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特許7028789ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料およびその製造方法、ならびに、複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料およびその製造方法、ならびに、複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/06 20060101AFI20220222BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20220222BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220222BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20220222BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220222BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220222BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220222BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C08L51/06
C08K7/14
C08L23/26
C08L23/12
C08K5/14
C08J5/04 CES
B32B15/08 105
B32B27/32 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018551725
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2017041902
(87)【国際公開番号】W WO2018092920
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2016226339
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 新治
(72)【発明者】
【氏名】近澤 啓子
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】八木 健
(72)【発明者】
【氏名】前野 耕一
(72)【発明者】
【氏名】高村 聡
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-243633(JP,A)
【文献】特開平6-322268(JP,A)
【文献】特開平3-181528(JP,A)
【文献】特開2016-108521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K、C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維と熱可塑性樹脂を含有し、該熱可塑性樹脂が、少なくとも、ポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物によるグラフト変性ポリプロピレンを含み、
前記グラフト変性ポリプロピレン100質量部に対し、前記ガラス繊維30~80質量部および酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマー1~20質量部含有し、
前記グラフト変性ポリプロピレン中のグラフト変性成分の含有量において、ポリプロピレン100質量部に対して、前記エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分が0.5~10質量部以下であり、前記芳香族ビニル化合物から得られる成分が該(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分と等質量以下であり、
前記芳香族ビニル化合物が、ベンゼン環に置換基を有してもよいスチレン化合物であることを特徴とするガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
【請求項2】
前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料をアルミシートに接着させ、2mm厚のシート状に成形し、これを同面積で0.1mm厚のアルミシートに接した状態で、圧力をかけながら220℃で5分間置いた後の180°の剥離試験によるピール強度が1.6N/mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
【請求項3】
前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料で成形したシートのJIS K 7161に基づく引張強度が80MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
【請求項4】
含有する強化繊維が、ガラス繊維のみであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
【請求項5】
前記ガラス繊維が、直径20μm以下で、かつ長さ1.2mm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
【請求項6】
前記エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルが、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
【請求項7】
前記酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマーが、酸無水物変性ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
【請求項8】
金属接着用ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
【請求項9】
少なくともポリプロピレンを含む熱可塑性樹脂、ならびに、該ポリプロピレン100質量部に対し、ガラス繊維30~80質量部、酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマー1~20質量部、1分間半減期温度が130℃以上175.2℃以下である有機過酸化物0.1~0.6質量部、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル0.5~10質量部および該(メタ)アクリル酸エステルと等質量以下の芳香族ビニル化合物を含有することを特徴とするガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項10】
前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物をグラフト反応して得られたガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料をアルミシートに接着させ、2mm厚のシート状に成形し、これを同面積で0.1mm厚のアルミシートに接した状態で、圧力をかけながら220℃で5分間置いた180°の剥離試験によるピール強度が1.6N/mm以上であることを特徴とする請求項9に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項11】
前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物をグラフト反応して得られたガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料で成形したシートのJIS K 7161に基づく引張強度が80MPa以上であることを特徴とする請求項9または10に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項12】
含有する強化繊維が、ガラス繊維のみであることを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項13】
前記ガラス繊維が、直径20μm以下で、かつ長さが1.2mm以下であることを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項14】
前記エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルが、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートであることを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項15】
前記芳香族ビニル化合物が、ベンゼン環に置換基を有してもよいスチレン化合物であることを特徴とする請求項9~14のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項16】
前記酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマーが、酸無水物変性ポリプロピレンであることを特徴とする請求項9~15のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項17】
