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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20220224BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220224BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220224BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220224BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220224BHJP
【FI】
H01L33/62
F21S2/00 110
H01L23/12 501B
H01L21/60 311R
F21Y115:10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017521694
(86)(22)【出願日】2016-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2016002650
(87)【国際公開番号】W WO2016194370
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2019-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2015111782
(32)【優先日】2015-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】巻 圭一
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/156159(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/034793(WO,A1)
【文献】特開2008-034505(JP,A)
【文献】特開2011-228463(JP,A)
【文献】特開平10-163258(JP,A)
【文献】特開2001-176908(JP,A)
【文献】特開2014-160880(JP,A)
【文献】特開2015-035438(JP,A)
【文献】特開2010-226086(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0041090(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性及び可撓性を有し、表面に透光性を有する複数の導体パターンが形成される第1絶縁基板と、
透光性及び可撓性を有し、前記第1絶縁基板に対向して配置される第2絶縁基板と、
前記第1絶縁基板に対向する面の第1領域に配置され、複数の前記導体パターンのうちの第1導体パターンに、第1バンプを介して接続される第1電極と、前記第1絶縁基板に対向する面の前記第1領域とは異なる第2領域に配置され、前記第1導体パターンとは異なる第2導体パターンに、第2バンプを介して接続される第2電極とを有する発光素子と、
を備え、
前記発光素子の上面に平行な面において、
前記第1バンプの中心から、前記第1導体パターンの外縁と前記第2領域の外縁とが交差する位置までの距離に対する、前記第1領域から、前記第1導体パターンまでの最も小さい距離の比が、0.1以上0.4以下であり、
前記第1及び第2バンプの高さは、5μm以上50μm以下である発光モジュール。
【請求項2】
透光性及び可撓性を有し、表面に透光性を有する複数の導体パターンが形成される第1絶縁基板と、
透光性及び可撓性を有し、前記第1絶縁基板に対向して配置される第2絶縁基板と、
前記第1絶縁基板に対向する面の第1領域に配置され、複数の前記導体パターンのうちの第1導体パターンに、第1バンプを介して接続される第1電極と、前記第1絶縁基板に対向する面の前記第1領域とは異なる第2領域に配置され、前記第1導体パターンとは異なる第2導体パターンに、第2バンプを介して接続される第2電極とを有する発光素子と、
を備え、
前記発光素子の上面に平行な面において、
前記第1バンプの中心から前記第1電極に隣接する辺の遠い側の角部までの距離に対する、前記第1領域から、前記第1導体パターンまでの最も小さい距離の比が、0.1以上0.4以下であり、
前記第1及び第2バンプの高さは、5μm以上50μm以下である発光モジュール。
【請求項3】
前記比は、0.10以上、0.30以下である請求項1又は2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記第1領域と前記第2領域は、互いに逆導電型である請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記第1及び第2バンプの材質は、金、銀、銅、ニッケル、又はこれらの合金のいずれかである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記合金は、AuSn合金、ニッケル合金である請求項5記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記第1及び第2バンプは、金属微粒子と樹脂の混合物である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【請求項8】
前記第1及び第2バンプの融点は、180℃以上である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【請求項9】
前記第1及び第2バンプのダイナミック硬さは3以上150以下である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【請求項10】
前記第1及び第2バンプの上面は、丸め処理を施してある請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【請求項11】
前記第1領域に接続する前記第1導体パターンが、前記第2領域上を通過する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【請求項12】
前記第1及び第2導体パターンは、透明導電膜又は導電体メッシュである請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【請求項13】
屈曲半径が20mmになるように屈曲させたときに点灯が維持されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の引用】
【0001】
本出願は、2015年6月1日に出願された、日本国特許出願第2015-111782号による優先権の利益に基礎をおき、かつ、その利益を求めており、その内容全体が引用によりここに包含される。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施形態は、発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
発光素子(LED)を用いた発光モジュールは、屋内用、屋外用、定置用、移動用等の表示装置、表示用ランプ、各種スイッチ類、信号装置、一般照明等の光学装置に幅広く利用されている。LEDを用いた発光モジュールのうち、各種の文字列、幾何学的な図形や模様等を表示する表示装置や表示用ランプ等に好適な装置として、2枚の透明基板間に複数のLEDを配置した発光モジュールが知られている。
【0004】
この種の発光モジュールは、例えば、表面に回路パターンが形成された透明基板と、回路パターンに接続されるLEDと、LEDを透明基板に対して保持する樹脂層と、を有している。透明基板や樹脂層は可撓性を有している。このため、発光モジュールは、湾曲させたり屈曲させたりして使用することが想定される。
【0005】
発光モジュールを湾曲させたり、或いは屈曲させたりする場合には、回路パターンの断線や、回路パターン間の短絡を未然に防止して、回路パターンの接続信頼性を向上する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-084855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の事情の下になされものであり、回路パターンの接続信頼性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る第1の発光モジュールは、透光性及び可撓性を有し、表面に透光性を有する複数の導体パターンが形成される第1絶縁基板と、透光性及び可撓性を有し、第1絶縁基板に対向して配置される第2絶縁基板と、第1絶縁基板に対向する面の第1領域に配置され、複数の導体パターンのうちの第1導体パターンに、第1バンプを介して接続される第1電極と、第1絶縁基板に対向する面の第1領域とは異なる第2領域に配置され、第1導体パターンとは異なる第2導体パターンに、第2バンプを介して接続される第2電極とを有する発光素子と、を備える。発光素子の上面に平行な面において、第1バンプの中心から、第1導体パターンの外縁と第2領域の外縁とが交差する位置までの距離に対する、第1領域から、第1導体パターンまでの最も小さい距離の比が、0.1以上0.4以下であり、第1及び第2バンプの高さは、5μm以上50μm以下である。
