えば、ポリビニルピロリドン(第一工業製薬株式会社製のピッツコール(登録商標、以下同じ)Kシリーズ、株式会社日本触媒製のポリビニルピロリドンシリーズ)、ポリビニルピロリドン・ポリビニルアルコール共重合体(第一工業製薬株式会社製、ピッツコールVシリーズ)等を用いることができる。
【0061】
[アニオン性界面活性剤]
本発明に係る表面処理組成物は、スルホン酸(塩)基を有する化合物、硫酸エステル(塩)基を有する化合物、ホスホン酸(塩)基を有する化合物、リン酸(塩)基を有する化合物、およびホスフィン酸(塩)基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤を含む。これらのアニオン性界面活性剤は、単独で使用されてもまたは二種以上を混合して用いてもよい。なお、本明細書中、「アニオン性界面活性剤」とは、分子中にアニオン性の部位(すなわち、スルホン酸(塩)基、硫酸エステル(塩)基、ホスホン酸(塩)基、リン酸(塩)基、またはホスフィン酸(塩)基)を有し、かつ界面活性を有する化合物をいう。
【0062】
アニオン性界面活性剤は、上記親水性高分子の異物の除去効果を補助し、表面処理組成物による異物の除去に寄与する。よって、上記アニオン性界面活性剤を含む表面処理組成物は、研磨済研磨対象物の表面処理(洗浄等)において、研磨済研磨対象物の表面に残留する異物(パーティクルや有機物残渣)を十分に除去することができる。
【0063】
(含有量)
アニオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、以下の範囲であると好ましい。
【0064】
すなわち、アニオン性界面活性剤の含有量(二種以上含む場合は、合計量。以下同じ)は、表面処理組成物の総質量に対して、0.001質量%以上であることが好ましい。当該含有量が0.001質量%以上であると、異物の除去効果がより向上する。かかる理由は、アニオン性界面活性剤が、研磨済研磨対象物および異物に吸着(被覆)する際に、より多くの面積で吸着(被覆)がなされるからであると推測される。これにより、特に異物がミセルを形成しやすくなるため、当該ミセルの溶解・分散による異物の除去効果が向上する。また、アニオン性基の数が増加することで、静電的な吸着または反発効果をより強く発現させることができるからであると推測される。同様の観点から、上記含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。
【0065】
また、アニオン性界面活性剤の含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、3質量%以下であることが好ましい。当該含有量が3質量%以下であると、異物の除去効果がさらに高まる。かかる理由は、洗浄工程後のアニオン性界面活性剤自体の除去性が良好となるからであると推測される。同様の観点から、上記含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらにより好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
【0066】
以下、B群に含まれるアニオン性界面活性剤の種類について説明する。
【0067】
(スルホン酸(塩)基を有する化合物)
本発明に係るアニオン性界面活性剤としてのスルホン酸(塩)基を有する化合物は、スルホン酸(塩)基を有する界面活性剤であれば特に制限されない。なお、本明細書において、「スルホン酸(塩)基」とは、スルホン酸基(-SO(OH))またはその塩を表す。なお、本明細書中、「スルホン酸(塩)基を有する」とは、化合物がスルホン酸基(-SO(OH))またはその塩として表される部分構造(-SO(OM);ここで、Mは、有機または無機の陽イオンである)を有することをいう。
【0068】
スルホン酸(塩)基を有する化合物として、例えば、n-ドデシルベンゼンスルホン酸、ラウリルスルホン酸アンモニウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシアルキレンアリルエーテル硫酸、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル硫酸、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル硫酸等のスルホン酸塩等の低分子型界面活性剤の他、高分子型界面活性剤を用いることができる。これらの化合物は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。なお、本明細書中、「低分子型界面活性剤」とは、その分子量が1000未満である化合物をいう。なお、当該化合物の分子量は、例えば、TOF-MSやLC-MS等の公知の質量分析手段を用いて行うことができる。他方、本明細書中、「高分子型界面活性剤」とは、その分子量(重量平均分子量)が1000以上である化合物をいう。重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0069】
異物の除去効果を向上させるという観点からは、スルホン酸(塩)基を有する化合物として、高分子型界面活性剤を用いることが好ましい。スルホン酸(塩)基を有する高分子型界面活性剤(本明細書中、単に「スルホン酸基含有高分子」とも称する)の例としては、ベースとなる高分子化合物をスルホン化して得られる高分子化合物や、スルホン酸(塩)基を有する単量体を(共)重合して得られる高分子化合物等が挙げられる。
【0070】
より具体的には、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム等のスルホン酸(塩)基含有ポリスチレン、スルホン酸(塩)基含有ポリビニルアルコール(スルホン酸変性ポリビニルアルコール)、スルホン酸(塩)基含有ポリ酢酸ビニル(スルホン酸変性ポリ酢酸ビニル)、スルホン酸(塩)基含有ポリエステル、スチレン-スルホン酸(塩)基含有モノマーの共重合体、(メタ)アクリル酸-スルホン酸(塩)基含有モノマーの共重合体、マレイン酸-スルホン酸(塩)基含有モノマーの共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において、化合物の具体名における表記「(メタ)アクリル」は「アクリル」および「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」および「メタクリレート」を表すものとする。
【0071】
これら高分子が有するスルホン酸基の少なくとも一部は、塩の形態であってもよい。塩の例としては、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などの第2族元素の塩、アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。特に、研磨済研磨対象物がCMP工程後の半導体基板である場合には、基板表面の金属を極力除去するという観点から、アミン塩またはアンモニウム塩であると好ましい。
【0072】
上記の中でも、異物の除去性を向上させる効果が高いため、アニオン性界面活性剤は、ポリスチレンスルホン酸(スルホン酸基含有ポリスチレン)およびその塩ならびにスルホン酸(塩)基含有ポリビニルアルコール(スルホン酸変性ポリビニルアルコール)からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいると好ましい。すなわち、B群から選択されるアニオン性界面活性剤は、スルホン酸(塩)基含有ポリスチレンおよびスルホン酸(塩)基含有ポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいると好ましい。これらのアニオン性界面活性剤は、構造的にスルホン酸(塩)基の密度が比較的高いため、静電的な反発力が得られやすく、その結果、異物の除去効果がより向上する。同様の観点から、アニオン性界面活性剤は、ポリスチレンスルホン酸(スルホン酸基含有ポリスチレン)およびその塩を含んでいるとより好ましい。
【0073】