金属接着用ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物であることを特徴とする請求項9~16のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
【請求項18】
ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の製造方法であって、請求項9~17のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物をグラフト反応して製造することを特徴とするガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の製造方法。
【請求項19】
前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物を、二軸押出機で加熱混錬してグラフト反応することを特徴とする請求項18に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の製造方法。
【請求項20】
金属と請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料およびその製造方法、ならびに、複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機、車両などの構造材料、スポーツ用品などには、金属に接着する接着剤もしくは接着性樹脂材料が使用され、金属表面を樹脂で被覆したり、金属と樹脂との積層材料を製造したり、さらには金属間もしくは金属と他の材料を接着する接着剤として利用されたりしている。
【0003】
上記のような、航空機、車両などの構造材料、スポーツ用品などで使用する場合、機械的強度が求められる。
熱可塑性樹脂の中でも、ポリプロピレンは耐熱性、強度、耐衝撃性などの物性バランスがよく、汎用的に使用される樹脂であるが、他の材料との接着性がなく、特に金属などと接着させるためには、金属表面を粗くしたり、新たに接着層を設けたり、被着体表面のコロナ処理、焼付処理、プライマー処理などの物理的、化学的な前処理を必要とする。しかも、このような処理を施しても、接着力は弱い。
【0004】
一方、機械的強度を高めるために、強化材料、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維などの無機繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維などの合成もしくは天然の有機繊維を樹脂中に組込んだ強化樹脂が知られている。
ポリプロピレンを使用したものでは、例えば、特許文献1に記載のガラス繊維による強化樹脂、特許文献2に記載の炭素繊維による強化樹脂が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-176085号公報
【文献】特開2015-143370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のガラス繊維による強化樹脂は、上記のように、物理的、化学的前処理をしない限り、金属との接着性がなく、しかも、このような前処理を施しても接着力は弱い。
一方、特許文献2に記載の炭素繊維による強化樹脂は、金属に対する接着性を示すものの、引張強度などの機械的強度をさらに一段と高める処方が必要となっている。そこで、特許文献2に記載の炭素繊維強化複合材は、変性プロピレンフィルムと炭素繊維平織材を交互に積層する手法を採用してこの課題を解決している。しかしながら、製造するための工程数が多く、生産性に劣る。
従って、本発明は、機械的強度および金属との接着性とのバランスに優れたガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料および該樹脂材料を製造するためのガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物、ならびに、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の複合体を提供することを課題とする。
さらに本発明は、機械的強度や金属との接着性に代表される物性に加え、良好な生産性をも両立し、簡便かつ安価に製造できるガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、強化繊維のガラス繊維と耐熱性、強度、耐衝撃性などの物性バランスに優れたポリプロピレンの組み合わせにおいて、ポリプロピレンを、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルによるグラフト変性ポリプロピレンとし、これと酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマーを組み合せることで、機械的強度が一段と向上し、かつ接着性にも優れることがわかった。
【0008】
上記知見に基づき、さらに検討した結果、上記課題は、下記構成により達成されることがわかった。
(1)ガラス繊維と熱可塑性樹脂を含有し、該熱可塑性樹脂が、少なくとも、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルによるグラフト変性ポリプロピレンもしくはエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物によるグラフト変性ポリプロピレンを含み、
前記グラフト変性ポリプロピレン100質量部に対し、前記ガラス繊維30~80質量部および酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマー1~20質量部含有し、
前記グラフト変性ポリプロピレン中のグラフト変性成分の含有量において、ポリプロピレン100質量部に対して、前記エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分が0.5~10質量部以下であり、前記芳香族ビニル化合物から得られる成分が該(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分と等質量以下であることを特徴とするガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(2)前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料をアルミシートに接着させ、2mm厚のシート状に成形し、これを同面積で0.1mm厚のアルミシートに接した状態で、圧力をかけながら220℃で5分間置いた後の180°の剥離試験によるピール強度が1.6 N/mm以上であることを特徴とする(1)に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(3)前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料で成形したシートのJIS K 7161に基づく引張強度が80MPa以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(4)含有する強化繊維が、ガラス繊維のみであることを特徴とする(1)~(3)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(5)前記ガラス繊維が、直径20μm以下で、かつ長さが1.2mm以下であることを特徴とする(1)~(4)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(6)前記エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルが、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートであることを特徴とする(1)~(5)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(7)前記芳香族ビニル化合物が、ベンゼン環に置換基を有してもよいスチレン化合物であることを特徴とする(1)~(6)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(8)前記酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマーが、酸無水物変性ポリプロピレンであることを特徴とする(1)~(7)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(9)金属接着用ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料であることを特徴とする(1)~(8)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料。