【0009】
第2の発光モジュールは、透光性及び可撓性を有し、表面に透光性を有する複数の導体パターンが形成される第1絶縁基板と、透光性及び可撓性を有し、第1絶縁基板に対向して配置される第2絶縁基板と、第1絶縁基板に対向する面の第1領域に配置され、複数の導体パターンのうちの第1導体パターンに、第1バンプを介して接続される第1電極と、第1絶縁基板に対向する面の第1領域とは異なる第2領域に配置され、第1導体パターンとは異なる第2導体パターンに、第2バンプを介して接続される第2電極とを有する発光素子と、を備える。発光素子の上面に平行な面において、第1バンプの中心から第1電極に隣接する辺の遠い側の角部までの距離に対する、第1領域から、第1導体パターンまでの最も小さい距離の比が、0.1以上0.4以下であり、第1及び第2バンプの高さは、5μm以上50μm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る発光モジュールの断面図である。
図2】発光素子の斜視図である。
図3】発光モジュールの一部を拡大して示す断面図である。
図4】発光素子の接続例を示す平面図である。
図5A】湾曲した状態の発光モジュールを示す図である。
図5B】湾曲した状態の従来の発光モジュールを示す図である。
図6】バンプを示す図である。
図7A】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図7B】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図7C】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図8A】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図8B】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図8C】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図9A】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図9B】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図10A】発光モジュールの製造方法を説明するための図である。
図10B】発光モジュールの製造方法を説明するための図である。
図10C】発光モジュールの製造方法を説明するための図である。
図10D】発光モジュールの製造方法を説明するための図である。
図11A】発光素子と、その周辺に位置する透明フィルム、導体パターンを示す図である。
図11B】発光素子の電極に形成されたバンプを拡大して示す図である。
図12】第1の実施形態に係る発光モジュールの断面図である。
図13】発光素子の斜視図である。
図14】発光モジュールの一部を拡大して示す断面図である。
図15A】湾曲した状態の発光モジュールを示す図である。
図15B】湾曲した状態の従来の発光モジュールを示す図である。
図16A】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図16B】バンプの丸め処理を説明するための図である。
図17A】発光モジュールの製造方法を説明するための図である。
図17B】発光モジュールの製造方法を説明するための図である。
図17C】発光モジュールの製造方法を説明するための図である。
図17D】発光モジュールの製造方法を説明するための図である。
図18】屈曲試験及び熱サイクル試験を行うことで得られる試験結果を示す図である。
図19】屈曲試験及び熱サイクル試験を行うことで得られる試験結果を示す図である。
図20A】発光素子の平面図である。
図20B】発光素子の平面図である。
図20C】発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《第1の実施形態》
本発明の第1の実施形態に係る発光モジュールについて、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る発光モジュール1の概略構成を示す模式断面図である。
【0013】
図1に示されるように、発光モジュール1は、1組の透明フィルム4,6、透明フィルム4,6の間に形成された樹脂層13、樹脂層13の内部に配置された複数の発光素子22を有している。
【0014】
透明フィルム4,6は、紙面横方向を長手方向とする長方形のフィルムである。透明フィルム4,6は、厚さが50~300μm程度であり、可視光に対して透過性を有する。透明フィルム4,6の全光線透過率は、5~95%程度であることが好ましい。なお、全光線透過率とは、日本工業規格JISK7375:2008に準拠して測定された全光透過率をいう。
【0015】
透明フィルム4,6は、可撓性を有し、その曲げ弾性率は、0~320kgf/mm程度(ゼロを含まず)である。なお、曲げ弾性率とは、ISO178(JIS K7171:2008)に準拠する方法で測定された値である。
【0016】
透明フィルム4,6の素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンサクシネート(PES)、アートン(ARTON)、アクリル樹脂などが考えられる。
【0017】
上記1組の透明フィルム4,6のうち、透明フィルム4の下面には、厚さが0.05μm~2μm程度の複数の導体パターン5が形成されている。
【0018】
導体パターン5には、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電材料が用いられる。導体パターン5は、例えば、スパッタ法や電子ビーム蒸着法等を用いて薄膜を形成し、得られた薄膜をレーザ加工やエッチング処理等でパターニングすることにより形成することができる。
【0019】
導体パターン5は、例えば平均粒子径が10~300nmの範囲の透明導電材料の微粒子と透明樹脂バインダとの混合物をスクリーン印刷等で回路形状に塗布したものであってもよい。また、上記混合物の塗布膜にレーザ加工やフォトリソグラフィによるパターニング処理を施して回路を形成したものであってもよい。
【0020】
導体パターン5は、透明導電材料からなるものに限らず、金や銀、銅等の不透明導電材料の微粒子をメッシュ状に付着させたものであってもよい。例えば、透明フィルム4に、ハロゲン化銀のような不透明導電材料の感光性化合物を塗布した後、露光・現像処理を施してメッシュ状の導体パターン5を形成してもよい。また、不透明導電材料微粒子を含むスラリーをスクリーン印刷等でメッシュ状に塗布して導体パターン5を形成してもよい。
【0021】
導体パターン5は、発光モジュール1全体としての全光透過率が1%以上となるような透光性を有していることが好ましい。発光モジュール1全体としての全光透過率が1%未満であると、発光点が輝点として認識されなくなる。導体パターン5自体の透光性は、その構成によっても異なるが、全光透過率が10~85%の範囲であることが好ましい。
【0022】
樹脂層13は、透明フィルム4と透明フィルム6の間に形成されている。樹脂層13は、可視光に対する透過性を有する。
【0023】
樹脂層13は、エラストマーを主成分として含む材料からなることが好ましい。樹脂層13は、必要に応じて他の樹脂成分等を含んでいてもよい。エラストマーとしては、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が知られている。これらのうち、上述した特性を満足するアクリル系エラストマーは、透光性、電気絶縁性、屈曲性等に加えて、軟化時の流動性、硬化後の接着性、耐候性等に優れることから、樹脂層13の構成材料として好適である。
【0024】
樹脂層13は、所定のビカット軟化温度、引張貯蔵弾性率、ガラス転移温度、融解温度等の特性を満足する透光性絶縁樹脂からなる。樹脂層13は、特にエラストマーで構成されていることが好ましい。例えば、ビカット軟化温度が80~160℃の範囲で、且つ0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率が0.01~10GPaの範囲であることが好ましい。さらに、樹脂層13は、ビカット軟化温度で溶融しておらず、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましい。
【0025】
樹脂層13の融解温度は、180℃以上であること、もしくはビカット軟化温度より40℃以上高いことが好ましい。加えて、樹脂層13のガラス転移温度は、-20℃以下であることが好ましい。なお、ビカット軟化温度は、試験加重10N、昇温速度50℃/時間の条件で、JIS K7206(ISO 306:2004)に記載のA50条件の下で求めた値である。
【0026】