本発明において、スルホン酸基含有高分子の重量平均分子量は、1,000以上であることが好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、異物の除去効果がさらに高まる。かかる理由は、研磨済研磨対象物や異物を覆う際の吸着性(被覆性)がより良好となり、研磨済研磨対象物表面からの異物の除去作用または研磨済研磨対象物表面への有機物残渣の再付着抑止作用がより向上するからであると推測される。同様の観点から、重量平均分子量は、8,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることがさらにより好ましく、50,000以上であることが特に好ましい。
【0074】
また、スルホン酸基含有高分子の重量平均分子量は、300万以下であることが好ましい。重量平均分子量が300万以下であると、異物の除去効果がさらに高まる。かかる理由は、洗浄工程後のスルホン酸基含有高分子の除去性がより良好となるからであると推測される。同様の観点から、重量平均分子量は、200万以下であることがより好ましく、100万以下であることがさらにより好ましく、10万以下であることが特に好ましい。
【0075】
上記スルホン酸基含有高分子は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。また、スルホン酸基含有高分子は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0076】
上記市販品としては、例えば、スルホン酸変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、ゴーセネックスLシリーズ)、スルホン酸基含有共重合体(東亞合成株式会社製、アロン(登録商標)Aシリーズ)、スルホン酸基含有共重合体(アクゾノーベル株式会社製、VERSA(登録商標、以下同じ)シリーズ、NARLEX(登録商標、以下同じ)シリーズ;東ソー有機化学株式会社製、STシリーズ、MAシリーズ)、ポリスチレンスルホン酸(塩)(東ソー有機化学株式会社製、ポリナス(登録商標、以下同じ)シリーズ)、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル硫酸(塩)(竹本油脂株式会社製、ニューカルゲン(登録商標、以下同じ)FS-7S)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(竹本油脂株式会社製、パイオニンA-43-D、タケサーフA-43-NQ)等を用いることができる。
【0077】
(硫酸エステル(塩)基を有する化合物)
本発明に係るアニオン性界面活性剤としての硫酸エステル(塩)基を有する化合物は、硫酸エステル(塩)基を含む界面活性剤であれば特に制限されない。なお、本明細書において、「硫酸エステル(塩)基」とは、硫酸エステル基(-OSO(OH))またはその塩を表す。なお、本明細書中、「硫酸エステル(塩)基を有する」とは、化合物が硫酸エステル基(-OSO(OH))またはその塩として表される部分構造(-OSO(OM);ここで、Mは、有機または無機の陽イオンである)を有することをいう。
【0078】
硫酸エステル(塩)基を有する化合物として、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。なお、塩の例としては、上述の(スルホン酸(塩)基を有する化合物)に記載のものと同様である。
【0079】
硫酸エステル(塩)基を有する化合物は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。上記市販品としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製、アクアロン(登録商標、以下同じ)HS-10)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(日本乳化剤株式会社製のニューコール(登録商標、以下同じ)1020-SN)、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(日本乳化剤株式会社製のニューコール707シリーズ)、ポリオキシエチレンアリルエーテル硫酸エステル塩(日本乳化剤株式会社製のニューコールB4-SN)等が挙げられる。
【0080】
(ホスホン酸(塩)基を有する化合物)
本発明に係るアニオン性界面活性剤としてのホスホン酸(塩)基を有する化合物は、ホスホン酸(塩)基を有する界面活性剤であれば特に制限されない。なお、本明細書において、「ホスホン酸(塩)基」とは、ホスホン酸基(-PO(OH))またはその塩を表す。なお、本明細書中、「ホスホン酸(塩)基を有する」とは、化合物がホスホン酸基(-PO(OH))またはその塩として表される部分構造(-PO(OMまたは-PO(OH)(OM);ここで、Mは、有機または無機の陽イオンである)を有することをいう。
【0081】
ホスホン酸(塩)基を有する化合物として、例えば、ドデシルホスホン酸等、公知のものを使用することができる。これらの化合物は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。なお、塩の例としては、上述の(スルホン酸酸(塩)基を有する化合物)に記載のものと同様である。
【0082】
(リン酸(塩)基を有する化合物)
本発明に係るアニオン性界面活性剤としてのリン酸(塩)基を有する化合物は、リン酸(塩)基を含む界面活性剤であれば特に制限されない。なお、本明細書において、「リン酸(塩)基」とは、リン酸基(-OPO(OH))またはその塩を表す。なお、本明細書中、「リン酸(塩)基を有する」とは、化合物がリン酸基(-OPO(OH))またはその塩として表される部分構造(-OPO(OMまたは-OPO(OH)(OM);ここで、Mは、有機または無機の陽イオンである)を有することをいう。
【0083】
リン酸(塩)基を有する化合物として、例えば、モノアルキルリン酸、アルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。なお、塩の例としては、上述の(スルホン酸(塩)基を有する化合物)に記載のものと同様である。
【0084】
リン酸(塩)基を有する化合物は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。上記市販品としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(日光ケミカルズ株式会社製、NIKKOL(登録商標、以下同じ)DLP、DOP、DDP、TLP、TCP、TOP、TDP の各シリーズ)、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルリン酸塩(竹本油脂株式会社製、リン酸エステル(ホスフェート)型シリーズ(ニューカルゲンFS-3AQ、ニューカルゲンFS-3PG等))が挙げられる。
【0085】
(ホスフィン酸(塩)基を有する化合物)
本発明に係るアニオン性界面活性剤としてのホスフィン酸(塩)基を有する化合物は、ホシフィン酸(塩)基を含む界面活性剤であれば特に制限されない。なお、本明細書において、「ホスフィン酸(塩)基」とは、ホスフィン酸基(-P(=O)(OH)-または-P(=O)(H)(OH))またはその塩を表す。なお、本明細書中、「ホスフィン酸(塩)基を有する」とは、化合物がホスフィン酸基(-P(=O)(OH)-または-P(=O)(H)(OH))またはその塩として表される部分構造(-P(=O)(OM)-または-P(=O)(H)(OM);ここで、Mは、有機または無機の陽イオンである)を有することをいう。
【0086】
ホスフィン酸(塩)基を有する化合物として、例えば、モノアルキルホスフィン酸、ジアルキルホスフィン酸、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、ビス-ポリ(1,2-ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、ビス-ポリ[2-カルボキシ-(2-カルボキシメチル)エチル]ホスフィン酸、ホスフィノポリカルボン酸共重合体等が挙げられる。これらの化合物は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。なお、塩の例としては、上述の(スルホン酸(塩)基を有する化合物)に記載のものと同様である。