(10)少なくともポリプロピレンを含む熱可塑性樹脂、ならびに、該ポリプロピレン100質量部に対し、ガラス繊維30~80質量部、酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマー1~20質量部、1分間半減期温度が130℃以上175.2℃以下である有機過酸化物0.1~0.6質量部、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル0.5~10質量部および該(メタ)アクリル酸エステルと等質量以下の芳香族ビニル化合物を含有することを特徴とするガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(11)前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物をグラフト反応して得られたガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料をアルミシートに接着させ、2mm厚のシート状に成形し、これを同面積で0.1mm厚のアルミシートに接した状態で、圧力をかけながら220℃で5分間置いた後の180°の剥離試験によるピール強度が1.6 N/mm以上であることを特徴とする(10)に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(12)前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物をグラフト反応して得られたガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料で成形したシートのJIS K 7161に基づく引張強度が80MPa以上であることを特徴とする(10)または(12)に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(13)含有する強化繊維が、ガラス繊維のみであることを特徴とする(10)~(12)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(14)前記ガラス繊維が、直径20μm以下で、かつ長さが1.2mm以下であることを特徴とする(10)~(13)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(15)前記エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルが、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートであることを特徴とする(10)~(14)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(16)前記芳香族ビニル化合物が、ベンゼン環に置換基を有してもよいスチレン化合物であることを特徴とする(10)~(15)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(17)前記酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマーが、酸無水物変性ポリプロピレンであることを特徴とする(10)~(16)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(18)金属接着用ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物であることを特徴とする(10)~(17)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物。
(19)ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の製造方法であって、(10)~(18)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物をグラフト反応して製造することを特徴とするガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の製造方法。
(20)前記ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物を、二軸押出機で加熱混練してグラフト反応することを特徴とする(19)に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の製造方法。
(21)金属と(1)~(9)のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の複合体。
【0009】
本発明および本明細書では、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料とは、ガラス繊維で強化されたポリオレフィン樹脂材料であり、ポリオレフィン樹脂材料とは、成形品または成形品を製造するための材料であり、形状はペレットのような一次材料であってもよく、形状は構わない。
また、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物とは、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料を製造するための組成物であり、最初から全て、組成物を構成する素材を含有していても、同時にグラフト反応が進行する中で、順次、組成物として規定される素材が時間差によって添加される場合も含む。
【0010】
また、(メタ)アクリル酸エステルのように、「(メタ)」とは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの場合、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのいずれか一方、もしくはこれらの混合物をも意味する上位概念の総称で使用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、機械的強度および金属との接着性に優れたガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料および該樹脂材料を製造するためのガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物、ならびに、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の複合体を提供することが可能となった。
しかも、本発明では、上記のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物を、二軸押出機で加熱混練してグラフト反応させるだけで製造することができ、生産性が高く、簡便かつ安価に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、ガラス繊維と熱可塑性樹脂を含有し、該熱可塑性樹脂が、少なくとも、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルによるグラフト変性ポリプロピレンもしくはエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物によるグラフト変性ポリプロピレンを含む。
しかも、ガラス繊維の含有量は、グラフト変性ポリプロピレン100質量部に対し、30~80質量部であって、さらに酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマーを1~20質量部含有する。
また、グラフト変性ポリプロピレンは、グラフト変性成分の含有量において、ポリプロピレン100質量部に対して、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分が0質量部を超え10質量部以下であり、芳香族ビニル化合物から得られる成分が(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分と等質量以下である。
以下、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料から順に説明する。
【0013】
<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料>>
本発明のポリオレフィン樹脂材料はガラス繊維で強化されてなる。熱可塑性樹脂として、ベース樹脂とそれ以外の樹脂を含有し、少なくともエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性された変性ポリプロピレンをベース樹脂として含有する。なお、熱可塑性樹脂は、ベース樹脂のみでもよい。
【0014】
<ベース樹脂>
本発明のポリオレフィン樹脂材料は、ベース樹脂として、側鎖にエポキシ基を有するポリプロピレンを含有する。
ここで、ベース樹脂とは、ポリオレフィン樹脂材料を構成する樹脂成分のうち、最も含有量の多い樹脂であって、材料の機械的強度を付与したり、本発明ではさらには接着性を付与する。
【0015】
側鎖にエポキシ基を有するポリプロピレンは、本発明では、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルもしくはエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物によるグラフト変性ポリプロピレンである。
本発明では、ポリプロピレンの主鎖または側鎖のメチル基に、(α1)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するか、(α2)下記一般式(1)で表される単位構造と下記一般式(2)で表される単位構造の組み合わせからなるか、(α3)ポリプロピレンの主鎖または側鎖のメチル基の炭素原子のいずれかに、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、別の炭素原子に下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有しするか、または(α4)上記(α1)~(α3)のいずれかの混合のグラフト鎖を有するものが好ましい。