ガラス転移温度と融解温度は、JIS K7121(ISO 3146)に準拠した方法で測定した。ガラス転移温度と融解温度は、5℃/分の昇温速度で試料を昇温し、示差走査熱量計を用いて熱流束示差走査熱量測定により求めた値である。引張貯蔵弾性率は、JlS K7244-1(ISO 6721)に準拠して測定した。引張貯蔵弾性率は、-100℃から200℃まで試料を1℃/分で等速昇温し、周波数を10Hzとして動的粘弾性自動測定器を用いて求めた値である。
【0027】
樹脂層13は、発光素子22の電極28、29の周囲にまで配置される。電極28、29の面積が、発光素子22の上面(N型半導体層及びP型半導体層)の面積よりも小さく、電極28,29が導体パターン5に向かって突出している場合には、発光素子22の上面と導体パターン5との間に空間が生じる場合がある。樹脂層13は、上記空間にも形成されることが好ましい。
【0028】
樹脂層13の厚さT2は、発光素子22の高さT1よりも小さくなっている。これにより、導体パターン5と電極28、29との接触性が向上する。樹脂層13と密着している透明フィルム4は、発光素子22が配置されている部分から隣接する発光素子22間の中間部分に向けて内側に湾曲した形状になっている。これにより、導体パターン5は、透明フィルム4によって電極28、29に押し付けられる。したがって、導体パターン5と電極28、29との電気的な接続性やその信頼性が向上する。
【0029】
図2は、発光素子22の斜視図である。発光素子22は、一辺が0.3mm乃至3mmの正方形のLEDチップである。図2に示されるように、発光素子22は、ベース基板23、N型半導体層24、活性層25、P型半導体層26からなるLEDチップである。発光素子22の定格電圧は約2.5Vである。
【0030】
ベース基板23は、サファイア基板又は半導体基板である。ベース基板23の上面には、当該ベース基板23と同形状のN型半導体層24が形成されている。N型半導体層24は、例えばn-GaNからなる。
【0031】
N型半導体層24の上面には、順に、活性層25、P型半導体層26が積層されている。活性層25は、例えばInGaNからなる。また、P型半導体層は、例えばp-GaNからなる。発光素子22は、ダブルヘテロ(DH)構造、あるいは多重量子井戸(MQW)構造を有するものであってもよい。なお、N型半導体層24とP型半導体層26の導電型は逆であってもよい。
【0032】
N型半導体層24に積層される活性層25、及びP型半導体層26のコーナー部分には切欠き25a,26bが形成され、この切欠き25a,26bからN型半導体層24の表面が露出している。ベース基板23として光学的に透過性を有するものを用いることにより、光は発光素子の上下両面から放射される。以下、説明の便宜上、切欠き25a,26bから露出するN型半導体層24表面の領域を領域A1とし、P型半導体層26の表面を領域A2とする。領域A1、領域A2間の段差は1μm程度である。
【0033】
N型半導体層24の、活性層25とP型半導体層26から露出する部分には、N型半導体層24と電気的に接続される電極29(電極パッド)が形成されている。また、P型半導体層26のコーナー部分には、P型半導体層26と電気的に接続される電極28(電極パッド)が形成されている。電極28,29は、銅(Cu)、或いは金(Au)からなり、上面には、導電性のバンプ30が形成されている。バンプ30は、金(Au)や金合金などの金属からなる金属バンプである。バンプ30として、金属バンプのかわりに、半田バンプを用いてもよい。
【0034】
図1に示されるように、発光素子22は、隣接する発光素子22相互間の距離がdとなるように等間隔に配置されている。距離dは、1500μm以下である。発光モジュール1が備える発光素子22の数は、発光モジュール1の仕様、例えば、外形寸法、発光面積などに応じて、適宜、決定することができる。
【0035】
図3は、発光モジュール1の一部を拡大して示す断面図である。図3に示されるように、発光素子22の電極28,29は、バンプ30を介して、導体パターン5と電気的に接続されている。
【0036】
バンプ30は、金やAuSn合金や銀や銅やニッケルまたそれ以外の金属との合金、混合物、共晶、アモルファス材料から形成されていてもよい。また、バンプ30は、ハンダや共晶ハンダ、金属微粒子と樹脂の混合物、異方性導電膜などから構成されていてもよい。バンプ30は、ワイヤボンダを使ったワイヤバンプや、電解メッキ、無電解メッキからなるバンプであってもよい。また、バンプ30は、金属微粒子を含むインクをインクジェット印刷して焼成したものであってもよく、金属微粒子を含むペーストの印刷や塗布、ボールマウント、ペレットマウント、蒸着スパッタなどにより形成したものであってもよい。
【0037】
バンプ30の融点は、180℃以上であることが好ましい。また、バンプ30の融点は、200℃以上であることがより好ましい。バンプ30の融点の上限は、実用的な範囲としては1100℃以下である。バンプ30の融点が180℃未満であると、発光モジュールの製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ30が大きく変形して、バンプ30の充分な厚さを維持出来なくなる。また、バンプ30が、電極からはみ出してしまい、LEDの光度を低下させる等の不具合が生じる。
【0038】
バンプ30の融点は、例えば、島津製作所製DSC-60示差走査熱量計を用いて測定した。バンプ30の融点は、約10mgの試料を、5℃/分の昇温速度で昇温して測定したときの値である。固相線温度と液相線温度が異なる場合は固相線温度の値である。
【0039】
バンプ30のダイナミック硬さDHVは、3以上150以下であり、好ましくは5以上100以下である。より好ましくは5以上50以下である。バンプ30のダイナミック硬さDHVが3未満であると、発光モジュールの製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ30が大きく変形して、バンプ30の充分な厚さを維持できなくなる。また、バンプ30が電極からはみ出してしまい、LEDの光度を低下させる等の不具合が生じる。一方、バンプ30のダイナミック硬さDHVが150を超えると、発光モジュールの製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ30が透明フィルム4を変形させて、外観不良や接続不良を生じさせる。
【0040】
バンプ30のダイナミック硬さDHVは、例えば、島津製作所製の島津ダイナミック超微硬度計DUH-W201Sを用いた試験により求める。この試験では、20℃における環境下で、対面角136°のダイヤモンド正四角錐圧子(ビッカース圧子)を負荷速度0.0948mN/秒でバンプ30へ押し込む。そして、圧子の押し込み深さ(D/μm)が0.5μmに達した時の試験力(P/mN)を次式へ代入する。
【0041】
DHV=3.8584P/D=15.4336P
【0042】
バンプ30の高さは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。バンプ30の高さは、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。バンプ30の高さが5μm未満だと、導体パターンとP型半導体層もしくは導体パターンとN型半導体層との短絡を防ぐ効果が低下する。一方、バンプ30の高さが50μmを超えてしまうと、発光モジュールの製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ30が透明フィルム4を変形させて外観不良や接続不良を生じさせる。
【0043】
発光素子22の電極とバンプ30の接触面積は、100μm以上15,000μm以下であることが好ましい。発光素子22の電極とバンプ30の接触面積は、400μm以上8,000μm以下であることがより好ましい。これらの各寸法は、室温と被測定物の温度が20℃±2℃となる安定した環境下で計測した値である。
【0044】
図4は、導体パターン5と発光素子22との接続例を示している。発光素子22の電極28,29が、相互に隣接する導体パターン5にそれぞれ接続される。
【0045】
1組の透明フィルム4,6、樹脂層13、複数の発光素子22は、真空熱プレスにより一体化される。このため、バンプ30の少なくとも一部は融解していない状態で発光素子22の電極28,29に電気的に接続される。したがって、電極28,29の上面とバンプ30の接触角は、例えば、135度以下となる。
【0046】
発光素子22は、電極28、29を介して印加される直流電圧により点灯する。例えば、発光モジュール1が7個の発光素子22を2列に並べて構成される場合、発光モジュール1の導体パターン5は、7直列2並列回路を構成する。直列接続された発光素子22では、流れる電流は全ての発光素子22で同じ大きさになる。
【0047】
上述のように構成される発光モジュール1の発光素子22は、バンプ30を有している。このため、発光素子22を埋設したフレキシブルな発光モジュール1が、電極28、29側が凸になるように屈曲されても、バンプ30によって、発光素子22の上面と導体パターン5との間に十分な高さ(垂直距離)が確保されるので、発光モジュール1での短絡を防止することができる。
【0048】
即ち、図4に示すように、N型半導体層24側の電極29に接続された導体パターン5は、P型半導体層26上に位置する。したがって、電極28、29側が凸になるように発光モジュール1を屈曲させて行くと、N型半導体層24側の導体パターン5とP型半導体層26とが重なったところで短絡が生じる。しかし、バンプ30で、発光素子22の上面と導体パターン5との間に十分な高さを確保することにより、短絡を回避することができる。