【0087】
ホスフィン酸(塩)基を有する化合物は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。上記市販品としては、例えば、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸(BWA社製、Belsperse(登録商標、以下同じ)164)、ホスフィノポリカルボン酸共重合体(BWA社製、Belclene(登録商標、以下同じ)400)等が挙げられる。
【0088】
[A群およびB群の化合物の好ましい形態]
本発明に係る表面処理組成物は、上記A群から選択される水溶性高分子および上記B群から選択されるアニオン性界面活性剤を、それぞれ一種以上含む。このとき、当該水溶性高分子およびアニオン性界面活性剤の組み合わせとしては、水溶性多糖類ならびにポリビニルピロリドンおよびその誘導体から選択される少なくとも一種と、スルホン酸(塩)基を有する化合物との組み合わせが好ましく、水溶性多糖類と、スルホン酸(塩)基を有する化合物との組み合わせが特に好ましい。上記の組み合わせで水溶性高分子およびアニオン性界面活性剤を含むことにより、異物の除去効果がより向上する。
【0089】
[分散媒]
本発明に係る表面処理組成物は、分散媒(溶媒)として水を含む。分散媒は、各成分を分散または溶解させる機能を有する。分散媒は、水のみであることがより好ましい。また、分散媒は、各成分の分散または溶解のために、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。この場合、用いられる有機溶媒としては、水と混和する有機溶媒であるアセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、これらの有機溶媒を水と混合せずに用いて、各成分を分散または溶解した後に、水と混合してもよい。これら有機溶媒は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。
【0090】
水は、研磨済研磨対象物(洗浄対象物)の汚染や他の成分の作用を阻害するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100質量ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、水としては、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
【0091】
[pH]
本発明に係る表面処理組成物のpHは、特に制限されないが、4以上12以下であると好ましい。pHが4以上であると、上記アニオン性界面活性剤の静電的な反発をより効果的に得ることができるため、異物の除去効果が向上する。また、同様の観点から、pHは、5以上であるとより好ましく、6以上であるとさらにより好ましく、7以上であると特に好ましく、7を超えると最も好ましい。
【0092】
一方、pHは、12以下であることが好ましい。pHが12以下であると、表面処理組成物を使用する際や、使用後の当該組成物の処理をする際における取り扱いの容易性の観点から好ましい。また、同様の観点から、pHは、11以下であるとより好ましい。
【0093】
なお、表面処理組成物のpHは、pHメータ(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標、以下同じ))により確認することができる。
【0094】
さらに、本発明に係る表面処理組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、pHを上記好ましい範囲内に調整する目的で、pH調整剤およびpH緩衝剤をさらに含んでいてもよい。
【0095】
(pH調整剤)
本発明に係る表面処理組成物は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。pH調整剤は、表面処理組成物のpHを適当な値に調整する。これにより、異物の除去性を向上させることができる。
【0096】
pH調整剤としては、公知の酸、塩基、またはこれらの塩を使用することができる。pH調整剤として使用できる酸の具体例としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、およびリン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2-フランカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、およびフェノキシ酢酸等の有機酸が挙げられる。これらの中でも、pH調整剤は、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、およびイタコン酸等の多価カルボン酸またはこれらの塩が好ましい。かような酸は、複数のカルボニル基を介して、異物(パーティクル等)に対して配位することができる。その結果、キレート効果により、表面処理組成物中で異物が分散しやすくなり、除去効果がより向上する。
【0097】
pH調整剤として使用できる塩基としては、エタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン、水酸化第四アンモニウムなどの有機塩基、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、およびアンモニア等が挙げられる。
【0098】
上記pH調整剤は、単独でもまたは二種以上混合しても用いることができる。
【0099】
また、前記酸の代わりに、または前記酸と組み合わせて、前記酸のアンモニウム塩や、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の塩をpH調整剤として用いてもよい。特に、弱酸と強塩基、強酸と弱塩基、または弱酸と弱塩基との組み合わせとした場合には、pHの緩衝作用を期待することができる。かような場合には、pH調整剤は、pH緩衝剤もまた兼ねることができる。すなわち、pHの緩衝作用を有するpH調整剤が含まれる表面処理組成物は、pH緩衝剤を含む表面処理組成物に該当する。
【0100】
なかでも、表面処理組成物の調製の際のハンドリング性を考慮すると、弱酸と弱塩基との組み合わせであると好ましい。このような例としては、例えば、上記コハク酸、マレイン酸、クエン酸等の多価カルボン酸から選択される弱酸と、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミンなどから選択される弱塩基との組み合わせが挙げられる。
【0101】
pH調整剤の添加量は、特に制限されず、研磨用組成物が所望のpHとなるように適宜添加すればよい。
【0102】
(pH緩衝剤)
本発明に係る表面処理組成物は、pH緩衝剤をさらに含んでいると好ましい。pH緩衝剤は、表面処理組成物のpHを一定に維持し、これにより、表面処理(好ましくは、リンス研磨)を行う際の表面処理組成物のpHの変動を抑制する。これにより、異物の除去性を低下させることなく、好適なpHを維持したまま研磨済研磨対象物の表面処理を行うことができる。
【0103】
pH緩衝剤は、所望のpHの範囲内においてpHの変動を抑制できるものであれば、特に制限されない。本発明において好適に用いられるpH緩衝剤の例として、例えば、弱酸と共役塩基との組み合わせ、弱塩基と共役酸との組み合わせ、および一分子内に酸および塩基の構造を有し、緩衝剤として機能する化合物が挙げられる。以下、これらについて説明する。
【0104】
≪弱酸と共役塩基との組み合わせ≫
弱酸および共役塩基は、それぞれ特に制限されず、以下が例示される。
【0105】