【0016】
【化1】
【0017】
式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素原子またはアルキル基を示し、Lはm+1価の連結基を示す。mは1以上の整数である。R11およびR12は各々独立に水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を示し、Ar11はアリール基を示す。
【0018】
のアルキル基の炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
は水素原子が好ましい。
【0019】
の連結基は、m+1価の脂肪族炭化水素基、m+1価の芳香族炭化水素基、または、上記エステル結合の-O-と結合する部分が脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であって、-O-、-S-、-N(Ra)(Rb)-、脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基が組み合わさったm+1の連結基が好ましい。ここで、RaおよびRbは各々独立に、水素原子または置換基を示す。
は、m+1価の脂肪族炭化水素基が好ましく、脂肪族炭化水素基の炭素数は1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1または2が特に好ましく、1が最も好ましい。
mは1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1~2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0020】
11およびR12のアルキル基の炭素数は、1~4が好ましく、1または2がより好ましく、1がさらに好ましい。
11およびR12は、一方が水素原子で、他方がアルキル基であるか、両方が水素原子の場合が好ましく、両方が水素原子の場合がより好ましい。
11およびR12のハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0021】
Ar11のアリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基が挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
上記の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アシル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルもしくはアリールのスルホニル基、ニトロ基が挙げられる。
【0022】
(ポリプロピレン)
グラフト変性されるポリプロピレンは、エチレンやα-オレフィンとの共重合体であっても構わないが、本発明では、プロピレンの単独重合体が好ましい。
また、側鎖のメチル基の立体規則性(タクシティー)は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれでも、またはこれらの混合物であっても構わないが、本発明ではアイソタクチックが好ましい。アイソタクチックポリプロピレンは、結晶性であり、数質量パーセント、例えば、5質量%以下のアタクチックポリプロピレンを含んでいても構わない。
【0023】
(グラフト変性成分)
側鎖にエポキシ基を有するポリプロピレンは、少なくとも、グラフト変性成分(グラフト鎖を構成するためのモノマー)は、本発明では、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルである。
【0024】
1.エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル
本発明では、下記一般式(1A)で表される化合物が好ましい。
【0025】
【化2】
【0026】
式中、R、R、Lおよびmは、一般式(1)におけるR、Lおよびmと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0027】
一般式(1A)で表される化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸1,2-エポキシ-2-プロピル、メタクリル酸1,2-エポキシ-2-プロピル、アクリル酸2,3-エポキシプロピル、メタクリル酸2,3-エポキシプロピル、アクリル酸2-(2,3-エポキシプロピルチオ)エチル、メタクリル酸2-(2,3-エポキシプロピルチオ)エチル、アクリル酸4-(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)フェニル、メタクリル酸4-(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)フェニル、アクリル酸3-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル、メタクリル酸3-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル、アクリル酸3,4-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル、メタクリル酸3,4-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル、アクリル酸3-(2,3-エポキシプロピルチオ)フェニル、メタクリル酸3-(2,3-エポキシプロピルチオ)フェニル、アクリル酸4-(2,3-エポキシプロピルオキシカルボニル)フェニル、メタクリル酸4-(2,3-エポキシプロピルオキシカルボニル)フェニル、アクリル酸3-(2,3-エポキシプロピルオキシ)-2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)プロピル、メタクリル酸3-(2,3-エポキシプロピルオキシ)-2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)プロピル、アクリル酸3-[3-(2,3-エポキシプロピルオキシ)-2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシ)]-(2,3-エポキシプロピルオキシ)-2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)プロピル、メタクリル酸3-[3-(2,3-エポキシプロピルオキシ)-2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシ)]-(2,3-エポキシプロピルオキシ)-2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)プロピルなどが挙げられる。
【0028】
これらは1種単独でも2種以上を併用してもよいが、1種単独が好ましい。
【0029】
本発明では、一般式(1A)で表される化合物はアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。
【0030】
グラフト変性ポリプロピレン中のグラフト変性成分の含有量において、ポリプロピレン100質量部に対して、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分は0.5~10質量部であり、2~7質量部が好ましく、3~5質量部がより好ましい。
エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分が0.5質量部未満であると、ガラス表面とエポキシ基の間での相互作用による実質的なピール強度の向上効果が得られない。
逆に、10質量部を超えるとエポキシ成分が多くなりすぎることから、ガラス繊維の混練中に、ガラス表面とエポキシ基の間での反応のため、組成物の粘度が上昇し、成形性に問題が生じ、製造が困難となる。
【0031】
2.芳香族ビニル化合物
【0032】
本発明では、下記一般式(2A)で表される化合物が好ましい。
【0033】
【化3】
【0034】
式中、R11、R12およびAr11は、一般式(2)におけるR11、R12およびAr11と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0035】
一般式(2A)で表される化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ジメチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、α-クロロスチレン、β-クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、o-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、p-フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレン、o-ニトロスチレン、m-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、o-ジイソプロペニルベンゼン、m-ジイソプロペニルベンゼン、p-ジイソプロペニルベンゼンが挙げられる。