【0049】
例えば、図5Aは、本実施形態に係る発光モジュール1を湾曲させたときの状態を示す図である。また、図5Bは、比較例に係る発光モジュール300を湾曲させたときの状態を示す図である。
【0050】
図5Aに示されるように、発光素子22の電極28,29にバンプ30が形成されている場合には、領域A1側の導体パターン5から発光素子22の領域A2までの垂直距離が大きくなり、発光モジュール1が湾曲しても、領域A1側の電極29に接続される導体パターン5と、発光素子22の領域A2表面との接触が抑制される。
【0051】
一方、図5Bに示されるように、発光素子22の電極28,29にバンプ30が形成されていない場合には、発光モジュール300が湾曲したときに、領域A1側の電極29に接続される導体パターン5と、発光素子22の領域A2の表面とが接触して、N型半導体層24-電極29-導体パターン5-P型半導体層26を経路とするリークパスが生じ短絡が発生してしまう。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る発光モジュール1では、バンプ30により導体パターン5と発光素子22との間に十分な垂直距離が確保されるので、回路の短絡を防止することができる。
【0053】
<製造方法>
次に、実施形態に係る発光モジュール1の製造方法について説明する。
【0054】
まず、電極28と電極29(アノード電極とカソード電極もしくはカソード電極とアノード電極)を形成した発光素子22を用意する。
【0055】
次に、発光素子22の電極28,29の双方にバンプ30を形成する。バンプ30の形成方法は、ワイヤバンプ加工機を使ってAuワイヤもしくはAu合金ワイヤから金もしくは金合金バンプを作る方法を採用することができる。用いるワイヤ径は、15μm以上で75μm以下であることが好ましい。
【0056】
本実施形態では、ワイヤボンディング装置を用いる。ワイヤ先端の放電によって、ワイヤを溶融させてボールを形成した後、超音波によりボールと電極28,29とを接続する。そして、電極28,29にボールが接続された状態で、ボールからワイヤを切り離す。これにより、図6に示されるように、電極28,29の上面に、上端部に突起が残るバンプ30が形成される。
【0057】
<丸め処理>
バンプ20の上端部に残った微小な突起はそのまま残してもよいが、所望によりバンプ20の上面を押圧してバンプ30の丸め処理を行ってもよい。
【0058】
一例として図6に示されるように、バンプ30の上部には、ワイヤを切り取るときに生じた突起部が残っている。この突起部は、テールと称される。バンプ30の形状は、電極28,29に接している面の直径をA、バンプ30の高さをBとした場合、B/Aが0.2~0.7であることが望ましい。そこで、バンプ30の形状が、係る数値範囲からはずれるような場合には、丸め処理を施す。
【0059】
図7A乃至図7Cは、プレス板500を使用した丸め処理を説明するための図である。バンプ30を形成した後、バンプボンディング装置(不図示)に発光素子22を配置する。そして、図7Aに示されるように、バンプボンディング装置に設けられたプレス板500を、その下面が電極28,29と平行になった状態で、バンプ30の上方に位置決めする。
【0060】
次に、プレス板500を下降させて、図7Bに示されるように、バンプ30の上部へ押し付ける。このとき、プレス板500は、バンプの高さが所望の高さBになるまで下降させる。バンプ30のテールは、プレス板500によって押しつぶされる。これにより、図7Cに示されるように、バンプ30の上部に突起のない連続面が形成される。この連続面は、バンプ30の上端部で平坦になる。
【0061】
上記丸め処理は、樹脂シートを介してバンプ30をプレスしてもよい。その場合には、プレス板500の下面に、例えば、PET、フッ素樹脂、TPX、オレフィン等を素材とする樹脂シート501を装着する。そして、図8Aに示されるように、樹脂シート501が配置されたプレス板500を、その下面が電極28,29と平行になった状態で、バンプ30の上方に位置決めする。
【0062】
次に、プレス板500を下降させて、図8Bに示されるように、樹脂シート501をバンプ30の上部へ押し付ける。このとき、プレス板500は、バンプの高さが所望の高さBになるまで下降させる。バンプ30のテールは、樹脂シート501によって押しつぶされる。これにより、図8Cに示されるように、バンプ30の上部に突起のない連続面が形成される。樹脂シート501を用いた丸め処理によってバンプ30に形成された連続面は、バンプ30の上端部でも上に凸の曲面となる。
【0063】
樹脂シート501を用いた丸め処理では、例えば、図9Aに示されるように、発光素子22の上方に、樹脂シート501が装着されたプレス板500を配置するとともに、発光素子22の下方に、樹脂シート503が装着されたプレス板502を配置する。これらの樹脂シート501,503としては、その厚さが、発光素子22の厚さと、バンプ30の高さBを加えた値より大きいものを用いる。
【0064】
そして、プレス板500を下降させるとともに、プレス板502を上昇させて、発光素子22を挟み込んでプレスする。これにより、図9Bに示されるように、発光素子22は、樹脂シート501,503の内部に埋め込まれた状態になる。このとき、発光素子22のバンプ30は、丸め処理が施され、テールが押しつぶされた状態になっている。プレス時のプレス板500,502の移動量は、目標とするバンプ30の高さに応じて決定する。
【0065】
次に、発光素子22のプレスを終了し、樹脂シート501,503を発光素子22から除去する。これにより、連続した曲面からなる連続面が形成されたバンプ30をもつ発光素子22が得られる。
【0066】
上述のように発光素子22の上面にバンプ30が形成される。これに限らず、バンプ30は、ワイヤバンプ以外に、電解メッキや無電解メッキからなるバンプであってもよい。バンプ30は、金属微粒子を含むインクを用いたインクジェット塗布、金属微粒子を含んだペーストの塗布や印刷、ボールマウントやペレットマウント、異方性導電膜の熱圧着などにより形成してもよい。バンプ30には、金や銀や銅やニッケルなどの金属、金スズ合金などの合金や共晶やアモルファス、ハンダなどを用いることができる。
【0067】
発光素子22にバンプ30を形成したら、上面に導体パターン5が形成された透明フィルム4を用意する。そして、図10Aに示されるように、透明フィルム4の上面に、透光性を有する樹脂シート130を配置する。
【0068】
この樹脂シート130は、透明フィルム4の形状とほぼ同じ形状に整形されている。樹脂シート130は、ビカット軟化温度が、80~160℃の範囲であり、0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率が0.01~10GPaの範囲である。また、樹脂シート130は、ビカット軟化温度で溶融することなく、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上である。樹脂シート130の融解温度は180℃以上もしくはビカット軟化温度より40℃以上高い。また、樹脂シート120のガラス転移温度は、-20℃以下である。上記条件を満たす樹脂シート130として、エラストマーシート、例えば熱可塑性のアクリル系エラストマーシートを用いることができる。
【0069】
樹脂シート130は、バンプを含めた発光素子22よりもやや薄い。
【0070】
次に、図10Bに示されるように、樹脂シート130の上面に発光素子22を配置する。発光素子22は、電極28,29が形成された面が、透明フィルム4に対向するように配置される。また、発光素子22は、電極28,29が、対応する導体パターン5の上方に位置するように位置決めされる。
【0071】
次に、図10Cに示されるように、発光素子22の上方に透明フィルム6を配置する。
【0072】
次に、透明フィルム4,6、樹脂シート130、発光素子22からなる積層体を、真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。
【0073】
真空雰囲気中における積層体の加熱・加圧工程(真空熱圧着工程)では、積層体を、樹脂シート130のビカット軟化温度Mp(℃)に対し、Mp-10(℃)≦T≦Mp+30(℃)の範囲の温度Tまで加熱するとともに、加圧することが好ましい。また、積層体を、Mp-10(℃)≦T≦Mp+10(℃)の範囲の温度Tまで加熱することがより好ましい。
【0074】
このような加熱条件を適用することによって、樹脂シート130を適度に軟化させた状態で積層体を加圧することができる。また、樹脂シート130を介して、導体パターン5上に配置された発光素子22の電極28、29を、導体パターン5の所定の位置に接続しつつ、透明フィルム4と透明フィルム6の間に、軟化した樹脂シート130を充填して樹脂層13を形成することができる。
【0075】