弱酸としては、アミノ基含有化合物であって、弱酸として働くもの(タウリン、アスパラギン酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、1,3-プロパンジアミンテトラ酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸等);カルボン酸(クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、フタル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、アジピン酸、ピメリン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、フタル酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、ジグリコール酸、2-フランカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、およびフェノキシ酢酸等);無機酸(リン酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホウ酸等);ホスホン酸(ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1,ジホスホン酸等);有機スルホン酸(イセチオン酸等);炭酸等を用いることができる。
【0106】
共役塩基としては、使用する弱酸の共役塩基であればよい。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;その他のカリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;アミン塩;下記≪弱塩基と共役酸との組み合わせ≫に記載の弱塩基に該当する化合物等を用いることができる。また、上記から選ばれる弱酸の種類に依存して、当該弱酸よりもpKaが大きい弱酸もまた共役塩基として振舞うため、共役塩基として使用することができる。
【0107】
≪弱塩基と共役酸との組み合わせ≫
弱塩基および共役酸は、それぞれ特に制限されず、以下が例示される。
【0108】
弱塩基としては、アミノアルコール(ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミン、アセチルグルコサミン、エタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン等);脂肪族アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族第1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミンなどの脂肪族第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの脂肪族第3級アミン等)、芳香族アミン(ベンジルアミン、アニリン、ジフェニルアミン等)、環式アミン(ピリジン、ピペラジン等)等のアミン化合物;アンモニウム化合物(水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムなどの第4級アンモニウム化合物、水酸化アンモニウム等)等を用いることができる。
【0109】
共役酸としては、塩酸;硫酸;硝酸;リン酸;カルボン酸;上記≪弱酸と共役塩基との組み合わせ≫に記載の弱酸に該当する化合物等を用いることができる。また、上記から選ばれる弱塩基の種類に依存して、当該弱塩基よりもpKaが小さい弱塩基もまた共役酸として振舞うため、共役酸として使用することができる。
【0110】
≪一分子内に酸および塩基の構造を有し、緩衝剤として機能する化合物≫
一分子内に酸および塩基の構造を有し、緩衝剤として機能する化合物としては、特に制限されず、以下が例示される。かような化合物としては、アミノ酸であって、酸としての働きが弱いもの(ヒドロキシプロリン、トレオニン、セリン、グリシン、グリシルグリシン、α-アミノ酪酸、β-アミノ酪酸、バリン、システイン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、β-アラニン等);その他のアミノ基含有化合物であって、酸としての働きが弱いもの(トリスヒドロキシメチルアミノメタン、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン等)等を用いることができる。
【0111】
上記pH緩衝剤は、単独でもまたは二種以上組み合わせても用いることができる。
【0112】
なかでも、pH緩衝性、入手容易性や異物の除去性等を考慮すると、pH緩衝剤は、リン酸、コハク酸、酒石酸、イタコン酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、イミノ二酢酸ならびにこれらのカリウム塩、アンモニウム塩およびアミン塩;トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ジグリコールアミンならびにこれらのリン酸塩およびカルボン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含むと好ましい。
【0113】
また、異物の除去性をさらに向上させるという観点から、pH緩衝剤は、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、イミノ二酢酸ならびにこれらのアンモニウム塩およびアミン塩;トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ジグリコールアミンおよびこれらのカルボン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含むと好ましい。さらに、異物の除去性を向上させるという観点から、pH緩衝剤は、多価カルボン酸またはその塩を含むと好ましい。このような酸またはその塩は、複数のカルボニル基を介して、異物(パーティクル等)に対して配位することができる。その結果、キレート効果により、表面処理組成物中で異物が分散しやすくなり、除去効果がより向上する。さらに、異物の除去性を向上させるという観点から、pH緩衝剤は、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、イミノ二酢酸ならびにこれらのアンモニウム塩およびアミン塩からなる群から選択される少なくとも一種を含むと好ましい。さらに同様の観点から、pH緩衝剤は、クエン酸水素二アンモニウムまたはイミノ二酢酸を含むと好ましい。
【0114】
pH緩衝剤の含有量(二種以上含む場合は、合計量。以下同じ)は、特に制限されないが、表面処理組成物の総質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましい。pH緩衝剤の含有量が0.01質量%以上であると、異物の除去効果がより向上する。かかる理由は、表面処理組成物のpHを一定に維持しやすくすることで、異物の除去効果を低下させないためであると推測される。同様の観点から、pH緩衝剤の含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、pH緩衝剤の含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、5質量%以下であることが好ましい。pH緩衝剤の含有量が5質量%以下であると、コストを削減するという観点から好ましい。同様の観点から、pH緩衝剤の含有量は、表面処理組成物の総質量に対して、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましく、1質量%未満であることが特に好ましい。
【0115】
[他の添加剤]
本発明に係る表面処理組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、他の添加剤を任意の割合で含有していてもよい。ただし、本発明に係る表面処理組成物の必須成分以外の成分は、異物の原因となりうるため、できる限り添加しないことが望ましい。よって、必須成分以外の成分は、その添加量はできる限り少ないことが好ましく、含まないことがより好ましい。他の添加剤としては、例えば、砥粒、防腐剤、溶存ガス、還元剤および酸化剤等が挙げられる。なかでも、異物除去効果のさらなる向上のため、表面処理組成物は、砥粒を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「砥粒を実質的に含有しない」とは、表面処理組成物全体に対する砥粒の含量が0.01質量%以下である場合をいう。
【0116】
<表面処理組成物の製造方法>