【0036】
これらは1種単独でも2種以上を併用してもよいが、1種単独が好ましい。
【0037】
これらのなかでも、ベンゼン環に置換基を有してもよいスチレン化合物が好ましく、スチレン(すなわち、無置換のスチレン化合物)がより好ましい。
【0038】
グラフト変性ポリプロピレン中のグラフト変性成分の含有量において、ポリプロピレン100質量部に対して、芳香族ビニル化合物から得られる成分は、上記(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分と等質量以下であるが、上記(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分の質量に対して、0.9倍以下が好ましく、0.8倍以下がより好ましい。
【0039】
芳香族ビニル化合物は、ポリプロピレンをグラフト変性する際、ポリプロピレンの分子鎖の切断を抑制するため、使用することが好ましく、含有量の下限は、上記(メタ)アクリル酸エステルから得られる成分の質量に対して、0.1倍以上が好ましく、0.2倍以上がより好ましく、0.5倍以上がさらに好ましい。
【0040】
(グラフト変性成分から得られる副生成物)
本発明のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物でグラフト変性されたグラフト変性ポリプロピレンを含むものであるが、これらの成分によって得られる重合体を含んでもよい。
例えば、ポリプロピレンの主鎖に、上記一般式(1)の単位構造が組み込まれたポリプロピレン、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルのオリゴマーもしくは重合体、芳香族ビニル化合物のオリゴマーもしくは重合体、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物のオリゴマーもしくは重合体、未反応のエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルもしくは芳香族ビニル化合物が挙げられる。
【0041】
<酸無水物>
本発明では酸無水物を含有する。
酸無水物は、有機の酸無水物が好ましく、酸無水物構造を有する化合物(モノマー)であってもポリマーであっても構わないが、本発明ではポリマーが好ましい。
【0042】
酸無水物構造を有する化合物(モノマー)は、芳香族多価カルボン酸や脂肪族多価カルボン酸の無水物構造が環状または鎖状の無水物が挙げられるが、環状の無水物が好ましく、芳香族多価カルボン酸の環状の無水物がより好ましく、置換基を有してもよいフタル酸無水物がさらに好ましい。
なお、酸無水物構造が環状の場合、5員環または6員環が好ましく、5員環がより好ましい。
【0043】
置換基を有してもよいフタル酸無水物における置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アシル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルもしくはアリールのスルホニル基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。
置換基としてカルボキシ基を2つ有する場合、これらが、さらに脱水縮合環化して、酸無水物構造を形成し、無水ピロメリット酸(ピロメリット酸二無水物)となってもよい。
【0044】
酸無水物構造を有する化合物(モノマー)としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプトー2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、無水4-メチルフタル酸、無水4-クロロフタル酸、無水4-tert-ブチルフタル酸、無水4,5-ジクロロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水テトラフルオロフタル酸、無水テトラブロモフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられ、無水マレイン酸、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-ビフタル酸無水物が挙げられる。
【0045】
酸無水物構造を有するポリマーは、酸無水物変性ポリオレフィンが好ましく、酸無水物変性ポリプロピレンがより好ましい。また、酸無水物変性は、二重結合を有する環状の酸無水物での変性が好ましく、さらにグラフト変性がより好ましい。
【0046】
変性する酸無水物は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸が挙げられ、無水マレイン酸がなかでも好ましい。
【0047】
酸無水物は、上記グラフト変性ポリプロピレン100質量部に対し、1~20質量部含有し、
【0048】
本発明では、酸無水物を使用することで、ガラス繊維のガラス表面とベース樹脂との密着性が向上し、機械的強度が増加する。
また、被着体の表面、特に金属表面で、接着時にエポキシ基の開環反応が促進され、接着性の向上も期待できる。
【0049】
<ガラス繊維>
本発明では、ガラス繊維の平均直径は30μm以下が望ましい。一方、平均の長さは十分な強度を発現するためには、0.2mm以上が望ましい。
平均直径は、2~30μmが好ましく、5~25μmがより好まく、10~20μmがさらに好ましい。また、平均の長さは、0.2mm以上が好ましく、0.25mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。
なお、ガラス繊維の平均の長さの上限については特に規定するものではないが、現実的には成形体の中に存在するガラス繊維の平均の長さは1.2mm以下であることが一般的である。
ガラス繊維は、表面処理されていてもよく、シラン処理されたものが好ましい。
シラン処理は、例えば、アミノシラン、エポキシシランまたはビニルシラン等によるカップリング処理が挙げられる。例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシランや、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシランやビニルトリクロロシラン等のビニルシラン等を挙げることができる。
【0050】
本発明では、ガラス繊維は、上記グラフト変性ポリプロピレン100質量部に対し、30~80質量部含有するが、35~70質量部が好ましく、40~60質量部がより好ましい。
【0051】
強化材として、ガラス繊維と他の繊維を併用しても構わないが、本発明では、機械的強度や粘着性を調整するため、ガラス繊維のみ使用するのが好ましい。
【0052】
<その他の添加剤>
本発明では、必要に応じて、無機系の充填剤、例えばタルク、炭酸カルシウム、マイカ、あるいは有機系の充填剤、例えばポリエステル、ポリアミド繊維等、その他に難燃剤、安定剤、酸化防止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤等の各種添加剤、染料、顔料の着色剤を添加することができる。
【0053】
<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の特性>>
本発明では、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、以下の特性を有することが好ましい。
【0054】
<引張強度>
ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料で成形したシートのJIS K 7161に基づく引張強度が80MPa以上であることが好ましい。引張強度は85MPa以上がより好ましく、90MPa以上がさらに好ましい。上限は、現実的には230MPa以下である。
【0055】
引張強度は、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料のペレットを射出成形機〔例えば、ファナック(株)製 ロボットショットα-30C〕により、JIS K 7127の試験片タイプ5号に準拠して試験片を作製し、JIS K7161に準拠して、引張試験機〔例えば、インストロン(株)製 インストロン試験機5567型〕により、標線間距離25mm、試験速度50mm/minで測定することで得られる。
【0056】
<ピール強度>
本発明では、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料をアルミシートに接着させ、2mm厚のシート状に成形し、これを同面積で0.1mm厚のアルミシートに接した状態で、圧力をかけながら220℃で5分間置いた後の180°の剥離試験によるピール強度が1.6 N/mm以上が好ましい。
ピール強度は、1.8N/mm以上がより好ましく、2.0N/mm以上がさらに好ましい。上限は、現実的には20.0N/mm以下であるが、15.0N/mmがより好ましく、12.0N/mm以下がさらに好ましい。
【0057】
ピール強度は、JIS K6854-2に準拠して実施することができる。
具体的には、まず、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料のペレットを、射出成形機〔例えば、ファナック(株)製 ロボットショットα-30C〕により、被着体のアルミシートと同じ厚さの試料を作製する。