積層体の真空熱圧着時の加熱温度Tが、樹脂シート130のビカット軟化温度Mpより10(℃)低い温度未満(T<Mp-10)であると、樹脂シート130の軟化が不十分となる。この場合、樹脂シート130(ひいては樹脂層13)の発光素子22に対する密着性が低下するおそれがある。加熱温度Tが樹脂シート130のビカット軟化温度Mpより30(℃)高い温度を超える(Mp+30<T)と、樹脂シート130が軟化しすぎて形状不良等が生じるおそれがある。
【0076】
<熱圧着工程>
積層体の真空雰囲気中での熱圧着工程は、以下のようにして実施することが好ましい。上述した積層体を予備加圧して各構成部材間を密着させる。次に、予備加圧された積層体が配置された作業空間を真空引きした後、積層体を上述したような温度に加熱しながら加圧する。このように、予備加圧された積層体を真空雰囲気中で熱圧着することによって、図10Dに示されるように、透明フィルム4と透明フィルム6との間の空間に軟化した樹脂シート130を隙間なく充填することができる。
【0077】
熱圧着時の真空雰囲気は5kPa以下とすることが好ましい。予備加圧工程を省くことも可能であるが、この場合には積層体に位置ずれ等が生じやすくなるため、予備加圧工程を実施することが好ましい。
【0078】
積層体の熱圧着工程を大気雰囲気下や低真空下で実施すると、熱圧着後の発光モジュール1内、とりわけ発光素子22の周囲に気泡が残存しやすい。発光モジュール1内に残留する気泡内部の空気は加圧されている。このため、熱圧着後の発光モジュール1の膨れや、発光素子22と透明フィルム4,6との剥離の発生原因となる。さらに、発光モジュール1の内部、とりわけ発光素子22の近傍に気泡や膨れが存在していると、光が不均一に散乱し、発光モジュール1の外観上の問題となる。
【0079】
以上のように、導体パターン5と発光素子22の電極28,29との間に樹脂シート130を介在させた状態で、真空熱圧着工程を実施することによって、電極28,29と導体パターン5とを電気的に接続しつつ、発光素子22の周囲に樹脂層13を形成することができる。さらに、例えば図3に示されるように、発光素子22の上面と導体パターン5との間の空間に、樹脂層13の一部を良好に充填することができる。
【0080】
積層体に上記熱圧着工程を施すことにより、図1に示される発光モジュール1が完成する。本実施形態に係る製造方法によれば、導体パターン5と発光素子22の電極28,29との電気的な接続性やその信頼性を高めた発光モジュール1を再現性よく製造することができる。
【0081】
なお、電極28、29の高さは、互いに異ならせてもよいし、同じにしてもよい。また、図10A図10Dでは発光素子22を下向きにして組み立てているが、発光素子22を上向きにして製造工程を進めてもよい。
【0082】
図11Aは、発光モジュール1を構成する発光素子22と、発光素子22の周辺に位置する樹脂層13、導体パターン5、透明フィルム4,6を示す図である。また、図11Bは、発光素子22の電極28,29に形成されたバンプ30を拡大して示す図である。図11A図11Bを参照するとわかるように、発光モジュール1では、導体パターン5は、発光素子22のバンプ30に接する接触領域が、バンプ30に沿って窪んだ状態になっている。これにより、バンプ30と導体パターン5とが接触する面積が増加している。その結果、バンプ30と導体パターン5との間の抵抗を小さくすることが可能となる。
【0083】
本実施形態では、樹脂層13が、単層の樹脂シート130からなる場合を示したが、樹脂層13を2枚の樹脂シート130から構成してもよい。この場合には、2枚の樹脂シート130の間に発光素子22を挟んだ状態で積層体を加圧することで、図1に示される発光モジュール1を得ることができる。
【0084】
樹脂層13を2枚の樹脂シート130から構成する場合は、透明フィルム6を仮の基体とし、全体を加圧して電極28,29と導体パターン5の電気的接続を得た後、2枚の樹脂シート130のうち電極28,29と反対側の樹脂シート130を剥す。そして、あらためて剥したものと同じ厚みを持つ樹脂シート130と最終的な透明フィルム6とを被せて、図1に示される発光モジュール1を得るようにしてもよい。
【0085】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態に係る発光モジュールについて、図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態に係る発光モジュールと同等の構成については、説明を省略する。
【0086】
図12は、本実施形態に係る発光モジュール1の概略構成を示す断面図である。本実施形態に係る発光モジュールは、当該発光モジュール1を構成する発光素子が、両面に電極を有している点で、第1の実施形態に係る発光モジュールと相違している。
【0087】
図12に示されるように、発光モジュール1は、1組の透明フィルム4,6、透明フィルム4,6の間に形成された樹脂層13、樹脂層13の内部に配置された複数の発光素子8を有している。
【0088】
透明フィルム4,6は、対向するように配置さている。透明フィルム6の上面(透明フィルム4に対向する面)には、透明フィルム4と同様に導体パターン7が形成されている。
【0089】
透明フィルム4と透明フィルム6の間には、複数の発光素子8が配置されている。発光素子8は、透明フィルム4に対向する面に電極9(電極パッド)が設けられ、透明フィルム6に対向する面に電極10が設けられている。
【0090】
発光素子8としては、PN接合を有する発光ダイオードチップ(LEDチップ)を用いることができる。発光素子8は、LEDチップに限られるものではなく、レーザダイオード(LD)チップ等であってもよい。
【0091】
発光素子8としては、例えば、N型の半導体基板上にP型半導体層を形成したもの、P型の半導体基板上にN型半導体層を形成したもの、半導体基板上にN型半導体層とP型半導体層とを形成したものの、いずれでもよい。また、LEDをCuW等の金属支持基板やSi、Ge、GaAs等の半導体支持基板にボンディングし、P-N接合を最初の半導体基板から支持基板に移動させたタイプのLEDでもよい。また、発光素子8は、ダブルヘテロ(DH)構造、あるいは多重量子井戸(MQW)構造を有するものであってもよい。
【0092】
図13は、発光素子8の斜視図である。発光素子8は、一辺が0.3mm乃至3mmの正方形のLEDチップである。図13に示されるように、発光素子8は、基材12と、基材12の上面に積層されるP型半導体層16、発光層(PN接合界面やダブルヘテロ接合構造の発光部位)11、及びN型半導体層17を有している。また、P型半導体層16の上面には電極9(電極パッド)が設けられ、基材12の下面には電極10が設けられている。なお、P型半導体層16とN型半導体層17の位置は逆であってもよい。
【0093】
図14は、発光モジュール1の一部を拡大して示す断面図である。図14に示されるように、電極9は、導体パターン5とバンプ20を介して電気的に接続されている。電極10は、導体パターン7に直接接続されている。
【0094】
発光素子8は、電極9,10を介して印加される直流電圧により点灯する。また、発光素子8は、光反射層や電流拡散層や透明電極等を有していてもよい。
【0095】
バンプ20は、第1の実施形態に係るバンプ30と同等の構成を有している。バンプ20の高さは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。バンプ20の高さは、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。バンプ20の高さが5μm未満だと、導体パターン5とP型半導体層16との短絡を防ぐ効果が弱くなる。一方、バンプ20の高さが50μmを超えてしまうと、発光モジュールの製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ20が透明フィルム4を変形させて外観不良や接続不良を生じさせる。
【0096】
LEDチップの電極9とバンプ20の接触面積は、100μm以上15,000μm以下であることが好ましい。LEDチップの電極9とバンプ20の接触面積は、400μm以上8,000μm以下であることがより好ましい。上記接触面積は、室温と被測定物の温度が20℃±2℃の安定した環境下で計測した値である。
【0097】
樹脂層13は、ビカット軟化温度で溶融しておらず、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましい。樹脂層13の融解温度は、180℃以上、もしくはビカット軟化温度より40℃以上高いことが好ましい。加えて、樹脂層13のガラス転移温度は、-20℃以下であることが好ましい。
【0098】
樹脂層13の構成材料としてのエラストマーは、それを用いて形成した樹脂層13の導体パターン5,7に対する引き剥がし強度(JIS C5061 8.1.6の方法Aによる)が0.49N/mm以上であることがさらに好ましい。
【0099】
上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率と融解温度についての条件を満たすエラストマー等を用いることによって、樹脂層13を複数の発光素子8に密着させた状態で、透明フィルム4と透明フィルム6の間に埋め込むことができる。言い換えると、導体パターン5と電極9との接触状態、及び導体パターン7と電極10との接触状態が、発光素子8の周囲に密着した状態で配置された樹脂層13により維持される。