上記表面処理組成物の製造方法は特に制限されない。例えば、上記A群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子と、上記B群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤と、水と、を混合することにより調製できる。すなわち、本発明の他の形態によれば、上記A群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子と、上記B群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤と、水と、を混合することを含む、上記表面処理組成物の製造方法もまた提供される。上記水溶性高分子およびアニオン性界面活性剤の種類、添加量等は、前述の通りである。さらに、本発明の一形態に係る表面処理組成物の製造方法においては、必要に応じて、pH調整剤、pH緩衝剤、他の添加剤、水以外の分散媒を混合してもよい。これらの種類、添加量等は、前述の通りである。
【0117】
上記各成分の添加順、添加方法は特に制限されない。上記各材料を、一括してもしくは別々に、段階的にもしくは連続して加えてもよい。また、混合方法も特に制限されず、公知の方法を用いることができる。好ましくは、上記表面処理組成物の製造方法は、上記A群から選択される少なくとも一種の水溶性高分子と、上記B群から選択される少なくとも一種のアニオン性界面活性剤と、必要に応じて添加されるpH調整剤、pH緩衝剤または他の添加剤と、を順次添加し、水中で撹拌することを含む。加えて、上記表面処理組成物の製造方法は、pHが4以上12以下となるように、表面処理組成物のpHを測定し、調整することをさらに含んでいてもよい。
【0118】
<研磨済研磨対象物>
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、種々の研磨済研磨対象物の表面に残留する異物を効果的に除去することができる。このとき、研磨済研磨対象物(好ましくは「リンス研磨対象物」)は、特に制限されない。なお、本明細書において、研磨済研磨対象物とは、研磨工程において研磨された後の研磨対象物を意味する。研磨工程としては、特に制限されないが、CMP工程であることが好ましい。
【0119】
研磨済研磨対象物は、研磨済半導体基板であることが好ましく、CMP後の半導体基板であることがより好ましい。かかる理由は、特に有機物残渣は半導体デバイスの破壊の原因となりうることから、半導体基板の洗浄工程としては、有機物残渣を含む異物をできる限り除去しうる必要があるためである。
【0120】
なかでも、上記表面処理組成物は、シリコン含有材料のリンス研磨において好適に用いられる。特に、本発明に係る表面処理組成物は、窒化珪素、酸化珪素またはポリシリコンを含む研磨済研磨対象物の表面に残留する異物を効果的に低減することができる。
【0121】
ここで、本発明の奏する効果の観点から、本発明に係る表面処理組成物は、ポリシリコンを含む研磨済研磨対象物の表面における有機物残渣を低減することに用いられることが好ましい。すなわち、上記シリコン含有材料は、ポリシリコンを含んでいると好ましい。かかる理由は、ポリシリコン含有材料(ポリシリコン膜)は、他のシリコン含有材料(窒化珪素膜、酸化珪素膜)と比較して、特に高い疎水性を有しており、水溶性高分子等による親水性の付与が起こりやすく、結果として洗浄効果の向上効果がより顕著となるためである。
【0122】
<表面処理方法>
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、表面処理において好適に用いられる。すなわち、本発明の他の形態によれば、上記表面処理組成物を用いて、研磨済研磨対象物を表面処理することを含む、表面処理方法もまた提供される。本明細書において、表面処理方法とは、研磨済研磨対象物の表面における異物を低減する方法をいい、広義の洗浄を行う方法である。
【0123】
本発明の一形態に係る表面処理方法によれば、研磨済研磨対象物の表面に残留するパーティクルおよび有機物残渣といった異物を効率的に除去することができる。すなわち、本発明の他の一形態によれば、上記表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理する、研磨済研磨対象物の表面における異物低減方法もまた提供される。
【0124】
本発明の一形態に係る表面処理方法は、上記表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させる方法により行われる。
【0125】
表面処理方法としては、主として、(I)リンス研磨処理による方法、(II)洗浄処理による方法が挙げられる。すなわち、本発明の一形態に係る表面処理は、リンス研磨または洗浄によって行われると好ましい。リンス研磨処理および洗浄処理は、研磨済研磨対象物の表面上の異物(パーティクル、金属汚染、有機物残渣、パッド屑など)を除去し、清浄な表面を得るために実施される。上記(I)および(II)について、以下、説明する。
【0126】
(I)リンス研磨処理
本発明に係る表面処理組成物は、リンス研磨処理において好適に用いられる。すなわち、本発明の好ましい形態として、上記表面処理組成物を用いてリンス研磨処理する、リンス研磨方法が提供される。本発明のさらに他の一形態は、上記表面処理組成物を用いて、ポリシリコンを含む研磨済研磨対象物をリンス研磨処理する、リンス研磨方法である。
【0127】
リンス研磨処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、研磨対象物の表面上の異物の除去を目的として、研磨パッドが取り付けられた研磨定盤(プラテン)上で行われる。このとき、上記表面処理組成物(リンス用組成物)を研磨済研磨対象物に直接接触させることにより、リンス研磨処理が行われる。その結果、研磨済研磨対象物表面の異物は、研磨パッドによる摩擦力(物理的作用)および表面処理組成物による化学的作用によって除去される。異物のなかでも、特にパーティクルや有機物残渣は、物理的な作用により除去されやすい。したがって、リンス研磨処理では、研磨定盤(プラテン)上で研磨パッドとの摩擦を利用することで、パーティクルや有機物残渣を効果的に除去することができる。
【0128】
具体的には、リンス研磨処理は、研磨工程後の研磨済研磨対象物表面を研磨装置の研磨定盤(プラテン)に設置し、研磨パッドと研磨済半導体基板とを接触させて、その接触部分に表面処理組成物を供給しながら研磨済研磨対象物と研磨パッドとを相対摺動させることにより行うことができる。
【0129】
リンス研磨処理は、片面研磨装置、両面研磨装置のいずれを用いても行うことができる。また、上記研磨装置は、研磨用組成物の吐出ノズルに加え、表面処理組成物の吐出ノズルを備えていると好ましい。研磨装置のリンス研磨処理時の稼働条件は特に制限されず、当業者であれば適宜設定可能である。
【0130】
上記リンス研磨処理を行った後、さらに、洗浄処理を行ってもよい。洗浄処理により、研磨済研磨対象物の表面上の異物がさらに除去される。洗浄方法としては特に制限されず、公知の手法を用いることができる。
【0131】
(II)洗浄処理
本発明に係る表面処理組成物は、洗浄処理において用いてもよい。洗浄処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、または、上記リンス研磨処理を行った後、研磨対象物の表面上の異物の除去を目的として行われる。なお、洗浄処理と、上記リンス研磨処理とは、これらの処理を行う場所によって分類され、洗浄処理は、研磨済研磨対象物を研磨定盤(プラテン)上から取り外した後に行われる表面処理である。洗浄処理においても、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させて、当該対象物の表面上の異物を除去することができる。
【0132】