この試料をアルミシート(厚0.1mm)に接した状態で、圧力をかけた状態で220℃にて5分間置き、その後加圧状態のまま水冷方式にてプレス板温度を40℃まで低下した後に取出し、サンプル試験片を作製する。
この試験片のアルミシートをたわみ製被着材として扱い、180°剥離試験を行い、接着力の指標であるピール強度(N/mm)を測定する。
同様にして、試験片を作製し、ピール強度(N/mm)の測定を5回繰り返し、その平均値を求め、これをピール強度とする。
【0058】
引張強度やピール強度は、グラフト変性ポリプロピレン、それを構成するグラフト変性部分を構成するエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルや芳香族ビニル化合物の種類と量、酸無水物の種類と含有量およびガラス繊維の種類と量で調整できる。
【0059】
<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物>>
本発明のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物を使用して製造できる。
特に、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物をグラフト反応して製造することが好ましい。
【0060】
ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物は、少なくともポリプロピレンを含む熱可塑性樹脂、ならびに、該ポリプロピレン100質量部に対し、ガラス繊維30~80質量部、酸無水物構造を有する化合物もしくはポリマー1~20質量部、1分間半減期温度が130℃以上175.2℃以下である有機過酸化物0.1~0.6質量部、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル1~10質量部および該(メタ)アクリル酸エステルと等質量以下の芳香族ビニル化合物を含有する。
【0061】
使用するポリプロピレン、ガラス繊維、上記の酸無水物、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルおよび芳香族ビニル化合物は既に説明した通りである。
【0062】
<有機過酸化物>
過酸化物は、ポリプロピレンをグラフト反応するためのラジカル重合開始剤である。
有機過酸化物としては、少なくとも炭素原子と-O-O-結合を有する化合物であり、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、アルキルパーエステル、ジアシルパーオキサイド、モノパーオキシカーボネート、パーオキシジカーボネートが挙げられる。
このうち、本発明では、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキシエステルおよびモノパーオキシカーボネートが好ましく、特にジアルキルパーオキサイドが好ましい。
【0063】
有機過酸化物は、以下の具体例が挙げられる。
(1)ケトンパーオキサイド化合物
シクロヘキサノンパーオキサイド、鎖状メチルエチルケトンパーオキサイド等
(2)パーオキシケタール化合物
1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、環状メチルエチルケトンパーオキサイド等
(3)ハイドロパーオキサイド化合物
t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等
(4)ジアルキルパーオキサイド化合物
ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等
【0064】
(5)アシルパーオキサイド化合物
アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等
【0065】
(6)アルキルパーエステル化合物
t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジt-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等
【0066】
(7)ジアシルパーオキサイド化合物
ジアセチルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ビス(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ビス(m-トルオイル)パーオキサイド等
(8)モノパーオキシカーボネート化合物
t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート等
(9)パーオキシジカーボネート化合物
ジn-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジs-ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシルジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等
【0067】
本発明で使用する有機過酸化物は、1分間半減期温度が130℃以上175.2℃以下である有機過酸化物である。
【0068】
有機過酸化物の1分間半減期温度が上記の範囲より高すぎると二軸押出機での温度設定が困難になり、逆に低すぎると有機過酸化物自体が不安定となり、保管中に分解してしまう。
有機過酸化物の1分間半減期温度を上記のような範囲とすることで、通常に行われる二軸押出機で加熱混練が可能となり、グラフト反応が十分に進行し、しかもガラス繊維をポリエチレン等の熱可塑性樹脂中に均一に分散させることが可能となる。
【0069】
有機過酸化物の1分間半減期温度は、ベンゼン等の比較的不活性な溶剤を使用し、0.1モル/L濃度の有機過酸化物溶液を調整して、熱分解させたときの有機過酸化物濃度の時間変化を測定して求められる(「架橋剤ハンドブック(初版)」大成社発行、第162頁参照)。
【0070】
有機過酸化物は、ポリプロピレン100質量部に対し、0.1~0.6質量部であり、0.1~0.5質量部が好ましく、0.1~0.4質量部がより好ましく、0.1~0.3質量部がさらに好ましい。
【0071】
有機過酸化物が0.1質量部未満であると、(メタ)アクリル酸エステルモノマーのグラフト反応が進みにくく、1.6N/mm以上の接着力が出なくなり、0.6質量部を超えると、発生するラジカル量が多くなりすぎ、激しくポリプロピレンの分解反応が進むため、材料としての強度が低下し、80MPa以上の引張強度を発現しなくなる。
【0072】
<有機過酸化物以外の成分>
ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーおよびプロピレン成分以外のモノマー成分の含有量が50質量%以下のプロピレンコポリマーであればどのようなものでも構わないが、剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンとそれ以外の単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。
特に、本発明に使用するポリプロピレンのホモポリマーまたはプロピレンとそれ以外の単量体とのブロック共重合体は、230℃、2.16kg荷重におけるメルトマスフローレート(MFR)が0.1~60g/10分のものが好ましい。
これ以下の値であると成形性に乏しくなり、これ以上の値であると分子量が低いことから、有機過酸化物との反応による低分子量化により、得られる組成物の物性が低下する問題が生じる。
【0073】
ガラス繊維は、ポリプロピレン100質量部に対し、30~80質量部であって、好ましい範囲は、<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料>>で記載した通りである。
ガラス繊維が30質量部未満であると、十分な強化効果が得られず、強度が小さくなり、80質量部を超えると、ガラス成分が多くなりすぎることから、成形性や混練性などのハンドリング性に問題が生じたり、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料として耐衝撃性が極端に乏しくなるなど、実用性に問題が生じる。
【0074】
強化材として、ガラス繊維と他の繊維を併用しても構わないが、本発明では、機械的強度や粘着性を調整するため、ガラス繊維のみ使用するのが好ましい。
【0075】
なお、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物に添加するガラス繊維は、本発明では、特に無アルカリガラス(E-ガラス)のチョップドストランドが好ましい。その中でも、単繊維径(平均の直径)が5~18μm、繊維長さ(平均の長さ)が1.0~27.0mmの範囲のものが好ましい。単繊維径・繊維長が上記の下限未満であると、ガラス繊維そのものの破壊強度が小さかったり、添加する元の繊維長が短すぎるために、混練時の力によって破砕が進むことで、上記組成物の中に存在するガラス繊維のL/Dが小さくなり、所望の強度が得られにくくなる。一方、単繊維径・繊維長が上記上限を超えると、ガラス繊維が大きいため、形成されたガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料における樹脂中の異物としての性質が強くなるため、衝撃強度などの機械物性に悪影響を及ぼすことがある。
【0076】