【0100】
このため、発光モジュール1に屈曲試験や熱サイクル試験(TCT)等を施した場合には、導体パターン5と電極9、導体パターン7と電極10との電気的な接続信頼性が高いことが証明される。
【0101】
樹脂層13のビカット軟化温度が160℃を超えると、後述する樹脂層13の形成工程で、樹脂シートを十分に変形させることができない。このため、導体パターン5と電極9、及び導体パターン7と電極10との電気的な接続信頼性が低下する。樹脂層13のビカット軟化温度が80℃未満であると発光素子8の保持力が不足し、導体パターン5と電極9、及び導体パターン7と電極10との電気的な接続信頼性が低下する。樹脂層13のビカット軟化温度は100℃以上であることが好ましい。この場合、導体パターン5と電極9、及び導体パターン7と電極10との電気的な接続信頼性をさらに高めることができる。樹脂層13のビカット軟化温度は、140℃以下であることが好ましい。これにより、導体パターン5と電極9、及び導体パターン7と電極10との電気的な接続性をより有効に高めることができる。
【0102】
樹脂層13の0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率が、0.01GPa未満である場合にも、導体パターン5と電極9、及び導体パターン7と電極10との電気的な接続性が低下する。
【0103】
発光素子8や、その電極9,10は微細である。このため、後述する真空熱圧着時に、発光素子8の電極9,10を、正確に導体パターン5,7の所定の位置に接続するためには、室温から真空熱圧着工程の加熱温度付近に至るまで、樹脂シート130が比較的高い貯蔵弾性を維持する必要がある。
【0104】
真空熱圧着時に樹脂の弾性が低下すると、加工途中で発光素子8の傾きや横方向への微細な移動が起きて、電極9,10と導体パターン5,7とが電気的に接続されなかったり、接続抵抗が増加する等の事象が発生しやすくなる。発光素子8の傾きや横方向への移動は発光モジュール1の製造歩留りや信頼性を低下させる要因となる。発光素子8の傾きや横方向への移動を防止するために、0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率が0.01GPa以上の樹脂層13を用いる。
【0105】
樹脂層13の引張貯蔵弾性率が高すぎると発光モジュール1の耐屈曲性等が低下する。このため、0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率が、10GPa以下の樹脂層13を用いる。樹脂層13の0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率は、0.1GPa以上であることが好ましく、7GPa以下であることが好ましい。
【0106】
樹脂層13を構成するエラストマー等がビカット軟化温度で溶融しておらず、かつビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であると、真空熱圧着時における電極9,10と導体パターン5,7との位置決め精度をより一層高めることができる。
【0107】
このような点から、樹脂層13を構成するエラストマーの融解温度は180℃以上、もしくはビカット軟化温度より40℃以上高いことが好ましい。エラストマーのビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率は1MPa以上であることがより好ましい。また、エラストマーの融解温度は、200℃以上、もしくはビカット軟化温度より60℃以上高いことがより好ましい。
【0108】
さらに、発光モジュール1の製造性のみならず、低温から高温に至る広い温度範囲で、発光モジュール1の耐屈曲性や耐熱サイクル特性を向上させるためには、上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度のバランスが重要である。上述した引張貯蔵弾性率を有するエラストマーを樹脂層13として使用することで、発光モジュール1の耐屈曲性や耐熱サイクル特性を高めることができる。
【0109】
発光モジュールは、屋外での使用、屋内での使用にかかわらず、冬期の生活環境によっては、低温環境下での耐屈曲性や耐熱サイクル特性が求められる。エラストマーのガラス転移温度が高すぎると、低温環境下における発光モジュール1の耐屈曲性や、耐熱サイクル特性が低下するおそれがある。このため、ガラス転移温度が-20℃以下のエラストマーを、樹脂層13として使用することが好ましい。ガラス転移温度と引張貯蔵弾性率が適切なエラストマーを樹脂層13として用いることで、低温から高温に至る広い温度範囲での発光モジュール1の耐屈曲性や、耐熱サイクル特性を向上させることができる。エラストマーのガラス転移温度は-40℃以下であることがより好ましい。
【0110】
樹脂層13の厚さは、発光素子8の高さに基づく透明フィルム4と透明フィルム6との間隙と同等であってもよいが、導体パターン5,7と電極9,10との接触性を高める上で、バンプを含む発光素子8の高さより薄いことが好ましい。さらに、樹脂層13の厚さ(T2)は、バンプを含む発光素子8の高さ(T1)との差(T1-T2)が5~200μmの範囲になるように設定することがより好ましい。
【0111】
樹脂層13の厚さ(T2)を薄くしすぎると、樹脂層13の形状を維持することが困難になる。また、発光素子8に対する密着性等が低下するおそれがある。このため、発光素子8の高さ(T1)と樹脂層13の厚さ(T2)との差(T1-T2)は、発光素子8の高さ(T1)の1/2以下とすることが好ましい。
【0112】
上述のように構成される発光モジュール1の発光素子8は、バンプ20を有している。このため、導体パターン5と発光素子8との垂直距離が確保され、発光モジュール1での短絡を防止することができる。
【0113】
例えば、図15Aは、本実施形態に係る発光モジュール1を湾曲させたときの状態を示す図である。また、図15Bは、比較例に係る発光モジュール300を湾曲させたときの状態を示す図である。
【0114】
図15Aに示されるように、発光素子8の電極9にバンプ20が形成されている場合には、発光素子8の上面から導体パターン5までの距離が大きくなり、発光素子8と導体パターン5との間に十分な垂直距離が形成される。このため、発光モジュール1が湾曲しても、電極9に接続される導体パターン5と、発光素子8との接触が抑制される。
【0115】
一方、図15Bに示されるように、発光素子8の電極9にバンプ20が形成されていない場合には、発光素子8の上面から導体パターン5までの距離が小さくなる。このため、最表面のP型半導体層16がチップのエッジで欠けるなどして、発光層11やN型半導体層17が発光素子8の上面から露出しているときに、発光モジュール300が湾曲した場合には、電極9に接続される導体パターン5と、発光素子8の端部との間に、P型半導体層16-導体パターン5-N型半導体層17を経路とするリークパスが生じ、短絡が発生する。
【0116】
本実施形態に係る発光モジュール1では、バンプ20により導体パターン5と発光素子8との間に十分な垂直距離が確保されるので、回路の短絡を防止することができる。
【0117】
<製造方法>
次に、実施形態に係る発光モジュール1の製造方法について説明する。
【0118】
まず、一側に電極9と他側に電極10(アノード電極とカソード電極もしくはカソード電極とアノード電極)を形成した発光素子8を用意する。
【0119】
次に、発光素子22の電極9にバンプ20を形成する。バンプ20の形成方法は、ワイヤバンプ加工機を使ってAuワイヤもしくはAu合金ワイヤから金もしくは金合金バンプを作る方法を採用することができる。用いるワイヤ径は、15μm以上75μm以下であることが好ましい。
【0120】
本実施形態では、ワイヤボンディング装置を用いる。ワイヤ先端の放電によって、ワイヤを溶融させてボールを形成した後、超音波によりボールと電極9とを接続する。そして、電極9にボールが接続された状態で、ボールからワイヤを切り離す。これにより、図6を参照するとわかるように、電極9の上面に、上端部に突起が残るバンプ20が形成される。
【0121】
<丸め処理>
バンプ20の上端部に残った微小な突起はそのまま残してもよいが、所望によりバンプ20の上面を押圧してバンプ20の丸め処理を行ってもよい。丸め処理の要領は第1の実施形態で説明したとおりである。
【0122】
また、本実施形態に係る発光モジュール1に対しても、樹脂シートを用いて丸め処理を行うことができる。
【0123】
樹脂シート501を用いた丸め処理では、例えば、図16Aに示されるように、発光素子8の上方に、樹脂シート501が装着されたプレス板500を配置するとともに、発光素子8の下方に、樹脂シート503が装着されたプレス板502を配置する。これらの樹脂シート501,503としては、その厚さが、発光素子8の厚さと、バンプ20の高さBを加えた値より大きいものを用いる。
【0124】
そして、プレス板500を下降させるとともに、プレス板502を上昇させて、発光素子8を挟み込んでプレスする。これにより、図16Bに示されるように、発光素子8は、樹脂シート501,503の内部に埋め込まれた状態になる。このとき、発光素子8のバンプ20は、丸め処理が施され、テールが押しつぶされた状態になっている。プレス時のプレス板500,502の移動量は、目標とするバンプ20の高さに応じて決定する。