洗浄処理を行う方法としては、例えば、(i)研磨済研磨対象物を保持した状態で、洗浄ブラシを研磨済研磨対象物の片面または両面とを接触させて、その接触部分に表面処理組成物を供給しながら洗浄対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法、(ii)研磨済研磨対象物を表面処理組成物中に浸漬させ、超音波処理や撹拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。かかる方法において、研磨対象物表面の異物は、洗浄ブラシによる摩擦力または超音波処理や撹拌によって発生する機械的力、および表面処理組成物による化学的作用によって除去される。
【0133】
上記(i)の方法において、表面処理組成物(洗浄用組成物)の研磨済研磨対象物への接触方法としては、特に限定されないが、例えば、ノズルから研磨済研磨対象物上に表面処理組成物を流しながら研磨済研磨対象物を高速回転させるスピン式、研磨済研磨対象物に表面処理組成物を噴霧して洗浄するスプレー式などが挙げられる。
【0134】
短時間でより効率的な汚染除去ができる点からは、洗浄処理は、スピン式やスプレー式を採用することが好ましく、スピン式であることがより好ましい。
【0135】
このような洗浄処理を行うための装置としては、例えば、カセットに収容された複数枚の研磨済研磨対象物を同時に表面処理するバッチ式洗浄装置、1枚の研磨済研磨対象物をホルダーに装着して表面処理する枚葉式洗浄装置等が挙げられる。これらの中でも、洗浄時間の短縮等の観点から、枚葉式洗浄装置を用いる方法が好ましい。
【0136】
さらに、洗浄処理を行うための装置としては、例えば、研磨定盤(プラテン)から研磨済研磨対象物を取り外した後、当該対象物を洗浄ブラシで擦る洗浄用設備を備えている研磨装置が挙げられる。このような研磨装置を用いることにより、研磨済研磨対象物の洗浄処理を、より効率よく行うことができる。
【0137】
かような研磨装置としては、研磨済研磨対象物を保持するホルダー、回転数を変更可能なモータ、洗浄ブラシ等を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。なお、CMP工程の後、リンス研磨工程を行う場合、当該洗浄処理は、リンス研磨工程にて用いた研磨装置と同様の装置を用いて行うことが、より効率的であり好ましい。
【0138】
洗浄ブラシとしては、特に制限されないが、好ましくは、樹脂製ブラシを使用する。樹脂製ブラシの材質は、特に制限されないが、例えばPVA(ポリビニルアルコール)を使用するのが好ましい。そして、洗浄ブラシとしては、PVA製スポンジを用いることが特に好ましい。
【0139】
洗浄条件にも特に制限はなく、洗浄対象物の種類、ならびに除去対象とする有機物残渣の種類および量に応じて、適宜設定することができる。研磨パッドに表面処理組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用されうる。この供給量に制限はないが、洗浄ブラシおよび洗浄対象物の表面が常に表面処理組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。洗浄時間も特に制限されないが、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いる工程については5秒間以上180秒間以下であることが好ましい。このような範囲であれば、異物をより効果的に除去することが可能である。洗浄の際の表面処理組成物の温度は、特に制限されず、通常は室温でよいが、性能を損なわない範囲で、40℃以上70℃以下程度に加温してもよい。
【0140】
上記(ii)の方法において、浸漬による洗浄方法の条件については、特に制限されず、公知の手法を用いることができる。
【0141】
上記(i)、(ii)の方法による洗浄処理を行う前、後またはその両方において、水による洗浄を行ってもよい。
【0142】
また、洗浄後の研磨済研磨対象物(洗浄対象物)は、スピンドライヤ等により表面に付着した水滴を払い落として乾燥させることが好ましい。また、エアブロー乾燥により洗浄対象物の表面を乾燥させてもよい。
【0143】
<半導体基板の製造方法>
本発明の一形態に係る表面処理方法は、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であるとき、好適に適用可能である。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、当該研磨済半導体基板を、上記表面処理組成物を用いて表面処理することを含む、半導体基板の製造方法もまた提供される。さらに好ましい形態として、研磨済半導体基板を、上記表面処理組成物を用いてリンス研磨処理することを含む、半導体基板の製造方法もまた提供される。
【0144】
かかる製造方法が適用される半導体基板の詳細については、上記表面処理組成物によって表面処理される研磨済研磨対象物の説明の通りである。
【0145】
また、半導体基板の製造方法としては、研磨済半導体基板の表面を、本発明に係る表面処理組成物を用いて表面処理する工程(表面処理工程:リンス研磨工程、洗浄工程)を含むものであれば特に制限されない。かかる製造方法として、例えば、研磨済半導体基板を形成するための研磨工程および表面処理工程を含む方法、好ましくは、研磨済半導体基板を形成するための研磨工程およびリンス研磨工程を含む方法が挙げられる。また、他の一例としては、研磨工程およびリンス研磨工程に加え、リンス研磨工程の後に、洗浄工程を有する方法が挙げられる。以下、これらの各工程について説明する。
【0146】
[研磨工程]
半導体基板の製造方法に含まれうる研磨工程は、半導体基板を研磨して、研磨済半導体基板を形成する工程である。
【0147】
研磨工程は、半導体基板を研磨する工程であれば特に制限されないが、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)工程であることが好ましい。また、研磨工程は、単一の工程からなる研磨工程であっても複数の工程からなる研磨工程であってもよい。
【0148】
研磨用組成物としては、半導体基板の特性に応じて、公知の研磨用組成物を適宜使用することができる。研磨用組成物としては、特に制限されないが、例えば、砥粒、酸塩、分散媒、および酸を含むもの等を好ましく用いることができる。かかる研磨用組成物の具体例としては、スルホン酸修飾コロイダルシリカ、硫酸アンモニウム、水およびマレイン酸を含む研磨用組成物等が挙げられる。
【0149】
研磨装置としては、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。
【0150】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0151】
研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転数、ヘッド(キャリア)回転数は、10rpm以上100rpm以下が好ましい。研磨対象物にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi以上10psi以下が好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用されうる。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨用組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。研磨時間も特に制限されないが、研磨用組成物を用いる工程については5秒間以上180秒間以下であることが好ましい。
【0152】
[表面処理工程]
表面処理工程とは、半導体基板の製造方法において、研磨済研磨対象物の表面における異物を低減する工程をいう。表面処理工程では、リンス研磨工程および洗浄工程の両方を行ってもよいし、リンス研磨工程のみ、または洗浄工程のみが行われてもよい。
【0153】
本発明に係る表面処理組成物は、表面処理工程において好適に用いられる。すなわち、表面処理工程は、本発明に係る表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物の表面における異物を低減する工程であると好ましい。よって、表面処理工程では、本発明に係る表面処理組成物を用いてリンス研磨工程および洗浄工程を行ってもよいし、リンス研磨工程の後、本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理工程としての洗浄工程が行われてもよいし、本発明に係る表面処理組成物を用いてリンス研磨工程のみまたは洗浄工程のみが行われてもよい。