酸無水物は、ポリプロピレン100質量部に対し、1~20質量部であって、好ましい範囲は、<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料>>で記載した通りである。
酸無水物が1質量部未満であると、ポリプロピレンとガラス繊維との界面における密着性が不足し、結果的にガラス繊維強化ポリオレフィンとしての強度が出ず、20質量部を超えると、系内の酸無水物の量が多すぎる状態になるため、ガラス表面との間の相互作用が強くなりすぎ、流動性が下がることから、成形性に問題が生じ、製造が困難となる。
【0077】
無水マレイン酸変性ポリオレフィンのポリオレフィンはベース樹脂との相溶性が良ければ特に限定されない。無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリスチレンが好ましいが、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。なお、エチレン、プロピレンおよびスチレンから選択される2種の共重合体の無水マレイン酸変性共重合体も好ましい。
【0078】
無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしては、無水マレイン酸変性のエチレン-プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性のエチレン-α-オレフィン共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体など)、無水マレイン酸を含む基を有するスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)が挙げられる。また、グラフトもしくは共重合される極性基として無水マレイン酸のみでなく、極性基〔アルキレングリコール系、(メタ)アクリル酸系のモノマー成分〕を含有していてもよい。
この中でも特に好ましいのは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンまたはそれらの共重合体)、無水マレイン酸変性のエチレン-プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性のエチレン-α-オレフィン共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体など)、無水マレイン酸を含む基を有するスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)である。
【0079】
無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが最も好ましい。特に、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1~200g/10分の無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましく、1.0~60g/10分のものが特に好ましい。また、無水マレイン酸変性率〔無水マレイン酸変性ポリオレフィンにおける、ポリオレフィン側鎖に反応した無水マレイン酸の質量を無水マレイン酸変性ポリオレフィンの質量で割り、これを100倍した値(%)〕は、0.1~2.0%が好ましく、0.1~1.5%がより好ましく、0.1~1.0%が最も好ましい。
変性率が、上記の下限未満であると、好ましい範囲の配合量であっても十分な樹脂-ガラス界面での接着強度が得られず、結果として強度が低くなる。また、上記の好ましい上限を超えると、機械物性に対しては問題ないものの、樹脂とガラスとの接着力が強くなりすぎ、組成物としての流動性が落ちるため、成形性に問題が生じることがある。
【0080】
有機もしくは無機の酸と異なり、酸無水物は、被着体に接着させるまでは、酸無水物構造を維持していることが好ましく、これによって、被着体に接着させるまで、エポキシ基の開環化が抑えられる。
【0081】
エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルは、ポリプロピレン100質量部に対し、0.5~10質量部である。
エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの上記含有量は、2~7質量部が好ましく、3~5質量部がより好ましい。
【0082】
ポリプロピレンに組込まれたエポキシ基は、ガラス繊維のガラス表面や被着体表面に存在する基、例えば、水酸基と化学結合することができる。
【0083】
エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルが1質量部未満であると、ポリプロピレンにエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルが組み込まれないことがあり、10質量部を超えると、ガラス繊維強化ポリオレフィンの強度が低下する。これは、配合する有機過酸化物に対して(メタ)アクリル酸エステル成分が過多となり、優先的に(メタ)アクリル酸エステル成分に対してラジカル反応が起きやすくなるため、結果的に、(メタ)アクリル酸エステルや芳香族ビニル化合物から成るオリゴマーもしくはポリマー成分過多となり、これがガラス成分とポリプロピレン成分との界面密着力を阻害することに起因すると推測される。
【0084】
芳香族ビニル化合物は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと等質量以下である。
芳香族ビニル化合物の含有量は、上記のエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの含有量の好ましい範囲と同じであり、<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料>>で記載した範囲がより好ましい。
【0085】
<その他の添加剤>
必要に応じて、<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料>>で記載した添加剤を使用しても構わない。
【0086】
<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の製造方法>>
本発明では、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物をグラフト反応してガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料を製造することが好ましい。
【0087】
グラフト反応は、グラフト反応が進行するのであれば、どのような条件、装置を使用しても構わない。
ただし、混練温度は、組成物中に存在する有機過酸化物が分解する温度以上であり、好ましくは、使用する有機過酸化物の1分間半減期温度より10~20℃高い温度である。なお、撹拌は、特に限定されるものではないが、例えば、スクリュー径15mm、L/D=45により回転速度100rpmで行えば十分である。
【0088】
本発明では、二軸押出機〔例えば、(株)テクノベル製 KZW15TW-45MG-NH〕で加熱混練することが好ましく、各成分をそれぞれ時間当たり供給質量で制御したフィーダーにより、スクリュー径15mm、L/D=45の二軸押出機のホッパーに投入し、混練ゾーンのバレル温度は有機過酸化物の1分間半減期温度より20℃高く設定し、スクリュー回転速度は100rpmで加熱混練することがより好ましい。
なお、各成分は、どのように投入もしくは添加しても構わないが、各成分のうち、ポリプロピレン、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物および酸無水物は、各々時間当たり供給質量で制御したフィーダーにより、二軸押出機に同時に投入し、ガラス繊維を、途中のサイドフィーダーから、時間当たり供給質量で制御したフィーダーで投入するのが好ましい。
【0089】
このようにして、二軸押出機を一度通過させることで、1回の混練で、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料を製造できる。
【0090】
ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、ペレットとすることで、どのような二次加工品とすることが可能となる。
【0091】
<<ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の用途>>
本発明のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、機械的強度に優れ、しかも接着性、特に金属との接着性に優れるため、各種の用途に使用できる。
このうち、本発明では、金属とガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料の複合体としての使用形態が好ましい。また、本発明では、金属とガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料を貼合した複合体が、なかでも好ましい。
【0092】
例えば、自動車、二輪車などの車両用材料、ロボットアームの構造部材、アミューズメント用ロボット部品、義肢部材、家電材料、OA機器筐体、建材部材、排水設備、トイレタリー材料、各種タンク、コンテナー、シート、玩具、スポーツ用品等が挙げられる。