【0125】
次に、発光素子8のプレスを終了し、樹脂シート501,503を発光素子8から除去する。これにより、連続した曲面からなる連続面が形成されたバンプ20をもつ発光素子8が得られる。
【0126】
発光素子8にバンプ20を形成したら、上面に導体パターン5が形成された透明フィルム4を用意する。そして、図17Aに示されるように、透明フィルム4の上面に、透光性を有する樹脂シート130を配置する。樹脂シート130は、例えば、接着剤などにより透明フィルム4に仮付される。
【0127】
次に、図17Bに示されるように、樹脂シート130の上面に発光素子8を配置する。発光素子8は、電極9が形成された面が透明フィルム4に対向するように配置される。また、発光素子8は、電極9が導体パターン5の上方に位置するように位置決めされる。
【0128】
次に、図17Cに示されるように、発光素子8の上方に導体パターン7が形成された透明フィルム6を配置する。透明フィルム6は、導体パターン7が、発光素子8に面するように配置される。
【0129】
次に、透明フィルム4,6、樹脂シート130、発光素子8からなる積層体を、真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。真空雰囲気中における積層体の加熱・加圧工程(真空熱圧着工程)は、第1の実施形態と同様の条件下で行う。
【0130】
電極10と導体パターン7は、直接コンタクトしていてもよいし、導電性接着剤等を介して、コンタクトしていてもよい。
【0131】
本実施形態では、樹脂層13の各種特性や真空熱圧着条件等に基づいて、発光モジュール1内の気泡の発生を抑制することができる。発光モジュール1内には、外径が500μm以上または発光素子8の外形サイズ以上の大きさを有する気泡が存在していないことが好ましい。
【0132】
積層体の真空熱圧着時に加える加圧力は、加熱温度、樹脂シート130の材質、厚さ、最終的な樹脂層13の厚さ等に依存するが、通常0.5~20MPaの範囲である。さらに、加圧力は、1~l2MPaの範囲とすることが好ましい。加圧力を上記範囲に調整することによって、図17Dに示されるように、透明フィルム4と透明フィルム6との間隙に軟化した樹脂シート130を充填することができる。さらに、発光素子8の発光特性の低下や破損等を抑制することができる。
【0133】
上述したように、導体パターン5と発光素子8の電極9との間に樹脂シート130を介在させた状態で、真空熱圧着工程を実施することによって、電極9と導体パターン5とを電気的に接続し、電極10と導体パターン7とを電気的に接続しつつ、発光素子8の周囲に樹脂層13を形成することができる。さらに、図14に示されるように、発光素子8の上面と導体パターン5との間の空間に、樹脂層13の一部を良好に充填することができる。また、樹脂層13での気泡の残留を抑制することができる。
【0134】
積層体に上記熱圧着工程を施すことにより、図12に示される発光モジュール1が完成する。本実施形態に係る製造方法によれば、導体パターン5,7と発光素子22の電極9,10との電気的な接続性やその信頼性を高めた発光モジュール1を再現性よく製造することができる。
【0135】
本実施形態では、樹脂層13が、単層の樹脂シート130からなる場合を示したが、樹脂層13を2枚の樹脂シート130から構成してもよい。この場合には、2枚の樹脂シート130の間に発光素子8を挟んだ状態で積層体を加圧することで、図12に示される発光モジュール1を得ることができる。
【実施例
【0136】
次に、具体的な実施例とその評価結果について述べる。
【0137】
図18に示される表1は、図2に示されるように、上面に2つの電極28、29を有する発光素子22(LED)を備える発光モジュールについて、屈曲試験、及び熱サイクル試験を行うことで得られる試験結果を示す。
【0138】
表1の「チップサイズ」はチップの縦と横の寸法を示す。「バンプ高さ」は、バンプ30の高さを示す。「距離a」は、発光素子22の電極29(電極パッド)の高さと、バンプ30の高さとを合わせた大きさを示す(図20C参照)。「チップとバンプの位置」は、発光素子22に対するバンプの位置を示す。「チップの対角線上、角」との記載は、図20Aに示されるように、バンプ30の中心が、仮想線で示される発光素子22上面の対角線L1上で、コーナー近傍に位置することを示す。距離bは、図20Aに示されるように、バンプ30の中心から、導体パターン5の外縁と発光素子22上面の外縁とが交差する位置までの距離を示す。バンプ30の中心は、電極29の中心でもある。図20Aでは、左下のバンプ30に接続された導体パターン5が示され、右上のバンプ30に接続される導体パターンは図示が省略されている。また、図2及び図20Aを参照するとわかるように、発光素子22の表面は、活性層25、P型半導体層26の切欠き25a,25bを境として領域A1がN型半導体層24が露出した領域となり、領域A2がP型半導体層26が露出した領域となる。
【0139】
実施例1から実施例9、及び比較例1から比較例8のチップサイズに対応する大きさの発光素子を6個備える発光モジュールを用意した。発光素子の厚さはいずれも150μmである。
【0140】
実施例に係る発光素子と、比較例1~6に係る発光素子は、上述した要領で、電極上にバンプが形成されている。このバンプには、丸め処理が施されている。また、比較例7、8に係る発光素子は、電極上にバンプが形成されていない。
【0141】
実施例及び比較例に係る発光モジュールの透明フィルムとしては、厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシートが用いられている。この透明フィルムには、透明導電膜(ITO)からなる導体パターンが形成されている。
【0142】
樹脂層は、ビカット軟化温度が110℃、融解温度が220℃、ガラス転移温度が-40℃、0℃における引張貯蔵弾性率が1.1GPa、100℃における引張貯蔵弾性率が0.3GPa、ビカット軟化点である110℃における引張貯蔵弾性率が0.2GPaで、厚さが60μmのアクリル系エラストマーシートを用いて形成した。
【0143】
ビカット軟化温度は、安田精機製作所社製のNo.148-HD-PCヒートディストーションテスタを用いて、試験加重10N、昇温速度50℃/時間の条件で、JIS K7206(ISO 306)記載のA50条件で求めた。
【0144】
ガラス転移温度と融解温度は、JIS K7121(ISO 3146)に準拠した方法で測定した。ガラス転移温度と融解温度は、試料を5℃/分の昇温速度で昇温して、島津製作所社製の示差走査熱量計DSC-60を用いて熱流束示差走査熱量測定により求めた値である。
【0145】
引張貯蔵弾性率は、JIS K7244-4(ISO 6721-4)に準拠して測定した。引張貯蔵弾性率は、-100℃から200℃まで、試料を1℃/分で等速昇温し、周波数を10Hzとしてエー・アンド・ディ社製のDDV-01GP動的粘弾性自動測定器を用いて求めた値である。
【0146】
図10Cに示される積層体を、0.1MPaの圧力で予備プレスした後、作業空間を0.1kPaまで真空引きし、次に、積層体を、5kPaの真空雰囲気中にて120℃に加熱しながら9.8MPaの圧力でプレスする。そして、この状態を10分間維持することによって、積層体を構成する透明フィルム、樹脂シート、発光素子を一体化させ、発光モジュールを製作した。
【0147】
屈曲試験及び熱サイクル試験は、外部配線を、各実施例及び比較例に係る発光モジュールの導体パターンに接続して、直列接続される6個の発光素子を点灯させた状態で、を行った。
【0148】
各実施例及び比較例に係る発光モジュールを6個ずつ用意した。そして、通電された状態の各発光モジュールについて、JIS C5016(IEC249-1及びIEC326-2)8.6に記載の屈曲試験を行った。
【0149】
屈曲試験は、温度35±2℃、相対湿度60~70%、気圧86~106kPaの環境下で実施した。発光モジュールを屈曲させるときには、発光モジュールの電極29がある側が凸になるように屈曲させた。発光モジュールを屈曲させて、発光モジュールの最小屈曲半径を調べた。最小屈曲半径とは、発光モジュールが点灯した状態を維持したときの半径のうちの最小のものである。
【0150】
具体的には、半径が100mmから5mmまでの直径を持つ円柱を複数種類用意した。次に、得られた発光モジュールの下面(図5A図5Bにおける下面)を、それぞれ半径が大きい円柱の表面から、半径が小さい円柱の表面に順番に密着させた。そして、発光モジュールの点灯が維持されるときの最小の円柱の半径を最小屈曲半径として求めた。
【0151】
表1に示されるように、実施例1~9に係るすべての発光モジュールの最小屈曲半径は20mm以下となった。一方、比較例1~8に係る発光モジュールは、屈曲半径が20mm以下となったものが存在しなかった。この結果から、a/bが、0.1以上である場合には、発光モジュールでの導体パターンと発光素子の電極との電気的な接続信頼性が著しく高くなることが確認できた。
【0152】