【0154】
(リンス研磨工程)
リンス研磨工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程の後に行われる。リンス研磨工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(リンス研磨方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
【0155】
研磨装置および研磨パッド等の装置、ならびに研磨条件については、研磨用組成物を供給する代わりに本発明に係る表面処理組成物を供給する以外は、上記研磨工程と同様の装置および条件を適用することができる。
【0156】
リンス研磨工程で用いられるリンス研磨方法の詳細は、上記リンス研磨処理に係る説明に記載の通りである。
【0157】
(洗浄工程)
洗浄工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程の後に設けられてもよいし、リンス研磨工程の後に設けられてもよい。洗浄工程で用いられる洗浄方法は特に制限されず、公知の手法が用いられる。洗浄工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(洗浄方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
【0158】
洗浄工程で用いられる洗浄方法の詳細は、上記洗浄方法に係る説明に記載の通りである。
【実施例
【0159】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0160】
<重量平均分子量の測定>
各物質の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)の値を用いた。重量平均分子量は、下記の装置および条件によって測定した。
【0161】
GPC装置:株式会社島津製作所製
型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII)
カラム:VP-ODS(株式会社島津製作所製)
移動相 A:MeOH
B:酢酸1%水溶液
流量:1mL/分
検出器:ELSD temp.40℃、Gain 8、NGAS 350kPa
オーブン温度:40℃
注入量:40μL。
【0162】
<表面処理組成物(リンス用組成物)の調製>
[実施例1:表面処理組成物A-1の調製]
水溶性高分子としてのヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量1,200,000)を0.0166質量部、アニオン性界面活性剤としてのポリスチレンスルホン酸ナトリウム(重量平均分子量20,000)を0.015質量部、pH緩衝剤としてのクエン酸水素二アンモニウムを0.025質量部、pH調整剤としてのクエン酸およびアンモニアを適当量(すなわち、pH=8.5となる量)、および水(脱イオン水)を合計100質量部となる量で混合することにより、表面処理組成物A-1を調製した。表面処理組成物A-1(液温:25℃)について、pHメータ(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA)により確認されたpHは8.5であった。
【0163】
[実施例2~3:表面処理組成物A-2~A-3の調製]
実施例1において、水溶性高分子を以下のように変更し、添加量(固形分換算)を表1-1に記載の値となるように変更したこと以外は、同様にして表面処理組成物A-2~A-3をそれぞれ調製した;
・実施例2:ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量130,000)
・実施例3:ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量1,800,000)。
【0164】
[実施例4~5:表面処理組成物A-4~A-5の調製]
実施例1において、水溶性高分子の添加量(固形分換算)を表1-1に記載の値となるように変更したこと以外は、同様にして表面処理組成物A-4~A-5をそれぞれ調製した。
【0165】
[実施例6~13:表面処理組成物A-6~A-13の調製]
実施例1において、水溶性高分子を以下のように変更し、添加量(固形分換算)を表1-1に記載の値となるように変更したこと以外は、同様にして表面処理組成物A-6~A-13をそれぞれ調製した;
・実施例6:ポリビニルアルコール(重量平均分子量10,000;ケン化度約95%)
・実施例7:ポリビニルアルコール(重量平均分子量100,000;ケン化度約95%)およびポリビニルアルコール(重量平均分子量400,000;ケン化度約95%)
・実施例8:親水性・親アルコール性基(エチレンオキサイド基等)含有ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製 製品名ゴーセネックスLW-100;重量平均分子量1,000以上;ケン化度約43%)
・実施例9:アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製 製品名ゴーセネックスZ-100;重量平均分子量1,000以上;ケン化度98.5%以上)
・実施例10:エチレンオキサイド基含有ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製 製品名ゴーセネックスWO-320N;重量平均分子量1,000以上;ケン化度98.5%以上)
・実施例11:ブテンジオール・ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業株式会社製 製品名Nichigo G-Polymer AZF8035W;重量平均分子量1,000以上;ケン化度95%以上)
・実施例12:ポリビニルピロリドン(第一工業製薬株式会社製 製品名ピッツコール K-30A;重量平均分子量40,000)
・実施例13:ポリビニルピロリドン・ポリビニルアルコール共重合体(第一工業製薬株式会社製 製品名ピッツコール V-7154;重量平均分子量1,000以上)
なお、実施例6および7は、アニオン性界面活性剤の添加量(固形分換算)も表1-1に記載の値となるように変更した。
【0166】
[実施例14~16:表面処理組成物A-14~A-16の調製]
実施例1において、アニオン性界面活性剤を以下のように変更したこと以外は、同様にして表面処理組成物A-14~A-16をそれぞれ調製した;
・実施例14:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(重量平均分子量3,000)
・実施例15:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(重量平均分子量1,000,000)
・実施例16:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(重量平均分子量75,000)。
【0167】
[実施例17~18:表面処理組成物A-17~A-18の調製]
実施例1において、アニオン性界面活性剤の添加量(固形分換算)を表1-2に記載の値となるように変更したこと以外は、同様にして表面処理組成物A-17~A-18をそれぞれ調製した。
【0168】
[実施例19~29:表面処理組成物A-19~A-29の調製]
実施例1において、アニオン性界面活性剤を以下のように変更し、添加量(固形分換算)を表1-2に記載の値となるように変更したこと以外は、同様にして表面処理組成物A-19~A-29をそれぞれ調製した;
・実施例19:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム-ポリスチレン共重合体(5:5)(重量平均分子量19,000)
・実施例20:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム-メタクリル酸共重合体(8:2)(重量平均分子量3,400)