車両用材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーインナーパネル、スペアタイヤカバー、ドアノブ等の内装部品や、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ、ドア・アウターパネル等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、ラジエターリザーブタンク、ウインドウ・ウオッシャータンク、フェンダーライナー、ファン等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
【0093】
被着体が金属の場合、アルミニウム、鉄、銅、ステンレスおよびこれらの合金が好ましく、なかでもアルミニウムが好ましい。
本発明では、被着体が金属の場合、金属表面には、エポキシ基と反応しうる基、例えば、水酸基が存在しており、グラフト変性されたポリプロピレンのエポキシ基と化学結合し、接着することができる。
被着体が金属の場合、特に、航空機、車両などの構造材料、スポーツ用品が好ましく、航空機、車両などの構造材料がさらに好ましい。
【実施例
【0094】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に、使用した素材を示す。
【0095】
<使用素材>
(1)ベース樹脂
・ポリプロピレン(PP):(株)プライムポリマー製 プライムポリプロJ106MG
MFR(230℃/2.16kg)=15g/10min、密度=0.90g/cm
(2)グラフト変性モノマー
・メタクリル酸グリシジル:日油(株)製 ブレンマーG
・スチレン:和光純薬工業(株)製 (特級)スチレン
(3)有機過酸化物
・ジクミルパーオキサイド:日油(株)製 パークミルD
1分間半減期温度=175.2℃
(4)酸無水物
・無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン:三菱化学(株)製 モディックP908
・無水ピロメリット酸(PMDA):(株)ダイセル製
(5)強化繊維
・ガラス繊維:日東紡(株)製 CS(F)3-PP-960S
カット長3mm、フィラメント径13μm、シラン処理
・炭素繊維:三菱レイヨン(株)製 パイロフィルHTシリーズTRH50 60M
ロービング状でフィラメント径6μm
【0096】
実施例1
ポリプロピレン100質量部に対して、メタクリル酸グリシジル5質量部、スチレン3.8質量部、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン16.5質量部およびジクミルパーオキサイド0.2質量部となるように、各々時間当たり供給質量で制御したフィーダーにより、スクリュー径15mm、L/D=45の二軸押出機〔(株)テクノベル製 KZW15TW-45MG-NH〕のホッパーに投入した。また、ガラス繊維は、ポリプロピレン100質量部に対して、50質量部となるように、途中のサイドフィーダーから、やはり時間当たり供給質量で制御したフィーダーにより添加した。
これにより、二軸押出機中で、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料組成物を得ると同時に、グラフト反応を行った。
二軸押出機のバレル温度は、有機過酸化物の1分間半減期温度より10~20℃高く設定し、スクリュー回転速度は100rpmで、加熱混練してガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料組成物得られた樹脂をペレットにして、80℃、24時間乾燥し、実施例1で使用するガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料のペレットを得た。
【0097】
実施例2~10、比較例1~4
実施例1において、各素材の種類および配合量を、下記表1または2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2~10、比較例1~4で使用する各々のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料のペレットを得た。
【0098】
なお、商品名パイロフィルHTシリーズTRH50 60M〔三菱レイヨン(株)製〕の炭素繊維はロービング状であるため、事前に3mmの長さに切り揃えて使用した。
【0099】
(有機過酸化物の1分間半減期温度の測定)
有機過酸化物が1分間で、熱によって分解し、その活性酸素量が分解前の量の半分になる温度である1分間半減期温度は、以下のようにして測定した。
0.1モル/L濃度の有機過酸化物のベンゼン溶液を調整し、熱分解させた時の有機過酸化物の濃度の時間変化を測定して求めた。
【0100】
上記のようにして得られた各ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料のペレットを使用し、引張強度およびピール剥離強度を以下のようにして測定した。
【0101】
(引張強度の測定)
得られた各ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料のペレットを、射出成形機〔ファナック(株)製 ロボットショットα-30C〕により、JIS K 7127の試験片タイプ5号に準拠して試験片を作製した。
得られた試験片の引張強度(MPa)をJIS K7161に準拠して、引張試験機〔インストロン(株)製 インストロン試験機5567型〕により、標線間距離25mm、試験速度50mm/minで測定した。
【0102】
(ピール強度の測定)
ピール強度の測定はJIS K6854-2に準拠して行った。
得られた各ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料のペレットを、射出成形機〔ファナック(株)製 ロボットショットα-30C〕により、2mm厚さの短冊状(幅2cm以上)の試料を作製した。
この試料を純アルミシート(厚0.1mm)に接した状態で、圧力をかけた状態で220℃にて5分間置き、その後加圧状態のまま水冷方式にてプレス板温度を40℃まで低下した後に取出し、サンプル試験片を作製した。
この試験片のアルミシートをたわみ性被着材として扱い、引張試験機(インストロン社製のインストロン3382)を利用して180°剥離試験を行い、接着力の指標であるピール強度(N/mm)を測定した。
同様にして、試験片を作製し、ピール強度(N/mm)の測定を5回繰り返し、その平均値を求め、これをピール強度とした。
【0103】
得られた結果を、まとめて下記表1および2に示す。
ここで、MAHは無水マレイン酸であり、表中の素材の量は質量部であり、各素材成分が「-」のものは未使用であることを示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
上記表1および2からも明らかなように、実施例1~10で使用した本発明のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、いずれも引張強度が80MPa以上であり、しかも180°の剥離試験によるピール強度が1.6 N/mm以上であった。
これに対して、ポリプロピレンを、エポキシ基を含有するメタクリル酸グリシジルとスチレンでグラフト変性しない比較例1で使用したガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、引張強度は114MPaと強いものの、ピール強度が0.4N/mmで弱かった。
また、酸無水物を使用しなかった比較例2におけるガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料では、ピール強度は比較例1より強いものの、1.4N/mmと不十分であり、引張強度は77MPaで弱かった。比較例2で使用したガラス繊維のみを炭素繊維に置き換えた比較例3でも、比較例2におけるガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料からの改善はなく、引張強度は、比較例2と実質的に同じであった。
さらに、ガラス繊維の配合量がグラフト変性ポリプロピレン100質量部に対して30質量部未満である比較例4では、引張強度が76MPaと弱かった。
【0107】
上記の結果から、少なくともエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、さらにはこれに加えて芳香族ビニル化合物でグラフト変性されたポリプロピレンに酸無水物を併用すると、ピール強度を維持して引張強度を高まることがわかる。
ここで、比較例1と例えば実施例1、2とを比較すると、ポリプロピレンを上記の化合物でグラフト変性すると引張硬度は若干弱まる。
【0108】
しかも、実施例1~10で使用した本発明のガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料は、これらの実施例で示された製造方法からも明らかなように、ガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂材料用組成物を、二軸押出機で加熱混練してグラフト反応させるだけで、製造することができ、生産性が高く、簡便かつ安価に製造できることがわかる。
【0109】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0110】
本願は、2016年11月21日に日本国で特許出願された特願2016-226339に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。