また、JIS C60068-14にしたがって-30℃と60℃との間で熱サイクル試験を3000回実施し、点灯状態の維持状況を調べた。熱サイクル試験は、さらし時間30分、昇温速度3K/minの条件で行った。表1に示されるように、実施例1~7に係るすべての発光モジュールは、点灯状態が維持された。一方、比較例1~8に係る発光モジュールは、点灯状態を維持したものが存在しなかった。
【0153】
以上の結果から、発光素子にバンプを形成することで、発光モジュールの信頼性を向上させることができることが証明された。また、発光モジュールが、図2に示されるように、片面にのみ電極を有する発光素子から構成される場合には、発光素子22の電極29の高さとバンプ30の高さとを合わせた距離aと、バンプ30の中心、即ち電極29の中心、から導体パターンの外縁と発光素子上面の外縁とが交差する位置までの距離bとの比(a/b)は、0.1以上であることが好ましいことが証明された。
【0154】
なお、最小屈曲半径を小さくすることに特化すれば、比(a/b)は大きいほどよいが、バンプが高くなると、バンプの製造自体が難しくなってくる。単層バンプの場合、バンプ高さは60μm未満、50μm以下がよい。また、バンプが高くなると押圧工程で、チップが不安定になる。このため、比(a/b)は、a、bの組み合わせを考慮しても、0.4以下であることが好ましい。したがって、上限を考慮した比(a/b)の好ましい範囲は、0.10~0.40であり、表1を参照すれば0.10~0.30である。
【0155】
また、以上の結果から、電極29の高さとバンプ30の高さとを合わせた距離aと、バンプの中心(電極29の中心)からバンプに隣接する辺の遠い側の角部CNまでの距離b2との比(a/b2)も、0.1以上の範囲、あるいは、0.10~0.40の範囲、0.10~0.30の範囲が良い、ということも言える。通常、電極間には導体パターンのスペースが必要なので、電極29側の導体パターン5の辺(外縁)はチップの対角線(L2)を越えないからである。
【0156】
図19に示される表2は、図13に示されるように、上面と下面にそれぞれ電極9,10を有する発光素子8を備える発光モジュールについて、屈曲試験、及び熱サイクル試験を行うことで得られる試験結果を示す。
【0157】
表2の「チップサイズ」はチップの横と縦の寸法を示す。「バンプ高さ」は、バンプ20の高さを示す。「距離a」は、発光素子8の電極9の高さと、バンプ20の高さとを合わせた大きさを示す(図20C参照)。「チップとバンプの位置」は、発光素子8に対するバンプの位置を示す。「チップの中心」との記載は、図20Bに示されるように、バンプ20が、発光素子8上面の中心に位置することを示す。また、「チップの対角線上端から3/4の位置」との記載は、発光素子表面の対角線を4等分する3点のうち最もコーナーに近い点の位置を示す。「距離b」は、図20Bに示されるように、バンプ20の中心から発光素子上面のコーナーまでの距離を示す。
【0158】
実施例1から実施例7、及び比較例1から比較例9のチップサイズに対応する大きさの発光素子を6個備える発光モジュールを用意した。発光素子の厚さはいずれも150μmである。
【0159】
実施例に係る発光素子と、比較例1~7に係る発光素子は、上述した要領で、電極上にバンプが形成されている。このバンプには、丸め処理が施されている。また、比較例7、8に係る発光素子は、電極上にバンプが形成されていない。
【0160】
実施例及び比較例に係る発光モジュールの透明フィルムとしては、厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシートが用いられている。この透明フィルムには、透明導電膜(ITO)からなる導体パターンが形成されている。
【0161】
樹脂層は、ビカット軟化温度が110℃、融解温度が220℃、ガラス転移温度が-40℃、0℃における引張貯蔵弾性率が1.1GPa、100℃における引張貯蔵弾性率が0.3GPa、ビカット軟化点である110℃における引張貯蔵弾性率が0.2GPaで、厚さが60μmのアクリル系エラストマーシートを用いて形成した。
【0162】
図17Cに示される積層体を、0.1MPaの圧力で予備プレスした後、作業空間を0.1kPaまで真空引きし、次に、積層体を、5kPaの真空雰囲気中にて120℃に加熱しながら9.8MPaの圧力でプレスする。そして、この状態を10分間維持することによって、積層体を構成する透明フィルム、樹脂シート、発光素子を一体化させ、発光モジュールを製作した。
【0163】
屈曲試験及び熱サイクル試験は、外部配線を、各実施例及び比較例に係る発光モジュールの導体パターンに接続して、直列接続される6個の発光素子を点灯させた状態で、を行った。
【0164】
各実施例及び比較例に係る発光モジュールを6個ずつ用意した。そして、通電された状態の各発光モジュールについて、JIS C5016(IEC249-1及びIEC326-2)8.6に記載の屈曲試験を行った。
【0165】
屈曲試験は、温度35±2℃、相対湿度60~70%、気圧86~106kPaの環境下で実施した。発光モジュールを屈曲させるときには、発光モジュール1の電極9がある側が凸になるように屈曲させた。発光モジュールを屈曲させて、発光モジュールの最小屈曲半径を調べた。
【0166】
具体的には、半径が100mmから5mmまでの直径を持つ円柱を複数種類用意した。次に、得られた発光モジュールの下面(図15A図15Bにおける下面)を、それぞれ半径が大きい円柱の表面から、半径が小さい円柱の表面に順番に密着させた。そして、発光モジュールの点灯が維持されるときの最小の円柱の半径を最小屈曲半径として求めた。
【0167】
表2に示されるように、実施例1~7に係るすべての発光モジュールの最小屈曲半径は20mm以下となった。一方、比較例1~9に係る発光モジュールは、屈曲半径が20mm以下となったものが存在しなかった。この結果から、a/bが、0.12以上である場合には、発光モジュールでの導体パターンと発光素子の電極との電気的な接続信頼性が著しく高くなることが確認できた。
【0168】
また、JIS C60068-14にしたがって-30℃と60℃との間で熱サイクル試験を3000回実施し、点灯状態の維持状況を調べた。熱サイクル試験は、さらし時間30分、昇温速度3K/mimの条件で行った。表2に示されるように、実施例1~7に係るすべての発光モジュールは、点灯状態が維持された。一方、比較例1~9に係る発光モジュールは、点灯状態を維持したものが存在しなかった。
【0169】
以上の結果から、発光素子にバンプ形成することで、発光モジュールの信頼性を向上させることができることが証明された。また、発光モジュールが、図13に示されるように、片面にのみ電極を有する発光素子から構成される場合には、発光素子8の電極9の高さとバンプ20の高さとを合わせた距離aと、バンプの中心(電極9の中心)から発光素子上面のコーナーまでの距離bとの比(a/b)は、0.12以上であることが好ましいことが証明された。
【0170】
ここで、比(a/b)の下限が表1の実施例の方が小さいのは、片側2電極の場合、バンプ中心がチップの端に寄っており、bの値がより大きくなり得るからである。
【0171】
なお、最小屈曲半径を小さくすることに特化すれば、比(a/b)は大きいほどよいが、バンプが高くなると、バンプの製造自体が難しくなり、また、押圧工程で、チップが不安定になる。このため、比(a/b)は、0.4以下、バンプ高さは60μm未満、50μm以下がよい。
【0172】
表1、表2に示した実施例では、導体パターン5として透明導電膜(ITO)を用いた。しかし、導体パターン5として、不透明金属材料等の導電体のメッシュパターンを用いた場合も同じような結果となる。導体パターンがメッシュパターンで、表1に示した片側2電極の発光素子を備える発光モジュールの場合であっても、導体パターンは、発光素子のP型半導体層及びN型半導体層の一方にコンタクトし、P型半導体層及びN型半導体層の他方の上方に位置する。このため、導体パターンがメッシュパターンである発光モジュールにおいても、導体パターンがITOからなる発光モジュールと同じことが起こる。
【0173】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、バンプは、ワイヤボンダを使ったワイヤバンプ等以外に、リフトオフバンプなど、種々の形態のバンプであってもよい。
【0174】
また、例えば、バンプを、金属微粒子と樹脂の混合物により形成することもできる。この場合、例えば、銀(Ag)や銅(Cu)などの金属やその合金を熱硬化樹脂に混ぜてペーストにし、インクジェット法やニードルディスペンス法でペーストの小滴を電極上に吹き付けて突起状にし、熱処理により固めて導電層バンプを形成すればよい。
【0175】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0176】
1 発光モジュール
4,6 透明フィルム
5,7 導体パターン
8,22 発光素子
9,10,28,29 電極
11 発光層
12 基材
13 樹脂層
20,30 バンプ
23 ベース基板
17,24 N型半導体層
25 活性層
16,26 P型半導体層
25a,26a 切欠き
130 樹脂シート
500,502 プレス板
501,503 樹脂シート
L1,L2 対角線
CN バンプに隣接する辺の遠い側の角部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19
図20A
図20B
図20C