・実施例21:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム-ポリマレイン酸共重合体(75:25)(重量平均分子量20,000)
・実施例22:スルホン酸基含有ポリビニルアルコール(重量平均分子量20,000)
・実施例23:n-ドデシルベンゼンスルホン酸(分子量326)
・実施例24:アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム塩(竹本油脂株式会社製 製品名タケサーフ A-43-NQ;重量平均分子量1,000未満)
・実施例25:ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(竹本油脂株式会社製 製品名ニューカルゲン FS-7S;重量平均分子量1,000未満)
・実施例26:ポリオキシエチレンアルキル(12-15)エーテルリン酸(日光ケミカルズ株式会社製 製品名NIKKOL DDP-6;重量平均分子量1,000未満)
・実施例27:ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートアミン塩(竹本油脂株式会社製 製品名ニューカルゲン FS-3AQ;重量平均分子量1,000未満)
・実施例28:ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸(BWA社製 製品名Belsperse 164;重量平均分子量1,000未満)
・実施例29:ホスフィノポリカルボン酸共重合体(BWA社製 製品名Belclene 400;重量平均分子量1,000以上)。
【0169】
[実施例30:表面処理組成物A-30の調製]
実施例1において、pH緩衝剤を添加しなかったこと以外は、同様にして表面処理組成物A-30を調製した。
【0170】
[実施例31~34:表面処理組成物A-31~A-34の調製]
実施例1において、pH緩衝剤およびpH調整剤ならびにこれらの添加量(固形分換算)を表1-3に記載の値となるように変更したこと以外は、同様にして表面処理組成物A-31~A-34をそれぞれ調製した。
【0171】
[比較例1:表面処理組成物C-1の調製]
実施例1において、アニオン性界面活性剤をポリアクリル酸とし、その添加量(固形分換算)を表1-3に記載の値となるように変更したこと以外は、同様にして表面処理組成物C-1を調製した。
【0172】
[比較例2:表面処理組成物C-2の調製]
実施例1において、アニオン性界面活性剤を添加しなかったこと以外は、同様にして表面処理組成物C-2を調製した。
【0173】
[比較例3:表面処理組成物C-3の調製]
実施例1において、アニオン性界面活性剤およびpH緩衝剤を添加しなかったこと以外は、同様にして表面処理組成物C-3を調製した。
【0174】
[比較例4:表面処理組成物C-4の調製]
実施例1において、水溶性高分子を添加しなかったこと以外は、同様にして表面処理組成物C-4を調製した。
【0175】
[実施例35~37:表面処理組成物A-35~A-37の調製]
実施例1において、表面処理組成物のpHが6.0、7.5および10.2となるようにpH調整剤を添加したこと以外は、同様にして表面処理組成物A-35~A-37をそれぞれ調製した。
【0176】
[比較例5~7:表面処理組成物C-5~C-7の調製]
実施例1において、アニオン性界面活性剤を添加せず、表面処理組成物のpHが6.0、7.5および10.0となるようにpH調整剤を添加したこと以外は、同様にして表面処理組成物C-5~C-7をそれぞれ調製した。
【0177】
<評価>
[異物数の評価]
(研磨済研磨対象物(リンス研磨対象物)の準備)
下記化学的機械的研磨(CMP)工程によって研磨された後の、研磨済ポリシリコン基板を研磨済研磨対象物として準備した。
【0178】
≪CMP工程≫
ポリシリコン基板について、研磨用組成物M(組成;スルホン酸修飾コロイダルシリカ(“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”,Chem.Commun.246-247(2003)に記載の方法で作製、一次粒子径30nm、二次粒子径60nm)3質量%、ポリエチレングリコール(分子量400)0.1質量%、溶媒:水、60%硝酸でpH=2に調整)を使用し、それぞれ下記の条件にて研磨を行った。
【0179】
-研磨装置および研磨条件-
研磨対象物:200mmポリシリコンウェハ
研磨装置:200mmウェハ用片面研磨装置
研磨パッド:発泡ポリウレタン製パット(硬度90)
研磨圧力:2.3psi(1psi=6894.76Pa、以下同様)
研磨定盤回転数:93rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物の供給量:100mL/分
ヘッド回転数:87rpm
研磨時間:60秒間。
【0180】
≪リンス研磨工程≫
上記CMP工程に続き、同工程にて研磨された後のポリシリコン基板に対し、前記調製した各表面処理組成物(リンス用組成物)を用いてリンス研磨処理を行った。
【0181】
-リンス研磨装置およびリンス研磨条件-
リンス研磨装置:200mmウェハ用片面研磨装置
研磨パッド:発泡ポリウレタン製パット(硬度90)
研磨圧力:1.5psi
研磨定盤回転数:88rpm
表面処理組成物(リンス用組成物)の供給:掛け流し
表面処理組成物(リンス用組成物)の供給量:100mL/分
ヘッド回転数:85rpm
リンス研磨時間:10秒間。
【0182】
≪洗浄工程≫
上記リンス研磨工程に続き、リンス研磨後のポリシリコン基板に対し、水をウェハにかけながら、60秒間、PVAスポンジで圧力をかけながらこすった。
【0183】
≪異物数の測定≫
上記洗浄工程によって洗浄された後の各ポリシリコン基板について、以下の手順によって異物数(パーティクルおよび有機物残渣)を測定した。
【0184】
まず、0.13μm以上の異物数(個)を測定した。異物数の測定にはKLA TENCOR社製SP-2を使用した。測定は、各基板の片面の外周端部から幅5mmまでの部分を除外した残りの部分について測定を行った。
【0185】
続いて、有機物残渣の数を測定した。有機物残渣の数は、株式会社日立製作所製Review SEM RS6000を使用し、SEM観察によって測定した。具体的には、まず、SEM観察にて、各基板の片面の外周端部から幅5mmまでの部分を除外した残りの部分に存在する異物を100個サンプリングした。次いで、サンプリングした100個の異物の中からSEM観察にて目視にて有機物残渣を判別し、その個数を確認することで、異物中の有機物残渣の割合(%)を算出した。そして、上述の異物数の評価にて測定した0.13μm以上の異物数(個)と、前記SEM観察結果より算出した異物中の有機物残渣の割合(%)との積を、有機物残渣数(個)として算出した。
【0186】
さらに、上記0.13μm以上の異物数(個)から、上記有機物残渣数(数)を差し引き、パーティクル数(個)とした。なお、比較例4について、有意なパーティクル数は測定することができなかった。
【0187】
評価結果を表1-1~表1-3、ならびに表2~表4に示す。また、各表面処理組成物(リンス用組成物)のpHを併せて表中に示す。なお、A群およびB群の化合物の分子量(重量平均分子量)について、表中の「-」は、測定しなかったことを示す。また、「A群/B群(質量比)」には、表面処理組成物(リンス用組成物)中のアニオン性界面活性剤に対する水溶性高分子の質量比を示す。
【0188】
【表1-1】
【0189】
【表1-2】
【0190】
【表1-3】
【0191】
【表2】
【0192】
【表3】
【0193】
【表4】
【0194】
上記表の結果から、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いることにより、研磨済研磨対象物表面の異物数が極めて低減されたことが示された。また、実施例1、35、36および37の対比より、pHの値が大きい(すなわち、表面処理組成物がアルカリ性である)ほど、異物の除去効果が高くなることも示された。
【0195】
さらに、本出願は、2016年9月28日に出願された日本特許出願番号2016-190375号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。